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語学教育研 究論叢』 第2

『 8号

日本語教育文法か らみた「
や さしい 日本語」の構想
一初級 シラバスの再検討-

庵 功雄

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-2
55-
庵 功雄 「日本語教育文法からみた 「
やさしい日本語」の構想」

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要旨】
新来外 国人が増加す るにつれて、地域 における日本語教育が重要性 を増 し
て きている。地域型 日本語教育は学校型 日本語教育 とはかな り異 なる存在で
あ り、地域型の特徴 に合 った教育が行 われる必要がある。一万、 日本社会が
完全 には多言語化 していない (
そ して、それが困難である)現状 に即 して、「や
さ しい 日本語」 とい うもの を設定す る必要がある。
「や さ しい 日本語 」 は文 法面 で はSt
ep1
,2とい う2
段 階 か ら構 成 され る。
St
eplは活 用 を伴 わ ない レベ ルで あ り、St
ep2には理解 レベ ルが存在 す る。
St
ep1
,2を合 わせ て も現行の初級文法 シラバ ス よ り大幅 に簡素化 されている
が、産出を重視す る立場か らすれば、これで十分であると言 える。 日本語教
育文法か ら見たSt
ep1
,2の安当性 は論理的に も説明で きるが 、KYコーパスを
利用 した山内 (
200
9)の分析 と比較 して も、その妥当性 は説明で きる。
「や さしい 日本語」が理想 とす る社会 は、外 国人側 に一定の 日本語習得 を
求める一方で 日本人側 も 「や さしい 日本語」で話 した り害いた りす ることを
学ぶ、両者が寄 り添いあ う社会である。本稿 は現在多面的に展開 しつつある
「や さしい 日本語」 を軸 とす る研究 プロジェク トの基盤 となる概念 を整理 し
た ものである。

0.は じめに
新来 (
ニューカマー)外国人の数が増加す るにつれ、 日本で生活す る外 国
人のあ り方 も多様化 して きてお り、 日本語教育 について もこれ までの留学生、
就学生 を対象 とす る もの とは異 なる考 え方が必要 とな りつつある。本稿では

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語学教育研究論叢』第2
8号 (
大東文化大学語学教育研究所2
011
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地域型 日本語教育 (
尾崎2
004) における 「
初級」のあ り方 についての私見 を
述べ たい1。

1 .学校型 日本語教育 と地域型 日本語教育


尾崎 (
200
4) は 日本語教育 を学校型 日本語教育 と地域型 日本語教育 に分け
ている。学校型 は契約関係の上 に成 り立 っている。すなわち、教 師は教授経
験 、専 門知識 な どの点で一定の資格 を満 たす必要があ り、学生 は留学 ・就学
ビザ を持 っている、授業料 を払 う、欠席 を しないな どの条件 を満 たさなけれ
ばな らない。 また、初級の授業 は直接法 による文法積み上 げ式で集中的に行
われることが多い。
これに対 し、地域型 は主 にボランテ ィアによって運営 されてお り、学校型
の ような契約関係 はな く、学習者 もボランテ ィア教授者 も毎回出席す るとは
限 らず、授業時間 もあ ま り多 くとわない といった性 質がある 。

や さしい 日本語」
2.地域型 日本語教育 と 「
本稿では地域型 日本語教育 における 「
初級」について考 えるが、
その際 「

さしい 日本語」 とい う概念 を提示す ることにす る。

2- 1.「
や さしい 日本語」 とは
新来外 国人が増 えるにつれ、その人たちの 日本での生活 を言語的にどの よ
うに保証す るか とい うことが問題 となって くる。その際、理想的なのは多言
語化であるが、現状ではそれ を実現す るのは難 しい。実際、多言語化す るの
にはコス トがかかるため、 自治体 な どが 情報 を出す場合英語 だけです まされ
ることが多い。岩田 (
201
0)が考察 している広島の場合の ように、一部の情
報 は多言語化 されていて も、英語版 しかない場合 も多 く、母語の違いで情報
に格差が生 じている2。

こ う した現 状 に お い て 必 要 と され るの は 「補 償 教 育 (
compe
nsa
tor
y
e
duc
ati
on)
」(山田2
002)の対象 としての 日本語である。 山田 (
2002)によれば、

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庵 功雄 「日本語教育文法か らみた 「
やさしい日本語」の構想」

