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2022/8/4

新潟内部障害リサーチミーティング 2022/08/04
Wiliam Oslar
他職種が読みたくなる!
セラピストの専門性が伸びる!!

カルテの書き方
佐藤 健太
dr.kenta.sato@gmail.com 重要なのは、
総合内科専門医 + 家庭医療専門医 + リハビリ認定医 どのような病を患者が持っているかではなく
札幌医科大学総合診療医学講座/北海道立江差病院総合診療科
どのような患者が病んでいるかである
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総合診療専門医 リハビリ認定医
リハビリが得意
心身機能
身体構造
活動
健康
個人因子
環境因子
人生・価値観
家族・社会
総合診療が得意
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2022/8/4

カルテの書き方 Wiliam Oslar

3時間机で勉強するよりも
ベッドサイドの15分が勝る
Googleで「医学書院 型が身につくカルテの書き方」を検索すると出てきます
https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02985_05

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米国の内科研修医の時間配分 よいカルテの条件
直接的患者ケアは 13%( 3時間) ① 時間をかけすぎない
カルテ記載業務は 43%(10時間) ② ベッドサイドの診察とリンクさせて
臨床推論や方針決定に役立てる

③ 指導医や他職種が読めば伝わる
チーム医療の効率が高まる

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疾患志向・医師中心型
今日の内容 Disease /Doctor oriented system(DOS)
主治医の脳内で診断と方針を決める =Aありき
①医療者に共通の基本、「基本の型」
病気だけ診て病人を観ず
POS・POMRの概略、SOAPの書き方 自分の専門性発揮に関心、相手の個別性には興味がない
思考過程や根拠は医師の頭の中→独りよがりのヤブ医者製造機

②リハ職の専門性を反映した「応用の型」
型破りな亜流と、型無しな自己流 問題志向・患者中心型
Problem / Patient・Person oriented system(POS)

③質疑応答 患者の抱える事実から課題を決める =S・Oから始まる

事前質問へのお答えと、フリーディスカッション 病という視点から、人や生活を診ようとする態度。
思考過程を言語化し、記録に残し、専門家同士で議論することで
「謙虚で誠実な専門家」として成⾧し続けられる仕組み

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POS(Problem Oriented System) 初診記録 経過記録


DOSへの反省から生まれた理論体系
#)受診理由:(患者目線) 【問題リスト】現在活動性で介入してるもの

POMR(Problem Oriented Medical Record) 主訴 :(医師目線) 既往歴 :非活動性だが意識すべきもの抜粋


S)現病歴 :時間経過(時系列) 初期方針:リハプログラムなど

POSに則った、医師による診療記録の方法論 症状の詳細(OPQRSTなど)
既往歴 : S)治療反応性(自覚症状、全体的な体調)
家族歴 : 前回診療後におきたエピソード
POMRを構成する3つのステップ、④種類の記録
生活歴 :
1.初診時記録(いわゆる1号紙) O)General appearance:
O)全身状態・体格:
①基礎データ(主訴・現病歴、既往歴・職業歴など。適宜追記・蓄積する) バイタル:
Vital signs:
Physical exam:
②問題リスト(診断変更があれば深化・修正する) 診察所見: 検査結果:
③初期計画 (経過記録に毎日コピペしない) 検査結果:
A)問題リスト A)治療経過・反応性
2.初療開始時・再診時(いわゆる2号紙) Brief summery 診断の適正化・深化
④経過記録 → SOAPは経過記録の記載項目 鑑別診断とその論拠 方針の変更・調整
大まかな診療方針(方向性・大枠) P)Tx:継続か変更か(詳細は不要)
3.質改善の取り組み P)Tx:治療計画 Dx:
監査・Audit と 修正・Revision Dx:評価計画 Ex:
Ex:説明計画・教育計画

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S のポイント
「過去から現在に至る、第3者からの間接情報」
Oは「今入手した、自分で直接得た情報」

患者の口から語られる現病歴
既往歴、家族歴、生活歴、etc

過去カルテの情報
前医の手紙
過去の健診結果の口頭報告⇔生データ持参
: Subjective
経過記録では、前回別れてから今日会うまでの
症状変化・治療反応性、新規イベントなどの情報。

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患者の言葉 or 医学用語 医学的視点の情報

診断学的な情報は、 1.臨床経過
発症前から現在に至るまで途切れなく。最重要
「専門用語」に置き換える
2.症状解析
ノイズの少ない、診断に直結する記載となる 主訴の性状や経過、増悪緩寛因子など(OPQRST)

