You are on page 1of 2

1

6-1 一言云う
夢うつつの内に
[清水寺に来れる女の懺悔] ずぶりと小刀を刺し通す
とうに息が絶える
蒼ざめた顔
清水寺 西日が一すじ落ちている
懺悔 泣き声を呑む
縛られた夫
嘲るように笑う
どんなに無念だったでしょう 7-2
身悶えをする
体中にかかった縄目 死に切る力がない
ひしひしと食い入る ~を喉に突き立てる
走り寄ろうとする 山の裾
咄嗟の間に 池へ身を投げる
蹴倒する 自慢にはなりますまい
何とも云いようのない 寂しき微笑
眼の中に輝きが宿る 腑甲斐ない
覚る 大慈大悲の観世音菩薩
身震いが出ずにはいられない 見放す
口さえ一言も利けない 手ごめに遇う
刹那 一体どうすれば好い
一切の心を伝える 突然
閃く 烈しき歔欷
怒り
悲しみ
蔑む [巫女の口を借りたる死霊の物語]
蹴る
我知らず 巫女の口を借りる
とうとう気を失う 死霊
やっと気がつく いろいろ慰め出す
体を起す 目くばせをする
顔を見守る 真に受ける
眼の色は 嘘と思う
冷たい蔑みの底に 悄然と坐る
憎しみの色を見せる じっと膝へ目をやっている
恥しさ 盗人の言葉に聞き入る
悲しさ 妬しさに身悶えをする
腹立たしさ
心の中は、何と云えば好いかわからない
よろよろ立ち上る 8-1
近寄る
あなたと御一しょには居られません それからそれへと、巧妙に話を進める
肌身を汚す
7-1 夫との仲は折り合う
自分の妻になる気はないか? 
いとしいと思う
一思いに死ぬ覚悟だ 大それた真似も働く
お死になすって下さい とうとう
わたしの恥を御覧になる 大胆にも
お残し申す訳には参りません 話を持ち出す
うっとりと顔を擡げる
一生懸命に、これだけの事を云う 中有に迷っている
忌わしそうに、わたしを見つめる ~を思い出すごとに、嗔恚に燃えなかったた
裂けそうな胸を抑える めしはない
盗人に奪われる 闇の中に
太刀は勿論弓矢も見当らない 苦しみをする
足もと たちまち
小刀を振り上げる 顔色を失う
お命を頂かせて下さい 気が狂う
お供する 叫び立てる
唇を動かす 嵐
笹の落葉 遠い闇の底
たちまちその言葉を覚る まっ逆様に
2
吹き落す
憎むべき言葉
呪わしい
言葉が耳に触れる

8-2

迸るごとき嘲笑
色を失う
腕に縋る
~と思うか思わない内に
あの女はどうするつもりだ? 
返事はただ頷けば好い
罪を赦す
ためらう
一声叫ぶが早いか
飛びかかる
幻のように、そう云う景色を眺める
 逃げ去る
一箇所
おれの身の上だ
姿を隠す
呟く
じっと耳を澄ませる
気がついて見る
疲れ果てた体
腥い塊が口へこみ上げる
あたりがしんとする
小鳥一羽囀りに来ない
寂しい日影が漂っている
日影が次第に薄れて来る
深い静かさに包まれる
忍び足
薄闇が立ちこめる
見えない手に
そっと小刀を抜く
血潮が溢れる
永久に
中有の闇へ沈む

You might also like