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とくてい ぎ の う ごう

特定技能2号
ぎょぎょう ぎ の う そくてい し け ん ぎょぎょう
漁 業 技能測定試験( 漁 業 )
がくしゅうよう
学 習 用 テキスト
ぎょぎょういっぱんかんけい
【 漁 業 一般関係】

いっぱんしゃだんほうじん だ い に ほ ん すいさんかい

一般社団法人大日本水産会
しょはん ねん がつ

(初版2024年1月)
もく じ

目 次
かいようかんきょう ぎょせん
【Ⅰ.海洋 環 境 と漁船】
うみ
1.海 ························································ 1
ぎょじょう ぎょじょうちょうさ
2. 漁 場 と 漁 場 調査 ·········································· 4
かいようかんきょう ほぜん
3.海洋 環 境 の保全 ··········································· 5

ぎょぎょう ちしき
【Ⅱ. 漁 業 の知識】
おも ぎょぎょう ぎょほう
1.主な 漁 業 と漁法 ··········································· 9
ぎょせん
2.漁船 ···················································· 11
ぎょろう き か い ぎょぎょう き か い
3.漁労機械( 漁 業 機械) ··································· 15
ぎょぎょうけいそく き き
4. 漁 業 計測機器 ··········································· 19
れいとうれいぞう そ う ち
5.冷凍冷蔵装置 ············································ 25
しょくひん ひんしつ か ん り
6. 食 品 の品質管理 ········································· 27
しょくひん あんぜん か ん り
7. 食 品 の安全管理 ········································· 29

ぎょぎょう か ん り しげん い じ
【Ⅲ. 漁 業 管理と資源維持】
ぎょぎょう か ん り
1. 漁 業 管理 ··············································· 33
しげんかんり きほんてき かんが かた
2.資源管理の基本的な 考 え方 ······························· 35
すいさん し げ ん
3.水産資源 ················································ 37
ぎょぎょうきょうどうくみあい
4. 漁 業 協 同 組合 ·········································· 38
ぎょそん ぎょぎょうしゅうらく やくわり
5.漁村( 漁 業 集 落 )の役割 ································ 40
かいようかんきょう ぎょせん
Ⅰ.海洋 環 境 と漁船
うみ
1. 海
かいよう ちきゅうひょうめんせき りくち ばい ひろ し きたはんきゅう みなみはんきゅう おお
海洋は地 球 表 面積の 71%、陸地の 2.4倍の広さを占めており、北 半 球 より 南 半 球 に多
ひろ かいよう さいしんぶ こ へいきん ふか せかい
く広がっている。海洋の最深部は 10,000m を超えるが、平均の深さは 3,795m である。世界
うみ うみ よ ほっきょくかい なんきょくかい なんぴょうよう きたたいへいよう みなみたいへいよう
の海は、いわゆる7つの海と呼ばれる 北 極 海、 南 極 海( 南 氷 洋)、北太平洋、 南 太平洋、
きたたいせいよう みなみたいせいようおよ よう うみ わ うみ じだい こと
北大西洋、 南 大西洋及びインド洋の海に分けられるが、この7つの海は時代により異なっ

ていた。 かいひん

かいてい ち け い
(1)海底地形
かいてい ち け い ず しめ かいひん
海底地形 は図 1 に示 すように海浜 、
たいりくだな たいりくだなしゃめん かいぼん かいれい かいざん
大陸棚、大陸棚斜面、海盆、海嶺、海山、
かいこう ぶんるい かいよう りくち
海溝などに分類される。海洋は、陸地の
えんちょう たいりくだなえんぺん すいしん
延 長 とみなされる大陸棚縁辺 の水深 が
みまん えんがんいき すいしん
200m未満の沿岸域(coastal sea)と水深
ず かいてい ち け い も し き ず
いじょう がいよういき 図1 海底地形の模式図
が 200m以上の外洋域(open ocean)また
しんかいいき たいべつ えんがんいき おおしおじ さいこうこうちょうめん さいていていちょうめん
は深海域(deep sea)に大別される。沿岸域は、大潮時の最高 高 潮 面 から最低 低 潮 面 まで
はんい ちょうかんたい かせん えいきょう つよ う えんぶん ひじょう ひく きすいいき すいしん ていど
の範囲の潮 間 帯 、河川の 影 響 を強く受けて塩分が非常に低い汽水域、水深が 50m程度まで
せんかいいき さいぶん
の浅海域(shallow seas)などに細分される。

かいりゅう
(2) 海 流
かいりゅう いってい ばしょ いってい つよ ちょうじかんなが かいすい なが にほん
海 流 は、ほぼ一定の場所をほぼ一定の強さで長時間流れる海水の流れのことである。日本
しゅうへん かいいき ず しめ みなみ だんりゅう くろしお つ し ま かいりゅう きた かんりゅう おやしお
周 辺 の海域には図2 に示すように 南 から 暖 流 の黒潮、対馬 海 流 、北から 寒 流 の親潮と
かいりゅう かいりゅう なが くろしお きげん せかいてき
リマン 海 流 の 4 つの 海 流 が流れている。黒潮はフィリピンあたりを起源とする世界的にも
もっと つよ かいりゅう きたたいせいよう わんりゅう せかい だいかいりゅう くろしお ひがし
最 も強い 海 流 で、北大西洋の 湾 流 とともに世界2大 海 流 のひとつである。黒潮は 東 シナ
かい ほくじょう かいきょう たいへいよう はい にほん きゅうしゅう しこく きしゅう い ず およ ぼうそうなんがん
海を 北 上 してトカラ 海 峡 から太平洋に入り、日本の 九 州 、四国、紀州、伊豆及び房総南岸
1
そ ほくとう なが ぼうそうはんとうおき ひがし なが
に沿 って北東 に流 れ、房総半島沖 から 東 に流 れ
かいりゅう くろしお はば に ほ ん きんかい
る 海 流 である。黒潮の幅は、日本近海では 100km
ていど さいだいりゅうそく いちびょうかん
程度で、最大 流 速 は 4 ノットにもなり、一 秒 間
まん まんりっぽう かいすい はこ
に 2,000万 ~5,000万立方 メートルの海水 を運 ぶ
なが はや ひかくてき
とされている。流れが速く比較的プランクトンの
りょう すく とうめいど たか ふか こんいろ
量 も少 ないため透明度 が高 く、深 い紺色 をして
くろしお よ くろしお いちぶ おきなわ
いるので黒潮と呼ばれる。この黒潮の一部が沖縄
きた わ つ し ま かいりゅう きた む
の北 で 分 かれて対馬 海 流 となり、 北 へ向 かい
つ し ま かいきょう とお にほんかい はい さんいんおき の と おき
対馬 海 峡 を通って日本海へ入る。山陰沖、能登沖
おお いちぶ つ が る かいきょう ず に ほ ん しゅうへんかいいき かいりゅう
で大 きくうねりながら、一部 は津軽 海 峡 をぬけ 図2 日本 周 辺 海域の 海 流
たいへいよう で いっぽう
て太平洋へ出ていく。一方、ロシアのカムチャツ
はんとう ふ き ん なんせいほうこう なが かいりゅう おやしお よ かいりゅう ようぶん おお
カ半島付近から南西方向へ流れてくる 海 流 が、「親潮」と呼ばれる。この 海 流 は養分が多
たいりょうはんしょく えさ さかな そだ おやしお なまえ
くプランクトンが 大 量 繁 殖 するため、それを餌とする 魚 を育てることから親潮の名前が
おやしお ち し ま れっとう なんぽうかいいき れっとう そ なんせい む ほっかいどう なんとうぎし えんかい
ついた。親潮は千島列島の南方海域を列島に沿って南西に向かい、北海道の南東岸の沿海を
なが さんりくおき なんか ご に ほ ん とうほうかいいき たっ あと くろしお ごうりゅう ひがし
流れ、さらに三陸沖を南下する。その後、日本東方海域に達した後、黒潮と 合 流 して 東 に
む かいりゅう ちゅうごく こっきょう なが がわ こくりゅうこう
向かう。また、「リマン 海 流 」はロシアと 中 国 の 国 境 を流れるアムール川( 黒 龍 江)あ
ま み や かいきょう にほんかい なが こ かいりゅう ほっかいどうせいがんおき きた なが つしま
たりから間宮 海 峡 をへて日本海へ流れ込む 海 流 であるが、北海道西岸沖を北へ流れた対馬
かいりゅう いちぶ ひ ごうりゅう かいりゅう
海 流 の一部が冷やされ 合 流 した 海 流 とされる。

しお なみ
(3)潮と波
ちょうりゅう しお かんまん ともな じかん はんにちしゅうちょうりゅう じかん にっしゅうちょうりゅう
潮 流 とは、潮の干満に 伴 って、12.5時間(半日 周 潮 流 )または 25時間(日 周 潮 流 )
しゅうき む はや き そ く ただ か なが しお かんまん く どうりょく つき
の周期で向きと速さを規則正しく変える流れのことである。潮の干満の駆 動 力 は月および
たいよう かいすい およ いんりょく えんしんりょく ず しめ つき たいよう えいきょう かさ しん
太陽が海水に及ぼす 引 力 と遠 心 力 である。図3 に示すように月と太陽の 影 響 が重なる新
げつ まんげつ ひ かんちょうじ まんちょうじ ちょうい さ かんまんさ もっと おお おおしお つき たいよう
月と満月の日には干潮時と満潮時の潮位の差(干満差)が 最 も大きい大潮となり、月と太陽

2
えいきょう かさ じょうげん かげん つき ひ
の 影 響 が重 ならない 上 弦 または下弦 の月 の日
かんまんさ もっと ちい こしお
には干満差が 最 も小さい小潮となる。
かいじょう ふ かぜ ちょくせつしょう
海 上 を吹いている風によって 直 接 生 じてい
しゅうき すうびょう すう びょう かいめん なみ ふうは
る周期 が 数 秒 ~数 10 秒 の海面 の波 を風波 また
ふうろう すいしん くら はちょう なが なみ
は 風浪 と い う 。 水深 に 比 べ て 波長 が 長 い 波 を
しんかいは ひょうめんは すいしん くら はちょう みじか
深海波または表面波、水深に比べて波長が 短 い
なみ せんかい は ふうは たんしゅうきたんはちょうせいぶん ず たいよう つき うんこう しお かんまん
波 を浅海波 という。風波 の短周期短波長成分 が 図3 太陽、月の運行と潮の干満
げんすい ちょうしゅうきちょうはちょうせいぶん でんぱ かいがん む ふ つづ
減衰して長 周 期 長 波 長 成分だけが伝播してきたのがウネリである。海岸へ向かって吹き続
つよ かぜ かいがん かいすい ふ よ すいい じょうしょう たかしお じしん
ける強い風によって、海岸に海水が吹き寄せられ、水位が 上 昇 するのが高潮である。地震
ともな きゅうげき かいてい じ ば ん へんか しょう かいめん おうとつ かいがん とうたつ つなみ
に 伴 う 急 激 な海底地盤の変化によって 生 じる海面の凹凸が海岸に到達したのが津波であ
つなみ せんかい は すいしん あさ いそうそくど おそ かいてい ち け い
る。津波は浅海波であり、水深が浅いほど位相速度は遅い。このため、海底地形によってそ
でんぱ む か みさき とくてい ちいき おお ひがい しょう
の伝播する向きを変え、 岬 などの特定の地域で大きな被害が 生 じる。

かいすい せいしつ
(4)海水の性質
かいすいちゅう さまざま ぶっしつ と かいすいちゅう もっと おお ふく えんるい せいぶん ひ り つ せ
海 水 中 には様々な物質が溶けている。海 水 中 に 最 も多く含まれる塩類の成分比率は世
かいじゅう うみ いってい しょくえん もと えんそ
界 中 の海でほぼ一定であり、80%は 食 塩 の素となる塩素イオンとナトリウムイオンである。
かいすい ふく えんるい りょう あらわ えんぶん の う ど たんい
海水1kg に含まれる塩類の 量 をグラム(g)で 表 したものを塩分濃度といい、単位は g/kg
せかい かいすい はんい ふく かいすいちゅう
またはパーミル(‰)である。世界の海水の 90%が 34~35‰の範囲に含まれている。海 水 中
と こ さんそ かいすい ちゅう やく やく かいすいちゅう
に溶け込む酸素は、海水1リットル 中 に 0℃で約8ml 、20℃で約5ml である。また、海 水 中
ふく えいようえんるい しょうさんえん あしょうさんえん えん さんえん さんえんとう
に含まれている栄養塩類は、硝 酸 塩 ・亜硝酸塩・アンモニウム塩・リン酸塩・ケイ酸塩等
む き ぶ つ じょうたい かいすいちゅう と えいようえん うみ ひょうそう せいぶつ と こ
で無機物の 状 態 で海 水 中 に溶けている。これら栄養塩は、海の 表 層 で生物に取り込まれ
えいようえん の う ど ひょうそう ひく せいぶつ と こ えいようえん ふん しがい ちんこう
るため、栄養塩濃度は 表 層 で低いが、生物に取り込まれた栄養塩は糞や死骸となって沈降
かそう さいきん ぶんかい かそう たか
し、下層のバクテリア(細菌)によって分解されるため、下層で高くなる。

3
ぎょじょう ぎょじょうちょうさ
2. 漁 場 と 漁 場 調査
こうだい かいようかんきょう ぎょじょう たんさく さかな せいたい ほんのう こうさつ ひつよう
広大な海洋 環 境 から 漁 場 を探索するためには、 魚 の生態がもつ本能を考察する必要が
せいぶつかい なか せいぞん じょうけん はあく ぎょじょう はっけん
ある。生物界の中で生存するための 条 件 を把握していくことで 漁 場 が発見できることにな
ひろ かいよう ぎょどう そんざい しゅうぐん ばしょ けいせい
る。広い海洋でも、魚道が存在し、 集 群 するピンポイントの場所が形成されるのである。
はっけん ぎょろうちょう けいけん ぎじゅつ
ここを発見することが漁労 長 の経験と技術といえよう。

ぎょじょう じょうけん
(1) 漁 場 の 条 件
ぎょじょう ぎょぎょう たいしょう すいさんせいぶつ おお ぶんぷ ぎょぐ しよう そうぎょう じょうけん
漁 場 とは、漁 業 で 対 象 とする水産生物が多く分布し、漁具を使用して 操 業 できる 条 件
そな ぎょぎょう せいりつ すいいき すいさんせいぶつ かんきょう へんか しゅうぐん いってい
を備えた、漁 業 が成立する水域である。水産生物は 環 境 の変化によって 集 群 したり、一定
ばしょ とど いどう とお みち けいせい
の場所に留まったり、移動のための通り道を形成したりする。
しゅうぐん じょうけん せってい ぎょじょうけいせい し く たいべつ
したがって、 集 群 する 条 件 が設定される。その 漁 場 形成の仕組みによって大別すると、
しおざかいぎょじょう
①潮 境 漁 場
ゆうしょうりゅうぎょじょう
②湧 昇 流 漁 場
か りゅういき ぎょじょう
③渦 流 域 の 漁 場
りくだなじょう ぎょじょう
④陸 棚 上 の 漁 場
たい しょうぎょじょう
⑤堆・ 礁 漁 場
じんこうぎょしょう
⑥人工 漁 礁 などがある。

ず ゆうしょうりゅういき なりた れい
図4 湧 昇 流 域 の成立ち例

4
ぎょじょう ちょうせい
(2) 漁 場 の 調 整
そうぎょうすいいき ぶんるい ちょうかんたいぎょじょう えんがんぎょじょう おきあいぎょじょう えんようぎょじょう ないすいめん
操 業 水域により分類すると、潮 間 帯 漁 場 、沿岸 漁 場 、沖合 漁 場 、遠洋 漁 場 、内水面
ぎょじょう ぶんるい せいそく く ぶ ん ぶんるい そこうおぎょじょう う うおぎょじょう せ つ ぎょじょう ぶんるい
漁 場 に分類される。生息区分による分類では、底魚 漁 場 、浮き魚 漁 場 、瀬付き 漁 場 に分類
ぎょじょう り よ う ほうほう ちょうせい ひつよう はな あ ば もう
される。この 漁 場 の利用方法について 調 整 が必要であるため、話し合いの場が設けられて

いる。

ぎょじょう せんてい ちょうさほうほう


(3) 漁 場 の選定と調査方法
こうぎょじょう せんてい すいさんせいぶつ ぶんぷりょう
好 漁 場 を選定するためには、水産生物の分布量などの
ぎょじょうちょうさ ひつよう
漁 場 調査が必要である。
ぐたいてき ほうほう
具体的な方法として、
おうだんかんそくほう
① 横断観測法
かんそくほう
② ジグザグ観測法
へいこうかんそくほう
③ 平行観測法
ほうけいかくだいかんそくほう
④ 方形拡大観測法
おうぎがたかくだいかんそくほう
⑤ 扇 形 拡大観測法
たんさくほうほう けいかく
などの探索方法が計画される。
ぎょじょうかんきょう ちょうさこうもく すいおん かいてい ち け い ていしつ
漁 場 環 境 の調査項目として、水温、海底地形や底質、
ず ぎょじょうちょうさ ほうほう
えんぶん ようぞん さ ん そ かいすい りゅうどう じりょうせいぶつ へいこう
塩分や溶存酸素、海水の 流 動 、餌料生物などを並行して 図5 漁 場 調査の方法
ちょうさ
調査する。
かんきょうじょうけん ぎょじょうず さくせい ぎょぎょうじょうほう かつよう
これらの 環 境 条 件 から漁場図を作成し、漁 業 情 報 として活用される。
げんざい えいせい じょうほう ゆうこう ぎょじょう ぶんせき ゆうこう
現在では、衛星からの 情 報 が有効なデータとなり 漁 場 の分析に有効となっている。

