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札幌医科大学総合診療医学講座 ジャーナルクラブ 第022回

CQ:プライマリケア医の初診時の診断プロセス
未分化な病態をどう扱い、問題の核心に至るのか?

Impact factor 2.3

表紙・タイトルを大きく貼る

開催日:2022年8月9日30日
発表者:佐藤 健太
診断推論のプロセスや型は様々
急ぐべき緊急病態の救急診療
Preventable Trauma Deathを防ぐため、
生理学的異常の評価と処置を最優先

重篤な内科疾患の病棟診療
網羅的で漏れのない病歴聴取と身体診察、的確な臨床検査を行い
事前確率・尤度比・ベイズの定理を応用した理詰めの確定診断

軽微であいまいな病状の外来診療
病状が未分化なため「念のため早めの精査」は空振りやすい
時間・費用・侵襲などが過度にならない、効率的アプローチが必要
外傷初期診療 画像検査のタイミングと意義 plaza.umin.ac.jp/feic/_src/sc562/The4thFEIC_nakajima.pdf
傾聴 ①


「誰も教えてくれなかった?」診断推論アプローチ
(福原俊一,野口善令,会川周作,横塚牧人) | 2008年 | 医学界新聞

医療面接の3つのphase
①患者・医師関係をつくるphase
傾聴が重視されている
(①は診断に直結しないと考えられていた)

②診断のために情報を取るphase ③鑑別リスト
患者の言葉を置き換えて
の検討
問題解決に使えるClinical problemにする
(どの言葉を選び、どう置き換えるかはArtの領域?)
①患者・医師関係をつくるphaseの方法論、理論体系は存在している。
が、患者満足度や診療時間の視点からの研究が主体(診断精度との関連は不明)

和訳書 和訳書 2020年


患者中心の医療面接
2003年
②診断をつけるために情報を取るphaseは研究が進み
Dual process theoryとして知られるようになってきた
直感的診断の可能性(志水太郎,松本謙太郎,徳田安春)
| 2012年 | 医学界新聞
Norman G. Dual processing and diagnostic errors. Adv Health Sci
Educ. 2009; 14(suppl 1): 37-49.

System2. 分析的思考
ツールや理論を用いて診断を詰めていく分析的診断
・フレームワーク(VINDICATEなど)やアルゴリズム
・Bayesの定理(検査前確率と尤度比で検査後確率を求める方法)
・暗記法(mnemonics;AIUEOTIPSなどの語呂合わせ)
※記憶をたどる労力や分析に時間がかかり,時に直感的思考よりも効率が落ち,
過剰な検査オーダーが行われたり,逆にシンプルケースではエラーを来したりするデメリットがある

System1. 直感的思考
豊富な臨床経験に照らし合わせた潜在意識下で行われる直感的診断
・典型的な臨床症状・所見から診断をズバリ当てる「パターン認識」
・ヒューリスティクスと似た手法で迅速な診断を可能にする「クリニカルパール」
・専門医による、得意分野の的確かつ迅速な診断
※経験が未熟な場合には数々の認知バイアスの影響を受けやすい
③鑑別リストの挙げやすさは、プロブレム名次第
医学的によく知られているプロブレム・主訴なら、書籍等を調べるだけ

UpToDateやDynamedの ジェネラリストのための
Differential diagnosis 内科外来マニュアル
理論モデル
患者中心の医療面接技法
BATHE法 共感

発症 早期 進行期 危篤 死亡

仮説演繹法
Dual process theory
JATEC・JMECC
未解明!? 救急初療アルゴリズム
BLS・ACLS
AI・検死
死亡診断書マニュアル
プライマリケアの初診外来では、未分化な病態を診ている
・軽症過ぎて、早期過ぎて、今後の分岐が読めない
・検査しても偽陰性になる(⇔後医は名医、典型症状が揃ったら診断は簡単)
・最初に同定した主訴(結果として現れた症状)が、
原因に直結するかわからず、全体を捉える必要がある。

幹細胞は
あらゆる細胞・臓器に
分化する可能性がある

不明熱や倦怠感も
あらゆる疾患へ
分化する可能性がある

https://study-z.net/100114548
未分化な健康問題の対応は、総合診療医・家庭医にとって必須スキル

Reeve J, et al : Examining the practice of generalist expertise


; a qualitative study identifying constraints and solutions.
JRSM Short Rep 4(12), 2013.

