You are on page 1of 71

経営学総論Ⅱ

第8・9回:財務
担当:八井田 収

大阪経済法科大学 1
1.財務の基礎

大阪経済法科大学 2
企業会計の目的

➢ 企業会計:企業の財政状態と経営成績に関して、真実な報
告を提供するもの (「企業会計原則」)

➢ 財務会計:財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利
害関係者の意思決定を誤らせないようにする。(狭義の企業
会計)

➢ 管理会計:(内部の利害関係者である)経営者あるいは社員
の意思決定を誤らせないようにする。

▼ 企業会計原則、企業会計原則注解より作成

大阪経済法科大学 3
財務会計/管理会計
(Financial Accounting/Managerial Accounting)

◼ 企業は、一定期間の経営活動の成果を、「会計」というルールに従って記録する。いわ
ば企業にとっての「成績表」を毎年付けている。

◼ 企業会計には、目的の異なる3つのものがある。
1)株主、債権者や取引先など外部の利害関係者に、企業の実態を公正に伝える
「財務会計」
2)企業の状態を定量的に把握し、経営者の意思決定や業績評価など内部管理に役立てる
「管理会計」
3)法人税額を算出するための「税務会計」

◼ 外部へ報告する財務会計
財務会計は、商法や証券取引法、法人税法などの諸法規に基づいて行われる。
1年間の営業活動の成果を集計した損益計算書や、決算日時点での企業の財政状況
を表した貸借対照表などの財務諸表を作成し、決算書類として株主総会に提出、
承認を得た後に、外部へ公開することが義務づけられている。投資家や取引先は、
この財務諸表の情報をもとに企業の実態を分析し、投資や取引の判断を行う。
4
◼ 内部管理に活用する管理会計
一方、管理会計は、企業内部で、経営者が戦略立案や経営計画の策定を行ったり、
組織や人の業績評価を行ったりするための材料として利用されるもの。財務データ
に限らず、経営状態を把握し、次の施策につなげるために必要な情報を、企業独
自の方法により、ビジネスユニット別や活動別などの意味のある単位で収集・加工
し、原価計算や損益分岐点などの分析に用いる。

近年、経営環境の変化が激しくなる中で、企業は、利害関係者に対してよりタイム
リーで正確な経営状況を報告することが求められる。また、グローバル化が進む金
融・資本市場において、日本市場の魅力度向上が望まれる。これらを背景として、
2006年に成立した金融証券取引法では、各企業に四半期報告制度や財務報告に
関わる内部統制の評価・監査を義務づけた。これにより、投資家にとっては、より
透明性・公正性の保たれた材料をベースにした投資判断を行うことが可能になり、
経営者にとっては、不正の未然防止やガバナンス強化、意思決定スピードの向上
などの効果が期待されている。

大阪経済法科大学 5
企業会計制度

◼ 企業会計原則
企業会計実務の中に慣習として発達したものの中から一般に公正妥当と
認められたところを要約したもの

◼ 財務諸表等規則
証券取引法に関連し財務諸表の用語、様式、作成方法を定めている。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、利益処分(損失処理)
計算書

◼ 商法施行規則
商法が規定している株式会社が作成すべき計算書類の要旨の記載方法を
定める。貸借対照表、損益計算書、利益処分(損失処理)計算書

大阪経済法科大学 6
財務諸表
(Financial Statement)
◼ 財務諸表は主に、(1)損益計算書、(2)貸借対照表、(3)株主資本等変動計算書、
(4)個別注記表から構成される。
◼ 損益計算書と貸借対照表
• 損益計算書は、経営活動の成績を示すもの。「収益」を得るために、いくらの「費用」が
かかり、結局いくら儲かったのか(利益)を集計したもので、一定期間の資金の流れ
(フロー)を表す。
• 貸借対照表は、期末時点における企業の財政状態(ストック)を示すもの。企業がどこ
からお金を調達しているかを示す「負債」と「資本」を右側に表示し、そのお金をどのよ
うに運用しているかを示す「資産」を左側に表示することで、左右をバランスさせる。
連結子会社を持つ企業は、親会社単独のものだけではなく、子会社や関連会社の成
績も合算した連結財務諸表を作成する必要がある。また、連結キャッシュフロー計算
書も作成する必要がある。
◼ 新会社法施行に伴う変更点
2006年5月の会社法施行に伴い、財務諸表も(1)貸借対照表に純資産の部の設定、
(2)株主資本等変動計算書の導入などの変更があった。
純資産の部の導入により、ストックオプションが純資産の部に組み入れられ、国際的
な会計基準の動向に対応し、「少数株主持分」など、負債と資本の中間的項目が整理
された。
大阪経済法科大学 7
損益計算書(P/L)貸借対照表(B/S)

大阪経済法科大学 8
損益計算書(P/L)
損益計算書はP/L(Profit and Loss Statement)とも呼ばれ、企業の一定期間の経営成績
を「収益」「費用」「利益」から見ることができる。つまり、今期(一定期間)、会社はどれだけ
お金を稼いで(収益)、どれだけお金を使って(費用)、いくら残っているのか(利益)がわ
かるようになっている。
• 売上高
売上高とは、会社の本業によって稼いだお金の合計。
• 売上原価
売上原価とは、売れた商品に対してその商品を用意するのにかかったお金のこと。製造業なら
製造するのにかかった費用、小売業なら仕入れをするのにかかった費用などが含まれる。
• 売上総利益
売上総利益とは、売上高から売上原価を引いて求められる利益。「粗利益(粗利)」とも呼ばれる。
※売上総利益は、商品の原価に対していくら利益を上乗せして売り上げたかがわかるた
め、その商品が稼ぐ力を表しているとも言える。

