You are on page 1of 8

291

すみ 肉溶接時に生 じるね じれ変形 の簡易推定法

正員 後 藤 浩 二* 正員 豊 貞 雅 宏*
正員 武 市 祥 司**

A Practical Estimation Method of the Skin Plate Distortion Derived from Fillet Weld

by Koji Gotoh, Member MasahiroToyosada, Member


Shoji Takechi Member

Summary

The fabrication accuracy of ship building block must be improved in order to raise
the degree of the automation of ship built-up stage. Many research projects concerning this
problem have been carried out and some practical or precise methods to estimate the welding
deformation have proposed. Equivalent inherent strain method, on which the inherent strain
derived from thermal cycles of welding is considered as the generating source of deformation,
is a convenient method to calculate the welding deformation of large welded built-up struc-
tures. However, this method does not give a good estimation result in case of generating the
large deformation such as a distortion of skin plate.
In this paper, the improvement of equivalent inherent strain method to raise the preci-
sion of the distortion derived from fillet weld is carried out. Beam element, which expresses
the fillet weld bead and has inherent strain generating tendon force, is incorporated with the
former equivalent inherent strain method. The experimental results, which welding defor-
mation was measured, are compared with the calculation by applying the proposed method.
As a result, the validity of the improvement is confirmed.

練工 の長年の経験に頼 ってい るのが現状 である。 構造ブ


1. 緒 言 ロ ックの溶接変形 を定量的 に推定す ることが可能になれ

船舶や橋梁な どに代表 され る,大 型溶接 鋼構 造物の建 ば,こ の工程 を単純化す る事にも繋が り,ブ ロ ック溶接
工程の 自動化 に大 きく寄与す ると期待 され る。
造に当たっては,溶 接工程の 自動 化/円滑化 の要求が,ま
すます増加 している。 しか し,船 舶の ドック内建造工程 溶接変形の推定手法には,大 別 して熱弾塑性有限要素

での,ブ ロ ック同士の取 り合いにおいて,前 段階 までの 解析1)と 変形発生源 を考慮 した弾性有限要素解析が挙げ


られ る。 前者は実際の溶接 をシ ミュ レー トした ものでは
建造工程で生 じた溶接変形のため,全 体形状の維持 と後
工程の最短化のための最適な位 置決 めが困難 であ り,熟 あるが,詳 細 なモデル化並びに膨大な計算時間が必要 と
なるばか りでな く,,力 学的溶融状態 にお ける弾塑 性挙動
の追跡 を行 うこ とに起 因す る誤差が 累積 し,こ の結果が
* 九州大学大学院 工学研究院海洋 システム工学部門 最 終的な残留応 力や 変形に大 きな誤差を生 じさせ ること
** 東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻
もある。 後者は,固 有ひずみ2)3)や 固有応力4)で 表現
(研究当時,住 友重 機械工業株式会社)
292 日本 造 船学 会 論 文 集 第189号

