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東日本大震災における大船渡病院

と大船渡市で行われた災害時保健
医療の記録
~その統括・調整者の公式記録~

岩手県立大船渡病院
山野目辰味
はじめに
• 岩手県立大船渡病院は2003年以来、当地で繰り返されてきた津波災害に対する災害時医
療活動のシステム整備、訓練を行ってきた。その中で発生した今般の東日本大震災・大津波
への医療活動はこの国にとっても非常に貴重な経験・教訓となった。
• しかし病院ホームページに公式記録として当時の院長の指示で作成掲載していた、岩手県
立大船渡病院の東日本大震災急性期医療活動の記録が、院長交代後2014年初頭突然削
除され、それを参照することが不可能となった(削除の件は作成に携わった者は誰も寝耳に
水であった)。
• このことは未曽有の大災害に際し被災地内の第一線災害拠点病院としての災害医療活動
の記録、記録を残せず、全国に、特に保健医療福祉関係者に、その責任を果たせないことを
意味する。
• さらに活動の詳細なデータなどもなしに、 “活動記録”とは言えない物が病院HPに掲載される
という、出来事が起こっている。このことは、公的活動より何らかの私的理由を優先するとい
う意味をもつもので、被災地内病院としていかがかと疑念をもつ行為である。
・ そこで当院の災害医療部門の統括、公式記録の作成責任者としてここに別途”公式”
記録と言える記録を残し、責任を果たすこととした。 全国の災害医療に関係する方々は、この
記録を今後の災害医療活動のための教訓・一助としていただければこれにすぐるものはない。
• なお、この記録は災害活動時の院長の指示によりまとめた資料が中心となっていることを
お断りする。すなわち、実際上の公的記録と言えるものである。
• 記録作成者は、被災前から、また被災後も岩手県、気仙地区、大船渡病院等の災害医療シ
ステム整備・訓練などに中心的役割を担ってきたことものである。
筆者のこれまでの仕事
取得資格等
日本救急医学会 救急専門医
日本脳神経外科学会専門医 主な災害医療活動
日本脳卒中学会専門医 ・2008年6月 岩手宮城内陸地震
日本社会医学系指導医
日本DMAT 統括+インストラクター ・2008年7月 岩手県北沿岸地震
2008年6月4日 NBCセミナー研修修了 ・2011年3月~2013年
BLS, ACLS,PALS,JATEC, MIMMS,DMEP(USA):各プロバイダー
JPTEC元インストラクター、元世話人 東日本大震災
Technical Rope Rescue Technician(Rescue3,USA) ・2016年4月 熊本地震
BDLS/ADLS(NDLSF:USA) インストラクター
MCLS インストラクター、世話人、管理世話人 ・2016年9月 台風10号水害
MCLS-CBRNEインストラクター ・2018年7月 西日本豪雨(広島県)
災害医療ACT研究所賛助会員
その他 ・2018年9月 北海道胆振東部地震
・大船渡保健所気仙災害救急連絡会議委員 ~2013年3月
・2008年5月ドクターヘリ研修修了
・岩手県災害拠点病院連絡協議会専門部会委員 2008年7月~2013年3月
・日本集団災害医学会 岩手宮城内陸地震検証委員会委員 2008年
・平成23年度厚生労働科学研究費補助金厚生労働省「東日本大震災急性期における
医療対応と今後の災害急性期の医療提供体制に関する調査研究」研究協力者
・平成23年度厚生労働科学研究費補助金健康安全・危機管理対策総合研究事業
「自然災害による広域災害時における効果的な初動期医療の確保および改善に
関する研究」研究協力者
・平成24年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)
「自然災害による広域災害時における効果的な初動期医療の確保及び改善に関する
研究」研究協力者

東日本大震災時、担当責任者に混乱の中口頭での了解にて大船渡市保健医療チーム
コーディネートを実施。
あわせて大船渡保健所長了解のもとに、陸前高田市の保健医療活動に関与。
被災前の岩手県~気仙地区:災害医療へ
の意識 2008年前半まで
政府:
東北地方日本海溝型 県医師会、地区医師会
地震津波への広域搬送 基幹医大等
計画はなし。 ・・・災害医療に無関心

災害医療コーディネーター
制度なし
岩手県災害拠点病院
連絡協議会:県庁 2008年~
内陸部県立病院職員の
(大)津波警報時の対応
はなし(2019年段階でも)

SCU:花巻空港事務所
設置運用体制整備 気仙地区災害救急
連絡会議:保健所 2005年~

大船渡病院
災害医療委員会:2004年~
2003年からの当院災害医療体制の準備
◆2003年以来病院としての災害医療への準備を開始。
2004年10/13 第1回病院災害医療訓練。
◆2005年気仙地区災害医療訓練開始。 2004/10/23中越地震
2004/12/26 スマトラ沖地震津波
大船渡市防災訓練参加(各毎年1回開催)
県総合防災訓練、各地の訓練参加。
大船渡保健所主催の気仙地区災害医療連絡会議立ち上げ。
◆2006年DMAT研修・登録
・・・県内、緊消隊、政府などの訓練定期参加 2007年 県災害医療のあり方検討会
県内DMAT連絡会設置。
◆2008/6/14岩手宮城内陸地震活動 県災害拠点病院連絡協議会活動開始
7/24岩手県沿岸北部地震活動
◆2008年 県災害拠点病院連絡協議会開催
:DMATを含めた県内災害医療体制策定
◆2009年 三陸沖日本海溝型地震津波への
県としての災害医療体制提案(山野目提案→策定)
:各病院の役割
県内の医療機関の状況把握
域内搬送体制
広域医療搬送体制整備
→厚労省、DMAT本部への周知、学会提言
大船渡病院での災害医療体制整備
(2003年4月より)
1、病院の構造を考慮した、災害医療新設部門の設置
と職員の配置
病院の設備などの確認など

2、各部署の配置を考慮した“患者搬入動線”=TTT
の決定 :マニュアル作成
↓ 厚労省配布のマニュアル廃棄
3、訓練での検証

4、 1・2の見直し
TTT=Triageトリアージ, Treatment治療, Transport搬送

※状況設定・状況付与訓練でマニュアルを念頭に
状況に合わせて頭を使う訓練!
Iwate Prefectural Ofunato Hospital
大事故災害時Incident Command System 院内本部指揮系統図
事務局長 本部長補佐、事務局指揮 中央監視 ライフライン状況、院内構造被害
マスコミ対応(定期会見) テント設営、(患者搬送)
事務局次長 (外部連絡担当):県庁災対本部、市役所、消防、警察、等情報連携

務 総務課長 職員招集、登院チェック、院内各部署被害状況、院内放送情報提供
局 総務係長
ヘリポート管理、患者等避難誘導、 警備員 駐車場車両交通統制
長 情報板への書き込み
管財係長 院内各部署物品手配、情報板書き込み 薬局
放射線科
本部長 各部署、外来患者情報整理、
医事課長 クラーク 検査科
(院長) タッグ・診療記録記入
副院長A 他病院、医師会、薬剤師会等情報連携 栄養科 患者、職員食糧

副院長B 各科病棟担当医師 転院・退院等、透析室、手術室運営管理

副院長C 職員健康管理、その他の業務補佐
各病棟運営・状況調査・入退院患者管理、
総看護師長 各病棟看護師長 センター病棟運営

副総看護師長 本部内看護業務統括、遺族対応(DMORT)、病院避難者対応

災害医療統括 外来看護師長 外来新設診療部門看護統括 トリアージ


災害医療 赤、黄、緑
科長 リハビリ
外来診療部門医師(トリアージ、赤、黄、緑)・クラーク 搬送班 ケースワーカー
県・市医療班連携、患者搬送連携等
医師 栄養科
中央監視室
DMAT病院支援指揮所
看護師

※各部署の情報は、各部署の指揮官経由で本部へ伝達!
南 病院駐車場=臨時へリポート 負傷者搬入経路
病院1F見取り図
正面玄関
救急センター入り口

災害時:院内左側通行 トリアージポスト
患者情報掲示板
EV

災害対策本部
救命救急センター
Yellow Yellow
災害時
災害時出口 Green Red
出口
EV
仮設ベッド 仮設ベッド 薬局
設置 設置
物流
中庭
中央処置室
新外来棟

避難者誘導経路 EV
放射線科
エネルギー棟
栄養科
体育館

Black
リハビリ室
避難民を
霊安室 仮設調理場
誘導

患者誘導経路
放射線治療・RI

精神科病棟

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


一般車通行可
避難者

救急車非常退出路
警備員=ゲートコントロール

三陸自動車道
Iwate Prefectural Ofunato Hospital
大災害時 外来部門での医師・看護師の役割分担 災害医療検討委員会
2006/7/1現在
※ コールなしで各部署へ集合する。
副院長、 本部
病院長 事務局長・次長
CP:指揮所
広報・後方病院、県・国・
(災害対策本部) 地元自治体各避難所など
=事務室 との連絡、支援医療チームとの連絡、院長補佐

(○=リーダー)

