埆 震 第2輯

第39巻(1986) 1-14頁

格 子 型 フ ィル タの 地 震 観 測 へ の 応 用

国 立 防 災 科学 技術 セ ンタ ー 木 下 繁 夫
(昭和60年12月3日 受 理)

Lattice Filtering Applications to Earthquake Observation

Shigeo KINt?SHITA
NationalResearch Center for DisasterPrevention
Received December 3,19$5)

Lattice digital filtering techniques have developed rapidly during the past ten years. The
achievements are of interest in the earthquake wave data processing field. In this paper,

we report the results of three lattice filtering applications on the strong-motion data and

observation. The first is an application to estimating the frequency-wavenumber spectrum.

An all-zero complex lattice filter is applied to the strong-motion array data. fihe next is a

model of equivalent observation system which has two seismometers installed both on the

free groun.d and at the botto鵬of b◎rehole. An aU・pole lattice創ter is apPlied to such obser・

vation system for the modeling of earthquake response of multi-layer system for SH waves,

The last is implementation of digital integrator with lattice structure. We show velocity

seismograms obtained at the depth of 500醜by usiag such digital integrator.

§1.は じめ に
地 表 で の 点 観 測 か ら始 ま つた 強 震 観 測 は,地 中地 震 計 との 同 時観 測 を 経 て,地 表 面 で の多 点
観 測 を も含 む 群 列 観 測 へ と発 展 して い る,最 近 で は,地 盤 振 動特 性 の調 査 に お い て も,群 列 観
測 に よ る方 法 が 次 第 に増 加 しつ つ あ る.地 盤 振 動 の観 測 を 目的 と した 場 合,従 来 か ら行わ れ て
い る地 中一地 表 地 震 観 測 に よ る地 盤 の波 動 伝 達特 性 推 定 が,地 表 多 点 観 測 か ら 得 られ る新 た な
情 報 に よ り,よ り精 密 な もの とな る こ とが期 待 され る.地 表 多 点観 測 か ら得 られ る情 報 は,地
震 波 の 構 成 波 群 とそ の 到来 方 向及 び 見掛 け速 度 で あ る.こ れ らは,地 盤 の 波 動伝 達 特 性推 定 に,
地 震 波 の 構 成 波 群 の どの部 分 を使 うぺ きか の具 体 的情 報 を与 え て くれ る.ま た,地 盤 振動 にお
け る最 近 の研 究 課 題 で あ る地 盤 歪 特 性 を定 量 的 に扱 う場 合 に も,見 掛 け 速 度 は地 盤 歪 と速 度 波
を結 び つ け る重 要 な パ ラ メー タ であ る.本 稿 の 目的 は,こ の よ うな地 盤 振 動 の群 列 観 測記 録 の
1次 処 理 に 格 子 型 デ ィ ジ タル ・フ ィル タを用 い る方 法 とそ の応 用結 果 を報 告 す る ことで あ る・
具 体 的 には,(1)地 表 多 点 記 録 に対 す る周 波 数一波 数 ス ペ ク トル推定 法,(2)地 中 一地 表 地震 観 測
か ら,斜 め 入射 す るSH波 に対 す る水 平 多 層地 盤 の振 動 応 答 を 取 り扱 うた め の等 価 表現,及
び,(3)地 中加 速 度 信 号 を 速 度 信 号 へ変 換 す るた め の積 分 器,を 報 告 す る・
本 稿 で扱 う格 子 型 デ ィ ジタ ル ・フ ィ ル タ リン グは,板 倉 ・斎 藤(1969)が 音声 の分 析 と合成
に応 用 して以 来,急 速 に発 展 した信 号 処 理技 法 であ る・ 地 球 物 理 の分 野 に お い て は ・RILEY
and BuRG(1973)がBuRG(1968)の ス ペ ク トル推定 法 に 内在 す る格子 型 構 造 を デ コ ンボ リュ

昭 和60年4月5日 発表
 2 木 下 繁 夫

一 シ ョソ ・フ ィル タに応 用 した のが 最 初 と思 わ れ る.こ の2っ の応 用 は,い ず れ も音 波 の 層 構

造 俵 播 を数 学 的基 礎 と して展 開 した もの で あ る.現 在 多 用 され て い る格 子 型 フ ィル タは,予 測

誤 差 フ ィ ル タ と逆 フ ィル タ とであ る*.予 測 誤 差 フ ィル タは,定 常 過 程 の 自己 回帰 形 モ デ ル に
お いて 主要 な 役 割 を果 たす 偏 相 関 係 数 の推 定 器 と して用 い られ る.音 波 の 層 構 造 伝 播 へ の応 用
で は,偏 相 関 係数 は反 射 係 数 に対 応 づ け られ て い る.逆 フ ィ ル タは,そ の 構 造 パ ラ メ ー タ(予
測 誤 差 フ ィル タ に おけ る偏 相 関 係数,も し くは 反 射 係 数 に 相 当 す る)を 指 定 す る こ とに よ り,
任 意 の ス ペ ク トル特 性 を 持 つ波 形 発 生 器 と して 使 用 され て い る.本 稿 で は,予 測 誤 差 ル ィル タ
を(1)の 課 題 で,逆 フ ィル タを(2)及 び(3)の 課 題 で 各 々用 い る.

