Professional Documents
Culture Documents
140-148
解 説
水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について
虎谷充浩*
Mitsuhiro TORATANI*
・海岸線描画や陸域 / 水域のマスクができる
1. は じ め に ・作業途中のすべてのファイルやビューおよびレイヤを
セッションとして保存し,復元することができる
最近の地球観測衛星のデータは,HDF ベースや netCDF である。
ベースのものがほとんどであり,プログラムやライブラリ 2.2 SeaDAS で扱うことのできる衛星センサー
を自在に使うことのできるユーザーでない限り,扱いづら サポートされているミッションは,MODIS, SeaWiFS,
いものとなっている。このため,衛星データをできるだけ CZCS, VIIRS, HICO, Aquarius, MERIS, OCTS, OCM, OCM-2,
簡単に扱えるように,ソフトウェアツールの開発が行われ OSMI, MOS である。また,AVHRR などにも対応している。
て き た。こ の 解 説 で は,主 に 海 色 用 に 開 発 さ れ て き た なお,これら以外の衛星センサーデータも画像表示など
SeaDAS というソフトウェアパッケージについて紹介する。 に使用可能と考える。試していないので詳細は不明である
SeaDAS は,海色データの処理,表示,分析,および品質 が,SeaDAS のオンラインヘルプ(http : //seadas.gsfc.nasa.
管理のための総合的な画像解析パッケージで,衛星データ gov/help/)
「File I/O & Session」に「Import tools」には,様々
の可視化,分析および処理をすることのできる NASA が開 な ENVISAT, LANDSAT 5 TM, NetCDF, GeoTIFF など多く
発したフリーのソフトウェアである。もともとは海色衛星 のファイル形式に対応していると説明されている。
センサー SeaWiFS のプロジェクトをサポートするために もしも,SeaDAS で扱えない衛星データが出てきた場合に
15 年以上前に作成が開始された。今では,多くの衛星を利 は,HDFview(http : //www.hdfgroup.org/products/java/hdfview/)
用した地球科学データの解析ツールとなっている。現時点 の利用をお勧めする。こちらもフリーのソフトウェアであ
(2015 年 7 月時点)での最新バージョンは,2015 年 5 月 6 る。
日にリリースされた 7.2 であり,その後も,開発・改良が続
けられている。GUI から処理コードまで,すべてフリーの 3. SeaDAS の入手とインストール
ソフトウェアで構成されており,ソースコードも入手可能
である。 SeaDAS ソフトウェアは,NASA の SeaDAS ウェブペー
ジ(http : //seadas.gsfc.nasa.gov/installers/)から,動作環境に
2. ソフトウェア SeaDAS の概要 合うプログラムをダウンロードしてインストーラを実行す
ると,SeaDAS7 が表示・解析ツール部分がインストールさ
2.1 ソフトウェア SeaDAS の特徴 れる。パッケージは,Windows(32 bit と 64 bit),MacOS,
SeaDAS の特徴を SeaDAS の web サイト(http : //seadas. Linux(32bit と 64bit)の OS 毎に 5 つに分かれている(Table
gsfc.nasa.gov/features.html 2014. 12. 6)から引用すると, 1)。
・非常に高速に表示や操作ができる (※筆者の環境では,Internet Explorer でダウンロードサイ
・高度なレイヤ管理により,オーバーレイ操作ができる トにアクセスした際,ダウンロードプログラムが表示され
・統計処理の領域選択ができ,グラフ化ができる ないことがあった。そのような場合には,Firefox など他の
・ビットマスクの定義やオーバーレイが簡単にできる ブラウザを使うことをお薦めする。
)
・数式を使用したバンド間演算ができる なお,SeaDAS7 の GUI は Java で書かれているため,Java
・地図投影とオルソ補正ができる のランタイム環境 JavaJRE の 1.7 またはそれ以上が必要で
・地上基準点を用いた幾何補正ができる あ る。JavaJRE の ダ ウ ン ロ ー ド 先 は,https : //java. com/ja/
*
(2014. 12. 30 受付,2015. 5. 12 改訂受理) School of Engneering, Tokai University, 4-1-1 Kitakaname Hiratsuka
*
東海大学工学部 Kanagawa, 259-1292 Japan
〒259-1292 神奈川県平塚市北金目 4-1-1
─ 140 ─
日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)
4. 衛星データのダウンロード
ンロードするときに選択する。個別シーンとは,衛星が地
上をスキャンしたときの特定の日付,海域の衛星データを タを取得したい場合には,画像上の東京湾周辺をクリック
指す。選択すると,Fig. 3 の画面が出てくる。左上は,画 すると,8 日間分の東京湾周辺をカバーする衛星データの
面中央の画像の種類 TC(True Color),CHL(クロロフィル 画像が表示される(Fig. 4)。この画面上で目的の海域が晴
a 濃度),SST(海表面水温)を選択する画面で,デフォルト れているかどうかを確認するとよい。個々の画像をクリッ
