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INSTRUCTIONS

TM-57553FST4

WinSPMソフトウエア

この取扱説明書をよく読み,正しくお使いください。
お読みになったあとも,いつでも取り出せるよう,
大切に保管してください。

ITM-57553FST4-1
SEP2007-17120252
Printed in Japan
TM-57553FST4

WinSPMソフトウエア

装置を扱う前には,この取扱説明書を必ずお読みになり,記載
されている内容をよく理解した上で,正しくお使いください。
ご注意
• 当社の事前了解なく,本装置を改造すること,当社製品以外の付属品などを装着すること,故障個
所を自ら修理すること(冷却系パイプ交換等),また当社認定のサービス員限定の調整個所(締め付
けトルクの変更等)の調整は固くお断りします。故障,および事故につながりかねません。これに抵触
する場合は,当社または当社関連会社による保証および保守契約の対象とならないことがあります
のでご注意ください。
• 本装置の補修用性能部品(装置の性能を維持するために必要な部品)の保有期間は,設置後 7 年
です。なお,この保有期間終了後の取り扱いについては,補修用性能部品保有期間満了前に,当社
または日本電子データム㈱指定のサービス窓口にご相談ください。装置および部品の種類によって
は,経年装置サービス料金を別途申し受けます。
• 本装置を安心してご使用頂くためには,お客様自身で行う日常点検が重要ですが,さらに,装置消
耗部品の交換時,または装置管理する上で適切な時期,間隔で,当社指定のサービス員による装置
全体の点検を受けられることをお奨めします。適切な装置管理・点検のない状態で発生した事故,
故障については責任を負いかねます。
• 本装置を納入後に,移設(屋内外を問わず)や輸送が必要になった場合,および転売(移設を伴わな
い場合も含む)や廃棄を行う場合は,必ず当社または日本電子データム㈱指定のサービス窓口にご
連絡ください。当社指定のサービス員または当社指定の技術者以外によって移設や輸送が行われ
た場合は,その後に生じた事故や故障について,当社は責任を負いません。特に設置が不充分なま
ま稼動されると,水漏れ,火災,感電等の事故が発生する恐れがあります。
• この取扱説明書および記述してあるソフトウェアの仕様・内容は,予告なく変更することがあります。
• この取扱説明書および記述してあるソフトウェアの内容は,作成に万全を期していますが,誤りや不
備な点にお気付きのときは,当社または日本電子データム㈱指定のサービス窓口にお知らせくださ
い。なお,目的に応じた組み合わせができる特長をもつ装置としての性質上,いくぶん説明不足にな
りがちですが,その点ご理解の上ご了承願います。
• この取扱説明書および記述してあるソフトウェアを運用した結果の影響につきましては,直接的,間
接的にかかわらず,当社はいっさいの責任を負いかねますので,ご理解の上ご了承願います。
• この取扱説明書および記述してあるソフトウェアの内容の一部または全部を当社に無断で使用,転
載,複写することは禁止されています。
• この取扱説明書および記述してあるソフトウェアの使用に際し,製品に「ソフトウェア使用許諾契約
書」が添付されている場合は,その規定に準拠します。
© Copyright 2007 JEOL Ltd.

• 本装置,ソフトウェア,および取扱説明書は,外国為替および外国貿易法の安全保障輸出規制品に
該当する場合がありますので,日本国外に持ち出すときは当社までお問い合わせください。

登録商標
• Windows は, 米国マイクロソフト社の登録商標です。
• その他の各製品名は, 各社の商標または登録商標です。

製 造
日本電子株式会社 〒196-8558 東京都昭島市武蔵野 3-1-2
TEL (042) 543-1111
FAX (042) 546-3353
ホームページ http://www.jeol.co.jp

注: 装置の修理やお問い合わせは,当社または日本電子データム㈱指定のサービス窓口に
ご連絡ください。
日本電子株式会社から提供するソフトウェアをご使用になる前に,必ず下記「使用許諾契約書」をお読みください。
この契約書の内容にご同意いただけない場合は,ソフトウェアをご使用にならず,日本電子株式会社にご連絡くださ
い。

ソフトウェア使 用 許 諾 契 約 書
本使用許諾契約書は,お客様と日本電子株式会社(以下日本電子という)との間で,日本電子が所有するソフトウェア
(以下許諾ソフトウェアという)の使用権の許諾について合意するものです。
第1条(使用権)
許諾ソフトウェアの使用権とは,購入いただき日本国内に設置された日本電子製品において,お客様が許諾ソフトウェア
を使用する権利をいいます。
第2条(使用許諾)
1. 日本電子はお客様に対し,許諾ソフトウェアの日本国内における非独占的かつ譲渡不能な使用権を許諾します。
2. お客様は,許諾ソフトウェアをお客様の業務遂行の目的に限定して,一台のコンピュータシステムにインストールして
使用することができます。
3.お客様は,許諾ソフトウェアを再使用権の設定その他の方法で第三者に使用させること,開示すること,および,いかな
る場合にも日本国外に持ち出すことはできません。
第3条(譲渡等の禁止)
1. お客様は,許諾ソフトウェアの使用権を第三者に譲渡,転貸,開示し,または占有を移転することはできません。
2. お客様は,許諾ソフトウェアの全部または一部を修正,改変,リバースエンジニアリング,逆コンパイルまたは逆アセン
ブルすることはできません。
第4条(複製禁止)
お客様は,許諾ソフトウェアをその全部を,若しくは一部であるかを問わず複製することはできません。
第5条(許諾ソフトウェアの権利)
許諾ソフトウェアに関する著作権等一切の権利は,日本電子に帰属します。

第6条(保証)
1. 許諾ソフトウェアをお客様が改造した場合は,正常な動作を保証しません。
2. 許諾ソフトウェアに瑕疵がないこと,お客様の特定の目的のために適切であることまたは有用であることついて保証す
るものではありません。
第7条(日本電子の免責)
日本電子は,許諾ソフトウェアの使用または関連して生じたお客様および第三者の損失,損害等あるいは第三者からの
お客様に対する請求に対していかなる責任も負うものではありません。
第8条(秘密保持)
お客様は,本契約により日本電子から提供された許諾ソフトウェアおよび本契約の内容について秘密を保持するものとし,
日本電子の事前の文書による承諾なしに,第三者に開示あるいは漏洩してはならないものとします。
第9条(有効期間)
1. 本契約は,お客様が本契約に同意頂いた日からその効力を生じ,次条に基づいて本契約が解除されない限り,有効
に存続するものとします。
2. 前項の規定にかかわらず,第8条(秘密保持)の規定は有効期間終了後も存続します。
第10条(契約の解除)
お客様が下記のいずれかの事項に該当した場合には,日本電子は何等の催告なくお客様への通知により,直ちに本契
約を解除することができます。なお,それによって蒙った損害を請求することができます。
(1) 本契約条項のいずれかに違反する事由が発生したとき,
(2) 差押え,仮差押え,仮処分,競売,破産,会社整理,会社更生手続等の申し立てまたは公租公課の滞納処分を受
けたとき。
第11条(契約終了後の措置)
第9条第1項または第10条の規定により本契約が終了または解除された場合,お客様は許諾ソフトウェアを破棄し,その
旨を日本電子に通知するものとします。
第12条(協議)
本契約書に定めのない事項に関しては,お客様と日本電子は信義誠実の原則に基づき,協議し解決するものとします。

以上
本書の表記と用語

■装置の修理やお問い合わせに関する用語例
当社 日本電子㈱を指しますが,当社関連会社を含めて云う場合があります。

サービス窓口 特定のサービス窓口を明示している場合を除き,当社または日本電子
データム㈱指定のサービス受付窓口を指します。通常サービスの受付
はコールセンタでご依頼を賜りますが,各地のサービスセンタで対応させ
ていただく場合もあります。

納入・サービス員 サービス員の所属を特定している場合を除き,当社または当社関連会
社が,その責任において派遣する納入またはサービス要員を指します。

サービスセンタ サービスセンタの所属を特定している場合を除き,当社または日本電子
データム㈱の各地に所在するサービスセンタを指します。

■表記例
◇ 注意 ◇ 使用上の注意を示します。

" 説明に対する注釈です。

) マニュアルの参照箇所を示します。

1, 2, 3 連続した手順で作業するときに付けます。
◆ 1回の操作で, 作業が終了するときに付けます。
[File] 画面上に表示されるコマンドやパラメータなどの文字は, [ ]で囲んで表
記します。
[File]-[Exit] コマンドをプルダウンメニューから実行するときは, メニュー名とコマンド
名を「-」でつないで表します。 たとえば, [File]メニューを選んで[Exit]
コマンドを実行する場合は, [File]-[Exit]と表記します。

Ctrl キーボードのキーは, で囲んで表記します。

■マウス操作の用語例
マウスポインタ マウスに連動して動く画面上に表示される矢印型の記号のことで,メニ
ューの項目,コマンド,パラメータなどを指定するのに使います。
状況に応じて形が変化します。

クリック マウスの左ボタンを押して離す操作のことです。

右クリック マウスの右ボタンを押して離す操作のことです。

ダブルクリック マウスの左ボタンを2回続けて,すばやくクリックする動作です。

ドラッグ マウスの左ボタンを押したままマウスを移動し, ボタンを離すまでの動作


です。
目 次
安全上の注意
使用上の注意
1 測定操作
1.1 WinSPMソフトウェア使用時の基礎知識 ...........................................1-1
1.1.1 使用の前に..............................................................................................1-1
1.1.2 用語解説 ..................................................................................................1-1
1.2 ユーザー名の管理..........................................................................................1-6
1.3 測定ソフトウェアの基本操作 ....................................................................1-8
1.3.1 SPM測定の選択について ...............................................................1-8
1.3.2 SPM測定操作画面.............................................................................1-9
1.3.3 アイコンドックとショートカットアイコン .....................................1-11
1.3.3a 共通アイコンドックとアイコン ............................................1-11
1.3.3b 簡易操作モード用アイコンドック .....................................1-12
1.3.3c 詳細操作モード用アイコンドック .....................................1-13
1.3.4 ラインモニタの操作 .........................................................................1-15
1.3.5 測定履歴の操作................................................................................1-15
1.3.6 簡易操作モードの基本操作 ........................................................1-16
1.3.6a コントロールダイアログ.........................................................1-16
1.3.6b 入力信号の切り替え.............................................................1-18
1.3.6c オプション測定の切り替え .................................................1-19
1.3.6d 各種コントロールダイアログの呼び出し......................1-20
1.3.7 詳細操作モードの基本操作 ........................................................1-21
1.3.7a コントロールダイアログ.........................................................1-21
1.3.7b SPM測定モードの切り替え...............................................1-23
1.3.7c 測定設定コントロールダイアログの呼び出し ...........1-24
1.3.8 測定データの保存 ............................................................................1-25
1.3.9 ソフトウェアオシロスコープ ............................................................1-28
1.3.10 ロックインアンプ(オプション)......................................................1-29
1.3.10a ロックインアンプの前面パネル (Model5110) .......1-29
1.3.10b ロックインアンプの通信設定 (Model5110)...........1-31
1.3.10c ソフトウェアの設定 (Model5110)................................1-32
1.3.10d ソフトウェアからの操作 (Model5110).......................1-33
1.3.10e ロックインアンプの前面パネル (Model7265) .......1-36
1.3.10f ロックインアンプの通信設定 (Model7265)...........1-36
1.3.10g ソフトウェアの設定 (Model7265)................................1-37
1.3.10h ソフトウェアからの操作 (Model7265).......................1-38
1.3.10i サポート外のロックインアンプを使用する場合
の設定...........................................................................................1-40
1.3.11 試料温度コントローラ(JSPM-5200用オプション) ........1-41
1.3.11a ソフトウェアの設定..................................................................1-41
1.3.11b 試料ホルダ温度制御ダイアログ ....................................1-42
1.3.11c 詳細設定ダイアログ..............................................................1-44
1.3.11d 試料温度コントローラの通信設定..................................1-45
1.3.12 CCDカメラ(オプション) .................................................................1-46
1.3.12a ソフトウェア設定.......................................................................1-46
1.3.12b CCDカメラウィンドウ.............................................................1-47
1.3.13 デジタルコントロールMFMユニット(オプション) ...............1-48
1.3.13a ソフトウェア設定.......................................................................1-49
1.3.14 WinSPMのプロパティ.....................................................................1-50
1.3.14a 表示方法 .....................................................................................1-50
1.3.14b 設定タブウィンドウ.................................................................1-50

TM-57553FST4-1 目-1
目 次

1.3.14c 壁紙タブウィンドウ................................................................. 1-51


1.3.14d 管理タブウィンドウ................................................................. 1-52
1.4 測定の準備.................................................................................................... 1-53
1.4.1 測定ソフトウェアでのシステムの起動..................................... 1-53
1.4.2 Zステージの位置の確認............................................................... 1-56
1.4.2a 簡易操作モードでのZステージ位置の確認方
法 .................................................................................................... 1-56
1.4.2b 詳細操作モードでのZステージ位置の確認方
法 .................................................................................................... 1-56
1.4.2c アプローチ可能かどうかの目安 ..................................... 1-57
1.4.3 オシロスコープ(オプション)の設定.......................................... 1-57
1.4.4 カンチレバの調整 ............................................................................. 1-58
1.4.4a コンタクトAFMモードでのカンチレバ調整 ................. 1-58
1.4.4b AC/NC-AFMモードでのカンチレバ調整 .............. 1-59
1.4.4c カンチレバ発振の自動調整 .............................................. 1-61
1.4.4d カンチレバ発振の手動調整 .............................................. 1-64
1.5 表面形状像の測定 .................................................................................... 1-70
1.5.1 走査パラメータの設定................................................................... 1-70
1.5.1a 走査幅とクロックスピードの設定 ................................... 1-70
1.5.1b リファレンス................................................................................. 1-70
1.5.1c フィードバックフィルタ/ループゲイン........................... 1-72
1.5.2 プローブの退避・退避解除.......................................................... 1-72
1.5.2a ピエゾスキャナの動きとインジケータの表示............ 1-72
1.5.2b 簡易操作モードでのプローブ退避操作 ...................... 1-73
1.5.2c 詳細操作モードでのプローブ退避操作 ...................... 1-74
1.5.2d プローブ退避操作時の注意点........................................ 1-74
1.5.3 アプローチ ............................................................................................ 1-76
1.5.3a 簡易操作モードでのアプローチ操作............................ 1-76
1.5.3b 詳細操作モードでのアプローチ操作............................ 1-77
1.5.3c アプローチ操作時の注意点.............................................. 1-79
1.5.4 測定の開始.......................................................................................... 1-80
1.5.4a 簡易操作モードでの測定の開始と停止..................... 1-80
1.5.4b 詳細操作モードでの測定の開始と停止..................... 1-80
1.5.4c 簡易操作モードでの測定画像の保存 ......................... 1-81
1.5.4d 詳細操作モードでの測定画像の保存 ......................... 1-82
1.5.4e 入力フィルタ・ゲイン・オフセットの調整 ....................... 1-82
1.5.5 画像観察時の注意点..................................................................... 1-83
1.5.6 連続記録測定 .................................................................................... 1-85
1.5.7 往復スキャン ....................................................................................... 1-87
1.5.8 プリスキャン ......................................................................................... 1-87
1.5.9 走査範囲(観察視野)の変更方法........................................... 1-89
1.5.9a 走査範囲の拡大 ..................................................................... 1-89
1.5.9b 観察視野の変更(大移動) ................................................ 1-90
1.5.9c 観察視野の変更(中移動) ................................................ 1-90
1.5.9d 観察視野の変更(小移動) ................................................ 1-91
1.6 複数画像同時測定.................................................................................... 1-92
1.6.1 簡易操作モードでの複数画像同時測定.............................. 1-92
1.6.2 詳細操作モードでの複数画像同時測定.............................. 1-95
1.7 SPS測定.......................................................................................................... 1-97
1.7.1 SPS測定の種類 ................................................................................ 1-97
1.7.2 SPS測定の基本的な操作手順................................................. 1-98
1.7.3 SPS測定位置の指定方法 ........................................................... 1-98
1.7.4 簡易操作モードでのSPS測定................................................. 1-100
1.7.4a フォースカーブ測定 ............................................................. 1-100
1.7.4b I-Vカーブ測定...................................................................... 1-101
1.7.4c コントロール3ダイアログからのSPS測定 ................ 1-101
1.7.5 詳細操作モードでのSPS測定................................................. 1-102

目-2 TM-57553FST4-1
目 次

1.7.6 SPS測定設定ダイアログでの測定設定 ............................1-103


1.7.6a 実行するSPS測定の指定................................................1-103
1.7.6b I-Vカーブの測定設定.......................................................1-103
1.7.6c S-Vカーブの測定設定.....................................................1-104
1.7.6d I-Sカーブの測定設定 .......................................................1-105
1.7.6e フォースカーブの測定設定 ..............................................1-106
1.7.6f フリクションフォースカーブの測定設定......................1-107
1.7.7 SPS測定時の注意点 ...................................................................1-108
1.7.8 高圧出力バイアス電圧設定時のSPS測定 ......................1-108
1.8 SPSマッピング測定.................................................................................1-109
1.8.1 SPSマッピング測定の概要 .......................................................1-109
1.8.2 SPSマッピング測定の基本的な操作手順........................1-109
1.8.3 簡易操作モードでのSPSマッピング測定...........................1-110
1.8.3a CITS測定..................................................................................1-110
1.8.3b SPSマッピング測定.............................................................1-110
1.8.4 詳細操作モードでのSPSマッピング測定...........................1-110
1.8.5 SPSマッピング測定時の画像表示 .......................................1-111
1.8.6 SPSマッピング測定時の注意点.............................................1-111
1.9 その他の測定.............................................................................................1-112
1.9.1 摩擦像の測定..................................................................................1-112
1.9.1a 簡易操作モードでの摩擦像測定 .................................1-112
1.9.1b 詳細操作モードでの摩擦像測定 .................................1-113
1.9.1c 摩擦像測定の注意点 ........................................................1-114
1.9.2 接触電流像の測定 .......................................................................1-114
1.9.2a 観察の準備 .............................................................................1-114
1.9.2b 接触電流像の測定方法...................................................1-116
1.9.2c 接触電流像測定の注意点..............................................1-116
1.9.3 導電性カンチレバを用いたI-V測定 ....................................1-118
1.9.3a 測定の準備 .............................................................................1-118
1.9.3b I-Vカーブの測定方法.......................................................1-118
1.9.3c I-V測定の注意点 ...............................................................1-118
1.9.4 ドリフト補正機能を用いた連続測定 .....................................1-119
1.10 オプション測定 ...........................................................................................1-120
1.10.1 磁気力測定 .......................................................................................1-120
1.10.1a 簡易操作モードでの測定準備 ......................................1-121
1.10.1b 詳細操作モードでの測定準備 ......................................1-122
1.10.1c リフト量の初期設定.............................................................1-123
1.10.1d 磁気力像の測定...................................................................1-123
1.10.1e 磁気力測定の注意点 ........................................................1-124
1.10.2 粘弾性測定 .......................................................................................1-124
1.10.2b 簡易操作モードでの測定準備 ......................................1-126
1.10.2c 詳細操作モードでの測定準備 ......................................1-127
1.10.2d ロックインアンプの初期設定..........................................1-128
1.10.2e 粘弾性像の測定...................................................................1-131
1.10.2f 粘弾性測定の注意点 ........................................................1-131
1.10.3 横振動FFM測定.............................................................................1-132
1.10.3a 簡易操作モードでの測定準備 ......................................1-133
1.10.3b 詳細操作モードでの測定準備 ......................................1-134
1.10.3c ロックインアンプの初期設定..........................................1-135
1.10.3d 横振動摩擦力像の測定...................................................1-137
1.10.3e 横振動FFM測定の注意点..............................................1-138
1.10.4 走査ケルビンプローブ測定.......................................................1-139
1.10.4a 簡易操作モードでの測定準備 ......................................1-142
1.10.4b 詳細操作モードでの測定準備 ......................................1-143
1.10.4c ロックインアンプの初期設定..........................................1-144
1.10.4d 表面電位検出の設定 ........................................................1-147
1.10.4e 表面電位像の測定 .............................................................1-155

TM-57553FST4-1 目-3
目 次

1.10.4f 走査ケルビンプローブ測定の注意点 ....................... 1-155


1.10.5 静電容量力測定 ............................................................................ 1-156
1.10.5a 測定準備.................................................................................. 1-157
1.10.5b ロックインアンプの初期設定 ......................................... 1-158
1.10.5c 静電容量力像の測定........................................................ 1-159
1.10.5d 静電容量力測定の注意点 ............................................. 1-159
1.11 マニピュレーションモード....................................................................... 1-160
1.11.1 マニピュレーションモードの起動 ............................................. 1-160
1.11.2 表面加工(ベクトル)モード ........................................................ 1-161
1.11.2a 表面加工(ベクトル)ダイアログ.................................... 1-162
1.11.2b 走査ベクトルの定義手順................................................. 1-165
1.11.2c 表面加工の開始 .................................................................. 1-167
1.11.2d 表面加工後の像観察........................................................ 1-167
1.11.2e ベクトル定義座標平面と,元画像の走査幅 .......... 1-167
1.11.3 表面加工(トレース)モード ......................................................... 1-168
1.11.3a 表面加工(トレース)ダイアログ..................................... 1-169
1.11.3b 2つの表面加工条件の設定........................................... 1-170
1.11.3c 表面加工操作 ....................................................................... 1-171
1.11.3d 表面加工時の注意点........................................................ 1-173
1.11.3e 表面加工後の像観察........................................................ 1-173
1.11.4 表面加工(マッピング)モード ................................................... 1-174
1.11.4a 表面加工(マッピング)ダイアログ .............................. 1-175
1.11.4b 表面加工操作 ....................................................................... 1-178
1.11.4c 表面加工の終了 .................................................................. 1-180
1.11.4d 表面加工の元図と,元画像の走査幅....................... 1-180
1.11.4e 表面加工時の注意点........................................................ 1-180
1.11.5 ライントレース測定モード............................................................ 1-181
1.11.5a ライントレース測定ダイアログ ....................................... 1-182
1.11.5b 測定操作.................................................................................. 1-184
1.11.5c ライントレース測定の終了 ............................................... 1-185
1.11.6 マニピュレーションモードの注意点........................................ 1-186
1.12 コントロールダイアログの詳細 .......................................................... 1-187
1.12.1 メインコントロールとサブコントロール .................................. 1-187
1.12.1a 走査パラメータコントロール群 ...................................... 1-187
1.12.1b 走査領域コントロール群................................................... 1-189
1.12.1c 付帯機能切り替えコントロール群 ............................... 1-191
1.12.1d 測定の開始・終了コントロール群................................. 1-191
1.12.1e バイアス電圧コントロール ................................................ 1-192
1.12.1f フィードバックコントロール群........................................... 1-193
1.12.1g 入力信号コントロール群................................................... 1-194
1.12.1h Zスキャナインジケータ...................................................... 1-194
1.12.1i Zステージタブウィンドウ .................................................. 1-195
1.12.2 詳細設定ダイアログ .................................................................... 1-196
1.12.2a 走査タブウィンドウ.............................................................. 1-196
1.12.2b バイアス電圧タブウィンドウ ........................................... 1-199
1.12.2c 入力信号タブウィンドウ ................................................... 1-201
1.12.2d 表示タブウィンドウ.............................................................. 1-203
1.12.3 カンチレバ設定ダイアログ........................................................ 1-205
1.12.3a AC-AFMモード用タブウィンドウ............................... 1-205
1.12.3b NC-AFMモード用タブウィンドウ................................ 1-208
1.12.4 状態表示ダイアログ .................................................................... 1-211
1.12.5 プローブダイアログ....................................................................... 1-213
1.12.6 ステージ制御ダイアログ ............................................................ 1-214
1.13 SPM装置の設定...................................................................................... 1-215
1.13.1 SPM装置 ........................................................................................... 1-215
1.13.2 付属機器............................................................................................ 1-215
1.13.3 スキャナ設定 .................................................................................... 1-216

目-4 TM-57553FST4-1
目 次

1.13.4 ステージ移動設定..........................................................................1-218
1.13.5 COMポート設定 ..............................................................................1-218
1.14 リファレンス値と測定結果の物理量換算 ....................................1-219
1.14.1 力計算係数 .......................................................................................1-219
1.14.2 摩擦力計算係数.............................................................................1-220
1.14.3 力計算係数(振幅) .......................................................................1-222
1.14.4 周波数シフト......................................................................................1-222
1.15 測定の終了 .................................................................................................1-223
1.16 操作の終了 .................................................................................................1-223
2 解析操作
2.1 解析ソフトウェアの基本操作 ....................................................................2-1
2.1.1 解析ソフトウェアの起動.....................................................................2-1
2.1.2 画像処理機能とデータ処理機能 ................................................2-2
2.1.3 アイコンドックとショートカットアイコン ........................................2-3
2.1.3a 共通ショートカットアイコン......................................................2-3
2.1.3b 画像処理機能ショートカットアイコン.................................2-4
2.1.3c データ処理機能ショートカットアイコン .............................2-5
2.1.4 データの読み込み................................................................................2-6
2.1.4a 測定ソフトウェアから測定データを転送する ................2-6
2.1.4b ファイルを読み込む ...................................................................2-7
2.1.4c ファイルの内容を確認しながら読み込む.......................2-7
2.1.5 データの保存..........................................................................................2-9
2.1.6 データの印刷.......................................................................................2-10
2.1.7 ユーザーディレクトリの変更 ..........................................................2-11
2.1.8 測定データをまとめる.....................................................................2-11
2.1.8a データや解析結果をレポートにまとめる......................2-11
2.1.8b レポート上に注釈文や図形を追加する ........................2-14
2.1.9 連続測定データの再生..................................................................2-19
2.2 解析機能の使用例.....................................................................................2-20
2.2.1 画像処理機能の使用例 ................................................................2-20
2.2.1a 画像の明るさとコントラストの調整................................2-20
2.2.1b ノイズフィルタの適用 ............................................................2-20
2.2.1c 高速フーリエ変換解析(FFT) ...........................................2-21
2.2.1d 三次元表示................................................................................2-22
2.2.1e 断面解析 .....................................................................................2-23
2.2.2 データ処理機能の使用例.............................................................2-24
2.2.2a 平滑化処理................................................................................2-24
2.2.2b 微分演算 .....................................................................................2-25
2.2.2c 測定値の評価...........................................................................2-26
2.3 ファイルメニュー ...........................................................................................2-27
2.3.1 データディレクトリの変更...............................................................2-27
2.3.2 最新の測定結果を読み込む .......................................................2-27
2.3.3 データを開く ........................................................................................2-27
2.3.4 データ検索............................................................................................2-27
2.3.5 データを閉じる....................................................................................2-27
2.3.6 データを保存........................................................................................2-27
2.3.7 現在のデータ以外を閉じる..........................................................2-27
2.3.8 すべてのデータを閉じる.................................................................2-27
2.3.9 再生..........................................................................................................2-27
2.3.10 印刷..........................................................................................................2-27
2.3.11 レポート制作 .........................................................................................2-27
2.3.12 設定を保存...........................................................................................2-27
2.3.13 設定を読み込む .................................................................................2-27
2.3.14 終了..........................................................................................................2-28
2.4 編集メニュー..................................................................................................2-28
2.4.1 画像/グラフをクリップボードへ................................................2-28

TM-57553FST4-1 目-5
目 次

2.4.2 データの貼り付け ............................................................................. 2-28


2.4.3 クリップボードのデータをクリア.................................................. 2-28
2.4.4 WinSPMのプロパティ .................................................................... 2-28
2.5 計算処理メニュー(画像処理機能) .................................................. 2-31
2.5.1 フィルタ演算 ........................................................................................ 2-31
2.5.1a フィルタの種類......................................................................... 2-32
2.5.1b 各フィルタの要素成分 ......................................................... 2-32
2.5.1c フィルタリング演算方法....................................................... 2-33
2.5.2 エッジ強調............................................................................................ 2-34
2.5.3 微分演算............................................................................................... 2-35
2.5.4 階調の平均.......................................................................................... 2-36
2.5.5 階調の偏差.......................................................................................... 2-36
2.5.6 スパイク除去 ....................................................................................... 2-37
2.5.7 傾斜補正............................................................................................... 2-38
2.5.8 演 算 ................................................................................................. 2-39
2.5.9 画像間演算.......................................................................................... 2-40
2.6 分析処理メニュー(画像処理機能) .................................................. 2-41
2.6.1 断面解析............................................................................................... 2-41
2.6.1a シングルプロファイル ............................................................ 2-41
2.6.1b マルチプロファイル................................................................. 2-45
2.6.1c エクストラプロファイル.......................................................... 2-48
2.6.1d 複数画像プロファイル .......................................................... 2-49
2.6.2 測 量 ................................................................................................. 2-51
2.6.2a 領 域.......................................................................................... 2-51
2.6.2b ライン............................................................................................. 2-52
2.6.2c 点 .................................................................................................... 2-53
2.6.2d 表面粗さ...................................................................................... 2-53
2.6.2e 表面積.......................................................................................... 2-53
2.6.3 画像拡大............................................................................................... 2-54
2.6.4 画像の切り出し.................................................................................. 2-54
2.6.5 周波数空間分析(FFT)................................................................. 2-55
2.6.6 粒子解析............................................................................................... 2-62
2.6.7 単位格子解析 .................................................................................... 2-67
2.6.8 表面粗さ................................................................................................ 2-68
2.7 画像処理メニュー(画像処理機能) .................................................. 2-70
2.7.1 移 動 ................................................................................................. 2-70
2.7.2 回 転 ................................................................................................. 2-71
2.7.3 鏡 像 ................................................................................................. 2-72
2.7.4 サイズ変更 ........................................................................................... 2-73
2.7.5 空フレームへ挿入 .............................................................................. 2-74
2.7.6 ドリフト補正 .......................................................................................... 2-74
2.7.7 ユニットセルで再構成..................................................................... 2-75
2.7.8 画像の抜き出し ................................................................................. 2-76
2.7.9 画像の置き換え ................................................................................ 2-76
2.8 高さ情報メニュー(画像処理機能) ................................................... 2-77
2.8.1 明度・コントラスト .............................................................................. 2-77
2.8.2 範囲指定............................................................................................... 2-79
2.8.3 ヒストグラム.......................................................................................... 2-80
2.8.3a 表 示.......................................................................................... 2-80
2.8.3b 平均化.......................................................................................... 2-80
2.8.4 LUTを表示........................................................................................... 2-81
2.8.5 LUTを直線化 ..................................................................................... 2-82
2.8.6 演 算 ................................................................................................. 2-82
2.8.7 高さ情報の統一 ................................................................................ 2-83
2.9 表示メニュー(画像処理機能)............................................................. 2-86
2.9.1 再表示 .................................................................................................... 2-86
2.9.2 表示設定............................................................................................... 2-86

目-6 TM-57553FST4-1
目 次

2.9.3 表示切り替え ......................................................................................2-88


2.9.4 三次元表示 ..........................................................................................2-89
2.9.4a 簡易描画モードと精密描画モード..................................2-89
2.9.4b 三次元表示表示設定ダイアログ ...................................2-89
2.9.5 表示色設定 ..........................................................................................2-93
2.9.6 表示ウィンドウをクリア....................................................................2-96
2.9.7 表示ウィンドウから取得.................................................................2-96
2.9.8 測定パラメータを変更 ....................................................................2-97
2.9.9 SPS測定位置を表示.......................................................................2-98
2.10 マッピングメニュー(画像処理機能) ..............................................2-100
2.10.1 表示設定 ............................................................................................2-101
2.10.2 特殊表示 ............................................................................................2-102
2.10.3 表示画像を選択 .............................................................................2-103
2.10.4 データセットを編集.........................................................................2-104
2.10.5 平均処理 ............................................................................................2-107
2.10.6 データセットの複製........................................................................2-107
2.10.7 スペクトルの抽出............................................................................2-108
2.10.8 全スペクトルをファイルに出力..................................................2-109
2.10.8b 特殊解析 ..................................................................................2-111
2.10.8c FCマッピングから粘着力像を抽出 .............................2-111
2.10.8d F-Vマッピングから表面電位像を抽出 ....................2-112
2.11 計算処理メニュー(データ処理機能) ............................................2-113
2.11.1 スムージング .....................................................................................2-113
2.11.2 X軸演算/Y軸演算 .....................................................................2-114
2.11.3 スペクトラム間演算 .......................................................................2-115
2.11.4 微分演算 ............................................................................................2-116
2.11.5 ベースライン補正............................................................................2-117
2.12 分析処理メニュー(データ処理機能) ............................................2-118
2.12.1 近似曲線 ............................................................................................2-118
2.12.2 拡 大...............................................................................................2-119
2.12.3 測 量...............................................................................................2-119
2.12.4 グループ表示 ....................................................................................2-120
2.12.5 FFT表示 .............................................................................................2-121
2.13 表示メニュー(データ処理機能).......................................................2-122
2.13.1 再プロット ...........................................................................................2-122
2.13.2 プロット設定......................................................................................2-122
2.14 選択メニュー...............................................................................................2-124
2.15 ウィンドウメニュー ....................................................................................2-125
2.16 SPM設定メニュー....................................................................................2-126
2.16.1 カンチレバ設定................................................................................2-126
2.17 ヘルプメニュー...........................................................................................2-129
3 付 録
3.1 WinSPMソフトウェアのインストール方法............................................3-1
3.1.1 WinSPMソフトウェアの再インストールを行う前に...............3-1
3.1.2 Windowsの再インストールについて ...........................................3-2
3.1.3 A/DボードのデバイスドライバをPCへ搭載 ............................3-2
3.1.4 WinSPMソフトウェアの再インストール .......................................3-7
3.2 WinSPMソフトウェアのセットアップ.......................................................3-8
3.2.1 機器設定の実行...................................................................................3-8
3.2.2 スキャナ感度設定の保存と読み込み........................................3-9
3.2.2a スキャナ設定ダイアログの表示 .........................................3-9
3.2.2b スキャナ感度設定の保存 ...................................................3-10
3.2.2c スキャナ設定感度の読み込み .........................................3-10
3.2.3 モータドライブ位置校正値の保存と読み込み ..................3-11
3.2.3a ステージ移動設定ダイアログの表示 ...........................3-11
3.2.3b モータドライブ位置校正値の保存 .................................3-11

TM-57553FST4-1 目-7
目 次

3.2.3c モータドライブ位置校正値の読み込み....................... 3-11


3.3 カンチレバ....................................................................................................... 3-12
3.4 ファイルフォーマット..................................................................................... 3-14
3.4.1 標準的なTIFFファイルの構造 .................................................... 3-14
3.4.2 WinSPM画像ファイル..................................................................... 3-16
3.4.2a WinSPM画像ファイルの全体構造................................. 3-16
3.4.2b WinSPM画像ファイル[1] (SPM Image)................... 3-17
3.4.2c WinSPM 画 像 フ ァ イ ル [ 2 ] (Compressed
TIFF).............................................................................................. 3-36
3.4.2d WinSPM画像ファイル[3] (FFT画像ファイル)........ 3-41
3.4.2e WinSPM画像ファイル[4] (CITS画像ファイ
ル) ................................................................................................... 3-42
3.4.3 Spectrum Dataファイル ................................................................ 3-45
3.4.4 Spectrum Data付き画像ファイル ............................................ 3-46
3.4.5 レポートファイル .................................................................................. 3-47
3.5 WinSPMのオプションフラグおよびデバグフラグ....................... 3-49
3.5.1 オプションフラグの意味................................................................. 3-49
3.5.2 デバグフラグの意味........................................................................ 3-50

目-8 TM-57553FST4-1
安全上の注意
装置には,使用者や装置自身を事故の発生による傷害や危害,損傷を防ぐ,安全機構が組
み込まれていますが,装置の意図する使用目的及び使用方法を逸脱して使用された場合,
安全装置の機能がそこなわれる恐れがあります。装置を扱う前には,この取扱説明書を必ず
お読みになり,記載されている内容をよく理解した上で,正しくお使いください。また,この「安全
上の注意」には,安全に関する重大な内容が記載されています。

• 警告表示の方法については,危険の程度により,以下に示すような分類を行っています。

危 険 : 取扱いを誤った場合に,使用者が死亡または重傷を負う危険の状態が生じる
ことが想定され,かつ危険発生時の警告の緊急性が高い限定的な場合。
警 告 : 取扱いを誤った場合に,使用者が死亡または重傷を負う危険の状態が生じる
ことが想定される場合。
注 意 : 取扱いを誤った場合に,使用者が軽傷を負うか,または物的損害のみが発生
する危険の状態が生じることが想定される場合。

• この装置の危険な部分には,警告表示に以下のようなシンボルマーク(絵表示)を付記した
ラベルが貼られています。これらの場所には手などを触れないでください。

感電注意 レーザ光注意 高温注意 移動機構注意 生物危害注意 分解禁止

シンボル例

• 装置は,カタログや取扱説明書に記載されている使用目的や使用方法の範囲内で正しくお
使いください。

• 防護用部品の取り外し,および安全装置の解除などは,絶対に行わないでください。

• 装置の分解および代替品の取り付けなど,装置の改造は絶対に行わないでください。

• 感電の危険を生じますので,保護接地(アース)線を取り外したり,所定の場所から移動させ
たりすることは絶対に行わないでください。

• 装置や廃液などを廃棄処分する場合には,関係する法律や規則に則って環境を汚さない適
切な方法で処理するようお願いします。

• この装置に付加または組み込まれている付属装置については,その取扱説明書の「安全上
の注意」を必ずお読みください。

• 不明な点がありましたら,当社または日本電子データム㈱指定のサービス窓口にお問い合
わせください。

TM-57553FST4-1 安-1
安全上の注意

警 告
• SPMの試料交換は,高電圧出力設定状態で行わないでください。感電する恐れがあ
ります。

安-2 TM-57553FST4-1
使用上の注意
ここでは,装置自身の損傷につながる,重要な注意を記載します。

• プローブを退避せずにフィードバックモードを切り替えた場合,プローブがクラッシュする場合
がありますので,必ず事前にプローブを退避させてください。またフィードバックモードを切り
替えた場合には,プローブの交換や再調整が必要になります。
• SPM装置によって,WinSPM上での基本設定が異なりますので,正しく設定されていないと
誤動作を招くことがあります。
• 観察中,バイアスの設定をバーチャートで行う場合,0Vを通過させてボタンを移動させると,
0V点で探針と試料は衝突します。ゼロクロスさせる操 作 は避 けてください。
• モータドライブを大きく動かすと,プローブが試料から離れすぎたり,試料表面に接触したり
しますので注意してください。
• SPS 測定時,
1.バイアス電圧をスイープする測定では,過電流や電圧印加による試料表面もしくはプロー
ブ先端形状の破壊に注意してください。またSTMモードの場合はプローブ位置の変動を伴
う場合がありますので特に注意してください。
2.プローブ位置を変化させる測定の場合は,プローブを大きな移動(過大な押し込みなど)
によってプローブ先端形状を悪化させないよう注意してください。
• ドータイトなどでカンチレバの導電性をとる場合は,カンチレバの圧電体の部分に接触し
ないように注意してください。また,カンチレバを交換する場合は,前のドータイトなどが残
っていないか確認してから取り付けてください。カンチレバが傾いて,レーザ光が正しい位
置に反射されない原因となります。
• 接触電流像測定時,電流が多く流れる場合は,探針先端や試料にジュール熱によってダメ
ージを与えることがありますので,バイアス電圧値の設定は大きくなりすぎないように十分
に注意してください。
• 表面加工にバイアス電圧を使用する場合,通常は±10V の範囲でバイアス電圧を設定しま
すが,高バイアス設定になっている場合は,±150V程度までのバイアス電圧を利用できます。
しかし,表面加工にあまり高い電圧を使用することは,プローブや試料表面の余計な破壊
を招く可能性がありますので,設定値は±20V程度に留めてください。
• レーザ照射をOFFにしないで主幹電源スイッチをOFFにすると,SPMヘッドのレーザユニット
を損傷する場合がありますので注意してください。
• 動作不良の原因となりますので、保守サービスの指示無くオプションフラグを変更しないで
下さい。特に「~が必要」という注釈が付いているフラグを無闇に ON すると、SPM 装置本
体に致命的な障害が発生する可能性があります。

TM-57553FST4-1 使-1
1
測定操作
1.1 WinSPMソフトウェア使用時の基礎知識......................................... 1-1
1.1.1 使用の前に ........................................................................................... 1-1
1.1.2 用語解説................................................................................................ 1-1
1.2 ユーザー名の管理 ....................................................................................... 1-6
1.3 測定ソフトウェアの基本操作.................................................................. 1-8
1.3.1 SPM測定の選択について............................................................. 1-8
1.3.2 SPM測定操作画面 .......................................................................... 1-9
1.3.3 アイコンドックとショートカットアイコン................................... 1-11
1.3.3a 共通アイコンドックとアイコン............................................. 1-11
1.3.3b 簡易操作モード用アイコンドック ...................................... 1-12
1.3.3c 詳細操作モード用アイコンドック ...................................... 1-13
1.3.4 ラインモニタの操作....................................................................... 1-15
1.3.5 測定履歴の操作 ............................................................................. 1-15
1.3.6 簡易操作モードの基本操作...................................................... 1-16
1.3.6a コントロールダイアログ.......................................................... 1-16
1.3.6b 入力信号の切り替え ............................................................. 1-18
1.3.6c オプション測定の切り替え .................................................. 1-19
1.3.6d 各種コントロールダイアログの呼び出し....................... 1-20
1.3.7 詳細操作モードの基本操作...................................................... 1-21
1.3.7a コントロールダイアログ.......................................................... 1-21
1.3.7b SPM測定モードの切り替え................................................ 1-23
1.3.7c 測定設定コントロールダイアログの呼び出し ............ 1-24
1.3.8 測定データの保存.......................................................................... 1-25
1.3.9 ソフトウェアオシロスコープ ......................................................... 1-28
1.3.10 ロックインアンプ(オプション) ................................................... 1-29
1.3.10a ロ ッ ク イ ン ア ン プ の 前 面 パ ネ ル
(Model5110)............................................................................ 1-29
1.3.10b ロックインアンプの通信設定 (Model5110) ........... 1-31
1.3.10c ソフトウェアの設定 (Model5110)................................. 1-32
1.3.10d ソフトウェアからの操作 (Model5110)........................ 1-33
1.3.10e ロ ッ ク イ ン ア ン プ の 前 面 パ ネ ル
(Model7265)............................................................................ 1-36
1.3.10f ロックインアンプの通信設定 (Model7265) ........... 1-36
1.3.10g ソフトウェアの設定 (Model7265)................................. 1-37

TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.10h
ソフトウェアからの操作 (Model7265) ........................1-38
1.3.10i
サポート外のロックインアンプを使用する場
合の設定.......................................................................................1-40
1.3.11 試料温度コントローラ(JSPM-5200用オプショ
ン) ...........................................................................................................1-41
1.3.11a ソフトウェアの設定 ...................................................................1-41
1.3.11b 試料ホルダ温度制御ダイアログ......................................1-42
1.3.11c 詳細設定ダイアログ...............................................................1-44
1.3.11d 試料温度コントローラの通信設定...................................1-45
1.3.12 CCDカメラ(オプション)...............................................................1-46
1.3.12a ソフトウェア設定 ........................................................................1-46
1.3.12b CCDカメラウィンドウ..............................................................1-47
1.3.13 デジタルコントロールMFMユニット(オプション).............1-48
1.3.13a ソフトウェア設定 ........................................................................1-49
1.3.14 WinSPMのプロパティ...................................................................1-50
1.3.14a 表示方法 ......................................................................................1-50
1.3.14b 設定タブウィンドウ ..................................................................1-50
1.3.14c 壁紙タブウィンドウ ..................................................................1-51
1.3.14d 管理タブウィンドウ ..................................................................1-52
1.4 測定の準備 ..................................................................................................1-53
1.4.1 測定ソフトウェアでのシステムの起動 ...................................1-53
1.4.2 Zステージの位置の確認 .............................................................1-56
1.4.2a 簡易操作モードでのZステージ位置の確認方
法 ......................................................................................................1-56
1.4.2b 詳細操作モードでのZステージ位置の確認方
法 ......................................................................................................1-56
1.4.2c アプローチ可能かどうかの目安.......................................1-57
1.4.3 オシロスコープ(オプション)の設定 ........................................1-57
1.4.4 カンチレバの調整............................................................................1-58
1.4.4a コンタクトAFMモードでのカンチレバ調整...................1-58
1.4.4b AC/NC-AFMモードでのカンチレバ調整 ................1-59
1.4.4c カンチレバ発振の自動調整................................................1-61
1.4.4d カンチレバ発振の手動調整................................................1-64
1.5 表面形状像の測定 ..................................................................................1-70
1.5.1 走査パラメータの設定 .................................................................1-70
1.5.1a 走査幅とクロックスピードの設定.....................................1-70
1.5.1b リファレンス ..................................................................................1-70
1.5.1c フィードバックフィルタ/ループゲイン.............................1-72
1.5.2 プローブの退避・退避解除 ........................................................1-72
1.5.2a ピエゾスキャナの動きとインジケータの表示 .............1-72
1.5.2b 簡易操作モードでのプローブ退避操作........................1-73
1.5.2c 詳細操作モードでのプローブ退避操作........................1-74
1.5.2d プローブ退避操作時の注意点..........................................1-74
1.5.3 アプローチ...........................................................................................1-76
1.5.3a 簡易操作モードでのアプローチ操作..............................1-76
1.5.3b 詳細操作モードでのアプローチ操作..............................1-77
1.5.3c アプローチ操作時の注意点 ...............................................1-79
1.5.4 測定の開始 ........................................................................................1-80
1.5.4a 簡易操作モードでの測定の開始と停止 ......................1-80
1.5.4b 詳細操作モードでの測定の開始と停止 ......................1-80
1.5.4c 簡易操作モードでの測定画像の保存...........................1-81
1.5.4d 詳細操作モードでの測定画像の保存...........................1-82

TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.5.4e 入力フィルタ・ゲイン・オフセットの調整 ........................ 1-82


1.5.5 画像観察時の注意点................................................................... 1-83
1.5.6 連続記録測定 .................................................................................. 1-85
1.5.7 往復スキャン ..................................................................................... 1-87
1.5.8 プリスキャン ....................................................................................... 1-87
1.5.9 走査範囲(観察視野)の変更方法 ........................................ 1-89
1.5.9a 走査範囲の拡大 ...................................................................... 1-89
1.5.9b 観察視野の変更(大移動) ................................................. 1-90
1.5.9c 観察視野の変更(中移動) ................................................. 1-90
1.5.9d 観察視野の変更(小移動) ................................................. 1-91
1.6 複数画像同時測定.................................................................................. 1-92
1.6.1 簡易操作モードでの複数画像同時測定............................ 1-92
1.6.2 詳細操作モードでの複数画像同時測定............................ 1-95
1.7 SPS測定........................................................................................................ 1-97
1.7.1 SPS測定の種類.............................................................................. 1-97
1.7.2 SPS測定の基本的な操作手順............................................... 1-98
1.7.3 SPS測定位置の指定方法......................................................... 1-98
1.7.4 簡易操作モードでのSPS測定............................................... 1-100
1.7.4a フォースカーブ測定............................................................... 1-100
1.7.4b I-Vカーブ測定 ....................................................................... 1-101
1.7.4c コントロール3ダイアログからのSPS測定 ................. 1-101
1.7.5 詳細操作モードでのSPS測定............................................... 1-102
1.7.6 SPS測定設定ダイアログでの測定設定.......................... 1-103
1.7.6a 実行するSPS測定の指定 ................................................ 1-103
1.7.6b I-Vカーブの測定設定........................................................ 1-103
1.7.6c S-Vカーブの測定設定 ..................................................... 1-104
1.7.6d I-Sカーブの測定設定 ........................................................ 1-105
1.7.6e フォースカーブの測定設定 ............................................... 1-106
1.7.6f フリクションフォースカーブの測定設定....................... 1-107
1.7.7 SPS測定時の注意点 ................................................................ 1-108
1.7.8 高圧出力バイアス電圧設定時のSPS測定.................... 1-108
1.8 SPSマッピング測定 .............................................................................. 1-109
1.8.1 SPSマッピング測定の概要 .................................................... 1-109
1.8.2 SPSマッピング測定の基本的な操作手順 ..................... 1-109
1.8.3 簡易操作モードでのSPSマッピング測定 ........................ 1-110
1.8.3a CITS測定 .................................................................................. 1-110
1.8.3b SPSマッピング測定 ............................................................. 1-110
1.8.4 詳細操作モードでのSPSマッピング測定 ........................ 1-110
1.8.5 SPSマッピング測定時の画像表示..................................... 1-111
1.8.6 SPSマッピング測定時の注意点.......................................... 1-111
1.9 その他の測定 .......................................................................................... 1-112
1.9.1 摩擦像の測定 ............................................................................... 1-112
1.9.1a 簡易操作モードでの摩擦像測定.................................. 1-112
1.9.1b 詳細操作モードでの摩擦像測定.................................. 1-113
1.9.1c 摩擦像測定の注意点......................................................... 1-114
1.9.2 接触電流像の測定..................................................................... 1-114
1.9.2a 観察の準備.............................................................................. 1-114
1.9.2b 接触電流像の測定方法.................................................... 1-116
1.9.2c 接触電流像測定の注意点 .............................................. 1-116
1.9.3 導電性カンチレバを用いたI-V測定.................................. 1-118
1.9.3a 測定の準備.............................................................................. 1-118
1.9.3b I-Vカーブの測定方法........................................................ 1-118

TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.9.3c I-V測定の注意点.................................................................1-118
1.9.4 ドリフト補正機能を用いた連続測定...................................1-119
1.10 オプション測定 .........................................................................................1-120
1.10.1 磁気力測定.....................................................................................1-120
1.10.1a 簡易操作モードでの測定準備........................................1-121
1.10.1b 詳細操作モードでの測定準備........................................1-122
1.10.1c リフト量の初期設定..............................................................1-123
1.10.1d 磁気力像の測定....................................................................1-123
1.10.1e 磁気力測定の注意点 .........................................................1-124
1.10.2 粘弾性測定.....................................................................................1-124
1.10.2b 簡易操作モードでの測定準備........................................1-126
1.10.2c 詳細操作モードでの測定準備........................................1-127
1.10.2d ロックインアンプの初期設定...........................................1-128
1.10.2e 粘弾性像の測定....................................................................1-131
1.10.2f 粘弾性測定の注意点 .........................................................1-131
1.10.3 横振動FFM測定 ..........................................................................1-132
1.10.3a 簡易操作モードでの測定準備........................................1-133
1.10.3b 詳細操作モードでの測定準備........................................1-134
1.10.3c ロックインアンプの初期設定...........................................1-135
1.10.3d 横振動摩擦力像の測定 ....................................................1-137
1.10.3e 横振動FFM測定の注意点...............................................1-138
1.10.4 走査ケルビンプローブ測定.....................................................1-139
1.10.4a 簡易操作モードでの測定準備........................................1-142
1.10.4b 詳細操作モードでの測定準備........................................1-143
1.10.4c ロックインアンプの初期設定...........................................1-144
1.10.4d 表面電位検出の設定 .........................................................1-147
1.10.4e 表面電位像の測定...............................................................1-155
1.10.4f 走査ケルビンプローブ測定の注意点 .........................1-155
1.10.5 静電容量力測定 ..........................................................................1-156
1.10.5a 測定準備 ...................................................................................1-157
1.10.5b ロックインアンプの初期設定...........................................1-158
1.10.5c 静電容量力像の測定 .........................................................1-159
1.10.5d 静電容量力測定の注意点...............................................1-159
1.11 マニピュレーションモード .....................................................................1-160
1.11.1 マニピュレーションモードの起動 ...........................................1-160
1.11.2 表面加工(ベクトル)モード.......................................................1-161
1.11.2a 表面加工(ベクトル)ダイアログ .....................................1-162
1.11.2b 走査ベクトルの定義手順...................................................1-165
1.11.2c 表面加工の開始....................................................................1-167
1.11.2d 表面加工後の像観察 .........................................................1-167
1.11.2e ベクトル定義座標平面と,元画像の走査幅............1-167
1.11.3 表面加工(トレース)モード........................................................1-168
1.11.3a 表面加工(トレース)ダイアログ ......................................1-169
1.11.3b 2つの表面加工条件の設定 ............................................1-170
1.11.3c 表面加工操作.........................................................................1-171
1.11.3d 表面加工時の注意点 .........................................................1-173
1.11.3e 表面加工後の像観察 .........................................................1-173
1.11.4 表面加工(マッピング)モード .................................................1-174
1.11.4a 表面加工(マッピング)ダイアログ ................................1-175
1.11.4b 表面加工操作.........................................................................1-178
1.11.4c 表面加工の終了....................................................................1-180
1.11.4d 表面加工の元図と,元画像の走査幅 ........................1-180

TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.4e 表面加工時の注意点......................................................... 1-180


1.11.5 ライントレース測定モード.......................................................... 1-181
1.11.5a ライントレース測定ダイアログ ........................................ 1-182
1.11.5b 測定操作................................................................................... 1-184
1.11.5c ライントレース測定の終了 ................................................ 1-185
1.11.6 マニピュレーションモードの注意点...................................... 1-186
1.12 コントロールダイアログの詳細........................................................ 1-187
1.12.1 メインコントロールとサブコントロール................................ 1-187
1.12.1a 走査パラメータコントロール群........................................ 1-187
1.12.1b 走査領域コントロール群.................................................... 1-189
1.12.1c 付帯機能切り替えコントロール群................................. 1-191
1.12.1d 測定の開始・終了コントロール群.................................. 1-191
1.12.1e バイアス電圧コントロール ................................................. 1-192
1.12.1f フィードバックコントロール群............................................ 1-193
1.12.1g 入力信号コントロール群.................................................... 1-194
1.12.1h Zスキャナインジケータ ....................................................... 1-194
1.12.1i Zステージタブウィンドウ ................................................... 1-195
1.12.2 詳細設定ダイアログ .................................................................. 1-196
1.12.2a 走査タブウィンドウ............................................................... 1-196
1.12.2b バイアス電圧タブウィンドウ ............................................ 1-199
1.12.2c 入力信号タブウィンドウ .................................................... 1-201
1.12.2d 表示タブウィンドウ............................................................... 1-203
1.12.3 カンチレバ設定ダイアログ...................................................... 1-205
1.12.3a AC-AFMモード用タブウィンドウ ................................ 1-205
1.12.3b NC-AFMモード用タブウィンドウ................................. 1-208
1.12.4 状態表示ダイアログ .................................................................. 1-211
1.12.5 プローブダイアログ .................................................................... 1-213
1.12.6 ステージ制御ダイアログ.......................................................... 1-214
1.13 SPM装置の設定.................................................................................... 1-215
1.13.1 SPM装置 ......................................................................................... 1-215
1.13.2 付属機器.......................................................................................... 1-215
1.13.3 スキャナ設定 .................................................................................. 1-216
1.13.4 ステージ移動設定....................................................................... 1-218
1.13.5 COMポート設定............................................................................ 1-218
1.14 リファレンス値と測定結果の物理量換算.................................. 1-219
1.14.1 力計算係数 .................................................................................... 1-219
1.14.2 摩擦力計算係数.......................................................................... 1-220
1.14.3 力計算係数(振幅)..................................................................... 1-222
1.14.4 周波数シフト................................................................................... 1-222
1.15 測定の終了............................................................................................... 1-223
1.16 操作の終了............................................................................................... 1-223

TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.1 WinSPMソフトウェア使用時の基礎知識
1.1.1 使用の前に
WinSPMシステムを使用する前に,ご使用になるSPM装置に合わせて,機器設定がされ
ていることを確認してください。また,スキャナ感度とモータドライブ位置の校正値を記録して
いることを確認してください。何らかの理由でWinSPMソフトウェアを再インストールしなけれ
ばならない場合は,再度校正値をWinSPMソフトウェアに記憶させる必要があります。
3.2節「付録WinSPMソフトウェアのセットアップ」を参照してください。

1.1.2 用語解説
ここでは,WinSPMソフトウェアを使用する上で必要な基礎的な用語について説明します。

● 管理者権限
WinSPMでは,装置の保守を行う権限(管理者権限)を有する特定のユーザー名[Admi
n]が事前に登録されています。これ以外の新規登録ユーザー名には,管理者権限を割り
当てることはできません。
管理者権限を有するユーザー名[Admin]でログインした場合,以下の作業が可能です。

• スキャナキャリブレーション値の設定・変更・記録
• スキャナキャリブレーション値算出のための特殊測定モードの起動
• 電源電圧の変更
• モータドライブ位置校正値の設定・変更・記録

このユーザー名で設定されているパラメータ(測定条件や表示条件など)は,新規にユ
ーザー名を登録する際の基本パラメータとして用いられます。
初期状態では,ユーザー名[Admin]のパスワードは,[JEOLSPM](すべて半角大
文字)に設定されています。ご使用になる前にパスワードは必ず変更し,SPM装置管
理者が管理してください。
管理者権限下では,電源電圧の変更などの,場合によっては装置動作に支障を来す
変更が可能になります。それを防止するため,SPM装置管理者であっても,装置の保
守点検を行う目的以外では管理者権限を使用せず,通常使用時にはユーザー権限
をもつユーザー名でWinSPMを起動してください。

● ユーザー権限
管理者用ユーザー名[Admin]以外のユーザー名は,すべてこのユーザー権限しか持ちま
せん。ユーザー権限では,測定に関するすべての作業は行えますが,装置の保守に関する
作業は行えません。
通常は,このユーザー権限を持つユーザー名を使用します。

TM-57553FST4-1 1-1
1 測定操作

● ユーザーディレクトリ
WinSPMに登録されたユーザーは,それぞれ独立したユーザーディレクトリに割り当てられ
ます。測定ソフトウェアは,測定結果をユーザーディレクトリに自動的に保存し,解析ソフトウ
ェアはデータファイルの読み書きを行う際に,ユーザーディレクトリを参照します。
ユーザーが新規登録されると,WinSPMは“C:¥WinSPM”内に新規ユーザー名と同じ
名前のフォルダを作成してユーザーディレクトリに設定しますが,各ソフトウェア上から任意
のディレクトリを設定することもできます。なお,登録ユーザー数に制限はありません。

● 測定ソフトウェアと解析ソフトウェア
WinSPMシステムは測定ソフトウェア(WinSPM ScanFunction.exe)と解析ソフトウェア
(WinSPM ProcFunction.exe)の二つのソフトウェアにより構成されています。これらのソフ
トウェアは独立して動作しますので,測定を行いながら画像処理を行うことが可能です。

● 簡易操作モードと詳細操作モード
測定ソフトウェアには,細かな測定パラメータについては省略した簡易操作モードと,すべて
の測定パラメータを設定可能な詳細操作モードの2つの操作モードからなります。
• 簡易操作モードは,JSPM-5200用に用意されており,通常の大気圧測定には充分なパ
ラメータが設定可能です。
• 詳細操作モードは,JSPM-4500などUHV-SPMに対応した操作モードになっており,よ
り詳細に測定設定が行える反面,パラメータの設定が複雑になります。
JSPM-5200では,真空排気時や液中観察時の高度な測定操作および,各種SPM
モードを組み合わせた特殊な測定モードに対応するため,詳細操作モードで測定操作
が行えます。
UHV-SPMでは,簡易操作モードで測定操作はできません。

● メインメニュー・ショートカットアイコン・アイコンドック
メインメニュー: ソフトウェア画面の一番上に並んでいるメニューです。測定
ソフトウェアと解析ソフトウェアではメニューの内容が異なり
ます。
ショートカットアイコン: メインメニュー内にある頻 繁に利用する機能 を,直接呼び
出すためのボタンです。
アイコンドック: ショートカットアイコンをまとめたものを指します。アイコンドック
は,起動時にはメインメニュー下部に表示されており,機能
SPM測定モードごとに内容が切り替わります。

● コンテクストメニュー
WinSPMアプリケーションウィンドウ上の,ウィンドウ・ダイアログ類が表示されてない位置で
マウスの右ボタンをクリックするとコンテクストメニューが表示されます。コンテクストメニュー
上からは,メインメニュー・ショートカットアイコンの項目の一部を呼び出すことができます。
解析ソフトウェアではコンテクストメニューは表示されません。

1-2 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● 画像表示ウィンドウ・スペクトル表示ウィンドウ
WinSPM測定ソフトウェアでは,ひとつの測定結果はひとつの画像表示ウィンドウもしくはス
ペクトル表示ウィンドウ上に表示されます。測定結果が複数ある場合は,これらのウィンドウ
に複数表示されます。

● プルダウンメニュー
メインメニュー,もしくはウィンドウの中で,[ ]を選択するとその下に表示されるメニューで
す。このプルダウンメニューからメニューを選択するには,選択するメニュー項目へマウスを
移動するとメニューが反転表示されるので,ここでマウスをクリックすると選択されます。

● クリックする
マウスのカーソルを選択する場所へ移動させ,左ボタンを1回押す操作です。

● ダブルクリックする
マウスのカーソルを選択する場所へ移動させ,左ボタンをすばやく2回押す操作です。

● ドラッグする
マウスボタンを押したままでカーソルを移動する操作です。

● 入力ボックス
キーボードから文字や数値を入力するものです。マウスのカーソルを入力ボックス位置に移
動させダブルクリックすると,今まで入力されていた文字や数値が反転表示されます。この
状態でキーボードから直接入力します。入力したままでは確定されたとは判断されないので,
TABキーを押すか,マウスで他の項目を選択します。これで初めて確定されます。

● チェックボックス
[ ]マークのついている項目が選択されているもので,[□]マークのものは選択されていな
いものです。項目を選択するにはマウスのカーソルを[□]マークに移動させクリックします。
同様に項目の選択を解除する場合は,マウスのカーソルを[ ]マークの所に移動させクリッ
クします。
一部にプッシュボタン形チェックボックスコントロールも存在します。この場合,凹んで表
示されているものが選択された状態で,凸に表示されているものが選択されていない
状態です。

● ラジオボタン
[ ]マークのついている項目が選択されているもので,[ ]マークのものは選択されていな
いものです。ラジオボタンは2つ以上の項目から1つを選ぶときに使います。項目を選択するに
は,マウスのカーソルを[ ]マークへもっていきクリックします。項目を解除する場合は他の
項目を選択すれば自動的に解除されます。

TM-57553FST4-1 1-3
1 測定操作

● グレー表示
チェックボックス,ラジオボタン,入力ボックス等が灰色で表示されている場合は,現在その
部分が選択不可能であることを示します。

● バーチャート
次のようなパラメータの設定のバーチャートは,パラメータの値をキーボード,マウスのどちらか
らでも変更できます。

この部分の矢印をマウスで
クリックすると小さく動く

この部分をマウスで
クリックすると大きく動く

マウスでクリックし, この部分にマウスのカーソルを移動させ,
キーボードで数値を入れる 左ボタンを押したまま移動できる(ドラッグ)
数値を確定するには,
‘TAB’キーを押す。 入力ボックス

● 走査原点
走査範囲の左上隅の位置を指します。走査停止中,プローブは走査原点に位置していま
す。

● フォワードスキャンとバックワードスキャン
SPMにおける画像測定では,X方向走査において,開始位置から走査幅だけ右方向へス
キャンを行い,同じ経路を左方向へスキャンすることで走査開始位置へプローブを戻します。
これをY方向に繰り返し走査することで,面走査を行います。

プローブの面走査経路

1-4 TM-57553FST4-1
1 測定操作

このX方向走査における右方向への走査をフォワードスキャン(FW),左方向への走査をバ
ックワードスキャン(BW)と呼び,双方のスキャンで画像を測定することができます。

FW BW

フォワードスキャンとバックワードスキャン画像でのプローブ走査方向

● 測定状態と測定終了状態
測定ソフトウェアが起動しており,SPMコントロールダイアログ群が表示されている状態を測
定状態と呼びます。測定ソフトウェアは起動しているが,SPMコントロールダイアログ群が表
示されていない状態を測定終了状態と呼びます。

TM-57553FST4-1 1-5
1 測定操作

1.2 ユーザー名の管理
WinSPMでは,使用者それぞれに専用のユーザー名を設定し,測定条件や表示条件など
の各種パラメータを個別に記録・管理することが可能です。
ユーザー管理操作は,「WinSPMのプロパティ」ダイアログの「管理」タブウィンドウ上で行い
ますが。管理操作が行えるのは管理者権限ユーザー(ユーザー名:Admin)のみです。

初期状態のWinSPMには,管理者用ユーザー名[Admin]以外のユーザー名は登
録されていませんので,使用を開始する前には必ず新規にユーザー名登録を行う必
要があります。
WinSPMのプロパティダイアログの表示方法については,1.3.14項「WinSPMのプロ
パティ」を参照してください。

WinSPMのプロパティダイアログの管理タブウィンドウ

● パスワードの変更
すでに登録されているユーザーパスワードを,管理者権限で変更します。
変更前のパスワードを知らなくても変更できます。
1. 「登録ユーザー」リストで,ユーザーパスワードを変更したいユーザーを選択する。
2. [パスワード変更]ボタンをクリックする。
3. 「パスワード変更」ダイアログが表示されるので,「新しいパスワード」と「パスワー
ドの入力確認」に同じパスワードを入力し,[OK]ボタンをクリックする。
4. 入力した2つのパスワードが一致していれば,パスワードが変更されます。
一致しない場合エラーメッセージが表示されますので,手順3をやり直してください。

● ユーザーの新規追加
ユーザーを新規に追加します。
1. [新規追加]ボタンをクリックする。

1-6 TM-57553FST4-1
1 測定操作

2. 「新規ユーザー登録」ダイアログが表示されるので,新規ユーザー情報を入力し,
[OK]ボタンをクリックする。
3. 入力された「パスワード」と「パスワード確認入力」項目が一致していれば,ユーザ
ーが追加され,「登録ユーザー」リストに表示されます。
一致しない場合エラーメッセージが表示されますので,手順2をやり直してください。

● ユーザーのコピー
新規にユーザーを登録した上で,すでに登録されている他のユーザーの情報(測定パラメ
ータ設定・ウィンドウ表示位置・オプション機器設定など)をコピーします。
1. 「登録ユーザー」リストから,複製したいユーザーを選択する。
2. [コピーして追加]ボタンをクリックする。
3. 「コピーしてユーザー登録」ダイアログが表示されるので,新規ユーザー情報を入
力し,[OK]ボタンをクリックする。
4. 入力された「パスワード」と「パスワード確認入力」項目が一致していれば,ユーザ
ーが追加され,「登録ユーザー」リストに表示されます。
一致しない場合エラーメッセージが表示されますので,手順3をやり直してください。

● ユーザーの削除
登録されているユーザーを,管理者権限で削除します。
削除されるユーザーのパスワードを知らなくても削除可能です。
管理者権限ユーザーを削除することはできません。
1. 「登録ユーザー」リストから,削除したいユーザーを選択する。
2. [削除]ボタンをクリックする。
3. 「ユーザー削除」ダイアログが表示されるので,「管理者パスワード」と「パスワード
確認入力」に管理者権限ユーザーのパスワードを入力し,[OK]ボタンをクリックす
る。
4. 入力した2つのパスワードが一致していた場合,確認ダイアログが表示されます。
一致しない場合エラーメッセージが表示されますので,手順3をやり直してください。
5. 確認ダイアログの内容を確認の上,[はい(Y)]もしくは[いいえ(N)]をクリックしま
す。
6. [はい(Y)]をクリックした場合はユーザーが削除されます。
[いいえ(N)]をクリックした場合はユーザーは削除されず,処理が終了します。

TM-57553FST4-1 1-7
1 測定操作

1.3 測定ソフトウェアの基本操作
WinSPMシステムには,測定ソフトウェアと解析ソフトウェアの2つのモードがあり,それぞれ
独立して動作します。ここでは測定ソフトウェアの操作について説明します。

1.3.1 SPM測定の選択について
SPM測定の切り替えは,測定ソフトウェア起動時に表示される「SPM機能選択」ダイアログ
にて選択します。
( )内の測定モードは,オプション設定がある場合にのみ利用できます。

SPS機能設定ダイアログ

■ AC-AFM
AC-AFM測定が可能です。このSPM測定では,形状測定・SPS測定・SPSマッピング測
定・磁気力測定の他,オプション機器であるロックインアンプを装着することにより,粘弾性
測定およびケルビンプローブ測定が可能です。

■ NC-AFM
NC-AFM測定が可能です。このSPM測定では,形状測定・SPS測定・SPSマッピング測
定の他,オプション機器であるロックインアンプを装着することにより,ケルビンプローブ測定
が可能です。

■ コンタクトAFM
コンタクトAFM測定が可能です。このSPM測定では,形状測定・SPS測定・SPSマッピング
測定の他,オプション機器であるロックインアンプを装着することにより,粘弾性測定・横振
動摩擦力測定・静電容量力測定が可能です。

■ STM
STM測定が可能です。形状測定・STS測定・STSマッピング測定が使用可能です。STM
測定には,オプション測定機器を使用した測定はサポートしていません。

■ すべてのSPM測定モード
上記4つの測定機能を同時に取り扱える操作モードです。測定操作画面は,JSPM-5200
の場合でも詳細操作モードになります。

1-8 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.2 SPM測定操作画面
SPM測定操作は,画面上の操作インターフェース群を用いて行いますが,その構成は簡易
操作モードと詳細操作モードで異なります。

● 簡易操作モードでのSPM測定操作画面(JSPM-5200用)
以下に簡易操作モードにおけるソフトウェア画面を示します。
① アイコンドック
画面上部に並んでいて,「データ操作」・「オプション機器操作」・「測定切り替え」・「自
動処理」・「設定ダイアログ表示」などの機能ごとに分類されています。この画面はAC
-AFMモード用の操作画面ですが,選択したSPMモードによって,アイコンドックの内
容は異なります。
② コントロール1ダイアログ
③ コントロール2ダイアログ
画面右に表示され,コントロール1ダイアログから,実際のSPM測定操作を行います。
コントロール2ダイアログまたはコントロール3ダイアログはタブウィンドウに分割されてお
り,測定信号の設定とZモータドライブの操作を行います。
④ 画像表示ウィンドウ
⑤ ラインモニタウィンドウ
⑥ 測定履歴ウィンドウ
画面左に「画像表示ウィンドウ」・「ラインモニタウィンドウ」・「測定履歴ウィンドウ」が表
示されます。

④ ②


簡易操作モード画面

TM-57553FST4-1 1-9
1 測定操作

● 詳細操作モードでのSPM測定操作画面(主にJSPM-4500/4610用)
以下に詳細操作モードにおけるソフトウェア画面を示します。主にUHV-SPMでの測定操
作を行う際に用いる操作モードですが,JSPM-5200においても「すべてのSPM操作モー
ド」において利用できます。
① アイコンドック
画面上部に並んでいて,「データ操作」・「外部機器操作」・「測定切り替え」・「自動処
理」・「設定ダイアログ表示」などの機能ごとに分類されています。
② メインコントロールダイアログ
画面右に表示され,メインコントロールダイアログ上から,実際のSPM測定操作を行い
ます。細かな測定操作は,アイコンドックに格納されたショートカットアイコンから機能別
コントロールダイアログを呼び出し,呼び出されたコントロールダイアログ上で行います。
③ 画像表示ウィンドウ
④ ラインモニタウィンドウ
⑤ 測定履歴ウィンドウ
画面左に「画像表示ウィンドウ」・「ラインモニタウィンドウ」・「測定履歴ウィンドウ」が表
示されます。


詳細操作モード画面

1-10 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.3 アイコンドックとショートカットアイコン
メインメニュー下部には,いくつかのアイコンドックが用意されています。

1.3.3a 共通アイコンドックとアイコン
これらアイコンドックは,ソフトウェア動作中常に表示されるアイコンドックです。
以下にショートカットアイコンの一覧を示します。

クリップボード操作

画像をクリップボードへ 表示画像をクリップボードへ転送します。

現在表示されている測定データをクリップボードへ
データをクリップボードへ
転送します。

表示設定

表示設定 画像表示設定ダイアログを開きます。

プロット設定 スペクトルプロット設定ダイアログを開きます。

表示色設定 表示色設定ダイアログを開きます。

オプション機器制御

ロックインアンプ用コントロールダイアログを開きま
拡張ロックインアンプ
す。

試料温度制御 試料温度コントロールダイアログを開きます。

CCDカメラ CCD画像表示ウィンドウを開きます。

測定開始

測定 SPM測定を開始します。

オシロスコープ/ラインモニタ

オシロスコープ/ラインモニタ表示ウィンドウの表
オシロスコープ/ラインモニタ
示・非表示を切り替えます。

TM-57553FST4-1 1-11
1 測定操作

オシロスコープ/ラインモニタ オシロスコープ/ラインモニタ設定ダイアログの表
設定ダイアログ 示・非表示を切り替えます。

1.3.3b 簡易操作モード用アイコンドック
簡易操作モード用アイコンドックの内容は,選択したSPM測定によって異なります。
以下に簡易操作モード用アイコンドックのショートカットアイコンの一覧を示します。

標準/オプション測定切り替え
標準/オプション測定モードを標準測定に切り替
標準測定 えます。表 面 形 状 像 や各 種 信 号 像 を測 定 し
ます。

標準/オプション測定モードをPoint by Point
磁気力測定(P-P)
磁気力測定に切り替えます。

標準/オプション測定モードをLine by Line磁
磁気力測定(L-L) 気力測定に切り替えます。(DC-MFMユニッ
トが必要)
標準/オプション測定モードを粘弾性測定に切り
粘弾性測定 替えます。
(ロックインアンプが必要)
標準/オプション測定モード を走査ケルビンプロ
走査ケルビンプローブ測定 ーブ測定に切り替えます。(ロックインアンプが
必要)

標準/オプション測定モード を横振動摩擦力測
横振動摩擦力測定
定に切り替えます。(ロックインアンプが必要)

標準/オプション測定モード を静電容量力測定
静電容量力測定 に切り替えます。
(ロックインアンプが必要)

ダイアログ表示切り替え

コントロール1ダイアログの表示・非常時を切り替え
コントロール1ダイアログ
ます。

コントロール2ダイアログの表示・非表示を切り替え
コントロール2ダイアログ
ます。

コントロール3ダイアログの表示・非表示を切り替え
コントロール3ダイアログ
ます。

カンチレバの発振設定を行うコントロールダイアロ
カンチレバ設定ダイアログ
グの表示・非表示を切り替えます。

SPM装置の動作状況や測定信号の状態を表示
状態表示ダイアログ
するダイアログの表示・非表示を切り替えます。

1-12 TM-57553FST4-1
1 測定操作

カンチレバ調整

光てこ検出のための調整作業を行います。力換算
光てこ検出調整
係数値設定や自動調整設定も行います。

カンチレバチューニング カンチレバ発振の自動調整処理を開始します。

アプローチ

プローブの試料表面へのアプローチ処理を行いま
アプローチ
す。

マニピュレーション

マニピュレーションモードを起動します。各種リソグ
リソグラフ
ラフ処理やベクトルスキャン測定が可能です。

測定パラメータファイル操作

ディスクから測定パラメータファイルを読み込みま
測定パラメータの読込
す。

ディスクへ現在の測定パラメータをファイルとして
測定パラメータを保存
保存します。

終了

現在のSPM測定を終了します。ソフトウェア自体
測定終了
は終了しません。

1.3.3c 詳細操作モード用アイコンドック
以下に詳細操作モード用アイコンドックのショートカットアイコンの一覧を示します。

カンチレバ調整

光てこ検出のための調整作業を行います。力換算
光てこ検出調整
係数値設定や自動調整設定も行います。

カンチレバチューニング カンチレバ発振の自動調整処理を開始します。

SPM測定設定ダイアログ表示切り替え

プローブに関するパラメータの設定を行うダイアロ
プローブダイアログ
グの表示・非表示を切り替えます。

試料ステージ制御に関するパラメータ設定を行う
ステージ制御ダイアログ
ダイアログの表示・非表示を切り替えます。

TM-57553FST4-1 1-13
1 測定操作

より細かなパラメータを設定するダイアログの表
詳細設定ダイアログ
示・非表示を切り替えます。

SPM装置の動作状況や測定信号の状態を表示
状態表示ダイアログ
するダイアログの表示・非表示を切り替えます。

カンチレバの発振設定を行うコントロールダイアロ
カンチレバ設定ダイアログ
グの表示・非表示を切り替えます。

SPS/オプション測定設定ダイアログ表示切り替え

SPS測定設定を行うダイアログの表示・非表示を
SPS測定設定ダイアログ
切り替えます。

磁気力測定で用いるリフトの設定を行うダイアログ
リフトダイアログ
の表示・非表示を切り替えます。

走査ケルビンプローブ測定設定を行うダイアログ
SKPM設定ダイアログ
の表示・非表示を切り替えます。

マニピュレーション

マニピュレーションモードを起動します。各種リソグ
リソグラフ
ラフ処理やベクトルスキャン測定が可能です。

測定パラメータファイル操作

ディスクから測定パラメータファイルを読み込みま
測定パラメータの読込
す。

ディスクへ現在の測定パラメータをファイルとして
測定パラメータを保存
保存します。

終了

現在のSPM測定を終了します。ソフトウェア自体
測定終了
が終了するわけではありません。

1-14 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.4 ラインモニタの操作
画像表示ウィンドウ下部にはラインモニタウィンドウが表示されています。このウィンドウ上で
は,画像スキャン時の1ライン測定結果のモニタが行えます。
ラインモニタは2ch同時取り込み表示が可能です。チャンネルAが赤,チャンネルBが青で
表示されます。チャンネルAには画像測定の信号1が,チャンネルBには画像測定の信号2
が自動的に入力されますので,設定ダイアログの[入力信号]から表示をオフにすることは
できますが,他の信号を選択することはできません。

以下ラインモニタの設定手順を示します。
1. アイコンドックの [オシロスコープ/ラインモニタ設定ダイアログ]をクリックする。
「ラインモニタ設定」ダイアログが表示されます。
2. [カップリング]の[ ]をクリックし,[Line Fit]を選択する。
3. [感度]の[ ]をクリックし,目的に応じて信号入力感度を設定する。
通常は[オフセット]の数値入力ボックスには[0.0]に設定します。
2ch同時取り込みの際に,双方にオフセットを与えると,信号が離れて表示される
ので見やすくなります。
4. もう一度[オシロスコープ/ラインモニタ設定ダイアログ]をクリックして,設定ダ
イアログを非表示にする。

ラインモニタウィンドウとラインモニタ設定ダイアログ

1.3.5 測定履歴の操作
測定データの履歴は測定履歴ウィンドウから確認することができます。ウィンドウの左側に表
示されているものほど新しい測定結果で,ウィンドウ下部のスライダを動かすことにより前後
の履歴を確認することができます。履歴ウィンドウ上の履歴データをダブルクリックすると,そ
の履歴データの詳細を見ることができます。

測定履歴ウィンドウ

TM-57553FST4-1 1-15
1 測定操作

1.3.6 簡易操作モードの基本操作
JSPM-5200用の操作モードである簡易操作モードの基本操作について説明します。

1.3.6a コントロールダイアログ
簡易操作モードには3つのコントロールダイアログが存在します。これらの表示・非表示の切
り替えは,アイコンドックの「ダイアログ表示切り替え」ショートカットアイコン群で行います。

■ コントロール1ダイアログ
測定操作やフィードバックコントロールなど,SPM装置制御の主要操作を行うメインコントロ
ールダイアログです。

コントロール1 ダイアログ

■ コントロール2とコントロール3ダイアログ
コントロール2とコントロール3ダイアログの表示は排他関係になっており,どちらか片方のダイ
アログだけが表示可能になっています。これらのダイアログはサブコントロールの役割を果た
していて,測定信号の設定とステージコントロールを行うタブウィンドウで構成されています。
簡易操作モードではオプション測定モードごとに入力信号の種類・入力信号数・測定画素
数が決められています。これらの設定はコントロール2ダイアログからは変更することはできま
せん。また,コントロール2ダイアログから呼び出せる走査モードも限定されています。
コントロール2ダイアログから呼び出せる走査モード以外の測定をする場合や,コントロール2
ダイアログからは設定できない入力信号を画像化する場合には,サブコントロールダイアロ
グをコントロール3ダイアログに切り替えてください。コントロール3ダイアログでは,コントロー
ル2で設定できない複合的な測定モードも設定可能です。

1-16 TM-57553FST4-1
1 測定操作

ただし,コントロール3ダイアログから複合的な測定を実現するためには,SPM装置と
SPMモードについて,詳細な知識が必要となりますので注意してください。
コントロール3での操作方法は詳細操作モードでの操作方法と同じですので,後述す
る詳細操作モードでの操作説明を読み,充分に理解した上で行ってください。

• コントロール2ダイアログ
コントロール2ダイアログの表示内容は,現在選択されているオプション測定モードによ
って異なります。コントロール2ダイアログでは,入力信号のコントロールきます。ただし,
入力信号の種類とチャンネルは固定となっており,コントロール2ダイアログからは変更
できません。なお,オプション機器設定がある場合は,コントロール2ダイアログ上から
SPS測定やオプション測定が行えます。その場合には,測定設定ダイアログを呼び出
すボタンがダイアログ上に表示されます。
• コントロール3ダイアログ
コントロール3ダイアログからは,詳細操作モードと同等の操作が実行でききます。コント
ロール3ダイアログからは入力信号の数や測定画素数を変更して自由な測定を行うこ
とができます。またより詳細なコントローラ内部設定を行う「詳細設定」ダイアログを呼
び出すことができます。
• Zステージタブウィンドウ
「Zステージ」タブウィンドウからは,試料ステージの上下移動をコントロールすることがで
きます。

コントロール2とコントロール3ダイアログと,Zステージタブウィンドウ

TM-57553FST4-1 1-17
1 測定操作

1.3.6b 入力信号の切り替え
コントロール2もしくはコントロール3から入力信号の切り替えができます。

■ コントロール2ダイアログからの入力信号の切り替え
• 標準測定でのみ,コントロール2から入力信号を切り替えることができます。オプション測
定では,入力信号は固定となっており,変更する場合はコントロール3に表示を切り替える
必要があります。
• コントロール2から入力信号を選択する場合,最大2入力の測定が可能です。しかし,ひと
つは常に表面形状信号に使用されていますので,実際にはもうひとつの入力信号を選択
します。
• 各信号名の隣にある[FW]チェックボックスをチェックすると,フォワードスキャンでの信号
を画像信号として入力します。[BW]チェックボックスをチェックした場合は,バックワード
スキャンでの信号が画像化されます。
• 入力信号が切り替えられると,画像表示ウィンドウのタイトルに選択された信号の種類と
FW/BWが表示されます。また複数入力にした場合は,複数の画像表示ウィンドウが表
示されます。
• 入力信号の入力フィルタをコントロール2ダイアログ上から設定できます。また表面形状
信号については入力ゲインも設定できます。

■ コントロール3ダイアログからの入力信号の切り替え
• コントロール3ダイアログには信号1~4までの入力選択が存在しますが,信号1以外の設
定は複数信号入力測定に設定されていないと,設定を変更できません。入力信号数は,
[走査モード]から[2入力画像測定(512)]か[2入力画像測定],もしくは[4入力画像測
定]を選択することで2入力か4入力を設定します。
• 実際に入力する信号は,信号1~4のプルダウンメニューから選択します。[BW]チェック
ボックスがチェックされていない場合はフォワードスキャンでの測定信号が,チェックされて
いる場合はバックワードスキャンでの測定信号が画像化されます。
• 入力信号が切り替えられると,画像表示ウィンドウのタイトルに選択された信号の種類と
FW/BWが表示されます。また複数入力にした場合は,複数の画像表示ウィンドウが表
示されます。
• 入力信号の入力フィルタ・ゲイン・オフセットをコントロール3ダイアログ上から詳細設定ダ
イアログを呼び出すことで設定できます。
• 詳細設定ダイアログは[詳細設定]ボタンをクリックすることで呼び出すことができます。
詳細設定ダイアログが表示されたら,タブウィンドウを[入力信号]に切り替え,各信号の
入力設定を行ってください。

1-18 TM-57553FST4-1
1 測定操作

詳細設定ダイアログの入力信号タブウィンドウ

1.3.6c オプション測定の切り替え
測定モード起動の際は,標準測定(Normalショートカットアイコン)に設定されていますが,
アイコンドックの「オプション測定切り替え」ショートカットアイコン群をクリックすることによりオ
プション測定(MFM(P-P)・MFM(L-L)・VE-AFM・LM-FFM・SKPM・SCFM)へ測定を
切り替えることができます。オプション測定モードに切り替わると,コントロール2ダイアログの
内容がオプション測定モードに即して変化します。

コントロール3ダイアログは,走査モードと信号選択の設定が切り替わりますが,内容自
体は変化しません。
またオプション測定を切り替えると,入力信号の種類とチャンネル・測定画像の画素数
が自動的に最適に設定されるため,画像表示ウィンドウもそれらに応じて表示枚数や
大きさが切り替わります。
MFM(L-L)測定にはオプション機器としてデジタルコントロールMFMボードが,VE-
AFM・LM-FFM・SKPM・SCFMにはオプション機器としてロックインアンプが必要と
なります。これらのオプション機器の接続状況は,機器設定ダイアログで設定する必要
があります。

TM-57553FST4-1 1-19
1 測定操作

オプション測定ごとのコントロール2ダイアログ

1.3.6d 各種コントロールダイアログの呼び出し
オプション測定に限らず,I-Vカーブ測定やフォースカーブ測定,さらにはSPSマッピング測
定を行う場合には,コントロール1・2・3でダイアログの他に専用のコントロールダイアログを
呼び出す必要があります。それらの呼び出しが必要な場合には,コントロールダイアログ2・3
上に呼び出すためのボタンが現れますので,それをクリックして専用コントロールダイアログ
を呼び出してください。

1-20 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.7 詳細操作モードの基本操作
JSPM-4500および4610の操 作 モードである詳 細 操 作 モードについて説 明 します。また
JSPM-5200でも詳細操作モードは使用可能ですので,JSPM-5200で詳細操作モードを
使用する場合にお読みください。

1.3.7a コントロールダイアログ
詳細操作モードはひとつのメインコントロールダイアログと,複数の機能別コントロールダイ
アログによって構成されます。これらコントロールダイアログの表示・非表示はアイコンドックの
「SPM測定設定ダイアログ表示切り替え」ショートカットアイコン群および「SPS/オプション
測定設定ダイアログ表示切り替え」ショートカットアイコン群で行います。

■ メインコントロールダイアログ
測定の開始・停止,フィードバックコントロール,入力信号設定など主要な操作を行うダイア
ログです。

メインコントロールダイアログ

TM-57553FST4-1 1-21
1 測定操作

■ 機能別コントロールダイアログ群
詳細操作モードでは,メインコントロールダイアログ以外にも複数の機能別コントロールダイ
アログを利用して操作を行います。機能別コントロールダイアログには以下の種類がありま
す。
• プローブダイアログ
プローブ関連機能の専用コントロールです。アイコンドックの[ ]で表示します。
• ステージ制御ダイアログ
試料ステージ位置の制御を行います。アイコンドックの[ ]で表示します。

プローブダイアログとステージ制御ダイアログ

• 詳細設定ダイアログ
「走査」・「バイアス電圧」・「入力信号」・「表示」の4つのタブウィンドウにより構成される,
より詳細な設定やSPMコントローラの内部設定を行うコントロールです。
アイコンドックの[ ]で表示します。

詳細設定ダイアログの各タブウィンドウ

1-22 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• カンチレバ調整ダイアログ
AC-AFMおよびNC-AFMモードで使用するカンチレバ発信調整専用コントロール
です。AC-AFM用タブウィンドウとNC-AFM用タブウィンドウで構成されています。
アイコンドックの[ ]ショートカットボタンで表示させます。

カンチレバ調整ダイアログ

1.3.7b SPM測定モードの切り替え
• 走査モードの切り替え
• 測定画像の画素数および入力信号の数は,メインコントロールダイアログの[走査モ
ード]で設定します。
• SPS測定やSPSマッピング測定を行う場合には,[走査モード]から[SPS測定]や
[SPSマッピング測定]を選択して走査モードを切り替えます。
• 走査モードを切り替えた場合には,画像表示ウィンドウおよびスペクトル表示ウィンド
ウが切り替えたモードに対応して変更されます。
例えば[4入力画像測定]を選択した場合,256×256pixelの画像が表示可能
な画像表示ウィンドウが4枚表示されます。
• SPM測定モードの切り替え
オプション測定を行う場合には,メインコントロールダイアログの[測定モード]を切り替
えます。
通常は[測定モード]のメニュー項目には標準的なオプション測定のみが表示さ
れますが,測定起動時に「すべてのSPM測定モード」を選択していた場合には,す
べてのオプション測定がメニュー内に表示されます。

TM-57553FST4-1 1-23
1 測定操作

1.3.7c 測定設定コントロールダイアログの呼び出し
SPS測定・SPSマッピング測定,磁気力測定(リフトモード),走査ケルビンプローブ測定を
行う場合には,アイコンドックからそれぞれの測定設定ダイアログを呼び出します。
SPS測定設定ダイアログを呼び出したときは,通常は標準的なSPS測定用タブウィン
ドウのみが表示されますが,測定起動時に「すべてのSPM測定モード」を選択していた
場合は,すべてのSPS測定用タブウィンドウが表示されます。

「コンタクトAFM」を選択して起動した場合と,「すべてのSPM測定モード」を選択して起動した場合

■ 入力信号の切り替え
• メインコントロールダイアログには信号1~4までの入力選択が存在しますが,信号1以外
の設定は複数信号入力測定に設定されていないと変更できません。
• 実際に入力する信号は,信号1~4のプルダウンメニューから選択します。[BW]チェック
ボックスがチェックされていない場合はフォワードスキャンでの測定信号が,チェックされて
いる場合はバックワードスキャンでの測定信号が画像化されます。
• 入力信号が切り替えられると,画像表示ウィンドウのタイトルに選択された信号の種類と
FW/BWが表示されます。また複数入力にした場合は,複数の画像表示ウィンドウが表
示されます。
• 入力信号の入力フィルタ・ゲイン・オフセットは詳細設定ダイアログの[入力信号]タブウ
ィンドウで設定します。

1-24 TM-57553FST4-1
1 測定操作

■ SPMフィードバックモードの切り替え(「すべてのSPM測定モード」選択時)
測定起動の際に「すべてのSPM測定モード」を選択していた場合,メインコントロールダイア
ログからSPMフィードバックモードを切り替えることができるようになります。
フィードバックモードを切り替えるには,メインコントロールダイアログ上の[STM/AFM]から,
切り替えたいフィードバックモードを選択してください。

フィードバックモード切り替え(STM/AFMプルダウンメニュー)

◇注意◇
プローブを退避せずにフィードバックモードを切り替えた場合,プローブがクラッシュする
場合がありますので,必ず事前にプローブを退避させてください。またフィードバックモード
を切り替えた場合には,プローブの交換や再調整が必要になります。

測定起動の際に「すべてのSPM測定モード」以外を選択した場合は,フィードバックモ
ードは選択したモードで固定されますので,フィードバックモードを切り替えたい場合は
アイコンドックの[ ]をクリックして,いったん測定を終了する必要があります。

1.3.8 測定データの保存
測定結果はユーザディレクトリに自動的に保存されます。自動保存する際のファイル名は,
ソフトウェアが測定時刻などから生成します。

① 入力信号が1つの場合のファイル名
a. 画像データの場合
ファイル名の先頭に「Img」が付き,次に測定日時が付加されます。
ファイル名の例 : 「Img2004_1221_18511909.tif」
2004年12月21日18時51分19秒09に保存された画像データ
b. スペクトルデータの場合
ファイル名の先頭に「Spec」が付き,次に測定日時が付加されます。
ファイル名の例 : 「Spec2005_0124_17022719.spc」
2005年1月24日17時2分27秒19に保存されたスペクトルデータ
測定済みの画像データ上でSPS測定位置を指定してスペクトル測定を行った場
合,測定結果は独立したデータファイルとして保存されず,測定位置を指定した
元画像データに付加情報として記録されます。このとき,元画像データの測定履
歴には,SPS測定位置が表示されます。データを解析ソフトウェアから呼び出す場
合は,元画像データを読み込むことでSPS測定データも読み込まれます。

TM-57553FST4-1 1-25
1 測定操作

c. SPSマッピングデータの場合
ファイル名の先頭に「SPSMapping」が付き,次に測定日時が付加されます。
ファイル名の例 : 「SPSMapping2004_1222_15521607.tif」
2004年12月22日15時52分16秒07に保存されたSPSマッピングデータ
d. 周波数スキャンデータの場合
ファイル名の先頭に「Freq」が付き,次に測定日時が付加されます。
ファイル名の例 : 「Freq2005_0106_17282311.spc」
2005年1月6日17時28分23秒11に保存された周波数スキャンデータ

② 複数入力測定の場合のファイル名
a. 2入力測定の場合
上記①-aのファイル名の末尾に,「_2INPUT」と入力チャンネルによって「_A」か「_B」
が付加されます。
ファイル名の例 : 「Img2005_0128_14410908_2INPUT_A.tif」
「Img2005_0128_14410908_2INPUT_B.tif」
b. 4入力測定の場合
上記①-aのファイル名の末尾に,「_4INPUT」と入力チャンネルによって「_A」,「_B」
「_C」,「_D」が付加されます。
ファイル名の例 : 「Img2005_0128_17520006_4INPUT_A.tif」
「Img2005_0128_17520006_4INPUT_B.tif」
「Img2005_0128_17520006_4INPUT_C.tif」
「Img2005_0128_17520006_4INPUT_D.tif」

③ オプション測定モードでのファイル名
オプション測定モードで測定されたデータの場合,①-aのファイル名の末尾にオプショ
ン測定モード名(「_MFM」,「_VEAFM」,「_SKPM」,「_LMFFM」,「_SCFM」)が付
加され,測定信号によって「_A」,「_B」「_C」が付加されます。
ファイル名の例 : 「Img2005_0128_17572823_VEAFM_A.tif」
「Img2005_0128_17572823_VEAFM_B.tif」
「Img2005_0128_17572823_VEAFM_C.tif」
粘弾性測定の場合。「*_A.tif」が表面形状像,「*_B.tif」が弾性像,「*_C.tif」が
粘性像のデータファイルとなります。

■ 測定データの確認
測定ソフトウェアでは,データファイルを読み込むことはできません。測定履歴ウィンドウ
から測定データを確認するか,解析ソフトウェアでデータファイルを読み込んでください。

1-26 TM-57553FST4-1
1 測定操作

■ ユーザディレクトリの変更

ユーザーディレクトリを変更する場合,「WinSPMのプロパティ」ダイアログの「設定」タブウィ
ンドウ上から,「ユーザーディレクトリ」項目の[変更]ボタンをクリックします。
WinSPMのプロパティダイアログの表示方法については,1.3.14項「WinSPMのプロ
パティ」を参照してください。
以下のダイアログが表示されますので,変更したいディレクトリを指定してください。また,ダ
イアログ上からフォルダを新規に作成することもできます。

ユーザディレクトリの変更ダイアログ

上記フォルダからはマイネットワークも参照できますが,ネットワークの参照はトラフィック
状況などに処理速度が左右されますので,ユーザディレクトリはローカルディスク上に
設定することをおすすめします。
もしネットワーク上のフォルダをユーザディレクトリに指定する必要がある場合は,目的
のフォルダをPCのネットワークドライブに登録してから設定してください。

TM-57553FST4-1 1-27
1 測定操作

1.3.9 ソフトウェアオシロスコープ
測定ソフトウェア上でオシロスコープの機能が使えます。ソフトウェアオシロスコープは,2ch
同時取り込み表示が可能です。チャンネルAが赤,チャンネルBが青で表示されます。
ソフトウェアオシロスコープは,測定状態では,画像信号のラインモニタとしてのみ機能
するため,オシロスコープとして使用することはできません。

ソフトウェアオシロスコープが動作している状態(ソフトウェアは測定終了状態)

■ オシロスコープとして使用する時の設定
以下にオシロスコープの設定手順を示します。
1. 測定終了状態で,オシロスコープウィンドウとオシロスコープ設定ダイアログを,
アイコンドックから呼び出す。
2. 「入力信号」の[ ]をクリックし,モニタしたい信号を選択する。
3. 「カップリング」の[ ]をクリックし,信号の性質やモニタの目的によって[AC(信
号の交流カップリング)],[DC(信号の直流カップリング)],[Line Fit(信号変化
の傾きを補正して表示する)]からカップリングを選択する。
4. 「感度」の[ ]をクリックし,目的に応じて信号入力感度を設定する。
通常は「オフセット」の数値入力ボックスに[0.0]を設定します。
2ch同時取り込みの時には,双方にオフセットを与えると,信号が離れて表示され
るので見やすくなります。
5. 設定終了後,設定を保存する場合はメインメニューの[ファイル]をクリックし,プ
ルダウンメニューから[設定を保存]を選択する。
設定値が保存されます。
[設定を保存]を行わないと,次回に起動したときに初期設定に戻ります。

1-28 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.10 ロックインアンプ(オプション)
W i n S P M で は , SIGNAL RECOVERY 社 製 ロ ッ ク イ ン ア ン プ の 内 , Model51 1 0 と
Model7265の2機種をサポートしています。Model5110は旧タイプのロックインアンプで,
現在ではModel7265に機種変更されています。ロックインアンプのRS-232C設定や操作
を行うコントロールウィンドウの内容は,機種によって異なります。ロックインアンプを追加する
ことによって,粘弾性測定・横振FFM測定・走査ケルビンプローブ測定・静電容量力測定
が可能となります。ただし,静電容量力測定には,Model 7265が必要です。
上記オプション測定以外の測定を行う場合,ロックインアンプの信号ケーブルは接続したま
までも測定に影響しませんが,ロックインアンプの電源はOFFのままで観察してください。

1.3.10a ロックインアンプの前面パネル (Model5110)

③ ⑥ ⑦ ⑭ ⑮

④ ⑤ ⑧ ⑩ ⑨ ⑪ ⑫ ⑬ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ①

① POWER
POWERスイッチです。
② 入力切り替えスイッチ
入力信号の切り替えスイッチです。この装置を使用する場合は次のように設定します。

A 106

V A-B A を選択 I 108 両方とも選択しない


(A側が押されてい (両方とも押されていな
る状態) い状態)

FLOAT
FLOAT を選択
(押されている状態)
GROUND

③ SENSITIVITY設定キー
入力感度を設定します。設定時にOVLDのインジケータが点灯しないように,一番高
い感度を設定します。
④ A(INPUT)端子
信号の入力端子です。

TM-57553FST4-1 1-29
1 測定操作

⑤ LINE REJECTキー
入力信号に入ってくる電源(AC100V)の周波数に対してフィルタをかけます。通常は
使用しません。
⑥ FILTERS MODEキー
入力信号に対してフィルタの設定を行います。通常は「BP」で使用します。
⑦ FILTERS TRACKキー
フィルタリングの周波数帯域をリファレンス信号に追従させるかどうかを設定します。通
常は「TRACK」で使用します。
⑧ DISPLAY1表示切り替えキー
DISPLAY1の表示を設定値またはCH1の出力値に切り替えます。LEDの点灯してい
るものが現在表示されているものです。
⑨ PARAMETERキー
⑧DISPLAY1表示切り替えキーで,選択された設定値を変更するためのキーです。
⑩ AUTOキー
位相等のオート設定のときに使用します。
⑪ +90/FUNCTIONキー
位相を90°ずつ変更します。
⑫ REFERENCEキー
ロックインアンプのリファレンス信号の切り替えキー,および検出信号の成分(ω/2ω)
切り替えキーです。ロックインアンプはINT(LED点灯),F(LED消灯)に設定します。
⑬ OUTPUT端子
信号の出力端子です。CH1,CH2に出力される信号の種類は,⑮出力切り替えキー
によって切り替えます。
⑭ TIME CONSTANT設定キー
ロックインアンプの時定数の設定を行います。この装置では,走査速度によって変更し
ますが,通常は「MIN」で使用します。
⑮ 出力切り替えキー
出力Acosφ(CH1),Asinφ(CH2)もしくは,振幅(CH1),位相(CH2)の切り替えを
行います。
⑯ SLOPEキー
出力信号のフィルタリングを指定します。通常は「6dB」で使用します。
⑰ Dynamic Reserve設定キー
通常は「NORM」もしくは,「HI RES」で使用します。
⑱ OFFSETキー
通常は「OFF」で使用します。
⑲ X EXPAND設定キー
通常は「OFF」で使用します。
⑳ OSC OUT端子
変調用オシレータの出力端子です。