補償教育 とは 「
本来 な らば [日本]社 会 を多言語化す るべ き」 だが、現状 で
はそ うでない とい う 「
不条理 を 日本側が詫 び」、「そのかわ り自己実現 を可能
にす る一定以上 の 日本語能力が習得 で きる機会 を 「
償 い」 と して保 障す る」
とい うことである。
こう した補償教育の対象 と しての 日本語 を本稿 では 「や さ しい 日本語」 と
呼ぶ3. こ捌 ま、 (
近い)将来新来外 国人に対す る初期 日本語教育の公的保障
が実現 した際 にその対象 として 「や さ しい 日本語」が想定 されることも視野
に入れた ものである。

2-2.「や さ しい 日本語」の内実
前小節 では 「や さ しい 日本語」の必要性 について述べ たが、 ここでは 「や
さ しい 日本語」が具体 的 に どの ような ものであ るか について述べ るJ
。 まず、
最初 に理解 レベル と産出 レベ ルの違いについて述べ る。

2-2-1.理解 レベル と産 出 レベル


言語項 目 (
文法、語秦) には、聞いてその意味が わかればいい理解 レベル
の もの と、意味が わか りかつ発話で きる必要がある産出 レベ ルの ものがあ る
庵2
( 0
06)。 なお、下位 の レベルで理解 レベ ルであった ものが上位の レベ ルで
産出 レベ ルになることもあ り得 る。
こう した点か ら現行 の初級 シラバス を考 える と、そ こでは全ての項 目が産
み んなの 日本語 Ⅱ』第
出 レベ ル と見 な されてい る と考 え られ る。例 えば、 『
3
3課では命令形、禁止の表現 を産出 させ る練習が行 われてい るが、 こうした
形式 を学習者が産出す る必要 はほ とん どあ り得ず、 これ らの項 目は扱 うとし
て も理解 レベルで十分である と考 え られる (
cf.野 田 (
200
8))

2-2-2.SteplとSIep2
以上 の ことを踏 まえて、「や さしい 日本語」 は 2つの段 階 (
Ste
plとSt
ep2)
か ら構 成 されることとす る。

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語学教育研究論叢』 第2
『 8 大東文化大学語学教育研究所2
号 ( 011
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まず、ゼ ロビギナー を対象 とす るSt


eplに含 まれるのは次の (
表 1)の通
りである。 ここでは活用 は含 まれないので、テ形 を含 む表現 (
∼てい ます、
∼て くだ さいe
tc. ∼て思 い ますe
)や普通形 を含 む表現 ( tc.
) はこの レベ ル
では現れない。
(
表 1)St
eplレベルの文法項目5)
STEP1文法項 目
動詞文 -ます/ません .
-ま した/ませんで し
名詞文 -です/ じゃないです -で した/ じゃなか つた
形容詞文 -です/ くないです -か つたです/ くな たです
<応答> 王 さんは主婦ですか ? はい、そ うです○ いい か つたです
昨 日、会社に行 きま したか ? はい(行きま した)
○いいえ(
え、違います○

∼に(時間、場所、行き先) lr 日¢洗濯 を しま した)


住んでいますJ
助詞 ∼を
∼で( ∼の(所有格) 【
場所、手段、範囲) 「 ∼¢(
歩いて昨 きませんで した)
はかたま りとして導入]
∼か ら/∼まで(
場所 .時間) ∼が(目的語の 「
が」
」はかたま りとして導入】
∼も ∼は ∼よ り ∼のほ ) ∼と( 同伴者、並列助詞)

疑問詞 だれ、何、何 ○ (
何時、
何年、うが 何個、
何歳、 ∼か(
疑問) ∼ね(
確認)
どっち、どの、どう、どうや って、どう 何人、何杯)、どこ、いつ、 どれ .

指示詞 (
絵 してですか ?[
かたま りとして導入】
これや写真
,それを汚
.あれ/
さしなが
こ ら)
これは何ですか ?

望)
、たぷん∼です/ ∼ます( 推量
その他 バナナを食べたいです(
っち
願 .そっち .あっち/ ここ .そ こ .あそ こ

項目
語嚢的な 数字、
∼の とき、∼ですか
助数詞( ら(
理由) )
、いちばん

一方 、St
eplを終 え個、人、杯)∼曜 日、頻度副詞(いつも、ときどきなど)
ルの項 目も現 た学習者が進 む レベルであるS
tep
2レベルでは理解 レベ
St
eplとSt
ep2
れる。
の関係この 表 2)の通 りである。
を レベルの文法項 目は次の (
まず 、S
teplレベ 寺村 1
概言 ( 984
)の表現 を例 に示す と次の通 りである。
lないので、副詞 「たぶん」
ルでは活用 を伴 う表現 は便わj
によって概言であるこ
は普通形が使 える 述語 はデス ・マス形)。次のS
とを示す ( t
ep2レベルで
だ し、 (
現行の初級ようになるので、「と思い ます」が使 えるようになる。 た
味の 「で しょう」 教科書 とは異 な り)「で しょう」 は導入 しない。推量の意
うのが普通で、 対話)では 「か」「ね」 な どの終助詞 を伴
は話 しことば (
な例 に見 られるような誤用
「で しょう」で言い切 も 「
るのは
を防 ぐために まれであ る。 さらに、次の よう
庵2
い ( 0
09 0
b) で しょう」 を含めるべ きではな
庵 功雄 「日本語教育文法か らみた 「
やさしい 日本語」の構想」