では CHL になっている。その下は,検索したい衛星セン クすると,Fig. 5 の画面が表示される。選択したシーンに
ターの選択画面で,デフォルトでは MODIS/Aqua となって ついて,RGB,CHL,SST 画像が現れる。左上のシーン名
いる。左下および中央下は,年月日の選択画面である。右 (例では A2015024041000.L0_LAC など)をクリックする
側には,海域や緯度経度の選択メニューがある。年月日の と,ダウンロードが開始される。L0,L1A は大気補正前の
選択はクリックすると変化するが,センサーを追加した場 データ,L2.LAC_OC は大気補正処理後のデータで CHL な
合などは,画面中央の「reconfigure page」ボタンを押す必要 どのデータ,L2.LAC_SST は海表面水温のデータである。
がある。日付の選択画面の「xxx」
「^^^」などの記号は 8 日 ここまでが,Level1 & Level2 データのダウンロードについ
間毎の区分を示している。例えば,2015 年 1 月 17〜24 日 て説明である。
を検索したい場合には,日付の下の「xxx」をクリックする 4.2 Level3 データの入手
と,8 日間のデータを合成した全球の CHL の画像が中央に 次は「Data Access」のメニューに戻って,Level3 データ
表示される。次に,画像上の位置をクリックするとその周 のダウンロードについて説明する。Level 3 データは,全球
辺の 8 日間のデータが表示される。例えば,東京湾のデー のマップ上に bin 毎に展開されたデータを一定期間で平均
─ 141 ─
水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について
したデータである。「Level3 browser」をクリックすると,
Fig. 6 の画面が表示される。ダウンロード可能なプロダク
トは,標準(Standard)からテスト(test)中のものまで,多 Fig. 7 SeaDAS initial view
種多様なプロダクトをダウンロードできる。海洋だけでな
く,Aquarius のプロダクト Soil moisture などもある。平均
化 す る 期 間 は,Daily か ら 全 期 間 を 集 め た も の(Entire _LAADS.html も参考になると考える。
mission composite)ま で あ り,デ フ ォ ル ト で は 月 平 均
(Monthly)となっている。解像度は,9 km と 4 km である 5. SeaDAS の使い方
(Aquarius のデータは 1deg)。目的のプロダクトと期間,解
像度を選択して,表示される画像の左もしくは右下をク 5.
1 SeaDAS の起動
リックするとダウンロードが開始される。このとき注意が SeaDAS を実行すると,SeaDAS のロゴの後に,Fig. 7 の
必要なのは,左下は SMI(Standard mapped image)で,右下 画面が表示される。
は BIN(Binning されたデータ)となっている。SMI は,等 標準の画面は,左側が File Manager ウィンドウ,中央が
緯度経度上に展開された画像データになっているので,初 画像などの表示部分,右側が World Map Location などであ
心者はこちらを選択するとよいだろう。BIN データを必要 る。この配置は自由に変更できるが,誤った操作で意図し
とするユーザーは限られると考える。 ない画面配置に変わり,元に戻せないことがある。その場
いずれのレベルのデータも,ダウンロードデータ は 合には,
「View」->「Reset to Default Layout」とすると標準
bzip2 圧縮形式で圧縮されている。そのため,SeaDAS で使 の配置に戻すことができる。
う前に解凍ツールであらかじめ解凍しておく必要がある。 5.
2 ファイルの読み込みと画像表示
その他,データダウンロードの参考になる web サイトを メニューの「ファイル」->「Open…」で衛星データファ
紹介しておくと,例えば,LAADS(Level 1 and Atmosphere イルを選択すると,File Manager ウィンドウに表示される。
Archive and Distribution System)で あ れ ば 阿 寒 湖 畔 エ コ HDF ファイルは,衛星データに関する様々な情報も記録さ
ミュージアムセンターの尾山博士が日本語で作成された れている。MODIS/Aqua のレベル 2(L2)データファイル
http : //www7b.biglobe.ne.jp/~oyama/DataAqu_LAADS/1.Order の場合,File Maneager 上には,Metadata, Flag codings とと
─ 142 ─
日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)
もに,Bands(Products)フォルダが表示される。データは,
この Bands(Products)の中に入っている。Bands(Products)
の横の三角形をクリックすると,Products などが表示され
る。プロダクト名をダブルクリックすると,中央に画像が
表示される。ここでは,クロロフィル a 濃度(chlor_a)を
例として示す(Fig. 8)に示す。
右側(Fig. 9)の World Map Location ウィンドウには,衛
星データの範囲が地図上に表示される。また,その下の
Pixel Info ウィンドウには,中央の画像にマウスのポインタ Fig. 9 Display windows of World Map Location, Pixel info.