§2.周 波 数 一波 数 ス ペ ク トル 推 定 へ の応 用
予 測 誤 差 フ ィル タは,入 力 信 号 の もつ ス ペ ク トル特 性 を 偏 相 関 係 数 列 と予 測誤 差 列 の 形 で 抽
出 す るた め に用 い られ る.入 力 信 号 が 自己 回帰 形 モ デ ルに 従 う場 合,そ の ス ペ ク トル特 性 は,
偏 相 関 係数 か らDurbin-Levinson法 に よ り変 換 され る 自己 回帰 係 数 と予 測 誤 差 の分 散 と で表
現 され る・ 本 章 で は,複 素 領 域 で の 予 測 誤 差 フ ィル タ を用 い て,群 列 観 測 記 録 の もつ周 波数 一
波 数 ス ペ ク トル特 性 を 同 様 の 形 で 求 め る方 法 を 示 す.
2.1 周 波 数 一波 数 スペ ク トル

平 面 上 の第1観 測 点(位 置 ベ ク トルr〃 に お け る標 本 化 列 を 嬢 勿,n=1,2,…,1Vと す る.

但 し・n≦0及 び%>Nで 廠 勿=0と し,標 本 化 時 間 を4T秒 とす る.位 置 ベ ク トル の原 点
を 規 準 観 測 点 と し・r・ とす る・ 観 測 点 の 総 数 はLと す る.こ の と き,波 数 ベ ク トル ゐ。を
パ ラ メ ー タ とす る複 素 時 系 列

1 L
6ω=了,挙 ω・6働 (1)
の ス ペ ク トル密 度 関 数 は 次 式 とな る.

瓦(λ;k・)1L(a)・ 凶 ひ岬 (2)
但 し,ω を 円 振 動 数,λ=ω ・
∠7懸を 正 規 化 円 振 動 数(12i≦ π)と し,P鼠 え)を κ,(n)と κ為(n)の

相 互 ス ペ ク トル 密 度 関 数 と す る ・ 有 限 観 測 点 の デ ー タ に 基 づ く場 合f式(2)の 右 辺 は周 波数 一

波 数 ス ペ ク トル の 推 定 式 で あ る.し た が つ て,式(1)で 定 義 さ れ る 複 素 時 系 列C(n)の スペ ク

トル密 度 関数 君 α;ゐ 。)は,波 数 ベ ク トルr。 に お け る 周 波 数 一波 数 ス ペ ク トル の 推 定 値 と な

る.

そ こ で ・ 瓦(λ;ゐo)の 推 定 過 程 を 考 え る.ま ず,c(n)の 定 義 式(1>を ビ ー ム ・フ ォ ー ミ ン グ

と し て 意 味 づ け る ・ 但 し・ 周 波 数 領 域 に お け る ビ ー ム ・フ ォ ー ミ ン グ で あ り
,標 本 化 列 は 狭 帯
域 通 過 波 で あ る 必 要 が あ る.こ の た め,以 下 で は 嬢 η)を 中 心 周 波 数 λ。 の 帯 域 通 過 フ ィ ル タ
の 出 力 列 と し て 扱 う.し た が つ て,P』(λ;滝o)は 瓦(λ。
,滝。)と な る.次 に,ビ ー ム ・フ ォー ミン
グ され た 複 素 時 系 列e(n)の ス ペ ク トル 密 度 関 数 を
,c(n)が 複 素 自己 回帰 モ デ ル に従 うと して
推 定 す る.即 ち,次 式 で 与 え られ る モ デ ル を 考 え る.

c(n)+蔦 α"C("一ブ)一
θ(n) (3)
*正 確には
,全 零 型 予 測 誤 差 フ ィル タ及 び全 鯉 逆 フ ィ ル タ と い わ れ る も の で あ る 【R・8・NS・N(・983)】
.
 格 子型 フ ィル タの 地震 観 測 へ の応 用 3

こ こ で,6(n)は 平 均 零,分 散 2の 複 素 ガ ウ ス 過 程 と す る .P,Go, ko)の 推 定 値 は,式(3)と

e(n)に 対 す る仮 定 に よ り,通 常 の 回帰 モ デ ル と同 様 に
,

pΣ 司
ゑ(λo,施o)一
孟π ・ 2P 2,1λ.1≦π, (4)

"
而
1

^
十

6
伽
ゴ
.
-響
と な る.但 し,∂ ρ2,{ αプ}は,各 々ff 2P,{αブ}の 推 定 値 で あ る.