患者の考え・価値観などは、
3.Review of Systems
診断に役立つ「陰性症状」を中心に書く

「患者の言葉」のまま書く
どうすれば満足・健康になるかのヒントが満載

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患者視点の情報 S の 「型」
■前提 ■既往歴
「か・き・か・え」アプローチ 年齢・性別 併存症
主訴 既往症
感情 どんな気持ちか 受診理由・入院目的

期待 どうしてほしいか、どうなりたいか
■その他
■現病歴 家族歴
解釈 解釈モデル 経過 生活歴
(何がどう作用していると考えてるか) 症状解析 社会歴
影響 日常生活や周囲の人への影響 Review of systems
ナラティブ
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初診記録の記載例
78歳 女性
#)受診理由:臨時受診(鎮痛処置希望)
主訴 :急性経過の左膝関節炎

S)現病歴 :3週前、感冒に伴う慢性心不全急性増悪を発症、外来治療で軽快
2日前から、左膝痛が出現した。
本日は歩行困難となったため受診した。
・発症は非突然、その後数時間で増悪。歩行や屈伸で増悪
・膝関節注射や先行感染症歴なし
・左膝関節以外には疼痛や感覚異常なし。
ナラティブ:膝の軟骨がすり減っただけだと思う。注射で直してほしい

既往歴 :骨粗鬆症・腰椎圧迫骨折・両膝変形性関節症。
慢性心不全・慢性心房細動、糖尿病・高血圧症 : Objective
生活歴 :夫と二人暮らし、家事全般を担っている
飲酒なし、喫煙なし

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O の ポイント 検査結果は全部コピーしない
「自分自身で得た、現時点の直接的な情報」 WBC8900(N82・L5・M1・E0・B0)、RBC457・Hb12.5・Ht45、PLT24.5
AST28,ALT25,LDH198,ALP248,γGTP48,T-Bil0.9, AMY82, CK25
身体診察所見 BUN24/ Cr0.98, eGFR 84, Na142/K4.2/Cl101/Ca9.2/P4.2, UA6.5,
PT-INR 1.2、APTT 52、FIB 248、D-dimer1.2、CRP4.5、ESR 62、ANA、RF
• General appearance(重篤感、印象、雰囲気)
• Vital signs(機器を用いた数値測定) ↓
• 身体計測値(身⾧・体重、筋力・可動域など) 血算 …WBC8900(Neut 82%)、Hb12.5・MCV89、PLT24.5
炎症等…CRP4.5、ESR 62mm/h、D-dimer1.2、ANA・RF外注提出中
• Physical exam(全身の身体診察)
生化学…肝機能・腎機能・電解質正常範囲

検査所見 必要な項目だけに絞って抽出
・検体検査 不要なルーチン項目は圧縮or省略
・画像検査、生理検査
本来は、必要な検査しかオーダーしないはず
・機能検査(MMSE、FIM、SPPBなど)
必要だが未実施のものは、空欄でなく明示
※看護師や検査技師が自院でとった情報は、
「信頼できる現時点の情報」としてOに記載する 未検・未実施、外注提出、●●日実施予定・予約中など

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O
初診記録の記載例
の 「型」 O)General appearance: かなり痛そうな表情で、車椅子にて入室。
First impression: ABCD安定
■身体所見 ■検査所見 Vital signs : JCS0, BP128/76, PR 86/reg, RR18, SpO2 98%, BT36.5
General appearance: 検体検査:
Vital signs: 尿 Physical exam:
意識 血算・生化学・凝固 頭頸部 結膜充血・貧血・出血斑(-) 、頸静脈圧上昇(-)
血圧・脈拍数 血ガス 胸部 心雑音・肺ラ音(-)
呼吸数・SpO2 感染症検体 腹部 圧痛点(-)
体温 背部 脊柱やCVAに圧痛・叩打痛(-)
生理検査 四肢 左膝関節に発赤・腫脹・熱感と圧痛・他動時痛(+)
Physical exam: 心電図 他の四肢大小関節や脊柱は自発痛や他動時痛(-)
頭頸部 スパイロ,エコー、etc.
胸背部 Labo data: CRP 6.8, WBC 9680, Hb12.4, PLT15.8
腹部 画像検査 肝機能・腎機能正常範囲
四肢 単純Xp、CT、MRI、etc. Image : 膝関節X線にて関節裂隙狭小化と石灰化あり
神経系・筋骨格系
血管系,皮膚系 機能検査
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AとPには、専門家が行った意見・判断を書く
主語・視点は医療者(というか自分)
時制は現在形・能動態
◯・・・と診断する・考える。・・・の治療を行う。
×・・・病と考えられた。・・・を行うこととなった。
×・・・と指導医・専門医が言っていた。

