公益財団法人 東レ科学振興会 第11回事業報告書(昭和45年度)

Toray Science Foundation ANNUAL REPORT1970

70-1112 ◆ 補 償巻 線付 リ ニ ア 誘導 電 動 機 の研 究

Research on Linear Induction Motors with Compensating Winding

東京大学教授 山村昌 prof., Univ of Tokyo Sakae Yamamura

東 京 大 学 助 手 伊 藤 春 雄 Assist.,Univ. of Tokyo Haruo Ito

東 京 大学 大学 院 石 川 芳 寿 Postgraduate,
Tokyo Yoshitoshi
Univ of
Ishikawa
公益財団法人 東レ科学振興会 第11回事業報告書(昭和45年度)
Toray Science Foundation ANNUAL REPORT1970

The linear induction motor has open air ｇａｐ ａｎｄ at its entry andｅχit end occurs transient phenomenon, which
distorts magnetic field patternin the air
ｇａｐ and changes motor performances. This phenomenon has been know
as end effect. However,
so】ution of the magnetic field in the air gap, which took end effect into account, has not
be available* We succeeded to derive three kinds of solutions and they enable to calculate motor performances
under influence of end effect.The end effect degradates motor performances very much. We contrived two new
types of ］inear induction motors, from which adverse influences of the end effect are removed. They are the lidear
induction motor with compensating winding and the linear induction motor of wound secondary type.

研究 概 要
目 的 こ の対策として， 補償巻線 付リ ニアモータと二次巻線形 り
将来の超高速列 車の推進方式 として リュア誘導電動 機（ 以 ニアモータの２種類を 考案した。前名は入 口端の手前に ２極
下 リニアモ ータとい う）が有力視されて，この開発研究がわ の補償巻線を設け ることに よって，入口端 効果の発生を防 止
が国を含めて各国で行なわれてい る。しかし普通の回 転形の する方法で，前述の電磁界方程式の解の延長として得られた

誘導電動 機の理論の延長 として リュアモータを扱ってい るた 補償理論に 基づくものであ る。二次巻線形は，二次導体を巻

め，重大な理論上の欠陥を残していた。これは端効果と呼ば 線形にするこ とに よって端効果 の除去を行なうも の で あ る

れ る現象に関す るもので， このために推力， 効率，力率など が，このため別種の端効果を発生す ることを明らかにして，
の性能が低下し，特に高速モータでは，性能の低 下 は 著 し この除去法をも見出した。今後こ れらの新しい 形のリニアモ
く，高速リニアモータの実用 性は疑わしくな る。 本研究は， ータについて実験を 行なって，その性能を向上し て行く予定
端効果を含めたリニアモータの理論を確立し，端 効果 の補償 であ る。
理論を導いて，こ れに よって高速性能の良好なリニアモータ
を開発す ることを 目的 とする。 発表 論 文
概 要 1）山村， 伊藤, Ahmed: 43 年電 気四学 会辿合大会論文 集，
リニアモータのギャップは直線状で，入 口と出口とがあっ 491
2）山村， 伊藤, Ahmed : 43年電 気学 会東京支部大会論文集
て，二 次導体か人口端に 突入し，また出口端で脱出するとき
145
に生ずる過渡現象のために， ギャップ中の進行磁 界を乱す。 3）山村} Ahmed, 石川:43 年電気学 会東京支部人会論 文集，
こ れが端効果であって， その存在は従来から知られていた。 144
4） 山村,伊藤, Ahmed:44 年電気四学 会連合大会,論文 集,570
し かしこれまでリニアモータのギャップ中の電磁 界方程式の
5） 山村，石川:44 年電気四学会連合大 会論文集, 571
実用的な解は 得られていなかった。 本研究室で３種類の解法 6）山村，石川，伊藤:44 年電気学 会東京支部論文集, 234
を得ることに 成功し，これに よってリニアモ ータについてこ 7）山村， 伊藤:45 年電 気四学 会連合大 会論文集, 511
れまで未知であったいくつかの現象を見出した。 例えば，入 8）山村， 石川，伊藤:45 年電気四学会連合大会論文集,510
9）山村， 伊藤:45 年電 気四学 会東京支部大会論文集, 138
口端と出 口端で発生す る端効果進行磁界の波長， 進行速度，
10）山村， 石川:45 年電気学 会東京支部大会論文集, 137
侵入の深 さなどの細部構造を明らかにし，そ の結果，低速機 11）山村，伊藤, Ahmed: 電 気学会雑誌45年 ３月
と高速機とで端効果の影響 の現れ方が，正反対であることが 12）山村，伊藤，石川： 電気学 会雑誌45年３月, P P- 459 ―
見出された。低速機では端 効果波の速度が同 期速度以上にな 467
13）山村，伊藤， 石川： 電気学 会雑誌46年２月，p･P. 309―
り得て， そのために同期速度以上で も推力を 発生す ることを
318
発見した。 低速機では端効果 の影響は比較的 少なく，性能を 14）山村，伊藤， 石川： 電気学会雑誌投 稿中
向上することもあ る。このために 低速機のみの実験結果が拡 15）山村，伊藤， 石川： 電気学会回転機研究会資料，46年２
大適用されて， リニアモータに対して楽観的な見 解が一般的 月
16）山村:46 年電気学 会全国大会シンポジウムニf 稿 S.4 ―2
であった。し かし高速モータでは端 効果波の速度は同期速度
17）山村，伊藤:46 年電 気学会全国大会論文集, 434
以上にはならず，小すべりの重要な 運転領域で推
叺 Ｉ 力，力率， 18）山村， 石川:46 年電気学会全国大会論文M, 435
効率を激減するので，これを放置しておいたのでは，高速 リ
ニアモータの実用性か危くなるこ とを明らかにした。