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© 2015 RSSJ Journal of The Remote Sensing Society of Japan Vol. 35 No. 3 (2015) pp.

140-148

解 説

水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について

虎谷充浩*

Overview of SeaDAS Software

Mitsuhiro TORATANI*

・海岸線描画や陸域 / 水域のマスクができる
1. は じ め に ・作業途中のすべてのファイルやビューおよびレイヤを
セッションとして保存し,復元することができる
最近の地球観測衛星のデータは,HDF ベースや netCDF である。
ベースのものがほとんどであり,プログラムやライブラリ 2.2 SeaDAS で扱うことのできる衛星センサー
を自在に使うことのできるユーザーでない限り,扱いづら サポートされているミッションは,MODIS, SeaWiFS,
いものとなっている。このため,衛星データをできるだけ CZCS, VIIRS, HICO, Aquarius, MERIS, OCTS, OCM, OCM-2,
簡単に扱えるように,ソフトウェアツールの開発が行われ OSMI, MOS である。また,AVHRR などにも対応している。
て き た。こ の 解 説 で は,主 に 海 色 用 に 開 発 さ れ て き た なお,これら以外の衛星センサーデータも画像表示など
SeaDAS というソフトウェアパッケージについて紹介する。 に使用可能と考える。試していないので詳細は不明である
SeaDAS は,海色データの処理,表示,分析,および品質 が,SeaDAS のオンラインヘルプ(http : //seadas.gsfc.nasa.
管理のための総合的な画像解析パッケージで,衛星データ gov/help/)
「File I/O & Session」に「Import tools」には,様々
の可視化,分析および処理をすることのできる NASA が開 な ENVISAT, LANDSAT 5 TM, NetCDF, GeoTIFF など多く
発したフリーのソフトウェアである。もともとは海色衛星 のファイル形式に対応していると説明されている。
センサー SeaWiFS のプロジェクトをサポートするために もしも,SeaDAS で扱えない衛星データが出てきた場合に
15 年以上前に作成が開始された。今では,多くの衛星を利 は,HDFview(http : //www.hdfgroup.org/products/java/hdfview/)
用した地球科学データの解析ツールとなっている。現時点 の利用をお勧めする。こちらもフリーのソフトウェアであ
(2015 年 7 月時点)での最新バージョンは,2015 年 5 月 6 る。
日にリリースされた 7.2 であり,その後も,開発・改良が続
けられている。GUI から処理コードまで,すべてフリーの 3. SeaDAS の入手とインストール
ソフトウェアで構成されており,ソースコードも入手可能
である。 SeaDAS ソフトウェアは,NASA の SeaDAS ウェブペー
ジ(http : //seadas.gsfc.nasa.gov/installers/)から,動作環境に
2. ソフトウェア SeaDAS の概要 合うプログラムをダウンロードしてインストーラを実行す
ると,SeaDAS7 が表示・解析ツール部分がインストールさ
2.1 ソフトウェア SeaDAS の特徴 れる。パッケージは,Windows(32 bit と 64 bit),MacOS,
SeaDAS の特徴を SeaDAS の web サイト(http : //seadas. Linux(32bit と 64bit)の OS 毎に 5 つに分かれている(Table
gsfc.nasa.gov/features.html 2014. 12. 6)から引用すると, 1)。
・非常に高速に表示や操作ができる (※筆者の環境では,Internet Explorer でダウンロードサイ
・高度なレイヤ管理により,オーバーレイ操作ができる トにアクセスした際,ダウンロードプログラムが表示され
・統計処理の領域選択ができ,グラフ化ができる ないことがあった。そのような場合には,Firefox など他の
・ビットマスクの定義やオーバーレイが簡単にできる ブラウザを使うことをお薦めする。

・数式を使用したバンド間演算ができる なお,SeaDAS7 の GUI は Java で書かれているため,Java
・地図投影とオルソ補正ができる のランタイム環境 JavaJRE の 1.7 またはそれ以上が必要で
・地上基準点を用いた幾何補正ができる あ る。JavaJRE の ダ ウ ン ロ ー ド 先 は,https : //java. com/ja/
*
(2014. 12. 30 受付,2015. 5. 12 改訂受理) School of Engneering, Tokai University, 4-1-1 Kitakaname Hiratsuka
*
東海大学工学部 Kanagawa, 259-1292 Japan
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目 4-1-1

