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交通論A

(第7回/全13回)
2023年5月30日(火)
via Online
松田琢磨
電子メールアドレス:tmatsuda@ner.takushoku-u.ac.jp

1
オンデマンド授業,疲れた思たら,
一旦停止,休み休み受講してや

休み休み

2
第七回の内容

• 前回のまとめ
• 前回のコメントに対するレスポンス
• 講義テーマ:外航海運の現状と課題(3)
• 外航海運業と政府のつながり(2)
• 世界における政府と船社の関係
• 【参考】読書・論文ガイド
• 【参考】第8回の用語集

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第7回のまとめ&穴埋め(1)
• 戦争中は臨時船舶管理法の施行以降,徐々に[1.国家管理]が強化された.
• 戦後,100総トン以上の日本船舶は連合国総司令部(GHQ)の管理下におかれ,海運
の経営は[2.国営状態]となった.海外航路の就航も厳しく制約された.完全な民営化
が認められたのは1950年のことである.
• 戦後の日本の海運企業は[3.戦時補償の打ち切り]や財閥解体もあり,財務経営面で苦
境に立った.
• 占領政策の転換後,海運業に対する風当たりも緩和され,[4.計画造船 ]の採用が認め
られた.これは,1947年から1987年まで続いた.これは,政府が各年度の船種別建
造量や資金計画を決定,建造を希望企業に認可した場合,必要資金の相当部分に対し
て財政資金を融資する制度であった.
• 1950年代後半~60年代前半,高度成長期にもかかわらず,日本の海運会社は業績悪
化しており,[5.運輸省]主導で海運業の国際競争力強化と負担軽減が計画された. 4
第7回のまとめ&穴埋め(2)
• 海運業の国際競争力強化と負担軽減を目指すため,1963年に[6.海運二法]が施行さ
れた.

• さらに,[7.海運集約]によって,1964年に主要船社12社が6グループを構成するよ
うになった.その後海上輸送量が順調に増加し,海運会社の財務も改善した.

• 1964年以降の体制は日本の海運会社間の提携,協調を促進したが,80年代になると,
環境変化への適応遅れなど弊害が目立つようになった.1985年には海運造船審議会
による答申で,[8.自主性]を認める規制緩和の方向に政策が転換した.

• 主要船社は90年代に6社から日本郵船,商船三井,[9.川崎汽船]の3社へ集約された.
これらは邦船三社と呼ばれている.