SとOには、患者に起きた事実・情報を書く
主語・視点は患者
時制は過去形・受動態
◯・・・を受診した。・・・と前医に診断された。
: Assessment ×・・・を処方した。・・・の診断となり、入院となる。

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A の ポイント
1.Brief summary

POSでは、医療者として解決すべき問題点は、
「専門家としての意見」を書く 「患者から得られた情報」であるSとOの中から見出す。

1.Brief summary ・専門家として重要と思える点を抜き出し、


プロブレムの全体像を簡潔にまとめる
・専門家としての専門用語や理論体系で整理し
2.診断名(疾患名・障害名)や病状評価 ・専門家として、病態を表現する一文にまとめる
根拠を明示しながら簡潔に列挙
フォーマット:○○で□□な特徴をもつ「これこれな問題点」
3.特記事項やおおまかな見通し
具体例:高齢者が急性疾患治療後に発症した急性単大関節炎
必要最低限、最後に書く 心血管リスクを複数持つ中年男性に発症した、胸部絞扼感
数年前から低栄養・頻回転倒のある高齢者の心不全後廃用症候群

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初診記録のA=専門的な見立て
リハ専門職としてつけた、障害名などを挙げる
A の「型」
#1.
○基本的にはICFの各カテゴリーから取る
✕医師のつけた、リハと無関係な病名を列挙する場所ではない • Brief summary
✕保険病名・リハ算定対象疾患名のリストでもない

• 鑑別診断・障害分類
経過記録のA=治療反応性の評価
• 病状・治療反応性の評価
特定の方法論・技法の実行率・遵守度と、
それに対する治療反応性の良し悪しを評価する
• おおまかな見通し
・現時点で効果があるのか、ないのか?
・効果判定するにはまだ早いなら、いつ頃するのか?
・予想外の反応・変化がでているなら、それはなぜか?対策は?

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初診記録の記載例
A)膝関節疾患をもつ高齢者の、急性疾患治療後に発症した急性の単・大関節炎。
偽痛風発作を第一に疑う。

鑑別診断としては、化膿性関節炎を筆頭に挙げる。
関節液所見のみでの否定は危険と考え、
培養結果がでて全身状態が落ち着くまでは抗菌薬治療も行う。

歩行できないため入院加療とし、NSAIDs・抗菌薬での治療を開始。
2~3日で改善しない場合や、関節・血液培養が陽性化した場合は再評価する。

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P の ポイント

方針と計画を区別しよう

: Plan

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方針は、全体の方向性を示す指針 Tx:治療計画 の3本柱


「今度飲みに行こーぜ!」
根治療法 支持療法 対症療法
チーム全体の進む方向が見え できる場合は必須! 予後改善のために不可欠 患者QOLのために必須!
合併症・副作用や 臓器障害サポートや 対症療法だけでは足りない
各専門職が主体的に先手を打てるようになる 治療関連死に注意 全身状態安定化 が対症療法なしでもダメ

計画は、詳細で具体的な行動計画(Plan) いわゆる内科・外科的治療
抗菌薬・抗癌剤
ABCDE+III+QRST
I:Infection : 左記参照
生活のバイタル(五快)
食:歯科・口渇・食思不振
「5月23日の19時から、つぼ八で、予算は3000円。 手術・デブリ・ドレナージ
Ion & fluid:水分・電解質 便:頻尿・尿失禁、便秘
Insulin & nutrition:栄養 眠:不眠・不安・焦燥・うつ
参加者は誰と誰で、幹事星合の名前で予約してます」 放射線
動:倦怠感、胸痛、息切れ

メンバーそれぞれが取るべき行動がわかり
Q:QOL、ADLの看護(生活)
R:リハビリテーション(障害) 他:痛み、しびれ、痒み
S:ソーシャルワーク(環境) 鍼灸?
チーム医療における伝達エラーが減る T:患者教育(知識・心)

