You are on page 1of 10

土 木 学 会 論 文 集No. 493/III-27, pp. 39-48, 1994.

部分応 力解放法 による等方性または異方性


岩盤 の三次 元初期応力測定理論

菊 地 慎 二*・ 山 下 幸 夫**・ 平 島 健 一***・


川 本 月兆万****

本論文 は, 近接 する2個 のボアホール の応力干渉 を利用 した等方性また は直交異方性


弾性岩盤 内の初期応 力測定理論 に関 するもので, 一般的 な三次元地圧下の6個 の初期応
力成 分のうち, ボアホール軸 に直交す る面 内の3成 分 および面外の2成 分 を一回の測定
で決定 する方 法について論 じたもの である. さらに, ボアホ ール孔壁での感度係数 に関
する高精 度の解析解 を示 すと同時 に, これ らを用 いた具体的 な初期応力の算定方法 を提
不 した.
Key Words: 3 dimensional rock stresses. theoretical analysis. two neighboring
boreholes. partial stress relief technkiue. isotropic or anisotropic

アホ ー ル が小 さ くて も適 用 で き, しか も測 定 孔 と(部 分)
1. 緒 言
解 放孔 が分 離 して い る た め, 計 測 装 置 に水 分, 温 度 等 の
岩 盤 内 の 初 期 応 力(初 期 地 圧)は 地 下 構 造 物 の安 定 に 撹 乱 が 比較 的 少 な い と い っ た メ リ ッ トが あ る.
重 大 な影 響 を及 ぼ す 主 要 因 の 一 つ で あ り, そ の値 お よ び 上 述 の 論 文8)で は, 応 力 解 放 に よっ て 測 定 孔 の孔 壁 に
作 用 方 向 を正 確 に 把 握 す る こ と は, 地 下構 造 物 の経 済 的 生 じる応 力算 定 の た め の関 係 式 を 誘 導 し, 光 弾 性 実 験 に
か つ 安 全 な設 計 ・施 工 の ため に極 め て 重 要 で あ る. そ の よ り式 中 に現 わ れ る応 力 係 数 を求 め, 岩 盤 内 の 初 期 応 力
ため 初 期 応 力 を測 定 す る方 法 は現 在 ま で に も数 多 く提 案 を算 定 す る手 法 につ い て論 じて い る. さ ら に, 石 膏 ブ ロ ッ
され て お り, い わ ゆ る応 力解 放法1), 2)をはじめとして, クを用 い た室 内実 験 お よ び ダ ムサ イ トの 試 験 坑 道 で の 現
応 力 再 現(補 償)法(FlatJack法, ス リ ッ ト法)3), 水 位 置 試 験 を実 施 して, この 手 法 の 妥 当 性 を検 証 して い る.
圧 破 砕 法4), AE法5)および変形率変化法6)などが実際の 一 方, 上 記 の 系 列 に属 す る も の と して, 富 永 ・木 下9)

建 設 プ ロ ジ ェ ク ト等 の 現 位 置 に お い て適 用 さ れ て い る. は上 述 の 論 文8)を受 け て, 2円 孔 を含 む 多 円孔 の 応 力 干
上 記 の 測 定 法 の うち 応 力 解 放 法 は, 測 定 地 点 に小 口 径 渉 を利 用 した初 期 応 力 測 定 法 を発 表 した. 岩 盤 を等 方 性
の ボ アホ ー ル を削 孔 し, そ の 内 部 に ひ ず み ゲ ー ジ ま た は 弾 性 体 と仮 定 して, 理 論 的 に応 力 係 数 を解 析 した も の で,
変 位 計 を設置 した あ と, 同心 円状 に オ ーバ ー コ ア リ ン グ 測 定 孔 の周 辺 に3個 の 解 放 孔 を開 削 す る こと に よ り, 壁
を行 い作 用応 力 を解 放 して, そ の と き の ひず み(ま た は 面 上 の1点 の ひず み 計測 に よ りボ ア ホ ー ル軸 に 直交 した
変 位)の 変 化量 か ら初 期 応 力 を算 定 しよ う とす る もの で 面 内 の初 期 応 力3成 分 を決定 で き る こと, お よ び 円孔 を
あ る. 応 力再 現 法 と並 ん で比 較 的古 くか ら採 用 され て お 増 加 す る代 わ りに1つ の 円孔 を順 次拡 大 して も同 様 の 目
り, 実 施 例 も多 く, 初 期 応 力 の測 定 法 と して は信 頼性 の 的 が 達 せ られ る こ とな ど が論 じ られ て い る.
高 い 方 法 で あ る と言 え よ う7). ただ, 通常の場合, 大口 本 論 文 は, 近 接 す る2円 孔 の応 力 干 渉 を利 用 し た初 期
径 の オ ーバ ー コ ア リ ング を必 要 とす る ため, 工 費 の面 で 応 力 の 測 定 理論 に 関 す る も の で, 先 の 著 者 らの 一 人 の 方
や や割 高 に な る点 は否 定 で き な い. 法 と原 理 的 に は 同 じ もの で あ る. た だ前 述 の 論文 が光 弾
これ に 対 して著 者 らの う ち の一 人(川 本)8)は,既 設 の 性 実 験 に よ り等 方 性 弾 性 体 の 応 力 係 数 を求 め て い た の に
ボ ア ホ ー ル を測 定 側 に して, こ れ に隣 接 す る第 二 の ボ ア 対 して, ここ で は3次 元 初 期 地 圧 下 で の等 方 性 な らび に
ホ ー ル を 開 削 す る こと に よ り部 分 的 に応 力 解 放 を行 う方 異 方性 弾 性 地 山 の場 合 に も適 用 拡 張 を 図 る た め に, 複 素
法 を提 案 した. こ の方 法 は近 接 した2円 孔 の相 互 干 渉 に 関数 論 に よる 弾 性 厳 密 解 を用 い た, 2円 孔 の 感 度 係 数 に
よる弾 性 的 な応 力集 中 を利 用 す る もの で, 一種 の応 力 再 関 す る高 精 度 の解 析 解 を提 示 す る. 本 手 法 に よ:ると, 一
分 布 法 あ る い は部 分 応 力解 放 法 と呼 べ る もの で あ る. ボ 般 的 な3次 元 初 期 応 力 の6個 の 成分 の う ち, ボ アホ ール
軸 に 直交 した面 内 の3成 分(σ τ,
∞ σ87,τ∞r7)およ び面 外 の
↑本 論 文 の 一 部 は, 第25回(1993年)岩 盤 力学 に関す るシ 2成 分(τ ∞rZ,
τ872)を1回 の 測 定 で 決 定 す る こ とが 可 能
ンポ ジ ウム に お い て 発表
*正 会 員 日本 国 土 開 発(株)技 術 開 発 部 土 木 設 計課 で あ る. 軸 方 向 の面 外 直 応 力 成 分(σ82)に つ い て は,
(〒243-03神 奈 川 県 愛 甲郡 愛 川 町 中津4036-1) 例 え ばFlatJack法 を併 用 す るか, 本手 法 を異 な る2方
**正 会 員(株)大 林 組 技 術研 究 所 土 木 第 四 研 究 室
***正 会 員 工 博 山梨 大 学 教 授 工学 部 土 木 環 境 工 学 科 向 に対 して適 用 す る こと に よっ て決 定 す る こ とが 可 能 で
****正 会 員 工 博 愛 知 工 業 大 学 教 授 工学 部 土 木 工 学 科 あ る.

