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台湾の通信事業〜中華電信の発展〜        https://www.submarinecablemap.

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0. はじめに 1. 通信事業の沿革
前回の発表では、台湾のハイテク企業が経済発展を支えていることに触れた
ため、今回は戦前から現在に至るまでのインフラ産業(金融、通信、建設など) ○戦前の通信事業(清朝〜日本統治)
に着目したいと考えた。中でも、通信事業に関する資料は他と比較した際に少 ・1877 年福建巡撫(省知事)丁日昌が台湾の府城(台南)から安平港および打
ないので発表テーマとした。 狗港(高雄)までの架線電線を敷設→公的な官報の通信
・1884 年劉銘傳が台湾巡撫に就任し(~1891)、1886 年から台北から台南間の
○通信とは
電線の敷設→一部民間も
自宅の電話機から電信柱、そして地中ケーブルを経由して、電話局までつなが
り、電話局内にある電話交換機と相手の電話局内の電話交換機がやり取りす ・1887 年淡水から福州 111 哩(マイル、180km)、安平から澎湖までの海底回線
ることで、通話できるようになる。携帯電話の場合は、付近の無線基地局から有 の開通→1971 年の宮古島民遭難事件や海外諸国への警戒がきっかけ
線ケーブルを伝って情報を伝達している。 (松浦 2005)  
また、高い位置や回線の整備されていない場所、災害時でも使用できるのが衛
生通信。しかし、ケーブルによる通信と比較し、高度 36,000km の静止軌道上に
・1895 年日本による台湾の植民地統治が開始→海底回線の官有者・私有物
問題→1898 年に日本政府が金十萬円で買収
・淡水〜蘇澳(宜蘭)〜恒春(墾丁)間の架線電線を敷設→電話受信機数が
2,431 世帯から 2 万 506 世帯へ、「もしもし」を使用。
・1897 年海外との初の通信回線網、那覇から淡水の通信回線が開通
・1900 年「電話交換局官制」を交付し交換局を台北、台中、台南に設置
右)交換手の
様子
あるため、通信遅延時間が長い。
国際通信ネットワークは、ほとんどの場合 左)台北電話
が海底ケーブル通して使用される。2021 年 交換局
現在、世界の海底には 447 本の海底ケー ・1906 年清朝
ブルが張り巡らされており、総距離約 が「郵傳部」
9400km ある。 を設立し、郵
政、海運、通信などを管理
→1912 年の中華民国設立により、「交通部電信総局」へ
・上海、大連、香港、マニラとの回線開通
・1940 年に台北と上海間、1941 年に台北と大連間の無線電の通話業務が開
始→戦時中の爆撃、破壊などによって通話業務が中止
○戦後の通信事業 3 国際通信回路が 867 増え、日本、アメリカ、イギリスなどとの世界主要
・第 2 次世界大戦における米軍の爆撃による損害で、西部では台北と嘉義間 国・地域と回線で直接連結し、国外ネットワークが強化された。
の通信回線、東部では台北と花蓮間などの通信が不通に 4 「郷郷有電話」「村村有電話」
・1945 年 10 月 25 日に台湾が中華民国政府に返還された後、同年 11 月 1 日
に台湾省行政長官公署交通処は「郵電管理委員会」を設立。(いずれの時 3)台湾電信管理局の改組(1981 年-1994 年)
期も交通部電信総局が統轄) 権威主義体制から民主主義体制へ
・戒厳状態で、『戒嚴時期電信法』、『動員時期電信器材管制弁法』、『動員時
1)台湾郵電管理局(1946~1949 年) 期電信監察実施弁法』などの特別法に拠り国防部及び警備総部による通
・1946 年交通部電信総局傘下で中国全国を 9 つの区の電信管理局、6 つの要 信事業への介入が行われていた
都市に電信局、1 つの国際電信台に分け、新疆省に電信管理局、台湾省に ・人口増加や情報時代の到来により通信業務が大幅に増加→台湾電信管理
郵電管理局を設け、通信事業の発展を促す。 局を北区、中区、南区、国際、中距離の五つの管理局とデジタル通信、電信
・同年 5 月 5 日に「台湾郵電管理局」を設立し、台湾の郵便業務および通信業 研究、電信訓練の八つの付属機構に
・1986 年「郵便・電信組織企業化研究」→交通部所属の各部署のうちどの部
務を担当するようになった。
署を民営化すべきか、スケジュールなど
・1991 年政務委員(無任所相)郭婉蓉が電信法草案を提出
2)台湾電信管理局(1949~1980 年)
・1994 年民間団体は、「電信法修正草案民間版」案を提出→通信事業の自由
・1949 年 4 月 1 日に台湾郵電管理局は郵政業務と通信業務に分けられ、通信
化、国際化が早く進展するように促す
業務担当の部署として「台湾電信管理局」を設立。交通部電信総局に所属
・1993 年職員権益補償弁法
し、台湾のすべての通信事業を統轄。
・同年 11 月に国共内戦に国民政府が敗れ、交通部電信総局は国民政府とと ・1994 年地方電信局団体は通信民営化の反対決議、中華民国全国労働組合
もに台湾に移転。 (総工会)も民営化反対の姿勢
