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大型起重機船を用いた風車洋上接合時の動揺解析
Dynamic Analysis for Offshore Installation of a Wind Turbine Rotor Using a Floating Crane Vessel
西村優希*・宇都宮智昭**
Yuki NISHIMURA and Tomoaki UTSUNOMIYA
In this study, a floating crane vessel with a wind turbine rotor is analyzed using multibody
dynamics theory. The analytical model is produced for simulation of the marine operation
during the offshore installation of the wind turbine rotor to the nacelle. Comparison of the
results of the dynamic analysis with the measured data of the floating crane vessel has shown
that the analytical results can predict well the motions in roll and pitch directions but
underestimate the motion in yaw direction. The complex behavior of the rotor motion is
observed from the analytical results in several incident wave cases. Finally, the availability
ratio of the marine operation is assessed based on the analytical results. The effect of number
of mooring lines to the availability ratio is also examined.
Key Words: Floating crane vessel, Multibody dynamics, Offshore wind turbine
に取り付け治具等の詳細設計に資することができる.また,
1.研究背景および目的
正確な稼働率の推定値に基づいた精度の高い工事工程計
画を立てることもできる.なお,Shiraishi ら 2)が起重機
浮体式洋上風力発電は近年,世界的にも注目されている. 船フックの振動抑制に関する検討を行なっているが,風車
わが国においても,環境省・洋上風力発電実証事業として, ロータの洋上接合時を対象とした研究は見当たらない.
2012 年 6 月に 100kW 風車を搭載したスパー型浮体式風力
発電施設の洋上設置に成功している(図-1).また,2013
年には 2MW 風車を搭載した実証機が設置・運転の予定と
なっている 1).スパー型浮体式洋上風車の特徴として,安
定性・生産性が高いことが挙げられる一方,喫水が深いた
め,風車を洋上で接合する必要があり,施工の難しさが課
題として挙げられている.
そのため本研究では,環境省・洋上風力発電実証事業に
おいて 2013 年に設置が予定されている 2MW 風車を搭載
したスパー型洋上風力発電設備の風車取り付け工事を対
象とした解析を行う.なかでも本研究では特に設置が難し
いとされているロータ部のナセルへの取り付け時を対象 図-1 100kW 試験機 1)
とし,マルチボディダイナミクスを用いて起重機船および
起重機船から吊り下げられたロータの時刻歴動揺解析を
行う(図-2).また,起重機船の係留索の本数を増加させ
ることでどの程度ロータの動揺が抑えられるのかを解析
により検証する.
最後に,解析結果から,想定海域の有義波高・有義波周
期の頻度分布表に基づき,ロータの動揺量を基準値として,
動揺基準値ごとに施工稼働率の予測をおこなう.
本研究に示すとおり,事前に起重機船やロータの動揺を
詳細に把握することで,ロータの動揺基準値の設定ならび 図-2 ロータ接合時イメージ
I_809
2.実証実験概要
平成 28 年の日本における浮体式洋上風力発電の実用化
に向けて,環境省・洋上風力発電実証事業にて平成 25 年
からの 2 年間,2MW 浮体式風車による実証実験が長崎県
五島市において予定されている.図-3 に,本研究で想定
する 2MW 級実証機の概要図を示す.
実証機に搭載される風車の架設にあたっては,現地分割
架設工法が採用される予定となっている.はじめに,施工
予定場所に図-3 に示される浮体部を着底させ,仮係留を
行う.その後,大型起重機船を用いて,浮体上に,タワー,
ナセル,ロータ(ハブおよび 3 枚のブレード)の順に洋上
で接合する.以上で完成した浮体式洋上風車を設置海域ま
で曳航し,本係留を行う.
本研究ではこのうち最も施工が難しいと思われるロー
タ接合時を対象として起重機船-ロータ系の動揺解析を
行う.ここで,ロータが取り付けられる浮体・タワー側は
海底に着底しているため,その動揺は無視できるものとす
る.ロータの接合の難易度が高い理由として,接合位置が
高いことと,ロータ軸がティルト角(ロータ軸と水平面の
偏角)8 度を有しているため,ロータを 8 度傾けた状態で
ナセルに対して横から取り付けなければならず,高い取り
付け精度が要求されるということが挙げられる(図-4).