2。2 予 測 誤 差7イ ル タ

周 波 数 一波 数 ス ペ ク トル は,式(4)の 表 現 で 示 さ れ る よ うに,複 素 回 帰 係 数 列{の と予 測 誤

差 の 分 散 ∂P2と で 規 定 さ れ る.し か し な が ら,予 測 誤 差 フ ィ ル タ は,本 章 の 始 め に述 べ た よ う
に,直 接 こ れ ら の 推 定 値 を 出 力 し な い.Fig.1に 示 す 複 素 形 式 の 予 測 誤 差 フ ィ ル タ か らの 出

力 はf複 素 領 域 で の 偏 相 関 係 数 列{々 ゴ}と 予 測 誤 差 列{θ(π)}と で あ る.こ のFig.1で 用 いて

い る 各 演 算 要 素 は,Fig。2に 示 す 作 用 を す る も の で あ る. Fig.1の 予 測誤 差 フ ィル タか ら出

力 さ れ た 偏 相 関 係 数 列{々 ∫}か ら,複 素 自 己 回 帰 係 数 列{義 ゴ}への 変 換 は,複 素 形 式 のDurbin・

Levinson法[CLAER$OUT(1976)1:

解=念 鴫 編 畠*1=1,2,...n-一 、} (5)

k

k
2

Ctn) 9・ 4・ ecn)
● ② ・Σ
1

E k'
1

-
1 ,ぜl
0
I1.,_ ●1

=
￠
O o
Ok2
P hの 昌 ●1

量 量
.71↑.Σ .w-o-一
一 餅 一一…-z轍1

Fig.1. All-zero complex lattice representation of linear filtering.

d}Uni↑deloy Xi㈲ 一 回 一Xi{n-1⊃

Xicn》
(2)Adder Xim⊃+Xlln}
Xl㈲

{3)Muifiipiier
娼 ⊃ ⑭ 一Xi-1ω,
0
・E{Xixp∠EIXil書 ε置X」12
Xi`nl 脚
に
t

{4}sorrel◎for : o
● (,.) 一E[xぞxμEiXi童8・Elx」lz
Xl㈲ 一
,

Fig.2. Operatorsused in latticefilters.

 4 木 下 繁 夫

Fig.3. Block diagram for estimating the frequency・wavenurnber spectrum. B.P. F.

represents bandpass fiber.

に 基 づ い て,亀=禽 、
ω,1=1,2,・fs と し て 行 わ れ る.但 し,詑 δ
ω*はtX(n)の 共役複素数

とす る.複 素 領 域 に お け る 予 測 誤 差 フ ィ ル タ の こ の よ う な 性 質 は,実 領 域 に お け る場 合[板 倉 ・

斎 藤(1969); ・・ (1978)】 と 同 様 の 手 順 で 導 か れ る.結 局,群 列 観 測 記 録 か ら複 素 領 域

で の 偏 相 関 係 数 列{k}と 予 測 誤 差 列{θ(n)}と を 求 め る ブ ロ ッ ク図 はFig.3と な る.

Fig.3は,{k}と{6(π)}と を 連 続 的 に 出 力 す る 方 法 を 示 し た も の で あ る.前 節 で述 べ た有
限長 の デ ー タ (デ ー タ 数IY)を 定 常 過 程 か ら の 出 力 と し て 扱 う場 合 に は, C(π)の 自 己 相 関 関

数 か ら{k,}と δノ とが 推 定 さ れ る.こ の 推 定 手 順 も 実 過 程 の 場 合 と 同 様 で あ り,以 下 の よ う

に な る.即 ち,C(n)の 自 己 相 関 関 数,

Ni n
瓦(π)r7認1c伽+n).・*(m) (6)
に 基 づ い て,

k1=-1∼ ￠(1)/1∼e(0), ∂2=R(0)(1--k1・kl*) (7)

を 初 期 条 件 と して,式(5)及 び
れ コ

瓢 畿1∵ 煮{∵} (8)

よ り{k,}と ∂P2と が 求 ま る.但 し, R,な(1)を κ,@)とxk(n)と の 相 互 相 関 関 数 と す れ ば,

瓦(π)は 次 式 か ら求 ま る 。

凡(n)一毒ゐ艮1Rμω ・
〆脚 ゴ)
=R。*(m), (9)

1N-≫
偏 相 関 係数 か ら回 帰 係i数へ の変 換 は, AKAIKE(1976)の 方 法 に 従 つ て,{k}にBayesian
 格 子 型 フ ィル タ の地 震 観 測 へ の応 用 5

weightを か け,再 び 式(5)を 用 い る こ とに よっ て行 わ れ る.こ の方 法 に よれ ば,次 数 ρ を一

定 に保 つ こ とが 出来 る.

一
周 波 数一波 数 スペ ク トル の推 定 に予 測 誤 差 フ ィル タ を用 い る 本章 で の方 法 では,相 互 ス ペ ク
トル密 度 行 列 の推 定 結 果 を用 い る 【CAPON(1969)等1必 要 は な く,時 間 領域 に おけ る相 関関 数
を直 接 用 い る こ とが 出来 る.
ト礎6貰。Ve匡oci董y

2.3 実 記 録 へ の応 用 と考 察 (cm/s

地 震 観 測 に お け る 周 波 数 一波 数 スペ
ク トル の直 接 的 な応 用 は,地 震 波 の 構
1NGi ,93
成 波 群 の識 別 と各 波 群 の到 来 方 向及 び

一
見 掛 け速 度 の推 定 で あ る。 こ こ では,
本 章 で 扱 つ た 方 法 を群 列観 測 記 録 に適
用 して 見 掛 け 速 度 を推 定 した例 を示 す.
i
Fig。4は,山 梨 県 一 神 奈川 県 境 の
地 震(1983年8月8日,マ グニ チ ュ

