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アンチロック・ブレーキ・システム

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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出典検索?: "アンチロック・ブレーキ・システム" – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE
· NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL(2021 年 6 月)
アンチロック・ブレーキ・システム(Anti-lock Braking System、略称:ABS)とは、急ブレーキあるい
は低摩擦路でのブレーキ操作において、車輪のロックによる滑走発生を低減する装置である。

概要
自動車の場合、通常の走行中はタイヤと路面は一定のスリップ率[注釈 1]以上にはならず、ほぼ滑らない。タ
イヤの転がる方向が限定されているがゆえに、ステアリング操作によって自動車の方向を制御することができ
る。通常のブレーキ操作においては、ブレーキローターないしはブレーキドラムとブレーキパッド/ブレーキシ
ューの間に摩擦力が生じ、さらにタイヤと路面の間に摩擦力が生じることによって車は止まる。

しかしながら、急ブレーキを掛けた場合や、路面が濡れていたり凍結しているような場合は、路面とタイヤと
の摩擦係数が十分に大きくなく、ブレーキによって生み出されるトルクが路面とタイヤによって生み出される
それよりも大きくなることがある。この場合、タイヤはロックしてしまい、路面上を滑走(スリップ、スキッ
ド)することになる。このときのスリップ率は 100%となる。

一旦タイヤがロックして滑り始めると、ステアリング操作が効かなくなり制御不能となるばかりか、前走車へ
の追突や横滑り、横転などの重大事故の危険に晒されることになる。また、路面との接地面が集中して摩耗す
ることになり、タイヤの寿命が短くなったり異常摩耗による振動が起こりかねない。

これを防ぐために、ブレーキを一気に踏み込むのではなく徐々に踏み込み、滑り始めたら少し緩めて再び踏み
込む動作を繰り返す運転技術(ポンピングブレーキ)がある。ABS はこれをコンピュータが自動的に行うシス
テム制御のことである。この作動時には、最大グリップが出るスリップ率に自動制御される。ただし、ABS が
作動するのは摩擦係数の低い路面でそれなりの急ブレーキを踏んだ時であるため、緊急時や競技以外の場面で
積極的に使うのは推奨されない。

技術
ブレーキ中に車輪の回転が走行速度から推定される値より低くなった場合に、ABS システムは車輪がロックし
て滑走していると判断し、車輪のブレーキの液圧を下げ、車輪が回転を再開すると再度液圧をかけてブレーキ
を効かせるという動作を自動で繰り返すことにより車輪のロックを防ぎ、最大限の制動力を発揮する。これに
より、強くブレーキをかけながら操舵が可能となるため、一般には「急ブレーキをかけながら、衝突回避のた
めのハンドル操作ができるシステム」であると簡潔に説明される。

ほとんどの路面で ABS 非装着車と比較して制動距離が短くなる一方で、積雪路や砂利道等路面によっては制動


距離が長くなるという欠点もあるため、ABS を過信した運転は危険である。特に凍結路などの低摩擦路で ABS
が作動する場合、運転者の想像以上に制動距離が伸びる場合がある。

上記のような動作機構のため、ABS 作動中はブレーキペダルに断続的な振動が伝わるが、ドライバーがこれに
驚いてブレーキペダルを緩めると制動力が得られないため、躊躇せずペダルを踏み込み続けながらハンドルを
操作して危険を回避する必要がある。なお、ブレーキバイワイヤーの機構を持つハイブリッドカーなどの一部
では、ブレーキ踏力は単にゴムを圧縮するだけで、そのストローク量と速度から制動力を電子回路が演算して
ブレーキ回路を駆動するため、ABS の断続的な作動の反力がペダルに感じられないものがある。

一見 ABS が作動するとは予想されない乾燥した舗装路面でブレーキをかける場合にも、マンホールの蓋、砂、
道路標示、段差のある路面で ABS が作動し、ブレーキペダルが振動することがある。このことで、新車の購入
直後にブレーキが故障したなどと自動車販売店にクレームが持ち込まれる場合もあり、自動車販売店では車両
販売時に重要な注意点として顧客に説明している。