本施工では,最大吊上荷重 3700tf の大型起重機船の使用 図-3 実証機の概要図
が想定されている.起重機船の主要諸元を表-1 に示す.
3.解析方法および解析モデル
3.1 解析ツール
(1)ADAMS 図-4 ティルト角説明図
ADAMS はマルチボディダイナミクスに基づき解析を
行う汎用機構解析ソフトウェアである. ADAMS では各剛 表-1 起重機船諸元
体に対する運動方程式を自動的に生成し,拘束条件を考慮 起重機船寸法 110m×50m×8.5m
しながら数値計算を行うことで,複雑な機構を持つシステ 計画喫水 4.3m
ムの解析を行うことができる 3). 起重機船高さ 132m(ジブ角度 66.5 度)
(2)KUBEM
KUBEM は京都大学で開発された高次パネルを用いた
境界要素法による線形流体力解析プログラムである 4). 3.2 解析方法
KUBEM では 8 節点四辺形パネルを用いて 1 次オーダー (1)運動方程式および流体力
の速度ポテンシャルを求めることで,浮体の周波数領域で 波浪中における起重機船の運動は以下の運動方程式であ
の付加質量,造波減衰係数および波浪強制力を計算する. らわすことができる 6).
(3)Hydrodyn
Hydrodyn はアメリカの National Renewable Energy ∞ d
Laboratory によって開発された流体力および係留力計算プ
ログラムである 5).流体力についてはポテンシャル流れを
仮定して計算し,係留力については準静的にカテナリー理
論を用いて計算する.本研究では係留力の計算部分につい 1,2, ⋯ ,6 (1)
て複合係留索の係留力を計算できるように変更した.複合 ∞
cos d (2)
係留索とは重量や剛性が一様ではなく,2 種類以上のチェ
ーンやワイヤが複合されているもののことをいう. ∞ lim → (3)
I_810
ここで,Mij は起重機船の質量マトリクス,Aij(∞)は j 方
(5)
向の運動に対する i 方向の付加質量,Kij は j 方向の単位イ ′
図-7 カテナリー理論複合係留索説明図
図-5 解析方法の概要図
, 1
(2)係留力
1 1
本研究では, カテナリー理論に基づき準静的に係留索1
本ずつの係留力を計算する.その際,海底との摩擦力およ
1 (8)
び係留索の伸びについては考慮しない.
図-6 に示すように,係留索の長さを L,海中単位長さ
, 1 1
重量を w,起重機船の係留索取り付け位置での係留力の水
平成分を HF,鉛直成分を VF とする.
1 1 (9)
カテナリー理論の基本式より, 係留索が海底に接してい
ない場合,アンカーと取り付け位置の水平距離 XF および
鉛直距離 ZF は以下のように表すことができる 7). また,アンカーに近い方の索鎖の一部が着底している場
′ 合は以下の式を用いる.
sinh tan sinh tan (4)
I_811
, なるよう,各係留索の初期張力を 100kN に決定した.そ
の結果,係留索の長さを 243m に設定した.
1 1
2
2 2
1 2 2
1
2 2
(10)
1 1
, 1 1
1 1 (11)
I_812
秒程度の短い周期の揺れが見られ,Yaw 方向では約 125
秒程度の長周期の動揺が観測されている.入射波周期 9s
230(m) と大きく離れた Yaw 方向の長周期動揺の周期は起重機船
の Yaw 方向の固有周期に近い値だと推測できる.
解析結果と計測データを比較してみると,Roll,Pitch 方
向の解析結果は計測データと周期の傾向が一致しており,
振幅もオーダーについては一致している.一方,Yaw 方向
ワイヤ部 の動揺では,解析結果の動揺振幅が計測結果の半分以下の
値となっている.この原因としては,今回の解析では考慮
していない変動波漂流力が Yaw 方向の動揺に影響してい
チェーン部 る可能性が考えられる.波漂流力は高次の非線形流体力で,
一次の線形流体力に比べて絶対量としては小さい.しかし,
図-9 係留索配置図 緩係留された浮体において,波漂流力は水平面内の位置保
持に影響を与え,その変動成分は長周期動揺を発生させる
8)
.波漂流力の動揺への影響については,今後,詳細に検
4.解析結果
討する必要がある.
解析結果
計測データ
解析結果
計測データ
I_813
解析結果
計測データ
I_814
るときに一番動揺が大きく,長手方向に波が入射するとき いう特徴が観察できる.
