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本好きの下剋上 ∼司書になるためには手段を選んでい

られません∼

香月 美夜

タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト

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︻小説タイトル︼
 本好きの下剋上 ∼司書になるためには手段を選んでいられませ
ん∼

1
︻Nコード︼
 N4830BU
︻作者名︼
 香月 美夜
︻あらすじ︼
  本が好きで、司書資格を取り、大学図書館への就職が決まって
いたのに、大学卒業直後に死んでしまった麗乃。転生したのは、識
字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周り
に本なんてあるはずない。本がないならどうする? 作ってしまえ
ばいいじゃない。目指すは図書館司書! 本に囲まれて生きるため、
本を作るところから始めよう。※最初の主人公の性格が最悪です。
ある程度成長するまで、気分悪くなる恐れがあります。︵R15は
念のため︶
2
プロローグ
もとすうらの
 本須 麗乃、22歳。
 わたしは本が好きだ。大好きだ。
 三度のご飯より愛してる。
 活字を通して誰かの知識に触れるのが好きだし、妄想に触れるの
も好き。そこから筆者の思想をたどるのも心が踊って顔が思わずニ
ヨニヨしてしまう。
 様々な知識が一冊にまとめられている本を読むと、とても得をし
た気分になれるし、自分がこの目で見たことがない世界を、本屋や
図書館に並ぶ写真集を通して見るのも、世界が広がっていくようで
陶酔できると思わない?
 外国の古い物語だって、違う時代の、違う国の風習が垣間見えて
趣深いし、あらゆる分野において歴史があり、それを紐解いていけ

3
ば、時間を忘れるなんていつものこと。
 心理学、宗教、歴史、地理、教育学、民俗学、数学、物理、地学、
化学、生物学、芸術、体育、言語、物語⋮⋮人類の積もり積もった
知識がぎっちり詰め込まれた本を心の底から愛している。
 ぶ厚く連なる百科事典も、
 一冊も欠けることなく揃った文学全集も、
 一見簡素に見える表紙でも内容は高度な専門誌も、
 写真を多用したカラフルな雑誌も、
 小難しい言い回しが多い小説も、
 内容は薄くてもよく売れているライトノベルも、
 子供向けの大きな絵本も、
 日本の誇る文化になっている漫画も、
 素人が作った同人誌さえ、
 パラリとページを開けば、わたしを酔わせる美酒となる。
 それから、図書館の古い本が集められた書庫の古い本独特の少々
黴臭い匂いや埃っぽい匂いが好き。ゆっくりと吸い込み、そこに年
を経た本があるだけで絶頂を迎えられそうなほど身悶える。
 もちろん、新しい紙とインクの匂いもたまらない。そこに何が書
かれているのか、新しい知識があるか、考えるだけで楽しくなれる。
 一生を本に囲まれて生きていきたい。
 本を傷めないように日光が当たらないように、しかし、風通しは
良いように作られた書庫で、できることなら一生過ごしたい。
 本を読むことにできる限りの時間を費やすことで、肌が青白くて
薄気味悪いと言われようと、運動不足で不健康と言われようと、食

4
事を忘れて叱られようと本を手放すことなんてできない。
 どうせ死ぬなら、本に埋もれて死にたいと思う。畳の上で往生す
るより、ベッドの上で本に埋もれて死ぬ方がよほど幸せな死に方だ
と思う。
 ︱︱いえ、正確には、思っていた。
 実は、わたし!
 ついさっき、大地震で本に埋もれて死にました!
 えぇ、まさに、希望通りですが、何か?
 本望だったけれど、神様ありがとうと素直に思えないのは、司書
資格を取って、就職難のこの時代に大学図書館への就職が決まった
ばかりだったから。
 神様、お願いします。

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