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TA1-4 第 32 回ファジィシステムシンポジウム 講演論文集 FSS(2016 佐賀大学)

迷路探索ロボットの速度追従性能の検証
Verification of Speed Follow-up Performance for Maze Searching Robot.

⃝ 1 新保 佑京, 2
鈴木 秀和
⃝ Ukyo Shimbo,
1 2
Hidekazu Suzuki
1
東京工芸大学大学院
1
Graduate School, Tokyo Polytechnic University
2
東京工芸大学
2
Tokyo Polytechnic University
Abstract: The Micromouse is a robot searching for a maze. Micromouse has some technical problems.
Especially, speed control is important to perform a high-speed and stable run. In a motor speed control,
PID control is generally employed. But it is difficult to adjust to optimum parameters. In this report, we
verify adjusting parameters for Micromouse using several adjustment rules.

1 緒言

マイクロマウス競技とは,次世代の技術者の人材育
成や,国際親善・連携を目的としたロボット競技の一つ
である.この競技は縦横 16×16 マスで構成された未知
の迷路を走破するタイムを競う競技である (図 1).短い
時間で迷路を走破するためには,優秀な知能と,高速
で車体を操作するための制御が要求される.近年,競 図 2: ロボット
図 1: 競技フィールド
技参加者の多くはロボットの駆動部に制御が容易なス
テッピングモータでなく DC モータを用いており,マ
2.2 ソフトウェア
イクロマウス競技において必須技術となっている.DC
ソフトウェアの技術的課題として挙げられるのは,
モータの速度制御は PID 制御が一般的であり,各ゲイ
複雑な迷路をいかに短時間で攻略するかである.迷路
ンパラメータの調整は極めて重要である.しかし,ロ
にはゴールに辿り着くまでの経路は複数存在している
ボットに対して最適なパラメータをを与える代数的な
が,経路の最適化によって最短経路を選択せずに遠回
方法は存在しないため,本研究ではパラメータ調整を
りであるが直線の経路を高速で走行する方法や,迷路
用いて即応性の検証を行い,最適値の導出を目指す.
が階段状になっている箇所を斜めで抜けるよう経路を
最適化することで,大幅な時間短縮を図ることが出来
2 マイクロマウスにおける技術的課題 る.以上のように持ち時間 7 分,走行回数 5 回の中で

2.1 ハードウェア 複雑な迷路を探索し,得た情報から最短経路を導出,


最適化を行う高度な知能的探索アルゴリズムが必要で
マイクロマウスを高速で制御するには,外部からの ある.
力が走行に影響しない車体が理想的である.そのため
近年の競技会では駆動部に小型な直流モータを採用し 3 PID 制御
たロボットが主流である.駆動部に直流モータを用い PID 制御とは制御工学におけるフィードバック制御
る場合,ロータリーエンコーダと併用することで,速 の一つであり,入力値の制御を出力値と目標値との偏
度,距離を制御することが可能となる.しかし,小型 差,その積分,および微分の 3 つの要素によって行う
な直流モータを使用するためトルクが非力であり,ロ 方法のことである.本研究の制御対象はロボットの駆
ボットの重量,要求する最高加速度,最高速度を踏ま 動部にあたる DC モータであり,速度制御に積分項は
えた減速比を設定しなくては制御が困難になってしま 重要では無いため検証では PD 制御と,インパルス関
うといった問題がある.ロボットを高速かつ正確に制 数状の操作量を抑制する微分先行型 PD 制御で比較を
御するには,これらの要件に加え慣性力や遠心力,摩 行う.検証方法は各制御方法に対して各調整則に基づ
擦力を考慮したハードウェアの設計が求められる. いた調整を施し,ロボットにステップ状の関数 (目標回

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TA1-4 第 32 回ファジィシステムシンポジウム 講演論文集 FSS(2016 佐賀大学)

転数 1000[rpm]) を与え,応答波形を取得する.これを
表 1: ロボットの仕様
10 回繰り返し,平均したデータから目標速度に収束す
るまでの時間を比較し,評価を行う.また,本検証で
用いる調整則は試行錯誤法,ZN 限界感度法,ZN 過渡
応答法,CHR 法であり,図 2 の迷路探索ロボットに組
み込んで行う.ロボットのパラメータを表 1 に示す.

3.1 ZN 限界感度法
限界感度法は,閉ループの応答波形に基づいた調整
方法である.比例動作でロボットの発振が持続する安
定限界まで P ゲインを上げていき,この時の P ゲイン
(限界感度 Ku) と,発振周期 (限界周期 Pu)をそれぞ 表 2: 最適パラメータ表
れ最適パラメータ表 (表 2) に代入することで PID パラ
メータが求まる調整則である.

3.2 ステップ応答法
ステップ応答法はロボットのステップ応答波形に基
づく方法である.このステップ応答法にはいくつかの
種類が存在し,CHR 法,ZN 過渡応答法はこれに分類
される.ロボットにステップ状の入力を与え,出力さ
れた応答曲線の外形からパラメータを決定し,ステッ
プ応答法の最適パラメータ表 (表 2) に代入することで
PID パラメータが求まる調整則である.
3.3 検証結果
検証結果を図 3,図 4 に示す.微分先行型 PD 制御
は緩やかな応答をしているのに対し,通常の PD 制御
はインパルス関数状の応答が確認できる.この応答は 図 3: PD 制御の応答結果
車体がスリップしていることが考えられるが,走行に
影響が生じるほどではないため,速度を競う競技とい
う観点から通常の PD 制御を採用する.また通常の比
例微分制御のグラフから試行錯誤法は 170[ms],ZN 限
界感度法は 350[ms],CHR 法は 200[ms],ZN 過渡応答
法は 100[ms] で目標速度に収束していることが読み取
ることができ,ZN 過渡応答法は収束するまでの時間,
オーバーシュートの大きさから本検証でのロボットに
対して相性が良いことがわかる.

4 結言 図 4: 微分先行型 PD 制御の応答結果
これらの検証結果より,PID パラメータ調整則はマ
イクロマウスに応用可能であり,試行錯誤的に調整を CQ 出版,2004

施すよりも良好な結果を得ることができた.今後の課 [4] 公 益 財 団 法 人 ニュー テ ク ノ ロ ジ ー 振 興 財 団 ,


題として,マイクロマウスの知能に相当する迷路探索 http://www.ntf.or.jp/

アルゴリズムの改良を行い,探索効率の向上を目指す.
連絡先
東京工芸大学大学院工学研究科 新保佑京
参考文献 E-mail: robo vi@yahoo.co.jp
[1] 須田信英:システム情報ライブラリー 6 PID 制御,朝倉
書店,1992

[2] 山本重彦,加藤尚武:PID の基礎と応用,朝倉書店,1997


[3] 広井和男:シミュレーションで学ぶ自動制御技術入門,

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