に一番動揺が小さくなる.実際の施工時には波の状況を見
て長手方向に波が入射するように起重機船を係留するが,
波向きが変化することも考え,本研究では入射方向を 45°
に設定した.
(3)解析結果および考察
解析はすべてのケースで 700 秒間行った.最初の 100
秒は無視して,600 秒間の結果のみを示す.起重機船は浮
面心の動揺を,吊り下げ点はその点における動揺を,ロー
タおよびフックはそれぞれの重心の動揺を出力した.
まずは,傾向の違う 2 ケース(Case2,Case10)の起重
機船,吊り下げ点,ロータ,フックそれぞれの応答結果を
詳しくみることで,ロータ吊り下げ時の動揺特性について
考察する.その後,各ケースにおけるロータの変位量の最
大値と最小値の差をまとめる. 図-15 吊り下げ点-フックブロック-ロータ
・Case2
図-17 には吊り下げ点,フック,ロータの Surge,Sway
方向の時刻歴応答を,図-18 には Surge,Sway,Heave 方 表-5 吊り下げ点-フックブロック-ロータの固有周期
向におけるパワースペクトルを示す. モード 固有周期(s) モード 固有周期(s)
図-17 より,Surge,Sway 方向のロータ変位はジブ吊り 1 2.63×109 6 4.24
下げ点の変位よりも大きい. 図-18 より Surge 方向のパワ 2 18.4 7 4.24
ースペクトル図を見てみると,ジブ吊り下げ点の Surge 方 3 16.2 8 1.53
4 15.4 9 1.53
向のパワースペクトルでは約 100s(=0.01Hz)でしかピーク
5 14.4 10 0.32
は見られないにもかかわらず,約 100s 程度のところ以外
に 16.1s (=0.062Hz),4.24s(=0.236Hz)あたりにもピークが見
表-6 解析ケース
られる. 16.1sは4.3で示したモード3の固有周期と一致し,
Case 有義波 有義 Case 有義波 有義
4.24s はモード 7 の固有周期と一致する. Sway 方向のパ
周期 波高 周期 波高
ワースペクトルでは 15.4s(=0.065Hz),4.24s(=0.236Hz)あた Case0 0(s) 0(m) Case9 6(s) 0.1(m)
りにピークが見られるが,これは 4.3 で示したモード 4 お Case1 4(s) 0.1(m) Case10 6(s) 0.3(m)
よびモード 6 の固有周期にそれぞれ一致する.Heave 方向 Case2 4(s) 0.3(m) Case11 6(s) 0.6(m)
のロータ変位およびパワースペクトルはほぼジブ吊り下 Case3 4(s) 0.6(m) Case12 6(s) 0.9(m)
げ点の変位およびパワースペクトルと一致している. Case4 4(s) 0.9(m) Case13 8(s) 0.1(m)
・Case10 Case5 5(s) 0.1(m) Case14 8(s) 0.3(m)
図-19 には吊り下げ点,フック,ロータの Surge,Sway Case6 5(s) 0.3(m) Case15 8(s) 0.6(m)
方向の時刻歴応答を,図-20 には Surge,Sway,Heave 方 Case7 5(s) 0.6(m) Case16 8(s) 0.9(m)
向におけるパワースペクトルを示す. Case8 5(s) 0.9(m)
図-19 より,Surge 方向の動揺は,吊り下げ点とロータ・
フックの動揺が逆位相であることがわかる.これは,ロー
タ・フックの Surge 方向の揺れの固有周期よりもかなり短
い周期で吊り下げ点が動揺しているために起こったと考
えられる.また,Surge 方向では吊り下げ点の動揺の方が
ロータの動揺に比べて大きく,Sway 方向では吊り下げ点
の動揺の方が小さいという複雑な挙動が観察できる.