39
部分応力解放法 による等方性 または異方性岩盤 の三次元初期応 力測定理論/菊 地 ・山下 ・平 島 ・川本

2. 異 方 性 弾性 体 内の 双 設 ボ ア ホ ール 問 題 に対

す る解

(1)1個 の ボ ア ホ ール が存 在 す る場 合 の 厳 密 解
異 方 性 弾 性 体 内 に平 行 す る2個 の ボ ア ホ ー ル が存 在 す
る問題 の解 と して, 選 点 法 を用 い て1個 の ボ ア ホ ー ルが

存 在 す る場 合 の厳 密 解10),11)より誘導する.
い ま, Fig. 1に 示 す よ う に, 解 析 対 象 モ デ ル と して,
ボ ア ホ ー ル径 に比 して十 分 遠 方 で の 一 様 な面 内 応 力 げ,

げ, τ8x7,(ま た は 面 内 主 応 力 σ81,σ82)お よ び 面 外 せ ん
断 応 力 τ∞rz,
τ87zが
作 用 す る, 2個 の 円 孔 Σ1, Σ2を 有 す
る3次 元 異 方 性 弾 性 体 を考 え る. 円 孔 が Σ1だ け の場 合,
す な わ ち1個 の 円孔 しか存 在 しな い場 合 に は, 物 理 平 面

内 の任 意 位 置 に お け る応 力 お よ び変 位 は, 直交 デ カル ト
Fig. 1 Geometry of anisotropic elastic rock containing two holes
座標 系(m, 7, z)に 対 して, 3つ の 複 素 応 力 関 数 φκ(2κ), with optional radius under applied in-plane and out-of
(ん=1, 2, 3)を 用 い て, そ れ ぞ れ 次 式 の よ うに 与 え ら plane initial stresses.

れ る12).
aa+2Re[iigi(zi)+iZ5(z2)] +1/2(2ai2+a66)cos2asin2a
aa+2Re[ci(zi)+z(22)], a26={as2cos2a-ailsin2a
z=zx-2Re[iici(zi)+,uz52(z3)] -1/2(2ai2+a66)cos2asin2a
Zxz-z+2Re[u3g3(z3)] a44-a44cos2a+a55sln2a
(1)
zzZ-2Re[c3(z3)] a55=a44sln2a+a55cos2a
u=ux+2Re[pq5i(z)+p2q52(z2)]
a45-(a44a55)cosasina
v=u+2Re[q1q51(zl)+g2q52(z2)]
(3)
w-w+2Re[{a45a44/i3}53(z3)]
こ こ で, α はFig. 1に 示 す よ うに 弾 性 主 軸.E1とx軸
こ こ に, %, θ,ω は, そ れ ぞ れm, σお よ び2方 向 の変
の な す 角 を表 わ す. ま た, 弾性 コ ン プ ラ イ ア ンス61jは
位 を, ま た, ug, u07,w0は ボ アホ ー ル の な い状 態 で の そ
次 の よ う に表 わ され る
れ ぞ れ の座 標 方 向 の初 期 変 位 を表 す.
ail=1/Ela21/E2
ま た, 応 力 と ひ ず み の関 係 は次 式 とな る.
ai2=-v1z/E1=-v21/E2ais=aas=0 (4)
x=allox+a126v+a1szxy
=al2Qx+a22o +a26zxy a44-1/G23a55-1/G13a61/G12
こ こ に, Ef, Ojjお よ びvfj(j,j=12,3)は, それぞ
rxy=a16ox+a26ay+a66zxy
ryz=a44Zyz+a45Txz れ 弾 性 係 数, せ ん 断弾 性 係 数 お よ び ボ ア ソ ン比 で ある.
(2) な お, 問題 を平 面 ひ ず み状 態 と して取 り扱 う場 合 に は,
rxz=a45Zyz+a55Zxz
EY=exCOS2B+Eysin2B+yxysinOCOSe 弾 性 コ ン プ ラ イ ア ンス6jjの 代 わ り に, 次 式 で定 義 さ れ

EB=sxsin2B+SyCOS28-rxySf0coSB る βjjを用 いれ ば よ い.

18z=-rxzSIl8+ryzCOSB jSij-aij- (at3a13Ia33), (i,j-1,2 6) (5)


こ こ に, z軸 は ボ ア ホ ー ル 軸 方 向 に と り, θは 円 孔 Σ1 式(1)に 含 ま れ る複 素 係 数 μκ,(h=1, 2, 3)お よ
の壁 面 に沿 っ てm軸 の正 方 向 よ り反 時 計 回 り に計 っ た び こ れ らと共 役 な複 素 係 数 魚, (h=1, 2, 3)は, 異方性

角 度 で あ る. ま たa11, a12, …, 666は 弾 性 コ ン プ ラ イ ア 弾 性 体 に対 す る次式(6)の 特 性 方 程 式 の複 素 根 と して,


ンス で あ り, 直交 異 方 性 弾 性 体 の 場 合 の 平 面応 力状 態 に ま た 係 数 ρκ,4κ,(κ=1, 2)は 式(7)に よ り, そ れ ぞ

対 して 次式 の よ う な座 標 変 換 関 係 が 成 立 す る. れ求 め られ る.

a11=ailcos4a+(2ai2+a66)sin2acos2a+a22sin4a a114-2a16+(2a12+a66)4
a22=ailsin4ca+(2ai2+as6)sin2acos2a+a22cos4a -2azsk+a22=O(k=12) (6)
a12=ai2+(ail+a22-2ai2-a1)sin2acos2a a55ulk-2a4511k+a44-O(k=3)
a66=ash+4(a11+a22-2ai2-a66)sm2acoS2a
Pk-allfJk+a12 al6fJk,
a16=a22sin2a-ailcos2a (7)
qk=al2, lk+a22I ulk a26.