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日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)

Table 1 Installation files of SeaDAS 7

Fig. 1 Home page view of NASA Ocean Color Web


download/ である。また,衛星データ処理プログラムを実 (http : //oceancolor.gsfc.nasa.gov/cms/)
行する場合(MacOS と Linux のみ可能)には,bash, python,
git, curl といったソフトウェアがインストールされている
必要がある。
最近のパソコンのスペックであれば,十分に動作する。
SeaDAS に必要なメモリ容量は,最小 256 MB であるが 1
GB 以上あった方がよい。ディスプレイの解像度は,1280
×1024 を必要とする。ディスク容量は,表示のみであれば
200 MB 以下であるが,全センサーの処理プログラムを含
む場合,5 GB 程度が必要となる。個々のセンサー毎にイ
ンストール可能なので,必要なセンサーに絞れば必要な容
量はこれより小さくなる。なお,データ処理には,10 GB Fig. 2 Contents list of Data Access menu on NASA Ocean
程度のフリースペースがあった方がよい。 Color Web

4. 衛星データのダウンロード

SeaDAS は,2.2 節で説明したように多くの衛星や様々な


フ ァ イ ル 形 式 の デ ー タ に 対 応 し て い る。こ こ で は,
SeaDAS が主に対象としている海色の web サイトを例とし
てデータの入手方法について紹介する。海色衛星データ
は,Ocean Color Web(http : //oceancolor.gsfc.nasa.gov/cms/)
で公開されている(Fig. 1)。同サイトにアクセスし,web
ページ上の左メニューの「Data Access」をクリックすると,
Fig. 2 のメニューが表示される。
4.1 Level1 と Level2 データの入手
「Level1 & 2 Browser」は,衛星データの個別シーンをダウ Fig. 3 Data search page view of Level1 & Level2

ンロードするときに選択する。個別シーンとは,衛星が地
上をスキャンしたときの特定の日付,海域の衛星データを タを取得したい場合には,画像上の東京湾周辺をクリック
指す。選択すると,Fig. 3 の画面が出てくる。左上は,画 すると,8 日間分の東京湾周辺をカバーする衛星データの
面中央の画像の種類 TC(True Color),CHL(クロロフィル 画像が表示される(Fig. 4)。この画面上で目的の海域が晴
a 濃度),SST(海表面水温)を選択する画面で,デフォルト れているかどうかを確認するとよい。個々の画像をクリッ
では CHL になっている。その下は,検索したい衛星セン クすると,Fig. 5 の画面が表示される。選択したシーンに
ターの選択画面で,デフォルトでは MODIS/Aqua となって ついて,RGB,CHL,SST 画像が現れる。左上のシーン名
いる。左下および中央下は,年月日の選択画面である。右 (例では A2015024041000.L0_LAC など)をクリックする
側には,海域や緯度経度の選択メニューがある。年月日の と,ダウンロードが開始される。L0,L1A は大気補正前の
選択はクリックすると変化するが,センサーを追加した場 データ,L2.LAC_OC は大気補正処理後のデータで CHL な
合などは,画面中央の「reconfigure page」ボタンを押す必要 どのデータ,L2.LAC_SST は海表面水温のデータである。
がある。日付の選択画面の「xxx」
「^^^」などの記号は 8 日 ここまでが,Level1 & Level2 データのダウンロードについ
間毎の区分を示している。例えば,2015 年 1 月 17〜24 日 て説明である。
を検索したい場合には,日付の下の「xxx」をクリックする 4.2 Level3 データの入手
と,8 日間のデータを合成した全球の CHL の画像が中央に 次は「Data Access」のメニューに戻って,Level3 データ
表示される。次に,画像上の位置をクリックするとその周 のダウンロードについて説明する。Level 3 データは,全球
辺の 8 日間のデータが表示される。例えば,東京湾のデー のマップ上に bin 毎に展開されたデータを一定期間で平均

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水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について