図-20 より,Surge 方向のフックおよびロータのパワー
スペクトルでは 0.1Hz から 0.17Hz 間のスペクトルが卓越
しており,ジブ吊り下げ点の Surge 方向のパワースペクト
ルと同じ傾向を示している.一方,Sway 方向のフックお
よびロータのパワースペクトルでは 16.1s(=0.062Hz)に大
図-16 入射波方向
きなピークが見られる.これは Case2 のロータのパワース
ペクトルと同じ傾向であり,16.1s は 4.3 で示したモード 4
の固有周期と一致する.Case2 と違い,Surge 方向と Sway
方向でロータのパワースペクトルの傾向が大きく違うと
I_815
(a) Surge
(b) Sway
図-17 Case2 吊り下げ点・フック・ロータ変位
(a) Surge
(b) Sway
図-19 Case10 吊り下げ点・フック・ロータ変位
I_816
・全体結果 波の条件は 4.4 と同じであり,入射波の入射方向および
図-21~図-23 に Surge,Sway,Heave 方向の各ケース 解析時間も 4.4 と同様に後方 45°,解析時間 700 秒に設定
におけるロータ変位の最大値と最小値の差を図示する.ロ した.
ータの変位は施工稼働率を算出する際の基準となる. 解析ケースは4.4 の解析ケースのなかから施工可能性が
4~6 秒に比べて 8 秒の入射波を作用させると,ロータ 高いケースについてロータ動揺の違いを比較することを
と吊り下げ点の変位は急激に大きくなる.これは,起重機 目的として設定した(表-7).
船の Heave,Roll,Pitch 方向の固有周期に近づくためであ
ると考えられる.また,入射波周期 4 秒または 5 秒のケー
スではロータ,吊り下げ点ともに Surge 方向よりも Sway
方向の最大値と最小値の差の方が 2 倍以上大きい.一方,
6 秒または8 秒の入射波周期の波を作用させるケースでは
Surge 方向の方が Sway 方向よりも最大値と最小値の差が
大きい場合が多い.
表-7 解析ケース
ケース番号 有義波周期(s) 有義波高(m)
Case0 0 0
図-21 ロータ変位最大値と最小値の差(Surge) Case1 4 0.1
Case2 4 0.3
Case3 4 0.6
Case4 5 0.1
Case5 5 0.3
Case6 6 0.1
Case7 6 0.3
(2)係留索本数増加時の解析結果
表-8 に 4.4 における係留索 4 本のモデルのロータ変位
の解析結果と係留索本数増加時の解析結果の比較を示す.
図-22 ロータ変位最大値と最小値の差(Sway) 表-8 では係留索 4 本のモデルの結果と比較して 3mm 以
上動揺が低減しているところを青く塗りつぶした.図-25
にCase2 における係留索4 本のモデルと8 本のモデルの起
重機船の Yaw 方向の解析結果の比較を示す.
表-8より入射波周期4s, 5sのケースではロータのSway
方向の動揺は係留索の本数を4本から8本にすることで約
2/3 に低減することがわかる.一方,入射波周期 6s のケー
スではSway 方向の動揺は係留索の本数が増加してもほと
んどかわらない.また,Surge および Heave 方向において
はすべてのケースで係留索の本数が増加してもロータの
図-23 ロータ変位最大値と最小値の差(Heave) 動揺には影響を与えないことがわかる.解析結果を細かく
見ると,起重機船の動揺は Yaw 方向以外では係留索の本
4.5 係留索本数増加時の動揺解析 数のちがいによる変化はほとんどないことがわかった.ロ
(1)解析条件 ータ変位がSway方向だけで動揺の低減が見られる理由は,
係留索の本数増加によるロータの動揺低減度合いにつ 係留索の本数を増加させることで Yaw 方向の長周期動揺
いてみるため,起重機船の係留索を 8 本にしたモデルを作 低減効果があり,吊り下げ点の Sway 方向の動揺が低減さ
成し,解析を行った(図-24).各係留索は表-4 に示した れる結果ロータの変位がSway方向のみ低減されるためで
複合係留索とし, 長さは3.3 で示した係留系と同じく243m, あることがわかった.その一例が図-25 である.
アンカーから係留索取り付け点までの水平距離は 230m, 以上より,起重機船の係留索の本数を増加させると起重
初期張力は 100kN とした. 機船の Yaw 方向の長周期動揺が低減するため起重機船の
I_817
Yaw方向の動揺のうち長周期動揺が卓越している場合は, 5.2 施工基準
Sway 方向のロータ変位には低減効果がある.一方,Surge 本研究では施工基準としてロータの変位に着目する.ロ
および Heave 方向のロータの動揺は係留索の本数を増加 ータの変位の施工基準として変位の最大値と最小値の差
させても変化は見られない. を 20mm,40mm,80mm,200mm に設定し,それぞれの
基準に対する施工稼働率を計算する.最大値と最小値の差
についての解析結果と,解析結果の標準偏差に基づき推定
5.施工稼働率の算出
した 1 時間中の最大両振幅動揺値を起重機船の係留索 4
本のケースと係留索 8 本のケースでそれぞれまとめ,それ
5.1 波浪再解析データ ぞれの場合に関して施工稼働率を算出する.