構造

構造概念図
この構造概念図における動作は、次のとおり。

ブレーキペダルを踏むことによって、液圧発生装置 (2) から液圧配管 (5) を通じて液圧がブレーキキャリパ


(ドラムブレーキではホイールシリンダー。以下カッコ内はドラムブレーキの場合。)(4) に伝えられ、ブレ
ーキパッド(ブレーキシュー)がブレーキディスク(ブレーキドラム)に押し付けられて制動力が生じる。
制御装置 (1)は回転センサ(車速センサ)(3) により車輪の回転をモニターしており、モニターしている車輪
の回転から推定される減速より低下した場合に車輪がロックして滑走していると判断し、液圧発生装置 (2)
からの液圧を遮断、開放して制動力を下げるので、車輪はロックから復帰し再度回転を始める。
制御装置 (1) は回転センサ(車速センサ)(3) により車輪の回転を把握すると、再度油圧発生装置 (2) か
らの液圧をブレーキに伝え制動力を強くする。
制御装置 (1) は、この一連の操作を数ミリ秒という短時間で繰り返すため、運転者がポンピングブレーキを
行うよりも高精度な制御が可能となる。

歴史
鉄道車両
ABS の開発は、欧米の鉄道車両が最初であった。商品名をデセロスタットと称し、その構造は、輪軸端に小さ
なフライホイールとスイッチからなる簡便なものであった。動作原理は、通常、装置は車輪の回転と共に連れ
回りしているだけであるが、ブレーキ時に車輪がロックすると、慣性によりフライホイールだけが回り、その
間ケーシングのスイッチを開閉し、その動作により電磁弁を駆動してブレーキ用の空気圧を低減するというも
のであった。鉄道分野ではこれを機械式 WSP(Wheel Slide Protection : 車輪滑走防止)や ABS(Anti
Brake-locking System : 車輪固着防止装置。ABS の略称はドイツ語の Antiblockiersystem から)と
呼んだ。同様のものはその後、航空機用にも手がけられ、1950 年代に登場したダンロップ社のマクサレット
(Maxaret)システムがそのはしりである。このシステムは完全に機械式であり、航空機で使用された場合は
さしたる問題もなく現在でもいくつかの機種で使用されている。

電気式 WSP は、1964 年(昭和 39 年)に新幹線 0 系電車にて初めて用いられた。開発は日本国有鉄道の鉄道技


術研究所と神鋼電機であり、同研究所と日本エヤーブレーキ(後のナブコ、現在のナブテスコ)とが開発して
いた空圧式 WSP との性能比較試験を制して、その後急速に普及した。当時の WSP はコンピュータがなかったた
め、マグアンプ演算方式であり、電磁式 WSP とも呼ばれている。一方、新幹線車両はその後、トランジスタ演
算の電子式 WSP となり、その後デジタル演算式に進化した。今日的な 3 位置弁の ABS としては国鉄キハ 183 系
気動車で初めて実用化され、1995 年(平成 7 年)に登場した JR 北海道キハ 283 系気動車では 4 チャンネル・
マルチモード・マルチポジション弁(比例弁)・圧力併用フィードバック・個別制御といった高度なシステム
へ発展した。現代では一般の通勤電車や気動車などにもフラット防止装置と呼ばれて広く普及しており、車輪
の偏摩耗抑制や制動距離短縮、回生ブレーキとの電空協調制御(遅れ込め制御)や、TIMS や INTEROS などの
高度な制御伝送装置による編成単位でのブレーキ統括制御との組み合わせなども実現している。

自動車
日本国内の自動車で初めて ABS が搭載されたのは、1969 年(昭和 44 年)の開業間もない東名高速道路を走る
高速バスに用いられた「国鉄専用型式」であり、新幹線と同じく国鉄の鉄道技術研究所の開発によるものであ
る。ただし、電磁式 WSP のコストが高かったため、一般には普及しなかった。日本国外の例では、1960 年代に
開発されたレース用のファーガソン P99(英語版)を初め、ジェンセン・FF、フォード・ゼファー(英語版)
の上級モデルであるフォード・ゾディアックの試験的に開発された四輪駆動モデルに搭載されたが、この 3 車
種以外に採用する動きはなかった。ストップ・コントロール・システムと称された別の機械式の装置をルーカ
ス・ガーリング(英語版)が開発・販売し、一部のフォード・フィエスタ・MK.III に搭載している。
一方、ドイツのボッシュ社では 1930 年代から ABS を研究し続けており、1978 年に初めてボッシュ社製の電子
制御システムを搭載した自動車が発売される。メルセデス・ベンツ・S クラスとトラックに搭載されたこのシス
テムは以前の機械式のものに比べて信頼性も高く、1980 年代から徐々に市販車への搭載が広がっていった。ボ
ッシュはその後、ナブコと合弁で日本 ABS 社を立ち上げ、日本の各社の自動車用 ABS を OEM 生産していった。
その流れは現在、日本法人のボッシュ株式会社に引き継がれている。その他、アドヴィックス、コンティネン
タル・オートモーティブ、日信工業などが国内有力メーカーである。

