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TOPIC 1 振動実験

1. 実験目的
1.1. 実験 1 1 自由度の振動
か ど う
機械の振動は,稼働している機械において常に生じている現象であり,機械の効率,
寿命,破損にも関わってくる.また,破損に至らなくても騒音や振動で不快に感じる
ことがある.そのため,振動学は機械工学を学ぶ上で重要な位置を占めている.振動
において最も主要な事項は,全ての振動系にはそれぞれの個別の特性があるというこ
とである.
1.2. 実験 2 はりの振動(自由振動と強制振動)
機械の振動は既に常識的な問題となった言っても良いが,最も主要な事項は全ての
振動系にはそれぞれ個別の特性があるということである.その特性を表すものは,自
由振動の固有の周期であって,次に減衰の種類と大きさである.
強制振動では外部からの働きかけによってそれと同じ任意の振動数で振動するが,
その応答の仕方はそれぞれ異なり,やはり振動系の特性である固有振動数と減衰によ
っ て 決 定 さ れ る .
ここでは片持ちはりの振動を例にとって実験的に,しかもできるだけ感覚的に,主
として上記の事項について十分な理解を習得することを目的とする.

2. 実験手法
2.1. 実験 1 1 自由度の振動実験手法(1 週目)
2.1.1. 実験 1 基礎知識
自由振動(Free vibration)
振動系(Vibration system)がある時刻に平衡の状態からずれているために起こる,外
部からの働きかけによらない振動を自由振動という.このような振動はその系自身の
性質によって定まる固有の周期(period)T をもつ.1 秒間の振動回数 f=1/T を固有振動数
(natural frequency)という.
1 自由度系の自由振動(Free vibration of system with single degree of freedom)
図 1 のような系を考える.質点は質量 m をもち,図の x 軸方向だけに動くことがで
きる.質点の位置はばねの自然長であるときの位置を原点として,その変数を x とす
る.取り付けられているばね定数を k とし,ばねと復元力の間にはフックの法則が成
り立つものとする.また,ばねの質量は無視する.この質点の運動方程式は,ニュー
トンの第二法則より,
d 2x
m = −kx (1)
dt 2
となる.
ここで加速度を x とすると,次のように書くことが
できる.
mx = − kx
mx + kx = 0 (2)
式(2)が 1 自由度系の調和振動の運動方程式である.
次に図 2 のように天井から吊り下げられたばねにおも
りが取り付けられ,上下に振動する場合を考える.この
図 1 1 自由度振動系モデル
モデルでは,質点がつりあいの位置のとき,ばねはすで
に伸びている.ばねが自然長であるときのばねの先端位
置を原点とし,質点の位置を変数 X,つりあいの位置で
のばねの伸びを x とおく.その時の質点の運動方程式は
mX = mg − kX (3)
で表される.
また,ばねの伸び X をつりあいの位置での伸び x s とつ
りあいの位置からの伸び x で表すと, 図 2 天井から吊り上げら
X = x + xs (4) れたばね‐質量系の自由振
となり,ばねによる復元力と重力がつりあっているの 動
で,
mg = kx s (5)
となる.
式(3)に式(4),(5)を代入すると,次のようになる.

mX = kx s − (kx + x s ) = −kx (6)

また, X − x なので,最終的に運動方程式は以下のようになる.


mX = −kx (7)
式(2)と式(7)は同じ式である.つまり,質点に重力が働いている場合でも,つりあい
の位置を原点にとれば,重力を考慮せずに運動方程式を立てた場合と同じになる.式
(2),(7)は以下のように展開できる.
k
x + x=0
m

x +  n 2 x = 0 (8)
k g
ここで,  n = = (9)
m xs

この𝜔𝑛 は振動系に固有の値である.自由振動では,この振動数で振動するので固有
角振動数あるいは固有円振動数と呼ばれる.また,この振動の周期を固有周期といい,

T = 2 /  n [ s ] で求められ,固有振動数は f = 1 / T [ s −1 ] より求められる.

2.1.2. 実験 1 使用機器

変圧器

センサ(CH A)

電力増幅器 FFT アナライザ

振動発生装置 チャージアンプ

図 3 実験システム構成図

⚫ FFT アナライザ 小野測器 CF-5220


⚫ チャージアンプ 小野測器 CH-1200
⚫ 電力増幅器 IMV CO. PET-05-05AM
⚫ 振動発生器 IMV CO. PET-01-0A
⚫ センサ
⚫ 変圧器
2.1.3. 実験 1 実験手順
計測 1
(1) 電力増幅器にある frequency ダイヤルを回し,振動数を 10Hz に設定する.
(2) Output を 1 目盛り目に合わせ,振動を発生させる.
(3) FFT アナライザにより得られた波形をカメラで撮影する.
(4) 周期および全振幅を測定する.
(5) 振動数が 20,30,40,50Hz の場合についても実験を行う.