表 2) St
( ep2レベルの文法項 目
STEP2レベル文法項 目
産出 レベル

形態論 ∼て(
テ形) ∼た(
タ形) 辞書形 ∼ない(
ナイ
助詞 飛行機 で東京か ら大阪 まで帰 ります○(
か ら、まで 形)
形式名詞 :
場所)

文型 ∼は-
こと ことですO
もの-

ボイス ∼ ことができます ∼た
く/∼
り∼た りします

アスペク ト ∼ています (
まだ)
∼てい に/ ∼よ うにな ります


モ)ダ リテ ィ(
認 ∼ と思います ません ∼た ことが あ ります
モ ダ リテ ィ(
対 ∼て く ∼な くちやいけません( 当為)
人) だ さい,
-ないで
∼て もいいですか( 許可求 くだ さい(
依頼)

って、
本 を借 ります○」) ∼てか ら
複文 .
接続詞 ∼て(「図書館 に行 め) ∼たいんですが(願望、許可求め)

∼けど(
とき(
時間)
逆接、前置∼たき)
/ら(
∼O
条件)
でも、 ∼ので(
理 由)
(
/継起)
∼○だか
∼ために/∼よ うに/∼ための( 目的) ら、

その他 ∼

理解
モ ダ リテ
レベル んです ど うして-んですか ? ∼か らです ○
人) ィ(
対 ∼ま もいいです(
∼て しよう(
勧誘) ∼たほ
許可) うがいいです(
当為) ∼な さ
∼てはいけません(
禁止)

その他 昨 日買った本(は これです○)(


名詞 い(
命令)
田中 さんが来 るか(どうか)(
教 えて修飾)
くだ さい

(
1)教 師 :王 さん、田中君が どこにい るか知○)
(名詞化)

なお、王
「よ(
学生 ):?
うです/ み図書館 」「ら しいです」
で しょう
たいです (
okだ と思 い
らない
なます)0 しない (
?
ども導入 St
レベ ルで これ らと 「と思 い ます」 との使 い分 け を扱 う必要 はない)。 e
p2
この ように 、St
ep1
,2で は 「
1機 能1

3. 日本語教育文法 か ら見 た 「や さ しい
形式」日本を原則
語」 と してい る。
2節 で は 「や さ しい 日本語 」 につ いて見 て きた。前述 の よ うに、「や さ し
い 日本語」 は補償教育 の対象 と して想定 され る ものであ る。 その 目的 を果 た
す た め には、「や さ しい 日本語 」 は知 的意味 を不足 な く表現 で き
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ければな らない。 しか も、地域 日本語教育の教室では 日本語学習 にかけ られ


る時間が少 ない とい うこ とに留意 し、可 能 な限 り初級6を軽 くす るす る必要
が ある。以上 の ような配慮 の もとにSt
ep1
,2は作 られてい る。本節 では この
ように して作 られたSt
ep1
,2の妥 当性 を 日本語教育文法の観点か ら位置づ け
ることに したい7。

3- 1.Step1,2と現行初級文法 シラバ ス
tてい る もののS
この小節 では、現行の初級教科書 では通常採用 さj t
ep1
,2
には含 まれない項 目を取 り上 げ 、St
ep1
,2の特徴 を明 らか にす る。

3- 1- 1.動詞の 自他
まず 、最初 に取 り上 げるのは動詞の 自他 であ る。動詞 の 自他 (
特 に 自動詞
的表現 を好 む傾 向) は 日本語 の特徴 の 1つ と して挙 げ られる (
cf.池上 1
981