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Dx:評価計画 の2本柱 Ex:説明・教育計画 の2本柱


診断計画 観察計画 教育計画 説明計画
食事療法 病態と治療方針の説明
基本的検査 バイタル測定 運動療法 中⾧期的な病状経過
ABG(血ガス) 項目・頻度 自己注射や内服の指導 治療目処などの見通しの説明
Blood(血算・生化学)
CXR(レントゲン)
モニター
項目・頻度・アラーム
Dextor(血糖) プラセボ効果は医療行為全般において無視できない(病は気から)
ECG(心電図) 観察パラメーター 古くはシャーマン・祈祷師、信頼できる友人・知人との対話
FAST & FEER(エコー) 臓器特異的パラメーター 近年では医師の薬非物療法やカウンセリング、看護やリハで注目されている
Gram(感染症検体) 病態特異的パラメーター
全身状態のパラメーター 向精神薬は、プラセボ効果が大きすぎて、薬剤の効果を証明しづらい
特異的検査 おそらくセラピストも、言葉や関係性で癒やしている部分もあるのでは?
鑑別診断に合わせて 検査予定 →Exも意識的に実施し、記録に残し、その反応を丁寧に追うべし
項目・頻度

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初診記録の記載例
Pの「型」
<方針> P)Tx:セファゾリン1回2g、8時間毎 点滴静注
ロキソプロフェン1回60mg、1日3回毎食後 内服

<計画> Dx:血液培養・膝関節液の培養提出
3日後に血液検査、膝エコー再検
Tx) 根治療法、支持療法、対症療法
Ex:患者と息子夫婦へ診断・予後、治療方針を説明(別紙参照)

Dx) 診断計画、観察計画 入院治療に同意取得。急変時コード確認中(未確定)


患肢のRICE処置を指導した。

Ex) 教育計画、説明計画

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今日の内容
①医療者に共通の基本、「基本の型」
POS・POMRの概略、SOAPの書き方

②リハ職の専門性を反映した「応用の型」
守・破・離
型破りな亜流と、型無しな自己流

③質疑応答 型ができてない者が芝居をすると形なしになる。メチャクチャだ。
事前質問へのお答えと、フリーディスカッション 型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。

結論を云えば型をつくるには稽古しかないんだ

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流派を問わず共通する「基本の型」はある
・初学者は型どおり訓練を重ねないと、型なしに。

場や相手に応じた派生型はあるし、大切
・内科と整形とリハでは注目点や解釈が異なる
・同じ科でも、外来と病棟、在宅と救急では異なる
21世紀の臨床記録について
・専門性や診療場面、読む相手に合わせた
米国内科学会のポジションペーパー
「応用の型」はとても重要。
各専門分野に固有の、合意形成された専門家基準が必要
consensus-driven professional standards unique to individual specialties

他業種・他科のマネ、直輸入、使い回しはダメ

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内科医の膝痛記録 整形外科医の膝痛記録
【問題リスト】#1. 左膝偽痛風 【問題リスト】#1. 左膝関節炎
【既往歴抜粋】両膝変形性関節症、骨粗鬆症・腰椎圧迫骨折歴、糖尿病・高血圧 【既往歴抜粋】両膝変形性関節症、骨粗鬆症・腰椎圧迫骨折歴

S)痛みはだいぶ取れてきたが、まだ歩くとつらく、正座もできない S)膝関節痛 VAS 10→3


熱は引いてきて、倦怠感もとれ、食欲も戻ってきた
O)Physical exam.: 左膝発赤消失、腫脹軽度、圧痛あり
O)General appearance: Soso 膝Xp…関節裂隙正常化、骨融解・壊死所見なし
Vital signs: 意識清明、血圧・脈拍正常、体温36.7℃
Physical exam.: 左膝発赤消失、腫脹軽度、圧痛あり A)関節炎、改善
血液…CRP6→1、WBC12000→5200。 P)抗菌薬は飲みきり中止、ロキソプロフェン継続
血液培養陰性、膝関節液培養陰性・CPPD結晶あり 連日関節穿刺は本日で終了。手術適応なし
A)膝関節炎の炎症所見は確実に改善し、全身状態も改善傾向のため リハビリDo
初期治療は効果あると考える。
本日届いた検査結果から、感染症は否定し、偽痛風と確定診断する。