1-30 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.10b ロックインアンプの通信設定 (Model5110)


RS-232Cの設定は出荷時に行っていますが,[作動]を選択したときにエラーが生じた場
合は,以下の手順に従って確認してください。
1. ロックインアンプパネルの右端にある[CONFIG]キーを押し,さらにRS232キーを
押す。
2. DISPLAY1の表示パネルに0が表示され,DISPLAY2の表示が11であることを確
認する。もし11でない場合は,VALUEの[▲],[▼]キーを押して11に設定する。
3. PARAMETERキーの[△]を押してDISPLAY1の表示を1にし,DISPLAY2の表示
が16であることを確認する。もし16でなかった場合は,VALUEの[▲],[▼]キー
を押して16に設定する。
4. 設定終了後,再度[CONFIG]キーを押す。
以上で下記のような設定になります。
項目 設定値
BAUD RATE 9600
DATA BITS 7
PARITY enabled and even
STOP BITS 1
RS232 ECHO enabled
PROMPT enabled

TM-57553FST4-1 1-31
1 測定操作

1.3.10c ソフトウェアの設定 (Model5110)


1. 測定終了状態で,メインメニューのSPM設定から[機器設定]を選択する。
「機器設定」ダイアログが表示されます。
2. 「機器設定」ダイアログの,[ロックインアンプ(COM1)]をチェックし,ラジオボタ
ンを[Model 5110]にする。

機器設定ダイアログ(Model5110)

1-32 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.10d ソフトウェアからの操作 (Model5110)


Model 5110用コントロールには,以下のような項目があります。コントロールは,アイコンドッ
クから[ ]をクリックすることで表示します。

① ⑤
② ⑥

④ ⑦
⑧ ⑨

ロックインアンプ (Model5110)

① 作動
チェックするとRS-232Cを使用してロックインアンプとの接続を開始します。接続処理
中にロックインアンプの初期化処理も行われますので,処理終了までには多少の時間
を要します。正常に接続が完了できなかった場合には,エラーダイアログが表示されま
す。その際には,RS-232Cケーブルの接続や,ロックインアンプの電源および通信設
定を確認してください。
一旦RS-232C通信接続が確立すると,このチェックボックスは非表示になります。
② 入力感度
ロックインアンプの信号入力感度を設定します。信号入力感度により,ロックインアンプ
に入力できる信号の大きさは決まりますが,大きな値に設定しすぎるとロックインアンプ
からの出力信号の精度が下がります。通常は使用しながら設定値を大きな値から小さ
な値に変化させ,入力信号が飽和しない(OVLDのインジケータが点灯しない)値に
設定してください。
③ 時間定数
ロックインアンプの検出動作を行う時定数を設定します。時定数の値が小さいほど,高
周波の信号に対して検出動作を行うことができます。
④ リファレンス位相
ロックインアンプの検出動作に使用するには,基準信号と入力信号の位相を揃える必
要があります。このコントロールは,この両信号の位相を調整するために使用します。[設
定]ボタンをクリックすることで,±180度の範囲で設定可能です。また,[+90]ボタンを
クリックすると,現在の位相値から90度回転した位相に設定されます。
⑤ 発振周波数[kHz]
ロックインアンプの動作には,入力信号をロックするために基準信号が必要になります。
通常,この基準信号にはロックインアンプ自身が持つ発振器からの信号を使用します。
発振器から出力する信号の周波数を,「kHz」オーダで設定します。また,[設定]ボタ
ンをクリックして,スライダを動かすことで周波数を設定することができます。
⑥ 発振出力[V]
発振器から出力する信号の振幅を,Vオーダで設定します。[設定]ボタンをクリックし

TM-57553FST4-1 1-33
1 測定操作

て,スライダを動かすことで出力値を設定することができます。
⑦ 出力信号
ロックインアンプからの出力信号の種類を設定します。ロックインアンプからは2信号が
出力可能ですので,出力設定は2信号ペアで設定します。
「AcosT,AsinT」が選択されている場合には,ロックインアンプでの検出信号が,そ
れぞれcos成分とsin成分に分解されて出力されます。
「Amplitude,Phase」が選択されている場合には,ロックインアンプでの検出信号の,
振幅値と位相値が出力されます。
⑧ 自動設定
このボタンをクリックすると,ロックインアンプ自身が持つ自動調整機能により,現在の
入力信号に対して適切な入力感度の設定と,基準信号と入力信号の位相が一致す
るように,リファレンス位相が適切な値への設定されます。
⑨ 詳細設定
ロックインアンプのより詳細な設定を行うダイアログを表示します。

ロックインアンプ1 アドバンスダイアログ

• Filter
入力信号に対してのフィルタを設定します。通常は「Band Pass」にして使用します。
「Flat」: フィルタを適用しません
「Low Pass」: 入力信号に低域パスフィルタを適用します。
「Band Pass」: 入力信号にバンドパスフィルタを適用します。
• Filter Frequency [kHz]
「Filter」において,「Low Pass」か「Band Pass」を設定した場合に,そのカットオフ周
波数を設定します。
• Line Reject
入力信号に入ってくる電源(AC100V)の周波数に対し,フィルタをかけて電源ノイズ
を低減します。通常はOffで使用します。
Off: Line Rejectを行いません
F: 電源周波数に対してフィルタをかけます

1-34 TM-57553FST4-1
1 測定操作

2F: 電源周波数の2倍高調波に対してフィルタをかけます
F + 2F: 電源周波数と,その2倍高調波両方にフィルタをかけます
• Track
フィルタリングの周波数帯域をリファレンス信号に追従させるかを設定します。
通常はチェックした状態で使用します。
• Ref Internal
基準信号として,どの信号を使用するかを選択します。通常は「INT」で使用します。
INT: ロックインアンプが持っている内部発振器を使用します。
TTL: TTLレベル入力信号をロッキング動作に使用します。
EXT: 外部発振機の出力をロッキング動作に使用します。
• 2F
基準信号の周波数に対して,入力信号のどの周波数成分を検出・出力するかを設定
します。通常は,このチェックボックスをチェックしない状態で使用します。
基準信号の周波数をFとすると,チェックボックスをチェックしていない場合,ロックイン
アンプは入力信号のF成分をロックし出力します。チェックボックスがチェックされている
場合には,2F成分(倍周波数成分)が出力信号として出力されます。
• Slope / 12dB
出力信号のフィルタリングを指定します。通常はチェックしない状態で使用します。
• Dynamic Res.
Dynamic Responseのモードを設定します。通常は「Normal」もしくは「High Res
olustion」で使用します。
• Offset
出力信号に対してのオフセット量を設定する時にチェックします。通常はチェックしない
状態で使用します。
• Channel 1 / Channel 2
出力チャンネル1と2それぞれに対してオフセットを設定します。「Offset」がチェックさ
れていない場合は使用しません。

それぞれの設定の詳細については,ロックインアンプのマニュアルを参照してください。

TM-57553FST4-1 1-35
1 測定操作

1.3.10e ロックインアンプの前面パネル (Model7265)

① ② ③ ④ ⑤

① A端子
信号の入力端子です。
② カーソルキー
パラメータ設定用のカーソルキーです。
③ カーソルキー
パラメータ設定用のカーソルキーです。
④ ファンクションキー
設定パラメータ選択用のキーです。
⑤ OSC OUT端子
変調用オシレータの出力端子です。

1.3.10f ロックインアンプの通信設定 (Model7265)


RS-232Cの設定は出荷時に行っていますが,[作動]を選択したときにエラーが生じた場
合は,以下の手順に従って確認してください。

1. 表示パネル右にある[MENU]キーを押す。
2. 表示パネルに「MAIN MANU 1」が表示されたら,「CONFIGURATION」を選択。
3. 「CONFIGURATION」メニューが表示されたら,「COMMUNICATIONS」を選択。
4. 「COMMUNICATIONS」メニューが表示されたら,「RS232 SETTINGS」を選択。
5. 「RS232 SETTINGS」メニューが表示されるので,以下のように設定を行う。

項目 設定値
BAUD RATE 19200 bps
DATA BITS 7 + 1 PARITY
DELIMITER (044)
RS232C ADDRESS 1
ECHO ON
PARITY EVEN PARITY
PROMPT ON

1-36 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.10g ソフトウェアの設定 (Model7265)


1. 測定終了状態で,メインメニューのSPM設定から[機器設定]を選択する。
「機器設定」ダイアログが表示されます。
2. [ロックインアンプ(COM1)]をチェックし,チェックボックス下部のラジオボタンを
[Model 7265]にする。

機器設定ダイアログ(Model 7265)

3. 必要な場合は,[FAST X/Y接続]チェックボックスをチェックし,ロックインアン
プとSPMコントローラ間の信号ケーブル接続を変更する。
FAST X/Y接続は,通常接続よりも速い時定数(μ秒オーダ)でロックインアン
プを使用する必要がある場合に設定します。そのさい,ロックインアンプの出力信
号ケーブルをCH1/CH2から,FAST X/FAST Yに接続し直す必要がありま
す。
これらの信号出力コネクタの詳細については,ロックインアンプのマニュアルを参照
してください。

TM-57553FST4-1 1-37
1 測定操作

1.3.10h ソフトウェアからの操作 (Model7265)


Model 7265用コントロールには,以下のような項目があります。コントロールは,アイコンドッ
クから[ ]をクリックすることで表示します。


② ③

拡張ロックインアンプ(Model7265)

① 接続
チェックするとRS-232Cを使用してロックインアンプとの接続を開始します。接続処理
中にロックインアンプの初期化処理も行われますので,処理終了までには多少の時間
を要します。正常に接続が完了すると,ロックインアンプの正面表示パネルのバックライ
トが点灯します。正常に接続が完了できなかった場合には,エラーダイアログが表示さ
れます。その際には,RS-232Cケーブルの接続や,ロックインアンプの電源および通信
設定を確認してください。
一旦RS-232C通信接続が確立すると,このチェックボックスは非表示となります。
② 設定
ロックインアンプの信号入力に関する設定を行います。
• 入力感度
ロックインアンプの信号入力感度を設定します。信号入力感度により,ロックインア
ンプに入力できる信号の大きさが決まりますが,非常に大きな値に設定するとロッ
クインアンプからの出力信号の精度が下がります。通常は使用しながら設定値を
大きな値から小さな値に変化させ,入力信号が飽和しない程度の値に設定しま
す。
WinSPM上からは,100nV~1Vの範囲で,入力感度を設定します。
• 時定数
ロックインアンプの検出動作を行う時定数を設定します。時定数の値が小さい程,
高周波の信号に対して検出動作を行うことができます。
WinSPM上からは,5ms~500msの範囲で,時定数を設定します。
• リファレンス位相
ロックインアンプの検出動作に使用するには,基準信号と入力信号の位相を揃え
る必要があります。このコントロールは,この両信号の位相を調整するために使用し
ます。[設定]ボタンをクリックすることにより,±180度の範囲で設定可能です。ま

1-38 TM-57553FST4-1
1 測定操作

た,[+90]ボタンをクリックすると,現在の位相値から90度回転した位相に設定さ
れます。
• リファレンス周波数
基準信号の周波数に対して,入力信号のどの周波数成分を検出・出力するかを
設定します。基準信号の周波数をFとすると,「F」に設定されている場合,ロックイ
ンアンプは入力信号のF成分をロックし出力します。「2F」に設定されている場合
には,倍高調波である2F成分が,「3F」に設定されている場合には3倍高調波で
ある3F成分が出力されます。
• 出力切り替え
ロックインアンプからの出力信号の種類を設定します。ロックインアンプからは2信
号が出力可能ですので,出力設定は2信号ペアで設定します。
「Acos・Asin」が選択されている場合には,ロックインアンプでの検出信号が,そ
れぞれcos成分とsin成分に分解されて出力されます。
「振幅・位相」が選択されている場合には,ロックインアンプでの検出信号の,振幅
値と位相値が出力されます。
• 感度自動設定ボタン
このボタンをクリックすると,ロックインアンプ自身が持つ感度自動調整機能により,
現在の入力信号に対しての適切な入力感度が設定されます。ただし,感度調整
後に入力信号の振幅幅が変わった場合には,再度設定を行う必要があります。
• 位相自動調整ボタン
「感度自動設定」同様,ロックインアンプ自身が持つ位相自動調整機能により,
基準信号と入力信号の位相が一致するように,リファレンス位相が適切な値に設
定されます。
③ 変調信号設定
ロックインアンプの動作には,入力信号をロックするために基準信号が必要になります。
通常,この基準信号にはロックインアンプ自身が持つ発振器からの信号を使用します。
ここでは,このロックインアンプが持つ発振器の設定を行います。
• 変調周波数[kHz]
発 振 器 から出 力 する変 調 信 号 の周 波 数 を,「kHz」オーダで設 定 します。0~
250kHzの範囲で設定可能です。[設定]ボタンをクリックし,スライダを使用して
設定できます。
• 変調振幅[V]
発振器から出力する変調信号の振幅を,Vオーダで設定します。0~5Vの範囲
で設定可能です。[設定]ボタンをクリックし,スライダを使用して設定できます。
④ 変調信号掃引
静電容量力測定など,「リファレンス周波数」コントロールによって,検出する周波数成
分を指定するような場合には,ロックインアンプが最大効率で信号検出を行える変調
信号の周波数を設定する必要があります。ここでは,ロックインアンプの持つ発振器か
らの変調信号をある周波数範囲で掃引し,その際,ロックインアンプからの出力信号を
プロットすることで,最大効率になる変調周波数を調べます。

TM-57553FST4-1 1-39
1 測定操作

• 開始周波数[kHz]/終了周波数[kHz]
変調信号掃引を行う際の開始周波数と終了周波数を「kHz」オーダで設定しま
す。
• 掃引時間[sec]
変調信号掃引を行う際の総所要時間を設定します。変調信号掃引は,RS-232
C通信に要する時間の関係で最も早い掃引で35秒かかるため,掃引時間は35~
600秒(10分)の間で設定できるようになっています。
• 1Fを変調周波数へセット
チェックボックスがチェックされていると,変調信号掃引の結果検出したロックイン
アンプの検出信号が,最大になる周波数の1F成分(周波数ω)を変調信号設定
フィールドの「変調周波数(kHz)」に設定します。検出した周波数は,「開始」ボタ
ン右にも表示されます。
未検出状態では,「Not detect」と表示されています。
• 開始ボタン
変調信号掃引を開始します。

1.3.10i サポート外のロックインアンプを使用する場合の設定
WinSPMがRS-232C通信を用いてコントロールすることをサポートしているロックインアン
プ(Model 5110およびModel 7265)以外のロックインアンプをSPMコントローラに接続す
ることでも,各種オプション測定や応用測定が可能になります。
ただし,この場合WinSPMからロックインアンプを制御することはできません。
サポート外のロックインアンプを使用する場合は,「機器設定」ダイアログにおいて,ロックイ
ンアンプの種類を「サポート外のロックインアンプ」に設定してください。

1-40 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.11 試料温度コントローラ(JSPM-5200用オプション)
温度コントローラ(TM-24090)と加熱ホルダや冷却ホルダを組み合わせて使用すると,
試料温度がコントロールできます。温度コントローラをRS-232CでPCと接続することにより,
WinSPM上から試料温度制御が可能になります。

1.3.11a ソフトウェアの設定
WinSPMから試料温度制御を行うには以下の設定が必要です。
1. 測定終了状態で,メインメニューのSPM設定から[機器設定]を選択する。
[機器設定]ダイアログが表示されます。
2. [試料温度コントローラ(COM2)]をチェックする。

機器設定ダイアログ(試料温度コントローラ)

TM-57553FST4-1 1-41
1 測定操作

1.3.11b 試料ホルダ温度制御ダイアログ
試料温度制御は,試料ホルダ温度制御ダイアログ上から行います。
アイコンドックの[ ]をクリックする。
「試料ホルダ温度制御」ダイアログが表示されます。




試料ホルダ温度制御ダイアログ

① 接続
チェックするとRS-232Cを使用して温度コントローラとの接続を開始します。正常に接
続が完了できなかった場合には,エラーダイアログが表示されます。その際は,RS-
232Cケーブルの接続や,温度コントローラの電源および通信設定を確認してください。
② 現在の温度
試料ホルダに装着されている温度センサで,読み取った現在の温度を表示します。
• 温度表示が赤色で表示されている場合
現在の温度が,設定温度よりも1℃以上高いことを示します。
• 温度表示が緑色で表示されている場合
現在の温度が,設定温度の±1℃以内の温度であることを示します。
• 温度表示が青色で表示されている場合
現在の温度が,設定温度よりも1℃以上低いことを示します。
③ 設定温度
希望の試料温度を設定します。設定温度は0.1℃単位で設定できます。
• 加熱ホルダを使用している時
0℃~500℃(273.1K~773.1K)の間で温度を設定できます。加熱ホルダを,
使用している場合は,室温状態からヒータで試料を加熱して温度制御します。
• 冷却ホルダを使用している時
-199℃~50℃(74.1K~323.1K)の間で温度を設定できます。冷却ホルダを
使用している場合は,試料をヒータを冷却状態から使用し加熱して温度制御しま
す。

1-42 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• 加熱冷却ホルダを使用している時
-150℃~100℃(123.1K~373.1K)の間で温度を設定できます。室温状態・
冷却状態どちらからでもヒーターを使用して温度制御が可能です。
実際に制御できる温度幅と設定温度到達時間は,試料により異なります。

④ ヒータ出力
現在のヒータへの出力をパーセント表示します。実際の出力電圧は,温度コントローラ
本体の直流電源の最大電流によって決まります。例えば,直流電源の最大電流を1A
に設定している場合,インジケータの表示が半分ぐらいの位置を示していれば,0.5A
程度がヒータに出力されています。温度コントローラは,PID制御を用いて温度制御を
行っていますが,一般に設定温度付近で平衡状態になったときに,ヒータ出力がほぼ5
0%程度であれば安定した温度制御を行うことができます。観察や使用目的によって
設定温度は異なりますので,設定温度によって直流電源の最大電流を調整してくださ
い。
温度コントロール中に直流電源の出力電圧を変化させた場合,出力電圧の変化
によって温度制御が乱れます。この乱れの修正には多少の時間を要しますのでご
注意ください。
⑤ 設定フィールド
現在の温度制御に関する設定条件を表示しています。
設定は「詳細設定」ダイアログから変更できます。
⑥ 制御停止ボタン
温度制御を現在の状態で停止し,ヒータ出力を現在の状態で保持します。試料温度
が設定温度付近で安定し,ヒータ出力の変動が少なくなってから使用します。SPM測
定を開始する前には,ヒータ出力変動による測定への影響を防止するため,このボタン
をクリックします。制御停止中のボタンの表示は「制御開始」に変わります。
⑦ 詳細設定ボタン
ホルダの種類,PIDパラメータなどを設定するための,「詳細設定」ダイアログを表示し
ます。

TM-57553FST4-1 1-43
1 測定操作

1.3.11c 詳細設定ダイアログ

① ③

詳細設定ダイアログ

① 温度制御フィールド
装置に取り付けてあるホルダの種類を指定します。
② P Gain / I Gain / D Gain
温度制御を行うためのPID制御パラメータを設定します。パラメータの厳密な値は,ホ
ルダのばらつき,試料サイズ,試料温度によって異なりますが,デフォルト値としては以
下のようになります。

PID制御パラメータ 設定値
P Gain 27.4
I Gain 9
D Gain 2

PID制御の詳細については,解説書を参照してください。
③ 温度表示フィールド
摂氏・華氏のどちらの温度を表示するかを指定します。
④ 温度オフセット
温度測定は,温度センサ(白金薄膜抵抗対)の抵抗値を測定することにより温度を測
定しています。ホルダを取り付けたときのネジの接触抵抗,ケーブルの抵抗などにより,
温度センサ本体の抵抗値より,わずかですが抵抗値が高くなることがあります。このた
め,ダイアログ上で実際の温度よりも測定温度が高く表示されます。この誤差を補正す
るために温度オフセットを設定します。
例として,実際の試料部分の温度が20℃のとき(室温で,加熱・冷却を行う前の
温度を測定),Offset 0の状態でダイアログ上の表示温度が25℃と表示された
場合には,Offsetに-5を設定します。
温度オフセットは,表示温度,設定温度の両方に適用されます。

1-44 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.11d 試料温度コントローラの通信設定
試料温度コントローラとのRS-232C通信条件は,以下のように設定されています。

項目 設定値
通信速度 9,600 bps
データ長 7bit
パリテイ EVEN
ストップビット 1

TM-57553FST4-1 1-45
1 測定操作

1.3.12 CCDカメラ(オプション)
固定倍率CCDカメラ(TM-24033),ズームCCDカメラ(TM-24041)で撮影したCCDカ
メラ画像は,WinSPM上の専用ウィンドウ上で表示することができます。

1.3.12a ソフトウェア設定
WinSPMでCCDカメラ画像を表示するには,以下の設定が必要です。

1. 測定終了状態で,メインメニューのSPM設定から[機器設定]を選択する。
「機器設定」ダイアログが表示されます。
2. [CCDカメラ]をチェックする。
3. 搭載しているグラバボードを選択する。
CCD カ メ ラ 用 グ ラ バ ボ ー ド に は , “FlashBus MV Lite ” と “FlashBus Spectrim
Lite ”の2種類がありますので,PCに搭載されている方を「イメージグラバボードの種類」
で選択してください。

機器設定ダイアログ(CCDカメラ)

1-46 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.12b CCDカメラウィンドウ
CCDカメラ画像は,CCDカメラウィンドウに表示されます
アイコンドックの[ ]をクリックする。
「CCDカメラ」ウィンドウが表示されます。
表示する画像のサイズは,ウィンドウの大きさを変えて表示します。画像サイズは,
640×480pixelの大きさから,256×192pixelの大きさまで表示できます。ただし,
画像サイズは画像の縦横比が常に一定になるように,画像の横の大きさを基準に
して変化します。

CCDカメラウィンドウ

● タイトルバーの表示
タイトルバーには,現在のCCD画像の表示サイズが示されています。

● メニューバーの機能
ウィンドウ上部のメニューはボタンのように動作し,クリックすると機能が実行されます。
• キャプチャメニュー
CCD画像の取り込み(キャプチャ)の停止・再開を制御します。キャプチャ停止の際は,
タイトルバーの表示とメニューバーの表示が以下のように変化します。

• 画像保存メニュー
キャプチャ停止時にのみ使用できます。キャプチャ停止中のCCD画像(静止画像)を,
その表示サイズと同じ大きさのBMP画像としてファイルに保存します。クリックすると,
「名前を付けて保存」ダイアログが表示されますので,保存場所とファイル名を指定し
てファイルに保存します。
• 画像調整メニュー
CCD画像の明るさとコントラストを調整します。画像調整処理は,画像取り込み後にビ
デオキャプチャボード上で行われます。そのためキャプチャ停止中は,調整処理を行う
ことができません。クリックをすると「画像調整」ダイアログが表示されますので,明るさと

TM-57553FST4-1 1-47
1 測定操作

コントラストを画像を見ながら調整します。明るさ・コントラストパラメータは,0~63の範
囲で調整可能で,32が標準値になります。
• 画像入力メニュー
CCDカメラからの画像を,ビデオキャプチャボード「FlashBus MV」に入力する入力
端子を選択します。「Composite」は,BNC端子を使用するときに,「S-Video」は,S
映像端子を使用してカメラからの画像を入力するときに選択します。

• 十字線メニュー
CCD画像上に表示されている十字線の表示・非表示を切り替えます。クリックすること
で表示と非表示が切り替わります。十字線は,画像の中心を通るように表示されます。
• 閉じるメニュー
CCDカメラウィンドウを閉じます。

1.3.13 デジタルコントロールMFMユニット(オプション)
デジタルコントロールMFMユニット(TM-26060)をSPMコントローラに装着すれば,Line
by Line MFMが利用できます。Line by Line MFMを使用したMFM測定では,真空
中でも安定した磁気力測定が可能です。

Line by Line MFMでは,最初に走査した1ライン分の表面形状を記憶し,リフトアッ


プした状態でその形状をなぞる処理が必要です。デジタルコントロールMFMユニット
は,この処理を行うコントロールユニットです。

デジタルコントロールMFMユニット使用時(Line by Line MFM測定時)には,フィードバ


ック処理も,ユニット内のDSP(Digital Signal Processor)によって処理されるため,DSP
によるデジタルフィードバックになります。

デジタルコントロールMFMユニットを搭載していても,Line by Line MFM測定以外


の測定モードでは,SPMコントローラによる通常のアナログフィードバックで制御されま
す。

1-48 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.3.13a ソフトウェア設定
WinSPMでデジタルコントロールMFMユニットを使用するには,以下の設定が必要です。

1. 測定終了状態で,メインメニューのSPM設定から[機器設定]を選択する。
「機器設定」ダイアログが表示されます。
2. [デジタルコントロールMFMユニット]をチェックする。

機器設定ダイアログ(デジタルコントロールMFMユニット)

TM-57553FST4-1 1-49
1 測定操作

1.3.14 WinSPMのプロパティ
WinSPのプロパティダイアログ上では,WinSPMの基本設定を変更することができます。
「WinSPMのプロパティ」ダイアログは,「設定」タブウィンドウ,「壁紙」タブウィンドウ,
「管理」タブウィンドウによって構成されています。

1.3.14a 表示方法
WinSPMのプロパティダイアログを表示するには,以下の3つの方法があります。
① メインメニューの「編集」から,「WinSPMのプロパティ」を選択する。
② ショートカットコマンド「Ctrl+P」を入力する。
③ コンテクストメニューから,「プロパティ」を選択する。

1.3.14b 設定タブウィンドウ
設定タブウィンドウでは,現在WinSPMにログインしているユーザーの基本設定を,確認・
変更することができます。

設定タブウィンドウ

① ユーザー情報
• ログインユーザー名
現在WinSPMにログインしているユーザー名が表示されます。
• ユーザーパスワード
現在WinSPMにログインしているユーザーのパスワードが伏せ字で表示されます。
「変更」ボタンをクリックすることで,パスワードを変更することができます。
• ユーザーディレクトリ
現在設定されているユーザーディレクトリ名がフルパスで表示されます。
「変更」ボタンをクリックすることで,ユーザーディレクトリを変更することができます。

1-50 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• 設定ファイル
現在WinSPMにログインしているユーザーのユーザー設定ファイル名がフルパス
で表示されます。
ファイルの設定は「編集」ボタンをクリックすることでテキストエディタを使用して編
集可能ですが,編集を誤った場合はWinSPMが正しく動作しなくなる場合があり
ますので,注意してください。
この機能はメンテナンス作業のために用意されていますので,サポートサービス
の指示無く使用しないでください。
② 測定起動時のSPMモード
測定を開始する際には使用するSPMモードを選択する必要があります。ここでは,その
デフォルト値を設定します。
また,「測定起動時に選択ダイアログを表示しない」をチェックしておくと,SPMモード選
択作業が省略され,ここで設定したSPMモードで測定が開始されます。
詳しい測定開始手順については,1.4節「測定の準備」を参照してください。
③ メッセージ表示設定
測定動作中に動作経過を知らせるポップアップメッセージを表示するかどうかを設定し
ます。ポップアップメッセージが表示される場合,各コントロールダイアログ上のフォーカ
スが失われますので,これを回避したい場合には非表示に設定してください。
ポップアップメッセージと等価の経過表示は,常にWinSPMウィンドウ下部のステ
ータスバー上に表示されています。

1.3.14c 壁紙タブウィンドウ
壁紙タブウィンドウでは,WinSPMウィンドウ背面に表示する壁紙の設定を行います。



壁紙タブウィンドウ

① 壁紙なし
WinSPMウィンドウの背面に壁紙を表示しないように設定します。

TM-57553FST4-1 1-51
1 測定操作

② JEOLロゴマーク
WinSPMウィンドウの背面に,標準壁紙であるJEOLロゴマークを表示します。
③ BMP画像ファイル
WinSPMウィンドウの背面に,任意のビットマップ画像を表示します。
ビットマップ画像を指定するには,「選択」ボタンをクリックして,表示させたいビットマッ
プ画像ファイルを指定してください。
WinSPMは, “C:\WinSPM\Wallpaper”に存在するビットマップ画像ファイル
のみを壁紙として使用します。「選択」ボタンをクリックしてこのフォルダ以外の場
所にあるビットマップ画像ファイルを壁紙として選択した場合,選択されたビットマ
ップ画像ファイルは“C:\WinSPM\Wallpaper”にコピーされます。
④ 表示位置
壁紙画像の表示位置を指定します。指定方法は,Windowsデスクトップにおける背
景画像の表示位置指定と同じです。

1.3.14d 管理タブウィンドウ
WinSPMの高度な動作設定を行うタブウィンドウです。


管理タブウィンドウ

① 登録ユーザー管理
管理者権限ユーザー専用機能です。
詳しくは1.2節「ユーザー名の管理」を参照してください。
② オプションフラグ管理・デバグフラグ管理
WinSPMの特殊測定機能および,メンテナンス作業のための特殊機能を使用できる
ようにするためのフラグ管理機能です。
WinSPMを通常状態で使用する場合には設定を変更しないでください。
詳しくは,3.5節「WinSPMのオプションフラグおよびデバグフラグ」を参照してください。

1-52 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.4 測定の準備
カンチレバ・探針を,原子間力またはトンネル電流が検出される位置まで試料に近づけるこ
とをアプローチといいます。ここではアプローチを行い,測定を開始するための準備をします。

1.4.1 測定ソフトウェアでのシステムの起動
1. SPM制御ユニットのPOWERスイッチをONにし,コンピュータのスイッチをONにす
る。
コンピュータ,ディスプレイの電源が入り,Windowsが起動します。
コンピュータは制御ユニットのスイッチだけでは電源が入りません,コンピュータの
スイッチもONにしてください。
AFMアンプを使用している機種(JSPM-4500A/4610A/5200)の場合,レ
ーザ照射スイッチをONにしてください。
オプションの装置が取り付けられている場合は,それらにも電源が入ったことを確
認します。
2. デスクトップにある[測定]アイコンをダブルクリックする。
測定ソフトウェアが起動し「ログイン」ダイアログが表示されます。

ログインダイアログ

3. ユーザ名とパスワードを入力後,[ログイン]ボタンをクリックする。
WinSPMシステムへログインし,「SPM機能選択」ダイアログが表示されます。

SPM機能選択ダイアログ

TM-57553FST4-1 1-53
1 測定操作

4. 使用するSPM機能を選択して,[OK]をクリックする。
このとき,[測定起動時にこのダイアログを表示しない]をチェックしておくと,次回
からはこのダイアログが表示されず,選択したSPM機能が直接起動するようになり
ます。特定のSPM機能しか利用しないという場合には,このチェックボックスをチェ
ックしてください。

以上で測定ソフトウェアが測定状態になります。

■ 測定ソフトウェアを起動した後にSPMコントローラの電源を投入した場合
SPMコントローラは,測定ソフトウェアが起動した際にソフトウェアからの信号によって初期化
されます。そのため,ソフトウェアが起動したときにSPMコントローラの電源が入っている必要
があります。SPMコントローラの電源を後から入れた場合や,スキャナなどの交換で
SPMコントローラの電源を一度切って再度入れた場合は,ソフトウェアからリセットを行ってく
ださい。

SPMコントローラのリセットは,次の手順に従って行ってください。
1. 測定終了状態からメインメニューの[SPM設定]メニューをクリックし,プルダウン
メニューから[SPMコントローラをリセット]を選択する。
「SPMコントローラをリセットしますか?」ウィンドウが表示されます。
2. SPMコントローラの電源が入っていることを確認し,[OK]を選択する。

■ SPM装置を変更したりオプション機器を追加したりした場合
1. SPM機能選択ダイアログが表示されていることを確認する。
2. SPM機能の選択せずに,[機器設定]ボタンをクリックする。
「機器設定」ダイアログが表示されます。

SPM機器設定ダイアログと機器設定ダイアログ

1-54 TM-57553FST4-1
1 測定操作

3. [SPM装置]欄で正しくSPM装置が選択されているか確認する。
◇注意◇
SPM装置によって,WinSPM上での基本設定が異なりますので,正しく設定されて
いないと誤動作を招くことがあります。

この設定は出荷時に正しく設定されています。この設定は管理者権限をもったユ
ーザーのみが変更可能です。もし,SPM装置の設定が間違っていた場合は,いっ
たんソフトウェアを終了し,管理者権限でログインし直してください。
4. 「付属機器」欄で装着している付属機器がチェックされていることを確認する。
ここでチェックが行われていないと,WinSPM上から付属機器をコントロールすることが
できなかったり,オプション測定が利用できなかったりします。
5. 機器設定ダイアログにある[スキャナ設定]ボタンをクリックする。
「スキャナ設定」ダイアログが表示されます。

スキャナ設定ダイアログ

6. スキャナのキャリブレーション値が,現在使用しているスキャナのキャリブレーショ
ン値であることを確認する。
スキャナを付け換えた場合は,キャリブレーション値が正しく設定されていることを
確認してください。
キャリブレーション値は最大6つまで設定することができます。正しい設定番号が
選択されているか確認してください。
キャリブレーション値自体の変更は,管理者権限が必要です。変更する必要があ
る場合には,いったんソフトウェアを終了し,管理者権限でログインし直してくださ
い。

TM-57553FST4-1 1-55
1 測定操作

1.4.2 Zステージの位置の確認
WinSPMシステムでは,アプローチはモータを使用して自動的に行われますが,Zステージ
の位置が上限値にある状態ではアプローチができません。
装置には,測定試料とプローブが取り付けられている点に注意し,Zステージの位置がアプ
ローチ可能な範囲にあるか確認してください。

1.4.2a 簡易操作モードでのZステージ位置の確認方法
1. コントロール2ダイアログの[Zステージ]タブをクリックして,Zステージタブウィンド
ウを表示する。

Zステージタブダイアログ

2. Zステージタブウィンドウに表示されているインジケータの位置とZポジションの
数値を確認する。

1.4.2b 詳細操作モードでのZステージ位置の確認方法
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ステージ制御」ダイアログを表示されます。

ステージ制御ダイアログ

2. Zステージタブウィンドウに表示されているZ軸インジケータの位置とZポジション
の数値を確認する。

1-56 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.4.2c アプローチ可能かどうかの目安
Zステージの現在の位置を示す△マークが,In側からOut側へおよそ1/4以上あれば,
アプローチは可能です。

アプローチ可能

In / Up Out / Down

1. In/Up側に極端に寄っている場合は,操作モードによってそれぞれOut/Down
側にステージ位置を移動する。
• 簡易操作モードの場合は,Zステージタブウィンドウの移動方向を[Down]に指定
する。
• 詳細操作モードの場合は,ステージ制御ダイアログのZ軸移動方向を[Out]に指定
する。
試料とプローブが離れる方向に移動方向が設定されます。
2. [開始]ボタンをクリックする。
Zステージが試料とプローブが離れる方向に移動します。
3. [△]マークがアプローチ可能範囲内に移動したら,[停止]ボタンをクリックする。
Zステージの移動が停止します。

1.4.3 オシロスコープ(オプション)の設定
SPM装置にはオシロスコープを取り付けることができます(オプション)。オシロスコープを使
用するで,ソフトウェアオシロスコープより速い現象や,像観察中の波形のリアルタイム測定
が行えます。また,走査波形,バイアス電圧のチェックなどにも使用できます。
SPMコントローラのZ/20出力端子でスキャナのZ方向の印加電圧,CH2出力端子でソフ
トウェアから指定した信号の波形がモニタできます。

■ CH2出力信号の選択
CH2からの出力信号は次の手順に従って設定してください。
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「状態表示」ダイアログを表示されます。

状態表示ダイアログ

2. モニタ出力の[ ]をクリックし,モニタする信号を選択する。

TM-57553FST4-1 1-57
1 測定操作

1.4.4 カンチレバの調整
AFM測定を行う場合は,光てこ検出の調整を行う必要があります。また,AC-AFMとNC
-AFM測定を行う場合は,さらにカンチレバの発振調整を行う必要があります。
ここでは,各AFMモードでのカンチレバ調整手順を説明します。
調整手順は,簡易操作・詳細操作のモードで共通です。
STM測定時にはこの調整は必要ありません。

1.4.4a コンタクトAFMモードでのカンチレバ調整
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「光てこ検出調整」ダイアログを表示されます。

光てこ検出調整ダイアログ(コンタクトAFM)

オプション機器としてCCDカメラシステムが装着されている場合は,ダイアログ右
下の領域にはCCDカメラの映像が表示されます。装着されていない場合は,光軸
調整のための説明が表示されます。
2. 「フォトディテクタ調整」部のSUM値インジケータ(レーザスポット位置表示インジ
ケータ左にある縦長のインジケータ)に表示されるSUM値を見ながら,SPM装置
本体のレーザ位置調整部を使って,カンチレバからのレーザの反射光がなるべく
大きな値(3.0V以上)になるようにレーザ照射位置を調整する。
3. 同様にレーザスポット位置表示インジケータを見ながら,レーザスポット(インジケ
ータ内の赤丸)が目標値内(インジケータ内の青い四角)に入るようにフォトディ
テクタの位置を調整する。
4. フォトディテクタ位置の調整が済んだら,その位置でSUM値が取りうる最大値を
を確認する。
SUM値が極端に小さくなる場合は,手順2からやり直してください。また,SUM値
が大きくならない場合は,カンチレバを交換してください。

1-58 TM-57553FST4-1
1 測定操作

5. カンチレバの力学定数(キャリブレーション値)が既知の場合は,「カンチレバ設
定」部にそれらのキャリブレーション値を入力する。
入力したキャリブレーション値は,[保存]ボタンをクリックすることでファイルに保存
できます。また,すでに保存した適合するカンチレバ設定ファイルがある場合は,そ
れを読み込んでください。
ソフトウェアは,前回設定されたカンチレバ設定を保存しています。カンチレバの種
類を取り替えていない場合は,再設定の必要はありません。
6. 測定結果の物理量換算を行う場合には,「カンチレバ設定」部にある必要な項
目について[適用]チェックボックスをチェックする。
カンチレバの力学定数が未知の場合でも,測定作業を行うことはできます。しかし,
測定結果の物理量換算は行えなくなります。
コンタクトAFMモードに関 係する力学 係数 は[力 計算係 数]と[摩擦力 計 算係
数]です。
7. [OK]ボタンをクリックする。
「光てこ検出調整」ダイアログを閉じ,カンチレバ調整が終了します。

1.4.4b AC/NC-AFMモードでのカンチレバ調整
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「光てこ検出調整」ダイアログが表示されます。

光てこ検出調整ダイアログ(AC-AFM/NC-AFM)

オプション機器としてCCDカメラシステムが装着されている場合は,ダイアログ右
下の領域にはCCDカメラの映像が表示されます。装着されていない場合は,光軸
調整のための説明書きが表示されます。

TM-57553FST4-1 1-59
1 測定操作

2. 「フォトディテクタ調整」部のSUM値インジケータ(レーザスポット位置表示インジ
ケータ左にある縦長のインジケータ)に表示されるSUM値を見ながら,SPM装置
本体のレーザ位置調整部を使って,カンチレバからのレーザの反射光がなるべく
大きな値(1.0V以上)になるようにレーザ照射位置を調整する。
3. 同様にレーザスポット位置表示インジケータを見ながら,レーザスポット(インジケ
ータ内の赤丸)が目標値内(インジケータ内の青い四角)に入るようにフォトディ
テクタの位置を調整する。
4. フォトディテクタ位置の調整が済んだら,その位置でSUM値が取りうる最大値を
を確認する。
SUM値が極端に小さくなる場合は,手順2からやり直してください。どうしてもSUM
値が大きくならない場合は,カンチレバを交換するなどしてください。
5. カンチレバの力学定数(キャリブレーション値)が既知の場合には,「カンチレバ設
定」部にそれらのキャリブレーション値を入力する。
入力したキャリブレーション値は,[保存]ボタンをクリックすることでファイルに保存
できます。また,すでに保存した適合するカンチレバ設定ファイルがある場合は,そ
れを読み込んでください。
ソフトウェアは,前回設定されたカンチレバ設定を保存しています。カンチレバの種
類を取り替えていない場合は,再設定の必要はありません。
6. 測定結果の物理量換算を行う場合には,「カンチレバ設定」部にある必要な項
目について[適用]チェックボックスをチェックする。
カンチレバの力学定数が未知の場合でも,測定作業を行うことはできます。しかし,
測定結果の物理量換算はできなくなります。
AC-AFMモードに関係する力学係数は[力計算係数(振幅)],NC-AFMモー
ドに関係する力学係数は[力計算係数(振幅)]と[周波数シフト]です。
7. 「カンチレバ設定」部にある[自動調整設定]部に,自動調整時のパラメータを設
定する。
自動調整パラメータのデフォルト値は,あくまで標準的なカンチレバをチューニン
グする様に調整されています。普段は設定値を変更する必要はありませんが,カ
ンチレバの特性(固い・柔らかい・大きい・小さい)や測定環境(真空中・液中)など
によってはパラメータを変更する必要があります。
8. [OK]ボタンをクリックする。
「光てこ検出調整」ダイアログが閉じます。
9. アイコンドックの[ ]をクリックする。
カンチレバ発振の自動調整シーケンスが開始されます。
カンチレバ発振の自動調整シーケンスは,AC-AFMモードとNC-AFMモードで
異なります(強制加振と自励発振,振幅検出と周波数検出の違いによる)。詳しく
は後述します。

カンチレバ発振調整が成功したら調整終了です。

1-60 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.4.4c カンチレバ発振の自動調整
■ AC-AFMモードでのカンチレバ発振自動調整シーケンス
自動調整シーケンスが始まり,「AC-AFM自動調整」ダイアログが表示されます。

AC-AFM自動調整ダイアログ

試料の表面の柔らかさやカンチレバの柔らかさ,測定環境などを考慮してアプロ
ーチ条件を設定し,[OK]ボタンをクリックする。
カンチレバの発振調整が自動的に行われます。
条件の判断に迷う場合は,取りあえず[標準]でカンチレバを調整して様子を見て
ください。
自動調整が終了すると,成功したかどうかのメッセージが表示されます。調整に失
敗した場合は,光てこ検出調整ダイアログを表示して,自動調整パラメータ(加振
電圧・振幅減衰率)を調整し直してください。
また共振周波数がうまく検出できない場合は,「共振周波数検出」にある「開始
周波数(kHz)」と「終了周波数(kHz)」の幅を狭めて再調整してください。

■ NC-AFMモードでのカンチレバ発振自動調整シーケンス
自動調整シーケンスが始まり,「NC-AFM自動調整」ダイアログが表示されます。

NC-AFM自動調整ダイアログ

表面の凹凸の度合い,測定環境などを考慮して振動振幅幅・アプローチΔf・周
波数検出幅を設定し,[OK]ボタンをクリックする。
FM検出幅の選択がしづらい場合は,取りあえず振動振幅幅に[-2.0V],周波数
検出幅に[Range3]を設定してカンチレバを調整して,様子を見てください。

TM-57553FST4-1 1-61
1 測定操作

以上の操作で,カンチレバの発振調整が自動的に行われます。
自動調整が終了すると,成功したかどうかのメッセージが表示されます。調整に失
敗した場合は,光てこ検出調整ダイアログを表示して,自動調整パラメータ(加振
電圧)を調整し直してください。また共振周波数がうまく検出できていないようでし
たら,「共振周波数検出」にある「開始周波数(kHz)」と「終了周波数(kHz)」の
幅を狭めて再調整してください。
アプローチΔf[Hz]について
自動調整終了後の周波数信号値と,リファレンスに設定する周波数信号値の間
の差を周波数[Hz]で指定します。周波数[Hz]で設定するため,実際に設定さ
れるリファレンス値[V]の値は,周波数検出回路(PLL回路)の設定によって変化
します。

■ 自動調整シーケンス使用上の注意
• 加振電圧について
このシステムでは,カンチレバに印加する電圧の高出力加振の切り替えがあります。
高出力加振設定になっている場合は,加振電圧が最大10Vまで出力できます。液中
観察や発振しにくいカンチレバを使用している時に,高出力加振設定にします。
逆に真空中で観察を行う場合は,加振電圧を高くするとカンチレバが折れることがあり
ますので,高出力加振を使わないでください。
• 使用できるカンチレバの共振周波数
自動調整シーケンス機能を用いて調整が行えるカンチレバの共振周波数は,1kHz
~1MHzまでです。
• 自動調整パラメータを調整しても,調整に失敗する場合
1.4.4d項「カンチレバ発振の手動調整」を参照して,手動でのカンチレバ調整を試
みてください。
手動でも調整できない場合は,カンチレバを交換するなどしてください。
• カンチレバ発振の自動調整シーケンスの内容について
自動調整シーケンスの内容を知りたい場合も,1.4.4d項「カンチレバ発振の手動
調整」を参照してください。
自動調整シーケンスでは,手動調整手順をソフトウェアで逐次処理することで実
現されています。

1-62 TM-57553FST4-1
1 測定操作

■ 自動調整設定パラメータ
自動調整シーケンス設定は光てこ検出調整ダイアログで行います。

光てこ検出調整ダイアログ

① 標準設定ボタン
設定値を標準設定に戻します。
② AC-AFMモード用設定
• 加振電圧[V]
自動調整シーケンスでは,カンチレバの共振点を調べるための周波数スキャンを
行います。その際のカンチレバの加振電圧値を設定します。周波数スキャン実行
中に,カンチレバの振幅幅信号(RMS信号)が振り切れるような場合には,設定
電圧値を小さくします。
• 振幅減衰率A[%]
自動調整シーケンスでは,カンチレバの共振点を調べた後に,加振周波数を共
振点に合わせた状態で,いったんRMS信号が8V程度になるように調整します。
ACモードは,カンチレバの共振波形の傾斜(カンチレバが受ける力による振幅の
減衰)を利用しますので,共振点での振幅量からある量だけ振幅が減衰するまで
の,周波数を共振点からずらす減衰量を設定します。100%から50%の間の値が
設定できますので,設定値が100%の場合にはカンチレバ加振周波数が共振周
波数での測定,50%の場合にはカンチレバ加振周波数を共振点での振幅幅から
50%減衰するまでずらした周波数での測定となります。
• 周波数シフト方向
上述の調整動作時に,共振周波数から低周波側と高周波側どちらに周波数をず
らすのかを設定します。周波数をずらす方向によって,カンチレバが受ける力の性
質が変わります(斥力・引力)。

TM-57553FST4-1 1-63
1 測定操作

③ NC-AFMモード用設定
• 加振電圧[V]
AC-AFMモード用設定と同様です。
④ AC-AFM・NC-AFM共通設定
• 開始周波数・終了周波数
共振点検出のための周波数スキャンの開始値と終了値を設定します。

1.4.4d カンチレバ発振の手動調整
カンチレバ発振自動調整がうまく行えなかった場合の,手動調整方法について説明します。
ここでは,ノンコンタクトモード用のSi製カンチレバ(共振周波数約300kHz)を使用したとき
の設定方法について説明します。

■ AC-AFMモードでのカンチレバ発振の手動調整
AC-AFMでのカンチレバ発振は,カンチレバホルダに取り付けられた加振素子(ピエゾ素
子)から振動を加え,カンチレバを強制的に振動させる強制加振モードを用います
AC-AFMモードでは,カンチレバ振動幅のRMS値の原子間力による変化をフィードバック
信号としてZスキャナ位置を制御するので,「カンチレバ加振周波数」と「加振量の大きさ」
が,重要な調整要素になります。加振素子から加える強制振動の周波数は,カンチレバの
共振周波数から少しずらした周波数に調整します。

● カンチレバ調整ダイアログの表示
カンチレバ発振を手動で調整するには,以下のようにカンチレバ調整ダイアログを表示させ
る必要があります。

• 簡易操作モードでのカンチレバ調整ダイアログの表示
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「カンチレバ設定(AC)」ダイアログが表示されます。

カンチレバ設定(AC)ダイアログとカンチレバ設定ダイアログ

1-64 TM-57553FST4-1
1 測定操作

カンチレバ設定(AC)ダイアログは,発振自動調整が正常終了していることを前
提とした,簡易操作モード用のカンチレバ調整ダイアログです。カンチレバ発振を
最初から手動で調整するには機能が不足していますので,フルコントロールのカン
チレバ調整ダイアログを表示する必要があります。
2. カンチレバー設定(AC)ダイアログの[詳細設定]ボタンをクリックする。
「カンチレバ設定」ダイアログが表示されます。

