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東レリサーチセンター 技術資料
リチウムイオン電池
黒鉛/SiO混合負極のサイクル劣化解析
in-situ TEMおよびASTARを用いたLIB正極活物質の昇温挙動解析
FIBSEMによるリチウムイオン電池材料の3D-SEM解析メニュー
全固体電池電極の組成分布、分散状態評価
全固体電池正極合材の界面状態分析
全固体電池のin-situ SEM観察
リチウムイオン電池材料に対する電解液蒸気および水蒸気の吸着挙動
充放電in situ XRDを用いたLIBの劣化解析
LEISによる活物質表面コート層の被覆率評価
LIB安全性試験時の発生成分分析
全固体電池の安全性評価-各種雰囲気でのオンライン発生ガス分析
LIBの高温加熱試験時の発生ガス分析
LIBの加熱試験における発生ガス分析
O00143技術企画室20210219
黒鉛/SiO混合負極のサイクル劣化解析
dV/dQ曲線による劣化要因解析および電極合剤層内の元素・イオン分布解析を併用することで劣化に
関して、より詳細な解析が可能となる。ここでは、黒鉛/SiO混合負極に関して、充放電サイクルに伴う劣
化状態の解析事例を紹介する。
セル特性評価(放電曲線、dV/dQ解析)
ハーフセルによる放電容量曲線 dV/dQ曲線(ピーク形状およびピーク間距離より、劣化要因を解析)
サイクル数増加に伴う放電容量低下
44 28
25
300 cycleでは主にSiO構造変化を伴う劣化を推定
赤:SiO(SiO3-)
SiO SiO
緑:黒鉛(C2-) C SiO
青:溶媒分解物、 剥離
バインダー(H-)
10 μm 10 μm
300 cycleはSiO、黒鉛ともに強度が異なる粒子が存在 1 μm 1 μm
<Li+イオン像> SiO粒子はサブミクロン程度の表面変質層を形成
SiO3-,Li+:高い 変質層より、C、F、Pを検出
SiO3- :高い ⇒SiO表面は電解質(LiPF6)と反応(SEI形成)
Li+:低い
(LixSiOyやLixSi推定) <画像解析によるSiO変質率解析結果>
10 μm 10 μm
サイクル数増加に伴う ⇒SEI成長によるLi消費
容量劣化の一因 ⇒ LixSiOy の形成や導電パス切断によるLixSiやLixC6などLi残存粒子の増加(300 cycle)
P01957形態科学第2研究室20190530
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in-situ TEMおよびASTARを用いた
LIB正極活物質の昇温挙動解析
LIBの高安全性を求める上で、活物質の熱に対する挙動を明らかにすることは重要である。
in-situ TEMによる昇温挙動のSTEM観察と、ASTARによるドメイン構造観察技術を併用することで、
LIB正極活物質の昇温挙動と微視的構造変化の関係性を捉えることが可能である。
回折斑点がのびる ドメイン形成の可能性
活物質粒子
HAADF
輝点と暗点が出現 肥大化しながら移動
(酸素脱離と関係)
活物質粒子
ED取得位置
BF
活物質粒子
Unique Grain Map
(ASTARによる測定)
ASTARを用いれば、結晶相分離・双晶のドメイン形成をマップで可視し、定量的な解釈が可能である。
LIB正極活物質における昇温挙動を、回折(結晶構造)・形態(形・結晶欠陥)・組織(ドメイン)の
多観点から可視化できる。〜500℃で酸素脱離を伴う形態・構造変化が生じる。さらに高温領域では
高温になるに従いドメインサイズの減少(界面の増加)が認められる。
P01936先端分析推進室20190509
-2-
FIB/SEMによるリチウムイオン電池材料の
3D-SEM解析メニュー
3D-SEMは、リチウムイオン電池の各部材を三次元的に可視化できる分析手法です。画像解析することで
部材の体積分率や曲路率など様々な定量評価が可能となります。空孔への樹脂充填や電子染色法を絡めた