P)Tx:セファゾリン中止、ロキソプロフェン継続
Dx:入院中は追加検査不要。バイタルと膝診察所見でフォローする
Ex:リハビリでの膝ROM訓練・歩行訓練を少しずつ開始。廃用・拘縮予防

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リハ科医の膝痛記録
POMR(Problem Oriented Medical Record)
【問題リスト】#1. 左膝関節炎
POSに則った、医師による診療記録の方法論
【ICF】両膝変形性関節症、腰椎多発骨折・亀背、右肩凍結肩
歩行機能障害・バランス機能障害、サルコペニア・低栄養、休職中・家事困難 後に看護、他職種にも広がったが、医師向けのままだと問題がある。

PONR(Problem Oriented Nursing Record)


S)安静時痛は改善し眠れるようになったが、
自宅和室での座位作業、立ち上がり・座り動作時に疼痛が強く仕事にならない
家族に助けてもらって生活できているが、もう少し自分で動けるようになりたい
POSに則った、看護師による看護記録の方法論
O)左膝炎症所見ほぼ消失、関節可動域35度、関節不安定性なし 看護理論や看護診断など独自の理論に則って、POMRを改変したもの。
MMTは膝屈伸3、股・足関節4。体幹・上司は5
情報の収集や解釈、分類の仕方に独自の概念を利用している。
感覚や反射は正常。高次脳機能正常。
FIM:運動項目○点、認知項目○点。6分間歩行試験:○メートル

A)関節炎は改善傾向だが、動作時痛と予期不安でADL改善が遅れている PORR(Problem oriented Rehabilitation record)


背景の不安傾向やサルコペニアも影響して自信がなく、QOLも低い。
POMRではなく、独自のセラピストによるリハ記録の方法論が必要
P)歩行訓練:杖・手すりで免荷し、膝サポーターとNSAIDsの上、段階的に距離伸ばす
筋力訓練:疼痛が軽減し不安取れるまでは低負荷のまま。鎮痛重視
環境調整:和室・床生活→洋室・椅子生活へ、手すり・サポーター見直し

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看護診断の分類 NANDA-I リハ診断の分類 ICF

医師の病態生理学的な分類とは異なり
看護師として人の成⾧・生活・人生を支える視点で分類している。

疾患の診断は医師の独占行為(医師以外が行うと違法)というだけでなく
自分たちの専門的視点を表現し、専門的介入に直結する看護診断は
専門性を確立し、研究し、他分野と議論するために必須
看護診断を使った 看護計画について NANDAーI・NIC・NOCのリンケージ 2013新人研修 キャリア形成センター
https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/455

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簡易版の看護記録
看護記録 フォーカス チャーティング
POMRと共通する型
・初診時記録 F (Focus) =患者さんの問題点(≒プロブレム)
・問題リスト(看護診断)
D(Data) =患者の状態(≒S・O)
・初期計画 (看護計画)
A(Action) =Dに対して実施したこと(≒P)
・経過記録でのPDCA(看護展開)
R(Response)=Aに対する患者の反応(New!) →大切!
POMRと異なる点
専門家・科学者というより、技術者向け?
・患者の近くで、生の言葉や様子を記録
外科系の処置記録や手術記録に近いか?
・疾患の診断は行わない 独立した大卒看護師より、准看護師・看護助手的視点?
→患者の生活目線での困難を抽出
・医師の治療や検査のコピペもしない 医療者の判断(A)を書く項目がない!
TP:援助計画、OP:観察計画、EP:教育計画 診断行為ができない職種の記録に適している?
を立案し、実施していく 専門職としての判断を放棄し、責任や成⾧を犠牲に?(POSからDOSへの退化)

主観(S)と客観(O)の区別がない!
事実と推測の区別が身につかない→科学的な志向が育ちにくい。
https://www.medicmedia-kango.com/2016/11/2633/