大阪経済法科大学 9
• 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費とは、商品を販売するために使ったお金のこと。「販管費」と略して呼ばれ
る。
「販売費」と「一般管理費」で構成され、「販売費」には販売のために使ったお金(営業部門の人件
費、広告費など)、「一般管理費」には会社を運営・管理するのに使ったお金(間接部門の人件費、
事務所家賃など)が含まれる。
• 営業利益
営業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いて求められる利益。
※営業利益は、本業で稼いだお金から、本業で使ったお金を引いて残ったお金なので、会
社が本業で稼ぐ力を表しているとも言える。

• 営業外収益
会社の本業以外で稼いだお金が営業外収益。
営業外収益は家賃収入や受取利息など、本業以外で稼いだお金のうち、突発的ではないものを
指す。
• 営業外費用
会社の本業以外で使ったお金が営業外費用。
営業外費用は借入金の支払利息など、本業以外で使ったお金のうち、突発的ではないものを指す。
• 経常利益
経常利益とは、営業利益に営業外収益を足して営業外費用を引いて求められる利益。
※経常利益は、名前に「経常」がつく通り会社が「通常の活動」を行って稼ぐ力を表す。
10
また本業の経営成績に会社の財務成績を含めた利益とも言える。
• 特別利益
会社の本業以外で臨時に稼いだお金が特別利益。
特別利益は固定資産を売却した利益などが含まれ、通常は発生しない突発的に稼いだお
金という点が営業外収益と異なる。
• 特別損失
会社の本業以外で臨時に使ったお金が特別損失。
特別損失は災害損失や盗難損失などが含まれ、通常は発生しない突発的に使ったお金と
いう点が営業外費用と異なる。
• 税引前当期利益
税引前当期利益とは、経常利益に特別利益を足して特別損失を引いて求められる利益。
毎期の繰り返しを見込める経常利益に、今期に臨時で発生した損益を含めた利益で、今
期の実際の利益と言える。
なお、特別利益、特別損失は、「特別」な場合以外は発生しない。どちらも発生していない
場合は、経常利益と税引前当期利益が同じ値になる。
• 当期利益
当期利益とは、税引前当期利益から法人税等を引いて求められる利益。「当期純利益」
「最終利益」とも呼ばれる。

大阪経済法科大学 11
貸借対照表(B/S)
貸借対照表はバランスシート(B/S)とも呼ばれ、企業の一定時点の財政状態を「資産」
「負債」「純資産」から見ることができる。つまり、決算時(一定時点)、会社はどんな財産
(資産)を持っていて、その財産の元になるお金(負債・純資産)はどうやって集めてきた
かがわかるようになっている。

◼ 資産とは、会社が集めたお金をどのような状態で持っているのかを表すもので、これ
らの資産は1年以内に現金化することが出来る「流動資産」と長期にわたり会社が保
有することになる「固定資産」とに分けられている。
※貸借対照表の資産は、原則として現金化しやすいものから順番に並んでいるので、
上の段に「流動資産」、下の段に「固定資産」が表示されている。

• 流動資産
現金・預金・受取手形・売掛金・有価証券・棚卸資産など。
• 固定資産
土地・建物・機械など。また、長期間保持する投資有価証券も含まれる。

大阪経済法科大学 12
◼ 負債とは、返さなければならない会社のお金を表すもので、他人資本とも呼ばれる。
負債も資産と同じように、1年以内に返さなければいけない「流動負債」と1年を超えて
返さなければいけない「固定負債」とに分けられている。
※貸借対照表の負債は、原則として返済、支払期日の早い順番に並んでいるので、上
の段に「流動負債」、下の段に「固定負債」が表示されている。
• 流動負債
支払手形・買掛金・未払金・短期借入金など。
• 固定負債
長期借入金・社債など。

◼ 純資産とは株主が会社に入れてくれた資金や利益の積み上げを表すもので、負債と
違い返す必要のないお金で、自己資本とも言う。純資産がマイナスであれば債務超
過の状態であり、倒産のリスクが高いと判断される。
純資産は株主のお金が関係してくる「株主資本」とそれ以外の「株主資本以外」の2
つに分けられる。
• 株主資本
資本金・資本剰余金・利益剰余金など。
• 株主資本以外
その他有価証券評価差額金・新株予約権・少数株主持分など。
大阪経済法科大学 13
実際の貸借対照表

大阪経済法科大学 14
資産の評価

◼ 資産の評価
原則として取得原価を基礎とする。

◼ 減価償却
固定資産は長期間価値を保持するものの、少しづつ価値が減じる
(減価)ため、これを費用配分の原則によって各年に分配する。
主な減価償却法
1)定額法:償却期間にわたり一定額の価値を毎年減じる。
2)定率法:減らす価値比率を一定とする。当初の償却額が多く、
後になるほど少なくなる。

大阪経済法科大学 15
減価償却
(固定資産の場合:Depreciation/無形資産の場合:Amortization)
◼ 減価償却とは、固定資産の取得原価を法令で定められた耐用期間に配分し、
毎期費用化していく手続きのこと。