を置くと,そのポインタのピクセル位置(Image-X, Image- and Navigation Controls
Y),緯度経度,プロダクトの物理量が表示される。
画面の左下側の File Manager タブの隣に,Mask Manager,
Layer Manager,Color Manager が並んでいる。Mask Manager, 拡大・縮小・回転,カラーテーブルの設定,緯度経度線や
Layer Manager は,画像の Flag をオーバーレイするときに 海岸線・陸 / 海のマスク表示,画像間演算,イメージの出
使う。Color Manager は,画像の色づけに使う。 力について説明する。
これら 3 つの Manager については,5.4 節の画像の操作 ・画像の拡大・縮小・回転
のところで説明する。 画像の拡大・縮小・回転は,画像左上の操作パネルを使
5.3 画像に関係する情報(Global Attributes) う(Fig. 12)。前後左右方向の矢印は,画像を平行移動させ
HDF フ ァ イ ル に 含 ま れ て い る 情 報 を 見 て み よ う。 て,表示位置を変更に使う。下側のバーは,右にスライド
Metadata をクリックすると,SeaDAS に読み込んだデータ させると拡大,左は縮小に使う。円の部分をドラッグ &
に関連する情報を見ることができる。Global_Attributes を ドロップすると画像が回転する。これらはすべてマウスの
クリックすると,Fig. 10 のように多くの情報が表示され 操作で行う。
る。データの名前(Name)と情報(Value),データのタイ これら以外にも方法があり,虫眼鏡のマークをクリック
プ(Type)を見ることができる。例えば,プロダクトの画 して,画像上の範囲を指定すると,その範囲の拡大した表
像 サ イ ズ を 知 り た い 場 合 に は Number_of_Scan_Lines, 示に切り替わる(Fig. 3)。ホイール付きのマウスであれば,
Pixels_per_Scan_Line を見ることで,2030 pixels×1354 lines ホイールを回すだけでも拡大・縮小できる。
であることがわかる。 ・画像のカラーテーブルの設定
Band_Attributes をクリックすると,プロダクト毎の情報 画像の色づけは,Color Manager を使う。プロダクトに
を得ることができる。クロロフィル a 濃度の例を Fig. 11 よっては,自動的に色づけされるが,色づけやレンジを変
に示す。データタイプ(data_type)は 32 ビット浮動小数点, 更したいときに使用する。ColorManager ウィンドウでは,
物理量に変換するときの傾き(slope)が 1.0,切片(intercept) 色づけやレンジつまり最大値と最小値の設定の変更ができ
が 0.0,単位(Unit)は mg/m3 などが分かる。 る(Fig. 14)。Basic,Sliders,Table の 3 つの選択ボタンがあ
5.4 画像の操作 り,Basic ではあらかじめ用意されているカラーテーブル
SeaDAS は多くの機能を持っている。ここでは,画像の を選択できる。Basic の右上には,log スケール表示用の常
─ 143 ─
水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について
タンを押して,表示されるビューの中にある Orientation(方
向)を「Horizontal(水平)」か「Vertical(垂直)」に指定し,
「Create Layer」ボタンを押すと表示される。画像を拡大し
ている場合には,カラースケールが表示されないように見
Fig. 11 Band attributes view えるが,枠外にカラースケールがある。
・海岸線や緯度経度線の表示と陸 / 海域のマスク表示
海岸線の表示は,
画面上部にある「イタリアの地形風マー
ク」のボタンを押すと,マスク作成ウィンドウ(Fig. 15)が
表示され,Create Masks ボタンを押すと,海岸線描画が行
われる。緯度経度線は,
「井桁マーク」のボタンを押すと表
示される。
海岸線や緯度経度線などを含め Mask/Flag の情報は,Mask
Manager や Layer Manager に追加される。陸域をマスクす
る場合は,Mask Manager 上の LandMask にチェックを入れ
る。水深によるマスクは,
「イタリアの地形風マーク」の隣
Fig. 12 Navigation control panel on the image
にある「波のようなマーク」のボタンを押すと Bathmetry &
Elevation ビューが表示され,
「Create Bands and Mask」ボタ
用対数(Log10)ボタンがある。Sliders を選択すると,デー ンを押すと表示される。
タの頻度分布が表示され,頻度分布を見ながらカラース Mask Manager 上では,マスクの色とともに,透過率を変