かいようかんきょう ほぜん
3.海洋 環 境 の保全
かいようかんきょう ほぜん い ぎ
(1)海洋 環 境 の保全の意義
ぎょぎょうかつどう じぞくてき おこな かいようかんきょう かいようせいたいけい たも じゅうよう
漁 業 活動を持続的に 行 うためには、海洋 環 境 や海洋生態系を保つことが 重 要 である。

5
ぎょぎょうせいさん ば し ぜ ん じょうけん えいきょう う じんいてき えいきょう こうりょ かんきょう あ っ か
漁 業 生産の場は、自然 条 件 の 影 響 を受けるが、人為的な 影 響 なども考慮し、 環 境 悪化
じったい はっせい よ ち えいきょう けいげん ぎょぎょうしゃ しょうらい
の実態や発生を予知し、その 影 響 を軽減しなければならない。漁 業 者 にとって、 将 来 に
じぞくかのう ぎょじょう まも ひつよう
わたり持続可能な 漁 場 を守る必要がある。

ぎょじょうかんきょう へんか
(2) 漁 場 環 境 の変化
しぜんてき よういん とくい げんしょう いじょうれいすい いじょうだんすい はっせい
自然的な要因では、特異な 現 象 である異常冷水や異常暖水の発生があげられる。また、
た せいぶつ かんきょう あ っ か はっせい
他の生物による 環 境 悪化の発生などもあげられる。
じんいてき よういん すいしつ お だ く は い き ぶ つ とう かいよう と う き せきゆおせん おんはいすい
人為的な要因では、水質汚濁、廃棄物等の海洋投棄、石油汚染、温排水などがあげられる。
さいきん ちきゅう お ん だ ん か かいすいおん じょうしょう えいきょう すいさつ き こ う へんどう
最近では、地球温暖化が海水温の 上 昇 に 影 響 してきていると推察されている。気候変動
にんげんしゃかい えいきょう ちきゅう お ん だ ん か よういん ひと うたが かいすいおんじょうしょう えい
は、人間社会の 影 響 が地球温暖化の要因の一つであることは 疑 いなく、海水温 上 昇 に影
きょう およ
響 を及ぼしている。
とく きたたいへいよう かいよう ね っ ぱ げんしょう ぎょかく
特に、北太平洋の海洋熱波という 現 象 により、サケからブリへというような漁獲される
ぎょしゅ へんどう お ふりょう げんいんきゅうめい きゅうむ
魚種の変動も起きている。サンマやスルメイカの不漁の原因 究 明 も急務であり、また、ウ
たいりょう し め つ げんいん あかしお へんどう いちいん
ニの 大 量 死滅の原因は、赤潮プランクトンの変動なども一因とされている。

すいさんぎょう
(3)スマート水 産 業
ぎょぎょうせいさんりょう げんしょう ぎょぎょうしゅうぎょうしゃ こうれいか げんしょうとう きび げんじょう ちょくめん
漁 業 生 産 量 の 減 少 、 漁 業 就 業 者 の高齢化と 減 少 等の厳しい 現 状 に 直 面 している
なか すいさん し げ ん い じ せいさんせい こうじょう さいきん ぎじゅつかくしん いちじる じょうほうつうしん
中でも、水産資源の維持と生産性の 向 上 のため、最近の技術革新が 著 しい ICT( 情 報 通信
ぎじゅつ じんこう ち の う とう じょうほうぎじゅつ すいちゅう
技術)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)等の 情 報 技術やドローン・水 中 ロボッ
とう ぎじゅつ ぎょぎょう げ ん ば どうにゅう ふ きゅう じゅうよう
ト等の技術を 漁 業 現場へ 導 入 し普 及 させていくことが 重 要 である。
たと すいおん えんぶん ちょうりゅうとう ぎょじょうかんきょう よ そ く じょうほう そくじ ぎょせん でんたつ じん
例えば、水温や塩分、 潮 流 等の 漁 場 環 境 の予測 情 報 を即時に漁船に伝達したり、人
こうえいせい かいすいおん ぎょかく ぶんせき よそく かのう
工衛星からの海水温データと漁獲データから AI によって分析と予測することが可能となり、
ぎょじょう さが ひつよう ねん ゆ さくげん
漁 場 を探すために必要な燃油を削減できる。
ぎょぐん た ん ち き つうしん き の う つ ていちあみない さかな りょう しゅるい りくじょう はあく
魚群探知機に通信機能を付けることにより、定置網内の 魚 の 量 や種類を 陸 上 で把握し
つうしん き の う つ すいちゅう ようしょく せっち さかな おお りょう せいかく けいそく
たり、通信機能付きの 水 中 カメラを 養 殖 いけすに設置し、魚 の大きさや 量 を正確に計測

6
しゅっか じ き ぎょしゅ はんばい けってい
したりすることにより、出荷の時期と魚種の販売ルートを決定することができる。
てきせい こうりつてき ぎょかく ぎょぎょうしゃ しゅうにゅう こうじょう
このようにして、適正かつ効率的な漁獲につなげることで、漁 業 者 の 収 入 の 向 上 も
きたい
期待できる。
すいさん し げ ん かんり めん しげん じょうたい はあく ひつよう じょうほう しゅうしゅう
また、水産資源の管理の面からも資源の 状 態 を把握するために必要な 情 報 を 収 集 する
かのう
ことが可能となる。

(4)SDG’s
こくれん さだ じぞくてき しゃかい じつげん む じぞくかのう かいはつもくひょう かんきょう
SDG’s は、国連が定めた持続的な社会の実現に向けた持続可能な開発 目 標 である。環 境
もんだい こくさいてき とりくみ もと ねん こうもく しめ
問題への国際的な取組が求められており、2030年までの 17項目のゴールが示されている。
ぎょぎょう さんぎょう し ぜ ん げんしょう おお さゆう うみ だいしぜん かん
漁 業 という 産 業 は、自然 現 象 に大きく左右される。したがって、海という大自然の環
きょう じぞくてき い じ りくち くさき しんりん どじょう せいじょう かんれん
境 を持続的に維持するためには、陸地における草木や森林、土壌の 性 状 にまで関連するこ

とになる。
じぞくかのう ぎょぎょう そんざい すいさん し げ ん か ん り とうぜん しんりん
したがって、持続可能な 漁 業 を存在させるためには、水産資源管理は当然のこと、森林
かいはつ のうち かいりょうおよ しゅうへんいき と し かいはつ か せ ん かんきょう いた せいたいけい こうりょ せいさく
開発や農地の 改 良 及び周 辺 域 の都市開発や河川 環 境 に至るまで生態系を考慮した政策が
ひつよう こうがくてき しょう ぎょせん うんこう すいさんぶつ しょうひ いた せい
必要となる。また、工学的にも 省 エネルギー漁船の運航から水産物の消費に至るまでの生
かつかんれんさんぎょう れんけい だつたんそ と く そうごうてき
活関連 産 業 と連携して脱炭素に取り組み、総合的な GX(グリーントランスフォーメーショ
つと
ン)に努めなければならない。

ず じぞくかのう
7 かいはつもくひょう
図6 17 の持続可能な開発 目 標
かいよう もんだい
(5)海洋プラスチック問題
にんげん かいはつ こうぎょうせいひん にんげんせいかつ ゆた しげん ゆうこう
人間 が開発 したプラスチックという 工 業 製品 は、人間生活 の豊 かな資源 として有効 に
やくだ ぶんかい けってん ほうち ながねん
役立ってきた。しかし、分解されにくいなどの欠点もあり、ゴミとして放置されると長年に
そんざい
わたり存在するのである。
とく かいよう とうき ばあい うみ せいたいけい い じ おお えいきょう およ
特に、海洋に投棄された場合は、海の生態系の維持に大きな 影 響 を及ぼすことになる。
さいしゅうてき きわ ちい りゅうし うみ う つづ そうしょう
このプラスチックは最 終 的 に極めて小さな粒子として海に浮かび続ける。これを 総 称 しマ
せいひん うみ す こうい ぎょぐ
イクロプラスチックという。むやみにプラスチック製品を海に捨てる行為はなくても、漁具
とう せいひん りゅうしつ さいしゅうてき すいさんせいぶつ ぜつめつ お
等の製品が 流 失 したりすると、最 終 的 には水産生物を絶滅に追いやってしまうことにつな
すいさんちょう ぎょぐ けいかくてき し ょ り すいしん ぎょぎょうけい は い き ぶ つ けいかくてき し ょ り すいしん し し ん
がる。水 産 庁 も「漁具の計画的処理を推進するための 漁 業 系廃棄物計画的処理推進指針」
さくてい と く
策定に取り組んでいる。
ぎょぎょうしゃ も かえ かねんぶつ い が い もの ぎょうしゃ しょぶんほうほう
まずは、漁 業 者 はあらゆるゴミは持ち帰り、可燃物以外の物は 業 者 による処分方法を
さんこう
参考にすべきである。

8
ぎょぎょう ちしき
Ⅱ. 漁 業 の知識
おも ぎょぎょう ぎょほう
1.主な 漁 業 と漁法
ぎょかいるい さいほ ぎょかく おも ぎょほう つりばり と あみ と つ あみ い が い
魚介類を採捕・漁獲する主な漁法は“釣針で獲る”、“網で獲る”、“釣りや網以外の
たよう ぎょぐ と たいべつ
多様な漁具で獲る”の 3 つに大別できる。

つり ぎ ょ ぐ きほんてき つりばり つりいと こうせい ぎょぐ つりばり こうてつ せい


(1)釣漁具:基本的に釣針と釣糸で構成される漁具である。釣針は鋼鉄やステンレス製
つりいと むす ぶぶん ちょくせんぶ つづ くっきょくぶ せんたん えいり とが さ はり ぬ
であり、釣糸を結ぶ部分の直線部に続く屈曲部の先端は鋭利に尖り、刺さった針が抜けな
ただ か さかな はず やす な はり つか
いためのカエシがある。但し、掛かった 魚 を外し易くするため、カエシの無い針が使われ
えさ しよう さかな こうくうぶ つ さ ぎょかく つりばり
ることもある。これに餌をつけて使用し、 魚 の口腔部に突き刺して漁獲する。釣針は
せんたんぶ も たんしん いじょう せんたんぶ も ふくしん さかな えさ おも ぎ じ いったいか
先端部を 1 つ持つ単針と 2 つ以上の先端部を持つ複針、 魚 に餌と思わせる擬餌と一体化し
ぎ じ ばり
た擬餌針がある。

ず はえなわぎょぎょう ず つ ぎょぎょう
図7 まぐろ延縄 漁 業 図8 イカ釣り 漁 業

あみ ぎ ょ ぐ つうじょう あみじ ほん あみいと つか あ あ かた けっせつ


(2)網漁具: 通 常 、網地は 2本の網糸を使い編まれる。編み方は結節のあるものと
むけっせつ あみじ けっせつ しゅるい むけっせつ へんもうほう さまざま きゃく あみいと けいせい
無結節の網地にわかれ、結節の種類や無結節の編網法も様々である。4 脚 の網糸で形成さ
しへんけい あみめ しょう きゃく なが おお あらわ めあい あみじ へいめんてき
れる四辺形は、網目と 称 し、2 脚 の長さが大きさを 表 す目合となる。この網地を平面的
9
りったいてき こうぞう あみ ぎ ょ ぐ みず こ ぶつりてき あみめ つうか
または立体的な構造としたものが網漁具で、水を濾して物理的に網目を通過できない
ぎょかいるい ぎょかく あみ せっきょくてき うご さかな と ぎょほう あみ せっち さかな ま
魚介類を漁獲する。網を積 極 的 に動かして 魚 を獲る漁法と、網を設置して 魚 を待ちうけ
と ぎょほう わ ぎょぐ こうせい ちが
て獲る漁法に分かれ、漁具の構成も違ってくる。

ず はえなわぎょぎょう ず つ ぎょぎょう
図9 まぐろ延縄 漁 業 図10 いか釣り 漁 業

ず あみぎょぎょう
ず そこひきあみぎょぎょう
図11 底曳網 漁 業 図12 まき網 漁 業
ぎょほう
(オッター・トロール漁 法 )
10
たよう ぎょぐ つ あみ い が い ぎょぐ おお にんげん て えんちょう ぎょかいるい さいほ
(3)多様な漁具:釣りや網以外の漁具の多くは人間の手の 延 長 として魚介類を採捕する
しゅえん ど う ぐ しゅうせい りよう ぎょかく まちう ぎょぐ
手援道具と 習 性 を利用して漁獲する待受け漁具である。
もり ぎょかいるい からだ ちょくせつなん どうぐ つ さ ぎょかく
①銛、ヤス:これらは魚介類の 体 に 直 接 何らかの道具を突き刺して漁獲する。
すな どろ なか もぐ ぎょかいるい ひ か と か
②砂や泥の中に潜っている魚介類を引っ掛けて獲る(ウナギ掻き)。
いわ は ひ は と
③岩などに張りついているものを引き剥がしたり、ねじって獲る(サザエはさみ、アワ
か とうかいそう ま
ビ掻き、コンブ等海藻巻き)。
ぎょかいるい すみか づく はい しば づ づ かご づつ はこ
④魚介類の住処を作りそこに入らせる(柴漬け、シイラ漬け、籠、アナゴ筒、箱、タコ
つぼ とう
壺)等がある。

ぎょせん
2.漁船
ぎょせん ぎょせんほう おも ぎょぎょう じゅうじ せんぱく ぎょかくぶつ ほ ぞうまた せいぞう せつび ゆう
漁船は漁船法により主に「 漁 業 に従事する船舶、漁獲物の保蔵又は製造の設備を有する
せんぱく お よ び ぎょじょう ぎょかくぶつまた せいひん うんぱん せんぱくとう ていぎ ぎょせん ぎょせん
船舶及び 漁 場 から漁獲物又はその製品を運搬する船舶等」と定義されている。漁船は漁船
とうろく う しきべつ ようい せんめい ぎょせんとうろくばんごう せんたい ひょうじ ぎょせん ぎょせん
登録を受けて識別を容易にするため船名と漁船登録番号を船体に標示する。漁船の漁船
とうろく ぎょせんほう つぎ ぶんるい
登録は漁船法により次のように分類される。
きゅうせん いじょう かいすいどうりょくぎょせん
1級船 : 100 トン以上の海水 動 力 漁船
きゅうせん いじょう みまん かいすいどうりょくぎょせん
2級船 : 5 トン以上100 トン未満の海水 動 力 漁船
きゅうせん みまん かいすいどうりょくぎょせん
3級船 : 5 トン未満の海水 動 力 漁船
ぎょせん うんこう そう すう みまん こ が た せんぱくめんきょ いじょう かい ぎ し
漁船を運航させるには、総トン数20 トン未満では小型船舶免許、20 トン以上では海技士
しかく ひつよう みまん そうぎょうかいいき かい ぎ し きかん しかく
の資格が必要である(20 トン未満においても 操 業 海域によっては海技士(機関)の資格
ひつよう いじょう こうかいし きかん し ゆう し か く し ゃ じょうせん ぎ む
が必要となる)。20 トン以上では、航海士と機関士それぞれの有資格者の 乗 船 が義務づけ
きゅうかい ぎ し せんちょう き か ん ちょう きゅうかい ぎ し いっとう こ う か い し いっとう き か ん し とう くぶん
られ、1 級 海技士( 船 長 /機関 長 )、2 級 海技士(一等航海士/一等機関士) 等に区分され
ぎょせん さかな と ぎょろうさぎょう せいつう ぎょろうちょう せんどう さいこうせきにんしゃ
ている。漁船では、 魚 を獲るための漁労作業に精通した漁労 長 (船頭)が最高責任者で
ふね ほうりつじょう さいこうせきにんしゃ せんちょう せんちょう し か く ゆう ぎょろうちょう
あるが、船の法 律 上 の最高責任者は 船 長 であるため、 船 長 資格を有する漁労 長 が
いっぱんてき
一般的である。