◼ キャッシュアウトのない費用
期間配分して費用化することには2つの意味がある。
固定資産(土地を除く)は時間の経過にともなって物理的に減耗したり、技術
的に陳腐化したりすることで、その機能が低下していく。
• 1つは、この消耗分を貸借対照表上の資産簿価から毎期減価すること。その
際、資産が売上としての成果を生み出す耐用期間で費用計上のバランスを
取る。費用計上の方法には定額法と定率法の2つの方法がある。
• もう1つは、設備投資が必要になる将来に備えて、資金を内部留保しておくこ
と。減価償却費は損金として費用処理される。実際にキャッシュアウトが生じ
ることはない。計上額は当期利益とは別に企業の内部に留保されることにな
る。キャッシュフロー計算においても、非支出性の費用として当期純利益に足
し戻される。
大阪経済法科大学 16
◼ 40年ぶりの抜本的な制度改正
一方で、近年の技術革新に伴い、法律で定められた耐用年数や償却可能
限度額と実情のズレが問題視されるようになった。そこで平成19年度の税
制改正で減価償却に関する制度改正が行われた。
その結果、従来は取得価格の95%であった償却可能限度額が廃止され、
全額償却が可能になった。また、設備の実耐用年数との隔たりが特に問題
視された3つの設備(フラットパネルディスプレイ製造装置ほか)に対して、先
行的に法定耐用年数の短縮が実施された。企業にとっては全額償却により、
損金計上できる費用が増え、税金負担が軽くなる。また耐用年数の短縮で、
投資資金の早期回収が可能となり、投資の促進につながることになる。

大阪経済法科大学 17
定額法か定率法はどのように決まるのか

選択できる減価償却の方法は資産の区分に応じて、次のように決められている。
(平成28年4月1日以後に取得した資産)
•建物:定額法
•建物附属設備及び構築物:定額法
•機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品:定額法または定率法
•鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物):定額法または生産高比
例法
•鉱業用減価償却資産(上記以外):定額法、定率法または生産高比例法
•無形固定資産及び生物:定額法
•鉱業権:定額法または生産高比例法
•リース資産:リース期間定額法

大阪経済法科大学 18
キャッシュフロー計算書
( Cash-Flow Statement)
◼ キャッシュフロー資金の増加又は減少。ただし資金とは、現金(含む当座、
普通預金)及び現金同等物(容易に換金可能かつ価値変動リスクが低
い短期的投資)の合計。
◼ 利益とキャッシュ
現金主義←→【企業会計原則】発生主義、期間損益計算

• 営業活動によるキャッシュフロー
当期純利益、減価償却、受取/支払利息、法人税支払等
• 投資活動によるキャッシュフロー
設備投資、有価証券投資、貸付など
• 財務活動によるキャッシュフロー
銀行借入/返済、社債発行/償還、株式発行など

大阪経済法科大学 19
フリーキャッシュフロー
(Free Cash Flow)

◼ キャッシュフローは、現金(キャッシュ)の流れを総称する概念。

◼ 重要視されるフリーキャッシュフロー
キャッシュフロー計算書では、経営におけるお金の流れを、①営業活動による
キャッシュフロー(日常の営業活動による資金の増減)、②投資活動による
キャッシュフロー(投資活動(設備投資)による資金の増減)、③財務活動によ
るキャッシュフロー(財務活動による資金の増減)の3つに区分して捉えている。
企業にとって重要なキャッシュフローは、自由に使える余剰資金であるフリー
キャッシュフローである。これは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフ
ローを差し引く方法が一般的で、「当期純利益+減価償却費-運転資本の増
減-配当金」(間接法)で算定される。

大阪経済法科大学 20
実際のC/F計算書

21
◼ 注目されるキャッシュフロー経営
キャッシュフローを把握することは、企業活動を把握することにほかならないため、
現金の流入や流出に着目し、フリーキャッシュフローの最大化を図るキャッシュフ
ロー経営が注目されている。
従来、企業経営の成果を把握する指標としては、売上、経常利益等の損益計算書
上の指標が一般的でした。しかし、企業経営の成果を「どれだけのキャッシュ(現
金資金)を稼ぎ出せるか」ということで評価することは合理的であると考えられる。
また、企業がPlan、Do、Seeの経営管理サイクルにおいてもキャッシュフローに着
目することで、本当に儲かる事業への投資や評価、本当に儲かる施策の判断と実
行が可能となる。結果として、経営強化・財務安定化が実現し、ひいては銀行や投
資家にとって魅力的な融資先・投資先となり、資金調達力も増すことにつながる。

大阪経済法科大学 22
減損会計
(Accounting for Impairment)

◼ 減損会計とは、固定資産の収益性が低下し、その投資額を回収する見込み
がなくなったときに、帳簿価額を一定の条件のもとで回収可能価額まで減額
する会計処理。

◼ 実態に即した情報を開示する
固定資産の実質的な価値が帳簿価額を大きく下回るにもかかわらず、その
実態が財務諸表に反映されない場合、適切な投資情報が提供できないば
かりか、財務諸表そのものに対する信頼性も損なわれかねない。
そのため、商法上の大企業や上場企業では、2006年3月決算期以降、減損
会計の導入が義務づけられた。この結果、不動産業や鉄道業、小売業など、
事業用有形固定資産を多く保有する業種は特に大きな影響を受けた。なお、
有形固定資産に加え、無形固定資産である「のれん」も減損処理の対象と
なる。