常時行う診療 患者と医療者の共通基盤の形成
Interpretive medicineの実践

患者に応じて コンサルテーション技術
ケアの継続性
患者-医師関係構築

取り扱う対象 未分化な健康問題
ファーストコンタクトケア
複雑な問題
きわめて幅広い健康問題
1.保険の種類
公的健康保険 gesetzliche Krankenversicherung
Professor of Family Medicine/General Practice (since 2003) プライベート保険 Private Krankenversicherung

2.救急受診方法
直接病院や大学病院に行くことも可能
救急車を呼ぶ番号は「112」
①日本の救急車と同様の Rettungs wagen
②医者が同乗している Notarzt wagen
③患者の搬送のみ Kranken wagen

3. 外来受診方法
まずはプラクシスに受診するのが原則。予約制。
ハウスアルツト(Hausarzt)という家庭医制度が
あり、自分で選んで申し込める(強制割当ではない)
①開業医院 Praxis(プラクシス)
②一般病院 Krankenhaus(クランケンハウス)
③大学病院 Uni-Klinik(ウニクリニック)
学術誌名 発行国・団体 Impact Factor
2015年 → 2022年
Annals of Family Medicine 米国 5.087→5.707
(AFM) (AFP:米国家庭医療学会)
総説でのまとめ
British Journal of General Practice 英国 2.741→5.386
(BJGP) (RCGP:英国家庭医学会)

Journal of General Internal Medicine 米国 3.494→5.128


(JGIM) (SGIM:米国総合内科学会)

The Journal of the American Board of 米国 1.989→2.657


Family Medicine(JABFM)

Medical Decision Making 米国 2.362→2.583


仮説の確認(量的+質的)

European Journal of General Practice 英国 1.364→1.904


(EJGP) (WONCA Europe:世界家庭医機構 欧州支部)
仮説の提案
診断を行う臨床家は、患者から莫大な情報を得ている
・患者の言葉や病歴
・疾患の有病率
・視覚的な印象

人間の脳は限界があり、多くの情報はノイズ
・有益な情報を収集し、選択し、
・重みづけし、ノイズは無視し、
・情報収集を続けるか打ち切るかの判断プロセスは不明。

最も知られている臨床推論モデルは仮説演繹法
・早期に診断仮説が形成されるが
診断仮説が生まれる前のプロセスはわかっていない
・実臨床では、数百~数千ある仮説を3~4つに絞っている
我々は、診断仮説前の段階で中心的な役割を担う
Inductive Foragingを提唱した。
※文献1、Norbert Donner-Banzhoff, EJGP 2014

・患者によって導かれる、最初のオープンな情報探索で、
患者自身のタイミング、もしくは医師の質問によって終わる。

・単に主訴を答える、症状を述べる以上のもの。

・ほぼ無限といえる「問題空間」を定義し、限定するのに役立つ

・この、診断に不可欠なガイダンスを提供できるのは患者側
Inductive Deductive
・帰納的な、誘導的な ・演繹的な
・using a particular set of facts or ideas ・大前提→小前提→結論
to form a general principle 「A = B」かつ「B = C」であれば、「A = C」

Foraging
・狩猟採集行為、食料を探す行為
・to go from place to place
searching for things that you can eat or use
・住居(特定の仮説)に居着かず
周囲にある資源を集めるために動く
Table 1.
①Inductive
Foraging

②Descriptive
Questioning

③Triggered
Routines

④Hypothesis
Testing
Figure 1.
Table 1.
用語 手続き 例
帰納的渉猟 患者が問題領域まで誘導する段階。 今日は何の用で来られたのですか?
広範囲の問題領域の探索を可能に はい。なるほど。
Inductive foraging するOpen question(図1a) (主訴・受診理由に関する語りの促し)

描写的な質問 医師が、 正確にはどこが痛いですか?


患者が語った「症状」「問題」の (いわゆるOPQRSTなど)
Descriptive 輪郭を明らかにする段階。 →労作時絞扼感?体動時痛?
questioning Closed questionを用いる

誘発される 医師が、 嘔吐はありますか?熱はありますか?


患者が語っていない関連事項を (臓器別の随伴症状・リスク因子など)
ルーチン質問 聞き出す段階。 (Clinical prediction ruleなど)
Triggered routines 「問題領域」の範囲を明らかにし →循環器系or消化器系を絞り込む
臓器・病態を絞る質問(図1b)

仮説検証 医師が、疾患仮説が正しいかを 奥さんにいびきを確認されたか?