コントラスト強調など、独自開発した高度な前処理技術を駆使して高精度な3D再構築像を取得できます。
3D-SEM可能な電池材料
■電解液系リチウムイオン電池(正極合剤、負極合剤、セパレータ) ■全固体電池(正極合剤、負極合剤、固体電解質)
電解液系リチウムイオン電池の断面SEM像
正極合剤 セパレータ 負極合剤
バインダー
バインダー
(導電助剤含む)
活物質
空隙
(染色包埋樹脂)
空隙
(包埋樹脂)
活物質
黒色部:セパレータ
10m 白色部:包埋樹脂(電子染色) 2m 10m
特長 ・大気非曝露下での加工・観察
・多孔質材料では孔を樹脂包埋することによるFIB加工跡を低減/空孔内の奥行き情報の遮蔽
・電子染色による各部材の識別能の向上
・クライオ測定による熱ダメージの軽減
※青字の手法は東レリサーチセンター独自手法
3D-SEM像と解析結果
正極合剤 セパレータ
Z (FIB加⼯⽅向) Z (FIB加⼯⽅向)
X X
3D‐SEM測定条件
Y Y
測定領域 最大60 m立方
約10.9µm
正極合剤のバインダーの被覆状態観察 セパレータの空孔ネットワークモデル図
◇画像解析項目
▭ 各部材の体積分率
▭ 接触面積・接触率
▭ 曲路率・孔径分布
▭ 部材の繋がり可視化
▭ スライス動画作成
拡大 ▭ セグメンテーション画像の提供
材料に適した測定方法のご提案や
上記以外の解析項目もありますの
赤色:活物質と接触しているバインダーの表面 で一度ご相談下さい!
灰色:活物質の表面
P02182形態科学第2研究室20200803
-3-
全固体電池電極の組成分布、分散状態評価
表題
全固体電池の性能は活物質・固体電解質の分布(ムラ)や空隙の大きさに影響を受ける。
BIB(Broad Ion Beam)加工断面についてSEM-EDX、TOF-SIMSマッピングを併用することにより、
各成分の分布を可視化・数値化し、各部材の分布状態を評価することができる。
全固体電池の断面をBIB法で加工し、正極(NCA/LGPS)内の同一視野を、SEM-EDXおよびTOF-SIMSで測定した
<試料ご提供> 産業技術総合研究所 関西センター 田渕光春先生
断面SEM観察、SEM-EDX元素マップ SEM 10μm P S Ge
空隙
LGPS
正極
(Li10GeP2S12)
NCA
O Co Ni Al
電解質層
Li6PS5Cl
空隙
50 μm
断面SEM-EDXと同一視野のTOF-SIMSによる成分イメージング
6Li+ Li3S+ S- PO3- 手法 情報 特徴
・元素(B~U)
SEM- 形態観察
・高検出効率
EDX 元素分布
・高空間分解能:10 nm
・全元素(H, Li含)
TOF- 化学組成
・高感度
SIMS 組成分布
・空間分解能:0.3 μm
O- Li2NiO+ CoO2- Al+ OH-
LGPS
NCA
10μm
SEM-EDXとTOF-SIMSを同一視野で測定することにより、組成分布を総合的に判断できる
セル解体から各イメージングまで、各装置間において大気非暴露搬送が可能
専用治具を用いることで、セル切断・断面作製・測定の際に短絡や変性・変質を抑え、充電状態のセルにも対応可能
P01928形態科学第2研究室20190416-1
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全固体電池正極合材の界面状態分析
XAFSでは、正極活物質の表面コート層や、活物質/固体電解質界面について、化学状態の平均的
な情報が得られるため、加圧成型後の確認や劣化評価に有用である。独自サンプリング法の開発に
より、nmオーダーのコート層とその活物質界面の分析が可能となったことから測定例を紹介する。
コート層界面の状態分析 本分析における着目箇所
薄いコート層 ⇒ 加圧成型時の状態に懸念 正極合剤 正極活物質
XAFSによるコート層/活物質界面付近の状態分析 LiNbO3 固体電解質
⇒ 試料の平均的な傾向がつかめる コート(~nm)