• 詳細操作モードでのカンチレバ調整ダイアログの表示
アイコンドックの[ ]をクリックする。
「カンチレバ設定」ダイアログが直接表示されます。

以下は,カンチレバ調整ダイアログからの操作説明になります。

● カンチレバの共振周波数の測定
1. 「周波数スキャン」下部にある3つの縦に並んだラジオボタンから,[スキャンの
み]をクリックする。
2. 「周波数スキャン」の「開始周波数(kHz)」に,[250]を入力する。
3. 「終了周波数(kHz)」に[350]を入力する。
4. 以上で周波数スイープの範囲が250~350kHzに設定されます。
5. 「ハイパスフィルタ(kHz)」に[200]を選択する。
6. 「ローパスフィルタ(kHz)」に[400]を選択する。
ローパス,ハイパスフィルタは,A-Bの信号に入ってくる他の周波数成分をカットす
るためのもので,ローパスフィルタには共振周波数より大きなの周波数を,ハイパス
フィルタには共振周波数より小さな周波数を設定します。
7. 「RMS-DC出力ゲイン」を[10]に選択する。
8. 「加振電圧(V)」に[0.2]を入力する。
9. 「加振周波数(kHz)」に[250]と入力する。
周波数スイープを始めたときに「加振周波数(kHz)」が共振点付近にあると,周
波数が「開始周波数(kHz)」になっても共振点での振幅が残っていて,正しく共
振点が測定されないことがあるため,「開始周波数(kHz)」と同じ値にしておきま
す。
10. [発振]チェックボックスをチェックする。
カンチレバが発振し始めます。

TM-57553FST4-1 1-65
1 測定操作

11. [スキャン]をクリックする。
スペクトル表示ウィンドウが表示され,周波数スイープが行われます。周波数スイープ
の測定結果はスペクトル表示ウィンドウに表示され,測定結果から得られたピークの周
波数とQ値が,カンチレバ調整ダイアログに表示されます。さらに,周波数スイープ終了
後に,データ保存処理のためのデータタイトル入力ウィンドウが表示されます。測定結
果を残しておく場合は[OK]をクリックしますが,通常は[キャンセル]をクリックします。
正しい結果が得られないときは,次の点をチェックして見てください。
• 周波数スイープ幅が,カンチレバの共振点に対して正しく設定されているか?
• 「ハイパスフィルタ」,「ローパスフィルタ」の値が正しく設定されているか?
• 「発振」チェックボックスがチェックされているか?
• AFMアンプの「SUM」が-1.0~-9.0V位,「AFM」,「FFM」がほぼ0V位にな
っているか?
12. 基準となる共振点が得られたので,さらに狭い範囲での周波数領域の走査を行
う。
得られた「ピーク周波数(kHz)」の±10kHzの間で再度周波数スイープを行います。
例えば,得られたピーク周波数が290kHzの場合
開始周波数: 280kHz 終了周波数: 300kHz
に設定して,再度周波数スイープを行い,測定結果をカンチレバの共振周波数にしま
す。

1-66 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● カンチレバの発振設定
1. 「加振周波数(kHz)」に得られたピーク周波数周波数を入力する。
2. 「ハイパスフィルタ(kHz)」に[10]を,「ローパスフィルタ(kHz)」に[600]を選択す
る。
周波数フィルタによってRMS値検出の帯域を狭めないように,バンドパス周波数
を最も広く設定しておきます。
3. AFMアンプに表示されるRMS値がー8.0V程度になるように[加振電圧(V)]を
調整する。
4. AFMアンプに表示されるPhase値が-5.0V付近になるように,[位相制御]の設
定値を調整する。
以上で,カンチレバの強制振動調整が終了します。
5. 次に,AC-AFMフィードバック動作を行うために,カンチレバ振動の状態をやや
変化させる。
6. 「加振周波数(kHz)」をRMS値が手順3で調整した値の約70%の値になるよう
に,ピーク周波数から周波数をずらした値に設定する。
例えばRMS値が-8.0Vに調整できた場合,周波数を低周波側にずらしてRMS
値が8.0V×0.7=5.6Vになるように,加振周波数をピーク周波数をより低く設定
します。高周波側にずらす時には,加振周波数をピーク周波数より高く設定しま
す。

V
8.0V

5.6V

f
300
290 Peak Frequency

加振周波数を高周波側にずらすか低周波側にずらすかによって,AC-AFMフィ
ードバックを引力領域で行うか斥力領域で行うかにより決まります。
7. [OK]をクリックし,手動調整を終了する。

TM-57553FST4-1 1-67
1 測定操作

■ NC-AFMモードでのカンチレバ発振の手動調整
NC-AFMでは,AC-AFMのように強制的にカンチレバを振動させるのではなく,カンチレ
バの共振周波数を利用して自ら振動させる自励発振モードを使用します。
自励発振モードは発振が非常に停止しやすいため,AFMアンプ内にはカンチレバが自励
発振し続けるように電気的に発振を調整する正帰還回路が組み込まれています。またNC
-AFMフィードバックでは,カンチレバの自励発振周波数の共振周波数からのずれをフィー
ドバック信号としてフィードバック動作を行い,Zスキャナ位置を制御しますので,調整するこ
とが重要です。

● カンチレバ調整ダイアログの表示
カンチレバ発振を手動で調整するには,カンチレバ調整ダイアログを表示する必要がありま
す。

• 簡易操作モードでのカンチレバ調整ダイアログの表示
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「カンチレバ設定(NC)」ダイアログが表示されます。

カンチレバ設定(NC)ダイアログとカンチレバ設定ダイアログ

カンチレバ設定(NC)ダイアログは,発振自動調整が正常終了していることを前
提とした,簡易操作モード用のカンチレバ調整ダイアログです。カンチレバ発振を
最初から手動で調整するには機能が不足していますので,フルコントロールのカン
チレバ調整ダイアログを表示させてください。
2. カンチレバ設定(NC)ダイアログの[詳細設定]ボタンをクリックする。
「カンチレバ設定」ダイアログが表示されます。

• 詳細操作モードでのカンチレバ調整ダイアログの表示
アイコンドックの[ ]をクリックする。
「カンチレバ設定」ダイアログが表示されます。
以下は,カンチレバ設定ダイアログの操作説明です。

● カンチレバの共振周波数測定
前述の「AC-AFMモードでのカンチレバ発振の手動調整」の「カンチレバの共振周波数の
測定」を参照して,カンチレバの共振周波数を測定してください。

1-68 TM-57553FST4-1
1 測定操作

すでにカンチレバの共振周波数がわかっているときは,測定を省略しても構いません。

● カンチレバの正帰還発振調整
1. 「ハイパスフィルタ(kHz)」に[10],「ローパスフィルタ(kHz)」に[600]を設定する。
2. 測定条件に合わせ,[ダイナミックレンジ]と[ループゲイン]を設定する。
表面の凹凸の大きな試料を測定する場合には,[ダイナミックレンジ]にRange 3また
はRange 4を選択します。このときの[ループゲイン]は,2~10を選択します。表面の
凹 凸 の小 さ な試 料 を測 定 する場 合 には,[ダイナミックレンジ]にRang e 1また は
Range 2を,[ループゲイン]は10~30を選択します。

Range 周波数ダイナミックレンジ 最適ループゲイン


Range 1 76Hz 20,30
Range 2 152Hz 10,20
Range 3 305Hz 5,10
Range 4 610Hz 2,5

3. 「固定中心周波数(kHz)」に固定中心周波数を入力する。
固定中心周波数とは,正帰還回路と周波数検出回路で用いる基準周波数です。こ
の周波数は,カンチレバの共振周波数から以下の式で計算します。
固定中心周波数 = (カンチレバの共振周波数―ダイナミックレンジ)÷2
4. 「加振電圧(V)」を[0.1V]に設定する。
5. [位相スキャン]ラジオボタンを選択し,[スキャン]ボタンをクリックする。
RMS値が最大になるように,位相が自動的に調整されます。このときRMS値が2を超
えないようにします。RMS値が2を超えた場合には,[加振電圧[V]]を小さい値に変更
し,再度位相スキャンを実行します。
カンチレバによっては,加振電圧を0V近くまで小さくしてもRMS値が2を超えてし
まう場合があります。この場合にはそのままで使用してください。
6. AFMアンプのインジケータに「FMD」を表示させる。
7. AFMアンプのインジケータ表示が-8.0程度になるように,バーチャート端にある
Xを用いて,固定中心周波数を調整する。
固定中心周波数を,バーチャート端にあるXを用いて高周波側に変化させます。
固定中心周波数が適切でないと,インジケータ表示は-5.0(V)程度の表示のま
ま変動しません。インジケータ表示が変動しない場合はカンチレバの共振周波数
の測定からやり直してください。
8. [OK]をクリックする。
手動調整が終了します。

以上で測定準備は終了です。次節からの手順に従って測定を開始します。

TM-57553FST4-1 1-69
1 測定操作

1.5 表面形状像の測定
前節までの測定準備が終了したら,アプローチを行い,測定を開始します。ここでは,表面
形状像のみを測定するものとして,走査開始の手順を説明します。

1.5.1 走査パラメータの設定
走査パラメータ値は試料や目的によって変わりますが,以下のように設定します。

1.5.1a 走査幅とクロックスピードの設定
• 「走査幅の設定」
[走査幅]をクリックし,数値が反転表示されたら[1um]とキーボードから入力し,
TABキーを押して数値を確定する。または,右側の[ ]をクリックして[1,000nm]
に近い数値をマウスで選択する。
• 「クロックスピードの設定」
[クロック]の[ ]をクリックし,[333.33μs]を選択する。
設定できる走査幅は,装着しているスキャナによって異なります。また実際には,観
察したい走査領域に合わせて,走査幅を変更する必要があります。
またクロックスピードは画像測定時のプローブ移動速度を決定しますので,観察
領域や試料の凹凸状態によって変更する必要があります。

1.5.1b リファレンス
• AC-AFMの場合
AC-AFMの場合には,カンチレバ発振調整時に自動的にリファレンス値が設定され
ますので,通常はそのまま使用します。
リファレンスを0V方向に設定するに従い,プローブは試料表面に接近し,-10V
方向に設定するほど,プローブは試料表面から離れます。
リファレンスを0Vに設定することは,プローブを試料表面に強く接触させることを意
味します。逆に-10Vに設定した場合は,カンチレバは発振調整をされた直後の
初期リファレンス信号値(カンチレバが,外力を受けずに自由振動している時のリ
ファレンス値)の値以上となるため,プローブは完全に試料表面の原子間力の影
響から逃れた状態,つまり完全に離れた状態になります。
• NC-AFMの場合
AC-AFM,NC-AFMの場合には,カンチレバ発振調整時に自動的にリファレンス値
が設定されていますので,通常はそのまま使用します。
リファレンスを0V方向に設定するに従い,プローブは試料表面に接近し,-10V
方向に設定するほど,プローブは試料表面から離れます。
NC-AFMではカンチレバは自励発振していますが,自励発振は試料表面との
わずかな接触であっても発振停止してしまう非常に微弱な発振です。自励発振
が止まってしまうと周波数検出ができなくってフィードバック動作が停止してしまい
ますで,接触に十分注意してリファレンス値を設定する必要があります。

1-70 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• コンタクトAFMの場合
コンタクトAFMの場合には,光てこ検出調整時に原子間力信号が-2.0Vになるよう
に調整していますので,通常はリファレンス値に0.0V程度を設定します。
リファレンスを-側に設定すると原子間力が小さくなり,+側に設定すると原子間
力が大きくなります。コンタクトAFMでは,一般に試料にダメージを与えないように
小さな原子間力で走査を行います。しかし,表面の凹凸が大きい試料や,表面に
多くの吸着物が存在する試料の場合は,弱い原子間力ではコントラストが付きに
くいことがあります。そのため,画像測定中には少しずつリファレンスを変化させて,
最も良い表面形状像が得られるリファレンス値を探す必要があります。
• STMの場合
STMの場合には,測定試料材質とプローブの材質からバイアス電圧値とトンネル電流
値を設定する必要があります。半導体材料や表面酸化膜がある試料の場合にはバイ
アス電圧を1V程度に設定し,金属材料の場合にはバイアス電圧を0.1V程度の設定
します。トンネル電流値は1nA程度に設定しておきます。
STMでは,プローブと試料間のエネルギー差によって生じるトンネル電流を利用
してフィードバック動作を行います。電子状態密度が低いエネルギー位置にバイ
アス電圧を設定すると,流れるトンネル電流の値が小さくなってしまいますので,フ
ィードバック回路は設定されているだけのトンネル電流を流すために,プローブをよ
り試料表面へ接近させます。逆にバイアス電圧を電子状態密度が高いエネルギ
ー位置に設定してトンネル電流値を大きく設定した場合も,フィードバック回路は
より多くのトンネル電流を流すために,プローブを試料表面へ接近させます。このよ
うに,バイアス電圧の設定値と流すトンネル電流の量によって,プローブと試料表
面の間の距離は決定されます。原理的にはプローブと試料との距離が近い程,表
面形状像の分解能は上がりますが,距離が近い分だけプローブが表面と衝突し
やすくなってしまいます。
また,バイアス電圧を印加するということは,このプローブと試料表面のエネルギー
差を変化させることになりますので,相互の電子状態密度の空間分布が変化する
します。そのため,バイアス電圧の設定値によっては表面形状像が極端に異なる
場合があります。

◇注意◇
観察中,バイアスの設定をバーチャートで行う場合,0Vを通過させてボタンを移動
させると,0V点で探針と試料は衝突します。ゼ ロ ク ロ ス さ せ る 操 作 は 避 け て く だ さ
い。

TM-57553FST4-1 1-71
1 測定操作

1.5.1c フィードバックフィルタ/ループゲイン
[フィルタ[Hz]]の[ ]をクリックし,プルダウンメニューから[1.0]を選択する。
[ループゲイン]の[ ]をクリックし,プルダウンメニューから[8]を選択する。
フィードバックフィルタは,フィードバック回路の応答速度を決めるもので,数値を大
きく設定すると応答速度が速くなり,シャープな画像が得られますが,フィードバッ
ク回路は発振し易くなります。通常は,走査中に画像を見ながらフィードバック回
路が発振しないような一番速い速度を選択します。
フィードバックループゲインはフィードバック回路のゲインを決めるもので,高い値に
設定すると応答ゲインが大きくなり,凹凸の大きな試料に対しても対応ができるよ
うになりますが,フィードバック回路は発振し易くなります。

1.5.2 プローブの退避・退避解除
SPMコントローラには,プローブと試料の衝突を回避するためのプローブ退避機能が装備さ
れています。プローブの退避を行うと,Zフィードバックの状態に関係なく,Zスキャナが一番
縮んだ状態に保持され,プローブと試料が離れます。プローブ退避を解除すると,Zフィード
バックが開始され,プローブと試料の距離はこのフィードバック動作によって決定されます。
測定動作を行うときはプローブの退避は解除しなければなりませんが,測定を終了するとき
や測定モードを変更するときは,プローブを退避されておいてください。

1.5.2a ピエゾスキャナの動きとインジケータの表示
プローブ退 避 ・退 避 解 除 状 態 でのピエゾスキャナの動 作 を下 図 に示 します。図 は
JSPM-5200の場合です。JSPM-4500/4610ではスキャナの構造,カンチレバとの
位置関係が異なりますが,動作原理は同じです。

カンチレバ

試料

X,Y

① ② ③ ④ スキャナ

① 電圧を加えていない状態(中立)

② “プローブ待避”ON で Z 軸ピエゾ素子が一番縮んだ状態

③ “プローブ待避”OFF で Z 軸ピエゾ素子が一番伸びた状態

④ “アプローチ状態”Z 軸ピエゾ素子がほぼ中立の状態(フィードバックは効いている)で,
モータ駆動により探針を試料に近づけ,トンネル電流を検出した時点で停止した状態

1-72 TM-57553FST4-1
1 測定操作

①と④のときのZスキャナインジケータの表示

②のときのZスキャナインジケータの表示(プローブ退避状態)

③のときのZスキャナインジケータの表示

1.5.2b 簡易操作モードでのプローブ退避操作
プローブの退避・退避解除は,コントロール1ダイアログ最上部の「Zスキャナ制御」部で行い
ます。
Zスキャナ位置インジケータ下部のボタンの表記が,「プローブ退避解除」になっている
場合,プローブは退避されています。また[プローブ退避]になっている場合は,プロー
ブ退避は解除され,Zフィードバックが動作している状態です。

プローブ退避解除状態(左)とプローブ退避状態(右)

• 「プローブの退避状態を解除する場合」
[プローブ退避解除]ボタンをクリックするとプローブ退避が解除され,ボタンの表記が
[プローブ退避]に変わります(上図左の状態)。

• 「プローブを退避する場合」
[プローブ退避]ボタンをクリックするとプローブが退避され,ボタンの表記が[プローブ
退避解除]に変わります。また,この時Zスキャナインジケータに表示されるZスキャナ位
置が,一番右に来ることを確認してください(上図右の状態)。この状態はスキャナが縮
みきった状態です。

TM-57553FST4-1 1-73
1 測定操作

1.5.2c 詳細操作モードでのプローブ退避操作
プローブの退避・退避解除は,プローブダイアログから行います。プローブダイアログを表示
するには,アイコンドックの[ ]をクリックします。
プローブダイアログの[プローブ退避]チェックボックスがチェックされている(下図右の
状態)場合には,プローブは退避されています。また,チェックされていない(下図左の
状態)場合にはプローブ退避は解除されています。

プローブ退避解除状態(左)とプローブ退避状態(右)

• 「プローブの退避状態を解除する場合」
[プローブ退避]チェックボックスのチェックを外す(上図左の状態)。
• 「プローブを退避する場合」
[プローブ退避]チェックボックスをチェックし(上図右の状態),メインコントロールダイ
アログのZスキャナインジケータに表示されるZスキャナ位置が,一番右に来ることを確
認してください。この状態が,スキャナが縮みきった状態です。

1.5.2d プローブ退避操作時の注意点
アプローチのためにプローブ退避を解除した時にスキャナが伸びきらない場合,原因として
は以下のような事が考えられますので,確認してください。

● ループゲインが低すぎないか?
ループゲインを低くするとフィードバック回路のゲインが小さくなるため,最大出力までフィー
ドバック信号が出ません。

● フィードバックが[ホールド]になっていないか?
詳細設定ダイアログの[走査]タブウィンドウにある[フィードバック]が[アクティブ]に設定さ
れていることを確認してください。もし[ホールド]になっていると,フィードバック回路が動作せ
ず,Zスキャナの位置が固定されます。

● コンタクトAFMモードの場合,AFMアンプのインジケータに表示されるAFM信号
の値が0V近くになっていないか?
AFM信号の値が0V近くになっていると,ソフトウェアはすでにアプローチが完了したものと
判断するためアプローチができなくなります。
原因として,以下の事が考えられますので確認してください。

1-74 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• フォトダイオードの位置が変化したもしくは発振状態が変化した。
もう一度カンチレバ調整を行ってください。
• すでにアプローチしているもしくはプローブが試料にぶつかっている。
Zモータドライブを使って試料とプローブを離し,再度カンチレバ調整を行ってください。

● STM測定の場合,トンネル電流がすでに流れた状態になっていないか?
アプローチ時および測定時にトンネル電流をあまり小さな値に設定すると,ノイズ等によりす
でにトンネル電流が流れているものとみなされて,アプローチできなくなります。このような場
合,リファレンストンネル電流の設定値を大きくして,Zが最大電圧になるトンネル電流値を
探して再設定してください。

● カンチレバが静電気力の影響を受けていないか?
カンチレバの探針と試料の間の距離が,アプローチ状態にならないでかなり接近した場合は,
試料によっては静電気力によってカンチレバに力を及ぼし,アプローチが不可能になること
があります。原因のほとんどは静電気力の影響によるものです。
以下の方法を試みてください。
a. カンチレバを硬いもの(共振周波数の高いもの)に取り換える。
静電気力によるカンチレバへの影響を軽減するために,カンチレバを硬いものへ交換し
てみてください。
b. カンチレバを導電性のもの(Si製,もしくは両面金属コート)に取り換える。
カンチレバホルダはSPMヘッド内でオペアンプを通して仮想接地されていますので,静
電気力をキャンセルできる場合があります。
c. バイアス電圧を加えてみる。
試料に対して正のバイアス電圧を加え,静電気力のキャンセルを試みます。
d. 試料と試料台との導通を確実にとる(JSPM-5200の場合)
試料側の静電気力をキャンセルするために,試料を試料台に導電性テープや導電性
ペースト(ドータイト)を用いて貼りつけます。このとき,できる限り試料表面から側面にも
ペーストやテープを付けてください。
絶縁物の試料の場合は,試料を小さくするか,観察領域部分をマスクして導電処理
(金蒸着等)を行い,下図のように取り付けます。

試 料

導電性テープ

試料台

TM-57553FST4-1 1-75
1 測定操作

1.5.3 アプローチ
操作パラメータを設定した後に,アプローチを開始してください。アプローチを開始手順は,
「簡易操作モード」と「詳細操作モード」で異なります。

1.5.3a 簡易操作モードでのアプローチ操作

1. コントロール1ダイアログの[プローブ退避解除]ボタンをクリックする。
プローブ退避が解除され,ボタンの表記が[プローブ退避]に変わります。
このとき,ボタン上部にあるZスキャナインジケータに表示されるZスキャナ位置が,
一番左に来ることを確認してください。この状態が,スキャナが伸びきった状態で
す。
2. アイコンドックの をクリックする。
アプローチウィンドウが表示され,アプローチが開始されます。その際,Zステージが上
昇し,アプローチ動作が行われます。
アプローチ条件に合致したら,アプローチは自動的に終了します。
サブコントロールダイアログがコントロール3の場合,プローブダイアログが表示さ
れます。
以後の手順は詳細操作モードでの操作手順を参照してください。

AC-AFMモードの場合,カンチレバ発振調整開始時に表示されるダイアログで,
[アプローチ前に再確認]がチェックされていた場合は,アプローチ開始前に以下
のダイアログが表示されます。このダイアログで,アプローチ条件を現在のフィード
バックリファレンス値を基準にして変更することができます。

AC-AFMアプローチ条件ダイアログ

AC-AFMモード以外の場合には,アプローチの条件と目標値は,コントロール1
ダイアログに設定されているフィードバック条件と同じです。

1-76 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.5.3b 詳細操作モードでのアプローチ操作
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「プローブ」ダイアログが表示されます。
2. プローブダイアログの[プローブ退避]チェックボックスを解除する
このとき,メインコントロールダイアログ最上部にあるZスキャナインジケータ左端を
指していることを確認してください。この状態はスキャナが伸びきった状態です。
3. [アプローチ設定]部にアプローチ条件を設定する。
詳細操作モードでは,測定のためのフィードバック設定とアプローチのためのフィー
ドバック設定を別に設定できます。
• フィードバックリファレンスの設定
プローブダイアログを開いた際,「アプローチ設定」部の「リファレンス(V)」もしくは
「トンネル電流(nA)」には,メインコントロールダイアログで設定されているフィード
バックリファレンス値が自動的に入力されます。値を変更する場合はアプローチ目
標値を設定し直してください。
• フィードバックフィルタの設定
通常アプローチ時は,試料とカンチレバの探針との衝突を防ぐために,走査時の
設定よりフィードバックフィルタには大きな値を設定してください。
4. アプローチ設定の詳細設定
「アプローチ設定」部の[設定]ボタンをクリックすると,「アプローチ設定」ダイアログが
表示されます。
「アプローチ設定」ダイアログでは,以下の項目を設定します。

JSPM-4500/4610でのアプローチ設定ダイアログと,JSPM-5200でのアプローチ設定ダイアログ

「アプローチ設定」ダイアログでは,以下の項目を設定します。
• アプローチ時のモータドライブのスピード(JSPM-4500/4610)
JSPM-4500/4610ではアプローチ時のモータドライブのスピードを2段階で設定します。
「Step 1」はアプローチ目標値に到達するまでのスピードで,「Step 2」はアプローチ目標
値に到達した後のスピードになります。通常は「Step 1」に[3],「Step 2」に[1]を設定し
ておきます。JSPM-5200ではこの機能は使用しません。
• アプローチ時のZ停止位置(JSPM-5200)
JSPM-5200では,アプローチ目標値に到達した後に,Zスキャナの位置信号が設定値

TM-57553FST4-1 1-77
1 測定操作

になるように,Zステージ位置を微調整します。通常は0.0[V]を設定しておきます。JSPM
-4500/4610ではこの機能は使用しません。
5. プローブダイアログの[アプローチ開始]をクリックする。
「アプローチ」ウィンドウが表示され,アプローチが開始されます。
6. アプローチを終了させる。
• JSPM-5200の場合,アプローチはアプローチ条件に合致した場合に,自動的に終
了します。
• JSPM-4500/4610の場合,アプローチウィンドウの[停止]をクリックして,アプロー
チを手動で停止します。

1-78 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.5.3c アプローチ操作時の注意点

● アイコンドックの[ ]ショートカットアイコン,またはプローブダイアログの「アプロー
チ開始ボタン」がグレー表示されている場合
プローブ退避が解除されていない場合,アプローチ動作は実行できません。必ず,アプ
ローチ退避を解除して,アプローチ可能な状態にしてください。

● アプローチ終了時に,装置から発信音がする場合
これは,フィードバックフィルタの設定が高い周波数に設定されているために,Zスキャナ
が発振を起こしたためのものです。発振が止まらない場合は,フィードバックフィルタをよ
り低い周波数(小さい数値)に設定してください。

● コンタクトAFMモードでのアプローチ時の注意点
通常,コンタクトAFMモードでのアプローチ完了時には,AFMアプローチの表示がア
プローチ中の値(-2.0V)から,リファレンス[V]値に変化します。これは,試料に接近し
たプローブのばね定数を超える原子間引力を受けることによって,一気に試料表面に
引きつけられる現象です。この現象を「ジャンプイン」と呼びます。
アプローチ中に,AFMアンプの表示がゆっくりと減少して0Vになりアプローチが終了し
た場合は,ジャンプインを伴っていないため正しくアプローチがなされていない可能性が
あります。このようなアプローチ状態の時には,測定を正しく行うことができません。
このような現象の原因として,以下の事が考えられますので確認してください。

• 静電気力の影響
前述の静電気対策を行ってください。
• 試料面で反射したレーザ光の干渉の影響
カンチレバがレーザスポットの大きさに対して非常に小さい物であったり,光反射率が
高い試料表面の観察する場合は,カンチレバ背面に照射しているレーザ光の一部が
試料表面で反射して干渉を起こし,フォトディテクタでの光てこ検出を狂わせている可
能性があります。このような場合には,一度[停止]をクリックした後にフォトディテクタの
位置を再調整し,再度[アプローチ開始]をクリックしてください。
• 突発的な電気ノイズの影響
AFMアンプの表示がリファレンス[V]になる前にアプローチが停止した場合,突発的
な電気ノイズ等の混入により,アプローチが停止したと考えられます。この場合も一度
[OK]をクリックした後に,再度[アプローチ開始]をクリックしてください。

TM-57553FST4-1 1-79
1 測定操作

1.5.4 測定の開始
アプローチが終了したら,測定を開始します。測定の開始・停止操作は,「簡易操作モード」
と「詳細操作モード」で少し異なります。

1.5.4a 簡易操作モードでの測定の開始と停止
1. コントロール1ダイアログで,[自動記録]チェックボックスがチェックされているこ
とを確認する。
2. コントロール1ダイアログの[測定開始]ボタンをクリックする。
「走査開始」ボタンの表示が「走査停止」に切り替わり,画像測定スキャンが開始され
ます。また表面形状像の走査結果が画像表示ウィンドウに順次表示されます。
3. 画像表示ウィンドウに表示される測定結果を見ながら,走査パラメータを調整す
る。
正しい表面形状像が得られるように,フィードバックリファレンス値・フィードバックフィル
タ・フィードバックループゲインの各パラメータを調整します。
必要に応じて,クロックスピードを遅くするなどの調整を行ってください。

以上の操作で設定した走査範囲のスキャンが終了し,ソフトウェアは測定した画像を
自動的に保存して,1回の画像測定を終了します。
この時,「走査停止」ボタンの表示は,「走査開始」に戻ります。
a. 走査パラメータを調整するために,連続して画像測定を繰り返したい場合には,
手順1で[自動記録]チェックボックスのチェックをす。
この状態で,走査範囲のスキャンが終了しても,ソフトウェアは測定結果の保存を行わ
ずに,測定結果を破棄し,再度同じ走査範囲のスキャンを開始します。
b. [自動記録]チェックボックスを外している状態で,測定結果の保存を行いたい場
合には,[測定開始]ボタンの隣にある[記録予約]ボタンをクリックする。
走査範囲のスキャンが終了すると,測定結果の保存処理が行われます。
4. 測定を途中で終了する場合には,[走査停止]ボタンをクリックする。
測定動作がキャンセルされ,プローブは走査範囲の原点(画像左上)に戻ります。また,
「走査停止」ボタンの表示は,「走査開始」に戻ります。

1.5.4b 詳細操作モードでの測定の開始と停止
1. メインコントロールダイアログ上の[連続走査]をクリックする。
画像測定スキャンが開始され,表面形状像の走査結果が画像表示ウィンドウに順次
表示されます。
2. 画像表示ウィンドウに表示される測定結果を見ながら,走査パラメータを調整す
る。
正しい表面形状像が得られるように,フィードバックリファレンス値・フィードバックフ
ィルタ・フィードバックループゲインの各パラメータを調整します。必要に応じて,ク
ロックスピードを遅くするなどの調整を行ってください。

1-80 TM-57553FST4-1
1 測定操作

3. 測定結果を保存したい場合は,[記録予約]ボタンをクリックする。
詳細操作モードでは,走査範囲のスキャンが終了しても,測定結果の自動保存は行
われません。測定結果を保存したい場合は,[記録予約]ボタンをクリックしてください。
4. 測定を途中で終了する場合には,[停止]ボタンをクリックする。
測定動作がキャンセルされ,プローブは走査範囲の原点(画像左上)に戻ります。

1.5.4c 簡易操作モードでの測定画像の保存
コントロール1ダイアログの「測定コントロール」部にある,[自動記録]チェックボックスと
「自動再開」チェックボックスの組み合わせで,画像の保存処理が異なります。

測定コントロール部

• [自動記録]チェックボックスがチェックされている場合
測定が終了するたびに,自動的に画像の保存処理が実行されます。このとき,データ
のタイトルの入力はできません。
• [自動記録]チェックボックスがチェックされていない場合
画像を保存する場合は,走査中に,[記録予約]ボタンをクリックします。一画面の走査
が終了した時点で,画像の保存処理が実行されます。このとき,データのタイトルの入
力を要求されます。[記録予約]ボタンをクリックしない間は測定が繰り返され,その間
の画像は取り込まれません。
• [自動記録]と[自動再開]チェックボックスがチェックされている場合
測定が終了する際は常に,自動的に画像の保存処理を実行すると共に,自動的に測
定を再開します。この時,データのタイトルの入力はできません。
• [連続記録]チェックボックスがチェックされている場合
[測定開始]ボタンをクリックすると連続記録測定が開始されます。
連続記録測定については,1.5.6項「連続記録測定」を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-81
1 測定操作

1.5.4d 詳細操作モードでの測定画像の保存
メインコントロールダイアログの「走査」部には3種類の走査開始ボタンがあります。

走査部

• 「連続走査」ボタンで測定を開始した場合
画像を保存する場合は,走査中に,[記録予約]ボタンをクリックします。一画面の走査
が終了した時点で,画像の保存処理が実行されます。このとき,データのタイトルの入
力を要求されます。
「記録予約」ボタンをクリックしない間は測定が繰り返され,その間の画像は取り込
まれません。
• 「走査・記録」ボタンで測定を開始した場合
測定が終了する際は,自動的に画像の保存処理が実行されます。
• 「連続記録」ボタンで測定を開始した場合
連続記録測定が開始されます。
連続記録測定については,「1.5.6 連続記録測定」を参照してください。

1.5.4e 入力フィルタ・ゲイン・オフセットの調整
• 表面形状像にフィードバック発振ではない細かいノイズが入る場合
表面形状信号の入力フィルタ周波数を調整します。細かいノイズが入る場合,入力フ
ィルタの周波数を下げると,細かいノイズは遮断されます。
入力フィルタの設定は,詳細操作モードの時はコントロール2ダイアログの[フィルタ]で
調整します。詳細操作モードもしくはコントロール3ダイアログが表示されている時は
「詳細設定」ダイアログの「入力信号」タブウィンドウから調整します。
入力フィルタとは,測定信号のA/Dボード入力直前に配置されているノイズ遮
断用ローパスフィルタです。フィルタは,画像の見え方にのみ影響し,フィードバック
動作には影響を与えません。

1-82 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• 表面形状の凹凸が小さい場合
原子像のような微少な表面の凹凸の場合,表面形状信号の入力ゲインを大きくして,
凹凸の変化を画像上ではっきりと捉えられるようにします。
入力ゲインを変更した場合,入力オフセットも原則として変更しなければ信号アンプ
がレンジオーバーして画像が正しく測定できなくなります。しかし,表面形状信号では
入力オフセットの自動調整が標準でONになっていますので,通常は入力オフセットを
調整する必要はありません。
調整が必要な場合は,「詳細設定」ダイアログの「入力信号」タブウィンドウから調
整します。

1.5.5 画像観察時の注意点
● 走査中に表示される画像と記録画像の違いについて
走査中に表示される画像像と,記録後の像が大きく違う場合があります。
これは本システムの自動明度・コントラスト調整によるもので,走査の1ラインごとに,そのライ
ン中で最も高い所と最も低い所で明度とコントラストを調整して表示しているためです。記
録時には全画像中で最も高い所と最も低い所で明度とコントラストを計算しています。した
がって,途中で段差が存在したり,Z軸が動いたりした場合,記録した画像は大きく違って
表示されます。この現象は,特にコンタクトモードの高倍率で観察中によく現れます。これは,
カンチレバのたわみが走査中に起きるためと考えられますので,フィードバックリファレンスの
調整を十分に行う必要があります。
画像記録時の明度とコントラストについては,[詳細設定]ダイアログの[表示]タブウィ
ンドウで手動調整することもできます。

● 入力オフセット調整を「自動」に設定したときの注意点
「詳細設定」ダイアログの「入力信号」で[自動]を指定した場合は,画像を取り込みの1ライ
ン目でオフセットの測定を行い,入力信号のベースレベルが0.0[V]になるように電気的に
入力オフセットを自動設定します
その際,画像観察中に表示のオーバーフローが発生し,画像が黒または白単色の表
示になることがあります。
原因として,以下の4つの場合が考えられます。
• 試料の走査原点付近や1ライン目の凹凸形状が特異に高い場合
• 試料に穴が空いている場合
• 試料がラスタ方向に極端に傾斜していた場合
• 試料がZ方向にドリフトしている場合

このような場合は,プリスキャンを適用して走査範囲全体での信号変化を測定するか,
観察位置を変えるか,「自動」を解除してマニュアルでオフセット設定をする必要があり
ます。
プリスキャンについては1.5.8項「プリスキャン」を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-83
1 測定操作

詳細設定ダイアログの[表示]タブウィンドウと[入力信号]タブウィンドウ

● ダイナミックレンジについて
◇注意◇
SPMでは,試料とプローブの距離が画質を左右する重要なポイントになります。この設
定を適切に行わないと,良い画像が得られないばかりでなく試料やプローブに損傷を与
えることもあります。

下図のIn~OutはZスキャナの最大稼働幅を示しています。通常,アプローチ完了位置中
立位置(下図中央)となり,Z幅の1/2の凹凸を測定することができます。Zが最もIn側に接
している場合(下図左),試料とプローブが完全に離れた状態にあることを示しています。ま
た,Zが最もOut側に接している場合(下図右),Zスキャナは試料の凸部の測定限界に達
していることを示しています。この場合,プローブと試料は強く押し当たりますので,Zステー
ジの調整を行ってください。

(左)完全に離れた状態 (中央)中立位置 (右)完全にぶつかった状態

通常は,離れた状態から像を観察しながら,徐々に試料に近づける方向にリファレンスを変
化させていき,像質が最も良いところに設定します。また,試料とカンチレバ探針の距離は,
Zスキャナインジケータにおいて視覚的に確認できます。
なおインジケータは,測定中はグレー表示になって使用できませんので,測定開始前
に調整を行ってください。

1-84 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● Z位置の再調整
走査を行っているうちに,ドリフト等でプローブが試料に近づきすぎたり,離れすぎたりするこ
とがあります。このようなときは,Zステージを移動させてプローブのZ位置を調整します。
1. 画像を測定している場合は,測定を停止する。
2. プローブと試料の接触を避けるため,プローブを退避状態にする。
3. Zステージのモータドライブ移動方向を,探針が試料に近づきすぎている場合は
離す方向に,離れすぎている場合は,近付ける方向に設定してモータドライブを
わずかに駆動させる。

◇注意◇
モータドライブを大きく動かすと,プローブが試料から離れすぎたり,試料表面に接
触したりしますので注意してください。

4. プローブ退避を解除する。
このとき,Zスキャナインジケータが中央付近を指していることを確認します。
中央付近になってないときは,再度操作を繰り返してください。
JSPM-4500/4610では,各駆動軸が外乱(振動,音響)を伝えにくくするために
機械的に切り離せる構造になっています。そのため逆回転させたときには,3/10
回転ほどの,ずれがありますので注意してください。

1.5.6 連続記録測定
連続記録測定は,測定回数もしくは測定時間を指定し,測定条件下で連続してデータの
測定・保存を行う機能です。
試料表面の時間変化を測定する場合に有効です。

● 連続測定の開始手順
1. 連続記録測定を開始する。
開始方法は,簡易操作モードと詳細操作モードで異なります。
• 簡易操作モードの場合は,コントロール1ダイアログの[連続記録]チェックボックスを
チェックして[測定開始]ボタンをクリックしてください。
• 詳細操作モードの場合はコントロールダイアログの[連続記録]ボタンをクリックしてく
ださい。
いずれの場合も,「連続測定設定」ダイアログが表示されます。
2. 測定結果の保存場所と記録名を設定する。
保存場所は[選択]ボタンをクリックすることで,「フォルダの参照」ダイアログが表
示されますので,そこから選択してください。また記録名には,他の連続測定記録
結果と区別できる名称を入力してください。

TM-57553FST4-1 1-85
1 測定操作

連続測定設定ダイアログ

3. [測定回数],もしくは[連続測定時間]を設定する
連続測定は,測定回数と連続測定時間のどちらからでも指定できます。1回の測定に
要する時間は,現在測定されている走査パラメータから計算されます。
4. [OK]をクリックする。
連続測定を開始します。
測定とデータの保存を指定した測定回数だけ繰り返します。設定回数分の測定
が終了すると,連続測定は終了します。
連続測定中に測定を中断する場合は,通常の測定中断と同じく,簡易操作モー
ドでは[測定停止]ボタンを,詳細操作モードでは[停止]ボタンをクリックしてくださ
い。

● 連続記録測定でのデータ保存について
• データファイル名について
連続記録測定の際に保存されるデータのファイル名は,連続設定ダイアログで設定し
た記録名に10桁の数字が付加されたものになります。この10桁の数字は繰り返し回数
を表しています。
また,複数画像を同時に測定しながら連続測定を行った場合,記録名と10桁の数字
の間に測定画像を区別するアルファベット(A~D)が付加されます。
記録名を「GrabRepeat」として2入力画像の連続測定を行った場合の例
GrabRepeatA0000000000.tif
GrabRepeatB0000000000.tif
GrabRepeatA0000000001.tif
GrabRepeatB0000000001.tif
:

1-86 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• 測定履歴について
連続記録測定の結果は,メモリリークを予防するため,長時間の繰り返し測定を考慮
して測定履歴には残していません。したがって,測定ソフトウェアからは連続記録測定
の結果を確認することはできません。測定結果を確認したい場合は,解析ソフトウェア
で「再生」機能等を利用して確認してください。

1.5.7 往復スキャン
通常の画像スキャンでは,走査領域の上から下へ順次ラインスキャンを行います。このとき,
一番下のラインのスキャンが終了すると,プローブは走査原点に戻り,最上部からラインスキ
ャンを再開します。往復スキャンを適用すると,最下部のラインのスキャン終了後,最下部か
ら最上部に向けてラインスキャンを順次行います。そして最上部から最下部に向けて,ライ
ンスキャンが上下方向に往復したラインスキャンを繰り返します。

● 往復スキャンの適用
• 簡易操作モードの場合はコントロール1ダイアログにある[往復スキャン]チェックボックス
を適用して,測定を開始します。
• 詳細操作モードの場合はメインコントロールダイアログにある[往復スキャンを適用]チェッ
クボックスを適用して,測定を開始します。

● 往復スキャン適用時の注意点
往復スキャン適用時にスキャンを途中で停止した場合は,プローブは走査原点に戻り
ます。これによりスキャン再開の際は,走査範囲の最上部からラインスキャンが開始され
ます。

1.5.8 プリスキャン
プリスキャンが適用されている場合,ソフトウェアは画像スキャン開始前に指定された走査
範囲全体を32×32点に設定して粗くスキャンします。このプリスキャン動作によって,走査範
囲内における測定信号の大まかな変化量と絶対値を測定し,測定信号の入力ゲインと入
力オフセットを適切な値に設定します。
プリスキャン対象となる測定信号は,「詳細設定」ダイアログの「入力信号」で[自動]チェッ
クボックスがチェックされている信号のみです。

● プリスキャン時の走査パラメータの設定
プリスキャン時の走査パラメータは,プリスキャン設定ダイアログから行います。プリスキャン
設定ダイアログは,メインメニューの[SPM設定]メニューから[プリスキャン設定]を選択す
ることで呼び出します。

TM-57553FST4-1 1-87
1 測定操作

プリスキャン設定ダイアログ

このパラメータは,AC-AFM,コンタクトAFM,STMごとに独立した値を設定しておくことが
でき,また走査幅の大きさによって3段階に区切られています。
プリスキャン中の測定データは画面に表示されません。
プリスキャン中のプローブと試料の衝突を避けるため,ゆっくりとしたスキャンが行えるよ
うな設定をしてください。

● プリスキャンの適用
簡易操作モードの場合はコントロール1ダイアログにある[プリスキャン]チェックボックスを,,
詳細操作モードの場合はメインコントロールダイアログにある[プリスキャンを適用]チェック
ボックスをチェックして,測定を開始します。

1-88 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.5.9 走査範囲(観察視野)の変更方法
走査視野は,走査幅と視野オフセットの二つの走査パラメータによって決定されます。直接
コントロールダイアログから,パラメータを変更することもできますが,ここではそれ以外の方
法で走査視野を変更する方法について説明します。

1.5.9a 走査範囲の拡大
指定された領域を新たな走査範囲として走査します。この操作では,「走査幅」パラメータ
の変更と「オフセット」パラメータが同時変更されます。
この操作は走査中には実行できません。「停止」により一度走査を停止してから指定し
てください。

1. 簡易操作モードではコントロール1ダイアログに,詳細操作モードではメインコント
ロールダイアログにある[拡大]ボタンをクリックする。
2. 画像表示ウィンドウ上にマウスのカーソルを持っていく。
マウスカーソルは,画像表示ダイアログ上で十字形に変わります。
この状態で走査視野の拡大範囲を,画像表示ダイアログ上で指定できるようにな
ります。
3. 画像表示ウィンドウ上で拡大したい領域を対角で指定する。
拡大領域を指定すると,選択した領域が新たな走査範囲になるように,走査幅と視野
オフセットが設定されます。また,拡大した後の走査範囲は,[走査幅],[オフセット]の
パラメータに表示されます。
詳細な領域の指定方法は以下の通りです。

2/2

Zoom
1/2

次の走査
カーソルの動きは上 45°方向にのみ動きます

• 領域の指定は対角の左下(または右下)でマウスを左クリックし(1点目の指定),次
に対角の右上(または左上)でマウスを左クリックします(2点目の指定)。
• 対角の1点目を設定した後は,マウスカーソルの動きに合わせて画像表示ダイアロ
グ上に拡大領行を示す四角形が表示されます。
• 2点目が指定されると,拡大領域が確定します。
• 拡大処理を中止したい場合は,マウスの右ボタンをクリックします。
• 拡大領域指定中は,情報ウィンドウが表示され,座標・拡大後の走査幅の実距離・
相対移動距離が表示されますので,指定の参考にしてください。

TM-57553FST4-1 1-89
1 測定操作

1.5.9b 観察視野の変更(大移動)
観察範囲を大きく移動したい場合は,一度十分に試料を離し,手動でステージの移動を行
ってください。

1.5.9c 観察視野の変更(中移動)
スキャナで追える領域以内で観察視野を変更する場合は,次の手順にしたがって観察領
域を変更してください。

1. 簡易操作モードではコントロール1ダイアログに,詳細操作モードではメインコント
ロールダイアログにある[走査領域]を選択する。
「走査領域コントロール」ダイアログが表示されます。
表示されている大きな四角形が走査可能な全領域(最大観察視野)で,その中にあ
る四角形が現在設定されている走査領域とオフセット位置(観察視野)です。観察視
野隅の黒点は,走査原点位置(プローブ待機位置)を示しています。

観察視野

最大観察視野

走査領域コントロールダイアログと最大視野・観察視野の表示

2. X-Yスクロールバー,もしくは直接観察視野の四角形をドラッグをして観察視野
の変更を行う。
マウスカーソルの動きに合わせてリアルタイムで観察視野が移動しますので,マウ
スを速く大きく動かしてしまった場合には,プローブが試料と衝突する可能性があ
るので,観察視野の移動はゆっくりと行ってください。

1-90 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.5.9d 観察視野の変更(小移動)
測定された画像に表示されている範囲内で観察視野を変更する場合は,次の手順にした
がって観察領域を変更してください。

1. 簡易操作モードではコントロール1ダイアログに,詳細操作モードではメインコント
ロールダイアログにある[ドラッグ]を選択する。
画像表示ウィンドウ内にカーソルを移動すると,以下のようなカーソルに変化します。

2. ドラッグを行う。
ドラッグ中のカーソル移動量分だけ観察視野が移動します。
視野移動を終了するには,マウスの右ボタンをクリックします。

視野移動

マウスカーソルの動きに合わせてリアルタイムで観察視野が移動しますので,マウ
スを速く大きく動かしてしまった場合には,プローブが試料と衝突する可能性があ
るので,観察視野の移動はゆっくりと行ってください。

TM-57553FST4-1 1-91
1 測定操作

1.6 複数画像同時測定
1.5節「表面形状像の測定」では表面形状像のみを測定しますが,ここでは表面形状像と
共に,それ以外の測定画像も取得する測定方法(複数画像同時測定)について説明しま
す。

1.6.1 簡易操作モードでの複数画像同時測定
簡易操作モードで複数画像測定を行う場合,サブコントロールダイアログが「コントロール2
ダイアログ」もしくは「コントロール3ダイアログ」の違いにより,操作方法が異なります。
複数画像同時測定は,オプション測定モードを「標準測定」にして行います。オプショ
ン測定モードが「標準測定」になっていない場合,アイコンドックの[ ]をクリックしてく
ださい。

■ サブコントロールダイアログとしてコントロール2ダイアログを使用する場合
サブコントロールダイアログには,現在のSPMモードで標準的に測定できる測定信号のみ
が表示されています。

AC-AFMモードでの2つ目の測定信号選択前(左)と選択後(右)

ここでは表面形状(フォワードスキャン信号)以外の測定信号を1つだけ選択できます。
詳細は,1.3.6b項「入力信号の切り替え」を参照してください。
1. 測定したい信号を選び,その信号のフォワードスキャン信号かバックワードスキャ
ン信号を測定するかを決める。
2. 測定する信号のフォワードスキャン信号を測定するときは,測定信号の[FW]チ
ェックボックスをチェックする。またバックワードスキャン信号を測定する場合は,
[BW]チェックボックスをチェックする。
2つめの測定画像表示用の画像表示ウィンドウが表示されます。
測定画像の大きさは,常に512×512になります。
3. 測定を開始し,必要であれば測定信号の入力フィルタ周波数をサブコントロール
ダイアログの[フィルタ]で調整する。
入力フィルタとは,測定信号のA/Dボード入力直前に配置されているノイズ遮
断用ローパスフィルタです。画像の見え方にのみ影響し,フィードバック動作には影
響を与えません。

1-92 TM-57553FST4-1
1 測定操作

表面形状像と位相像の同時測定を設定した状態のソフトウェア画面

■ サブコントロールダイアログとしてコントロール3ダイアログを使用する場合
サブコントロールダイアログとしてコントロール3ダイアログを使用すると,入力信号選択の自
由度が高くなり,SPMコントローラに入力されているすべての測定信号から選択して,2画像
または4画像の同時測定を行うことができます。

AC-AFMモードでの標準設定(左)と複数画像同時測定設定後(右)

1. [走査モード]を必要とする同時測定画像の数によって[2入力画像測定(512)]
か[2入力画像測定],もしくは[4入力画像測定]に設定する。
走査モードを複数画像同時測定モードに設定すると,設定した入力画像の数によって
信号2~4までの選択プルダウンメニューが選択可能になります。また入力画像の数に
応じた画像表示ウィンドウが表示されます。
2入力画像測定では,画像サイズは512×512と256×256から選択できます。
4入力画像測定では,画像サイズは常に256×256になります。

TM-57553FST4-1 1-93
1 測定操作

2. 信号1~4までの信号選択プルダウンメニューから,入力したい測定信号を設定
し,またバックワードスキャン信号を測定したい場合は[BW]チェックボックスをチ
ェックする。
測定が開始されます。
3. 必要に応じて,[詳細設定]ボタンをクリックする。
「詳細設定」ダイアログを表示されます。
4. 「入力信号」ダイアログの[入力信号]タブから測定信号の[入力フィルタ周波
数]・[入力ゲイン]・[入力オフセット]を調整する。
入力フィルタとは,測定信号のA/Dボード入力直前に配置されているノイズ遮
断用ローパスフィルタで画像の質には影響しますが,フィードバック動作には影響
を与えません。また入力ゲイン・入力オフセットもA/Dボード内部の信号アンプの
設定ですので,画像の質には影響しますが,フィードバック動作には影響を与えま
せん。

4入力同時測定を設定した状態のソフトウェア画面

1-94 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.6.2 詳細操作モードでの複数画像同時測定
詳細操作モードは入力信号選択の自由度が高く,SPMコントローラに入力されているすべ
ての測定信号から選択して,2画像または4画像の同時測定を行うことができます。

メインコントロールダイアログの標準設定(左)と複数画像同時測定設定後(右)