11
ぎょせん そうび
(1)漁船の装備
せんきょう せつび
①ブリッジ( 船 橋 )の設備
ぎょせん ちゅうすう せんきょう こうかい ひつよう せつび ほんらい ぎょろうそうぎょう
漁船の 中 枢 となる 船 橋 (ブリッジ)には、航海に必要な設備と本来の漁労 操 業 に
ひつよう せつび き ぐ そな そうだせつび じせん た せん い ち じょうほう しゅうへん
必要な設備・器具が備えられている。操舵設備や自船・他船の位置 情 報 および 周 辺 の
りくじょう ち け い かいていじょうほう しゅうしゅう ひょうじ け い き とう そうび
陸 上 地形、海底 情 報 を 収 集 ・表示する計器等が装備されている。エンジンコントロ
そうち そな ふね ふね しんろ し
ール装置を備えている船もある。船の針路を知るためのマグネティクコンパスとジャイ
むかし か けいそく き き ぎょぐん た ん ち き そくしんき
ロコンパスは、 昔 から変わらない計測機器であり、レーダー、魚群探知機(測深器)、
い ち じょうほう とう いっぱんてき そうび い ち そくていき じゅうらい ろくぶんぎ とけい
位置 情 報 プロッター等が一般的な装備である。位置測定器は、 従 来 の六分儀と時計に
か えいせい りよう つか ぎょろうよう
変わり、衛星を利用した GPS (Global Positioning System)が使われている。漁労用の
けいき ぎょぎょうしゅるい こと いっぽん づ とり あみ あみ
計器は、漁 業 種類により異なり、カツオ一本釣りの鳥レーダー、まき網のソナーや網
しんどけい そこびきあみ ほうこう た ん ち き つ しゅうぎょとうちょうこうき つ き
深度計、底曳網のネットレコーダー、方向探知機、イカ釣りの集魚灯調光器 、釣り機
ちょうせいきとうさまざま き き つか おおがた ぎょせん のぞ む せ ん けい せつび
調整器等様々な機器が使われている。また、大型の漁船を除けば、無線系の設備もブリ
ない そな りくじょう つうしん ぎょせんかん れんらく つか
ッジ内に備えられ、 陸 上 との通信や漁船間の連絡に使われる。

きかん せつび
②機関の設備
ぎょせん そうぎょう じ ぎょろう き き そうさ ふくざつ そうせん ど う き ぼ しょうせん くら
漁船は、 操 業 時に漁労機器を操作して複雑な操船をするため、同規模の 商 船 に比べ
ふ か つよ だいしゅつりょく しゅき とうさい ぎょせん き か ん しゅつりょく ばりきすう
て負荷に強い 大 出 力 の主機が搭載されている。漁船機関の 出 力 (馬力数、キロワッ
ぎょせんほう もと せいのう きじゅん すうごと じょうげん さだ ぎょせん
ト)は漁船法に基づく性能の基準によってトン数毎に 上 限 が定められている。漁船の
きかん おも つぎ しゅるい ぶんるい
機関は主に次の 3種類に分類される。
せんがいき ぎょせん せ ん び そとがわ とりつ かじ いったいか かんい こがたきかん でんき
・船外機:漁船の船尾外側に取付ける、舵と一体化した簡易な小型機関で、電気
てんかしき きかん しゅりゅう ていかかく ほしゅ かんり よう い
点火式ガソリン機関がその 主 流 である。低価格であることや保守・管理の容易
の か かんたん い か せん おお み じゅうらい
さ、乗せ替えが簡単なことなどから、3 トン以下の FRP船で多く見られる。 従 来
こうぞう かんたん きかん しゅりゅう きんねん かんきょう ねんぴ こうりょ
は構造が簡単な 2 サイクル機関が 主 流 だったが、近年は 環 境 や燃費を考慮した
きかん しゅりゅう
4 サイクル機関が 主 流 である。
せんないき せんない せっち おおがた き か ん しゅりゅう しんらいせい たいきゅうせい ようきゅう
・船内機:船内に設置された大型機関。 主 流 は信頼性および耐 久 性 が 要 求 されるた

12
きかん さいよう ねんりょう こがた
め、4 サイクルディーゼル機関が採用されている。 燃 料 に小型ディーゼルでは
けいゆ おおがた じゅうゆ じゅうゆ しよう
軽油を、大型ディーゼルでは A重油または C重油を使用する。プロペラシャフトに
すいしんき かいてん かじ べつ つ いじょう ぎょせん
より推進器(プロペラ)を回転させ、舵は別に付けられる。3 トン以上の漁船は
せんないき しよう
ほとんどが船内機を使用している。
せん な い が い き せんないき せんがいき せっちゅうがた きかん せんない き か ん し つ かじ きかん いったい
・船内外機:船内機と船外機の折 衷 型 。機関は船内機関室にあるが、舵が機関と一体
よ そうち せんがい だ どうりょく
になっており、ドライブユニットと呼ばれる装置を船外に出すことで 動 力 をプロ
でんたつ ていど ぎょせん しよう せんがいき おな
ペラに伝達する。3~5 トン程度の漁船で使用されている。船外機と同じガソリン
きかん けいゆ じゅうゆ ねんりょう きかん りょうしゅ
機関、軽油、重油を 燃 料 とするディーゼル機関の 両 種 がある。

せん ようそ
(2)船の要素
すう しゅるい
①トン数の種類
ふね すう ようせき すう じゅうりょう すう たいべつ つぎ わ
船のトン数は、容積トン数と 重 量 トン数に大別され、次のように分かれる。
こくさいそう すう ようせき すう こくさいこうかい じゅうじ
・国際総トン数 (International gross tonnage):容積トン数で、国際航海に従事す
せんぱく おお あらわ しひょう もち
る船舶について、その大きさを 表 す指標として用いられる。
そう すう ようせき すう にほん ふね おお あらわ しゅ
・総トン数 (Gross tonnage: GT):容積トン数で、日本では、船の大きさを 表 す主た
しひょう ぜいきん ほうれいとう たいしょう もち そう すう こくさいそう
る指標(税金や法令等の 対 象 )として用いられている。総トン数は、国際総トン
すう ばい て い ど
数の 0.6~0.7倍程度である。
さい か じゅうりょう すう じゅうりょう すう ふね あんぜん
・載貨 重 量 トン数 (Dead weight tonnage: D.W.T.): 重 量 トン数で、船の安全を
かくほ か も つ とう さいだいせきさいじゅうりょう
確保することができる貨物等の最大積載 重 量 である。
はいすいりょう じゅうりょう すう ふね みず う とき せんたい
・排 水 量 (Displacement tonnage): 重 量 トン数で、船が水に浮かんだ時に船体によ
はいじょ みず じゅうりょう
って排除される水の 重 量 である。

ふね しゅようすんぽう
② 船の主要寸法
ふね なが はば ふか きっすいとう しゅようすんぽう つぎ き ず
船の長さ、幅、深さおよび喫水等の主要寸法は、次のように決められている(図18)。
すいせんかんちょう けいかくまんさいきっすいせん せんしゅざいぜんめん
・垂線間 長 Lpp (Length between perpendiculars):計画満載喫水線と船首材前面の

13
こうてん かじばしら だとうざい ちゅうしん すいへい き ょ り
交点(F.P.)と 舵 柱 /舵頭材の 中 心 (A.P.)までの水平距離をいう。
ぜんちょう ふね さいぜんたん さいこうたん すいへい き ょ り
・ 全 長 Loa (Length overall):船の最前端から最後端までの水平距離をいう。
とうろくちょう せんぱく げ ん ぼ とうろく なが
・登録 長 Ll(Register length):船舶原簿に登録される長さである。
かたはば たん はば い とき かたはば せんたい さ い こ う ぶ
・型幅 B (Moulded breadth):単に幅と言う時には、この型幅をいう。船体最広部の
ないめんかん すいへい き ょ り そといた いたあつ ふく はば ぜんぷく
内面間の水平距離をいう。また、外板の板厚まで含めた幅を全幅(Extreme

Breadth)という。
かたふか ふね ちゅうおうだんめん じょうめん じょうかんぱん
・型深さ D (Moulded depth):船の 中 央 断面においてキールの 上 面 から上 甲 板 ビー
ふねがわ じょうめん きょり
ムの船側の 上 面 までの距離をいう。
きっすい ふなぞこ すいせん きょり
・喫水 d (Draft):船底から水線までの距離である。

ず ふね しゅようすんぽう
図13 船の主要寸法

うみ きょりたんい
③海の距離単位
ぎょせん なん めじるし な かいじょう ぎょろうさぎょう おこな ふね い ち じゅうよう りくがん
漁船は何も目印が無い 海 上 で漁労作業を 行 うので、船の位置は 重 要 である。陸岸の
14
み かいいき い ど けいど りくじょう み かいいき りくじょう きょり ほうい せん い
見えない海域では、緯度経度で、 陸 上 の見える海域では 陸 上 からの距離と方位で船位
し い ど ふん ど ふん かいり ほう
を知ることもできる。緯度の 1分(1度=60分)を 1海里(マイル)という。メートル法の
ちきゅう しんきゅう み えんこ せんまんぶん なが ていぎ
1m は、地球を 真 球 と見なして 1/4円弧(90°)の 1千万分の 1 の長さと定義されるの
じかん すす そくど
で、1 マイルは、1,852m となる。また、1時間に 1 マイル進む速度を 1 ノットという。

ぎょろう き か い ぎょぎょう き か い
3.漁労機械( 漁 業 機械)
ぎょぎょう つか きかい ぎょぎょう げ ん ば ぎょかく ようしょく つか きかい ぎょこう いち
漁 業 で使われる機械は、 漁 業 現場で漁獲・ 養 殖 のために使われる機械から、漁港や市
ば みずあ うんぱん りゅうつう きかい すいさんぶつ かこう きかい たしゅたよう
場で水揚げ・運搬・ 流 通 するための機械、そして水産物を加工する機械まで、多種多様な
きかい ぎょろうさぎょう こうりつか しょうじん しょうりょくか つか ぎょろう き き る い
機械がある。ここでは、漁労作業の効率化や 省 人 ・省 力 化 に使われている漁労機器類につ
しょうかい ぎょろう き き る い ぎょほう かんれん ぎょせん そうび ぎょろうさぎょう しえん
いて 紹 介 する。漁労機器類は、漁法と関連して漁船に装備されるが、漁労作業を支援する
きかい ちょくせつぎょろうさぎょう たずさ きかい
機械と 直 接 漁労作業に 携 わる機械がある。

あみ あ きかい
(1)網を揚げる機械
あみ さしあみ ようあみ およ そこびきあみ ひ あ
①ネットホーラ:まき網、剌網の揚網、及び底曳網を引き揚
もち ぎょぎょう あみじ
げるときなどに用いられる。漁 業 により網地をドラ
ま つ おさ くるま お つ あ
ムに巻き付けたり、ドラムに押え 車 で押し付けて揚
ほうしき じじょう あみたば はさ まさつりょく
げる方式や V字状のドラムで網束を挟んで摩擦力を
たか あ ほうしき ず ようもうき
高めて揚げる方式がある。 図14 ネットホーラー(揚網機)
きゅうけい かいてん
②ボールローラ:2つの 球 形 のゴムボールを回転させて、
あいだ あみじ はさ く あ ほうしき あみ ばしょ
ボールの 間 に網地を挟んで繰り揚げる方式で、網の場所
けいじょう さ ゆう あ
や 形 状 に左右 されないでつまみ揚 げることができる。
ていちあみ あみ お つか あみ そこびきあみ さしあみ
定置網の網起こしに使われるほか、まき網、底曳網、刺網、
ぼううけあみとう はばひろ つか
棒受網等で幅広く使われている。
おおがた かっしゃ おな こうぞう かいてん えんばん
③パワーブロック:大型 の滑車 と同 じ構造 で、回転 する円盤

かいてんりん じじょう みぞ まさつぐるま 図15 ボールローラー
(回転輪)に V字状の溝のある摩擦車を、デリックやクレ

15
せんたん さ ゆあつ くどう みぞ はさ あみたば ようもう
ーン先端につり下げて油圧により駆動して、溝に挟まれている網束を揚網する。ま
あみぎょせん せんび あ あみじ つか かんぱんじょう せいたん
き網漁船は、船尾から揚げられた網地をパワーブロックを使って甲 板 上 に整反し
つ あ しゅうのう かいがい あみぎょせん とうもう あみ ちょくせつ
て積み上げ 収 納 する。海外まき網漁船は投網された網を 直 接 デリックのパワーブ
ひ あ かんぱんじょう しゅうのう ていちあみ そこびきあみ あみ しゅうり
ロックで引き揚げて、甲 板 上 に 収 納 する。また、定置網や底曳網でも網の修理や
じゅんび あみさぎょう じ つか
準備の網作業時に使われる。


図16 パワーブロック
ぎょせん ようもうげん じょう そうび
④サイドローラ:漁船の揚網舷のブルワーク 上 に装備され
かいてん じくじょう せい
る回転 する 軸 状 ローラーで、ゴム製 のローラの
ひょうめん きざ い まさつりょく つよ あみ
表 面 に刻 みを入 れて摩擦力 を強 めている。まき網
そうぎょう さいご こうてい あみ じ ぼううけあみ
操 業 の最後 の工程 になる網締 めや、さんま棒受網
ぎょせん ようもう もち
漁船の揚網に用いられる。
あみ ま つ かいてん
⑤ネットウインチ:網を巻き付けるドラムを回転させるウ
かいちゅう あみ ちょくせつ ま あ ま
インチで、 海 中 の網を 直 接 巻き上げ、ドラムに巻 ず

こ ほうしき い ち ど かんぱん あ あみ ま 図17 サイドローラー


き込む方式と一度甲板に揚げられた網をドラムに巻
こ ほうしき そこびきあみ つか
き込むリール方式のドラムウインチがある。底曳網で使われる。

るい あ きかい
(2)ロープ類を揚げる機械
まさつりょく りよう ま あ ま と
摩擦力を利用して巻き揚げるものと、リールやドラムなどに巻き取るものとがある。

16
まさつりょく たか ふくすう
①ラインホーラー:摩擦力の高い複数のロー
まさつぐるま とお みきなわ
ラー(摩擦車)を通してロープ(幹縄)
ひきあ そうち きこう ゆうどうよう
を引揚げる装置。機構は誘導用ローラ
しゅ みちび しゅ
ーでロープを主ローラに 導 き、主ロー
お はさ
ラーと押さえローラーでロープを挟ん
ひ あ ほうしき おも はえなわ
で引き揚げる方式。主にマグロ延縄の
みきなわ ひ あ つか こがた
幹縄を引き揚げるのに使われる。小型
るいじそうち えんがん そこはえなわ たてなわ
の類似装置が沿岸の底延縄や立縄でも

つか く ど う ほうほう でん ど う き ゆあつ 図18 ラインホーラー
使われる。駆動方法には、電動機と油圧
こ が た ぎょせん
モーターによる2つがある。小型漁船
でん ど う き おお おおがたぎょせん ゆあつ くどう
では電動機によるものが多く、大型漁船では油圧モータで駆動される。
みきなわ かくのうこ じょう しゅうのう
②ラインワインダー(コイルシフター):ロープや幹縄を格納庫にコイル 状 に 収 納 する
そうち じじょう かんしゅ どうかん かいてん じょじょ いどう かんちゅう
装置。L字状の管首(導管)を回転させながら徐々に移動することにより、管 中 を
とお みきなわ かんしゅ は だ い じょう きんいつ つ かさ
通された幹縄が管首から吐き出されて行きコイル 状 にずらされて均一に積み重な
きこう はえなわぎょせん そうび みきぐみしゅうのう そ う ち どうしゅ そうち
る機構である。まぐろ延縄漁船に装備される幹組 収 納 装置であるが、同種の装置
そこびきあみ か まわ ぎょほう ひきづな しょり つか
が底曳網(掛け廻し漁法)の引綱の処理にも使われる。
たて ぶぶん ちゅうくう くしじょう いとま かいてん
③ブランリール:縦ローラーのローラー部分が 中 空 の 櫛 状 の糸巻きになっており、回転
ほそ ま そうち はえなわ えだなわ ま と
させることにより細いロープを巻き取る装置。マグロ延縄の枝縄を巻き取りコイル
たば
束にする。
あみ ひ かいてん
④トロール(ワープ)ウインチ:網を曳くロープやワイヤーをドラムやリールを回転させ
ま こ じく ま こ いちどう じくうえ さゆう どう
て巻き込む 1軸ウインチ。巻き込むドラムが一胴のウインチや 1軸上の左右2胴の
ぶんりがた へいきん ま こ
分離型ものがある。ロープワイヤーをドラムに平均して巻き込むためのシフターを
そな おお いってい ちから ま こ のうりょく そく
備えたものが多い。いずれも一定の 力 で巻き込む 能 力 やクラッチ、ブレーキ、速
ど ちょうせい かのう きのう そな でんどう ゆあつ くどう なか るい
度 調 整 が可能な機能を備えており、電動や油圧で駆動される。中にはワープ類と
とも あみ ま ふくごうがた そこびきあみ つか
共に網も巻き込める複合型のウインチもある。底曳網で使われる。