極微量のNb検出+高活性の固体電解質のXAFS測定
⇒ 独自サンプリング法開発により、 活物質 LiNbO3コート近傍の
Co(活物質)の状態
高活性試料中の微量Nb層のXAFS評価可能
LiNbO3コート内の
固体電解質 Nbの状態
試料詳細
適切な測定法の選択により、
固体電解質の異なる A B これらの状態評価が可能
正極合剤ペレット
2種: A, B 正極活物質 LiNbO3コートNCA
硬さ: Li3PS4 > Li6PS5I
固体電解質 Li3PS4 Li6PS5I 平均粒径: Li3PS4 > Li6PS5I
B
B LiCoO2
LiCoO
1.0 4 2
CoS
CoS
0.5 2 Co2+
A, BでNbの化学状態 ① |
に差はなし
0.0 0
18940 18960 18980 19000 19020 19040 19060 775 780 785
Energy (eV) Energy (eV)
① Aにはコート層界面にCo2+が存在
Nb K 端FT-EXAFS
10 ⇒ 硫化物(CoS)、酸化物(CoOなど)の形成を示唆
Nb-O A
A
②
|
B
B まとめ ~固体電解質の違いよる界面状態の傾向~
LiNbO3
LiNbO3
FT
5
Nb: LiNbO3構造の歪み⇒コート層の割れ A>B
①
Co: 活物質の変質⇒コート層の割れによる劣化 A>B
0 硬く、粒径の大きいLi3PS4を含むAでは、プレス時の
0 1 2 3 4 5
r (Å) 局所圧力が大きく、コート層が損傷したと推察。
① A, Bには第2近接ピークなし
⇒ 低結晶性、アモルファス化を示唆 界面状態を知ることは、コート層厚などの条件選定
② 最近接Nb-Oのピーク強度: A < B や、プレス圧などの工程改善のために重要である。
⇒ AはLiNbO3構造の歪みが大きい可能性 試料提供: 産総研関西センター 田渕先生、小島先生
P02158表面科学第2研究室20200604
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in-situ SEM観察
全固体電池の表題
全固体電池を加圧(拘束)した状態で充放電させながら、断面方向でSEM観察およびSEM-EDXより電
池を構成する材料ごとに形態、元素の分布状態を分析できる。ここでは硫化物系固体電解質を使用し
て作製した全固体電池でのin-situ 分析事例を紹介する。
in-situ SEM観察の特徴
①雰囲気遮断可 ②サンプルへの加圧(拘束) ③電圧印加 ④加熱測定も可能
⇒全固体電池に対し、in-situ 観察に最適
⇒EDX検出器により形態変化(Li挿入脱離など)、組成変化に関する情報も取得可能
⇒構造解析(Raman)や組成(TOF-SIMS)など同一試料(断面)で評価可
事例:全固体電池のin-situ SEM観察
全固体電池の構成
正極 70 μm : NCA / LGPS
・ 充放電条件
0.1 C CC 充放電
・ 電位範囲
SE層 800 μm : Li6PS5Cl 2.7~4.5 V
<試料ご提供>
産業技術総合研究所 関西センター 田渕先生
負極 100 μm : Graphite / Li6PS5Cl
<正極>
充電前 充電後 放電後
負極 黒鉛
合剤
電解質 剥離 剥離
10 μm 10 μm 10 μm
電解質/黒鉛界面拡大 電解質/黒鉛界面拡大 電解質/黒鉛界面拡大
電解質 電解質
電解質
黒鉛 770 nm 黒鉛 890 nm
黒鉛 780 nm
隙間
400 nm 隙間
隙間
1350 nm 1140 nm
黒鉛 1 μm 黒鉛 1 μm 黒鉛 1 μm
正極、負極とも充放電における活物質や活物質/電解質界面の状態変化、クラック発生などを可視化
P02047形態科学第2研究室20191031
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リチウムイオン電池材料に対する
電解液蒸気および水蒸気の吸着挙動