蜜
ー ド6.0)に お け る東 京 西 部 地 区6地

表 点 で のtransverse成 分 記 録 で あ る.
KFC
観 測 地 点 及 び 震 央 位 置 はFig。5に 示
zsa
す 通 りで あ り,図 中 のFCHを 規準 観
測 点 とす る.Fig.4の 記録波形中の
Ei
矢 印 で示 した範 囲25秒 間 の 記 録 を用
Fig.4. Transverse component velocity waves
い た と き,安 定 して 推定 され た周 波 数一
observed at the array sites shown in
波 数 スペ ク トルの 例 をFig.6に 示 す. Fig,5 during the Eastern Yamanashi

Fig.6(a),(b),(c)及 び(d)は,各 Pref. Earthquake of Aug.8,1983(M=

6.0}. 'The data between two arrows are
々 中心 周 期 を5秒,6秒,7及 び8秒
used to estimate the frequency-wave-
と した場 合 であ る.図 中 の 数 字 は デ シ nu血ber spectra.

Fig,5. Stations of the Fuchu array in the west of'Tokyo. Epicenter shows the

location of the Eestem Yamanashi Pref. Earthquake◎f Aug.8,1983(ルf=6.0).

 6 木 下 繁 夫

Azimuth Azimuth

1.S
(ε 犀 ＼ ℃O﹂︾

(ε ど ＼ "O﹂︾

ゆ
ゆ
﹂2 ε§

﹂轡Oε 駆駕O︾ひ≧
6

O
溺
O
瀞

(a) (b)

Azl納 麟 騰 Azimuth

o●{蛸 90・{fl 18Q・tSf 2Tti・{W1 360・

i.s 1.5
(ε 菖 、 "O﹂} ﹂00ε ,にO︾O︾♪

(ε 菖 、 "O﹂}
ゆ

ゆ
﹂●ρε5 90,0
O
瀞

O
β

0 d

(c) (d》
Fig.6. Estimated frequency-wavenumber spectra by using the data shown in Fig.

4・ Central periods of bandpass 創ter are 5 sec(a), 6sec(b), 7sec(c), a嶽d

8sec(d).

ベ ル表 示 で あ る ・Fig・5に 示 す よ うに ,観 測 点 間 の 最 短 距 離 は 約3kmで あ る た め,推 定対

象 と な る波 の 波 長 は6kmを 越 え る も の と な る.ま た,観 測 網 の 直 径 は 約6kmで あ り,
こ の 程 度 の 波 長 の 波 に 対 す る 周 波 数 一波 数 ス ペ ク トル の 推 定 に 適 し て い る.こ れ 以上 の波 長 の

波 に 対 し て は,波 長 が 大 き く な る 程 ス ペ ク トル の ピ0ク は ぼ け て く る.比 較 的安 定 して スペ ク

トル ・ ピ ー クが 求 ま る の は,波 長 が 観 測 網 の 直 径 の 数 倍 程 度 の 波 に 対 し て 迄 で あ る.即 ち,
 格 子 型 フ ィル タの地 震 観 測 へ の応 用 7

Fig.5の 観 測 網 で は,波 長 が6km∼

ao
18km程 度 の 波 が 取扱 い対 象 とな る・

︽契韮 ) ξ 。2Φ︾ Φ8 歪
Fig.6の 周 波 数一波 数 スペ ク トルの ピ

篇
ー クか ら得 られ た見 掛 け速 度 は
,Fig.
7の 黒 丸 で 示 され て い る.周 波 数一波 数

⑳
ス ペ ク トル が 安定 して推 定 され た周 期
5秒 ∼8秒 の波 の波 長 も,,Fig.7の 推
定 見 掛 け 速 度 に よれ ば,6km∼18 km

矯
程 度 で あ る.
Fig.7に 示 したLo及 びLユ は,

鴇
山 水 ・他(1981)が 府 中 地 殻 活 動観 測
施 設(Fig.5のFCH)の 深 層 井 を用
い て行 っ たS波 速 度 の検 層 結 果 に基
づ い て,平 行 層 近 似 を した場 合 のLave 0.5
2 5 10 20
波 の基 本 モ ー ド及 び1次 モ ー ドの位 相 Pe「lod (s》
速 度特 性 で あ る.Fig.4に 示 した 波
Fig.7. Apparent velOcitiesestimated by the
形 区 間 に お い て推 定 された 見掛 け 速 度 peaks of frequency-wavenumber spectra
は,L。 の 特 性 と似 た傾 向 を示 す が, of Fig.6. Lo is the phase velocity of
fundamental made Love wave and is
これ よ りも大 きい速 度 を示 して い る.
calculatedbased on the velOcity structure
これ は,観 測網 下 の基 盤 が東 側 へ 傾 斜 obtained by the Fuchu deep borehole. Ll
して お り,Fig.4の 記 録 が こ の傾 斜 is the phase velocity of first made Love
wave.
基 盤 面 で 全 反 射 しな が ら堆 積 層 を伝 播
して い る[木 下(1985)1状 態 の もめ で
あ り, い わ ゆ る平 行 層 に お け るLove波 と異 な るた め であ る.