され る,変 形発生源 を付与 して弾性有限要素解析を行 う 2.2 等 価 固有 ひずみ の 算 定


ものであ り,熱 弾塑 性シ ミュ レーシ ョンに比べて短時間 上 述 の よ うに等 価 固 有 ひ ず み の 算 定 に は,溶 接 条 件 か
でかつ簡易的で あるにもかかわ らず,一 般 に要求 され る ら固 有 変 形 を 与 え る必 要が あ る。 横 収 縮 量,角 変 形 量 に
精度 を十分に確保で きる手法である。 この手法は,平 行 関 して は,基 礎継 手 を 用 い た,数 多 くの 溶接 条件 の 下 で
ブ ロ ックモデル5)や,曲 が りブロ ックの一部 を模擬 し 計 測 が 行 われ てお り,板 に 実際 に投 入 され た 熱 量(以 後,
た試験体6)に 対 して適用 され,同 手法の妥当性が示 され これ を 正 味 の入 熱 量Qnetと 呼 ぶ)と 板 厚(h)で 規定さ
てい る。 れ る入 熱 パ ラ メー タQnet/h2の 関 数 と して 表 現 で き る
しか しなが ら,外 板 にステ ィフナ をすみ肉溶接す る場 こ とが知 られ て い る8)。
合 に,こ の溶接 に起因 して外板 のね じれ変形 が生 じる こ 船 舶 に 多 く使 用 され て い る,軟 鋼 お よ びHT50鋼
とがあ り,こ れ までに提 案 され ている変形発生源 に基づ
(TMCP鋼)に 対 す る横 収 縮 量 お よび 角 変 形 量7)並 び
く弾性 有限要素解析手法では,特 に大型構造 物 のモデル に,縦 収縮 力9)は,(1)式 ∼(3)式 で与 え られ る。
化 に適 したシ ェル要素を用いる場 合,こ のね じれ変形 を
表現す ることができず,解 析手法の改良が必要であ る。 (1)
そ こで本研究では,変 形発生源 を用 いた弾 性有限要素
(2)
解析 で,す み 肉溶 接時 に生 じる外板のね じれ変形の推定
(3)
を可能 とす るため,過 去の手法では簡易化のた めに無視
され ていた溶接 ビー ドを解析モデルに導入す る。 そ して, た だ し,
この新 しいモデル化によるFEM解 析結果 とモデル実験
結果 と比較す ることで,本 手法の有効性を検討 した。

2. 溶接変形の計算方法

本研 究では実用的な観点 か ら,変 形発生源の与え方が


比較的簡単であ る,シ ェル要素 を用いた等価固有ひずみ
法7)を 用いる。始 めに,こ れまでに開発 され た等価固有
ひずみ法に関 して概説する。 次に,変 形解析 の精度 を向
上 させ るために導入 した,溶 接 ビー ドの取 り扱 い手法 に
つ いて述べ る。

2.1 等価固有 ひずみ法

溶接変形は,溶 接線 近傍 の温度分布履歴 に由来す る熱


ひずみ の拘束 の結果,そ のごく近傍 に生 じる固有ひずみ
S 横 収 縮 量 [mm}
に起 因 して生 じる。 この固有ひずみ を積分 したものが固
θ 角 変形 量 [mm]
有変形であ り,主 に横収縮 角変形,縦 収縮 の3つ が溶
S0 溶接 長200mmの 時 の 横収 縮 量 [mm]
接変形 を支配 してい る。 横収縮 と角変形 は,変 形量(収
θ0 溶 接 長200mmの 時 の 角 変形 量 [rad]
縮 量 と角度 変化)で 直接表 現 され るが,縦 収縮 は通常,
Ct(L) 横 収 縮 量 に 対す る溶接 長 補 整係 数8)
これ を力に変換 した縦収縮力(Tendonforce)の 形で取
ca(L) 角変 形 量 に 対す る溶接 長 補 整 係数8)
り扱 われる。
一般 に,構 造 物の溶接変形の推定に当た っては,詳 細 FT 縦 収 縮 力 [kN]

L 溶 接 長 [mm}
な固有ひずみ分布 をモデル に入力す る必要はな く,計 測
v ボ ア ソン比
が容易で ある固有変形 を溶接条件か ら与 え,こ れ と等 し
い変形 を生 じさせ る固有ひずみ に変換 して,溶 接線に隣 Qnet 正 味 の 入熱 量 [J/mm]
h 板 厚 [mm]
接 す る要素に与 えれば十分である。 この よ うに,固 有変
Q* =Qnet/h2 [J/mm3]
形か ら溶接線 に隣接す る要 素に付 与す る等価 な固有ひず
み を与え,弾 性FEM解 析 により溶接変形 を推定す る手 同 じ固 有 変 形 を 生 じ させ る固 有 ひず み 分 布 は 幾通 りも
法が,等 価固有ひずみ法で ある。FEMモ デルはシ ェル 存在 す るが,こ こで 与 え る等 価 固 有 ひ ず み 分布 は,板 厚
要 素で構戒 され るた め,モ デル化 が比較 的簡 単であ ると 方 向 に一 様 分 布 した 面 内 ひ ず み 成 分(εm)と,板 厚方向
い う利点 もあ る。 に線 形 分布 した曲 げ ひず み 成 分(εb)と す る。 それ ぞれ の
す み肉溶 接 時 に生 じるね じれ変 形 の簡 易推 定 法 293

