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JP 6975733 B2 2021.12.

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号15のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号22のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号29のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号36のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4
3のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号50のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体、
(b)配列番号16のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号23のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号30のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号37のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4 10
4のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号51のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体、
(c)配列番号17のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号24のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号31のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号38のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4
5のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号52のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体、
(d)配列番号18のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号25のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号32のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号39のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4 20
(2) JP 6975733 B2 2021.12.1

6のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号53のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体、
(e)配列番号19のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号26のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号33のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号40のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4
7のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号54のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体、
(f)配列番号20のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号27のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号34のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号41のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4 10
8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号55のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体、並びに
(g)配列番号21のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号28のアミ
ノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号35のアミノ酸配列からなる重鎖可変
領域CDR3、配列番号42のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号4
9のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号56のアミノ酸配列から
なる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体からなる群から選択される、ヒト抗ヒトPD−1モ
ノクローナル抗体またはその抗原結合部分を有効成分として含む感染症治療剤。
【請求項2】
ヒト抗ヒトPD−1モノクローナル抗体が、 20
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号8のアミノ酸配列
からなる軽鎖可変領域を含む抗体、
(b)配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号9のアミノ酸配列
からなる軽鎖可変領域を含む抗体、
(c)配列番号3のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号10のアミノ酸配
列からなる軽鎖可変領域を含む抗体、
(d)配列番号4のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号11のアミノ酸配
列からなる軽鎖可変領域を含む抗体、
(e)配列番号5のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号12のアミノ酸配
列からなる軽鎖可変領域を含む抗体、 30
(f)配列番号6のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配
列からなる軽鎖可変領域を含む抗体、並びに
(g)配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配
列からなる軽鎖可変領域を含む抗体からなる群から選択される請求項1記載の感染症治療
剤。
【請求項3】
感染症が、インフルエンザ、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイ
ルス、フラビウイルス類、エコーウイルス類、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、
コロナウイルス、呼吸器シンシチウムウイルス、おたふくかぜウイルス、ロタウイルス、
はしかウイルス、風疹ウイルス、パロボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイル 40
ス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウ
イルス、JCウイルスまたはアルボウイルス脳炎ウイルスによる病原性感染、菌類クラミ
ジア、リケッチアバクテリア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、ニューモコッ
カス、髄膜炎菌およびコノコッカス、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモ
ナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、テタヌス、ボツリズム、炭
素菌、ペスト、レプトスピラ症またはライムス病菌による病原性感染、真菌類カンジダ、
クリプトコッカスネオフォルマンス、アスパルギルス、ムコラレス属、スポロスリックス
シェンキ、ブラストマイセスデルマチチディス、パラコッキジオイデスブラシリエンシス
、コッキジオイデスイミチスまたはヒストプラズマカプスラツムによる病原性感染、およ
びジアルジア、マラリア、リューシュマニア、赤痢アメーバ寄生体、大腸バランチジウム 50
(3) JP 6975733 B2 2021.12.1

、ナエグレリアファウレリ、アカンテャモエーバ種、ジアルジアランビア、クリプトスポ
リジウム種、ニューモシスチスカリニ、プラスモディウムビバックス、バベシアミクロチ
、トリパノゾーマブルーセイ、クルーズトリペゾーマ、リューシュマニアドノヴァニ、ト
キシプラズマゴンジまたはブラジル鉤虫による病原性感染からなる群から選択される請求
項1または2に記載の感染症治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ヒト疾患治療における免疫療法とそれに関連した有害事象の低減
に関する。さらに詳細には、本発明は、癌を治療するためのおよび/またはそれぞれの抗 10
体治療に関連した有害事象の頻度または重篤度を低減するための、抗PD−1抗体の用途
および抗CTLA−4と抗PD−1抗体との併用を含む併用免疫療法の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のProgrammed Death 1(PD−1)は、CD28ファミリ
ーレセプターの阻害メンバーであり、CD28ファミリーには、CD28、CTLA−4
、ICOSおよびBTLAもまた含まれる。PD−1は、活性化B細胞、T細胞および骨
髄細胞上で発現する(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。当該ファミリーの
最初のメンバーであるCD28およびICOSは、モノクローナル抗体添加後のT細胞増
殖上昇に及ぼす機能的影響により発見された(非特許文献4、非特許文献5)。PD−1 20
は、アポトーシス細胞中における異なった発現をスクリーニングすることにより発見され
た(非特許文献6)。当該ファミリーの他のメンバーであるCTLA−4とBTLAは、
それぞれ、細胞傷害性Tリンパ球とTH1細胞中における異なった発現をスクリーニング
することにより発見された。CD28、ICOSおよびCTLA−4は全て、対になって
いないシステイン残基を有しており、それらはホモダイマー化を可能にする。対照的に、
PD−1はモノマーとして存在すると考えられており、他のCD28ファミリーメンバー
に特徴的な対になっていないシステインを有していない。
【0003】
PD−1遺伝子は、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である55kDaのI型膜貫
通タンパク質である(非特許文献7)。PD−1は、膜近位免疫レセプターチロシン阻害 30
モチーフ(ITIM)および膜遠位のチロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)(非
特許文献8、非特許文献9)を含む。PD−1は、CTLA−4に構造的に類似している
が、B7−1およびB7−2結合に重要なMYPPPYモチーフを欠損している。PD−
1に対する2個のリガンドPD−L1およびPD−L2が同定されており、PD−1に結
合するとT細胞活性化を負に制御することが明らかとなっている(非特許文献10、非特
許文献11、非特許文献12)。PD−L1およびPD−L2は両者ともに、PD−1に
結合するが、他のCD28ファミリーメンバーには結合しないB7ホモログである。PD
−1の一つのリガンドであるPD−L1は、様々なヒト癌に豊富に存在している(非特許
文献13)。PD−1とPD−L1の相互作用の結果、腫瘍浸潤性リンパ球の減少、T細
胞レセプター媒介性増殖の低下、および癌性細胞による免疫回避が起こる(非特許文献1 40
4、非特許文献15、非特許文献16)。免疫抑制は、PD−L1とのPD−1の局所的
相互作用を阻害することにより回復でき、PD−L2とのPD−2との相互作用が同様に
阻害される時、その効果は付加的である(非特許文献17、非特許文献18)。
【0004】
PD−1は、活性化B細胞、T細胞および骨髄細胞上で発現するCD28ファミリーの
阻害メンバーである(非特許文献1、非特許文献19、非特許文献3)。PD−1欠損動
物は、自己免疫性心筋症および関節炎および腎炎を伴うループス様症候群を含む様々な自
己免疫性表現型を発症する(非特許文献20、非特許文献21)。さらに、PD−1は、
自己免疫性脳脊髄炎、全身性ループスエリテマトーデス、移植片対宿主病(GVHD)、
I型糖尿病およびリウマチ性関節炎に重要な役割を果たすことがわかった(非特許文献2 50
(4) JP 6975733 B2 2021.12.1

2、非特許文献23および非特許文献24)。マウスB細胞腫瘍株において、PD−1の
ITSMは、BCR媒介Ca2+の流れおよび下流エフェクター分子のチロシンリン酸化
を阻害する際に必須であることが明らかになった(非特許文献25)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Agataら、同上
【非特許文献2】Okazakiら(2002)Curr.Opin.Immunol.
14:391779−82
【非特許文献3】Bennettら(2003)J Immunol 170:711−8 10
【非特許文献4】Hutloffら(1999)Nature 397:263−266
【非特許文献5】Hansenら(1980)Immunogenics 10:247
−260
【非特許文献6】Ishidaら(1992)EMBO J. 11:3887−95
【非特許文献7】Agataら(1996)Int Immunol 8:765−72
【非特許文献8】Thomas、M.L.(1995)J Exp Med 181:19
53−6
【非特許文献9】Vivier,EおよびDaeron,M(1997)Immunol
o Today 18:286−91
【非特許文献10】Freemanら(2000)J Exp Med 192:1027 20
−34
【非特許文献11】Latchmanら(2001)Nat Immunol 2:261
−8
【非特許文献12】Carterら(2002)Eur J Immunol 32:63
4−43
【非特許文献13】Dongら(2002)Nat.Med. 8:787−9
【非特許文献14】Dongら(2003)J.Mol.Med. 81:281−7
【非特許文献15】Blankら(2005)Cancer Immunol.Immu
nother. 54:307−314
【非特許文献16】Konishiら(2004)Clin.Cancer Res. 1 30
0:5094−100
【非特許文献17】Iwaiら(2002)Proc.Nat' l.Acad.Sci.
USA 99:12293−7
【非特許文献18】Brownら(2003)J.Immunol. 170:1257
−66
【非特許文献19】Okazakiら(2002)Curr Opin Immunol
14:391779−82
【非特許文献20】Nishimuraら(1999)Immunity 11:141
−51
【非特許文献21】Nishimuraら(2001)Science 291:319 40
−22
【非特許文献22】Salamaら(2003)J Exp Med 198:71−78
【非特許文献23】ProkuniaおよびAlarcon−Riquelme(200
4)Hum Mol Genet 13:R143
【非特許文献24】Nielsenら(2004)Lupus 13:510
【非特許文献25】Okazakiら(2001)PNAS 98:13866−71
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、PD−1を認識する薬剤およびそのような薬剤の使用方法が望まれている 50
(5) JP 6975733 B2 2021.12.1


【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、PD−1に結合し数々の望ましい性質を示す単離モノクローナル抗体、特に
、ヒトモノクローナル抗体を提供する。これらの性質には、例えば、ヒトPD−1への高
親和性結合が含まれるが、これは、ヒトCD28、CTLA−4またはICOSのいずれ
かとの実質的交差反応性を欠如している。さらに、本発明の抗体は免疫応答を調節するこ
とが明らかとなった。したがって、本発明のもう一つの側面は、抗PD−1抗体を用いて
免疫応答を調節する方法に関する。特に、本発明は、抗PD−1抗体を用いてインビボで
腫瘍細胞増殖を阻害する方法を提供する。 10
【0008】
本発明は、一面において、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関し、こ
こで、当該抗体は、下記の性質の少なくともひとつを示す。
(a)KDが1×10−7M以下でヒトPD−1に結合する。
(b)ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない。
(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を上昇させる。
(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる。
(e)MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる。
(f)ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する。
(g)PD−L1および/またはPD−L2のPD−1に対する結合を阻害する。 20
(h)抗原特異的記憶応答を刺激する。
(i)抗体応答を刺激する。
(j)腫瘍細胞増殖をインビボで阻害する。
【0009】
別の態様において、当該抗体は、例えば、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体で
あることもできるが、好適には、当該抗体はヒト抗体である。
【0010】
さらに好適な態様において、当該抗体は、ヒトPD−1に対してKDが5×10−8M
以下で結合し、ヒトPD−1に対してKDが1×10−8M以下で結合し、ヒトPD−1
に対してKDが5×10−9M以下で結合し、またはヒトPD−1に対してKDが1×1 30
−8 −10
0 MとKD1×10 Mの間で結合する。
【0011】
別の態様において、本発明は、
(a)配列番号1、2、3、4、5、6および7から構成される群から選択されたアミノ
酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号8、9、10、11、12、13および14から構成される群から選択さ
れたアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含む参考抗体とPD−1に対する結合を交差競合する単離ヒトモノクローナル抗体また
はその結合部分を提供する。
【0012】 40
さまざまな態様において、当該参考抗体は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または当該参考抗体は、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または当該参考抗体は、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または当該参考抗体は、 50
(6) JP 6975733 B2 2021.12.1

(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または当該参考抗体は、
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または当該参考抗体は、
(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または当該参考抗体は、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および 10
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含む。
【0013】
別の面において、本発明は、さらに、ヒトVH3−33遺伝子の産物であるかまたはそ
れに由来する重鎖可変領域を含む単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関し
、ここで、当該抗体は特異的にPD−1に結合する。本発明は、さらに、ヒトVH4−3
9遺伝子の産物であるかまたはそれに由来する重鎖可変領域を含み、抗体が特異的にPD
−1に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。本発明はさら
に、ヒトVKL6遺伝子の産物であるかまたはそれに由来する軽鎖可変領域を含み、抗体
が特異的にPD−1に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供す 20
る。本発明は、さらに、ヒトVKL15遺伝子の産物であるかまたはそれに由来する軽鎖
可変領域を含み、抗体が特異的にPD−1に結合する単離モノクローナル抗体またはその
抗原結合部分に関する。
【0014】
好適な態様において、本発明は、
(a)ヒトVH3−33遺伝子の重鎖可変領域および
(b)ヒトVKL6遺伝子の軽鎖可変領域
を含み、抗体が特異的にPD−1に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合
部分を提供する。
【0015】 30
別の好適な態様において、本発明は、
(a)ヒトVH4−39遺伝子の重鎖可変領域および
(b)ヒトVKL15遺伝子の軽鎖可変領域
を含み、抗体が特異的にPD−1に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合
部分を提供する。
【0016】
別の面において、本発明は、
CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域およびCDR1、CDR2お
よびCDR3配列を含む軽鎖可変領域
を含み、 40
(a)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号29、30、31、32、33、34およ
び35、およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号50、51、52、53、54、55およ
び56、およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含み、
(c)当該抗体は特異的にPD−1に結合する、
単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0017】
好適には、当該重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号22、23、24、25、26
、27および28、およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配
列を含み、当該軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号43、44、45、46、47、 50
(7) JP 6975733 B2 2021.12.1

48および49、およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配列
を含む。好適には、当該重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号15、16、17、18
、19、20および21、およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミ
ノ酸配列を含み、軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号36、37、38、39、40
、41および42、およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配
列を含む。
【0018】
さらに別の面において、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
(a)当該重鎖可変領域は、配列番号1、2、3、4、5、6および7から構成される群
から選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を 10
含み、
(b)当該軽鎖可変領域は、配列番号8、9、10、11、12、13および14から構
成される群から選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミ
ノ酸配列を含み、
(c)当該抗体は、ヒトPD−1に対してKDが1×10−7M以下で結合し、
(d)当該抗体は、ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに対して実質的に結合し
ない、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0019】
好適な態様において、当該抗体は、さらに、下記の性質の少なくともひとつを有する。
(a)当該抗体は、MLRアッセイにおいてT細胞増殖を上昇させる。 20
(b)当該抗体は、MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増大させる。
(c)当該抗体は、MLRアッセイにおいてインターロイキン−2(IL−2)分泌を増
大させる。
【0020】
さらにまたはこれとは別に、当該抗体は、上記に述べた他の特徴の一つ以上を有するこ
とができる。
【0021】
好適な態様において、本発明は:
(a)配列番号15、16、17、18、19、20および21から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、 30
(b)配列番号22、23、24、25、26、27および28から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号29、30、31、32、33、34および35から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号36、37、38、39、40、41および42から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号43、44、45、46、47、48および49から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、
(f)配列番号50、51、52、53、54、55および56から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3 40
を含み、抗体が、PD−1と特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結
合部分を提供する。
【0022】
好適な組み合わせは、
(a)配列番号15を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号22を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号29を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号43を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号50を含む軽鎖可変領域CDR3 50
(8) JP 6975733 B2 2021.12.1

を含む。
【0023】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号16を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号23を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号30を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号37を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号44を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号51を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。 10
【0024】
さらに別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号17を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号24を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号31を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号38を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号45を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号52を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0025】 20
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号18を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号25を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号32を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号39を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号46を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号53を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0026】
別の好適な組み合わせは、 30
(a)配列番号19を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号26を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号33を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号40を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号47を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号54を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0027】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号20を含む重鎖可変領域CDR1、 40
(b)配列番号27を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号34を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号41を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号48を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号55を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0028】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号21を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号28を含む重鎖可変領域CDR2、 50
(9) JP 6975733 B2 2021.12.1

(c)配列番号35を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号42を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号49を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号56を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0029】
他の好適な本発明の抗体およびその抗原結合部分は:
(a)配列番号1、2、3、4、5、6および7から構成される群から選択されたアミノ
酸配列を含む重鎖可変領域および
(b)配列番号8、9、10、11、12、13および14から構成される群から選択さ 10
れたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含み、当該抗体はPD−1に特異的に結合する。
【0030】
好適な組み合わせは、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0031】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および 20
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0032】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および
(b)配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0033】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および 30
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0034】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0035】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および 40
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0036】
別の好適な組み合わせは、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0037】
本発明の抗体は、例えば、IgG1またはIgG4アイソタイプの全長抗体であること
が可能である。これとは別に、当該抗体は、FabまたはFab´2断片のような抗体断 50
(10) JP 6975733 B2 2021.12.1

片または一重鎖抗体であってもよい。
【0038】
本発明は、また、サイトトキシンまたは放射性元素のような治療薬剤に結合させた本発
明の抗体またはその抗原結合部分を含む免疫複合物を提供する。本発明は、また、当該抗
体またはその抗原結合部分とは異なる結合特異性を有する第2の機能的部分に結合させた
本発明の抗体またはその抗原結合部分を含む二特異性分子を提供する。
【0039】
本発明の抗体またはその抗原結合部分、または免疫複合物または二特異性分子、ならび
に薬学的に許容できる担体を含む組成物も提供される。
【0040】 10
本発明の抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸分子ならびに当該核酸を含む発
現ベクターおよび当該発現ベクターを含む宿主も、本発明に包含される。さらに、本発明
は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖トランスジーンを含む形質転換マウスを提供し、
ここで、当該マウスは、本発明の抗体を発現し、さらに、このようなマウスから調製した
ハイブリドーマも提供され、ここで、当該ハイブリドーマは、本発明の抗体を産生する。
【0041】
さらに別の面において、本発明は、被験者に対して本発明の抗体またはその抗原結合部
分を、被験者における免疫応答を調節するように投与し、被験者における免疫応答を調節
する方法を提供する。好適には、本発明の抗体は、当該被験者における免疫応答を増強さ
せるか、刺激するか、または上昇させる。 20
【0042】
別の面において、本発明は、被験者に対して治療有効量の抗PD−1抗体またはその抗
原結合部分を投与することを含む、被験者における腫瘍細胞増殖を阻害する方法を提供す
る。本発明の抗体は、その代わりに他の抗PD−1抗体も(または本発明の抗PD−1抗
体と併用して)使用できるものの、本方法における用途に好適である。例えば、キメラ、
ヒト化または完全ヒト抗PD−1抗体を腫瘍増殖阻害方法に使用できる。
【0043】
別の面において、本発明は、被験者に対して治療有効量の抗PD−1抗体またはその抗
原結合部分を投与することを含む、被験者における感染性疾患を治療する方法を提供する
。本発明の抗体は、代わりに他の抗PD−1抗体も(または本発明の抗PD−1抗体と併 30
用して)使用できるものの、本方法における用途に好適である。例えば、キメラ、ヒト化
または完全ヒト抗PD−1抗体を感染性疾患治療方法に使用できる。
【0044】
さらに、本発明は、被験者に対して(i)抗原および(ii)抗PD−1抗体またはそ
の抗原結合部分を投与し、被験者における当該抗原に対する免疫応答を増強させることを
含む、被験者における当該抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供する。当該抗原は
、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌性抗原、または病原体からの抗原であってもよ
い。本発明の抗体は、代わりに他の抗PD−1抗体も(または本発明の抗PD−1抗体と
併用して)使用できるものの、本方法における用途に好適である。例えば、キメラ、ヒト
化または完全にヒトの抗PD−1抗体を被験者における抗原に対する免疫応答増強方法に 40
使用できる。
【0045】
本発明はまた、本発明で提供した抗PD−1抗体の配列に基づく“第2世代”抗PD−
1抗体を作成する方法を提供する。例えば、本発明は、
(a)(i)配列番号15、16、17、18、19、20および21から構成される群
から選択したCDR1配列および/または配列番号22、23、24、25、26、27
および28から構成される群から選択したCDR2配列;および/または配列番号29、
30、31、32、33、34および35から構成される群から選択したCDR3配列を
含む重鎖可変抗体配列;または(ii)配列番号36、37、38、39、40、41お
よび42から構成される群から選択したCDR1配列および/または配列番号43、44 50
(11) JP 6975733 B2 2021.12.1

、45、46、47、48および49から構成される群から選択したCDR2配列;およ
び/または配列番号50、51、52、53、54、55および56から構成される群か
ら選択したCDR3配列を含む軽鎖可変抗体配列を提供すること;
(b)重鎖可変領域抗体配列および軽鎖可変領域抗体配列から選択した少なくとも1個の
可変領域抗体配列内部の少なくとも1個のアミノ酸残基を改変し、少なくとも1個の改変
抗体配列を作成すること;および
(c)当該改変抗体配列をタンパク質として発現させること
を含む、抗PD−1抗体を調製する方法を提供する。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明および実施例から明らかであるが、 10
それらに限定されるものではない。本明細書に引用したあらゆる参考文献、GenBan
kエントリ、特許および公表特許明細書の内容は、ここに明確に参照として取り込まれる

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】17D8ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号57)
およびアミノ酸配列(配列番号1)を示している。CDR1(配列番号15)、CDR2
(配列番号22)およびCDR3(配列番号29)領域を図示し、そのV、DおよびJの
生殖細胞型の由来を示している。
【図1B】17D8ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号64) 20
およびアミノ酸配列(配列番号8)を示している。CDR1(配列番号36)、CDR2
(配列番号43)およびCDR3(配列番号50)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細
胞型の由来を示している。
【図2A】2D3ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号58)お
よびアミノ酸配列(配列番号2)を示している。CDR1(配列番号16)、CDR2(
配列番号23)およびCDR3(配列番号30)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細胞
型の由来を示している。
【図2B】2D3ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号65)お
よびアミノ酸配列(配列番号9)を示している。CDR1(配列番号37)、CDR2(
配列番号44)およびCDR3(配列番号51)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細胞 30
型の由来を示している。
【図3A】4H1ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号59)お
よびアミノ酸配列(配列番号3)を示している。CDR1(配列番号17)、CDR2(
配列番号24)およびCDR3(配列番号31)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細胞
型の由来を示している。
【図3B】4H1ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号66)お
よびアミノ酸配列(配列番号10)を示している。CDR1(配列番号38)、CDR2
(配列番号45)およびCDR3(配列番号52)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細
胞型の由来を示している。
【図4A】5C4ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号60)お 40
よびアミノ酸配列(配列番号4)を示している。CDR1(配列番号18)、CDR2(
配列番号25)およびCDR3(配列番号32)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細胞
型の由来を示している。
【図4B】5C4ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号67)お
よびアミノ酸配列(配列番号11)を示している。CDR1(配列番号39)、CDR2
(配列番号46)およびCDR3(配列番号53)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細
胞型の由来を示している。
【図5A】4A11ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号61)
およびアミノ酸配列(配列番号5)を示している。CDR1(配列番号19)、CDR2
(配列番号26)およびCDR3(配列番号33)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細 50
(12) JP 6975733 B2 2021.12.1

胞型の由来を示している。
【図5B】4A11ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号68)
およびアミノ酸配列(配列番号12)を示している。CDR1(配列番号40)、CDR
2(配列番号47)およびCDR3(配列番号54)領域を図示し、そのVおよびJ生殖
細胞型の由来を示している。
【図6A】7D3ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号62)お
よびアミノ酸配列(配列番号6)を示している。CDR1(配列番号20)、CDR2(
配列番号27)およびCDR3(配列番号34)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細胞
型の由来を示している。
【図6B】7D3ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号69)お 10
よびアミノ酸配列(配列番号13)を示している。CDR1(配列番号41)、CDR2
(配列番号48)およびCDR3(配列番号55)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細
胞型の由来を示している。
【図7A】5F4ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の塩基配列(配列番号63)お
よびアミノ酸配列(配列番号7)を示している。CDR1(配列番号21)、CDR2(
配列番号28)およびCDR3(配列番号35)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細胞
型の由来を示している。
【図7B】5F4ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域の塩基配列(配列番号70)お
よびアミノ酸配列(配列番号14)を示している。CDR1(配列番号42)、CDR2
(配列番号49)およびCDR3(配列番号56)領域を図示し、そのVおよびJ生殖細 20
胞型の由来を示している。
【図8】17D8、2D3、4H1、5C4および7D3の重鎖可変領域のアミノ酸配列
とヒト生殖細胞VH 3−33のアミノ酸配列(配列番号71)との配列比較を示している

【図9】17D8、2D3および7D3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞V
K L6のアミノ酸配列(配列番号73)との配列比較を示している。
【図10】4H1と5C4の軽鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞VK L6のアミ
ノ酸配列(配列番号73)との配列比較を示している。
【図11】4A11と5F4の重鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞VH 4−39
のアミノ酸配列(配列番号72)との配列比較を示している。 30
【図12】4A11と5F4の軽鎖可変領域のアミノ酸配列とヒト生殖細胞VK L15の
アミノ酸配列(配列番号74)との配列比較を示している。
【図13】図13A−13Bは、ヒトPD−1に対して作製したヒトモノクローナル抗体
5C4および4H1が全長ヒトPD−1を移入したCHO細胞の細胞表面に結合すること
を明らかにしたフローサイトメトリー実験結果を示している。図13Aは、5C4につい
てのフローサイトメトリープロットを示している。図13Bは、4H1についてのフロー
サイトメトリープロットを示している。細線は、CHO細胞に対する結合を示し、太線は
、CHO hPD−1細胞に対する結合を示している。
【図14】ヒトPD−1に対して作製したヒトモノクローナル抗体17D8、2D3、4
H1、5C4および4A11がPD−1に特異的に結合し、他のCD28ファミリーメン 40
バーには結合しないことを示したグラフを示している。
【図15A】図15A−15Cは、ヒトPD−1に対して作製したヒトモノクローナル抗
体5C4および4H1が細胞表面においてPD−1に結合することを明らかにしたフロー
サイトメトリー実験結果を示している。図15Aは、活性化ヒトT細胞への結合を示して
いる。
【図15B】図15Bは、カニクイザルT細胞への結合を示している。
【図15C】図15Cは、PD−1発現CHO移入細胞に対する結合を示している。
【図16A】図16A−16Cは、ヒトPD−1に対するヒトモノクローナル抗体がT細
胞増殖、IFN−γ分泌およびIL−2分泌を混合リンパ球反応アッセイにおいて促進す
ることを明らかにした実験結果を示している。図16Aは、濃度依存的なT細胞増殖を示 50
(13) JP 6975733 B2 2021.12.1

す棒グラフである。
【図16B】図16Bは、濃度依存的なIFN−γ分泌を示した棒グラフである。
【図16C】図16Cは、濃度依存的なIL−2分泌を示した棒グラフである。
【図17A】図17A−17Bは、ヒトPD−1に対して作製したヒトモノクローナル抗
体が、PD−1発現CHO移入細胞に対するPD−L1およびPD-L2の結合を阻害す
ることを明らかにしたフローサイトメトリー実験結果を示している。図17Aは、PD−
L1結合阻害を示す棒グラフである。
【図17B】図17Bは、PD−L2結合阻害を示す棒グラフである。
【図18】ヒトPD−1に対して作製したヒトモノクローナル抗体がT細胞アポトーシス
を促進しないことを明らかにしたフローサイトメトリー実験結果を示している。 10
【図19】抗PD−1 HuMabsがPBMCsをCMV溶解物および抗PD−1で刺
激したときCMV陽性ドナーからのPBMCsによるIFNγ分泌に対して濃度依存的効
果を有していることを明らかにした実験結果を示している。
【図20】抗PD−1抗体によるマウス腫瘍のインビボ処理が腫瘍増殖を阻害することを
明らかにしたマウスモデル系における腫瘍増殖実験の結果を示している。
【図21】図21A∼21Dは、MC38結腸腫瘍細胞(PD−L1-)を移植し、同日
に下記の処方の一つで処置したマウスにおける経時的腫瘍容積を示している:(A)マウ
スIgG(対照)、(B)抗CTLA−4、(C)抗PD−1または(D)抗CTLA−
4抗体および抗PD−1抗体。このマウスは、第3、6および10日において実施例13
に記載のようにその後抗体処理を受け、腫瘍容積を60日間にわたりモニタリングした。 20
【図22】図21に示したマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図23】図21に示したマウスの腫瘍容積中央値を示している。
【図24】図24A∼図24Dは、MC38結腸腫瘍細胞(PD−L1-)を移植し、1
週後下記の処方の一つで処置したマウスにおける経時的腫瘍容積を示している:(A)マ
ウスIgG(対照)、(B)抗CTLA−4モノクローナル抗体、(C)抗PD−1、ま
たは(D)抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体。処理第1日における腫瘍容積は、
315mm3であった。マウスは、第3、6および10日において実施例14に記載のよ
うにその後抗体処理を受けた。
【図25】図24に示したマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図26】図24に示したマウスの腫瘍容積中央値を示している。 30
-
【図27A】図27A−Hは、MC38結腸腫瘍細胞(PD−L1 )を移植し(第−7
日)、その後、移植後第0、3、6および10日に下記の処方の一つで(実施例15に記
載のように)処置したマウスにおける経時的平均腫瘍容積値を示している。図27Aは、
対照としてのマウスIgG(20mg/kg、X20)で処置した結果を示す。
【図27B】図27Bは、抗PD−1抗体(10mg/kg)およびマウスIgG(10
mg/kg)(P10X10)で処置した結果を示す。
【図27C】図27Cは、抗CTLA−4抗体(10mg/kg)およびマウスIgG(
10mg/kg)(C10X10)で処置した結果を示す。
【図27D】図27Dは、抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体(各10mg/kg
)(C10P10)で処置した結果を示す。 40
【図27E】図27Eは、抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体(各3mg/kg)
(C3P3)で処置した結果を示す。
【図27F】図27Fは、抗CTLA−4抗体およびPD−1抗体(各1mg/kg)(
C1X1)で処置した結果を示す。
【図27G】図27Gは、抗CTLA−4抗体(10mg/kg、第0日)、抗CTLA
−4抗体(10mg/kg、第3日)、抗PD−1抗体(10mg/kg、第6日)、お
よび抗PD−1抗体(10mg/kg、第10日)(C10C10P10P10)で順次処理した
結果を示す。
【図27H】図27Hは、抗PD−1抗体(10mg/kg、第0日)、抗PD−1抗体
(10mg/kg、第3日)、抗CTLA−4抗体(10mg/kg、第6日)および抗 50
(14) JP 6975733 B2 2021.12.1

CTLA−4抗体(10mg/kg、第10日)(P10P10C10C10)で順次処理した結
果を示す。
【図28】図27に示したマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図29】図27に示したマウスの腫瘍容積中央値を示している。
【図30A】図30A∼30Fは、SA1/N線維肉腫細胞(PD−L1-)を移植し、
1日後に下記の処方の一つで処置したマウスにおける経時的腫瘍容積を示している。この
マウスは、その後第4、7および11日において実施例16に記載のようにその後抗体処
理を受け、腫瘍容積を41日間にわたりモニタリングした。図30Aは、APBS(溶媒
対照)で処置した結果を示す。
【図30B】図30Bは、マウスIgG(抗体対照、10mg/kg)で処置した結果を 10
示す。
【図30C】図30Cは、抗PD−1抗体(10mg/kg)で処置した結果を示す。
【図30D】図30Dは、抗CTLA−4抗体(10mg/kg)で処置した結果を示す

【図30E】図30Eは、抗CTLA−4抗体(0.2mg/kg)で処置した結果を示
す。
【図30F】図30Fは、抗PD−1抗体(10mg/kg)および抗CTLA−4抗体
(0.2mg/kg)で処置した結果を示す。
【図31】図29に示したマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図32】図29に示したマウスの腫瘍容積中央値を示している。 20
-
【図33A】図33A∼33Jは、SA1/N線維肉腫細胞(PD−L1 )を移植し、
その後、移植後第7、10、13および17日に下記の処方のひとつで(実施例17に記
載のように)処置したマウスにおける経時的腫瘍容積を示している。処理第1日の腫瘍容
積は、約110mm3であった。図33Aは、PBS(溶媒対照)を示す。
【図33B】図33Bは、マウスIgG(抗体対照、10mg/kg)を示す。
【図33C】図33Cは、抗CTLA−4モノクローナル抗体(0.25mg/kg)を
示す。
【図33D】図33Dは、抗CTLA−4抗体(0.5mg/kg)を示す。
【図33E】図33Eは、抗CTLA−4抗体(5mg/kg)を示す。
【図33F】図33Fは、抗PD−1抗体(3mg/kg)を示す。 30
【図33G】図33Gは、抗PD−1抗体(10mg/kg)を示す。
【図33H】図33Hは、抗PD−1抗体(10mg/kg)および抗CTLA−4抗体
(0.25mg/kg)を示す。
【図33I】図33Iは、抗PD−1抗体(10mg/kg)および抗CTLA−4抗体
(0.5mg/kg)を示す。
【図33J】図33Jは、抗PD−1抗体(3mg/kg)および抗CTLA−4抗体(
0.5mg/kg)を示す。
【図34】図33に示したマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図35】図33に示したマウスの腫瘍容積中央値を示している。
【図36】図36A∼36Bは、SA1/NA線維肉腫細胞(PD−L1-)を移植し、 40
その後、移植後第10、13、16および19日に下記の処方の一つで(実施例17に記
載のように)処置したマウスにおける経時的腫瘍容積を示している:(A)マウスIgG
(抗体対照、10mg/kg)、または(B)抗PD−1抗体(10mg/kg)および
抗CTLA−4抗体(1mg/kg)。処理第1日の腫瘍容積は、約250mm3であっ
た。
【図37】図36に示したマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図38】図36に示したマウスの腫瘍容積中央値を示している。
【図39】図33および図36に示した腫瘍容積から計算された腫瘍阻害平均率および中
央値を示している。
【図40A】図40A∼40Dは、RENCA腎アデノカルシノーマ細胞(PD−L1+ 50
(15) JP 6975733 B2 2021.12.1

)を皮下移植し(Murphy and Hrushesky(1973)J.Nat'l


.Cancer Res.50:1013−1025)(第12日)、次に、移植後第0
、3、6および9日において下記の処理のうちのひとつで腹腔内治療したBALB/cマ
ウスにおける腫瘍容積を示している。処理第1日の腫瘍容積は、約115mm3であった
。図40Aは、マウスIgG(抗体対照、20mg/kg)で処置した結果を示す。
【図40B】図40Bは、抗PD−1抗体(10mg/kg)で処置した結果を示す。
【図40C】図40Cは、抗CTLA−4抗体(10mg/kg)で処置した結果を示す