§3.地 中 一地 表 地 震 観 測 へ の 応 用

本 章 で 扱 う逆 フ ィ ル タ はFig.8の 回 路 で 示 さ れ る も の で あ る ・ こ の フ ィ ル タ で は, x(n)を
入 力 列 と し て,2種 類 の 出 力 列xtn)及 びy(n)が あ る.ま た,回 路 内 の 構 造 パ ラ メ ー タ{k }

が こ の フ ィ ル タ の 特 性 を 決 め て い る 。 本 章 の 目的 は,半 無 限 層 上 の 水 平 多 層 地 盤 のSH波 に

対 す る 応 答 特 性 を 逆 フ ィ ル タ を 用 い て 等 価 表 現 し,地 中 一地 表 地 震 観 測 記 録 の モ デ ル 化 を 行 う
こ と で あ る.

3.1 地 中 一地 表 観 測 記 録 の モ デ ル

半 無 限 層(最 下 層)上 に 水 平 多 層(P層)地 盤 を 持 っEqual time layered mode1【KoE肌ER

and TAKER(1977)】 を 考 え る.各 層 は 地 表 側 か ら番 号 づ け ら れ て い る も の と し・ 各 層 に お け

るS波 の 通 過 時 間 は0様 に ∠T/2秒 とす る.第n層 で の イ ン ピ ー ダ ン ス を 砺(最 下 層 では

αP÷
、)と す れ ぽ,第n層 と第n+1層 と の 境 界 に お け る第n十1層 内 上 昇SH波 の反 射 係 数

は 次 式 で 与 え ら れ る.
1 々π=(an+1__..an)/(α
。+、
十 σ。), n=1,2,…,ρ (10)

但 しfoFρ 。
β.cosθ.で,第n層 で の 密 度, S波 速 度 及 び 入 射 角 を ・ 各 々 ・ ρ%・禽 及 び θ%
 8 木 下 繁 夫

と す る.

SH波 に 対 す る こ の 水 平 多 層 地 盤 の 応 答 は, Fig.8の 逆 フ ィ ル タ を 用 い れ ば ・Fig・9の 回

路 構 成 で 等 価 表 現 さ れ る.逆 フ ィ ル タ の 構 造 パ ラ メ ー タ は 式(10)で 与 え ら れ る{船 であ 肪

s,-P211(1+kn)及 びJ 1と す る. Fi昏9に お い て,2@)は 地 表 観 狽旺

波 で あ り・ 最 下 層

にお薦 襯 瀕 ω は入轍 κ(n)G下 層での下降灘(")と か ら繊 され る.晦9の

回 路 構 成 がSH波 に 対 す る 水 平 多 層 地 盤 の 応 答 と等 価 特 性 を 持 つ こ と は ・ 以 下 の よ うに 示 さ

れ る.即 ち,Fig.8の 逆 フ ィ ル タ が, Durbin-Levinsonの 繰 り返 し 式

雅 島高)職 鰯 も
ぞ'1=1,2,...,n、} (・
・)
を 満 た す こ と に よ り,α ブ=σゴω,ゴ=1,2,…,Yと す れ ぽ, Fig・9め 構 成 か ら次式 を導 出 出 来

る.
F
卿)+Σ α,・
卿 一 ブ)=細),ノ
雛1
P (12)
夕(π一 ρ)+Σ αゴッ(n-p+ゴ)=珈),
ノ醤1

ρ(π)=sガ 、y(n-∂)・

こ の 式(11)及 び 式(12)は,SH波 に 対 して, Equal time layered mode1が 満たす関係式

であ る 【
木 下(1981)1.地 中 一地 表 観 測 記 録 に つ い て の 関 係 式 は,α 。=1と し て,傷=α ゴ+ap一ノ

とす れ ば,式(12)よ り次 式 と な る.
ア
Σ ∂ジρ( q.'」)=sプ
￡(π一∂). (13)
ノヨ

次 に,Fig.9の 等 価 表 現 か ら 得 られ る 地 中 一地 表 観 測 記 録 の 統 計 的 性 質 を 考 察 す る 。 式(13)
よ り,2(n)と ρ(n)の 相 互 相 関 関 数R鉾(・)は 次 式 と な る.

1∼全粂(π)=εブ 三 Σ δ1ジR垂全(π
十 う一 ノ) (14)
ノ篇0

こ こ で,Ry y(・)は ρ(%)の 自 己 相 関 関 数 で あ る.式(14)は, SH波 の 多 重 反射 状 態 を 知 るた

め の 情 報 を 持 つ て い る.即 ち,傷=傷 つ な る 鏡 縁 関 係 と,RYy(・)が 偶 関 数 で あ る こ と か ら,

RAY(・)は 偶 関 数 と な る.こ れ は, SH波 の 斜 め 入 射 に 対 し て も保 存 さ れ る 性 質 で あ る.し た

が つ てt多 重 反 射 状 態 に お い て,観 測 記 録 か ら 推 定 さ れ るR欝(・)は,±11 の近 傍 で ピー

Fig.8. All-polelatticerepresentation
of linearautoregressive
filtering.
 格 子 型 フ ィル タの地 震 観 測 へ の応 用 9

x(n) A
・ y《n)
・lz-h ・
Σ inverse filter
O
x㈹
噸
SP

x(n)
o

exp←Cd・h)

{ト ⇒Z-n

Fig.9. Block diagram of equivalent observation system which has two seismometers

installed both on the#ree ground and at the bottom of borehole. This diagram

is used tO model the earthquake response of multi・layer system for SH waves.