東レリサーチセンターでは、汎用的な窒素ガス吸着法、高感度なクリプトンガス法、室温付近
でのCO2吸着法、5~100℃間の水蒸気吸着法に加えて、受託機関が少ない有機蒸気吸着法を
受託可能である。ここでは、リチウムイオン電池材料に対する電解液蒸気および水蒸気の吸着
挙動を比較対照した事例を紹介する。電池材料の研究開発において、リチウムイオン電池の
構成部材と電解液や水との親和性の把握に、本手法は有用である。
ジエチルカーボネート(DEC)蒸気の 水蒸気の
吸着・脱着等温線 吸着・脱着等温線
クリプトンガス吸着-BET法比表面積 水銀圧入法細孔径分布
正極 負極 セパレータ 最大/最小
●DEC吸着量は、比表面積や細孔容積とほぼ相関
DEC吸着量/比表面積 39 81 36 2.3
⇒DECは無極性のためと推察
DEC吸着量/細孔容積 1208 1240 1833 1.5 ●水蒸気吸着量は、比表面積や細孔容積と無相関
⇒極性溶媒の水は、細孔表面の親水性・疎水性
水蒸気吸着量/比表面積 3 18 0.2 90
の影響を受けるためと推察
水蒸気吸着量/細孔容積 92 274 11 25
P02148材料物性第2研究室20200526
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充放電in situ XRDを用いたLIBの劣化解析
サイクル前後のLIBに対し、充放電in situ XRD(X線回折)を測定することで、劣化に伴う構造変化を
捉えることができる。ここでは、正極に着目し電気化学評価を合わせて劣化解析を行った事例を示す。
充放電させながら
充放電in situ XRDの測定方法・特徴 充電 各SOC・DODにおける
XRDを測定
充放電器
XRDで得られる情報
ラミネートセル ・格子定数の変化
放電 ・結晶量
端子
・相転移
X線 回折
メリット
検出器 ・非破壊で正負極の状態を確認可能
・正負極の反応を同時に解析可能
事例:サイクル前後における正極の変化 ・サイクル試験時の経時劣化を同一試料で評価可能
<ラミネートセル構成とサイクル試験条件>
正極:NCM523 負極:人造黒鉛 電解液:1M LiPF6 EC:DEC=3:7 1Cレート、300サイクル
low
※放電状態で解体した電極
0mAh
サイクル前後における正極(003)ピークの変化を比較
LiMO2
(M:遷移金属) ② 現象②の確認⇒インピーダンス評価(@3.0V)
① 300cycleで10%低下
(0.1Cの容量)
c軸
Li
捉えられた構造変化と推定される現象
現象① 未充電時にc軸大⇒正極へLi戻り切っていない ① Liが正極に戻り切っていない事を確認
現象② c軸の膨張が緩やか⇒反応性低下(抵抗上昇) ② 抵抗上昇を確認
in situ XRDで得られた結果と電気化学評価の結果が一致しており、非破壊で劣化状態の解析が可能
P01949構造化学第2研究室20190516
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LEISによる活物質表面コート層の被覆率評価
LEISは表面第1層のみの元素情報が得られる、唯一の表面分析手法である。
コート層の膜厚が非常に薄い場合でも、下地の影響を除いた、定量的な被覆率評価が可能となる。
ここでは、LCO粉末上のLTOコート層の被覆率を評価した。
分析深さ
活物質-固体電解質界⾯における、
- 抵抗低減
- 元素の相互拡散抑制
のために、薄く、かつ被覆率の⾼いコート層
が求められている。
LEISは表⾯第1層のみの情報が得られる
ため、極薄コート層の被覆率を定量的に
評価することができる。
LTOコート層の被覆率評価
100
87.6
Co 80 LTO 被覆率
60
%
40 36.5
20
0
Uncoated thin thick
LEISスペクトルの⽐較
表⾯第1層のみの情報︓下地の情報を含まない被覆率評価
ビーム径 1 mm︓粉末の平均情報が定量的に得られる