大阪経済法科大学 23
◼ 企業の資産効率向上を後押しする
減損の場合、回収可能な現在の資産価値と帳簿価額との差を特別損失と
して損益計算書に計上し、貸借対照表上の資産を同額だけ減少させます。
ここで採用する現在の資産価値は、将来生み出すと想定される利益から逆
算した現在価値と、時価で売却した場合の金額の高いほうになる。
減損会計を導入すると、企業は事業投資の成否を開示し続けなくてはなら
ず、企業に事業用資産を継続的に選別させ、資産効率のよい経営への変
革を促す。

大阪経済法科大学 24
税効果会計
(Tax Effect Accounting)

◼ 税効果会計とは、企業会計上の収益または費用と税務会計上の益金または
損金との認識差異が発生した際に必要となる会計上の手続きで、それらにか
かる法人税等の額を適切に期間配分することをいう。

◼ 税効果会計を導入しない問題点
例えば、不良債権の償却が、税務上その期の費用として認められない場合
(次図)、X期の課税所得は、総額で200、実効税率を40%とすると、税額は80
となる。一方、(X+1)期にX期と同じ150の税引前利益を計上した場合、貸倒
要件を満たし引当金が償却されると、税額は40となる。当期と翌期では、税
引前利益が同額であるにもかかわらず、税負担率がそれぞれ53.3%、26.7%
となり、税額と税引前利益との対応関係が歪むことになる。

大阪経済法科大学 25
◼ 税効果会計導入効果
税効果会計を適用すると、貸借対照表に法人税等の前払額に相当する繰
延税金資産が計上され、損益計算書に法人税等の調整額が計上され、税
額と税引前当期純利益とが期間的に対応することになる。
下図の例で税効果会計を適用すると、X期に支払う貸倒引当金に相当する
税額20は、将来に支払うべき税金を前払いしたものとみなし、会計上、この
20を法人税等の支払額の80から控除することができる。また同時に、その
20を繰延税金資産として貸借対照表に計上することができる。これにより企
業にとっては、自己資本を上げる効果がある。

26
資本コスト/EBITDA
(Cots of Capital/Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)
◼ 企業価値は、企業全体から将来にわたって発生するキャッシュフローを現在
価値に割り引くことで算出される。つまり、将来キャッシュフローとして
EBITDAの予測値、割引率に資本コストを用いれば、企業価値を推定するこ
とが可能になる。
近年、メディア等で企業価値の向上が叫ばれているが、安定的なキャッシュ
フローの増加、最適な資本構成の実現による資本コストの最小化が企業価
値の向上につながると考えられる。

◼ 資本コスト
資本コストは、企業が資本を調達し、それを維持するために必要となるコスト。
通常、投資家はリターンを期待して企業に投資する。企業側からすると、資本を
提供してもらった投資家に対して、その対価を支払わなければならない。企業に
とって、資本にはコストがかかっている。
資本を調達する手段には、負債と株式がある。負債での調達コストは金利、株
式での調達コストは株式利回りに相当する。資本コストの算出方法には一般に
WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)という概念が用
いられ、負債による調達コストと株式による調達コストを加重平均して求める。27
◼ EBITDA
EBITDAは、キャッシュフローの一種。支払利息、税金、減価償却費を控除
する前の利益のことであり、企業の利益水準を表す指標の1つとして用いら
れる。国により異なる会計基準、金利水準、税率の影響を最小限にした利益
を表しているため、企業の利益を国際比較する際にも有用。
具体的には、営業利益に受取利息、配当金、減価償却実施額を加えて算出
することができる。また、その概念の近さから、EBITDAは営業キャッシュフ
ローの代替として簡便的に使われることもある。

国際的な企業買収の際に被買収企業の評価に使われる
28
PBR(株価純資産倍率)/PER(株価収益率)
(Price Book-value Ratio/Price Earnings Ratio)

◼ PBR(株価純資産倍率)は、株価を1株当たりの純資産で割った値で、株価が1
株当たり純資産額の何倍まで買われているのかを表す。
PER(株価収益率)は、株価を1株当たりの年間税引後利益で割った値で、株
式市場価格と会社の1株当たり利益との関係を表す。

◼ フロー面とストック面の指標
PBRによって資産を基準にした企業の資本利用効率が測定される。PBRが高
い企業は、その経営の総合力を高く評価されていると判断できる。また、一般
的にPERが高いほど、利益に比べ株価が割高で、逆にPERが低いほど株価が
割安であることを示す。ただし、PERに基準は存在しないため、業界水準や同
業他社との比較等を踏まえ、判断する必要がある。
通常はPBRがストック面、PERがフロー面からの指標であることから、単独指標
として用いられることは少なく、補完関係にある指標として組み合わせて使用さ
れる。

大阪経済法科大学 29
◼ 時価総額を高めてPBR改善の必要性
バブル崩壊後、日本企業はリストラを実施したため、株価に対して税引後利
益が低い状態が続き、PERが40を超えた企業もあり、海外企業と比べて株
価の割高感が強い傾向にあった。しかしその後、リストラにより収益性が改
善し、2007年12月時点での東証上場企業の平均PERは20程度となり、他の
先進国レベルまで低下している。

1990年代後半から不動産・株式の値下がりや倒産に対する懸念から、PBR
が1を下回る企業が増加した。PBRが1を下回るということは、時価総額が解
散時の資産を下回って評価されているということである。PBRが1を下回ると
買収リスクが高まる。
減損会計の義務化によりPBRの信頼性が高まり、PBRは改善傾向にあるが、
いまだPBRが1を割る企業も数多く存在する。将来への成長の可能性をしっ
かりと示し、時価総額を高めることは買収防衛の観点から重要となる。