クを持 つ偶 関 数 とな る.入 射 角 が 斜 め に な る程,こ の ピー ク出現 時 ±/」 は よ り小 さ くな っ

て くる.RgY(・ 〉 の持 つ この性 質 は,水 平 多層 地 盤 のSH波 に対 す る伝 達 関数 を推 定 す るた め
に,記 録 中 で用 い るぺ き解 析 区 間 を決 定 す る の に用 い る こ とが 出来 る・
3.2伝 達 関 数
式(13)をz変 換 す る と,

￠(λ)一
ら副 禽 ∂ヂガ畝・閃≦π (・5)
な る 伝 達 関 数 が 得 られ る.た だ し,0ユ(λ)の 入 力 は ￡(n)の2変 …換
で あ りt出 力 は ρ(π)のz

変 換 で あ る.本 節 で は,SH波 に 対 す る 水 平 多 層 地 盤 の 伝 達 関 数Gユ(λ)の 性 質 につ い て示 す・

0、(λ)の 増 幅 度 特 性 の 中 で,卓 越 振 動 の 特 性(卓 越 振 動 数 と 一3dB帯 域 幅 の 組 合 せ)は ・式

(15)の 分 母 の 複 素 共 役 根 で 与 え ら れ る.ま た,地 盤 に お け る 減 衰 を 含 む0・(λ)の 増 幅 度 特 性 の

評 価 は,周 波 数 パ ラ メ ー タ λ の 変 換 に よ り行 わ れ る !'!'and MINAI(1969)L

O、(λ)の 群 遅 延 時 間 特 性'ρ α)は,式(15)を0・(λ)=IG・(λ)卜exp【 一ガ

θ・α)]で 記 述 す れ ぽ ・
to(2)=∠T・del(2)/4λ

一b・ Pn=1 /毒 。
亀・司 ・
∠T (・6)
と な る.但 し,R詣 】は 臼 の 実 部 とす る.0般 に,線 形 系 で は 群 遅 延 時 間 の 加 法 性 が 成 り立
つ た め,{￡(%)}と{ρ(π)}の 群 遅 延 時 間 特 性 を,各 々,∫ 全G)・'ρ(2>と す れ ば ・

∫ρ(λ)='金(λ)十
ψ9(λ)

と な る.群 遅 延 時 間 特 性 は,地 震 波 主 要 部 の 継 続 時 間(エ ソベ ロ ー プ の 時 間 幅)を 近似表現す

る[IZUMi etα 乙(1980)1た め,'伊(2)は,地 盤 に よ る 地 震 波 の 継 続 時 間 の変 調 特 性 を 示 す ・ 式

(16)で 言 え ば,右 辺 第1項 は 地 震 波 の 地 盤 に お け る 伝 播 時 間 で あ る か ら・ 右 辺 第2項 が継続

時 間 の 変 調 効 果 を 示 す.但 し,0、(2)の 分 母 は 最 小 位 相 推 移 で あ る た め ・tQ(λ)の 閃 ≦π に お

 10 木 下 繁 夫

翼lo縣2

14

甲2
xlo
12 FCH
(
。"
Eε

_ T零35s
欝ε
V
v
CO櫓↑0■O﹂﹂O O 毒輪⑭O﹂ハ

ζO禰↑O 轍O﹂﹂OO l切切O﹂n

a
)

)
一14 一12
-14 a 14 -14 0 14
Time ts} Time ts}

Fig.10. Estimatedαoss-correlation血nction of the data obtained both at the bottom

of deep borehole and on the free ground in the same site.、 Observatio黛sites

are(a)Shimohsa and{b)Fuchu. The data obtained during the Ctff rbaraki

Pref. Earthquake of July 23,1982(ルf=7.0)are used.

100 100

,O
◎O

t7

Cokulated {8i=45°,4=5pf}

0.1
0.り
1 1。 。
さ.1 璽 1◎
Period(s) Period(s}

Fig. 11.Dotted line is amplitude ratio of the free ,ground to the bottom of deep
borehole
at the same site・Observati・n sites are(a)Shim・hsa and(b)Fuchu.Th
e results are obtained by using the data during the Off Ibaraki Pref
.
Earthquake of July 23,1982(1V .f=7.0). Solid line is the equivalent gain func-
tian of observational model with Q=50f shown in Fig .9. The input sequence

of the model is￡(n)and the output sequence is夕(n).

 格 子型 フ ィル タの地 震 観測 へ の応 用 11

け る 平 均 値 はb・Olと な る.式(16)の 右 辺 第2項 は, Cepstrum解 析 に お い て しぽ し ぽ 現

わ れ る 表 現 式 で あ り,群 遅 延 時 間 の 解 析 にCepstrumが 用 い ら れ る こ とを 裏 付 け て い る.

3.3 案 記 録 へ の応 用 と考 察

国 立 防 災 科 学 技 術 セ ン タwの 下 総 及 び 府 中 地 殻 活 動 観 測 施 設 に お け る地 震 観 測 記 録 にs前2
節 で 述 べ たSH波 の 伝 達 関 数 モ デ ル を 適 用 し た 結 果 を 示 す.用 い た 記 録 は,い ず れ の観 測 点

に お い て も,1982年7月23日 の 茨 城 県 沖 地 震(マ グ ニ チ ュ ー ド7.a)で 得 られ た 地 表 と深

層 井 と の 同 時 記 録 で あ る.深 層 井 深 度 は,下 総 で2,330m,府 中 で2,750mで あ り,先 第 三

紀 基 盤 面 か ら各 々830m及 び730mの 深 さ で あ る.記 録 は 加 速 度 計 に よ る も の で あ り,換

i振器 を 含 む 記 録 系 の 利 得 特 性 は0.1∼10秒 で 平 坦 で あ る.