本研究では施工予定場所である椛島北海域における過 1 時間中の最大両振幅動揺値の算出には,ロータの動揺
去 3 年間(2010 年 2 月~2013 年 1 月)の有義波高・有義 周期が約 15 秒であることから,波数を 240 として,式(12)
波周期の頻度分布データ(気象データに基づく再解析値) を用いた.
を用いて施工稼働率を算出する(表-9).
H ln N 4σ (12)
ここで,H は両振幅動揺値の最大値,N は波数,σは標準
偏差を表す.
表-8 ロータ変位解析結果比較
(a) 係留索 4 本
有義波周期
単位(mm) 4s 5s 6s
Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave
標準偏差 3 7 0.5 4 15 3 7 7 8
0.1m
有 最大値と最小値の差 12 31 3 21 62 18 40 30 46
義 標準偏差 7 20 1 11 47 8 21 21 24
0.3m
波 最大値と最小値の差 37 91 8 63 188 53 120 99 137
高 標準偏差 15 40 3
0.6m
最大値と最小値の差 76 181 16
(b) 係留索 8 本
有義波周期
単位(mm) 4s 5s 6s
Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave
標準偏差 2 4 0.5 4 9 3 7 7 8
0.1m
有 最大値と最小値の差 12 22 3 21 42 18 40 31 46
義 標準偏差 7 13 1 12 28 8 21 21 25
0.3m
波 最大値と最小値の差 38 66 8 61 127 53 122 98 138
高 標準偏差 14 25 3
0.6m
最大値と最小値の差 75 132 16
I_818
表-9 頻度分布表
有義波周期 T 1/3 [s]
0~ 0.5~ 1.5~ 2.5~ 3.5~ 4.5~ 5.5~ 6.5~ 7.5~ 8.5~ 9.5~ 10.5~ 11.5~ 12.5~ 13.5~ 14.5~ 15.5~ 16.5~ 17.5~ 18.5~ 19.5~ 20.5~ 21.5~ 22.5~
合計 平均
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5 11.5 12.5 13.5 14.5 15.5 16.5 17.5 18.5 19.5 20.5 21.5 22.5 23.5
0~0.2 0 0 60 1402 1621 1515 1187 1318 1615 1453 1457 795 288 64 19 0 2 1 1 3 3 1 0 0 12805 6.9
0.2~0.4 0 0 20 479 1262 1546 1124 575 339 170 77 27 31 22 5 1 1 2 5 1 7 4 2 0 5700 5.5
0.4~0.6 0 0 0 69 760 719 538 393 237 123 51 31 17 18 11 3 1 4 2 2 4 0 0 0 2983 5.9
0.6~0.8 0 0 0 2 262 509 276 232 122 99 29 27 18 30 10 3 2 2 2 2 0 0 0 0 1627 6.3
0.8~1.0 0 0 0 0 61 401 152 125 40 73 26 16 13 3 8 7 1 4 3 2 0 0 0 0 935 6.5
1.0~1.2 0 0 0 0 3 210 123 79 48 45 7 5 20 10 8 11 14 6 0 0 1 1 0 0 591 7.2
1.2~1.4 0 0 0 0 0 63 110 42 25 30 11 6 4 10 15 6 3 6 3 0 0 1 2 0 337 7.9
1.4~1.6 0 0 0 0 0 15 60 38 24 13 9 9 1 9 18 7 1 1 0 0 0 0 0 1 206 8.5
1.6~1.8 0 0 0 0 0 1 45 40 18 14 1 0 5 5 7 4 1 0 1 0 0 0 1 0 143 8.2
1.8~2.0 0 0 0 0 0 0 31 38 14 6 2 0 5 2 8 4 3 1 0 0 0 0 1 1 116 8.7
2.0~2.2 0 0 0 0 0 0 8 40 5 7 7 5 4 9 6 13 7 1 0 1 0 0 1 1 115 10.4
2.2~2.4 0 0 0 0 0 0 1 30 16 8 1 0 0 11 3 6 2 0 1 1 0 0 1 2 83 10.1
有義波高 2.4~2.6 0 0 0 0 0 0 0 21 20 6 3 0 0 0 0 6 0 1 1 1 0 0 2 0 61 9.5
H 1/3 [m] 2.6~2.8 0 0 0 0 0 0 0 6 9 6 6 1 0 0 1 4 7 2 1 1 2 1 2 0 49 12.3
2.8~3.0 0 0 0 0 0 0 0 1 18 3 3 1 0 1 0 0 2 1 0 3 2 1 1 0 37 11.4
3.0~3.2 0 0 0 0 0 0 0 0 15 7 3 0 0 2 0 0 0 1 0 1 1 1 0 0 31 10.2
3.2~3.4 0 0 0 0 0 0 0 0 8 9 3 1 0 8 0 0 0 1 0 1 2 2 0 0 35 11.7
3.4~3.6 0 0 0 0 0 0 0 0 1 11 1 1 3 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 18 10.1
3.6~3.8 0 0 0 0 0 0 0 0 1 20 3 2 3 0 0 0 0 0 2 0 1 0 0 0 32 10.4
3.8~4.0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 4 9 4 2 0 0 0 0 0 0 2 2 0 0 0 24 11.7