・「第 1 次電信建設 4 ヵ年計画」(1953-1956 年)
・「第 6 次電信建設 4 カ年計画」→石油危機の勃発および 10 大建設の実施に 4)中華電信の公営事業化(1996 年-2004 年)
よって、2 年半の実施で中止(1973 年-1975 年) ・1996 年 1 月 16 日に,立法院(国会)で「電信三法」が承認→1996 年 7 月 1 日
・「第 1 次電信 6 カ年中期計画」(1975 年 7 月~1981 年 6 月) に中華通信股份有限公司が正式に設立
1 市内電話の加入世帯数は 1975 年度の 68 万 6000 世帯から 1981 年度 民営化の道に推進する通信事業自由化の第一歩を踏み出した
 電信三法:「電信法」「交通部電信總局組織條例」「中華電信股份有
の 261 万 2,000 世帯に、年平均増加率は 25%であり世界トップクラスの
限公司條例」
増加率を果たす。
2 電話受信機数は 1975 年度の 101 万台から 1981 年度の 353 万 7,000 ・李登輝総統が,公営事業は 5 年内に民営化を完成する必要があると発表→
大型公共事業は持株を民間に売り出す方策
台 増 え た。 特に 人口 100 人 当 た り の 電話 受信 機数は 1975 年 度の
・1997 年 2 月に行政院長(首相に相当)の連戦は、中華電信の民営化すること
6.3 台から 1981 年度の 19.6 台に達し、平均約 5 人に 1 台の電話受信機
を発表→2000 年末以前と 2001 年 1 月~6 月の 2 つの段階に分けてそれぞ
の計算になった。当時、台湾の電話受信機の普及率はアジア諸国のうち、
日本に次ぐ高い普及率をあげた。 れ 33%の中華電信の持株を放出する方針を打ち出す
公営事業の民営化の定義:政府の株券を民間に売り出し、民間の持株比率
が 50%以上にすること。公開的、公平的に他の民間企業とともに競争を行う ① 政府から政策的任務が解除され、必要が生じた場合委託や補助金の供
こと。 与の方式によって政策を実施すること。
② 独占的に経営による特権を廃止し、民間企業に開放して自由化競争を促す
こと。
③ 利潤目標に対する貢献度に応じて従業員の個々の賃金,昇格,賞罰
国際的な公営事業の民営 労働組合によるデモ ポーナスなどを個々の業績に連結する、国家公務員という一生の安定的な
化推進の動き 雇用保障をなくす。
衝突 ④ 理監事は専門知識および豊富な経験を持ち、彼らに実権を供与し運営する
中国の改革開放政策による国際的な地位の向上や日本の日本電信電話公 こと。
⑤ 公営事業に与えられた免税の特権を撤廃し民間企業と同じように税金
社(現 NTT グループ)の民営化などの国際的な公営事業の民営化推進
を支払う義務が生じること。
の動きから台湾国内でも民営化への動きが高まった。一方で、電信総局に ⑥ 民主的な参加方式を採用し、充分な権限を企業トップに譲渡する。企業
勤務していた人々は、公務員から企業の一社員になることへの反発で幾 のトップおよび関連の主管はビジネスの成否の責任を負うこと。
度も労働組合によるデモが発生した。また、事業の経営権を掌握した場合、 ⑦ 責任中心の制度を実施し、関連の主管はコストの低減、販売の努力、利潤の
流用可能な資金は相当大きなものとなり、社会に混乱をきたすこともあ 創出などの責務を負うこと。
る。(北波 2008)
○中華電信の SWOT 分析および戦略
5)中華電信の民営化
2005 年 8 月に中華電信の株の政府保有率が
50%以下となり、十年近く進めてきた公営通信
事業の民営化が完了した。しかし現在も政府
が 33%を保有している最大株主であり、現在
でも役員の一部が交通部より派遣されている。

○公営事業と民間企業の違い
項目 公営事業 民間企業
手続き 複雑で時間がかかる 比較的容易
最終責任者 立法機構 理事会、株主が損益被る
競争力 弱い 強い
給与 法令の規定 インセンティブ有
年齢構造 高齢化傾向 幅広い

2.  中華電信の企業戦略および分析
公営事業は様々な問題を抱えており、生存発展を図るために、民営移行の前に
経営の改革および経営体質の改善が必要だとした。(朝元 2016)
(朝元 2016 より作成) ・民報 台灣什麼時候可以打電話?
https://www.peoplenews.tw/news/ecbd7783-bf73-4023-9123-7a9c4dcdd575
・中華電信 HP・經營發展
https://www.cht.com.tw/home/cht/-/media/Web/PDF/Sustainability/CSR-
Report-Download/CSR/2008/97_3manage.pdf

                

参考文献
・台湾企業の発展戦略〜ケーススタディと勝利の方程式
 著:朝元照雄 出版日:2016/07/25
・台湾における海底通信の創始
 著:松浦章 出版日:2005/07/25
・第5章 台湾における公営事業の民営化
著:北波道子 出版年: 2008

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