17
た だんまき こ ふくすう ま こ そな どうじ
⑤多段巻リールウインチ:5~12個の複数の巻き込みドラムを備えたウインチ。同時にす
さどう いってい そくど りきりょう ま こ きのう そな
べてのドラムを作動させて一定の速度・ 力 量 でワイヤーを巻き込む機能を備えて
ぼううけあみ まえ たれ あみふち い わ つな そ きんとう と つ ふくすう ひきあ
いる。棒受網の前(垂)網縁の沈子綱に沿って均等に取り付けられた複数の引揚げ
ぜんつな ぎょせん そうぎょうげん おお さげん そ えんちょく つ あ
ワイヤー(前綱)を、漁船の 操 業 舷(多くが左舷)に沿って 鉛 直 に吊り上げてウ
ふくすう ま あみ あ ぎょせん あみ おお ひきあ
インチの複数のドラムに巻き込み網を揚げる。漁船(網)の大きさで、引揚げワイ
かず き しよう だんすう き たと ほん まえつな ま
ヤーの数が決まり、使用するウインチの段数も決まる。例えば 7本の前綱を巻くた
だん ま つか ぼううけあみ とう つか
めには 7段巻きウインチを使う。棒受網(サンマ、アジ、イワシ等)で使われる。
あみそうぎょう あみすそ しぼ ふくろじょう
⑥パースウインチ:まき網 操 業 で網裾を絞って 袋 状
あみすそ と つ かん とお
にするために網裾に取り付けられた環に通した
かんつな ま こ いちじく どう
環綱(パースワイヤー)を巻き込む一軸2胴のウ
かんつな あみ りょうたん
インチ。環綱(パースワイヤー)は網の 両 端 か
ぜんご ほん かい
ら前後 2本 がパースダビッドを介 してウインチ
どうじ ま あ
のドラムにつながり同時に巻き揚げられる。ま ず かんま
あみ つか 図 19 パース(環巻き)ウィンチ
き網で使われる。
たてじく どう かいてん とう ま ひきよ
⑦キャプスタン:縦軸の胴を回転させて、ロープ・ワイヤー等を巻き引寄せるウインチ。
よこじく どう かいてん ほうしき るい ま こ
横軸の胴を回転させる方式もある。いずれのウインチもロープ類を巻き込むのでは
な どう すうかい ま つ まさつりょく たか じゆうたん にん ひ よ りきりょう
無く、胴に数回巻き付けて摩擦力を高め自由端を人が引き寄せることで 力 量 をあ
そうち ていちあみ あみあ そこびきあみ あみとうおよ かくしゅさぎょう ほ じ ょ つか
げる装置。定置網の網揚げ、底曳網、まき網等及び各種作業補助で使われる。

ぎょかく き か い
(3)漁獲機械
ちょくせつ たいしょうせいぶつ ぎょかく きかい
直 接 、 対 象 生物を漁獲する機械。
じどう つりき く ど う ぶ はさ りょうがわ つ で じく
①自動 いか釣機 :駆動部 を挟 む 両 側 に突 き出 た軸 に
だえん ひし けい そな かいてん そうち
楕円(菱)形のドラムを備え回転させる装置。ドラム
つ ぎょぐ づの ぎ じ ばり こ と つ
にイカ釣り漁具のイカ角(擬餌針)が 30~50個取り付
ぽん し か つりいと ま こ ず じどう つりき
けられた 1本の仕掛け釣糸が巻き込まれている。この 図 20 自動いか釣機

18
ま し か つりいと いってい すいしん お ま あ どうさ く かえ
ドラムに巻いた仕掛け釣糸を一定の水深まで降ろし、また、巻き揚げる動作を繰り返し
つりあ まえ なが へ せんじょう と こ つりいと しんど ま あ はや
てイカを釣上げ、前ローラ、流しを経て 船 上 に取り込む。釣糸の深度、巻き揚げ速さ、
とう にんげん どうさ じどうてき せってい いと きのう もう つりいと
シャクリ、アヤシ等の人間の動作は自動的に設定できる。糸さばき機能が設けられ、釣糸
から ぼうし つりいとから つりき いじょう けんち じどうつりきていしきのう そな
の絡みを防止しているが、釣糸絡み、釣機の異常の検知や自動釣機停止機能も備わって
こべつ きそくそうさ かのう おお しゅうちゅうせいぎょばん ぜんき あ
いる。また、個別の機側操作も可能であるが、多くが 集 中 制 御盤により、全機の上げ・
さ ていし そうさ し ん ど せってい かくげん つりき ど う さ じゅんじょ ちょうせい し ん ど せってい さいだい
下げ・停止の操作や深度設定、各舷の釣機の動作 順 序 などを 調 整 する。深度設定は最大
ま あ そくど さいだい ふん ちょうせい
180~200m、巻き揚げ速度は最大90m/分まで 調 整 できる。
じどう つりき みちいと ぎ じ ばり つ つりざお じょうげ かいてん
②自動かつお釣機:ナイロンテグスの道糸に擬餌針を付けた釣竿を上下に回転させるホル
そうちゃく ゆ あ つ ある でんどう く ど う つりざお かいめん ふ お ぎ じ く つ
ダに 装 着 し、油圧或いは電動駆動で釣竿を海面に振り下ろし、カツオが擬餌に食い付
あ そうち さかなか けんち つ あ さかなはず さお ふ お
いたときに、はね上げる装置。アヤシ・魚掛かり検知・釣り上げ・魚 外 し・竿の振り下
いちれん どうさ じどうてき く かえ きのう も つりいとちょうりょく さかなか
ろしという一連の動作を、自動的に繰り返す機能を持っている。釣糸 張 力 による魚掛
けんち くうちゅう さかなはず つ お ぼ う し とう きのう も げんざい かいはつ し け ん
かりの検知、空 中 での 魚 外 し、釣り落とし防止等の機能を持っている。現在は開発試験
だんかい
段階である。

た きかい
(4)その他機械
ぎょぐ ぎょかくぎょるい いそう もち そうち ぎょかくぎょ せんない
漁具や漁獲魚類の移送に用いられる装置にベルトコンベアがある。また、漁獲魚の船内
しゅうよう みずあ とう あみ ぼううけあみ て い ち あ み とう しよう
収 容 や水揚げ等には、まき網、棒受網、定置網等で使用されるフイッシュポンプがある。

ぎょぎょうけいそく き き
4. 漁 業 計測機器
し ぜ ん かんきょう そくてい すいおんけい えんぶん ようぞん さ ん そ け い ぎょぐ すいしん はか しんどけい
自然 環 境 を測定する水温計、塩分・溶存酸素計、漁具の水深を測る深度計、ネットゾン
ほうこう た ん ち き ぎょぐん た ん ち き とう
デ、ラジオブイ、方向探知機、魚群探知機、ソナー等がある。

ぎょぐん た ん ち き
(1)魚群探知機
ぎょたん えいぞうひょうじ が め ん そな し じ き そうじゅはき こうせい そうち つうじょう そうじゅはき ふなぞこ
魚探は映像表示画面を備えた指示器と送受波器で構成された装置。通 常 、送受波器は船底
と つ ちょうおんぱ はっしゃ かいちゅう じょうほう し じ き つた えいぞう ぎょぐん かいていとう
に取り付けられ、超音波を発射して 海 中 の 情 報 を指示器に伝えて映像として魚群や海底等

19
じょうほう がめん ひょうじ
の 情 報 が画面に表示される。
げんり し く ぎょぐん た ん ち き ぎょたん すいちゅう ちょうおんぱ はっしゃ はんしゃは しら
原理と仕組み:魚群探知機(魚探)は 水 中 へ超音波を発射し、その反射波を調べること
ぎょぐん そんざい すいしん ぶ ん ぷ じょうきょう かいてい ようす し でんし き き
で魚群の存在や水深、分布 状 況 、海底の様子などを知る電子機器。「やまびこ」のコダマ
はんしゃおん おな そうじゅはき はっしゃ ちょうおんぱ すす とちゅう ぶったい ぎょぐん かいてい
(反射音)と同じように送受波器から発射した超音波が進んでゆく途中、物体、魚群、海底
あ はんしゃ いちぶぶん もと そうじゅはき かえ ぎょたん ちょうおんぱ はんしゃ げんり
に当たると反射し、一部分は元の送受波器へ返ってくる。魚探はこの超音波の反射する原理
おうよう ぶったい きょり はんしゃ つよ ぶったい
を応用して物体までの距離や、反射の強さから物体の
とくちょう はあく
特 徴 を把握する。
ちょうおんぱ はっしゃ はんしゃは かえ
超音波 を発射 してから反射波 が返 ってくるまでの
じかん はか ぎょぐん すいしん
時間を測ることで魚群までの水深がわかる。
すいちゅう ちょうおんぱ でんぱ そくど すいおん えんぶん
水 中 で超音波が伝播してゆく速度は、水温・塩分で
たしょう へ ん か びょうかん やく くうきちゅう おんぱ
多少変化するが、1 秒 間 に約1,500m。空気中の音波で
ず ぎょぐん た ん ち き ず
びょうかん ちょうおんぱ はっしゃ 図 21 魚群探知機のイメージ図
は 1 秒 間 に 340m である。超音波を発射してから、0.2
びょうご ぎょぐん はんしゃは じゅしん ばあい ちょうおんぱ ぎょぐん きょり おうふく
秒後に魚群からの反射波が受信できた場合、超音波は魚群までの距離を往復したことになる
ぎょぐん きょり ふか
ので、魚群までの距離(深さ)は 150m となる。

ぎょたん がめん えいぞう はんどく しきべつ


魚探の画面(映像)の判読(識別):
ちょうおんぱ ふなぞこ せっち そうじゅはき はっしゃ かいちゅう はんしゃは おな そうじゅはき う
超音波は船底に設置した送受波器から発射し、 海 中 からの反射波も同じ送受波器で受け
と そうしん じゅしん こうご おこな そうじゅはき そうは じゅは やくわり けんよう そうじゅはき なか
取る。送信と受信は交互に 行 い、送受波器で送波と受波の役割を兼用する。送受波器の中
しんどうし で ん き しんごう ふる みず しんどう かいちゅう ちょうおんぱ はっしゃ かいちゅう はんしゃ
の振動子が電気信号で震えて、水を振動させ 海 中 へ超音波を発射する。海 中 から反射して
かえ ちょうおんぱしんごう しんどうしめん う で ん き しんごう か えいぞう がめん ひょうじ
返ってきた超音波信号を振動子面で受けて、電気信号に変え映像として画面に表示させる。
つうじょう ぎょたん かいめん かいてい じょうほう ひょうじ がめん えいぞう じょうほう ひょうじ
通 常 、魚探には海面から海底までの 情 報 が表示される。画面(映像)の 上 方 に表示さ
はっしんせん ちょうおんぱ はっしん そうじゅはき い ち しめ せん した かいちゅう したがわ こ
れる発振線は超音波を発振する送受波器の位置を示し、この線の下は 海 中 で、下側に濃く
うつ れんぞく せん かいてい じょうげ せん なか かいちゅう うつ えいぞう きほんてき
映る連続した線が海底である。この上下の線の中は 海 中 となり、ここに映る映像は基本的
ぎょぐん あらわ ぎょえい ぎょえい そら う くもじょう やまがた まるがた てんてん
に魚群を 表 す魚影である。魚影は空に浮かぶモクモクした 雲 状 や、山形、丸形、点々など
ぜんたい うす さまざま ぎょえい ひょうそうちか ぎょぐん ちゅうそう ぎょぐん
や全体に薄くぼやけたようなものなど様々。また、魚影は、表 層 近くの魚群、中 層 の魚群、

20
かいてい ふ き ん ゆうえい ぎょぐん さまざま とく かいてい ふ き ん そこつ ぎょぐん かいてい
そして海底付近を遊泳する魚群など様々である。特に海底付近にいる底付き魚群は、海底の
とっきぶつ そこ つ ぎょぐん はんべつ むずか ぎょえい ぎょしゅ こと
突起物なのか底に着いた魚群なのかの判別が 難 しくなる。これら魚影も魚種により異なり、
ゆうえい じ む がた ちが えいぞう ぎゃく けいけんてき ぎょしゅ さかな うご はんだん
遊泳時の群れ方でも違った映像となる。逆 に、経験的に魚種や 魚 の動きを判断することも
かのう たんどく ゆうえいぎょある こべつ はな ゆうえい さかな み か づ き じ
可能となる。さらに、単独の遊泳魚或いは個別に離れて遊泳する 魚 は、三日月(「へ」の字)
やまがた ぎょえい みっしゅう ゆうえい ぎょぐん かたまり うつ ぎょえい
のような山形の魚影なので、イワシのような 密 集 して遊泳する魚群の 塊 として映る魚影
くべつ
とはハッキリと区別がつく。
かいてい はんしゃきょうど ちが りよう うみ ていしつ み わ かいていせん さいじょうぶ
海底からの反射強度の違いを利用して海の底質を見分けることもできる。海底線の最上部
したほうこう の せんぶん かいてい はんしゃは つよ ばあい なが はんしゃは よわ とき
から下方向に伸びている線分は海底からの反射波が強い場合は長くなり、反射波が弱い時は
みじか せんぶん なが こ がんばん がんしょう かた かいてい ぎゃく みじか うす
短 くなる。この線分が長くて濃ければ岩盤や 岩 礁 などの硬い海底を、逆 に 短 く薄ければ
ていしつ やわ すなち どろ かいいき しめ
底質が柔らかい砂地、泥などの海域であることを示している。

ず ぎょぐん た ん ち き がめん ず
図 22 魚群探知機の画面図

にじゅうはんしゃ きょぞう
二重反射と虚像(ゴースト):
ぎょたん つか ちょうおんぱしんごう つうじょう おうふく けいそく かいてい はんしゃは かいめん
魚探に使われる超音波信号は 通 常 1往復で計測されるが、海底からの反射波が、海面また
ふなぞこ さいはんしゃ ふたた かいてい とど ど はんしゃ かいてい ただ かいていせん した きろく
は船底で再反射して、 再 び海底まで届き 2度反射され海底として正しい海底線の下に記録
えいぞう にじゅうはんしゃえいぞう い おうとつ はげ ふくざつ ちけい かいてい
されることがある。この映像を二重反射映像と言う。また、凹凸の激しい複雑な地形の海底
じっさい かいていせん うえ じつざい きょぞうかいてい あらわ た た ぎょせん
は実際の海底線の上に実在しない虚像海底が 現 れたりすることがある。その他、他漁船の

21
ぎょたん かんしょうは きろく
魚探の干渉波が記録されることもある。

(2)ソナー
ぎょぐん た ん ち き おな げんり ちょうおんぱ つか ふね しゅうい ぎょぐん りったいてき さが ほうこう きょり
魚群探知機と同じ原理で、超音波を使って船の周囲の魚群を立体的に探し、方向・距離を
たんち ぎょぐん た ん ち き ちょうおんぱ つか ふね ました ぎょぐん たんち ふね しゅうい
探知する機器である。魚群探知機は超音波を使って船の真下の魚群を探知するが、船の周囲
ほうこう ゆうえい ぎょぐん りったいてき たんち き き しょう
方向に遊泳している魚群を立体的に探知する機器をソナーと 称 している。
ふね しゅうい さが ぎょたん たんいつちょうおんぱ はっしゃ そうじゅはき
船の周囲を探すために、魚探のような単一超音波ビームを発射する送受波器をサーチライ
たんしょうとう ふね ちゅうしん じゅんじえんちょく か く ど か すいへいめん せんかいある おうぎがた さどう
ト(探 照 灯)のように船を 中 心 に順次 鉛 直 角度を変えた水平面で旋回或いは 扇 形 に作動
ぶったい ぎょぐん はんしゃは たんち ほうしき
させ、物体(魚群)の反射波を探知する方式をサーチライトソナーという。サーチライトソ
たんちはんい かい ちょうおんぱはっしゃ どはばぜんご せんかい ちょうおんぱ たんさく
ナーの探知範囲は、1回の超音波発射が 6度幅前後のビームが旋回しながら超音波で探索し
たんさく ぶぶん しょう いどうそくど はや ぎょぐん たんち むずか
ていくので、探索できない部分が 生 じるため、移動速度の速い魚群を探知するのは 難 しい。
ふね ぜんしゅうい ど ほうこう む どうじ ちょうおんぱ はっしゃ しゅんじ
スキャニングソナーは船 の全周囲 360度方向 に向 けて同時 に超音波 を発射 し、瞬時 に
ぜんほうこう はんしゃは うけと すいへいほうこう たんち も いき しょう
全方向 からの反射波 を受取 ることができるので、水平方向 での探知漏 れ域 が 生 じない。
ちょうおんぱ はっしゃ めん ちょうおんぱたんさくめん ふね ちょうてん かさがたじょう ひろ ちょうおんぱ
超音波が発射される面(超音波探索面)は船を 頂 点 とした傘 形 状 に広がり、この超音波
たんさくめん かさ ひろ よう さどう たんさく ふね ちゅうしん はんきゅう はんい
探索面は傘を広げたり、つぼめたりする様に作動・探索して船を 中 心 とした 半 球 の範囲を
りったいてき たんさく
立体的に探索することができる。
ぎょぐん た ん ち き どうよう ぎょぐん みつど かいてい ていしつ ちが はんべつ
ソナーは、魚群探知機と同様に魚群の密度や海底の底質の違いを判別でき、スキャニング
ぎょぐん きょり ほうこう ゆうえいすいしんおよ い ど う じょうきょう ゆうえいほうこう そくど はあく
ソナーは魚群までの距離や方向、遊泳水深及び移動 状 況(遊泳方向や速度)を把握できる。