寺村 1
976
)。例 えば、次の ような場面で (
他動詞 も使 えるに もかかわ らず通常)
自動詞が使 われることはそ う した考 え方で説明で きるであろ う。
(
2) (
駅の アナ ウンス) ドアが 閉 ま ります。 ご注意 くだ さい。
しか し、初級 において この ような微妙 なニュア ンスの差 を問題す る必要 は
ない と考 え られ る。一方、現行 の初級 の文法 シラバ ス にお いて動詞 の 自他
に直接連 関す るのは 「ている」 と 「てあ る」の区別である。 これについては、
中俣 (
201
0)において興味深い調査結果が報告 されてい る。
中俣 (
201
0)は、「日本語話 し言葉 コ-バ ズ」(
CSJ
)㌔「名大会話 コーパス」、
現代 日本語書 き言葉均衡 コーパス」(
「 BCCWJ
)における 「てあ る」(
及 び 「て
お く」
)の全用例 を調べ た ものだが、その結果 による と、「てある」 に前接す
る動詞 のバ リエ ー シ ョンはか な り限 られてお り、全用例 の約半数 は 「
書 く」
であ る とい う。 この結果か ら、現行の初級教科書 の ように 「自動詞 :ている、
他動詞 :てある」 と考 える必要 はな く、初級 では 「
基本的に 「ている」、「

く」の ときだけ 「てあ る」 中俣 2
」 と考 えれば よい ことになる ( 010)
。いずれ
にせ よ、初級 で動詞の 自他 を集 中的 に導入す ることは費用対効果の点で大い

-2
61-
に疑問である。

3- 1-2.授受表現
次 に授受表現である。授受動詞 「あげる、もらう、くれる」の うち、「あげる」
と「もらう」の関係 は能動文 と(
直接)受動文の関係 に対応す るものであ り(
cf.
庵2
001
)、 また、英語のgi
ve-
rec
eiveの ように多 くの言語で同種の語桑のペ ア
が存在す ることか らも学習者 にとって理解 しやすい ものであると考 えられる。
一方、「くれ る」 に当た る語秦 を持 つ言語 は非常 に少 な く (
cf.Yamada
1
994
)、 また、適切 に導入 して も一定期 間次の (
3)の ような誤用が見 られる
とい うこと、 さらに、「くれる」の大部分が 「もらう」 を用いて表現で きる
ことか ら、「くれる」 は初級で導入す る必要 はない と考 える。
3)●
( 田中 さんが私 に本 をあげ ました (
ok くれ ました)0
授受動詞 はテ形の補助動詞 (
∼てあげる、∼て もらうなど) として使 われ
る方が多い。 これ らは恩恵の授受 を表すが、 こうした命題 にかぶ きって表 さ
れ る意味 は命題 レベ ルでの内容のや りとりを問題 とす るSt
ep1
,2では扱 う必
要はない (もちろん、 よ り進んだ段 階ではこれ らも導入す る)。

3- 1-3.受身
次に、受身について考える。受身の分類 には諸説あるが、直接受身 と間接
受身に分けることは一致 した見方である。 ここでは、この 2つの受身のいず
れ もが初級 には不要であることを示す。
まず、直接受身だが、直接受身で表 される内容 は基本的に能動文で代替可
能である。なお、このことは能動文 と直接受動文の機能が同 じであるとい う
ことを主張 しているわけではない。両者の間には (
4)に見 られるような差
がある。すなわち、 日本ハムフアンの発話 (
及び、中立的な発話)では (
4)
aが用い られるのに対 し、西武 フアンは (
通常) (
4)bを発話す るといった違
いである (
cf.庵2
001)。
4)a
( .ダルビッシュが西武 を迎えと 。 (
能動文)

-2
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語学教育研究論叢』第2
『 8 大東文化大学語学教育研究所2
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b.(
西武が) ダル ビッシュに抑 え られた。 (
直接受動文)
こう した違い を指摘す ることは (
直接)受身の導入 において重要ではあ る
が、現実 には現行 の初級教科書 において も受身は形態論的 レベ ルを大 きく出
てはお らず、 こう した違い を学習者が表現 し分 け られてい る とは言 えないの
で はなか ろ うか。そ うであ るな らば、St
ep1
,2に直接 受 身 を含 め る必要 はな
い と言 えよう。
一方、間接受 身であるが、間接受 身は対応す る能動文 を持 たない とい った
点で、非典型 的な受 身であ る と言 える。その ことの反映 として、実例 の数が
直接 受 身 に比べ て少 ない。 この こ との1
例 と して、筆者 の授業 の課題 と して
提 出 された レポー トの結果 を取 り上 げる。 この レポー トでは次の書物 におけ
る受身の出現 回数が調査対象 とされた。
阿部謹也 (
2007) 『自分のなか に歴 史 をよむ』 (
ち くま文庫)
その調査結果 に よる と、受動文 の全用例 2
83例 の全 てが直接 受 身で、間接
受身 (
持 ち主の受 身 を含 む)の用例 は1
例 もなか った とい う。 こ う した間接
受 身の出現頻度の少 な さは当該授業 の他の課題 レポー トで も確認 された。以
上見た ような出現頻度の少 な さか ら間接受身 を初級 で導入す る必要 はない と
言 え る。