Fig.10は,地 表 と深 層 井 で の 記 録 の 相 互 相 関 関 数 の 推 定 結 果 の 例 で あ る.図 中(a)は 下 総,

(b)は 府 中 で の 結 果 を 示 し て い る.図 中 に 示 し た 例 は,記 録 中 で 推 定 区 間 を 変 化 さ せ な が ら,
3.1で 述 べ たSH波 の 多 重 反 射 状 態 を 良 く示 して い る と思 わ れ る も の を 選 ん だ も の で あ る.推

定 区 間 長 は ・、
下 総 で30秒 ・ 府 中 で35秒 で あ る ・ 下 総 及 び 府 中 に お い て,垂 直 入 射 す るS波
の か4Tは,各 々,2.4秒 及 び2.6秒 で あ る. Fig.10に お け る 相 互 相 関 関 数 の 第1ピ ー ク

は,い ず れ も 上 記 の か ∠Tよ り小 さ い 時 間 に 出 現 し て お り,斜 め 入 射 波 に 対 す る もの で あ る.

Fig.11は, Fig.10の 相 互 相 関 関 数 を 求 め た 推 定 区 間 に お け る 観 測 波Qろ ・

ドノ ♪ ル 比(点
線)と3.2で 述 べ たIG、(λ)1の 計 算 結 果 と を 示 した も の で あ る.図 中 の(a)は 下 総(b)は 府

中 の 場 合 を 各 々 示 し て い る.0、(2)の 計 算 に 必 要 な 検 層 デ ー タ は,下 総 の 場 合 はYAMAMIZU

et al.(1983),府 中 の 場 合 は 山 水 ・他(1981)の 結 果 を 用 い て い る. Fig。11の 【
〇三(λ)iは,こ

れ らの 検 層 デ ー タ に,基 盤 で の 入 射 角 θ乞=45。 と堆 積 層 全 体 で の 減 衰 特 性Q=5()fを 用 い て計

算 し た も の で あ る.Fig.11の 結 果 は,用 い た 記 録 区 間 で は,堆 積 層 に お い て基 盤 か ら斜 め入

射 し たSH波 の 多 重 反 射 が 強 く現 わ れ て い る 状 態 で あ る こ と を 示 し て い る.

本 節 で 用 い たQ=5()fの 減 衰 特 牲 は,深 層井 記 録 に現 われ る直 達 波 とそ の地 表 か らの反 射波

と の ス ペ ク トル 比 か ら も ノ=0.5∼5Hzに お い て推 定 され て い る 【
木 下(1983>1・ こ の周 波数

に 比 例 す る 形 のQは,Fig.9に 示 し たG、(λ)の 構 成 に お い て, Q=ψTアGと した と き

ガ ・・=exp(一 ∫
λ)をexp(-C￠)・exp(一 ∫
λ)=exp(-C母)・ ガ 三 に 置i換す る こ と に よつ て 導 入 さ れ る ・

従 つ て,Fig.9に 示 し た 地 盤 の 等 価 応 答 表 現 で は,遅 延 要 素 の後 に乗 算 器 を 加 え る こ とに よ
つ て 周 波 数 比 例 形 のQが 入 れ られ る.こ れ は,Fig・9の 下 段 に示 して あ る・

§4.積 分 器 へ の 応 用
格 子 型逆 フ ィル タの実 用 例 として,地 中埋 設 され た 加速 度 計 の 出 力 を速 度 出 力 に変 換 す る た
め に 製 作 した 積 分 器 に つ い て述 べ る・ 積分 器 は,LA肌ACE変 数3を 用 いて 次 式 で表 わ され る
2次 系 と した.
1(s)・=s/(s2十2h。[11p$十
ω。2) (17)

こ の2次 系 に対 応 す る9変 換 式 は,z-form【JuRY(1964)】 を 用 いれ ば次 式 とな る・

ka(1-9-2)
, .. (18)
三(1十k2)z-1十k22_2

但 し,
 12 木 下 繁 夫

(19)

で あ り,4丁
ll灘雑鷺識2M_}
秒 は 標 本 化 時 間 で あ る.式(18)がFig.12の フ ィ ル タ で 実 現 さ れ る こ と は,図

中 の 入 出 力 関 係 が,

⑳@)十 々1(1十々2)."(π一1)十k$・v(π 一2)....=k。

・(α(n)一α(%-2))
と な る こ とか ら理 解 さ れ る.Fig.12に お け る 点 線 右 側 の 格 子 構 造 が 式(18)分 母 の 積分 特 性

a(n) l v(ハ
・ 癖
1ゆ Σ イg Ψ 顧

ゆ
鴫

'
一1
1 k2 ・ k1

ko 1
1

『z遭 、 r -k2 .一 一
一 一k1
藝

・
・;(参 ・ 一lZ
・ 〈参 ・ 備lZド噂

Fig.12. Represehtation of digital integrat◎r with lattice structure .