Fig. 4 Search data view of Level 1 & 2 around Tokyo Bay

Fig. 6 Data search view of Level-3 data

Fig. 5 Selected one scene of MODIS/Aqua

したデータである。「Level3 browser」をクリックすると,
Fig. 6 の画面が表示される。ダウンロード可能なプロダク
トは,標準(Standard)からテスト(test)中のものまで,多 Fig. 7 SeaDAS initial view
種多様なプロダクトをダウンロードできる。海洋だけでな
く,Aquarius のプロダクト Soil moisture などもある。平均
化 す る 期 間 は,Daily か ら 全 期 間 を 集 め た も の(Entire _LAADS.html も参考になると考える。
mission composite)ま で あ り,デ フ ォ ル ト で は 月 平 均
(Monthly)となっている。解像度は,9 km と 4 km である 5. SeaDAS の使い方
(Aquarius のデータは 1deg)。目的のプロダクトと期間,解
像度を選択して,表示される画像の左もしくは右下をク 5.
1 SeaDAS の起動
リックするとダウンロードが開始される。このとき注意が SeaDAS を実行すると,SeaDAS のロゴの後に,Fig. 7 の
必要なのは,左下は SMI(Standard mapped image)で,右下 画面が表示される。
は BIN(Binning されたデータ)となっている。SMI は,等 標準の画面は,左側が File Manager ウィンドウ,中央が
緯度経度上に展開された画像データになっているので,初 画像などの表示部分,右側が World Map Location などであ
心者はこちらを選択するとよいだろう。BIN データを必要 る。この配置は自由に変更できるが,誤った操作で意図し
とするユーザーは限られると考える。 ない画面配置に変わり,元に戻せないことがある。その場
いずれのレベルのデータも,ダウンロードデータ は 合には,
「View」->「Reset to Default Layout」とすると標準
bzip2 圧縮形式で圧縮されている。そのため,SeaDAS で使 の配置に戻すことができる。
う前に解凍ツールであらかじめ解凍しておく必要がある。 5.
2 ファイルの読み込みと画像表示
その他,データダウンロードの参考になる web サイトを メニューの「ファイル」->「Open…」で衛星データファ
紹介しておくと,例えば,LAADS(Level 1 and Atmosphere イルを選択すると,File Manager ウィンドウに表示される。
Archive and Distribution System)で あ れ ば 阿 寒 湖 畔 エ コ HDF ファイルは,衛星データに関する様々な情報も記録さ
ミュージアムセンターの尾山博士が日本語で作成された れている。MODIS/Aqua のレベル 2(L2)データファイル
http : //www7b.biglobe.ne.jp/~oyama/DataAqu_LAADS/1.Order の場合,File Maneager 上には,Metadata, Flag codings とと

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日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)

Fig. 8 Chlorophyll-a concentration image view on SeaDAS

もに,Bands(Products)フォルダが表示される。データは,
この Bands(Products)の中に入っている。Bands(Products)
の横の三角形をクリックすると,Products などが表示され
る。プロダクト名をダブルクリックすると,中央に画像が
表示される。ここでは,クロロフィル a 濃度(chlor_a)を
例として示す(Fig. 8)に示す。
右側(Fig. 9)の World Map Location ウィンドウには,衛
星データの範囲が地図上に表示される。また,その下の
Pixel Info ウィンドウには,中央の画像にマウスのポインタ Fig. 9 Display windows of World Map Location, Pixel info.
を置くと,そのポインタのピクセル位置(Image-X, Image- and Navigation Controls
Y),緯度経度,プロダクトの物理量が表示される。
画面の左下側の File Manager タブの隣に,Mask Manager,
Layer Manager,Color Manager が並んでいる。Mask Manager, 拡大・縮小・回転,カラーテーブルの設定,緯度経度線や
Layer Manager は,画像の Flag をオーバーレイするときに 海岸線・陸 / 海のマスク表示,画像間演算,イメージの出
使う。Color Manager は,画像の色づけに使う。 力について説明する。
これら 3 つの Manager については,5.4 節の画像の操作 ・画像の拡大・縮小・回転
のところで説明する。 画像の拡大・縮小・回転は,画像左上の操作パネルを使
5.3 画像に関係する情報(Global Attributes) う(Fig. 12)。前後左右方向の矢印は,画像を平行移動させ
HDF フ ァ イ ル に 含 ま れ て い る 情 報 を 見 て み よ う。 て,表示位置を変更に使う。下側のバーは,右にスライド
Metadata をクリックすると,SeaDAS に読み込んだデータ させると拡大,左は縮小に使う。円の部分をドラッグ &
に関連する情報を見ることができる。Global_Attributes を ドロップすると画像が回転する。これらはすべてマウスの
クリックすると,Fig. 10 のように多くの情報が表示され 操作で行う。
る。データの名前(Name)と情報(Value),データのタイ これら以外にも方法があり,虫眼鏡のマークをクリック
プ(Type)を見ることができる。例えば,プロダクトの画 して,画像上の範囲を指定すると,その範囲の拡大した表
像 サ イ ズ を 知 り た い 場 合 に は Number_of_Scan_Lines, 示に切り替わる(Fig. 3)。ホイール付きのマウスであれば,
Pixels_per_Scan_Line を見ることで,2030 pixels×1354 lines ホイールを回すだけでも拡大・縮小できる。
であることがわかる。 ・画像のカラーテーブルの設定
Band_Attributes をクリックすると,プロダクト毎の情報 画像の色づけは,Color Manager を使う。プロダクトに
を得ることができる。クロロフィル a 濃度の例を Fig. 11 よっては,自動的に色づけされるが,色づけやレンジを変
に示す。データタイプ(data_type)は 32 ビット浮動小数点, 更したいときに使用する。ColorManager ウィンドウでは,
物理量に変換するときの傾き(slope)が 1.0,切片(intercept) 色づけやレンジつまり最大値と最小値の設定の変更ができ
が 0.0,単位(Unit)は mg/m3 などが分かる。 る(Fig. 14)。Basic,Sliders,Table の 3 つの選択ボタンがあ
5.4 画像の操作 り,Basic ではあらかじめ用意されているカラーテーブル
SeaDAS は多くの機能を持っている。ここでは,画像の を選択できる。Basic の右上には,log スケール表示用の常

