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Vol. 138, No.

10 YAKUGAKU ZASSHI 138, 12771283 (2018) 1277

―Symposium Review―

サルコペニア対策としてのアミノ酸栄養

小 林 久 峰†

Amino Acid Nutrition in the Prevention and Treatment of Sarcopenia

Hisamine Kobayashi†
Ajinomoto Co., Inc.; 1151 Kyobashi, Chuo-ku, Tokyo 1048315, Japan.

(Received March 30, 2018)

Sarcopenia is the decrease in skeletal muscle mass and muscular function that occurs with aging. The underlying
mechanisms of sarcopenia include anabolic resistance, which is deˆned as a poor muscle protein synthetic response to
previously eŠective stimuli such as nutrients and exercise. Among the nutrients that humans ingest, amino acids directly
trigger the synthesis of muscle proteins. The essential amino acid leucine, in particular, functions as a stimulatory signal.
Leucine-enriched essential amino acids help overcome anabolic resistance in elderly individuals to eŠectively stimulate
muscle protein synthesis. Long-term intake of leucine-enriched essential amino acids has a synergistic eŠect with exercise
to increase skeletal muscle mass, strength, and walking speed in elderly individuals, and can be an eŠective countermeas-
ure to sarcopenia.

Key words―sarcopenia; leucine; essential amino acid; anabolic resistance; leucine-enriched essential amino acid

筋肉の健康面での重要性とサルコペニア のみならず,肥満,糖尿病,高脂血症などの生活習
骨格筋は,その総重量が体重のおよそ 4 割を占 慣病の発症・進展,重症患者の予後の悪化に関係す
め,体内の最大臓器と言える.運動器である骨格筋 る.十分な骨格筋量を適切に維持することは,健康
の主たる機能は,筋細胞内のアクチンとミオシンの の維持,及び疾患・外傷からの回復のために重要で
重合によって収縮し身体を運動させることにある あると考えられる.
が,グルコースや脂肪酸を取り込み,消費するエネ ところが健康な状態にあっても,一般に老化に
ルギー代謝器官とも言える.またグルコースをグリ よって骨格筋の量は多かれ少なかれ減少する.減少
コーゲンとして蓄え,体内のアミノ酸を筋タンパク 量が大きい場合には,筋量と筋力・筋機能の低下を
質に変えて蓄える貯蔵器官でもあるとも言える.飢 特徴とするサルコペニアと呼ばれる状態となる.サ
餓や,侵襲などの非常事態においては,骨格筋はタ ルコペニアが生じると,移動の能力などの身体運動
ンパク質の分解によってアミノ酸を供給し,生体は 機能が低下し,転倒し易くなるなど骨折のリスクが
それをエネルギー産生や急性期タンパク質の合成等 高まる.また運動機能の低下により生活の質の低下
に利用する.さらに最近では,マイオカインと総称 や,虚弱を引き起こし,さらには死亡リスクをも増
される各種のホルモンを産生し,骨格筋以外の臓器 大させる.サルコペニアの有症率は地域在住高齢者
でのエネルギー代謝などを調節する内分泌器官とし の 1520%程度と報告されている.
1,2) 高齢化が進む

ても注目されている.このように骨格筋には様々な 日本においては,健康寿命の延伸や介護予防の観点
機能があり,骨格筋量の減少は身体運動能力の低下 で,サルコペニアの予防・改善が重要な課題となっ
てきている.ここでは,高齢者の骨格筋におけるタ
味の素株式会社研究開発企画部(〒1048315 東京都中
央区京橋 1151) ンパク質・アミノ酸代謝の特徴と,サルコペニアの
現 所 属 :†味 の 素 株 式 会 社 ア ミ ノ サ イ エ ン ス 統 括 部 予防・改善における栄養素としてのタンパク質・ア
(〒1048315 東京都中央区京橋 1151) ミノ酸の意義について議論する.
e-mail: hisamine_kobayashi@ajinomoto.com
本総説は,日本薬学会第 137 年会シンポジウム S41 で 生体におけるタンパク質とアミノ酸の代謝
発表した内容を中心に記述したものである. 人の体内には体重の 2 割弱の重量のアミノ酸が存