メインコントロールダイアログの[走査モード]から複数画像同時走査モードを選択すること
で,2入力の同時測定と4入力の同時測定が可能です。
1. [走査モード]を必要とする同時測定画像の数によって[2入力画像測定(512)]
か[2入力画像測定],もしくは[4入力画像測定]に設定する。
走査モードを複数画像同時測定モードに設定すると,設定した入力画像の数によって
信号2~4までの選択プルダウンメニューが選択可能になります。また入力画像の数に
応じた画像表示ウィンドウが表示されます。
2入力画像測定では,画像サイズは512×512と256×256から選択できます。
4入力画像測定では,画像サイズは常に256×256になります。
2. 信号1~4までの信号選択プルダウンメニューから,入力したい測定信号を設定
し,またバックワードスキャン信号を測定したい場合は[BW]チェックボックスをチ
ェックする。
測定が開始されます。

TM-57553FST4-1 1-95
1 測定操作

3. 必要に応じて,[詳細設定]ボタンをクリックする。
「詳細設定」ダイアログが表示されます。
4. 「入力信号」ダイアログの「入力信号」タブから測定信号の[入力フィルタ周波
数]・[入力ゲイン]・[入力オフセット]を調整する。
入力フィルタとは,測定信号のA/Dボード入力直前に配置されているノイズ遮
断用ローパスフィルタです。画像の見え方にのみ影響し,フィードバック動作には影
響を与えません。また入力ゲイン・入力オフセットもA/Dボード内部の信号アンプ
の設定ですので,画像の見え方には影響しますが,フィードバック動作には影響を
与えません。

2入力同時測定を設定した状態のソフトウェア画面(画像サイズは256×256)

1-96 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.7 SPS測定
SPSとは,「Scanning Probe Spectroscopy」の略称で,プローブを利用した電気的・
力学的スペクトルの測定手法です。ここではSPSの測定方法について説明します。

1.7.1 SPS測定の種類
SPS測定にはいくつかの種類があります。これらのSPS測定は基本となるSPMモードや測定
信号によって,複雑な測定方法も可能ですが,基本的なSPS測定は以下の5つに分類でき
ます。

• I-Vカーブ測定
基本的にはSTMモードで行うSPS測定(STMモードで行うSPS測定をSTS測定と呼
ぶ場合もあります)で,バイアス電圧(V)を変化させた時のトンネル電流(I)の変化を
測定します。このとき,Z位置が変化しないようにフィードバック動作をOFFにしてZ位置
を固定します(フィードバックホールド状態)。STMで行うI-V測定の結果から,局所電
子状態や局所状態密度(LDOS)に関する情報を得ることができます。
また,このI-Vカーブ測定をコンタクトAFMモードで行うと,バイアス電圧(V)の変化に
対する試料表面の局所な領域とプローブ間に流れる電流(I)の変化を測定できます
ので,接触電流または抵抗測定などに応用できます。さらに,AC-AFM/NC-AFM
モードで測定信号をトンネル電流ではなく原子間力や周波数にして測定を行うと,バ
イアス電圧(V)の変化に対する力(F)やカンチレバ振動周波数(F)の変化が測定で
きます(F-V測定と呼びます)。この測定は,オプション測定である走査ケルビンプロー
ブ測定を行う際の表面電位計測などに応用できます。
• S-Vカーブ測定
STMモードで行うSPS(STS)測定で,バイアス電圧(V)を変化させた時のプローブ・
試料間距離距離(S)の変化を測定します。(V)の変化に即して(S)が変化するので,
STMモード以外では利用しないSPS測定です。S-V測定の結果からは,局所電子状
態に関する情報を得ることができます。
• I-Sカーブ測定
STMモードで行うSPS(STS)測定で,プローブ・試料間距離距離(S)を変化させた
時のトンネル電流(I)の変化を測定します。このとき,プローブ・試料間距離を任意に
変化させるためにフィードバック動作をOFFにします。I-Sカーブの測定結果からは,局
所電子状態や局所仕事関数に関する情報を得ることができます。
• フォースカーブ測定
AFMモードで行うSPS測定で,プローブ・試料間距離を変化させた時の原子間力の
変化を測定します。このとき,プローブ・試料間距離を任意に変化させるためにフィード
バック動作をOFFにします。カンチレバを用いた光てこ検出によって原子間力を検出
するため,STMモードでは利用できないSPS測定です。フォースカーブ測定からは,カ
ンチレバの力学特性,試料表面の局所な力学特性など様々な情報が得られます。

TM-57553FST4-1 1-97
1 測定操作

• フリクションフォースカーブ測定
コンタクトAFMモードで行うSPS測定で,プローブを横方向(スキャナのY軸方向)に
動かした時の,カンチレバのねじれ信号(摩擦力信号)を測定します。カンチレバを用い
た光てこ検出によって原子間力を検出するため,STMモードでは利用できないSPS測
定です。また,プローブと試料が接触していることによって生じるカンチレバのねじれを
検出するため,AC-AFM/NC-AFMモードでは利用できないSPS測定です。フリク
ションフォースカーブ測定からは,試料表面の局所領域における摩擦係数などの力学
情報が得られます。

JSPMシリーズでは,これら5つの基本的なSPS測定をサポートすると共に,測定信号を変更
することによって多彩なバリエーションにも対応できるようになっています。

1.7.2 SPS測定の基本的な操作手順
基本的なSPS測定操作の手順は,次のようになります。

1. SPS測定の前に,これまでの手順に従って画像を測定しておく。
2. SPS測定パラメータを設定する。
3. 測定した画像上で,SPS測定を行う位置を指定し,プローブを測定位置へ移動
させる。
4. SPS測定を行う。
スペクトル測定の操作方法は,簡易操作モードと詳細操作モードとで異なりますが,上記の
基本的な流れは同じです。ここでの測定は,すでにスペクトル測定位置を指定するための画
像測定が終了しているものとして,説明を行います(上記手順の2から説明を開始します)。

1.7.3 SPS測定位置の指定方法
具体的なSPS測定方法を説明する前に,SPS測定位置の指定方法について説明します。
SPS測定値の指定は,以下の手順で行います。

1. 簡易操作モードの場合は,コントロール1ダイアログの[プローブ位置]ボタンをク
リックする。
詳細操作モードの場合は,プローブダイアログを呼び出して,プローブダイアログ
上の[プローブ位置]ボタンをクリックする。
詳細操作モードでプローブダイアログを表示するには,アイコンドックの[ ]をク
リックします。
この際,画像表示ウィンドウに測定画像が表示されていないと,ソフトウェアはエラ
ーメッセージを表示して処理を終了します。
2. 画像表示ウィンドウ上にマウスカーソルを移動する。
カーソルを画像表示ウィンドウ上に移動させるとカーソルが[手]のマークになります。ま
た画像表示ウィンドウ上には,プローブの位置が十字マーカで表示されます。
初めてプローブ位置を設定する際,プローブは走査原点に位置しています。その
ため,十字マーカはウィンドウの左上隅に表示されています。

1-98 TM-57553FST4-1
1 測定操作

プローブの位置

マウスカーソル

3. マウスカーソルを十字マーカ近くに移動し,十字マーカをSPS測定を行いたい位
置までドラッグする。
このドラッグ中には,実際にカンチレバの位置がリアルタイムで動いていますので,
移動はゆっくりと行ってください。

測定位置

4. 位置が決まったら,マウスを右クリックして設定を完了する。
SPS測定位置の指定を省略した場合,SPS測定は走査原点にて行われます。
プローブ位置を指定した場合,再度プローブ位置を変更するか,画像測定を開
始するまで,プローブは指定した位置に存在します。
プローブ位置指定後に画像測定を開始する場合には,SPMコントローラはプロー
ブを操作原点に戻してから画像測定を行います。そのため,プローブ位置を指定
しても画像測定時の走査オフセット位置は変更されません。

TM-57553FST4-1 1-99
1 測定操作

1.7.4 簡易操作モードでのSPS測定
サブコントロールダイアログがコントロール2ダイアログである場合,SPS測定を実行できる
SPMモードは,コンタクトAFM(フォースカーブ測定が可能)とSTM(I-Vカーブ測定が可
能)の2種類だけです。
その他のSPMモードでも,コントロール3ダイアログからはSPS測定を実行できます。
SPS測定は,オプション測定モードを「標準測定」にして行います。オプション測定モー
ドが[標準測定]になっていない場合,アイコンドックの[ ]をクリックしてください。

1.7.4a フォースカーブ測定
コンタクトAFMモードでは,コントロール2ダイアログから以下の手順でフォースカーブ測定を
行います。フォースカーブの測定点数は常に128点になります。測定点数を増やす場合は,
コントロール3ダイアログから測定を行ってください。

1. ダイアログ下部の測定切り替えラジオボタンを,[フォースカーブ]に切り替える。
フォースカーブ測定結果表示用のスペクトル表示ウィンドウが表示されます。また,ダイ
アログ下部にある[FC設定]ボタンがアクティブになります。
2. [FC設定]ボタンをクリックする。
「フォースカーブ設定」ダイアログが表示されます。

フォースカーブ測定時のコントロール2ダイアログと,フォースカーブ設定ダイアログ

3. フォースカーブ設定ダイアログで,フォースカーブ測定時のプローブ・試料間距離
の変位距離を[nm]オーダで入力する。
フォースカーブ測定時には,スキャナが設定した変位距離だけZ方向に伸縮します。例
えば変位距離に50nmを設定した場合,Zスキャナは測定開始位置から±50nm伸縮
します。
変位距離にはZスキャナ最大駆動距離の半分の距離までが入力できます。
Zスキャナの最大駆動距離は,測定ソフトウェアウィンドウ下部のインフォメーション
に「高さ領域」として表示されています。
変位距離を大きくしすぎると,プローブが大きく試料表面に強く押しつけられ,プロ
ーブの破損などが起こる可能性がありますので注意してください。
4. フォースカーブ測定位置を指定する。
測定位置の指定方法は,1.7.3項「SPS測定位置の設定」を参照してください。
5. 画像測定と同じように測定を開始する。

1-100 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.7.4b I-Vカーブ測定
STMモードでは,コントロール2ダイアログから以下の手順でI-Vカーブ測定を行います。I-
Vカーブの測定点数は常に128点になります。測定点数を増やす場合は,コントロール3ダイ
アログから測定を行ってください。
1. ダイアログ下部の測定切り替えラジオボタンを,[I-V]に切り替える。
I-Vカーブ測定結果表示用のスペクトル表示ウィンドウが表示されます。また,ダイア
ログ下部にある[CITS/I-V設定]ボタンがアクティブになります。
2. [CITS/I-V設定]ボタンをクリックする。
「I-Vカーブ設定」ダイアログが表示されます。

I-Vカーブ測定時のコントロール2ダイアログと,I-Vカーブ設定ダイアログ

3. I-Vカーブ設定ダイアログで,I-Vカーブ測定時に変化させるバイアス電圧の最
小値と最大値,そして一回の測定でのスペクトル積算回数を設定する。
バイアス電圧の変化は,±10Vの範囲で指定できます。積算回数は128回まで指定で
きます。積算を行う場合は,指定回数だけI-V測定を繰り返して,得られたスペクトル
の合算の平均スペクトルが測定結果となります。
4. I-Vカーブ測定位置を指定する。
測定位置の指定方法は,1.7.3項「SPS測定位置の設定」を参照してください。
5. 画像測定と同様に測定を開始する。

1.7.4c コントロール3ダイアログからのSPS測定
サブコントロールダイアログをコントロール3ダイアログに切り替えるることで,より詳細なSPS
測定を行うことができます。

1. コントロール3ダイアログの[走査モード]に[SPS測定]を指定する。
「スペクトル表示」ウィンドウが表示されます。また,ダイアログ下部にある[測定設定]ボ
タンがアクティブになります。
2. [測定設定]ボタンをクリックする。
「SPS測定設定」ダイアログが表示されます。
3. SPS測定設定を行う。
SPS測定設定の設定方法については,1.7.6項「SPS測定設定ダイアログでの測
定設定」を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-101
1 測定操作

4. SPS測定位置を指定する。
測定位置の指定方法は,1.7.3項「SPS測定位置の設定」を参照してください。
5. 画像測定と同じように測定を開始する。

1.7.5 詳細操作モードでのSPS測定
詳細操作モードでSPS測定を行う場合は,以下の手順で測定を行います。

1. メインコントロールダイアログの「走査モード」に[SPS測定]を指定する。

走査モードと測定モード

2. アイコンドックの[ ]をクリックする。
SPS測定設定ダイアログが表示されます。SPS測定の測定パラメータ設定は,このダ
イアログから行います。
下図の例は「すべてのSPM測定モード」で測定を行っている場合ですので,他の
SPM測定モードで測定を行っている場合は,それぞれのSPMモードに対応した
SPS測定用のタブウィンドウのみが表示されます。

SPS測定設定ダイアログ

3. 測定したいSPS測定の測定設定を行う。
2.7.6項「SPS測定設定ダイアログでの測定設定」を参照してください。
4. SPS測定位置を指定する。
測定位置の指定方法は,1.7.3項「SPS測定位置の設定」を参照してください。
5. 画像測定と同じように測定を開始する。

1-102 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.7.6 SPS測定設定ダイアログでの測定設定
簡易操作モードでコントロール3ダイアログからSPS測定設定を行う場合と,詳細操作モー
ドでSPS測定設定を行う場合には,SPS測定設定ダイアログを使用します。このダイアログ
は,SPS測定ごとの専用タブウィンドウによって構成されています。
ここでのSPSモードの指定は,SPS測定だけでなくSPSマッピング測定にも適用されます。

1.7.6a 実行するSPS測定の指定
実行するSPS測定は,タブウィンドウ項目に必ず存在する[SPSモード]から指定します。
[SPSモード]を変更すると,測定を実行するSPSモードが切り替わるだけでなく,SPS測定
設定ダイアログのタブウィンドウも,指定したSPSモード用のタブウィンドウに切り替わります。

1.7.6b I-Vカーブの測定設定

① ④
② ⑤

③ ⑦

I-Vカーブタブウィンドウ

① クロック [ms]
SPS測定時のクロックスピードを設定します。ここでの設定は画像測定時のクロックとは
独立しており,SPS測定のときにだけ適用されます。
「測定点数」が[128]のときには,[Fast](100μs)と[Slow](1.6ms)の2つだけ
しか選択できません。「測定点数」が[256]以上のときには画像測定と場合と同じ
だけのクロックスピードを選択できます。
② 電圧(低)[V] ・ 電圧(高)[V]
スイープするバイアス電圧の最小値と最大値を設定します。
③ ランプ方向
バイアス電圧を走査する方向を設定します。
• 自動 : 最大値と最小値の何れかのうち,現在のバイアス電圧に近い方からスイ
ープする。
• 低→高 : バイアス電圧の最小値から最大値の方向へスイープします。
• 高→低 : バイアス電圧の最大値から最小値の方向へスイープします。

TM-57553FST4-1 1-103
1 測定操作

④ 入力信号
I-V測定時には[電流]に設定しますが,入力信号を変更することにより,様々な測定
バリエーションを実現できます。
⑤ 積算回数
測定の積算平均を行う回数を指定します。
測定結果は,指定回数だけスイープを繰り返した後,積算データを回数で平均
化した結果として得られます。
⑥ 測定点数
一回のスイープで何点の測定を行うかを設定します。
測定間隔はスイープ幅をこの数値で割った値になります。128点,256点,1024点,
2048点が設定できます。
⑦ SPSモード
SPS測定やSPSマッピング測定の際に選択します。

1.7.6c S-Vカーブの測定設定

S-Vカーブタブウィンドウ

① クロック [ms],電圧(低)[V],電圧(高)[V],ランプ方向,積算回数測定点数,
SPSモード
I-Vカーブでの設定と同様です。
② 入力信号
S-V測定時には[表面形状]に設定しますが,入力信号を変更することにより,様々な
測定バリエーションを実現できます。

1-104 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.7.6d I-Sカーブの測定設定

① ⑤


I-Sカーブタブウィンドウ

① クロック [ms],積算回数,測定点数,SPSモード
I-Vカーブでの設定と同様です。
② 変位距離 [nm]
プローブの高さ(Z)方向の走査範囲を設定します。
③ オフセット位置 [nm]
Z方向のオフセット高さを指定します。オフセット位置は,スイープ開始前の高さ位置に
加算されます。通常は0に設定します。
測定点数が128点の時は使用できません。
④ ランプ方向
プローブと試料間の距離のスイープ方向を設定します。
• Out→In : プローブと試料が近づく方向にスイープします。
• In→Out : プローブと試料が離れる方向にスイープします。
⑤ 入力信号
I-S測定時には,[電流]に設定しますが,入力信号を変更することにより,様々な測定
バリエーションを実現できます。

TM-57553FST4-1 1-105
1 測定操作

1.7.6e フォースカーブの測定設定

① ⑤

フォースカーブタブウィンドウ

① クロック [ms],積算回数,測定点数,SPSモード
I-Vカーブでの設定と同様です。
② 変位距離 [nm],オフセット位置 [nm]
I-Sカーブでの設定と同様です。
③ ランプ方向
プローブと試料間の距離のスイープ方向を設定します。
• In→Out→In : 最初に離れる方向に,次に近づく方向にスイープします。
• Out→In→Out : 最初に近づく方向に,次に離れる方向にスイープします。
④ Zレンジ
変位距離の最大範囲を設定します。
• Wide Range
Z方向全移動可能範囲でスイープが行えます。
• Narrow Range
変位距離の最大値がZ方向全移動可能距離の1/15の範囲に制限され,Wide
Range時に比べてスイープ時の狭領域でのZ位置制御分解能が上がります。
⑤ 入力信号
フォースカーブ測定時には[原子間力]に設定しますが,入力信号を変更することによ
り,様々な測定バリエーションを実現できます。

1-106 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.7.6f フリクションフォースカーブの測定設定

① ⑥


フリクションフォースカーブタブウィンドウ

① クロック [ms],積算回数,測定点数,SPSモード
I-Vカーブでの設定と同様です。
② 変位距離 [nm]
プローブのY方向の走査範囲を設定します。
③ オフセット位置 [nm]
Y方向のオフセット位置を指定します。オフセット位置は,スイープ開始前のY方向位
置に加算されます。通常は0に設定します。
④ ランプ方向
Y方向距離のスイープ方向を設定します。
• 右→左 : 最初にプローブを右方向に,次に左方向にスイープします。
• 左→右 : 最初にプローブを左方向に,次に右方向にスイープします。
⑤ フィードバック
フィードバックのオン/オフを設定します。
• アクティブ フィードバックがオンの状態で測定します。
• ホールド フィードバックがオフの状態で測定します。
⑥ 入力信号
フリクションフォースカーブ測定時には[摩擦力]に設定しますが,入力信号を変更する
ことにより,様々な測定バリエーションを実現できます。

TM-57553FST4-1 1-107
1 測定操作

1.7.7 SPS測定時の注意点
SPS測定ではバイアス電圧の変化やプローブ位置の変化によって,SPS測定開始前後で
フィードバック状態が大きく変化する場合があります。そのような場合は,画像測定条件を
再設定しなければならなくなる場合がありますので,以下の点に注意してください。

◇注意◇
1.バイアス電圧をスイープする測定では,過電流や電圧印加による試料表面もしくはプ
ローブ先端形状の破壊に注意してください。またSTMモードの場合はプローブ位置の変
動を伴う場合がありますので特に注意してください。
2.プローブ位置を変化させる測定の場合は,プローブを大きな移動(過大な押し込みな
ど)によってプローブ先端形状を悪化させないよう注意してください。

1.7.8 高圧出力バイアス電圧設定時のSPS測定
バイアス電圧出力を高圧出力に設定することで,通常±10V以内でしかスイープできない
I-VカーブおよびS-Vカーブ測定時のバイアス電圧が,±10V以上の範囲でスイープ可能
になります。
バイアス電圧出力設定の変更方法は,1.12.2項「詳細設定ダイアログ」の1.12.2b項
「バイアス電圧タブウィンドウ」を参照してください。

高圧出力でI-V測定を行う際には,大電流が流れることがありますのでプリアンプゲイ
ンの設定に注意してください。
高圧出力時には±100V以上の電圧を印加することができますが,電圧印加による試
料・プローブの破損等には十分注意してください。

1-108 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.8 SPSマッピング測定
1.8.1 SPSマッピング測定の概要
SPSマッピング測定は,画像サイズ128×128の表面形状像を測定すると当時に,全画像測
定点においてSPS測定を行う測定方法です。一回の測定に非常に長い時間を必要としま
すが,表面形状とスペクトルが同時に取得できるので,画像位置とSPS測定位置が1対1に
対応したマッピングデータを得ることができます。また,マッピングデータを解析することによ
り,各種の興味深い情報を得ることが可能になります。
各点で行われるSPS測定は128点測定になりますので,SPSマッピングデータは,128×128
×128のSPS三次元データと128×128の表面形状画像が得られます。

一般に呼ばれるCITS (Current Imaging Tunneling Spectroscopy)測定とは,


I-V測定のマッピングを行う,I-Vマッピング測定のことを指します。

探針
I-V 測定
I

走査の各点ごとにI-Vを測定

128点 128点 標準 15 点

CITS測定の概略図

1.8.2 SPSマッピング測定の基本的な操作手順
基本的なSPSマッピング測定操作の手順は,次のようになります。

1. マッピング測定するためのSPS測定を決定し,SPS測定パラメータを設定する。
2. 事前に表面形状像測定とSPS測定を行い,良好な表面形状像とスペクトルが
得られる状態にする。
3. SPSマッピング測定を行う。
上記手順の1および2については,1.5節「表面形状像の測定」および1.7節「SPS測定」
を参照してください。ここでは,手順3から説明します。

TM-57553FST4-1 1-109
1 測定操作

1.8.3 簡易操作モードでのSPSマッピング測定
簡易操作モードで複数画像測定を行う場合,サブコントロールダイアログがコントロール2
ダイアログかコントロール3ダイアログによって,操作方法が異なります。
なお,サブコントロールダイアログがコントロール2ダイアログである場合,SPSマッピング測
定はSTMモードからCITS測定のみが行えます。
SPSマッピング測定は,オプション測定モードを「標準測定」にして行います。オプション
測定モードが「標準測定」になっていない場合,アイコンドックの[ ]をクリックしてく
ださい。

1.8.3a CITS測定
STMモードでは,コントロール2ダイアログから以下の手順でCITS測定を行います。CITS
測定以外のSPSマッピング測定を行う場合や,STMモード以外でSPSマッピング測定を行
う場合は,コントロール3ダイアログから測定を行ってください。

1. 1.8.2項「SPS測定の基本的な操作手順」の手順2までを行う。
良好な表面形状像とスペクトルが得られる状態であることを確認してください。
2. ダイアログ下部の「測定切り替えラジオボタン」を,[CITS]に切り替える。
CITS測定結果表示用の画像表示ウィンドウが表示されます。
3. 画像測定と同じように測定を開始する。
I-Vカーブ測定設定には,手順1のスペクトル確認時と同じ設定が使用されます。

1.8.3b SPSマッピング測定
サブコントロールダイアログをコントロール3ダイアログに切換えることで,SPSマッピング測
定を行うことができます。
コントロール3ダイアログからSPSマッピング測定を行う場合は,以下の手順で測定を行いま
す。

1. 1.8.2項「SPS測定の基本的な操作手順」の手順2までを行う。
良好な表面形状像とスペクトルが得られる状態であることを確認してください。
2. コントロール3ダイアログの「走査モード」に[SPSマッピング測定]を指定する。
SPSマッピング測定結果表示用の画像表示ウィンドウが表示されます。
3. 画像測定と同じように測定を開始する。
SPS測定設定には,手順1のスペクトル確認時と同じ設定が使用されます。

1.8.4 詳細操作モードでのSPSマッピング測定
詳細操作モードでSPS測定を行う場合は,以下の手順で測定を行います。

1. 1.8.2項「SPS測定の基本的な操作手順」の手順2までを行う。
良好な表面形状像とスペクトルが得られる状態であることを確認してください。
2. メインコントロールダイアログの「走査モード」に[SPSマッピング測定]を指定する。
SPSマッピング測定結果表示用の画像表示ウィンドウが表示されます。

1-110 TM-57553FST4-1
1 測定操作

画像表示ウィンドウ

3. 画像測定と同じように測定を開始する。
SPS測定設定には,手順1のスペクトル確認時と同じ設定が使用されます。

1.8.5 SPSマッピング測定時の画像表示
SPSマッピング測定時には,通常の画像測定とは異なり,測定結果は画像表示ウィンドウを
16分割して表示されます。

凹凸像 電流像 ” ”

電流像 ” ” ”

” ” ” ”

” ” ” ”

SPSマッピング測定時の画像表示(CITS測定時の例)

16分割された内の一番左上には,表面形状像が表示されます。それ以外の分割領域には,
SPS測 定 範囲 を15等 割した測 定 点での測 定 信 号 像 が表 示 されます。上記 の例 の場合
CITS測定結果ですので,凹凸像とバイアス電圧スイープ幅を15分割したバイアス電圧で
の電流像がそれぞれ表示されます。

1.8.6 SPSマッピング測定時の注意点
• SPSマッピング測定は,表面形状像とSPSスペクトルを単独で測定した場合に,良好な
測定結果が得られることが前提となります。まずはこの2つの測定が行えるように,測定条
件を整えてください。
• SPSマッピング測定は,表面形状測定とSPS測定を平行して行いますので,画像測定の
クロックを,表面形状を単独で測定するよりもやや遅く設定した方が良好な測定結果を
得られる場合があります。

TM-57553FST4-1 1-111
1 測定操作

1.9 その他の測定
これまで説明してきた測定以外にも,走査パラメータを工夫したり,プローブの材質を選択
したりすることで,様々な応用測定を行うことができます。ここでは,それら応用測定の例に
ついて説明します。

1.9.1 摩擦像の測定
摩擦像測定(Friction Force Microscopy : FFM)は,コンタクトAFMモードにおいて,
下図のように走査方向を通常のカンチレバ走査に対して90°走査方向を変えて走査を行い,
このときのカンチレバのねじれから表面の摩擦力を測定するものです。

走査方向
カンチレバー

通常のコンタクトモード FFM

1.9.1a 簡易操作モードでの摩擦像測定
測定操作は次のように行います。

1. コントロール2ダイアログ下部の走査モード選択ラジオボタンで,[FFM]を選択す
る。
測定信号が,自動的に表面形状(フォワードスキャン信号)と摩擦(フォワードスキャン
信号)に設定され,表面形状像用と摩擦像用の2枚の画像表示ウィンドウが表示され
ます。測定画像のサイズは256×256です。
画像走査方向[Scan Angle]は90°に自動設定されます。
通常測定を行う場合は,必要に応じて走査方向を0°に戻して使用します。

摩擦像測定を選択した状態

2. [測定開始]ボタンをクリックする。
走査が開始され,表面形状像と摩擦像が表示されます。
摩擦像は,明るく見えている部分が摩擦の大きな領域となります。

1-112 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.9.1b 詳細操作モードでの摩擦像測定
測定操作は次のように行います。

1. 「走査モード」に[2入力画像測定(512)]もしくは[2入力画像測定]を設定する。
2. 「走査領域」をクリックし走査領域コントロールダイログを表示する。
3. 「入力信号」の「信号2」に[摩擦力]を設定する。
4. 「Scan Angle」に[90]を入力する。

摩擦力測定のための走査パラメータ設定

5. 詳細設定ダイアログの「入力信号」タブウィンドウで,「TOPO」と「摩擦」の「ゲイ
ン」を[1]に設定して,[自動]をチェックする。

6. [測定開始]ボタンをクリックする。
走査が開始され,表面形状像と摩擦像が表示されます。
摩擦像は,白く見えている部分が摩擦の大きな領域となります。

TM-57553FST4-1 1-113
1 測定操作

1.9.1c 摩擦像測定の注意点
• 摩擦像測定では,カンチレバのねじれを静的に測定しており,表面形状の影響が摩擦像
にも現れてきます。このために,表面形状像を同時に観察して評価する必要があります。
表面形状の影響をより少なくするためには,横振動FFM(オプション)を使用して観察す
ることをおすすめします。
• 摩擦像測定では前述のようにカンチレバのねじれを観察しているために,走査スピードと
カンチレバと試料との斤力の強さによって摩擦像の見え方が左右されます。
摩擦像にコントラストがつきにくい場合は,まずフィードバックリファレンスを少し+側(斤力
が大きくなる方)にして観察し,よりコントラストが付くようにリファレンスを調整してください。
• 簡易操作モードで走査モードを「FFM」に切り替えた場合,前述のように走査方向が90°
に自動設定されますが,走査モードを「AFM」に戻しても,この走査方向は元に戻りませ
ん。走査方向を0°のに戻したい場合は,走査領域コントロールダイアログから走査方向を
設定し直す必要があります。

1.9.2 接触電流像の測定
SPMヘッド内部には電流検出用のアンプが内蔵されており,プローブに流れる電流を検出
することができるようになっています。そこでコンタクトAFMモードにおいて導電性のカンチレ
バを使用すれば,試料の表面形状像と同時に接触電流像を測定することができます。

1.9.2a 観察の準備
• 導電性カンチレバの取り付け(JSPM-5200の場合)
カンチレバは導電性のカンチレバ(導電性Si製カンチレバ,金属コートカンチレバ等)を
使用します。特にガラス基板のカンチレバは,表と裏との間で導電性が良くないため,
下図のように導電性ペースト(ドータイト)などで確実に導電性をとります。

台座
Au 部

導電性ペースト
ガラス基板側
加振ピエゾ

◇注意◇
ドータイトなどでカンチレバの導電性をとる場合は,カンチレバの圧電体の部分に接
触しないように注意してください。また,カンチレバを交換する場合は,前のドータイトな
どが残っていないか確認してから取り付けてください。カンチレバが傾いて,レーザ光
が正しい位置に反射されない原因となります。

1-114 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• 試料の取り付け(JSPM-5200の場合)
電流像を正しく観察するためには,試料と試料台との導通を確実にとる必要がありま
す。試料を試料台に伝導性のテープで貼り付けたり,導電性ペースト(ドータイト)を用
いて貼り付けます。このとき,試料表面から側面にもテープ等を付けてみてください。

試料

導電性テープ

試料台

• カンチレバの選択
下図のように,長いカンチレバと短いカンチレバが2本以上ついているカンチレバで観
察時に短い方のカンチレバを使用する場合は,必ず長い方のカンチレバをピンセットで
取り除いておく必要があります。

長い方のカンチレバ

ピンセット

レーザ

カンチレバ

長い方の先端が
先に試料に接触する

TM-57553FST4-1 1-115
1 測定操作

1.9.2b 接触電流像の測定方法
測定設定方法は,簡易操作モードおよび詳細操作モードとも同じで,設定すべき項目は次
のようになります。

1. 走査モードを[2画像同時入力]に設定する。
2. 「信号1」を[表面形状]に,「信号2」を[電流]に設定する。
以上の設定方法については,「1.6 複数画像同時測定」を参照してください。
3. 試料とプローブ間に電流が流れるように,バイアス電圧を印加する。
4. 接触電流の電流量を確認するために,アイコンドックの[ ]をクリックする。
「状態表示」ダイアログが表示されます。

この状態で測定を開始すると,表面形状像と接触電流像を同時に得ることができます。
通常,コンタクトAFMの簡易操作モードではバイアス電圧が0.0Vに固定されています。
バイアス電圧を印加する場合は,コントロール1ダイアログの「バイアス電圧」部にある
[使用]チェックボックスをチェックしてください。

バイアス電圧設定の設定不可能状態(左)と設定可能状態(右)

1.9.2c 接触電流像測定の注意点
• 電流像を正しく観察する場合,表面形状像を正しく取り込む必要があります。フィードバッ
クフィルタを遅くすると,表面の凹凸に対して対応が遅くなりますので,見かけ上の接触電
流値が変化することがあります。

カンチレバ,試料間の 場所によって距離が違う
カンチレバ 距離が一定 電流値が変化

試料

正常なフィードバック フィードバックが遅いとき

• 測定試料が絶縁物に近いものや,表面に酸化膜が付着しているような場合,電流の変
化が少なくコントラストがつきにくくなります。
• 測定試料が導体試料の場合,コンタクトAFMでの接触電流測定は,STMでのトンネル
電流測定に比べて流れる電流量が大きくなります。観察中に状態表示ダイアログのバー
グラフが振り切ってしまう場合(右側の矢印の位置が上に振り切った状態),詳細設定ダ
イアログの「入力信号」タブウィンドウにある[プリアンプゲイン]の値を小さく設定します。
プリアンプゲインを小さくすることで,最大1μAまでの電流測定が可能になります。

1-116 TM-57553FST4-1
1 測定操作

Preamp Gain 検出できる最大電流


0.01V/nA 1μA
0.1V/nA 100nA
1V/nA 10nA

プリアンプゲインの設定と測定可能最大電流値

電流像の値を示す

凹凸像の値を示す

nm nA

状態表示ダイアログと,測定信号値バーグラフの模式図

◇注意◇
電流が多く流れる場合は,探針先端や試料にジュール熱によってダメージを与えること
がありますので,バイアス電圧値の設定は大きくなりすぎないように十分に注意してくださ
い。

TM-57553FST4-1 1-117
1 測定操作

1.9.3 導電性カンチレバを用いたI-V測定
接触電流像測定と共に,導電性カンチレバを用いた試料表面でのI-V測定はよく行われ
る手法です。この場合のIは,トンネル電流ではなく接触電流になります。

1.9.3a 測定の準備
カンチレバは接触電流像観察時と同様に導電性のものを使用し,接触電流像測定の際の
測定準備と同様に,カンチレバ・試料共に確実に導通を取ります。

1.9.3b I-Vカーブの測定方法
I-Vカーブの測定操作は,通常のI-Vカーブ測定と同様です。
I-Vカーブ測定は,1.7節「SPS測定」を参照してください。

1.9.3c I-V測定の注意点
• I-V測定ではバイアス電圧をスイープするので静電気力がカンチレバにかかります。この
ため,バネ定数の小さい(柔らかい)カンチレバを使用すると,バイアス電圧スイープ時にカ
ンチレバが静電気力により動き,正しくI-Vを測定できません。I-Vを測定するときは,な
るべく硬いカンチレバ(Si製等)を使用してください。
• 同一場所で繰り返し測定したI-Vが測定ごとに大きく異なる測定結果になる場合は,バ
イアス電圧スイープによる静電気力によって,カンチレバが測定中に撓んでいる可能性
があります。安定したI-Vを得るためにはI-V走査電圧の幅を小さくしてください。
• 測定試料が導体試料の場合,コンタクトAFMでの接触電流測定は,STMでのトンネル
電流測定に比べて流れる電流量が大きくなります。測定結果が次のように飽和したとき
は,詳細設定ダイアログの「入力信号」タブウィンドウにある[プリアンプゲイン]の値を小
さく設定します。プリアンプゲインを小さくすることで,最大1μAまでの電流測定が可能に
なります。

Preamp Gain 検出できる最大電流


0.01V/nA 1μA
0.1V/nA 100nA
1V/nA 10nA

プリアンプゲインの設定と測定可能最大電流値

1-118 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.9.4 ドリフト補正機能を用いた連続測定
超高真空中で原子像レベルの定点測定を行っているときは,わずかな熱ドリフトによる試料
移動も,連続測定の妨げになります。ドリフト補正機能は,このような熱的な原因などにより
発生する測定像のドリフトを補正します。ドリフト補正は,スキャン終了時にドリフトシフト方向
に同じ距離だけ走査の中心点をシフトすることによって行われます。そのため,ドリフト補正を
適用するには,準備作業(ドリフト速度と方向を求めるために必要な測定手続き)が必要に
なります。ドリフト補正機能では,まず一枚画像を測定し,その画像中の点が次に同視野で
画像を測定した際に,どの程度動いたのかを測定画像中で指定する事により,単位時間あ
たりのドリフト量を算出しています。ドリフト補正を適用中は,連続走査中に画像測定が終了
するたびに,ドリフトシフト量だけ観察視野を移動させます。

以下に,ドリフト補正設定の手順を示します。

1. 測定開始前に,詳細設定ダイアログの[走査]タブウィンドウを表示する。
ドリフト補正には,[走査]タブウィンドウにある「ドリフト補正」タブを使用します。

ドリフト補正タブ

2. 1枚目の画像測定を行って記録する。
画像内の特徴的な形状(一カ所だけ明るい点や欠陥などの穴)をピックアップします。
3. [ドリフト点を設定]をクリックし,1点目の基準点を指定する。
マウスカーソルが十字型になりますので,測定画像上のピックアップ点を指定します。
4. 2枚目の画像測定を行い記録する。
測定画像内に,ピックアップした部分が含まれていることを確認します。
5. [ドリフト点を設定]をクリックし,2点目の基準点を指定する。
1点目の設定と同じように,ピックアップした部分を指定します(ドリフトにより1枚目の画
像とでは位置が異なります)。2点目の基準点を設定すると,経過時間と画面上での1
点目と2点目の距離からドリフト速度とその方向が計算されます。
6. [補正を適用]をチェックする。
ドリフト補正が適用されます。
ドリフト計算のための基準点は3点まで指定できます。3点目を指定する場合には,
もう一度画像測定と基準点の指定を行ってください。

TM-57553FST4-1 1-119
1 測定操作

1.10 オプション測定
ここまでは,オプション測定モードが「標準測定」での測定方法について説明しました。ここか
らは,オプション機器を使用して行う各種オプション測定について説明します。

1.10.1 磁気力測定
磁気力測定(MFM : Magnetic Force Microscopy)は,AC-AFMもしくはNC-AF
Mモードにおいて磁性体コートされたMFM用カンチレバを使用して測定を行います。
磁気力測定では,表面形状像と磁気力像を分離するために,表面形状像を取り込んだ位
置で試料とプローブの距離を離して磁気力像を測定します。離す距離には,表面形状測
定での作用力である原子間力がカンチレバに影響を与えないが,磁気力はカンチレバの磁
性コート材に影響を与える程度の距離を設定します。しかし,試料とプローブが離れた状態
では磁気力がカンチレバに与える影響も非常に小さくなるので,磁気力を画像化するため
の信号にはRMS信号に比べてより検出感度の高い位相(Phase)信号を用います。

● 磁気力測定の要約
磁気力測定とは,以下のような条件で行う測定です。
• AC-AFMもしくはNC-AFMモードで測定を行う。
• プローブには磁性コートされたMFM用カンチレバを使用する。
• 表面形状像と磁気力像の2画像同時測定を行う。
• 表面形状像と磁気力像を分離するために,MFM測定動作を行う。
• 磁気力像はMFM測定動作時の位相像のことである。

● MFMの種類
JSPMシリーズでは2種類のMFM測定動作が利用できます。ひとつは標準構成で利用で
きる「Point by Point」モード(1画素ごとのMFM測定)であり,もうひとつはオプション機
器であるデジタルコントロールMFMボードを組み込んだ場合に利用できる「Line by Lin
e」モード(1走査ラインごとのMFM測定)です。
• Point by Pointモード
測定点ごとにMFM測定動作を行う測定モードです。MFM測定位置は正確ですが,
測定に時間を要します。
• Line by Lineモード(オプション)
MFM測定動作を1走査ライン事に行う測定モードです。プローブの上下動が1走査ラ
インごとに行われるため,安定した形状像と磁気力像を短時間で得ることができます。

● 磁気力測定開始前の確認事項
磁気力測定は,表面形状像が良好に観察できる状態になっていることが前提となりますの
で,1.5節「表面形状像の測定」を参照のうえ,表面形状像が良好に観察できることを確認
しておきます。確認後は,プローブを待避状態にしておきます。
表面形状像が良好に観察できる状態になっているものとして,以後の説明を行います。

1-120 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.1a 簡易操作モードでの測定準備
簡易操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。

1. アイコンドックの[ ]もしくは[ ]をクリックする。


オプション測定モードが磁気力測定に切り替わります。
「 」 は 「 Point by Point 」 モ ー ド を 用 い た 磁 気 力 測 定 で , 「 」 は「 Line by
Line」モードを用いた磁気力測定になります。目的に応じて選択してください。
磁気力測定にモードが切り替わると,コントロール2ダイアログが磁気力測定用ダイア
ログに変更されます。
また,2枚の画像表示ウィンドウが表示されます。画像サイズは256×256です。
2. コントロール2ダイアログから位相信号の「入力フィルタ」を[1kHz]に設定する。
3. コントロール2ダイアログの[リフトアップ設定]ボタンをクリックする。
「リフトアップ設定」ダイアログが表示されます。

磁気力測定用コントロール2ダイアログとリフトアップ設定ダイアログ

以上で測定準備は終了です。

簡易操作モードでの測定準備が終了した状態(Point by Pointモードを選択)

TM-57553FST4-1 1-121
1 測定操作

1.10.1b 詳細操作モードでの測定準備
詳細操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。
設定すべき内容は,「磁気力測定の要約」にまとめてあります。

1. メインコントロールダイアログの[走査モード]に[2入力画像測定]もしくは[2入
力画像測定(512)]を設定する。
測定したい画像サイズによって選択してください。選択した操作モードに応じた2枚の
画像表示ウィンドウが表示されます。
2. 「測定モード」に[リフト(P)]もしくは[リフト(L)]を設定する。
[リフト(P)]は「Point by Point」モードを用 いた磁 気 力 測 定 で,[リフト(L)] は
「Line by Line」モードを用いた磁気力測定になります。目的に応じて選択してくださ
い。
3. 「入力信号」の「信号1」に[表面形状],「信号2」に[位相]を設定する。
画像表示ウィンドウのタイトル表示が,更新されます。
4. 詳細設定ダイアログの「入力信号」タブウィンドウで,位相信号の入力フィルタを
[1kHz]に設定する。
5. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「リフトアップ設定」ダイアログが表示されます。

以上で測定準備は終了です。

詳細操作モードでの測定準備終了した状態
2画像同時測定(512×512)でPoint by Pointモードを選択した例

1-122 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.1c リフト量の初期設定
測定を開始する前にMFM測定動作時のZ位置リフト量の設定を行います。

リフト量設定ダイアログ

1. カンチレバ発振パラメータを確認して,カンチレバ加振の[加振電圧[V]]の値を
[リフトアップ時のカンチレバ加振電圧(V)]に設定する。
カンチレバ発振パラメータを確認するには,アイコンドックの[ ]をクリックして設
定ダイアログを表示させてください。
2. [リフトアップ高さ]に[50]nmを設定する。
リフトアップ量には,プローブ先端の曲率半径程度の距離を設定します。
この値は測定試料とプローブの磁化の強さ等によって変更する必要があります。

1.10.1d 磁気力像の測定
1. 通常の画像測定と同じように測定を開始する。
表面形状像と磁気力像が,画像表示ウィンドウに表示されます。
この段階では,画像保存を行わない繰り返し測定を選択しておく方が便利です。
2. [リフトアップ時のカンチレバ加振電圧(V)]の値を少しずつ小さくして,磁気力
像が良く見えるように調整する。
リフトアップした時とリフトアップしていない時のカンチレバ加振電圧が同じ場合,リフト
アップ時には原子間力の影響を受けなくなった分だけカンチレバが大きく振動してしま
い,磁気力像(位相像)測定に悪影響を及ぼします。したがって,リフトアップした時にも
カンチレバの振動の大きさがリフトしていないときとなるべく同じになるように,リフトアッ
プ時のカンチレバ加振電圧を小さく設定します。
3. 良好な磁気力像が得られたら,測定結果を保存する。

TM-57553FST4-1 1-123
1 測定操作

1.10.1e 磁気力測定の注意点
• デジタルコントロールMFMボードを装備しているにもかかわらず,Line by Lineモードの
選択が行えない場合は,機器設定を確認してください。また逆に,デジタルコントロールM
FMボードが装備されていないのに,Line by Lineモード測定を実行しないでください。
測定時に,Zフィードバックが思わぬ動作を起こす可能性があります。
• MFM用カンチレバは,前もって永久磁石などを用いて磁化しておく必要があります。
詳細は,カンチレバの取扱説明書を参考にしてください。

1.10.2 粘弾性測定
粘弾性測定(VE-AFM : Viscoelasticity AFM)は,表面形状測定時にプローブへ周
波数fのZ方向微少振動を加え,原子間力信号に含まれる振動成分を検出して画像化す
る測定方法です。原子間力信号に含まれる振動成分には弾性像情報と粘性像情報の両
方が含まれていますが,これをロックインアンプによって周波数fを基準としたcos成分(弾性
像)とsin成分(粘性像)に分離して画像化します。そのため,粘弾性測定には,ロックインア
ンプが必要です。また,ロックインアンプがSPMコントローラに接続されている場合でも,ソフ
トウェア上から機器設定を行わない限り,粘弾性測定は実行できません。なお,この時カンチ
レバに加える微少振動は,表面形状測定フィードバック動作に影響を及ぼさない程度の周
波数・振幅でなければなりません。
粘弾性像測定は,通常コンタクトAFMモードを用いて行いますが,試料によっては表面物
質がカンチレバへ吸着するなどによって,良好な粘弾性像が得られない場合があります。こ
のような試料に対しては,AC-AFMモードを用いることで良い結果が得られることがありま
す。AC-AFMモードでの粘弾性の測定は,カンチレバの共振周波数(300KHz程度)と粘
弾性測定の変調周波数(数10KHz)の差を利用して,ロックインアンプによる信号分離を
行います。

● 粘弾性測定の要約
粘弾性測定とは,以下のような条件で行う測定です。
• 一般にコンタクトAFMモードで,場合によってはAC-AFMモードで測定を行う。
• 表面形状像・弾性像・粘性像像の同時測定を行う。
• 表面形状測定時に,カンチレバに対してZ方向微少振動を加える。
• 弾性像と粘性像の検出・分離にはロックインアンプを用いる。
• 弾性像とはロックインアンプからのcos成分信号 LIA1(AUX1)信号像である。
• 粘性像とはロックインアンプからのsin成分信号 LIA2(AUX2)信号像である。

1-124 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● 粘弾性測定のための試料準備
粘弾性測定を行う場合,カンチレバ振動によって試料全体が振動しないようにするために,
試料がしっかりと固定されていなければなりません。
• JSPM-4500/4610の場合,試料は試料ホルダに押えを用いて固定されているので問
題はありません。
• JSPM-5200の場合,試料を試料台の上に置いただけでは粘弾性測定を行うには不都
合がありますので,粘弾性像を正しく観察するためには,試料を試料台に堅固に取り付け
る必要があります。また試料を両面テープで貼り付けるのではなく,導電性ペーストなどで
試料台に堅く貼り付ける(接着する)ことをおすすめします。

● 粘弾性測定開始前の確認事項
粘弾性測定は,表面形状像が良好に観察できる状態になっていることが前提となりますの
で,「1.5 表面形状像の測定」を参照のうえ,表面形状像が良好に観察できることを確認し
ます。確認後は,プローブを待避状態にしておきます。
以後の説明は,表面形状像が良好に観察できる状態になっていることが前提です。

TM-57553FST4-1 1-125
1 測定操作

1.10.2b 簡易操作モードでの測定準備
簡易操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
オプション測定モードが粘弾性測定に切り替わります。粘弾性測定にモードが切り替わ
ると,コントロール2ダイアログが粘弾性測定用ダイアログに変更されます。
また,3枚の画像表示ウィンドウが表示されます。画像サイズは256×256です。
2. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログが表示さ
れます。

粘弾性測定用コントロール2ダイアログとロックインアンプ設定ダイアログ(Model7265用)

以上で測定準備は終了です。

簡易操作モードでの測定準備が終了した状態

1-126 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.2c 詳細操作モードでの測定準備
詳細操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。
設定すべき内容は,「粘弾性測定の要約」にまとめてあります。

1. メインコントロールダイアログの「走査モード」に[4入力画像測定]を設定する。
4枚の画像表示ウィンドウが表示されます。
粘弾性測定では3枚の画像を測定できれば十分ですが,3入力画像測定という
モードは選択できないため,4入力画像測定を選択します。
2. [測定モード]に[粘弾性モード]を設定する。
3. 「入力信号」の「信号1」に[表面形状],「信号2」に[LIA1(Aux1)],「信号3」に
[LIA2(Aux2)]を設定する。
画像表示ウィンドウのタイトル表示が更新されます。
「信号4」の設定は特に変更しなくて結構です。

4. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログが表示さ
れます。

詳細操作モードでの測定準備終了した状態

以上で測定準備が終了します。

TM-57553FST4-1 1-127
1 測定操作

1.10.2d ロックインアンプの初期設定
弾性信号と粘性信号を検出・分離できるように,ロックインアンプを設定します。
粘弾性測定時のZ方向微少振動信号も,ロックインアンプから出力します。

■ Model 7265を使用する場合
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログから以下の手
順で設定を行います。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 微少振動信号設定
入力感度 1mV 変調周波数 20.000
時定数 1ms 変調出力 0.200
リファレンス位相 0.000 リファレンス周波数 F
出力切換 AcosT,AsinT

2. プローブ待避を解除状態にする。
3. ロックインアンプ設定ウィンドウの[感度自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「入力感度」を調整します。
4. ロックインアンプ設定ウィンドウの[位相自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「リファレンス位相」を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

1-128 TM-57553FST4-1
1 測定操作

■ Model 5110を使用する場合

● ロックインアンプ本体の設定
ロ ッ ク イ ン ア ン プ 本 体 の 各 部 名 称 に つ い て は 「 1 .3.10a ロ ッ ク イ ン ア ン プ の 説 明
(Model5110)」を参照してください。
1. ①POWERスイッチを入れる。
2. ②入力切り替えスイッチのAボタンを押す。
3. ②入力切り替えスイッチのFLOAT/GROUNDボタンをFLOAT状態にする。
4. ②入力切り替えスイッチの108,106 ボタンが両方押されていない状態にする。

● 測定ソフトウェアからの設定
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログから以下の手
順で設定します。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 微少振動信号設定
入力感度 1mV 発振周波数 20.000
時間定数 1ms 発振出力 0.200
リファレンス位相 0.000
出力信号 AcosT,AsinT