ず ず ひだり みぎ
図 23 ソナーのイメージ図( 左 :サーチライトソナー、右:スキャニングソナー)

22
ちょうおんぱ し こ う かく
(3)超音波の指向角
ちょうおんぱ そう はつ しん じゅしん きほんてき じゅんばん おこな
しんどうし
超音波の送(発)信と受信は、基本的に 順 番 に 行 わ 振動子
ちょうおんぱ そうしん あと はんしゃは じゅしん じかん
れる。超音波 を送信 した後 は反射波 を受信 する時間 が ちょうおんぱ
超音波
ふたた そうしん じゅしん く かえ
あり、 再 び送信、受信を繰り返す。
しんどうし かいちゅう はっしゃ ちょうおんぱ しんどうし
θ
振動子 から 海 中 に発射 された超音波 は、振動子 を
ちゅうしん おうぎじょう ひろ つた じょじょ
中 心 と し て 扇 状 に 広 が り 伝 わ っ て い く が 徐々 に
げんすいせん
げんすい しょうめつ
減衰 して 消 滅 する。超音波 の強 さが発射時 の 50%に
ちょうおんぱ つよ はっしゃ じ
50%減衰線
げんすい はんい はか しめ ぼうすいけい
減衰する範囲は、図24 に示すような紡錘形になり、こ ちょうおんぱ し こ う かく はんげんかく
図 24 超音波の指向角(半減角)
とき かくど はんげんかく し こ う かく かく
の時の角度、θ を半減角あるいは指向角(ビーム角)
よ いっぱんてき はんげんかく し こ う かく かく しゅうはすう ぎょたん おおがた こ が た など さまざま
と呼ぶ。一般的に半減角(指向角・ビーム角)は周波数や魚探、ソナー、大型、小型等で様々
はんい せいど たか おお
であるが、5~30°の範囲で、精度の高い 7~10°が多い。
し こ う かく かく せま たいしょうぶつ こま ひょうじ ひろ さが
指向角(ビーム角)は、狭ければ対 象 物 を細かく表示でき、広ければぼやけるが、探す
ひろ ほう べんり しんどうし ひと えんちょく つか ぎょたん ふくすう
には広い方が便利である。振動子が一つで、 鉛 直 にして使うものが、魚探となり、複数の
しんどうし えんちゅう はんきゅうたい ひょうめん なら どうじ ちょうおんぱ はっしゃ
振動子を 円 柱 や半 球 体 の 表 面 に並べて同時に超音波を発射するものが、ソナーとなる。
へいめんてき しゅうい
ソナーは平面的に周囲の 360°あるいは 180°
おうぎじょう ひろ ちょうおんぱ どうじ はっしゃ

へ 扇 状 に 広 が る 超音波 を 同時 に 発射 し て
ぎょぐん たんち えんちょくてき し こ う かく
魚群を探知するが、鉛 直 的 には指向角(ビーム
-3°
かく はんい ちょうおんぱ とど したが
角)の範囲にしか超音波は届かない。 従 って、
はか しめ おうぎじょう ひろ ちょうおんぱめん
図25 に示すように 扇 状 に広がる超音波面を -15°
かいちゅう かくど ふかく つ はっしゃ ふかく し こ う かく かく
海 中 にマイナスの角度(俯角)を付けて発射す 図 25 ソナーの俯角と指向角(ビーム角)
ふかく さかな たんち
こと すいしんそう じょうきょう しら
ることで、異なる水深層の 状 況 を調べること 俯角-3°では 魚 を探知できないが、
ふかく たんち
かのう 俯角-15°にすることで探知できる。
が可能となる。
すなわ がめん み しめ ふかく さかな たんち
即 ち、図 25 をソナー画面で見ると図 26 に示すようになる。俯角-3°では 魚 を探知でき
ふかく じせん ほうこう はな ばしょ ぎょぐん わ
ないが、俯角-15°にすることで、自船の 315°方向、200m離れた場所に魚群がいることが分

かる。

23
0 0
T : -3 ° T : -15 °

270
270

90
90
180 180

ず こと ふかく がめん
図26 異なる俯角のソナー画面

た けいそく き き
(4)その他の計測機器
ぎょせん こうかい うんこうおよ ぎょぎょう そうぎょう つか ぎょぐ じょうたい し けいそく き き
漁船の航海や運航及び 漁 業 の 操 業 で使われる漁具の 状 態 を知るための計測機器はさま
かいはつ じつよう つぎ
ざま開発されているが、実用されているものに次がある。
こうかい し え ん
① 航海支援ディスプレイ
こうかいじゅつ ほういじしん ろくぶんぎ かいず もち てんそくこうほう ちゅうしん とうじょう
航 海 術 は、方位磁針や六分儀、海図などを用いる天測航法が 中 心 だったが GPS が 登 場
いらい りよう で ん ぱ こうほう しゅりゅう か げんざい せん い じょうほう ひょうじ
して以来、GPS を利用する電波航法が 主 流 に変わった。現在は、船位 情 報 を表示する GPS
か こ せん い しょうらい せん い ひょうじ か の う
プロッターで、過去の船位から 将 来 の船位まで表示可能なシステムプロッターで、レー
がぞう かいず ちけい く こ が めんじょう ひょうじ じゅうらい ぎょたん
ダー画像や海図の地形を組み込んだ画 面 上 に表示することができる。従 来 は、GPS、魚探、
せっち げんざい
レーダーなど、それぞれのディスプレイが設置されていたが、現在はマルチ・ファンクシ
た き の う いこう か さまざま
ョン・(多機能)ディスプレイ(MFD)に移行してきている。MFD に変わることで、様々な
きのう だい しゅうやく が め ん ひょうじ た き の う か すす
機能を 1台のディスプレイで 集 約 してマルチ画面表示できる多機能化が進んで、レーダ
ぎょたん ちょうりゅうけい とうしんせん さ く ず き の う とう く こ さまざま くみあわ ひょうじ かのう
ー、魚探、ソナー、 潮 流 計 、等深線作図機能等が組み込まれ、様々な組合せ表示が可能
しんか
になり、さらに進化している。

よう
②トロール用ネットレコーダー

24
そこびきあみ ちゅうおう と つ
底曳網 のへッドロープ 中 央 に取 り付 けるへッド
おく でんそうしんごう じゅしん
センサーとセンサーから送られる伝送信号を受信す
およ えいぞうひょうじ が め ん
るハイドロフォン(マイクロホン)及び映像表示画面
そうび し じ き こうせい そうち
を装備した指示器で構成される装置。へッドセンサ
そうじゅはき かいめんがわ かいていがわ くみ そ う び
ーは送受波器を海面側と海底側の 2組装備しており、
あみ かいめん きょり かいてい きょり そくてい ず よう

網から海面までの距離や海底までの距離を測定して 図 27 トロール用 ネットレコーダ



でんそうちょうおんぱしんごう へんかん ぎょせん はっしん ぎょせん
ーのイメージ図
伝送超音波信号に変換して漁船に発信する。漁船は、
しんごう かいちゅう お じゅしん し じ き つた えいぞう ひょうじ
この信号を 海 中 に下ろしたハイドロフォンで受信して、指示器へ伝えて映像を表示する。
あみくち ひら ぐあい ぎょぐん にゅうもうじょうたいとう はあく
これによって網口の開き具合や魚群の 入 網 状 態 等を把握できる

あみふか けい
③網深さ計
あみ あみ と つ ぎょせん つ じゅしんき およ
まき網 の網 に取 り付 けるネットゾンデと漁船 に付 ける受信機 (マイクロホン)及 び
し じ き こうせい そうち つうじょう い わ つな そうちゃく あみ ふか かいてい
指示器で構成される装置。通 常 ネットゾンデは、沈子綱に 装 着 し、網の深さ、海底まで
きょり あみ ちんこう とう そくてい しんごう かいちゅう でんそう じゅしんき う し じ き
の距離、網の沈降スピード等を測定して、信号が 海 中 を伝送され受信機で受けて指示器
ひょうじ かん じ そくど ちょうせつ
に表示する。これによって環締めのタイミングや速度を 調 節 できる。

ちょうりゅうけい
④潮 流 計
つうじょう ぎょじょう すいしん にんい そう わ た そ う りゅうそく ちょうおんぱ けいそく
通 常 、 漁 場 の水深について任意の 3~5層に分けて、多層 流 速 を超音波で計測し、デ
ひょうじ あみ あみ ちんこうじょうたい せいぎょ つか
ィスプレイ表示する。まき網の網の沈降 状 態 を制御するために使われる。

れいとうれいぞう そ う ち
5.冷凍冷蔵装置
ぎょるい せんど お ふはい ぎょかく ぎょかくぶつ みなと はこ れいとうれいぞう
魚類 は鮮度 が落 ちやすく腐敗 しやすい。漁獲 した漁獲物 を 港 に運 ぶためには冷凍冷蔵
そうち つか とうけつ ほれい じゅうよう れいとうれいぞう そ う ち
装置を使って凍結・保冷することが 重 要 となる。冷凍冷蔵装置は、アンモニアやフロンな
ていおん じょうはつ れいばい じょうはつき れいきゃくき なか じょうはつ しゅうい ねつ うば とうけつ
どの低温で 蒸 発 しやすい冷媒を蒸発器(冷却器)の中で 蒸 発 させ、周囲から熱を奪い、凍結・
れいきゃく おこな そうち れいばい し ぜ ん れいばい るい しよう
冷 却 を 行 う装置である。冷媒は、アンモニア(自然冷媒)やフロン類が使用されているが、

25
ちきゅう お ん だ ん か かんきょうもんだい あら れいばいぎじゅつ かいはつ きたい
地球温暖化・ 環 境 問題から新たな冷媒技術の開発が期待されている。

れいとうれいぞうほうほう ぎょぎょうしゅるい か つぎ つか
(1)冷凍冷蔵方法は、それぞれの 漁 業 種類により変わるが、次のようなものが使われて

いる。
しき かんたなしき
①セミエアブラスト式(管棚式):
しき そうふうしき そうふうき じょうはつき いったい もち
エアブラスト式(送風式)は、送風機と蒸発器が一体となったユニットクーラを用いて
れいき づく れ い き そうふう とうけつ げんざい こうりつ よ しき
冷気を作り、冷気送風のみにより凍結する。現在は、より効率の良いセミエアブラスト式
もち ほうしき とうけつしつ とうけつ もう しつない てんじょう
が用 いられる。この方式 は凍結室 に凍結 ファンを設 け、室内 の 天 井 ヘアピンコイルと
ぎょかくぶつ の ごうきんせいれいきゃくかんたな こうせい れ い き そうふう かんたな せっしょく とうけつ
漁獲物を乗せるアルミ合金製 冷 却 管 棚から構成され、冷気送風と管棚の 接 触 により凍結
ほうしき なわぎょせん つりぎょせん かくしゅ ぎょせんとう さいよう
する方式である。まぐろはえ縄漁船、いか釣漁船、各種トロール漁船等に採用されている。
しき せっしょく か あ つ し き
②コンタクト式( 接 触 加圧式):
しき れいとう きんぞくせい よ う き とう ぎょかくぶつ ないぶ れいばい
フラットタンク式とも称され、冷凍パン(金属製容器)等に漁獲物を入れ、内部に冷媒
とお ごうきんせいとうけつばん ゆあつそうち せっしょく か あ つ とうけつ
を通したアルミ合金製凍結板(フラットタンク)ではさみ、油圧装置で 接 触 加圧させ凍結
ほうしき ぎょせん つりぎょせん おお さいよう
する方式である。トロール漁船やいか釣漁船に多く採用されている。

しんせきしき
③ブライン浸漬式:
ぎょそうけんとうけつそうない よ のうしょくえんすい れいきゃくえき つく なか ぎょかく
魚艙兼凍結艙内に、ブラインと呼ばれる 濃 食 塩水などの 冷 却 液を作り、その中に漁獲
ぶつ ちょくせつとうにゅう しんせき とうけつ ほうしき いちど たいりょう ぎょかくぶつ しょり ひつよう
物を 直 接 投 入 し浸漬させて凍結する方式である。一度に 大 量 の漁獲物を処理する必要
えんよう ぎょせん かいがい あみぎょせん おお さいよう
のある遠洋かつお漁船や海外まき網漁船に多く採用されている。

せんど ほ じ とうけつ ぎょそう お ん ど


(2)鮮度保持と凍結・魚艙温度
ぎょたい い か とうけつ ふはい げんいん さいきん はんしょく てい し さいきん しめつ
魚体を-5℃以下に凍結すると、腐敗の原因となる細菌の 繁 殖 は停止するが、細菌が死滅
ぎょたい せいかがくてき へ ん か かんぜん ていし いた ちょうきかん せんど ほ じ
しても魚体の生化学的変化が完全に停止するまでには至らない。長期間にわたり鮮度を保持
さら ていおん ひつよう るい さかな
するために、更に低温 にする必要 がある。マグロ類 やカツオをはじめ、ほとんどの 魚 の
とうけつてん とうけつりつ ちょうていおん とうけつ
凍結点は-2~-5℃で、凍結率はおよそ 80%であるが、約-60℃の超 低 温 になると 100%凍結す

26
ちょうていおん とうけつ おこな はえなわぎょせん おお た ぎょせん けいざいてき
る。このような 超 低 温 の凍結を 行 うのはまぐろ延縄漁船に多く、他の漁船では経済的な
りゆう つうじょう とうけつ し ょ り おんどたい さいだいひょうけっしょうせいせい お ん ど た い
理由もあり 通 常 の凍結処理である。また、この-2~-5℃の温度帯を最大 氷 結 晶 生成温度帯
よ ぎょかくご まえしょり すばや おこな すみ おんどたい つうか きゅうそくとうけつ
と呼び、漁獲後の前処理を素早く 行 い、速やかにこの温度帯を通過させることを 急 速 凍結
ぐたいてき い か ていおん くうれい えきれいとう やく ふん い な い たんじかん
という。具体的には-30℃以下の低温の空冷・液冷等で、約30分以内のできるだけ短時間に
さいだいひょうけっしょうせいせい お ん ど た い つうか とうけつ い か れいきゃく きゅうそくとうけつ さいぼう
最大 氷 結 晶 生成温度帯を通過して凍結させ、-18℃以下まで 冷 却 する。急 速 凍結では細胞
まく はかい さいしょうきり おさ こうせんど ほ じ かのう ぎゃく
膜の破壊を最 少 限 に抑えることができるため、高鮮度、保持が可能になる。 逆 にゆっくり
つうか ばあい かんまんとうけつ せんど いちじる ていか
通過させてしまった場合を緩慢凍結といい、鮮度を 著 しく低下させてしまうことになる。

しょくひん ひんしつ か ん り
6. 食 品 の品質管理
すいさんぶつ ぎょかく せいさん もっと せんど じょうたい りょうこう しょうひしゃ とど
水産物は漁獲-生産されたときが、最 も鮮度の 状 態 が 良 好 であり、そこから消費者に届
あいだ れっか ぎょぎょうしゃ あんぜん あんしん すいさんぶつ せいさん しめい せきにん じかく
くまでの 間 で劣化が進む。漁 業 者 は安全-安心な水産物を生産する使命と責任を自覚しな
いっぱんてき ようじょう ぎょかく さかな こおり ひ ていおん たも いちば
ければならない。一般的に 洋 上 で漁獲された 魚 は、 氷 で冷やし、低温を保ったまま市場
はこ みずあ しょくひん か ん り かんてん み しよう こおり せいじょう みず つく
まで運び水揚げするが、 食 品 管理の観点から見ると、使用する 氷 は 清 浄 な水で作られて
みずあ おんど ていきてき けいそく きろく しょくひん あつか ばあい
いるか、水揚げするまでの温度を定期的に計測し記録していたかなど、食 品 を 扱 う場合の
えいせい か ん り てきせつ おこな きゃっかんてきしょうこ ひつよう
衛生管理が適切に 行 われていた客 観 的 証拠が必要となる。

しょくちゅうどく
(1) 食 中 毒
しょくちゅうどく つぎ
食 中 毒 には次のようなものがある。
き せ い ちゅう ばあい とう ないぞう ふくぶ み きせい し
①寄生 虫 による場合:サバやイカ等の内臓や腹部の身に寄生しているアニサキスが知ら
ちょうり さい と のぞ いっぱんてき
れている。調理の際に取り除くのが一般的である。
さいきん ばあい ちょうえん とう し
②細菌そのものによる場合:腸 炎 ビブリオやサルモネラ等が知られている。これらは 5℃
い か はついく よくせい つね い か おんど かんり じゅうよう
以下では発育が抑制されるので、常にそれ以下の温度で管理することが 重 要 である。
さいきん しょう どくそ ばあい きゅうきん きんとう し きん
③細菌から 生 じる毒素による場合:ブドウ 球 菌 やボツリヌス菌等が知られている。菌が
はっせい どくそ えいきょう あた きん ていおん つよ にほん おお
発生させる毒素が 影 響 を与える。ボツリヌス菌は低温に強く、日本に多いボツリヌス
きん はついく どくそ はっせい はじ すいさんぶつ ふちゃく
菌E タイプは 33℃でも発育し毒素を発生させるため、初めから水産物に付着させないこ