計測 2
(1) 振動数を 10Hz に設定する.
(2) Output を 1 目盛り目に合わせる.
(3) FFT アナライザにより得られた波形をカメラで撮影する.
(4) 周期および全振幅を測定する.
(5) 振動数を変化させずに,Output を 2,3 目盛りに変化させ,出力が変化した場合の
波形変化について実験を行う.

2.2. 実験 2 はりの振動の実験手法(2 週目)


2.2.1. 実験 2 基礎知識
自由振動(Free vibration)の基礎
振動系(vibration system)がある時刻に平衡の状態からずれているために起こる,外
部からの働きかけによらない振動を自由振動(free vibration)という.このような振動は
その系自身の性質によって定まる固有の周期(period)T を持つ.1 秒間の振動回数 f=1/T
を固有振動数(natural frequency)という.

1 自由度系の自由振動
図 4 のようなばね質量系(spring-mass system)の運動方程式は,
質 量: m , ば ね 定 数(spring constant): k , 粘 性 減 衰 係 数(viscous
damping coefficient): c ,として
mx + cx + kx = 0 (10)
で表される.振動方程式(10)を解いて,質量 m の変位は,

x = Ce −nt sin( d t +  ) (11)

となる.ここで,
図 4 ばね質量系
k
⚫ 非減衰固有円振動数  n = 2f n = [rad / s]
m
c
⚫ 減衰比(Damping ratio) =
2 mk

⚫ 減衰固有円振動数  d = 2f d = 1 −  2 n

⚫ 初期位相(Initial phase) 
1 (a1 + a1 )'
⚫ 対数減数比  = ln (12)
i (ai + ai )'
2
⚫ 減衰比率 = (13)
4 2 +  2
で, f n は減衰のない系の, f d は減衰のある系の固有振動数である.
減衰自由振動の変位‐時間曲線の一例を図 5 に示す.

図 5 減衰自由振動

ある時刻の振幅(amplitude)を a i ,1 周期後の振幅を a i + 1 とすると,式(11)から振


1 2
幅 1 周期 T = = の間に
f d d
2

ai + 1 1− 2
= e −wnT = e = e − (14)
ai

倍に減少する.定数  を対数減衰率(logarithmic decrement)という.

方持ちはりの自由振動
はりの運動方程式は,断面積: A ,断面二次モーメント: I ,材料の密度:  ,縦弾
性係数: E として,減衰を無視すれば
4 y 2 y
EI + A =0 (15)
x 4 t 2
で表される.式(15)を解いて,はりの振動による変位は,

y = i =1 X i ( x) sin( i t − Bi )

(16)

となる.はりは連続体であるから無限の自由度を持ち,したがって無数の異なった振
動の仕方がある.  i はそれらの振動の固有円振動数で,固有振動数の小さい方の振動
から 1 次正規振動,2 次正規振動,・・・,i 次正規振動といい,特に 1 次正規振動を基本
振動(fundamental vibration)という. x のみの正規関数 X i (x ) はこれらの振動によるた
わみの形を表わす.この振動の形を正規振動モード(normal vibration mode)という.図
6 に片持ちはりの 1~4 次の正規振動モードを示す.固有振動式は式(6)から理論的に

i 2 EI
fi = (i = 1,2,3,...) (17)
2l 2 A

となる.ここで,はりの長さ: l ,振動数係数:  i で,片持ちはりに対しては


1 = 1.875 , 2 = 4.694 , 3 = 7.855 ,  4 = 10 .996 ,... である.

1次 2次

0.774

3次 4次

0.5 0.868 0.358 0.903


0.644

図 6 方持ちはりの正規振動モード
2.2.2. 実験 2 使用機器

変圧器

センサ(CH A) センサ(CH B)

電力増幅器 FFT アナライザ

振動発生装置 チャージアンプ

図 7 実験装置

⚫ FFT アナライザ 小野測器 CF-5220


⚫ チャージアンプ 小野測器 CH-1200
⚫ 電力増幅器 IMV CO. PET-05-05AM
⚫ 振動発生器 IMV CO. PET-01-0A
⚫ センサ
⚫ 変圧器

⚫ 片持ちはり
材質 SUS405
密度  7900 kg / m 3
縦弾性係数 E 206GP
厚さ h 0.7 mm
幅b 16 .5mm
長さ l 150 mm
2.2.3. 実験 2 実験手順
計測 1
(1) 振動数を 20Hz に合わせる.
(2) Output を 1 目盛り目に合わせる.
(3) FFT アナライザで CH A と CH B の波形を 1 つのグラフに表示させ,グラフを撮影
する.
(4) 周期及び全振幅を測定する.
(5) CH B の位置を変化させ実験を繰り返す.