固 有変形 に対応 す る等価 固 有 ひず み は(4)式 ∼(7)式 で


与 え られ る。 なお,以 下の 説 明 で は,等 価 固 有 ひず み を
与 え る要 素 の幅(溶 接 線 直 角 方 向 の長 さ)を 傷 と し,溶
接線 方 向にx軸,溶 接 線 直 角 方向 にy軸,板 厚 方 向 にz
軸 とす る局所 座標 系 を定義 す る。

(a) 縦 収縮
ヤ ン グ率 をE,溶 接 線 に 隣 接す る固 有 ひず み を 付 与す
る要 素の 幅がb1,b2の 時,

と係 数c1お よびc2を 定 義 す る と,要 素 幅bi (i=1,2)


の要 素 に 付与 す る縦 収縮 に 対 応 す る溶 接 線 方 向 の 等価 固
Fig. 1 Calculation model
有ひず み(εmix)う
は,

(4)

で与 え られ る。 ここで 溶接 ビー ドの存 在 は 無視 して い る。

(b) 横収縮
固 有ひ ず み の分 布幅 は 成 分 ご とに異 な るが,簡 易的な

解析 とい う立場 か ら,全 て の 等 価 固 有 ひ ず み が 同 じ幅 に
分布 す る と仮 定 す る。 す な わ ち,横 収 縮 に 対応 す る等価
固有 ひず み(εmiy)は,

(5)

で 与 え られ る。 係 数ciは,縦 収 縮 の 場 合 と同 じ値 を

取 る。

(c) 角 変形
Fig. 2 Deformation of the reference line
角 変 形 は等 価 固 有 ひず み を付 与 す る要 素 に 分 布 した 曲
げ ひずみ(εbiy)と して与 える。
で 与 え られ る10)。

(6) そ こで 解 析 結 果 に 及 ぼ す 要 素 幅 の 影 響 に つ い て検 討 を
実 施 した 。Fig.1に 示 す 平板(200mm×200mm,板 厚
な お,κ は 曲 率 で あ り,
10mm)の 中央 を,Qnet=500J/mmの 条 件 で ビー ド
溶 接 した と想 定 し,(1)式 ∼(7)式 を適 用 して 等 価 固 有
(7)
ひ ず み を算 定 して,変 形 解 析 を実 施 した。 な お,こ こで
で定義 され る。 は溶 接 ビー ドの 存在 を 無 視 してモ デ ル 化 を行 っ て い る。
これ らの 固 有ひ ず み を汎 用FEM解 析 コー ドに入 力 す Qnet=500J/mmの 時(8)式 よ り与 え られ るbの 値
るた め に は,線 膨 張係 数 が 直 交異 方性 を有 す る 要 素 に, は7.8mmで あ っ た の で,b〓4,8,16の3ケ ー スを設
熱 ひず み の形 で与 えれ ば よい 。 定 した。 また 要 素 形 状 を,正 方 形 にで き る だ け近 い形 状

2.3等 価 固有 ひ ずみ を付与 す る要素 幅 の 影 響 と した 。


Fig,2に は,評 価 ラ イ ン(y軸)のxy平 面 お よびyz
等 価 固 有 ひ ず み を 与 え る要 素 の 幅 に 関 して は,溶 接
平 面 上 で の 変 形 挙動 を示 した。 この 結 果 か ら分 か る よ う
に よ り生 じる 変 形 発 生源 の 存 在 幅 に 対 応 させ る こ とが
に,溶 接 線 近 傍 の 変 形 を除 い て は,等 価 固有 ひず み を 付
望 ま しい 。 こ の 幅 は,最 高 到 達 温 度(Tmax)が T=
与 す る要 素 幅 の 全 体 の 変 形 挙 動 に及 ぼ す 影 響 は 小 さ い。
σY/Eα(α は線 膨 張係 数)よ り大 きい 領 域 の幅3)で あ
固 有 ひず み 分 布 幅 の 倍 程度 ま で は 要素 分 割 を粗 く して も,
り,熱 源 を瞬 間線 熱 源 と近 似 す れ ば,幅bは
実 用 的 な観 点 か らは 問 題 な い 精 度 で 変 形 推 定 が 可能 で あ

