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電子 ビーム溶接の欠 陥発 生 および防止 に
関す る研究(第2報)
異 種 金 属 の 電 子 ビー ム 溶接 にお け る ビー ム の 曲 り
Mechanisms of beam (D-M) deflection observed in the cross sections of electron-beam-welded dissi-
Explanations based on mechanical missettings or several physical characteristics were rejected through
It was found that use of a magnetic shielding plate(having a small through-hole to pass the electron beam,
a patented process of United Airecraft Corp., U.S.A.), which was placed parallel to and near the surface of
the test plate to absorb the stray magnetic field, was effective to prevent the beam deflection.
Application of inverse magnetic field parallel to the welding direction to cancel out the opposite-
directional component of the stray magnetic field around the impinging point of the electron beam was also
Thermo electromotive forces of several combinations of dissimilar metals were measured. It was found
that
. 1) When the thermo e.m.f. at 800•Ž was lower than 5.5mV, the beam deflection was hard to distinguish.
2) When the thermo e.m.f. went up higher than 5.8mV at 800•Ž, the beam deflection became recognizable,
3) The beam (and penetration) was always deflected towards plus (+) metals.
A) Hot and cold junctions are formed in welding dissimilar metals, and large electric current flows due to
B) Stary magnetic field is formed in the upper space of the weld joint by this current. Interaction of the
electron beam and a component of the field parallel to the welding direction deflects the beam to the trans-
verse direction.
where •¬V800 is the thermo e.m.f. between two metals at 800•Ž and E is the accelerating voltage of the
beam.
材料 な ど,異 種 材 の 突 合 せ溶 接 時 に発 生す る ビー ム の 曲
1.緒 言
り(ビ ーム が 一 方 の 材料 中 に 曲 って 入 る現 象)の 原 因 に
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122 研究 論文 渡 辺,志 田,鈴 木,岡 村,妹 島:電 子 ビー ム 溶 接 の 欠 陥 発 生 お よ び防 止 に ……(第2報)
2.実 験 装 置 お よ び材 料
実験 には150kV×40mA高 真 空 型電 子ビ ー ム溶 接 機
を 用 い た.Table2は 供 試 材 料 の 化 学組 成 を示 す.
3.人 為 的原 因 の 消 去
3.1実 験方法
予 備実 験 にお いて 炭 素 鋼 と13Cr鋼 との 突 合 せ 溶 接 部
に ビー ム の 曲 りが 認 め られ た の で,本 実 験 に も この 組 合
せ を採 用 し,さ ら に比 較 の た め 同一 条 件 でSB42同 志
お よ びSUS50同 志 の突 合 せ 溶 接 を 行 な った.突 合せ 面
は いず れ も▽ ▽ 程 度 の機 械仕上 を行 ない 、 正 確 な ゲ ー ジ
Photo. 1 Examples of "D-M" Beam で直 角 不 良 の な い こ とを確 認 した.さ ら に供 試 材 は 十 分
Deflection
脱 磁 し虫 ピン に よ り残 留磁 気 の な い こ とを 確 認 した.な
今 ま で の諸 説 に筆 者 らの 推 論 を 交 え な が ら ビー ムが 曲 お 別 の 測 定 に よれ ば,こ の状 態 にお け る材 料 表 面 の 残 留
為 的 あ るいは 機 械 的 な もの と物 理 的 な もの とが 考 え られ 各 試 験 片 は ト リク レン脱 脂 後 さ ら に メチ ル エ チ ル ケ ト
るが,曲 り量 その も のが わ ず か で あ るの で,真 の 原 因 を ン(MEK)で 洗 浄 し,締 付 ジ グで 固 定 し,溶 接 チ ャン
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溶 接 学.会 誌 第44巻(1975)第2号 123
4.1実 験方法
(1)一 方 の 材 料 の 着磁
突 合 せ 溶 接 され る一方 の材 料 を 長 手方 向 に2∼24Ga
-uss(虫 ピンが 付 着 す る程 度)に 着 磁 し て溶 接 を 行 な っ
た.
(2)材 料 へ の内 部 磁 界 の 付 与
Fig.3に 示 す 磁 気 回 路 によ り,溶 接 線 の前 半 は1457
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124 研究論文 渡 辺,志 田,鈴 木,岡 村,妹 島:電 子 ビー ム 溶 接 の 欠 陥 発 生 お よ び防 止 に… …(第2報)
し か見 出 さ れ な か った.と くに この 場 合溶 込 み 深 さが 約
33mmで あ る こ と を考 慮 す れ ば 曲 り量 は さ ら に小 さ く
算 出 され る.
SUS27とSUS38あ る い はSUS50と を 溶接 した場
合 は,前 出 の 傾 向 とは 逆 にTable7に 示 す ごと くす べ
て 透 磁 率 の 大 な る方 向 に 曲 って い る.