 2018 The Pharmaceutical Society of Japan


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在する.そしてそのほとんどは,アミノ酸同士がペ
プチド結合により多数重合したタンパク質の形で存
在している.一説によると人の体内のタンパク質は
10 万種類あると言われているが,これらのタンパ
ク質を作るのはわずか 20 種類のアミノ酸である.
体内のタンパク質はそのすべてが,食事としてタン
パク質を摂取したものを,一旦アミノ酸にまで分解
したうえで,体内でタンパク質に再合成したもので
ある.また一方で体内のタンパク質は分解されてア
ミノ酸を生成している.その一部はタンパク質合成
Fig. 1. Level of Muscle Protein Anabolism after 6.7 g of Es-
に再利用され,また一部は代謝され尿素などとして sential Amino Acids Intake
体外へ不可逆的に排泄される.よって生体の維持の p<0.05 vs. young individuals. Created based on Ref. 6).

ためには,不可逆的に体外へ排泄されるのに見合っ
た量のアミノ酸を摂取する必要がある. 高齢期における筋タンパク質代謝の特徴
骨格筋細胞においても,筋タンパク質の合成と分 空腹安静時では,若年者と高齢者の骨格筋タンパ
解は常に生じている.成人では通常,筋タンパク質 ク質合成速度や分解速度に差はない5) が,およそ
合成と筋タンパク質分解の動的平衡,つまり合成量 15 g の良質なタンパク質(日本人女性の場合,食事
と分解量が等しい状態にあって骨格筋の量は一定に 1 食分のタンパク質量程度)に相当する必須アミノ
保たれている.しかしミクロな視点では,筋タンパ 酸の混合物 6.7 g を摂取した際の骨格筋タンパク質
ク質の合成と分解はそれぞれ常に変動してバランス の同化反応は,若年者に比べて高齢者では減弱して
が変わり,その結果としてごくわずかに筋タンパク いる( Fig. 1).6) 高齢者にみられるこのようなタン
質が増加したり減少したりしている状態にある.筋 パク質やアミノ酸摂取に対する筋タンパク質合成反
タンパク質の合成や分解を調整しているものの 1 つ 応の減弱は同化抵抗性( anabolic resistance )と呼
が,血液のアミノ酸濃度の変化である.アミノ酸濃 ばれ,これが高齢者で骨格筋量が減少しサルコペニ
度が増加した場合は,筋細胞内へのアミノ酸の取り アが生じる原因であると考えられている.
7)

込みが増え,筋タンパク質合成が増加する.逆に血 高齢者においても,摂取するタンパク質の量を増
液のアミノ酸濃度が減少した場合は筋タンパク質合 加させれば,筋タンパク質の合成反応は高まる.良
成が減少する.3) アミノ酸の中では,特にロイシン 質なタンパク質の 1 回摂取量と筋原線維タンパク質
が筋タンパク質合成のトリガーとして働く.ロイシ の合成速度の関係について高齢者と若年者で比較し
ンは,筋細胞内の哺乳類ラパマイシン標的タンパク 解析した Moore らの論文8)の結果を,Fig. 2 に模式
質複合体 1 (mammalian target of rapamycin com- 的に示した.この高齢者と若年者における,タンパ
plex 1; mTORC1)の活性化(リン酸化)を促進す ク質 1 回摂取量と筋タンパク質合成の用量反応曲線
ることにより,翻訳開始因子である eIF4E 結合タ は,以下の 3 つのことを示している.
ンパク質(eIF4E-BP1)と,リボソームタンパク質 ◯
 タンパク質摂取量=ゼロの場合,つまり空腹時
S6 キナーゼ(S6K1)の活性化(リン酸化)を介し には,若年者と高齢者の骨格筋タンパク質合成速度
て mRNA の翻訳を促進し,筋タンパク質合成を増
大させる.4) アミノ酸は筋タンパク質合成の材料で 味の素株式会社アミノサイエンス統括
部. 1989 年東京大学農学部畜産獣医学
あるが,アミノ酸そのものが直接的に筋タンパク質
修士課程修了.獣医師.同年味の素株
の合成を調節している.日常生活の中では,食事か 式会社入社. 1999 年サルコペニア対策
らのタンパク質の摂取により体内に吸収されたアミ 研究のためテキサス大学ガルベストン
医学校外科に留学.以後高齢者栄養研
ノ酸が血中アミノ酸濃度を上昇し,筋タンパク質合
小林久峰 究,スポーツ栄養研究など,アミノ酸
成を増加させることから,筋タンパク質の維持(= を中心とした健康素材の研究開発・実
骨格筋量の維持)には食事・栄養が重要である. 用化を担当している.
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ンパク質合成を最大化するタンパク質摂取量には
1.7 倍の開きあったことを考えると,高齢者の筋肉
量を維持しサルコペニアやフレイルを予防するとい
う目的では,さらに高いタンパク質量を目標量とし
て設定すべきであろう.
1 回当たりのタンパク質摂取量の増加に対し,筋
タンパク質合成反応には上限があることから,1 日
あたりでは見かけ上十分なタンパク質を摂取してい
る場合でも,3 食のタンパク質摂取量が偏っている
場合は,均等に摂取する場合よりも筋タンパク質合
Fig. 2. Protein Intake and Muscle Protein Synthesis in Elder- 成量の総量が少なくなると考えられる.
12,13) 実際,