注意
CH B の位置を変化させる際,Output は 0 にし,チャージアンプの電源を切る.

計測 2
(1) 片持ちはりの一番端の穴に CH B のセンサを取り付ける.
(2) FFT アナライザで CH B のシングルグラフを表示させる.
(3) 片持ちはりの端を指で押し振動を与える.
(4) FFT アナライザで波形を観察,撮影を行う.
(5) 1 周期目の全振幅と 10 周期目の全振幅を測定する.また,1 周期目から 10 周期目
までの時間の測定も行う.
(6) はりの長さを 14cm に変化させ,同様に実験を行う.

計測 3 指で押した際の振動観察
(1) 以下のように FFT アナライザの画面下のボタンを押す.
Display→DISPCOND→FORMAT→SINGLE
(2) RETURN を押し,メインメニューへ戻る.
(3) 以下のように FFT アナライザの画面下のボタンを押す.
Display→SCALE→Y-AXIS→AUTO
(4) FFT アナライザ右側,FREQ の で X 軸を 2.000sに合わせる.
(5) 片持ちはり(定規)を指で押し,振動を与える.
(6) 振動が観察しやすい位置まで移動した時に PAUSE ボタンを押す.
(7) 写真を撮影する.
(8) センサの位置を変化させ実験を行う.
計測 4
⚫ 振動数を変化させた際の波形観察
(1) 振動数を 10Hz に合わせる.
(2) 電力増幅器の OUTPUT ダイヤルを1目盛り目に合わせる.
(3) Y 軸を調整する.
FFT アナライザ画面下のボタンを次のように押す.
Display→SCALE→Y-AXIS→FRAME SET
FFT アナライザ右側,Cursor&scale 内の で設定を行いたい場所を
選び,数値を入力後 ENTER を押して決定する.
(4) FFT アナライザ画面下のボタン,FRAME DEFIND を押す.
(5) FFT アナライザ右側,FREQ の で X 軸を波形の観察しやすい位置に合わ
せる.
(6) 振動を観察しやすい位置で PAUSE ボタンを押す.
(7) 写真を撮影する.
(8) 振幅および周期を測定する.
(9) 振動数を変化させ実験を行う.

⚫ 出力を変化させた際の波形観察
(1) 振動数を 10Hz に合わせる.
(2) 電力増幅器の OUTPUT ダイヤルを2目盛り目に合わせる.
(3) Y 軸を調整する.
(4) X 軸を調節する.
(5) 写真を撮影する.
(6) 振幅および周期を測定する.
(7) 電力増幅器の OUTPUT ダイヤルを3目盛り目に合わせて実験を行う.
計測 5 測定距離を変化させた際の波形観察
(1) 振動数を 25Hz に合わせる.
(2) 以下のように FFT アナライザの画面下のボタンを押す.
Display→DISPCOND→FORMAT→OVERLAY
(3) 電力増幅器の OUTPUT ダイヤルを1目盛り目に合わせる.
(4) CH A と CH B の Y 軸を調節する.
(5) CH A と CH B の X 軸を調節する.
(6) 波形の観察しやすい位置で PAUSE ボタンを押す.
(7) 写真を撮影する.
(8) 振幅および周期を測定する.
(9) 振動を止め,加速度ピックアンプの電源を切り,センサの位置を変更する
3. 実験課題
3.1. 実験 1 1 自由度の振動実験課題(1 週目)
(1) 計測 1 において,入力した振動数と実験で得られた振動数について考察せよ.
(2) 計測 2 において,出力を変化させた場合の波形変化について考察せよ.
(3) 振動数と周期について考察せよ.
(4) その他,実験中に気がついたことを述べよ.
(5) 自動車や飛行機の車両には,路面の凹凸(おうとつ)を車体に伝えないようにサス
ペンションが用いられている.現在,様々な方式のサスペンションが考案されて
いる.このサスペンションについて調べ,レポート1枚にまとめよ.

3.2. 実験 2 はりの振動の実験課題(2 週目)


(1) 計測 1 で得られた波形から,振動源における振動と片持ちはりに伝わる振動につ
いて考察せよ.
(2) 計測 2 で得られた波形について考察せよ.
(3) (15)の式を用いて実験2での理論振動数を求めよ.また,理論値と測定値を表及
びグラフで示し,比較・検討・考察せよ.
(4) 計測 2 の結果および(3)と(4)の式から,対数減衰率と減衰比率を求め表にし,考察
せよ.
(5) 振動によって破損した構造物を取り上げ,どのような問題があったかまとめよ.
3.3. 参考資料

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