ケールの変更ができる。Table では表示色と閾値を確認で えることができる。陸域/水域や水深によるマスクの色や
き,それらを直接,変更することができる。 透過率を自由に変更できる。
カラースケールの表示は,
「カラースケールマーク」のボ 表示した線やマスクを消したい場合には,Layer Manager
─ 144 ─
日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)
・イメージの出力
画像をイメージファイルとして保存したい場合には,
「File」->「Export Utilities」->「Image」を選択すると,
「Export
Image」画面が表示される(Fig. 17)。画像上でコントロー
─ 145 ─
水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について
の様々な処理コマンドを選択できるようなる。
Fig. 19 Command ‘l2gen’ control window
6.2 MODIS データの大気補正処理
ここでは,MODIS/Aqua のレベル 1B データ(L1B)から
レベル 2 データ(L2)を作成する部分(大気補正処理)を
例に説明する。この処理をするには,入力ファイルとして
L1B と幾何情報ファイル(GEO)が必要である。
L1B データと GEO ファイルは,レベル 1A データ(L1A)
Fig. 20 Command ‘l2gen’ processing in progress
から作成する。L1A データは,NASA の Ocean Color Web
site(http : //oceancolor.gsfc.nasa.gov)からダウンロードでき
る。ダウンロードした L1A ファイルは,bzip2 圧縮されて できる。衛星天頂角や方位角などの幾何情報,大気補正に
いるため,bzip2 を解凍できるソフトで解凍する。 必要なさまざまなパラメータ,大気補正処理中に計算され
L1A か ら GEO を 作 成 す る に は,「DataProcessing」- > るさまざまなパラメータも出力することが可能である。プ
「modis_GEO…」で「file」に L1A を指定し,
「Run」すれば すべて略語で記載されている。略語の説明は,
ロダクトは,
作成される。 おおむね http : //oceancolor.gsfc.nasa.gov/DOCS/MSL12/MSl12_
L1A か ら L1B を 作 成 す る に は,「DataProcessing」- > prod. html で確認できる。
「Run」すれば
「modis_L1B…」で「ifile」に L1A を指定し, なお,バージョンアップの度にさまざまなプロダクトが
作成される。L1B データは,1 km 解像度の L1B_LAC(バ 追加されており,web 上の説明にはないものもある。
ンド 8 以降),500 m 解像度の L1B_HKM(バンド 3〜7), 画面右下の「Open in the SeaDAS」にチェックを入れてお
250 m 解像度の L1B_QKM(バンド 1 と 2)の 3 つのファイ けば,処理が終了後,データファイルを自動的にロードし,
ルが作成される。 File Manager ウィンドウ上に表示され,画像表示,解析が
大気補正処理の L1B と GEO から L2 を作成するには, できるようになる。
「DataProcessing」->「l2gen…」で「ifile」に L1B_LAC を指 大気補正処理には時間がかかるため,
「Run」をクリック
定する。あらかじめ「File」->「Open…」で L1B データを すると,処理が実行中 Fig. 20 のウィンドウが表示され,処
開 い て い れ ば,そ れ を 選 択 す る こ と も で き る。す ぐ に 理の進行状況が分かるようになっている。
「Run」したいところであるが,L2 プロダクトの精度を上
げるためには,補助データを利用した方がよい。画面の中 7. データ処理プログラムのバッチ処理
央付近に「Get Ancilary」->「Get Ancilary」を選択すると,
必要な補助データが自動的にダウンロードされる。海氷, ここからは,上級者向けのデータ処理方法について説明
気象,オゾン,海面水温などのデータがダウンロードされ, する。バッチ処理を多少理解できる人向けの説明である。
実行時のパラメータとしてリストアップされる(Fig. 19)
。 GUI を使った処理では,1 シーン 1 シーンを対話的に処
この状態で,
「Run」を押せば,L2 ファイル中に標準プロダ 理しなければならないため,多数のシーンの処理に適さな
クトが出力される。 い。多数のシーンを一気に処理するためにはバッチ処理を
標準以外のプロダクトを出力したいときには,
「Products」 行う必要がある。
を選択して,出力したいプロダクトにチェックを入れる。 SeaDAS のデータ処理プログラムは,Python 言語や C 言