ly and Young Individuals 複数の観察研究により,1 食毎に十分な量のタンパ


Created based on Ref. 8).
ク質を摂取している場合に,骨格筋の量が多いこと
が報告されている.14,15) 1 日あたりのタンパク質摂
は同じ. 取量だけでなく,1 食あたりのタンパク質摂取量を

 若年者・高齢者ともにタンパク質摂取量を増加 考慮した食べ方が大事になってくる.
すると筋タンパク質合成反応が増加するが,筋タン しかし通常食品で構成される食事によりタンパク
パク質合成反応には上限がありその最大反応は若年 質摂取量を増加させることは,他の栄養素とのバラ
者と高齢者で同程度. ンスの問題から,また高齢者に一般にみられる食の

 高齢者において筋タンパク質合成の最大反応を 嗜好性の変化や食欲の低下,またさらに口腔・嚥下
得るには,若年者よりも多くのタンパク質摂取を必 機能の低下などにより困難な場合が多く,その場合
要とする(高齢者:0.40 g/kg 体重;若年者:0.24 g/ はタンパク質やアミノ酸のダイエタリーサプリメン
kg 体重, 1.7 倍の開きがある).高齢者ではタンパ トによる補充が有効であると思われる.特にアミノ
ク質摂取に対する筋タンパク質合成反応は減弱して 酸は,後述するようにより少量で有効な配合とする
いる(同化抵抗性の存在). ことが可能であり,通常食の摂取に与える影響も少

 ,◯
 により高齢者においてタンパク質の摂取量 なく有用である.
を増加させることは,筋タンパク質合成を高め,サ 高齢者の筋タンパク質合成に与えるアミノ酸の効
ルコペニアを予防する手段と考えられる. 果
70 歳代の高齢者を調査対象とした縦断疫学研究 高齢者に全アミノ酸(必須アミノ酸と非必須アミ
により,タンパク質摂取量が少ない高齢者では筋肉 ノ酸をともに)を与えた場合と,それに含まれる必
量の減少が大きく,タンパク質摂取量が多い場合は 須アミノ酸のみを与えた場合を比較したところ,必
筋肉 量の 減 少が 少な か った こと が 報告 され て い 須アミノ酸のみの場合でも,全アミノ酸と全く同
る.
9) タンパク質摂取量が多いと,60 歳以上の高齢 様・同程度に骨格筋タンパク質の合成を促し,タン
者で握力の減少が抑制されること,
10) さらに 70 歳 パク質同化反応を引き起こした(Fig. 3).
16) つまり

