You are on page 1of 3

2024/02/01 8:15 日本経済新聞 印刷画面

記事利用について

能登半島地震、応急住宅は県外6割 「地元離れられない」
2024/1/31 19:15 日本経済新聞 電子版

引き渡しに向け作業が続く被災者向けの仮設住宅(31日午前、石川県輪島市)=共同

能登半島地震で自宅で生活できなくなった被災者に対し、石川県が応急的な住まいの整備を
急いでいる。公営住宅なども含め、3月末までに約1万3900戸の提供を見込む。地元にとどま
ることを望む住民は多いが、応急住宅の6割を県外が占める。発生から2月1日で1カ月。地域
のつながりに配慮した支援策が求められる。

31日、初めての仮設住宅18戸が輪島市中心部で完成した。間取りは2DKと4DKで、2月3日に
入居が始まる。同月6日には珠洲市でも40戸が完成する予定だ。

県内では仮設住宅3000戸の建設が予定され、県は3月末までに1300戸の提供を見込む。この
ほか、賃貸アパートなどを借り上げる「みなし仮設」3800戸、県内外の公営住宅の空き室
8800戸をそれぞれ確保し、年度内に計1万3900戸の提供を計画している。

https://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXZQOUE2928W0Z20C24A1000000 1/3
2024/02/01 8:15 日本経済新聞 印刷画面

被災者にとって身近な場所で住宅が提供されるとは限らない。

確保を予定する公営住宅のうち9割、8000戸は県外にある。能登半島は山間部が多く、仮設
向けの用地や賃貸アパートなどは少ない。県内だけでは、必要と推計する「9000戸以上」に
は届かない。

輪島市では31日までに548戸を着工したが、入居申し込みが4140件に上る。入居者は抽選で
はなく、被災の程度や子どもや高齢者がいるといった事情を考慮して案内していくという。

輪島市で車中泊を続ける60代の男性は「希望する場所では仮設住宅の数が少ない。半分諦め
ている」と打ち明ける。近くで入居できなければ、傾いた自宅での寝泊まりも覚悟する。
「家が崩れないか心配はあるが、地元を離れられない。知人を残して遠くに行くのも気が引
ける」

勤め先が地元にある、高齢の家族がいる――。一時的でも遠方に移るのをためらう被災者は
少なくない。家が全壊した同市の別の60代男性は「地元でなければ観光業の仕事を続けられ
ない。避難所から通うしかない」と気をもむ。

能登町で農業を営む男性の70代の母親は市外避難先に身を寄せたが、環境の変化が厳しく1
週間で同町に戻った。「高齢者ほど地元から離れるのは難しい」と話す。

馳浩知事は「被災者は住み慣れた地域の近くで仮設に入居することを望んでいる」とし、県
内で順次着工を増やす考え。羽咋市や宝達志水町は被災者がすぐに住める空き家の提供を呼
びかけている。

設置に時間がかからない移動式仮設住宅の活用も探る。志賀町には26日、トレーラーハウス
10棟が運ばれた。長さ11メートル、幅3.4メートルの1LDKで浴室やトイレ、エアコンを備え
る。さらに10棟を追加し、水道工事などを経て月内引き渡しを見込む。
https://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXZQOUE2928W0Z20C24A1000000 2/3
2024/02/01 8:15 日本経済新聞 印刷画面

提供した日本RV・トレーラーハウス協会(東
京・千代田)によると、広い用地がなくても
戸別に設置しやすく、珠洲市などからも要請
がある。日本ムービングハウス協会(札幌
市)はトラックで運べる木造住宅計約60戸を
輪島市と珠洲市に提供した。

住まいの確保は生活再建の基盤となる。2004
年の新潟県中越地震で全村避難した山古志村
(現長岡市)の当時の村役場企画課長、青木
勝さんは「元の生活に戻れる見通しを行政が
示し、集落ごとに職員を置いて復旧の進捗な
どの情報が住民に届く仕組みをつくることが
大切だ」と訴える。

過去の災害では仮設入居者の孤立対策も課題
となった。関西学院大災害復興制度研究所の
石川県輪島市の「輪島キリコ会館」広場に建設された被災者向け
山泰幸所長は「仮設への移行はできる限り地 の仮設住宅(手前)。上は大規模火災で全域が焼失した「輪島朝
市」周辺(31日午後)=共同
域の絆を維持できるように進めるのが望まし
い」と指摘。分散した場合も「故郷をどう復興していくか。住民同士で話し合える機会を持
つことが欠かせない」と述べた。(前田健輔、小川知世)

【関連記事】
・能登半島地震、携帯基地局85%復旧 なお122局停止
・能登半島地震の死者、「圧死」が4割 警察庁集計
・地震でビル倒壊、首都圏もリスク 「長周期」対策も課題

「日経 社会ニュース」のX(旧ツイッター)アカウントをチェック

本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービス
に掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。

Nikkei Inc. No reproduction without permission.

https://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXZQOUE2928W0Z20C24A1000000 3/3

You might also like