(8) る と考 え られ る。
294 日本 造 船 学 会 論文 集 第189号

2.4 溶接 ビー ドの 取 り扱 い Table 1 Plate elemets of the test model

従 来 の 等価 固有 ひず み 法 に よ る溶接 変形 解 析 手 法 で は,
外板 部 に ね じれ 変 形 を伴 うよ うな 変形 を,十 分 に 表 現 で
き なか っ た。 この原 因 は,解 析モ デ ル が シ ェ ル要 素 で 構
成 され て い る こ とが 多 く,縦 収 縮 力 の作 用 位 置 が シ ェ ル
面 内 に限 定 され,そ の 結 果 と して,ね じれ を生 じ させ る
モー メ ン トを正 確 に 与 え て い なか っ た か らと考 え られ る。

従 っ て 本研 究 で は,縦 収縮 力 の 作 用状 態 を よ り正 確 に
表 現 す る た め に,以 下 の よ うな モ デル 化 を行 っ た。

実施 した。 また,溶 接 に よ り生 じた鋼 板 の温度 上 昇 が十


[1] 梁 要 素 を用 い て,溶 接 ビー ドをFEMモ デルに導
分 散 逸 した後 に,次 の溶 接 ステ ー ジに 移 行 した。 試験 体
入 す る。
作成 に 当た っ て は,対 角 対称 に 仮止 め溶 接 を施 した。

[2] 梁 要 素 の節 点 と外 板 をモ デ ル 化 して い る シ ェ ル 要 変 形 計 測 は,底 板 裏 面(枠 板 の 付 い て い な い 側)の た


素 の 全 て の節 点 を共 有 させ る。 た だ し,梁 要 素 の わみ を,三 次 元NCマ シ ン に,タ ッチ ン グセ ンサ お よび
節 点 に 関 して は,シ ェ ル 要 素 の節 点位 置 か ら溶接 計 測 用 の 治 具 ・ア タ ッチ メ ン トを取 り付 け て改 良 され た,
ビー ド重 心 位 置 に オ フセ ッ トを与 え る。 接触 式 三 次 元座 標 計測 機 を用 い て 計測 点 の3次 元座 標 を
計 測 した。 計 測 点 をFig.5に 示す 。
[3] 等 価 固 有 ひ ず み と して,縦 収 縮 力 と梁 断 面 力 が な お 試 験 体 は,溶 接 後 に ね じれ 変形 な どに よ る剛体 移
等 し くな る負 の熱 ひず み を 与 え る6)(プ レス トレ
動 を生 じた た め,以 下 の 手順 で補 正 を 行 っ た結 果 を,変
ス コ ン ク リー トの 緊 張 力 導 入 に よ く使 用 され る
位 量 と して採 用 した。
手 法)。

[1] 点7を 原 点 と重 ね る。
[4] 梁 要 素 に は,曲 げ 剛 性 お よ び ね じ り剛 性 を 付 与
す る。 [2] 点6,8を 通 る線 をx軸 と平 行 に す る。

上記 のモ デ ル 化 に よ り,縦 収 縮 力 の 作 用位 置 が よ り現 [3] 点2と 点12のz座 標 を 同 じにす る。


実 の 状態 に 近 づ き,変 形 に及 ぼ す 溶接 ビー ドの影 響 も考
慮 で き るた め,変 形 推 定 の精 度 が 向上 す る と期 待 され る。 [4] 点6と 点8のz座 標 を同 じにす る。