【図40D】図40Dは、抗CTLA−4抗体(10mg/kg)と抗PD−1抗体(1
0mg/kg)との併用で処置した結果を示す。 10
【図41】マウスPD−L2−Fc融合タンパク質のマウスPD−1(mPD−1)に対
する結合が、抗mPD−1抗体4H2により、用量依存的に阻害されることを示している
。結合は、FITC−標識ロバ−抗ラットIgGの蛍光をELISAにより測定すること
によって検出する。MFI(平均蛍光強度)が高ければ高いほど結合も強い。
【図42】固定化mPD−1−Fc融合タンパク質に対する抗mPD−1抗体のELIS
Aによる結合曲線を示している。
【図43】mPD−1−発現CHO細胞に対するラット抗mPD−1抗体4H2.B3の
結合曲線を示している。結合は、FITC結合ロバ抗ラットIgGにより検出し、FAC
S(MFI)により測定した。
【図44】高濃度抗mPD−1抗体4H2.B3の存在下における、mPD−1発現CH 20
O細胞に対するmPD−L1−hFc融合タンパク質の結合曲線を示している。結合は、
FITC結合ヤギ抗ヒトIgGにより検出し、FACS(MFI)により測定した。
【図45】キメララット:マウス抗mPD−1抗体4H2に比較して、mPD−1発現C
HO細胞に対するラット抗mPD−1抗体4H2.B3の結合曲線を示している。
【図46】高濃度mPD−1抗体4H2.B3またはキメララット:マウス抗mPD−1
抗体4H2の存在下における、mPD−1発現CHO細胞に対するmPD−L1−hFc
融合タンパク質の結合曲線を示している。
【図47】抗PD−1抗体で先に処理し、SA1/N線維肉腫細胞(PD−L1-)で再
チャレンジした腫瘍を有さないマウスの平均腫瘍容積を示している。また、SA1/N線
維肉腫細胞を移植した未処理マウス(対照、先にチャレンジまたは処理を受けていない) 30
の平均腫瘍容積を示した。
【図48】MC38結腸細胞癌移植(PD−L1-)を移植し、抗PD−1抗体または抗
CTLA−4抗体と抗PD−1抗体との併用による処理を受けた後も無腫瘍で生存し、最
初の処理よりも10倍以上のMC38結腸腫瘍細胞で再チャンレジしたマウスのそれぞれ
における経時的腫瘍容積を示している。また、MC38結腸腫瘍細胞を移植した未処理マ
ウス(対照、先にチャレンジまたは処理を受けていない)の平均腫瘍容積を示した。
【図49】図48におけるマウスの平均腫瘍容積を示している。
【図50】CT26結腸腫瘍細胞を移植したマウスのそれぞれの平均腫瘍容積を示す。
【図51】図51A−Bは、ヒトPD−1に対するヒトモノクローナル抗体がT制御細胞
を含む培養物中においてT細胞増殖とIFN−γ分泌を促進することを明らかにした実験 40
結果を示している。図51Aは、濃度依存的なT細胞増殖をHuMAb 5C4を用いて
示した棒グラフを示している。図51Bは、濃度依存的なIFN−γ分泌をHuMAb
5C4を用いて示した棒グラフを示している。
【図52】図52A−Bは、ヒトPD−1に対するヒトモノクローナル抗体が活性化T細
胞を含む培養物中においてT細胞増殖とIFN−γ分泌を促進することを明らかにした実
験結果を示している。図52Aは、濃度依存的なT細胞増殖をHuMAb 5C4を用い
て示した棒グラフを示しており、図52Bは、濃度依存的なIFN−γ分泌をHuMAb
5C4を用いて示した棒グラフを示している。
【図53】ヒトモノクローナル抗PD−1抗体がヒト活性化T細胞をADCC濃度依存的
に死滅させることを明らかにした抗体依存性細胞傷害(ADCC)の結果を、抗PD−1 50
(16) JP 6975733 B2 2021.12.1

抗体のFc領域と関連させて示した。
【図54】ヒトモノクローナル抗PD−1抗体がヒト活性化T細胞をCDC濃度依存的に
死滅させないことを明らかにした補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイの結果を示した

【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、一面において、PD−1に特異的に結合する単離したモノクローナル抗体、
特に、ヒトモノクローナル抗体に関する。ある態様において、本発明の抗体は、PD−1
に対する高親和性結合、他のCD28ファミリーメンバーに対する交差反応性の欠如、T
細胞増殖刺激能、混合リンパ球反応におけるIFN−γおよび/またはインターロイキン 10
−2(IL−2)分泌を刺激する能力、1個以上のPD−1リガンド(例えば、PD−L
1および/またはPD−L2)の結合阻害能力、カニクイザルPD−1との交差反応能力
、抗原特異的記憶応答を刺激する能力、抗体応答刺激能力および/またはインビボにおけ
る腫瘍細胞増殖阻害能力のような1個以上の望ましい機能的性質を有している。さらにま
たはこれとは別に、本発明の抗体は、特定の重鎖および軽鎖生殖細胞型配列に由来してい
るかおよび/または特定のアミノ酸配列を含むCDR領域のような特定の構造的特徴を有
している。別の面において、本発明は、PD−1に特異的に結合するモノクローナル抗体
とCTLA−4に特異的に結合するモノクローナル抗体の併用に関する。
【0049】
本発明は、例えば、単離抗体、当該抗体を作製する方法、当該抗体を含む免疫複合物お 20
よび二重特異性分子、および本発明の当該抗体、免疫複合物または二重特異性分子を含有
する薬剤組成物を提供する。
【0050】
別の面において、本発明は、抗PD−1抗体を用いて被験者における腫瘍細胞増殖を阻
害する方法に関する。本文に明らかにしたように、抗PD−1抗体は、インビボにおいて
腫瘍細胞増殖を阻害できる。本発明は、また、免疫応答調節ならびに癌または感染性疾患
のような疾患治療または防御的自己免疫応答刺激または(例えば、問題の抗原とともに抗
PD−1抗体を同時投与することによって)抗原特異的免疫応答を刺激するための当該抗
体を用いた方法に関する。
【0051】 30
本発明をさらに容易に理解できるようにするため、用語を最初に定義する。詳細な説明
において、追加の定義を述べる。
【0052】
用語“Programmed Death 1”、“Programmed Cell D
eath 1”、“タンパク質PD−1”、“PD−1”、“PD1”、“PDCD1”
、“hPD−1”および“hPD−1”は、相互に交換使用され、ヒトPD−1の改変体
、アイソフォーム、種ホモログ、およびPD−1と少なくとも1個の共通エピトープを有
するアナログを含む。完全なPD−1配列は、GenBank登録番号U64863で同
定される。
【0053】 40
用語“細胞毒性Tリンパ球関連抗原−4”、“CTLA−4”、“CTLA4”、“C
TLA−4抗原”および“CD152”(例えば、Murata,Am.J.Patho
l.(1999)155:453−460を参照)は、相互に交換使用され、ヒトCTL
A−4の改変体、アイソフォーム、種ホモログ、およびCTLA−4と少なくとも1個の
共通エピトープを有するアナログを含む。完全なCTLA−4配列は、GenBank登
録番号L15006で同定される(例えば、Balzano,Int.J.Cancer
Suppl.(1992)7:28−32を参照)。
【0054】
用語“免疫応答”とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、およびそ
れら細胞または肝臓によって産生された可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体 50
(17) JP 6975733 B2 2021.12.1

を含む)の作用を称し、その結果、病原体感染、細胞若しくは病原体に侵された組織、癌
性細胞の人体からの選択的傷害、その破壊若しくは撲滅、または自己免疫若しくは病原性
炎症の場合には、正常ヒト細胞若しくは組織の選択的傷害、破壊または撲滅が起こる。
【0055】
“シグナル伝達経路”とは、細胞のある部分から細胞の別の部分への信号伝達において
役割を果たしている様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を称している。本文では、
“細胞表面レセプター”という文言には、例えば、細胞の形質膜を横断して信号を受けと
り、この信号を伝達できる分子および分子の複合体が含まれるものとして使用する。本発
明の“細胞表面レセプター”の場合には、PD−1レセプターがある。
【0056】 10
用語“抗体”は、本文では、全長抗体およびそのいかなる抗原結合断片(すなわち、“
抗原結合部分”)またはその一重鎖を含むものとして使用する。“抗体”は、ジスルフィ
ド結合で連結された少なくとも2個の重鎖(H)と2個の軽鎖(L)を含む糖タンパク質
またはその抗原結合部分を称する。各重鎖は、重鎖可変領域(本文においてVHと略す。
)と重鎖定常領域とから構成されている。重鎖定常領域は、3個のドメインCH1、CH
2およびCH3から構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本文においてVLと略す
。)と軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、1個のドメインCLで構成さ
れている。VHおよびVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と称される変異性の
高い領域に小分割され、それらには、フレームワーク領域(FR)と称されより保存性の
高い領域が散在している。各VHおよびVLは、3個のCDRと4個のFRで構成され、 20
下記の順序、すなわち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR
4でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置されている。当該重鎖および軽鎖の可変領域は
、抗原と相互作用する結合ドメインを含んでいる。抗体の定常領域は、イムノグロブリン
の宿主組織または因子への結合を媒介でき、それらには、免疫系の様々な細胞(例えば、
エフェクター細胞)および旧来の補体系の第1成分(C1q)が含まれる。
【0057】
ここで用いられる抗体の“抗原結合部分”(または、単に“抗体部分”)という用語は
、本文において、特異的に抗原(例えば、PD−1)に結合する能力を保持する抗体の1
個以上の断片を称するものとして使用する。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によっ
て行われることが明らかとなっている。抗体の“抗原結合部分”という用語に含まれる結 30
合断片の例として、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから構成される1価の
断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域中ジスルフィド架橋で結合した2個のFab
断片を含む2価の断片であるF(ab´)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメイン
から構成されるFd断片、(iv)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインで構
成されるFv断片、(v)VHドメインから構成されるdAb断片(Wardら、(19
89)Nature 341:544−546)、および(vi)単離相補性決定領域(
CDR)を含む。さらに、Fv断片の2個のドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝
子によりコードされているが、それらは、組み換え技術を用いてそれらを単一タンパク質
鎖として作製できる合成リンカーにより連結でき、この鎖中では、VLおよびVH領域が
対となって1価の分子を形成する(単一鎖のFv(scFv)。Birdら(1988) 40
Science 242:423−426;およびHustonら、(1988)Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883)。このような単
一鎖の抗体も、抗体の“抗原結合部分”という用語に含まれる。これらの抗体断片は、当
業者に公知の従来の技術を用いて得られ、当該断片について、未改変抗体の場合と同様に
有用性を求めてスクリーニングされる。
【0058】
ここでは、“単離抗体”とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない
抗体を称する(例えば、PD−1に特異的に結合するが、PD−1以外の抗原に特異的に
結合する抗体を実質的に含まない)ものとして使用する。しかし、PD−1に特異的に結
合する単離抗体は、他の種由来のPD−1のような他の抗原に対する交差反応性を有する 50
(18) JP 6975733 B2 2021.12.1

こともある。さらに、単離抗体は、実質的に他の細胞性物質および/または化学物質を含
まない。
【0059】
ここでの“モノクローナル抗体”または“モノクローナル抗体組成物”という用語は、
単一分子組成物の抗体分子の調製物を称するものとして使用する。モノクローナル抗体組
成物は、特定のエピトープに対して単一結合特異性と親和性を示す。
【0060】
ここでの“ヒト抗体”という用語とは、フレームワークとCDR領域の両方ともにヒト
生殖細胞型免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むものとして使用す
る。さらに、もし抗体が定常領域を含むならば、この定常領域もヒト生殖細胞型イムノグ 10
ロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞型イムノグロブリン配列に
よってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダムまたは部位特
異的変異誘発またはインビボにおける体細胞変異により導入される変異)も含むものとす
る。しかし、ここでは、“ヒト抗体”という用語は、マウスのような別の哺乳種の生殖細
胞型に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に融合させた抗体も含むことを意
図していない。
【0061】
“ヒトモノクローナル抗体”という用語は、単一結合特異性を示す抗体を称し、フレー
ムワークおよびCDR領域の両者ともにヒト生殖細胞型イムノグロブイン配列に由来する
可変領域を有している。1つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、形質 20
転換マウスのような不死化細胞に融合させたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を
含むゲノムを有する形質転換非ヒト動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマによっ
て産生される。
【0062】
ここでの“組み換えヒト抗体”という用語、(a)ヒトイムノグロブイン遺伝子のため
に形質転換またはトランス染色体されている動物(例えば、マウス)から単離された抗体
、またはそれらから調製したハイブリドーマから単離した抗体(以下にさらに明記される
)、(b)ヒト抗体発現のために形質転換した宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマ
から単離した抗体、(c)組み換え、組み合わせヒト抗体ライブラリーから単離した抗体
、および(d)ヒトイムノグロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングする 30
ことを含む他の全ての手段によって調製、発現、創製または単離した抗体のような組み換
え手段によって、調製、発現、創製または単離した全てのヒト抗体を含む。このような組
み換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR配列がヒト生殖細胞型イムノグロブリン
配列に由来している可変領域を有している。しかし、ある態様においては、このような組
み換えヒト抗体をインビトロ変異誘発処理(または、ヒトIg配列のために形質転換処理
した動物を使用する際には、インビボ体細胞変異誘発処理)に供することができ、したが
って、組み換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列はヒト生殖細胞型VHおよびV
L配列に由来し、それに関連しているもののインビボでヒト抗体生殖細胞型レパートリ内
部に天然には存在しないであろう配列である。
【0063】 40
ここでの“アイソタイプ”とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス
(例えば、IgMまたはIgG1)を称するものとして使用する。
【0064】
“抗原認識抗体”および“抗原特異的抗体”という用語は、ここで、用語“抗原に特異
的に結合する抗体”と相互に使用する。
【0065】
“ヒト抗体誘導体”という用語とは、ヒト抗体と別の物質または抗体との複合物のよう
なヒト抗体の全ての修飾形状を称する。
【0066】
“ヒト化抗体”という用語は、マウスのような別の哺乳種の生殖細胞型に由来するCD 50
(19) JP 6975733 B2 2021.12.1

R配列をヒトフレームワーク配列上に移植した抗体を称する。追加のフレームワーク領域
改変も、ヒトフレームワーク配列内部で行うこともできる。
【0067】
“キメラ抗体”という用語は、可変領域配列が1種に由来し、定常領域配列が別の種に
由来する抗体を称し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト
抗体に由来する抗体である。
【0068】
ここでは、“ヒトPD−1に特異的に結合する”抗体とは、ヒトPD−1に対してKD
が1×10−7M以下、さらに好適には、KDが5×10−8M以下で結合し、さらに好
適には、KDが1×10−8M以下で結合し、さらに好適には、KDが5×10−9M以 10
下で結合する抗体を称するものとして使用する。
【0069】
“Kassoc”または“Ka”という用語は、ここでは、特定抗体−抗原相互作用の
結合速度を称し、一方、用語“Kdis”または“Kd”は、ここでは、特定抗体−抗原
相互作用の解離速度と称する。本文では、用語“KD”は、当該解離速度と称するが、そ
れは、“Ka”に対する“Kd”の比率(すなわち、Kd/Ka)から算出され、モル濃
度(M)で表される。抗体のKd値は、当該技術で確立した手法により決定できる。抗体
のKD決定のための好適な方法は、表面プラズマ共鳴を用いることによって、好適にはB
iacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムを用いることによる
。 20
【0070】
本文では、IgG抗体についての用語“高親和性”とは、KDが10−8M以下、好適
には10−9M以下、さらに好適には10−10M以下の標的抗原に対するKDを有する
抗体を称するものとして使用する。しかし、“高親和性”結合は、他の抗体アイソタイプ
に対しては変動する。例えば、IgMアイソタイプに対する“高親和性”結合は、KDが
10−7M以下、さらに好適には10−8M以下、さらに好適には10−9M以下のKD
を有する抗体を称する。
【0071】
用語“治療”または“療法”は、症状(例えば、疾患)、その症状の兆候を治癒し、癒
し、緩和し、軽減し、改善し、治療し、改善し、改良し若しくは処置するため、疾患の症 30
状、合併症、生化学的指標の発生を予防しもしくは遅らせるため、またはそうでない場合
には当該疾患、症状若しくは疾患のそれ以上の発生を統計的に有意に停止させるかもしく
は阻害するために活性物質を投与することを称する。
【0072】
ここでは、“有害事象”(AE)とは、医療を用いることに関連したすべての好ましく
なくかつ一般的には故意でなく、さらには望ましくない症候(臨床検査所見異常を含む)
、症状または疾患として使用する。例えば、有害事象とは、治療に応答しての免疫系の活
性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の拡大に関連していることもある。医療には1
種以上のAEを伴うことがあり、各AEは、重篤度が同一であることも異なることもある
。“有害事象を改善できる”方法とは、異なる医療レジメ使用に関連した1種以上のAE 40
の頻度および/または重篤度を低下させる医療レジメを意味する。
【0073】
ここでは、“高増殖性疾患”とは、細胞増殖が正常レベルを超える状態を称するものと
して使用する。例えば、高増殖性疾患または障害には、悪性疾患(例えば、食道癌、結腸
癌、胆のう癌)および非悪性疾患(例えば、アテローム硬化症、良性過形成、良性前立腺
肥大)が含まれる。
【0074】
ここでは、“治療量以下”とは、高増殖性疾患(例えば、癌)治療に単独で投与した際
治療化合物の通常量または典型的量よりも低い当該治療化合物(例えば、抗体)の投与量
を意味するものとして使用する。例えば、CTLA−4抗体の治療量以下とは、抗CTL 50
(20) JP 6975733 B2 2021.12.1

A−4抗体の公知量である約3mg/kg未満の抗体1回量を称するものとして使用する

【0075】
別のという意味の語句(例えば、“または”)を使用したときには、代替物のいずれか
ひとつ、両者またはそのいかなる組み合わせをも意味するものと理解する。本文では、不
定冠詞“a”または“an”とは、全ての記述したまたは数え上げた成分の“1個以上”
を称するものと理解されたい。
【0076】
ここでは、“約”または“基本的に含む”とは、当業者が決定した特定値の許容可能な
誤差範囲内部にあることを意味し、その値がどのようにして測定または決定されたか、す 10
なわち、測定系の限界に部分的に依存する。例えば、“約”または“基本的に含む”とは
、1または当技術で1回当たりの1標準偏差以上の範囲内であることを意味することがで
きる。これとは別に、“約”または“基本的に含む”とは、20%までの範囲を意味する
こともできる。さらに、生物系システムまたはプロセスに関する場合、特に、当該用語は
、大きさが一桁大きいかまたは値の5倍までを意味することができる。特定値が明細書お
よびクレームで述べられており、他に断りがなければ、“約”または“基本的に含む”の
意味は、その特定値の許容できる誤差範囲内部にあるとみなすべきである。
【0077】
ここでは、全ての濃度範囲、百分率範囲、比率範囲または整数範囲は、記載の範囲内部
の全ての整数値を含むものとみなすべきであり、他に断りがなければ、適当である場合に 20
は、その端数(整数の10分の1とか100分の1)も含む。
【0078】
ここでは、“被験者”という用語は、全てのヒトまたは非ヒト動物を含むものとして使
用する。用語“非ヒト動物”とは、非ヒト霊長、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワ
トリ、両生、爬虫等のような哺乳および非哺乳のような全ての脊椎動物を含む。断りがあ
るとき以外には、用語“患者”または“被験者”は相互交換して使用する。
【0079】
本発明の様々な面を、さらに下記の細区分で詳細に説明する。
【0080】
抗PD−1抗体 30
本発明の抗体は、抗体の特定の機能的特徴または性質によって特徴づけられる。例えば
、当該抗体は、PD−1に特異的に結合する(例えば、ヒトPD−1に結合し、カニクイ
ザルのような他の種由来のPD−1に交差反応できる)。好適には、本発明の抗体はヒト
PD−1に対してKDが1×10−7以下の高親和性で結合する。本発明の抗PD−1抗
体は、好適には下記の性質を1個以上示す。
(a)KDが1×10−7M以下でヒトPD−1に結合する。
(b)ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない。
(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を上昇させる。
(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる。
(e)MLRアッセイにおいてインターロイキン−2(IL−2)分泌を増加させる。 40
(f)ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する。
(g)PD−L1および/またはPD−L2のPD−1に対する結合を阻害する。
(h)抗原特異的記憶応答を刺激する。
(i)抗体応答を刺激する。
(j)腫瘍細胞増殖をインビボで阻害する。
【0081】
好適には、当該抗体は、ヒトPD−1に対してKDが5×10−8M以下で結合し、ヒ
トPD−1に対してKDが1×10−8M以下で結合し、ヒトPD−1に対してKDが5
×10−9M以下で結合し、またはヒトPD−1に対してKD1×10−8M∼KD1×
10−10Mで結合する。 50
(21) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0082】
本発明の抗体は、上記特徴のうちの2個、3個、4個または5個以上の上記特徴のいか
なる組み合わせをも示すことができる。
【0083】
PD−1抗体の結合能を評価するための標準的アッセイが当該技術で公知であり、例え
ば、ELISA、ウェスタンブロットおよびRIAを含む。当該抗体の結合動態(例えば
、結合親和性)もまた、ビアコア(Biacore)分析のような当該技術で公知の標準
的アッセイによって評価できる。上述の特徴のいずれを評価するための適切なアッセイは
、実施例において詳細に記載されている。
【0084】 10
モノクローナル抗体17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4
本発明の好適な抗体は、実施例1と2に述べたように単離および構造解析したヒトモノ
クローナル抗体17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4であ
る。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のVHアミノ酸
配列は、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、6および7である。17D8、2D3、
4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のVLアミノ酸配列は、それぞれ配列番
号8、9、10、11、12、13および14である。
【0085】
これらの抗体がそれぞれPD−1に結合できるとすると、このVHおよびVL配列を“
混合して適合させ”、本発明の他の抗PD−1結合分子を作製できる。このような“混合 20
適合させた”抗体のPD−1結合は、上記に述べ実施例にも述べた結合アッセイ(例えば
、ELISA)によって試験できる。好適には、VHおよびVL鎖を混合適合させ、特定
のVH/VL対由来のVH配列を構造的に類似のVH配列で置き換える。同様に、特定の
VH/VL対由来のVL配列を構造的に類似のVL配列で置き換える。
【0086】
したがって、一面において、本発明は、
(a)配列番号1、2、3、4、5、6および7から構成される群から選択されたアミノ
酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号8、9、10、11、12、13および14から構成される群から選択さ
れたアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域 30
を含み、抗体が、PD−1、好適には、ヒトPD−1に特異的に結合する単離モノクロー
ナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0087】
好適な重鎖および軽鎖組み合わせには:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または 40
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または
(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および 50
(22) JP 6975733 B2 2021.12.1

(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含むか、または
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域および
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域
を含む。
【0088】
別の面において、本発明は、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3お
よび5F4またはその組み合わせの重鎖および軽鎖CDR1、CDR2、CDR3を含む
抗体を提供する。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4の
VHCDR1のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号15、16、17、18、19、20 10
および21に示した。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F
4のVHCDR2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号22、23、24、25、26、
27および28に示した。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および
5F4のVHCDR3のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号29、30、31、32、3
3、34および35に示した。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3お
よび5F4のVKCDR1のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号36、37、38、39
、40、41および42に示した。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D
3および5F4のVKCDR2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号43、44、45、
46、47、48および49に示した。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、
7D3および5F4のVKCDR3のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号50、51、5 20
2、53、54、55および56に示した。当該CDR領域は、Kabatシステム(K
abat,E.A.ら,(1991)Sequences of Proteins of
Immunological Interest,第5版、米国保健・保健省、NIH発
行、第91−3242号)を用いて描いた。
【0089】
これらの抗体のそれぞれがPD−1に結合できることおよび抗原結合特異性が主にCD
R1、CDR2およびCDR3領域によって提供されるならば、VH CDR1、CDR
2およびCDR3配列とVk CDR1、CDR2およびCDR3配列を“混合して適合
させ”(すなわち、各抗体はVH CDR1、CDR2およびCDR3とVK CDR1、
CDR2およびCDR3を含まなければならないが、異なる抗体由来のCDRを混合適合 30
させることができる)本発明の他の抗PD−1結合分子を作製できる。このような“混合
適合させた”抗体のPD−1結合は、上記に述べ実施例にも述べた結合アッセイ(例えば
、ELISA、ビアコア分析)によって試験できる。好適には、VH CDR配列を混合
適合させ、特定のVH配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3は構造的に
類似のCDR配列で置き換える。同様にVKCDR配列を混合適合させ、特定のVK配列
由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3は構造的に類似のCDR配列()で置
き換える。新規のVHおよびVL配列をモノクロナール抗体17D8、2D3、4H1、
5C4、4A11、7D3および5F4についてここで開示したCDR配列由来の構造的
に類似の配列で、1個以上のVHおよび/またはVLCDR領域を置き換えることによっ
て作製できることは当業者には明らかであろう。 40
【0090】
したがって、別の態様において、本発明はさらに:
(a)配列番号15、16、17、18、19、20および21から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号22、23、24、25、26、27および28から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号29、30、31、32、33、34および35から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号36、37、38、39、40、41および42から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1; 50
(23) JP 6975733 B2 2021.12.1

(e)配列番号43、44、45、46、47、48および49から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;
(f)配列番号50、51、52、53、54、55および56から構成される群から選
択されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含み、抗体がPD−1に、好適にはヒトPD−1に特異的に結合する単離モノクローナ
ル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0091】
好適な態様において、当該抗体は
(a)配列番号15を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号22を含む重鎖可変領域CDR2、 10
(c)配列番号29を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号43を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号50を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0092】
別の好適な態様において、当該抗体は
(a)配列番号16を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号23を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号30を含む重鎖可変領域CDR3、 20
(d)配列番号37を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号44を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号51を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0093】
さらに別の好適な態様において、当該抗体は
(a)配列番号17を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号24を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号31を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号38を含む軽鎖可変領域CDR1、 30
(e)配列番号45を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号52を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0094】
別の好適な態様において、当該抗体は
(a)配列番号18を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号25を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号32を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号39を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号46を含む軽鎖可変領域CDR2および 40
(f)配列番号53を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0095】
別の好適な態様において、当該抗体は
(a)配列番号19を含む重鎖可変領域CDR1、
(b)配列番号26を含む重鎖可変領域CDR2、
(c)配列番号33を含む重鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号40を含む軽鎖可変領域CDR1、
(e)配列番号47を含む軽鎖可変領域CDR2および
(f)配列番号54を含む軽鎖可変領域CDR3 50
(24) JP 6975733 B2 2021.12.1

を含む。
【0096】
特定の生殖細胞型配列を有する抗体
ある態様において、本発明の抗体は、特定の生殖細胞型重鎖イムノグロブリン遺伝子由
来の重鎖可変領域および/または特定の生殖細胞型軽鎖イムノグロブリン遺伝子由来の軽
鎖可変領域を含む。
【0097】
例えば、好適な態様において、本発明は、ヒトVH3−33遺伝子の産物であるかまた
はそれに由来する重鎖可変領域を含み、抗体がPD−1に、好適にはヒトPD−1に特異
的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。別の好適な態 10
様において、本発明は、ヒトVH4−39遺伝子の産物であるかまたはそれに由来する重
鎖可変領域を含み、抗体がPD−1に、好適にはヒトPD−1に特異的に結合する単離モ
ノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。さらに、好適な態様において、本
発明は、ヒトVKL6遺伝子の産物であるかまたはそれに由来する軽鎖可変領域を含み、
抗体がPD−1に、好適にはヒトPD−1に特異的に結合する単離モノクローナル抗体ま
たはその抗原結合部分を提供する。さらに、別の好適な態様において、本発明は、ヒトV
KL15遺伝子の産物であるかまたはそれに由来する軽鎖可変領域を含み、抗体がPD−
1に、好適にはヒトPD−1に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原
結合部分を提供する。さらに、好適な態様において、本発明は、抗体が
(a)ヒトVH3−33または4−39遺伝子(この遺伝子は、それぞれ配列番号71ま 20
たは73に記載のアミノ酸配列をコードする)の産物であるかまたはそれに由来する重鎖
可変領域を含み、
(b)ヒトVKL6またはL15遺伝子(この遺伝子は、それぞれ配列番号72または7
4に記載のアミノ酸配列をコードする)の産物であるかまたはそれに由来する軽鎖可変領
域を含み、
(c)PD−1に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提
供する。
【0098】
VH3−33およびVKL6のVHおよびVKをそれぞれ有する抗体の例としては、1
7D8、2D3、4H1、5C4および7D3である。VH4−39とVKL15のVH 30
およびVKをそれぞれ有する抗体例は、4A11および5F4である。
【0099】
ここでは、ヒト抗体は、この抗体の可変領域がヒト生殖細胞型イムノグロブリン遺伝子
を用いるシステムから得られるならば、特定の生殖細胞型配列の“産物”であるかまたは
“それに由来する”重鎖または軽鎖可変領域を含む。このようなシステムには、ヒトイム
ノグロブイン遺伝子を有する形質転換マウスを問題の抗原で免疫するかまたはファージデ
ィスプレイヒトイムノグロブリン遺伝子ライブラリーを問題の抗原でスクリーニングする
ことを含む。ヒト生殖細胞型イムノグロブイン配列の“産物”であるかまたは“それに由
来する”ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞型イムノグロブリンのアミ
ノ酸配列と比較し、配列上ヒト抗体配列に最も近い(即ち最大同一性%)ヒト生殖細胞型 40
イムノグロブリン配列を選択することによって、そのものとして同定できる。ヒト生殖細
胞型イムノグロブイン配列の“産物”であるかまたは“それに由来する”ヒト抗体は、例
えば、天然の体細胞変異または意図的な部位特異的変異導入によって、生殖細胞型配列と
比較して相違するアミノ酸を含有することもできる。しかし、選択したヒト抗体は典型的
には、アミノ酸配列上、ヒト生殖細胞型イムノグロブリン遺伝子によってコードされるア
ミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、他の種(例えば、マウス生殖細胞型配列)の
生殖細胞型イムノグロブインアミノ酸配列と比較した際、ヒトのものであるとヒト抗体を
特定するアミノ酸残基を含んでいる。ある場合には、ヒト抗体は、少なくともアミノ酸配
列上、ヒト生殖細胞型イムノグロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少な
くとも95%同一であるかまたは少なくとも96%、97%、98%または99%同一で 50
(25) JP 6975733 B2 2021.12.1

あることもある。典型的には、特定のヒト生殖細胞型配列に由来するヒト抗体は、ヒト生
殖細胞型イムノグロブイン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10個以下のアミ
ノ酸の相違を示す。ある場合には、当該ヒト抗体は、ヒト生殖細胞型イムノグロブイン遺
伝子によってコードされるアミノ酸配列と5個以下、または4、3、2または1個以下の
アミノ酸差を示す。
【0100】
相同抗体
さらに別の態様において、本発明の抗体は、ここに記載の好適な抗体のアミノ酸配列に
相同のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、当該抗体は、本発明
の抗PD−1抗体の望ましい機能的性質を保持している。 10
【0101】
例えば、本発明は、
(a)重鎖可変領域は、配列番号1、2、3、4、5、6および7から構成される群から
選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同のアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変領域は、配列番号8、9、10、11、12、13および14から構成さ
れる群から選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同のアミノ酸配列を含み
、当該抗体が下記の性質:
(c)KD1×10−7M以下でヒトPD−1に結合する、
(d)ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない、
(e)MLRアッセイにおいてT細胞増殖を増大させる、 20
(f)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる、
(g)MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる、
(h)ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する、
(i)PD−L1および/またはPD−L2のPD−1に対する結合を阻害する、
(j)抗原特異的記憶応答を刺激する、
(k)抗体応答を刺激する、
(l)腫瘍細胞増殖をインビボで阻害する、
のうちの1個以上を示す重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む単離モノクローナル抗体また
はその抗原結合部分を提供する。
【0102】 30
他の態様において、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、上述の配列に対して85
%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相同であってもよい。上述の
配列のVHおよびVL領域に対して高い(すなわち、80%以上)相同性を有するVHお
よびVL領域を有する抗体は、配列番号57、58、59、60、61、62、63、6
4、65、66、67、68、69および70をコードする核酸分子の変異誘発性(例え
ば、部位特異的またはPCR媒介性変異誘発性)によって得ることができ、その後、機能
(すなわち、上記(c)から(l)に記載の機能)保持については、ここに説明した機能
的アッセイを用いて、コードされた改変抗体を試験する。
【0103】
本文に述べたように、2つのアミノ酸配列間の相同性百分率は、その2つの同一性百分 40
率と同じである。2つの配列間の同一性百分率は、その2つの配列を最適に配列させるた
めに導入する必要のあるギャップ数および各ギャップの長さを考慮して、当該配列が共有
する同一位置の数の関数である(すなわち、相同性%=#同一位置の数/#総位置数×1
00)。配列比較と2つの配列の同一性百分率の決定は、下記の非限定的な事例に述べた
ように、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。
【0104】
2個のアミノ酸配列の同一性百分率は、ALIGNプログラムに取り入れたE.Mey
ersとW.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4:11−17
(1988))のアルゴリズムを用いて、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペ
ナルティと4のギャップペナルティを用いて決定できる。さらに、2つのアミノ酸配列の 50
(26) JP 6975733 B2 2021.12.1

同一性百分率は、GCGソフトウェアパッケージ(1151649245004_0で入手可能)におい
てGAPプログラムに取り入れたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.
Biol.48:444−453(1970))アルゴリズムを用いて、Blossum
62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、16、14、12、10
、8、6または4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5または6の長さ重みを用いて
決定できる。
【0105】
さらにまたはこれとは別に、本発明のタンパク質配列は、公表されたデータベースに対
してサーチを行うための“クエリー配列”としてさらに用い、例えば、関連配列の同定の
ために使用することができる。このようなサーチは、Altschulら(1990)J 10
.Mol.Biol.215:403−10のXBLASTプログラム(ヴァージョン2
.0)を用いて実行できる。BLASTタンパク質サーチは、XBLASTプログラム、
スコア=50、ワードレングス=3を用いて実行して、本発明の抗体分子に相同のアミノ
酸配列を得ることができる。比較目的のためギャップ付きのアラインメントを得るため、
Gapped BLASTを、Altschulら(1997)、Nucleic Aci
ds Res.25(17):3389−3402に記載のように用いることができる。
BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる際、それぞれのプログラ
ム(例 XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用できる(ww
w.ncbi.nlm.nih.gov.を参照)。
【0106】 20
保存的修飾体を有する抗体
ある態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重
鎖可変領域とCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで
、これらのCDR配列の1つ以上は、ここに記載の好適な抗体に基づく特定のアミノ酸配
列(例えば、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4)また
はその保存的修飾体を含み、かつ、当該抗体は、本発明の抗PD−1抗体の望ましい機能
的性質を保持している。したがって、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列
を含む重鎖可変領域とCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み