活物質上コート層の完全性が、定量的に評価できる
P01904表面科学第2研究室20190209
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LIB安全性試験時の発生成分分析
リチウムイオン電池(LIB)の車載、定置用途など、大型化が進む中、安全性の確保は従来以上に
重要な課題である。東レリサーチセンターでは、各種安全性試験から試験時に発生する成分(ガス・
ミスト・ダスト)分析まで、ワンストップで実施が可能である。
安全性試験 & 発生成分分析のフロー
発⽣成分分析 発⽣成分 サンプリング
安全性試験 Dust
Gas *3
試験槽内のガスと付着物をサンプリング。
*1
・釘刺し・圧壊 Mist 分析⼿法
*2
・加熱 Gas・・・GC, GC/MS, IC
・過充電・過放電 Mist・・・ FT-IR, NMR, GC/MS, GPC
Dust・・・ FT-IR, EDX, Raman, 元素分析
(例)釘刺し試験の様⼦ *1 槽内ガス中成分。 *2 槽内付着物の Chloroform可溶成分。*3 槽内付着物の Chloroform不溶成分。
事例(釘刺し試験)
<電池(ラミネートセル)構成> <釘刺し試験概要>
正極: LiCoO2, 負極: ⼈造⿊鉛, セパレータ: PE 充電状態(CCCV充電 4.2 V)の電池の中央へ
電解液: EC/DEC=1/1+LiPF6(1 M), VC 2 mass% 3 mmφ鉄釘を1 mm/sで挿⼊。
容量: 2.6 Ah
<温度・電圧プロファイル> <試験後のセルの様⼦>
釘 正極
Temp V
250 4.5
セル表面温度(℃)
200 3.5
セル電圧(V)
150 2.5
100 1.5
50 0.5
0 ‐0.5
0 250 時間/s 500 セル外観 セル断⾯X線CT像 セル内部
内部短絡時、急激な温度上昇と⽩煙発⽣。 試験後、セパレータは完全に消失。正極も⼤きく損傷。
<発⽣成分分析結果>
* Chloroform抽出量から推定。
主な発⽣成分は、電解液の分解、PE(セパレータ)の酸化、熱分解により⽣じたと推定。
安全性試験時の発⽣成分の詳細分析により、発⽣源となる部材について考察が可能。
P01923有機分析化学第2研究室20190326
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全固体電池材料の安全性評価
各種雰囲気でのオンライン発生ガス分析
全固体電池材料として注目されている硫化物固体電解質は、酸素や水分との反応性が高いため
誤用時に起こりうる現象や材料の安全性を把握することは重要である。ここでは、安全性評価の
一環として、大気を模擬した雰囲気条件で加熱発生ガス分析(TPD-MS)を行い、本材料が大気に
曝された際の熱安定性を各種雰囲気での結果比較と併せて紹介する。
TPD-MS法の概要と条件 試料
硫化物固体電解質 Li6PS5 Cl
(産業総合技術研究所 関西センター 田渕先生、小島先生ご提供)
測定条件
室温~500℃ (MAX1000℃まで可)
質量範囲 m/z 2~300
キャリアガス ①Dry He雰囲気
②Dry O2/He(20/80)雰囲気
③加湿O2/He(20/80)雰囲気
※大気模擬(湿度 約43%RH)
試料サンプリングから装置内セットまで大気非暴露で実施
測定結果~各成分の発生挙動・発生量~
【硫化水素(H2S)】 【二酸化硫黄(SO2)】
●Dry O2/He雰囲気:450℃以上で発生が顕著
●加湿O2/He雰囲気:室温から発生開始
●加湿O2/He雰囲気:室温から発生開始
●Dry O2/He雰囲気:検出下限以下
⇒H2Sは他のS成分(SO2等)に変換 350℃以上で発生が顕著
発生温度領域が
低温側にシフト
発生温度領域が
低温側にシフト
not not
detected detected
※発生量は二酸化炭素換算値
本結果より、雰囲気の違いによって各成分の発生挙動や発生量に大きな変化が見られ、硫化物