2. [詳細設定]ボタンをクリックする。
「Lock-In-Amplifier 1 Advanced」ダイアログが開きます。

ロックインアンプ1 アドバンスダイアログ

TM-57553FST4-1 1-129
1 測定操作

3. 次のようにパラメータを設定する。
パラメータ 設定
Filter Band pass
Filter Frequency/kHz 20.000
Line Reject Off
Track チェックする
Ref INT
2F チェックしない
Slope/12dB チェックしない
Dynamic Res. High Resolution
Offset チェックしない

4. プローブ待避を解除状態にする。
5. ロックインアンプ設定ウィンドウの[自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「入力感度」および「リファレンス位相」を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

1-130 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.2e 粘弾性像の測定
ロックインアンプの設定が終了したら,測定を開始します。
1. 通常の画像測定と同じように測定を開始する。
表面形状像,弾性像,粘性像が画像表示ウィンドウに表示されます。
この段階では,画像保存を行わない繰り返し測定を選択しておく方が便利です。
2. ロックインアンプからの信号出力が飽和しない範囲で,ロックインアンプの入力
感度を上げる(1mV→100nVの方向)。
Model 5110を使用している場合は,信号が飽和すると[OVLD]LEDが点灯し
ます。Model 7265の場合は,粘弾性像の変化から判断してください。
3. 粘弾性像が良好に得られるように,ロックインアンプのパラメータを調整する。
• 変調周波数(Model5110の場合 発振周波数)
試料の弾性,粘性の違いが小さい場合(例えば,複合プラスチック等,同じ種類のも
のが混ざっているような場合),発振周波数を高くした方が良好な画像が得られるよ
うになります。
• 変調出力(Model5110の場合 発振周波数)
Si製カンチレバ等の硬いカンチレバを使用した場合,発振出力を低くして観察を行
います。発振出力が大きすぎる場合は,カンチレバ自体が折れる可能性があります。
逆にやわらかいカンチレバを使用した場合は,発振出力を高くする必要があります。
4. 良好な粘弾性像が得られたら,測定結果を保存する。

1.10.2f 粘弾性測定の注意点
• 弾性像(cos成分像),粘性像(sin成分像)ともに明るくなる部分が,それぞれ弾性,粘
性が大きい領域となります。
• 一般に,粘弾性測定を行う場合は,硬いカンチレバを使用した方が良好な画像が得られ
ます。
• 粘弾性モードに切り替えると,使用するスキャナの固有振動数によってはZスキャナから発
振音がする場合があります。これは微少振動信号の印加によるZスキャナの振動音です
ので,発振音がした場合は振動量を小さくするか,振動周波数を現在の設定値からずら
して発振音がしないようにしてください。
• ロックインアンプを装備しているにもかかわらず,粘弾性モードの選択が行えない場合は,
機器設定を確認してください。
• ロックインアンプ接続時に通信エラーが表示された場合は,ロックインアンプの電源,PC
とロックインアンプ間のケーブル接続,ロックインアンプ本体のRS-232C通信設定を確
認してください。

詳細は1.3.10項「ロックインアンプ」の項を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-131
1 測定操作

1.10.3 横振動FFM測定
横振動FFM測定(LM-FFM : Lateral Modulation FFM)は,コンタクトAFMモード
での表面形状測定時に周波数fのY方向微少振動をプローブへ加え,摩擦力信号に含ま
れる振動成分を検出して画像化する測定方法です。Y方向微少振動によって,カンチレバ
にはプローブ先端を軸とした横振動が発生するため,これをロックインアンプによって周波
数fを基準としたcos成分とsin成分に分離し,cos成分を摩擦力像として画像化します。そ
のため,横振動FFM測定には,ロックインアンプが必要です。また,ロックインアンプがSPM
Mコントローラに接続されている場合でも,ソフトウェア上から機器設定を行わない限り,横振
動FFM測定は実行できません。
横振動FFM測定は,ロックインアンプによって表面形状信号と摩擦力信号を分離するた
め表面形状測定の影響が非常に小さく,普通のFFM測定に比べて分解能が良い安定し
た摩擦力像測定が可能になります。

● 横振動FFM測定の要約
横振動FFM測定とは,以下のような条件で行う測定です。
• コンタクトAFMモードで測定を行う。
• 表面形状像・摩擦像の同時測定を行う。
• 表面形状測定時に,プローブに対してY方向微少振動を加える。
• 摩擦力像の検出・分離にはロックインアンプを用いる。
• 摩擦力像とはロックインアンプからのcos成分信号 LIA1(AUX1)信号像である。

● 横振動FFM測定のための試料準備
横振動FFM測定を行う場合,カンチレバ振動によって試料全体が振動しないようにするた
めに,試料がしっかりと固定されていなければなりません。
• JSPM-4500/4610の場合,試料は試料ホルダに押えを用いて固定されているので問
題ありません。
• JSPM-5200の場合は,試料を試料台の上に置いただけでは横振動FFM測定を行うに
は不都合があります。そのため横振動摩擦力像を正しく観察するためには,試料を試料
台にしっかりと堅く取り付ける必要があります。また試料を両面テープで貼り付けるのでは
なく,ペーストなどで試料台に堅く貼り付ける(接着する)ことをおすすめします。

● 横振動FFM測定開始前の確認事項
横振動FFM測定は,表面形状像が良好に観察できる状態になっていることが前提となり
ますので,まずは「1.5 表面形状像の測定」を参照して,表面形状像が良好に観察できる
ことを確認しておきます。次に「1.9.1 摩擦像の測定」を参照して通常のFFM観察を行い,
摩擦像が得られることを確認します。確認後は,プローブを待避状態にしておきます。

1-132 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.3a 簡易操作モードでの測定準備
簡易操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
オプション測定モードが横振動FFM測定に切り替わります。横振動FFM測定にモード
が切り替わると,コントロール2ダイアログが横振動FFM測定用ダイアログに変更され
ます。
また,3枚の画像表示ウィンドウが表示されます。画像サイズは256×256です。
2. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログが表示さ
れます。

横振動FFM測定用コントロール2ダイアログとロックインアンプ設定ダイアログ(Model7265用)

以上で測定準備は終了です。

簡易操作モードでの測定準備が終了した状態

TM-57553FST4-1 1-133
1 測定操作

1.10.3b 詳細操作モードでの測定準備
詳細操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。
設定すべき内容は,「横振動FFM測定の要約」にまとめてあります。

1. メインコントロールダイアログの「走査モード」に[4入力画像測定]を設定する。
4枚の画像表示ウィンドウが表示されます。
粘弾性測定では3枚の画像を測定できれば十分ですが,3入力画像測定という
モードは選択できないため,4入力画像測定を選択します。
2. 「測定モード」に[横振動摩擦力モード]を設定する。
3. 「入力信号」の「信号1」に[表面形状],「信号2」に「LIA1(Aux1)」,「信号3」に
[LIA2(Aux2)]を設定する。
画像表示ウィンドウのタイトル表示が更新されます。
「信号4」の設定は特に変更しなくて結構です。

4. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログが表示さ
れます。

以上で測定準備は終了です。

詳細操作モードでの測定準備終了した状態

1-134 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.3c ロックインアンプの初期設定
横振動摩擦力信号を検出・分離できるように,ロックインアンプを設定します。
横振動FFM測定時のY方向微少振動信号も,ロックインアンプから出力します。

■ Model 7265を使用する場合
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログから以下の手
順で設定します。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 微少振動信号設定
入力感度 1mV 変調周波数 20.000
時定数 1ms 変調出力 0.200
リファレンス位相 0.000 リファレンス周波数 F
出力切換 AcosT,AsinT

2. プローブ待避を解除状態にする。
3. ロックインアンプ設定ウィンドウの[感度自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「入力感度」を調整します。
4. ロックインアンプ設定ウィンドウの[位相自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「リファレンス位相」を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

TM-57553FST4-1 1-135
1 測定操作

■ Model 5110を使用する場合

● ロックインアンプ本体の設定
ロ ッ ク イ ン ア ン プ 本 体 の 各 部 名 称 に つ い て は 1 .3.10a 項 「 ロ ッ ク イ ン ア ン プ の 説 明
(Model5110)」を参照してください。
1. ①POWERスイッチを入れる。
2. ②入力切り替えスイッチのAボタンを押す。
3. ②入力切り替えスイッチのFLOAT/GROUNDボタンをFLOAT状態にする。
4. ②入力切り替えスイッチの108,106 ボタンが両方押されていない状態にする。

● 測定ソフトウェアからの設定
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログから以下の手
順で設定を行います。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 微少振動信号設定
入力感度 1mV 発振周波数 20.000
時間定数 1ms 発振出力 0.200
リファレンス位相 0.000
出力信号 AcosT,AsinT

2. [詳細設定]ボタンをクリックする。
「Lock-In-Amplifier 1 Advanced」ダイアログが開きます。

ロックインアンプ1 アドバンスダイアログ

1-136 TM-57553FST4-1
1 測定操作

3. 次のようにパラメータを設定する。
パラメータ 設定
Filter Band pass
Filter Frequency/kHz 20.000
Line Reject Off
Track チェックする
Ref INT
2F チェックしない
Slope/12dB チェックしない
Dynamic Res. High Resolution
Offset チェックしない

4. プローブ待避を解除状態にする。
5. ロックインアンプ設定ウィンドウの[自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「入力感度」および「リファレンス位相」を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

1.10.3d 横振動摩擦力像の測定
ロックインアンプの設定が終了したら,測定を開始します。
1. 通常の画像測定と同じように測定を開始する。
「表面形状像」,「摩擦力像」,「sin成分像」が画像表示ウィンドウに表示されます。
この段階では,画像保存を行わない繰り返し測定を選択しておく方が便利です。
2. ロックインアンプからの信号出力が飽和しない範囲で,ロックインアンプの入力
感度を上げる(1mV→100nVの方向)。
Model 5110を使用している場合は,信号が飽和すると[OVLD]LEDが点灯し
ます。Model 7265の場合は,摩擦力像の変化から判断してください。
3. 摩 擦 力 像 が良 好 に得 られるように, ロック インアンプの[ 変 調 出 力 ](Mode l
5110の場合は,[発振出力])を調整する。
Y方向の微少振動幅が数nm~数10nm程度になるように設定します。
微少振動幅は,設定したい振動幅[nm]をYスキャナのキャリブレーション値を用
いて電圧値[V]に変換計算し,ロックインアンプの[変調出力]に入力することで
設定します。実際には,ロックインアンプから出力される加振信号はスキャナに印
加される前にスキャナ駆動電源のHVアンプによって20倍に増幅されますので,キ
ャリブレーション値を用いて計算した電圧値の1/20の値を設定することになりま
す。
スキャナキャリブレーション値については,1.13.3項「スキャナ設定」を参照してくだ
さい。
4. 良好な摩擦力像が得られたら,測定結果を保存する。

TM-57553FST4-1 1-137
1 測定操作

1.10.3e 横振動FFM測定の注意点
• 摩擦力像(cos成分像)で明るくなる部分が,摩擦力の大きい領域となります。
• 横振動摩擦力モードに切り替えると,使用するスキャナの固有振動数によってはYスキャ
ナから発振音がする場合があります。これは微少振動信号の印加によるYスキャナの振
動音ですので,発振音がした場合は振動量を小さくするか,振動周波数を現在の設定
値からずらして発振音がしないようにしてください。
• ロックインアンプを装備しているにもかかわらず,横振動摩擦力モードの選択が行えない
場合は,機器設定を確認してください。
• ロックインアンプ接続時に通信エラーが表示された場合は,ロックインアンプの電源,PC
とロックインアンプ間のケーブル接続,ロックインアンプ本体のRS-232C通信設定を確
認してください。

詳細は1.3.10項「ロックインアンプ」を参照してください。

1-138 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.4 走査ケルビンプローブ測定
走査ケルビンプローブ測定(SKPM : Scanning Kelvin Probe Microscopy)は,
プローブと試料間に働く静電気力をAC-AFMもしくはNC-AFMモードを用いて検出し,
静電気力が最小となる試料バイアス電位を求めることで,試料の表面電位像を観察するも
のです。
走査ケルビンプローブ測定にはロックインアンプが必要です。また,ロックインアンプが
SPMコントローラに接続されている場合でも,ソフトウェア上から機器設定を行わない限
り,走査ケルビンプローブ測定は実行できません。

測定原理は以下の通りです。
プローブ・試料間に電位差Uがある場合,その間に生じる静電気力 F は
1 ∂C
F = − ⋅U 2 ⋅
2 ∂z
で与えられます。ここで,zはプローブ・試料間距離,Cはそのときの静電容量です。
直流電圧VDC に振幅VAC,周波数ωの交流電圧を重畳した電圧をVt とすると

Vt = VDC + V AC ⋅ sin ωt

をプローブ・試料間に印加します。このときの接触電位差をΔφ/q ∗ とすると,電位差Utは,
U t = Vt − Δφ / q
V DC − Δφ / q + V AC ⋅ sin ωt
静電気力 F は上式より,
2 ∂C
F = − ⋅ (VDC − Δφ / q + V AC ⋅ sin ωt ) ⋅
1
2 ∂z
となり,これを展開すると次のようになります。

1 ⎡ 2 ⎤ ∂C
F = − ⋅ ⎢(VDC − Δφ / q ) + V AC ⎥ ⋅
2 1
2 ⎣ 2 ⎦ ∂z
∂C
− ⋅ (VDC − Δφ / q ) ⋅ V AC ⋅ sin ωt
∂z
1 ∂C
+ ⋅ ⋅ V AC ⋅ cos 2ωt (1)
2
4 ∂z

静電気力Fには,(1)式のようにスタティックな成分と周波数ωおよび2ωの成分が現れます。
∂F
これは,カンチレバの振動振幅(F:Force)や固有振動数( ∂z
:Force gradient)の変化
として検出されますので,ロックインアンプを用いてω成分を取り出します。ω成分は(1)式の
∂C
第2項に示すように,Forceの場合は ⋅ (V DC − Δ φ / q ) ⋅ V AC ,一方,Force gradi-entの場合は
∂z
∂ C
2
⋅ (V DC − Δ φ / q ) ⋅ V AC に相当します。この値がゼロとなるようにV DC を制御することにより,表面
∂z 2
電位を測定します。


Δφ(eV)がWork Function Difference(WFD)であり,Δφ/q(V)はContact Potential Difference(CPD;接触電位差)です。

TM-57553FST4-1 1-139
1 測定操作

参考文献:
横山 浩,他:日本物理学会誌,49,281(1994)
T.Hochwitz,et al.,J.Vac.Sci.Technol.B14,457(1996)

● 走査ケルビンプローブ測定の要約
走査ケルビンプローブ測定とは,以下のような条件で行う測定です。
• AC-AFMもしくはNC-AFMモードで測定を行う。
• 導電性カンチレバを用いて測定を行う。
• 表面形状像・表面電位像の同時測定を行う。
• 表面形状測定時に,バイアス電圧に対して微少変動を加える。
• 表面電位像の検出には,ロックインアンプとバイアスフィードバック回路を用いる。

● 走査ケルビンプローブ測定のためのカンチレバの準備
走査ケルビンプローブ測定では,導電性のカンチレバを使用します。SPMヘッド内部には,
電流検出用のアンプが内蔵されており,カンチレバはアンプ(オペアンプ)を介して0Vに接
地しています。
• 使用するカンチレバの選択
下図のように,長いカンチレバと短いカンチレバの2本がついているカンチレバで,観察
時に短い方のカンチレバを使用する場合は,必ず長い方のカンチレバをピンセットの先
端で取り除いておく必要があります(通常は共振周波数が80~300kHz程度の導電
性のカンチレバを使用します)。

長い方の
カンチレバ

ピンセット

レーザ

カンチレバー

長い方の先端が先
に試料に接触する

1-140 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• カンチレバの取り付け
カンチレバには導電性Si製カンチレバ,金属コートカンチレバなどを使用します。JSPM
-5200での取り付けの際は,カンチレバホルダとカンチレバとの間の導電性をしっかり
とることが重要です。特にガラス基板製のカンチレバは,表と裏との間で導電性が良く
ないので,下図の様に導電性ペースト(ドータイト)などでしっかりと導電性を取ります。

Au 部 台座

ガラス基板側面 導電性ペースト

加振用ピエゾ

◇注意◇
ドータイトなどでカンチレバの導電性をとる場合は,カンチレバの圧電体の部分に接触しな
いように注意してください。また,カンチレバを交換する場合は,前のドータイトなどが残って
いないか確認してから取り付けてください。カンチレバが傾いて,レーザ光が正しい位置に
反射されない原因となります。

● 走査ケルビンプローブ測定のための試料準備
表面電位像を正しく観察するためには,試料と試料ホルダの導通をしっかりと取る事が重
要です。JSPM-5200の場合は,試料を試料台の上に置いただけでは,試料と試料台の間
の導通を取ることはできません。試料を導電性ペーストや導電性両面テープなどで試料台
に貼り付けることをおすすめします。

試料

導電性ペースト

試料台

● 走査ケルビンプローブ測定の確認事項
走査ケルビンプローブ測定は,表面形状像が良好に観察できる状態になっていることが前
提ですので,「1.5 表面形状像の測定」を参照のうえ,表面形状像が良好に観察できるこ
とを確認します。確認後は,プローブを待避状態にしておきます。

TM-57553FST4-1 1-141
1 測定操作

1.10.4a 簡易操作モードでの測定準備
簡易操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
オプション測定モードが走査ケルビンプローブ測定に切り替わります。走査ケルビンプ
ローブ測定にモードが切り替わると,コントロール2ダイアログが走査ケルビンプローブ
測定用ダイアログに変更されます。
また,2枚の画像表示ウィンドウが表示されます。画像サイズは256×256です。
2. コントロール2ダイアログの[SKPM設定]ボタンをクリックする。
「SKPM設定」ダイアログが表示されます。
3. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログが表示さ
れます。

走査ケルビンプローブ測定用コントロール2ダイアログとSKPM設定ダイアログ

以上で測定準備は終了です。

簡易操作モードでの測定準備が終了した状態

1-142 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.4b 詳細操作モードでの測定準備
詳細操作モードでは,オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。
設定すべき内容は,「走査ケルビンプローブ測定の要約」にまとめてあります。

1. メインコントロールダイアログの「走査モード」に[2入力画像測定]を設定する。
2枚の画像表示ウィンドウが表示されます。
2. 「測定モード」に[ケルビンプローブモード]を設定する。
3. 「入力信号」の「信号1」に[表面形状],「信号2」に[CPD(Aux3)]を設定する。
画像表示ウィンドウのタイトル表示が更新されます。
4. アイコンドックの[ ]と[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログと「SKP
M設定」ダイアログが表示されます。
以上で測定準備が終了します。

詳細操作モードでの測定準備終了した状態

TM-57553FST4-1 1-143
1 測定操作

1.10.4c ロックインアンプの初期設定
表面電位信号を検出・分離できるように,ロックインアンプを設定します。
走査ケルビンプローブ測定時のバイアス電圧変調信号も,ロックインアンプから出力します。

■ Model 7265を使用する場合
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログから以下の手
順で設定を行います。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 変調信号設定
入力感度 10mV 変調周波数 40.000
時定数 1ms 変調出力 1.000
リファレンス位相 0.000 リファレンス周波数 F
出力切換 Acos,Asin

2. プローブ待避を解除状態にする。
3. ロックインアンプ設定ウィンドウの[感度自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に[入力感度]を調整します。
4. ロックインアンプ設定ウィンドウの[位相自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に[リファレンス位相]を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

1-144 TM-57553FST4-1
1 測定操作

■ Model 5110を使用する場合

● ロックインアンプ本体の設定
ロ ッ ク イ ン ア ン プ 本 体 の 各 部 名 称 に つ い て は 「 1 .3.10a ロ ッ ク イ ン ア ン プ の 説 明
(Model5110)」を参照してください。
1. POWERスイッチを入れる。
2. 入力切り替えスイッチのAボタンを押す。
3. 入力切り替えスイッチのFLOAT/GROUNDボタンをFLOAT状態にする。
4. 入力切り替えスイッチの108,106 ボタンが両方押されていない状態にする。

● 測定ソフトウェアからの設定
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログから以下の手
順で設定を行います。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 変調信号設定
入力感度 10mV 発振周波数 40.000
時間定数 1ms 発振出力 1.000
リファレンス位相 0.000
出力信号 AcosT,AsinT

2. [詳細設定]ボタンをクリックする。
「Lock-In-Amplifier 1 Advanced」ダイアログが開きます。

ロックインアンプ1 アドバンスダイアログ

TM-57553FST4-1 1-145
1 測定操作

3. 次のようにパラメータを設定する。
パラメータ 設定
Filter Band pass
Filter Frequency/kHz 40.000
Line Reject Off
Track チェックする
Ref INT
2F チェックしない
Slope/12dB チェックしない
Dynamic Res. High Resolution
Offset チェックしない

4. プローブ待避を解除状態にする。
5. ロックインアンプ設定ウィンドウの[自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に[入力感度]および[リファレンス位相]を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

1-146 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.4d 表面電位検出の設定




SKPM設定ダイアログ

■ SKPM設定ダイアログの説明
① SKPMフィードバック
ONに設定するとバイアス電圧のSKPMフィードバックが開始されます。SKPMフィード
バックを開始することにより,CPD信号がAFMアンプから出力され,SKPM測定がで
きるようになります。
② AC電圧印加
SKPM測定のためのバイアス電圧変調信号の印加先を設定します。通常は,バイアス
電圧の印加先と同じに設定しますが,オプション機器を追加するか,変調信号入力の
配線を変更することで,バイアス電圧印加先と変調信号印加先を別にすることができ
ます。また,AC電圧印加のON/OFFを切り替えることができます。
JSPM-5200の場合,バイアス電圧印加先を変更することはできません。
AC電圧印加がOFFの場合,SKPMフィードバックをONすることはできません。
現在のバイアス電圧印加先は,「バイアス電圧印加先設定」に表示されています。
バイアス電圧印加先を変更する方法は,5.12.2b項「バイアス電圧タブウィンドウ」
を参照してください。
③ ロックインアンプ信号
SKPMフィードバックに必要なロックインアンプへのリファレンス信号を切り替えます。
「FMD」はNC-AFMでの測定時にだけ設定し,AC-AFMでの測定時には使用
しません
④ フィルタ
SKPMフィードバックのフィードバックフィルタを設定します。
⑤ ゲイン
SKPMフィードバックのゲイン(ループゲイン)を設定します。
⑥ オフセット
バイアス電圧のDCオフセット電圧を設定します。

TM-57553FST4-1 1-147
1 測定操作

■ 表面電位検出の自動設定
SKPM設定ダイアログにある[自動調整]ボタンをクリックすることで,表面電位検出設定が
自動的に行われます。
自動調整がうまく働かない場合は,手動設定を行ってください。

● 自動調整シーケンスの調整原理
自動調整シーケンスにおいて,AC-AFMモードでは原子間力信号,NC-AFMモードで
は周波数信号もしくは原子間力信号のバイアス電圧依存性カーブ(F-Vカーブ)を測定し,
その結果から変調信号(AC電圧信号)振幅の計算とロックインアンプの設定を自動的に
行います。

調整原理図(F-Vカーブの測定結果と,AC電圧信号の関係)

1-148 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● SKPM自動調整設定ダイアログ





SKPM自動調整設定ダイアログ

① F-Vカーブ測定信号
F-Vカーブ測定における測定信号を設定します。
AC-AFMモードでは,選択できる信号は原子間力信号だけですが,NC-AFMモー
ドでは周波数信号と原子間力信号のいずれかを選択できます。この設定は,SKPM設
定ダイアログの「ロックインアンプ信号」と連動しています。
② スイープオフセット
F-Vカーブ測定時のバイアス電圧オフセット値を設定します。
初回の自動調整においては0Vに設定されていますが,2回目以降自動調整を実行
する場合は,前回の自動調整時におけるF-Vカーブ測定で測定された測定信号が
最小になるバイアス電圧値(調整原理図におけるVmin)が設定されています。
③ リファレンスオフセット
F-Vカーブ測定において,プローブの試料表面への衝突を防止するためにプローブを
試料から離すために設定するSPMフィードバックに対するオフセットを設定します。
自動調整シーケンス開始時には,SPMフィードバックリファレンス値が現在の値からここ
に設定された値だけ減算された値に変更されます。
また測定モードがSKPMに設定されている間は,SKPM設定ダイアログに於いて「AC
電圧印加」をOFFにしたときも同じ動作が行われます。ただし,OFF時にスキャナが
「プローブ退避」状態になっていた場合はこの動作は行われません。
④ 信号オフセット
調整原理図におけるΔFの値を設定します。
この設定値からソフトウェアは調整原理図のVsを計算し,SKPM測定時のロックインア
ンプからの変調信号(AC電圧信号)の振幅を決定します。
⑤ 加振信号係数
ここでは,自動調整シーケンスによって求められたロックインアンプからの変調信号に対
する係数を設定します。最終的には,AC電圧信号の振幅がこの係数倍だけされた電
圧値がロックインアンプに設定されることになります。
なお,AC-AFMモードでの自動調整シーケンスでは,ここで設定される係数以外に0.
1倍する係数が設定されており,変調信号振幅は常に1/10の値に計算されます。

TM-57553FST4-1 1-149
1 測定操作

● SKPM自動調整シーケンスの実行手順
SKPM自動調整シーケンスは,以下の手順で実行されます。

1. SKPM設定ダイアログで,「自動調整」ボタンをクリックする。
2. SKPM自動調整設定ダイアログが表示されるので,パラメータを設定後,「開始」
ボタンをクリックし,自動調整シーケンスを開始する。
3. 自動調整シーケンス 1 : F-Vカーブ測定
a. バイアス電圧振り幅±1.0Vで,合計2回のF-Vカーブ測定
1回目のF-Vカーブ測定では,「スイープオフセット」の電圧値を中心としてF-Vカー
ブの測定信号が最小になるバイアス電圧(Vmin)を探し,2回目のF-Vカーブ測定で
は,Vminを中心として同じ振り幅で測定を行うことでF-Vカーブの測定結果が得ら
れます。
b. F-Vカーブ測定の判定
2回目のF-Vカーブ測定の結果を2次式近似し,近似式の相関関数が0.9以上にな
った場合は測定結果確認ダイアログが表示されます。

F-Vカーブ測定結果確認ダイアログ

近似式の相関係数とは,近似式の妥当性を評価するための数値であり,1.0に近
いほど近似の妥当性が高くなります。
判定の結果,相関係数が0.9を超えなかった場合,ソフトウェアはバイアス電圧振
り幅を1.0V増加させて再度F-Vカーブ測定を行い,測定結果を再評価します。
この処理は,相関係数が0.9を超えるか,バイアス電圧振り幅が±10.0Vを超える
まで繰り返されますが,バイアス電圧振り幅が±10.0Vを超えても相関係数が0.9
以上にならない場合,シーケンスは失敗となります。
c. シーケンス続行の判定
ここで,通常は[OK]をクリックしてシーケンスを続行します。
「電圧幅拡大」をクリックした場合には,バイアス電圧振り幅を1.0V拡大して,再度F-
Vカーブ測定と評価が行われます。
4. 自動調整シーケンス 2 : ロックインアンプの調整
a. バイアス電圧設定値を設定
測定結果確認ダイアログに「測定バイアス値」として表示されている値が,Vminに相
当する値です。ソフトウェアは,シーケンスの続行が選択されると,この値をバイアス電
圧値として設定します。
b. AC電圧信号を設定

1-150 TM-57553FST4-1
1 測定操作

ソフトウェアは「F-Vカーブの測定結果と,AC電圧信号の関係」図の ΔFとVsの関係
から変調信号振幅を計算し,ロックインアンプからの変調信号振幅として設定します。
この時,変調信号周波数は以下の様に設定されます。

変調信号周波数
カンチレバの共振周波数foに対して,fo < fo/3となる1kHz単位の周波数
AC-AFM
(例:fo = 64kHzの場合,変調信号周波数=21kHz)

NC-AFM 常に1kHzに設定

c. ロックインアンプの信号ロック状態設定
上記a. b.後に,ソフトウェアはロックインアンプの信号ロック状態(感度・位相)を設定し
ます。この設定は,ロックインアンプの時定数を遅く設定した状態で行うため,20秒程
度の時間を要します。

5. 自動調整シーケンス 3 : 自動調整結果の最終判定とシーケンスの終了
ロックインアンプの設定が終了した状態になったら,ソフトウェアはSKPMフィードバック
を開始し,最終確認としてバイアス電圧を+1V増加させます。この時CPD信号も正の
値で増加すれば調整成功です。確認後,バイアス電圧はVminの値に戻されます。

TM-57553FST4-1 1-151
1 測定操作

● SKPM自動調整シーケンスにおけるエラーメッセージと対処方法
自動調整シーケンス実行中に,ソフトウェアがエラーダイアログを表示する場合があります。
これらのエラーは,大まかに言って静電気力のカンチレバに及ぼす影響が小さい事が発生
原因となっています。
エラー発生時にはアプローチ状態やSPMフィードバックリファレンスを確認し,更に必要であ
ればカンチレバをより柔らかい物か,より静電気力の影響を受けやすい物に変更するなどし
てください。その後自動調整シーケンスを再度実行し,それでもエラーが表示される場合は,
手動調整に切り替えてください。
① 「2次近似項が負になったため近似計算ができません。」
正しいF-Vカーブのグラフは,測定信号が原子間力の際には上に凸,周波数信号の
際には下に凸になります。測定結果がこれに反していた場合に表示されるエラーです。
② 「近似計算結果が規定範囲を超えました。」
F-Vカーブの2次式近似相関係数が0.9を超えたとしても,近似式を基にした調整値
計算結果がSPMコントローラの設定可能範囲を超える場合に表示されるエラーです。
このエラーの発生条件には以下の2つがあります。
<条件1>Vminの値が± 10Vを超える
カンチレバをより柔らかい物か,より静電気力の影響を受けやすい物(導電性コー
ティングされたカンチレバ)等に変更する。
<条件2>ΔFが大きく設定されているため,Vsが10Vを超える
<条件1>と同じ対応を行うか,「信号オフセット」をより小さく設定する。
③ 「ロックインアンプの調整に失敗しました」
ソフトウェアはロックインアンプのロック状態調整(調整手順4-c)時に位相調整を2回
行いますが,位相調整の結果が安定しない(2回の調整結果の差が5 ° 以上ある)場合
に表示されるエラーです。
④ 「CPD信号の変化が不正です」
自動調整結果の最終判定(調整手順5)時に,CPD信号が規定と異なる変化をした
場合(もしくは変化しなかった場合)に表示されるエラーです。

1-152 TM-57553FST4-1
1 測定操作

■ 表面電位検出の手動設定
1. 以下の表に従って,SKPM設定ダイアログの各値を設定する。
項目 設定値

SKPMフィードバック ON チェックしない
AC電圧印加 ON
AC電圧印加先 通常はバイアス電圧印加先と同じに設定
ロックインアンプ信号 SPMモードによって選択
フィルタ 3
ゲイン 3
オフセット 中央

SKPM設定ダイアログ

2. 状態表示ダイアログからモニタ出力信号をを[バイアス電圧]に設定し,オシロス
コープ(オプション)のCH2をモニタする。
次のようなロックインアンプで設定したバイアス変調波形が観察されます。

1.4V

25μS

3. [オフセット]を調整して,バイアス電圧のDC成分が0Vになるようにする。
バイアス電圧の波形が0Vを中心に振れるようにする。

TM-57553FST4-1 1-153
1 測定操作

4. プローブ待避を解除し,カンチレバをアプローチ状態にする。
Zスキャナインジケータで,Zスキャナが中央付近にあることを確認してください。
もし,Zの電圧が極端に±方向にある場合は,1.5.5項「画像観察時の注意点」の
「Z位置の再調整」を参照して修正を行ってください。
5. メインコントロールダイアログの[ループゲイン]を[1]または[2]に設定する。
6. SKPM設定ダイアログの「オフセット」を[+]側にした状態で,ロックインアンプ設
定で自動位相調整を行う。
自動位相調整の良否の判断は,ロックインアンプのリファレンス位相を,ロックイン
アンプ設定ダイアログの[+90]ボタンを使用して90°ごとに回すと,ロックインアン
プの信号表示が0→マイナス表示→0→プラス表示となれば正常です(プラス表
示で止める)。もし,+90°,+270°で0にならない場合は,もう一度自動位相調整を
行ってください。
7. SKPM設定ダイアログの「オフセット」でバイアス電圧をプラス側にスライドさせた
とき,ロックインアンプの信号表示がプラス方向に変化することを確認する。
オフセット電圧をプラス側にして自動位相調整を行うと,この極性となります。逆の
場合はリファレンス位相を180°回してください。
8. プローブ待避を行って試料からプローブを離し,SKPM設定ウィンドウの[SKPM
フィードバック]をONに設定し,ロックインアンプ設定ダイアログの[時間定数]を
最小値に設定する。
ロックインアンプからの出力が振り切れた場合(Model 5110ではOVLD(オーバ
ーロード)のLEDが点灯します)は,「入力感度」を小さくしてください。
9. プローブ待避を解除し,再度カンチレバをアプローチ状態にする。
このときω成分(1倍周期)をゼロにするフィードバックが働きます。
ロックインアンプからの出力が振り切れた場合は,ロックインアンプ設定ダイアログ
の「入力感度」を大きくしてください。
10. 状態表示ダイアログから「モニタ出力信号」を[LIA1(AUX1)]に設定し,オシロス
コープのCH2をモニタする。電位分解能に応じてSKPM設定の[ゲイン]および
[フィルタ]を再設定する。

1-154 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.4e 表面電位像の測定
1. 走査パラメータを以下のように設定する。
項目 設定値

クロック 3.3333ms以上
フィードバックフィルタ 0.1Hz

比較的フラットな試料の場合 2
フィードバックループゲイン
凹凸が大きい場合 8

2. 通常の画像測定と同じように測定を開始する。
表面形状像,表面電位像が画像表示ウィンドウに表示されます。
この段階では,画像保存を行わない繰り返し測定を選択しておいた方が便利で
す。
3. 良好な表面電位像が測定できるように,表面電位検出フィードバックをSKPM設
定ダイアログで調整する。
4. 良好な表面電位像が得られたら,測定結果を保存する。

1.10.4f 走査ケルビンプローブ測定の注意点
• 測定時に表面形状測定が安定しない(プローブが引っ掛かる)場合は,クロックを大きく
し,それでも安定しない場合はループゲインを上げてください。ループゲインを上げる場
合は,いったんプローブを待避してゲインを変更し,リファレンスをマイナス側に変化させた
後,プローブ待避を解除してリファレンスをプラス側に変化させ,ゆっくりアプローチしてく
ださい。
• バイアス電圧の変調周波数が高い方が表面電位像の分解能は上がりますが,変調周
波数はカンチレバの固有振動数の1/2を超えないように設定します。
• 取り込んだ表面電位像は,そのまま表面電位を示します(表面電位像のプロファイルを
取ったときの縦軸の値)。
• ロックインアンプを装備しているにもかかわらず,ケルビンプローブモードの選択が行えな
い場合は,機器設定を確認してください。
• ロックインアンプ接続時に通信エラーが表示された場合は,ロックインアンプの電源,PC
とロックインアンプ間のケーブル接続,ロックインアンプ本体のRS-232C通信設定を確
認してください。

詳細は1.3.10項「ロックインアンプ」を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-155
1 測定操作

1.10.5 静電容量力測定
静電容量力測定(SCFM : Scanning Capacitance Force Microscopy)は,コンタクト
AFM測定時にバイアス電圧に対して周波数fの変調信号を加え,原子間力信号に含まれ
る振動成分を検出して画像化する測定方法です。静電容量力は,原子間力信号に含ま
れる振動成分(周波数f)の高調波(3f)成分として現れてきます。この3f成分をロックインア
ンプによって検出し,静電容量力像として画像化します。静電容量力測定では周波数ωの
変調信号を基準にして3f成分を検出するため,高調波成分検出の可能なModel 7265ロ
ックインアンプを必要とします。また,ロックインアンプがSPMコントローラに接続されている場
合でも,ソフトウェア上から機器設定を行わない限り,静電容量力測定は実行できません。
旧 タイプのロックインアンプModel 5110は3f成 分 の検 出 に対 応 していないため,
Model 5110ロックインアンプを使用して静電容量力測定を行うことはできません
静電容量力測定は簡易操作モードでのみ測定が可能になっています。詳細操作モー
ドからは測定が行えませんので注意してください。

● 静電容量力測定の要約
静電容量力測定とは,以下のような条件で行う測定です。
• コンタクトAFMモードで測定を行う。
• 導電性カンチレバを用いて測定を行う。
• 表面形状像・静電容量力像の同時測定を行う。
• 表面形状測定時に,バイアス電圧に対して変調信号を加える。
• 静電容量力像とは,ロックインアンプを用いて変調信号の周波数fに対する高調波(3f)
成分の検出を行った結果のcos成分信号 LIA1(AUX1)信号像のことである。

● 静電容量力測定のためのカンチレバの準備
静電容量力測定ではカンチレバ接触共振周波数の3fの成分を検出するため,3ω周波数
が250kHzを超えないように,1次の共振周波数が80kHz以下のものを選択する必要があり
ます。
推奨カンチレバ
Nanosensor社製CONT PtIr5 (共振周波数13kHz,バネ定数0.2N/m)

● 静電容量力測定のための試料準備
表面電位像を正しく観察するためには,試料と試料ホルダの導通をしっかりと取る事が重
要になります。
JSPM-5200の場合は試料を試料台の上に置いただけでは,試料と試料台の間の導
通を取ることはできません。導電性ペーストなどで試料台に貼り付けることをおすすめし
ます。

● 静電容量力測定の確認事項
静電容量力測定は,表面形状像が良好に観察できる状態になっていることが前提ですの
で,「1.5 表面形状像の測定」を参照のうえ,表面形状像が良好に観察できることを確認し
ておきます。確認後は,プローブを待避状態にしておきます。

1-156 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.5a 測定準備
オプション測定モードを以下の手順で切り替えます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
オプション測定モードが静電容量力測定に切り替わります。静電容量力測定に切り替
わると,コントロール2ダイアログが静電容量力測定用ダイアログに変更されます。
また,2枚の画像表示ウィンドウが表示されます。画像サイズは256×256です。
2. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「ロックインアンプ設定」ダイアログ,もしくは「オプション機器設定」ダイアログが表示さ
れます。

静電容量力測定用コントロール2ダイアログとロックインアンプ設定ダイアログ

以上で測定準備は終了です。

測定準備が終了した状態

TM-57553FST4-1 1-157
1 測定操作

1.10.5b ロックインアンプの初期設定
静電容量力信号を検出・分離できるように,ロックインアンプを設定します。
静電容量力測定時のバイアス電圧変調信号も,ロックインアンプから出力します。

ロックインアンプ設定ダイアログ

1. 次のようにパラメータを設定する。
検出設定 変調信号設定
入力感度 50mV 変調周波数 20.000
時定数 5ms 変調出力 5.000
リファレンス位相 0.000 変調信号掃引設定
リファレンス周波数 3F 1Fを変調周波数 チェック
へセット
出力切換 Acos・Asin 開始周波数 60kHz
終了周波数 80kHz
掃引時間 35秒

2. プローブ待避を解除状態にする。
3. 変調信号掃引の開始をクリックする。
掃引が開始され,自動的にピークがサーチされて発振周波数がセットされます。
ピークの位置が逆に表示される場合は,[+90]ボタンを押して再度掃引を行います。
4. ロックインアンプ設定ウィンドウの[位相自動設定]をクリックする。
ロックインアンプが自動的に「リファレンス位相」を調整します。

以上でロックインアンプの初期設定は終了です。

1-158 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.10.5c 静電容量力像の測定
ロックインアンプの設定が終了したら,測定を開始します。
1. 通常の画像測定と同じように測定を開始する。
表面形状像,静電容量力像が画像表示ウィンドウに表示されます。
この段階では,画像保存を行わない繰り返し測定を選択しておいた方が便利で
す。
2. ロックインアンプからの信号出力が飽和しない範囲で,ロックインアンプの入力
感度を上げる(50mV→100nVの方向)。
3. バイアス電圧値を調整して,良好な静電容量力像が測定できるようにする。
4. 良好な静電容量力像が得られたら,測定結果を保存する。

1.10.5d 静電容量力測定の注意点
• 静電容量力像(cos成分像)の白くなる部分が,キャパシタンスの大きい領域となります。
• ロックインアンプを装備しているにもかかわらず,静電容量力測定モードの選択が行えな
い場合は,機器設定を確認してください。
• ロックインアンプ接続時に通信エラーが表示された場合は,ロックインアンプの電源,PC
とロックインアンプ間のケーブル接続,ロックインアンプ本体のRS-232C通信設定を確
認してください。

詳細は,1.3.10項「ロックインアンプ」を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-159
1 測定操作

1.11 マニピュレーションモード
WinSPMシステムには,プローブ位置を任意に制御しての試料表面への加工や,画像走
査とは違ったプローブ走査によるスペクトル測定を行うマニピュレーションモードが備わって
います。ここでは,マニピュレーションモードについて説明します。

1.11.1 マニピュレーションモードの起動
マニピュレーションモードを起動するには,アイコンドックの[ ]をクリックします。
ただし,マニピュレーションモードを起動するには以下の条件を満たす必要があります。

1.操作の元画像となる測定画像が画像表示ウィンドウに表示されていること。
2.プローブ退避が解除されていること。
3.走査回転角度が0°に設定されていること。

上記条件を満たしていない場合,[ ]がクリックできない状態になり,クリックできてもエラ
ーメッセージが表示され,マニピュレーションモードが起動しません。
マニピュレーションモードが起動すると,「マニピュレーションモード選択」ダイアログが表示さ
れますので,実行するマニピュレーションモードを選択します。

マニピュレーションモード選択ダイアログ

[OK]をクリックすると,選択したマニピュレーションモード専用操作画面に切り替わり,マニ
ピュレーションモードが待機状態になります。以後はマニピュレーションモードごとに,モードの
内容と操作方法を説明します。

1-160 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.2 表面加工(ベクトル)モード
表面加工(ベクトル)モードは,プローブの走査経路を始点-終点の線分で指定し,これらの
連結による軌道をプローブが移動して表面加工を行うモードです。

表面加工(ベクトル)モードの待機画面

● 表面加工(ベクトル)モードの要約
表面加工(ベクトル)モードは,以下のような条件で行うマニピュレーション操作です。

• プローブ走査の移動経路は,複数の直線ベクトルの集合として決定される。
• プローブ走 査 経 路 の加 工 前 の始 点 と加 工 後 の終 点 は走 査 原 点 (画 像 の左 上 :座 標
(0,0))となる。
• 追加する走査ベクトルは,画像上で任意の座標点を定義することによって,1つ前のベクト
ルの終点とを結ぶ直線ベクトルとして定義される。
• 走査ベクトルは,元画像の画像サイズによらず常に1024×1024の平面座標上で定義す
る。
• 表面加工条件は,追加した走査ベクトル毎に独立して設定できる。

● 表面加工(ベクトル)モードの準備
表面加工手法には,大別すると導電性試料と導電性プローブを用いた陽極酸化や電気
信号の印加による表面組成改質などの電気的手法と,プローブ自体による機械的加工
(プローブによる試料表面の切削)の2つに分けられます。
目的や試料表面の特性に応じて,表面加工法と使用するプローブを選択し,準備してくだ
さい。

TM-57553FST4-1 1-161
1 測定操作

1.11.2a 表面加工(ベクトル)ダイアログ
表面加工(ベクトル)モードは,以下のダイアログから実行します。ここでは,ダイアログ内のコ
ントロール要素について説明します

表面加工(ベクトル)ダイアログ

① 一般操作
• 読込み/保存
ベクターリソグラフ設定ファイル(*.vec)を,ディスクから読み書きします。
設定ファイルには,定義したすべての走査ベクトルとベクトルごとの加工条件が,
テキスト形式で保存されていますので,このファイル自体をテキストエディタで編
集することもできます。また逆に,書式を合わせて製作したベクターリソグラフ設定
ファイルを設定ファイルとして,読み込むこともできます。
• 終了
マニピュレーションモードを終了します。表面加工終了後に,加工結果確認のた
めに画像測定を行う場合は,いったんマニピュレーションモードを終了してください。
マニピュレーションモードを終了した場合でも,測定ソフトウェア自体を終了しない
限り,設定されているベクトル定義は保存されています。
• 開始
表面加工(ベクトル走査)を開始します。

1-162 TM-57553FST4-1
1 測定操作

② ベクトル設定操作
• 追加
新たに直線ベクトルを追加します。新規ベクトルの定義は,ダイアログに表示され
ている元画像上で,1つ前の走査ベクトルの終点を始点とし,新規ベクトルの終点
を指定することで定義します。
• 削除
現在選択されている走査ベクトルを削除します。走査ベクトルを削除した場合,削
除した走査ベクトルの前後の走査ベクトルの終点と始点が結ばれます。一番最初
の走査ベクトル(走査原点を始点とする走査ベクトル)と一番最後の走査ベクトル
(走査原点を終点とする走査ベクトル)は,この操作では削除できません。
• 全削除
現在設定されているすべての走査ベクトル(一番最初と一番最後の走査ベクトル
も含む)を削除し,ベクトル定義を初期化します。
• 番号
現在選択されている走査ベクトルの番号を示しています。走査ベクトルの番号は,
走査経路順により自動的に割り振られます。プルダウンメニューから番号を選択
するか,コントロール脇の上下スクロールボタンで,選択する走査ベクトルを変更で
きます。
現在選択されている走査ベクトルの終点には,矢印マークが表示されています。
• 表面加工
現在選択されている走査ベクトルの,表面加工の適用・不適用を設定します。
チェックされていると,その走査ベクトルは赤線で表示され,画像測定とは異なっ
たフィードバック条件を設定(表面加工条件を設定)できます。
チェックされていない場合,その走査ベクトルは青線で表示され,画像測定と同じ
フィードバック条件でZフィードバックが行われます。
• Xs・Ys―Xe・Ye
現在選択されている走査ベクトルの始点座標(Xs, Ys)と終点座標(Xe, Ye)を
表示しています。テキストボックスの数値を変更して,走査ベクトルを変更すること
もできます。
• クロック
走査ベクトル上をプローブが移動する際に,走査点移動後の待ち時間を設定し
ます。走査ベクトル上の次の走査点に移動後,ソフトウェアは「クロック」に設定され
ている時間だけZフィードバック安定のために待機し,後述する「適用時間」に設
定されている時間だけ,フィードバック条件を表面加工条件に切り替えます。
クロックに[0.00us]を指定すると,走査ベクトルの始点と終点を一度に移動しま
すが,表面加工条件は設定できなくなります。
• プリアンプゲイン[V/nA]
電流検出感度を決定する電流アンプ(プリアンプ)のゲインを設定します。STMモ
ードで,大きなトンネル電流を流す必要のある表面加工を行う際には,[0.10]以
下の値に設定します。

TM-57553FST4-1 1-163
1 測定操作

• リファレンス
現在選択されている走査ベクトルでの,フィードバックリファレンス値を設定します。
コンタクトAFMモードでプローブによる機械加工を行う場合には,画像測定の際
のリファレンス値よりもプローブが試料表面に強く押しつけられる様に設定します。
電気的加工を行う場合は,電気信号印加によるフィードバックの乱れなどを考慮
して,リファレンス値を設定しますが,初めは画像測定の際と同じリファレンス値を
設定しておきます。
• バイアス電圧[V]
現在選択されている走査ベクトルでの,バイアス電圧値を設定します。
電気的加工を行う場合には,加工条件に合わせてバイアス電圧値を設定します。
• 適用時間[ms]
現在選択されている走査ベクトルで,線分内の各走査点における表面加工条件
の適用時間を設定します。最大設定可能時間は10秒で,最小設定可能時間は1
μ秒です。
「適用時間」は「クロック」よりも長くなってもかまいません。
• フィードバック ON/OFF
現在選択されている走査ベクトル上を移動する際に,Zフィードバックを動作させる
状態にするか,動作させない状態にするかを設定します。ONに設定しておくと,走
査ベクトル上を移動中にもZフィードバックが働くため,プローブと試料表面の衝突
を防ぐことができます。プローブ保護のため,通常フィードバックは動作させた状態
で表面加工を行います。
• X・Y・Z・バイアス外部信号 ON/OFF
現在選択されている走査ベクトル上を移動する際に,X・Y・Zスキャナおよびバイ
アス電圧に対して外部信号を重畳するかどうかの設定を行います。主に外部信
号の重畳によって表面加工を行う場合に使用します。
③ ベクトル情報
• 走査距離
現在選択されている走査ベクトルの,直線移動距離を表示しています。
• 走査時間
現在選択されている走査ベクトルの,走査点数(走査距離)・クロック・適用時間
によって決定される走査時間を表示しています。
• 走査速度
現在選択されている走査ベクトルの,走査速度を表示しています。

1-164 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.2b 走査ベクトルの定義手順

● 初期状態(走査ベクトルがまったく定義されていない状態)からの定義
以下の手順で,走査ベクトルの定義を行います。

1. [追加]ボタンをクリックする。
マウスカーソルは,元画像上に移動して十字に形状が変わり,カーソル位置がベクトル
の終点に移動します。
2. 元画像上で,走査ベクトルの終点を設定する。
元画像上の任意の点でマウスの左ボタンをクリックすることで,終点を設定できます。

以上の定義手順で,プローブを走査原点から元画像上の任意の位置に移動させ,かつ走
査原点へ戻す走査ベクトルが定義できます。
「番号」プルダウンメニューに「1」と「2」が追加されていることを確認し,番号を変更す
ると,走査ベクトルの向きを表す矢印の向きが切り替わることを確認してください。
この2本の走査ベクトルは,プローブ走査の開始・終了走査を行う基本ベクトルです。
標準状態では[表面加工]チェックボックスはチェックされず,青線でベクトルが表示さ
れます。
基本ベクトルにおいても表面加工を行いたい場合は,[表面加工]をチェックして表面
加工条件を設定してください。