麗OO

・t
i io
Freq紹e轟cy {Hz,

Fig.13. Gain characteristics of the digital integrator shown in Fig . la.

F じ のさ!/ セB4 ヨ きま ビ d9 さのヨき

よ:}L一 へくAへ一 一 一一∼一一

EY

lJ}一
∼-w- UO

1--
1.0
●一 繍 ,Ol緊c,

Fig.14. Velocity seismograms obtained at the Fuchs borehole of 504 m depth during
the Western Nagano Pref. Earthquake of Sep .14,1984(M=6.8).
 格 子 型 フ ィルタ の地 震 観 測 へ の応 用 13

を 持 ち,点 線 左 側 が 分 子 の 微 分 特 性 を 持 つ て い る.格 子 構 造 は 安 定 条 件 が 容 易 な こ と(lk三1<1,

1ゐ2k1)と 演 算 誤 差 が 他 の 構 成 よ り優 れ て い る 利 点 を 持 っ て い る[1VIARKEL and GRAY'(1975)】.

今 回 の 製 作 で は,」T=(a.oz秒, i .6321,ω 。=2π180と し て,16ピ ッ ト型 の マ イ ク ロ ・

プ ロセ ッサ ー(32ビ ッ ト演 算)で 格 子 構 造 を 構 成 し た .OTの 制 限 は,16成 分 の 演 算 を1個
の プRセ ッサ ー で 処 理 す る た め に 生 じ て い る.Fig.13は 積 分 器 利 得 の 実 測 特 性 で あ る.ま たf

Fig・14に 観 測 例 を 示 す.こ の 例 は,長 野 県 西 部 地 震(1984年9月14日,マ グ ニ ュ ー ド

6.8)に お い て,府 中 地 殻 活 動 観 測 施 設 内 の 深 度500mに 設 置 され た加 速 度 計 に接 続 され た 積

分 器 出 力 を そ の ま ま デ ィ ジ タ ル 収 録 した も の で あ る.

§5.お わ りに
地 盤 振 動 調 査 を 目的 とす る地 震観 測 に伴 うい くつか の課 題 に対 して,最 近 急 速 に発 展 した格
子 型 フ ィル タ の応 用 を試 み た.本 稿 で扱 った 格 子型 フ ィル タは 予測 誤 差 フ ィル タ と逆 フ ィル タ
の 基 本 形 で あ り,以 下 の3課 題 へ 応 用 して,次 の よ うな結 果 を 得 た.
(1)予 測誤 差 フ ィル タ を複 素 領 域 へ拡 張 し,周 波数 一波 数 ス ペ ク トルを 推定 す る方 法 を示
した.こ の 方 法 を,山 梨 県一神 奈 川 県 境 の地 震(1983年8月8日,マ グ ニチ ュー ド6,0)に お
け る東 京 西 部 地 域6地 点 で の観 測 記 録 に用 い て,S波transverse成 分 の見 掛 け速 度 を推定
した.得 られ た 見 掛 け 速 度 は,こ の地 域 にお け る深 層 井 府 中 で の速 度 検 層結 果か ら仮定 され る
水 平 多 層 地 盤 のLove波 基本 モ ー ドの持 つ 位 相速 度 と比 較 して,5秒 ∼8秒 の 周期 範 囲 で 類
似 した傾 向 を示 す が,こ れ を 上 回 る もの となつ た.こ れ は,用 い た記 録 波 形 が この地 域 で東 側
へ 傾 斜 して い る基 盤 面 で全 反 射 しな が ら堆 積 層 内 を 東側 へ伝 播 して い る状 態 の もの であ り,水
平 多 層地 盤 に お け るLOVE波 とは 異 な るた め で あ る.
(2)逆 フ ィル タの持 っ1入 力2出 力特 性 を基 盤 か ら斜 め 入射 す るSH波 に対 す る水平 多
層 地 盤 の 応 答特 性 と等価 特 性 を持 つ 地 盤 フ ィル タ の構 成 法 を示 した.深 層 井 に お け る速 度 検 層
結 果 に基 づ い て 構成 され る この地 盤 フ ィル タは,Q=5('Jの 減 衰 特 性 を入 れ る こ とに よ り,深
層井 観 測 点 にお け る堆 積 層 のSH波 に対 す る応 答特 性 を近 似 す る ことが 出来 る・
(3)逆 フ ィル タの 実 用 例 と して,格 子 構 造 を持 つ 安 定 な デ ィジ タ ル積分 器 の構成 法 を示 し
た.実 際 に製 作 され た 積 分 器 を,府 中地 殻 活 動 観 測 施設 内の 地 中500mに 埋 設 した 加速 度 計
に直 接 接 続 して観 測 した とこ ろ,1984年 長 野 県 西 部地 震 にお い て 良好 な地 中速 度 記 録 を 得 る こ
とが 出来 た.

謝 辞
積 分 器 の製 作 と地 震観 測 に 当 り,明 石 製 作所(株)の 上 原正 義 氏 ・ 古屋 和 男氏 及 び 斗沢 敏 雄 氏
に お世 話 に なつ た.記 して,感 謝 の意 を表 し ます ・

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