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第 3章

家族システムの概念:プライマリ・ケアにおいて家族を評価す
るツール

患者や家族についての知識を持つことは、表面的に良好な関係のためだけではなく、ヘル
スケアを提供する効率的で責任ある方法である

私たちは適切な家族機能についての考えを、われわれ自身の家族から得ている。
われわれの原家族は、他の家族を比較するものさしであり、それによって他の家族がわれ
われ自身の経験以上の期待にかなうような機能をできるだろうと思うものである。
テレビや小 説などにも影響される。

こういあった前提や感情を持っているため、病気や新しい挑戦に対する家族の反応を考え
る際に、自信の個人的・文化的なバイアスをモニターする必要がある。

家族志向のプライマリケアは、初診時に始まり 継続する過程。
『医学的評価』+『家族の「形態学」と「発達」、「機能」について評価』。
「形態学」は家族図で、「発達」はメンバーの年齢や発達段階によって、「家族機能」は
家族過程の歴史や観察によって評価される。

家族図  →家族形態学
忙しい中で、メンバーの名前、関係、全体像を思い出すために必須の視 覚的な図。
医学的・遺伝学的意味(Bio-medical)だけでなく、関係の特徴(BPS 的特徴)も示すのがポイン
ト。
初診時に完成させるのが基本だが、その後も随時更新可能。別紙参照。

家族ライフサイクル  →家族の発達学
患者や家族の、発達上の重大事項をすばやく評価する雛形。
子どもを育てる生物学的な機能を反映。多 様な家族形態や民族・文化の違いから、一つの正
常像があるわけではないが、すべての子どものいる家庭はこれにより予想できる期間を経
る。
若者が 巣立つところから始まる。
幼児を育てる上での発達課題は、年齢や性別、社会階級によらないため、どの夫婦に 対して
も、子育ての責任を持つ夫婦関係のバランスを保つためのストレスについてたずねること
ができる。
家族メンバー個々のライフサイクルは、家族のほかのメンバーのライフサイクルと絡み合
う→家族ライフスパイラル(図参照)。求心期に始まり、遠心期との間で行き来するシステ
ム。求心期のほうが家族メンバーの問題を、家族が寄り容易にケアできるために働ける。
遠心期にあたる、たとえば 10 代~結婚前までに発症する 1 型糖尿病のケアは家族の協力を
得ることが難しい。

家族アセスメント (機能評価 )
日常診療に組み込まれる理論的概念やツールに基づく 継続的な取り組み。
明らかな治療方針を導くような、家族機能の単純なテストはない。
 例:家族 APGAR、ファミリーサークル、PRACTICE、McGill 家族アセスメントツール
どれもスクリーニングツールとしては長いが、ポイントを整理してあり有用で、これを知
ることで家族アセスメントの機会が生まれるきっかけにはなる。
家族アセスメントの要点
・家族システムの概念
 システム理論に基づく、システムとしての家族
 各人の単なる総和以上のものであり、家族集団はユニークな性質を持ち、インターパー
ソナルな 
 構造や過程によって構成されている。
 ※その人が考える家族の範囲を訪ねる

・家族の安定性、ホメオスタシス
 家族システム内の感情的なバランスを保とうと努力する過程
 ※誰がどうやって維持しているか、どうなると破綻するか

・家族の移行期
 家族が、家族メンバーの中での成長・発達や、コミュニティーの中での期待や役割に適応
する過程
 ※入学などのライフサイクルの以降や家族構成の変化でどんなことが起きたか

・家族の世界観
 個々の価値観に基づき、家族は自らを能力や機能を概観する。
 家族の効力感→危機をうまく処理したと感じるとき、医療従事者が努力を認め力を肯定
するとき
           に強められる

・症状に関係する背景
 起こった症状は家族や心理社会的な大きな背景、context の一部であり、症状に影響した
り影響されたりする。急性で自然治癒する病気は Bio-medical で足りるが、それ以外の大部
分では背景の治療が中心となる。

家族構造
-ヒエラルキー
 家族内の力の配分。
 両親は家族より上、単身の親はより強く力を持つべき、別居していても一緒に意思決定
をするための権威を共有することも推奨。
 ヒエラルキーが明確で適切か、逆になっていないか。
 親化した子ども(しばしば第一子で、親が役割を放棄したときに見られる)
 →時に機能し、子どもが責任や能力を感じるのを助けるが、親がその意思で役割を放棄

  続ける場合子ども個人の中に憤慨を引き起こしうる。

-境界
 家族内で、異なった機能のサブグループを形成する
 これが明確で適切か

家族の役割選択
 相補的な役割の、意識的・無意識的な、家族メンバーへの割り振り
 システムを維持するために機能する(稼ぎ手、子育て役、世話する人、悪い知らせを扱
えない人)
 誰がヘルスエキスパート、病気の役割、スケープゴート・高貴な症状の持ち主(家族の
機能不全を
 反映しているが、家族の批判を受け入れ他の個人や家族の問題から引き離され、問題の
源として
 扱われる)なのか
 