4.0~4.2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 5 2 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 16 11.8
4.2~4.4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 12.8
4.4~4.6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 12.7
4.6~4.8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 4 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 13.0
4.8~5.0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 13.2
5.0~5.2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 14.0
5.2~5.4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 14.0
合計 0 0 80 1952 3969 4979 3655 2978 2576 2107 1716 936 419 222 128 75 47 35 22 22 26 12 13 5 25974
表-10 判定表
(a) 基準 20mm
有義波周期
単位(mm) 4s 5s 6s 8s
Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave
有 0.1m 1時間中の最大両振幅動揺値 17 46 3 25 103 18 46 43 54 282 390 246
義 0.3m 1時間中の最大両振幅動揺値 49 135 9 75 309 54 139 136 162 848 1167 739
波 0.6m 1時間中の最大両振幅動揺値 101 267 19 149 619 108 277 276 324 1709 2323 1480
高 0..9m 1時間中の最大両振幅動揺値 151 401 28 224 929 161 416 416 486 2591 3472 2224
(b) 基準 40mm
有義波周期
単位(mm) 4s 5s 6s 8s
Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave
有 0.1m 1時間中の最大両振幅動揺値 17 46 3 25 103 18 46 43 54 282 390 246
義 0.3m 1時間中の最大両振幅動揺値 49 135 9 75 309 54 139 136 162 848 1167 739
波 0.6m 1時間中の最大両振幅動揺値 101 267 19 149 619 108 277 276 324 1709 2323 1480
高 0..9m 1時間中の最大両振幅動揺値 151 401 28 224 929 161 416 416 486 2591 3472 2224
(c) 基準 80mm
有義波周期
単位(mm) 4s 5s 6s 8s
Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave
有 0.1m 1時間中の最大両振幅動揺値 17 46 3 25 103 18 46 43 54 282 390 246
義 0.3m 1時間中の最大両振幅動揺値 49 135 9 75 309 54 139 136 162 848 1167 739
波 0.6m 1時間中の最大両振幅動揺値 101 267 19 149 619 108 277 276 324 1709 2323 1480
高 0..9m 1時間中の最大両振幅動揺値 151 401 28 224 929 161 416 416 486 2591 3472 2224
(d) 基準 200mm
有義波周期
単位(mm) 4s 5s 6s 8s
Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave Surge Sway Heave
有 0.1m 1時間中の最大両振幅動揺値 17 46 3 25 103 18 46 43 54 282 390 246
義 0.3m 1時間中の最大両振幅動揺値 49 135 9 75 309 54 139 136 162 848 1167 739
波 0.6m 1時間中の最大両振幅動揺値 101 267 19 149 619 108 277 276 324 1709 2323 1480
高 0..9m 1時間中の最大両振幅動揺値 151 401 28 224 929 161 416 416 486 2591 3472 2224
I_819
5.3 施工稼働率
表-10 に起重機船の係留索 4 本の場合のロータの変位 表-13 施工稼働率(%)
の基準 20mm,40mm,80mm,200mm に対する 1 時間中 基準 係留索 4 本 係留索 8 本
における最大両振幅動揺値による判定表を示す.両振幅動 (mm) (a) (b) (a) (b)
揺値が基準以上の場合に赤で塗りつぶしている.表-11 20 0 0 0 0
に各基準における施工可能ケースを示す.表-12 には施 40 0 11 11 11
80 16 22 22 29
工可能ケースに基づく施工可能条件を示す.表-13 には
200 33 45 45 45
その施工条件の波浪頻度分布表における出現割合を計算
(a) 1 時間中の最大両振幅動揺値より
し,施工稼働率として示す.