採集確認する作業段階。 起床時に倦怠感を感じるか?
Hypothesis testing 想起した疾患の特徴を満たすか、 日中に眠気を感じるか?
問題の奥行き(氷山の水面下)を (診断基準や疾患の特徴の確認)
掘り出して確認する(図1c) →睡眠時無呼吸の特徴を確認
この論文の目的

この診断過程に関する仮説を検証するため
実際の診察の観察を行ってデータをまとめ、
総合診療医が診断に用いる認知戦略を明らかにする
研究参加者
ドイツ・ヘッセン州 Marburg-Biedenkopf地区

12名の常勤開業医に依頼し、全員が参加に同意した。

参加条件
開業して5年以上
大学院での指導経験がある
研究の手順
各開業医が、それぞれ半日のセッションを3回行った。
各診療所から、5件の診察を無作為に抽出した(n = 58)。
一部の診療所では、3件しか登録されておらず、すべてを分析した。

患者の組入・除外基準
症状や診断名とは関係なく、その日受診した(新規)患者を登録。
慢性疾患のモニタリング、以前に発見された問題の再診は除外。

同意取得
GPが研究の説明を行い、診察のビデオ録画への同意を書面で得た。
この段階で患者の現在の愁訴に触れないように指示された。

同意後の通常診察
同意が得られた後、通常通り診察を行った。
GPは、患者による最初の発話を考察の出発点とするよう求められた。
思考過程を確認するための面接
診察の様子はビデオ撮影された。
診察後、診断理由を説明するための半構造化面接が行われた。
各患者の第一印象やこれまでの知識、検討した診断仮説について詳しく質問する

質的解析の手順
患者診察と診察後GP面接の記録は、逐語的に書き起こされた。
質的データ解析のための MAXQDA ソフトウェアでコード化された。

患者が新たな愁訴を訴え、その結果、病歴聴取や診察など、
GPが何らかのデータ収集を行う診断エピソードを含むものを「診察」と定義した。

過去に発表された研究成果を参考に、
GPの診断理由とデータ収集行動を記述するカテゴリーからなるコードツリーを作成した。

このコーディングツリーに対して、グループ内で幅広い議論を行い、
コーディングと修正を何度か繰り返すことで、カテゴリの運用上の定義を行った。

この段階が終了した後
ランダムに選んだ3つの診察と3つの面接で、コーディング手順の信頼性を検証した。
その結果、加重平均で 84%の一致率が得られた。
コーディングの際に残った不一致は、研究チームの上級メンバ ーと協議して解決した。
認知戦略の成果を定量化するために、
全ての「診断的手がかり(Diagnostic Cues)」を同定した
・患者から自然に・自発的に得られた情報
・医師が意図的な質問を通して得た情報

言語的な手がかり …自発的な語り、質問への返答
非言語的な手がかり…視覚的な印象、身体診察所見

ある手がかりに関連して行われた追加質問で得た情報は
別の手がかりとして登録した
・痛みの質や誘因、増悪寛解因子など(OPQRSTなど)

各手法について、診察時の出現頻度を求めた。
研究のデザイン
2人の著者(ND-BとGG)が作成した。

研究プロトコルの詳細(被験者募集、データ収集・分析など)
研究チーム全体で議論した。

診療所でのデータ収集とGPとのインタビュー
著者2名(MV、AW)が担当した。

テキスト資料のコード化と分析
2名の有資格医師(JS、AMS)が行った(ND-BとSBから指導受けた)

選択された文章は、チーム全体で議論された
医学系研究者(ND-B, JS, AMS, SB, MV)
認知心理学研究者(WG, MAF, OW, AW, GG)。

ND-Bはこの研究の保証人である。
マールブルグ大学医学部倫理委員会より倫理的承認を得た。
ああ

都市部の中規模家庭医療診療所の指導医クラス
Figure 2.
参加拒否 49

除外基準 12
脱落 1

診断目的以外148

134件の診察中
23件で複数の問題
計163件の診断過程

68件をランダム抽出
非高齢女性で、家庭・学歴は様々
各診療所から、
3~16件の診断過程が提供された。
(偏りがあり、特定の診療所の特徴が影響しうる)

各診察の平均時間は
9 分 59 秒(2 分 45 秒~28 分 15 秒)
(海外の家庭医としては短め、ばらつきは大きい)

