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標準化死亡比(2019年) 人口規模と年齢構成で調整
発表者:佐藤 健太 江差市 115.1 72.2 203.2 120.4 61.5 90.2 90.2 80.8 96.9 34.6 59.5
北海道における主要死因の概要10(令和2年12月発行) 北海道健康づくり財団
https://www.hokkaidohealth-net.or.jp/download/10212/
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癌死亡者数は、人口10万対比では多いが、標準化死亡比では少ない
江差の高度高齢化の影響で、実数としては多く感じる
臨床的な疑問 @道立江差病院
NSAIDsや輸血をしても安定はしない。
→地域での予防医療するなら
生命予後は何ヶ月あるのか?
より影響の大きなリスク因子への介入が大事。
元気に見えるが、オピオイドやステロイドを
→現場での診療負担感としてはやはり癌は大きい。 主治医
開始していいものか?
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2022/6/21
http://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/ https://www.hospat.org/practice_manual-top.html
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論文の概要
目的 あらゆるケア環境において、悪化し死亡するリスクのある患者を
特定するために、実用的な臨床ツールを改良し評価すること。
方法 1.2010年版の「支持療法・緩和ケア指標ツール(SPICT)」を改良する。
18ヶ月間継続的にピアレビュー(英国内外の30名以上の臨床医)
2.急性期病院で、前向き症例探索研究を実施。
腎臓、肝臓、心臓、肺の進行疾患のある入院患者130人を特定した。
結果 1.あらゆる進行疾患の全般的指標と、
臓器別非がん疾患の疾患特異的指標からなるツールに改定された。
2.SPICTの使用で、死亡リスクのある患者を特定できた。
結論 満たされていない複数のニーズを持ち、
早期の評価・介入を要する患者を特定するのに役立った。
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緩和ケア対象者を「タイムリーに特定」するのは重要
・対象患者を特定できれば、積極的なニーズ評価、
目標の共同設定、予測的なケア計画を開始できる。
・しかし、患者の特定は遅れがち。
様々な予後予測方法が検討されている。
・サプライズクエスチョン
Introduction 米英のホスピス紹介基準などに採用されている
偽陽性が多い
・単一疾患に対する予測モデルは様々なものがあるが、
現在はMultimorbidityが多いため使いにくい。
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以下の情報を参考に、多職種チームによる評価を支援する
・臨床的観察、パフォーマンスステータス、症状
・Multimorbidity、疾病軌道Illness trajectory、
Transition 1: would my patient benefit from supportive and palliative care?
Transition 2: Is my patient reaching the last days of life? ・患者個人の価値観や目標
Recognising and managing key transitions in end of life care. BMJ 2010;341:c4863
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膝関節症 慢性腰痛
心不全 急性増悪頻発
肺癌 術後呼吸障害
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研究デザイン
混合研究法・参加型アプローチ( mixed-methods participatory approach)
Methods https://twitter.com/kenkyushienars/status/1126337299552149505
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研究デザイン 1.SPICTの改定
参加型研究≒研究のデザイン・実施・解析に デルファイ法に準じた方法
・SPICT2010を、1年半かけて15回改定した
地域住民や患者などを巻き込むもの
・改訂版に対する意見を集め、次の改訂版を作る。
※例:CBPR ≒Community-Based Participatory Research
・メンバーの中から新規の意見がでなくなり、
※今回の研究は、患者や地域でなく非専門科の参加 それ以上の改定が提案されなくなるまで繰り返した。
意見の集め方
研究チーム
・メーリングリストを作り、多彩なメンバーを登録した