27
じゅうよう
とが 重 要 である

ぎょかいるい せんど ほ じ ほうほう


(2)魚介類の鮮度保持方法
の じ い じ の じ かいじょう と あ さかな れいかいすいひょう つ
①野締め・活け締め:
「野締め」は 海 上 で取り上げた 魚 を、そのまま冷海水 氷 に漬ける
さかな れいかいすいひょうちゅう あと し いた ばあい おお れいきゃく こ う か たか
方法である。魚 は冷海水 氷 中 であばれた後に死に至る場合が多く、冷 却 効果が高
い じ うんどうちゅうすう えんずい せつだん えんずい し さ つ ほ う せきずいないまっしょう
い。
「活け締め」は運動 中 枢 である延髄を切断する延髄刺殺法と、これに脊髄内 末 梢
しんけい はかい せきずい は か い く あ ほうほう はりがね
神経を破壊する脊髄破壊を組み合わせた方法がある。ステンレスの針金やエアーガン
き ぐ しよう とう せいしょく よ う と さかな もち し ご
などの器具が使用される。ブリ、マダイ、ヒラメ等の 生 食 用途の 魚 で用いられ、死後
こうちょく じかん えんちょう
硬 直 までの時間を 延 長 することができる。

だっけつ い じ さかな ち し ご えら えら さいは えら つ ね お つ ね ぶぶん せつだん


②脱血:活け締めした 魚 は致死後、鰓、鰓の鰓耙 (鰓の付け根)、尾の付け根の部分を切断
けつえき じゅうぶん なが だ ち ぬ おこな ち ぬ きんにく ぶ ぶ ん
して血液を 十 分 に流し出す「血抜き」を 行 うことが多い。「血抜き」は筋肉部分に
ち まわ なまぐさ ふせ しんせん にくいろ ほ じ けつえきちゅう ふく
血が回って生臭くなるのを防ぐ、新鮮な肉色を保持する、また血 液 中 に含まれるコ
ぶんかい こ う そ じょきょ きんにく な ん か ぼうしこうか
ラーゲン分解酵素の除去による筋肉軟化の防止効果もあるとされる。

れいきゃくほうほう
③ 冷 却 方法
みずこおりほう せいすい かいすい さいひょう ま なか ぎょかい れいきゃく ほうほう たいりょう
1)水 氷 法 :清水または海水に砕 氷 を混ぜた中で魚介を 冷 却 する方法である。 大 量
しょり れいきゃく く う き こおり ぎょたい れいきゃく はや いっぱんてき ぎょかくご
処理ができ、冷 却 空気やあげ 氷 よりも魚体の 冷 却 が速いため、一般的な漁獲後の
れいきゃくほうほう ひろ もち ひ ぎょたい ぶぶんてき とうけつ がんきゅう
冷 却 方法として広く用いられている。冷やしすぎると魚体が部分的に凍結し、眼 球
じだく にご おおどたい ぜんご ほ じ おんどかんり
が自濁するので、濁らない温度帯(0℃~-2℃前後) を保持できるように、温度管理
ちゅうい ひつよう ばあい
に注意が必要となる場合もある。
こおりほう ぎょかい さいひょう せっしょく ちょぞう ほうほう こおりほう き ほ ん てじゅん
2)あげ 氷 法:魚介に 砕 氷 を 接 触 させ貯蔵する方法である。あげ 氷 法 の基本手順はし
こおり こおり こおり か こおり づ はこづ づ
き 氷 、つみ 氷 、だき 氷 、掛け 氷 であり、ばら詰め、箱詰め、たる詰めなどがある。
こおり こおり こま きゅうじょう つぶ こおり いっぱんてき さいひょう
3)シャーベット 氷 :シャーべット 氷 は細かい 球 状 の粒の 氷 であり、一般的な 砕 氷
ぎょたい きず さかなじゅうりょう たい こおり ひょうめんせき おお
よりも魚体 を傷 つけにくい。 魚 重 量 に対 する 氷 の 表 面積 が大 きいことから

28
れいきゃく こ う か たか りゅうたい せいしつ も す あ うんぱん かのう
冷 却 効果が高く、また 流 体 の性質を持つためポンプによる吸い上げや運搬が可能
と あつか
であり取り 扱 いやすい。
た かくせいぎょ れいきゃく し ょ り さかな ぎょかくご みずこおり い ぎょそう なか とうにゅう れいきゃく
4)多獲性魚の 冷 却 処理:魚 を漁獲後、水 氷 を入れた魚艙の中に 投 入 して 冷 却 する。
こおり はい ぎょそうぜんたい きんいつ れいきゃく こんなん とく なつば おんど
氷 が入っていても魚艙全体を均一に 冷 却 することは困難であり、特に夏場に温度
たか かいすい ぎょかくぶつ たいりょう とうにゅう じょうそう ていおん かそう
の高 い海水 が漁獲物 とともに 大 量 に 投 入 された場合には、 上 層 (低温 )と下層
こうおん おんど こと じょうたい おお ぎょそうない れいきゃく こ う か たか
(高温) で温度が異なる 状 態 となることも多い。魚艙内の 冷 却 効果を高めるため、
れいきゃくかいすい じゅんかん れいきゃくき せいび さまざま と く おこな
冷 却 海水の 循 環 ・かくはんシステムや冷却器の整備など、様々な取り組みが 行 わ

れている。

とうけつ ひょうげん ほ ぞ ん ぎょかいるい とうけつ さい きゅうそく せいかがくてき へ ん か ぶつりてき そんしょう う


④凍結・ 冷 源 保存:魚介類を凍結する際には 急 速 な生化学的変化と物理的な 損 傷 を受
れいとう ほ か ん じ ほかんおんど ていおんか かがくてき へ ん か すす
けるとともに、冷凍保管時の保管温度によっては低温下でもゆっくりと化学的変化が進
しつ ししつ じょじょ へんか かいとう じ ていし かくはんのう いっき
み、 タンパク質や脂質が徐々に変化する。また、解凍時には停止していた各反応が一気
しんこう れい と う む ぎょかいるい とうけつまえ せんぎょ む どうよう せんどへんか
に進行する。そのため、冷凍向けの魚介類でも、凍結前は鮮魚向けと同様に鮮度変化を
よくせい とうけつ じ へんか そしき そんしょう すく とうけつ ひつよう
抑制し、凍結時の変化や組織の 損 傷 をできるだけ少なくして凍結する必要がある。

しょくひん あんぜん か ん り
7. 食 品 の安全管理
すいさんぶつ せいさん しょうひ さんぎょう えいせいてき あんぜん ひんしつ
水産物は生産から消費までつながったフードチェーン 産 業 である。衛生的で安全な品質
しょくひん きょうきゅう げんざいりょう せいさん しょくひん せいぞう かこう ちょぞう しょうひ
のよい 食 品 を 供 給 するためには、原 材 料 の生産から 食 品 の製造・加工・貯蔵・消費ま
かくだんかい ひんしつ あんぜん か ん り こうちく かくじつ じっし
での各段階において、しっかりとした品質・安全管理のシステムを構築して確実に実施する
ひつよう せいさんだんかい えいせい か ん り りゅうつう きょうきゅうこうてい
必要がある。ここでは、生産段階の衛生管理について、HACCP システム、流 通 ・ 供 給 工程
とうめいか と あ
の透明化として、トレーサビリティを取り上げる。

(1)HACCP システム
き が い ぶんせきじゅうよう か ん り て ん やく
Hazard Analysis Critical Control Point(HACCP)は「危害分析 重 要 管理点」と訳され
えいせい か ん り しゅほう しょくひんとう じ ぎょうしゃみずか げんざいりょう にゅうか せいひん しゅっか いた すべ
る衛生管理手法である。食 品 等事 業 者 自 らが「原 材 料 の入荷から製品の出荷に至る全て

29
こうてい お しょくちゅうどくきん お せ ん ど く そ とう せいぶつてき き が い よういん かいどく
の工程」において起こりうる 食 中 毒 菌汚染、毒素等の生物的危害要因(ハザード)、貝毒、
とう かがくてき きんぞくとう い ぶ つ こんにゅう ぶつりてき はあく ぶんせき うえ
ヒスタミン等の化学的ハザード、金属等異物 混 入 の物理的ハザードを把握(分析)した上、
しょくひんあんぜん き が い よういん よぼう じょきょ ていげん かんり てきよう こうてい かんり せいひん
食 品 安全の危害要因を予防、除去、低減するための管理が適用できる工程を管理し、製品
あんぜんせい かくほ えいせい か ん り しゅほう てきせつ うんよう
の安全性を確保しようとする衛生管理の手法である。これらが適切に運用されていることを
かくにん おこな きろく と ようきゅう
確認するためにモニタリングが 行 われ、記録を取ることが 要 求 されている。
にほん しょくひんえいせいほう かいせい ぎ む か すす すべ しょくひんとう じ ぎょうしゃ
日本では 食 品 衛生法が改正され HACCP の義務化 が進 められ、全 ての 食 品 等事 業 者 に
そ えいせい か ん り じっし もと
HACCP に沿った衛生管理の実施が求められることになった。

ゆしゅつすいさんしょくひん
(2)輸出水産 食 品 にかかる HACCP
べいこく とう ゆにゅうしょくひん たい すいさん か こ う し せ つ とう じっし ぎ む づ
米国や EU等は、輸入 食 品 に対して水産加工施設等に HACCP の実施を義務付けている。こ
くに ちいき ゆ しゅつ さい すいさん か こ う し せ つ とう ゆしゅつさきこく もと
れらの国・地域に輸 出 する際には、水産加工施設等が、輸出先国から求められている HACCP
ふく ほ う き せ い ようきゅう じ こ う じっし ひつよう にんてい
システムを含む法規制 要 求 事項を実施していることが必要となる。しかし、HACCP の認定
え すいさん か こ う し せ つ とう しょうすう
を得た水産加工施設等はまだまだ 少 数 である。

ぎょせん ひんしつえいせい か ん り
(3)漁船における品質衛生管理
ぎょかくぶつ ていねい あつか ぎょせんじょう ほかんくかく ば し ょ およ ようきるい せいけつ たも ほしゅう い じ
①漁獲物の丁寧な 扱 い:漁 船 上 の保管区画や場所及び容器類は清潔に保たれ補修や維持
かんり てきせつ おこ ひつよう すいさんぶつ せんじょう あ ばあい おせん ぼうし
管理が適切に行なわれる必要がある。水産物が 船 上 に揚げられた場合、汚染を防止し、
にっこう えいきょう さ ぎょたい きず てきせつ と あつか かつぎょ のぞ
日光などの 影 響 を避け、魚体に傷がつかないように適切に取り 扱 う。また、活魚を除
ぎょかく ご じんそく れいきゃく せんじょう れいきゃくよう こおり しょくひんせいぞうようすい せいじょう
き、漁獲後、迅速に 冷 却 する。洗 浄 や冷 却 用 の 氷 には、食 品 製造用水または、清 浄
かいすい しよう
海水を使用する。
きこう じんぞく と あつか れいきゃく れいとう か ん り すいさんぶつ じ かんいじょうせんない ほ ぞん
②帰港までの迅速な取り 扱 い( 冷 却 ・冷凍管理):水産物を 24時間以上船内に保存する
ぎょせん せいせんおよ かいとう み か こ う すいさんぶつ ひょうおん ふ き ん れいとう ばあい せいひん お ん ど
漁船では生鮮及び解凍した未加工の水産物は 氷 温付近、冷凍の場合は製品温度を-18℃
い か かつぎょ ばあい せいぞん あくえいきょう あた お ん ど およ ほうほう すいさんぶつ ほかん ぎょそう
以下、活魚の場合、生存に悪 影 響 を与えない温度及び方法で水産物を保管できる魚艙、
ようき そな ぎょかいるい せいじょうかいすい こんごうぶつ ぎょかいるい しゅうよう
タンクまたは容器を備えており、魚介類と 清 浄 海水の混合物が魚介類を 収 容 してから
じ かんご い か じ かんご い か たっ れいきゃく そ く ど おんど
6時間後に 3℃以下、さらに 16時間後に 0℃以下に達するような 冷 却 速度であり、温度

30
か ん し およ ひつよう おう おんど きろく ひつよう
の監視及び必要に応じて温度の記録ができる必要がある。
れいとうせん すいさんぶつ ちゅうしん お ん ど い か きゅうそく さ ぎょそう すいさんぶつ
冷凍船は、水産物の 中 心 温度を-18℃以下にまで 急 速 に下げ、魚艙の水産物を-18℃
い か ほ じ じゅうぶん のうりょく れいとう せ つ び ゆう ぎょそう きかんしつ そうだしつ
以下に保持できる 十 分 な 能 力 のある冷凍設備を有し、魚艙または機関室や操舵室など
お ん ど きろくけい もう ひつよう
に温度記録計を設ける必要がある。
ぎょせんぎょそう せいけつ ほ じ ぎょかくぶつ し ょ り さぎょう ば し ょ くかく ようき き き およ き ぐ
③漁船魚艙などの清潔保持:漁獲物の処理作業場所または区画、容器、機器及び器具など
せんじょう せいけつ たも
は 洗 浄 し、清潔に保つ。
えいせい か ん り ひつよう ぎょせん こうぞう せ つ び すいさんぶつ とりあつかい く い き さぎょうかんぱん とうけつしつおよ ぎょそう
④衛生管理に必要な漁船の構造設備:水産物の 取 扱 区域(作業甲板、凍結室及び魚艙)は
きかんしつ ゆうがいぶっしつ さっそざい ほかんばしょ めいかく くめん ふなぞこ おすい けむり
機関室や有害物質(殺鼠剤など)の保管場所と明確に区面され、船底の汚水(ビルジ)、煙 、
ねんりょう あぶら た この ぶっしつ せいひん おせん はっせい せっけいおよ
燃 料 、 油 、グリスその他好 ましくない物質 による製品 の汚染が発生 しない設計及 び
こうぞう さぎょうかんぱんじょう し き もう ぎょかくぶつ あつか あつかい
構造とする。また、作業 甲 板 上 に仕切りを設け、漁獲物を 扱 うエリアと 扱 わないエ
わ すいさんぶつ おせん ふせ
リアを分けることで水産物の汚染を防ぐ。
さぎょうかんぱんじょう すいさんぶつ せっしょく ひょうめん なめ せんじょう たいふしょくせい てきせつ
作業 甲 板 上 の水産物が 接 触 する 表 面 は、滑らかで 洗 浄 しやすく、対腐食性の適切
ざいしつ ひょうめん こうしつ けんろう どくせい
な材質とし、 表 面 のコーティングや硬質ゴムラバーなどは、堅牢で毒性がないものを
しよう
使用する。
すいさんぶつ さぎょう しよう き き き ぐ たいふしょくせい せんじょうおよ しょうどく ようい ざいしつ
水産物の作業に使用される機器や器具は、耐腐食性で 洗 浄 及び 消 毒 が容易な材質で
とく ほうちょう いちぶ え もくせい ばあい てきせつ ざいしつ ひふく すいさんぶつ
あり、特に 包 丁 などの一部(柄など)が木製の場合、適切な材質により被覆する。水産物
しよう みず しゅすいこう みずきょうきゅう じ おせん ひ お い ち もう
に使用する水の取水ロは、水 供 給 時の汚染を引き起こさないような位置に設ける。
ぎょせんない ぱんてきえいせいかん り さぎょうかんぱん べんじょ てあら せつび せっち ばあい とうがい せ つ び
⑤漁船内の一般的衛生管理作業甲板に便所や手洗い設備などを設置する場合、当該設備の
えいせい か ん り りゅうい た くかく おせん はいりょ
衛生管理に留意するとともに、他の区画を汚染しないように配慮する。
のりくみいん えいせい けんこう か ん り すいさんぶつ と あつか ぎょせん のりくみいん ちゃくい あ ま ぐ およ ながぐつ
⑥乗組員の衛生 と健康の管理水産物 を取り 扱 う漁船の乗組員 は着衣(雨具及 び長靴など
ふく てゆび せいけつ たも けんこう まいにち けんこうしんだん まいとし かいいじょう
を含む)や手指などを清潔に保つ。また、健康チェックは毎日、健康診断は毎年1回以上
おこな き ろ く およ ほかん
行 い、それらを記録及び保管する。

(4)トレーサビリティ
ついせき かのうせい のうりょく
トレーサビリティ (traceability)は、trace(追跡)と ability(可能性、 能 力 )の2つの