基本ベクトルの定義終了状態

TM-57553FST4-1 1-165
1 測定操作

続いて表面加工のための走査ベクトルを定義します。

3. 再度[追加]ボタンをクリックして,マウスカーソルを元画像上に移動させる。
[追加]ボタンが反転表示の場合には,[番号]を切り替えて連結するベクトルの終
点に矢印が表示されるようにしてください。
4. 元画像上で,走査ベクトルの終点を設定する。
5. 走査ベクトルを定義したら,その走査ベクトルでの表面加工条件を設定する。
以上で2つの基本ベクトルの間に走査ベクトルが新たに追加されます。このとき新規ベクトル
の番号は「2」になり,終了ベクトルの番号は「3」に更新されます。

新規に走査ベクトルを追加した状態

さらに走査ベクトルを追加する場合は,手順3~5を繰り返します。このとき,表面加工条件
は現在の走査ベクトルでの条件が自動的に設定されます。

● すでに定義されているベクターリソグラフ設定に,走査ベクトルを追加する場合
ディスクからベクターリソグラフ設定ファイルを読み込み,その後走査ベクトルを追加する場
合は以下の手順で行います。

1. [番号]で,新規走査ベクトルを追加する順番を選択する。
選択された走査ベクトルが矢印表示されます。
2. [追加]ボタンをクリックして,マウスカーソルを元画像上に移動させる。
新規走査ベクトルは,「番号」で選択した走査ベクトルの次に追加されます。
3. 元画像上で,走査ベクトルの終点を設定する。
4. 走査ベクトルを定義したら,その走査ベクトルでの表面加工条件を設定する。
以上で走査ベクトルが指定した番号位置に追加されます。

1-166 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● すでに定義されているベクターリソグラフ設定から,走査ベクトルを削除する場合
ディスクからベクターリソグラフ設定ファイルを読み込んだ後で,走査ベクトルを削除する場
合は以下の手順で行います。

1. [番号]で,削除する走査ベクトルを選択する。
選択された走査ベクトルが矢印表示されます。
2. [削除]ボタンをクリックする。
選択した走査ベクトルが削除されます。

すべての走査ベクトルを削除する場合は[全削除]をクリックしてください。

● すでに定義されている走査ベクトルの表面加工条件を変更する場合
すでに定義した後の走査ベクトルの表面加工条件を変更する場合は,以下の手順で行っ
てください。

1. [番号]で,新規走査ベクトルを追加する順番を選択する。
選択された走査ベクトルが矢印表示されます。
2. この状態で表面加工条件を変更する。
選択した走査ベクトルの表面加工条件が変更されます。

1.11.2c 表面加工の開始
すべての走査ベクトルと表面加工条件の定義が終了したら,[開始]ボタンをクリックするこ
とで表面加工が開始されます。
表面加工中は,定義した走査ベクトル上を,緑色の線がプローブの移動に合わせて,リアル
タイムで移動していきます。すべての走査ベクトル上を緑線が移動し終わったら,表面加工
が終了します。

1.11.2d 表面加工後の像観察
表面加工が終了したら,画像観察を行って加工結果を確認してください。
表面加工(ベクトル)ダイアログからは画像観察を行うことはできませんので,加工結果
を確認するには,[終了]ボタンをクリックしてマニピュレーションモードを終了してくださ
い。

1.11.2e ベクトル定義座標平面と,元画像の走査幅
走査ベクトルは1024×1024の平面座標系で設定を行いますが,この平面座標系は実距離
情報を持っていません。実距離情報は,走査ベクトルを定義する元画像の走査幅によって
決定されます。例えば。元画像の走査幅が1μm四方であった場合,平面座標系の1辺の長
さは1μmとなります。これを利用すると,走査ベクトルをベクターリソグラフ設定ファイルに保
存し,様々な走査幅の元画像上で同一の設定ファイルを用いて表面加工を行うことで,同
じ図形を元画像の走査幅に対応した大きさで描画することができます。

TM-57553FST4-1 1-167
1 測定操作

1.11.3 表面加工(トレース)モード
表面加工(トレース)モードは,専用ダイアログ上に表示される元画像上でプローブの位置
をリアルタイムで指定し,任意の場所で表面加工を行う表面加工モードです。

表面加工(トレース)モードの待機画面

● 表面加工(トレース)モードの要約
表面加工(トレース)モードは,以下のような条件で行うマニピュレーション操作です。

• プローブの位置は,マウス操作によりリアルタイムで指定する。
• マウス操作により,任意の一点で表面加工を行える。また,プローブを動かしながら表面
加工を行うことで,試料表面上に自由図形を描画することができる。
• 表面加工条件には2条件を設定でき,マウス操作によって条件を選択できる。

● 表面加工(トレース)モードの準備
表面加工手法には,大別すると導電性試料と導電性プローブを用いた陽極酸化や電気
信号の印加による表面組成改質などの電気的手法と,プローブ自体による機械的加工
(プローブによる試料表面の切削)の2つに分けられます。
目的や試料表面の特性に応じて,表面加工法と使用するプローブを選択し,準備してくだ
さい。

1-168 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.3a 表面加工(トレース)ダイアログ
表面加工(トレース)モードは,以下のダイアログから実行します。ここでは,ダイアログ内のコ
ントロール要素について説明します

表面加工(トレース)ダイアログ

① 一般操作
• 読込み/保存
トレースリソグラフ設定ファイル(*.trc)を,ディスクから読み書きします。設定ファイ
ルには,2つの表面加工条件がバイナリ形式で保存されますが,軌道は保存され
ません。
• 終了
マニピュレーションモードを終了します。表面加工終了後に,加工結果確認のた
めに画像測定を行う場合は,いったんマニピュレーションモードを終了してください。
マニピュレーションモードを終了した場合でも,測定ソフトウェア自体を終了しない
限り,設定されている表面加工条件設定は保存されています。
• 開始
表面加工(トレース走査)を開始します。
• クリア
元画像上に残っている,それまでの走査経路表示をクリアします。

TM-57553FST4-1 1-169
1 測定操作

② 加工条件1および加工条件2
• プリアンプゲイン[V/nA]
電流検出感度を決定する電流アンプ(プリアンプ)のゲインを設定します。STMモ
ードで,大きなトンネル電流を流す必要のある表面加工を行う際には,[0.10]以
下の値に設定します。
• リファレンス
加工条件適用時のフィードバックリファレンス値を設定します。
コンタクトAFMモードでプローブによる機械加工を行う場合には,画像測定の際
のリファレンス値よりもプローブが試料表面に強く押しつけられる様に設定します。
電気的加工を行う場合は,電気信号印加によるフィードバックの乱れなどを考慮
してリファレンス値を設定しますが,まずは画像測定の際と同じリファレンス値を設
定しておきます。
• バイアス電圧[V]
加工条件適用時のバイアス電圧値を設定します。
電気的加工を行う場合には,加工条件に合わせてバイアス電圧値を設定します。
陽極酸化を行う際には,バイス電圧がプローブに印加されているか試料に印
加されているかによる設定電圧の極性に注意してください。
• 適用時間[ms]
加工条件適用時の表面加工条件の適用時間を設定します。最大設定可能時
間は10秒,最小設定可能時間は1μ秒です。
• フィードバック ON/OFF
加工条件適用時に,Zフィードバックを動作させる状態にするか,動作させない状
態にするかを設定します。ONに設定しておくと,加工条件適用時にもZフィードバ
ックが働くため,プローブと試料表面の衝突を防ぐことができます。通常は表面加
工後にも安定した画像観察を行うために,フィードバックは動作させた状態で表
面加工を行います。
• X・Y・Z・バイアス外部信号 ON/OFF
加工条件適用時に,X・Y・Zスキャナおよびバイアス電圧に対して外部信号を重
畳するかどうかの設定を行います。外部信号の重畳によって表面加工を行う場合
に使用します。
• プローブの現在位置表示
プローブの現在位置は,プローブマーカ(×印)で元画像上に表示されています。
このプローブマーカは,操作状態によって色が変わります。

1.11.3b 2つの表面加工条件の設定
表面加工を開始する前に,2つの表面加工条件を設定しておいてください。
これらの加 工 条 件 は,トレース走 査 中 にマウスの左 ボタンをクリックするか,キーボードの
Shiftキーを押しながら左ボタンをクリックして切り替えることができます。

1-170 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.3c 表面加工操作
以下の手順で表面加工を行います。

1. 表面加工条件設定後,[開始]ボタンをクリックする。
走査原点に位置していたプローブが,元画像の中央までゆっくり移動します。
また,プローブマーカが緑色で表示されます。

プローブが元画像の中央に移動してきた状態

2. 緑色のプローブマーカの近くにマウスカーソルを移動する。
マウスカーソルが十字矢印の間は,マウスカーソルの動きにプローブの動きが追
従しません。
マウスカーソルがプローブマーカの近くに来ると,マウスカーソルが通常の十字に
変わり,マウスカーソルの動きにプローブの動きが追従するようになります(トレース
状態)。

TM-57553FST4-1 1-171
1 測定操作

3. トレース状態になったら,表面加工を行いたい位置までゆっくりとプローブを移動
し,加工条件1もしくは加工条件2を適用する。
a. 加工条件1を適用するにはマウスの左ボタンをクリックする。
b. 加工条件2を適用するには,キーボードのShiftキーを押しながら,マウスの左ボタ
ンをクリックする。
加工条件1を適用中は,プローブマーカの色が赤紫色に変わります。また表面加
工を行った位置には,赤紫色の印が描画されます。
加工条件2を適用中は,プローブマーカの色が黄に変わります。また表面加工を
行った位置には,黄色の印が描画されます。
4. プローブを移動しながら連続して表面加工を行う場合はドラッグ操作を行う。
ドラッグ操作を行うと,連続的に表面加工を行えますので,元画像上に自由な図形を
描画することができます。
5. トレース状態を終了するにはマウスの右ボタンをクリックする。
加工終了後,マウスの右ボタンをクリックすることでトレース状態を終了します。
このとき,プローブはトレース状態を終了した位置に留まります。また,トレース状態が終
了すると,プローブポインタは赤色で表示されます。

トレース加工を終了した状態

6. 続けて表面加工を行う場合は,再び[開始]ボタンをクリックする。
プローブマーカが緑色表示になりますので,手順2からの操作を繰り返してください。
表面加工の結果表示が不要な場合は,表面加工開始前に[クリア]ボタンをクリックし
て結果表示を消してください。

1-172 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.3d 表面加工時の注意点
• いったんトレース状態になると,マウスの右ボタンをクリックして,トレース操作を解除するま
での間,プローブ位置はマウスカーソルの位置変化をダイレクトに追従します。トレース状
態になったら,急激にマウスを動かすなどの操作は行わないでください。トレース操作以外
のマウス操作は行わないでください。
• 加工条件の[適用時間]に長い時間(数秒)を設定すると,加工条件適用時間中はマウ
スポインタの動きを追従しないため,ドラッグ操作に対するトレース動作のレスポンスが非
常に悪くなります。ドラッグ操作を行う場合は,あまり長い適用時間を設定しないでくださ
い。

1.11.3e 表面加工後の像観察
表面加工が終了したら,画像観察を行って加工結果を確認してください。
表面加工(トレース)ダイアログからは画像観察を行うことはできませんので,加工結果を確
認するには,[終了]ボタンをクリックしてマニピュレーションモードを終了してください。
[終了]ボタンをクリックすると,ダイアログを閉じる前にソフトウェアはプローブを走査原点に
ゆっくりと戻します。プローブが走査原点に戻ったらダイアログが閉じ,マニピュレーションモ
ードは完全に終了します。

TM-57553FST4-1 1-173
1 測定操作

1.11.4 表面加工(マッピング)モード
表面加工(マッピング)モードは,表面加工の元図となる512×512pixelのビットマップ画像
を,試料表面に転写描画する表面加工モードです。

表面加工(マッピング)モードの待機画面

● 表面加工(マッピング)モードの要約
表面加工(マッピング)モードは,以下のような条件で行うマニピュレーション操作です。

• 用意された512×512pixelのビットマップ画像にある図形を,元画像の走査領域内に転
写して描画します。その際,ビットマップ画像にある図形の階調変化を表面加工条件に
適用して,表面加工条件を変化させながら転写して描画します。
• 表面加工条件はビットマップ画像のグレースケール階調に即して256段階で変化させる
か,ビットマップ画像の階調を二値化することで,2段階で変化させる(加工条件のON/
OFFなど)かを選択できます。
• 表面加工は画像測定と同じ面内走査のフォワードスキャンで行い,バックワードスキャン
で表面形状像測定を行います。

● 表面加工(マッピング)モードの準備
表面加工手法には,大別すると導電性試料と導電性プローブを用いた陽極酸化や電気
信号の印加による表面組成改質などの電気的手法と,プローブ自体による機械的加工
(プローブによる試料表面の切削)の2つに分けられます。
目的や試料表面の特性に応じて,表面加工法と使用するプローブを選択し,準備してくだ
さい。

1-174 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.4a 表面加工(マッピング)ダイアログ
表面加工(マッピング)モードは,以下のダイアログから実行します。ここでは,ダイアログ内
のコントロール要素について説明します


表面加工(マッピング)ダイアログ

① 一般操作
• 読込み
マップリソグラフ設定ファイル(*.map)か,ビットマップ画像(*.bmp)を読み込
みます。マップリソグラフ設定ファイルには転写を行う図形のデータと,図形データ
の階調に対応する表面加工条件がバイナリ形式で記録されています。ビットマッ
プ画像は,Windowsで標準的に用いられる画像フォーマットですが,512×512pi
xelの画像でなければなりません。ただし,画像は白黒画像でもカラー画像でもか
まいません。
• 保存
現在の図形データと加工条件をマップリソグラフ設定ファイル(*.map)に保存し
ます。
• 終了
マニピュレーションモードを終了します。マニピュレーションモードを終了した場合
でも,測定ソフトウェア自体を終了しない限り,設定されている表面加工条件設定
は保存されています。
• 開始
表面加工(マッピング走査)を開始します。

TM-57553FST4-1 1-175
1 測定操作

② フィードバック条件設定
表面加工(マッピング)モードでは,画像測定と同じ面内走査のフォワードスキャンで表
面加工を行い,バックワードスキャンで表面形状像測定(加工結果の測定)を行います。
そのため,ダイアログ内に表面形状像測定のためのフィードバックパラメータ設定が存
在します。
• クロック
面内走査を行う際のクロックスピードを設定します。通常の表面形状像測定を同
じ値か,やや遅い速度を設定しておきます。
• リファレンス
表面形状像測定を行う際のフィードバックリファレンス値を設定します。通常の表
面形状像測定と同じ値を設定しておきます。
• バイアス電圧[V]
表面形状像測定を行う際のバイアス電圧値を設定します。通常の表面形状像
測定と同じ値を設定しておきます。
これらのパラメータは,マニピュレーションモード起動時に,現在の設定値が自動
的に設定されます。
これら以外のフィードバックパラメータは,通常の画像測定用コントロールに設定
されているのと同じ値が用いられます。

表面加工条件設定には,元図となるビットマップ画像をグレースケース画像として取り
扱う場合の設定,二値化画像として取り扱う場合の設定,さらに両方の場合で共通に
使用する加工条件の3つがあります。
③ 共通設定
• フィードバックホールド
表面加工条件適用時に,フィードバックをホールドする(フィードバック動作を停止
してZ位置を固定する)かどうかを設定します。通常はチェックしない状態で使用
します。
• 適用時間[ms]
加工条件適用時の表面加工条件の適用時間を設定します。最大設定可能時
間は10秒,最小設定可能時間は1μ秒です。
• プリアンプゲイン[V/nA]
電流検出感度を決定する電流アンプ(プリアンプ)のゲインを設定します。STM
モードで,大きなトンネル電流を流す必要のある表面加工を行う際には,[0.10]
以下の値に設定します。
• グレースケール/二値化
ビットマップ画像をグレースケース画像として取り扱うか,二値化画像として扱う
かの選択を行います。

1-176 TM-57553FST4-1
1 測定操作

④ グレースケール画像用設定
ビットマップ画像をグレースケール画像として取り扱う場合の,ビットマップ画像の階調
に即して256段階で変化する表面加工条件を設定します。
• リファレンス
加工条件適用時のフィードバックリファレンス値を,階調0の時の値と階調255の時
の値の2つを指定することで設定します。表面加工時には,この2つの間を256分割
した値を,ビットマップ画像の階調に適用します。
表面加工条件としてフィードバックリファレンス値を用いない(プローブによる試料
表面の機械加工を行わない)場合は,[変更しない]をチェックしておきます。
• バイアス電圧[V]
加工条件適用時のバイアス電圧値を,階調0の時の値と階調255の時の値の2つ
を指定することで設定します。表面加工時には,この2つの間を256分割した値を,
ビットマップ画像の階調に適用します。
表面加工条件としてバイアス電圧を用いない(電気的加工を行わない)場合は,
[変更しない]をチェックしておきます。
⑤ 二値化画像用設定
• しきい値
ビットマップ画像がグレースケール画像であった場合,画像の階調を2値化するた
めのしきい値を設定します。設定したしきい値で,画像が白と黒に2値化されます。
• リファレンス
加工条件適用時のフィードバックリファレンス値を,階調0の時(白)の値と階調25
5の時(黒)の値の2つを指定することで設定します。
表面加工条件としてフィードバックリファレンス値を用いない(プローブによる試料
表面の機械加工を行わない)場合は,[変更しない]をチェックしておきます。
• バイアス電圧[V]
加工条件適用時のバイアス電圧値を,階調0の時(白)の値と階調255の時(黒)
の値の2つを指定することで設定します。
表面加工条件としてバイアス電圧を用いない(電気的加工を行わない)場合は,
[変更しない]をチェックしておきます。
⑥ 表面加工条件の確認
ビットマップ画像表示領域の下部には,画像の階調を表示するグレースケールバーが
表示されており,階調0(黒)と階調255(白)の時の表面加工条件(リファレンス値とバ
イアス電圧値)が確認できます。なお,表面加工条件に使用しないように設定した要
素は表示されません。

TM-57553FST4-1 1-177
1 測定操作

1.11.4b 表面加工操作
以下の手順で表面加工を行います。

1. [読込み]ボタンをクリックして,ビットマップ画像かマップリソグラフ設定ファイル
を読み込む。
ビットマップ画像表示領域に,読み込んだ表面加工元図が表示されます。
ビットマップ画像を読み込んだ場合は,手順2に進みます。
マップリソグラフ設定ファイルを読み込んだ場合は,手順3に進みます。

表面加工の元図を読み込んだ状態

2. 表面加工条件を設定する。
• 元図をグレースケール画像として取り扱う場合は [グレースケール]ラジオボタンを
選択し,グレースケール画像用の表面加工条件を設定します。
• 元図を二値化画像画像として取り扱う場合は[二値化]ラジオボタンを選択し,二
値化画像用の表面加工条件を設定します。
3. 表面形状像測定のためのフィードバック条件を設定する。
通常はマニピュレーションモードが起動した時に設定される条件をそのまま使用しま
すが,表面加工条件を大きく変化させるような場合は,通常の画像測定よりも遅いク
ロックスピードを設定します。

1-178 TM-57553FST4-1
1 測定操作

4. 表面加工条件を確認する。
グレースケールバーで,加工条件を確認してください。

表面加工条件を設定し,加工準備が完了した状態

5. [開始ボタン]をクリックする。
表面加工が開始して,経過がビットマップ画像表示領域に表示されます。
全領域での表面加工が終了すると,画像表示ウィンドウに表面加工と同時に測定さ
れた表面形状像の測定結果が表示されます。

表面加工後の表面形状像

TM-57553FST4-1 1-179
1 測定操作

1.11.4c 表面加工の終了
表面加工作業が終了したら,[終了]ボタンをクリックしてマニピュレーションモードを終了し
てください。

1.11.4d 表面加工の元図と,元画像の走査幅
表面加工(マッピング)モードでは,表面加工の元図としてビットマップ画像を用いますが,
このビットマップ画像は実距離情報を持っていません。表面加工範囲の実距離情報は,表
面加工を行う前に測定した元画像(表面形状像)の走査幅によって決定されます。例えば
元画像の走査幅が1μm四方であった場合,平面座標系の1辺の長さは1μmとなります。
これを利用すると,様々な走査幅の元画像上で同一の元図データを用いて表面加工を行
うことで,同じ図形を元画像の走査幅に対応した大きさで描画することができます。

1.11.4e 表面加工時の注意点
• 表面加工(マッピング)モードでは,画像測定と同じ面内走査を行いながら表面形状測
定を行います。そのため,プローブの先端半径によって表面加工精度が顕著に変化しま
す。通常,表面加工(マッピング)モードは,μmオーダの走査範囲に対しての表面加工に
用います。nmオーダで表面加工を行うためには,プローブを工夫する必要があります。
• 表面加工(マッピング)モードでは,表面加工とほぼ同時に確認のための表面形状測定
を行っています。そのため,表面加工条件によっては表面形状測定時のフィードバック動
作が安定せず,良好な表面形状像を得られない場合があります。このような場合は,確
認のためにマニピュレーションモードを終了して,表面形状像測定を行ってください。

1-180 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.11.5 ライントレース測定モード
ライントレース測定モードは,これまで説明してきたような表面加工方法とは異なり,元画像
上で指定した一本の直線ベクトル上をプローブが移動する際の,二種類の測定信号の変
化を測定するマニピュレーションモードです。
試料表面上の微小構造物をプローブで破壊した時に生じるカンチレバのたわみから微少
構造物の力学的特性を計測したり,電気回路基板の配線上に流れている電流の電極から
の距離依存性を測定したりするなどの応用が考えられます。

ライントレース測定モードの待機画面

● ライントレース測定モードの要約
ライントレース測定モードは,以下のような条件で行うマニピュレーション操作です。

• 事前に測定された元画像上で一本の走査ベクトルを定義し,走査ベクトル上をプローブ
が移動する時の任意の信号変化を測定します。
• 測定信号には2種類の信号を選択できます。
• 走査ベクトルは,元画像の画像サイズによらず常に512×512の平面座標上で定義します。
• 測定終了後のスペクトルデータは,SPSスペクトルデータと同じように取り扱うことができ
ます。

● ライントレース測定モードの準備
ライントレース測定を行う信号と目的に合わせて,SPMモードと使用するプローブを選択し
てください。試料表面や微少構造物のの機械的特性を測定する時は,測定対象物によっ
てカンチレバの強度を選択してください。またAFMモードで電気特性を測定する場合は,
導電性カンチレバを用意し,試料の導通をしっかりと取ってください。

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1 測定操作

1.11.5a ライントレース測定ダイアログ
ライントレース測定モードは,以下のダイアログから実行します。ここでは,ダイアログ内のコン
トロール要素について説明します

ライントレース測定ダイアログ

① 一般操作
• 読込み/保存
ライントレース設定ファイル(*.lnt)の読み書きを行います。ライントレース設定ファ
イルには,走査ベクトルの定義と,測定条件がバイナリ形式で記録されています。
• 終了
マニピュレーションモードを終了します。マニピュレーションモードを終了した場合
でも,測定ソフトウェア自体を終了しない限り,設定されているライントレース測定
設定は保存されています。
• 走査開始
ライントレース測定を開始します。

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1 測定操作

② フィードバック条件設定
走査ベクトル上をプローブが移動する時の,フィードバック条件を設定します。
• リファレンス
表面形状像測定を行う際のフィードバックリファレンス値を設定します。通常の表
面形状像測定と同じ値を設定しておきます。
• バイアス電圧[V]
表面形状像測定を行う際のバイアス電圧値を設定します。通常の表面形状像
測定と同じ値を設定しておきますが,電気特性を測定する場合には,電気特性
測条件に設定します。
これらのパラメータは,マニピュレーションモード起動時に,現在の設定値が自動
的に設定されます。
これら以外のフィードバックパラメータは,通常の画像測定用コントロールに設定さ
れているのと同じ値が用いられます。
③ 走査設定
• クロック
面内走査を行う際のクロックスピードを設定します。通常の表面形状像測定を同
じか,やや遅い速度を設定しておきます。
• 走査距離
走査ベクトルの始点・終点間の直線距離を設定します。
走査ベクトルはマウスで距離および位置を指定することができ,走査距離を指定
し直すことができます。
• 走査点数
走査ベクトルを,ここで指定した点数分だけ等分割し,それぞれの走査点ごとに
プローブを移動し信号測定を行います。256・512・1024・2048点が設定できま
す。
• 往復走査 ON/OFF
ONにすると,走査ベクトルの始点→終点移動と終点→始点移動の両方の移動
時に信号測定を行います。このとき,それぞれの移動の時の走査点数は,「走査
点数」で設定した点数の半分が割り当てられます。
OFFの場合は,始点→終点移動時にだけ測定を行います。
• フィードバック ON/OFF
プローブ移動時に,フィードバックをホールドする(フィードバック動作を停止してZ
位置を固定する)かどうかを設定します。通常はONで使用します。
• カンチレバ加振 ON/OFF
AC-AFMやNC-AFMでだけ使用する設定です。通常はONで使用します。
ライントレース測定を行う際に,プローブ移動時にカンチレバ加振を切るかどうかを
指定します。OFFに設定した場合,「フィードバック」は自動的にOFFに設定され
ます。
④ 走査ベクトル
走査ベクトルの情報(走査時間・速度・経路・XY方向移動距離)が表示されます。

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1 測定操作

1.11.5b 測定操作
以下の手順で測定操作を行います。

1. 走査ベクトルを定義する。
走査ベクトルは元画像上に青線で表示されています。
走査ベクトルの始点付近(×印)にマウスカーソルを合わせてドラッグすると,走査ベクト
ル全体の位置を変更することができます。
また走査ベクトルの終点付近(矢印)にマウスカーソルを合わせてドラッグすると,走査
ベクトルの終点位置を変更することができます。このとき,マウスの左ボタンでドラッグす
ると,マウスポインタの位置に走査ベクトルの終点が来ます。右ボタンでドラッグすると,
走査ベクトルの方向はマウスポインタの位置に来ますが,走査距離は変更されません
(右ボタンドラッグ時には,赤色の補助線が表示されます)。

走査ベクトルを定義した状態

2. 走査設定を定義する。
ライントレース走査時のクロック・走査点数・測定信号等を設定してください。
「測定信号2」に[無し]を設定すると,ライントレース走査時には「測定信号1」だけが測
定されます。
ここまでの設定作業時には,プローブは走査原点に位置しています。

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1 測定操作

3. [走査開始]ボタンをクリックする。
ライントレース測定が実行されます。
• ライントレース走査が開始されると,まずプローブは走査原点から走査ベクトルの始
点までゆっくりと移動します。
• 始点に到達すると,プローブは設定された走査条件で終点まで移動し,各走査点
で信号測定を行います。この時,プローブの走査経路が赤紫色で表示されます。
• 終点まで走査すると,プローブは再び走査原点までゆっくりと移動します。
• プローブが走査原点に戻った時点でライントレース走査は終了します。

測定結果がスペクトル表示ウィンドウに表示されます。
測定結果が表示されると,データ保存処理が実行されます。
測定スペクトルデータは,SPSスペクトルデータと同様に元画像ファイルにパックし
て保存されます。このとき,元画像データの測定履歴には,走査ベクトルの位置が
表示されます。

ライントレース走査終了状態

1.11.5c ライントレース測定の終了
ライントレース測定が終了したら,[終了]ボタンをクリックしてマニピュレーションモードを終
了してください。

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1 測定操作

1.11.6 マニピュレーションモードの注意点
◇注意◇
表面加工にバイアス電圧を使用する場合,通常は±10Vの範囲でバイアス電圧を設定
しますが,高バイアス設定になっている場合は,±150V程度までのバイアス電圧を利用
できます。しかし,表面加工にあまり高い電圧を使用することは,プローブや試料表面の
余計な破壊を招く可能性がありますので,設定値は±20V程度に留めてください。

• マニピュレーションモードでは,通常の表面形状測定が良好に行える状態になっているか
どうかが,表面加工の良否の重要な要因になります。
マニピュレーションモード起動前に,必ず表面形状像測定の確認を行ってください。
• マニピュレーションモードはすべてのSPMモード上から起動することができますが,使用し
ているSPMモードと表面加工手法の選択によっては,マニピュレーション操作が行えない
場合があります。表面加工手法とSPMモードの関係を良く吟味し,プローブを適切に選
択した上でマニピュレーション操作を行ってください。
• 表面加工手法として陽極酸化を行う際には,バイアス電圧がプローブに印加されている
か試料に印加されているかによる設定するバイアス電圧値の極性に注意してください。

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1 測定操作

1.12 コントロールダイアログの詳細
1.12.1 メインコントロールとサブコントロール
• 簡易操作モードでは「コントロール1」ダイアログがメインコントロールダイアログ,「コントロ
ール2」もしくは「コントロール3」ダイアログがサブコントロールダイアログになります。
• 詳細操作モードでは,「SPM測定設定」ダイアログがメインコントロールダイアログになり,
サブコントロールダイアログはありません。
これまでに,測定操作における各種操作方法について説明しましたが,ここでは説明してこ
なかった事項やコントロールの詳細について説明します。

1.12.1a 走査パラメータコントロール群

● 「走査モード」コントロール
• 画像測定(128,256,512,1024)
それぞれの画素数で1入力画像測定を行います。画像表示ウィンドウには選択した画
素で画像が表示されますが,1024×1024画素の場合だけは,512×512画像に圧縮
表示されます。
• 2入力画像測定(512),2入力画像測定
512×512画素もしくはで256×256画素で2つの画像信号の同時取り込み・表示を行
います。
• 4入力画像測定
256×256画素で4つの画像信号の同時取り込み・表示を行います。
• SPS測定
各種SPSを測定します。実行するSPS測定は,SPS設定ダイアログの「SPSモード」の
設定に従います。
• SPSマッピング測定
SPS マッピング測定を行います。実行するSPS測定は,SPS設定ダイアログの「SPS
モード」の設定に従います。SPS Mapping走査モードときの画素数は128×128画素
になります。
• ライン測定(128,256,512,1024)
Y方向の走査を止めて,X方向だけに走査し画像として表示します。
このモードは,試料のステップ端等がゆらいでいるようなとき,動的にゆらぎを観察する
場合に有効です。測定を開始すると画面の上から下にラインスキャン結果が連続に表
示されます。結果として一枚の画像のように見えますが,表示されている画像は,同一
走査ライン上での走査結果を連続表示した画像になります。
走査するYの位置は,SPS測定位置を指定するのと同じようにプローブ位置設定機能
を使用して決定します。この位置で,X方向だけScanを行って像を取り込みます。

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1 測定操作

• 鏡像測定
画像表示ウィンドウ上に,行きと帰りの往復でデータが256×256画素で4分割表示さ
れます。左→右→左で画像が表示され,上から下へ走査された後に下から上へ走査
が行われます。

鏡像測定時の分割表示と画像走査の方向

鏡像測定時には,フォワードスキャンとバックワードスキャンでバイアス電圧値を変
えて測定を行うことできます。バックワードスキャン時のバイアス電圧値は,詳細設
定ダイアログの「バイアス電圧」タブウィンドウで設定します。

● 「測定モード」コントロール
詳細操作モードにのみ存在するコントロールで,オプション測定を行わない標準測定モード
と,各種オプション測定モードとの切り替えを行います。簡易操作モードでは,アイコンドック
上から測定モードの切り替えを行います。
詳細については,1.10節「オプション測定」を参照してください。

● 「STM/AFM」コントロール
「すべてのSPM測定モード」で測定時にのみ使用できるコントロールで,SPM測定のZフィー
ドバックモードをダイレクトに切り替えます。

◇注意◇
プローブを退避せずにフィードバックモードを切り替えた場合,プローブがクラッシュする
場合がありますので,必ず事前にプローブを退避させてください。またフィードバックモード
を切り替えた場合には,プローブの交換や再調整が必要になります。

● 「クロック」コントロール
走査速度に換算すると1画素あたりの測定所用時間を設定します。
5μs/point~200s/pointの間で設定できますが,通常は一部のクロックのみが指定で
きます。走査速度の変更は走査中にも行えます。
• クロックリストの変更
プルダウンメニューには,設定できるクロックスピードの一部しか表示されていません。
すべてのクロックスピードを表示するには,メニュー最下部にある[Long List]を選択
します。クロックリストを元に戻すには,すべてのクロックスピードが表示されている状態
で,メニュー最下部にある[Short List]を選択します。

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1 測定操作

• 走査速度と走査時間
選択したクロックでの探針と試料との相対速度と1画面を走査するのに必要な時間が,
コントロールダイアログ上もしくはアプリケーションウィンドウ下部のインフォメーションバ
ーに,「走査速度」「走査時間」として表示されます。

● 「走査幅」コントロール
走査範囲を設定します。設定の方法は次の2種類です。
1. マウスで[ ]をクリックし,プルダウンメニューから走査範囲を選択する。
プルダウンメニューには,選択できるいくつかの走査範囲が表示されます。
2. 入力ボックスにキーボードから数値を入力する。
キー入力された数値に一番近い走査範囲の値が設定されます。
装置で設定可能な値が優先的に選択されるため,入力値と設定値が同じにならない
場合があります。
最大走査範囲はスキャナのキャリブレーション値に基づいて計算されます。
キー入力時には,次の単位も併用して入力できます。
-9
nm: ナノメートル(10 m)
-6
μm: マイクロメートル(10 m)
例えば[3.000μm]と入力した場合は,3.0μmの走査範囲になります。数値のみ入力
した場合は,それまでに表示されていた単位が使用されます。

1.12.1b 走査領域コントロール群

● 「走査領域」コントロール

走査領域コントロールダイアログ

基本的な操作方法は,1.5.9項「走査範囲(観察視野)の変更方法」を参照してくださ
い。
ここでは,1.5.9項「走査範囲(観察視野)の変更方法」では説明できなかった,走査領
域コントロールウィンドウの詳細について説明します。

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1 測定操作

• オフセット量の設定
オフセット量の設定方法は次の3つの方法があります。
1. ドラッグして指定する。
マウスのカーソルを走査範囲内へ移動させると,カーソルが「+」に変わるので,ド
ラッグして移動させます
2. 入力ボックスにキーボードから直接入力する。
入力ボックスにマウスのカーソルを持っていき,直接キーボードからオフセット量
を入力します。
3. スクロールバーを使用する。
原子像を観察しているときなど,走査範囲が小さくてマウスでドラッグしにくい場合
は,スクロールバーを使用すると便利です。

最大走査範囲

Y offset

現在の走査範囲

X offset

スキャナはオフセット量の変化に合わせてリアルタイムで移動しますので,操作時はな
るべくゆっくりとオフセット量を変化させてください。
オフセット量を変化させた直後の走査では,スキャナのヒステリシスおよびクリープによ
って像が歪む場合があります。クリープ現象による歪みの場合は,緩和するまでに数分
かかることがあります。

● スキャン回転角度の設定
走査の回転角を「Scan Angle」にあるスクロールバーを動かすか,テキストボックスに
回転角度を入力することで,-180~180まで1度単位で指定できます。
現在の走査範囲の中心について回転しますので,変更時にはイメージオフセット座標
の変更などのスキャナ移動を伴う動作は行われません。ただし,スキャン回転角度変
更後に走査を開始した場合,それまでの移動方向とは異なる方向にスキャナが移動
しますので,走査開始後しばらくの間は,クリープの発生による歪みが画像に現れる場
合があります。
通常は0で使用します。
オフセットおよび回転適用後の走査範囲が最大走査範囲を超えている場合,正
しく操作が行われません。

1-190 TM-57553FST4-1
1 測定操作

● 「オフセットXY」,「拡大」,「ドラッグ」,「ズーム」コントロール
1.5.9項「走査範囲(観察視野)の変更方法」を参照してください。

1.12.1c 付帯機能切り替えコントロール群

● 「プリスキャンを適用」もしくは「プリスキャン」コントロール
1.5.項「プリスキャン」を参照してください。

● 「往復スキャンを適用」もしくは「往復スキャン」コントロール
1.5.7項「往復スキャン」を参照してください。

● 「マーカを表示」コントロール
チェックすると,画像表示ウィンドウ上に移動可能なマーカが表示されます。このマーカは,
複数画像同時測定を行っている場合に,各画像表示ウィンドウ上での同一座標を示して
います。マーカの位置は,マウスでドラッグすることにより移動可能です。

1.12.1d 測定の開始・終了コントロール群
基本的な操作方法は,1.5節「表面形状像の測定」を参照してください。
ここでは,1.5節「表面形状像の測定」では触れなかったコントロールについて説明しま
す。

● 「一時停止」コントロール
詳細操作モードにのみ存在するコントロールで,画像測定走査を一時停止します。
プローブは「一時停止」がクリックされたときの位置で停止します。走査を再開するには,
[連続走査]もしくは[走査・記録]ボタンを再度クリックします。走査が再開されると,プロー
ブが停止した位置からふたたび走査が再開されます。

● 「ノイズ測定」ボタン
詳細操作モードにのみ存在するコントロールで,ADコンバータに入力される測定信号電圧
を毎秒5,000回測定し,最小値,最大値,平均値を表示します。この機能は,ADコンバー
タの信号値モニタでもある状態表示ダイアログが表示されている時だけ利用可能です。
ノイズ測定中,プローブは現在位置に固定されています。

測定の手順は以下のとおりです。
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「状態表示」ダイアログが表示されます。
2. 「入力信号」の「信号1~4」で,ADコンバータへの入力信号を設定する。
3. [ノイズ測定]ボタンをクリックする。
設定された信号のノイズ測定結果が表示されます。
4. ノイズ測定を中止する場合は[停止]ボタンをクリックする。

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1 測定操作

1.12.1e バイアス電圧コントロール
■ 簡易操作モードの場合

● バイアス電圧コントロールの使用と不使用
簡易操作モードでは,STM以外のSPMモードでは,標準でバイアス電圧が使用できないよ
うになっています。バイアス電圧を使用する場合は,[使用]チェックボックスをチェックして,
バイアス電圧コントロールを表示させます。
バイアス電圧コントロールを使用しない時は,バイアス電圧は0Vに設定されます。

バイアス電圧設定を使用しない状態(左)と使用する状態(右)

● バイアス電圧
バイアス電圧を指定します。[設定]ボタンをクリックすると,バーチャートでバイアス電圧を指
定できます。バイアス電圧は通常時には最大±10V,高バイアス設定時には±150V程度ま
で使用できます。
高バイアス設定については,1.12.2項「詳細設定コントロール」を参照してください。

■ 詳細操作モードの場合

● バイアス
バイアス電圧を指定します。[設定]ボタンをクリックすると,バーチャートでバイアス電圧を指
定できます。バイアス電圧は通常時には最大±10V,高バイアス設定時には±150V程度ま
で使用できます。
高バイアス設定については,1.12.2項「詳細設定コントロール」を参照してください。

● クリーニング
このコントロールは,超高真空SPM装置でSTMモード使用時と,AC-AFM(FM)を使用
時にのみ使います。STMを行っているときに一時的にバイアス電圧を変化させたり,AC-A
FM(FM)使用時にプローブを試料に軽く接触させたりすると,プローブの状態が良くなり,
像がよく見えるようになることがあります。この機能はプローブの状態の改善を行うためのもの
です。STMモード使用時には,バイアス電圧を「クリーニング」で指定した電圧に,AC-AF
M(FM)モード使用時には,フィードバックリファレンス値を「クリーニング」で指定した電圧に,
[実行]ボタンを押している間だけ変更されます。「クリーニング」電圧の入力はキーボードか
ら行います。

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1 測定操作

1.12.1f フィードバックコントロール群

● リファレンス
フィードバックに用いるリファレンス信号の目標時(リファレンス値)を設定します。
詳細は,1.5.1項「走査パラメータの設定」を参照してください。
• AC-AFMモードの時
フィードバックリファレンス信号は振幅信号で,0~-10Vの範囲内で設定します。
• NC-AFMモードの時
フィードバックリファレンス信号は周波数信号で,0~-10Vの範囲内で設定します。
• コンタクトAFMモードの時
リファレンス信号は原子間力信号で,±10Vの範囲内で設定します。
• STMモードの時
リファレンス信号はLog電流信号です。リファレンス信号の設定と共に,バイアス電圧も
併せて設定します。
バイアス電圧の設定幅は通常時で±10V(高バイアス設定時には±150V程度)です。
リファレンス信号の設定幅は,プリアンプゲインによって変わります。

Preamp Gain 設定幅


0.01V/nA 0~1μA
0.1V/nA 0~100nA
1V/nA 0~10nA

リファレンス値については,1.14節「リファレンス値と測定結果の物理量換算」も参照し
てください。

● フィルタ・ループゲイン
• フィードバックフィルタ[Hz]
フィードバックループのカットオフ周波数を設定します。0.01~5.0Hzの16段階で設定
します。ここで表示される周波数は,ローパスフィルタのカットオフが始まる周波数を示
しており,特性は次のようになっており,指定周波数より高い周波数に対しては,徐々に
感度が下がるようになっています。

ゲイン

周波数
指定周波数

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1 測定操作

フィードバックフィルタ周波数を低くすると高い周波数成分はカットオフされてフィードバ
ック動作に影響しなくなるため,ゆっくりとした信号変化のみがフィードバック動作に関係
するようになり,高くすると速い信号変化もフィードバック動作に影響するようになります。
通常の表面形状像測定時はなるべく高い周波数を設定しますが,ノイズ成分なども
多く含まれることになりますのでフィードバック回路が発振し易くなります。発振を起こさ
ない範囲でなるべく高いフィルタを設定します。電流像,原子間力像を測定する場合
は,表面形状像測定時より遅く設定します。

• ループゲイン
フィードバック回路のループゲインを設定します。数字が大きい程ゲインが高くなります。
通常,AFMモードでは高めの値(8~64),STMモードで低めの値(4~32)を使用しま
す。ループゲインは「フィルタ」と密接な関係にあります。同じフィルタを使用していた場
合でも,ループゲインが大きいほどより高い周波数成分がフィードバック回路を通過す
るようになります。そのため,ループゲインを小さくしても「フィルタ」を高くすると発振し易
くなり,ループゲインを大きくしても「フィルタ」を遅くすると発振しにくくなります。
画像観察中は,ループゲインを8程度に設定して「フィルタ」を調整し,発振しなければ
ループゲインを一つ上げてください。「ループゲイン」を「1」に設定する場合は,Zの位置
がほぼ0V付近にあることを確認して切り替えてください。「ループゲイン」が「1」のときに
は,Zの位置が最大駆動幅の10~15%程度しか追従しませんので,Zの電圧が0Vから
大きくずれている場合は,探針が接触したり離れてしまうことがあります。

1.12.1g 入力信号コントロール群
画像測定時の入力信号の切り替えを行います。
詳しくは1.6節「複数画像同時測定」を参照してください。

1.12.1h Zスキャナインジケータ
メインコントロールダイアログ最上部に表示されているインジケータは,現在のZピエゾスキャ
ナの位置を表示しています。このインジケータは,スキャン停止中にのみ有郊になります。
プローブ退避を解除した状態で,このインジケータ表示が左端まで移動する場合は,スキャ
ナが完全に伸びきっていますのでアプローチが完了していない状態を示しています。
逆にプローブ退避を解除した状態で,このインジケータ表示が右端から動かないか,右側に
極端に寄っている場合はプローブと試料が近づきすぎているので,Zステージをプローブと
試料が離れる方向に移動させてプローブと試料の距離を調整してください。

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1 測定操作

1.12.1i Zステージタブウィンドウ
簡易操作モードの場合には,サブコントロールの[Zステージ]タブウィンドウからZステージの
制御が行えます。終了時にプローブを退避させる時や手動でZステージ値を調整する必要
がある場合に使用します。
ここでの操作は,アプローチ動作とは違い,プローブと試料が接近しても自動的にステ
ージの移動は停止しません。プローブと試料を近付ける際には,Zピエゾ位置インジケ
ータの表示を見ながら,注意してステージを移動させてください。

③ ④

Zステージタブウィンドウ

① 開始ボタン
ボタンをクリックすると,選択した方向へのZステージの移動が開始されます。その間ボ
タンの表示は「停止」になりますので,もう一度クリックすると移動が停止します。
② 移動ボタン
ボタンをクリックしている間だけ,選択した方向にZステージが移動します。
③ Upラジオボタン
プローブと試料が近づく方向への移動を選択します
④ Downラジオボタン
プローブと試料が離れる方向への移動を選択します
⑤ Zステージ位置インジケータ
Zステージの現在位置を表示します。

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1 測定操作

1.12.2 詳細設定ダイアログ
詳細設定ダイアログでは,普段はあまり利用しないパラメータや,オプション測定を実行す
る際に必要なパラメータの設定を行います。
• 簡易操作モードでは,コントロール3ダイアログの[詳細設定]ボタンで,詳細設定ダイアロ
グを呼び出します。
• 詳細操作モードでは,アイコンドックの[ ]ショートカットボタンで,詳細操作ダイアログ
を表示させます。

詳細設定ウィンドウは,パラメータの種類によって4つのタブウィンドウに分割されています。

1.12.2a 走査タブウィンドウ
「走査」タブウィンドウでは,走査に関する詳細設定を行います。

① ④

詳細設定ダイアログ(走査タブ)

① 外部入力信号
SPMコントローラに入力される外部信号のON/OFFをコントロールします。
• Xスキャナへ重畳
SPMコントローラ背面の,ADX端子からの入力信号を走査のX方向の信号に加
える際にチェックします。ADX端子の入力信号は,ピエゾ駆動用高電圧アンプを
通し,入力電圧の20倍の大きさで加算されます。すなわち,±1Vの正弦波をADX
端子に入力すると,±20Vで出力されます。ADX端子の入力最大定格は±10V
です。ただし,X方向の走査電圧との和がSPMコントローラの電源電圧を超えた
場合は,電源電圧で飽和します。

1-196 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• Yスキャナへ重畳
SPMコントローラ背面のADY端子からの入力信号を,走査のY方向の信号に加
える際にチェックします。ADY端子の入力信号は,ピエゾ駆動用高電圧アンプを
通し,入力電圧の20倍の大きさで加算されます。すなわち,±1Vの正弦波をADY
端子に入力すると,±20Vで出力されます。ADY端子の入力最大定格は±10V
です。ただし,Y方向の走査電圧との和がSPMコントローラの電源電圧を超えた
場合は,電源電圧で飽和します。
• Zスキャナへ重畳
SPMコントローラ背面のADZ端子からの入力信号を,Z方向の信号に加える際に
チェックします。ADZ端子の入力信号は,ピエゾ駆動用高電圧アンプを通し,入
力電圧の20倍の大きさで加算されます。すなわち,±1Vの正弦波をADZ端子に
入力すると,±20Vで出力されます。ADZ端子の入力最大定格は±10Vです。た
だし,Z方向の走査電圧との和がSPMコントローラの電源電圧を超えた場合は電
源電圧で飽和します。
• バイアス電圧へ重畳
SPMコントローラ背面のADB端子からの入力信号を,バイアス電圧に加える際に
チェックします。SPMコントローラからのバイアス電圧出力設定が「通常出力」の場
合,ADB端子の入力信号はそのまま加算されます。SPMコントローラからのバイア
ス電圧出力設定が「高圧出力」の場合,入力電圧の20倍の大きさで加算されま
す。ADB端子の入力最大定格は±10Vです。ただし,バイアス電圧の最大値は±
12V程度ですので,バイアス電圧との和が±12Vを超えた場合は±12Vで飽和し
ます。高電圧出力での場合は,バイアス電圧の最大値は電源電圧値と同じになり
ますので,バイアス電圧との和が電源電圧値を超えた場合は電源電圧値で飽和
します。
② スキャンフィルタ
走査波形(スキャナ駆動波形)のフィルタを指定します。フィルタの指定によって走査
波形が次のように変化します。

高域 低域

走査速度を速く指定したときに画像に縦縞が入ることがあります。これは走査の折り返
し点で大きく加速度が変化するため,スキャナが慣性によって振動するためです。この
ような現象が現れたときは,走査速度を遅くするのが最も有効な手段ですが,画像の
質が悪化する場合はこの「スキャンフィルタ」を「低域」側に設定します。通常は「高域」
に設定します。

TM-57553FST4-1 1-197
1 測定操作

③ ドリフト補正
ドリフト補正のために使用する設定パラメータです。
詳しい操作方法は,5.9.4項「ドリフト補正機能を用いた連続測定」を参照してくだ
さい。
④ フィードバック
フィードバックのオン,オフを指定します。「アクティブ」を選択するとフィードバックが働き,
[ホールド]にすると現在のZの位置でZフィードバック回路は切断されます。
フィードバックのON/OFF切り替えを伴うSPS測定時には,測定のタイミングでSPM
コントローラが自動的ON/OFF切り替えをに行いますので,常時「アクティブ」で使用
してください。
⑤ 走査停止時にプローブを待避
走査中に「停止」が押されると走査は中断し,プローブが走査原点に戻ります。この時,
表面凹凸の激しい試料ではプローブを試料に引っかけてしまうことがあります。このチェ
ックボタンをチェックすると,走査停止時にプローブをいったん待避してから走査原点に
戻り,プローブ待避を解除します。このため試料や探針の損傷を防止することができま
す。
通常はOffの状態で使用します。平坦な試料に対してこの機能を使用すると,Z
方向の圧電体のクリープによって走査開始時に画像が暗くなったり,明るくなった
りすることがあります。

1-198 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.12.2b バイアス電圧タブウィンドウ
「バイアス電圧」タブウィンドウでは,主にバイアス電圧に関する詳細設定を行います。

② ④

詳細設定ダイアログ(バイアス電圧タブ)