3-1-4.使役
使役 につ い て は岩 田 ・森 (
201
0) に詳細 な議論 が あ る。 それ に よる と、
KYコーパ スで調べ た結果、使役 の出現数 は少 な く、次の ように、使役 を使
わな くて もいい場面で使役 を使 った結果誤宙 になってい る もの も多い との こ
とであ る。
5) あー、わ きます、<ん>わかせ て、水 を、<えーえー>あー、完全 に、
(
(
韓 国中級) 正一 わか して
6) わた しの、い えに、<はい>あの、誰 かあの、はい らせ 、 ま した、
(
はい らせ ま した (
英語 中級) 正一誰かに入 られた/誰 かが入 った
また、 これは岩 田 ・森 (
201
0)で触れ られていない論点であるが、「
裸の」
使役形 (
「(さ)せ る」のみで用 い られ る形) には次の ような使用制 限がある。

-2
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庵 功雄 「日本語教育文法からみた 「
やさしい日本語」の構想」

す なわち、「
裸の」使役形 は使役者が被使役者 (
動作主) よ り上 の立場 の も
のでなければ使 えない。
7) 父親は娘 を買い物 に行かせ た。
(
8) ?
( 娘 は父親 を買い物 に行かせた。
こうした制限は 「て もらう」 には存在 しない。
7) '父親は娘 に買い物 に行 って もらった。
(
8) ■
( 娘 は父親 に買い物 に行 って もらった。
こ う した こ とか ら、「裸 の」使役形 よ りもそれ と相補 的であ る 「て もら
う」 8を先 に導入す る必要があることが わか る。 この点か らも初級 において
使役 を導入す る必要 はない と言 える。

3- 1-5.敬語
最後 に敬語 についてである。狭義の敬語である尊敬語 と謙譲語 はSt
ep1
,2
の対象ではない。それは、これ らを使い こなす ことは 日本語母語話者 にとっ
て も困難であ り (
特 に若年層 において)、そ うした もの を補償教育の対象で
あるSt
ep1
,2に含める必要はない と考 えるか らである。

3- 2. 山内 (
2009) との関連
前小節 では、本稿 の立場 か らSt
ep1
,2を地域 日本語教 育 にお ける 「初級」
と定義す ることの意味づ けを行 った。 ここでは、「プロフイシエ ンシー」 と
い う立場か ら初級の文法教育 について論 じている山内 (
2009) との関連性 に
ついて考 える。
山内 (
2009) はKYコーパスの分析 をもとに、同 コーパスで中級 において
安定的に使用 される項 目を、 (
初級で教 えるべ きものであるとい う観点か ら)

初級文法」の対象 として捉 えている9
。 その結果、「
初級文法」 に含 まれ る
項 目は次の通 りである。
(
9) 山内 (
200
9:4
4-45) における初級文法項 目
大部分の格助詞 (
「へ」 を除 く1
0);
は、 も、 ぐらい、だけ;とか、 と;

-2
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語学教育研究論叢』第2
『 8 大東文化大学語学教育研究所2
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です、た、 ます、 ません、ない、たい、 ようだ ;ている ;


か、ね ;て、
け ど、た ら、た り、 とき、ため ;で も、 じゃ (
あ)、それか ら、で、
だか ら、た とえば ;あの一、えー と、えー
山内 (
200
9:47)は 「初級文法 とは丁寧形の文法、つ ま り、普通形 を作 ら
な くて も済 む文法であ る」であ る とい う仮説 を提 出 してい るが、 ここで言
初級」は本稿で言 うs
う 「 tep1
,2に対応す る。 また、(
9)の中にはS
tep1
,2に
含 まれていない もの も若干あるが、基本的には両者 は一致 している。 これは、
補償教育の対象 として 「 lたS
論理的に」 に案 出 さj tep1
,2と学習者の実際の
発話 をもとに構成 された (
9)がほぼ重 なるとい うことであ り、S
tep1
,2の妥
当性が理論 的に も保証 された と言 える。

4. 「
や さしい 日本語」 をめ ぐる研究の進展
2
節 、3
節では 「や さしい 日本語」 について考 えて きた。本節では 「や さし
い 日本語」 をめ ぐる研究の現状 について述べ ることとす る。
本稿 を執筆 中の2
010
年9月現在 、「や さしい 日本語」 に関す る研究は筆者 を
研究代表者 とす る科研 費の研究 プロジェク ト11において行 われている。 同プ
表 3)を以下 に示す。
ロジェク トの理念図 (