3. 計 算結 果 の 検 討

3.1 変 形計 測 実 験

Fig,3に 示 す,船 体 平 行 部 の 二重 底 を模 擬 した 構 造 モ
デル の溶 接 変 形 を計 測 し,こ れ と比 較 す る事 で,す み 肉
溶 接 ビー ドの取 り扱 い 手 法 の 妥 当性 を 検討 した。 試 験 体
は,降 伏 点440MPaのKA32鋼 板 を 用 い て 作 成 され
た。 実 験 モ デ ル の 板 縁 は,Fig.3(b)に 示 す よ うに,全 (a) Bird's—eye view
て15mmの 張 り出 しを残 して 溶 接 して い る。 モ デ ル に
使 用 され た板 の諸 元 をTable1に 示す。
溶 接 は,C02溶 接(フ ラ ッ ク ス 入 り ワ イ ヤ,直 径
12mm)を 使 用 し,継 手形 式 は 全 て 単純 す み 肉溶 接(目
標 脚 長5mm)で あ る。
実 験 で は,溶 接 順 序 に よ る変 形 の 影 響 を調 査 す るた め,
Fig.4に 示 す 二種 類 の 溶 接 順 序 を採 用 した 。 順 序(1)で
は,外 か ら内(外 枠 縦 → 内枠 縦 → 外 枠 底 板 → 内枠 底

板 → 内 ク ロス 縦),順 序(II)で は 内 か ら外(内 ク ロ ス (b) Top view


縦 → 内 枠 底 板 → 外 枠 底板 → 内枠縦 → 外 枠縦)へ と
Fig. 3 Test model configurations
施 工 した。 各 溶 接 ステ ー ジ 内 で の溶 接 順 序 は対 角 対 称 に
す み肉 溶接 時 に生 じるね じれ 変形 の簡 易 推 定法 295

Sequence (I) Sequence (II)

Fig. 5 Measuring points of base plate

Fig. 4 Welding sequences and analysis


stages

3.2 解 析 モデ ル

等緬 固 有ひ ず み の 算 定 に必 要 な,溶 接 に よ る正 味 の 入
Fig. 6 Mesh idealization of the test
熱量 に つい て は,施 工時 の溶 接 条 件 を 計 測 し,熱 効 率 を
model
0.777)と して決 定 した 。 溶 接 条 件 の 計 測 結 果 をTable
2に 示す 。 なお,実 測 され た脚 長 は,枠 同 士 の溶 接 で は
解 析 コー ドで あ るMSC/NASTRAN(Ver.70.7)を 使
6mm,そ の他 の 箇所 は5mmで あ っ た。
用 した。 解 析 モ デ ル に関 す る諸 設 定 条 件 は,下 記 の通 り
Table 2 Welding conditions of the test で あ る。
model

[1] 溶 接 ビー ドは,そ れ ぞ れ の脚 長 に 対応 した 直 角 三
角 形 と し,曲 げ 酬 生,ね じ り剛 性を 有す る 梁 要素

(CBAR)で モ デ ル 化 す る。 梁 要 素 の 節 点(両 端)
は,ビ ー ド重 心位 置 にオ フセ ッ トす る。

[2] 板 部 分 は 四節 点 シ ェ ル 要 素(CQUAD4)で モデ
ル 化 す る。

[3] 解 析 モ デ ル 全 体 の拘 束 は,ベ ー ス板 中 央部1点 を


6自 由度 拘 束 と した。

フ ラ ンジ と ウエ ブ へ の溶 接 入 熱 の分 配 は,℃ottrellが
[4] 接 合 線 に 隣接 す る要 素 形 状 は,接 合線 か らの 距離
提 案 した 熱 の 拡 散 断 面 積 比 を 考 慮 した 式11)を 適 用 し, を10mmと す る長 方形 と した。 そ の他 の 要 素寸
この結 果 を(1)式 ∼(7)式 に適 用 して,解 析 モ デル に与
法 は,ベ ー ス 板 につ いて は 56.25mm×52.5mm,
え る等価 固 有 ひず み を決 定 した 。 解 析 に は,汎 用FEM
枠板 につ いて は56.25mm×32mm(最 上部のみ
296 日本 造 船学 会 論 文 集 第189号