以上高齢者を対象とした研究では移動機能障害の発 タンパク質を構成する 20 種のアミノ酸の中では,9


生率を減少することも報告されている.11) このよう 種類の必須アミノ酸群の摂取が重要であることが判
な観察研究の結果からも,高齢者が骨格筋を健康に 明し た. 必 須ア ミ ノ酸 の中 で も分 岐鎖 ア ミノ 酸
維持するにはより多くのタンパク質を摂取すべきで (branched chain amino acid; BCAA)の 1 つである
あると考える. ロイシンは,細胞内の同化反応を制御する
日本人の食事摂取基準 2015 年版によると,タン mTORC1 を活性化し,タンパク質同化刺激因子と
パク質の摂取推奨量は,1 日あたり若年者で 0.9 g/ して働くため,多量のロイシンを投与することによ
kg 体重,高齢者では 1.06 g / kg 体重と高齢者では り,より強く筋タンパク質合成を刺激すると考えら
1.2 倍ほど多く設定されている.しかし上述の筋タ れるが,ロイシンのみを単独で投与した場合は,バ
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Fig. 3. Changes in Skeletal Muscle Protein Metabolism in Response to Amino Acid Intake in Elderly Individuals
Balanced amino acids: essential plus non-essential amino acids. p<0.05 vs. pre-ingestion. Created based on Ref. 16).

リン,イソロイシンを始め,他の必須アミノ酸の血
中濃度が低下してしまう.17) それでは筋タンパク質
合成に必要なアミノ酸が不足するため,併せて他の
必須アミノ酸も供給することが必要と考えられる.
そこで,必須アミノ酸におけるロイシンの割合(通
常の食品では 20%前後)を,約 40%に高めたロイ
シ ン 高 配 合 必 須 ア ミ ノ 酸 混 合 物 ( 以 下 「 Amino
L40 」)と,食品タンパク質の中では最も筋タンパ
ク質同化作用に優れているとされるホエイタンパク
質のアミノ酸組成を模した必須アミノ酸混合物(ロ
イシン含量 26%)をヒト高齢者において比較した.
その結果,高齢者においてはロイシン含量を高めた
「Amino L40」の方が,より大きな筋タンパク質同
Fig. 4. Stimulation of Skeletal Muscle Protein Anabolism
化を引き起こすことが確認された(Fig. 4).18) 高齢
with Leucine-enriched Essential Amino Acids in Elderly In-
男性において,レジスタンス運動後のロイシン高配 dividuals
 p<0.05 vs. 26% leucine content. Created based on the original data of
合必須アミノ酸の摂取は,アミノ酸トランスポー Ref. 18).

ターの発現増加を伴い,筋タンパク質の同化反応時
間を延長することも報告されている.19) 「 Amino L40」の摂取は,高齢者の筋タンパク質合
さ ら に 60 歳 代 の 高 齢 女 性 に お い て , 3 g の 成を引き起こす.3 ヵ月間,健康な高齢者が必須ア
「Amino L40」の摂取が 20 g のホエイタンパク質を ミノ酸を摂取(7.5 g を 1 日 2 回)することにより,
摂取した場合と同等の筋タンパク質合成を引き起こ 除脂肪体重が有意に増加したことが報告されてい
すことを確認している( Fig. 5 ).20) ロイシン 40 % る.22) 一方,2.5 g のロイシンのみを食事とともに 1
配合必須アミノ酸「 Amino L40 」は少量で効率的 日 3 回,3 ヵ月間摂取させた研究においては,骨格
に高齢者の筋タンパク質合成を増大する.さらに最 筋量,筋力ともに改善が認められなかった.
23) 前述

新の研究により,わずか 1.5 g の「Amino L40」の の通り,他の必須アミノ酸をともに摂取することが


摂取でも筋タンパク質合成増加を引き起こすことも 必要であると考えられる.
確認している.21) 4 ヵ月間,一般高齢者にロイシン高配合型必須ア
サルコペニア対策としてのアミノ酸の効果 ミノ酸 11 g を 1 日 2 回食間に与え,その間の体組
上述のように,必須アミノ酸の摂取,特に 成,筋力,身体運動機能などの変化を測定した研究
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Fig. 5. Increased Rate of Myoˆbrillar Protein Synthesis Stimulated by Ingesting 3 g of Leucine-enriched Essential Amino Acids
(``Amino L40'') and 20 g of Whey Protein in Elderly Women
p<0.05 vs. pre-ingestion. Created based on Ref. 20).

