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こ や ま ちょうじゃ

湖山長者
かね も はなし
~ちょっとざんねんなお金持ちの 話 ~
いけ いけ な まえ こ や ま いけ
これは池です。池の名前は「湖山池」です。

1
こ や ま いけ ひろ た
湖山池はむかし、広い田んぼでした。
た ぜん ぶ いけ
ある日、田んぼが全部、池になりました。
いけ
なぜ、池になったのでしょうか。
とっとりけん ばなし
これは鳥取県のむかし 話 です。
とっ とり けん

鳥取県

2
かね も かね も
むかし、お金持 ちがいました。このお金持 ち
ひろ た いえ きん ぎん
は、広い田んぼと、りっぱな家と、金、銀をたくさ
も むら ひと かね も
ん持 っていました。村 の人 たちは、このお金持
こ や ま ちょうじゃ よ
ちを「湖山長者」と呼んでいました。

3
に ほん はる た う こめ つく
日本では、春に田植えをして、米を作ります。
ちょうじゃ いえ いちにち た う お
長者の家では、「一日 で田植 えを終える」と、
き まいとし ちょうじゃ
むかしから決まっていました。毎年、長者はたく
ひと つか ひろ た た う
さんの人を使って広い田んぼの田植えをしまし
た う いちにち お
たので、田植えは一日で終わっていました。

4
こ とし た う はじ むら ひと
今年も田植 えが始まりました。村の人がたく
て つだ あ さ はや はたら
さん手伝 います。みんな朝早 くから 働 きます。
ちょうじゃ こ とし いちにち た う お かんが
長者は、今年も一日で田植えが終わると 考 え

ていました。

5
ひ ひる ちか やま き
その日 の昼 、近 くの山 からサルが来 ました。
かあ こ ひ と り
お母さんのサルと子どものサルでした。一人の
おんな ひと み
女 の人がサルを見つけました。そして「サルだ、
おお こえ い
サルだ」と大きい声で言いました。

6
はし はじ
サルはびっくりして走 り始 めました。みんなは、
とお やま かえ み
サルが遠くの山に帰るまで見ていました。
み すこ じ かん
サルを見 たのは少 しの時間 でした。しかし、
し ごと おお おく
仕事は大きく遅れました。

7
ゆうがた ちょうじゃ た き た う
夕方 、長者 が田 んぼに来 たとき、田植 えは、
お ちょうじゃ あお
まだ終 わっていませんでした。長者 は青 くなり
いえ き いちにち た う お
ました。「家 の決 まりは一日 で田植 えを終 える
こ とし た う お
こと。これでは今年は田植えが終わらない」

8
ひ よる
「よし、お日さまをもどして、夜になるのを
おそ い ちょうじゃ いえ きん
遅くしよう」と言いました。長者は家から金の

おうぎを持ってきました。

9
すーっ

すっ


ひ た う
そして、お日さまに「もどれ、もどれ。田植え
お い
が終わるまでそこにいろ」と言いながら、おうぎ
さんかい ひ
を三回ふりました。すると、お日さまがすっすっ
たか
すっと高くもどりました。

10
ちょうじゃ い
長者はみんなに言いました。
た う つづ た う
「さあ、みんな、田植 えを続 けよう。田植 えが
いちにち お
一日で終わるように」

11
た う いちにち お ちょうじゃ
田植 えは一日 で終 わりました。長者 はその
よる いえ しょうたい さけ
夜 、みんなを家 に招待 しました。みんなはお酒
の ちょうじゃ うた おど
をたくさん飲みました。長者は歌って踊りました。

12
さけ の そと
みんながお酒を飲んでいるとき、外では
たいへん お みず
大変なことが起こっていました。たくさんの水が
ちょうじゃ た なが はい
長者 の田 んぼに流 れて入 ってきました。そして
みず よる あいだ た みず した ふか
水 は、夜 の 間 に田 んぼを水 の下 に深 くかくし

てしまったのです。

13
つぎ あさ た
次 の朝 、田 んぼはもうありませんでした。そ
ひろ ひろ ひと いけ いま こ や ま いけ
のかわりに、広 い広 い一 つの池 、今 の湖山池

がありました。
ちょうじゃ た ぜん ぶ
長者の田んぼは全部、なくなってしまいました。

14
みず で ちょうじゃ た みず
どうして水 が出 てきて長者 の田 んぼを水 の
した
下にかくしてしまったのでしょうか。
むら ひと ちょうじゃ ひ
村の人は、「長者がお日さまをもどしたので、
か み さま おこ い
神様が怒ったからだろう」と言いました。

とっ とり けん こ やまいけ
鳥取県の湖山池

15
さ い わ と よ た ま き おおいたはつ よ つく かい
再話:豊田真規(大分発わくわく読みものを作る会)


イラスト・図:
と よ た ま き
豊田真規
いらすとや
illustAC
EVENTs Design

さ ん こ う ぶ ん けん
参考文献:

日本児童文学者協会編(1978)「湖山長者」『ふるさとの民
話7 鳥取県』偕成社

野津龍(1979)「湖山長者」『子どものための鳥取の伝説』

鳥取大学教育学部/San‘in Hoso

鳥取県小学校国語教育研究会編(1985)「まいもどったお

てんとうさん」『鳥取のむかし話』日本標準

ほん なか に じ し よ う きん

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