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機械設計の基礎知識7

メカトロニクスを支える部品

もくじ
1. メカニズム …2
2. アクチュエータ …3
3. センサ …4
4. エレクトロニクス …4
5. コントロール …5

株式会社イプロス
Tech Note 編集部
産業用ロボットや FA システム機器、工作機械、半導体製造技術など、
私たちのライフスタイルを支える技術は大きく変化しています。それを
支えているのが、メカトロニクス技術です。機械・電気・ソフトウェア
を融合したメカトロニクス技術は、
機械設計には欠かせません。今回は、
メカトロニクスの基礎技術要素であるメカニズム、アクチュエータ、セ
ンサ、エレクトロニクス、コントロール(制御)の説明をします。

図1:さまざまな産業
で応用されているメカ
トロニクス

車両制御 工作機械 情報機器

3 次元計測器 産業用ロボット 半導体や電子基板の


製造装置

1. メカニズム
メカニズムとは、機構が動く仕組み(からくり)です。回転運動を往復
運動に変換する代表的な機構、クランク機構を例に見てみましょう
(図 2)

機械設計の基礎知識 7:メカトロニクスを支える部品 2

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図2:クランク機構の
概略図
上から
見た図

モータ

横から 連接棒
見た図
直進運動

モータで 1 次プーリ
回転運動 スライダ ガイド
クランク円板
ベルト 2 次プーリ

クランク機構は、クランクとスライダを連接棒(コネクティング・ロッド)
で結合した構成になっています。これを実現するには、以下のような項
目を具体的に検討します。

・それぞれの要素が、どのように関係して動くのか
・自由度はどれくらいか
・モータの出力(トルク、回転数、慣性モーメントなど)は、どの程
度必要か
・回転運動による摩擦や振動は、強度や性能に影響しないか
・ガイドの位置決め精度・組立精度や、スライダの移動範囲はどの
程度必要か
・コストはいくらか

メカニズムを考える際には、簡単な絵を描きながら必要な項目を考えて
いくと、イメージが湧きやすく、他の人との共有も容易です。

2. アクチュエータ
アクチュエータは、入力されたエネルギーを機械的なエネルギーへと変

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換する駆動装置です。電気・空気・油などのエネルギーを、入力エネ
ルギーとしてメカニズム側へ出力します。電気エネルギーを利用する代
表例がモータです。制御性に優れることから、さまざまな機械に利用さ
れています。エアーシリンダや油圧アクチュエータは空気や油のエネル
ギーを利用します。注射器のように押し引きするピストンで稼働し、工
場内の設備や建設機械、プレス機械など、比較的大きな力を必要とす
る現場で用いられます。

3. センサ
センサは、メカニズムの状態(位置・角度・速度・加速度・質量・力)
や周辺の物理量(音・光・温度・圧力・流量)を計測し、電気量に変
換してコントローラに受け渡す装置です。使用するセンサは、以下の順
序で選定します。

1:どの物理量を測るのか決める
2:センサのスペックが、設計条件や欲しい測定精度を満たしている
かを確認する
3:コストや取り付け場所などの制約条件を考慮し、使用するセンサ
を決定する

高精度な制御には、センサで計測した値と目標値とのずれを修正する
フィードバック制御が不可欠であり、センサの精度・分解能はとても重
要です。センサにはいろいろな種類があるため、長所と短所をよく把握
して選定しましょう。

4. エレクトロニクス
アクチュエータを動かすための電源装置には、直流電源装置と交流電
源装置があります。アクチュエータの仕様が、直流(AC)の場合は電

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流を切り替えながら供給する回路が必要であり、交流(DC)の場合は
インバータ回路(交流の周波数を切り替えながら供給する回路)が必
要です。また、以下の回路・周辺機器も必要です。これらについても
知識を持っていると、機械設計の幅が広がるでしょう。

・駆動回路(アクチュエータに与える電気を調整して動かす回路)
・センサ回路(微弱なセンサ信号を扱うための回路)
・制御回路(正転、逆転、停止を効率良くコントロールする回路)
・A/D 変換コンバータ(センサからのアナログ信号をコンピュータが
処理できるデジタル信号へ変換する機器)
・インターフェイスボード(デジタル信号を並列あるいは直列に入力・
出力するボード)

5. コントロール
機械を思い通りに動かすためにはコントロール(制御)技術が必要です。
一般的な制御方法として、フィードバック制御とシーケンス制御がありま
す。フィードバック制御とは、実際の値と目標値の差を計算し、その差
が小さくなるように入力信号を変えていく制御です。一方、シーケンス
制御とは、あらかじめ決められたプログラム通りに機械を動かす制御で
す。このような制御を古典制御といい、代表的なものに PID 制御があり
ま す。PID 制 御とは、比 例 ゲイン(Proportion gain)
、積 分 ゲイン
(Integral gain)
、微分ゲイン(Differential gain)を調整しながら動作さ
せる制御方式です。この特性を利用して望ましい応答を得るためには、
伝達関数やラプラス変換の知識が必要です。また、機械を動作させる
ためには各種プログラムのスキルが欠かせません。メカトロニクスを駆
使する技術者には、これらの技術をバランスよく統合できる高度な能力
が求められます。

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図3:産業用ロボット メカニズム
に使われているメカト
アーム
ロニクス コントロール
アクチュエータ

DC サーボモータ

エンコーダ

センサ

エレクトロニクス

いかがでしたか? 今回は、メカトロニクスの基礎技術要素であるメカ
ニズム、アクチュエータ、センサ、エレクトロニクス、コントロール(制御)
について説明しました。次回は機械設計における規格とリスクマネジメ
ントの解説をしていきます。お楽しみに!

機械設計の基礎知識 7:
メカトロニクスを支える部品
初版 2017 年 8 月 9 日

著者: 関東学院大学 理工学部 機械学系 
専任講師 西田 麻美

発行元: 株式会社イプロス Tech Note編集部


E-mail:media@ipros.jp
URL:https://www.ipros.jp/technote/

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