31
たんご あ ことば ついせき か の う せ い い み しょくひん せいさん はんばい
単語を合わせた言葉で、追跡可能性を意味する。食 品 のトレーサビリティは、生産から販売
しょくひんきょうきゅうこうてい かくだんかい しょくひん かん じょうほう ついせき
までの 食 品 供 給 行程(フードチェーン)の各段階における 食 品 に関する 情 報 を追跡で
ていぎ ぐたいてき しょくひんきょうきゅうこうてい かくだんかい しいれさき はんばいさき
きること、と定義できる。具体的には、 食 品 供 給 行程の各段階で、仕入先、販売先など
きろく と き ろ く じょうほう ほかん しきべつばんごうとう もち しょくひん むす つ かくほ
の記録を取り、記録 情 報 を保管し、識別番号等を用いて 食 品 との結び付きを確保すること
しょくひん りゅうつう けいろ しょざいとう きろく じょうほう ついせき たんきゅう かのう
によって、食 品 とその 流 通 した経路および所在等を記録した 情 報 の追跡・探 求 を可能と
し く どうにゅう え りてん
する仕組みである。 導 入 により得られる利点は、
しょくひん あんぜんせい もんだい しょう さい げんいんきゅうめい もんだいしょくひん かいしゅうとう じんそく
① 食 品 の安全性に問題が 生 じた際に、その原因 究 明 や、問題 食 品 の 回 収 等を迅速・
ようい おこな かのう
容易に 行 うことが可能となる。
しょうひしゃとう じょうほうていきょう しょくひん ひょうじないよう かくにん ようい あんぜんせい
②消費者等 へ 情 報 提 供 される 食 品 の表示内容 の確認 が容易 になることで、安全性 や
ひんしつとうひょうじ しんらい かくほ
品質等表示の信頼を確保できる。
せいさんしゃ しょくひん じ ぎょうしゃ おこな せいひん か ん り ひんしつ か ん り とう こうじょう こうりつか はか
③生産者や 食 品事 業 者 の 行 う製品管理、品質管理等の 向 上 や効率化が図れる。
おうべい ゆしゅつ すいさんぶつおよ こくさい か ん り ぎょしゅとう いちぶ かこう りゅうつうだんかい
欧米に輸出される水産物及び国際管理されている魚種等の一部には、加工・流 通 段階
ひょうじ じょうほう きょぎ な ゆにゅうこく せ い ふ き か ん とう かくにん か の う せいど もう
の表示や 情 報 に虚偽が無いことを輸入国の政府機関等が確認可能とする制度が設けら
せいど すいさん し げ ん じ ぞ く かのうせい おお きょうい
れている。これらの制度はいずれも、水産資源の持続可能性にとって大きな脅威となる
ぎょぎょう ぼうし はいぜつ もくてき
IUU 漁 業 を防止・廃絶することを目的としている。
にほん ゆしゅつ ゆしゅつせいひん もと すいさんぶつ か く じ ぎょうしゃ
日本から輸出するためには、輸出製品の元になった水産物について、各事 業 者 がトレ
じょうほう ゆしゅつさきこく ゆにゅうぎょうしゃ にほん せいふきかん ていきょう
ーサビリティ 情 報 を輸出先国 の輸入 業 者 または日本 の政府機関 に 提 供 することが
ひつよう
必要になる。

32
ぎょぎょう か ん り しげん い じ
Ⅲ. 漁 業 管理と資源維持
ぎょぎょう か ん り
1. 漁 業 管理
にほん ぎょぎょう こくみん たい すいさんぶつ あんていてき きょうきゅう やくわり にな ぎょぎょう
日本の 漁 業 は、国民に対して水産物を安定的に 供 給 する役割を担っている。 漁 業 を
すいしん せいど かんれん き は ん るい かずおお にほん りょうかいおよ はい た て き けいざいすいいきない せいそく
推進するための制度に関連する規範類は数多く、日本の 領 海 及び排他的経済水域内に棲息・
かいゆう ぎょかくたいしょう し げ ん かん ぎょぎょうおよ すいさん し げ ん かんり おこな しゅたい そ し き のうりんすいさんしょう
回遊する漁獲 対 象 資源に関して、漁 業 及び水産資源の管理を 行 う主体組織は農林 水 産 省
せきにんしゃ のうりんすいさんだいじん
(責任者:農林水産大臣)である。

ぎょぎょう か ん り きほんてき かんが がた


(1) 漁 業 管理の基本的な 考 え方
ぎょぎょう か ん り しげんかんり すいさんせいぶつ はんしょく せいちょう ほ ご にんげん のぞ
漁 業 管理とは、資源管理により水産生物の 繁 殖 や 成 長 を保護し、人間にとって望まし
すいさん し げ ん い じ かいふく ぎょぎょうちょうせい おこな てきせい ぎょぎょうかつどう てんかい
い水産資源を維持・回復させるとともに、漁 業 調 整 を 行 い適正な 漁 業 活動を展開しつつ、
ぎょぎょうかんけいしゃ あんてい けいえい はか もくてき さまざま き せ い とう もう かんり
漁 業 関係者の安定した経営を図ることを目的に、様々な規制等を設けて管理することであ

る。

かんり ほうほう おお わ
管理の方法を大きく分けると、
ぎょせん せきすう き ぼ ぎょかくにっすうとう せいげん ぎょかくあつりょく い くち せいげん
①漁船 の隻数 や規模 、漁獲日数等 を制限 することにより漁獲 圧 力 を入 り口 で制限 する
とうにゅうりょう き せ い
投 入 量 規制(インプットコントロール)、
さんらんき きんりょう あみめ おお きせい さんらんしんぎょ こがたぎょ ほ ご とう はか
②産卵期 の 禁 漁 や網目 の大 きさを規制 することで産卵親魚 や小型魚 の保護等 を図 る
ぎじゅつてき き せ い
技術的規制 (テクニカルコントロール)、
しげんかんり もと ぎょかくかのうりょう せっていとう ぎょかくりょう
③資源管理の下 で漁獲可能量(TAC:Total A11owable Catch) の設定等 により漁 獲 量 を
せいげん ぎょかくあつりょく でぐち せいげん さんしゅつりょう き せ い
制限し、漁獲 圧 力 を出口で制限する 産 出 量 規制(アウトプットコントロール)

の3つとなる。
にほん かくぎょぎょう とくせい かんけい ぎょぎょうしゃ かず たいしょう しげん じょうきょうとう
日本では、各 漁 業 の特性や関係する漁 業 者 の数、 対 象 となる資源の 状 況 等により、
か ん り しゅほう つか わ く あ しげんかんり おこな
これらの管理手法を使い分け、組み合わせながら資源管理を 行 っている。

33
ぎょぎょうけん せ い ど
(2)漁 業 権 制度
えんがんせい ていちゃくせい たか しげん たいしょう さいかい さいそうとう ぎょぎょう きょうどうぎょぎょうけん いってい
沿岸性の定 着 性 の高い資源を 対 象 とした採貝・採藻等の 漁 業 ( 共 同 漁 業 権 )、 一定
かいめん せんゆう いとな て い ち あ み ぎょぎょう て い ち ぎょぎょうけん ようしょくぎょう く か く ぎょぎょうけん とう
の海面を占有して 営 まれる定置網 漁 業 (定置 漁 業 権 )や 養 殖 業 (区画 漁 業 権 )等につ
とどうふけん ち じ ぎょぎょうきょうどうくみあい ぎょきょう た ほうじんとう ぎょぎょうけん めんきょ
いては、都道府県知事が 漁 業 協 同 組合 ( 漁 協 )やその他の法人等に漁 業 権 を免許する。
めんきょ う ぎょきょう ぎょぎょう いとな しかく せいげん とうにゅうりょう き せ い ぎ ょ ぐ ぎょほう せいげん
免許を受けた 漁 協 は、 漁 業 を 営 むものの資格の制限( 投 入 量 規制)、漁具漁法の制限や
そうぎょう き か ん せいげん ぎじゅつてき き せ い とう ちいき じつじょう あ しげんかんり そ ち か ぎょぎょう
操 業 期間の制限 (技術的規制) 等、地域の 実 情 に合った資源管理措置をルール化 ( 漁 業
こうしきそく さくてい そ ぎょぎょう いとな ぎょぎょうけんぎょぎょう いとな ぎょじょう
行使規則を策定) し、これに沿って 漁 業 が 営 まれる。 漁 業 権 漁 業 が 営 まれる 漁 場 は
じ き おう りったいてき ちょうふくてき りよう
時期に応じて立体的・重 複 的 に利用されている。
とく いってい ち さ き すいめん きょうどう りよう いとな きょうどうぎょぎょうけんぎょぎょう さいそう さいかい ちゅうしん
特に一定の地先水面を 共 同 に利用して 営 む 共 同 漁 業 権 漁 業 は、採藻、採貝を 中 心 と
ていちゃくせい いどうせい すく すいさんどうしょくぶつ さいほ ち さ き ぎょぎょう えんがんぎょぎょう
して定 着 性 の、あるいは移動性の少ない水産 動 植 物 を採捕する地先 漁 業 で、沿岸 漁 業 の
ちゅうしん じもと ぎょぎょうしゃ だいたすう くみあいいん ち く ぎょぎょうきょうどうくみあい ぎょきょう
中 心 をなすものである。地元の漁 業 者 の大多数を組合員とする地区 漁 業 協 同 組合( 漁 協 )
めんきょ か ん り か いとな きほん
に免許され、その管理下で 営 まれるのを基本とする。
きょうどうぎょぎょう たいしょう すいさんどうしょくぶつ せいしつ さいほ けいたい ぞくせいとう だい しゅ
この 共 同 漁 業 は、 対 象 とする水産 動 植 物 の性質、採捕の形態や属性等により、第1種
だい しゅ くぶん
から第5種まで5つに区分される。
だい しゅ そうるい かいるいとう ていちゃくせい すいさんどうぶつ もくてき ぎょぎょう
①第1種:藻類、貝類等の定 着 性 の水産動物を目的とする 漁 業 。
だい しゅ あみ ぎ ょ ぐ えり やな るい ふせつ いとな ぎょぎょう こ が た て い ち ぎょぎょう こていしき
②第2種:網漁具(魞(えり)・簗(やな)類)を敷設して 営 む 漁 業(「小型定置 漁 業 」
「固定式
さしあみ ぎょぎょう とう
刺網(さしあみ) 漁 業 」等)。
だい しゅ じ び き あ み ぎょぎょう ち あみぎょぎょう ふなびきあみぎょぎょう むどうりょく かいつけ ぎょぎょう
③第3種:地引網 漁 業 、地こぎ網 漁 業 、船引網 漁 業(無動力)、飼付(かいつけ) 漁 業 、
つきいそ ぎょぎょうとう
築磯(つきいそ) 漁 業 等。
だい しゅ よりうお ぎょぎょう とりつき つりぎょぎょう
④第4種:寄魚(よりうお) 漁 業 、鳥付(とりつき)こぎ釣 漁 業 。
だい しゅ こしょう かせん いけ ないすいめん こしょう じゅん かいめん いとな ぎょぎょう
⑤第5種:湖沼、河川、池など内水面または湖沼に 準 ずる海面において 営 む 漁 業 であっ
だい しゅきょうどうぎょぎょう かか いがい
て、第1種 共 同 漁 業 に掲げる以外のもの。

ぎょぎょう き ょ か せ い ど
(3) 漁 業 許可制度
いっぽう ぎょせん き ぼ おお ひろ かいいき ぎょじょう おきあい えんようぎょぎょう しげん
一方、より漁船規模が大きく、広い海域を 漁 場 とする沖合・遠洋 漁 業 については、資源

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あた えいきょう おお た ちいき た ぎょぎょうしゅるい ちょうせい ひつよう ばあい
に与える 影 響 が大きく、他の地域や他の 漁 業 種類との 調 整 が必要な場合もあることから、
のうりんすいさんだいじん とどうふけん ち じ きょかせいど もう きょか さい ぎょせん
農林水産大臣または都道府県知事による許可制度が設けられている。 許可に際しては漁船
せきすう そう すう せいげん とうにゅうりょう き せ い おこな ひつよう おう そうぎょうきかん くいき ぎょほう
隻数や総トン数の制限( 投 入 量 規制)を 行 い、さらに、必要に応じて操業期間・区域、漁法
とう せいげん ぎじゅつてき き せ い つ しげんかんり おこな
等の制限(技術的規制) を付けることによって資源管理を 行 っている。

しげんかんり きほんてき かんが がた


2.資源管理の基本的な 考 え方
しげんかんり ぎょるい しゅ とうがいぎょるい とくせいおよ とうがいぎょるい りよう ぎょぎょう じったいとう
資源管理は、魚類(種)ごとに、当該魚類の特性及び当該魚類を利用する 漁 業 の実態等
ふ さいしん かがくてき ち け ん ふ じっし し げ ん ひょうか もと しげんかんり もくひょう せってい
を踏まえ最新の科学的知見を踏まえて実施された資源評価に基づき資源管理の 目 標 を設定
とうがい し げ ん か ん り もくひょう たっせい め ざ ぎょかくかのうりょう かんり おこな さいだい じ ぞ く せいさんりょう
し、当該資源管理の 目 標 の達成を目指し漁獲可能量による管理を 行 い、最大持続 生 産 量
じつげん しげんりょう すいじゅん い じ また かいふく きほん
を実現できる資源量の 水 準 を維持し、又は回復させることを基本としている。
しげんかんり こうかてき ぎょるい し げ ん さいせいさん そがい
また、資源管理をより効果的なものとするため、魚類資源の再生産が阻害されることを
ぼうし ひつよう ばあい きょか めんきょ くわ ぎょぎょう じ き せいげんまた ぎょぐ しゅるい せいげん
防止するために必要な場合には、許可、免許に加え、漁 業 時期の制限又は漁具の種類の制限、
たいちょうせいげん た ぎょぎょう ほうほう かんり あわ おこな
体 長 制限その他の 漁 業 の方法による管理が併せて 行 われる。

し げ ん ちょうさおよ し げ ん ひょうか
(1)資源調査及び資源評価
しげんかんり てきせつ おこな ぜんてい すいさん し げ ん しゅるい しげんりょう すいじゅん
資源管理を適切に 行 うためには、その前提として、水産資源の種類ごとに、資源量の 水 準
およ どうこう てきかく すいてい ふ か け つ てきせつ こんきょ もと ぎょかく
及びその動向を的確に推定することが不可欠である。すなわち、適切な根拠に基づいて漁獲
かのうりょう かんり おこな じゅうぶん じょうほう もと し げ ん ちょうさ おこな とうがい し げ ん ちょうさ
可能量による管理を 行 うためには、十 分 な 情 報 に基づく資源調査を 行 い、当該資源調査
けっか もと さいしん かがくてきち け ん ふ し げ ん ひょうか じっし うえ しげんかんり もくひょう
の結果に基づく最新の科学的知見を踏まえた資源評価を実施した上で、資源管理の 目 標 と
し げ ん すいじゅん あたい あき しげんかんり もくひょう さだ ひつよう
なる資源 水 準 の 値 を明らかにし、資源管理の 目 標 を定めることが必要である。

しげんかんり もくひょう
(2)資源管理の 目 標
し げ ん ひょうか おこな すいさん し げ ん しげんかんり もくひょう もくひょう か ん り き じ ゅ ん ち およ
資源評価が 行 われた水産資源については、資源管理の 目 標 として、 目 標 管理基準値及
げんかい か ん り き じ ゅ ん ち また し げ ん すいじゅん い じ も かいふく もくひょう し げ ん すいじゅん
び限界管理基準値、又は資源 水 準 を維持し、若しくは回復させるべき 目 標 となる資源 水 準
あたい さだ
の 値 を定める。

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か ん り きじゅん かん
これらの管理基準に関しては、
もくひょう か ん り きじゅん ち さいだい じ ぞ く せいさんりょう じつげん い じ また かいふく もくひょう
① 目 標 管理基準値:最大持続 生 産 量 を実現するために維持し又は回復させるべき 目 標
あたい
となる 値 。
げんかい か ん り き じ ゅ ん ち し げ ん すいじゅん ていか さいだい じ ぞ く せいさんりょう じつげん いちじる こんなん
②限界管理基準値:資源 水 準 の低下によって最大持続 生 産 量 の実現が 著 しく困難にな
みぜん ぼうし し げ ん すいじゅん
ることを未然に防止するための資源 水 準 。

となっている。

しげんかんり しゅほう
(3)資源管理の手法
すいさん し げ ん えさ ぶ そ く ひ ほしょく せいたいけい へ ん か とう ぎょかく い が い げんいん しぼう い か しぜん
水産資源は、餌不足、被捕食、生態系の変化等の漁獲以外の原因による死亡(以下「自然
しぼう およ ぎょぎょうしゃ た ひと ぎょかく げんしょう しぜんしぼう じんいてき
死亡」という。)及び漁 業 者 その他の人による漁獲によって 減 少 する。自然死亡は、人為的
かんり せってい しげんかんり もくひょう たっせい ぎょかくりょう かんり
には管理できないことから、設定された資源管理の 目 標 の達成のためには、漁 獲 量 の管理
じゅうよう しげんかんり もくひょう たっせい しゅほう ぎょかくりょう せいげん
が 重 要 となる。また、資源管理の 目 標 を達成するための手法は、漁 獲 量 そのものの制限
ぎょかくかのうりょう かんり き ほ ん げんそく
である漁獲可能量による管理を基本原則とする。