F1 ではウィリアムズ F1 が 1993 年シーズン用に開発したウィリアムズ・FW15C に採用されている。1994 年シ


ーズンにアクティブサスペンション、トラクションコントロールと共々ハイテク規制の対象となり、以降使用
が禁止されている。

ABS は、かつては 4-ESC(4 輪エレクトロニックスキッドコントロールの略称としてトヨタ自動車が使用)、


4WAS(4 輪アンチスキッドの略称として日産自動車が使用[1])、WSP、4w-A.L.B.(4 輪アンチロックブレ
ーキの略称として本田技研工業が使用)、ファインスキッドブレーキなど、メーカーにより様々な名称が混在
していたが、1990 年代頃からは全メーカーが ABS に呼称を統一した。今日では自動車や鉄道車両も含め ABS
に統一されつつある。

当初は制御回路が単純で、複数の車輪をまとめて同じ処理が行われていたが、最近では 4 輪それぞれに最適な
処理が行われるように進化している。当初の機械式から電子式の 2 チャンネル・2 モード・2 位置オンオフ弁・
速度フィードバック制御へ進化し、近年には 4 チャンネル・3 モード・3 ポジション弁・G 併用フィードバック
制御(EBD(電子制御ブレーキシステム)を経て、近年ではトヨタ・プリウスのような車両で、4 チャンネル・
マルチモード・マルチポジション弁(比例弁)・圧力併用フィードバック・個別制御といった緻密な制御シス
テムが採用されている。

さらに、ABS を VSC(横滑り防止装置)や TRC(トラクションコントロールシステム)、パワーステアリング


制御などと統合制御する「VDIM」(統合車両姿勢安定制御システム)では、例えばコーナリング中に車両が急
に不安定となった状況を 4 輪の速度センサーとヨーレートセンサが感知し、エンジン駆動力とパワーステアリ
ング舵角を調節するとともに、内側の車輪のみにブレーキをかけるベクタリングなど総合的に車両の安定性を
高めるシステムに発展している。さらに空転を検知した車輪のみにブレーキをかけて他の車輪の駆動トルク低
下を防ぐことによりリミテッドスリップデフと同様の効果を得る機構(SUBARU の X モード等)も実用化されて
いる。

レーシングカーではグループ GT3 のような、名目上アマチュア向けとされるカテゴリでは ABS が装着されるこ


とがある。

ABS の呼称が統一されていない頃は概ね 30 万円ほどの高価なオプションであったが徐々に価格も下落し、現在


では後述の義務化もあって広く標準装備されるようになった。国土交通省は、2013 年(平成 25 年)8 月に、
国連欧州経済委員会の「制動装置に係る協定規則(第 13 号)」と「操縦装置の配置及び識別表示等に係る協定
規則(第 121 号))」を採用し、トラック・トレーラー・バスの全ての車種に ABS の装着を義務化すると発表
した[2]。新型車は 2014 年 11 月発売以降のモデルから、継続生産車も 2017 年 2 月以降から義務化されてい
る。

一方、ABS と VSC(横滑り防止装置)や TRC(トラクションコントロールシステム)などとの統合的な制御が


一般的になったために、サーキットなどでは電子的な介入のために成績が伸びないといった欠点も出てきてい
る。例えばサーキットやジムカーナでは積極的に駆動力をかけて後輪をドリフトさせたり、パーキングブレー
キをかけて後輪をロックさせて車両の向きを変える操作が行われる場合があるが、これらの操作の途中で車両
が不安定になったと電子的に判断されエンジン駆動力がカットされ意図した操作ができなくなる場合がある。
このため、高性能車ではこれらの制御を選択的、段階的に解除する機構が加えられる場合がある。