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水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について

Fig. 13 Check enhance button, select area and then enhanced


image

Fig. 14 Color Manager windows (Left : Basic, Middle : Sliders,


Fig. 10 Global attributes view
Right : Table)

タンを押して,表示されるビューの中にある Orientation(方
向)を「Horizontal(水平)」か「Vertical(垂直)」に指定し,
「Create Layer」ボタンを押すと表示される。画像を拡大し
ている場合には,カラースケールが表示されないように見
Fig. 11 Band attributes view えるが,枠外にカラースケールがある。
・海岸線や緯度経度線の表示と陸 / 海域のマスク表示
海岸線の表示は,
画面上部にある「イタリアの地形風マー
ク」のボタンを押すと,マスク作成ウィンドウ(Fig. 15)が
表示され,Create Masks ボタンを押すと,海岸線描画が行
われる。緯度経度線は,
「井桁マーク」のボタンを押すと表
示される。
海岸線や緯度経度線などを含め Mask/Flag の情報は,Mask
Manager や Layer Manager に追加される。陸域をマスクす
る場合は,Mask Manager 上の LandMask にチェックを入れ
る。水深によるマスクは,
「イタリアの地形風マーク」の隣
Fig. 12 Navigation control panel on the image
にある「波のようなマーク」のボタンを押すと Bathmetry &
Elevation ビューが表示され,
「Create Bands and Mask」ボタ
用対数(Log10)ボタンがある。Sliders を選択すると,デー ンを押すと表示される。
タの頻度分布が表示され,頻度分布を見ながらカラース Mask Manager 上では,マスクの色とともに,透過率を変
ケールの変更ができる。Table では表示色と閾値を確認で えることができる。陸域/水域や水深によるマスクの色や
き,それらを直接,変更することができる。 透過率を自由に変更できる。
カラースケールの表示は,
「カラースケールマーク」のボ 表示した線やマスクを消したい場合には,Layer Manager

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日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)

Fig. 17 Export image view

・イメージの出力
画像をイメージファイルとして保存したい場合には,
「File」->「Export Utilities」->「Image」を選択すると,
「Export
Image」画面が表示される(Fig. 17)。画像上でコントロー

Fig. 15 Coastline and Land Masks view ルキーとマウスクリックでも同じ操作ができる。Source


boundaries の「Data」はフルシーンを「View Window」は現
在表示されているウィンドウを出力したいときに指定す
る。「save」ボタンを押すと,イメージが保存される。
・その他の処理
ここまでで取り上げたのは SeaDAS の一部の機能に過ぎ
ない。様々な空間フィルタ処理,データの部分的な切り出
し,複数シーンのモザイク処理,コンター表示,その他に
領域内の合計や平均などの統計値表示,頻度分布などの
様々グラフ化,クラスター分析など多くの機能がある。詳
細については,SeaDAS のヘルプや SeaDAS のオンライン
ヘルプ http : //seadas.gsfc.nasa.gov/help/ を参照されたい。