る磁 界 の影 響 を排 除 す る た め実 験 用架 台 はす べて 非 磁 性
体 製 と し,さ らに 後 出 の磁 気 シー ル ドの 考 え方 を導 入 し Deflection; average of start, center and crater
て,試 験 片 上 部 空 間 の漏 洩 磁 界が 電 子 ビー ム に作 用 す る
のを 防 止 した. ま たSUS27とCuと の組 合 せ の ご と く,物性 値 が
非 常 に異 な る組 合 せ にお い て も ど ち らか 一方 ヘ ビ ー ムが
(3)透 磁 率 の異 な る材 料 の組 合せ
SB42,SUS38,SUS50,SUS27の4種 の材 料 のB-H 曲 る 傾 向 は 認 め られ な か った.
以 上 人 為 的 原 因,物 理 的 原 因 に つ き検討 の結 果,消 去
曲 線 を 求 め た と こ ろ,透 磁 率はSB42>SUS38≧SUS
50》SUS27で あ った.SB42とSUS38あ る いはSUS 法 的 思 考 に よ り溶 接 部 上部 近 傍空 間 に発 生 す る漂 遊 磁 界
50と の組 合 せ で は いず れ も透 磁 率 の 小 さ い方 へ 曲 って の 影 響 とす る説 が最 有 力 と判 定 され た.
十 分 脱 磁 した 材 料 を 用 い た 前 出の 曲 り傾 向 に変 化 は現 わ る.そ して そ の 対 策 と して,漂 遊 磁 界 を 吸 収 す るよ う十
れ な か った. 分 な大 き さを 持 ち,被 溶 接 物 にで き る だ け密 接 して設 置
ま た1457Gaussと い う 大 き な 内部 磁 界 を 与 え て も され た磁 気 シ ール ド板 の 使用 が効 果 的 だ と述 べ て い る.
Fig.3に 示 す ご と くTable5に 比 べれ ばわ ず か の 曲 り 筆 者 らはFig.5に 示 す 要 領 で こ の説 明 の 追試 を行 な っ
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溶 接 学 会 誌 第44巻(1975)第2号 125
た と ころ確 実 に効 果 が あ る こ とが わ か った(Photo.2)
.5.2逆 偏 向実 験
溶 接 部 の上 部 近 傍 に存 在 す る漂 遊 磁 界 の溶 接 線 方 向 成
分 が ビー ム の 曲 りの原 因 とす れ ば,外 部 か ら逆 方 向 に直
流 磁 界 を 与 え てKx成 分 を 打 消 せ ば 曲 りは 防 止 され るは
ず で あ る.Fig.6の 装 置 で逆 磁 界 を与 えた と ころSB42
とSUS50の 組 合せ の場 合3∼4Gaussで 曲 りを防 止 で
きた.
6.熱 起 電 力 の影 響
熱 起 電 力 によ って 生 ず る電 流 がD-M偏 向 の原 因で あ
Fig. 4 Effect of stray magnetic field on る こ とを 確 認 す る た め,各 材 質 を 組 合せ た 時 に生 ず る熱
beam deflection
起 電 力 を 測 定 した.測 定 は 各 材 料 を0.5φ に線 引 し,ア
ル ゴ ン雰 囲 気 中 で 最 高1200℃ ま で 徐熱 しなが ら行 な っ
た.そ の 結 果,Fig.7に 示 す よ う に,
は あま り大 きな 曲 りは 認 め られ ず,む しろ 人 為 的誤
差 が 入 り易 い.
(2) 800℃ 熱 起 電 力が5.8mVを 越 え る と曲 りが 認 め
られ る よ う に な り,曲 りは 熱 起電 力 と と も にほ ぼ 直
線 的 に増 大 す る.
(3)必 ず〓 極 を 示 す 材 料 側 に曲 る.
Photo. 2 Prevention of Beam Deflection こ とが わ か った 。
by Magnetic Shielding Plate
7.考 察 と 結 論
問 題 の ビー ム の曲 りが 熱 起 電 力 によ り被溶 接 材 中 を 流
れ る電 流 の作 る漂 遊 磁 界 の 作 用 で あ る こ とは 以 上 の事 実
か ら説 明 で き る(Fig.4参 照).
い ま 仮 に 内 径50mm,外 径100mm,厚 さ25mmの
リン グの1/2周をSB42で,残 り1/2周をSUS50で 作 り,
一方 の 接 合 面 を800℃ に も う一 方 を0℃ に保 った と す
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126 研究論文 渡 辺,志 田,鈴 木,岡 村,妹 島:電 子 ビー ム溶 接 の欠 陥 発 生 お よ び防 止 に … …(第2報)
程 度 の 電 流 は 流 れ て い る と考 え られ る. す る.
さ ら に どの 程 度 の漂 遊 磁 界が あれ ば 実 験 的 に認 め られ 以 上 の 実 験 よ り,筆 者 らが 問題 と した ビー ム の 曲 りは次
る程度 の ビー ム の 曲 りが生 ず る か を計 算 して み た.計 算 の よ う に して生 ず る ことが 明 らか と な った.
抵 抗 を考 慮 す べ き で あ るが,こ こで は 簡 単 な 仮定 に した 受 け て 偏 向 され て材 料 中 に突 入 す る.