グリーン:G イエロー:Y レッド:R


本院大ホール 本院外来ホール 救急センター
(中央処置室前)
○内科 ○外科
〇外科
看護師:内科、外科 泌尿器科 △脳神経外科
看護師:脳外科、 整形外科
眼科・耳鼻科、皮膚科
泌尿器科、整形外科 看護師:救急センター
:各セクションのバックアップ
グリーン担当科は他セクションのバックアップも 中央処置室、(小児)

パニックなど:精神科
小児・産科患者:
小児科、産婦人科 死体検視など:病理科
DMAT:災害派遣医療チーム
病院前トリアージ
:本院前屋根つき歩道 1チーム=
医師 2名、 医師2名
ナース2名 看護師3名
事務1名 事務1名
Iwate Prefectural Ofunato Hospital
事前のライフライン評価
電気
院内自家発電(緑コンセント)をすべて使用した場合で計算
すると、
重油地下タンク備蓄能力=90、000L(30,000Lタンク×3)
実際の毎日の貯蓄量:平均タンクの1/2 (45,000L)確保と想
定する。(貯蓄1/2で給油とする取決め)
1日総消費量
・ボイラーの電力消費 過去最大=7300L/day
・冷温水器最高使用量=600L/day
・発電器使用量=10、000L/day
○可能な稼働時間=45、000/17,900=2.5日
○約3日間は院内備蓄重油で(発電器・送油パイプの被害
がなければ)院内すべての自家発電源をまかなえる計算と
なる。
発災時前日に満タン⇒約7日間自家発電稼働OK

・受水槽: 300t
・高置水槽(屋上):40t 計340t(上水貯水量)

透析患者での水使用=約5.1t /day
(・・・1人4hrs×30l/hrs=120l
1日40人×120l+透析機器300l=5.1t)
ボイラー:5~10t(平常時)

◎1時間あたり上水使用量:約22 t

◆市水停止時 約15時間でタンク内
上水消費。

※7年前の三陸南沖地震:震度6弱
で上水タンク損傷⇒補強、
フレキシブルジョイント
約4時間市水停止⇒自衛隊給水車到着するも搭載量は1t で
あり・・・ 結果的に市水回復により給水不要となった。
院内(簡易)無線機親機
本部内通信機器 :市内半径5km通話可能

衛星電話(NTTワイドスター)
+屋外=イリジウム

院内各部署間インターフォン
建物外固定
県機関間防災無線電話 アンテナ

衛星電話があっても使用方法に慣熟しないと
うまく使用できない!
また屋外固定アンテナは重要。
3.11後 県機関間 防災無線衛星電話=廃止

簡易無線機(5W)
子機

本体
衛星電話(NTTワイドスター)

外部固定アンテナ

衛星電話(NTTワイドスターⅡ)
:データ通信、FAX可能
大船渡病院での衛星電話、
県防災無線電話、無線機器
等の機器的トラブルは生じなかった。

通話先の県庁災対本部の電話が
少ないため、1時間もかけてなかなか
通じないことは多かった。
=受け手側の問題。
2009/11/27第6回災害拠点病院連絡
協議会専門部会
県内災害時での医療機関重傷受け入れキャパ調査
岩手県内災害医療の現状
◆各災害拠点病院・救急標榜病院における重症
患者治療(現在アンケート調査:回答率62%)
・・・ベッド数300~400の総合病院

1病院あたり“赤”患者受け入れ 2~(3)名が限度
(平日日勤帯で発災後4~6時間以内)

県内で一時に治療可能な重症患者
=40~50名程度が限界

重傷50名以上で広域医療搬送体制、SCU設置発動
2009年11月6日厚労省辺見研究班
・同様の発表を行い、県が広域医療搬送を企
図した場合、花巻空港にSCUの設置を行う計画
の発動を行って欲しい、旨要請。

厚労省、総務省消防庁、防衛省、国交省の担
当が出席していたが、“被害予測として重傷者
は少数にとどまり、SCU発動は計画する予定
無し” と回答であった。
森野一真:平成21年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)分担研究報告書.「地方に
おけるDMATの活用に関する検討、統括DMATの具体的運用のあり方」に関する研究
(研究協力者:山野目辰味et al):研究協力者資料 三陸沖地震津波に対する岩手県内および県外からの
医療支援などの災害医療体制整備の検討.
日本海溝型地震津波への岩手県の災害医療体制 2009-(1)
(山野目提案・策定:第8回専門部会で了承)

1、被災地内
地理的特性と 病院災害医療
“3つの戦略的柱” 体制
3、内陸部
バックアップ
病院群体制
→広域医療搬送 災害拠点病院

救急告示病院
※アンケート
250-400床

発災後4~6時間
以内に“赤”2~3人
2、域内搬送体制
程度が診療限界

100km
日本海溝型地震津波への岩手県の災害医療体制 2009-(2)
H
二戸病院
★盛岡への一極集中を避け 久慈病院
“分散搬送”を行う。
搬送初期は“東西”横軸連携 。 海自
輸送艦、
岩手医大、中央病院
ヘリ空母
盛岡赤十字病院 宮古病院 (手術室)
H
広域搬送:
秋田県内等 花巻空港SCU H
全国へ輸送 釜石病院
中部病院 H

大船渡病院
※天候次第で 胆沢病院
陸路搬送法などを
計画必要。
↓ H 磐井病院
自衛隊野戦救急車
気仙救急災害連絡会議 遠野病院

:大船渡保健所

花巻・北上
釜石病院

吉浜
奥州
越喜来
大船渡病院

綾里
高田病院
一関
気仙 末崎
<計画していたTTT>
大船渡病院で各地区の
広田 負傷者を一旦受け入れ、
トリアージ、初期治療し、
内陸へ搬送。
高田病院、広田半島孤立状態での患者搬送訓練実施 一部は各地区から直接
内陸へ。
気仙地区・病院災害医療訓練

ソファー兼用ベッド
訓練
花巻空港SCU設置予定場所視察
岩手県災害拠点病院連絡協議会 2010年6月16日

2009年専門部会での山野目提案により、空港SCU設置も確定し、その視察を実施。
岩手県防災航空隊庁舎
国道4号線→至盛岡 到達
旧空港ターミナルビル 空港消防隊車庫
SCU

災害時航空機エプロン 患者搬送ルート

新空港ターミナルビル
2008年10/31 陸上自衛隊東北方面隊
“みちのくアラート2008”(第1回花巻SCU訓練)
2010/8/30花巻空港SCU訓練
(2008年にも陸自東北方面隊
“みちのくアラート”)

県総合防災訓練(会場:花巻市)を利用して
沿岸津波災害時のSCU運用訓練実施。

◆県総合防災室
保健福祉部
空港課
空港事務所
花巻消防本部
空自三沢空輸隊
の全面協力
認知。

花巻空港SCU立ち上げ・
運営は円滑に作動。
いわてファイヤーサポート提供

J レスキュー提供
参考 山野目辰味:いわて花巻空港SCU運用戦略策定からの教訓.
J.J.Disast.Med.2015;20:274-283
東日本大震災
発災
3/11の大津波における
急性期災害医療活動
2011年3月11日14:46
Mw9.0 大船渡市震度6弱、 東北地方太平洋沖地震発生
大船渡市 天候:曇り 気温最高5℃/最低-4℃,
湾内海水温(水深5m 12:00):7.2℃

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


大船渡病院

国道45号線

三陸自動車道

大船渡湾:津波浸水域 元写真=大船渡市提供
岩手県立大船渡病院の概要
➢気仙医療圏の中核病院489床 (一般病床:370床,精神科105床
結核病棟10,感染症病棟4)
➢救命救急センター(20床)
年間急患数: 年間救急車受け入れ数:
➢常勤医38名,研修医10名
➢医療圏人口 約8万人弱 、唯一の急性期病院

三陸自動車道
大船渡病院
公舎

教訓:新たに建築する沿岸部の病院・宿舎は“高台、
市街地近傍”が原則
水没したNTT

車がのっている
2005年 陸前高田市 上空 被災前の風景
3/12 陸前高田市

提供:姫路医療センター
県立高田病院

ここまで浸水

犠牲者:患者12名、職員8名
3/12早朝 国道啓開作業

急性期の避難所への医療情報収集・救護所活動に非常に役立った
大船渡市役所提供
3/11
15時過ぎの病院駐車場 警備員
=ゲートコントロール

平時より臨時ヘリポートの表示
ヘリポート設営
多数の避難車両

構造的問題はまったく生じず、入院患者に関しての
避難などのストレスはなし。 Iwate Prefectural Ofunato Hospital
病院内状況
15:23 最初の患者搬入。
15:40 市内建物流出、ビル2階まで浸水など情報あり。
16:15 最初の救急車
16:18 病院への避難民多数あり、予定通り体育館へ。

以後深夜までに100名以上の患者搬入、来院。

市街地直上の高台の病院+市街地からの国道が
浸水しなかった+自動車道被害なし

深夜までに100名以上の傷病者の搬入となった。
病院被害報告
・14:46 発災
・14:49 “災害医療体制発動宣言”(院内放送)
災害部署立ち上げ開始。
◎訓練通り整然と各部署設営完了。
◆建物内落下物多数、医療機器被害なし。
➢レスピレータ接続が外れそうになったもの5~6件
あるも、ナースなどが保持しトラブル回避。
➢透析器と患者の回路に損傷なし。