(a) line 1-2-3 (b) ine 6-7-8 (c) line 11-12-13


Fig. 7 Deformation of the lines on xy-plane (Sequence I)

(a) line 1-2-3 (b) line 6-7-8 (c) line 11-12-13


Fig. 8 Deformation of the lines on xz-plane (Sequence I)

17mm), 52.5mm×32mm (最上 部 の み17mm) 本 解 析 モ デ ル で 等 価 固 有 ひず み を付 与 す る要 素 幅 は,妥


で あ る。 当な値 で あ る。
条件[6]∼[8]の 取 り扱 い は,組 立の 各段 階 にお け る初
[5] 初 期 段 階 で 仮 付 け 箇 所 の 節 点 を 一 体 化 させ,こ れ
期 形状 が,変 形 に影 響 を 与 えて い る と考 え たた め で あ る。
に よ り生 じる変 形 は付 与 しな い 。
解 析対 象 のFEMメ ッ シ ュ 分割 図 をFig.6に 示 す。

[6] 解 析 の 各 ステ ー ジ に お い て,順 次 溶 接 ビー ドを配 3.3 解析 結 果 と考察


置 す る。 Fig.5に 示す 計 測 点 の うち, 1-2-3, 6-7-8, 11-12-13
を 通 過 す る線 の 最 終変 形 状 態 を計 算 し,計 測 結 果 と比較
[7] 接 合 線 は,該 当す る溶 接 ステ ー ジ にお い て始 め て
す る。 なお,解 析 結果 は拘 束 点 を中 心 とす る回 転 移 動 を
結 合 させ る。
生 じてい た た め,実 験 結 果 と同様 の補 正 を施 した。

[8] 各 計 算 ス テ ー ジ の 初 期形 状 は,前 計 算 ステ ー ジ で Fig.7(a)∼(c)に,溶 接 順 序1の 場 合 の,鋤 平面


得 られ た 形 状 とす る(初 期 形 状 を 計 算 ス テ ー ジ に 上 の変 形 挙 動 を 示す 。 ま た,Fig.8(a)∼(c)は, xz平
応 じて,順 次 更新 す る)。 面 上 の 変形 挙 動 で あ る。 比較 検 討 の た めに,全 て の組 立
ス テ ー ジ に お け る溶接 が 同 時 に 行 われ た と仮 定 した 計 算
条 件[4] に 関 して は,で き るだ け 計 算 労 力 を節 約 す る
(全 て の 等 価 固 有 ひ ず み,溶 接 ビー ドを 同時 に付 与)も
とい う観 点 か ら,粗 めの 要 素 分 割 を採 用 した 。 ま た,試
行 っ た。 図 中で は,溶 接 順 序 を 考慮 した場合 を 白 丸 と実
験 体 へ の正 味 の入 熱 量 は, Qnet=582∼814J/mm2 と
線 で 示 し,溶 接 順 序 を無 視 した場 合(全 て の 溶 接 が 同 時
推 定 され た こ とか ら,(8)式 で 与 え られ るbの 値 は9.1
に行 われ た場 合)を 白逆 三 角 と点 線 で 示 して い る。 また,
∼13mmで あ り,2 .3節 で の 要 素 幅 の 検 討 結 果 か ら も,
す み 肉溶 接 時 に生 じるね じれ変 形 の簡 易 推 定 法 297

(a) line 1-2-3 (b) line 6-7-8 (c) line 11-12-13


Fig. 9 Deformation of the lines on xy-plane (Sequence II)

(a) line 1-2-3 (b) line 6-7-8 (c) line 11-12-13


Fig. 10 Deformation of the lines on xz-plane (Sequence II)

黒 丸 は計測 結 果 で あ る。 この結 果 も勘 案 してFig.7,Fig.8の 結果 を眺 め る と,

これ らの 結果 を 見 る と,溶 接 順 序 を 考慮 した場 合 の 変 今 回 の 解 析 で 無 視 した 仮 止 め の 影 響 は 決 して 小 さ く な