-2
65-
庵 功雄 「日本語教育文法からみた 「
やさしい日本語」の構想」

(
図 1)科研費プロジェク トの理念図

社 会 還 元領 域 :
†ユ丁
>:†●t及.
-ザ ビl
J広報粧.
ティP至
研究成果の公棚
と欝 価 .
改 善 使い方マニユ7ル作成事

●f
● I
4拡:
外港人.日本人ユーザーに対するユーザビリティ■暮

応 用研 究 領 域 改暮(
l や さしい 拡:
]相評価強兵にIづく プロジェ
を便 胴 表 にす クト書正71 リケ- シヨン『
る去めの
●書き&えシステム粧:日一日自動交換システ 発
●作成支援システム虹: WEB-の実去.辞書 .if
l訳.
ム開発 訂正等dtk付
語学教育研究論叢』第2
『 8 大東文化大学語学教育研究所2
号 ( 011
)

れていること、外 国人参加者が毎 回参加す るとは限 らない とい う点が、学校


型 に比べ た場合の地域型の大 きな特徴であると考 え られる。
例 えば、 日本語学習 にかけ られる時間について言 えば、現在、学校型の初
級修了 レベ ルであるとされている 日本語能力試験N4レベル (
旧試験3
級 レベ
ル) は3
00時間の学習 を想定 した ものであるが、地域型の 日本語教室 は週 1回
2時間程度開かれ るのが標準 的であ ることか ら、地域型で学校型 と同 じ内容
を行 うことは不可能であることがわかる (
に もかかわ らず、学校型の方法 を
地域型 に横滑 りさせ ることが多かった (
今 も多い ?) ことに問題があると言
える)
。 この ことか ら、地域型では (
学校型で主流である)文型積 み上 げ式
は (
少 な くとも現行の ままの形 では) うま く機能 しない と言 える (
cf.尾崎
004)。
2
以上 の点 を踏 まえ、 『にはん ごこれだけ !』 では文型積 み上 げ式 を改 め、
お しゃべ り型 を採用 している。 これほ どの課か らで も始め られるように、外
国人参加者が気 に入った トピックを選んで学習で きるように配慮 した もので
ある。 また、外国人参加者が必ず しも毎 回参加で きるとは限 らない とい うこ
とに配慮 して 、St
eplの文法項 目が各課 に複数現れ、かつ、全課 を通 して最
低 3回出現す るように してある (これ を庵 ・岩 田 ・筒井 ・森 ・松 田 (
201
0)
に したが って、「
文法 スパ イラル」 と呼ぶ。 これは地域型の実態 に即 した緩
やか な積み上 げ式 と見 なす ことがで きる)
。 さらに、毎 回の活動が散漫 なお
しゃべ りに終わ らない ように、各課の最後でその 日に学 んだ項 目を書いて確
認す る形 を取 っている。 これは、尾崎 (
2004)が挙げる地域型 日本語教育の
3
つの原則の1
つ 「日本語習得の原則」 を具現化 した ものである。

4-2.「
や さしい 日本語」 が 目指す社会像
ここでは 「
や さしい 日本語」 をその中心 に据 えるわれわれの研究 プロジェ
ク トが 目指す社会像 について述べ ることにす る。
われわれの立場 において も、外 国人に一定の 日本語習得 を求める (
これは
完全 な多言語化が 困難であ ることの代償 であ る1
3)。 しか し、 これ まで とも

-2
67-
庵 功雄 「日本語教育文法からみた 「
やさしい日本語」の構想」

すれば 日本人社会が外 国人側 に一方的に 日本語習得 を求めて きたの を改め、


日本人側 に も 「
や さしい 日本語」 を用いて話 した り書いた りす ることを学ぶ
ことを求める。そ して、その結果、外 国人 と地域の 日本人住民の間に 「
やさ
しい 日本語」 とい う共通言語がで きると考 える。 この点 を図示する と次の よ
うになる。
表 3)地域 日本語教育における 「
( やさしい日本語」の位置づけ
日本語母語話者 <受け入れ側の 日本人>
1コー ド (
文法、語秦)の制限、 日本語か ら日本語への翻訳
や さしい 日本
Tミニマムの文法
語 (
Ste
p1,
2)と語桑の
日本語ゼロビギナー<生活者 としての 習得

4-3.「
や さしい 日本語」 をめ ぐるそ 外 国人>
図 1) に表すい
本研究 プロジェク トは ( の他の研究
くつかの部分か ら構成 さ
その中で も、中心 となる もの として、地方 自治体が発行 している れている。
知 らせ)の 「や さ しい 日本語」へ の書 き換 えがあ る。 これ につ 公文書 (