(b) 10 分間の最大値と最小値の差より
同様に,表-13 に起重機船の係留索 4 本の場合のロー
タの変位の基準 20mm,40mm,80mm,200mm に対する
起重機船の係留索の本数を増加した時の動揺解析では,
最大値と最小値の差による施工稼働率,係留索 8 本の場合
係留索本数の増加により起重機船の Yaw 方向の長周期動
の 1 時間中の最大両振幅動揺値による施工稼働率および
揺が抑えられ,ロータの Sway 方向の動揺が低減されるこ
係留索 8 本の場合の最大値と最小値の差による施工稼働
とがわかった.ただし,起重機船の Yaw 方向の動揺にお
率を示す.
いて短周期動揺が卓越している場合は,係留索の増加によ
10 分間の最大値と最小値の差より求めた施工稼働率よ
る動揺の低減効果はないといえる.
りも,1 時間中の最大両振幅動揺値に基づく施工稼働率の
最後に,本研究の解析結果と過去 3 年間の波浪頻度分布
方が低い値をとっている.また,係留索 4 本の場合に比べ
データを照らし合わせて各施工基準における施工稼働率
て係留索 8 本の場合の方がロータの変位が小さいケース
を算出し,本研究手法の有効性を示した.
があるため,施工稼働率が高くなっていることがわかる.
6.結論および今後の課題 参考文献
1) 京都大学 HP:100kW 風車を搭載した浮体式洋上風力発
電施設の洋上設置に成功
実際の起重機船動揺の計測データと本研究における解
2) S.Shiraishi, T.Suzuki, T.Hiraishi, H.Kawahara, T.Horichi and
析モデルとの比較を行ったところ,Roll および Pitch 方向
N.Nishihara: Study on a System for Decreasing Vibration of a
は周期の傾向が一致し,振幅もオーダーについては一致し
Hang Hook of Floating Crane, Proc. of the 11th International
ていた.一方,Yaw 方向の変位は計測データよりも解析
Offshore and Polar Engineering Conference, Vol. 1, pp.
結果の方が半分以下と小さく,本研究の解析モデルでは
53-60, 2001
Yaw 方向の動揺を過小評価する傾向にあることがわかっ
3) MSC.Software:ADAMS (http://www.mscsoftware.co.jp)
た.本研究では起重機船に作用する波漂流力を考慮してい
4) 川辺俊輔,渡邊英一,宇都宮智昭:非正則周波数の除
ないため,波漂流力を考慮して解析を行うことが今後の第
去された波浪回折・発散問題のための高次境界要素法,
一の課題であるといえる.
計算工学講演会論文集,Vol. 7,pp. 385-388,2002
ロータ吊り下げ時の動揺解析ではロータの複雑な挙動
5) J.Jonkman: Dynamic Modeling and Loads Analysis of an
が確認できた.具体的には Surge と Sway で動揺の傾向が
Offshore Floating Wind Turbine, Technical Report
違うことや,吊り下げ点は長周期でしか揺れていないにも
NREL/TP-500-41958, 2007
かかわらず固有周期に対応するとみられるピークが大き
6) 柏木正,岩下英嗣:船体運動 耐候性能編,p. 52,2012
く出ていることや,フックおよびロータがジブ吊下げ点と
7) 吉田宏一郎:海洋構造力学の基礎,p. 141-149,2010
は逆位相で揺れる場合もあること等が挙げられる.また,
8) 元良誠三:改訂版船体と海洋構造物の運動学, pp. 39-49,
ロータの変位は入射波の周期が 8s になると急激に変位が
1997
大きくなることが確認できた.これは起重機船の Heave,
Roll,Pitch 方向の固有周期に近づくためであると推測でき
(2013 年 3 月 18 日 受付)
る.
I_820