形 量 と実測 結 果 の 差 が,溶 接 順 序 を無 視 した場 合 との差 く,変 形 推 定 の精 度 を 向 上 させ る た め に は,正 確 な仮 止


に比 べ る と大 き くな っ て い る。 この理 由 と しては,比 較 め条 件 を付 与 した 解 析 を 行 うこ とが 必 要 で あ る。 しか し

的 粗 い 要 素分 割 を採 用 した た め,仮 止 め に よ る拘 束 を 十 なが ら,各 評 価 点を 結ぶ 線 の変 形 形 状 自体 は相 似 で あ り,
分 に表 現 で きず,解 析 の各 ステ ー ジ に お け る 変 形誤 差 が 値 の差 も最 大 で0.2mm程 度 で あ る。 特 に,Fig.8に 示
大 き くな り,こ れ を 積 算 した 結 果 で あ る と考 え られ る。 したxz平 面 上 の 変 形 に 着 目す れ ば,実 験 結 果 が 示 す,
ベ ー ス板 のね じれ 変形 と同傾 向 の 結 果 が与 え られ て い る。
溶 接 順 序 を無 視 した 計 算 で は,初 期状 態 で 全 て の接 合 線
を 一体 化 させ たた め,よ り厳 しい 拘 束 を 付 与 して い る こ Fig.9,Fig.10に,溶 接 順 序IIの 場 合 の計 算 結 果 を

とに相 当 し,そ の結 果 と して,実 験 の 仮 止 め拘 束 に よ り 示 す 。 図 中 の記 号 は,順 序Iの 場 合 と同 じで あ る。 順 序

近 い状態 が 実 現 され た 可能 性 が あ る。 IIに 関 して は,最 初 に全 て の接 合 線 上 に 存在 す る節 点 を

そ こで,モ デル の初 期 拘 束 が最 終 変 形 に及 ぼ す 影 響 の 結 合 し,以 前 の 溶 接 ステ ー ジの 変 形 結 果 を初 期 形 状 と し

検討 を行 っ た 。Fig.7,Fig.8中 の 白三 角 と一 点鎖 線 は, て,溶 接 順 序 に 従 っ て ビー ドと等 価 固 有 ひ ず み を付 与 し

最 初 に全 て の接 合線 上 に存 在 す る節 点 を結 合 し,溶 接 順 た解 析 は実 施 してい な い 。

序 に従 っ て ビー ドと等 価 固 有 ひず み を付 与 した解 析 結 果 順 序IIの 場 合 につ い て も,順 序1の 結 果 と同様 に,溶

で あ る。 なお,以 前 の溶 接 ステ ー ジ の 変形 結 果 を初 期 形 接 ビー ドを 考 慮 す る こ とで,ベ ー ス板 の ね じれ を表 現 で

状 と して い る。 解析 結 果 はFig.7,Fig.8中 の 白 丸 と白 きた。

逆 三 角 の 中間 に 位 置 してお り,解 析 条件 を 考慮 す れ ば 妥 以 上 の 結果,FEM解 析 モ デ ル に 溶 接 ビー ドを 導 入す

当な結 果 とい え る。 る こ とで,従 来 の 等価 固 有 ひ ず み 法 で は 表 現 す る こ とが
298 日本 造 船 学会 論 文 集 第189号