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前回のコメントへのレスポンスや

前回のコメント

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前回のコメントに対するレスポンス(1)
• 今回は動画・資料のアップが早くてとても助かりました。ありがとうございました。この調子でよろしくお願いしま
す。→はい.
• 課題動画を見て非経済的な理由から低価格を実現していることがまさに日本のお客様は神様という考えを
表しているなと感じた。非経済的な理由から値下げをしているため価格を上げたくても顧客は納得しにくいた
め負のスパイラルに陥っているのではないだろうか。日本が島国で、様々な分野で資源などを自給自足出来な
い限り今後も海運に頼っていくため企業は対策に力を入れていかなければならないし、個人(ましてや学生
である私)にできることは少ないとは思うが今後も関心を持ち続け情報を集め続けていくことが大切であると
感じた。(類似のコメント複数)→お客様は神様ではない,というのは私の授業を通じて学んでほしいことの
一つです.交通や物流は例の一つだと思って学んでいただければ幸いです.
• また関係ないですが、先生が授業冒頭のコメントに対するレスポンスに書き加えることができる大体のアンケート
提出期限が分かるようでしたら、教えていただきたいです。→基本的に交通論のスライドは月曜日の夜に作っ
ています.ただ,日曜日に作ることもあるので,日曜の朝までにコメントがあれば確実に見ます.
• 私は来年から国際物流企業に就職するので聞いたことのあるキャリア企業がたくさんあって興味深い講義でし
た。→ぜひ頑張ってください!
• 月曜日に参加授業があるようですが、火曜日も通常通り授業があるということでしょうか。授業があり参加で
きない場合は、課題動画を視聴しなければいけないでしょうか?zoomに参加すると課題を提出しなくても点
数がもらえるということでしょうか。→月曜日は希望者のみということでお願いしています.参加できない場合は
録画を見る形をとる予定です.zoomに参加しても特に点数がもらえるわけではなく,就職活動に興味がある
方は個別にアプローチできるという程度のことです.
• 途中途中に出てくる緑の服の男の子の小まとめというか、意見がとても好きです。色々なキャラを増やして欲し
いです。。 →そういうのができればいいのかもしれませんが,今の私の能力では現状が手一杯です.すみません.
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前回のコメントに対するレスポンス(2)
• 内航と外航で政府との繋がりの残り方に差が出てきたところでやはり似ているようで違う職種なんだと実感した。外航は
世界の情勢がほとんど直接影響する反面、内航は外からの影響がありつつもある程度国内でどうにかするものなので政
府との繋がりが残りやすいのかと思った。→ご指摘の通りだと思います.外航は世界情勢の影響を強く受けますので,政
府からの影響は外れやすいと思います.
• 荷主のリスク管理が行えていればコロナ禍でコンテナ不足になるということは予測できたのではないだろうか。企業価値の
維持や損失を出さないためにもリスク管理体系を日本全体の船舶会社は報告しあったりして統一したほうがいいと思っ
た。→ここは難しくて,おそらく後半で言っているところをやってしまうと違法なんです.ただ,情報を共有することは重要で,
様々なサービスが開発されて競争しています.AITのプレゼンでもそういった話が出てきます.
• 日本の外航海運産業の歴史についてを了解しました。海運体制の形成から瓦解までの過程も学んだ。先生に今海運
が行っている新制度は何なのか、海運集約体制と何が違うのか、何を変えたのか教えていただきたいです。 →これにつ
いては今週と次回で学習します.これからまた明示的な政府の関与が起きることな可能性はあるんでしょうか?というコメ
ントありましたが,おそらくないと思います,という話です.
• また、不況の中でも商船三井だけが配当を出せたとの説明がありましたがこれには何か特別な理由があるのでしょう
か?冒頭に出てきたリーファーコンテナは中の物を冷やすための設備がついているはずですが外部電源などで電源を供給し
ているのでしょうか?→これは日本郵船のことだと思います.配当は同じ利益水準でも出すケースと出さないケースがありま
す.日本郵船の方が頑張って配当を出していたということだと理解しています.リーファーですが,船には発電機があるので,
そこから電源をもらっています.
• 円高で競争力が落ちるのは意外でした。今は円安なので競争力が強いという認識でよろしいでしょうか。→ドルで稼いで,
円で費用が掛かる(コストのドル化もだいぶ進んではいますが)ので,どうしても円高になると不利です.円安で利点は
得られている状況です.ただ,昔ほどメリットはないという話です.
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前回のコメントに対するレスポンス(3)
• 三光汽船は海運集約に参加しなかったとあったが、ほかの企業が参加したのは赤字経営を取り戻すためだったので、三光汽
船は参加をしなくても十分な利益を出すことができたということだと思った。しかし、ほかの企業が協力をしている中でどうして三
光汽船は一社で黒字を出すことができたのかが気になった。ほかの企業とは異なる運搬の仕方や異なる物品を運送していた
のでしょうか? →三光汽船はたしかに,ここからも受かるという算段があったので参加しなかった側面が強いです.このころはタン
カーも談合体制だったので,運賃を少し低くすることで多くの顧客を奪ったりできました.船の安い時にたくさん船を買っておくこと
でたくさんサービスを提供できたというのもあります.あまりこの授業では説明しませんが,海運会社が利益を稼ぐポイントの一つ
に,「安い価格で船を買う」というのがあります.こうすることで減価償却費を相当下げられます.
• 今回の講義では、海運集約において政府が業界再編を大規模に行った特定目的は、どのような内容なのか疑問に思いまし
た。その後、海運会社の財務も改善しましたが、私は政府にとって海運会社の管理を簡略化する為なのではないかと考えまし
た。 M&Aや運営に役所が関与していたという部分に物凄く驚きました。(中略)当時の海運業界で働いていた人は自らの
企業のM&Aや運営に役所など政府が関与してくることをどのように捉えていたのか気になりました。(類似コメント多数) →
基本的には,自国の産業が栄えてほしいという気持ちが前提です(それほど悪意があるわけではないと思います).60年前
の段階では,政府が民間の経済活動に介入することは,今に比べると問題がないと考えられていたというのも背景にあります..
• 現状だけを学ぶのではなく、過去の歴史を学ぶことの重要性を感じることが出来ました。今回の海運の歴史のように、自分が
進みたい業界の歴史は学んでおいた方が良いでしょうか?また(類似コメント多数) →歴史は知っておくと,様々なものの前
提や成り立ちがわかるので,読み物をサラッと読むことだけでもおすすめです(受験終わっているので覚えなくても良いし,気楽で
す).
• 課題動画では、日本にコンテナが集約されていないということが言われていました。自分はシアトルとシカゴでコンテナが置かれ
ているのを見たことがありますが、品川や横浜、大阪などの港と比べ物にならない数のコンテナが置かれていると思ったことがある
ので、共感することが出来ました。特にシアトルの港の規模の大きさには感動しました。自分も海運業界に関わる可能性も大き
くあると思うので、関わった時に少しでも良い影響を与えることが出来たら良いなと思いました。→シアトル行ったことあるんです
ね.うらやましい(行きたい).ぜひ,頑張ってください!
• アンドレスの退団が決まった時にアンドレスの写真が出てきたために涙が…(類似コメント複数)→これからも現役は続行す
るようなので応援しましょう.もっとも最近は同じ大学出身だったり,ということもあり,三笘が気になっております.