◆職員・入院・外来患者などの人的被害なし。

◆医療機器:救急センター内CT,DSA,X線撮影装置
使用可能。

本院CT,MRI使用電力に鑑み使用せず。

検査室検査機器使用可能。
医療用ガスOK
MAP各型20単位あり。
ライフライン被害状況

病院建物構造体 被害なし
電気 × ⇒自家発電3台稼働(重油1週間分あり)
約48時間で外部一般電気回復
水 (市水) × ⇒約24時間後に回復
ガス 〇
医療ガス 〇
オートクレーブ × ⇒ディスポで最低5回分の外科手術可能
エレベーター × ⇒3/11 22時1基稼働
食糧 患者用 〇 3日分
職員用 × ・・・差し入れ等
通信 固定電話 ×
携帯電話 ×
PC × (ゴールデンウィーク後に回復)
衛星電話 ワイドスター 〇
イリジウム 〇
防災無線電話 〇
簡易無線機 〇
院内電話 〇
発災直後災害医療体制発動
CSCATTT 災害医療体制発動

病院災対本部設置
(14:49)

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


本部情報

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


各災害医療体制部署設営
外来ソファー兼ベッド

G:“緑”セクション

Y:“黄”セクション

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各災害医療体制部署設営

救命救急センター外来

R:“赤”セクション

O2 outlet

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


災害医療体制部署設置 H

トリアージポスト
トリアージ医師

看護師数名 Triage

記載係(事務)

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2011/3/11 トリアージポスト
:続々来院・搬送されてくる負傷者等
県立大船渡病院:3月12日 三陸自動車道:
大船渡-陸前高田間は不通
とならず命の道 であった。
←陸前高田

緊急自動車退出路

ヘリポート

姫路医療センター提供:3/12
自家発電下の病院

外部の電気はなく、院外は常闇。
院内は、すこし明るい程度。
しかし、準備してきたとおりの院内
への自家発電での電気の供給で
救命活動は可能で、入院患者も
ほぼ滞りなく生活できた。
3/11夕方~夜間(1)
陸前高田よりの搬送は、三陸自動車道を
使用し、救急車両退避路から当院に搬入

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


3/11夕方~夜間(2)
自家発電下での“黄”“緑”
セクションでの診療

訓練通り職員は動いた。

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3/11夕方~夜間(3)

2011/3/12 津波火災が近隣で起きている中、負傷者を内陸に搬送。
発災2日後

◆職員健康管理部門設置
◆部署内3交代シフトとす。
仮眠は待合の椅子、外来のベッド、等
◆患者食糧:3日分あり
職員食糧:準備要請数年
しかし準備なし。
大船渡病院外来待合ホール

3/11夜 体育館臨時避難所
400名以上
2011/3/11~31 急性期患者
(2016/8/26 データ再調査修正)

Total R Y G B 処方のみ

3/11 103 23 35 36 9 4

3/12 123 14 20 89 0 314

3/13 140 18 22 100 0 451

Total 366 55 77 225 9 769

慢性疾患服薬中の薬剤
3/14以降は直接津波に起因する傷病 を失って処方のみを希望される方に
者はほぼ来院なく、トリアージは終了と 備えが必要。
し、救急対応に切り替えた。 ex)お薬手帳、保険機関の情報
薬剤の供給
3/11~3/31トリアージ区分
~津波地震での負傷者に限定した統計~

トリアージカテゴリー3月中津波関連患者 感染
7%
赤 傷病別分類
クラッシュ症候
黒 群
8%
6% 赤 溺水(+肺炎)
緑 40% 27%
32% 多発外傷
24%

黄 溺水+低体温
22% 34%

赤 黄 緑 黒 計
62 35 51 9 157
39.40% 22.30% 32.50% 5.70%

2016/8月再調査後修正
2011年3月11~13日受診患者疾患分類
(2016/8/29 再調査により修正)
n=370 3/11 102
3/12 122
3/13 146 外因性=37.4%

留置チューブトラ
ブル
2% 分娩 不明
その他 単純外傷
1% 4%
血液透析 11% 19%
1% 重傷・多発外傷・骨折
てんかん・意 6%
識障害 クラッシュ症候群
クスリ流出・処方 2%
2%
11%

溺水・肺炎
溺水・低体温
4%
8%
HOT
5%

精神疾患
4%
脳神経疾患 呼吸器疾患
5% 循環器疾患 消化器疾患 7%
5% 5%
2011年3月11日~8月31日当院受診
患者
3月 4月 5月 6月 7月 8月 計
受診数 1768 1818 2044 1395 1392 1489 9906

M 838 891 1012 695 682 767 4885


F 930 927 1032 700 710 722 5021

大船渡市 1111 1058 1124 799 760 851 5703


陸前高田市 497 563 605 410 455 388 2918
住田町 45 111 117 87 93 114 567
圏域外 53 86 163 99 84 133 618
計 9806
2016/8月再調査後修正
2011年3月~8月:月別受診者数推移

受診数 性別受診者
2500 2500

2000 2000

1500 1500

受診数
1000 1000 M

500 500

0 0
3月 4月 5月 6月 7月 8月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
市町別受診者
当院通常診療再開 2500

=5/30
2000

圏域外
1500
住田町
陸前高田市
1000
大船渡市
500

0
3月 4月 5月 6月 7月 8月
津波・地震関連外傷受診傷病者:3/11~3/31

30

25

20
感染
クラッシュ症候群
15 多発外傷
溺水+低体温
10 溺水(+肺炎)

0
11日 12日 13日 14日-
3/14 Operation “Tomodachi”

嘉手納基地所属USAF 18WG/33RQS HH60G


:病院支援
DMAT活動(1) 域内搬送支援

計19隊 来院
83人(医師32、
看護師30、
ロジ18、
消防2)

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


病院診療支援

雄勝中央病院提供
2011/3/12~ 域内、広域搬送の実際
H 久慈病院
二戸病院 ・病院間患者搬送は、ほとんど
一戸病院 病院間調整で実施された。
・搬送手段もドクヘリは花巻空
沼宮内病院 港内ドクヘリ運航調整本部、
DMAT 計74隊 防ヘリは地元消防本部(緊消
花巻空港へ 隊)
:空自輸送機 盛岡市:岩手医大、中央病院 、自衛隊ヘリは県庁と
盛岡赤十字病院 独自に考慮し連携調整

H 宮古病院
矢巾町消防学校 H
総合花巻病院
岩手医大花巻温泉病院 H 遠野病院 山田病院
花巻空港SCU
H 大槌病院
中部病院
江刺病院 釜石病院

広域医療搬送
×
胆沢病院:
大東病院
大船渡病院
千歳空港
秋田空港 一関病院 千厩病院 高田病院
羽田空港 “ひゅうが”
計 16名 ×
磐井病院
H
石巻
気仙沼
Iwate Prefectural Ofunato Hospital
重傷者域内搬送

3人の患者後方搬送依頼⇒一気に3機のドクヘリ飛来!
域内患者搬送(搬出)
搬送先 3月 4月
ヘリ 救急車・バス等 ヘリ 救急車・バス等
岩手医大 4 16 2 1
東北大 1 1 0 0
県立中央病院 0 2 0 1
盛岡日赤病院 2 8 0 0
盛岡療養センター 0 1 0 0
松園第二病院 0 1 0 0
総合花巻病院 4 20 0 7
県立中部病院 7 6 2 1
北上済生会病院 1 0 0 0
県立胆沢病院 0 8 0 0
県立江刺病院 0 3 0 0
県立磐井病院 0 0 0 0
一関病院 0 15 0 3
県立千厩病院 0 29 0 6
その他 0 2 0 3
計 19 112 4 22 総計157
発災1週間の搬送 3/12~3/18
3/11~3/18までの患者後方搬送原因疾患
津波関連患者:
その他
19% 7% 溺水
重症外傷
9%
7% n=77
手段:ドクターヘリ 腎不全
防災ヘリ 14% 低体温
救急車 3%
野戦救急車
バス 化膿性胆管炎
5%

呼吸器疾患(HOT含む)
15% 分娩
9%

神経疾患
小児 5%
4%
悪性腫瘍
心・血管
5% 脳血管 12%
5%
透析対応
透析数 受け入れ患者 転出患者
3/11 (3hrs) 26(中断13)
3/12 28 9
3/13 29 19
透析器=14台(予備1台)
3/14 27 12
3/15 23 3
3/16 29 4 1(青森)
反省:結果的に、当院で近隣の
3/17 20 1
透析患者を引き受けたのは 7(千厩・・・バス)
3/18 21 失敗! 1(花巻)
3/19 19 ⇓
3/21 19 膨大な水を歩行可能な患者
1
のために消費し、重傷者
3/22(通常) 21
手術などに影響した。
3/23 22
3/24 18
3/25 22
歩行可能な患者は内陸への移動を早期に行う
3/26 21
べきであった。 3
職員被災状況
自宅被害 全壊 55名
半壊・一部損壊 29名
アパート・借家・車損害 111名

住居必要な職員 100名以上
(遠距離通院が不能等)