せ い ど とう
(4)TAC制度等
ぎょかくりょう かんり たいしょう し げ ん さいほ もの たい し よ う せんぱくとう ぎょかくかのうりょう
漁 獲 量 の管理は、対 象 資源を採捕する者に対し、使用船舶等ごとに漁獲可能量(TAC)の
はんいない たいしょう し げ ん さいほ すうりょう わ あ おこな
範囲内 で 対 象 資源 の採捕 をすることができる 数 量 を割 り当 てることにより 行 うことを
きほん さだ
基本とする、と定めている。
せいど さいしん かがくてき ち け ん もと げんざい かんきょうか おお あんてい
TAC制度では、最新の科学的知見に基づき、現在の環境下において、より多く、より安定
ぎょかく すいじゅん しげん かいふく い じ もくひょう さだ うえ
して漁獲できる 水 準 に資源を回復・維持することを 目 標 として定める。その上で、この
もくひょう なんねん じつげん ぎょうせい けんきゅう き か ん ぎょぎょうしゃ ぎろん
目 標 を何年かけてどのように実現していくのか、行 政 、研 究 機関、そして漁 業 者 と議論
き みちすじ そ まいとし き かんり
して決めていき、その道筋に沿って、毎年の TAC を決めていくこととしている。TAC管理に
きほんてき じゅうぜん くに かんり ぎょぎょう とどうふけん はいぶん
ついては、基本的には 従 前 どおり、国が管理する 漁 業 と都道府県ごとに配分され、さらに
ぎょぎょうしゃ じしゅてき きょうていとう もと かいいき じ き さいぶん そうぎょう
漁 業 者 による自主的な 協 定 等に基づいて海域ごと、時期ごとに細分されるなど、 操 業 を
ちょうせい あんていてき ぎょかく おこな し く と
調 整 しながら安定的な漁獲が 行 われる仕組みが取られている。

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うえ じゅんび ととの ぎょぎょうしゃ せんぱく わ あ ぎょかく わ
その上で、準備の 整 ったものから、TAC を漁 業 者 または船舶ごとに割り当てる漁獲割り
あ どうにゅう ぎょかく わ あ
当て(IQ: Individual Quota)を 導 入 していくこととしている。漁獲割り当て(IQ)により、
せきにん めいかく かんり ひつよういじょう きょうそう たと しゅん たか
責任が明確になり TAC をきちんと管理するとともに、必要以上に 競 争 せず、例えば 旬 の高
う じ き と けいかくてき そうぎょう きたい
く売れる時期にできるだけ獲ろうといった、 計画的な 操 業 が期待できる。

きょうどう か ん り と く
(5) 共 同 管理の取り組み
しげんかんり ほう せ い ど もと こうてき きせい くわ ぎょぎょうしゃ じ し ん じしゅてき
資源管理においては、法制度に基づく公的な規制に加えて、漁 業 者 自身による自主的な
と く きゅうりょう たいちょうせいげん そうぎょう き か ん くいき せいげんとう おこな じしゅてき
取り組み( 休 漁 、体 長 制限、操 業 期間・区域の制限等)が 行 われている。このような自主的
と く じもと しげん ぎょぎょう じったい じゅうぶん ふ か ん り しゅほう
な取り組みは、地元の資源や 漁 業 の実態を 十 分 に踏まえた管理手法となりやすく、また
しげん りよう とうじしゃ やくそく じゅんしゅ ちょうしょ
資源を利用する当事者どうしの約束であることから、ルールが 遵 守 されやすいという 長 所
しげん か ん り せきにん こうてき き か ん ぎょぎょうしゃ きょうどう にな こうてき き せ い じしゅてき と く
がある。 資源の管理責任を公的機関と 漁 業 者が 共 同 で担い、公的規制と自主的取り組み
く あ しげんかんり じっし きょうどう か ん り
を組み合わせて資源管理を実施することを「 共 同 管理」という。
ぎょぎょうしゃ じしゅてき と く ぜんこく けいかくてき しげんかんり はか かんが
漁 業 者の自主的な取り組みをベースとして、全国で計画的に資源管理を図るという 考 え
かた し げ ん か ん り が た ぎょぎょう し げ ん かいふくけいかく と く くに と ど う ふ け ん とう せっきょくてき
方は、資源管理型 漁 業 や資源回復計画により取り組まれ、国、都道府県等により積 極 的 な
しえん おこな ご すいさん し げ ん かん か ん り ほうしん ぐたいてき か ん り ほうさく しげん
支援が 行 われた。その後、水産資源に関する管理方針と具体的な管理方策をまとめた「資源
かんりししん くにおよ とどうふけん さくてい ふ かんけい ぎょぎょうだんたい こうてき じしゅてき
管理指針」を国及び都道府県が策定し、これを踏まえ、関係する 漁 業 団体が、公的・自主的
かんり そ ち ふく し げ ん か ん り けいかく さくせい じっせん
管理措置を含む「資源管理計画」を作成・実践している。

すいさん し げ ん
3.水産資源
し げ ん ちょうさおよ し げ ん ひょうか てきかく おこな すいさん し げ ん かん ちけん しゅうしゅう せ い り およ
資源調査及び資源評価を的確に 行 うためには、水産資源に関する知見を 収 集 ・整理及
ひょうか ひつよう すいさん し げ ん ぎょぎょう たいしょう すいさんせいぶつ ふつう
び評価する必要がある。水産資源とは 漁 業 の 対 象 になる水産生物のことで、普通はマイワ
しげん しげん しげん しげん ぶんるいがくじょう しゅ
シ資源・カタクチイワシ資源・マサバ資源・ゴマサバ資源というように、分 類 学 上 の種を
たんい よ おお
単位として呼ぶことが多い。
すいさん し げ ん せきゆ こうぶつ し げ ん おな てんねん し げ ん せきゆ こうぶつ し げ ん
水産資源は、石油などの鉱物資源と同じように天然資源である。石油などの鉱物資源は、
つか しだい げんしょう すいさん し げ ん た せいぶつ おな じしん
使うことによって次第に 減 少 するが、水産資源は、その他の生物と同じように、それ自身

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はんしょくりょく あたら しげん くわ さいせい か の う しげん りよう しかた
の 繁 殖 力 によって 新 しい資源が加わってくる再生可能な資源なので、利用の仕方によっ
しげん すいじゅん い じ じぞくてき りよう かのう すいさん
ては資源をある 水 準 に維持しながら持続的に利用することが可能である。このことは水産
しげん も とくせい
資源の持つ特性である。
すいさん し げ ん ていど ぎょかく しげん はんしょく もと りょう もど
水産資源は、ある程度までであれば、漁獲してもその資源は 繁 殖 によって元の 量 まで戻
ちから も げんど こ ぎょかく しんぎょ かず さんらんすう げんしょう
る 力 を持っているが、その限度を超えて漁獲すると、親魚の数や産卵数が 減 少 してしまい、
しげんりょう もと もど げんしょう はじ
資源量は元に戻らず 減 少 し始める。
すいさん し げ ん さいせい か の う しげん てきせつ かんり じぞくてき りよう かのう かがくてき
水産資源は再生可能な資源であり、適切に管理すれば持続的な利用が可能である。科学的
ちょうさとう ひつよう しゅうしゅう せいかく し げ ん ひょうか おこな しげんりょう しげん
な調査等 により必要 なデータを 収 集 し、より正確 な資源評価 を 行 い、資源量 や資源 の
じょうたい ぎょかく じょうきょうとう すいてい けっか もと てきせつ かんり そ ち と じゅうよう
状 態 、漁獲の 状 況 等を推定し、その結果に基づき適切な管理措置を取ることが 重 要 であ

る。

ぎょぎょうきょうどうくみあい
4. 漁 業 協 同 組合
ぎょぎょうきょうどうくみあい ぎょきょう すいさんぎょうきょうどうくみあいほう もと せつりつ もくてき ぎょぎょうしゃ
漁 業 協 同 組合( 漁 協 )は水 産 業 協 同 組合法に基づき設立されている。目的は漁 業 者
きょうどう そ し き はったつ そくしん けいざいてきしゃかいてき ち い こうじょう すいさんぎょう せいさんりょく ぞうしん
が 協 同 組織の発達を促進し、その経済的社会的地位の 向 上 と水 産 業 の生 産 力 の増進とを
はか こくみんけいざい はってん き よ
図り、国民経済の発展に寄与することである。

ぎょぎょうきょうどうくみあい しゅるい
漁 業 協 同 組合には、2種類がある。
ち く ぎょぎょうきょうどうくみあい ぎょきょう
①地区 漁 業 協 同 組合( 漁 協 ):
いってい ち くない ぎょぎょう いとな じゅうじ もの くみあいいん そ し き にほん かいがんせん そ
一定の地区内で 漁 業 を 営 むか従事する者の組合員組織で、日本の海岸線に沿ったほぼ
えんかい ち く たいしょう そしき ち さ き かいめん きょうどうぎょぎょうけん せってい かんかつ
すべての沿海地区を 対 象 に組織され、地先海面に 共 同 漁 業 権 を設定して管轄してい
ぜんこく えんかい ち く ぎょきょう そんざい
る。全国に沿海地区 漁 協 は 879(2022)存在する。
ぎょうしゅべつぎょぎょうきょうどうくみあい ぎょうしゅべつぎょきょう
② 業 種 別 漁 業 協 同 組合( 業 種 別 漁 協 ):
ちいき と とくてい ぎょぎょうしゅるい いとな もの げんてい くみあいいん そ し き そこびきあみぎょぎょう あみ
地域を問わず特定の 漁 業 種類を 営 む者に限定した組合員組織で、底曳網 漁 業 、まき網
ぎょぎょう ようしょくぎょうとう そしき ばあい おお ぜんこく ぎょうしゅべつくみあい
漁 業 、養 殖 業 等で組織される場合が多くみられる。全国に 85 の 業 種 別組合(2022)

がある。

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えんかい ち く ぎょきょう ぎょきょう
(1)沿海地区 漁 協 ( 漁 協 )
ぎょきょう くみあいいん す かんかつ ち さ き かいいき めんきょ きょうどうぎょぎょうけん かんり
漁 協 は、組合員が住む管轄地区の地先海域に免許された 共 同 漁 業 権 を管理する。また、
くみあいいん こ じ ん めんきょ あみぎょぎょう そこびきあみぎょぎょうとうおよ て い ち ぎょぎょうけん く か く ぎょぎょうけん
組合員個人 に免許 されるまき網 漁 業 、底曳網 漁 業 等及 び定置 漁 業 権 、区画 漁 業 権 との
ちょうせいやく にな はいけい くみあいぎょぎょうけん か ん り しゅたい ぎょみん せいさんかつどう ば
調 整 役 も担 っている。背景として、組合 漁 業 権 管理 の主体として漁民 の生産活動の場 が
かくほ はか れきしせい
確保されるよう図られてきたという歴史性がある。
ぎょきょう くみあいいん し か く くみあいち く な い じゅうしょ ゆう にち にち あいだ かくぎょきょう さだ
漁 協 の組合員資格は、組合地区内に 住 所 を有し、90日から 120日の 間 で各 漁 協 が定め
にっすう おお ぎょぎょう いとな じゅうじ もの あた
た日数より多く 漁 業 を 営 むか従事する者に与えられる。

じぎょうかつどう
(2)事業活動
ぎょきょう じぎょう すいさん し げ ん か ん り およ すいさんどうしょくぶつ ぞうしょく えいりょうかいぜん し ど う せいかつ
漁 協 の事業としては、水産資源 の管理及 び水産 動 植 物 の 増 殖 、 営 漁 改善指導 や生活
かいぜん し ど う おこな し ど う じぎょう くみあいいん ちょきん あず しきん か つ しんようじぎょう くみあいいん ひつよう
改善指導を 行 う指導事業、組合員の貯金を預かり資金を貸し付ける信用事業、組合員の必要
ぶっし きょうきゅう こうばいじぎょう くみあいいん せいさん ぎょかくぶつ なかおろしぎょうしゃ こ う り ぎょうしゃおよ
な 物資 を 供 給 す る 購買事業 、 組合員 が 生産 し た 漁獲物 を 仲 卸 業 者 や 小売 業 者 及 び
しょうひしゃ う はんばいじぎょう ふ く り こうせい きょうさいじぎょう
消費者に売る販売事業、さらに福利厚生・ 共 済 事業などがある。
はんばいじぎょう くみあいいん ぎょかくぶつ かこうひん いっかつしゅうか はんばい きょうはん う お い ち ば かいせつとう
①販売事業 :組合員 の漁獲物 や加工品 を一括集荷 して販売 する 共 販 や魚市場開設等 の
じぎょう せいひょう れいとう かこう ぎょぎょう じ え い とう かくじぎょう せいさんかつどう ちょくせつ
事業である。また、製 氷 ・冷凍、加工、漁 業 自営等の各事業も生産活動に 直 接 かかわ
じぎょう はんばいかんれんじぎょう
る事業とみなせる販売関連事業である。
こうばいじぎょう くみあいいん ひつよう ぎょぎょうよう し ざ い せいかつようひん いっかつこうにゅう くみあいいん
②購買事業 :組合員 が必要 とする 漁 業 用 資材 や生活用品 などを一括 購 入 し、組合員 へ
きょうきゅう じぎょう いっぱんてき ぎょぎょうようねんゆ せ き ゆ はんばい しゅたい し ざ い かんけい せいかつ ぶ っ し こうばい
供 給 する事業。一般的に漁業用燃油・石油販売が主体で、資材関係と生活物資の購買
すす
が進められている。
しんようじぎょう くみあいいん ちょきんうけいれ しきん かしつけ おこな じぎょう いま ぎょぎょうしゃ せ つ び し き ん じゅよう
③信用事業:組合員の貯金受入や資金の貸付を 行 う事業。今まで漁 業 者の設備資金需要
たい いっぱんてき じ こ しきん た ん ぽ ぶっけん とぼ ぎょきょう けいとう し き ん せいどしきん
に対して一般的に自己資金や担保物件が乏しいため、 漁 協 は系統資金・制度資金から
げ ん し ちょうたつ さ い む ほしょう お こ な ぎょぎょう ささ やくわり は げんじょう しんようじぎょう
の原資 調 達 や債務保証 を行い 漁 業 を支 える役割 を果 たした。 現 状 では信用事業 は
ぎょきょうがっぺい しんぎょれん じぎょうとうごう じぎょう き ば ん さいへんきょうか はか じょうきょう
漁 協 合併や信漁連への事業統合によって事業基盤の再編強化が図られている 状 況 に
しんようじぎょう じ っ し ていちょう
あり、信用事業実施は 低 調 である。
ぎょぎょう じ え い じぎょう かくぎょきょう どくじ かつどう おこな ぎょきょう しせい
④ 漁 業 自営事業:各 漁 協 により独自の活動が 行 われており、それぞれの 漁 協 の姿勢を

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しめ て い ち ぎょぎょう けん く か く ぎょぎょうけんとう りえき ぶんぱいとう せいさん
示すものとなっている。定置 漁 業 (権)、区画 漁 業 権 等による利益の分配等の生産の
きょうどうか きょうぎょうか ぞうしん ぎょじょう そうごうてき り よ う ゆうこう り よ う はか せきむ お
共同化、協 業 化 の増進というだけでなく 漁 場 の総合的利用、有効利用を図る責務を負

っている。

ぎょそん ぎょぎょうしゅうらく やくわり


5.漁村( 漁 業 集 落 )の役割
にほん りょうかい あ めんせき まん こうだい すいいき やく
日本の 領 海 と EEZ を合わせた面積は 447万km2 とされており、その広大な水域では約24
まんせき ぎょせん そうぎょう まん およ かいがんせん やく ぎょそん ぎょぎょう
万隻の漁船が 操 業 しており、3万5,300km にも及ぶ海岸線には約6,300 の漁村がある。漁 業
しゅうらく おお かいがん はんとう りとう りっち ぎょぎょうせいさん ゆうり じょうけん
集 落 の多くは、リアス海岸、半島、離島に立地しており、 漁 業 生産に有利な 条 件 である
はんめん し ぜ ん さいがい たい ぜいじゃく
反面、自然災害に対して 脆 弱 である。
ぎょそん いとな ぎょぎょうせいさんかつどう ぎょかいるい きょうきゅう やくわり つぎ ためんてき
漁村で 営 まれる 漁 業 生産活動は、魚介類を 供 給 する役割だけでなく次のような多面的
きのう は
な機能を果たしている。
し ぜ ん かんきょう ほぜん きのう
①自然 環 境 を保全する機能
こくみん せいめい ざいさん ほぜん きのう
②国民の生命・財産を保全する機能
こうりゅうとう ば ていきょう きのう
③ 交 流 等の場を提 供 する機能
ち い き しゃかい けいせい い じ きのう
④地域社会を形成し維持する機能
くに も ば ひがた ほぜん かいなんきゅうじょ こっきょう すいいき か ん し とう ぎょぎょうしゃとう おこな ためんてき き の う
国では、藻場や干潟の保全、海難 救 助 や 国 境・水域監視等の漁 業 者 等が 行 う多面的機能
はっき し かつどう しえん かくち かっぱつ かつどう おこな
の発揮に資する活動を支援しており、各地で活発な活動が 行 われている。

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