Fig. 16 Band Math and Band Math Expression Editor view


6. SeaDAS の GUI を使った衛星データの処理

もしくは Mask Manager 上のチェックが入っている項目, SeaDAS は,画像表示・解析だけでなく,衛星データの処


例えば海岸線(Coastline)のチェックを外すと海岸線は消 理をすることができる。サポートしているプロジェクトの
える。 衛星データについて,レベル 0(L0)からレベル 3(L3)ま
・画像間演算 での処理をすることができる。なお,Windows 版は今のと
複数の画像間の違いを調べるとき,画像間演算する。例 ころ表示・解析ツールのみで,ここで説明するデータ処理
えば,平年値からの差分を取りたいなど場合などである。 を行うことができない。
画像間演算に使うデータを SeaDAS 上に取り込み,
「fx(関 6.1 衛星データ処理用のプログラムの追加
数ボタン)」を押し,
「Band Math」画面を表示する。「Band SeaDAS で衛星データを処理するには,処理したい衛星
Math」画面上の「Edit expression…」ボタンを押すと,
「Ex- の処理プログラムを追加でインストールする必要がある。
pression Editor」画面がが表示される(Fig. 16)。1 つ目のプ 追加する手順は,
「DataProcessing」->「Install OC Processors」
ロダクトを選び,中央にある演算子ボタンを押す。差分を を 選 択 す る と,の SeaDAS Processing Software Installer
取る場合には,「@-@」である。次に,もう一つのプロダ ビュー(Fig. 18)が表示され,ミッションの選択画面が出
クトを選択して指定し,式の入力を終えたらば,OK ボタ る。処理したいセンサーにチェックを入れて,
「Run」を実
ンを押す。「Band Math」画面上の OK ボタンを押すと,画 行すると,処理プログラムのインストール作業がスタート
像間演算結果が表示され,データが File Manager 上に追加 する。プログラムのダウンロードとインストールが行われ
される。 るため,少々時間がかかる。
インストールが終わると,メニュー「Data processing」内

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水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について