9
じゃあ,今日の授業始めるで

交通論
外航海運

※今回の写真は,日本郵船の長沢仁志元社長です.

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第7回の授業テーマと目的
• 講義:外航海運の現状と課題(3)
• 目的:国外海上輸送(外航海運)について説明を加えます.今回
は世界における外航海運産業と政府のつながりについて基礎知識
を得ることが目的です.

外航船ではありませんが...
コロナの影響で劇場船「STU48号」が
一昨年に運用終了しています
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今回と次回は各国の外航海運会社で
政府の関係が違うかが一つのポイントや

おっさん

12
世界で制度が変わる中で外航海運会社と
政府の関係の変化も注目してや
関係の変化

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世界における海運業と政府のつながり(1)
• 日本における海運業と政府の関係:復習
• 戦後,日本の外航海運業は国家の影響が強かった

• 80年代以降,海運企業の自主性を認める方向に規制緩和→関係の希薄化

• 世界経済における規制緩和の流れが背景

(左)英・サッチャー首相,(中)米・
レーガン大統領,(右)中曽根首相
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世界における海運業と政府のつながり(2)
• 世界における(外航)海運業と政府の関係(1)
• ①国営・国有海運会社を持ち,かつ政府の主導権が強い:

• ②国有海運会社を持つが,比較的政府の主導権が弱い:

• ③国有会社を民営化:

• ④民営企業しかない:
• 4-a. 政府が明確な方針を持つ

• 4-b. 政府が明確な方針を持たない

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日本の外航海運企業は50年代に①から
②,80年代に④-bに移行した
50年代 80年代

① ② ② ④

※内航は②が近い状態と言えます
(国営船社はありませんが,多くの会社が国と船を共有しています)
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世界における海運業と政府のつながり(3)
• 海外における海運業と政府の関係(2)
• ①国営・国有海運会社を持ちかつ政府の支配権が強いケース

• 貿易政策(通商政策),軍事政策と関連

国営企業 国有企業

政府の一機関 株式会社
(経営権も持つ) (政府は株主)

影響は直接的 影響は間接的

国営企業と国有企業の違い 17
鉄道で言えば,戦前の国鉄は国営会社,
今のJR北海道や貨物は国有会社や
戦前の国鉄 JR北海道

① ② ② ④

※戦後,国鉄は国有会社になり,その後JRとして分割されましたが,
JR北海道,JR四国,JR貨物の三社は現在も独立行政法人を経由した国有会社です.
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世界における海運業と政府のつながり(4)
• 海外における海運業と政府の関係(3)
• 国有海運会社 :政府による海運会社の株式保有→政府系企業や保有機関を通じた間
接的保有