40
土 木 学 会 論 文 集No. 493/III27, pp. 39∼48, 1994. 6

最終 的 に, 式(1)に お いて 用 い られ る複 素 応 力 関 数
φ左(2k)お よ び, こ の複 素 応 力 関 数 をzκで1回 微 分 した
姦(zの は, 円 孔 Σ1の 境 界 と そ の 外 部 領 域 に対 す る 式
と して 具 体 的 に次 式 で 与 え られ る.

(a) (b)

Fig. 2 Locations of two holes and coordinate systems.

fig) の関 係 が 存 在 す る ゆえ, これ か ら ζんと ζkの関係 と して

a{(1-iik)k+(1+i1tk)k1}-a{(12fLk)tk

+(1+2/1kk-1)}+2(SO+ikhO)-0 (13)
が 得 られ る. 上 式 は ζκ-平 面 お よ び ζk一平 面上 で の 円

孔 Σ1と Σ2と の 相 互 の位 置 関係 を示 す もの で あ る.
し た が っ て, [1]Fig. 2(a)に 示 す よ う に 円 孔 Σ1
a1=(a/2)(-a+i) だ け が 開 削 され た状 態 に対 し て, 上 式 の ζkに Σ2の 仮

j91=(a/2)(zx-iax) 想 境 界 位 置 を表 す8fθ'を代入 して この2次 方 程 式 を解 け


ば, Σ1の 座 標 系 を基 準 と した Σ2の 位 置 ζん(=ρκ8jθ
κ)
Y1=(a/2)(z-iv)
が 決 定 で き る. この ζんを用 い て式(9), 式(8)お よ
zk=x+ky
(9) び式(1)か ら応 力成 分 σ, σ6,τ7, τ。,τ7zを求 め, さ
=(alt){(1-i,ik)(k+(1+i,uk)k1}
ら に 座 標 変 換 に よ り極 座 標 系 で の 応 力 成 分 σ, τθ,τz
k-[zk+{zka2(1+uk)}1/21/a(1-iak) を求 め れ ば, これ ら はFig. 2(a)の 破 線(Σ2の 仮想
Ik=dzk/dbk 境 界)上 に お け る応 力 を表 した こ とに な る. [H]上 記[1]

=(a/2){(1iflk)-(1+if1k)k2} で 求 ま っ た応 力 成 分 に, Σ2の 孔 の境 界 で の 半 径 方 向 直
応 力 σ=0, せ ん 断応 力 τθ=τ2=0を 満 たすように重ね
こ こに, 6は 円孔 Σ1の 半 径 で あ る.
合 わ せ を行 っ て新 た に複 素 応 力 関 数 φk2ρ を 求 め れ ば,
(2)双 設 ボ ア ホ-ル 問題 に対 す る解
上 記 と同 様 の手 順 に よ り, Fig. 2(b)の 状 態の任意点
前述 の よ うな状 態 で, これ に 隣接 して平 行 す る第2の
で の応 力, 変 位 お よ び ひず み が 決定 で き る.
ボ アホ ー ル Σ2(半 径a)が 開 削 さ れ る場 合 の 応 力, ひ
た だ し, 上 述 の[1], [n]の 結 果 を重 ね合 わ せ れ ば,
ず み お よび 変位 の 計算 は, 以 下 の よ う な演 算 を行 う こ と
円 孔 Σ2の 境 界 上 で の 境 界 条 件 は満 足 され る が, Σ1の
に よ って 求 め る こ とが で きる.
境 界 に お け る 自 由 境 界 条 件 は損 な わ れ る. そ こ で 再 び
い ま, 円 孔 Σ1の 場 合 と同 様 に, 新 し く開 削 す る円 孔
Σ1の 境 界 に お け る 自 由境 界 条 件 を満 足 させ る よ う に,
Σ2に 対 してFig. 1に 示 す よ うな 直交 座 標 系(x, 7z, 2z)
上 述[H]の 操 作 をFig. 2(a)の 状 態 の もの に 適 用 す
を と る もの とす れ ば, 両 者 の座 標 系 間 に は次 の関 係 が 成
る. 以 下, 同 様 の 操作 を順 次 お の おの の 円孔 周 縁 で の 応
立 す る.
力 値 σr,τθ,τ2が 作 用 荷 重 に対 して 十 分 に小 さ く な る
z=x+ay=y+ho (10)
ま で繰 り返 して 計算 し, そ れ ぞ れの 段 階 で 得 られ た値 を
こ こ に, s0お よ びh0は そ れ ぞ れ2個 の円孔中心 間の
重 ね 合 わせ れ ば, 求 め る べ き双 設 ボア ホ ール の 応 力, 変
水 平 お よ び鉛 直 距 離 で あ る.
位 お よ び ひず み分 布 が得 られ る. 通 常 は, 上 記[1], [II]
こ こで 座 標 系(x, 7, z)内 の 円孔 Σ2を もつ 単 連 結
の操 作 を4∼6回 繰 り返 し計 算 を実 行 す れ ば, 高 精 度 の
領 域 に対 して も, 式(9)と 同 様 に複 素 平 面zk(=x+
解 を得 る こ とが で き る.
μκy)を 考 え, こ れ を ζK一平 面(ζk=ρk8jθ)の 単位 円
著 者 らの計 算 で は, 例 え ば境 界 上 で の 選 点 数 をjθ=
と その 外 部 に写 像 す れ ば次 式 が 成立 す る.
2.5す な わ ち144点 と し, 以 下 に 示 す式(14)の 級数
zk=(a/2){(1-i(Ik)k+(1+2fJk)k11 (11)
式 の 項 数 初 を25ま で 採 用 して繰 り返 し回 数 を6回 行 っ
と こ ろ で, 上 式 の2差 と 式(9)のgκ と の 間 に は, 式
た も の は, 面 内 ・面 外 荷 重 の両 方 の 場 合 と も に, Had-
(10)よ り donの 解 析 結 果14)および双極座標系を用いた解などの他
Zk-zk+(S0+tkho) (12) の 厳 密 解 と比 較 して, ほ ぼ0. 5%程 度 以 内 の精 度 が得 ら

41
部分応 力解放法 による等方性 または異 方性岩 盤の三 次元初期応力測定理論/菊 地 ・山下 ・平 島 ・川本

(Reliefhole) (Measurementhole)

(a) Case of applied stress C =1. 0


Fig. 3 Analytical model for problems of two neighboring
boreholes.