クロロフィル a 濃度 1 つだけでも 20 のアルゴリズムが登 語をコンパイルしたものが集まったものでできており,
録されていて,それぞれ選択することができる。波長毎の 個々のコマンドとしても実行できる。コマンド入力は,
プロダクトについては,出力したい波長を選択することが ターミナルを起動して行う。
─ 146 ─
日本リモートセンシング学会誌 Vol. 35 No. 3 (2015)
Table 2 Description of shell script file (l2gen.sh) Table 3 Description of multiple scene processing
(l2gen-5scenes.sh)
─ 147 ─
水域リモートセンシング用のソフトウェア(SeaDAS)について
る。 うな衛星データ処理アルゴリズムの開発者にとっては,処
modis_L1A.py は,L0 からレベル 1A(L1A)を作成する 理プログラムのソースコードを読むことで,最新のプロダ
python プログラム クトのアルゴリズムや処理上の工夫が理解でき,非常に参
modis_GEO.py は,L1A から,GEO を作成する python プ 考になっている。
ログラム
modis_L1B. py は,L1A と GEO か ら L1B を 作 成 す る 9. お わ り に
python プログラム
ここでは,L1B_HKM(500 m)と L1B_QKM(250 m)も SeaDAS は,衛星データの初心者から扱いに慣れたユー
出力している。 ザーまで幅広く利用できるフリーソフトウェアである。
echo から getanc.py は,l2gen 実行時に使うパラメータ作 SeaDAS は,処理,表示,分析,および品質管理のための総
成部分である。getanc.py は,補助データのダウンロードと 合的な画像解析パッケージであり,ここで紹介できたもの
補助データをリストアップする。これらの行の後ろにある は全体のほんの一部に過ぎない。
「>」や「>>」はリダイレクトで,出力をファイルに書き込 長年 SeaDAS を使ってきたユーザーは,未だにバージョ
む働きをする。 ン 6(V6)を使っている人も少なくないと思われる。バー
L2gen は,パラメータファイルを使って,L1B から L2 を ジョン 7(V7)は,V6 からユーザーインターフェイスが大
作成する。 きく変化した。これまでのユーザーにとっては大きな戸惑
このシェルプログラムを使って,例えば,MODIS の い 生 む 変 化 で あ っ た。V6 で 使 っ て い た IDL を や め,
A2012363035000 データをダウンロードから L2 作成まで BEAM と融合させ,Java ベースのものに切り替わったため
実行するには,以下のコマンドを実行すれば良い。 である。しかしながら,最新のバージョン 7.1 となってか
例 L0toL2.sh A2012363035000 なり使い勝手が改善され,V6 でできて V7 でできないこと
複 数 の シ ー ン を ま と め て 処 理 し た い 場 合 は,l2gen- も減りつつある。バッチ処理の部分は,shell ベースから
5scenes.sh で説明した能登同様に行えば,複数シーンのダ python ベースになったが,l2gen などの処理プログラムそ
ウンロードから L2 出力までできる。 のものは実は V6 とほとんど変わっていない。そろそろ
V7 に乗り換えても良いころではないだろうか。
8. ソースコードの利用 SeaDAS の開発は今も続いており,より便利に使える
ツールとして発展して行くであろう。衛星データの初心者
SeaDAS はユーザーインターフェイスも含め,すべてフ にとっては,扱いしづらい HDF や netCDF 形式の衛星デー
リーのソフトウェアであり,ソースコードも公開されてい タを簡単に表示できるツールであり,使い慣れると非常に
る。ソースコードを改編して,新たなアルゴリズムのテス 強力な解析ツールになり得る。この解説を読んで少しは
トや新たな L2 プロダクトの追加することもできる。その SeaDAS について興味を持っていただければ幸いである。
方法を記述したドキュメントも用意されている。筆者のよ
〔著者紹介〕
●虎谷 充浩(トラタニ ミツヒロ)
1994 年東海大学大学院海洋学研究科博士
(工学) 。1992 年東海大学開発工学部情報
通信工学科助手。1998 年同講師。2005 年
同准教授。2010 年東海大学工学部光・画
像工学科准教授。2011 年より同教授。東
海大学大学院海洋学研究科のころから,
海色衛星センサー向けの大気補正アルゴ
リズムの研究に従事し,OCTS,GLI,GCOM-C1 でも開発を担
当。日本海洋学会,日本気象学会等の会員。
E-mail : tora@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp
─ 148 ─