(a)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号29、30、31、32、33、34およ 30
び35のアミノ酸配列およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸
配列を含み、
(b)軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号50、51、52、53、54、55およ
び56のアミノ酸配列およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸
配列を含み、
抗体が下記の性質:
(c)抗体が、KD1×10−7M以下でヒトPD−1に結合する、
(d)抗体が、ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない、
(e)抗体が、MLRアッセイにおいてT細胞増殖を上昇させる、
(f)抗体が、MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる、 40
(g)抗体が、MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる、
(h)抗体が、ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する、
(i)抗体が、PD−L1および/またはPD−L2のPD−1に対する結合を阻害する

(j)抗体が、抗原特異的記憶応答を刺激する、
(k)抗体が、抗体応答を刺激する、
(l)抗体が、腫瘍細胞増殖をインビボで阻害する、
のうちの1個以上を示す単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0107】
好適な態様において、当該重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号22、23、24、 50
(27) JP 6975733 B2 2021.12.1

25、26、27および28のアミノ酸配列およびその保存的修飾体から構成される群か
ら選択されたアミノ酸配列を含み、当該軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号43、4
4、45、46、47、48および49のアミノ酸配列およびその保存的修飾体から構成
される群から選択されたアミノ酸配列を含む。別の好適な態様において、当該重鎖可変領
域CDR1配列は、配列番号15、16、17、18、19、20および21のアミノ酸
配列およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配列を含み;当該
軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号36、37、38、39、40、41および42
のアミノ酸配列およびその保存的修飾体から構成される群から選択されたアミノ酸配列を
含む。
【0108】 10
ここでは、“保存配列修飾”とは、当該アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影
響を及ぼさないかまたは改変しないアミノ酸修飾を称するものとして使用する。このよう
な保存的修飾体には、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、本発明の抗体に、
部位特異的変異およびPCR媒介性変異のような当該技術で公知の標準的手法により導入
できる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸で置き換え
ることをいう。類似側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術で定義されている
。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン
、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)
、非電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セ
リン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミ 20
ノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニ
ン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イ
ソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニ
ン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域
内部の1つ以上のアミノ酸残基は、同一側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換える
ことができ、改変した抗体は、本文に述べた機能的アッセイを用いて保持機能(すなわち
、上記の(c)から(l)に述べた機能)について試験できる。
【0109】
本発明の抗PD−1抗体と同一エピトープに結合する抗体
別の態様において、本発明は、本発明のPD−1モノクローナル抗体のいずれかと同一 30
のヒトPD−1上エピトープに結合する抗体(すなわち、本発明のモノクローナル抗体の
いずれかとPD−1結合を交差競合する能力を有する抗体)を提供する。好適な態様にお
いて、交差競合研究の参考抗体は、モノクローナル抗体17D8(それぞれ配列番号1お
よび8に示したようなVHおよびVLを有する)、またはモノクローナル抗体2D3(そ
れぞれ配列番号2および9に示したようなVHおよびVLを有する)、またはモノクロー
ナル抗体4H1(それぞれ配列番号3および10に示したようなVHおよびVLを有する
)、またはモノクローナル抗体5C4(それぞれ配列番号4および11に示したようなV
HおよびVLを有する)、またはモノクローナル抗体4A11(それぞれ配列番号5およ
び12に示したようなVHおよびVLを有する)、またはモノクローナル抗体7D3(そ
れぞれ配列番号6および13に示したようなVHおよびVLを有する)、またはモノクロ 40
ーナル抗体5F4(それぞれ配列番号7および14に示したようなVHおよびVLを有す
る)であってもよい。このような交差競合性抗体は、標準的なPD−1結合アッセイにお
いて17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4と交差競合する
能力に基づいて同定できる。例えば、ビアコア分析、ELISAアッセイまたはフローサ
イトメトリーを用いて、本発明の抗体との交差競合を明らかにすることもできる。ヒトP
D−1に対する17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4の結
合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がヒトPD−1に対する結合を17D8、2D
3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4と競合でき、従って、17D8、2
D3、4H1、5C4、4A11と同一のヒトPD−1上エピトープに結合することを明
らかにする。好適な態様において、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D 50
(28) JP 6975733 B2 2021.12.1

3または5F4と同一のヒトPD−1上エピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナ
ル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、実施例に記載のようにして調製し
て単離できる。
【0110】
工学的に作製しかつ修飾した抗体
本発明の抗体は、修飾抗体を工学的に作製するための出発物質として、ここに開示した
1つ以上のVHおよび/またはVL配列を有する抗体を用いて調製でき、ここで、当該修
飾抗体は、当該出発物質から改変された性質を有することがある。抗体は、1つ以上の可
変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内部、例えば、1つ以上のCDR領域内部
および/または1つ以上のフレームワーク領域内部の1つ以上の残基を修飾することによ 10
って工学的に作製できる。さらにまたはこれとは別に、抗体は、例えば、抗体のエフェク
ター機能を改変するために定常領域内部の残基を修飾することによって工学的に作製でき
る。
【0111】
実施可能な可変領域エンジニアリングの一つの例は、CDRグラフトである。抗体は、
主に6個の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に局在するアミノ酸残基を介して標
的抗原と相互作用する。このため、CDR内部のアミノ酸配列は、CDR外部の配列より
もそれぞれの抗体間でより多様性が高い。CDR配列はほとんどの抗原抗体相互作用に関
与しているので、異なる性質を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植した特
定の天然抗体由来CDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、この特定の天 20
然抗体の性質を模倣する組み換え抗体を発現させることが可能である(例 Riechm
ann、L.ら(1998)Nature 332:323−327、Jones,P.
ら(1986)Nature 321:522−525、Queen,C.ら(1989
)Proc.Natl.Acad.See.USA 86:10029−10033、W
interの米国特許5,225、539およびQueenらの米国特許5,530,1
01,5,585,089,5,693,762および6,180,370を参照)。
【0112】
したがって、本発明の別の態様は、それぞれ配列番号15、16、17、18、19、
20および21、配列番号22、23、24、25、26、27および28、および配列
番号29、30、31、32、33、34および35から構成される群から選択したアミ 30
ノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、およびそれ
ぞれ配列番号36、37、38、39、40、41および42、配列番号43、44、4
5、46、47、48および49および配列番号50、51、52、53、54、55お
よび56から構成される群から選択したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離モノ
クローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。したがって、上記抗体は、モノクロ
ーナル抗体17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4のVHお
よびVLCDR配列を含むが、これらの抗体と異なるフレームワーク配列も含むことがで
きる。
【0113】
このようなフレームワーク配列は、公表されたDNAデータベースまたは生殖細胞型抗 40
体遺伝子配列を含む公表された文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖
可変領域遺伝子についての生殖細胞型DNA配列は、“VBase”ヒト生殖細胞型配列
データベース(インターネットでwww.mrc−cpe.cam.ac.uk/vba
seから入手可能)ならびにKabat,E.ら(1991)Sequences of
Proteins of Immunological Interest、第5版、米国
健康およびヒトサービス部、NIH Publication 91−3242、Toml
inson,I.M.ら(1992)“The Repertoire of Human
Germline VH Sequences Reveals about Fifty G
roups of VH Segments with Different Hyperva
riable Loops”、J.Mol.Biol.227:776−798;および 50
(29) JP 6975733 B2 2021.12.1

Cox,J.P.L.ら(1994)“A Directory of Human Ger


m−line VH Segments Reveals a Strong Bias in
their Usage”,Eur.J.Immunol.24:827−836;それ
らのそれぞれの内容は、本文で参考として引用している。別の例として、ヒト重鎖および
軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞型DNA配列は、GenBankデータベース中で同定で
きる。例えば、HCo7 HuMAbマウス中で認められる下記の重鎖生殖細胞型配列は
、1−69(NG_0010109、NT_024637およびBC070333)、3
−33(NG_0010109およびNT_024637)および3−7(NG_001
0109およびNT_024637)の付属GenBank登録番号で入手可能である。
別の例として、HCo12 HuMAbマウス中で見られる下記の重鎖生殖細胞型配列は 10
、1−69(NG_0010109、NT_024637およびBC070333)、5
−51(NG_0010109およびNT_024637)、4−34(NG_0010
109およびNT_024637)、3−30.3(AJ556644)および3−23
(AJ406678)の付属GenBank登録番号で入手可能である。
【0114】
本発明の抗体における使用に好適なフレームワーク配列は、本発明の選択抗体によって
使用されたフレームワーク配列に構造的に類似するものであり、例えば、本発明の好適な
モノクローナル抗体において用いられたVH3−33フレームワーク配列(配列番号71
)および/またはVH4−39フレームワーク配列(配列番号73)および/またはVK
L6フレームワーク配列(配列番号72)および/またはVKL15フレームワーク配列 20
(配列番号74)に類似である。VH CDR1、CDR2およびCDR3配列およびV
K CDR1、CDR2およびCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞
型イムノグロブリン遺伝子に認められるものと同一の配列を有するフレームワーク領域に
移植でき、または当該CDR配列は、当該生殖細胞型配列と比較して1つ以上の変異を含
むフレームワーク領域に移植できる。例えば、ある場合において、フレームワーク領域内
部の残基を変異させ、当該抗体の抗原結合能力を保持するかまたは増強することが有益で
あることが見出されている(例えば、Queenらの米国特許5,530,101;5,
585,089;5,693,762および6,180,370を参照)。
【0115】
別のタイプの可変領域の修飾としては、VHおよび/またはVK CDR1、CDR2 30
および/またはCDR3領域内部のアミノ酸残基を変異させ、それによって問題の抗体の
1つ以上の結合性質を改善させることである。部位特異的変異またはPCR媒介性変異を
実施して変異を導入でき、抗体結合または問題の他の機能的性質に及ぼす効果を、インビ
トロまたはインビボアッセイでここに述べたようにおよび実施例に述べたようにして評価
できる。好適には、(上記に述べたような)保存的修飾体を導入する。当該変異は、アミ
ノ酸置換、付加または欠失であるが、好適には置換である。さらに、典型的には、CDR
領域内の1個以下、2個以下、3個以下、4個以下または5個以下の残基を改変する。
【0116】
したがって、別の態様において、本発明は、(a)配列番号15、16、17、18、
19、20および21から構成される群から選択されたアミノ酸配列または配列番号15 40
、16、17、18、19、20および21と比較して1個、2個、3個、4個または5
個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVHCDR1領域、(b
)配列番号22、23、24、25、26、27および28から構成される群から選択さ
れたアミノ酸配列または配列番号22、23、24、25、26、27および28と比較
して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ
酸配列を含むVHCDR2領域、(c)配列番号29、30、31、32、33、34お
よび35から構成される群から選択されたアミノ酸配列または配列番号29、30、31
、32、33、34および35と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸
置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVHCDR3領域、(d)配列番号3
6、37、38、39、40、41および42から構成される群から選択されたアミノ酸 50
(30) JP 6975733 B2 2021.12.1

配列または配列番号36、37、38、39、40、41および42と比較して1個、2
個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む
VKCDR1領域、(e)配列番号43、44、45、46、47、48および49から
構成される群から選択されたアミノ酸配列または配列番号43、44、45、46、47
、48および49と比較して1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失ま
たは付加を有するアミノ酸配列を含むVKCDR2領域;および(f)配列番号50、5
1、52、53、54、55および56から構成される群から選択されたアミノ酸配列ま
たは配列番号50、51、52、53、54、55および56と比較して1個、2個、3
個、4個または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVKC
DR3領域を含む重鎖可変領域を含む単離抗PD−1モノクローナル抗体またはその抗原 10
結合部分を提供する。
【0117】
工学的に作製した本発明の抗体には、例えば、抗体の性質を改良するためにVHおよび
/またはVK内部のフレームワーク残基に修飾を行ったものを含む。典型的には、このよ
うなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を減ずるために行われる。例えば、ひとつの
手法は、生殖細胞型配列に対応する1個以上のフレームワーク残基を“バック変異”させ
る。さらに詳細には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖細胞型配列と異な
るフレームワーク残基を含むことができる。このような残基は、抗体が由来する生殖細胞
型配列に対して抗体フレームワーク配列を比較することによって識別できる。
【0118】 20
例えば、下記の表1は、重鎖親生殖細胞型配列と異なる抗PD−1抗体17D8、2D
3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のフレームワーク領域中におけるア
ミノ酸変化数を示している。フレームワーク領域配列中の1個以上のアミノ酸残基をそれ
らの生殖細胞型配置に戻すため、体細胞変異を、例えば、部位特異的変異誘発またはPC
R媒介性変異誘発によって、生殖細胞型配列に“バック変異”させることができる。
【0119】
アミノ酸変化は、軽鎖親生殖細胞型配列と異なる抗PD−1抗体のフレームワーク領域
中でも起こりうる。例えば、17D8について、Vkのアミノ酸残基#47(FR2内部
)はイソロイシンであるが、一方、対応するVKL6生殖細胞型配列におけるこの残基は
ロイシンである。フレームワーク領域配列をそれらの生殖細胞型配置に戻すため、体細胞 30
変異を、例えば、部位特異的変異誘発またはPCR媒介性変異(例えば、17D8のVK
の残基#47(FR2の#13)は、イソロイシンからロイシンに“バック変異”させる
ことができる)によって、生殖細胞型配列に“バック変異”させることができる。
【0120】
別の例として、4A11について、Vkのアミノ酸残基#20(FR1内部)はセリン
であるが、一方、対応するVKL15生殖細胞型配列におけるこの残基はスレオニンであ
る。フレームワーク領域配列をそれらの生殖細胞型配置に戻すため、例えば、4A11の
VKの残基#20をセリンからスレオニンに“バック変異”させることができる。このよ
うな“バック変異”抗体も、本発明に包含するものとしている。
【0121】 40
17D8、2D3、4H1、5C4および7D3についてのVH領域の親生殖細胞型V
H3−33配列に対する配置を図8に示した。4A11と5F4についての親生殖細胞型
VH4−39配列に対するVH領域の配置を図11に示した。
(31) JP 6975733 B2 2021.12.1

【表1】

10

20

30

40

【0122】
別のタイプのフレームワーク修飾では、当該フレームワーク領域内部の1個以上の残基
または1個以上のCDR領域内部の1個以上の残基を変異させ、T細胞エピトープを除去
し、それによって抗体の潜在的免疫原性を低下させることが必要である。この手法は“脱
免疫”とも称され、さらに詳細には、Carrらによる米国特許公報200301530
43に記載されている。
【0123】 50
(32) JP 6975733 B2 2021.12.1

フレームワークまたはCDR領域内部に作製した修飾に加えて、またはそれとは別に、
本発明の抗体を工学的に処理し、Fc領域内部に修飾を行い、典型的には、血清半減期、
補体固定、Fcレセプター結合および/または抗原依存性細胞傷害性のような1個以上の
抗体の機能的特徴を改変する。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾でき(例えば、1
個以上の化学成分を当該抗体に付加できる)、または修飾してそのグリコシル化を改変さ
せ、また、抗体の1個以上の機能的特徴を改変させることもできる。これらのそれぞれの
態様を、さらに下記で詳細に説明する。Fc領域中の残基の数字は、KabatのEUイ
ンデックスの数字である。
【0124】
一つの態様において、CH1のヒンジ領域をヒンジ領域中のシステイン残基数を、例え 10
ば、増加させるかまたは低下させるなど改変させるように修飾する。この手法は、さらに
Bodmerらの米国特許5,677,425に記載されている。CH1のヒンジ領域中
のシステイン残基数を改変し、例えば、軽鎖および重鎖の集合を促進させるかまたは抗体
安定性を増すかあるいは減じる。
【0125】
別の態様において、抗体の生物学的半減期を短くするため、抗体のFcヒンジ領域を変
異させる。さらに詳細には、抗体が天然のFcヒンジドメインSpA結合に比較して、不
完全なブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合を持つように、1個以上のアミノ酸変異を
Fcヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン界面領域に導入する。この手法は、Wardら
の米国特許6,165,745に詳細に記載されている。 20
【0126】
別の態様において、当該抗体を修飾して、その生物学的半減期を長くする。様々な手法
が可能である。例えば、1個以上の下記変異:Wardの米国特許6,277,375に
記載のようなT252L、T254S、T256Fを導入できる。これとは別に、Pre
staらの米国特許5,869,046および6,121,022に記載されているとお
り、生物学的半減期を長くするため、CH1またはCL領域内部で抗体を改変し、IgG
のFc領域のCH2ドメインの2個のループから取ったサルベージレセプター結合エピト
ープを含ませる。
【0127】
さらに他の態様において、Fc領域を、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ 30
酸残基で置き換え改変し、抗体のエフェクター機能を改変する。例えば、アミノ酸残基2
34、235、236、237、297、318、320および322から選択した1個
以上のアミノ酸を、抗体がエフェクターリガンドに対して改変された親和性を有するが、
親抗体の抗原結合能は保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。
親和性を改変したエフェクターリガンドは、例えば、Fcレセプターまたは補体のC1成
分であってもよい。この手法は、両者ともにWinterらの米国特許5,624,82
1および5,648,260に詳細に記載されている。
【0128】
別の態様において、アミノ酸残基329、331および322から選択した1個以上の
アミノ酸を、抗体が改変されたC1q結合および/または低下若しくは停止した補体依存 40
性細胞傷害性(CDC)を有するように異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。
この手法は、さらに詳細に、Idusogieらの米国特許6,194,551に記載さ
れている。
【0129】
別の例において、アミノ酸位置231および239内部の1個以上のアミノ酸残基を改
変し、それによって抗体の補体固定能力を改変する。この手法は、さらに詳細に、Bod
merらのPCT公報WO94/29351に記載されている。
【0130】
さらに別の例において、Fc領域を修飾して、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介
する抗体の能力を増加させるかおよび/または下記の238、239、248、249、 50
(33) JP 6975733 B2 2021.12.1

252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、
272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、
293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、
312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、
333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、
382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、
437、438または439の位置にある1個以上のアミノ酸を修飾することによって、
Fcγレセプターに対する抗体の親和性を増加させる。この手法は、Prestaにより
、PCT公報WO00/42072にさらに説明されている。さらに、ヒトIgG1上の
FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位は、マップ 10
に示されており、改良された結合を有する改変体も記載されている(Shields,R
.L.ら(2001)J.Biol.Chem. 276:6591−6604を参照)
。256、290、298、333、334および339の位置における特異的変異がF
cγRIIIに対する結合を改善することが示されている。さらに、下記のT256A/
S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E3
33A/K334Aの組み合わせ変異体がFcγRIII結合を改善することが示されて
いる。
【0131】
さらに別の態様において、抗体をグリコシル化修飾する。例えば、非グリコシル化抗体
を作製できる(すなわち、当該抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化改変は 20
、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。このような炭水化物修飾は
、例えば、抗体配列内部の1個以上のグリコシル化部位を改変することによって達成でき
る。例えば、1個以上のアミノ酸置換を作製し、その結果、1個以上の可変領域フレーム
ワークグリコシル化部位を消失させ、それによってその部位でのグリコシル化を消失させ
る。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。こ
のような手法は、さらに詳細に、Coらによる米国特許5,714,350および6,3
50,861に記載されている。
【0132】
さらにまたはこれとは別に、フコシル残基量が少ない低フコシル化抗体または二分性G
lcNac構造が増加した抗体のような改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体を 30
作製できる。このような改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めること
が明らかになっている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変グリコシル化機構を有
する宿主細胞中で抗体を発現させることによって達成できる。改変グリコシル化機構を有
する細胞は先行技術で説明されており、本発明の組み換え抗体を発現させる宿主細胞とし
て使用し、それによって改変グリコシル化を有する抗体を産生させる。例えば、細胞株M
s704、Ms705およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼを欠失しており、MS704、Ms705およ
びMs709細胞株で発現した抗体がその炭水化物上にフコースを欠失している。Ms7
04、Ms705およびMs709のFUT8−/−細胞株は、2つのリプレイスメント
ベクター(Yamaneらによる米国特許公報20040110704およびYaman 40
e−Ohnukiら(2004)Biotechnol Bioeng 87:614−2
2を参照)を用いて、CHO/DG44細胞中でFUT8遺伝子を標的破壊することによ
って作製した。別の例として、HanaiらによるEP1,176,195は、機能的に
破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株を記載している。この遺伝子はフコシルトラン
スフェラーゼをコードしており、このような細胞株中で発現した抗体は、α 1,6結合
関連酵素の減少または消失によって低フコシル化を示している。Hanaiらは、抗体の
Fc領域に結合するかまたはその酵素活性を有していないN−アセチルグルコサミンにフ
コースを付加する酵素活性が低い細胞株、例えば、ラット骨髄細胞株YB2/0(ATC
C CRL1662)についても述べている。PrestaによるPCT公報WO03/
035835には、フコースをAsn(297)結合炭水化物に結合させる能力が低下し 50
(34) JP 6975733 B2 2021.12.1

ており、その結果、その宿主細胞中で発現した抗体のフコシル化が低下することになる様
々なCHO細胞やLec13細胞について記載されている(同様に、Shields,R
.L.(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740を参照)
。UmanaらによるPCT公報WO99/54342は、糖タンパク質修飾グリコシル
トランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェ
ラーゼIII(GnTIII)を発現するように工学的に作製した細胞株を記載しており
、この工学的に作製した細胞株中で発現した抗体が、二分性GlcNac構造の増加を示
し、その結果、抗体のADCC活性が増加することになる(同様に、Umanaら(19
99)Nat.Biotech. 17:176−180参照)。これとは別に、抗体の
フコース残基は、フコシダーゼ酵素を用いて切断除去することができる。例えば、当該フ 10
コシダーゼ α−L−フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarent
ino,A.L.ら(1975)Biochem. 14:5516−23)。
【0133】
本発明で検討した抗体の別の修飾は、PEG化である。抗体をPEG化し、例えば、抗
体の生物学的(例えば、血清中)半減期を長くすることができる。抗体をPEG化するた
め、抗体またはその断片を通常、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体のよう
なポリエチレングリコール(PEG)と1個以上のPEG基が抗体または抗体断片に結合
するようになる条件化で反応させる。好適には、PEG化は、反応性PEG分子(または
類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により、実施する
。ここでは、用語“ポリエチレングリコール”とは、モノ(C1−C10)アルコキシ− 20
またはアリルオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミ
ドのような他のタンパク質を誘導体化するために用いるいかなる形状のPEGをも含むも
のとする。ある態様においてPEG化される抗体は非グリコシレーションされた抗体であ
る。タンパク質PEG化方法は、当該技術により公知であり、本発明の抗体にも適用でき
る。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaら
によるEP0401384が参照できる。
【0134】
抗体の工学的処理方法
上記にも述べたように、ここに開示したVHおよびVK配列を有する抗PD−1抗体を
用いて、VHおよび/またはVK配列またはそれに結合した定常領域を修飾することによ 30
って、新しい抗PD−1抗体を作製できる。したがって、本発明の別の面において、本発
明の抗PD−1抗体の構造的特徴、例えば、17D8、2D3、4H1、5C4、4A1
1、7D3または5F4を用いてヒトPD−1に対する結合のような本発明の抗体の少な
くとも一つの機能的特徴を保持する構造的に関連した抗PD−1抗体を作製できる。例え
ば、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3または5F4またはその変異
体の1個以上のCDR領域を公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組み
換えで組み合わせて、付加的な組み換え工学で作成された本発明の抗体を上述のように作
製できる。他の修飾タイプには、前章で述べたものが含まれる。工学的方法の出発物質は
、ここで提供したVHおよび/またはVK配列の1個以上またはその1個以上のCDR領
域である。工学的抗体を作製するため、VHおよび/またはVK配列の1個以上またはそ 40
の1個以上のCDR領域を有する抗体を実際に調製(すなわち、タンパク質として発現さ
せる)する必要はない。むしろ、配列に含まれる情報を出発物質として用いて当初の配列
に由来する“第二世代”配列を作製し、次に、この“第二世代”配列をタンパク質として
調製し発現させる。
【0135】
したがって、別の態様において、本発明は、
(a)(i)配列番号15、16、17、18、19、20および21から構成される群
から選択したCDR1配列、配列番号22、23、24、25、26、27および28か
ら構成される群から選択したCDR2配列、および/または配列番号29、30、31、
32、33、34および35から構成される群から選択したCDR3配列を含む重鎖可変 50
(35) JP 6975733 B2 2021.12.1

領域抗体配列、および/または(ii)配列番号36、37、38、39、40、41お
よび42から構成される群から選択したCDR1配列、配列番号43、44、45、46
、47、48および49から構成される群から選択したCDR2配列、および/または配
列番号50、51、52、53、54、55および56から構成される群から選択したC
DR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供すること、
(b)重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列から選択した少なくと
も1個の可変領域抗体配列内部の少なくとも1個のアミノ酸残基を改変し、少なくとも1
個の改変抗体配列を作成すること;および
(c)当該改変抗体配列をタンパク質として発現させること、
を含む抗PD−1抗体を調製する方法を提供する。 10
【0136】
標準的な分子生物学的技術を用いて改変抗体配列を調製、発現できる。
【0137】
好適には、改変抗体配列によってコードされた抗体は、ここに記載した抗PD−1抗体
の機能的特徴の一つ、一部または全てを保持するものであり、その機能的特徴には下記が
含まれるが、それらに限定されない。
【0138】
(a)当該抗体は、KDが1×10−7M以下でヒトPD−1に結合する。
(b)当該抗体は、ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない。
(c)当該抗体は、MLRアッセイにおいてT細胞増殖を増大させる。 20
(d)当該抗体は、MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる。
(e)当該抗体は、MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる。
(f)当該抗体は、ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する。
(g)当該抗体は、PD−L1および/またはPD−L2のPD−1に対する結合を阻害
する。
(h)当該抗体は、抗原特異的記憶応答を刺激する。
(i)当該抗体は、抗体応答を刺激する。
(j)当該抗体は、腫瘍細胞増殖をインビボで阻害する。
【0139】
改変抗体の機能的特徴は、先行技術が利用可能でおよび/またはここに記載した標準的 30
アッセイ、例えば、実施例に述べたもの(例えば、フローサイトメトリ、結合アッセイ)
を用いて評価できる。
【0140】
本発明の抗体を工学的に作製する方法のある態様において、抗PD−1抗体コード配列
の全体または一部に沿ってランダムにまたは選択的に変異を導入でき、生成した修飾抗P
D−1抗体について、ここに記載したような結合活性および/または他の機能的特徴をス
クリーニングできる。変異方法は先行技術に記載されている。例えば、ShortのPC
T公報WO02/092780は、飽和突然変異法、合成ライゲーション連結法またはそ
れらの組み合わせを用いて抗体変異を作製し、スクリーニングする方法を記載している。
これとは別に、LazarらによるPCT公報WO03/074679は、抗体の物理化 40
学的性質を最適化するため、コンピュータによりスクリーニングする方法を用いる方法を
記載している。
【0141】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の別の面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、細胞溶解物
として、細胞全体または部分精製若しくは実質的に純粋な形状で存在できる。核酸は、ア
ルカリ/SDS処理、CsCl結合、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動
およびその他当該技術の周知の方法を含む標準的技術によって、例えば、他の細胞性核酸
またはタンパク質のような他の細胞性成分または他の夾雑物から精製して取り出す際に“
単離される”かまたは“実質的に純粋にされる”。F.Ausubelら(1987)C 50
(36) JP 6975733 B2 2021.12.1

urrent Protocols in Molecular Biology,Gree


ne Publishing and Wiley Interscience, New Y
orkを参照。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってもよく、イントロ
ン配列を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。好適な態様において、当該核酸はcD
NA分子である。
【0142】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学的技術を用いて得ることができる。ハイブリドー
マ(例えば、さらに下記で説明するようなヒトイムノグロブリン遺伝子を有する形質転換
マウスから調製したハイブリドーマ)発現抗体の場合には、ハイブリドーマ作製抗体の軽
鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的PCR増幅法またはcDNAクローニング 10
技術によって得ることができる。イムノグロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、フ
ァージディスプレイ技術を用いて)得られた抗体の場合には、抗体をコードする核酸をラ
イブラリーから回収できる。
【0143】
本発明の好適な核酸分子は、17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3ま
たは5F4モノクローナル抗体のVHおよびVL配列をコードするものである。17D8
、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のVH配列をコードするDN
A配列は、それぞれ配列番号57、58、59、60、61、62および63で示される
。17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のVL配列をコー
ドするDNA配列は、それぞれ配列番号64、65、66、67、68、69および70 20
に示されている。
【0144】
VHおよびVL部分をコードするDNA断片を一旦得ると、これらのDNA断片は、さ
らに、標準的な組み換えDNA技術によって処理し、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体
鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換できる。これらの操作において
、VLまたはVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域または可動性リンカーのよう
な別のタンパク質をコードする別のDNA断片に適切に作用するように連結させる。ここ
で使われる用語“適切に作用するように連結する”とは、2つのDNA断片が、この2つ
のDNA断片でコードされるアミノ酸配列がインフレームの状態で結合することを意味す
る。 30
【0145】
VH領域をコードする単離DNAは、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)を
コードする別のDNA分子にVHをコードするDNAを適切に作用するように連結するこ
とによって全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術に
おいて公知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences
of Proteins of Immunological Interest,第5版、
米国保健・保健省、NIH発行、第91−3242号を参照)、これらの領域を含むDN
A断片は、標準的PCR増幅法で得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、Ig
G3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であってもよいが、最も
好適には、IgG1またはIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子について、V 40
HをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に適切に
作用するように連結できる。
【0146】
VL領域をコードする単離DNAは、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に
VLをコードするDNAを適切に作用するように連結することによって、全長軽鎖遺伝子
(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技
術において公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら(1991)Sequence
s of Proteins of Immunological Interest,第5
版、米国保健・保健省、NIH発行、第91−3242号を参照)、これらの領域を網羅
するDNA断片は、標準的PCR増幅法によって得ることができる。軽鎖定常領域は、κ 50
(37) JP 6975733 B2 2021.12.1

またはλ定常領域であってもよいが、最も好適には、κ定常領域である。
【0147】
scFv遺伝子作製のため、VHおよびVLをコードするDNA断片は、例えば、アミ
ノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする可動性リンカーをコードする別の断片に適
切に作用するように連結させ、VHおよびVL配列を連続的な一重鎖タンパク質として発
現できるようにし、VLおよびVH領域はこの可動性リンカーで結合されている(例えば
、Birdら(1988)Science 242:423−426、Hustonら(
1988)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 85、5879−5883
;McCaffertyら、(1990)Nature 348:552−554参照)
。 10
【0148】
本発明のモノクローナル抗体作製
本発明のモノクローナル抗体(mAbs)は、例えば、KohlerとMilstei
n(1975)Nature 256:495の標準的体細胞ハイブリダイゼーション技
術のような従来のモノクローナル抗体方法を含む様々な手法によって作製できる。体細胞
ハイブリダイゼーション操作が好適であるが、原則的には、モノクローナル抗体作製のた
めの他の技術として、例えば、Bリンパ細胞のウイルス性または癌性形質転換を用いるこ
とができる。
【0149】
ハイブリドーマ調製のための好適な動物は、マウスである。マウスにおけるハイブリド 20
ーマ産生は、非常に確立された操作である。免疫化プロトコールおよび免疫した融合用脾
臓細胞単離のための技術は、当該技術において公知である。融合パートナー(例えば、マ
ウス骨髄細胞)および融合操作も公知である。
【0150】
本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上記のように調製したマウスモノクローナル抗体
配列に基づき調製できる。重鎖および軽鎖イムノグロブリンをコードするDNAは、標準
的な生物学的技術を用いて、問題のマウスハイブリドーマから得ることができ、工学的に
処理した非マウス(例えば、ヒト)イムノグロブリン配列を含ませることができる。例え
ば、キメラ抗体作製のため、マウス可変領域を、当該技術において公知の方法を用いてヒ
ト定常領域に連結させることができる(例えば、Cabillyらの米国特許4,816 30
,567)。ヒト化抗体作製のため、マウスCDR領域を、当該技術において公知の方法
を用いてヒトフレームワークに挿入できる(例えば、Winterの米国特許5,225
,539および米国特許5,530,101、Queenらの米国特許5,585,08
9および6,180,370を参照)。
【0151】
好適な態様において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。PD−1に対
して作製したヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりはむしろヒト免疫系部分を含む形
質転換またはトランス染色体マウスを用いて産生させることができる。これらの形質転換
およびトランス染色体マウスには、ここでHuMAbマウスおよびKMマウス(商標)と
それぞれ称したマウスが含まれ、本文で“ヒトIgマウス”と総称する。 40
【0152】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex社)は、内因性μおよびκ鎖座(例え
ば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859
)を不活性化する標的変異とともに、非再配置ヒト重鎖(μおよびκ)およびκ軽鎖イム
ノグロブリン配列をコードするヒトイムノグロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む。したが
って、当該マウスは、マウスIgMまたはκ発現低下を示し、免疫化に応答して、導入し
たヒト重鎖および軽鎖トランスジーンがクラススイッチングと体細胞変異を受け、高親和
性のヒトIgGκモノクローナルを産生する(Lonberg、N.ら(1994)同上
;Lonberg、N.(1994)Handbook of Experimental
Pharmacology 113:49−101中でレビュー、Loberg,N.お 50
(38) JP 6975733 B2 2021.12.1

よびHuszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol. 13:
65−93およびHarding,F.およびLonberg,N.(1995)Ann
.N.Y.Acad.Sci. 764:536−546)。HuMabマウスの調製と
その使用およびこのようなマウスが有するゲノム修飾は、さらに、Tailor,L.(
1992)Nucleic Acids Research 20:3287−6295、
Chen,J.ら(1993)International Immunology 5:
647−656、Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA 90:3720−3724、Choiら(1993)Nature Gene
tics 4:117−123、Chen,J.ら(1993)EMBO J. 12:8
21−830、Tuaillonら(1994)J.Immunol. 152:291 10
2−2920、Taylor,L.ら(1994)International Imm
unology 6:579−591、およびFishwild,D.ら(1996)N
ature Biotechnology 14:845−851に記載されており、それ
らの全ての内容は、ここに、特に断ってその全文を参考として引用している。さらに、米
国特許5,545,806、5,569,825、5,625,126、5,633,4
25、5,789,650、5,877,397、5,661,016、5,814,3
18、5,874,299および5,770,429を参照、全てLonbergとKa
yによる、Suraniらの米国特許5,545,807、LonbergおよびKay
のPCT公報WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、W
O97/13852、WO98/24884およびWO99/45962、およびKor 20
manらのPCT公報WO01/14424を参照。
【0153】
別の態様において、本発明のヒト抗体は、ヒト重鎖トランスジーンとヒト軽鎖トランス
染色体を有するマウスのようなトランスジーンおよびトランス染色体上にヒトイムノグロ
ブリン配列を有するマウスを用いて作製できる。本文でこのようなマウスを“KMマウス
(商標)”と称し、IshidaらのPCT公報WO02/43478に詳細に記載され
ている。
【0154】
さらに、ヒトイムノグロブリン遺伝子を発現する別の形質転換動物システムは、公知技
術により利用可能であり、本発明の抗PD−1抗体を作製するために使用できる。例えば 30
、ゼノマウス(Xenomouse)(Abgenix社)と称されている別の形質転換
系も用いることができ、このようなマウスは、例えば、米国特許5,939,598、6
,075,181、6,114,598、Kucherlapatiらの6,150,5
84および6,162,963に記載されている。
【0155】
さらに、ヒトイムノグロブリン遺伝子を発現する別の形質転換動物システムは、公知技
術により利用可能であり、本発明の抗PD−1抗体を作製するために使用できる。例えば
、“Tcマウス”)と称されているヒト重鎖トランス染色体とヒト軽鎖トランス染色体を
両者ともに有するマウスも使用でき、このようなマウスは、Tomizukaら(200
0)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727に記載され 40
ている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖トランス染色体を有するウシも先行技術において記
載されており(Kuroiwaら(2002)Nature Biotechnolog
y 20:889−894)、本発明の抗PD−1抗体作製に使用できる。
【0156】
また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子ライブラリー
スクリーニングのためのファージディスプレイ方法を用いて調製できる。ヒト抗体単離の
ためのこのようなファージディスプレイ方法は、公知技術において確立されている。例え
ば、Ladnerらの米国特許5,223,409、5,403,484および5,57
1,698、Dowerらの米国特許5,427,908および5,580,717、M
cCaffertyらの米国特許5,969,108および6,172,197、および 50
(39) JP 6975733 B2 2021.12.1

Griffithsらの米国特許5,885,793、6,521,404、6,544
,731、6,555,313、6,582,915および6,593,081を参照。
【0157】
また、本発明のヒトモノクローナル抗体は、免疫によりヒト抗体応答が起こるように、
ヒト免疫細胞を再構築したSCIDマウスを用いて調製できる。このようなマウスは、例
えば、Wilsonらの米国特許5,476,996および5,698,767に記載さ
れている。
【0158】
ヒトIgマウスの免疫
ヒトIgマウスを用いて本発明のヒト抗体を作製する場合、Lonberg,N.ら( 10
1994)Nature 368(6474);856−859、Fishwild,D
.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851およ
びPCT公報WO98/24884およびWO01/14424に記載されているように
して、精製または高含量のPD−1抗原および/または組み換えPD−1またはPD−1
融合タンパク質により、このようなマウスを免疫できる。好適には、6−16週齢の当該
マウスに対して最初の注入を行う。例えば、PD−1抗原の精製または組み換え調製物(
5−50μg)を用いて、腹腔中でヒトIgマウスに免疫できる。
【0159】
PD−1に対する全長ヒトモノクローナル抗体を作製するための詳細な操作を、下記の
実施例1に述べた。様々な抗原による累積的な経験により、完全フロイントアジュバント 20
の抗原で最初に腹腔内(IP)免疫し、次に2週おきに不完全フロイントアジュバントの
抗原でIP免疫(最大6まで)した時、形質転換マウスが応答することが明らかにされて
いる。しかし、フロイント以外のアジュバントも有効であることがわかる。さらに、アジ
ュバントの非存在下において全細胞が極めて免疫原性が高いことがわかっている。この免
疫応答を、眼窩後方出血により得られた血漿サンプルによる免疫化プロトコール過程でモ
ニターできる。血漿は、ELISA(下記で述べたように)によりスクリーニングでき、
十分な抗PD−1ヒトイムノグロブリン力価を有するマウスを融合に使用できる。マウス
を、屠殺3日前に抗原を静注することでブーストし、脾臓を取り出した。各免疫化につい
て2−3回融合を実施する必要がある。通常、6∼24匹のマウスを各抗原について免疫
する。通常、HCo7およびHCo12株の両者を使用する。さらに、HCo7およびH 30
Co12トランスジーンの両者を、2つの異なるヒト重鎖導入遺伝子(HCo7/HCo
12)を有する1匹のマウスで作製できる。これとは別に、またはこれに加えて、KMマ
ウス(商標)系統を、実施例1に記載のようにして使用できる。
【0160】
本発明のヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
本発明のヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ作製のため、免疫したマウス由来
の脾臓および/またはリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄細胞株のような適切な不死化細
胞株に融合できる。得られたハイブリドーマについて、抗原特異的抗体の産生をスクリー
ニングできる。例えば、免疫したマウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁物を、50%P
EGにより、6分の1数のP3X63−Ag8.653非分泌マウス骨髄細胞(ATCC 40
、CRL1580)に融合できる。これとは別に、免疫したマウス由来の脾臓リンパ球の
単細胞懸濁物を、サイトパルス大型チェンバー細胞融合エレクトロポレータ(Cyto
Pulse Sciences,Inc.,Glen Burnie,MD)を用いて電場
に基づく電気融合法により融合させることができる。細胞は、約2×105で平底マイク
ロタイタープレートに播種し、20%胎児クローン血清、18%“653”調製培地、5
%オリゲン(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、5m
M HEPES、0.055mM 2−メルカプトメタノール、50単位/mLペニシリン
、50mg/mL ストレプトマイシン、50mg/mL ゲンタマイシンおよび1xHA
T(Sigma;HATを、注入24時間後に添加する)を含む選択培地中で2週間イン
キュベーションする。約2週後、細胞を、HATをHTに置き換えた培地中で培養する。 50
(40) JP 6975733 B2 2021.12.1

次に、それぞれのウェルをELISAでスクリーニングし、ヒトモノクローナルIgMお
よびIgG抗体をスクリーニングする。いったん広範なハイブリドーマ増殖が起こると、
培地は、通常、10−14日後に観察できる。抗体分泌ハイブリドーマを再播種し、再度
スクリーニングし、もしヒトIgGがまだ陽性であるならば、モノクローナル抗体を少な
くとも2回、限定希釈によってサブクローニングする。次に、安定なサブクローンをイン
ビトロで培養し、少量の抗体を組織培地に産生させ、特性解析する。
【0161】
ヒトモノクローナル抗体を精製するため、選択したハイブリドーマを2リットルのスピ
ナーフラスコ中で増殖させ、モノクローナル抗体を精製できる。上清をろ過し、濃縮した
後、プロテインA−セファロース(Pharmacia,Piscataway、N.J 10
.)によるアフィニティクロマトグラフィを行う。溶出したIgGをゲル電気泳動と高速
液体クロマトグラフィでチェックし、純度を確認できる。緩衝液はPBSに交換し、濃度
は、1.43吸光係数を用いてOD280で決定できる。モノクローナル抗体を等量に分
け、−80℃で保存できる。
【0162】
本発明のモノクローナル抗体産生トランスフェクトーマの作製
また、本発明の抗体は、例えば、当該技術において周知の組み換えDNA技術と遺伝子
トランスフェクション技術を組み合わせて用いて、宿主細胞中で産生させることができる
(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0163】 20
例えば、抗体またはその抗体断片発現のため、部分または全長軽鎖および重鎖をコード
するDNAは、標準的な分子生物学技術(例えば、PCR増幅または問題の抗体を発現す
るハイブリドーマを用いたcDNAクローニング)により得られ、このDNAを、遺伝子
が適切に作用するように転写および翻訳調節配列に連結されるように、発現ベクター中に
挿入できる。この本文において、用語“適切に作用するように連結する”とは、ベクター
内部の転写および翻訳調節配列が抗体遺伝子の転写と翻訳を制御するというそれらの目的
機能を果たすようにベクターに連結されることを意図している。発現ベクターと発現調節
配列は、使用した発現宿主細胞に適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重
鎖遺伝子を別々のベクターに挿入できるが、さらに典型的には、両者の遺伝子ともに同一
発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補 30
性制限部位とベクターとのライゲーション、または制限部位が全く存在しないならば、平
滑末端ライゲーション)によって発現ベクター中に挿入される。ここに述べた抗体の軽鎖
および重鎖可変領域を用いて、VHセグメントがベクター内部のCHセグメントに作用可
能なように連結され、VKセグメントはベクター内部のCLセグメントに作用可能なよう
に連結されるよう、それらを所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域をすでに
コードしている発現ベクター中に挿入することによって、いかなる抗体のアイソタイプの
全長抗体遺伝子をも創製できる。さらにまたはこれとは別に、組み換え発現ベクターは、
宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードできる。当該抗体鎖遺伝
子は、シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるように
ベクター中にクローニングできる。当該シグナルペプチドは、イムノグロブリンシグナル 40
ペプチドまたは非相同シグナルペプチド(すなわち、非イムノグロブリンタンパク質由来
のシグナルペプチド)であってもよい。
【0164】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中において抗体鎖
遺伝子の発現を調節できる制御配列を有している。用語“制御配列”とは、抗体鎖遺伝子
の転写または翻訳を調節するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節エレメント
(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。このような制御配列は、例えば、Goed
del(Gene Expression Technology. Methods in
Enzymology 185、Academic Press、San Diego、C
A(1990))に記載されている。当業者は、制御配列の選択を含む発現ベクターの設 50
(41) JP 6975733 B2 2021.12.1

計が形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等のような因子に依
存することを理解できる。哺乳類宿主細胞発現のための好適な制御配列には、サイトメガ
ロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、
アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)およびパピローマに由来するプロモ
ーターおよび/またはエンハンサーのような、哺乳類細胞におけるタンパク質高発現を指
示するウイルスエレメントを含む。これとは別に、ユビキチンプロモーターまたはβ−グ
ロビンプロモーターのような非ウイルス制御配列も使用できる。さらに、制御エレメント
は、SRαプロモーターシステムのような異なる起源由来の配列で構成され、それらはS
V40アーリープロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端繰り返し由
来の配列を含む(Takebe,Y.ら(1988)Mol.Cell.Biol. 8 10
:466−472)。
【0165】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中
におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)および選択マーカー遺伝
子のような付加的配列も有することができる。当該選択マーカー遺伝子は、ベクターを導
入した宿主細胞の選択を促進する(例えば、全てAxelらの米国特許4,399,21
6、4,634,665および5,179,017を参照)。例えば、典型的には、選択
マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞上でG418、ハイグロマイシンまたは
メトトレキセートのような薬物に対する耐性を付与する。好適な選択マーカー遺伝子には
、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅とともに 20
dhfr−宿主細胞中で使用するため)およびneo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0166】
軽鎖および重鎖発現のため、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技
術により宿主細胞に導入できる。用語“トランスフェクション”の様々な形態は、外来性
DNAを原核生物または真核生物宿主細胞に導入するために一般的に用いた広範囲の技術
を包含することを意図しており、例えば、エレクトロポレーション、カルシウム−ホスフ
ェート沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション等である。本発明の抗体を原
核生物または真核生物の宿主細胞のいずれにも発現させることは理論的には可能であるが
、そのような真核細胞、特に、哺乳類細胞が原核生物に比べて、適切に折りたたまれ、免
疫学的に活性のある抗体を集合させ分泌させやすいため、真核細胞での抗体の発現、さら 30
にもっとも好適には哺乳類宿主細胞での抗体の発現が最も好適である。抗体遺伝子の原核
生物における発現は高収率の活性抗体産生には無効であると報告されている(Boss,
M.A.およびWood、C.R.(1985)Immunology Today 6:
12−13)。
【0167】
本発明の組み換え抗体発現のために好適な哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスタ
ー卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp
(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているようなDHF
R選択可能マーカーとともに使用したdhfr−CHO細胞を含み、Urlaubおよび
Chasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 77:42 40
16−4220に記載されている)、NSO骨髄細胞、COS細胞およびSP2細胞が含
まれる。特に、NSO骨髄細胞とともに使用する場合には、別の好適な発現システムは、
WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に開示されたG
S遺伝子発現システムである。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターを哺乳類宿
主細胞中に導入する時、宿主細胞中で抗体を発現させるまたはさらに好適には宿主細胞を
増殖させる培地中に抗体を分泌させるだけの十分な時間宿主細胞を培養することによって
、抗体は産生される。抗体は標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収できる。
【0168】
抗原への抗体結合の特性解析
本発明の抗体について、例えば、標準的ELISAによってPD−1への結合を試験で 50
(42) JP 6975733 B2 2021.12.1

きる。簡単に述べると、マイクロタイタープレートをPBS中0.25μg/mLの精製
PD−1でコートし、次に、PBS中5%のウシ血清アルブミンでブロックする。抗体希
釈物(例えば、PD−1免疫マウス由来の血漿の希釈物)を各ウェルに添加し、37℃で
1−2時間インキュベーションする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次に、ア
ルカリホスファターゼ結合第2試薬(例えば、ヒト抗体用には、ヤギ抗ヒトIgG Fc
−特異的ポリクローナル試薬)とともに37℃で1時間、インキュベーションする。洗浄
後、プレートをpNPP基質(1mg/mL)で発色させ、OD406−650で分析す
る。好適には、最大力価を示したマウスを融合用に用いる。
【0169】
上述のようなELISAアッセイも同様に用いて、PD−1抗原と陽性反応を示すハイ 10
ブリドーマをスクリーニングする。PD−1に高親和力で結合するハイブリドーマをサブ
クローニングし、さらに特性解析する。各ハイブリドーマから親細胞の反応性を保持する
クローンを1個(ELISAにより)選択し、抗体精製のために5−10個のバイアル細
胞バンクを作成し、−140℃で保存する。
【0170】
抗PD−1抗体精製のため、選択したハイブリドーマを2リットルのスピナーフラスコ
中で増殖させることができ、モノクローナル抗体を精製する。上清をろ過し濃縮した後、
プロテインA−セファロース(Pharmacia,Piscataway、N.J.)
によるアフィニティクロマトグラフィを行う。溶出したIgGをゲル電気泳動と高速液体
クロマトグラフィでチェックし、純度を確認できる。緩衝液は、PBSに交換し、濃度は 20
、1.43吸光係数を用いてOD280で決定できる。モノクローナル抗体を一定分量に
分け、−80℃で保存できる。
【0171】
選択した抗PD−1モノクローナル抗体が独自のエピトープに結合したかどうかを決定
するため、各抗体を市販の試薬(Pierce,Rockford、IL)を用いてビオ
チン化できる。非標識モノクローナル抗体とビオチン化モノクローナル抗体を用いた競合
実験を、PD−1塗布ELISAプレートを用いて上記のように実施できる。ビオチン化
mAb結合は、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼプローブにより検出できる

【0172】 30
精製した抗体のアイソタイプを決定するため、アイソタイプELISAを特定アイソタ
イプの抗体に特異的な試薬を用いて実施できる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイ
ソタイプ決定のため、マイクロタイタープレートウェルを1μg/mLの抗ヒトイムノグ
ロブリンで、一晩、4℃でコートできる。1%BSAでブロックした後、プレートを試験
モノクローナル抗体または精製アイソタイプコントロール1μg/mL以下と室温で1∼
2時間反応させる。次に、当該ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリホ
スファターゼ結合プローブと反応させる。プレートを上記のようにして発色分析する。
【0173】
抗PD−1ヒトIgGは、さらに、ウェスタンブロッティングによりPD−1抗原との
反応性を試験できる。簡単に述べると、PD−1を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリ 40
アクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離した抗原をニトロ
セルロース膜に移し、10%ウシ胎児血清でブロックし、試験すべきモノクローナル抗体
により調べることができる。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを
用いて検出し、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem.Co.,St.Lo
uis,Mo.)により発色させることができる。
【0174】
免疫複合物
別の面において、本発明は、サイトトキシン、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射
性トキシンのような治療分子に複合させた抗PD−1抗体またはその断片を特徴とする。
このような複合物は、ここで、“免疫複合物”と称する。1個以上のサイトトキシンを含 50
(43) JP 6975733 B2 2021.12.1

む免疫複合物は、“イムノトキシン”と称される。サイトトキシン、すなわち、細胞傷害
性物質には、細胞に有害な(例えば、死滅させる)いかなる物質も含まれる。例として、
タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マ
イトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン
、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジハイドロキシアントラシンジオン、ミトキサント
ロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココル
チコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロ
マイシンおよびそのアナログまたはホモログを含む。また、治療薬には、例えば、代謝拮
抗物質(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラ
ビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルカリ化剤(例えば、メクロレタミン、 10
チオエパクロラムブチル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(
CCNU)、シクロソスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾ
トシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シス
プラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)および
ドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレ
オマイシン、ミトラマイシン、およびアンスラマイシン(AMC))、および有糸分裂剤
(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0175】
本発明の抗体に複合できる治療薬サイトトキシンの他の好適な例として、デュオカルマ
イシン、カリケアミシン、マイタンシンおよびオーリスタチン並びにそれらの誘導体が含 20
まれる。カリケアミシン抗体複合物の例は、市販されている(Mylotarg(商標)
;Wyeth−Ayerst)。
【0176】
サイトトキシンは、先行技術であるリンカー技術を用いて本発明の抗体に結合できる。
サイトトキシンを抗体に結合するために用いたリンカータイプの例として、ヒドラゾン、
チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが含まれるが、これ
らに限定されない。リンカーは、例えば、リソソームコンパートメント内部の低pHによ
る切断を受けやすいか、カテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)のような癌組織中
に主に発現するプロテアーゼのような、プロテアーゼによる切断を受けやすいものが選択
される。 30
【0177】
サイトトキシンのタイプ、リンカーおよび抗体に治療物質を結合する方法をさらに検討
するためには、Saito,G.ら(2003)Adv.Drug Deliv.Rev
. 55:199−215、Trail,P.A.ら(2003)Cancer Immu
nol.Immunother. 52:328−337、Payne,G.(2003
)Cancer Cell 3:207−212、Allen、T.M.(2002)Na
t.Rev.Cancer 2:750−763、Pastan,I.およびKreit
man,R.J.(2002)Curr.Opin.Investig.Drugs 3
:1089−1091、Senter,P.D.およびSpringer,C.J.(2
001)Adv.Drug Deliv.Rev. 53:247−264も参照できる。 40
【0178】
また、本発明の抗体は放射性同位元素に結合させ、放射性免疫複合物と称される細胞傷
害性放射性薬物を作製できる。診断または治療に使用するための抗体結合放射性同位元素
の例として、ヨード131、インジウム111、イットリウム90およびルテチウム17

が含まれるが、これらに限定されない。放射免疫複合物を調製する方法は、先行技術で
確立されている。放射免疫複合物の例は市販されており、Zevalin(商標)(ID
EC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa P
harmaceuticals)が含まれ、類似の方法を用いて本発明の抗体を用いて放
射免疫複合物を調製できる。
【0179】 50
(44) JP 6975733 B2 2021.12.1

ある生物応答を修飾するために、本発明の抗体複合物を用いることができるが、薬物分
子は、旧来の化学的治療薬剤のみに限定されるとみなされない。例えば、薬物分子は所望
の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。このようなタンパク
質には、アブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素またはジフテリアトキシンのよ
うな、例えば、酵素的に活性の毒物またはその活性断片、腫瘍壊死因子またはインターフ
ェロン−γのようなタンパク質、または、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1
(“IL−1”)、インターロイキン−2(“IL−2”)、インターロイキン−6(“
IL−6”)、顆粒マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー
刺激因子(“G−CSF”)または他の増殖因子のような生物学的応答調節物質が含まれ
る。 10
【0180】
このような治療分子を抗体に結合するための技術は、周知で、例えば、Arnonら“
Monoclonal Antibodies For Immunotargeting
OF Drugs In Cancer Therapy”、in Monoclonal A
ntibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(編著
)、pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985)、Hellst
romら、“Antibodies For Drug Delivery”、 in Co
ntrolled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編著)
、pp.623−53(Marcel Dekker、Inc.1987)、Thorp
e, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents I 20
n Cancer Therapy: A review“,in Monoclonal A
ntibodies ‘84:Biological And Clinical Appl
ications,Pincheraら(編著)、pp.475−506(1985)、
”Analysis、Results,And Future Prospective
Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Anti
body In Cancer Therapy“、in Monoclonal Anti
bodies For Cancer Detection And Therapy,Ba
ldwinら(編著)、pp.303−16(Academic Press1985)
、and Thorpeら、”The Preparation And Cytotoxi
c Properties Of Antibody−Toxin Conjugates“ 30
、Immunol.Rev.、62:119−58(1982)を参照できる。
【0181】
二重特異性分子
別の面において、本発明は、本発明の抗PD−1抗体またはその断片を含む二重特異性
分子を特徴とする。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、誘導体化することができ、
または、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体またはレセプターに
対するリガンド)のような別の機能分子に連結することによって、少なくとも2つの異な
る結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を作製できる。本発明の抗体は、実
際に、誘導体化することもできあるいは1つ以上の他の機能分子に連結することによって
、2つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を作製す 40
ることができる。このような多重特異性分子も、本文中、用語“二重特異性分子”に含ま
れるものとする。本発明の二重特異性分子を作製するため、二重特異性分子ができるよう
に本発明の抗体を別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣物のような1つ以上の結
合分子に機能的に(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合またはその他
で)連結することができる。
【0182】
したがって、本発明には、PD−1に対する少なくとも1つの第一の結合特異性と第二
の標的エピトープに対する第二の結合特異性を含む二重特異性分子を含む。本発明の特定
の態様において、第2標的エピトープは、例えば、ヒトFcγRI(CD64)またはヒ
トFcαレセプター(CD89)のようなFcレセプターである。したがって、本発明は 50
(45) JP 6975733 B2 2021.12.1

、FcγRIまたはFcαRを発現するエフェクター細胞(例えば、単球、マクロファー
ジまたは多形核細胞(PMNs))およびPD−1を発現している標的細胞の両者に結合
できる二重特異性分子を含む。これらの二重特異性分子は、PD−1発現細胞をエフェク
ター細胞の標的とさせ、PD−1発現細胞の食作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、
サイトカイン放出、またはスーパーオキサイドアニオン産生のようなFcレセプターを介
したエフェクター細胞活性を惹起する。
【0183】
二重特異性分子が多重特異特異性である本発明の態様において、さらに、当該分子は、
抗Fc結合特異性と抗PD−1結合特異性の他に、第三の結合特異性を有することができ
る。一つの態様において、第三の結合特異性は、例えば、抗増強因子(EF)部分のよう 10
な細胞傷害活性に関与し、それによって標的細胞に対する免疫応答を増強する表面タンパ
ク質に結合する分子である。この“抗増強因子部分”とは、例えば、抗原またはレセプタ
ーのようなある分子に結合し、その結果、Fcレセプターまたは標的細胞抗原の結合決定
基の効果を増強する抗体、抗体の機能的断片またはリガンドであってもよい。“抗増強因
子部分”は、Fcレセプターまたは標的細胞抗原に結合できる。これとは別に、抗増強因
子部分は、第1および第2結合特異性が結合する物質とは異なる物質に結合してもよい。
例えば、抗増強因子部分は、細胞傷害性T細胞(例えば、CD2、CD3、CD8、CD
28、CD4、CD40、ICAM−1を介して)または、標的細胞に対する免疫応答を
増強するような他の免疫細胞と結合することができる。
【0184】 20
一つの態様において、本発明の二重特異性分子は、結合特異性として、抗体または、例
えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一重鎖Fvのようなその抗体の断
片を少なくとも1つ含む。また、本抗体は軽鎖若しくは重鎖ダイマーであるかまたはFv
のようなその最小断片若しくはその内容を本文で断って参考として引用しているLadn
erら、米国特許4,946,778に記載の一本鎖構築物であってもよい。
【0185】
一つの態様において、Fcγレセプターに対する結合特異性は、モノクローナル抗体に
よって提供され、その結合は、ヒトイムノグロブリンG(IgG)によって阻害されない
。本文中、用語“IgGレセプター”は、第1染色体上に位置する8個のγ鎖遺伝子のい
ずれかを示す。これらの遺伝子は、総計12個の膜貫通型または可溶化型レセプターのア 30
イソフォームをコードし、それらは、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32
)およびFcγRIII(CD16)の3種のFcγクラスに分けられる。一つの好適な
態様としては、当該Fcγレセプターは、ヒト高親和性FCγRIである。ヒトFcγR
Iは、72kDaの分子であり、IgG単量体に対して高親和性を示す(108−109
M−1)。
【0186】
好適な抗Fcγモノクローナル抗体の作製と特異性解析には、FangerらによりP
CT公報WO88/00052および米国特許4,954,617に記載されているもの
があり、これらの開示は全て本文で参考文献として引用している。これらの抗体は、Fc
γRI、FcγRIIまたはFcγRIIIのエピトープに、レセプターのFcγ結合部 40
位から離れた部位で結合し、従って、それらの結合が生理学的レベルのIgGによっては
実質的に阻害されない。本発明で有用な特異的抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb
32、mAb44、mAb62およびmAb197である。mAb32産生ハイブリドー
マは、アメリカンタイプカルチャーコレクションからATCC 寄託番号HB9469と
して入手可能である。他の態様において、抗Fcγレセプター抗体は、モノクローナル抗
体22のヒト型抗体である(H22)。H22抗体の産生と特異性解析は、Grazia
no,R.F.ら(1995)J.Immunol. 155(10):4996−50
02およびPCT公報WO94/10332に記載されている。H22抗体産生細胞株は
、アメリカンタイプカルチャーコレクションにHA022CL1として寄託され、寄託番
号CRL11177を有している。 50
(46) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0187】
さらに、他の好適な態様において、Fcレセプターに対する結合特異性は、例えば、F
c−αレセプター(FcαRI(CD89))のようなヒトIgAレセプターに結合する
抗体によって付与され、その結合は、好適には、ヒトイムノグロブリンA(IgA)によ
って阻害されない。用語“IgAレセプター”は、第19染色体に位置する1個のα−遺
伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むことを意味する。この遺伝子は、55∼110k
Daの数個のオルタナティブスプライシングされた膜貫通型アイソフォームをコードする
ことが知られている。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸球性およ
び好中球性顆粒球上で構成的に発現されるが、非エフェクター細胞群上では発現しない。
FcαRIは、IgA1およびIgA2の両者に対して中程度の親和性(約5×107M 10
−1
)を有しており、G−CSFまたはGM−CSFのようなサイトカインによって増加
する(Morton,H.C.ら(1996)Critical Reviews in
Immunology 16:423−440)。4個のFcαRI特異的モノクローナ
ル抗体がA3、A59、A62およびA77として同定されており、それらは、IgAリ
ガンド結合ドメインの外側でFcαRIを結合することが記載されている(Montei
ro,R.C.ら(1992)J.Immunol. 148:1764)。
【0188】
FcαRIおよびFcγRIは、本発明の二重特異性分子として用いる場合、好適なト
リガーレセプターであり、その理由としては、それらが、(1)主に、例えば、単球、P
MN、マクロファージおよび樹状細胞のような免疫エフェクター細胞で発現されること、 20
(2)高レベルで発現すること(例えば、5000−100,000/細胞)、(3)細
胞傷害活性の媒介するもの(例えば、ADCC、食作用)、(4)自己抗原を含むそれら
を標的化した抗原の抗原提示増強を介することが挙げられる。
【0189】
ヒトモノクローナル抗体が好適であるが、本発明の二重特異性分子で使用できる他の抗
体は、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
【0190】
本発明の二重特異性分子は、例えば、抗FcRおよび抗PD−1結合特異性のような構
成要素となる結合特異性を当業者における公知の方法を用いて結合することによって、調
製できる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は、別々に作製し、その後互いに連結 30
できる。結合特異性がタンパク質またはペプチドである時、様々なカップリングまたは架
橋剤を共有結合に使用できる。架橋剤の例として、プロテインA、カルボジイミド、N−
サクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5´−ジチオビス
(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−
サクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスル
ホスクインイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレー
ト(スルホ−SMCC)(例えば、Karpovskyら(1984)J.Exp.Me
d. 160:1686、Liu,MAら(1985)Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 82:8648を参照)が含まれる。他の方法には、Paulus(1
985)Behring Ins.Mitt. No.78、118−132、Brenn 40
anら(1985)Science 229:81−83、およびGlennieら(1
987)J.Immunol. 139:2367−2375に記載のものが含まれる。
好適な結合剤は、SATAおよびスルホ−SMCCであり、両者ともにPierce C
hemical Co.(Rockford、IL)から入手可能である。
【0191】
結合特異性が抗体である時、それらは、2個の重鎖C末端ヒンジ領域のスルフィドリル
結合により結合できる。特に好適な態様において、結合させる前にヒンジ領域を奇数の、
好適には1つのスルフィドリル残基を含むように修飾する。
【0192】
あるいは、2つの結合特異性を同一ベクター中でコードでき、同一宿主細胞中で発現さ 50
(47) JP 6975733 B2 2021.12.1

せ、構築させることができる。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×
Fab、Fab×F(ab’)2またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特
に有効である。本発明の二重特異性分子は、一重鎖抗体および結合決定基を含む一重鎖分
子であるか、または、2個の結合決定基を含む一重鎖二重特異性分子であってもよい。二
重特異性分子は、少なくとも2個の一重鎖分子を含むこともできる。二重特異性分子調製
方法は、例えば、米国特許5,260,203、米国特許5,455,030、米国特許
4,881,175、米国特許5,132,405、米国特許5,091,513、米国
特許5,476,786、米国特許5,013,653、米国特許5,258,498、
米国特許5,482,858に記載されている。
【0193】 10
二重特異性分子のそれらの特異的標的への結合は、例えば、酵素結合イムノソルベント
アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッ
セイ(例えば、増殖阻害)またはウェスタンブロットアッセイにより確認できる。これら
のそれぞれのアッセイは、一般に、特に問題となっているタンパク質−抗体複合体の存在
を、問題の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を用いて検出する。例えば、Fc
R−抗体複合体は、例えば、抗体−FcR複合体を認識して特異的に結合する酵素結合抗
体または抗体断片を用いて検出できる。あるいは、当該複合体は、様々な他のイムノアッ
セイのいずれかを用いて検出できる。例えば、抗体を放射性標識し、ラジオイムノアッセ
イ(RIA)で使用できる(例えば、本文で参考として引用したWeintraub,B
.、Principles of Radioimmunoassays,Seventh 20
Training Course on Radioligand Assay Techn
iques, The Endocrine Society,March、1986を参
照)。放射性同位元素は、γカウンターまたはシンチレーションカウンターを用いてまた
はオートラジオグラフィのような手段により検出できる。
【0194】
薬剤組成物
本発明は、例えば、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を1種または
その組み合わせを含有し、薬学的に許容できる担体とともに処方された医薬組成物を提供
するという側面がある。このような組成物は、本発明の(例えば、2種以上の異なる)抗
体、または免疫複合物または二重特異性分子を1個、または、その組み合わせを含んでい 30
てもよい。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか
または補完的活性を有する抗体(または免疫複合物または二重特異性抗体)の組み合わせ
を含むことができる。
【0195】
本発明の医薬組成物は、また、併用療法すなわち他の物質と組み合わせて投与すること
ができる。例えば、併用療法は、その他の抗炎症剤または免疫抑制剤を少なくとも1つ組
み合わせた本発明の抗PD−1抗体を含んでいてもよい。併用療法で使用できる治療物質
の例として、より詳細に下記で本発明の抗体使用についての章で説明されている。
【0196】
本文中、“薬学的に許容できる担体”には、いかなる溶媒、分散剤、コーティング、抗 40
菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延物質等が全て含まれ、それらは生理的に両立で
きる。好適には、当該担体は、(例えば、注入または点滴による)静注、筋肉内、皮下、
非経口、脊髄または上皮投与に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、
抗体、免疫複合物または二重特異性分子は、化合物を不活性化する可能性のある酸や他の
自然条件の作用から化合物を保護する物質で被覆することもできる。
【0197】
本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容できる塩を含むことができる。“薬学
的に許容できる塩”とは、親化合物が目的とする生物活性を保持するが、目的としない毒
性効果を全く示さない塩を称する(例えば、Berges,S.M.ら(1977)J.
Pharma.Sci. 66:1−19を参照)。このような塩の例として、酸付加塩 50
(48) JP 6975733 B2 2021.12.1