早期にはガソリンもなく、市外からの通勤
職員は、病院で雑魚寝状態で生活せざるを
得なかった。 また通勤できなかった職員も
多数にのぼり、診療の戦力不足ともなった。
このような事態は災害直後どこでも起こりうる問題で、事前の対策が必須。
報道は味方である。
ニュースのゴールデンタイム等に配慮。
しかし診療にも配慮していただく。
Iwate Prefectural Ofunato Hospital
最大の混乱
3/14 無秩序に施薬患者を
院内に誘導。⇒大混乱

津波警報(誤報)⇒災害体制

福島第一原発3号機⇒屋内退避?
水素爆発
福島中央TV提供

0.50 測定値(μSv/h)

定点 空間線量測定値(μSv/h)
0.00
6:308:3013:30
17:3010:0014:00
7:00 11:00
15:00 7:00
3月14日 15:30 12:30
3月15日 8:30 17:15
3月16日 6:00 12:00
3月17日 3月18日 8:30 9:00
3月19日 3 3 9:00 9:00
3月22日 3 3
月 月 3 3 3
月 月 3 4 5
20 21 月 月 月
23 24 月 月 月
日 日 25 26 27
日 日 28 5 24
日 日 日
日 日 日

3年前(中越沖地震後)に地震・大津波で女川原発の配管あるいは外部電源喪失を想定して
おり、これが起こった場合、当地は住民全員退去となる可能性を考えていた。
福島第一原発の水素爆発をうけ、院内で“コードR”=
屋外より退避し窓に目張り、換気停止、安定ヨード剤投与の準備を院長許可で密かに開始していた。
統制の無い院内への患者・
家族の誘導、と混乱。

災害時患者・家族を院内に
入れる場合には、統制が
必要となる。
施薬の導線
患者誘導のラインを
作り、統制下に患者・
家族を院内に誘導。
・・・一方通行とした。
2011.3.16
お薬手帳は非常に有用であり、災害時保険証と一緒に持ち歩くことが必要。
参集DMAT
◆3/12 06:25 秋田組合病院、雄勝中央病院
07:40 八戸市民病院、 3/15 08:53 川口医療センター
秋田大学 01:51 国立病院機構沼田病院
川崎医大、 08:15 相澤病院
伊那中央病院 3/16 11:00 近畿大学
埼玉医大、 3/17 14:20 東京医科歯科大学
10:43 富山大学
姫路医療センター、 計 19隊
11:13 新発田病院
盛岡赤十字病院、
徳山中央病院
鳥取大学、
武蔵野赤十字病院
大船渡病院でのDMAT活動
1、病院救命救急センター
3次救急患者診療支援
2、重症患者域内搬送支援
(1)救急車
(2)ヘリ搬送
3、避難所医療ニーズ偵察活動
4、避難所救護活動
:大船渡、陸前高田両市の主な
避難所に派遣

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


US AIDの当院訪問、ニーズ調査
200
400
600
800
1000
1200

0
03月11日
03月13日
03月15日
03月17日
03月19日
03月21日
03月23日
03月25日
03月27日
03月29日
03月31日
04月02日
04月04日
04月06日
04月08日
04月10日
急患

04月12日
04月14日
外来患者

04月16日
04月18日
04月20日
04月22日
04月24日
04月26日
04月28日
04月30日
05月02日
05月04日
05月06日
05月08日
05月10日
2011/3/11~5/24外来受診・急患推移

05月12日
05月14日
05月16日
05月18日
05月20日
05月22日
05月24日
0
20
60
80

40
120
140

100
10
20
30
40
50

0
50

0
100
200
250
300
350
400
450

150
3/11

3/11
3/12
3/13 (人)

3/12
3/14

3/13
3/15
3/16

3/14
3/17
3/18

3/15
3/19

3/16
3/20
3/21

3/17
3/22
3/23

3/18
3/24

3/19
3/25
3/26

3/20
3/27
3/28

3/21
3/29

3/22
3/30
3/31

3/23
4/1
4/2

3/24
4/3

3/25
4/4
4/5

3/26
4/6

3/27
4/7
4/8

3/28
4/9
4/10

3/29
4/11

3/30
4/12
4/13
4/14
4/15
4/16
4/17
4/18
4/19
4/20
4/21
4/22
4/23
4/24
4/25
4/26
4/27
4/28
4/29

金土日月火水木金土日月火水木金土日月火水木金土日月火水木金土日
3/314/14/24/34/44/54/64/74/84/94/10
4/30
5/1
5/2
5/3
含み)

5/4
5/5
搬送件数

5/6
入院患者数

5/7
5/8
5/9
在院患者数(精神

5/10
5/11
5/12
5/13
5/14
5/15
5/16
5/17
5/18
5/19
(発災後1か月間)

5/20
5/21
岩手県立大船渡病院 入院患者動向 3/11~5/24

5/22
5/23
1日あたり入院患者数

5/24
5月30日病院
通常診療再開

0
5
10
15
20
30
35
40

25
大船渡病院処方箋発行数
1,000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0

4月9日
3月23日

4月1日
4月2日
4月3日
4月4日
4月5日
4月6日
4月7日
4月8日
3月12日
3月13日
3月14日
3月15日
3月16日
3月17日
3月18日
3月19日
3月20日
3月21日
3月22日

3月24日
3月25日
3月26日
3月27日
3月28日
3月29日
3月30日
3月31日

4月10日
3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 3月 4月
4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月 4月
12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 10
1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日
日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日
処方箋発行数 314 451 789 702 550 398 882 231 196 165 904 713 482 775 91 86 668 570 454 382 490 58 48 633 706 637 619 619 81 38
他院処方 43 253 348 326 219 119 330 94 81 43 289 171 81 167 5 9 149 109 89 100 67 20 0 102 109 101 107 109 0 0
内服薬等流出のための処方のみの患者数
442/9906=4.5%
160 2
160
140
5 140
120 7 86 120
100 47 100 125
73
80 80 94 104
60 60

40 68 71 40
48 3 21
20 28 34
20 19 22
8 2
1 3
0
7 1
0
2 1
0
2 0
0
3月 4月 5月 6月 7月 8月
3月 4月 5月 6月 7月 8月
避難所 避難所以外
大船渡市 陸前高田市 その他

3月 4月 5月 6月 7月 8月 計
全受診数 1768 1818 2044 1395 1392 1489 9906
3月 4月 5月 6月 7月 8月 Total
n 122 159 126 29 3 3 442
大船渡市 68 71 48 7 2 2 198
陸前高田市 47 86 73 19 0 0 225
その他 7 2 5 3 1 1 19
0
1
2
4
5
6

3
2011/03/11
2011/03/13
2011/03/15
2011/03/17 A(1A=0.5ml)
2011/03/19
2011/03/21
2011/03/23
2011/03/25
2011/03/27
2011/03/29
2011/03/31
2011/04/02
2011/04/04
2011/04/06
2011/04/08
2011/04/10
2011/04/12
2011/04/14
2011/04/16
2011/04/18
2011/04/20
2011/04/22
2011/04/24
破傷風トキソイド使用数

2011/04/26
2011/04/28
2011/04/30
2011/05/02
2011/05/04
2011/05/06
2011/05/08
2011/05/10
2011/05/12
2011/05/14
2011/05/16
2011/05/18
日計
肺炎とHOT(在宅酸素療法)
3月 薬剤種別使用量総計
80000
単位=錠、(アンプル、バイアル、袋)

70000
1日1回、2回、3回投与による使用量の補正が必要
60000

50000

40000

30000

20000

10000

0
2011年3月19日日本医師会よりの医薬品
8.5t米軍機輸送(岩手県分 1t)

横田基地⇒花巻空港 (US Airforce HPより)

結果的にこの薬剤はほとんど使用されず。
通常流通ルートが早く回復した。
3月中の処方
➢ 3/11~3/31 処方数総計 11,615
3/11~3/18(1週間) 処方計 4,749
➢処方日数
・3/12~3/15 3日間
・3/16~3/21 7日間
(日本医師会経由で県内計8.5tの薬剤到着)
3/17には通常ルートが復旧していた。
・3/22~4/6 14日間(他院患者 30日分)
・4/7~ 30日間
(3/31段階で高田の診療所:処方3日分限度)
2011.3.14
2011.3.25 日本医師会からの薬剤・・・使用されなかった
この通達で、支援薬剤を保険薬に転用し、無駄とならなかった。
びっくりしたこと
災害時医療の最後の砦としての“災害拠点病
院”の常識的な考えからすれば、慢性期の処方
薬などを失った他院の患者さんにも、処方を
行うことが責務である。

しかし同じ被災地内県立病院でも数か所に
おいて、他院処方を拒絶していたところが
存在した!
急性期災害医療活動のまとめ
1、病院での活動は事前の準備が奏功し、大き
な混乱なく整然と訓練通りの活動できた。
2、“混乱した”といわれる通信連携はハードの
面からは大きな影響はなかった。
3、指揮に従わず自己判断で活動する医師、非常
事態でも予定手術を平然と行う科、職員の食糧
などの問題に課題を残した。
4、県としての活動は概ね戦略通りであったが、
災対本部担当への早期のバックアップが必要と
考えられた。
亜急性期~慢性期医療活動
~大船渡市保健医療チーム活動~