れ る こ とが 検 証 され て い る15)・16).
な お, 前 述 の[II]の 計 算 で 用 い られ る複 素応 力 関数

φkzk)は, 次 式 に示 す よ うな 級 数 形 で 与 え られ る も の
で あ る.

1121U1kmbkm(k12)
(14)
yakzk-rkmk-m(k=3)
こ こ に, 複 素 係 数 πkmは 式(8)の 第1∼3項 に示 す

複 素 応 力 関 数 の 分 子 と 類 似 の 形(j.8.μ2a-β, -μ1a+
(b) Case of applied stress o y =1. 0
β,f1)で あ り, こ の α1,β1,f1の 代 わ りに, 孔 の 境 界 に作
用 す る 応 力 を 境 界 に 沿 っ て 線 積 分 して 得 ら れ るam,
βm,fmを そ れ ぞ れ代 入 す る こと に よ っ て求 め られ る15).

3. 双 設 ボ アホ ール 問 題 の 数 値 解 析

前 章 で述 べ た解 析 理 論 を双 設 ボ アホ ー ル 問題 に適 用 し
て求 め た具 体 的 な数 値 解 析 例 を以 下 に示 す. 解 析 モデ ル
は, Fig. 3に 示 す よ う に半 径6の 円孔 Σ1を 測 定 側 に し
て, これ に 隣 接 して 半 径aの 円 孔 Σ2が 開 削 さ れ る 場

合 を考 え る. 座 標 系 と して2円 孔 の 中 心 を結 ぶ 方 向 にx
軸 を と り(i. e. h=0), 中心 間 距 離sと 解放 孔 Σ2の 半
径 をパ ラ メ トリ ック に変 化 させ て 解析 す る. こ こで 岩 盤
(c) Case of applied stress z Y=1. 0
は2次 元 的 な 直 交 異 方 性 体 と し, 弾 性 係 数 の 比8(=
E1/E2)=2.0, 弾性 主 軸 の 方 向 α=0, ボ ア ソ ン比 り12= Fig. 4 Variations of circumferential strains (aeg) along the wall
surface of the borehole E1 under applied unit in-plane
0. 25を 仮 定 した. ま た解 析 は 平 面 ひ ず み 状 態 と し, さ stresses.
らに式(4)に 示 す 直 交 異 方性 体 の せ ん断 弾 性 係 数 と し
て, それ ぞれ 次 式 に よ り計 算 す る も の と した. 計 測 装 置 の変 化 量 を測 定 す れ ば よい. そ の た め壁 面 位 置
で の こ れ らの 変 化 量 の 理論 解 析 が必 要 と な る.
(15) Fig. 4は, 単 位 の面 内 荷 重qji=1.o(f,j=x, 7)が そ
E3=E1EZ=E1/evia=vizvz3=vize れ ぞ れ単 独 に作 用 した場 合 の, 測 定 孔 Σ1に お け る 孔壁
なお, 双設 ボ ア ホ ー ル を利 用 して初 期 応 力 を算 定 す る 周 方 向 の ひず み の 変 化 量(jε θ)を 示 し た もの で あ る.
場 合 に は, 測 定 孔 Σ1を 開 削 した の ち孔 壁 表 面 に ひ ず み 異 方 性 の 角 度 を α=OQと して い る こ とか ら, ここ で は対
ゲ ー ジ を貼 り付 ける か, あ る い は その 内 部 に 変位 計 を設 称 条 件 を考 慮 して, 孔壁 上 の0∼180の 範 囲 につ い て の
置 し, そ の 後 Σ2の ボ ア ホ ー ル 開 削 を行 っ て, Σ1側 の 結 果 だ け を表 示 して い る. な お ひず み の 変 化 量jεθは,

42
土 木 学 会 論 文 集No. 493/III27, pp. 39∼48, 一1994. 6

Fig. 5 Effects of principal direction of elastic modulus (a) on (a) Case of applied stress z =1. 0
circumferential strains along the wall surface of borehole E
1 under applied unit stress cr =1. 0.

(b) Case of applied stress r= 1.0

Fig. 7 Variations of shear strains (LlT) along the wall surface of


Fig. 6 Effects of elastic modulus ratio (e=E1/E2) on circum- borehole E under applied unit stresses.
ferential strains along the wall surface of borehole E1
under applied unit stress a=1. 0.
させ た場 合 の結 果 を Fig. 6に 示 して い る. 円孔 相 互 の 大

2円 孔 が と も に開 削 され た状 態 で の Σ1の 孔壁 周 方 向 の き さ, 位 置 関係 お よび作 用 外 力 はFig. 5と 同 様 と した.

ひ ず み か ら, Σ1が1孔 の み 開 削 さ れ た と きの そ れ を差 岩 盤 が 等 方 性 か ら よ り強 い異 方 性 を 呈 す る に した が っ
し引 い て 求 め た. 図 中 に は孔 壁 間 の純 離 隔 距 離s/6を て, Σ1孔 の 孔 壁 周 方 向 の ひ ず み は, 解 放 孔 に 近 い θ=
パ ラ メ ー タ に して, 解 放 孔 Σ2の 大 き さが そ れ ぞ れ 等 円 180位 置 と θ=120(お よ び θ=240)位 置 付近で大 き

の場 合(α=6)お よ び2倍 円 の 場 合(6=26)の ケー く変 動 して い る の が理 解 され る.