および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化
水素酸、燐等のような無毒性の無機酸由来ならびに脂肪族モノ−およびジカルボン酸、フ
ェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン
酸等のような無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、
カリウム、マグネシウム、カルシウム等のようなアルカリ土金属ならびにN,N’−ジベ
ンチルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノ
ールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等のような無毒の有機アミン由来のものが含
まれる。
【0198】
また、本発明の薬剤組成物は薬学的に許容できる抗酸化剤を含むことができる。薬学的 10
に許容できる抗酸化剤の例として、(1)アスコルビン酸、システインハイドロクロライ
ド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗
酸化剤、(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ハイドロキシアニソール(BHA)
、ブチル化ハイドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、α−トコフ
ェロール等のような油溶性抗酸化剤、および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(
EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤が含まれる。
【0199】
本発明の薬剤組成物に使用できる適切な水性および非水性担体の例として、水、エタノ
ール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)
、およびその適切な混合物、オリーブオイルのような植物油、およびエチルオレイン酸の 20
ような注入可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、レシチンのような被覆物質
を使用すること、分散体の場合、必要な粒子径を保持すること、および界面活性剤を使用
することによって保持することができる。
【0200】
また、これらの組成物は保存剤、湿潤化剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバント
を含むことができる。微生物存在の防止は、殺菌操作、同上のようにおよび、例えば、パ
ラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等のような様々な抗菌剤および抗真菌
剤を包含させることによって確保できる。また、糖、塩化ナトリウム等のような等張化剤
を当該組成物に含ませることが望ましい。さらに、注射製剤形態の吸収を持続させること
は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる物質を包含さ 30
せることによって実現することができる。
【0201】
薬学的に許容できる担体には、無菌の注射用溶液または分散体を即時調製するための無
菌水溶液または分散体および無菌粉末が含まれる。このような媒体および物質を薬学的に
活性の物質のために使用することが当該技術において知られている。これまで従来の媒体
または物質が当該活性化合物と両立できなかったので、本発明の薬剤組成物中でそれを使
用することを検討している。補助的な活性化合物もまた、当該組成物中に組み込むことが
できる。
【0202】
治療用組成物は、通常、製造および保存条件下で無菌でかつ安定でなければならない。 40
当該組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポゾームまたはその他高濃度の薬物に適し
た、しつらえた構造体として製剤化できる。当該担体は、例えば、水、エタノール、ポリ
オール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、
およびその適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、レ
シチンのようなコーティング剤を使用すること、分散体の場合必要な粒子径を保持するこ
とおよび界面活性剤を使用することによって保持できる。多くの場合、例えば、糖、マン
ニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムのような等張化剤
を当該組成物に含有させることが望ましい。モノステアリン酸アルミニウム塩およびゼラ
チンのような吸収を遅らせる物質を包含させることによって、注射用組成物の吸収を持続
させることができる。 50
(49) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0203】
無菌の注射用溶液は、必要量の活性化合物を、上記に述べた成分の一つまたはそれらの
組み合わせとともに適切な溶媒中に組み込み、必要に応じて無菌的精密ろ過をすることに
より調製できる。一般的に、分散体は、基本的分散媒体と上記に述べたものの中から必要
な他の成分を含む無菌媒体中に活性化合物を組み込むことによって調製する。無菌の注射
用溶液調製のための無菌粉末の場合、好適な調製方法は真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾
燥)であり、活性成分に、事前に無菌ろ過した溶液からのあらゆる所望の追加成分を加え
た粉末を産生できる。
【0204】
一単位投与形態を作製するために担体物質と組み合わせられる活性成分の量は、治療す 10
べき対象と特定の投与様式に応じて変わる。一単位投与形態を作製するために担体物質と
組み合わせられる活性成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす組成物量である。一般
的に、この活性成分の量は、100%のうち、薬学的に許容できる担体との配合中、約0
.01%∼約99%、好適には約0.1%∼約70%、さらに好適には約1%∼約30%
の範囲である。
【0205】
投与法は、目的とする最適な応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整される。
例えば、単回のボーラスで投与することができるか、数回に投与量を分けて時間をかけて
投与することもでき、または治療状況の緊急性に応じて投与量を減ずるかまたは増量する
こともできる。特に、投与の容易性および投与量の均一性のため、非経口組成物を単位投 20
与形態として製剤化するのが好都合である。本文中、単位投与形態とは、治療対象に対す
る単位投与として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な薬剤担体と関連
させて所望の治療効果をもたらすために計算され、あらかじめ決定した量の活性化合物を
含む。本発明の単位投与形態の仕様は、(a)活性化合物の独自の特異性と目的とする特
定の治療効果、および(b)個人への治療感受性のため、そのような活性化合物を調剤す
る技術に固有の限界により規定されかつ直接それらに依存する。
【0206】
抗体投与のため、当該投与量は、約0.0001∼100mg/kg、さらに一般的に
は0.01∼5mg/kg患者体重の範囲である。例えば、投与量は、約0.3mg/k
g体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg 30
体重であるかまたは1∼10mg/kgの範囲である。典型的な治療方法には、例えば、
週1回投与、2週間おきに1回投与、3週おきに1回投与、4週おきに1回投与、月1回
投与、3ヶ月おきに1回投与または3∼6ヶ月おきに1回投与を伴う。本発明の抗PD−
1抗体の好適な投与方法は、静注投与により、1mg/kg体重または3mg/kg体重
であり、当該抗体は、下記の投与スケジュール、すなわち、(i)投与6回を4週おきに
、次に3週おき、(ii)3週おき、(iii)3mg/kg体重を1回、次に3週おき
に1mg/kg体重の一つを用いて投与される。
【0207】
ある方法では、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体を同時に投与
し、この場合、投与した各抗体の投与量は、例示した範囲内に入る。通常、抗体は、複数 40
回投与される。単回投与間隔は、例えば、毎週、毎月、3カ月おきまたは1年おきとする
ことができる。また、患者の標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することによって
示唆されるように、不定期とすることもできる。血漿中の抗体濃度を約1∼1000μg
/mLとなるように調整する方法や、約25∼300μg/mLとなるように調整する方
法もある。
【0208】
あるいは、抗体は、徐放性製剤として投与することもでき、この場合、投与頻度を少な
くすることが必要となる。投与量と頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変わる
。一般的に、ヒト抗体の半減期が最も長く、次に、ヒト化抗体、キメラ抗体、非ヒト抗体
が続く。投与量と投与頻度は、治療が予防なのか治療なのかにより変わる。予防的用途に 50
(50) JP 6975733 B2 2021.12.1

おいては、比較的低用量が比較的頻度が低く、長期にわたり投与される。寿命のある限り
治療を受けることになる患者もいる。治療的用途では、疾患進行を遅らせるかまたは停止
させるまで、好ましくは、患者が部分的または完全に疾患症状の改善を示すまで、比較的
高用量を比較的短期間に必要とすることがある。その後、患者は、予防的方法で投与され
る。
【0209】
本発明の医薬組成物中における活性成分の実際の投与レベルを変化させることで、毒性
を起こすことなしに、特定患者に対して目的とする治療応答を得る有効な活性成分、組成
および投与様式を得ることができる。選択した投与量は、本発明で使用した特定組成物、
そのエステル、その塩若しくはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用した特定化 10
合物の排泄速度、治療期間、他の薬物、化合物および/または使用した特定組成物と併用
使用した物質、治療患者の年齢、性、体重、状態、全般的健康および既往歴および医療技
術において周知の因子を含む様々な薬物動態因子に左右される。
【0210】
本発明の抗PD−1抗体の“治療有効投与量”は、疾患症状の重篤度の低下、疾患に由
来する症状が消失する期間の頻度と期間の増加、または疾患に罹患したことによる不全ま
たは障害の予防につながるものである。例えば、腫瘍治療のための“治療有効投与量”は
、未処理被験者に比較して、好適には少なくとも約20%、さらに好適には少なくとも約
40%、はるかに好適には約60%、さらに好適には約80%だけ、細胞増殖すなわち腫
瘍増殖を阻害する。化合物の腫瘍増殖阻害能は、ヒト腫瘍における有効性を予測できる動 20
物モデル系で評価できる。これとは別に、このような組成物の特性は、当業者に公知のア
ッセイによって化合物の阻害活性、例えば、インビトロにおける阻害能を調べることによ
って評価することができる。治療化合物の治療有効投与量は、腫瘍の大きさを減じるか、
またはそうでなければ、被験者の症状を改善させる。当業者は、被験者の大きさ、被験者
の症状の重篤度、および特定組成物または選択した投与経路のような要素に基づき量を決
定することができる。
【0211】
別の面において、本開示は、ここに記載の抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体を
その一部に含む医薬キットを提供する。当該キットは、また、さらに高増殖性疾患(ここ
に述べた癌のような)を治療するために用いる指示書を含んでいてもよい。別の態様にお 30
いて、抗PD−1および抗CTLA−4抗体は、単位投与形態として共に包装することも
できる。
【0212】
ある態様において、異なる結合特異性を有する(例えば、抗PD−1および抗CTLA
−4のような)2種以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与した各抗
体の投与量は、例示した範囲内に入る。抗体は、単回投与することができ、またはより一
般的には、複数回投与できる。単回投与間隔は、例えば、1週間、1か月、3か月、1年
間が可能である。単回投与間隔は、患者において標的抗原に対する抗体の血中レベルを測
定することによって示されるように、不規則であってもよい。血漿中抗体濃度約1∼10
00μg/mLを達成するように調整される方法や、約25∼300μg/mLを達成す 40
るように調整される方法もある。
【0213】
本発明の組成物は、当該技術で公知の様々な方法の1つ以上の方法を用いて、1種以上
の投与経路にて投与することもできる。当業者には明らかであろうが、投与経路および/
または様式は、目的とする結果に応じて変わる。本発明の抗体の好適な投与経路は、例え
ば、注射または輸液によって、静脈内、筋肉内、皮膚内、腹腔内、皮下、脊髄投与または
他の非経口投与経路を含む。本文中、用語“非経口投与”とは、腸および局所投与以外の
通常の注入による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腹腔内、被膜内
、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管的、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜
下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注入および点滴が含まれるが、これらに限定されない。 50
(51) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0214】
あるいは、本発明の抗体は、局所、上皮のような非経口経路で、または、例えば、鼻腔
内、口腔内、膣内、直腸内、舌下または局所で粘膜投与経路により投与できる。
【0215】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチおよびミクロカプセル包含デリバリシステム
のような徐放性製剤のような、迅速放出に対して当該化合物を保護する担体とともに調製
できる。エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドリド、ポリグリコール酸、コラーゲ
ン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸といった、生分解性、生体適合性ポリマーも使用
できる。このような製剤の調製方法は多くが特許を得ており、すなわち、当業者に一般に
公知である。例えば、Sustained and Controlled Releas 10
e Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編著,Ma
rcel Dekker、Inc.、New York、1978参照。
【0216】
治療用組成物は、当該技術において公知の医療用具により投与できる。例えば、好適な
態様において、本発明の治療組成物は、米国特許5,399,163、5,383,85
1、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,82
4または4,596,556に開示された用具のような針のない皮下注入用具により投与
できる。本発明で有用な公知のインプラントおよびモジュールの例として、制御された速
度で医薬を投薬するためのインプラント可能なミクロインフィージョンポンプを開示した
米国特許4,487,603、皮膚から医薬を投与するための治療用具を開示した米国特 20
許4,486,194、精密な点滴速度で医薬を運搬するための医薬インヒュージョンポ
ンプを開示した米国特許4,447,233、連続的薬物運搬のための可変フローインプ
ラント可能な点滴装置を開示した米国特許4,447,224、複数チャンバーコンパー
トメントを有する浸透圧ドラッグデリバリシステムを開示した米国特許4,439,19
6および浸透圧ドラッグデリバリシステムを開示した米国特許4,475,196が含ま
れる。これらの特許は参考として本文に組み込まれている。他にも多くのインプラント、
デリバリシステムおよびモジュールが当業者に公知である。
【0217】
ある態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体を製剤化して、インビボにおける
適切な分布を確保することができる。例えば、血液−脳関門(BBB)バリアは、多くの 30
高親和性化合物を排除する。本発明の治療化合物がBBBを(もし望むならば)確実に通
過できるようにするため、それらを、例えば、リポソーム中に処方することができる。リ
ポゾーム製造方法については、例えば、米国特許4,522,811;5,374,54
8;および5,399,331を参照できる。当該リポソームは、特定細胞または臓器に
選択的に運搬される一種以上の分子を含むことができ、それによって標的ドラッグデリバ
リを増強できる(例えば、V.VRanade(1989)J.Clin.Pharma
col.29:685を参照)。標的となる分子の例として、葉酸またはビオチン(例え
ば、Lowらによる米国特許5,416,016を参照)、マンノシド(Umezawa
ら(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun. 153:1
038)、抗体(P.G.Bloemanら(1995)FEBS Lett.357: 40
140、M.Owaisら(1995)Antimicrob. Agents Chem
other.39:180)、界面活性剤プロテインAレセプター(Briscoeら(
1995)Am.J.Physiol. 1233:134)、p120(Schrei
erら(1994)J.Biol.Chem. 269:9090)が含まれ、また、K
.Keinanenn;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.
346:123、J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immu
nomethods 4:273を参照することができる。
【0218】
本発明の用途および方法
本発明の抗体、抗体組成物および方法は、例えば、PD−1検出またはPD−1阻害に 50
(52) JP 6975733 B2 2021.12.1

より免疫応答を増強の検出といった、多数のインビトロおよびインビボ用途を有している
。好適な態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。例えば、これらの分子は、培養
細胞に対してインビトロでまたはエクスビボであるいはヒト被験者に対して、例えば、イ
ンビボで投与して、様々な状況において免疫性を高めることができる。したがって、一面
において、本発明は、被験者の免疫応答が修正されるように本発明の抗体またはその抗原
結合部分を当該被験者に投与することを含む、被験者に対する免疫応答を修正する方法を
提供する。好適には、当該応答は、増強、刺激または上方制御される。
【0219】
本文中、用語“被験者”とは、ヒトおよび非ヒト動物類を含むことを意味している。非
ヒト動物には、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両 10
生類、爬虫類等のような哺乳類および非哺乳類である、全脊椎動物類が含まれる。非ヒト
霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシおよびウマのような哺乳類が好適である。好適な被験
者には、免疫応答増強を必要としているヒト患者が含まれる。当該方法は、T細胞介在性
免疫応答を促進することにより治療できる疾患を有するヒト患者の治療に特に適している
。特定の態様において、当該方法は、インビボにおける癌細胞治療に適している。免疫性
の抗原特異的増強を図るため、抗PD−1抗体を関係する抗原とともに投与することがで
きる。PD−1に対する抗体を別の物質とともに投与するときには、それらは、順番にま
たは同時に投与できる。
【0220】
本発明は、さらに、抗体またはその部分とヒトPD−1との複合体形成を可能とする条 20
件下で、ヒトPD−1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部
分にサンプルまたは対照サンプルを接触させることを含む、サンプル中におけるヒトPD
−1抗原存在を検出するかまたはヒトPD−1抗原量を測定する方法を提供する。次に、
複合体の形成を検出し、ここで、対照サンプルとサンプル間の複合体形成の違いから、サ
ンプル中におけるヒトPD−1抗原の存在が示唆される。
【0221】
CD28、ICOSおよびCTLA−4に比較して本発明の抗体のPD−1に対する特
異的結合があれば、本発明の抗体を用いて細胞表面においてPD−1発現を特異的に検出
でき、さらにこれを用いて、免疫親和性精製によりPD−1を精製できる。
【0222】 30

抗体によるPD−1阻害は、患者において癌性細胞に対する免疫応答を増強できる。P
D−1に対するリガンドPD−L1は、正常なヒト細胞では発現されないが、様々なヒト
癌には多く発現している(Dongら(2002)Nat Med 8:787−9)。P
D−1とPD−L1との相互作用の結果、腫瘍浸潤性リンパ球の減少、T細胞レセプター
を介した増殖の低下、癌性細胞による免疫回避が起こる(Dongら(2003)J M
ol Med 81:281−7、Blankら(2005)Cancer Immuno
l.Immunother. 54:307−314、Konishiら(2004)C
lin. Cancer Res. 10:5094−100)。免疫抑制は、PD−L1
に対するPD−1の局所相互作用を阻害することによって元に戻すことができ、PD−L 40
2に対するPD−1の相互作用を同様に阻害する時、その効果は相加的である(Iwai
ら(2002)PNAS 99:12293−7、Brownら(2003)J.Imm
unol. 170:1257−66)。これまでの研究において、T細胞増殖がPD−
L1に対するPD−1の相互作用を阻害することによって回復できることが示されている
が、インビボにおいて、PD−1/PD−L1相互作用の阻害による癌腫瘍の増殖に対す
る直接的な効果については全く報告がない。本発明は、一面において、癌性腫瘍の増殖を
阻害するように抗PD−1抗体を用いる、被験者のインビボ治療に関する。抗PD−1抗
体だけを用いて癌性腫瘍の増殖を阻害できる。あるいは、抗PD−1抗体を、他の免疫原
性物質、標準的癌治療または他の抗体と組み合わせて、下記に記載のように用いることが
できる。 50
(53) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0223】
したがって、本発明は、一つの態様において、被験者における腫瘍細胞の増殖を阻害す
る方法を提供し、当該被験者に対して治療有効量の抗PD−1抗体またはその抗原結合部
分を投与することを含む。好適には、当該抗体は(ここに記載のヒト抗ヒトPD−1抗体
のいずれかのような)ヒト抗PD−1抗体である。さらにまたはこれとは別に、当該抗体
は、キメラまたはヒト化抗PD−1抗体であってもよい。
【0224】
本発明の抗体を用いて増殖を阻害できる好適な癌は、免疫療法に応答する一般的な癌を
含む。治療に好適な癌の例は限定されないが、メラノーマ(例えば、転移性悪性メラノー
マ)、腎癌(例えば、透明細胞カルシノーマ)、前立腺癌(例えば、ホルモン難治性前立 10
腺アデノカルシノーマ)、乳癌、結腸癌および肺癌(例えば、非小細胞肺癌)が含まれる
。さらに、本発明の抗体でその増殖が阻害できる難治性または再発性の悪性疾患が含まれ
る。
【0225】
本発明の方法を用いて治療できる他の癌の例としては、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部癌
、皮膚若しくは眼窩内悪性メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣
癌、子宮癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、子宮頚部カルシノーマ、膣カ
ルシノーマ、外陰部カルシノーマ、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、
内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性
白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性 20
若しくは急性白血病、小児固形癌、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓若しくは尿管の癌
、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍新脈管形
成、脊椎腫瘍、脳幹グリオーム、下垂体アデノーマ、カポシ肉腫、扁平上皮癌、扁平細胞
癌、T細胞リンパ腫、アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌および上記癌の組み合わせが挙
げられる。また、本発明は、転移性癌、特にPD−L1を発現する転移性癌の治療に有用
である(Iwaiら(2005)Int.Immunol.17:133−144)。
【0226】
PD−1に対する抗体は、適宜、癌性細胞、精製腫瘍抗原(組み換えタンパク質、ペプ
チドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝
子を導入した細胞のような免疫原性物質と組み合わせることができる(Heら(2004 30
)J.Immunol. 173:4919−28)。使用できる腫瘍ワクチンの例とし
て、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼの
ペプチドのようなメラノーマ抗原のペプチド、またはサイトカインGM−CSFを発現す
るように形質転換した腫瘍細胞(下記でさらに説明)が含まれる。
【0227】
ヒトにおいて、ある腫瘍が、メラノーマのように免疫原性であることが示されている。
PD−1阻害によりT細胞活性化閾値をあげることによって、宿主における腫瘍応答を活
性化できる。
【0228】
PD−1阻害は、ワクチンプロトコールと組み合わせる時、最も有効であるようである 40
。腫瘍に対するワクチンの接種について、多くの試験方法が工夫されてきた(Rosen
berg、S.、2000、Development of Cancer Vaccin
es,ASCO Educational Book Spring:60−62、Log
othetics,C.,2000、ASCO Educational Book Sp
ring:300−302、Khayat,D.2000,ASCO Educatio
nal Book Spring:414−428、Foon,K.2000,ASCO
Educational Book Spring:730−738、また、Restif
o,N.およびSznol,M.,Cancer Vaccines,Ch.61,pp
.3023−3043 、DeVita,V.ら(編著)、1997、Cancer:P
rinciples and Practice of Oncology. Fifth E 50
(54) JP 6975733 B2 2021.12.1

ditionを参照)。これらの戦略の一つとして、ワクチンは自己または同種異系の腫
瘍細胞を用いて調製される。これらの細胞性ワクチンは、腫瘍細胞を形質転換してGM−
CSFを発現させる時、最も有効であることが明らかとなっている。GM−CSFは、腫
瘍ワクチンにとって抗原提示の強力な活性化剤であることが明らかとなっている(Dra
noffら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:353
9−43)。
【0229】
様々な腫瘍における遺伝子発現と大規模遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫
瘍特異的抗原が定義されることになった(Rosenberg、SA(1999)Imm
unity 10:281−7)。多くの場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍中およ 10
び腫瘍化した細胞中で発現する分化抗原であり、例えば、メラノサイト抗原gp100、
MAGE抗原およびTrp−2である。さらに重要なこととして、これらの抗原の多くが
宿主において認められる腫瘍特異的T細胞の標的であることを明らかにすることができる
。PD−1阻害薬は、腫瘍で発現した組み換えタンパク質および/またはペプチドの集団
と組み合わせて、これらのタンパク質に対する免疫応答を生み出すために使用できる。こ
れらのタンパク質は、通常、免疫系によって自己抗原としてみなされるため、それらに対
して寛容である。また、腫瘍抗原にはタンパク質テロメラーゼが含まれ、これは、染色体
のテロメアの合成に必要なものであり、85%を超えるヒト癌中で発現しているが、限ら
れた数の体細胞組織中でしか発現していない(Kim,Nら(1994)Science
266:2011−2013)。(これらの体細胞組織は、様々な手段で免疫攻撃から 20
保護されている)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を改変するかまたは2個の関連のな
い配列(すなわち、フィラデルフィア染色体におけるbcr−ab1)の融合タンパク質
を生じる体細胞変異であるため、癌細胞に発現する“新抗原”であり得るか、またはB細
胞腫瘍由来のイデオタイプであり得る。
【0230】
他の腫瘍ワクチンには、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVお
よびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)のようなヒトの癌に関連す
るウイルス由来のタンパク質を含むことができる。PD−1阻害と併用して使用できる、
腫瘍特異的抗原の他の形態としては、腫瘍組織それ自体から単離した精製熱ショックタン
パク質(HSP)である。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞由来のタンパク質 30
断片を含み、これらのHSPsは、腫瘍免疫性惹起のために抗原提示細胞への運搬が極め
て効率的である(Suot,R&Srivastava,P(1995)Science
269:1585−1588;Tamura,Y.ら(1997)Science 27
8:117−120)。
【0231】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を引き起こすために用いることができる強力な抗
原提示細胞である。DCは、エクスビボで作り出すことでき、腫瘍細胞抽出物と同様、様
々なタンパク質およびペプチド抗原を産生し得る(Nestle,F.ら(1998)N
ature Medicine 4:328−332)。DCはまた、遺伝的手段により形
質導入することができ、同様にこれらの腫瘍抗原を発現させることができる。DCはまた 40
、免疫を目的として直接腫瘍細胞に融合させている(Kugler、A.ら(2000)
Nature Medicine 6:332−336)。ワクチンの接種方法としては、
DC免疫をPD−1阻害と効果的に組み合わせ、より強力な抗腫瘍応答を活性化する。
【0232】
PD−1阻害薬はまた、標準的な癌の治療法と組み合わせることができる。PD−1阻
害薬は、化学療法とも効果的に組み合わせることができる。これらの場合、投与した化学
療法剤の投与量を少なくすることも可能である(Mokyr,M.ら(1998)Can
cer Research 58:5301−5304)。このような組み合わせの例とし
ては、メラノーマ治療のため、デカルバチンと併用した抗PD−1抗体が挙げられる。こ
のような組み合わせの他の例としては、メラノーマ治療のためのインターロイキン−2( 50
(55) JP 6975733 B2 2021.12.1

IL−2)と併用した抗PD−1抗体が挙げられる。PD−1阻害薬と化学療法を併用し
て用いることの背景にある科学的理論とは、ほとんどの化学療法化合物の細胞毒性作用の
結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原レベルの増加をもたらすはずである
というものである。細胞死を介してPD−1阻害薬との相乗作用をもたらす他の組合せ療
法は、放射線、外科、およびホルモン療法である。これらのプロトコールはそれぞれ、宿
主中で腫瘍抗原のもとを作る。血管新生阻害剤はまた、PD−1阻害と組み合わせること
ができる。血管新生阻害は、宿主抗原提示経路に腫瘍抗原を供給できる細胞死を腫瘍に対
して起こす。
【0233】
PD−1を阻害する抗体は、また、FcαまたはFcγレセプターを発現するエフェク 10
ター細胞を腫瘍細胞に誘導する二重特異性抗体と併用して用いることができる(例えば、
米国特許5,922,845および5,837,243を参照)。二重特異性抗体を用い
て、2個の別々の抗原を標的とすることもできる。例えば、抗Fcレセプター/抗腫瘍抗
原(例えば、Her−2/neu)二重特異性抗体を用いて、腫瘍部位をマクロファージ
の標的とすることができる。この標的化によって、より効果的に腫瘍特異的応答を活性化
できる。これらの応答に対するT細胞の活性は、PD−1阻害薬を用いることによって増
強できる。あるいは、抗原を直接、腫瘍抗原と樹状細胞特異的細胞表面マーカーに結合す
る二重特異性抗体を用いてDCに送達することもできる。
【0234】
腫瘍は、極めて様々なメカニズムにより宿主免疫監視を回避する。これらのメカニズム 20
の多くは、腫瘍に発現しかつ免疫抑制性であるタンパク質を不活性化することにより克服
できる。これらには、特に、TGF−β(Kehrl、J.ら(1986)J.Exp.
Med. 163:1037−1050)、IL−10(Howard,M.&O´Ga
rra,A.(1992)Immunology Today 13:198−200)、
およびFasリガンド(Hahne,)M.ら(1996)Science 274:1
363−1365)が含まれる。これらすべてのそれぞれに対する抗体は、抗PD−1と
併用して用いることができ、免疫抑制剤の効果に対抗しかつ宿主による腫瘍免疫応答に有
利に作用する。
【0235】
宿主免疫応答性を活性化させるために用いられ得る他の抗体は、抗PD−1と併用して 30
用いることができる。これらには、DC機能と抗原提示を活性化させる樹状細胞の表面上
の分子が含まれる。抗CD40抗体は、事実上、T細胞ヘルパー活性の代わりとなること
ができ(Ridge,J.ら(1998)Nature 393:474−478)、P
D−1抗体と併用して用いることができる(Ito、N.ら(2000)Immunob
iology 201(5)527−40)。CTLA−4(例えば、米国特許5,81
1,097)、OX−40(Weinberg,A.ら(2000)Immunol 1
64:2160−2169)、4−1BB(Melero,I.ら(1997)Natu
re Medicine 3:682−685(1997))およびICOS(Hutlo
ff,A.ら(1999)Nature 397:262−266)のようなT細胞共刺
激性の分子に対する抗体活性化によっても、T細胞活性化レベルを増加することができる 40

【0236】
現在、骨髄移植は様々な造血系由来の腫瘍の治療に使用されている。移植片対宿主疾患
がこの治療の結果として起こるが、治療上の利益は、移植片対腫瘍応答から得ることがで
きる。PD−1阻害薬を用いて、ドナーから移植した腫瘍特異的T細胞の効果を高めるこ
とができる。
【0237】
また、腫瘍に対する抗原特異的T細胞のため、抗原特異的T細胞のエクスビボ活性化と
進展ならびにこれらの細胞をレシピーエントに養子移入することを含む試験的な治療プロ
トコールもいくつか存在する(Greenberg,R.&Riddell,S.(19 50
(56) JP 6975733 B2 2021.12.1

99)Science 285:546−51)。これらの方法を用いて、CMVのよう
な感染性物質に対するT細胞応答を活性化することもできる。抗PD−1抗体存在下にお
けるエクスビボ活性化は、養子移入されたT細胞の頻度および活性を高めると予測できる

【0238】
感染性疾患
本発明の他の方法としては、特定の毒素または病原体に暴露した患者を治療するものが
挙げられる。したがって、本発明の別の側面においては、被験者に対して抗PD−1抗体
またはその抗原結合部分を、当該被験者の感染性疾患を治療できるように投与することを
含む、当該被験者における感染性疾患を治療する方法を提供できる。好適には、当該抗体 10
は、(本文で記載のヒト抗PD−1抗体のいずれかのような)ヒト抗ヒトPD−1抗体で
ある。さらにまたはこれとは別に、当該抗体はキメラまたはヒト化抗体であってもよい。
【0239】
上記したような腫瘍への適用と同様に、抗体介在性のPD−1阻害薬は単独でまたはワ
クチンと併用してアジュバントとして用いることで、病原体、毒素および自己抗原に対す
る免疫応答を刺激することができる。この治療手法が特に有用な病原体の例として、現在
有効なワクチンが全くない病原体、または従来のワクチンが完全に有効ではない病原体が
含まれる。これらには、HIV、肝炎(A、B、&C)、インフルエンザ、ヘルペス、ジ
アルジア、マラリア、リューシュマニア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌が含まれるが、それら
に限定されない。PD−1阻害薬は、特に感染経過に伴い変化した抗原を提示するHIV 20
のような物質によって確立した感染に対して特に有用である。これらの新規エピトープは
、抗ヒトPD−1を投与した時点では外来性と認識され、従って、PD−1を介した負の
シグナルによって低下しない強力なT細胞応答を惹起する。
【0240】
本発明の方法で治療可能な感染症を起こす病原性ウイルスの例としては、HIV、肝炎
(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV−1、HAV−6、H
SV−II、およびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエ
ンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイル
ス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス、おたふくかぜウイルス、ロタウイルス、は
しかウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクチシニアウイルス、HTLVウイル 30
ス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウ
イルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられる。
【0241】
本発明の方法で治療可能な感染症を起こす病原菌の例としては、クラミジア、リケッチ
アバクテリア、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、ニューモコッカス、髄膜炎菌
およびコノコッカス、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネ
ラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、テタヌス、ボツリズム、炭素菌、ペスト、
レストスピラ症およびライムス病菌が挙げられる。
【0242】
本発明の方法で治療可能な感染症を起こす病原性真菌の例としては、カンジダ(アルビ 40
カンス、クルセイ、グラブラタ、トロピカリス等)、クリプトコッカスネオフォルマンス
、アスパルギルス(フミガツス、ニゲル等)、ムコラレス属(ムコル、アブスディア、リ
ゾファス)、スポロスリックスシェンキ、ブラストマイセスデルマチチディス、パラコッ
キジオイデスブラシリエンシス、コッキジオイデスイミチスおよびヒストプラズマカプス
ラツムが挙げられる。
【0243】
本発明の方法で治療可能な感染症を起こす病原性寄生体の例としては、赤痢アメーバ寄
生体、大腸バランチジウム、ナエグレリアファウレリ、アカンテャモエーバ種、ジアルジ
アランビア、クリプトスポリジウム種、ニューモシスチスカリニ、プラスモディウムビバ
ックス、バベシアミクロチ、トリパノゾーマブルーセイ、クルーズトリパノゾーマ、リュ 50
(57) JP 6975733 B2 2021.12.1

ーシュマニアドノヴァニ、トキシプラズマゴンジ、およびブラジル鉤虫が挙げられる。
【0244】
上記方法の全てにおいて、PD−1阻害薬は、サイトカイン療法(例えば、インターフ
ェロン、GM−CSF、G−CSF、IL−2)または二重特異性抗体療法のような腫瘍
抗原の提示増強を付与する他の形態の免疫療法と併用することできる(例えば、Holl
iger(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444
−6448、Poljak(1994)Structure 2:1121−1123を
参照)。
【0245】
自己免疫反応 10
抗PD−1抗体は、自己免疫応答を惹起し増幅できる。実際、腫瘍細胞とペプチドワク
チンを用いた抗腫瘍応答の誘発により、多くの抗腫瘍応答には、抗自己反応性を伴う(抗
CTLA−4+GM−CSF修飾B16メラノーマに見られる脱色、 van Elsas
ら、同上、Trp−2ワクチンマウスにおける脱色(Overwijk、W.ら(199
9)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96:2982−2987);TR
AMP腫瘍細胞ワクチンにより惹起された自己免疫前立腺炎(Hurwitz,A.(2
000)同上);メラノーマペプチド抗原ワクチン化およびヒト臨床治験で観察された尋
常性白斑(Rosenberg,SAおよびWhite,DE(1996)J.Immu
nother. Emphasis Tumor Immunol. 19(1):81−4
)。 20
【0246】
したがって、疾患治療としてこれらの自己タンパク質に対する免疫応答を効率的に起こ
すためのワクチン接種プロトコールを考案するため、抗PD−1阻害薬をさまざまな自己
タンパク質とともに用いることを考えることも可能である。例えば、アルツハイマー病は
、脳内アミロイド沈着物中におけるAβタンパク質の不適切な集積を伴い、アミロイドに
対する抗体応答は、これらのアミロイド沈着物を一掃できる(Schenkら、(199
9)Nature 400:173−177)。
【0247】
他の自己タンパク質はまた、IgEのような標的として、アレルギーおよび喘息治療の
ために使用でき、リウマチ性関節炎のためにTNFαが使用できる。最後に、様々なホル 30
モンに対する抗体応答が、抗PD−1抗体の使用により誘発できる。生殖ホルモンに対す
る中和抗体応答は、避妊のために使用できる。特定腫瘍増殖のために必要なホルモンおよ
び他の可溶性因子に対する中和抗体の応答性はまた、ワクチン標的としての可能性がある
と考えることができる。
【0248】
抗PD−1抗体の使用において上記に記載した同様の方法は、治療のための自己免疫応
答を誘発するために使用でき、アルツハイマー病におけるAβ、TNFαのようなサイト
カインおよびIgEを含むアミロイド沈着物のような他の自己抗原の不適切な集積を有す
る患者を治療できる。
【0249】 40
ワクチン
抗PD−1抗体は、抗PD−1抗体を問題となる抗原(例えば、ワクチン)を同時投与
することによって抗原特異的応答を刺激することができる。したがって、別の側面におい
て、本発明は、被験者に対して(i)抗原、および(ii)抗PD−1抗体またはその抗
原結合部分を投与し、被験者における抗原に対する免疫応答を増強することを含む、被験
者における抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供することができる。好適には、当
該抗体は、ヒト抗ヒトPD−1抗体(上述のヒト抗PD−1抗体のいずれかのような)で
ある。さらにまたはこれとは別に、当該抗体は、キメラまたはヒト化抗体であってもよい
。その抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原または病原体由来の抗原であ
ってもよい。このような抗原の例として、上述の腫瘍抗原(または腫瘍ワクチン)若しく 50
(58) JP 6975733 B2 2021.12.1