在、経験年数 1
0年以上の 日本語教師による書 き換 え作業が現在進いては、現
が、その前段階 としての試行版の書 き換 え作業の結果が庵 ・岩田 ・ (
2
行森中である
庵 ・岩 田 ・筒井 ・森 ・松 田 (
2 0) において報告 されている。
01 01
1)、

5.
本稿
まとめ
では 「や さ しい 日本語」 について概観 した。「や さしい 日
償教育の対象 として、完全 な多言語化が困難である現在の 日本社本語」 は補
外 国人がで きる限 り不利益 を被 らないために案 出 された ものである1
会において
さしい 日本語」 は文法的にはS
tep1
,2か ら構成 される。S
tep1
,2は 4
。「や
教科書 における初級 よ りも分量的にかな り少 ないが、産出 レベル現行の初級
うことに即 して言 えば、十分 なカバー領域 を持 っている ものであであるとい
(
cf -
.32節)
。 ると言 える
語学教育研究論叢』第2
『 8 大東文化大学語学教育研究所2
号 ( 011
)

「や さしい 日本語」 を用いた研究 は緒 に就いたばか りで、今後の動向はこ


こでは十分 に予測で きない。ただ、「や さしい 日本語」の研究が今後大 きな
発展の可能性 を持 っていることは疑い得 ない ところである。

参考文献
庵 功雄 (
200
1)r
新 しい 日本語学入門j ス リーエーネッ トワーク
庵 功雄 (
200
6)「教育文法の観点か ら見た 日本語能力試験」土岐菅先生還暦記念論文集
編集委員会編 柑 本譜の教育か ら研究へj くろ しお出版
庵 功雄 (
200
9a)「地域 日本語教育 と日本語教育文法 - 「や さしい 日本語」 とい う観点か
ら- F 」
人文 ・自然研究」3、一橋大学
魔 功雄 (
200
9b)「推量の 「で しょう」に関す る一考察」r
日本語教育」1
42、 日本語教育
学 会
庵 功雄監修 (
201
0)r
にほんごこれだけ !1j ココ出版
庵 功雄 ・岩田一成 ・筒井千絵 ・森 篤嗣 ・松 田真希子 (
201
0)「
「や さしい 日本語」 を用
いたユニバーサ ルコ ミュニケーシ ョン実現のための予備的考察 」r
一橋大学国際教育
通巻 1
セ ンター紀要j 創刊号 ( 3号)、一橋大学
庵 功雄 ・
岩田一成 ・
森 篤嗣 (
201
1)「や さしい 日本語」 を用いた公文書の書 き換 え」r

文 ・自然15、一橋大学
池上嘉彦 (
198
1)T
「する」 と 「なる」の言語学j 大修館書店
岩田一成 (
201
0)「言語サー ビスにおける英語志向」r
社会言語科学j1
3-1
、社会言語科学

岩田一成 ・森 篤嗣 (
201
0)「初級 を軽 くす る一便役 に関する考察 -」r
世界 日語教育大会
論文集 (
DVD)
i
尾崎明人 (
200
4)「地域型 日本語教育の方法論的試論」小 山倍化編 F言語 と教育」 くろ し
お出版
佐藤和之 (
200
4)「災害時の言語表現 を考える」r
日本語学」2
318
、明治書院
寺村秀夫 (
197
6)「
「ナル」表現 と 「スル」表現」寺村秀夫 (
199
2)r
寺村秀夫論文集 Ⅱj
くろ しお出版、に再録
寺村秀夫 (
198
4)r
日本語のシンタクスと意味 Ⅱl くろ しお出版
中俣 尚己 (
201
0)「コーパ ス分析 による日本語教育文法研究」r
日本語文法学会第11回大会
発表予稿集J 日本語文法学会
野田尚史 (
200
8)「コ ミュニケーシ ョンのための 日本語教材」

-2
69-
庵 功 雄 「日本 語 教 育 文 法 か らみ た 「や さ しい 日本 語 」 の構 想 」

ht
tp:
//wwwsoc.
ni
l.
acj
p/
. n
kg/
the
meke
nkyu/
tabunka
/4ka
ipdf
.
森 篤嗣 (
201
0)「言語使用調査 に よる 日本語教育文法研究 」r
日本語文法学会第11回大会
発表予稿集』 日本語文法学会
山内博之 (
20 r
09) プロフイシュ ンシーか ら見た 日本語教育文法』 ひつ じ書房
山田 泉 (
2002)「第 8章 地域社 会 と日本語教育」細川英雄編 rことば と文化 を結ぶ 日
本語教育』凡人社
Ya
mada
,To
shi
hir
o(1
994)r

someunl
Ver
Salf
eat
ure
sofbe
nef
act
ivec
ons
truc
tio
ns. F日本 H
学報31
5、大阪大学

付記
本稿 は 日本学術振興会科学研究費補助金 に よる基盤研究 (
A)「や さ しい 日本語 を用い
課題番号 `2
たユニバーサル コミュニケーシ ョン社会実現のための総合的研 究」 ( 2242
013、
研究代表者 :庵 功雄)の成果の一部である。