住田町のガソリンスタンドに列をなす陸前高田からの車列
県内被災地関係機関の発災時被害状況

病院 市役所・役場 警察署 消防署

宮古市 〇 △ △ △
山田町 × △ × ×
大槌町 × × × ×
釜石市 △ △ × ×
大船渡市 ○ ○ ○ ○
陸前高田市 × × × ×

〇:機能維持
△:一時機能停止 役所等の関係機関の被災状況が初期の災害
×:機能消失 対応に大きな影響を及ぼした。
気仙地域の保健医療体制
2圏域の保健所が事実上“統合”
県保健所長は兼任、主体は釜石。
=災害時大船渡に保健所長は不在となる。

大船渡市の災害時保健医療は
筆者がコーディネートしつつ、
市保健福祉課が一元統制した。 釜石保健所:釜石市
大槌町
(保健所は県保健所)

大船渡保健所:大船渡市
陸前高田市
住田町
Iwate Prefectural Ofunato Hospital
大船渡市保健医療チームと関係機関との連携
心血管インターベンション治療学会
岩手県保健福祉部
県医師会 藤沢市民病院

大船渡保健所 神奈川県庁
所長は釜石保健所長兼務 連絡員のみ 気仙医師会
複十字病院
(常駐=釜石) (2名)
参加なし
✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱ ✱✱✱✱✱✱✱ 杏林大学

コーディ 大船渡病院 岩手医大


大船渡市 ネータ
保健福祉課 統括 統括DMAT 救急医療に特化 栃木県がんセンター
血管内治療可能
支援各職種 医療、保健師、 小児科学会
臨床心理士(こころのケア)、 手術可能
チーム 薬剤師、理学療法士
栄養士、社会福祉協議会 等
重症患者 順天堂大学

岡山大学

医療救護班常駐救護所 診療所 日本大学


末崎町 救護所
(ふるさとセンター) 綾里 越喜来・吉浜 東邦大学
保健師
赤崎町 猪川町・ 新山手病院
大船渡 大船渡北 盛町
中 小 漁村セン 立根町
10ヶ所 ター その他
保健師 保健師 保健師 保健師 磐井病院
1426 保健師 保健師
胆沢病院等
人 9か所
10か 5か所 10か
1730 3か所 6ヶ所
所 1455 所 282人
人 800人
843人 人 979人
2011/4/5 岩手日報
大船渡市への活動報告場面 (発災後1週間以内)

気になる個別、避難所生活における健康の2次被害予防のために必要なニーズ
や健康課題を報告する。この情報(個別事例、ニーズなど)は、18:00からの医療
チームとの合同連携ミーティングに反映される。
活動中、ゼッケン着用。被災者にも、被災自治体にも、どこの誰かがわかってよ
かった。
2011.3.12 大船渡市災害対策本部情報:各避難所避難者数
2011.3.12 大船渡市災害対策本部情報:道路啓開情報
DMAT避難所医療ニーズ偵察 越喜来地区=徳山中央病院
および救護所活動:3/12~3/14 新発田病院

盛地区:武蔵野赤十字病院
県立大船渡病院

赤崎地区:伊那中央病院
大船渡地区
:武蔵野赤十字病院
綾里地区=新発田病院

高田一中=富山大学
新発田病院
武蔵野赤十字病院

米崎地区:高田病院
診療所 末崎地区=雄勝中央病院

小友地区

広田地区=当院

各地区の中核避難所と診療所
DMAT活動:避難所

雄勝中央病院・武蔵野赤十字病院提供
3月12~13日
大船渡市保健福祉課で提案した
受持ち区域設定案-(1)
3月12~13日
大船渡市保健福祉課で提案した
受持ち区域設定案-(2)
医療救護班受持ち区域
吉浜

川町
根町
頃市町 越喜来

盛町

綾里
赤崎町
大船渡町 最大 避難所 64
避難者8,437人

末崎町
橋梁破壊のため
孤立した気仙町。

ここは気仙沼市 最大避難所 84
避難者数10,143人
発災直後
県災対本部との連携で、内陸部病院の状況を把握。
盛岡
患者搬送・転院を状況に応じて実施。(空路・陸路)
花巻空港

釜石市
唐丹地区

奥州

×
胆沢、磐井両病院の 大船渡病院
電気的トラブルで搬送不能
× 高田病院
×
× 孤立地区
一関

寸断した主な道路
大船渡市避難所

大船渡市東日本大震災記録誌 より
0
10000
12000
14000
16000
18000

2000
4000
6000
8000
3月12日

3月14日

3月16日

3月18日

3月20日

3月22日

3月24日

3月26日

3月28日

3月31日

4月5日

4月10日

2011年
4月14日

4月19日

4月24日

5月5日

5月17日

5月31日

6月14日

6月29日

7月12日

7月25日

8月10日
陸前高田市避難者数推移

8月25日
岩手県災害対策本部 報告から
大船渡市記録誌p160
大船渡市記録誌p160
大船渡市記録誌p158

大船渡市記録誌p107
大船渡市記録誌p157
大船渡市記録誌p157
大船渡市記録誌p96
2011/3/19 大船渡市保健医療チーム合同ミーティング
大船渡市保健医療チーム合同ミーティング
:初期=大船渡市役所会議室
大船渡市保健医療チーム合同ミーティング
:7~8月以降=保健介護福祉センター
医療救護班用薬剤
気仙薬剤師会は、仮設住宅個別に一般薬の配置を行っていった。

県薬剤師会派遣薬剤師等の協力
災害発生直後医師と連絡は
かなり困難な時期がある。
その際に、この法的根拠を
もって、薬剤師は薬を喪失した
被災者に積極的に関与する
ことが、慢性疾患悪化、ひいては
災害関連死の防止に役立つ
ことになる。
(ただ、通達がない場合、厚労省
に確認する必要あり)
医療チーム救護活動

北里大学提供
医療救護班
リアスホール

コンクリートの床に薄いマット1枚で
被災者は寝ている。
コンクリートの床にシート
1枚で寝ている

ダンボールベッド
使用し比較的快適で
好評であった。
市民会館への市保健師によるマンホールトイレ設置
防疫活動

岩手県ペストコントロール協会委託
小樽市保健師チーム提供
■全戸訪問(地域ローラー作戦)活動
○2次隊から保健福祉ニーズ調査・安否確認・健康相
談のため全戸訪問(地域ローラー作戦)を開始。
合計で1270人に実施。 瓦礫の中の道を通
リ、家庭訪問へ

・住基情報に基づいた名簿があればさらに
効果的・効率的。
・世帯票ニーズ調査リストについては、本市
の書式を使用。
記載例等があると記載内容や判断基準の
ばらつきを最小限にできる。
・訪問後の記録のデータ管理の事前調整が必要。
・訪問においては、身分証明書の提示を求められ
ることがあり大船渡市から身分証明書が発行さ
れて、訪問活動がスムーズに進んだ。 家までなかなかた
どり着かない

相模原市提供
津波災害急性期~亜急性期活動の問題点

1、急性期活動とニーズの相違
(1)活動範囲が広範囲・・・“神戸型地震災害と異質”
移動手段、情報収集:避難所の場所、
避難者数
(2)携帯薬剤:生活習慣病主体の薬剤
2、避難所救護所の形成(市災対本部との連携)
(1)衛生環境指導
(2)行政との情報連携:場所、数、避難者数
(3)慢性疾患クスリ流出者への対応
(4)患者搬送手段、連絡法

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


避難所救護班活動状況
大船渡市 陸前高田市
避難所数(最大) 64 84
避難者数(最大) 8737人 10143人
医療救護班(延) 2072人 8191人
(15チーム) (94チーム)
保健師チーム(延) 3676人 6120人
(16チーム) (17チーム)

被災規模が違うとはいえ(県は派遣チームの調整をうまく行った、と公言するが)、
個人的に救護班を要請、依頼しても大船渡市の医療救護班はこのチーム数であった。
受け持ち地区を決めて、特定のチームに同じ地区の避難所を担当してもらうことで
申し送りなどを円滑化するようにしていった。
亜急性期~慢性期医療チーム(13チーム)のべ2070人 : 6月いっぱいで全隊撤収
3/11 3/31 4/30 5/31 6/30

佐久市医師会 3/15~3/28

武蔵野赤十字病院 3/15~3/17

北里大学 3/16~3/27

徳洲会 3/17~3/30

東京医科歯科大学 3/17~3/19

医療生協 3/18~5/30

自治医大
(本院) 3/26~7/1

(埼玉医療センター) 4/3~4/23

岡山県 3/26~4/29

3/28~4/1
谷井医師(北海道)
JOC 3/29~4/27

秋田県社会保険病院 4/1~4/10

さくらクリニック
亜急性期~慢性期こころのケアチーム のべ1769人
3/11 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月

相模原市 3/24~5/6

久里浜アルコール症 3/25~現剤
センター

沖縄県 4/6~9/29

宮崎県 5/1~5/18

5/1~5/31
医療法人秀峰会
(埼玉県)

愛知ネット(NPO) 4/2~現在
亜急性期~慢性期保健師チーム(16チーム)3676人: 11月いっぱいで全隊撤収
3/11 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月