一 方, Fig. 7は 前 記 の Fig. 4と 同 じ解析 条 件 で, 単 位
ス を表 示 して い るが, これ らの 図 か ら も明 らか な よ う に,

解 放 孔 が 測 定 孔 に近 づ く ほ ど, ま た そ の 直径 が大 き く な の 面 外 せ ん 断応 力 τ∞z=1.0(f=x, y)が それぞれ単独 に

る ほ ど, ひず み の変 化 量 が 大 きな応 答 を示 して い る こ と 作 用 した場 合 の 孔軸 方 向 の ひず み の 変 化 量(jγ θ)を 求


が 分 か る. 現 位 置 にお いて 精 度 の高 い測 定 を行 う ため に め た もの で あ る. Fig. 4の 結 果 と 同様 で あ るが, 孔 壁 上

は, も ち ろ ん, 変 化 量 は大 きい こと が望 ま しい. の位 置 の違 い に よ って1発 生 す る ひ ず み に大 き な差 が 生

Fig. 5は, 異 方 性 の 角 度 αが 解 析 結 果 に 与 え る影 響 を じて い る こ とが 分 か る. した が っ て, 初 期 応 力 の 作 用 方

示 した もの で あ る. こ こで は, 孔 壁 間 の純 離 隔 距 離s= 向 と そ の大 き さお よび2円 孔 の中 心 線 の 方 向 との 相 対 的

6の 等 円孔(i8.61=6)にx軸 方 向 の 単 位 の 直応 力 α∞τ な関 係 に よ って は, ひ ず み ゲ ー ジの 貼 り付 け位 置 で 小 さ
=1.0が 作 用 す る場 合 につ い て, 前 記 と同 様 に Σ1の 孔 な ひず み しか 測 定 で き な い こ と も あ る た め注 意 が 必要 で

壁 周 方 向 の ひず み 変 化 量 を示 した. 異 方 性 の 角 度 の違 い あ る.
に よ って, 孔 壁 上 の θ=180位 置 付 近 で は, ひ ず み 変化 以 上 は孔壁 の ひ ず み変 化 量 につ い て の表 示 で あ る が,
量 に最 大 で2倍 程 度 の差 が生 じて い る こと が分 か る. 現 位 置 計 測 で は, ひ ず みの 代 わ りに 孔 壁 の 直径 変化 量 を
これ に対 して, 異 方 性 の 角 度 を α=0に 固定 して, 弾 直 接 測 定 す る方 が便 利 な場 合 もあ る. これ は計 器 の設 置
性 係 数 の 比 を8=1.0(等 方 性)か ら8=10.0ま で変 化 が 容 易 で あ り, 繰 り返 し使 用 に よる経 済 的 な計 測 作 業 が

43
部分応力解放法 による等方性 また は異方性岩盤の三次元初期応 力測定理論/菊 地 ・山下 ・平 島 ・川本

(a) Case of applied stress c1 1.0 (a) Case of applied stress rx =1. 0

(b) Case of applied stress c =1. 0 (b) Case of applied stress ryi =1. 0
Fig. 9 Variations of displacements of z-axis direction (dw) along
the wall surface of borehole E, under applied unit out-of
-plane shear stresses.

範 囲 に対 す る結 果 を表 示 して い る. 解 析 条 件 は い ず れ も,
ひ ず み解 析 の場 合 と同様 と した.

4. 測 定 ひ ず み ・変 位 か5の 初期 応力の計算方

今 まで に述 べ た数 値 解 析 結 果 は, 初 期 応 力 の 座 標軸 方
向 成 分 で あ る単位 の外 荷 重 応 力 が そ れ ぞ れ 単 独 に 作 用 し
た場 合 の, ボ ア ホ ー ル孔 壁 で の ひず み ま た は変 位 の 変 化

量 を与 え る もの で あ る. す な わ ち, 初 期 応 力 に 対 す る感
(c) Case of applied stress z Y=1. 0
度 係 数(ひ ず み係 数 あ る い は変位 係 数)を 堤 示 した こ と
Fig. 8 Variations of diameter (ad) on the borehole E1 under
applied unit stresses. に な る. これ らに よ り, ボ ア ホ ー ル 内 で ひ ず み ま た は変

位 の 変化 量 が測 定 され る と, これ らの解 析 結 果 を使 っ て,
可 能 に な る こ と も考 え ら れ る た め で あ る. そ こ で, 調査 地 点 の初 期 応 力(主 応 力)を 求 め る こ と が で き る.
Fig. 8に 面 内 荷 重 応 力 が 作 用 す る場 合 の 測 定 孔 Σ1の 直 こ こ で は, ボ ア ホ ー ル 孔 壁 の周 方 向 の ひ ず み 測 定 値 ε
θ

径 変 化 量jdを, ま たFig. 9に は 面 外 せ ん 断 荷 重 応 力 が お よび 後 述 す る 孔 軸 方 向 の 面 外 せ ん断 ひ ず み γ
θzを用 い

作 用 す る場 合 の軸 方 向 変位 の 変化 量jwを 示 し た. これ て, 面 内 お よ び面 外 の初 期 応 力 成 分 を算 定 す る方 法 に つ

ら は い ず れ も測 定 側 ボ ア ホ ー ル の 直 径(26)で 除 して い て以 下 に提 示 す る. 面 内 あ る い は面 外 の 変 位 の 測定 値

無 次 元 化 して い る. ま た面 内 荷重 応 力 が作 用 す る場 合 の を用 い る場 合 も, こ れ と同 様 の 操作 を行 え ば よ い.

直径 変 化 量(Fig. 8)に つ い て は, m軸 に 対 す る対 称 性 い ま, 任 意 の 半 径6を 有 す るボ アホ ー ル Σ1を 測 定 側

あ る い は 逆 対 称 性 が あ る こ とか ら, x軸 か ら0∼gooの に して, これ に隣接 して純 離 隔距 離s=α を保 って 新 た

44
土 木 学 会 論 文 集No. 493/III27, pp. 39∼48, 1994. 6

に同 口径 の ボ ア ホ ー ル Σ2が 開 削 され る 場 合 を考 え る.

岩 盤 を異 方 性 体 と し, 弾 性 係 数 の 比8=2. 0, 異 方 性 の
角 度 α=0お よ び ボ ア ソ ン比V12=0. 25が 仮 定 で き る 場
合 に は, 先 のFlig.4お よ び:Fig. 7の 結 果 が そ の ま ま利 用
で き る.
Fig. 10(aう ∼(c)は 面 内 荷 重 応 力 に 対 す る:Fig. 4
の 結 果 を も とに, 孔 壁 周 方 向 の ひず み変 化 量 に 対 す る任

意 の 孔 壁 位 置 で の 感 度 係 数 を示 した もの で あ る. い ず れ
も計 測 位 置 の 岩 盤 物 性 に 対 応 した 感 度 係 数 を与 え て い
る. ま たFig. 10(d)は 上 述 の(a)∼(c)の 結果を
重 ね 合 わ せ た もの で あ る. 現 位 置 の 岩 盤 に作 用 して い る
初 期 応 力 は, 座 標軸 方 向 の 各 応 力 成 分 が 組 み 合 わ さ っ た
もの で あ り, ボ アホ ー ル 内 で の測 定 値 は当 然, Fig.
: 10(d)
め 結 果 と対 応 す る こ と に な る.
い ま現 位 置 計 測 に よ り, 孔 壁 上 の1点 で周 方 向 の ひ ず