指揮・命令 政府系企業 株式保有


政 府 ・ 海運会社
保有機関

株式保有
民間株主

間接的に株式会社の株を保有
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民間が国有会社の株式を保有できる場合
政府の議決権を大きくすることが多い
拒否権

① ②

※政府機関が持つ株式に拒否権があるケース,民間が保有できる株式に議決権が
ないケースなどがあります. 20
世界における海運業と政府のつながり(5)
• 海外における海運業と政府の関係(3)
• ①国有海運会社があり,政府の主導権の強いケース:政策と関連
• ロシア(Sovcomflot(ソブコムフロット))→エネルギー貿易,軍事

• 82.8%をロシア政府が保有

ロシアにはFESCOという民間会社もあります
21
世界における海運業と政府のつながり(5)
• 海外における海運業と政府の関係(4)
• ①国有海運会社があり,政府の主導権の強いケース:政策と関連
• 中国(COSCO(中国遠洋),シノトランスその他)→国有船社
• 中国には国有だけではなく,地方政府保有の海運会社も

中国の国有船社は日本法人も
持っています 22
中国では国務院国有資産監督管理委員会
なる国有企業を管理・監督組織がある

国資委

※国有企業のなかでも国資委が管理する企業のことを「中央企業」と言い,コス
コやシノトランス(の親会社)は中央企業に含まれます. 23
昔コスコには孫家康という
役員がいたんや
孫家康氏

① ②

※本人から聞きましたが,本当に徳川家康から名前をとったそうです.
24
世界における海運業と政府のつながり(6)
• 海外における海運業と政府の関係(5)
• ②国有海運会社があり,政府の支配権が比較的弱いケース:救済目的
• ドイツ(ハパッグロイド)→ハンブルグ市が約10%の株式保有(市による救済)

• 台湾(陽明海運)→元国営船社,現在は間接的に約48%の株式を保有(政府による救済)

• 韓国(HMM)→韓国産業銀行と韓国海洋振興公社が株式を62%超保有(政府による救済)

• シンガポール( PIL )→2020年,シンガポール政府が出資(政府による救済)

経営危機に陥った企業の救済が原因となるケースが中心
25
救済目的の場合,株式を多く持ってても
あまり発言はしない
政府の支配権

26
韓国や台湾など貿易・物流を重視する
国・地域でも政府介入が多いねん

貿易・物流重視

韓国はかつて日本が行った「海運集約」のような再編を
政府中心に何度も試みています 27
韓国は造船業が盛んやさかい
造船業の雇用維持も目的や

造船業

注:造船業は海運業より労働集約的で,従業員の数が多い.
また,韓国は造船業は世界第二位の生産規模で,政府も重視しています
28
シンガポール政府はファンド経由で
けっこう企業持っとんねん
シンガポール 政府系
ファンド

テマセク・ホールディングスはシンガポール政府出資のファンドで,
多くの会社の株式を保有しています. 29
シンガポールは一方で税金を安くして
海運企業を集めとる

ONE Sealand
Asia

シンガポールは法人税率がゼロであるうえ,荷物の集まる港,
海運関連人材の豊富さから海運企業が多く集まっています 30
シンガポールも物流重視の国やさかい
先進的な取り組みが多いねん
23区ほどの
小さい国です

シンガポールは船の良く通る場所に位置するため,港も大きいです.
石油化工などの産業も盛んです.
31
世界における海運業と政府のつながり(7)
• 海外における海運業と政府の関係(6)
• ③国有会社を民営化した企業があったり,それに類する海運会社があるケース
• フランス(CMA-CGM)→元国営海運会社CGMが民間企業と合併
• オーストラリアの国営船社も買収

• シンガポール(NOL(現:CMA-CGM))→元シンガポール国有船社(今は売却済み)