能代市 3/14~6/3

相模原市 3/14~4/27

一関保健所 3/19~3/22
岡山県 3/19~8/31

倉敷市 3/19~4/10

奥州市 3/17~10/31

金ヶ崎町 3/17~3/31

沖縄県 3/24~7/31
3/24~4/18
秋田市
いなべ市(三重) 3/26~4/8

小樽市 3/30~4/14

肝付町(鹿児島) 4/1~4/3

甲賀市 5/9~10/22

大隅連合(鹿児島) 6/3~8/31

ろっこう医療生協 7/1~11月末

日本・岩手県栄養士会 4/11~6/29 8/29~10/14


保健師チームの活動

小樽市提供 岡山県提供

秋田市提供
避難所感染症予防活動:3月
・各医療救護班+保健師チームが主体

岡山県保健師チーム提供
避難所感染症予防活動:3月

改善前 改善後
避難所感染症予防活動:3月
避難所のトイレ

岡山県保健チーム提供
大船渡北小避難所トイレ

避難所調理場とディスポ食器洗い場
避難所感染症予防活動

以下の資料に示すように、当初から活動する保健師チームの
各避難所等での感染予防措置活動により、4月初旬には、
感染症は拡大なく制御された。
県の感染症チームの急遽開始された活動は、残念ながら
そうした時期からであった。
10
15
20
25
30
35
40

0
05月01日
05月02日
05月03日
05月04日
05月05日
05月06日
05月07日
05月08日
05月09日
05月10日
05月11日
05月12日
05月13日
05月14日
05月15日
05月16日
05月17日
05月18日
05月19日
05月20日
05月21日
05月22日
05月23日
肺炎

胃腸炎
Flu

05月24日
05月25日
05月26日
05月27日
05月28日
上気道炎、咽頭炎、気管支炎

05月29日
05月30日
大船渡病院;感染症動向 2011/5/1~5/31

05月31日
大船渡市内避難所感染症動向:2011/3/15~4/30
120

100

80 上気道炎
Flu

60 胃腸炎

40

20

0
大船渡市内避難所インフルエンザ発生状況
:2011/3/15~4/30
8
Flu
7

5
保健師チームが、避難所の衛生管理と
4 感染予防を行い、感染症コントロールが
実施され、インフルエンザも抑え込まれた。
3

0
市内等交通機関

大船渡市東日本大震災記録誌 より

市保健医療チームの各職種合同ミーティングで、ボランティア
タクシー等の手配等を行い、交通手段の無い通院、買い物などに
動いていただいた。
被災者の健康維持のために、買い物、通院などの足を確保することは重要
避難所や仮設住宅被災者の健康の維持のため、通院や買い物の足としての
公共交通機関の確保、また出張販売などを行うように仕向けることも、
災害時保健医療活動の重要な部分である。

戸建て木造仮設住宅 仮設住宅への交通機関

仮設スーパー
報道写真より
避難所閉鎖と仮設住宅入居

避難所閉鎖 仮設住宅入居開始

大船渡市 2011年8月28日 4月25日

陸前高田市 2011年8月14日 4月9日


2013年(発災後2年目)でも、いわゆる“こころのケア”の窓口は上に示す、数多くの
窓口をもっていた。 これを統合調整する方向性はみられなかった。
たとえば、一つのチームが2週間程度に数件のコンサルトしかしていない実態は
公表されていない。効率的運用が必要であるが、予算の取り合いをしているかの
状況を呈したのは、今後の大きな活動上の課題である。
当院直接受診、また避難所より受診
した患者分析
結果
(2016/8/30再調査修正)
避難所被災者の当院受診と入院
3月 4月 5月 6月 7月 8月 計
(M 4885,
受診総数 1768 1818 2044 1395 1392 1489 9906 F 5021)

救急車搬入数 381 316 217 188 210 252 1564 大船渡市:


665名(50.5%)
入院総数 305 277 239 190 172 177 1360
陸前高田市
死亡総数 9 13 8 4 8 8 50 604名(45.8%)

避難所からの受診者 356 372 361 229 132 53 1503 16.1%

避難所からの救急搬入 112 76 36 19 10 7 260 17.2%

避難所からの入院 65 54 37 19 12 4 191 15.1%


10.0%
避難所受診者死亡数 1 0 1 0 2 1 5
大船渡市:
参考:大船渡市内避難所救護所受診者総数(3~6月):5934名 112名(43.1%)
死亡者の93%=自宅発症 陸前高田市
138名(53.1%)
避難所より当院を受診した患者数
400

350

300

250

200

150 F
100

50

0
3月 4月 5月 6月 7月 8月
避難所救護所の受診者数推移
(人)
1200

1000

800

600

400

200

0
3月 4月 5月 6月
大船渡町・盛町・赤崎町 末崎町 三陸町
当院受診者総数と避難所よりの受診者数

避難所よりの受診者
受診数

400
350
300
250
200 949 905
150
100
50
15 42
0
3月 4月 5月 6月 7月 8月 大船渡市 陸前高田市 住田町 圏域外
避難所からの救急搬送数
120
3

100

80 58
3

60
43

40 1
51 17
20 2
30
18 11
6 0
3 0
1
1 2
0
3月 4月 5月 6月 7月 8月
大船渡市 陸前高田市 その他
2011.3.11~8.31受診者数
避難所以外
受診総数:9906人(M4885,F5021)
避難所
2500

9000
2000
8000
7000
1500
6000
5000
4000 16.1% 1000

3000
2000 500

1000
0 0
避難所からの受診者数 避難所以外の受診者数 3月 4月 5月 6月 7月 8月

受診者総数 住田町 圏域外 月別受診者数


6% 6%

陸前高田
市 大船渡市
30% 58%
2011.3.11~8.31入院数
避難所以外
避難所以外
避難所
避難所

350

300

1200 250
1000
200
800

600 15.1% 150

400 100

200 50
0
0
避難所からの入院 避難所以外の入院数 3月 4月 5月 6月 7月 8月

入院総数
入院総数 月別
各疾患別入院数動向
(人)
35

30 脳神経
呼吸器疾患 心疾患
大動脈系
25 深部静脈血栓
呼吸器

20 消化器
外傷
自殺
15 精神
消化器
代謝内分泌

10 感染症
血液

皮膚
5 外傷 泌尿器系
その他

0
3月 4月 5月 6月
2011年
避難所被災者の疾患別入院動向
35

30 呼吸器系

25

20

15
消化器系

10
心疾患
5 外傷

0
3月 4月 5月 6月 7月 8月
脳神経 心疾患 大動脈系
深部静脈血栓 呼吸器 消化器
外傷 自殺 精神
代謝内分泌 感染症 血液
皮膚 泌尿器系 その他
入院原因疾患 避難所(仮設住宅)からの
入院原因疾患
その他 12%
DVT 0.20%
自殺、自殺企図 0.50%
アナフィラキシー 0.60%
大動脈疾患 0.93%
HOT酸素切れ 0.93% その他 5.60%
中毒 1.10% 大動脈疾患 1.30%
気管支喘息発作 1.50% 代謝性疾患 1.70%
感染症 1.80%
泌尿器疾患 2.20%
代謝性疾患 2.10%
感染症 2.60%
精神疾患 2.60%
3.20% 産婦人科疾患 2.60%
泌尿器科疾患
悪性腫瘍 4.60% 精神疾患 3.50%

外傷 6.40% 脳神経疾患 8.20%


脳神経疾患 9.20% 外傷 9.10%
産婦人科疾患 9.50% 16.90%
心疾患
心疾患 10.60%
消化器疾患 19.90%
消化器疾患 15.10%
呼吸器疾患 26.40%
呼吸器疾患 17.10%
0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00% 25.00% 30.00%
0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00%

Fig 3 全入院患者および避難所(仮設住宅)から
入院となった原因疾患
内服薬等流出のための処方のみの患者数
~大船渡病院分~
160 2
160
140
5 140
120 7 86
120
100 47 100 125
73
80 80 94 104
60 60
40 68 71 40
48 3 34 21
20 19 20 28 22
8 2
1 3
0
7 1
0
2 1
0
2 0
0
3月 4月 5月 6月 7月 8月
3月 4月 5月 6月 7月 8月
避難所 避難所以外
大船渡市 陸前高田市 その他
3月 4月 5月 6月 7月 8月 計
全受診数 1768 1818 2044 1395 1392 1489 9906
3月 4月 5月 6月 7月 8月 Total
n 122 159 126 29 3 3 442
大船渡市 68 71 48 7 2 2 198
陸前高田市 47 86 73 19 0 0 225
その他 7 2 5 3 1 1 19
6.9% 8.7% 6.2% 3~8月:442/9906=4.5%
7.8% ✽有症状(かぜなど)の“薬希望”は
7.2%
281/3586 407/5630
除外した。
3.11大船渡市避難所救護所“処方のみ”
大船渡市避難所救護所カルテデータベース
すべての処方数 大船渡市東日本大震災記録誌 より

3月 4月 5月 6月 小計
大船渡町・盛町・赤崎町 938 712 223 58 1931
末崎町 1209 1124 885 863 4081
三陸町 146 38 1 0 185
小計 2293 1874 1109 921 6197