は上述のウイルス、細菌または他の病原体由来の抗原が挙げられるが、それらに限定され
ない。
【0250】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性
分子並びに免疫複合物)をインビボおよびインビトロで投与する適切な経路は、当該技術
により周知であり、当業者によって選択できる。例えば、抗体組成物は、注入(例えば、
静注または皮下)によって投与できる。使用する分子の適切な投与量は、被験者の年齢お
よび体重および抗体組成物の濃度および/または処方に依存する。
【0251】
先にも述べたように、本発明のヒト抗PD−1抗体は、細胞毒性物質、放射性毒性物質 10
または免疫抑制物質のような一種以上の他の治療物質と共投与できる。抗体は、当該物質
に(免疫複合体として)連結させることができ、または、当該物質とは別々に投与できる
。後者の場合(別々の投与の場合)、抗体は当該物質の前に、後にまたは同時に投与でき
るか、または、例えば、放射線のような抗癌療法のような他の公知の療法により共投与で
きる。このような治療物質には、特に、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラ
チンブレオマイシン硫酸塩、カルムスチン、クロラムブシル、デカルバチンおよびシクロ
ホスファマイドヒドロキシウレアのような抗腫瘍物質が含まれるが、それらはそれ自体、
患者にとって有毒であるかまたは準毒性であるレベルでのみ有効である。シスプラチンは
、100mg/投与として4週おきに静注し、アドリアマイシンは、60∼75mg/m
L投与として21日おきに静注する。本発明のヒト抗PD−1またはその抗原結合部分の 20
化学療法剤との共投与は、異なるメカニズムで作用する二種の抗癌剤が付与され、それら
は、ヒト腫瘍細胞に対して細胞毒性効果をもたらす。このような共投与は、薬物耐性の進
展または抗体に反応しなくなるという腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決でき
る。
【0252】
本発明の範囲にはまた、本発明の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、二重特異性若しくは
多重特異性分子または免疫複合物)と使用説明書を含むキットが含まれる。当該キットは
さらに、少なくとも一個の付加的試薬または一種以上の本発明のヒト抗体(例えば、第1
ヒト抗体と異なるPD−1抗原エピトープに結合する相補性活性を有するヒト抗体)を含
むことができる。キットは、通常、キット内容物の目的用途を示したラベルを有している 30
。用語ラベルは、すべての文書を含み、キットの上面またはキットとともに付与されるか
、そうでない場合にはキットに添付される。
【0253】
併用療法
本発明は、部分的に、下記の実験データに基づいている。マウス腫瘍モデル(MC38
結腸癌およびSA1/N線維肉腫)を用いて、免疫刺激治療用抗体−抗CTLA−4およ
び抗PD−1を組み合わせることによって、腫瘍を治療するインビボ効果を検討した。併
用免疫療法は、腫瘍細胞移植と同時に(実施例14と17)または形成された腫瘍となる
までに十分な時間腫瘍細胞を移植後(実施例15、16および18)に行われた。抗体治
療タイミングにかかわらず、単独での抗CTLA−4抗体治療および単独での抗PD−1 40
抗体(ラット抗マウスPD−1をマウスイムノグロブリンFc領域で修飾したキメラ抗体
、実施例1を参照)治療は、MC38腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖の低下に中等度の効果
を示した(例えば、図21、24および27を参照)。抗CTLA−4抗体は単独でも、
SA1/N腫瘍モデルにおいて非常に効果的で(図30Dを参照)、このモデルにおける
併用試験では、抗CTLA−4抗体の必要量は低用量であった。にもかかわらず、抗CT
LA−4抗体と抗PD−1抗体の併用治療は、腫瘍増殖の低下に対し、いずれかの抗体単
独による治療に比較して予想外の極めて高い効果を示した(例えば、図21D、24D、
30Fおよび33H−Jを参照)。さらに、実施例14、16および18の結果は、抗C
TLA−4抗体と抗PD−1抗体の併用治療が、いずれかの抗体単独に比較して最適治療
用量以下でも有意の(相乗的)効果を示すことが明らかである(すなわち、併用療法は、 50
(59) JP 6975733 B2 2021.12.1

いずれかの単独療法よりも治療用量以下で驚くほど高い効果を示した)。理論にしばられ
ることなく、PD−1およびCTLA−4阻害によるT細胞活性化閾値の上昇によって、
抗腫瘍応答を宿主中で活性化することができる。
【0254】
一つの態様において、本発明は、PD−1抗体およびCTLA−4抗体を被験者に投与
することを含む、高増殖性疾患を治療する方法を提供することができる。さらなる態様に
おいて、抗PD−1抗体を治療用量以下で投与し、抗CTLA−4抗体を治療用量以下で
投与し、または両者を治療用量以下で投与する。別の態様において、本発明は、被験者に
対して抗PD−1抗体と治療量以下の抗CTLA−4抗体を投与することを含む、免疫刺
激剤による高増殖性疾患治療に関連する有害事象を回避する方法を提供する。当該被験者 10
がヒトである実施形態も存在する。また、抗CTLA−4抗体は、ヒト配列モノクローナ
ル抗体10D1であり、抗PD−1抗体は、17D8、2D3、4H1、5C4および4
A11のようなヒト配列モノクローナル抗体であるような実施形態も存在する。ヒト配列
モノクローナル抗体17D8、2D3、4H1、5C4および4A11は、米国仮特許6
0/679,466に記載のようにして単離し構造解析されている。
【0255】
本発明の抗CTLA−4抗体および抗PD−1モノクローナル抗体(mAb)およびヒ
ト配列抗体は、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature
256:495のような標準的体細胞ハイブリダイゼーション法のような従来のモノク
ローナル抗体方法を含め、様々な技術により作製できる。例えば、Bリンパ球のウイルス 20
性または発癌性形質転換のような、モノクローナル抗体産生のためのいかなる技術も使用
できる。ハイブリドーマ調製のための一つの動物系は、マウスの系である。マウスにおけ
るハイブリドーマ産生は、非常によく確立された操作である。免疫プロトコールと融合す
る免疫脾臓細胞を単離する技術は、当該技術で公知である。融合パートナー(例えば、マ
ウス骨髄細胞)および融合操作もまた、公知である(例えば、HarlowおよびLan
e(1988)Antibodies、A Laboratory Manual,Col
d Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spri
ng Harbor New Yorkを参照)。
【0256】
本発明の抗CTLA−4抗体は、ヒトCTLA−4上のエピトープに結合するため、ヒ 30
トB7カウンターレセプターとヒトCTLA−4の相互作用を阻害することができる。ヒ
トCTLA−4のヒトB7との相互作用は、ヒトCTLA−4レセプターを有するT細胞
の不活性化を起こすシグナルを伝達するので、相互作用を拮抗することは、ヒトCTLA
−4レセプターを有するT細胞活性化を効果的に誘発するか、増強するかまたは持続させ
るため、免疫応答を持続させたりまたは増強したりする。抗CTLA−4抗体は米国特許
5,811,097、5,855,887、6,051,227中に、PCT出願公報W
O01/14424およびWO00/37504中におよび米国特許公報2002/00
39581中に記載されている。これらの参考文献はそれぞれ、ここで、抗CTLA−4
抗体の説明する目的のため参考文献として引用している。臨床抗CTLA−4抗体の例と
しては、ヒトモノクローナル抗体10D1であり、WO01/14424および米国特許 40
出願09/644,668に開示されている。抗体10D1は、単独またはワクチン、化
学療法またはインターロイキン−2と組み合わせて単回投与または複数回投与で、転移性
メラノーマ、前立腺癌、リンパ腫、腎細胞癌、乳癌、卵巣癌およびHIVと診断された5
00名以上の患者に対して投与された。本発明の方法に含まれる他の抗CTLA−4抗体
は、例えば、WO98/42752、WO00/37504、米国特許6,207,15
6、Hurwitzら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 9
5(17):10067−10071、Camachoら(2004)J.Cln.On
cology 22(145):アブストラクト番号2505(抗体CP−675206
)、およびMokyrら(1998)Cancer Res. 58:5301−5304
に開示されている。本発明の方法には、ヒト配列抗体、好適にはモノクローナル抗体であ 50
(60) JP 6975733 B2 2021.12.1

る抗CTLA−4抗体の使用する実施形態も存在し、また、モノクローナル抗体10D1
を使用する実施形態も存在する。
【0257】
ある態様において、抗CTLA−4抗体は、ヒトCTLA−4に対してKDが5×10
−8
M以下で結合し、ヒトCTLA−4に対してKDが1×10−8M以下で結合し、ヒ
トCTLA−4に対してKDが5×10−9M以下で結合し、またはヒトCTLA−4に
対してKDが1×10−8M∼KD1×10−10Mの間で結合する。
【0258】
抗体の組み合わせは、PD−1およびCTLA−4の阻害による高増殖性疾患に対する
免疫応答の増強に有用である。好適な態様において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。 10
例えば、これらの分子は、インビトロまたはエクスビボにおける培養細胞または、例えば
、インビボでヒト被験者に投与することができ、様々な状況における免疫性を増強するこ
とができる。したがって、本発明は、被験者における免疫応答が変化するような本発明の
抗体の組み合わせまたはそれらの抗原結合部分の組み合わせを被験者に投与して、当該被
験者における免疫応答が修飾されるようにすることを含む、被験者の免疫応答を変化させ
る方法を提供するという側面がある。好適には、当該応答は、増強、刺激または上方制御
される。別の態様において、本開示は、被験者に対して抗PD−1抗体と治療用量以下の
の抗CTLA−4抗体を投与することを含む、免疫刺激治療剤により高増殖性疾患治療に
関連した有害事象の回避方法を提供する。
【0259】 20
抗体によるPD−1とCTLA−4の阻害は、患者における癌性細胞に対する免疫応答
を増強できる。本開示の抗体を用いて増殖を阻害できる癌には、一般的に免疫療法応答性
の癌が含まれる。本開示の併用療法による治療に適した癌の代表例としては、メラノーマ
(例えば、転移性悪性メラノーマ)、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌および肺癌(例えば
、非小細胞肺癌)を含む。本発明の方法を用いて治療できる他の癌の例として、骨癌、膵
癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚または眼窩内悪性メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛
門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、子宮頚部
カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰部カルシノーマ、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫
、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿道癌、
陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球 30
性白血病を含む慢性または急性白血病、小児固形癌、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓
または尿管の癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫
、腫瘍新脈管形成、脊椎腫瘍、脳幹グライオーマ、脳下垂体アデノーマ、カポシ肉腫、表
皮腫、扁平細胞癌、T細胞リンパ腫、アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌、および上記癌
の組み合わせを含む。本発明はまた、転移性癌の治療に有用である。
【0260】
ある態様において、ここで論じた治療用抗体の併用は、薬学的に許容できる担体中の単
独組成物として同時に投与できるか、薬学的に許容できる担体中の個々の組成物として各
抗体とともに同時に投与することもできる。他の実施形態としては、併用する治療用抗体
は、順次投与することができる。例えば、抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体は、 40
最初に抗CTLA−4抗体を、次に抗PD−1を投与する、あるいは最初に抗PD−1を
、次に抗CTLA−4を投与するというように順次投与することができる。さらにもし一
種以上の併用療法の投与が順次投与されるならば、順次投与の順番は、各投与時点で逆に
することもあるいは同一順番にすることもでき、順次投与を、同時投与と組み合わせるこ
ともできるし、あるいはその併用物を投与することもできる。例えば、抗CTLA−4抗
体と抗PD−1抗体の併用の最初の投与は同時投与とし、第2回目の投与は、抗CTLA
−4を最初に、次に抗PD−1を投与し、第3回目の投与は、抗PD−1を最初に、次に
抗CTLA−4を投与することができる。投与方法として他の代表例としては、抗PD−
1を最初に抗CTLA−4を次に行うという初回投与を行い、その後は同時投与を行うこ
ともできる。 50
(61) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0261】
必要に応じて、さらに、抗PD−1および抗CTLA−4抗体の併用を、癌性細胞、精
製腫瘍抗原(組み換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免
疫刺激サイトカインをコードする遺伝子を移入した細胞のような免疫原性物質と組み合わ
せることができる(Heら(2004)J.Immunol. 173:4919−28
)。使用できる腫瘍ワクチンの例には、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MAR
T1および/またはチロシナーゼのペプチドのようなメラノーマ抗原のペプチドまたはサ
イトカインGM−CSF発現のために移入した腫瘍細胞(下記でさらに説明)を含む。
【0262】
PD−1およびCTLA−4の複合的な阻害は、さらに、ワクチンプロトコールと併用 10
することができる。腫瘍に対するワクチン接種について、多くの試験的方法が工夫されて
きた(Rosenberg、S.、2000、Development of Cance
r Vaccines,ASCO Educational Book Spring:60
−62、Logothetis,C.,2000、ASCO Educational B
ook Spring:300−302、Khayat,D.2000,ASCO Edu
cational Book Spring:414−428、Foon,K(2000)
ASCO Educational Book Spring:730−738、また、R
estifoおよびSznol,Cancer Vaccines,Ch.61,pp.
3023−3043 (DeVita,V.ら(編著)、1997、Cancer:Pr
inciples and Practice of Oncology. Fifth Ed 20
ition中)を参照)。これら方法の一つとして、自己または同種異系の腫瘍細胞を用
いてワクチンを調製する方法が存在する。これらの細胞性ワクチンは、GM−CSFを発
現するように腫瘍細胞を形質転換した時、最も有効であることが明らかとなっている。G
M−CSFは、腫瘍ワクチン接種にとって抗原提示の強力な活性化剤であることが明らか
となっている(Dranoffら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.
USA 90:3539−43)。
【0263】
様々な腫瘍における遺伝子発現と大規模な遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる
腫瘍特異的抗原が定義されることになった(Rosenberg(1999)Immun
ity 10:281−7)。多くの場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍中および腫 30
瘍が起こった細胞中で発現する分化抗原であり、例えば、メラノサイト抗原gp100、
MAGE抗原およびTrp−2である。さらに重要なこととして、これらの抗原の多くが
宿主において発見された腫瘍特異的T細胞の標的であることを示されている。ある態様に
おいて、ここに述べた抗原組成物を用いた、PD−1およびCTLA−4による複合的な
阻害は、腫瘍で発現した組み換えタンパク質および/またはペプチドの集団とともに、こ
れらのタンパク質に対する免疫応答を生み出すために用いることができる。これらのタン
パク質は、通常、免疫系によって自己抗原とみなさるため、それらに対して寛容である。
腫瘍抗原にはまた、タンパク質テロメラーゼを含むことができ、それは、染色体テロメア
の合成に必要でかつそれは85%を超えるヒト癌と限定された体細胞組織にみで発現する
(Kim,Nら(1994)Science 266:2011−2013)。(これら 40
の体細胞組織は、さまざまな手段で免疫攻撃から保護されている)。腫瘍抗原は、タンパ
ク質配列を改変するかまたは2個の関連のない配列(すなわち、フィラデルフィア染色体
におけるbcr−ab1)の融合タンパク質を生じる体細胞変異であるため、癌細胞に発
現する“新抗原”であり得るか、またはB細胞腫瘍由来のイデオタイプであり得る。
【0264】
他の腫瘍ワクチンには、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVお
よびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)のようなヒト癌で指摘され
ているウイルス由来のタンパク質を含むことができる。PD−1阻害薬と併用して使用で
きる、腫瘍特異的抗原の別の形態は、腫瘍組織それ自体から単離した精製熱ショックタン
パク質(HSP)である。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞由来のタンパク質 50
(62) JP 6975733 B2 2021.12.1

断片を含み、これらのHSPは、腫瘍免疫性惹起のために抗原提示細胞への運搬が極めて
効率的である(Suot,R&Srivastava,P(1995)Science
269:1585−1588、Tamura,Y.ら(1997)Science 27
8:117−120)。
【0265】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を引き起こすために使用できる強力な抗原提示細
胞である。DCは、エクスビボで作り出すことができ、腫瘍細胞抽出物と同様、様々なタ
ンパク質およびペプチド抗原および腫瘍細胞抽出物を産生することができる(Nestl
e,F.ら(1998)Nature Medicine 4:328−332)。DCは
また、遺伝的手段により形質導入でき、同様にこれらの腫瘍抗原を発現させることができ 10
る。DCはまた、免疫を目的として直接腫瘍細胞に融合させている(Kugler、A.
ら(2000)Nature Medicine 6:332−336)。ワクチン化方法
として、DC免疫をPD−1とCTLA−4複合阻害薬と効果的にさらに組み合わせるこ
とで、より強力な抗腫瘍応答を活性化することができる。
【0266】
PD−1およびCTLA−4複合阻害薬はまた、標準的な癌の治療法と組み合わせるこ
とができる。例えば、PD−1およびCTLA−4の複合阻害薬は、化学療法とも効果的
に組み合わせることができる。これらの場合、抗PD−1および抗CTLA−4抗体を併
用することで観察されたように、ここに開示した併用して投与する化学療法剤の投与量を
少なくすることも可能である(Mokyrら(1998)Cancer Researc 20
h 58:5301−5304)。このような組み合わせの例としては、メラノーマ治療
のため、さらに、デカルバチンと併用して組み合わせた抗PD−1抗体および抗CTLA
−4抗体が挙げられる。このような組み合わせの他の例としては、メラノーマ治療のため
のインターロイキン−2(IL−2)と併用した抗PD−1抗体と抗CTLA−4抗体が
挙げられる。PD−1と抗CTLA−4複合阻害薬と化学療法を併用することの背後にあ
る科学的理論とは、ほとんどの化学療法化合物の細胞毒性作用がもたらす細胞死が、抗原
提示経路における腫瘍抗原レベルの増加をもたらすはずであるということである。細胞死
を介したPD−1とCTLA−4複合阻害薬と相乗作用をもたらす他の組合せ療法は、放
射線、外科およびホルモン療法である。これらのプロトコールのそれぞれは、宿主中で腫
瘍抗原の起源を作る。血管新生阻害剤はまた、PD−1およびCTLA−4複合阻害薬と 30
組み合わせることができる。血管新生阻害は腫瘍細胞死を起こすことによって、宿主抗原
提示経路に腫瘍抗原を供給できる。
【0267】
PD−1およびCTLA−4阻害抗体の併用はまた、腫瘍細胞をFcαまたはFcγレ
セプター発現エフェクター細胞の標的とするような二重特異性抗体と併用して用いること
ができる(例えば、米国特許5,922,845および5,837,243を参照)。二
重特異性抗体を用いて、2種の別々の抗原を標的とすることもできる。例えば、抗Fcレ
セプター/抗腫瘍抗原(例えば、Her−2/neu)二重特異性抗体は、腫瘍部位をマ
クロファージの標的としている。この標的化によって、より効果的に腫瘍特異的応答を活
性化できる。これらの応答におけるT細胞の攻撃力は、PD−1とCTLA−4複合阻害 40
薬の使用により増強することができる。これとは別に、抗原を直接、腫瘍抗原と樹状細胞
特異的細胞表面マーカーに結合する二重特異性抗体を用いてDCに運搬させることもでき
る。
【0268】
別の例として、抗PD−1および抗CTLA−4抗体併用は、リツキサン(登録商標)
(リツキシマブ)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、ベキサール(登録商
標)(トシツモマブ)、ゼバリン(登録商標)(イブリツモマブ)、カムパス(登録商標
)(アレムツズマブ)、リンホサイド(登録商標)(エプルチズマブ)、アバスチン(登
録商標)(ベバシズマブ)、およびタルセバ(登録商標)(エルロチニブ)等のような抗
腫瘍抗体と併用して用いることができる。一例として、理論に拘束されることはないが、 50
(63) JP 6975733 B2 2021.12.1

抗癌抗体または毒素と結合させた抗癌抗体を用いて治療することによって、CTLA−4
またはPD−1介在性免疫応答を増強するであろう癌細胞死(例えば、腫瘍細胞)をもた
らすことができる。実施形態として、例えば、高増殖性疾患(例えば、癌性腫瘍)の治療
には、抗PD−1および抗CTLA−4抗体と同時または順次またはその組み合わせによ
る併用して用いる抗癌抗体を含んでいてもよく、それらは、宿主による抗腫瘍免疫応答を
増強することができる。
【0269】
腫瘍は、極めて様々なメカニズムにより宿主免疫監視を回避する。これらのメカニズム
の多くは、腫瘍に発現しかつ免疫抑制性であるタンパク質を不活性化することにより克服
できる。これらには、特に、TGF−β(Kehrl、J.ら(1986)J.Exp. 10
Med. 163:1037−1050)、IL−10(Howard,M.&O´Ga
rra,A.(1992)Immunology Today 13:198−200)、
およびFasリガンド(Hahne,M.ら(1996)Science 274:13
63−1365)が含まれる。これらすべてのそれぞれに対する抗体は、抗PD−1と抗
CTLA−4の組み合わせと併用して用いることができ、免疫抑制剤の効果に対抗しかつ
宿主による腫瘍免疫応答に有利に作用する。
【0270】
宿主免疫応答性を活性化させるために使用できる他の抗体は、抗PD−1と抗CTLA
−4の組み合わせと併用して用いることができる。これらには、DC機能と抗原提示を活
性化させる樹状細胞の表面上の分子が含まれる。抗CD40抗体は、有効にT細胞ヘルパ 20
ー活性の代わりとなることができ(Ridge,J.ら(1998)Nature 39
3:474−478)、PD−1抗体およびCTLA−4抗体と併用使用できる(Ito
、N.ら(2000)Immunobiology 201(5)527−40)。OX
−40(Weinberg,A.ら(2000)Immunol 164:2160−2
169)、4−1BB(Melero,I.ら(1997)Nature Medici
ne 3:682−685(1997))およびICOS(Hutloff,A.ら(1
999)Nature 397:262−266)のようなT細胞共刺激性の分子に対す
る抗体活性化もまた、T細胞の活性化レベルを増加することができる。
【0271】
骨髄移植は現在、様々な造血系由来の腫瘍の治療に使用されている。移植片対宿主疾患 30
がこの治療の結末であるので、治療上の利益は、移植片対腫瘍応答から得ることができる
。抗PD−1および抗CTLA−4複合阻害薬を用いて、ドナーから移植した腫瘍特異的
T細胞の効果を高めることができる。
【0272】
また、腫瘍に対する抗原特異的T細胞を誘発するため、抗原特異的T細胞のエクスビボ
活性化および進展ならびにこれらの細胞のレシピーエントへの養子導入を含む試験的な治
療プロトコールがいくつか存在する(Greenberg,R.&Riddell,S.
(1999)Science 285:546−51)。これらの方法は、CMVのよう
な感染性物質に対するT細胞応答を活性化するために用いることもできる。抗PD−1抗
体および抗CTLA−4抗体存在下におけるエクスビボ活性化は、養子導入したT細胞の 40
頻度および活性を高めると予測できる。
【0273】
本文に述べたように、免疫刺激治療の抗体療法後、例えば、抗CTLA−4抗体による
治療後の消化管(下痢および大腸炎)および皮膚(発疹および膿胞)のような臓器は免疫
関連性の有害事象を示す。例えば、非結腸性消化管免疫関連性の有害事象もまた、抗CT
LA−4抗体療法後の食道(食道炎)、十二指腸(十二指腸炎)および回腸(回腸炎)で
観察されている。
【0274】
ある態様において、本発明は、被験者に対して抗PD−1抗体と治療用量以下の抗CT
LA−4抗体を投与することを含む、免疫刺激剤による高増殖性疾患治療に関連する有害 50
(64) JP 6975733 B2 2021.12.1

事象を回避する方法を提供する。例えば、本発明の方法は、非吸収性ステロイドを患者に
投与することを含む、免疫刺激治療抗体−誘発回腸炎または下痢の頻度を低下させる方法
を提供する。免疫刺激治療抗体を投与されるいずれの患者もこのような抗体によって誘発
された回腸炎または下痢を発症するリスクがあるので、この全患者群は、本発明の方法に
よる治療に適している。ステロイドは炎症性腸疾患(IBD)を治療しかつIBDの増悪
を防止するために投与されてきたのであるが、それらは、IBDと診断されなかった患者
のIBDを予防するために(その頻度を低下させるために)使用されたことはなかった。
ステロイドに関連した深刻な副作用は、非吸収性ステロイドでさえも予防用途には適して
いなかった。
【0275】 10
さらに態様において、PD−1およびCTLA−4複合阻害(すなわち、免疫刺激治療
抗体抗PD−1および抗CTLA−4)はさらに、いかなる非吸収性ステロイドの使用と
も組み合わせることができる。本文中、“非吸収性ステロイド”とは、肝での代謝後ステ
ロイドの生体利用性が約20%未満と低くなるように広い初回通過代謝を示す糖質コルチ
コイドステロイドである。本発明の一態様において、非吸収性ステロイドは、ブデソニド
である。ブデソニドは局所作用性の糖質コルチコイドで、経口投与後、主に、肝により広
く代謝される。ENTOCORT EC(登録商標)(アストラ−ゼネカ)はブデソニド
のpHおよび時間依存性経口製剤であり、回腸への薬物運搬および結腸全体における薬物
運搬を最適化するように開発された。ENTOCORT EC(登録商標)は、米国にお
いて回腸および/または下向結腸を巻き込む軽度から中等度のクローン病の治療に承認さ 20
れている。クローン病治療のための通常の用量のENTOCORT EC(登録商標)は
、6∼9mg/日である。ENTOCORT EC(登録商標)は、消化管粘膜から吸収
され保持される前に小腸において放出される。いったん消化管粘膜標的組織を通過すると
、ENTOCORT EC(登録商標)は、肝のサイトクロームP450系で広く代謝物
に代謝されるが、糖質コルチコイド活性は無視できる。したがって、生体利用性は低い(
約10%)。ブデソニドの生体利用性が低いことから、ファーストパス代謝がそれほど広
範ではない他の糖質コルチコイドに比較して治療率が改善されることになる。ブデソニド
は有害事象はほとんどなく、全身作用性のコルチコステロイドに比較して、視床下部−下
垂体抑制は少ない。しかし、ENTOCORT EC(登録商標)の慢性的投与の結果、
高コルチコイド症や副腎抑制のような全身的糖質コルチコイド効果が起こることになる。 30
PDR 第58版、2004;608−610を参照。
【0276】
さらに別の態様において、非吸収性ステロイドと組み合わせたPD−1およびCTLA
−4複合阻害(すなわち、免疫刺激治療抗体抗PD−1および抗CTLA−4)はさらに
、サリシレートと組み合わせることができる。サリシレートには、例えば、スルファサラ
ジン(AZULFIDINE(登録商標)、Pharmacia&UpJohn)、オル
サラジン(DIPENTUM(登録商標)、Pharmacia&UpJohn)、バル
サラジド(COLAZAL(登録商標)、Salix Pharmaceuticals
,Inc.)およびメサラミン(ASACOL(登録商標)、Procter&Gamb
le Pharmaceuticals、PENTASA(登録商標)、Shire US 40
;CANASA(登録商標),Axcan Scandipharm,Inc.;ROW
ASA(登録商標)、Solvay)のような5−ASA剤が含まれる。
【0277】
本発明の方法によれば、抗PD−1および抗CTLA−4抗体および非吸収性ステロイ
ドと併用投与したサリシレートは、免疫刺激抗体によって誘発された大腸炎頻度を低下さ
せる目的で、サリシレートおよび非吸収性ステロイドの重複または順次投与を含んでいて
もよい。したがって、例えば、本発明の免疫刺激抗体によって誘発された大腸炎頻度を低
下させる方法は、サリシレートおよび非吸収性ステロイドを同時にまたは順次(例えば、
サリシレートを非吸収性ステロイドの6時間後に投与する)またはそのいかなる組み合わ
せ投与も含む。さらに本発明によれば、サリシレートおよび非吸収性ステロイドは、同一 50
(65) JP 6975733 B2 2021.12.1

経路(例えば、両者を経口投与する)または異なる経路(例えば、サリシレートを経口投
与し、非吸収性ステロイドを直腸投与する)により投与でき、それらは、抗PD−1およ
び抗CTLA−4抗体投与に用いた経路とは異なっていてもよい。
【0278】
本発明をさらに下記の実施例で説明するが、それらは、さらに限定するものとしてはみ
なしてはいけない。本明細書で引用した図全ておよび参考文献、特許および公表された特
許出願は、本文で参考文献として組み込まれている。
【実施例】
【0279】
(実施例1) 10
PD−1に対するヒトモノクローナル抗体の作製
抗原
抗原として、免疫プロトコールでは、(i)PD−1の細胞外部分を含む組み換え融合
タンパク質および(ii)膜結合全長PD−1の両者を利用した。両抗原とも、CHO細
胞株中で組み換えトランスフェクション方法により作製した。
【0280】
形質転換HuMabおよびKMマウス(商標)
PD−1に対する完全ヒトモノクローナル抗体を、それぞれがヒト抗体遺伝子を発現す
るHuMab形質転換マウスのHCo7系と形質転換トランス染色体マウスのKM系を用
いて調製した。これらのマウス系のそれぞれにおいて、内因性マウスκ軽鎖遺伝子を、C 20
henら(1993)EMBO J. 12:811−820に記載のようにホモ接合によ
り破壊し、内因性マウス重鎖遺伝子は、PCT公報WO01/09187の実施例1に記
載のように、ホモ接合により破壊した。これらのマウス系のそれぞれは、Fishwil
dら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851に記
載されているようにヒトκ軽鎖導入遺伝子KCo5を有している。HCo7系は、米国特
許5,545,806、5,625,825、および5,545,807に記載されてい
るように、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子を有している。KM系は、PCT公報WO02/
43478に記載されているように、SC20トランス染色体を含む。
【0281】
HuMabおよびKMの免疫 30
PD−1に対する完全ヒトモノクローナル抗体を産生させるため、HuMabおよびK
Mマウス(商標)を、精製組み換えPD−1融合タンパク質およびPD−1移入CHO細
胞を抗原として免疫した。HuMabマウスのための一般的免疫スキームは、Lonbe
rg、N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fis
hwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:84
5−851およびPCT公報WO98/24884に記載されている。当該マウスは、第
1回抗原注入時に6−16週齢であった。PD−1融合タンパク質抗原と5−10×10

細胞の精製組み換え調製物(5∼50μg)を用いて、HuMabマウスおよびKMマ
ウス(商標)を腹腔内、皮下(Sc)または足蹠注入により免疫した。
【0282】 40
形質転換マウスは完全フロイントアジュバントまたはRibiアジュバント中抗原で、
腹腔内に、2回免疫し、次に不完全フロイントアジュバントまたはRibiアジュバント
中抗原により(総計11回まで)、腹腔内に3∼21日間免疫した。免疫応答は、眼窩後
方出血によりモニタリングした。血漿は、ELISA(下記に説明)によりスクリーニン
グし、抗PD−1ヒトイムノグロブリンの十分な力価をもつマウスを融合に用いた。屠殺
3日前にマウスに抗原を静注によりブーストし、脾臓を除去した。典型的には、各抗原に
ついて10∼35回の注入を行った。数ダースのマウスを各抗原について免疫した。
【0283】
抗PD−1抗体産生HuMabまたはKMマウス(商標)の選択
PD−1に結合する抗体を産生するHuMabまたはKMマウス(商標)を選択するた 50
(66) JP 6975733 B2 2021.12.1

め、免疫マウス由来の血清をFishwild,D.ら(1996)に記載のようにEL
ISAによって試験した。簡単に述べると、マイクロタイタープレートに、PBS中1∼
2μg/mLで形質移入CHO細胞由来の精製組み換えPD−1融合タンパク質をコート
し、100μL/ウェルを4℃で一晩インキュベーションし、次に、200μL/ウェル
のPBS/Tween(0.05%)中5%ウシ胎児血清によりブロックした。PD−1
免疫マウス由来の血清希釈物を各ウェルに添加し、室温で1∼2時間インキュベーション
した。このプレートをPBS/Tweenで洗浄し、その後、西洋わさびパーオキシダー
ゼ(HRP)結合ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体とともに室温で1時間インキュベ
ーションした。洗浄後、プレートをABTS基質(Sigma,A−1888,0.22
mg/mL)で発色させ、分光光度計によりOD415−495で分析した。最大力価の 10
抗PD−1抗体を産生したマウスを融合に使用した。融合は、下記に記載のように実施し
、ハイブリドーマ上清を、ELISAにより抗PD−1活性について試験した。
【0284】
PD−1に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生
HuMabまたはKMマウスから単離したマウス脾臓細胞を、標準的プロトコールによ
るPEGまたはCyto Pulse大型チェンバー細胞融合エレクトポレータ(Cyt
o Pulse Sciences,Inc.,Glen Burnie,MD)を用いる
電場に基づくエレクトロフュージョンを用いて、マウス骨髄細胞株に融合させた。生成し
たハイブリドーマは、次に抗原結合抗体の産生をスクリーニングした。免疫マウスからの
脾臓細胞の単細胞懸濁物を、50%PEG(Sigma)により、その4分の1数のSP 20
2/0非分泌性マウス骨髄細胞(ATCC、CRL1581)に融合させた。細胞を、約
1×105/ウェルで平底マイクロタイタープレートに接種し、10%胎児クローン血清
、10%P388D1(ATCC,CRL TIB−63)調製培地、DMEM(Med
iatech,CRL 10013、高グルコース、L−グルタミンおよびピルビン酸ナ
トリウムを有する)中3∼5%オリゲン(IGEN)及び5mM HEPES、0.05
5mM 2−メルカプトエタノール、50mg/mL ゲンタマイシン、および1XHAT
(Sigma、CRL P−7185)を含む選択培地中で約2週間、インキュベーショ
ンした。1∼2週後、細胞を、HATをHTに置き換えた培地中で培養した。次に、それ
ぞれのウェルを、ヒト抗PD−1モノクローナルIgG抗体についてELISA(上記で
記載)でスクリーニングした。いったん強いハイブリドーマ増殖が起こったならば、培地 30
を通常10∼14日後にモニタリングした。抗体分泌ハイブリドーマを再度接種し、再度
スクリーニングし、もしヒトIgGがまだ陽性であるならば、抗PD−1モノクローナル
抗体を少なくとも2回、限定希釈によってサブクローニングした。次に、安定なサブクロ
ーンをインビトロで培養し、少量の抗体を組織培地に産生させ、さらに特性解析した。
【0285】
ハイブリドーマ17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4を
選択し、さらに分析した。
【0286】
(実施例2)
ヒトモノクローナル抗体17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5 40
F4の構造特性解析
17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4の重鎖および軽鎖
可変領域をコードするcDNA配列を、標準的PCR技術を用いて17D8、2D3、4
H1、5C4、4A11、7D3および5F4ハイブリドーマからそれぞれ得て、標準的
DNA配列決定技術を用いて配列決定した。
【0287】
17D8の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図1Aおよび配列番号5
7および1にそれぞれ示した。
【0288】
17D8の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図1Bおよび配列番号6 50
(67) JP 6975733 B2 2021.12.1