オートバイ
二輪車用 ABS の誕生以前には、前後輪連動ブレーキが、ABS に求められる役割を担う技術として一部製品にお
いて普及していた[3]。二輪車においては、ホイールのロックが転倒に直結するため、ABS の恩恵はより大きい
と期待されていたが、四輪車と比較して搭載できる装置のサイズや重量が限られる上、ポンピングをきめ細か
く制御しないと軽量な車体を揺らしてしまうなどの制約があり、開発は遅れた。実用的な電子制御式 ABS は
1980 年代末以降、BMW がボッシュと共同開発した製品(当初は機械式)を市場に投入したのを皮切りに、各社
から同様のシステムが実用化されるようになる。ただしその後長期に渡り、高価な大型ツアラーを主力として
いた BMW を除き、その採用モデルはごく少数に留まった。その背景には ABS の装置自体がまだ高価で重かった
こと、熟練したライダーには機械の助けなど不要とする考えが根強かったことなどが挙げられる。1990 年代後
半には装置の小型化や低価格化が進み、ヨーロッパを中心に各メーカーとも高速な大型ツアラーなどから ABS
採用モデルを増やしつつある。

EU 内においてオートバイへの ABS 義務化の動きがあったことから[4]、日本でも上述の自動車と同様に二輪車


についても、国連欧州経済委員会の「二輪車等の制動装置に係る協定規則(第 78 号)」に基づく ABS の装着を
義務化すると発表した[5]。新型車は 2018 年 10 月発売以降のモデルから、継続生産車も 2021 年 10 月以降か
ら義務化される。

ただし第二種原動機付自転車については、ABS の代わりとしてコンバインドブレーキ(前後連動ブレーキ)シ
ステムを搭載することが認められる。また下述の欠点によりオフロードでは ABS が動作すると不安定になるお
それがあることからトライアルタイプのオートバイは義務化から除外される。なお国土交通省は、車体に ABS
装置を装着していれば、装置をオフにできるスイッチを設置してもかまわない方向を明らかにしている[6]。

航空機
[icon]
この節の加筆が望まれています。 (2022 年 2 月)
欠点
ブレーキを踏んだときのスピードや路面状況によっては、ABS 装着車の方が ABS 非装着車より制動距離が伸び
ることがある。例えば、砂利道や未舗装路、新雪の積もった道路では ABS 非装着車の場合、タイヤをロックさ
せながら砂利や新雪を押しのけて停止する。そのため、砂利や砂、雪がタイヤの進行方向に集まり、大きな抵
抗となるため、ABS 装着車よりも制動距離が短くなる傾向にある。反対に ABS 装着車の場合、砂利などがタイ
ヤを滑らす役目を果たし、ABS 非装着車に比べ制動距離が伸びる傾向にある[7]。

ABS はそうしたデメリットを承知の上で、タイヤがロックして自動車が運転者の意図と無関係な方向へ向きを
変えてしまうリスクの方をより重く見た結果用いられているシステムであり、全てにおいて安全ではない。

脚注
[脚注の使い方]
注釈
^
車体速度 − 車輪速度
/
車体速度
出典
^ 呼称が全メーカーで「ABS」に統一された後も、「4WAS」の商標権は日産が保持し続けており、後に四輪操
舵システムの商品名として採用されている。
^ 制動装置に係る協定規則並びに操縦装置の配置及び識別表示等に係る協定規則の採用に伴う道路運送車両の
保安基準等の一部改正について
^ 本田技研工業 公式HP Honda テクノロジー図鑑:Honda Advanced Brake System 編 ヒストリー[リ
ンク切れ]
^ EU でモーターサイクル用 ABS 装備が義務化[リンク切れ]
^ 二輪自動車への ABS(アンチロックブレーキシステム)の装備義務付け等に係る関係法令の改正について
^ 二輪車の ABS 義務化、ON/OFF スイッチの装備が前提 - response.・2015 年 3 月 13 日
^ 三菱自動車工業株式会社 SAFETY DRIVE
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、アンチロック・ブレーキ・システムに関連するカテゴリがあります。
ブレーキ
電子制御ブレーキシステム - EBD
トラクションコントロールシステム - TCS
横滑り防止装置 - ESC
表話編歴
自動車部品
表話編歴
Sportcar sergio luiz ara 01.svg ポータル 自動車 / プロジェクト 乗用車 / プロジェクト 自動車
カテゴリ: 自動車ブレーキ技術鉄道のブレーキ自動車安全技術
最終更新 2022 年 11 月 12 日 (土) 19:53 (日時は個人設定で未設定ならば UTC)。
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