で きなか っ たベー ス板のね じれ挙動を表現できる ことが 5) Murakawa, H., Luo, Y. and Ueda, U.: Inher-
判明 した。 ent Strain As an Interface Between Computa-
tional Welding Mechanics And Its Industrial
4. 結 言
Application, Mathematical Modelling of weld
溶接変形 の推定手法 と して用い られてい る,変 形発生 phenomena 4, (Edited by Cerjak ,H.) (1998),
源 を考慮 した弾性有限要素解析手法は,熱 弾塑性 シ ミュ pp. 597-619
レー シ ョンに比べて短時 間でかつ簡易的であるが,一 般 6) 松 岡一 祥,吉 井 徳 治,安 藤 孝 弘,宇 野 清 隆:曲 が り
に要求 され る精度を十分 に確保 できる手法である。 しか ブ ロ ッ ク溶 接 変 形 の推 定 法,日 本 造 船 学 会 論 文 集,
しなが ら,外 板 にステ ィ フナ をす み肉溶接す る場合 に, Vol. 186 (1999), pp. 639-647
この溶接に起因 して外板 のね じれ変形が生 じることが あ
7) 第237研 究 部 会:高 度 工 作 精度 管理 技術 に 関す る
り,過 去 に提案 されてい る手法では,こ のね じれ変形を
研 究(総 合 報 告 書),日 本 造 船研 究 協 会, (2000)
表現す ることが困難であ った。
本研究 では,変 形発 生源 を考慮 した弾 性有限要素解析 8) 佐藤 邦 彦,寺 崎俊 夫:構 造 用 材 料 の溶 接 変形 に お よ
手法の一つである等 価固有 ひずみ法 に,す み肉溶接 ビー ぼ貢 容接 諸 条件 の 影響,溶 接 学 会誌, Vol. 45, No, 4

ドを梁要 素でモデル化 して組み込む こ とで,外 板のね じ (1976), pp. 302-308


れ 変形 を伴 う場合 な どの大きな溶接 変形を生 じる場 合の 9) White, J. D., Leggatt, R. H. and Dwight,
解析精度 向上 を試みた。 その結果,本 論文 に示 したモデ J. B.: Weld shrinkage prediction, Welding and
リング手法 によ り,従 来の等価固有ひずみ法では表現す Metal Fabrication, November, 1980, pp. 587-
る ことができなか っ たベー ス板のね じれ挙動が表現でき 596
ることが判 明 した。
10) 渡 辺 正紀,佐 藤 邦彦:溶 接 力学 とそ の応 用,朝 倉書
今後の課題 として,溶 接順序が変形 に影響を及ぼす場
合や,大 型の溶接構造物への適用な どが挙げ られ る。 店, (1965), pp. 178

本研 究は,日 本造船研究協会第237研 究部会(SR237) 11) Cottrell,C. L.M. : Controlled Thermal Sevirity


並びに第246研 究部会(SR246)(部 会長:両 部会 とも野 Cracking Test Simulates Practical Welded
本敏 治東京大学大学院教授)の 研究成果 と深 く関連 して Joints, Welding Journal, Vol.32 (1953),
お り,こ こで取 り上げた実験 は,SR237の 共同研究の 一 pp. 257s-272s
環 として実施 された もの である。 有益な ご示唆 を頂 きま
した委員諸氏 に謝意を表 します。 また,本 研究は科学研
究費(基 盤 研究(B),研 究代表者:豊 貞雅宏)の 一部 と
して実施 したものである。

参 考 文 献

1) 例 え ば,辻 勇,吉 村 洋:薄 い軟 鋼 板 の 突合 わ せ 溶接


時 の 過 渡応 力 と開 先 の 変位 挙 動 に 関す る研 究,日 本
造 船 学会 論 文集, Vo. 149 (1981), pp. 279-286

2) 藤 本 二 男:固 有ひ ず み の 概 念 に よ る溶 接 残 留 応 力 お
よび溶 接変 形 の解 析 法,溶 接 学 会 誌, Vol. 39, No. 4

(1970), pp, 236-252

3) 村川 英 一,羅 宇,上 田幸 雄1固 有 ひ ず み を用 い た 弾性

計 算 に よる溶 接 変 形 解 析 お よび残 留 応 力 の 推 定,日


本造 船 学 会 論 文集, Vol. 180 (1996), pp. 739-751

4) 松 岡 一 祥:溶 接 製 殻 構 造 物 の 残 留 応 力 に 関 す る
一解 法
,日 本 造 船 学 会 論 文 集, Vol. 153 (1983),

pp. 210-217

You might also like