4および8にそれぞれ示した。
【0289】
17D8重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列
と比較し、17D8重鎖がヒト生殖細胞型VH3−33由来のVH部分、未決定D部分、
およびヒト生殖細胞型JH4b由来のJH部分を利用することを明らかにした。17D8
VH配列の生殖細胞VH3−33配列への配列比較を図8に示した。さらに17D8 V
H配列をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分析し、図1Aおよび8ならびに
それぞれ配列番号15、22および29に示した重鎖CDR1、CDR2およびCD3領
域を図示できた。
【0290】 10
17D8軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列
と比較し、17D8軽鎖がヒト生殖細胞型VK L6由来のVL部分およびヒト生殖細胞
型JK4由来のJK部分を利用することを明らかにした。17D8 VL配列の生殖細胞
VK L6配列への配列比較を図9に示した。さらに17D8 VL配列をCDR領域決定
のKabatシステムを用いて分析し、図1Bおよび9ならびにそれぞれ配列番号36、
43および50に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0291】
2D3の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図2Aおよび配列番号58
および2にそれぞれ示した。
【0292】 20
2D3の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図2Bおよび配列番号65
および9にそれぞれ示した。
【0293】
2D3重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列と
比較し、2D3重鎖がヒト生殖細胞型VH3−33由来のVH部分、ヒト生殖細胞型7−
27由来のD部分、およびヒト生殖細胞型JH4b由来のJH部分を利用することを明ら
かにした。2D3 VH配列の生殖細胞VH3−33配列への配置を図8に示した。さら
に2D3 VH配列をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分析し、図2Aおよ
び8ならびにそれぞれ配列番号16、23および30に示した重鎖CDR1、CDR2お
よびCD3領域を図示できた。 30
【0294】
2D3軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列と
比較し、2D3軽鎖がヒト生殖細胞型VK L6由来のVL部分およびヒト生殖細胞型J
K4由来のJK部分を利用することを明らかにした。2D3 VL配列の生殖細胞VK L
6配列への配列比較を図9に示した。さらに2D3 VL配列をCDR領域決定のKab
atシステムを用いて分析し、図2Bおよび9ならびにそれぞれ配列番号37、44およ
び51に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0295】
4H1の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図3Aおよび配列番号59
および3にそれぞれ示した。 40
【0296】
4H1の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図3Bおよび配列番号66
および10にそれぞれ示した。
【0297】
4H1重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列と
比較し、4H1重鎖がヒト生殖細胞型VH3−33由来のVH部分、未決定D部分、およ
びヒト生殖細胞型JH 4b由来のJH部分を利用することを明らかにした。4H1 VH
配列の生殖細胞VH3−33配列への配列比較を図8に示した。さらに4H1 VH配列
をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分析し、図3Aおよび8ならびにそれぞ
れ配列番号17、24および31に示した重鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図 50
(68) JP 6975733 B2 2021.12.1

示できた。
【0298】
4H1軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列と
比較し、4H1軽鎖がヒト生殖細胞型VK L6由来のVL部分およびヒト生殖細胞型J
K 1由来のJK部分を利用することを明らかにした。4H1 VL配列の生殖細胞VK
L6配列への配列比較を図10に示した。さらに、4H1 VL配列をCDR領域決定の
Kabatシステムを用いて分析し、図3Bおよび10ならびにそれぞれ配列番号38、
45および52に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0299】
5C4の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図4Aおよび配列番号60 10
および4にそれぞれ示した。
【0300】
5C4の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図4Bおよび配列番号67
および11にそれぞれ示した。
【0301】
5C4重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列と
比較し、5C4重鎖がヒト生殖細胞型VH3−33由来のVH部分、未決定D部分、およ
びヒト生殖細胞型JH 4b由来のJH部分を利用することを明らかにした。5C4 VH
配列との生殖細胞VH3−33配列への配列比較を図8に示した。さらに5C4 VH配
列をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分析し、図4Aおよび8ならびにそれ 20
ぞれ配列番号18、25および32に示した重鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を
図示できた。
【0302】
5C4軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列と
比較し、5C4軽鎖がヒト生殖細胞型VK L6由来のVL部分およびヒト生殖細胞型J
K 1由来のJK部分を利用することを明らかにした。5C4 VL配列の生殖細胞VK
L6配列への配列比較を図10に示した。さらに5C4 VL配列をCDR領域決定のK
abatシステムを用いて分析し、図4Bおよび10ならびにそれぞれ配列番号39、4
6および53に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0303】 30
4A11の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図5Aおよび配列番号6
1および5にそれぞれ示した。
【0304】
4A11の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図5Bおよび配列番号6
8および12にそれぞれ示した。
【0305】
4A11重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列
と比較し、4A11重鎖がヒト生殖細胞型VH4−39由来のVH部分、ヒト生殖細胞型
3−9由来のD部分、およびヒト生殖細胞型JH 4b由来のJH部分を利用することを
明らかにした。4A11 VH配列の生殖細胞VH4−39配列への配列比較を図11に 40
示した。さらに、4A11 VH配列をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分
析し、図5Aおよび11ならびにそれぞれ配列番号19、26および33に示した重鎖C
DR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0306】
4A11軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列
と比較し、4A11軽鎖がヒト生殖細胞型VK L15由来のVL部分およびヒト生殖細
胞型JK 1由来のJK部分を利用することを明らかにした。4A11 VL配列の生殖細
胞VK L6配列への配列比較を図12に示した。さらに、4A11 VL配列をCDR領
域決定のKabatシステムを用いて分析し、図5Bおよび12ならびにそれぞれ配列番
号40、47および54に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた 50
(69) JP 6975733 B2 2021.12.1


【0307】
7D3の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図7Aおよび配列番号62
および6にそれぞれ示した。
【0308】
7D3の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図7Bおよび配列番号69
および13にそれぞれ示した。
【0309】
7D3重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列と
比較し、7D3重鎖がヒト生殖細胞型VH3−33由来のVH部分、ヒト生殖細胞型7− 10
27D部分、およびヒト生殖細胞型JH 4b由来のJH部分を利用することを明らかに
した。7D3 VH配列の生殖細胞VH3−33配列への配列比較を図8に示した。さら
に、7D3 VH配列をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分析し、図6Aお
よび8ならびにそれぞれ配列番号20、27および34に示した重鎖CDR1、CDR2
およびCD3領域を図示できた。
【0310】
7D3軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列と
比較し、7D3軽鎖がヒト生殖細胞型VK L6由来のVL部分およびヒト生殖細胞型J
K 4由来のJK部分を利用することを明らかにした。7D3 VL配列の生殖細胞VK
L6配列への配列比較を図9に示した。さらに7D3 VL配列をCDR領域決定のKa 20
batシステムを用いて分析し、図6Bおよび9ならびにそれぞれ配列番号41、48お
よび55に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0311】
5F4の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図7Aおよび配列番号63
および7にそれぞれ示した。
【0312】
5F4の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図7Bおよび配列番号70
および14にそれぞれ示した。
【0313】
5F4重鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン重鎖配列と 30
比較し、5F4重鎖がヒト生殖細胞型VH4−39由来のVH部分、ヒト生殖細胞3−9
由来のD部分、およびヒト生殖細胞型JH 4b由来のJH部分を利用することを明らか
にした。5F4 VH配列の生殖細胞VH4−39配列への配列比較を図11に示した。
さらに、5F4 VH配列をCDR領域決定のKabatシステムを用いて分析し、図7
Aおよび11ならびにそれぞれ配列番号21、28および35に示した重鎖CDR1、C
DR2およびCD3領域を図示できた。
【0314】
5F4軽鎖イムノグロブリン配列を公知のヒト生殖細胞型イムノグロブリン軽鎖配列と
比較し、5F4軽鎖がヒト生殖細胞型VK L15由来のVL部分およびヒト生殖細胞型
JK 1由来のJK部分を利用することを明らかにした。5F4 VL配列の生殖細胞VK 40
L6配列への配列比較を図12に示した。さらに、5F4 VL配列をCDR領域決定の
Kabatシステムを用いて分析し、図7Bおよび12ならびにそれぞれ配列番号42、
49および56に示した軽鎖CDR1、CDR2およびCD3領域を図示できた。
【0315】
(実施例3)
抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の結合特性および結合動態の特性解析
この実施例では、抗PD−1抗体の結合特性および結合動態をビアコア分析により調べ
た。結合特性および交差競合性は、フローサイトメトリーによって調べた。
【0316】
結合親和性と動態 50
(70) JP 6975733 B2 2021.12.1

抗PD−1抗体は、ビアコア分析(Biacore AB、Uppsala、Swed
en)によって親和性と結合動態を特性解析した。精製した組み換えヒトPD−1融合タ
ンパク質を、1級アミンによりCM5チップ(カルボキシメチルデキストラン塗布チップ
)に標準的アミンカップリング化学およびビアコアが提供しているキットを用いて、共有
結合させた。結合は、濃度267nMでかつフロー速度50μL/分でHBS EP緩衝
液(ビアコアAB提供)中に抗体を流すことによって測定した。抗原抗体会合動態は、3
分間追跡し、解離動態は、7分間追跡した。会合および解離曲線は、BIA評価ソフトウ
ェア(Biacore AB)を用いて、1:1ラングミュア結合モデルに適合した。結
合定数推定においてアビィディティ効果を最小とするため、会合および解離相に対応する
最初のデータ部分のみを適合に使用した。決定したKD、konおよびkoff値を表2 10
に示した。
【表2】

20

【0317】
フローサイトメトリによる結合特性
細胞表面で組み換えヒトPD−1を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細
胞株を作製し、PD−1ヒトモノクローナル抗体の特異性をフローサイトメトリーで決定
するために用いた。CHO細胞に、膜型PD−1をコードする全長cDNAを含む発現プ
ラスミドを移入させた。5C4および4H1抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の結合を
、移入細胞と20μg/mLの抗PD−1ヒトモノクローナル抗体とをインキュベーショ
ンすることによって評価した。細胞を洗浄し、結合をFITC−標識抗ヒトIgG Ab 30
により検出した。フローサイトメトリー分析を、FACSスキャンフローサイトメトリー
(Becton Dickinson、San Jose,CA)を用いて行った。結果を
、図13A(5C4)および13B(4H1)に示した。抗PD−1ヒトモノクローナル
抗体は、PD−1移入CHO細胞に結合したが、ヒトPD−1を移入していなかったCH
O細胞には結合しなかった。これらのデータは、PD−1に対する抗PD−1ヒトモノク
ローナル抗体の特異性を明らかにしている。
【0318】
他のCD28ファミリーメンバーに対するELISAによる結合特性
CD28ファミリーメンバーに対する抗PD−1抗体の結合比較を、4種の異なるCD
28ファミリーメンバーを用いる標準的ELISAにより行い、PD−1に対する結合特 40
性を調べた。
【0319】
CD28ファミリーメンバーICOS、CTLA−4およびCD28(R&D Bio
systems)の融合タンパク質を、抗PD−1ヒトモノクローナル抗体17D8、2
D3、4H1、5C4および4A11に対する結合について試験した。標準的ELISA
操作を実施した。抗PD−1ヒトモノクローナル抗体は、濃度20μg/mLで添加した
。西洋わさびパーオキシダーゼ(HRP)を結合したヤギ抗ヒトIgG(κ鎖特異的)ポ
リクローナル抗体を第2抗体として用いた。結果を図14に示した。抗PD−1ヒトモノ
クローナル抗体17D8、2D3、4H1、5C4、4A11、7D3および5F4のそ
れぞれは、高い特異性でPD−1に結合したが、他のCD28ファミリーメンバーには結 50
(71) JP 6975733 B2 2021.12.1

合しなかった。
【0320】
(実施例4)
ヒトおよびサル細胞表面で発現したPD−1に対する抗PD−1抗体結合の特性解析
抗PD−1抗体について、細胞表面におけるPD−1発現細胞への結合をフローサイト
メトリーによって試験した。
【0321】
活性化ヒトT細胞、サル末梢血単核球(PBMC)およびPD−1移入CHO細胞をそ
れぞれ、抗体結合について試験した。ヒトT細胞およびカニクイザルPBMCを、抗CD
3抗体により活性化させ、ヒト抗PD−1モノクローナル抗体による結合前にT細胞上に 10
PD−1発現を誘導させた。5C4および4H1抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の結
合は、移入細胞を抗PD−1ヒトモノクローナル抗体のIgGまたはIgG4のいずれか
と異なる濃度でインキュベーションすることによって評価した。細胞を洗浄し、結合をF
ITC−標識抗ヒトIgG Abにより検出した。フローサイトメトリー分析は、FAC
Sスキャンフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose
,CA)を用いて行った。その結果を図15A(活性化ヒトT細胞)、15B(カニクイ
ザルPBMC)および15C(PD−1移入CHO細胞)に示した。抗PD−1ヒトモノ
クローナル抗体5C4および4H1は、活性化T細胞、活性化サルPBMCおよびヒトP
D−1移入CHO細胞に結合し、染色の平均蛍光強度(MFI)によって測定した。これ
らのデータは、抗PD−1 HuMabが、ヒトおよびカニクイザル細胞表面PD−1の 20
両者に結合することを明らかにしている。
【0322】
(実施例5)
混合リンパ球反応における細胞増殖およびサイトカイン産生に及ぼすヒト抗PD−1抗体
の効果
混合リンパ球反応を用いて、リンパ球エフェクター細胞へのPD−1経路を阻害する効
果を明らかにした。本アッセイにおけるT細胞について、抗PD−1 HuMab抗体存
在下または非存在下における増殖、IFN−γ分泌およびIL−2分泌を試験した。
【0323】
ヒトT細胞は、ヒトCD4+T細胞高含量カラム(R&Dシステム)を用いてPBMC 30
5 4
から精製した。各培養物は、10 個の精製T細胞と10 個の同種異系の樹状細胞を総
容量200μL中に含んでいた。抗PD−1モノクローナル抗体5C4、4H1、17D
8、2D3または5C4のFab断片部分を、異なる抗体濃度で各培養物に添加した。抗
体を全く用いないかまたはアイソタイプコントロール抗体を、陰性コントロールとして使
用した。細胞を37℃で5日間培養した。第5日後、培地100μLを各培養物から採取
し、サイトカインを測定した。IFN−γと他の抗体のレベルは、OptEIA ELI
SAキット(BD Biosciences)を用いて測定した。細胞を3H−チミジン
で標識し、さらに18時間培養し、細胞増殖を分析した。その結果を図16A(T細胞増
殖)、16B(IFN−γ分泌)および16C(IL−2分泌)に示した。抗PD−1ヒ
トモノクローナル抗体は、T細胞増殖、IFN−γ分泌およびIL−2分泌を濃度依存的 40
に促進した。5C4のFab断片もまたT細胞増殖、IFN−γ分泌およびIL−2分泌
を濃度依存的に促進した。対照的に、アイソタイプコントロール抗体を含む培養物は、T
細胞増殖、IFN−γまたはIL−2分泌の上昇を示さなかった。
【0324】
(実施例6)
ヒト抗PD−1抗体によるPD−1に対するリガンド結合阻害
抗PD−1 HuMabを、フローサイトメトリー分析を用いることによって移入CH
O細胞上で発現したPD−1に対するリガンド、PD−L1およびPD−L2の結合阻害
能を試験した。
【0325】 50
(72) JP 6975733 B2 2021.12.1

PD−1発現CHO細胞は、FACS緩衝液(4%ウシ胎児血清を有するPBS)中に
懸濁した。様々な濃度の抗PD−1 HuMab 5C4および4H1を当該細胞懸濁液に
添加し、4℃で30分間インキュベーションした。未結合抗体を洗浄除去し、FITC−
標識PD−L1融合タンパク質またはFITC−標識PD−L2融合タンパク質を当該試
験管に添加し、4℃で30分間インキュベーションした。フローサイトメトリー分析は、
FACSスキャンフローサイトメータ(Becton Dickinson,San Jo
se、CA)を用いて実施した。その結果を図17A(PD−L1の阻害)および17B
(PD−L2の阻害)に示した。抗PD−1モノクローナル抗体5C4および4H1は、
ヒトPD−1移入CHO細胞に対するPD−L1およびPD−L2結合を阻害し、染色の
平均蛍光強度(MFI)によって測定した。これらのデータは、抗PD−1 HuMab 10
が、細胞表面PD−1に対するリガンド(PD−L1およびPD−L2の両者)結合を阻
害することを明らかにしている。
【0326】
(実施例7)
ヒト血中におけるサイトカイン放出に及ぼすヒト抗PD−1抗体の効果
抗PD−1 HuMabが単独でヒト血球からのサイトカイン放出を刺激するかどうか
を決定するため、抗PD−1 HuMabを新鮮ヒト全血と混合した。
【0327】
ヘパリン化新鮮ヒト全血500μLを各ウェルに添加した。抗PD−1 HuMab(
4H1または5C4、後者は、IgG1またはIgG4アイソタイプのいずれかである) 20
10μgまたは100μgを各ウェルに添加した。一部のウェルを、陽性コントロールと
しての抗CD3抗体またはアイソタイプにマッチングさせた陰性コントロールとしてのヒ
トIgG1またはヒトIgG4抗体とインキュベーションした。細胞を6または24時間
、37℃でインキュベーションした。細胞をスピンダウンし、血漿を採取し、サイトカイ
ンIFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10およびIL−1
2をサイトカインサイトメータビーズアレイアッセイ(BD Biosciences)
を用いて測定した。各サイトカインの濃度(pg/mL)は、下記で、6時間インキュベ
ーションのものは表3aに示され、24時間インキュベーションのものは表3bに示され
ている。その結果は、ヒト抗PD−1抗体5C4および4H1単独による処理は、ヒト血
球を刺激してIFN−γ、TNF−α、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10およ 30
びIL−12のいずれのサイトカインの放出も行わないことを示している。
(73) JP 6975733 B2 2021.12.1

【表3a】

10

20

【表3b】

30

40

50
(74) JP 6975733 B2 2021.12.1

【0328】
(実施例8)
T細胞のアポトーシスに及ぼす抗PD−1抗体の効果
T細胞のアポトーシス誘導に及ぼす抗PD−1抗体の効果を、アネキシンV染色試験を
用いて測定した。
【0329】
T細胞は、実施例5に記載のように混合リンパ球反応において培養した。抗PD−1抗
体5C4を、濃度25μg/mLで試験管に添加した。非特異的抗体をコントロールとし
て使用した。アネキシンVおよびヨウ化プロピオジウムを、標準的プロトコールにより添
加した(BD Biosciences)。混合物を、暗所で15分間、室温でインキュ 10
ベーションし、次に、FACSスキャンフローサイトメータ(Becton Dicki
nson,San Jose,CA)を用いて解析した。その結果を図18に示した。抗
PD−1抗体5C4は、T細胞アポトーシスに対して効果を有していなかった。
【0330】
(実施例9)
ウイルス陽性ドナー由来ウイルス刺激PBMC細胞によるサイトカイン分泌に及ぼす抗P
D−1抗体の効果
この例では、CMV陽性ドナーから末梢血単核球(PBMC)を単離し、抗PD−1抗
体存在下または非存在下CMV溶解物に暴露し、当該抗体の抗原刺激サイトカイン分泌に
及ぼす効果を調べた。 20
【0331】
CMV陽性ドナー由来2×105ヒトPBMCを総量200μL中で培養し、CMV感
染細胞の溶解物とともに各ウェルに添加した。抗PD−1 HuMAb 5C4を様々な濃
度で各ウェルに4日間添加した。第4日後、培地100μLを各培養物から取り出し、サ
イトカインを測定した。IFN−γのレベルを、OptEIA ELISAキット(BD
Biosciences)を用いて測定した。細胞を3H−チミジンで標識し、さらに1
8時間培養し、細胞増殖を分析した。細胞増殖は、Cell Titer−Glo試薬(
Promega)を用いて分析した。その結果を図19に示した。抗PD−1 HuMa
b 5C4は、濃度依存的にIFN−γ分泌を増加させた。これらの結果は、抗PD−1
HuMAbsが先に抗原に対して刺激されたPBMC細胞から記憶T細胞応答においてI 30
FN−γ放出を刺激できることを示唆している。
【0332】
(実施例10)
抗原に対する二次抗体応答に及ぼす抗PD−1抗体の効果
マウスをTI−抗原(DNP−Ficoll)により免疫し、再度チャレンジし、さら
に、ラット抗マウスPD−1抗体または対照抗体により処理し、抗体力価に及ぼす抗PD
−1抗体の効果を調べた。
【0333】
雌性C57BL6マウスを6匹マウス/群の2群に分けた。1群は、対照ラットIgG
で処理し、他群はラット抗マウスPD−1抗体で処理した。当該マウスを、第0日に50 40
μLのCFA中のDNP−Ficoll(T1−抗原)5μgで腹腔内に免疫した。対照
ラットIgG抗体またはラットmPD−1抗体(200μg/マウス)を、−1日、0日
および2日に腹腔内に投与した。4週後、マウスを50μLのIFA中のDNP−Fic
oll(TI−抗原)5μgで、第0日に腹腔内に再チャレンジした。ラット抗mPD−
1抗体または対照抗体(200μg/マウス)を腹腔内に第0日および1日に投与した。
抗体力価は、ブースト後第7日に標準的ELISAアッセイによって測定した。その結果
を下記の表4に示した。抗mPD−1抗体で処理したマウスにおいて、IgMおよびIg
G3アイソタイプの両者は、対照抗体で処理したマウスに比較して、T1抗原チャレンジ
後力価の最大増加を示した。これらの結果は、抗PD−1処理が、T1抗原に応答して抗
体力価を増加できることを示している。 50
(75) JP 6975733 B2 2021.12.1

【表4】

【0334】 10
(実施例11)
抗PD−1抗体を用いたインビボ腫瘍モデルへの処理
癌性腫瘍を移植したマウスをインビボで、抗PD−1抗体で処理し、腫瘍増殖に及ぼす
抗体のインビボ効果を調べた。陽性対象として、抗CTLA−4抗体を用いたが、その理
由は、このような抗体が腫瘍増殖をインビボで阻害することが明らかとされているからで
ある。
【0335】
この実験において、使用した抗PD−1抗体は、周知の実験技術を用いて作製したキメ
ララット抗マウスPD−1抗体であった。ラット抗マウスPD−1抗体を作製するため、
組み換えマウスPD−1融合タンパク質(R&D Systems Catalog No 20
. 1021−PD)を発現させるために移入されたマウス細胞でラットを免疫し、モノ
クローナル抗体を、ELISAによってマウスPD−1抗原に対する結合でスクリーニン
グした。次に、ラット抗PD−1抗体V領域を、マウスIgG1定常領域に標準的な分子
生物学技術を用いて、組み換えて結合させ、ELISAおよびFACSによってマウスP
D−1に対する結合を再度スクリーニングした。ここで使用したキメララット抗マウスP
D−1抗体を4H2と称する。
【0336】
腫瘍試験のため、週齢6∼8週の雌性AJマウス(Harlan Laborator
ies)を体重により無作為に6群に分けた。第0日に、マウスの右側腹皮下に、200
μLのDMEM培地に溶解した2×106SA1/N線維肉腫細胞を注入した。マウスを 30
PBS溶媒または抗体10mg/kgで処理した。その動物に抗体または溶媒を含む約2
00μLのPBSを、第1、4、8および11日に腹腔内注入により投与した。各群は動
物10匹を含み、当該群は、(i)溶媒群、(ii)対照マウスIgG、(iii)対照
ハムスターIgG、(iv)ハムスター抗マウスCTLA−4抗体および(v)キメラ抗
PD−1抗体4H2で構成されていた。そのマウスを、週に2回、約6週間における腫瘍
増殖をモニタリングした。電子カリパスを用いて、腫瘍を3次元(高さ×幅×長さ)で測
定し、腫瘍容積を計算した。腫瘍が腫瘍終点(1500mm3)に到達したかあるいは1
5%を超える体重減少を示した時、マウスを安楽死させた。その結果を図20に示した。
抗PD−1抗体は、対照群で約25日から約40日まで腫瘍終点(1500mm3)に到
達する平均時間延長を示した。したがって、抗PD−1抗体による処理は、腫瘍増殖に直 40
接的なインビボ阻害効果を有している。
【0337】
(実施例12)
キメラ(ラット−マウス)抗PD−1抗体4H2の産生
マウスPD−1抗体に対するラットモノクローナル抗体(ラット抗mPD−1)を、標
準的ハイブリドーマ作製方法(KohlerおよびMilstein(1975)Nat
ure 256:495、およびHarlowおよびLane(1988)Antibo
dies,A Laboratory Mnual,Cold Spring Harbor
Laboratory Press,Cold Spring Harbor New Yo
rkを参照)を用いてmPD−1−hFc融合タンパク質で免疫したラットから作製した 50
(76) JP 6975733 B2 2021.12.1

。ハイブリドーマ8個をサブクローニングし、抗体を単離し、mPD−1に対するマウス
PD−L2(mPD−L2)結合を阻害する能力をスクリーニングした。mPD−1に対
するmPD−L2結合を阻害できる数種の抗mPD−1抗体を同定し(例えば、4H2活
性、図41を参照)、これらの数種のタンパク質のmPD−1−Fc融合タンパク質の結
合アフィニティをELISAによって決定した(図42)。
【0338】
抗体4H2.B3をさらに特性解析し、それを、ここで“4H2”とも称する。マウス
PD−1発現CHO細胞を構築し、4H2 抗PD−1抗体と200μg/mL∼0.0
12μg/mLの範囲の濃度でインキュベーションし、4H2のPD−1に対する結合ア
フィニティを決定した。PD−1発現CHO細胞に対する抗mPD−1抗体の結合は、F 10
ITC結合ロバ抗ラットIgGとインキュベーションすることによって検出し、FACS
により測定した。抗mPD−1抗体は、約0.38μg(図43)のEC50(50%有
効濃度)とKD4.7×10−9Mを有していた。PD−1に対するPD−L1結合阻害
を調べるため、同アッセイを行った。ただし、細胞は0.16μgのmPD−L1−hF
c融合タンパク質とともインキュベーションし、次に、PD−1発現CHO細胞に対する
PD−L1結合は、FITC結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)とインキュベーション
し、FACS(MFI、平均蛍光強度)により結合シグナルを測定することによって検出
した。抗mPD−1抗体は、約0.72μgのEC50を有していた(図44)。
【0339】
マウス腫瘍モデルにおいて使用するため、マウス免疫系が免疫治療抗体を中和しないよ 20
うに(すなわち、抗体がそれによってよりすぐれた薬物動態を有するように)およびFc
レセプター相互作用を低下させることによって抗体依存性細胞傷害(ADCC)を回避す
る(すなわち、それにより抗PD−1による阻害が、ADCC効果により障害された状態
で評価できる)ため、4H2ラット抗mPD−1を修飾する必要があった。当初のラット
抗mPD−1抗体4H2は、ラットIgG2aアイソタイプであることがわかった。した
がって、4H2抗体のFc部分を、マウスIgG1アイソタイプ由来のFc部分と置き換
えた。上記アッセイを用いて、ラット−マウスキメラ4H2のmPD−1に対する結合ア
フィニティが、ラット4H2.B3抗mPD−1抗体に匹敵することがわかった(図45
)。同様に、PD−1に対するPD−1L1結合阻害は、両抗体に匹敵した(図46)。
したがって、ラット−マウスキメラ4H2抗mPD−1抗体を用いて、抗CTLA−4併 30
用抗PD−1の治療効果を調べた。
【0340】
(実施例13)
腫瘍形成と増殖に及ぼす併用療法(抗CTLA−4および抗PD−1抗体)のインビボ効

MC38結直腸癌細胞(PD−L1−)(Dr.N.Restifo,Nationa
l Cancer Institute,Bethesda、MD、またはJeffrey
Schlom,National Institutes of Health,Beth
esda,MD)は、C57BL/6マウスに(2×106細胞/マウス)で移植した。
第0日(すなわち、マウスにMC38細胞を移植した日)において、それぞれマウス10 40
匹で構成した4群のそれぞれに:(1)マウスIgG(対照)、(2)抗CTLA−4モ
ノクローナル抗体9D9(J.Allison,Memorial Sloan−Ket
tering Cancer Center,New York、NYから得たマウス抗マ
ウスCTLA−4抗体)、(3)抗PD−1モノクローナル抗体4H2(ラット抗マウス
PD−1をマウスFc抗原で修飾したキメラ抗体、実施例6に記載)または(4)抗CT
LA−4抗体9D9および抗PD−1抗体4H2のいずれかを、腹腔内(IP)注入した
。次に、第3、6および10日に、抗体注入を行った。単独抗体による処理は、10mg
/kgで投与し、抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体併用は、各抗体5mg/kg
で投与した(すなわち、総抗体10mg/kg)。電子カリパスを用いて、腫瘍を3次元
(高さ×幅×長さ)で測定し、腫瘍容積を計算した。腫瘍が指定された腫瘍終点に到達し 50
(77) JP 6975733 B2 2021.12.1

た時、マウスを安楽死させた。その結果を表5および図21に示した。
【表5】

10
【0341】
IgG群のマウス8匹は、およそ第30日までには腫瘍終点に到達し、IgG群のマウ
ス2匹(86066および87260)は、潰瘍性腫瘍を有していた(図21A)。抗C
TLA−4単独群において、マウス7匹がおよそ第60日までには腫瘍終点に到達し、マ
ウス1匹が、潰瘍性腫瘍を有しており(84952)、マウス1匹が1500mm3未満
の腫瘍容積を有しており(85246)、さらに1匹のマウスが無腫瘍であった(860
57)(図21B)。抗PD−1抗体単独群において、マウス6匹は、およそ第60日ま
でには腫瘍終点に到達し、マウス1匹(86055)が、潰瘍性腫瘍を有しており、マウ
ス3匹が無腫瘍であった(84955、85239および86750)(図21C)。抗
CTLA−4抗体および抗PD−1抗体併用群において、マウス4匹は、約第40日まで 20
には腫瘍終点に到達し、マウス6匹が無腫瘍であった(84596、85240、860
56、86071、86082および86761)(図21D)。
【0342】
図22は、第21日に測定した平均腫瘍容積がIgG対照群では約2955mm3であ
り、抗CTLA−4抗体単独群では約655mm3であり、抗PD−1抗体単独群では約
510mm3であり、抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体併用群では約280mm

であることを示している。図23は、第21日に測定した腫瘍容積中央値がIgG対照
群では約2715mm3であり、抗CTLA−4抗体単独群では約625mm3であり、
抗PD−1抗体単独群では約525mm3であり、抗CTLA−4抗体および抗PD−1
抗体併用群では約10mm3であることを示している(さらに、第32日までには0mm 30

まで低下している)。
【0343】
本試験は、マウス腫瘍モデルにおいて、CTLA−4抗体単独処理およびPD−1抗体
単独処理が腫瘍増殖に対して中等度の効果を有していること、およびCTLA−4抗体と
PD−1抗体の併用治療が、腫瘍増殖に対して有意に高い効果を有していることを示して
いる。CTLA−4抗体およびPD−1抗体による併用療法が、それぞれを10mg/k
gの高用量で投与した各抗体単独の効果に比較して、各抗体5mg/kgの投与量で腫瘍
増殖に対して、はるかに有意な効果を有していたことには興味深い。
【0344】
(実施例14) 40
形成された腫瘍の増殖に及ぼす併用療法(抗CTLA−4および抗PD−1抗体)のイン
ビボ効果
MC38結直腸癌細胞(PD−L1−)をC57BL/6マウスに(2×106細胞/
マウスで)腫瘍形成に十分な時間(約6乃至7日)移植した。移植後第6日(第−1日)
において腫瘍測定を行い、その後の抗体治療のため、マウスを平均腫瘍容積(約250m
m3)に基づき無作為に11群に振り分けた。第0日において(すなわち、MC38細胞
を移植後1週)、マウスに(1)マウスIgG(対照)、(2)抗CTLA−4モノクロ
ーナル抗体9D9、(3)抗PD−1モノクローナル抗体4H2、または(4)抗CTL
A−4モノクローナル抗体9D9および抗PD−1モノクローナル抗体4H2を、濃度1
0mg/kg/マウスでIP注入した。また、抗体は、第3、6および10日に投与した 50
(78) JP 6975733 B2 2021.12.1

。使用したモノクローナル抗体組成は、低レベルのエンドトキシンを有し、有意に凝集す
ることはなかった。電子カリパスを用いて、腫瘍を3次元(高さ×幅×長さ)で測定し、
腫瘍容積を計算した。腫瘍測定は、第0日(治療開始時点の腫瘍は、容積約125mm3
であった)、および抗体注入後第3、6、10、13、17および20日に行った。マウ
スは、腫瘍が所定の腫瘍終点(1500mm3のような特定の腫瘍容積および/または、
マウスが約15%を超える体重減少を示した時)、マウスを安楽死させた。
【0345】
IgG群における全マウス11匹は、およそ第17日までには腫瘍終点に到達した(図
24A)。抗CTLA−4単独群では、マウス11匹のうちの7匹がおよそ第12日まで
には腫瘍終点に到達した(図24B)。抗PD−1抗体単独群では、マウス4匹がおよそ 10
第13日までに腫瘍終点に到達し、マウス2匹が無腫瘍であった(図24C)。抗CTL
A−4抗体および抗PD−1抗体併用群では、マウス1匹がおよそ第17日までには腫瘍
終点に到達し、マウス1匹がおよそ第45日までには腫瘍終点に到達し、マウス9匹が第
45日において無腫瘍であった(図24D)。
【0346】
図25は、第10日に測定した平均腫瘍容積がIgG対照群では約1485mm3であ
り、抗CTLA−4抗体単独群では約1010mm3であり、抗PD−1抗体単独群では
約695mm3であり、抗CTLA−4抗体および抗PD−1抗体併用群では約80mm

であることを示している。図26は、第10日に測定した腫瘍容積中央値がIgG対照
群では約1365mm3であり、抗CTLA−4抗体単独群では約1060mm3であり 20