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リハ技師記録 リハ初診記録の例(①基礎データ)
【ID】 日本人、78歳・女性
【主訴】 左膝痛、歩行困難
SOAPで書きにくい点
・リハプログラムをどこに書くか?
【現病歴】
・評価とは病名・障害名なのか? 両膝OAのため、近隣整形で湿布・関節内注射の治療を受けていた。
・リハ中の反応も見て微妙に変えているが… 糖尿病・高血圧のため厳格な食事療法で、低体重だった。
・チーム制の中で、自分がいないとき 2週前に左膝偽痛風を発症。自宅でNSAIDs内服加療をおこない、
同僚や若手に細かい注意点やコツが伝わりにくい 安静時痛は消失したが、運動時痛・関節可動域制限・筋力低下のため
歩けないため、外来リハの依頼があった。
独自の工夫例
・既存のプログラムはOに書く(?) 【既往歴】両膝変形性関節症、腰椎多発骨折・亀背、右肩凍結肩。
・実際に「行った」リハはPに書く(?) 運動器系の外傷・手術歴なし
2型糖尿病(末梢神経障害+)、本態性高血圧症
・E(Effect)を追加し、治療反応を明記 【家族歴】疾病歴に特記事項なし
→基本プログラムから敢えて外した
夫と農家を営んでおり、繁忙期は遠方の⾧男夫婦が助けに来る。
理由をチームで共有しやすい
【職業歴】農業全般、現在は休職中
家事労働全般担当、現在は困難だが夫は代行不能
SOAP方式によるリハビリカルテ(診療記録)の書き方(理学療法、作業療法、看護) (physioapproach.com)

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リハ経過記録① リハ経過記録②
リハ初診記録の例(②問題リスト、③初期計画)

【リハビリ問題リスト】
健康状態…後期高齢者・女性。左膝関節の炎症後廃用・拘縮状態 【問題リスト】医師の病名リストコピー 【問題リスト】主病名(入院病名)
機能構造…両膝関節高度変形+軟部組織拘縮、下肢筋萎縮・筋力低下、 併存症(リハに関連するもの)
低栄養、視力障害、排尿障害 ICFのリハプロブレム
活動 …歩行機能障害・バランス機能障害、トイレ動作・入浴動作と家事障害
理解・交流は良好
S)今日の体調・症状、患者のセリフのみ S)今日の体調や考えなど(セリフ)
参加 …農業・家事役割機能全廃、自宅内日中孤立
リハ視点で重要な症状(専門用語)
個人因子…がんばり屋で、細かい計画に従った生活を好み、頼るより頼られたい性格。 O)バイタル: ※前回リハ後の変化を重視
環境因子…自宅はバリア過多、遠方農村在住で頻回受診困難。⾧男嫁は短期間なら日中介護可能 診察所見:
O)全身状態:
【リハビリ初期計画】
A)医師の病名リストコピー バイタル:
Tx:物理療法…温熱療法
診察所見:
理学療法…関節可動域訓練、筋トレは下肢軽度と上肢・体幹中等度で開始
P)リハビリプログラムコピー 規定のリハプログラムコピー
歩行器・手すりでの歩行訓練から開始
栄養療法…内科主治医に確認の上、摂取熱量・蛋白量アップ
R)今日のリハビリへの反応 A)今日の病状・リハ反応に対する評価
他職種 …整形主治医に局所処置・内服調整検討依頼。ケアマネに手すり等相談。
鍼灸師に施術検討依頼。義肢装具士に足底板やサポーター
障害の改善程度・見込み
Dx:心理療法…認知行動療法をベースにした、膝痛日記利用の開始。
VASでの定量的な疼痛記録実施。 P)次回リハビリの予定
Ex:患者教育…電話指導導入の検討