薬流出・喪失、定期処方のみの処方数
3月 4月 5月 6月 計
大船渡町・盛町・赤崎町 152 98 19 2 271
末崎町 207 212 34 8 461
三陸町 28 7 0 0 35
計 387 317 53 10 767

大船渡市内避難所救護所での処方数総計=6197
“有症状での薬希望”以外の薬のみ処方=767 (12.4%)
(ex:風邪でのどが痛いのでクスリ欲しい“)
3~8月死亡原因:直接死除く

悪性新生物 肺炎 その他
脳疾患 4% 4% 0%
自殺
4%
10%
心疾患
36%
大動脈疾患
10%

不慮の事故
32%

16例中 誤嚥・窒息14例(71%)
交通事故 2例
転落 1例
浴室で溺水1例
3-8月直接死以外の死亡者住所

25
1
4
20

15
22
10 18

5
5

0
大船渡市 陸前高田市 その他

在宅 避難所・仮設
災害関連死と考えられる症例
N=7/50 , M4,F3 Age:85.0±8.6yrs
死因 発症場所
自殺
14% 自宅
14%

誤嚥窒息 仮設住宅 避難所(帰還


AMI 29%
29% 直後も含む)
57% 57%

No 月 Age Sex 原因疾患 発症場所・状況 既往など


1 83F AMI 避難所 なし
2 3月 71M 誤嚥窒息 自宅 停電で喀痰吸引不能 進行性核上性麻痺
3 4月 81M AMI 避難所から自宅帰還直後 なし
4 5月 99F 縊頚、自殺 避難所 なし
5 80M AMI 避難先 なし
6 7月 94F AMI 仮設住宅 なし
7 8月 87M 誤嚥窒息 仮設住宅 脳梗塞後遺症
防ぎ得る災害死PDD
文献
H26-27総合研究報告書「東日本大震災の課題からみた今後の災害医療体制のあり
方に関する研究」

岩手県と宮城県のPDD

宮城県:対象75病院 3/11~3/31 死亡 1243例


PDDの可能性が高い=125例(10.1%)

岩手県:対象15病院(沿岸部)+内陸部14病院 死亡456例
PDDの可能性が高い=36例(8%)

2県 合計 PDD=161例
災害関連死の推移 行政の認定数
140
岩手県全体
120
100
80
60
40
20
0 復興庁2016年3月

大船渡市 陸前高田市
25
16
14
20 12
10
15 8
6
10 4
2
5 0

3.19-4.11

9.11-3.31
3.11-3.18

4.12-6.11

6.12-9.11

9.12-3.10

3.11-9.10
0
3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2011年 2012年 2011年 2012年

大船渡市分許可なく公表不可資料
陸前高田市復興局被災者支援室 調べ:災害関連死月別発生数、2018.6.20 回答
大船渡市生活福祉部地域福祉課生活支援係 (佐々木怜)
データ発表等了解済
20
40
60
80

0
100
3.1.H24 120
6.1.H24

9.1.H24

12.1.H24

3.1.H25

6.1.H25

9.1.H25

12.1.H25

3.1.H26

6.1.H26

9.1.H26

12.1.H26

3.1.H27

6.1.H27

9.1.H27
釜石市
大槌町
山田町
宮古市
岩泉町
普代村
野田村
久慈市
洋野町

大船渡市
田野畑村

陸前高田市
岩手県内被災市町村災害関連死推移
大船渡市内全避難所救護所で医療救護班が処方
した薬剤(3月12日~6月30日)

降圧薬
消化器治療薬
抗アレルギー薬
鎮咳去痰薬
皮膚外用薬
総合感冒薬
解熱鎮痛消炎薬
抗生物質・抗菌薬
睡眠薬
抗不安薬
抗血栓薬
喘息治療薬
高脂血症治療薬
口腔用薬
糖尿病治療薬
点眼薬
その他

0.0% 3.0% 6.0% 9.0% 12.0% 15.0%

データ分析協力:医療法人財団正清会 三陸病院 薬剤科、加藤昭一、福士陽子


災害時慢性期医療のあり方

➢ 現場のマネージメントシステムを強化しない、また
中心としない慢性期保健医療管理は機能しない
(阪神淡路大震災、中越地震、中越沖地震後の各県に
すでにマネージメントの形ができている)ことが
明らかとなった。
➢ 現場の保健所等を中心としたマネージメントチームの
補強を急性期から行う体制整備が必要。
➢ 平時から保健医療マネージメントシステムの構築と
それを行う者の研修教育を行う必要がある。
➢ 災害医療の知識のない者が責任者の立場には不適。
➢ 病院、医師会、大学、自治体などの責任者への災害医療
教育が必要。
気仙地区の被災後の被災者血圧と
被災前からの脳卒中動向
両市避難所・仮設住宅被災者血圧動向
:2011年3月~2016年3月
mmHg
200

180

160

140
SBP
120 大船渡市
DBP
100 SBP
DBP
陸前高田市
80

60

40 避難所 仮設住宅
5月

9月

1~2月
8~9月

4~9月
1~3月
3月
4月

6月
7月

1月
6月

2月
7月

2月
10月

2011 2012 2013 2014 2015 2016


mmHg ✽ n.s.: no significant
180 n=121
160

140

120
100
80
60
n=121(M6,F115), Age:68.6±8.2
40
8月 9月 10月11月12月 1月 2月 7月 9月 10月 5月 7月 11月 1月
2011 2012 2013 2014 2015
SBP DBP

住田町木造戸建て仮設住宅居住被災者の血圧
気仙地区脳卒中発症数推移
:2007~2016
300
23 25
13 22

250 21 19 20
70 68 16 11
65 68 11
45 34
64 66 54
200 57

150

197 203 203 196 193 193


100 176 172 179 172

50

脳梗塞 脳出血 SAH


気仙地区脳卒中罹患率推移
:2007~2016
p=0.173824832 ns
(/10万人)

450 406.8 410.3 403 404.7 403.6


382.9 391.9 381.4
400 376.6 373.8

350

300

250

200

150

100

50

0
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

罹患率=罹患数/対象自治体総人口×10万
2009年1月~2014年7月までの脳卒中各型の月別発症動向

30
発災
25

20

15

10

0
5月

1月
1月
3月
5月
7月
9月

1月
3月
5月
7月

3月

7月

3月
5月
7月
9月

1月
3月
5月
7月
11月

11月

11月
9月

1月

9月

1月
3月
5月
7月
9月
11月

11月
2009 2010 2011 2012 2013 2014
脳梗塞 脳出血 SAH
2市1町毎脳卒中罹患率
:2007~2016
罹患率=罹患数/対象自治体人口×10万
(/10万人)
700

600

500

400

300

200

100

2012年
2013年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年

2014年
2015年
2016年
大船渡市 陸前高田市 住田町

2007-2010年(被災前)と
2011-2016年(被災後)の差の検定
大船渡市 陸前高田市 住田町
すべてで被災前と後での罹患率に
p-value 0.212322812 0.243121532 0.067755323 有意差を認めない。
n ✽
16
14
12
10
✽✽
8
6
4
2
0
2010年 2011年 2012年 2013年
大船渡市 13.1 13.6 13.4 13.3
陸前高田市 5.5 6.2 5.8 5.9

✽ 有意差なし
✽✽

震災前後4年間における被災2市の月平均脳卒中罹患数

被災前後での大船渡・陸前高田市の脳卒中の年毎の月平均
罹患数は増減を認めない。
発災後1年間の被災者と非被災者の脳卒中
型別発症数推移:2011年3月~2012年2月
登録症例の精査を行ったもの
避難所仮設被災者
脳梗塞 脳出血 SAH
避難所仮設被
在宅非被災者 計
災者
A) B)
1 n 30 207 237
1
0 0
1 1
0
1
M 19 117 136
0 0 0 0 4 0
1 3 3 1
2 2
1
0
1
2
1
0
1
2 F 11 90 101
0
3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 Age 75.9±11.8 76.2±12.1
2011年 2012年

在宅非被災者
A) 3-5月3か月間と
2
2
4 6
1
2 1
2
2 B) 8-10月3か月間との間で
0 6
4 1
1
3 0
1
3
2 0
0 6
p=0.028595
2
17 16 15
と有意差がみられる。
14 13 13 13
11 12 11 12
10

避難所から仮設住宅に移行する
2011 2012
年 年 時期に被災者の脳卒中が増加。
避難所・仮設住宅被災者と在宅非被
災者の脳卒中罹患率比較

✽ p=0.057
80
70
60 ✽
50
40
仮設罹患率
30
在宅罹患率
20
10
0
10月

11月

12月
5月
3月

4月

6月

7月

8月

9月

1月

2月
2011年 2012年

○在宅非被災者数:65552-2190(直接死+行方不明者数)-10447(10月仮設住宅居住者数)=52,915人
○仮設住宅居住者数 =10447人(平成22年10月1日現在 岩手県復興局データより)
(在宅非被災者数=平成22年国勢調査人口より直接死+行方不明者+仮設住宅居住者数を除したもの。)
気仙地区における脳卒中診療実態 ~病院毎岩手県脳卒中
登録数と当院および高田病院共同調査による急性期脳卒中診療数~