• ブラジル(ヴァーレ)→元ブラジル国営資源会社,船舶も多数所有

• 香港(OOCL)→元香港総督の一族による経営,今はCOSCOの子会社

32
CMA-CGMもフランス政府から
救済措置を受けとる

フランス

33
ヴァーレは鉄鉱石の生産で
世界的に有名な企業や
Vale

34
④は先進国に多い形態で,
民間企業しかない状況や

35
④の国では,政府と海運企業との関係は
通常薄いねん

「薄い」はthin

36
④のパターンはさらに分けられるねん

分ける

37
世界における海運業と政府のつながり(8)
• 海外における海運業と政府の関係(7)
• ④-a. 政府が海運業への明確な政策を持つ

• 安全保障に関する徴用と関連:米国 (政府主導)

• 便宜置籍国:パナマ,マーシャルなど(民間主導)
• ほかの国・船主の子会社がほとんど

• ペーパーカンパニー

38
まず,米国について紹介させてや

カモンベイビー

39
世界における海運業と政府のつながり(9)
• 米国における海運業と政府の関係(1)
• 米国に本拠を置く有名海運会社はない

• しかし,複数海運会社が米国籍船を保有,米国人船員を雇用
• 米国籍船があれば,非常時に管轄権を持つ船舶と船員が確保可能

• 一方で米国人船員の人件費や,米国籍船の維持費は高い

40
海外における海運業と政府のつながり(8)
• 米国における海運業と政府の関係(2) (読書ガイド(a))

• 連邦政府は海運産業を「国家緊急時に軍事輸送を支援する民間商船隊」と認識

• 外国の海運会社が米国籍船を持つための補助制度が存在
• 米国の海運会社を買収した企業が中心

デンマークにある,世界最大のコンテナ船社「マースク」は99年に米
国のシーランドを買収した経緯もあり,米国籍船を保有しています
41
このあたりの考えは①で
示した国と似とる
類似

42
世界における海運業と政府のつながり(10)
• 米国における海運業と政府の関係(2) (読書ガイド(a))

• 米国籍船維持のための補助制度

• Cargo Preference:政府調達物資の一部を米国籍船で輸送する義務

• 平時でも高めの運賃で米国政府の貨物を運べる

• 海事安全保障プログラム:国家の非常時に米国籍の外航船舶を徴用する制度

• 平時でも米国政府から補助金を受けられる

マースクの米国籍船の例 43
世界における海運業と政府のつながり(11)
• 米国の外航海運政策 必要と考えられる船舶には
米国籍船を持つデメリットを
外国海運会社
補助金で埋め合わせる
借りている船
米国籍船 他国籍船
(用船)

連邦政府貨物の 優先・高い 普通 普通 Cargo Preference


運賃

連邦政府からの あり なし なし 海事安全保障プログラム
補助金

船舶の維持費用 高い 低い 低い 3種類の国籍の
船舶を組み合わ
船員の賃金 高い 低い 低い
せて運航させる
非常時の徴用 あり なし なし
44
米国は,外国の会社でもええけど,
米国籍船を補助金で確保しとんねん

補助金

45
徴用以外は自由化しとって
それもこれも安全保障のためや
安全保障

46
次は便宜置籍国の話や

47
世界における海運業と政府のつながり(12)
• 便宜置籍国のケース(1)
• 便宜置籍:税金・賃金などで有利な国に便宜的に船籍を移す動き
• 便宜置籍国:便宜置籍船の登録ができる国
• パナマ,マーシャル諸島,リベリア,香港など

• 税金収入や登記料など便宜置籍国にもメリット

マーシャルは日本にも登録事務所があります
48
便宜置籍は国の名前を使った
サービス販売という性質が強いねん
経済目的

49
せやさかい,海運会社の行動に
口出しせんのや

50
次は④のあと一つのパターンや

あとひとつ

51
世界における海運業と政府のつながり(13)
• ④-b. 政府が海運業に対する介入方針を今のところ持っていない
• 日本,イギリス,スウェーデン,ギリシャ,ノルウェー,オランダ,ベルギー,カナダ,デンマーク,スイス,イタ
リア,バミューダ,etc.

