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地球 火星

Earth : a planet of life

生命の惑星 地球
金星

水星

水が液体として存在する範囲(太陽系におけるハビタブルゾーン)

 地球上のすべての生物は,からだの成分として液体の水を含んでいる。生命活動に必要な他の物質は,この水に溶け
ることによってさまざまな化学反応を行うことが可能になる。液体の水は,まさに地球上の生命が存在するための基本
太陽
物質であるといえる( p.18)。
 地球は,大気や水を表面にとどめておくのに必要な重力を生じるのにじゅうぶんな質量と大きさをもつ。また,太陽
からの距離は水が液体として存在し得る範囲に含まれている。宇宙空間のなかで液体の水が存在できる領域はハビタブ
ルゾーンと呼ばれ,生命が存在するのに適した領域とされている。もし,地球が水星や金星の位置に存在したならば,
液体の水はすべて蒸発してしまうであろうし,火星の位置に存在したならば表面が凍りついてしまったであろう。

Hypothesis about the origins of life

生命誕生に関する
 それでは,地球の最初の生命はどのようにして発生したのだろうか。
この疑問に対する 1 つの仮説として「最初の生命は宇宙空間から飛来し 仮説 1 宇宙から飛来した 隕石
た」という考えが提唱された。この説は,完全には否定されていないが, いんせき

その実現性に多くの難点がある。したがって,原始地球にはパスツール  オーストラリアのビクトリア州マーチソンに落下した隕石

さまざまな仮説
の実験とは異なる条件が整っていたため,非生物的物質から自然に発生 (マーチソン隕石)や南極で採取される隕石からは多数のアミ
することが可能になったのではないかとの仮説が力をもつようになった。 ノ酸や核酸の塩基( p.70)が同定されている。このような
 生命の起源については,未だ定説というものは存在しない。そのなか データから,生命の誕生に必要なアミノ酸や核酸の塩基は宇
でも,現在広く支持を受けている考えは,まず,地球上に何らかの形で 宙から供給されたと考えられている。
 地球は約 46 億年前に誕生し,最初の生命はその約 6 億年後に生じたと考えら 生物のからだを構成する DNA や RNA,タンパク質などの成分が生じ, 原始海洋
れている。最初の生命は,単純な微生物であったと想像される。古代から 17 世 やがてそのなかから長い時間をかけて細胞構造が生まれて最初の生命に
紀中ごろまでは,生物は無生物から自然に生じると信じられていた。しかし,こ 至ったとするものである。からだを構成する成分がどこで生じたかにつ 仮説 2 原始海洋・地上で発生した
の考えは 19 世紀にフランスの細菌学者パスツールによって完全に否定された。 いても諸説あるが,ここではそのなかから 3 つを挙げて紹介する。
 原始の地球大気や海洋の成分を推定し,それを模した組成
の気体やガスにエネルギー (電流や紫外線,放射線,熱など)
を加えると生物のからだを構成するさまざまな成分が非生
ルイ・パスツール
物的に生成されるという実験が 1953 年のミラーの実験(
(1822 ∼ 1895 年)
p.279)以降数多く行われている。このような実験結果から,

自然発生説とパスツールによるその否定 生命の誕生に必要な成分は原始海洋や原始地球の地上で発生
したと考えられている。なかでも,現在の地球の海底にも
存在し,マグマに温められた熱水が噴出する熱水噴出孔(
 生物は無生物から自然に生じるとする考えは,
p.279)は,原始地球とよく似た環境であると考えられており,
自然発生説と呼ばれる。この説は古くから長い 白鳥の首フラスコ
新鮮な空気が入る状 原始地球における生命誕生の場として注目されている。
間信じられ,たとえば朝露に朝日が当たってホ
況でも微生物は発生
タルが生まれるといったことが平然と唱えられ せず,腐敗は起きな
ていた。 い。
水 微生物を
 近代自然科学の発達に伴い,この説は疑われ
  とらえる 仮説 3 原始海底で発生した
るようになる。特に微生物が発見されると,こ
れが自然とわき出るのか,親から生まれるのか  単純なアミノ酸からタンパク質のもととなるペプチド(
外部から微生物が混
で大論争となった。パスツールは,右図のよう 入しなければ,微生 p.80)を合成する際には,高圧力・高アンモニア濃度という
ブラックスモーカーと呼ば ロストシティーと呼ばれる現在の
な白鳥の首フラスコを自作し,微生物 加熱滅菌した 物は発生しない。 条件が重要であるという実験結果が報告された。このことか
れる熱水が噴き出す現在の 熱水噴出域。熱水の温度は 90 ℃
が自然発生しないことを示した。 培養液 ら,原始地球に海が出現した後,海底地下で単純な有機物が
熱水噴出孔。強酸性で水温 程度で pH は 9 ∼ 11。低分子の有
濃縮され,海底堆積物が圧縮・脱水される過程でより複雑な
は 400℃を超えるものもあ 機物が非生物的に合成されること
有機物がつくられていったという考え方がある。 熱水噴出孔
り,極端な環境で知られる。 から,近年注目されている。

海底
Evolution and diversity of organisms  地球上における生命の誕生は,1 度きりでは
なかったと想像されている。原始地球に生命の

生物の進化と
材料となる物質が蓄積したのち,生命の誕生と
滅亡がくり返された。これらのなかから,最終
的に生き残った 1 種類の生命が,現在のすべて
の生命につながったと考えられている。

多様性
 約 40 億年前に誕生した始原生物は,長い時
間の間に進化し,現在の地球上にみられる多種
多様な生物が生まれた。これらの生物は,異な
る形質や生活様式をもっているが,生物として
の共通性もみられる。これは,共通の始原生物
から進化したことにもとづいていると考えられ
ている ( p.278)。

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