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

県立大船渡病院 0 297 312 301 238 257 394 290 249 262 288

県立高田病院 0 0 0 0 0 0 2(0) 6(2) 27(6) 24(1) 17(2)

住田診療センター 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

計 0 297 312 301 238 257 394 292 255 263 290

大船渡病院割合%
100% 99.3 98.0 99.6 99.3

高田病院( )=急性期入院症例数
すみた診療センターは現在当院附属で、平成21年4月入院病床が廃止。

99%以上の気仙地区脳卒中罹患患者は、大船渡病院で
診療。=大船渡病院の脳卒中診療は気仙地区脳卒中診療
に等しい。
引用:岩手県医師会 平成18年~平成24年がん・脳卒中届出状 http://www.iwate.med.or.jp/gan_nou/
2006-2012.html ,参照=2017年3月25日
仮設住宅1戸当たりの価格
・プレハブ型仮設住宅:400~500万
(標準仕様+断熱材などの追加設備含)
・住田型個建木造仮設住宅:約300万円
仮設住宅栄養調査
大船渡市
・対象600人(M154,F446)、M=64歳
・調査機関 2011/8/29~11/16
・調査範囲 大船渡市仮設住宅(+みなし仮設)
1、治療中の病気
高血圧38.4%>糖尿病9.4%>外科疾患9.2%
>心臓病7.9%>脂質異常7.4%>脳血管疾患4.5%
2、BMI >25(肥満)=26.4%
3、ミネラル、ビタミン類不足 8割
・買物に困っている理由:店が遠い26.8%>車がない12.4%

※対策:いろいろな野菜をたくさんとってください。
大船渡市・陸前高田市内仮設住宅

無舗装⇒転倒増加
屋外歩行困難→外にでて歩かなくなり
生活不活発病が問題となる。
外壁=断熱なし
隣家の音は筒抜け

舗装化
外壁断熱化・・・県に要望し実施。
住田町内 木造一戸建て仮設住宅

隣家の音は気にならず、木の香りにつつまれ、フィトンチッド効果が得られる。
寒暖のさが少ない。結露しない、カビの発生も少ない、さらに1戸の価格は、
プレハブ型仮設住宅より安価である。
その年、がれきの中で桜は咲いた。しかしそこにいる私には、モノクロの世界であった。
岩手県沿岸市町村の医療提供施設の被害状況及び復旧状況
【H25.8.1現在】
www.pref.iwate.jp/.../h250801_Damege_and_Resume_Survey_of_me
dical_institutio..
地域医療の崩壊-1:津波前
住田診療センター 吉浜診療所
(元々20床、現在無床)

大東病院 越喜来診療所
:脳卒中などの 大船渡病院
機能訓練での主たる :3次医療機関
転院先
希望ヶ丘病院(Psy) 綾里診療所

二又診療所

高田病院 開業医
慢性期、およびリハ 国保診療所
受け入れ病院
広田診療所
地域医療の崩壊:大津波後
住田診療センター 吉浜診療所

越喜来診療所

市中心部17診療所活動
大船渡病院 開業医1名行方不明
大東病院:機能停止 希望ヶ丘病院(Psy)
綾里診療所
二又診療所
開業医
高田病院壊滅
開業医2名死亡 国保診療所
1名行方不明
広田診療所
市中心部診療所は2つのみ。
増加の見通し皆無!
地域医療の崩壊:大津波後2
住田診療センター
入院機能復活可能⇒するつもりなし。 吉浜診療所

越喜来診療所

市中心部17診療所活動
大船渡病院 開業医1名行方不明
大東病院:機能停止
高田病院壊滅
綾里診療所
二又診療所
開業医
陸前高田市中心部=医療機関2つ(外来のみ) 国保診療所

広田診療所

地域包括医療ネットワークの消滅
2006年度~2010年度 4年間
大船渡病院脳神経外科(入院)からの転院紹介先
転入院紹介総計(4年間) 327

1、県立大東病院 89 (27.2%)×
2、県立高田病院 76 (23.2%)×
3、いわてリハビリセンター 21 ( 6.4%)
4、気仙苑・地の森クリニック 17 ( 5.2%)
5、栃内第二病院 14 ( 4.3%)
6、富美岡荘 13 ( 4.0%)
三陸の園、松原苑・松原クリニック・希望ヶ丘病院、高寿園など
27 ( 8.3%)
(注) は震災後“ゼロ”
気仙内(大東含む) 67.9%

2011/7/31現在 気仙内への転院:8/55=14.5%
“気仙医療再生会議”
2011/6/16 第一回開催
県保健福祉部 県医療局

大船渡市
自治医大梶井教授
(地域医療センター)
陸前高田市 大船渡保健所 アドバイザー

住田町

気仙歯科医師
気仙医師会

気仙薬剤師会 大船渡病院 高田病院

大船渡病院災害医療科長と大船渡保健所長の発案で
県医師会 地域の医療再生目的で発足した会議を組織し、被災地医療の
再生などに気仙地区から提言を行った。

数年後には人事異動などで被災地内医療の実態を知らない方々が
多くなり、目的が変化し、意義が失われた。
2011/6/16 第一回気仙医療再生会議
気仙地区医療再生についての県への
状況・意見の吸い上げる機構が欠如!
(正確な情報なしに、的確な戦略なし)

6/16、8/4、2012/1/18
気仙地区医療再生会議開催:3回開催

10/13 岩手県知事(県議会)
「3県立病院再建が基本」

Iwate Prefectural Ofunato Hospital


参考文献
1)山野目辰味:平成三陸大津波被災地病院活動報告:岩手県立大船渡病院より~災害前の準備期から発災
後慢性期まで.脳神経外科速報.21-9、2011:1027-1033
2)山野目辰味:東日本大震災被災地内病院の災害医療活動について~災害前の準備期から発災後慢性期
まで、全自病協雑誌50(10):1543-1547、2011
3)山野目辰味、八島良幸:平成三陸大津波での県立大船渡病院の災害医療活動、岩手県立病院医学会雑誌
.51巻補冊(東日本大震災津波における岩手県立病院の対応).33-37、2011
4)山野目辰味:平成三陸大津波後慢性期保健医療活動について~気仙地区からの報告~、岩手県立病院
医学会雑誌.51巻補冊(東日本大震災津波における岩手県立病院の対応).38-41、2011
5)山野目辰味:平成三陸大津波における岩手県立大船渡病院の急性期災害医療活動.日本医師会雑誌141
(1):19-25、2012
6)山野目辰味:東日本大震災(平成三陸大津波)における岩手県立大船渡病院の災害医療活動と大船渡
地区慢性期災害医療マネージメント.日本集団災害医学会誌.2012;17:105-112
7)岩手県:東日本大震災津波に関わる災害対応検証報告書.平成24年2月
8)岩手県保健福祉部医療推進課:「東日本大震災津波の医療救護活動」に係る調整等業務について~2011.3.11~
7.29~.平成24年11月
9)大船渡市生活福祉部:東日本大震災に係る保健・医療・福祉活動の記録. 平成24年3月
10)柳原博樹:災害医療コーディネーター:行政の視点から.内科 増大号.116:910-914、2012
11)岩手日報 特集“再興への道:自治体の連携”、 平成23年年5月3日
12)森野一真:平成21年度厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)分担研究報告書.
「地方におけるDMATの活用に関する検討、統括DMATの具体的運用のあり方」に関する研究
(研究協力者:山野目辰味et al):研究協力者資料 三陸沖地震津波に対する岩手県内および県外からの
医療支援などの災害医療体制整備の検討.
最後に
この記録に使用した写真は3.11活動終了後筆者の発案で院内すべての記録写真
を事務局に集め、活動記録を発表する際に、関わった者は院内誰でも使用可能とし
た記録である。
一部の写真は大船渡市役所、全国からの支援医療救護班、保健師チーム等が提
供してくれたものであり、感謝申し上げます。またデータは独自に収集整理を行った
ものであることをお断りする(他にこうしたデータ整理を行ったものはない)。
また、事実を記録したものであり、表現により誤解を招くことがあるかもしれないが、
何者も批判する意図はない。事実を現場で活動した者の目線で、淡々と記録した。
平時のシステムでしか物事を考え判断できないと、災害時用のシステムが無い中
で発生したこのような大災害へ対処しようとする、自己の頭で理解できない、被災者
の命や健康を守ろうとして急速に形づくられる必要なモノを否定し、自己の意識のみ
を中心に物事を考えようとする者が現れる。こうした事が被災者に危険を招くことに
なる。今回の大災害がこのような方々の覚醒を促し、被災者の命・健康を守るために
何が必要かを第一に考えられるようになることを望むものである。
すなわち、現場にいて、試行錯誤を繰り返しつつフレキシブルに対応を続けている
ものを最大限尊重し、バックアップし生かすことが原則であり、それを後方にいる個
人の誤った意識で混乱させるものがあってはならない。なぜならそれが関連死などを
呼び込むことになるから・・・。こうしたことを念頭に次にくる災害に対処していくきょうく
んとなることを望むものである。

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