大阪経済法科大学 30
計算書類等の監査
◼ 会社法435条
株式会社は法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借
対照表、損益計算書その他)及び事業報告並びに、これらの附属明細書を作
成しなければならない。
◼ 計算書類の監査等(大企業の例)会社法436条計算書類(含む附属明細
書)
→監査役の監査
→会計監査人の監査
→取締役会の承認
→定時株主総会の承認
◼ 事業報告の監査等(大企業の例)会社法436条
事業報告(含む附属明細書)
→監査役の監査
→取締役会の承認
→定時株主総会での報告
大阪経済法科大学 31
国際会計基準と日本会計基準の考え方

大阪経済法科大学 32
◆原則主義(プリンシプル・ベース)
IFRSは、財務報告に関する原理・原則を明らかにするとともに、例外規定は極力認めず、その解釈
や運用は、企業の判断に任せる考え方。一方、日本基準は、詳細で具体的な規定や数値基準を設
ける対照的な「細則主義(ルール・ベース)」と云う考え方で、制定されている。

◆資産・負債アプローチ
IFRSは、資産・負債の評価とその差額としての純資産、つまり、財政状態計算書に計上されている
財産価値を重視している。その財産価値の、会計期間の期首から期末までに増加した(または減少
した部分を利益(または損失)として認識する。利益算出の考え方を「資産・負債アプローチ」と云い
ます。そしてこの認識された利益は「包括利益」と呼ばれている。
従来の日本基準では、収益から費用を差し引いた利益を重視し、その計上された純利益の結果、
純資産が増加すると云う考え方で、これを「収益・費用アプローチ」と云う。

◆公正価値アプローチ
IFRSでは、将来の経済的便益の提供能力の算定と云う考え方から、公正価値による評価が重視さ
れる。公正価値は、「・・・・・当事者間で資産が交換され、負債が決済される価額」と定義されるが、
平たく云えば、「時価」を指すが、IFRSでは、資産や負債の公正価値変動額が「包括利益」の一部を
構成するので、「資産・負債アプローチ」と資産・負債の公正価値評価と包括利益の算定には密接な
関係がある。

◆その他、財報告における経営管理区分(セグメント)を重視した「セグメント・アプローチ」(日本基
準でもセグメント情報に採用済み)、財務情報の比較可能性の重視、形式より実質(実態)を優先し
て、企業の経済的実態をを明らかにしようとしている考え方等がIFRS基準書全体に共通する特徴と
なっている。
大阪経済法科大学 33
国際会計基準と日本の会計基準の主な違い
項目 日本基準 国際会計基準(IFRS)
日本の経常利益に相当する項
利益 経常利益がある
目なし

相手会社の資産を簿価評価で
M&A ①資産評価 必ず時価評価
引き継ぐ例外処理が存在

M&A ②のれん代 20年以内で定期償却 定期償却せず、減損処理

積立不足は一定期間で費用処
年金資産 積立不足を貸借対照表に反映

在庫評価 後入先出法の採用可能 後入先出法は禁止

大阪経済法科大学 34
2.経営指標

大阪経済法科大学 35
(1)収益性分析
(Profitability Analysis)
◼ 収益性分析とは、財務分析の一手法で、企業がどれだけ効率的に利益を生
み出しているかを分析する手法。収益性分析では、基本的に利益の絶対額
ではなく、利益率を計算することで、企業規模の大小によらず、企業間の収
益力を比較できる。

◼ 売上高利益率の分析が基本
収益性分析では、売上高に対する利益指標の割合をみる売上高利益率の
分析が基本となる。代表的指標は、①売上高総利益率、②売上高営業利益
率、③売上高経常利益率、④売上高当期純利益率。①は提供する商品・
サービスの収益力を、②は本業の収益力を、③は営業外損益を含めた事業
の収益力を、④は企業の最終的な収益力をみることができる。また、⑤売上
高販管費率のように、事業活動にかかる費用の割合をみる指標や、⑥フリー
キャッシュフローのように、翌期に自由に使えるキャッシュ(現金)の量をみる
指標もある。
一方、資本に着目した⑦ROA、⑧ROEといった指標による分析も重要。これら
は、資本に対する効率性を示していることから、効率性分析に分類されること
もある。 36
◼ 経年比較と同業他社比較を行う
収益性分析では、同一企業の経年比較と、同業他社の数値との比較を行う。
同業他社との比較は、当該企業の競争力を理解するのに有効である。その際、
いずれの指標も、業界・業種により平均値が大きく異なることに注意が必要。
例えば、同じ小売業でもコンビニエンス・ストアの売上高営業利益率の平均値
は約14%だが、家電量販店の平均値は約2%(*)。このように業界や業種の平
均値を掴んでおくことは、収益性分析を行う上で重要。

大阪経済法科大学 37
ROE/ROA/ROI
(Return on Equity/Return on Assets/Return on Investment)
◼ ROE(株主資本当期純利益率)、ROA(総資産利益率)、ROI(投下資本利益率)は、
企業の投資収益性を評価する指標。