Fig. 18 SeaDAS processing software installer window

の様々な処理コマンドを選択できるようなる。
Fig. 19 Command ‘l2gen’ control window
6.2 MODIS データの大気補正処理
ここでは,MODIS/Aqua のレベル 1B データ(L1B)から
レベル 2 データ(L2)を作成する部分(大気補正処理)を
例に説明する。この処理をするには,入力ファイルとして
L1B と幾何情報ファイル(GEO)が必要である。
L1B データと GEO ファイルは,レベル 1A データ(L1A)
Fig. 20 Command ‘l2gen’ processing in progress
から作成する。L1A データは,NASA の Ocean Color Web
site(http : //oceancolor.gsfc.nasa.gov)からダウンロードでき
る。ダウンロードした L1A ファイルは,bzip2 圧縮されて できる。衛星天頂角や方位角などの幾何情報,大気補正に
いるため,bzip2 を解凍できるソフトで解凍する。 必要なさまざまなパラメータ,大気補正処理中に計算され
L1A か ら GEO を 作 成 す る に は,「DataProcessing」- > るさまざまなパラメータも出力することが可能である。プ
「modis_GEO…」で「file」に L1A を指定し,
「Run」すれば すべて略語で記載されている。略語の説明は,
ロダクトは,
作成される。 おおむね http : //oceancolor.gsfc.nasa.gov/DOCS/MSL12/MSl12_
L1A か ら L1B を 作 成 す る に は,「DataProcessing」- > prod. html で確認できる。
「Run」すれば
「modis_L1B…」で「ifile」に L1A を指定し, なお,バージョンアップの度にさまざまなプロダクトが
作成される。L1B データは,1 km 解像度の L1B_LAC(バ 追加されており,web 上の説明にはないものもある。
ンド 8 以降),500 m 解像度の L1B_HKM(バンド 3〜7), 画面右下の「Open in the SeaDAS」にチェックを入れてお
250 m 解像度の L1B_QKM(バンド 1 と 2)の 3 つのファイ けば,処理が終了後,データファイルを自動的にロードし,
ルが作成される。 File Manager ウィンドウ上に表示され,画像表示,解析が
大気補正処理の L1B と GEO から L2 を作成するには, できるようになる。
「DataProcessing」->「l2gen…」で「ifile」に L1B_LAC を指 大気補正処理には時間がかかるため,
「Run」をクリック
定する。あらかじめ「File」->「Open…」で L1B データを すると,処理が実行中 Fig. 20 のウィンドウが表示され,処
開 い て い れ ば,そ れ を 選 択 す る こ と も で き る。す ぐ に 理の進行状況が分かるようになっている。
「Run」したいところであるが,L2 プロダクトの精度を上
げるためには,補助データを利用した方がよい。画面の中 7. データ処理プログラムのバッチ処理
央付近に「Get Ancilary」->「Get Ancilary」を選択すると,
必要な補助データが自動的にダウンロードされる。海氷, ここからは,上級者向けのデータ処理方法について説明
気象,オゾン,海面水温などのデータがダウンロードされ, する。バッチ処理を多少理解できる人向けの説明である。
実行時のパラメータとしてリストアップされる(Fig. 19)
。 GUI を使った処理では,1 シーン 1 シーンを対話的に処
この状態で,
「Run」を押せば,L2 ファイル中に標準プロダ 理しなければならないため,多数のシーンの処理に適さな
クトが出力される。 い。多数のシーンを一気に処理するためにはバッチ処理を
標準以外のプロダクトを出力したいときには,
「Products」 行う必要がある。
を選択して,出力したいプロダクトにチェックを入れる。 SeaDAS のデータ処理プログラムは,Python 言語や C 言
クロロフィル a 濃度 1 つだけでも 20 のアルゴリズムが登 語をコンパイルしたものが集まったものでできており,
録されていて,それぞれ選択することができる。波長毎の 個々のコマンドとしても実行できる。コマンド入力は,
プロダクトについては,出力したい波長を選択することが ターミナルを起動して行う。

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日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)

Table 2 Description of shell script file (l2gen.sh) Table 3 Description of multiple scene processing
(l2gen-5scenes.sh)

Table 4 Description of level 0 to level 2 processing (L0toL2.sh)

7.1 コマンド入力による大気補正処理(l2gen) プロダクトの設定のみならず,大気補正手法についても


SeaDAS をインストールした環境で,MODIS の L1B か 様々なオプションがあり,
実行時に設定することができる。
ら L2(大気補正処理)をする場合,以下のようにコマンド ここで紹介したものは l2gen プログラムのオプション設定
を入力すれば,実行できる。なお,ディレクトリ内には, のほんの一部に過ぎない。
L1B)と GEO のファイルがあるものとする。 入力ファイルを変更しながら,同じ処理を行いたい場合
コマンド l2gen には,以下のようなシェルプログラム(l2gen.sh)を用意し
l2gen ifile= 入力ファイル.L1B_LAC geofile= 入力ファ ておくと便利である(Table 2)。
イル名.GEO このシェルプログラムを使うと,先ほどの例では,
例 l2gen ifile=A2012361040500.L1B_LAC geofile=A2012 l2gen.sh A2012361040500
361040500.GEO で実行できる。5 シーンをまとめて処理したい場合,l2gen.
この場合,出力プロダクトは特に指定していないため標 sh を使って以下のような l2gen-5scenes.sh を用意すると,
準プロダクトとなる。標準以外のプロダクトを出力したい l2gen-5scenes.sh コマンド 1 つの実行できる(Table 3)。
場合には,出力プロダクトを l2prod= 以降にカンマ(,
)区 5 シーンの L1B ファイルと GEO ファイルが用意されて
切りで指定する。 いれば,
例 l2gen ifile=A2012361040500.L1B_LAC geofile=A2012 l2gen-5scenes.sh
361040500.GEO l2prod=Lt_869, Es_869, Lr_869, Rrs_ のコマンド 1 つで,5 シーンの大気補正処理が行われ,プ
443, chlor_a ロダクトが作成される。
この例は,出力プロダクトとして,869 nm における衛星 7.2 MODIS/Aqua の L0 ダウンロードから L2 作成まで
観測放射輝度(Lt_869),869 nm における大気圏外太陽照 さらに進んで,レベル 0 データのダウンロードからレベ
度(Es_869),869 nm における気体分子散乱光放射輝度(Lr_ ル 2 処理までを自動化したシェルプログラム(L0toL2.sh)
869),443 nm におけるリモートセンシング反射率(Rrs_ を紹介する(Table 4)。
443),クロロフィル a 濃度(chlor_a)を出力する。 wget は,ネット上のデータのダウンロードコマンド。レ
大気補正に関係するプログラム l2gen のオプションは, ベル 0(L0)データを NASA のサイトからダウンロードす