• 海運に基幹産業として経済活動をしてほしい国もある一方,税収さえ入ってくれ
ばいい国・地域も

マースク MSC ワレニウス・ウィルヘルムセン フロントライン


(デンマーク) (スイス) (スウェーデン,ノルウェー) (バミューダ) 52
この分類には海運の先進国が多い

トップランナー

53
一方で,税金を安うする国,
先進国でない国も含まれるんや

安 い

54
日本は,特別扱いはないわけではないが,
海運会社側の恩恵にはなってない

税金の高い国

※税金の免除など様々な措置はありますが,日本の海運会社や
船主の多くは,世界と比べて恵まれているとは感じていません
55
日本は介入もなく,救済もないという
点でかなり関係は薄いと言える

薄口政治評論家

56
日本の外航海運会社と政府の関係は
元カレと元カノみたいや

政府と海運会社

※この話をある海運会社の人にしたら,「確かにそんなとこあるかも」という反応をされました.
57
さて,世界では経済活動の自由化が進み,
日本も影響を受けてきたんやが

自由化

58
一方で政府との関係は,世界では
意外と強いところもあんねん

政府と海運会社

59
日本は両者の関係が薄いわけや

政府と海運会社

60
次回ももう少しこの話や

おっさん

61
ほな,ありがとう!
今回もアンケート&穴埋めよろしく!
穴埋め
第7回のまとめ&穴埋め(1)
• 政府と海運会社の関係を分類すると,①国有海運会社を持ち,かつ政府の支配権が強
いケース,②比較的支配権が弱いケース,③国有会社を民営化するケースと④民営企
業しかないケースに分類される.
• 海外における海運業と政府の関係は,その国の通商政策や[1. ]と関連してい
る.
• 国有海運会社のある国の場合,政府が直接海運会社の[2. ]を持つより,保有機関
を通じた間接的保有が行われることが多い.
• 国有海運会社がある場合,政府の支配権が比較的弱いのは,経営が行き詰まった海運
会社を[3. ]するケースである.これらは貿易や物流を重視する国でよくみられる.
• 国有海運会社を持たないケースでは,通常政府と海運企業の関係は薄いが,米国では
補助金を使った政策で,[4. ]のために自国籍の船と自国船員を確保している.
63
第7回のまとめ&穴埋め(2)
• 政府が海運業への明確な政策を持たない例としては,パナマ,マーシャルなど
[5. ]を挙げることができる.

• 便宜置籍は税金・賃金などでより有利な国に便宜的に[6. ]を移す動きを指す.
便宜置籍国はその登録を行える国である.便宜置籍国は登録する船籍数を増やして税
金収入や登記料などを得られる.

• もう一つのケースは,政府が海運業に対する介入方針を[7. ]国である.日本
はここに分類される.ここに分類される国々には,海運に基幹産業として経済活動を
してほしい国もある一方,税収さえ入ってくればいい国・地域もある.

64
【参考】読書・論文ガイド
(a)久保麻紀子,松田琢磨,2015,米国の外航海運政策,日本海洋政策学会誌,第5号,pp.61-72.

【参考】第7回の用語集
(1)計画造船:1947年から1987年まで行われた,海運企業の造船に対する補助制度.政府が各年度の船種別建造量や資金
計画を決定,建造を希望企業に認可した場合,必要資金の相当部分に対し財政資金を融資する.
(2)海運二法:1963年に施行された「海運業の再建整備に関する臨時措置法」「外航船舶建造融資利子補給および損
失補償法および日本開発銀行に関する外航船舶建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律」のこと
(3)スクラップ義務:造船を行う際に,船舶のスクラップを義務付けること.これによって,新造船ができても,隻数および積載可能貨
物量の増加の双方を抑えられる.1959年,運賃の下落を防ぐために,計画造船に対してスクラップ義務が強化された.
(4)運輸省:2001年1月5日まで存在した日本の中央省庁.現在は国土交通省に業務が引き継がれている.陸海空の運輸行
政のほか,海上保安,鉄道,気象などに関する行政を取扱っていた.

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