振り返り面接の時間
2分から18分(中央値、6分35秒)
帰納的渉猟 Inductive foraging
122件(91%)で確認された。
中央値は34秒(6~176秒)で
診断過程の14.6%(1.7~93.1%)を占めていた

57%で、医師が患者の語りを遮って終了していた。
一部では、あとで帰納的渉猟に戻ってきていた。
語りを促す技法として、言い換え、口頭での促し、
非言語的な励ましを頻繁に使っていた。

帰納的渉猟をしない場合、
過去カルテや予診情報で仮説を立てていた。
練習や症状の影響については、オンライン補足資料を参照
描写的質問 Descriptive questioning
描写的質問は137件(84%)でみられ、
身体診察は120件(89%)で実施された。

誘発されるルーチン質問 Triggered routines


62/163(38%)で観察された。

特定のGPは、同一の症状(Trigger)に対して
一貫して同じ質問セット(Routines)を用いていた

仮説検証 Hypothesis testing


63/163件(39%)でしか用いられなかった。
個々の戦略の使用頻度や使用時間
同じ診療所でも医師によって異なり、
同じ医師でも 診察によって異なっていた。

定量的に分析したサブ解析
戦略の利用頻度 手がかりの寄与率

帰納的渉猟 79% 31%


仮説検証 39% 12%
Summary
GPは、患者の診断評価に
帰納的渉猟、誘発された質問、仮説検証を使用していることがわかった。

プライマリーケアのサンプルでは、
焦点化された仮説検定の寄与は限定的であった。

帰納的渉猟、描写的質問、トリガールーチンなど、よりオープンな戦略は、
GPが得る「診断の手がかり」の大部分に寄与していることがわかった。
仮説検証への依存度が低い - 適応的認知戦略

仮説検証の実施率・貢献度は小さかった。
これは、プライマリケアという「環境への適応」として理解できる。

仮説演繹的アプローチ
少なくとも1つの仮説を意識し、その仮説を確認または否定するた
めのテストをする必要がある。
複数の仮説がある場合、全ての仮説について検証する必要が生じる
が、これは認知的に非常に難しく、おそらく不可能である。

複雑で不確実な環境では、迅速かつ倹約的な戦略で適応することが
示されている。
Gigerenzer G, Gaissmaier W. Heuristic decision making. Annu Rev Psychol.
2011;62:451–82.
帰納的探索と誘発された質問
早期思考閉鎖なしに問題空間を探索するのに適した戦略。
ほとんどの診察では、GPはこの戦略で得られた情報で十分だ
と考えている。
この段階では、情報探索に仮説は必要なく、浮かんでも抑制
すべきと考えられる。

早期の仮説検証への切り替えは、GPが明確に問題を認識でき
た場合に限定する。
ただし、医師主導となることで、患者は医師が要求したこと
しか言及しなくなり、本来得られたはずの診断の手がかりを
得られなくなるリスクがある。
2018年AFMの総説
先行研究との比較
Elstein
Medical Problem-Solving: An Analysis of Clinical Reasoning. Cambridge, MA: Harvard University Press; 1978.
Methods and theory in the study of medical inquiry. J Med Educ. 1972;47:85–92.

実験的環境で、仮説が早期に形成され、データ収集の指針となることを示した。

Ridderikhoff
Medical problem-solving: an exploration of strategies. Med Educ. 1991;25:196–207.
Problem-solving in general-practice. Theor Med. 1993;14:343–63.

プライマリケア医の診断過程を分析し、仮説検証はまれであることを観察した。

Heneghan
Diagnostic strategies used in primary care. BMJ. 2009;338:b946.
診断推論が面接開始段階から始まり、絞り込みの過程が続くことを示唆した。
帰納的探索段階を‘’presenting complaint‘’に含めている
→私たちの記録では、提示された愁訴以上の豊富なデータを提示されていた。
診断学的に有用で明確な主訴・症状 ⇔ 曖昧な訴え、ナラティブに関する情報

絞り込み段階の戦略(制限付き除外や段階的絞り込み)は、
意識的に使うよう刷り込まれていないGPでは識別できなかった。
先行研究との比較
ルーチン的質問は、しばしば否定的に語られる
Leaper DJ, et al. Clinical diagnostic process: an analysis. BMJ. 1973;3:569–74.

Barrows HS, et al. The diagnostic (problem solving) skill of the neurologist: experimental studies and their implications for neurological training. Arch Neurol. 1972;26:273–7.