Fig. 6. Improvements in Muscle Mass, Strength, and Walking Abilities Stimulated by Three Months of Leucine-enriched Essential
Amino Acid (``Amino L40'') Intake and Exercise Training in Japanese Women with Sarcopenia
A: Change in leg muscle mass. B: Change in muscle strength (knee extension force). C: Change in normal walking speed. p<0.01, p<0.05, comparison
before and after intervention. Created based on Ref. 26).
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においては,特別な運動トレーニングがなくても, Tanigawa T., Yukutake T., Kayama H., Aoya-


ロイシン高配合型必須アミノ酸の摂取により除脂肪 ma T., Arai H., J. Am. Med. Dir. Assoc., 14,
体重と筋力が増加し,歩行機能などの身体機能が改 911 915 (2013).
3) Kobayashi H., Børsheim E., Anthony T. G.,
善することが認められている.24) また,健康な日本
Traber D. L., Badalamenti J., Kimball S. R.,
人高齢者が,レジスタンストレーニングに併用して
JeŠerson L. S., Wolfe R. R., Am. J. Physiol.
「 Amino L40 」を摂取( 3 g の「 Amino L40 」を 1 Endocrinol. Metab., 284, E488 E498 (2003).
日 1 回あるいは 2 回)した場合, 10 m 障害物歩行 4) Drummond M. J., Dreyer H. C., Fry C. S.,
の時間が短縮するなどの移動能力について摂取回数 Glynn E. L., Rasmussen B. B., J. Appl. Phys-
に依存的な改善が認められた.25) さらに,サルコペ iol. (1985), 106, 1374 1384 (2009).
ニアが顕在化している地域在住の日本人の高齢女性 5) Volpi E., She‹eld-Moore M., Rasmussen B.
B., Wolfe R. R., JAMA, 286, 1206 1212
(75 歳以上)を対象とし,3 ヵ月間の筋力・バラン
(2001).
ス・歩行機能の運動トレーニング(1 週間に 2 回)

6) Katsanos C. S., Kobayashi H., She‹eld-Moore
「Amino L40」の摂取のみ(3 g を 1 日 2 回),ある M., Aarsland A., Wolfe R. R., Am. J. Clin.
いは運動とトレーニングと「 Amino L40 」摂取の Nutr., 82, 1065 1073 (2005).
組合せが,筋量,筋力,身体運動機能に与える影響 7) Phillips B. E., Hill D. S., Atherton P. J., Curr.
を評価した無作為化比較対象試験により,運動と Opin. Clin. Nutr. Metab. Care, 15, 58 63
「Amino L40」摂取は,筋量,筋力,歩行速度につ (2012).
8) Moore D. R., Churchward-Venne T. A.,
いて相乗的に作用し,すべて有意に改善することも
Witard O., Breen L., Burd N. A., Tipton K. D.,
示されている(Fig. 6).26) この研究の 4 年後の追跡
Phillips S. M., J. Gerontol. A Biol. Sci. Med.
調査結果では,筋量・筋力・移動能力の低下の抑制 Sci., 70, 5762 (2015).
や転倒発生率の低下が認められ,介入の効果が長期 9) Houston D. K., Nicklas B. J., Ding J., Harris
間持続することが判明している.27) T. B., Tylavsky F. A., Newman A. B., Lee J.
おわりに S., Sahyoun N. R., Visser M., Kritchevsky S.
サルコペニアは,栄養などの筋タンパク質同化刺 B., Am. J. Clin. Nutr., 87, 150 155 (2008).
10) McLean R. R., Mangano K. M., Hannan M.
激に対する筋タンパク質合成反応が減弱することに
T., Kiel D. P., Sahni S., J. Gerontol. A Biol.
よって起こるが,ロイシンの含量を高めたロイシン
Sci. Med. Sci., 71, 356 361 (2016).
40 %配合必須アミノ酸(「 Amino L40 」)は,効率 11) Houston D. K., Tooze J. A., Garcia K., Visser
よく高齢者の骨格筋タンパク質合成を引き起こし, M., Rubin S., Harris T. B., Newman A. B.,
運動との相乗的な効果により,骨格筋量や筋力を増 Kritchevsky S. B., Health A. B. C. S., J. Am.
加し歩行機能を改善することが証明されている.こ Geriatr. Soc., 65, 1705 1711 (2017).
れらの研究結果を基に,各種の食品や栄養剤が開 12) Paddon-Jones D., Rasmussen B. B., Curr.
Opin. Clin. Nutr. Metab. Care, 12, 86 90
発・上市されている.さらにより有効な摂取方法,
(2009).
他の栄養素や機能性成分との相互作用・相乗効果な
13) Mamerow M. M., Mettler J. A., English K. L.,
どの検討やより一層のエビデンスの充実によって, Casperson S. L., Arentson-Lantz E., She‹eld-
サルコペニアの対策が進むことが期待される. Moore M., Layman D. K., Paddon-Jones D.,
J. Nutr., 144, 876 880 (2014).
利益相反 小林久峰(味の素株式会社の社員). 14) Farsijani S., Morais J. A., Payette H.,
Gaudreau P., Shatenstein B., Gray-Donald K.,
REFERENCES Chevalier S., Am. J. Clin. Nutr., 104, 694 703
(2016).
1) Akune T., Muraki S., Oka H., Tanaka S.,
15) Loenneke J. P., Loprinzi P. D., Murphy C. H.,
Kawaguchi H., Nakamura K., Yoshimura N.,
Phillips S. M., Clin. Nutr., 35, 1506 1511
Osteoporos. Int., 25, 1081
1088 (2014).
(2016).
2) Yamada M., Nishiguchi S., Fukutani N.,
16) Volpi E., Kobayashi H., She‹eld-Moore M.,
Vol. 138, No. 10 (2018) YAKUGAKU ZASSHI 1283