◼ 指標の算出方法と注意点
• ROEは、株主資本に対して、どれだけのリターンがあったのかを示す指標で、当期純
利益を株主資本で割った比率で表される。株主資本と他人資本の割合を変更するこ
とで、容易に操作が可能な指標であることに注意が必要。
• ROAは、企業の所有する総資産に対してどれだけのリターンがあったのかを示した値。
利益を総資産で割った比率で表される。利益には様々な利益が使われるが、ROAは、
調達資本の資本構成の影響を可能な限り除いた上で収益性を評価することが望まし
いため、経常利益に支払利息を足し戻したものを使うことがふさわしいと考えられる。
競争力の源泉がブランド、営業力など資産に反映されない企業、業界の場合には、指
標の重要性が小さくなることに注意が必要。
• ROIは、総資本から事業活動(特定事業)への投下資本(運転資本などの流動資産、
有・無形固定資産など)を選別し、投下資本に対してどれだけのリターンがあったのか
を示した値。投下資本が対象とする事業活動の営業利益を投下資本で割った比率で
表される。投下資本を選別する際に恣意性が入り込む余地があることに注意が必要。
大阪経済法科大学 38
◼ 財務ツリー分析により指標を評価
• これらの指標を使って投資効率性の良否を判別するためには、財務ツ
リー分析を行うことが効果的。
• 財務ツリー分析では、指標の要素分解を進め、個別要素について競合他
社をベンチマークしながら経年比較を行う。これにより、指標向上のため
に改善が必要な要素の特定化と、あるべき戦略の策定に役立てることが
できる。

参考)自社株買いとROE向上
ROEとは投資家に対してこれだけの株主資本でこれだけ当期純利益を稼ぐことが出
来ますよという投資収益性を表す指標のひとつであるが、自社株を購入して消却する
と株式の発行数は減少し、株主資本はスリム化する。株主資本がスリム化すれば当
期純利益と株主資本の比率であるROEは改善する。 39
(参考)自社株買いとROE、PBR

自社株買いとは、企業が発行している株式を、自らの資金を使って市場から買い
戻すこと。自社株買いは株価の上昇に繋がるので、プラスの材料として株主(投
資家)に喜ばれる。なぜ株主還元になるかというと、自社株買いをして“消却”をす
ることで自社で発行している株式数が減り、その結果「PER」と「ROE」が改善され
て株価が上がりやすくなる。

大阪経済法科大学 40
• PER=株価÷1株あたりの利益
「PER」は、利益と株価の関係から割安性を測る指標。PERの数字が
小さいほど割安。自社株買いをすると、このPERが小さくなって割安に
なることで、需要が増えて株価の上昇が期待できる。

大阪経済法科大学 41
(2)成長性分析

◼ 売上高などの対前期比較を行うことにより、企業の将来への
成長の可能性を判断する為の分析。

◼ 売上高が伸びているから良いというわけではなく、その伸び
率以上に人件費が伸びていたり、利益の伸びが売上高の伸
びを下回る場合は注意が必要。

大阪経済法科大学 42
◼ 成長性分析の指標
• 増収率 :売上高の前期に対する伸び率を表す
増収率=(当期売上高/前期売上高-1)×100(%)

• 増益率 :経常利益の前期に対する伸び率を表す
増益率=(当期経常利益/前期経常利益-1)×100(%)

*ここでは経常利益を使用したが、営業利益やその他の利益でも使用
できる。

大阪経済法科大学 43
◼ その他

• 総資産増加率 = (当期総資産 - 前期総資産)


/ 前期総資産 × 100

• 人件費増加率 = (当期人件費 - 前期人件費)


/ 前期人件費 × 100

このふたつは、将来の成長に必要な投資をすると増加する値である。し
かし、会社のキャパシティ以上に増加するのは良くない。一般的に、この
二つの指標は、売上高成長率を下回っていればバランスのとれた成長を
していると見ることができる。

大阪経済法科大学 44
(3)安全性分析

◼ 安全性分析とは、企業の倒産リスクを評価する手法の総称。
狭義には、企業の支払能力(solvency)の分析と言い換えることができ、
短期支払能力と長期支払能力に分類される。
◼ 支払能力に問題がある企業はビジネスチャンスを逸しかねないだけで
なく、買掛金や支払手形の返済ができずに最悪の場合は倒産に追い
込まれる可能性もある。
◼ 短期支払能力は、一般的に流動性(liquidity)とも呼ばれる。短期的な
支払能力を表す流動性の代表的な比率としては、「流動比率」と「当座
比率」が挙げられる。
◼ 一方、長期的な支払能力を表す流動性の代表的な比率としては、「株
主資本比率」と「固定比率」が挙げられる。

大阪経済法科大学 45
◼ 流動比率

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

この比率は短期に支払期限が到来する流動負債に充当することが可能な
流動資産をどの程度持っているかを示す比率で、歴史的に「Two to One
Ratio」とも呼ばれてきた。すなわち、200%以上が好ましい比率。
しかし現実には、ほとんどの日本企業が200%にはるか及ばない。金融機関
が企業へ貸し付けを行う審査の際には、債務の弁済能力を第一に考えるこ
とから、こうした比率を目安として用いていた。
現在でも、短期支払能力を分析する際の最もポピュラーな指標である。

大阪経済法科大学 46
◼ 当座比率

当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

当座比率は、アメリカの銀行業だったアレキサンダー・ウォールが開発した
財務比率であり、企業の短期支払能力を分析する比率。
流動比率は分子に流動資産を用いるが、当座比率は分子に当座資産を用
いる。流動資産に含まれる棚卸資産は、売却しなければ現金化することは
できないため、短期負債の返済に即座に利用できるとは限らない。
たとえ流動比率が200%であっても、流動資産のほとんどが棚卸資産である
場合、負債の返済に充当することができず弁済不能に陥いる。そこで考え
出された指標が、当座比率。
分子には、現金預金、売掛金、受取手形、有価証券といった換金性の高い
資産が含まれる。一般的に、当座比率が100%を超えていれば、その企業は
安全性が高いとされている。