Gale J, et al. The role of the routine clinical history. Med Educ. 1984;18:96–100.

経験の浅い医師の、代替手段として
成熟した医師の、時間稼ぎの戦略として

我々は、ルーチンに肯定的な役割があると考えた。
具体的な仮説に基づいたデータ収集が
問題領域を不必要に狭めてしまう前に
関心領域の探索を助けるであろう。

※各科講義・実習後の学生を見ていると
Triggered routinesでの臓器・病態絞り込みをせず
決め打ち的な鑑別診断の確認作業に入っている
IF→DQ→(TRを省略して)Hypothesis testingで非効率的な質問攻めをしている
Strengths and Weaknesses
実際の患者・医師との出会いを調査した。
患者の問題の全領域で使用されているプロセスが反映されている。

サンプルは熟練なGPや教育熱心な医師が中心。
経験豊富なGPの推論を深く理解することができる。
このサンプルの認知過程が、
プライマリケア医集団全体と大きく異なることはないだろう。

ビデオ撮影やインタビューは、GPの言動に影響した。
普段より積極的に仮説検証や情報収集を行っていることが、
非公式なフィードバックや私たち自身の印象からわかった。
その結果、本研究では仮説検証の頻度が「過大評価」されている
可能性がある。
Strengths and Weaknesses
認知戦略の区別が必ずしも明確でなかった。
誘発された質問と仮説検証の質問の区別は、ときに困難だった。
各概念の定義を繰り返し作成し、簡潔な定義を実現した(表1)。
観察者の訓練によって、データ解析の信頼性を高めることができた。
→診察途中で「現時点で特定の仮説を抱いているか」を確認するような、
GPの自然な診断推論思考を妨げる調査を避けられた。

身体診察について
具体的な1つの鑑別診断・診断仮説の検証というよりは、
特定の健康問題に応じた診察セットを使っており、
誘発された質問(Triggered routines)に近い行為と考えている。
(例:右側腹痛→打診・浅い/深い触診、Murphy・CVAT、腸腰筋・閉鎖筋テスト、直腸診)

ただし、この段階で特定の仮説を想起し、影響されている可能性はある。
Strengths and Weaknesses
診断の手がかりを定量的に調査できた
評価できたのはその数だけ。関連性は不明
確定診断には、帰納的渉猟の情報よりも、
誘発された質問や仮説検証質問の方が寄与していると想像される。

「診察中にどのように情報検索を行っているか」
についての現象論を提供した。
GPの行動観察と、その後の内省的インタビューの組み合わせは、
難しい研究テーマに関する知見を三角測量する有効な方法である。
診察サンプル数が多く、GPが用いる戦略を定量的に推計することができた。
CONCLUSION

ベテランGPの診察の分析に基づき,
プライマリケアの環境に適応する戦略として,
帰納的渉猟,描写的質問,誘発される質問,演繹的検証
という「順序」を提案する。

この現象論は、診断仮説の検証に先行し、
しばしばそれに取って代わるものである
未分化な病状の初診対応では、仮説検証が省略されることも多い
(※家庭医なので、新規健康問題の診察とは言え、
かかりつけ患者で既往歴などが把握できていることが影響しているかもしれない)

我々の発見はまた、教育にも示唆を与えている。
(実際に自分たちが行っていることとは異なる方法を指導して、
非効率的な教育になっているかもしれない)

帰納的渉猟は患者の苦痛を和らげる(思いやり・共感)だけでなく、
診断上の問題空間を定義する診断推論プロセスに不可欠である。
感想
自分自身の診療が構造化されていて興味深い。
・実際の自分自身の診療では、
カルテやプレゼンに表現されないIF~TRまでで診断できることが多く、
Hypothesis testingの質問を省略、または必要最小限で済ませていると自覚できた。
・大学病院等での内科医の診療や記録をみて、
そのような場面ではHypothesis testingが重視されていることも改めて認識できた。
→僻地プライマリケアと都市部大学病院の兼任によって、
その違いと使い分けが鋭くできるようになったと感じている。

論文の主張は、そのまま信用できない部分もある。
・この理論に興味のある集団が、
結論ありきで研究のデザイン、用語の定義、コードの分類をしているとは感じる。
・それでも、単なる接遇として「Opening questionから始めよう」ではなく、
診断推論の一部としてInductive foraging~Triggerd routinesを指導するのは、
学生実習の場面では親切でわかりやすいと感じている。

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