1本稿 は2 009年12月1 7日に大東文化大学で行 った本稿 と同名の講演の内容 に、その後の研


究成果 を加 えて敷宿 した ものであ る。 なお、本稿 の内容 は部分 的に庵 ( 2009a
)の内容 と
重 なるが、その後の研究の進捗状況 をで きるだけ反映 させている。
2岩田 ( 201
0) に基づいて さらに言 えば、国立国語研究所が行 った 「生活のための 日本語 :
全 国調査」の結果 に よる と、広 島では 「英語がで きる」 と回答 した人は3 6.
8%であ り、英
語 で情報提供 して も外 国人が利益 を得 られ ない可能性 が高い。一方、「日本語がで きる」
と回答 した人は7 0.
8%であ り、この層 に向けて 「や さしい 日本語」で情報 を提供す ること
を真剣 に考 えるべ きである。
3「 や さしい 日本語」 とい う用語 は、阪神淡路大震災時に ( 特 に英語がで きない)外 国人が
情報的に疎外 されたことを教訓 に災害時の 日本語使用のあ り方 を論 じた一連の研究で用い
られている ( c.佐藤 (
f 2004)な ど)。本稿ではこの一連の研究 における 「や さしい 日本語」
を 「滅災EJ 」 と呼ぶ ( EJはEa syJapa
nes
eの略)。減 災EJと本稿 の 「や さ しい 日本語」 に
はい くつかの大 きな違いがあるが、その最大の ものは本稿 の 「や さしい 日本語」が災害場
面 に限定 されない言語生活一般 を対象 と していることである。両者のその他の違いについ
ては庵 ・岩田 ・森 ( 2011
) を参照 されたい。
'
l 「や さ しい 日本語」の全体像 をよ り明確 にす るためには語免 についての議論が不可欠であ
るが、 これ については4 節で紹介す る書 き換 え作業 の結果 を待つ必要があるため、本稿で
は文法の側面に絞 って議論す ることとす る。
5( 表 1) は r にほんごこれだけ !1j で取 り上 げた ものであ り、庵 ( 20
09a)で取 り上 げ
た もの とは若干異 なっている。
6 以下、本節で 「 初級」 と言 う場合 、それは本稿で提案 している初級、す なわち、
Step1,2の ことを指す もの とす る。
7本節 と同様の考察は庵 ( 20
09a) において も行 ったが、 ここではそれぞれの項 目について
よ り詳 しく論 じている。

-2
70-

語学教育研究論叢』第28号 (
大東文化大学語学教育研究所2011)

8「て もらう」は使役 とも間接受身とも相補的である。 この点については庵 (


2001
) を参照
されたい。
9 逆 に、初級で導入 されていて も中級で使用 さゴ 1ない項 目は初級で導入す る必要はない と
考 えられている。例 えば、受身は上級で導入すべ きであるとされている。
0その他の格助詞 とは異 な り、「
1 へ」は上級、超級で使用頻度が低 くなる。 これは、学習
者が 日本語母語話者の使用実態 を参照 していることの反映、す なわち、 日本語母語話者は
「へ」を使っていない、とい うことの反映であると考えられる。 この点については森 ( 201
0)
に包括的な議論があるので参照 されたい。
11日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究 (A) 「や さしい 日本語 を用いたユニバーサ
ルコミュニケーシ ョン社会実現のための総合的研究」( 課題番号 :2 22
4201
3、研究代表者 :
庵 功雄) 0
12 続いて、S te
p2に対応 した Fにほんごこれだけ !2』が2 011
年に刊行 される予定である。
13 繰 り返 し述べているように、「 や さしい 日本語」は完全な多言語化が困難であることの
代償 としての ものである。 したが って、「や さしい 日本語」 は全外国人 を対象 とす る もの
である。 しか し、それは決 して、「外国人には 「や さしい 日本語」 だけで十分だ」 とい う
ことを主張 しているわけではない。St ep1
,2を終 えた学習者が さらに先 に進 むための手段
は別途保証する必要がある。
14 言語サー ビスの多言語化の重要 なオプシ ョンの1 つ として 「や さしい 日本語」 を考慮す
べ きであることが岩田 ( 201
0) において指摘 されている。

-2
71-

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