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リハ経過記録③ リハ経過記録の具体例
【問題リスト】主病名、主な併存症 初診記録の問題リストと初期計画は 【問題リスト】両膝変形性関節症、左偽痛風後の関節拘縮・廃用症候群
ICF評価 :リハ的な問題点[立案・改定日] 経過記録内にコピペせず別枠表示 ICF評価 :機能…両膝関節変形・拘縮、下肢筋萎縮、低栄養、視力障害、排尿障害
基本計画:リハプログラム[立案・改定日] 活動…歩行機能障害・バランス機能障害、トイレ動作・入浴動作と家事障害
随時改定し、改定日付記
参加…農業・家事役割機能全廃、自宅内日中孤立[2022/7/14立案]
基本計画:リハプログラム[2022/7/14立案→7/28改定]
S)前回診療後におきたエピソードや お医者さまには言いにくい ①関節可動域訓練、②下肢筋力訓練、③・・・
今日の体調や考えなど(セリフ)
ナラティブ情報は貴重かつ有用
ナラティブ(希望・要望、感情・懸念) S)先週習った自主訓練は月水金で休まずできている。訓練後の痛み悪化なし。
※生活・職業、家族等の追加情報は
リハ視点で重要な症状の変化(専門用語) 基本情報欄などの規定フォーマットに蓄積 トイレと入浴は自分でできるようになって、人の手がいらなくなったので気が楽だ
リハビリの効果は感じているので、もっと頑張って元の生活に戻りたい。
O)全身状態・バイタル: 左膝痛はVAS6→2、通常食3食全量摂取+補助食も完食
診察所見: 実際の処置や診断的治療内容は
O欄(客観的事実)に記載。 O)全身状態良好。血圧132/74、脈拍72・整、体温36.2度
リハプログラム②は〇〇を追加して強化、①③④はプログラム通り実施
実際のリハ内容(アレンジ部分) 介入前後の所見を明記する。
膝関節可動域:●→●°、大腿四頭筋聴力:■→■、6分間歩行試験:●メートル
と反応(可動域や感覚所見の変化) FIM再評価(前回7/14):・・・・・・
経過記録では、全体像ではなく
A)今日のリハへの反応と、今後の見込み A)自主訓練意欲高く、直接観察で手法も適切→誤用・過用はなさそう。
「今日」の反応への評価を書く 栄養・筋力も回復傾向で、本日から筋トレレベル3にアップも疼痛・疲労は許容範囲
P)次回リハビリの予定 計画は次回(明日の自分、チームの後輩)に宛てる P)次回リハビリは1週間後。電話指導は終了とする
基本プログラムの修正点 ICF評価・基本計画の変更があれば リハプログラム③を修正した→次回担当者に引き継いだ
注意事項・申し送り 次回問題リスト欄に反映する 訪問看護での体重・栄養状態評価と疼痛評価を継続していただく。

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まとめ
リハ記録の型は必要

「型なし」では、どこからも相手にされない。
POSに基づいた、SOAPの基本的な型は押さえたい

「医師の型」のままでは使いにくく、普及しない
セラピストの専門性や独自性を活かすには、
基本の型をベースに改造した、型破りが必要

「流派の細かな違い」にこだわると、永久にできない
大学で教える基本や、国際的なICFなども活かして
「PT/OT/STの違いを超えて使える型」が必要だろう。
若手育成にも、他職種交流にも、研究にも

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2022/8/4

今日の内容 事前質問への回答例
①リハビリの専門用語は使わないほうがよいか?
①医療者に共通の基本、「基本の型」 Sの患者視点情報は患者の言葉のまま
Aの方針は職種問わず理解できるシンプルな言葉で
POS・POMRの概略、SOAPの書き方 それ以外は「専門用語」を適切に使うのがよいとおもいます。

②SOAPで記載しているが、もう少しわかりやすい記載方法はないか?
②リハ職の専門性を反映した「応用の型」 Problem oriented Rehabilitation Recordの例を参考に、専門家として深めてみてください。
経過記録と初診時記録を区別するだけでも、かなり読みやすくなります
型破りな亜流と、型無しな自己流
③セラピストには当たり前でも、他職種からみて大事な情報は?
ICFの情報はすべて重要。

③質疑応答 特に患者の自宅・職場での生活目線での困難や課題
ベッド上診察で見えない動作や動きの問題

事前質問へのお答え QOLや機能・活動・参加の回復程度の見通しなど。
医師・看護師に言いにくい本音・ナラティブがあればぜひ記録・共有を

フリーディスカッション

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事前質問への回答例 質疑応答・フリートーク
④他職種に見てもらえる、伝わるカルテを書くコツが知りたい。
・各職種で重複する情報は書きすぎず、基礎データは全職種共通で蓄積する
・初期計画には患者目線(リハ素人目線)でもわかりやすい短期・⾧期ゴールを明記
・経過記録では、障害名やリハプログラムのコピペで紙面を埋めるのは割けて、
その日のリハ介入で新たに得た役に立つ情報を増やす(シグナル・ノイズ比を高める)

⑤カルテは短く書いたほうがよいのか?時系列に整理しやすいコツは?
短くできるならそのほうがよいが、必要十分な記載であることが重要
項目ごとに見出しをつける、無駄なコピペをやめるだけでもだいぶ違います。

全体像や短期目標の達成度合い、詳細で専門的な評価は経過記録内でやらない。
・2週間毎の中間サマリーやカンファ記録など別枠で扱う。
・生活状況や職業詳細など蓄積すべき重要情報は基礎データにも転記・蓄積する。

カルテ記載を頑張るだけでなく、
日常的な直接コミュニケーションや、定期的なカンファが重要

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