緩和ケア専門家 幅広い専門性・関心領域の臨床医や政策立案者
プライマリケア医、ホスピタリスト UK、欧州、米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、アフリカ
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統計解析
データは、Excelデータベースで分析した。
カテゴリー変数に対するχ2検定を用いて、
12カ月時点の死亡者と生存者の
SPICT指標を比較した。
Results
①SPICT redesign
②Implementation and evaluation of SPICT
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SPICTの6つのパラメーターは維持すべきと判断 体重減少の指標は、NHSのMUST
を参考にした
(Malnutrition Universal Screening Tool)
驚きの質問の価値は限定的として除外
・患者をよく知らない場合
・現在小康状態で安定している場合
・シンプルな1ページ形式
・進行した状態によく見られる一般的指標を容易に識別できる。
・エビデンスに基づく臨床指標であること。
・英国内外の病院・地域・施設で働く医療・福祉専門家
にとって、妥当性の高い指標であること。
・日常診療の一環として、基礎疾患の治療と並行して、
早期の支持療法と緩和ケアを推進する。
・患者さんやご家族とケアの目標について話し合ったり、
専門家/チーム間のコミュニケーションを改善するために使用できる、
わかりやすい言葉や概念が盛り込まれている。
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※日本は参加していない
2年ほど前まではリストにあったが
現在では外されている
緊急入院した進行性臓器不全患者 130人
予定外入院のうちSPICTチェックリストに該当したのは
・腎臓病棟 では41% (55人/133人)
・肝臓病棟 では83% (35人/42人)
・循環器病棟では 2.8%(16人/ 570人)…途中で入院基準が変わって該当患者が減った
・呼吸器病棟では24名が該当 …多忙すぎて全患者スクリーニングはできなかった
Multimorbidityが77%で、単一疾患患者は少なかった。
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12ヶ月時点の死亡患者・生存患者のSPICT全般指標
PS低下は全体の60%、肝臓病棟では4分の1
体重減少は腎臓病患者の3分の1、他の群では5%以下
→非がん終末期は癌終末期と別の指標も必要
初回入院後は、93%が自宅退院した。
→退院はできることが多い。入退院を繰り返しがちと言えそう 死亡患者は、以下の項目が有意に多かった
6か月以内に、全体の35%が死亡した ・臨時入院が多い(69% vs 37%、p<0.001、 95% CI on the difference=33±16 )
12ヶ月以内に、全体の48%が死亡した=52%が1年後も生存している ・症状が取れない (60% vs 24%,、p<0.001、95% CI 36±16)
大半の患者は典型的な臓器不全の経過をたどり、通常は進行性の低下を背景に急性 ・介護ニーズの増大(40% vs 13%, p<0.001; 95% CI 27±15 )
増悪した後、進行した病態の複数の合併症で死亡した。
→癌終末期限定と異なり、緩和ケア対象となってから1年以上生存する患者も多い
最期の入院については、入院期間が短い(中央値10日、範囲1-60日)
死亡した患者の半数は、SPICTで最初に特定されてから88日以内に死亡していた。
5人の患者は突然の終末期に見舞われていた
院内死亡が69%、院外死亡が31%だった。
→英国の三次医療機関(急性期専門病棟)でこの院内死亡率は高い。
自宅や施設で看取ることは、癌・老衰と比べてハードルが高い。
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SPICTと、標準的な死亡率評価ツールとの比較 SPICT陽性患者の臨時入院・病床利用
全病棟 6ヶ月以内に死亡した62人
・予定外入院は平均2.4回(範囲1-7回)
死亡患者の79%が、サプライズクエスチョンでYesだった。 ・入院日数の中央値は34.5日(範囲3-130日)
患者全体の71%が12ヵ月以内に死亡すると予測していた ・人生最期の6ヶ月のうち22%を病院で過ごした。
SPICT初回評価時に、DNARフォームも作成されていたのは 6カ月時点で生存していた68人
・全患者の24% ・予定外入院は平均2.2回(範囲1-7)
・入院日数の中央値は21.5日(範囲3-167日)
・死亡患者の39%と少なかった。 ・最初の6ヶ月間の17%を病院で過ごした。
腎臓病棟 予後の⾧さにかかわらず、SPICT該当者の入院は多い。
死亡患者のCharlson腎罹患指数は平均7.9 →初回入院後の退院時のSPARRAスコアから
(6以上は1年生存率が0.6) 再入院リスクの中央値は死亡者65%、生存者60%
SPICT該当患者のUKELDスコアは平均57点
(60点は1年生存率を50%)