固体電解質は、酸素や水分に曝されることにより、熱安定性が大きく低下することが明らかとなった。
P02044材料物性第1研究室20191031-1
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LIBの高温加熱試験時の発生ガス分析
車載・定置用途でリチウムイオン電池(LIB)の大型化が進む中、民生用途よりも高い安全性が求めら
れ、高温加熱試験、過充電試験などの安全性試験が重要である。
東レリサーチセンター(TRC)では、LIBの高温サイクル試験、種々安全性試験と試験状況の撮影、電
池プロファイル(電圧、電流、セル温度)採取、安全性試験時発生ガスの組成分析が可能である。
TRCのガス分析の特長 分析手法と測定成分
GC
安全性試験の経過時間に従った、連続的なサンプリング H2, O2, N2, CO, CO2
低沸点有機成分(C1~C2)
無機から有機ガスまで、様々なガス成分の定性、定量分析が可能 GC/MS
⇒ 各種安全性試験に対応した発生ガス分析から、試験時の現象を考察 低沸点有機成分(C3~C10)
IC
無機イオン成分(F-, PO43-…)
高温加熱試験
< 試験中の様子>
(例)高温200サイクル後のラミネートセル(1.1Ah) ガス採取
配管
< 温度プロファイル > セル
熱電対
白煙発生
膨張開始
シールの一部から内部ガ セパレータは消失
スが徐々に放出 正極の損失が著しい
発生ガス分析
有機成分
CO2
CO
H2
膨張時には、発生ガス量は少ないが、カーボネートとエステル(電解液由来)の割合が高い。
白煙発生時には、発生ガス量が多く、特にCO, CO2、アルケン(セパレータ由来)の割合が多い。
セル膨張(147℃~)
電解液のガス化によるセル膨張に伴い、外装材のシールの一部分が解放され、ガスが放出。
白煙発生(178℃~)
膨張が進み、セパレータが溶融し、正極、負極間で内部短絡が発生。
急激な温度上昇により電解液、セパレータ等が分解し、大量のガスが放出。
P01721有機分析化学第2研究室20171102
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LIBの加熱試験における発生ガス分析
リチウムイオン電池(LIB)は高い安全性が求められ、電気、機械および環境的な安全性試験は必要
不可欠である。東レリサーチセンターでは安全性試験時に発生したガス成分をリアルタイム分析および
混合ガス成分を詳細に分析することができる。市販円筒電池での試験事例を紹介する。
加熱試験時発生ガスの分析フローと特長
電圧・温度計測
ポータブルガス分析計
ガス分析計
測定対象成分:
CO2, CO, O2, SOx, NOx
電池 昇温時の発生ガスをリアルタイムで測定可能
事例:円筒電池(市販品)の加熱試験における発生ガス分析
<円筒電池の素性>
部材構成 : NCM正極、グラファイト負極、PE単層セパレータ、電解液(カーボネート、LiPF6))
容量 : 2900 mAh
<試験条件>
電池加熱方式: 円筒電池専用治具、 昇温条件: 室温→200℃(5℃/min) 、試験前電圧(OCV) : 4.2 V
<試験結果>
電池表面温度とCO2 発生量 ガス発生量
193℃で発火 ①リーク ②発火
ガス濃度(vol%)
10.0 350 1.0 (vol%)
9.0 CO2 [vol%] Conc. 300 0.82 0.05 0.042
0.63 0.022
7.0 ヒーター温度 200 0.02 0.013
加熱試験にポータブルガス分析計を併用することで、電池の加熱挙動に合わせて発生するガスを
リアルタイムで確認できる。更にイベントに応じてガスを採取し、GC/MS,IC測定などで発生成分,
発生量の詳細分析が可能である。
P02067有機分析化学第2研究室20191204-1
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