み変化量 ε
θ1が得 られ た とす る と, 計 測 ひず み と面 内 初
期 応 力 成 分 との 関 係 は:Fig. 10を 用 い て 次式 の よ うに 表
不 され る.
EBl= E Bl(a) + X81(6)+ SB1(c)

(a1a +b1a +c1zx) (16)

こ こ に, E1は 弾 性 主 軸 方 向 の 弾 性 係 数, 61, 61, c1は

感 度 係 数 で あ り孔 壁 上 の 測 定 位 置 に対 応 して:Fig. 10あ
る い はFig. 4か ら読 み 取 る こ と が で き る(ま た は コ ン
ピュ ー タ ・デ ィス ク 内 に保 存 した デ ー タ か ら数 値 と して Fig. 10 Estimation charts of sensitivity coefficients along the
抽 出 す る こ と が で き る). ま た ε
θ1(6),
εθ1(6),
εθ1(0)は,そ wall surface of the borehole L, for the case of applyed
in-plane stress against two equal boreholes with spacing
れ ぞれ 計 測 ひ ず み ε
θ1に対 す る 各 荷 重 応 力 成 分 の寄 与 度 s=a.
を表 わ す.
こ こ に, d1, 81は 面 外 せ ん 断荷 重 応 力 に対 す る感 度 係
面 外荷 重 応 力 が作 用 す る場 合 の孔 軸 方 向の ひず み 測定
数 で あ り, い ず れ も:Fig. 7を 用 い て, Fig. 10と 同 様 の
値 に対 し て も, これ と 同 様 の 関 係 が 成 立 す る. た だ し
Fig. 7に 表 示 し たせ ん 断 ひず み γθzは計 測 量 と して は 直 方 法 に よ り求 め る こ とが で き る.
した が っ て, 孔壁 上 の任 意 の 位 置 で, 3点 の 周 方 向 ひ
接 求 め る こ とが で き な い た め, 三 軸 ロゼ ッ トの ひず み
ずみ変化量 ε
θfと2点 の 孔 軸 方 向 ひず み 変 化 量 γθzfが

ゲ ー ジ を用 い て, 直 ひず み ε, ε
θお よ び450方 向の ひ ず
み ε45を測 定 して 次 式 に よ り換 算 す る 必要 が あ る17). 定 さ れ る と, 初 期 応 力 の 面 内 お よ び面 外 応 力成 分 を それ
ぞ れ次 式(19)あ るい は式(20)か ら容 易 に算 定 す る こ
TBz_2S45- (s8+Ez) (17)
と が で き る.
こ こ に, ε
θ Σ1孔 壁 上 の周 方 向 の 直 ひず み, ε;z軸

方 向 の 直 ひ ず み, ε45二
Σ1孔 壁 上 で2軸 方 向 か ら45に X81 a1 b1 c1 Ux
1
B2 a2 b2 c2
傾 斜 して 貼 り付 け た ひ ず み ゲ 「 ジで の測 定 ひ ず み で あ E1
る. せ ん 断 ひ ず み γ
θzの符 号 は45Qゲ ー ジ の 方 向 に よ っ a3 b3 C3 zxy (19)
B3

て定 ま る. な お, 第3章 で示 した計 算例 で は平 面 ひず み dlel


TBz1 1 τ8xz

状 態 を仮 定 して い る こ と か ら, 式(17)の ξzは0と 設 E1 d2e2


TBz2 τ8z

定 して よ い こ と に な る.
ま た は, 上 式 を逆 表 示 して 次式 を得 る.
ボ ア ホ ー ル孔 壁 上 の1点 で, 式(17)に よ り軸 方 向 の
{67}=El[Bl]-1{Eek}, (i, 1=x, y, k=1, 2, 3),
せ ん 断 ひず み γθzが計 測 さ れ る と, 面 内 の 式(16)と 同
{r=z}=E1[B2]-1{rezk}. (i=x, y, k=1, 2)
様 に, 面 外 荷 重 の 各 応 力 成 分 に対 しで も:Fig. 7を 用 いて
次式 の関 係 が得 られ る. (20)
こ こ に, qijお よびqijは 初 期 応 力 の 面 内 お よび面 外 応
rezi=F(dizxz+elzz) (18) 力 成 分, εθ
ん,γθκは 現 位 置 で の 計 測 ひ ず み, B1お よ び

45
部分応力解放法による等 方性 または異方性岩盤の三次元初期応 力測定理論/菊 地 ・山下 ・平 島. 川本

B2は 感 度 係 数 の マ トリ ッ クス で あ る.

5. 逆 解 析 に よ る初 期 応 力の 算 定 法

岩 盤 内 の初 期 応 力 は, 前 章 で 述 べ た よ う に, あ らか じ
め解 析 に よ っ て求 め られ た感 度 係 数 を用 いて 簡 易 に算 定
す る方 法 の ほか, 現 位 置 で の 計 測 ひず み あ る い は計測 変
位 を入 力 デ ー タ と して 用 いて, 逆 解 析 に よ って 直接 算 定
す る こ と もで き るlo).

逆 解 析 の手 法 に は, 逆 定 式 化 法 と直 接 定 式 化 法 が あ る
が13), ここでは第2章で示した異方性弾性体に対する高

精 度 の 解 を用 い た 直 接 定式 化 法 に つ い て, 面 内 お よ び面
外 の主 応 力 を同 定 す る 方 法 を述 べ る.
まず, 同 定 す べ き パ ラ メ ー タ と して は, :Fig. 11に 示
Fig. 11 Amsotropic model containing two equal boreholes for
す1)最 大 主 応 力 σr, 2)主 応 力 比 σ∞1/σ2,
3)最 大 主 応 back analysis.
力 の方 向 φ, 4)面 外 せ ん 断 応 力 τ0,5)面 外せん断応力
の 方 向 δと す る. な お, 異 方 性 岩 盤 の 物 性 値 は既 知 量 Table1に こ の よ う に して 同定 し た逆 解 析 の 一 つ の例

と して あ らか じめ与 え る か, あ る い は逆 解 析 に よ って 同 を示 す. こ こで はFig. 11に 表 示 し た よ う な 主 応 力 状 態

定 す る必 要 が あ る が, 現 位 置 で の初 期 応 力測 定 で はボ ア にあ る 異 方 笹 弾 笹 岩 盤 内 に, 双 設 の 等 円孔(α=a=30