Mittendorfer B., Wolfe R. R., Am. J. Clin. 10.1016/j.clnu.2017.09.008


Nutr., 78, 250 258 (2003). 22) Dillon E. L., She‹eld-Moore M., Paddon-
17) Matsumoto T., Nakamura K., Matsumoto H., Jones D., Gilkison C., Sanford A. P., Casper-
Sakai R., Kuwahara T., Kadota Y., Kitaura Y., son S. L., Jiang J., Chinkes D. L., Urban R. J.,
Sato J., Shimomura Y., SpringerPlus, 3, 35 J. Clin. Endocrinol. Metab., 94, 1630 1637
(2014). (2009).
18) Katsanos C. S., Kobayashi H., She‹eld-Moore 23) Verhoeven S., Vanschoonbeek K., Verdijk L.
M., Aarsland A., Wolfe R. R., Am. J. Physiol. B., Koopman R., Wodzig W. K., Dendale P.,
Endocrinol. Metab., 291, E381 E387 (2006). van Loon L. J., Am. J. Clin. Nutr., 89, 1468
19) Dickinson J. M., Gundermann D. M., Walker 1475 (2009).
D. K., Reidy P. T., Borack M. S., Drummond 24) Børsheim E., Bui Q. U., Tissier S., Kobayashi
M. J., Arora M., Volpi E., Rasmussen B. B., J. H., Ferrando A. A., Wolfe R. R., Clin. Nutr.,
Nutr., 144, 1694 1702 (2014). 27, 189 195 (2008).
20) Bukhari S. S., Phillips B. E., Wilkinson D. J., 25) Kawada S., Okamoto Y., Ogasahara K.,
Limb M. C., Rankin D., Mitchell W. K., Yanagisawa S., Ohtani M., Kobayashi K., Acta
Kobayashi H., GreenhaŠ P. L., Smith K., Physiol. Hung., 100, 329 339 (2013).
Atherton P. J., Am. J. Physiol. Endocrinol. 26) Kim H. K., Suzuki T., Saito K., Yoshida H.,
Metab., 308, E1056 E1065 (2015). Kobayashi H., Kato H., Katayama M., J. Am.
21) Wilkinson D. J., Bukhari S. S. I., Phillips B. Geriatr. Soc., 60, 16 23 (2012).
E., Limb M. C., Cegielski J., Brook M. S., 27) Kim H., Suzuki T., Saito K., Kojima N., Hosoi
Rankin D., Mitchell W. K., Kobayashi H., Wil- E., Yoshida H., Geriatr. Gerontol. Int., 16,
liams J. P., Lund J., GreenhaŠ P. L., Smith K., 175 181 (2016).
Atherton P. J., Clin. Nutr., in press. doi:

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