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水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について

る。 うな衛星データ処理アルゴリズムの開発者にとっては,処
modis_L1A.py は,L0 からレベル 1A(L1A)を作成する 理プログラムのソースコードを読むことで,最新のプロダ
python プログラム クトのアルゴリズムや処理上の工夫が理解でき,非常に参
modis_GEO.py は,L1A から,GEO を作成する python プ 考になっている。
ログラム
modis_L1B. py は,L1A と GEO か ら L1B を 作 成 す る 9. お わ り に
python プログラム
ここでは,L1B_HKM(500 m)と L1B_QKM(250 m)も SeaDAS は,衛星データの初心者から扱いに慣れたユー
出力している。 ザーまで幅広く利用できるフリーソフトウェアである。
echo から getanc.py は,l2gen 実行時に使うパラメータ作 SeaDAS は,処理,表示,分析,および品質管理のための総
成部分である。getanc.py は,補助データのダウンロードと 合的な画像解析パッケージであり,ここで紹介できたもの
補助データをリストアップする。これらの行の後ろにある は全体のほんの一部に過ぎない。
「>」や「>>」はリダイレクトで,出力をファイルに書き込 長年 SeaDAS を使ってきたユーザーは,未だにバージョ
む働きをする。 ン 6(V6)を使っている人も少なくないと思われる。バー
L2gen は,パラメータファイルを使って,L1B から L2 を ジョン 7(V7)は,V6 からユーザーインターフェイスが大
作成する。 きく変化した。これまでのユーザーにとっては大きな戸惑
このシェルプログラムを使って,例えば,MODIS の い 生 む 変 化 で あ っ た。V6 で 使 っ て い た IDL を や め,
A2012363035000 データをダウンロードから L2 作成まで BEAM と融合させ,Java ベースのものに切り替わったため
実行するには,以下のコマンドを実行すれば良い。 である。しかしながら,最新のバージョン 7.1 となってか
例 L0toL2.sh A2012363035000 なり使い勝手が改善され,V6 でできて V7 でできないこと
複 数 の シ ー ン を ま と め て 処 理 し た い 場 合 は,l2gen- も減りつつある。バッチ処理の部分は,shell ベースから
5scenes.sh で説明した能登同様に行えば,複数シーンのダ python ベースになったが,l2gen などの処理プログラムそ
ウンロードから L2 出力までできる。 のものは実は V6 とほとんど変わっていない。そろそろ
V7 に乗り換えても良いころではないだろうか。
8. ソースコードの利用 SeaDAS の開発は今も続いており,より便利に使える
ツールとして発展して行くであろう。衛星データの初心者
SeaDAS はユーザーインターフェイスも含め,すべてフ にとっては,扱いしづらい HDF や netCDF 形式の衛星デー
リーのソフトウェアであり,ソースコードも公開されてい タを簡単に表示できるツールであり,使い慣れると非常に
る。ソースコードを改編して,新たなアルゴリズムのテス 強力な解析ツールになり得る。この解説を読んで少しは
トや新たな L2 プロダクトの追加することもできる。その SeaDAS について興味を持っていただければ幸いである。
方法を記述したドキュメントも用意されている。筆者のよ

〔著者紹介〕
●虎谷 充浩(トラタニ ミツヒロ)
1994 年東海大学大学院海洋学研究科博士
(工学) 。1992 年東海大学開発工学部情報
通信工学科助手。1998 年同講師。2005 年
同准教授。2010 年東海大学工学部光・画
像工学科准教授。2011 年より同教授。東
海大学大学院海洋学研究科のころから,
海色衛星センサー向けの大気補正アルゴ
リズムの研究に従事し,OCTS,GLI,GCOM-C1 でも開発を担
当。日本海洋学会,日本気象学会等の会員。
E-mail : tora@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp

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