ホ ー ル 開 削 の 際 に得 られ る採 取 コア や孔 内載 荷 試 験 な ど mm)が そ の半 径 と 同 じ純 離 隔 距 離 を保 っ て 開 削 され た

を用 い て 弾性 係数 や ボ ア ソ ン比 が決 定 で き る こ と, お よ 場 合 を あ らか じめ解 析 し, そ の時 に得 られ た θ=0, 90,


び 弾 性 主 軸 の方 向 α は ボ ア ホ ー ル 開 削 場 所 に お け る岩 180位 置 での 周 方 向 の ひず み 変 化 量 と, θ=40, 120位

盤 の 目視 観 察 な ど に よ る節 理. 層 理 の状 態 に よ り, あ る 置 で の 孔 軸 方 向 の ひ ず み変 化 量 を現 位 置 で の測 定 値 とみ
程度 類 推 で き る こ と な どか ら, こ こで は, いず れ も既知 な して 入 力 デ ー タと して与 え た. こ の う ち, 解 析1は 上

量 と して与 え る こ と に した. 記 で 得 られ た ひ ず み デ ー タ を有 効 数 字3桁 に丸 め て入 力


入 力 デ ー タ は次 の よ う に取 り扱 う. 例 え ば, 測定 側 ボ デー タ と した もの, ま た解 析2は 現 位 置 計 測 で は測 定 誤
アホ ー ル の1つ の 断面 内 で, 孔 壁 上 の異 な る任 意 の 位 置 差 が 伴 う こ と を考 慮 して, それ ぞ れ ±5%範 囲で ランダ
で の周 方 向 の ひず み変 化 量 ε
θfおよ び孔 軸 方 向 の ひず み ム変 化 させ た もの で あ る. 岩 盤 の 物 笹 値 を与 え て 逆 解析

変化量 γ
θ が測 定 され た もの とす る. も ち ろ ん, γθzfは し た結 果 は, Table1(b)に 示 す よ うに, いず れ も初

式(17)に よ って 換算 して 求 め られ る値 で あ る. これ ら 期応 力 の値 お よ び その 方 向 を精 度 よ く同 定 で きて い る こ
は, いず れ も現 位 置 で の 測定 値 に よっ て定 ま る もの で あ とが分 か る.
り, 逆 解 析 の 入 力 デ ー タと な る もの で あ る. 測 定 値 は面 一 方, 計 測 変 位 を入 力 デ ー タと して 用 い た逆 解 析 で も,

内 お よ び面 外 に対 して お の お の 数個 あ れ ば同 定 す る こ と これ らと 同 様 の結 果 が 得 られ る こ と は 明 ら か で あ る.
がで き るが, 精 度 の 高 い 同定 の た め に は, も ち ろん 測定 Table2は 上 述 と同 じモ デ ル で, 面 内 の 直 径 変 化量dfと

点 数 は多 い ほ うが 望 ま しい. 一 方, 解 析 に よ る壁 面 ひず 面 外 の 軸 方 向変 位 の 変 化 量 ωfを入 力 デ ー タ と して 逆 解
みε
θfおよび γ
θfは式(2)に よ り前 述 の 同 定 パ ラ メー 析 した結 果 を示 した も ので あ る. 解 析 条 件 はTable1の
タ を適 宜 与 え る こ と に よ り容 易 に算 定 す る こ とが で きる 場 合 と同 様 と した. た だ し直径 変 化 量 は θ=180Q位 置 で
か ら, 計 測 点 に対 応 し た位置 で の ひ ず み変 化 量 は 自動 的 0の 値 と同 じに な る こ とか ら, こ こ で は, そ の 代 わ り
に決 定 され, 例 え ば ε*σ1と
表 され る. した が っ て, 現 位 に θ=1350位 置 での 値 を入 力 値 と して 用 い た. 解 析1お

置 計 測 お よび 解 析 に よ り求 め ら れ る ひ ず み 変 化 量 の値 よ び この 値 を変化 させ た場 合 の 解 析2の 両 方 に対 す る入
が, 次 式 の条 件 を満 足 す るま で 各パ ラ メ ー タ を変 化 させ 力 デ ー タ をTable2(a)に 示 して い る が, こ れ らを用
な が ら繰 り返 し計 算 を行 う こと に よ っ て最 適 なパ ラ メー い た逆 解 析 の結 果(Table2(b))も, 先 のTable1の

タを 同定 す る こ とが で き る. 結 果 と同 様 に初期 応 力 を高 い精 度 で 同 定 で きて い る こ と
が観 察 され る.
Σ(ε θf-ε*θf9)2≦2her, (i=1, 2, …n) (21)
6. 結 言
(T9zi-ra i)2< r, (Z=1, 2 n) (22)
本 論文 で は, 近 接 す る2円 孔 の応 力干 渉 を利 用 した初
ここ に, εe,お よび γe,は そ れ ぞ れ許 容 誤 差 を表 す. ま
期 応 力 の測 定 理 論 に関 して, 複素 関 数論 を用 い た高 精 度
たnは 測 定 点 数 で あ る. の 解析 手 法 の理 論 的 側 面 の み を提 示 した. こ の手 法 に よ

46
土 木 学 会 論 文 集No. 493/III27, pp. 39∼48, 1994. 6

Table 1(a) Input data for back analysis using strains. (x 10-4) 参 考 文 献
1) Merrill, R. H.: In Situ Determination of Stress by Relief
Techniques, International Conference on State of Stress in
Earth's Crust, Santa Monica, 1963.
2)平 松 良 雄 ・岡行 俊: 応 力 解 放 法 に よ る岩 盤 内 の 応 力測 定
に 関 す る 研 究, 日 本 鉱 業 会 誌, Vol. 79, N0. 906,

pp. 1016∼1022, 1963.