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Summary 論文の主張のまとめ
SPICT は、進行期疾患の臨床的指標を
簡単に認識できるシンプルなツールである。
プライマリーケアやセカンダリーケアにおいて、
「支持療法や緩和ケアの評価やケアプラン」が
有益な患者を特定しようとする
多職種チームの臨床判断を支援することができる。
Discussion ピアレビューやウェブベースの普及を組み合わせた
混合的手法により、本研究でさらに改善・評価された。
現在は、SPICT パートナープロジェクトによって
英国内外の病院、地域、ケアホームで
様々な進行性疾患の患者ケアにおいて使用されるようになった。
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英国での死因として急増している進行性肝疾患の患者や、
虚弱や認知症を含む複数の進行性疾患を持つ患者を
発見 統合 実践 教育 特定することができる。
Discovery Integration Application Teaching
• 新しい真理の発見
• SRやガイドライン •エビデンスプラクティス
• 学生・研修指導 このような病状の患者や家族の中には、SPICTで気づかれ、
ギャップの解消
• 高IFの国際誌への • 教科書
• 商業誌・Webでの 緩和ケア専門家に紹介することで利益を得られる人もいる。
英語論文掲載 • 質改善・QI
知識普及活動
参考となった、プライマリケア医の意見では、
緩和ケア導入には個別的でニーズ主導のアプローチが望ましく
疼痛コントロール不良や多職種チームがサポート強化の必要性
感じた場合がよいきっかけになるというものもあった。
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Limitation 研究の限界・制約 感想
・東部スコットランドで実施したため、 主病名の種類や数、組み合わせにかかわらず
比較的患者数が少なく、黒人や少数民族が少ない。 病棟・施設・外来のいずれでも使えるという点は歓迎しやすい。
・多忙な医療現場での研究のため、 ※疾患別指標は高次医療機関での検討なことは注意が必要。
一部の病棟では全入院患者を調査することができなかった。
専門医が重視する「疾患自体の重症度・検査結果」ではなく、
・今後の研究では、より大規模な集団における 総合医が習慣的に利用しているトリガーが採用されている点も
SPICTの感度と特異度を評価することを目指す。 (症状の強さや辛さ、介護の必要さ、他職種の意見など)
・臨床におけるSPICTの有効性は、 日常臨床や多職種カンファに馴染みやすいと感じている。
様々な環境と幅広い患者層で広範に評価される必要がある。
厳密な予後予測ツールとしての統計学的な妥当性ではなく、
・緩和領域に関心のある専門家と政策立案者から推薦された (終末期ケアではなく)緩和ケアを検討し始める直感的なきっかけ
メンバーで行った研究であり、一定の偏りがある。 として重要と感じる。
・ウェブサイトを通じた継続的なピアレビューとコメントにより、
より多くの参加者がツールの改良に加わることを目指す。
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家庭医療領域の研究テーマの世界的傾向
批判的吟味 US, Canada, UK, Australiaと韓国の家庭医療雑誌を分析
Comparison of Research Trends in Korean and International Family Medicine in Journals of Family Medicine. Korean J Fam Med. 2014;35:265-275
本来なら、Clinical prediction ruleの妥当性評価としては
家庭医療 家庭医療の効果・役割・範囲
I:このツール該当者に早期介入をした群 プライマリケアの役割
患者中心生、医師患者関係
18%
C:ツールを使わない群、またはツール非該当で早期介入しなかった群
包括性・チームワーク・地域ケア
O:患者のQOLやSOC、自宅生活期間やADL維持期間の違いを見る 職場内トラブル
べきかもしれない? 臨床研究 臨床疫学
・患者が死亡したあとに振り返って感想を聞くことはできない
診療パターン、意思決定
スクリーニングや診断、
57%
介入方法の開発や評価
・生きている間に「あなたは緩和ケアされないことで満足していますか?」 健康状態・QOLの測定や
とも聞けない。 QOLと疾患・検査値との関連
慢性疾患の患者行動・生活習慣
・今の時代に非介入群を置くこと自体も倫理的にアウト。
教育と研究 患者教育
遺族への死後インタビューが最善。 学生・研修医教育
研究能力開発
10%
・量的な統計解析ができるだけの遺族をたくさん集めることは難しく、無粋。
管理・政策 紹介・連携
・小規模でも、遺族へのグリーフケア訪問などを丁寧に行い、 情報管理・ICT
費用対効果・医療経済
15%
その時の遺族の語りや医療者の感じたことを質的に探索のがよい 医療制度・QI(質改善)
→家庭医療研究や看護研究の得意分野 倫理・法的問題
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