家族プロセス
-纏綿状態 Enmeshment
 メンバーがインターパーソナルな境界をもたず、個人の自立性が制限され、高度に感情
的に反応しているようなシステム。
 家族が子どもを世話するときのてん綿したような状態は適切。ライフサイクル後期では
有害となる。

-遊離状態 Disengagement
 感情的に離れていて互いに反 応しないようなシステム。
 思春期の子どもがいる家屋ではより遊離しているように見えても、普通は互いによく世
話している。
 病的なものと、表面的にそう見えても実は機能しているものとの見分けが重要。発達段
階に応じて適切かどうかがポイント。

-同盟 alliance
 2 人のメンバー間のポジティブな関係
 ※どんなものがあり、それは他のメンバーからどう見られているか

-連合 Coalition
 最低 3 人の間で、2 人が 3 人目に敵対して共謀する関係。
 ※存在しているかどうか

-三角形化 Triangulation
 2 人のシステムにおける不安、葛藤を拡散するために、3 人目がシステムに引き込まれた
状態。
 これは注意を 3 人目に向けることなく相手と組むので、連合とは似て非なるもの。
 夫婦の問題を、子育ての問題にすり替える。

家族パターン
 特にストレス下でどのように機能するかに象徴される、順序だった連鎖。
 誰かが追いかけると逃げる、落ち込むと励ますなど、過去のパターンに基づいて仮定し
お決まりのコミュニケーションパターンを繰り返す。
 そのパターンはうまく機能しているか病的かを判断したり、今後の反応を予想できる。

時間軸でみる家族
-家族の発達段階
 家族ライフサイクルに基づいて、どの時期にいるかで関わり方は変わる。
 まずどの段階にいるのかを同定することで、介入の方針を決めていく。

-家族の投射プロセス
 ある世代から他の世代へ、未解決の葛藤・問題・役割・仕事を伝達すること。
 過去の世代の問題を探ることで、現在の問題が見えてくる

-世代間での連合
 異なる世代メンバー間での連合のこと
教科書の事例の 抜粋

Purcell 氏の胸痛。安定狭心症の診断はあり内服コントロール良好ったがこの 2 ヶ月 悪化傾向。


妻が仕事を始め、高校生の息子も一緒に働きはじめたため、妻の忙しさや息子と過ごす時
間が少ないことでいらいらしている。
支えとなる 21 歳の長女は隣町に住んでいて週末だけ会える、3 ヶ月前に婚約を知り、婚約
相手は気に入っているが、まだ未熟なのに結婚することを心配している。
依然うまくいっていた家族システムが大きな変化をきたしていること、それは誰にとっても
大変だということ、それでも互いによく助けっていることを伝え、みんなで話し合おうと
促した。
→家族の安定性の崩壊、家族ライフサイクルの以降があったが、彼の世界観を認め、家族
カンファレンスをすることでシステムとしての家族を調べることになった。

Mary が親化された子どもで、母親と敵 対して父親と連合を組み、父親を心配。


Bob は母親と連合を組み、Mary に敵対。
夫婦間や兄弟間でのサブシステムがなく、両方の子どもがそれぞれの親の保護者として機
能している。
Purcell 氏が家族内の病んだメンバーであり、エキスパートは Mary、婦人はケアをしない配
偶者で、
Bob がその擁護者という役割選択をしていた。Purcell 氏は胸痛に焦点を当てることで、家
族内の葛藤から注意をそらすという、高貴な症状の持ち主の役割を演じていた
(親密が二本破線、敵対が波点線)

Purcell 氏は妻から得られない感情的サポートを娘から獲るてん綿状態であり、夫婦間の問
題を娘の結婚にあまり関わらない妻のありかたにすり替え(三角形化)、いつも家族内の
問題を健康問題や 3 人目の家族メンバーに置き換えるという家族パターンがあった。

巣立つ子どものライフサイクルに直面している(大学・結婚へ)。空の巣に直面し、いま
までの夫婦関係の問題にプレッシャーが生じた。これを予想することで、母親のしについ
ての未解決な悲嘆が呼び覚まされた(投射プロセス)
(家族図)
年齢・名前、結婚・過去の結婚・子ども・同居家族、重大な病気、死亡などトラウマ的出
来事の日付、職業が最低限必要な項目。
感情的な親密さ・距離、メンバー間での葛藤、他の専門職との重要な関係、その他関連す
る関係も含めてよい。
世代を通じての喪失のパターンや、機能不全の感情パターン、共通の医学的問題が明らかになる
ことがあるし、さっと名前や家族関係を思い出すツールとしてだけでも有用。

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