大阪経済法科大学 47
◼ 自己資本比率

自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本 × 100

流動比率、当座比率は、短期の支払能力を評価する際に利用できる指標。
これに対して、企業の長期的な支払能力や全体としての安全性を測定する
指標が「自己資本比率」「負債比率」。
総資本のうちの自己資本(株主資本)の割合を示すのが、自己資本比率で
す。自己資本比率が高いということは、利子を払う負債がそれだけ少ないこ
とを意味する。それゆえ経営の安定度も高まる。これらは同時に、外部の債
権者にとっての安全度が高いことを意味する。

◼ 負債比率。
負債比率 = 負債 ÷ 自己資本 × 100%
これは、貸借対照表の資本と負債の比率を表す比率。自己資本比率が高
いほど安全性が高まるのに対して、負債比率は低いほど安全性が高まる。

大阪経済法科大学 48
◼ 固定比率・固定長期適合率
• 長期的な安全性を評価する際に長期的な設備投資とそれに必要な資金の源
泉に関する比率がある。長期的な投資は、短期的に回収することができない
ので、長期的投資は長期資金で賄うべきという考え方を用いる。そのための
指標が「固定比率」「固定長期適合率」である。

固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 (純資産) × 100

固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷ {自己資本 (純資産) + 固定負


債} × 100

• 固定比率は、長期的な投資である固定資産を、返済の必要のない自己資本
でどの程度賄っているかを評価する。比率は低い方が好ましく、できれば100%
以下が望ましいといわれている。
• 固定長期適合率も、伝統的に重視されてきた指標。「固定資産を自己資本で
なくても長期的な負債でカバーすればいい」という考えからこの比率は利用さ
れている。
大阪経済法科大学 49
(4)損益分岐点分析(BEP)

• 固定費:生産・販売ゼロでもかかり、生産・販売量に左右されない費用
• 変動費:生産・販売に応じてかかってくる費用
大阪経済法科大学 50
損益分岐点の求め方
損益分岐点、つまり損益ゼロになる売上高というのは、どんな場合か。
損益がゼロであるから、< 売上高 = 経費の合計 >である。
この経費を、売上と連動して増減するのか、売上に関係なく(売上ゼロでも)
発生するのかに分ける。これが「変動費」と「固定費」である。
< 売上高 = 変動費 + 固定費 >

51
固定費型と変動費型の比較

※固定費型と変動費型
同じ売上、利益でも、総費用に
占める固定費と変動費の割合が
異なると収益構造は大きく異なる。

売上変動時の影響
・固定費型:
売上高線と総費用線の傾き差が大きく、
少しの売上の増減で利益が大きく変化
する。(高リスク、高リターン)
・変動費型
固定費型に比べ収益への影響が小さ
い。一般的に固定費型より早期に黒字
化可能。(低リスク、低リターン)

大阪経済法科大学 52
例題

•お酒を販売している。
•お酒は、1本:1000円で販売。
•仕入れの値段は、1本:600円。
•給料は20万円。
お酒を何個販売したら儲かるようになるか。
これを計算するのが損益分岐点分析。

大阪経済法科大学 53
3.投資評価

大阪経済法科大学 54
管理会計
➢ 意思決定会計
• 経営管理者各階層において行われるさまざまな意思決定に役
だつ有益な会計データの提供を目的とする。
① 設備投資計画など長期的、戦略的、基本構造的なもの
② 製品の組合せや価格設定などの短期的、戦術的、日常業務的
なもの

➢ 業績評価会計
• 事前計算としての予算編成から事後計算としての差異分析や
業績評価など

大阪経済法科大学 55
NPV/IRR
(Net Present Value/Internal Rate of Return)

◼ NPV(正味現在価値):NPV法では、投資により生み出される
キャッシュフローの現在価値と初期投資額を比較することで、そ
の投資を評価する。NPVがプラスであれば投資価値があると判
断される。

◼ IRR(内部利益率):IRRとは投資の利回りのことである。IRR法で
は、同程度のリスクを持つ投資案件の利回り(ハードル・レート)
と当該投資機会の利回り(IRR)を比較することにより、投資を評
価する。IRRはNPV=Oとなる割引率として定義される。IRRが
ハードル・レートより大きければ投資価値があると判断できる。

56
NPV法を使った投資判断

大阪経済法科大学 57
NPV法を使った計算例

NPV=FCF1/(1+r) + FCF2/(1+r) 2 + FCF3/(1+r)3 +…+ FCFn/(1+r)n - 初期費用

この式を用いて、初期投資が4,000万円、毎年1,000万円のリターン(FCF)が5年
間続くと予測される投資案件を考えてみる。割引率を5%とすると、NPVは次のよ
うに算出される。