3) Obert, L. and Duvall, WI.: Rock Mechanics and the
Table 1(b) Results of back analysis using Table 1(a). (unit;
MPa or deg.) Design of Structures in Rock, John Wiley & Sons, pp. 417
-419, 1967.
4) Kehle, R. O.: Determination of Tectonic Stresses through
Analysis of Hydraulic Well Fracturing, Jour. of Geophys.,
Res., Vol. 69, pp. 259-266, 1964.
5)金 川 忠 ・林 正 夫 ・仲 佐 博 裕: 岩 石 に お け る地 圧 成 分 の
AcousticEmissionに よ る推 定 の試 み, 土 木 学 会 論 文 報 告
*) Fixed to correct answer.
集, 第258号, pp. 63∼75, 1977.
Table 2 (a) Input data for back analysis using displacements. 6)山 本 清 彦 ・加 藤 尚 之 ・平 澤 朋 郎: 変形率変化 法で推定 さ
(x103, mm) れ る地 殻 応 力値 の 解 釈一 鉛 直応 力 の 深 度 分 布 一, 地震学
会 講 演予 稿 集, No. 1, p. 44, 1989.
7)土 木 学 会: 初 期 地 圧 測 定 法 の 現 状 と 課 題, pp. 3∼43,
1992.
8)川 本 眺 万 ・高 橋 由 行: 岩 盤 の 初 期 応 力 の 一 測 定 法 に つ い
て, 土 木 学 会 論 文 集, 第146号, pp. 22∼27, 1967.
9)冨 永 勇 作. 木 下 重 教: 多 孔 法 に よ る地 圧 測 定 法 につ いて,

Table 2 (b) Results of back analysis using Table 2(a). (unit ; 日本 鉱 業 会 誌, Vol. 89, No. 1025, pp. 44g∼454, 1g73.
MPa or deg.) 10)平 島 健 一 ・川 上 哲 太 郎 ・藤 原 紀 夫 ・山 下 幸 夫: 弾性 厳 密

解 に基 づ く円形 ・楕 円 形 トン ネ ル を 有 す る等 方 性 お よ び
異 方 性 岩 盤 の 逆 解 析, 土 木 学 会 論 文 集, No. 439/III-17,
pp. 1∼8, 1991.
11)平 島 健 一 ・川 上 哲 太 郎 ・藤 原 紀 夫 ・山 下 幸 夫: 面 外 せ ん
断 荷重 下 の 等 方 性 ・異 方 性 弾 性 岩 盤 内 の 素 堀 り トン ネ ル
*) Fixed to correct answer. 掘 削問 題 に関 す る順 解 析 お よ び逆 解 析, 土 木 学 会 論 文 集,
No. 436/III-16, pp. 37∼45, 1991.
る と, 異 方 性 弾 性 岩 盤 を対 象 に して, 1地 点 の 測 定 に よっ 12)川 上 哲 太 郎 ・平 島 健 一 ・藤 原 紀 夫 ・山 下 幸 夫: 岩盤内 の

て 面 内 の3成 分(σ2, qy,σxy)お よび 面 外2成 分(τxz, 双 設 トン ネル 掘 削 問 題 に 対 す る順 解 析 お よび 逆 解 析, 第


8回 岩 の 力学 国 内 シ ンポ ジ ウ ム講 演論 文 集, pp. 7∼12,
τyzの 初 期 応 力 成 分 を決 定 す る こ とが で き る. ボ ア ホ ー
1990.
ル 軸 方 向 の 直 応 力 成 分(げ)に つ い て は測定 位 置 で
13)桜 井 春 輔 ・武 内 邦 文: トン ネ ル掘 削 時 に お け る 変位 計 測
FlatJack法 な ど を併 用 す るか, ま た は坑 道 壁 面 上 の異
結 果 の 逆 解 析 法, 土 木 学 会 論 文 報 告 集, No. 337, pp. 137
な る2方 向 に本 手 法 を適 用 して同 様 の 測 定 を行 い, そ れ -145, 1983.

らを組 み合 わせ れ ば決 定 で き る. 14) Haddon, R. A. W.: Stresses in an Infinite Plate with Two


2円 孔 の応 力干 渉 を利 用 す る本 手 法 は, 坑 道 壁 面 上 の Unequal Circular Holes, Quart. J. Mech. and Appl.
Math., Vol. 20, pp. 277-291, 1963.
浅 い位 置 に お い て も, ま た深 い位 置 に お い て も適 用 で き
15) Hirashima, K.: Stresses and Displacements around
る も ので あ る. た だ し, 実 施 上 の 課題 と して, 平 行 す る
Openings under Longitudinal Shear, Proc. of JSCE,
2円 孔 を精 度 よ く削 孔 す る技 術 と, 円孔 の深 い位 置 の 孔 No. 220, pp. 131- 141, 1973.
壁 に ひず み ゲ ー ジ を貼 り付 ける技 術 が必 要 と され るが, 16)丹 羽 義 次 ・平 島 健 一: 複 数 個 の 円 孔 な い し楕 円 孔 を有 す

これ ら につ いて は, 測 定終 了後 の2円 孔 を ガ イ ドに して る異 方 性 弾 性 板 内 の応 力状 態, 土 木 学 会 論 文 報 告 集, 第
196号, PP. 9∼18, 1971.
中 間 に第 三 の ボ アホ ー ル を削孔 して, 採 取 コ アか ら直接,
17)菊 地 慎 二'・佐 久 間 彰 三 ・平 島健 一 ・松 田 武: 三 次元 地 山
正 確 な離 隔 距 離 を測 定 して 解析 を行 う な ど に よ り十 分 対
応 力 測 定 の た め の 中 空 埋 設 型 計 測 装 置 の 理 論 解 析, 土 木
処 可 能 で あ る と考 え て い る. 現 場 へ の適 用 例 に つ い て は
学 会 論 文 集, N0. 430/III15, pp. 143∼152, 1991.
現 在 検 討 中 で あ り, 近 い将 来 そ れ ら につ いて具 体 的 な成 (1993. 3. 23受 付)
果 を発 表 す る 予定 で あ る.

47
部分応力解放法 による等 方性また は異方性岩盤の三次丞 初期応 力測定理 論/菊 地 ・山下 ・平島 ・川本

THEORY FOR DETERMINATION OF THREE-DIMENSIONAL INITIAL STRESSES IN


ISOTROPIC OR ANISOTROPIC ROCK MASSES BY PARTIAL STRESS RELIEF
TECHNIQUES
Shinji KIKUCHI, Yukio YAMASHITA, Ken-ichi HIRASHIMA and Toshikazu KAWAMOTO
The present paper develops for determination theory of initial stresses in isotropic or
anisotropic elastic rock masses utilizing stress concentration of two neighboring boreholes,
and describes a method determining five stress components (or, a, z, z and z) of
in-plane and out-of-plane against the borehole axis (z-axis) among six components that
are included in three-dimensional initial stress condition. Furthermore, some numerical
results of high accuracy of sensitivity coefficients along the wall surface of the boreholes
are shown and the concrete calculating method of initial stress components using these
results is given.

48

You might also like