;抗PD−1抗体単独群では約480mm であり、抗CTLA−4抗体および抗PD−

1抗体併用群では約15mm であることを示している(さらに、第17日までには0m
m3まで低下している)。
【0347】
本研究は、マウス腫瘍モデルにおいて、CTLA−4抗体とPD−1抗体の併用処理が
、腫瘍がすでに十分に確立されている時でさえもいずれかの抗体単独よりも腫瘍増殖に対
して有意に高い効果を有していることを示している。
【0348】
(実施例15)
形成された腫瘍の増殖に及ぼす併用療法(抗CTLA−4および抗PD−1抗体)の投与 30
量測定
実施例3に記載のように、MC38結直腸癌細胞(PD−L1−)をC57BL/6マ
ウスに(2×106細胞/マウスで)腫瘍形成に十分な時間(約6∼7日)移植した。マ
ウス10匹の群に対して、第0、3、6および10日に下記のように腹腔内注入した。(
A)群 マウスIgG(対照、20mg/kg)、(B)群 抗PD−1モノクローナル抗
体4H2(10mg/kg)およびマウスIgG(10mg/kg)、(C)群 抗CT
LA−4モノクローナル抗体9D9(10mg/kg)およびマウスIgG(10mg/
kg)、(D)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(10mg/kg)および
抗PD−1モノクローナル抗体4H2(10mg/kg)、(E)群 抗CTLA−4モ
ノクローナル抗体9D9(3mg/kg)および抗PD−1モノクローナル抗体4H2( 40
3mg/kg)、または(F)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(1mg/
kg)および抗PD−1モノクローナル抗体4H2(1mg/kg)。電子カリパスを用
いて、腫瘍を3次元(高さ×幅×長さ)で測定し、腫瘍容積を計算した。腫瘍測定は、処
理開始時点(すなわち、第0日において、腫瘍は平均容積約90mm3であった)、およ
び抗体処理後第3、6、10、13、17および20日に行った。マウスを、腫瘍が所定
の腫瘍終点(1500mm3のような特定の腫瘍容積および/またはマウスが約15%を
超える体重減少を示した時)に達した時、安楽死させた。
【0349】
図27Aは、対照マウス10匹全てが腫瘍終点に到達したことを示している。図27B
は、10mg/kg抗PD−1抗体(B群)で処理した群では、腫瘍終点に到達したマウ 50
(79) JP 6975733 B2 2021.12.1

スが6匹であり、約750mm3以下の容積を有する腫瘍を有しているマウスが4匹であ
ることを示している。図27Cは、10mg/kg抗CTLA−4抗体(C群)で処理し
た群では、腫瘍終点に到達したマウスが3匹であり、約1000mm3以下の容積を有す
る腫瘍を有しているマウスが7匹であることを示している。図27Dは、10mg/kg
抗PD−1抗体と10mg/kg抗CTLA−4抗体を併用で処理した群(D群)では、
約1000mm3以下の容積を有する腫瘍を有しているマウスが2匹であり、腫瘍を全く
有していないマウスが8匹であることを示している。図27Eは、3mg/kgの抗CT
LA−4抗体と3mg/kgの抗PD−1抗体で併用処理した群(E群)では、腫瘍終点
に到達したマウスが1匹であり、約500mm3以下の容積を有する腫瘍を有しているマ
ウスが7匹、および無腫瘍のマウスが2匹であることを示している。図27Fは、1mg 10
/kg抗CTLA−4抗体と抗PD−1抗体1mg/kgで併用処理した群(F群)では
、腫瘍終点に到達したマウスが4匹であり、約1100mm3以下の容積を有する腫瘍を
有しているマウスが5匹、および無腫瘍マウスが1匹であることを示している。
【0350】
図27Gおよび図27Hは、最初に抗PD−1抗体で次に抗CTLA−4抗体であるい
はその逆に順次処理したマウスにおける腫瘍容積を示している。図27Gのマウスは、最
初に10mg/kgの抗CTLA−4抗体を第0日および3日にそれぞれ投与され、次に
、10mg/kgの抗PD−1抗体を第6日および10日のそれぞれにおいて投与されて
いる。図27Hのマウスは、最初に10mg/kgの抗PD−1抗体を第0日および3日
にそれぞれ投与され、次に、10mg/kgの抗CTLA−41抗体を第6日および10 20
日のそれぞれにおいて投与されている。G群について、第27日において、マウス8匹が
腫瘍終点に到達し、マウス1匹が非常に小さい腫瘍を有しており(かなり遅れて、最終的
に成長が止まった)、マウス1匹が無腫瘍であった。H群について、第27日において、
マウス8匹が腫瘍終点に到達し、マウス2匹が無腫瘍であった。
【0351】
図28は、IgG対照群では第10日において測定した平均腫瘍容積が約1250mm

であり、IgG対照を伴う抗PD−1抗体では約470mm3であり、IgG対照を伴
う抗CTLA−4抗体(10mg/kg)では約290mm3であり(第6日に測定)、
抗CTLA−4抗体(10mg/kg)および抗PD−1抗体(10mg/kg)併用群
では約40mm3であり、抗CTLA−4抗体(3mg/kg)および抗PD−1抗体( 30

3mg/kg)併用群では約165mm であり;および抗CTLA−4抗体(1mg/
kg)および抗PD−1抗体(1mg/kg)併用群では約400mm3であることを示
している。図29は、IgG対照群では第13日において測定した腫瘍容積中央値が約1
680mm3であり、IgG対照を伴う抗PD−1抗体では約400mm3であり、Ig
G対照を伴う抗CTLA−4抗体(10mg/kg)では660mm3であり、抗CTL
A−4抗体(10mg/kg)および抗PD−1抗体(10mg/kg)併用群では約0
mm3であり、抗CTLA−4抗体(3mg/kg)および抗PD−1抗体(3mg/k
g)併用群では約90mm3であり、および抗CTLA−4抗体(1mg/kg)および
抗PD−1抗体(1mg/kg)併用群では約650mm3であることを示している。抗
CTLA−4抗体と抗PD−1抗体の併用処理では、本試験の第27日において無腫瘍マ 40
ウスの各群当たりの数は、8/10(10mg/kg)、2/10(3mg/kg)およ
び1/10(1mg/kg)であった(データを示さず)。
【0352】
本研究は、CTLA−4抗体とPD−1抗体の併用処理が用量依存性に機能し、両抗体
を単独処理したときよりも低用量においても、さらに腫瘍が十分に形成されている時でさ
えも、腫瘍増殖に有意に高い効果を有していることを示している。さらに、前記抗体は、
順次投与でき(最初に抗CTLA−4を次に抗PD−1抗体を投与する、あるいはその逆
で)、その併用は抗体単独療法よりもはるかに優れている。
【0353】
(実施例16) 50
(80) JP 6975733 B2 2021.12.1

線維肉腫形成および増殖に及ぼす併用療法(抗CTLA−4と抗PD−1抗体)のインビ
ボ効果
SA1/N線維肉腫細胞(PD−L1−)(Leachら(1996)Science
271:1734−1736)を、第0日にA/Jマウスに皮下移植した(2×106
細胞/マウス)。移植後第1、4、7および11日に、下記:(A)群 PBS(“溶媒
”と称する)単独、(B)群 マウスIgG(対照、マウス当たり10mg/kg)、(
C)群 抗PD−1モノクローナル抗体4H2(マウス当たり10mg/kg)、(D)
群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(マウス当たり10mg/kgまたは0.
2mg/kg)、(E)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(マウス当たり0
.2mg/kg)と併用した抗PD−1モノクローナル抗体4H2(マウス当たり10m 10
g/kg)のようにマウスに腹腔内投与した。本試験を41日間継続し、本試験過程での
様々な時点で腫瘍測定を行った(図29参照)。腫瘍容積は、電子カリパスを用いて3次
元(高さ×幅×長さ)で腫瘍を測定し、計算した。腫瘍が1500mm3の所定の腫瘍終
点に到達したかあるいは潰瘍化腫瘍になった時に、マウスを安楽死させた。
【0354】
図30Aおよび30Bは、対照20匹中19匹(A群で9/10、B群で10/10)
のマウスが腫瘍終点に達するかまたは潰瘍性腫瘍を発症したことを示している。図30C
は、10mg/kg抗PD−1抗体で処理した群(C群)では、腫瘍終点に到達したマウ
スが6匹(2匹は容積が1500mm3を超えており、4匹は潰瘍性腫瘍を有していた)
であり、および腫瘍を全く有していないマウスが4匹であることを示している。図30D 20
は、10mg/kg抗CTLA−4抗体で処理した群(D群)では、腫瘍終点に到達した
マウスが5匹(2匹は容積が1500mm3を超えており、3匹は潰瘍性腫瘍を有してい
た)であり、1匹のマウスは小さな腫瘍(約70mm3の容積)があり、および腫瘍を全
く有していないマウスが4匹であることを示している。図30Eは、0.2mg/kg抗
CTLA−4で処理した群(E群)では、腫瘍終点に到達したマウスが10匹(6匹は容
積が1500mm3を超えており、4匹は潰瘍化腫瘍を有していた)であることを示して
いる。図30Fは、0.2mg/kg抗CTLA−4抗体と併用した10mg/kg抗P
D−1抗体で処理した群(F群)では、腫瘍終点に到達したマウスが2匹(1匹は容積が
1500mm3を超えており、1匹は潰瘍化腫瘍を有していた)であり、および腫瘍を全
く有していないマウスが8匹であることを示している。 30
【0355】
図31および32は、本試験過程全体にわたる処理および未処理マウスに発現した腫瘍
容積の平均および中央値をそれぞれ示している。これらの抗体で処理したマウスにおける
腫瘍増殖阻害を、対照抗体マウスIgGで処理したマウスと比較し、表6に示した。
【表6】

40

【0356】
これらのデータはさらに、抗PD−1および抗CTLA−4抗体を含む併用療法がいず
れかの抗体単独による処理よりも実質的に効果的であることを示している。実際、併用は 50
(81) JP 6975733 B2 2021.12.1

、併用療法が治療用量以下の抗CTLA−4抗体を含むときでさえも単独抗体治療よりも
はるかに効果的である。腫瘍におけるPD−L1発現が同様に抗腫瘍T細胞応答を阻害す
ることになるという点において、PD−L1の存在が抗体の単独療法における効果に影響
を有しているかもしれないが、これらのデータもまた、驚くべきことに、腫瘍上でのPD
−L1の存在または非存在がこの抗体併用による治療効果に全く影響していないらしいこ
とを示唆している(図40を参照)。
【0357】
(実施例17)
PD−L1−線維肉腫の増殖に及ぼす併用療法(抗CTLA−4と抗PD−1抗体)のイ
ンビボ効果と用量測定 10
SA1/N線維肉腫細胞(PD−L1−)を、第0日に腫瘍形成に十分な時間(約7日
)、A/Jマウスに皮下移植した(2×106細胞/マウス)。移植後第7、10、13
および16日に、平均110mm3の腫瘍容積を有するマウス8匹の10群に、下記:(
A)群 PBS(“溶媒”と称する)単独、(B)群 マウスIgG(対照、10mg/k
g/マウス)、(C)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(0.25mg/k
g/マウス)、(D)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(0.5mg/kg
/マウス)、(E)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(5mg/kg/マウ
ス)、(F)群 抗PD−1モノクローナル抗体4H2(3mg/kg/マウス)、(G
)群 抗PD−1モノクローナル抗体4H2(10mg/kg/マウス)、(H)群 抗C
TLA−4モノクローナル抗体9D9(0.25mg/kg/マウス)と抗PD−1モノ 20
クローナル抗体4H2(10mg/kg/マウス)との併用、(I)群 抗CTLA−4
モノクローナル抗体9D9(0.5mg/kg/マウス)と抗PD−1モノクローナル抗
体4H2(10mg/kg/マウス)との併用、および(J)群 抗CTLA−4モノク
ローナル抗体9D9(0.5mg/kg/マウス)と抗PD−1モノクローナル抗体4H
2(3mg/kg/マウス)との併用、のようにIP投与した。
【0358】
移植後第10、13、16および19日に、平均255mm3の腫瘍容積を有するマウ
ス6匹の2群に、下記:(K)群 マウスIgG(対照、10mg/kg/マウス)、お
よび(L)群 抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9(1mg/kg/マウス)と抗
PD−1モノクローナル抗体4H2(10mg/kg/マウス)との併用、のようにIP 30
投与した。本試験を51日間継続し、本試験過程での様々な時点で腫瘍測定を行った(図
33−38参照)。腫瘍容積は、電子カリパスを用いて3次元(高さ×幅×長さ)で腫瘍
を測定し、計算した。腫瘍が1500mm3の所定の腫瘍終点に到達したかあるいは潰瘍
化腫瘍になった時に、マウスを安楽死させた。
【0359】
図33は、当初の容積約110mm3(すなわち、最初の抗体処理時点において)を有
する腫瘍マウスにおける免疫刺激抗体治療に対する応答を示している。図33Aおよび3
3Bは、対照マウス全16匹(AおよびB群)が腫瘍終点に到達することを示している(
1500mm3を超える腫瘍容積のマウス15匹および潰瘍化腫瘍のマウス1匹)。図3
3C−33Eは、癌に侵されたマウスが抗CTLA−4抗体処理に用量依存性に応答する 40
ことを示している(例えば、0.25mg/kg投与C群では7/8匹が腫瘍終点に達し
、マウス1匹が200mm3未満の腫瘍容積しか有しておらず、一方、5mg/kg投与
E群では、6/8匹が腫瘍終点に達し、2/8匹が無腫瘍であった)。図33Fおよび3
3Gは、抗PD−1抗体用量(F群は、3mg/kg投与を受けており、一方、G群は1
0mg/kg投与を受けていた)にかかわらずおよそ同等に応答した。対照的に、10ま
たは3mg/kgの抗PD−1抗体を0.25または0.5mg/kgの抗CTLA−4
抗体とともに併用処理されていたマウス(グループH、IとJ)は、腫瘍増殖が有意に低
下していた。例えば、図33Jは、3mg/kgの抗PD−1抗体を0.5mg/kg抗
CTLA−4抗体とともに併用処理されていた群(J群)では、マウス2匹が潰瘍性腫瘍
を有しており、マウス2匹の腫瘍容積は500mm3未満であり、マウス4匹は無腫瘍で 50
(82) JP 6975733 B2 2021.12.1

あったことを示している。図34(平均腫瘍容積)および図35(腫瘍容積中央値)は、
併用した抗CTLA−4抗体の治療レベル以下での驚くべき効果とともに、抗CTLA−
4抗体と併用した抗PD−1抗体の予測外の相乗効果を示している。
【0360】
図36は、大型腫瘍をもつマウス、すなわち、当初の容積約250mm3(すなわち、
最初の抗体処理時点において)を有するものにおける免疫刺激抗体治療に対する応答を示
している。図36Aは、対照マウス全6匹(K群)が腫瘍終点に到達することを示してい
る(1500mm3を超える腫瘍容積のマウス4匹および潰瘍性腫瘍のマウス2匹)。図
36Bは、1mg/kgの抗CTLA−4抗体と10mg/kg抗PD−1抗体とが併用
処理された群(L群)では、マウス1匹が潰瘍性腫瘍を有しており、マウス4匹の腫瘍容 10
積は1500mm3を超えており、マウス1匹は無腫瘍であったことを示している。腫瘍
容積平均および中央値を、図37および38に示した。
【0361】
これらの抗体で処理したマウスにおける腫瘍増殖阻害を対照抗体マウスIgGで処理し
たマウスと比較し、表7と図39に示した。
【表7】

20

30

【0362】
これらのデータは、さらに、抗PD−1および抗CTLA−4抗体を含む併用療法がい
ずれかの抗体単独による処理よりも実質的に効果的であることを示している。また、驚く
べきことに免疫刺激治療抗体の併用の相乗効果を損なうことなく、各抗体用量を減ずるこ
とができる。この併用療法は、腫瘍容量がより成熟していても(すなわち、より大型のも 40
の)有効であるようである。
【0363】
(実施例18)
抗PD−1抗体処理およびPD−L1−線維肉腫細胞の再チャレンジ後のマウスにおける
腫瘍免疫
腫瘍細胞によるチャレンジと抗PD−1抗体処理(すなわち、実施例5および6に記載
の有効性試験に類似の処理)でも腫瘍を有さず生き延びたマウスを、次に、腫瘍細胞で再
チャレンジし、このような処理後の腫瘍形成に対する免疫性を調べた。簡単に述べると、
最初のチャレンジにおいて、SA1/N線維肉腫細胞(PD−L1−)を、第0日にA/
Jマウスに皮下移植した(1×106細胞/マウス)。各群に、移植後第1、4、7、1 50
(83) JP 6975733 B2 2021.12.1

0、14、17日および20日に、マウスIgG(対照、マウス当たり10mg/kg)
または様々な用量の抗PD−1モノクローナル抗体4H2(30、10、3、1、および
0.3mg/kg)の一つを腹腔内注入した。腫瘍形成および容積を、試験完了まで週2
回、精密電子カリパスを用いてモニタリングした。マウス8匹の群は、抗PD1抗体処理
後も無腫瘍であった(4匹は30mg/kgで処理し、2匹は3mg/kgで処理し、1
匹は0.3mg/kgで処理した)。
【0364】
8匹の処理した無腫瘍A/Jマウスを、皮下に1×106SA1/N線維肉腫細胞/マ
ウスを移入することで再チャレンジした。対照として、9匹の未処理マウスに、皮下に1
×106SA1/N線維肉腫細胞/マウスを移入した。腫瘍形成と容積を、精密電子カリ 10
パスにより週に2回、移入後第62日までモニタリングした。9匹の未処理(対照)マウ
ス全ては、線維肉腫細胞の移入後第22日までに腫瘍終点に到達した。対照的に、線維肉
腫細胞で再チャレンジした8匹の無腫瘍マウスは、移入後第62日まで腫瘍を発現しなか
った。図47は、未処置および再チャレンジしたマウスの平均腫瘍容積を示している。こ
れらの結果は、抗PD−1のような抗体処理が、腫瘍形成可能な細胞存在下においてさえ
も、処理対象に腫瘍形成に対する免疫性を付与することを示している。
【0365】
(実施例19)
結直腸癌細胞で再チャレンジしたマウスにおける単一抗体療法(抗PD−1)または併用
抗体療法(抗CTLA−4および抗PD−1)後のPD−L1−腫瘍免疫性 20
腫瘍細胞によるチャレンジと抗PD−1抗体単独または抗CTLA−4抗体と抗PD−
1抗体との併用(すなわち、実施例2−4に記載の有効性試験に類似の処理)による治療
でも腫瘍を有さず生き延びたマウスを、次に、腫瘍細胞で再チャレンジし、このような処
理後の腫瘍形成に対する免疫性を調べた。簡単に述べると、最初のチャレンジにおいて、
MC38結直腸癌細胞(PD−L1−)を、第0日にC57BL/6マウスに皮下移植し
た(2×106細胞/マウス)。各群に、移植後第0、3、6および10日に下記の一つ
を腹腔内注入した。(1)マウスIgG(対照、10mg/kg/マウス)、抗PD−1
モノクローナル抗体4H2、または(3)抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9と抗
PD−1モノクローナル抗体4H2との併用。腫瘍増殖は、精密電子カリパスにより実施
例15に記載のようにしてモニタリングした。11匹のマウス群は、抗PD−1抗体処理 30
後(総計2匹)または併用抗PD−1/抗CTLA−4抗体処理後(総計9匹)も無腫瘍
であった。
【0366】
11匹の処理した無腫瘍のC57BL/6マウスの皮下に、2×107個のMC38結
直腸癌細胞/マウスを移入することで再チャレンジした(すなわち、当初のチャレンジよ
りも10倍多い細胞用量)。対照として、7匹の未処理マウスに、2×107個のMC3
8結直腸癌細胞/マウスを移入した。腫瘍形成と容積を、精密電子カリパスにより、再チ
ャレンジ試験期間の間(少なくとも20日)、モニタリングした。図48は、7匹の未処
理マウス全て(対照)が腫瘍を発症し、結直腸癌細胞の移入後第18日までに腫瘍終点に
到達したことを示している。対照的に、結直腸癌細胞で再チャレンジした11匹の無腫瘍 40
マウスは全て、移入後第18日まで腫瘍を発現しなかった。図49は、未処置および再チ
ャレンジマウスの平均腫瘍容積を示している。これらのデータは、抗体単独療法と同様に
、PD−1およびCTLA−4阻害を起こす抗体療法が腫瘍再発に対して持続的な免疫性
を付与することを示唆している。
【0367】
(実施例20)
形成された腫瘍の増殖に及ぼす併用療法(抗CTLA−4および抗PD−1抗体)のイン
ビボ効果
CT26結直腸癌細胞を、BALB/Cマウスに腫瘍形成できる十分な時間(約10日
)移植した(2×106細胞/マウス)。移植後第10日において、腫瘍測定を行い、マ 50
(84) JP 6975733 B2 2021.12.1

ウスを平均腫瘍容積(約250mm3)に基づき無作為に5群に分け、次に抗体療法を行
った。第0日(すなわち、CT26細胞を移入10日後)において、マウスに(1)マウ
スIgG(対照)、(2)抗CTLA−4モノクローナル抗体9D9、(3)抗PD−1
モノクローナル抗体4H2または(4)マウス当たり濃度10mg/kgの抗CTLA−
4モノクローナル抗体9D9と抗PD−1モノクローナル抗体4H2を腹腔注入した。抗
体注入は、第3、6および10日にも行った。使用したモノクローナル抗体組成物は、低
レベルのエンドドキシンを有しており、有意に凝集することはなかった。電子カリパスを
用いて、腫瘍を3次元(高さ×幅×長さ)で測定し、腫瘍容積を計算した。腫瘍測定は、
第0日(処理開始時点における腫瘍は、約125mm3の容積を有していた)に行い、抗
体注入後3、6、10、13、17および20日にも行った。腫瘍が所定の腫瘍終点(1 10
500mm3のような特定腫瘍容積および/またはマウスが約15%の体重減少を示した
時点)に到達した時に、マウスを安楽死させた。結果は図50に示されている。本試験で
は、マウス腫瘍モデルにおいて、CTLA−4抗体およびPD−1抗体の併用処理が、腫
瘍がすでに十分に確立している時でさえもいずれかの抗体単独よりもはるかに高い効果を
腫瘍増殖に対して有することを示唆している。
【0368】
(実施例21)
制御性T細胞機能に及ぼすヒト抗PD−1抗体の効果
制御性T細胞は、免疫応答を抑制するリンパ球である。この実施例において、制御性T
細胞を、抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の存在下または非存在下においてCD4+C 20
D25−T細胞の増殖およびIFN−γ分泌その阻害機能について試験した。
【0369】
制御性T細胞を、CD4+CD25+制御性T細胞単離キット(Miltenyi B
iotec)を用いてPBMCから精製した。制御性T細胞を、制御性T細胞に対するC
D4+CD25−T細胞の比率が2:1となるよう精製CD4+CD25−T細胞と同種
異系樹状細胞を含む混合リンパ球反応物(上記参照)に添加した。抗PD−1モノクロー
ナル抗体5C4は、濃度10μg/mL濃度で添加した。無抗体またはイソタイプ対照抗
体のいずれかを陰性コントロールとして用いた。培養上清物を第5日に採取し、サイトカ
イン測定をBeadlyte サイトカイン検出システム(Upstate)を用いて行
った。細胞に3H−チミジンを標識し、さらに、18時間培養し、細胞増殖を分析した。 30
その結果を、図51A(T細胞増殖)および51B(IFN−γ分泌)に示した。抗PD
−1ヒトモノクローナル抗体5C4を添加すると、Treg細胞による増殖阻害およびC
D4+CD25−T細胞のIFN−γ分泌阻害を部分的に緩和し、抗PD−1抗体が制御
性T細胞に効果を有していることを示唆している。
【0370】
(実施例22)
ヒト抗PD−1抗体のT細胞活性化に及ぼす効果
この実施例において、抗PD−1抗体5C4によるPD−1経路の阻害がT細胞活性化
に及ぼす効果を調べた。精製ヒトCD4+T細胞(Dynal CD4 T細胞精製キット
)を1μg/mLの可溶性抗CD3抗体(BD)により、自己単球または単球由来樹状細 40
胞(DCs)存在下において活性化した。単球を、Miltenyi CD14単球精製
キットを用いて精製し、単球をGM−CSFおよびIL−4(Pepro Tech)と
ともに7日間培養後、DCをインビトロで産生させた。力価検定した抗PD−1抗体また
は関連のないアイソタイプ対照mAbの存在下または非存在下3日間活性化した後、培養
上清を採取し、IFNγ分泌のELISA分析と行い、一方、T細胞増殖を測定するため
、トリチウム化チミジンをアッセイ中、最終18時間時点で添加した。図52Aおよび5
2Bに示した結果は、抗PD−1抗体によるPD−1阻害の結果、T細胞増殖とIFN−
γ分泌が増強された。単球存在下における抗PD−1抗体と抗CTLA−4抗体によるT
細胞活性化に及ぼす(特に、IFN−γ分泌に及ぼす)相乗的効果もまた、観察された。
【0371】 50
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(実施例23)
抗PD−1抗体のADCC活性評価
この実施例において、抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイを実施し、抗PD−1
抗体が標的細胞に対してADCCを誘発できるか評価した。5C4の2種のバージョンで
あるヒトIgG1のFc領域を有するもの(5C4−IgG1)とヒトIgG4のFc領
域を有するもの(5C4−IgG4)を本アッセイで評価した。Perkin Elme
rのDelfia Cell Cytotoxicity Kitを本アッセイに用いた。
簡単に述べると、精製ヒトCD4 T細胞(Dynal CD4 T細胞精製キット)を、
プレート結合抗CD3抗体(BD)により活性化し、PD−1発現を誘発させた。次に、
標的活性化CD4 T細胞をBATDA試薬で標識した。標識CD4 T細胞を、V底96 10
ウェルプレートに添加し、ヒトPBMC(標的(E/T)細胞に対するエフェクターの比
は50:1)に添加し、抗体を設計した。37℃で1時間インキュベーションした後、プ
レートをスピンダウンした。上清を平底96ウェルプレートに移し、プレートをRuby
Star プレートリーダーで読み取った。その結果は、5C4−IgG4が活性化CD
4 T細胞においてADCCを媒介せず、一方、5C4−IgG1は、活性化CD4 T細
胞においてADCCを媒介した(図53)が、このことは、ADCC活性が抗PD−1抗
体のFc領域に関連していることを示唆している。
【0372】
(実施例24)
抗PD−1抗体の補体依存性細胞傷害活性の評価 20
この実施例において、抗PD−1抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)を調べた。5C
4の2種のバージョンであるヒトIgG1(5C4−IgG1)のFc領域を有するもの
とヒトIgG4のFc領域を有するもの(5C4−IgG4)を本アッセイで評価した。
簡単に述べると、精製ヒトCD4 T細胞(Dynal CD4 T細胞精製キット)を、
プレート結合抗CD3抗体(BD)により活性化し、PD−1発現を誘発させた。抗PD
−1抗体(5C4)および対照抗体の50μg/mLから640pg/mLまでの系列希
釈を、ヒト補体(Quidel−A113)存在下においてCDCについて試験した。A
lamar blue(Biosource Internationals)を用いて細
胞傷害を測定した。プレートを蛍光プレートリーダ(EX530 EM590)により測
定した。生細胞数は、蛍光単位に比例している。その結果は、5C4−IgG1または5 30
C4−IgG4のいずれも活性化CD4 T細胞上でCDCを媒介せず、一方、陽性対照
抗体(抗HLA−A−ABC抗体)は媒介した(図54)。
【0373】
(実施例25)
ヒトT細胞上におけるPD−1発現の評価
この実施例では、異なるドナー由来ヒトPBMCを、様々な細胞サブセット上でのPD
−1発現について、FACSにより調べた。ビオチン化抗PD−1は、細胞表面における
PD−1分子検出時に、市販の抗PD−1抗体よりもはるかに高い感度を示し、それを本
アッセイに用いた。結合抗体を、PE結合ストレプトアビジンを用いて検出した。フロー
サイトメトリー分析を、FACSスキャンフローサイトメトリー(Becton Dic 40
kinson)およびFlowjoソフトウェア(Tree Star)を用いて実施し
た。PD−1発現は、いくつかの末梢ヒトT細胞上で検出されたが、B細胞または単球上
では検出されなかった。T細胞サブセットをさらに調べ、CD4およびCD8記憶および
エフェクターT細胞上でPD−1が発現するが、未処理のCD4またはCD8 T細胞に
はないことを示唆している。
【0374】
本発明は、ここに記載の具体的態様によって、その範囲を限定されない。実際に、本文
に記載のものに加えて本発明の様々な改良も、先の説明および付属の図面から当業者には
明らかである。このような改良は、付属の請求の範囲内に入るものと意図している。した
がって、本発明は、請求の範囲に包含される均等物の全範囲に沿って付属の請求の範囲の 50
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用語のみによって限定されるべきである。
【0375】
一態様において、本願発明は以下の態様を含む。
[1] 配列番号18のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号25のア
ミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号32のアミノ酸配列からなる重鎖可
変領域CDR3、配列番号39のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号
46のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号53のアミノ酸配列か
らなる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体であって、ヒトPD−1と特異的に結合する単離
ヒト抗ヒトPD−1モノクローナル抗体を有効成分として含む腫瘍細胞増殖阻害剤。
[2] 単離ヒト抗ヒトPD−1モノクローナル抗体が、配列番号4のアミノ酸配列から 10
なる重鎖可変領域および配列番号11のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗体で
ある[1]の腫瘍細胞増殖阻害剤。
[3] 腫瘍細胞が、メラノーマ、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、膵癌、食道
癌および肺癌から選択される癌細胞である[1]または[2]の腫瘍細胞増殖阻害剤。
[4] 腫瘍細胞が、骨癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚または眼窩内悪性メラノーマ、子宮
癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管のカルシノーマ、子宮内膜カルシノ
ーマ、子宮頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰部カルシノーマ、ホジキン病、非ホ
ジキンリンパ腫、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、柔組織肉腫、尿
道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リ
ンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児固形癌、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌 20
、腎臓または尿管の癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリ
ンパ腫、腫瘍新脈管形成、脊椎腫瘍、脳幹グリオーム、脳下垂体アデノーマ、カポシ肉腫
、扁平上皮癌、扁平細胞癌、T細胞リンパ腫、アスベスト誘発癌類を含む環境誘発癌およ
び上記癌の組み合わせからなる群から選択される癌細胞である[1]または[2]の腫瘍
細胞増殖阻害剤。
[5] 配列番号18のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号25のア
ミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号32のアミノ酸配列からなる重鎖可
変領域CDR3、配列番号39のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号
46のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号53のアミノ酸配列か
らなる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体であって、ヒトPD−1と特異的に結合する単離 30
ヒト抗ヒトPD−1モノクローナル抗体を有効成分として含むT細胞増殖促進剤。
[6] 配列番号18のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR1、配列番号25のア
ミノ酸配列からなる重鎖可変領域CDR2、配列番号32のアミノ酸配列からなる重鎖可
変領域CDR3、配列番号39のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR1、配列番号
46のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域CDR2および配列番号53のアミノ酸配列か
らなる軽鎖可変領域CDR3を含む抗体であって、ヒトPD−1と特異的に結合する単離
ヒト抗ヒトPD−1モノクローナル抗体を有効成分として含むIFN−γおよび/または
IL−2分泌促進剤。
[7] 抗PD−1モノクローナル抗体を有効成分とする、抗CTLA−4モノクローナ
ル抗体と併用するための癌治療剤。 40
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【図1A】 【図1B】

【図2A】 【図2B】
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【図3A】 【図3B】

【図4A】 【図4B】
(89) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図5A】 【図5B】

【図6A】 【図6B】
(90) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図7A】 【図7B】

【図8】 【図9】
(91) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図10】 【図11】

【図12】 【図13】
(92) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図14】 【図15A】

【図15B】

【図15C】 【図16B】

【図16C】
【図16A】
(93) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図17A】 【図18】

【図17B】
【図19】

【図20】 【図21】
(94) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図22】 【図24】

【図23】

【図25】 【図27A】

【図26】
(95) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図27B】 【図27C】

【図27D】 【図27E】
(96) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図27F】 【図27G】

【図27H】 【図28】

【図29】
(97) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図30A】 【図30C】

【図30B】
【図30D】

【図30E】 【図31】

【図30F】
【図32】
(98) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図33A】 【図33C】

【図33B】 【図33D】

【図33E】 【図33G】

【図33F】
【図33H】
(99) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図33I】 【図34】

【図33J】 【図35】

【図36】 【図37】

【図38】
(100) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図39】 【図40A】

【図40B】

【図40C】 【図41】

【図40D】 【図42】
(101) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図43】 【図45】

【図44】 【図46】

【図47】 【図49】

【図48】
【図50】
(102) JP 6975733 B2 2021.12.1

【図51】 【図52】

【図53】

【図54】
(103) JP 6975733 B2 2021.12.1

【配列表】
0006975733000001.app
(104) JP 6975733 B2 2021.12.1

フロントページの続き

(51)Int.Cl. FI
C12P 21/08 (2006.01) C12P 21/08

(31)優先権主張番号 60/748,919
(32)優先日 平成17年12月8日(2005.12.8)
(33)優先権主張国・地域又は機関
米国(US)
10
(72)発明者 コーマン アラン ジェイ
アメリカ合衆国 94611 カリフォルニア州、 ピエモント、 エル・セリト アベニュー
301
(72)発明者 スリニバサン モハン
アメリカ合衆国 95129 カリフォルニア州、 サンジョセ、 アーリントンレーン 104

(72)発明者 ウォン チャンギュ
アメリカ合衆国 94555 カリフォルニア州、 フレモント、 アプト. 203、ダーウィ
ン ドライブ 3803
(72)発明者 セルビー マーク ジェイ 20
アメリカ合衆国 94131 カリフォルニア州、 サンフランシスコ、 ゲールウッドサークル
136
(72)発明者 チェン ビング
アメリカ合衆国 94502 カリフォルニア州、 アラメダ、クリスチャンセンコート 6
(72)発明者 カルダレッリ ジョセフィーヌ エム
アメリカ合衆国 94070 カリフォルニア州、 サンカルロス、 レスリードライブ 126
(72)発明者 フアン ハイチュン
アメリカ合衆国 95035 カリフォルニア州、 ミルピタス、コットンウッド ドライブ 5
21
30
審査官 安川 聡

(56)参考文献 国際公開第03/011911(WO,A1)
国際公開第02/078731(WO,A1)
国際公開第2004/056875(WO,A1)

(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07K
C12N 40
A61P
C12P
MEDLINE/EMBASE(STN)
BIOSIS/WPIDS(STN)

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