が って 計 算 した.電 子 の 電 荷 をe,質 量 をmと し,電 (3)そ の た め に垂 直 線 か ら傾 斜 した ビー ドが 形 成 され
〓…………
(2) 本 実 験 で は1458Gaussま で)ビ ー ム の 曲 りに大 き な影
響 は な い.こ の こ と は鋼 材 な どの 強磁 牲 体 中 に ビー ムが
∴vy=e/mv0Hxt…………
(2') 突 入 し穿 孔 作用 が 生 じて い る付 近 は む しろ磁 気 的 に シー
ル ドされ た状 態 に な って いる こ とを示 す もの と解釈 で き
(1)お よ び(2')よ り,ビ ー ムが 被 溶 接 材 に突入 す る
る.
時,垂 直 軸 と なす 角 度 は
な お筆 者 らの 経 験 お よ びPhoto.1な どの 実 例 に よれ
〓…………
(3) ば実 は,い わ ゆ るD-M偏 向 には 大略3つ の 型 式が あ る
1/2mv02=eEよりv0=√2Ee/m…………
(4)
(4)を(3)に 代 入 して 整 理 す れ ば
〓
(5)
(5)式 の α と して ビ ー ド断 面 か ら求 め た ビ ー ム の 平
Fig. 8 Three types of beam deflection
均 的 偏 向 角0.5mm/20mm,e/m=1.761×107(C.G.S,
e.m.u.),E=150×103×108(C.G.S.e.m.u.),1=3cm(仮 本 報 で 取 扱 った の は タ イプAで あ り,他 の タ イプ は う
ま く再 現 で きな か った.タ イプ に よ りそ の 生成 の メ カニ
定)を お の おの 代 入 す る と
ズ ム に差 が あ り,と く に ビー ドが 途 中で屈 折す るB,Cに
Hx〓11Gauss
お い て は,材 料 内 部 に強 力 な磁 界 が 存 在 して い るの で は
を う る.こ の 値 は 逆 偏 向 実 験 で 求 め た3∼4Gaussよ り
な い か と推 察 さ れ るが,本 実 験 の 範囲 で は これ を 解 明 す
大 き い が,オ ー ダ 的 に 大 差 が な い.さ ら に 曲 りが 低 加 速
る こ とが で きな か った.今 後の 課 題 で あ る.
電 圧 で 大 き くな る との結 論 は筆 者 らの 経験 則 と も一 致 す
ま た本 実 験 で は 溶 込 み 深 さ20∼33mmの 範 囲で ほ ぼ
る.な おFig.7の 結 果 よ り 見 て,あ る一 定形 状 の試 料
に つい て は 板 厚 一ぱ い 近 くま で 溶込 ませ て い るが,非 貫 通 溶 接 の 場
合,溶 込 み が さ ら に深 い 場合,材 料 形 状 が 複雑 な場 合 な
A/p〓a∞〓V800…………
(6)
ど に は熱 起 電 力 によ る電 流 およ び漂 遊 磁 界 の分 布 が さ ら
起 電 力)な る 近 似 式 が 成 立 す る.Hxと1は〓V800の れ る.
関 数 と 見 な さ れ る の で(5)式 と(6)式 を 結 合 す る と〓
8.謝 辞
…………
(7)
電子 ビーム溶接研究委員会 の席上,本 報告 に有益 なご
を うる.(7)式 の 適 用 限 界 な どに つ いて は 今 後検 討 を要 討論 をいただいた大阪大学溶接工学研究所荒田教授,同
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第44巻(1975)第2号 127
溶 接 学 会 誌
員 会 資 料,EBW-24-71(1971.4.10)
松 田 助教 授 ほか諸 先 生,本 報 告 の 公 表 な らび に実験 の推
2) 荒 田:電 子 ビ ー ム熱 源 の特 性 とそ の溶 接 技 術 開 発 に 対 す る展 望,溶
進 に多大 の 援 助 を い た だ いた 当 社 佐 々木 技 師長,溶 接 実 接 学 会 第6回 シ ソポ ジ ウ ム資 料(溶 接 学 会 誌,Vol. 41, No. 11
験 を担 当 され た鴨 志 田君,岩 下 君 に深 謝 の 意 を 表 す る. , p, 1348)
3) AWS:Welding Handbook (6th ed.) Section 3A, p. 47.
62∼47. 63(1970)
参 考 文 献
4) 特 公:昭45-29960,出 願 昭42-12-12,公 告45-9-29,発 明者
次 号 予 告
資 料
インプ ラン トテス ト 松 井 繁 朋
研究論文
溶接金属の靭性におよぼす窒素 の影響……………………………………{伊藤慶典香山晃
{春日井孝昌稲垣道夫溶接熱サイク
{益本功赤石徹細線と印刷回路板と
初層すみ肉溶接における残留応力の割れの形熊について………………………………………{上田幸雄福田敬二中長
溶接アークの最大長さにおよぼす風向風速の影響(第3報)………………………………棟 徹 夫
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鋼材再現溶接熱影響部の変熊挙動におよぼす成分元素の影響(第3報)……………………………
鋼材および溶接継手の3%NaCl水溶液腐食割れに関する研究(第1報)………………………………