NPV=(1000/1.05+1000/1.052+1000/1.053+1000/1.054+1000/1.055)−4000
=952+907+864+823+784−4000=330

この計算例では、NPVは330万円なので、投資した方が良いと判断できる。

大阪経済法科大学 58
NPVとIRR

大阪経済法科大学 59
例題1

今年、ある事業に100億円投資すると、3年後に確実に
120億円の現金が回収できる。3年物の割引率が8%の
場合、この投資を行うべきか。

大阪経済法科大学 60
例題2

ある事業の初期投資額が100億円で、来年度から3年
間にわたって、30億円、40億円、50億円のキャッシュフ
ローが確実に生まれるものとする。割引率が8%である
場合、この投資を実行すべきか。

大阪経済法科大学 61
4.資金調達活動

大阪経済法科大学 62
資金調達

➢ 直接金融
出資などの形で金融市場から直接資金調達する。

➢ 間接金融
借入等により銀行など金融機関を通じて、金融市場から間接的
に資金調達する。

大阪経済法科大学 63
企業の資金調達と貸借対照表

借方 貸方 資金の種類

他 買掛金 企業間信用
人 手形
負債 資
資 資 本
金 金 銀行借入 間接金融
の の 政府系借入
運 調
用 達
形 資産 源
態 泉 社債発行
直接金融
自 株式発行
資本 己
資 利益留保
本 自己金融
減価償却

64
株式市場
• 新株発行の場合、通常は証券会社が引き受け、投資家を様々な方法
で募る。
• 株式市場は発行済株式について売買取引を行う市場
• 株式が取引されている企業を上場企業という。(一部上場、二部上場)
• 証券取引所:NYSE、ロンドン、フランクフルト、東京、香港など
• 株価指数:各々の株式市場における代表的銘柄の取引価格を加重
平均したもの

発行市場 店頭取引
新規公開、増資

株式市場

既発行株式 証券取引所、店頭
流通市場
65
5.有価証券報告書

大阪経済法科大学 66
有価証券報告書

• 証券取引法第24条に基づき、上場会社など有価証券発行者
である会社が、事業年度終了後3カ月以内に、会社の目的、
役員、営業及び経理等の状況及び事業の内容に関する重
要事項を記載して内閣総理大臣に提出する書類。
• 1年決算の会社は事業年度中間で半期報告書を提出する。
これらは公認会計士または監査法人の監査証明を要し、仮
に虚偽及び不実の記載がある場合、一定の制裁が科される。

大阪経済法科大学 67
有価証券報告書の内容
1. 企業情報 1. 経理の状況
1. 企業の概況 1. 連結財務諸表等
1. 主要な経営指標等の推移 1. 連結財務諸表
2. 沿革 1. 連結貸借対照表
3. 事業の内容 2. 連結損益計算書
4. 関係会社の状況 3. 連結包括利益計算書
5. 従業員の状況 4. 連結株主資本等変動計算
2. 事業の状況 書
1. 業績等の概要 5. 連結キャッシュ・フロー計算
2. 生産、受注及び販売の状況 書
3. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 6. 連結附属明細表
等 2. その他
4. 事業等のリスク 2. 財務諸表等
5. 経営上の重要な契約等 1. 財務諸表
6. 研究開発活動 1. 貸借対照表
7. 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フ 2. 損益計算書
ローの状況の分析 3. 株主資本等変動計算書
3. 設備の状況 4. キャッシュ・フロー計算書
1. 設備投資等の概要 5. 附属明細表
2. 主要な設備の状況 2. 主な資産及び負債の内容
3. 設備の新設、除却等の計画 3. その他
4. 提出会社の状況 2. 提出会社の株式事務の概要
1. 株式等の状況(株式の総数、新株予約権 3. 提出会社の参考情報
の状況、大株主の状況など)
1. 提出会社の親会社等の情報
2. 自己株式の取得等の状況
2. その他の参考情報
3. 配当政策
1. 提出会社の保証会社等の情報
4. 株価の推移
2. 監査報告書
5. 役員の状況
68
6. コーポレート・ガバナンスの状況
Form10-K/Form20-F

• 株式公開企業や登録証券の発行体、株主数500人以上の企業、
総資産100万ドル以上の企業に対して、米国証券取引委員会
(SEC)への提出が義務付けられている。
(日本での日本の有価証券報告書にあたる年次報告書のこと)

• Form10-Kは、米国内企業が対象
• Form20-Fは、米国外企業が対象

大阪経済法科大学 69
【要点】
◼ 企業会計:財務会計と管理会計
◼ 財務諸表:①損益計算書(P/L)、②貸借対照表(B/S)、③キャッ
シュフロー計算書(C/F)
◼ 減価償却:定額法と定率法
◼ 減損会計:固定資産の収益性が低下し、その投資額を回収する
見込みがなくなったときに、帳簿価額を一定の条件のもとで回収
可能価額まで減額する会計処理。
◼ 税効果会計:企業会計上の収益または費用と、税務会計上の益
金または損金との認識差異が発生した際に必要となる会計上の
手続き
◼ 企業価値評価:企業全体から将来にわたって発生するキャッシュ
フローを現在価値に割り引くことで算出される。つまり、将来キャッ
シュフローとしてEBITDAの予測値、割引率に資本コストを用いれ
ば、企業価値を推定することが可能になる。
◼ 国際会計基準と日本会計基準
大阪経済法科大学 70
【要点】
◼ 経営指標
• 収益性分析
• 成長性分析
• 安全性分析
• 損益分岐点分析→BEPの求め方参照
◼ 投資評価:NPV、IRR→例題参照
◼ 資金調達:直接金融、間接金融
◼ 有価証券報告書
◼ SECの場合:Form10-K Form20-F

大阪経済法科大学 71

You might also like