① バイアス電圧
• バックワード
走査モードに「鏡像測定」を指定した場合,バックワードスキャン時のバイアス電圧
を設定します。
この電圧は鏡像測定にだけ有効で,他のモードを指定したときには往復走査
共に通常設定のバイアス電圧が印加されます。
• オフセット
試料自体を抵抗体にして通電加熱を行いながら,STMモードで観察する場合で,
かつSTMの探針が試料の中心にある場合には,実際のバイアス電圧は,
バイアス電圧-加熱電源電圧/2
になります。
このため実際に印加されている電圧を間違えないように,オフセットに加熱用電源
の出力電圧値を設定しておくと,ソフトウェアはメインコントロールのバイアス電圧
設定コントロールに,バイアス電圧から加熱用電源からの出力電圧設定値分だけ
差し引いた値を表示します。
この機能は値だけにオフセットを与えていますので,実際にSPMコントローラ
から出力される電圧は,「オフセット」が0Vのときの値と同じです。
この機能は傍熱加熱時(オプション)には使用しません。
② 出力電圧増幅
バイアス電圧の出力ラインには,ゲイン20倍のHV-AMPが搭載されており,これを用
いることによって,通常±10Vまでしか出力できないバイアス電圧を,±200Vまで出力
できます。
[通常出力]ラジオボタンがオンになっている状態から,[高圧出力]ラジオボタンをオン

TM-57553FST4-1 1-199
1 測定操作

にすると,高圧出力に切り替えるための警告メッセージが表示されます。問題がなけれ
ば[はい]をクリックしてください。出力を通常出力へ戻す際には,[通常出力]ラジオボ
タンをクリックします。
出力切り替え時に,自動的にプローブ退避が行われます。
バイアス電圧をプローブに印加している場合には,プローブに高電圧が印加され
ることより,探針先端で電界集中による破壊やショートが起きないように,「高圧出
力」を利用できなくしています。
高電圧出力を設定すると,画面上のバイアス電圧関係の最大値表示は±200V
に切り替わります。しかし,SPMコントローラの電源電圧は±150Vですので,実際
に出力される電圧値は±150V程度に制限されます。

警 告
SPM の試料交換は,高電圧出力設定状態で行わないでください。感電する恐れがあり
ます。

③ 外部オフセット(JSPM-5200だけで使用)
摩擦力信号の値に電気的にオフセットを加えます。この機能はオプションの真空排気
システムを用いて,大気から真空に排気したときに生じるカンチレバのたわみを補正す
るために使います。フォトダイオードY軸調整つまみによって,原子間力信号の値を調
整した後に補正します。
ただし,原子間力信号の値の補正後にも 摩擦力信号の値が±10V以上ずれて
いる場合は,補正できたとしても正しいデータが取れない可能性がありますので,
一度大気圧に戻して直してください。
④ 印加先選択(JSPM-4500/4610で使用)
JSPM-4500/4610では,バイアス電圧の印加先を試料とプローブの間で切り替え
ることができます。ラジオボタンで試料とプローブのどちらにバイアス電圧を印加するか
を選択します。
バイアス電圧印加先をプローブに設定した際には,バイアス電圧の「高圧出力」は
自動的にOFFになります。

1-200 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.12.2c 入力信号タブウィンドウ
「入力信号」タブウィンドウでは,測定信号として用いる各入力信号についての詳細設定を
行います。ここでいう入力信号とは,フィードバック後に測定する信号のことを指します。ここ
での設定はフィードバック動作に対して影響しません。


詳細設定ダイアログ(入力信号タブ)

① フィルタ [Hz]
各入力信号にはA/D変換される前にローパスフィルタ回路が設けられています。フィ
ルタは10Hz~50kHzの8段階で設定できます。これらのフィルタは,フィードバックには
関係なく,フィードバック後の測定信号に対して機能します。画像にノイズ等高周波成
分が多く,フィードバックパラメータを調整しても,まだ発生する場合に周波数を低く設
定します。
このフィルタはあくまで2次的なものとして使用してください。
解析ソフトウェアにおいて,測定後の画像にフィルタ処理を行うこともできます。
② 入力ゲインと入力オフセット,および自動調整
「ゲイン」および「オフセット(V)」で,各入力信号の入力ゲインと入力オフセットを設定
します。入力ゲインは,原子像観察時などで測定画像にコントラストがつかない場合に
使用します。表面形状信号は1~32の6段階で,それ以外の信号は1~8の4段階で設
定できます。広領域観察中や,凹凸の激しい試料に対して高いゲインを設定すると,
入力信号が飽和することがあります。通常は,低いゲインで観察し,コントラストが得ら
れないときにゲインを高く設定します。入力オフセットは,次の例のように入力信号の電
圧値が+側にずれていた場合,信号振幅の中心が0Vになるようにオフセットを加えま
す。通常,ゲインを1以外に設定して測定する場合には,[自動]をチェックして使用しま
す。

TM-57553FST4-1 1-201
1 測定操作

+10V +10V

表示領域

Offset
0 0
自動
表示領域

-10V -10V

表面形状信号を例とした場合,オフセットの自動調整により,走査原点(通常は,画面
左上)から表示可能領域が最大になりますが,次のように走査原点付近が極端に高
かったり,低かったり,また試料が傾いている場合は,走査中に画像が黒または白にな
ることがあります。このような場合はチェックボックスのチェックをはずし,手動で[オフセ
ット]を設定します。

+10V
走査原点

Offset 表示可能領域

−10V
黒くなり表示されない

[自動]がチェックされている入力信号では,イニシャルポジションでの入力電圧を取り
込み,0Vになるようにソフトウェアが自動的にオフセットを加えます。[自動]がチェックさ
れていないときには,手動でオフセットを調整します。また測定中にゲインを変更して信
号が飽和した場合は,[自動]を解除して,オフセットを調整します。
プリスキャンを行って測定している場合,[自動]がチェックされている入力信号に
ついては,プリスキャンの結果からゲイン値とオフセットが設定されます。

③ プリアンプゲイン
トンネル電流信号(「電流」および「Log電流」)については,入力ゲインではなくプリア
ンプのゲインを設定します。次の3段階に設定できます。

設定値 測定範囲
1V/nA 0~10nA
0.1V/nA 0~100nA
0.01V/nA 0~1μA

通常STMモードで使用する場合は1V/nAに設定します。I-V測定時に10nAを超
えそうな場合や,コンタクトAFMモードで接触電流を測定する場合で,同様に10nAを
超えそうな場合は,0.1V/nA,もしくは0.01V/nAに設定します。

1-202 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.12.2d 表示タブウィンドウ
画像測定終了時の明度・コントラスト調整設定についてのパラメータを設定します。
詳細は,5.5.5項「画像観察時の注意点」を参照してください。




詳細設定ダイアログ(表示タブ)

① 調整方式
測定終了後の画像を,ディスプレイウィンドウに表示する表示方法を指定します。
選択できる表示方法は以下の3つです。
• Auto
測定画像の面内の傾き,明るさ,コントラストが自動的に調整されて表示されます。
通常はこの表示方法を使用します。
• No ASB (Auto Subtract Background)
明るさ,コントラストが自動的に調整されて表示されますが,測定画像の面内の傾
きは調整されません。測定表面の傾きを知りたい場合には,この表示方法を使用
します。
• Manual
すべての自動調整機能をキャンセルします。傾き,明るさ,コントラストをすべて手
動で調整できます
② DCカップリング
SPMで利用しているピエゾスキャナは,各駆動軸を組み合わせてひとつの構造体とし
て形成されていますので,XY軸の動きが相互に干渉し合います。そのため,走査範囲
が広い場合には,X方向の傾斜がY軸スキャナに干渉して,Y方向にも傾斜があるよう
にスキャナが動きます。これをDCカップリングと呼びます。
「調整方式」が[Manual]になっている場合に,X方向の走査面傾斜だけを補正して
もY方向の走査面傾斜が残る場合,Y方向の試料面傾斜の他にも,DCカップリングの
影響が考えられます。そのような場合には,Y方向の傾斜方正を可能にするために,[D
Cカップリング]チェックボックスをチェックします。

TM-57553FST4-1 1-203
1 測定操作

③ 傾斜 X
走査面のX方向傾斜を補正します。「調整方式」が[Manual]に設定されているとき
だけ有効になります。
④ 傾斜 Y
走査面のY方向傾斜を補正します。「調整方式」が[Manual]に設定されていて,[D
Cカップリング]がチェックされているときだけ有効となります。
⑤ 明度,コントラスト
測定画像表示の明るさ,コントラストを設定します。「調整方式」が[Manual]に設定さ
れているときだけ有効になります。

1-204 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.12.3 カンチレバ設定ダイアログ
カンチレバ設定ダイアログは,AC-AFMモード用タブウィンドウと,NC-AFMモード用タブ
ウィンドウの2つのタブウィンドウによって構成されており,それぞれのモードでのカンチレバ発
振および自励発振フィードバック信号検出についての設定を行います。
カンチレバ設定ダイアログはアイコンドックの[ ]ショートカットボタンで表示させます。

1.12.3a AC-AFMモード用タブウィンドウ
AC-AFMモードで測定を行う際の,カンチレバコントロール発振調整を行います。





カンチレバ調整ダイアログ(AC-AFMモード)

① 発振
チェックされていると,加振電圧がカンチレバー加振用の圧電体に印加されます。
② 外部発振機
内部発振器を使わずに,外部発振機を使用する場合に使います。外部発振機はAF
Mアンプの背面のEXT端子へ接続し,発振器の出力は0~1.0Vに設定します。発振
器の周波数は発振器側で調整しますが,電圧振幅はソフトウェアから制御します。
③ ピーク周波数[kHz]/Q値
周波数スキャンを実行し,カンチレバーの共振周波数(ピーク周波数)とQ値がそれぞ
れ検出された際にその値が表示されます。
④ RMS値/位相値インジケータ
現在の振幅信号の出力と,位相信号の出力が表示されます。AFMアンプ前面の液
晶パネルに表示される値と同じ値です。

TM-57553FST4-1 1-205
1 測定操作

⑤ 周波数スキャン
カンチレバーの共振周波数を検出するための周波数スキャンを行います。
• 開始周波数[kHz]/終了周波数[kHz]
周波数スイープを開始する周波数と終了する周波数を設定します。
• 位相を表示
チェックすると,周波数スイープの際に位相データを取り込み,表示します。
• スキャンのみ/自動調整スキャン/連続スキャン
• 「スキャンのみ」を選択した場合
スキャンボタンをクリックすると,周波数スキャンが開始周波数から終了周波数
の間で一回行われ,その際検出したピーク周波数とQ値が表示されます。
• 「自動調整スキャン」を選択した場合
スキャンボタンをクリックすると,自動調整シーケンスが開始されます。
• 「連続スキャン」を選択した場合
オプション機器である,Qコントローラ(TM-26070)を使用してQ値制御調整
を行う場合に使用します。
スキャンボタンをクリックすると,周波数スキャンが開始周波数から終了周波数
の間で連続して行われ,一回のスキャンが終了するたびに,検出したピーク周
波数とQ値が表示されますので,Q値の変化を参照しながらQコントローラを調
整してください。
• スキャン
上記のスキャン種類で選択した方法で,周波数スキャンを開始します。
⑥ 加振制御
カンチレバーへの加振信号の設定を行います。
• 加振周波数[kHz]
加振周波数を設定します。設定可能な周波数は1~1000kHzです。加振波形
は正弦波です。
• 加振電圧[V]
加振用圧電体に印加される電圧を設定します。設定可能電圧幅は,[高出力発
振]の設定によって変わります。
• 加振電圧スライダバー拡大
加振電圧コントロール用のスライダバーの,コントロール範囲を拡大します。
拡大範囲は以下のようになります。
• ×1: フルコントロール(0.0~10.0V)
• ×10: 現在の設定値 ±1.0V
• ×100: 現在の設定値 ±0.1V
• ×1000: 現在の設定値 ±0.01V

1-206 TM-57553FST4-1
1 測定操作

⑦ フィルタ・ゲイン
RMS信号回路におけるフィルタ・ゲインを設定します。
• ハイパスフィルタ[kHz]/ローパスフィルタ[kHz]
RMS信号に対するハイパスフィルタのカットオフ周波数,およびローパスフィルタの
カットオフ周波数を設定します。
• RMS-DC出力ゲイン
AC信号をRMS-DC変換する際のゲインを設定します。通常10で使用してくださ
い。
• RMSフィルタ
RMS-DC変換された信号に対するフィルタです。
⑧ 位相制御
• 位相制御
位相制御回路のPhase Shifterをコントロールします。位相調整は±130°の範囲
で設定できます。
• 位相反転
Phase Shifter回路は,特性上360度位相をリニアに回転させることができず,
制御不連続点が発生します。AFMアンプに搭載されているPhase Shifterは,こ
の問題を位相検出の極性を反転させることによって解決しています。このチェック
ボックスをチェックすると位相検出極性が反転し,Phase Shifterで制御する位
相を現在の値から180°回転させます。この処理はハードウェア的に行われるため,
ソフト上の位相回転設定値は変化しません。

TM-57553FST4-1 1-207
1 測定操作

1.12.3b NC-AFMモード用タブウィンドウ
NC-AFMモードで測定を行う際の,カンチレバコントロール発振調整を行います。

① ⑥

カンチレバ設定ダイアログ(NC-AFMモード)

① PLL励起
通常の加振励起は,カンチレバ自体の固有振動(共振周波数における発振)を利用
した自励発振を行っています。固有振動振幅は微小なので,走査中にカンチレバが試
料表面に接触して発振が停止すると再発振することが難しくなります。[PLL励起]を
チェックすることで,カンチレバの発振励起が通常の自励発振から,PLL (Phase
Locked Loop)回路に搭載された発振器からの強制発振に切り替わります。これによ
り,カンチレバが試料表面と接触して発振が停止した場合でも,PLLの発振器からの
励起によりカンチレバの再発振が容易になります。PLLは周波数と位相を設定した値
に保持しようとしますので,本質的原理は通常の自励発振の場合と変わりません。
走査速度が速い場合や,試料表面の凹凸が大きい場合には,[PLL励起]をチェック
して測定を行います。なお,FM検出調整を終了した後に[PLL励起]の設定を変更し
た際には,カンチレバの発振状態が変化するため,カンチレバ調整をやり直す必要が
あります。
② ビートノイズ
NC-AFMモードでのカンチレバ振動周波数検出は,AFMアンプにおいてPhase Lo
cked Loop(PLL)を用いた周波数検出回路で行われます。PLL回路では,信号周
波数と周波数検出系(PLL)の特性周波数の相関により,ビートノイズと呼ばれる比
較的周波数の低い(1kHz以下)周期ノイズを発生することがあります。
このビートノイズが発生した場合に[ビートノイズ]をチェックし,PLL側の特性周波数を
わずかに変更することにより,ビートノイズを軽減することができます。

1-208 TM-57553FST4-1
1 測定操作

③ ピーク周波数[kHz]/Q値
AC-AFM用タブウィンドウと同様です。
④ FMD値インジケータ
現在の周波数信号の出力が表示されます。AFM アンプ前面の液晶パネルに表示さ
れる値と同じ値です。
⑤ 周波数スキャン
カンチレバの共振周波数を検出するための周波数スキャンを行います。
• 開始周波数[kHz]/終了周波数[kHz]
周波数スイープを開始する周波数と了する周波数を設定します。
• 位相表示
チェックすると,周波数スイープ時に位相データを取り込み表示します。
• スキャンのみ/自動調整スキャン/位相スキャン
• 「スキャンのみ」を選択した場合
スキャンボタンをクリックすると,周波数スキャンが開始周波数から終了周波数
の間で一回行われ,その際検出したピーク周波数とQ値が表示されます。
• 「自動調整スキャン」を選択した場合
スキャンボタンをクリックすると,自動調整シーケンスが開始されます。
• 「位相スキャン」を選択した場合
スキャンボタンをクリックすると位相スキャンを行い,周波数検出を行うのに最
適な条件に,周波数検出回路の位相制御を調整します。
• スキャンボタン
上記のスキャン種類で選択した方法で,周波数スキャンを開始します。
⑥ フィルタ
• ハイパスフィルタ[kHz]/ローパスフィルタ[kHz]
RMS信号に対するハイパスフィルタのカットオフ周波数,およびパスフィルタのカット
オフ周波数を設定します。
⑦ PLL制御
Phase Locked Loop(PLL)回路に関するパラメータを設定します。
• 固定中心周波数[kHz]
周波数検出を行うための中心周波数を設定します。周波数検出回路は,ここに設
定されている周波数を基準として,周波数のずれを検出します。
• 位相制御・位相反転
AC-AFM用タブウィンドウと同様です。
• 加振電圧
加振用圧電体への加振信号の電圧振幅を設定します。FMモードにおける加振電
圧値は,ACモードにおける加振電圧に比べて非常に小さな値になります。
• 加振電圧スライダバー拡大
加振電圧コントロール用のスライダバーの,コントロール範囲を拡大します。

TM-57553FST4-1 1-209
1 測定操作

拡大範囲は以下のようになります。
• ×1: フルコントロール(0.0~10.0V)
• ×10: 現在の設定値 ±1.0V
• ×100: 現在の設定値 ±0.1V
• ×1000: 現在の設定値 ±0.01V
• ダイナミックレンジ
周波数検出回路のダイナミックレンジ(周波数検出範囲)を設定します。ダイナミッ
クレンジを狭く設定すると,検出感度が向上しますが検出できる周波数幅が狭くな
り,広くした場合にはその逆になります。
Range1: レンジ幅76Hz
Range2: レンジ幅152Hz
Range3: レンジ幅305Hz
Range4: レンジ幅610Hz
• ループゲイン
PLL動作におけるループゲインを設定します。ループゲインが小さな値であるほど,
周波数検出分解能は上がります。
通常は以下のように設定します。
ダイナミックレンジRange1の時: 推奨ループゲイン 30
ダイナミックレンジRange2の時: 推奨ループゲイン 20
ダイナミックレンジRange3の時: 推奨ループゲイン 10
ダイナミックレンジRange4の時: 推奨ループゲイン 5
「自動設定」チェックボックスをチェックしておくと,ダイナミックレンジを切り替えた
際に,自動的に推奨ループゲインが設定されるようになります。

1-210 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.12.4 状態表示ダイアログ
状態表示ダイアログは,SPM装置の動作状態や測定信号の状態を表示するダイアログで
す。状態表示ウィンドウは,アイコンドックの[ ]をクリックして表示します。

状態表示ダイアログ
① Status表示
SPM装置の動作状態を表示します。
• SPM in active at present:
走査可能な状態を示します。
このメッセージが表示されていると測定動作が行えます。
• Scan in progress:
測定動作中であることを示します。
• Scan aborted:
前回の測定が途中でが中止されたことを示します。
この状態から測定を再開できます。
• Scan paused:
測定中に走査が一時中断されていることを示します。
測定を再開するか,完全に中止するかのどちらかを選択します。
• Grab frame:
現在走査中の画像を記録することを示します。
• Subtract background:
画像の記録が終了し,画像のノーマライズが終了したことを示します。

TM-57553FST4-1 1-211
1 測定操作

② バーチャート
A/Dコンバータに入力される値を三角の矢印で示しています。矢印は,1Lineごとの
平均の値を表示しています。この矢印の位置は,入力信号のゲインとオフセット値を計
算に入れた形で表示されます。この矢印が上または下に振り切ると,A/Dコンバータ
への入力電圧(入力信号ゲインが1の場合±10V)を超え,「表示ウィンドウ」上では黒
または白のみの画像となり,正しく取り込まれません。左側に表示される矢印は,「入力
信号」の「1」で指定されたもの,右側に表示される矢印は,「入力信号」の「2」で指定さ
れたものが,それぞれの換算された単位表示で表示されます。ただし,「2 Inputs」,
「4 Inputs」以外のときは左側しか表示されません。
③ ADC Max, Line Max
「入力信号」の「1」~「4」に指定されている入力値が表示されます。
ADC Max は,1LineごとにADコンバータに入力され,変換された値の中の最大値
と最小値をそのまま16進数で表示し,Line Maxは,その値を入力信号の意味によっ
て換算した値を表示しています。
④ モニタ出力
SPMコントローラからのオシロスコープ(オプション)用モニタ出力端子(Ch2端子)への
出力信号を選択します。

1-212 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.12.5 プローブダイアログ
詳細操作モードで,プローブ関係の操作(プローブ退避状態制御・プローブ位置制御・ア
プローチ制御)を行います。プローブ制御ダイアログは,アイコンドックの[ ]をクリックして
表示します。

プローブダイアログ

• プローブ退避状態の操作
5.5.2c項「詳細操作モードでのプローブ退避操作」を参照してください。
• アプローチ制御
5.5.3b項「詳細操作モードでのアプローチ操作」を参照してください。
• プローブ位置制御
5.7.3項「SPS測定位置の指定方法」を参照してください。

TM-57553FST4-1 1-213
1 測定操作

1.12.6 ステージ制御ダイアログ
詳細操作モードで,試料ステージ位置制御を行うダイアログです。「ステージ制御」ダイアロ
グは,アイコンドックの[ ]をクリックして表示します。

① ②

③ ④

ステージ制御ダイアログ

① 移動方向
試料ステージ各軸の移動方向を指定します。OFFを指定すると,その軸は移動しませ
ん。
JSPM-5200では,Z軸のみ有効です。
JSPM-4500/4610には各回転軸に切り離し機構が付いているため,3/10回
転程度のずれがあります。

◇注意◇
「ステージ制御」を開いて探針を試料に近付けるときは,トンネル電流/原子間力を検
知してもステージ駆動は止まりませんので十分に注意してください。

② 移動速度
各モータドライブの移動速度を設定します。通常[4-Fast]を使用します。
JSPM-5200では,[4-Fast]以外を選択してもZステージはほとんど動きません。
③ 位置インジケータ
試料ステージのX,Y,Zの位置を表示します。各インジケータが左端または右端に達し
ていると,それ以上ステージを動かすことはできません。
④ 移動/移動開始/移動停止
• [移動]ボタンは,ボタンをクリックしている間モータが回りますので,わずかにステー
ジを移動させたい場合に便利です。
• [移動開始]をクリックするとマウスを離してもモータは回り続けます。
• モータを停止するには[移動停止]をクリックします。
⑤ 原点移動ボタン
X,Yのモータドライブが自動的に中点に戻ります。試料の交換作業時に使用します。
JSPM-5200には,この機能はありません。

1-214 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.13 SPM装置の設定
SPM装置固有の設定(機種・スキャナ設定・ステージ設定)やSPM装置に接続しているオ
プション機器の設定は,機器設定ダイアログから行います。
機器設定ダイアログは,測定起動時の「SPM機能選択」ウィンドウで[機器設定]ボタンを
クリックするか,メインメニューの[SPM設定]から[機器設定]を選択します。

機器設定ダイアログ

1.13.1 SPM装置
ここで,WinSPMがコントロールするSPM装置の機種を選択します。SPM装置によって,
WinSPM上での基本設定は異なりますので,正しく設定されていないと誤動作を招くことが
あります。
この設定は出荷時に正しく設定されています。
この設定は管理者権限をもったユーザーだけが変更できます。もし,SPM装置の設定
が違っていた場合は,一旦ソフトウェアを終了し管理者権限でログインし直してくださ
い。

1.13.2 付属機器
オプション機器がSPM装置に接続されていても,このダイアログでチェックがされていないと,
WinSPM上から付属機器のコントロールやオプション測定が利用できませんので,必ずチ
ェックしてください。

TM-57553FST4-1 1-215
1 測定操作

1.13.3 スキャナ設定
超高真空SPMではチューブ型圧電体スキャナを使用していますが,一般に圧電体では,
印加電圧に対して走査範囲は非線形になっています。

走査範囲

走査時の印加電圧

SPMコントローラには,この非線形性を除去するために,歪み補正機能が搭載されています。
[スキャナ設定]ボタンをクリックすると,歪み補正機能の補正パラメータの設定および走査
範囲の校正値の設定を行う「スキャナ設定」ダイアログが表示されます。
これらは出荷時に校正および設定がされています。


スキャナ設定ダイアログ

① 設定番号
複数のスキャナを使用するときのために,設定パラメータを最大6つまで記憶できるよう
になっています。それぞれのパラメータセットは,このプルダウンメニューで切り替えます。
パラメータセットを変更した時点で,スキャナ駆動のための設定電圧値などが変更
されます。誤ったパラメータセットを使用しないよう十分に注意してください。
② 表示名
6つのパラメータセットには,それぞれ区別するための識別名称を付けることができます。
パラメータセットを変更した場合,アプリケーションウィンドウ右下のインフォメーションが
変更されるとともに,このパラメータセットに設定した識別名称が表示されます。

1-216 TM-57553FST4-1
1 測定操作

③ 補正適用
チェックされていると,XYスキャナに対する歪み補正機能が適用されます。
ただし,チェックされていない場合にも走査範囲の校正は機能します。
④ 補正パラメータ
補正パラメータの変更は,管理者権限をもったユーザーでないと行えません。
装置出荷時には,スキャナごとにキャリブレーションデータを記録したフロッピーディスク
が付属しています。[設定読み込み]ボタンをクリックすると,フロッピーディスクからキャ
リブレーションデータを読み込むことができます。

● 補正パラメータを使用した,スキャナ駆動電圧の計算
• 画像走査の際のスキャナ駆動電圧と波形の計算
画像スキャンにおけるXYスキャナ駆動電圧および波形は,「Xスキャナ補正値」と「Y
スキャナ補正値」パラメータを使用して,ソフトウェア内部で計算されます。この計算に
は,複雑な補正計算が含まれますが,スキャナの加速度(走査幅とクロックで決定され
る)から最適な近似項を算出し,算出された近似式を用いてスキャナの駆動電圧と波
形を2次式計算するという計算が行われます。
• 走査領域オフセット量の計算
走査領域オフセットの計算には,「オフセット位置キャリブレーション」パラメータが用い
2
られます。M2Xof ,M2Yof は近似式の2次の項[μm/V ],M1Xof ,M1Yof は近似式の1次
の項[μm/V]になります。走査領域オフセットの計算はμm単位で行います。
例えばYスキャナをd y[μm]移動させようとした場合,駆動電圧V ofs は

− M 1Yofs + M 1Yofs
2
+ 4 × M 2Yofs × d y
VYofs = [V ]
2 × M 2Yofs
M 2Yofs ≠ 0
で計算されます。ただし,上記式は,M2 Yofs ≠0の場合(JSPM-5200の場合)です。
M2Yofs =0場合(JSPM-4500/4610の場合)は1次式近似になりますので,V ofs は

dy
VYofs = [V ]
M 1Yofs

で計算されます。
横振動FFM測定時のYスキャナへの微小振動電圧を計算するには,上記式を
利用してください。
• Zスキャナ移動量の計算
Zスキャナの移動量計算には,「Zスキャナキャリブレーション」パラメータが用いられます。
Zスキャナの移動量は,1次式で計算されます。キャリブレーション値の単位は[nm/
V]ですので,Zスキャナの計算はnm単位で行います。

TM-57553FST4-1 1-217
1 測定操作

1.13.4 ステージ移動設定
SPM装置の試料ステージモータドライブには,マイクロメータによる位置検出センサが装備
されており,これによってソフトウェア上でモータドライブの現在位置を表示しています。
[ステージ移動設定]ボタンをクリックすると,位置検出センサのキャリブレーション設定が行
えます。
キャリブレーション値は出荷時に校正および設定がされていますので,通常は設定し
直す必要はありません。
この設定は管理者権限をもったユーザーだけが変更可能です。もし,SPM装置の設
定が違っていた場合は,いったんソフトウェアを終了し管理者権限でログインし直してく
ださい。

ステージ移動設定ダイアログ

• 各軸のセンサリミット電圧
XYZ各軸のマイクロメーターのリミット電圧値と,その時の移動幅を設定します。
JSPM-5200の場合はZ軸のみ,JSPM-4500/4610では3軸すべてを使用します。
• 設定読込み・設定保存ボタン
ステージキャリブレーション設定を,ファイルから読み込みおよび保存します。

1.13.5 COMポート設定
WinSPMでは,ロックインアンプと試料温度コントローラをコントロールするのに,RS-232C
通信制御を使用しています。そのため,PCには最大2つのCOMポート(シリアルポート)が必
要となります。
ロックインアンプおよび試料温度コントローラを使用する場合は,現在使用できるCOMポー
ト(使用できないポートはグレー表示されます)にそれぞれの機器を接続し,通信ポートとし
て割り当ててください。
COMポートの詳しい情報および各オプション機器の通信設定については,「通信設定確
認」ボタンをクリックすることで,確認できます。
COMポートが必要数存在しない場合は,PCにCOMポートを増設してください。COM
ポートは,USB-シリアル変換ケーブル等を用いることで増設可能です。

1-218 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.14 リファレンス値と測定結果の物理量換算
光てこ検出調整ダイアログにおいてカンチレバの力学定数を設定することにより,AFM測
定時のリファレンス設定値と測定信号の物理量換算が可能になります。

光てこ検出調整ダイアログの力学定数設定

1.14.1 力計算係数
コンタクトAFMモードで,カンチレバのたわみから原子間力を算出するための校正値を設定
します。原子間力は,以下の式を用いて計算されます

F = ka(V − V0 )[nN ]

• 適用
このチェックボックスをチェックすると,フォース像,フォースカーブ表示のときに電圧値か
ら計算された原子間力値で表示されます。またコンタクトAFMモードで,リファレンス設
定値の原子間力換算値が表示されます。
• バネ定数 k[N/m]
カンチレバのばね定数を入力します。
• 力感度 a[nm/V]
光てこ方式の感度に関する係数です。

TM-57553FST4-1 1-219
1 測定操作

• 基準電圧 V0 [V]
カンチレバに作用する力が0のときのForce信号の値を入力します。
この数値は,装置,カンチレバによって異なります。[適用]のチェックを外してフォースカ
ーブを取り込んでから計算を行います。次のようなフォースカーブが得られた場合,各パ
ラメータは次のように計算します。

v2
v1
v0
d
d2 d1

d 2 − d1
a=
V2 − V1
1.14.2 摩擦力計算係数
カンチレバのねじれから摩擦力を算出するためのカンチレバ校正を行います。
摩擦力は以下の式を用いて計算されます。

ka(V − V0 )
F= × 10 9 [nN ]
2d
• 適用
このチェックボックスをチェックすると,摩擦像表示のときに電圧値から計算された摩擦
力値で表示されます。
• バネ定数 k[N/rad]
カンチレバのねじれ方向のばね定数を入力します。ねじれ方向のばね定数は以下の
計算式より計算します。

wt 3 G
k=
3l (h + t 2)

t カンチレバー

h W 基板
l

探針

ここで,w>>tのときGはせん断弾性係数であり,カンチレバの材質がシリコンであ
10
る場合にはG=5×10 [Pa]となります。エラー! ブックマークが定義されていませ
ん。

1-220 TM-57553FST4-1
1 測定操作

• 力感度 a[mm/V]
この数値は装置によって異なります。フォトダイオードの位置(X軸)を変化させ,このと
きのAFMアンプの摩擦力信号(FFM信号)の値によって校正します。フォトダイオード
位置調整つまみ1回転あたりの移動量は,以下のようになりますので,グラフから校正値
を計算します。

機 種 X軸移動量(mm) Y軸移動量(mm)
JSPM-5200 0.5 0.25
JSPM-4500A/JSPM-4610A 1.0 1.0

V
+10

v1

x2
x1 X

v2

-10 x1 − x 2
a=
V1 − V2
• 基準電圧 V0 [V]
カンチレバに作用する力が0のときの摩擦力信号の値を入力します。
• カンチレバ・PD間距離 d[mm]
カンチレバからフォトダイオードまでの距離を入力します。この距離は機種によって異な
り,以下のようになります。

機 種 カンチレバ・PD間距離(mm)
JSPM-5200 40.0
JSPM-4500A/JSPM-4610A 44.9

TM-57553FST4-1 1-221
1 測定操作

1.14.3 力計算係数(振幅)
AC-AFMモードで,カンチレバの振動振幅の変化から原子間力を算出するための校正値
を設定します。原子間力は,以下の式を用いて計算されます。

A2 − A' 2
F =k [nN ]
2 A'Q
A: カンチレバ発振自動調整時の振幅[nm]
A’: 現在のカンチレバ振幅[nm]
Q: カンチレバのQ値(カンチレバ発振自動調整時に測定)

また,カンチレバの振幅AおよびA’は,

A = P × RMS
で計算されます。
RMS: カンチレバの振動信号値(RMS信号値)[V]
P: 振幅係数[nm/V]

• 適用
このチェックボックスをチェックすると,AC-AFMモードで,リファレンス設定値の原子
間力換算値が表示されます。また換算値は,測定データにも記録されます。
NC-AFM時にも記録されます。
• バネ定数 k[N/m]
カンチレバのばね定数を入力します。
• 振幅係数 P[nm/V]
振幅信号からカンチレバの振れ幅を求めるための振幅係数を設定します。[計測]ボタ
ンをクリックすると,自動的に測定・設定されます。

1.14.4 周波数シフト
NC-AFMモードで,カンチレバの振動周波数がどの程度シフトしたかを示す周波数シフト
量を計算するための設定を行います。周波数シフト量は,カンチレバ発振自動調整時の周
波数を基準に,測定終了後に発振周波数を測定してその差として計算します。
• 適用
このチェックボックスをチェックすると,NC-AFMモードで,リファレンス設定値の周波
数シフト量が表示されます。また測定データにも,周波数シフト量が記録されます。
• 基準周波数信号 Vforg[v]
カンチレバ発振自動調整時の周波数信号値が入力されていますが,[計測]ボタンを
クリックすることで,現在の周波数信号値を自動的に測定・設定します。

1-222 TM-57553FST4-1
1 測定操作

1.15 測定の終了
一連の測定作業が完了したあとの測定終了方法について述べます。

1. すべての測定動作が終了していることを確認する。
2. プローブ退避が適用されていることを確認する。
1.5.2項「プローブの退避・退避解除」の手順に従って,プローブが退避されている
ことを確認してください。
3. Zステージを試料とプローブが離れる方向に移動する。
1.4.2項「Zステージ位置の確認」の手順に従って,プローブと試料とが充分に(0.1
~0.2mm程度)離れていることを確認してください。
4. 探針が試料面から十分に離れたら,手動によりプローブと試料を大きく離す。
JSPM-5200では,SPMヘッド下部の試料ステージ昇降機構を使用します。
JSPM-4500/4610ではSPMステージ下部の手動リトラクト機構を使用します。
5. アイコンドックの[ ]をクリックする。
測定ソフトウェアが測定終了状態になります。
測定作業を完全に終了する場合は,1.16節「操作の終了」を参照してください。
SPMモードを切り替えて再度測定を開始する場合は,アイコンドックの[ ]をク
リックして,SPMモードを選択してください。

1.16 操作の終了
測定終了後,ソフトウェアを終了させます。

1. メインメニューの[ファイル]から[終了]を選択する。
終了するかどうかの確認ウィンドウが表示されます。
2. [OK]を選択する。
測定ソフトウェアが終了します。

装置全体の電源も停止する場合は,以下の手順に従ってください。
3. デスクトップのスタートメニューから,Windowsの終了プロセスを開始する。
コンピュータが終了し,PCの電源が切れます。
4. AFMアンプを使用している機種(JSPM-4500A/4610A/5200)の場合,レー
ザ照射スイッチをOFFにする。

◇注意◇
レーザ照射をOFFにしないで主幹電源スイッチをOFFにすると,SPMヘッドのレー
ザユニットを損傷する場合がありますので注意してください。

5. PCの電源とレーザ照射がOFFになっているを確認してから,SPM電源コンソール
の主幹電源スイッチをOFFにする。

TM-57553FST4-1 1-223
1 測定操作

6. すべての電源が切れたことを確認する。
◇注意◇
・ソフトウェア動作中には電源を落とさないでください。
・再度電源を入れる場合は10秒以上経ってから行ってください。

1-224 TM-57553FST4-1
2
解析操作
2.1 解析ソフトウェアの基本操作.................................................................. 2-1
2.1.1 解析ソフトウェアの起動.................................................................. 2-1
2.1.2 画像処理機能とデータ処理機能.............................................. 2-2
2.1.3 アイコンドックとショートカットアイコン...................................... 2-3
2.1.3a 共通ショートカットアイコン....................................................... 2-3
2.1.3b 画像処理機能ショートカットアイコン.................................. 2-4
2.1.3c データ処理機能ショートカットアイコン .............................. 2-5
2.1.4 データの読み込み............................................................................. 2-6
2.1.4a 測定ソフトウェアから測定データを転送する ................. 2-6
2.1.4b ファイルを読み込む .................................................................... 2-7
2.1.4c ファイルの内容を確認しながら読み込む........................ 2-7
2.1.5 データの保存 ....................................................................................... 2-9
2.1.6 データの印刷 .................................................................................... 2-10
2.1.7 ユーザーディレクトリの変更........................................................ 2-11
2.1.8 測定データをまとめる .................................................................. 2-11
2.1.8a データや解析結果をレポートにまとめる ...................... 2-11
2.1.8b レポート上に注釈文や図形を追加する ......................... 2-14
2.1.9 連続測定データの再生 ............................................................... 2-19
2.2 解析機能の使用例.................................................................................. 2-20
2.2.1 画像処理機能の使用例 ............................................................. 2-20
2.2.1a 画像の明るさとコントラストの調整................................. 2-20
2.2.1b ノイズフィルタの適用............................................................. 2-20
2.2.1c 高速フーリエ変換解析(FFT) ............................................ 2-21
2.2.1d 三次元表示................................................................................. 2-22
2.2.1e 断面解析...................................................................................... 2-23
2.2.2 データ処理機能の使用例.......................................................... 2-24
2.2.2a 平滑化処理................................................................................. 2-24
2.2.2b 微分演算...................................................................................... 2-25
2.2.2c 測定値の評価............................................................................ 2-26
2.3 ファイルメニュー......................................................................................... 2-27
2.3.1 データディレクトリの変更 ............................................................ 2-27
2.3.2 最新の測定結果を読み込む .................................................... 2-27
2.3.3 データを開く...................................................................................... 2-27
2.3.4 データ検索 ......................................................................................... 2-27

TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.3.5 データを閉じる..................................................................................2-27
2.3.6 データを保存 .....................................................................................2-27
2.3.7 現在のデータ以外を閉じる........................................................2-27
2.3.8 すべてのデータを閉じる...............................................................2-27
2.3.9 再生........................................................................................................2-27
2.3.10 印刷........................................................................................................2-27
2.3.11 レポート制作 .......................................................................................2-27
2.3.12 設定を保存.........................................................................................2-27
2.3.13 設定を読み込む...............................................................................2-27
2.3.14 終了........................................................................................................2-28
2.4 編集メニュー................................................................................................2-28
2.4.1 画像/グラフをクリップボードへ..............................................2-28
2.4.2 データの貼り付け............................................................................2-28
2.4.3 クリップボードのデータをクリア ................................................2-28
2.4.4 WinSPMのプロパティ...................................................................2-28
2.5 計算処理メニュー(画像処理機能).................................................2-31
2.5.1 フィルタ演算.......................................................................................2-31
2.5.1a フィルタの種類...........................................................................2-32
2.5.1b 各フィルタの要素成分 ...........................................................2-32
2.5.1c フィルタリング演算方法 ........................................................2-33
2.5.2 エッジ強調 ..........................................................................................2-34
2.5.3 微分演算 .............................................................................................2-35
2.5.4 階調の平均 ........................................................................................2-36
2.5.5 階調の偏差 ........................................................................................2-36
2.5.6 スパイク除去......................................................................................2-37
2.5.7 傾斜補正 .............................................................................................2-38
2.5.8 演 算................................................................................................2-39
2.5.9 画像間演算........................................................................................2-40
2.6 分析処理メニュー(画像処理機能).................................................2-41
2.6.1 断面解析 .............................................................................................2-41
2.6.1a シングルプロファイル ..............................................................2-41
2.6.1b マルチプロファイル...................................................................2-45
2.6.1c エクストラプロファイル ...........................................................2-48
2.6.1d 複数画像プロファイル............................................................2-49
2.6.2 測 量................................................................................................2-51
2.6.2a 領 域............................................................................................2-51
2.6.2b ライン ..............................................................................................2-52
2.6.2c 点 ......................................................................................................2-53
2.6.2d 表面粗さ .......................................................................................2-53
2.6.2e 表面積............................................................................................2-53
2.6.3 画像拡大 .............................................................................................2-54
2.6.4 画像の切り出し................................................................................2-54
2.6.5 周波数空間分析(FFT)...............................................................2-55
2.6.6 粒子解析 .............................................................................................2-62
2.6.7 単位格子解析...................................................................................2-67
2.6.8 表面粗さ ..............................................................................................2-68
2.7 画像処理メニュー(画像処理機能).................................................2-70
2.7.1 移 動................................................................................................2-70
2.7.2 回 転................................................................................................2-71
2.7.3 鏡 像................................................................................................2-72
2.7.4 サイズ変更..........................................................................................2-73
2.7.5 空フレームへ挿入 ............................................................................2-74

TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.7.6 ドリフト補正 ........................................................................................ 2-74


2.7.7 ユニットセルで再構成................................................................... 2-75
2.7.8 画像の抜き出し ............................................................................... 2-76
2.7.9 画像の置き換え .............................................................................. 2-76
2.8 高さ情報メニュー(画像処理機能)................................................. 2-77
2.8.1 明度・コントラスト ............................................................................ 2-77
2.8.2 範囲指定............................................................................................. 2-79
2.8.3 ヒストグラム ....................................................................................... 2-80
2.8.3a 表 示 ........................................................................................... 2-80
2.8.3b 平均化 ........................................................................................... 2-80
2.8.4 LUTを表示......................................................................................... 2-81
2.8.5 LUTを直線化 ................................................................................... 2-82
2.8.6 演 算 ............................................................................................... 2-82
2.8.7 高さ情報の統一 .............................................................................. 2-83
2.9 表示メニュー(画像処理機能)........................................................... 2-86
2.9.1 再表示.................................................................................................. 2-86
2.9.2 表示設定............................................................................................. 2-86
2.9.3 表示切り替え.................................................................................... 2-88
2.9.4 三次元表示 ....................................................................................... 2-89
2.9.4a 簡易描画モードと精密描画モード .................................. 2-89
2.9.4b 三次元表示表示設定ダイアログ .................................... 2-89
2.9.5 表示色設定 ....................................................................................... 2-93
2.9.6 表示ウィンドウをクリア ................................................................. 2-96
2.9.7 表示ウィンドウから取得 .............................................................. 2-96
2.9.8 測定パラメータを変更.................................................................. 2-97
2.9.9 SPS測定位置を表示 .................................................................... 2-98
2.10 マッピングメニュー(画像処理機能)............................................ 2-100
2.10.1 表示設定.......................................................................................... 2-101
2.10.2 特殊表示.......................................................................................... 2-102
2.10.3 表示画像を選択........................................................................... 2-103
2.10.4 データセットを編集 ...................................................................... 2-104
2.10.5 平均処理.......................................................................................... 2-107
2.10.6 データセットの複製 ..................................................................... 2-107
2.10.7 スペクトルの抽出 ......................................................................... 2-108
2.10.8 全スペクトルをファイルに出力............................................... 2-109
2.10.8b 特殊解析................................................................................... 2-111
2.10.8c FCマッピングから粘着力像を抽出.............................. 2-111
2.10.8d F-Vマッピングから表面電位像を抽出..................... 2-112
2.11 計算処理メニュー(データ処理機能).......................................... 2-113
2.11.1 スムージング................................................................................... 2-113
2.11.2 X軸演算/Y軸演算 .................................................................. 2-114
2.11.3 スペクトラム間演算..................................................................... 2-115
2.11.4 微分演算.......................................................................................... 2-116
2.11.5 ベースライン補正 ......................................................................... 2-117
2.12 分析処理メニュー(データ処理機能).......................................... 2-118
2.12.1 近似曲線.......................................................................................... 2-118
2.12.2 拡 大 ............................................................................................ 2-119
2.12.3 測 量 ............................................................................................ 2-119
2.12.4 グループ表示 ................................................................................. 2-120
2.12.5 FFT表示........................................................................................... 2-121
2.13 表示メニュー(データ処理機能) .................................................... 2-122
2.13.1 再プロット......................................................................................... 2-122

TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.13.2 プロット設定....................................................................................2-122
2.14 選択メニュー.............................................................................................2-124
2.15 ウィンドウメニュー..................................................................................2-125
2.16 SPM設定メニュー..................................................................................2-126
2.16.1 カンチレバ設定..............................................................................2-126
2.17 ヘルプメニュー.........................................................................................2-129

TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.1 解析ソフトウェアの基本操作
2.1.1 解析ソフトウェアの起動
以下の手順で解析ソフトウェアを起動します

1. デスクトップの[解析]アイコンをダブルクリックする。
解析ソフトウェアが起動し,ログインダイアログが表示されます。

解析ソフトウェアのログインダイアログ

測定ソフトウェアが起動している場合も,このウィンドウが表示されます。
ユーザー名の管理については,「1.3 ユーザー名の管理」を参照してください。

2. ユーザー名とパスワードを入力後[ログイン]をクリックする。
解析ソフトウェアが起動し,初期画面が表示されます。

解析ソフトウェアの初期画面

TM-57553FST4-1 2-1
2 解析操作

2.1.2 画像処理機能とデータ処理機能
解析ソフトウェアには,大きく分けて画像処理機能とデータ処理機能の2種類の解析機能
が搭載されています。画像処理機能ではSPM画像の解析を,データ処理機能ではSPSス
ペクルの解析を行います。メインメニューとアイコンドックの内容はそれぞれの機能で異なり
ますが、表示されているデータの種類(画像データかスペクトルデータ)により自動的に切り
替わります。

画像処理機能実行時の画面

データ処理機能実行時の画面

2-2 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.1.3 アイコンドックとショートカットアイコン
アイコンドックには,頻繁に使用する処理機能へのショートカットアイコンが用意されています。

2.1.3a 共通ショートカットアイコン
両処理機能のアイコンドックに用意されているショートカットアイコンです。

測定ソフトウェアとのデータ同期
最新の測定データファイルを読み込みます。この機能を
最新の測定結果を 使用するには,解析ソフトウェアが測定ソフトウェアと同
測定ソフトウェアから読み込む じディレクトリ上で実行されている必要があります。(測
定ソフトウェア Version 5.20以上)

データファイル操作・データの印刷
データファイルをディスクから読み込みます。
データを開く ソフトウェア起動直後は,読込み元としてユーザーディ
レクトリを参照します。

内容をプレビューしながら,データファイルをディスクから
データを開く(プレビュー付き) 読み込みます。画像データとスペクトルデータのプレビ
ューが可能です。

測定データや解析結果などをディスクへ保存します。
データを保存 ソフトウェア起動直後は,保存先としてユーザーディレク
トリを参照します。

印刷 測定データや解析結果などをプリンタへ出力します。

レポート製作・再生

レポート製作 レポートシートの製作を開始します。

連続測定機能を使用して測定した連続画像を,簡易
再生
動画再生します。

クリップボード機能
現在の画像表示ウィンドウに表示されている内容を,画
像データとしてクリップボードに転送します。
画像をクリップボードへ
クリップされるデータはBMP画像のため、テキスト情報
は無視されます。

測定ソフトウェアでクリップボードへ転送した測定データ
データの貼り付け
を取り込みます。

TM-57553FST4-1 2-3
2 解析操作

2.1.3b 画像処理機能ショートカットアイコン
画像処理機能でのアイコンドックに用意されているショートカットアイコンです。

表示設定

表示設定ダイアログを開き,画像データの表示設定を
表示設定
行います。

表示色設定ダイアログを開き,画像データの表示色と
表示色設定
テキストの表示色を設定します。

画像処理

明度・コントラスト 画像データ表示色の明度とコントラストを調整します。

傾斜補正処理を行います。
傾斜補正 表面形状像では,一般に傾斜補正を行ってから各種解
析処理を行います。

3×3もしくは5×5行列演算によるフィルタ演算処理で,
フィルタ演算
測定画像のノイズ除去処理を行います。

5点もしくは9点のメディアンフィルタ演算で,測定画像
スパイク除去
のスパイクノイズ除去処理を行います。

解析処理
断面解析処理を実行します。
シングルプロファイル 線分上の断面図・粗さ情報,および画像全体の粗さ情
報が得られます。

ひとつの画像データ上で,複数の断面解析を行います。
マルチプロファイル 最大5つの断面解析処理を行うことができます。
それぞれの線分上の断面図・粗さ情報が得られます。

表面粗さ解析(3次元粗さ解析)を行います。
表面粗さ解析
画像全体と指定領域における粗さ情報が得られます。

複数の画像における同一線分上の断面解析処理を実
行します。最大3つの画像間で解析を行えます。
複数画像プロファイル
それぞれの画像上で,同一線分上の断面図・粗さ情報
が得られます。

粒子解析処理を実行します。
粒子解析 測定画像を高さ階調で領域分けし,領域の形状情報の
統計分布を計算します。

2-4 TM-57553FST4-1
2 解析操作

画像変換機能
測定画像に対してFFT(高速フーリエ変換)処理を行
い,周波数空間画像に変換します。
周波数空間分析(FFT) 周期構造解析が行えるだけでなく,逆FFT処理によっ
て周期構造のピックアップや周期ノイズの除去などが行
えます。

測定画像を三次元表示(立体視表示)します。
三次元表示 視野や光源位置を調整することにより,より詳細に表面
形状を可視化することができます。

2.1.3c データ処理機能ショートカットアイコン
画像処理機能でのアイコンドックに用意されているショートカットアイコンです。

表示設定

プロット設定ダイアログを開き,スペクトルデータの表示
プロット設定
設定を行います。

表示色設定ダイアログを開き,テキストの表示色を設定
表示色設定
します。

解析処理

スペクトルデータを高次式(1~19次式)で近似し,近似
近似曲線 結果を表示すると共に,標準偏差・相関係数・近似項
の値を表示します。

拡大 スペクトルデータの一部分を拡大して表示します。

スペクトルデータ上で2点の測量点を指定し,それぞれ
測量
の数値と測量点間の差を表示します。

複数のスペクトルを,同一グラフ上に表示します。
グループ表示
最大で8つのスペクトルを表示できます。

TM-57553FST4-1 2-5
2 解析操作

2.1.4 データの読み込み
ここでは,測定データを解析ソフトウェアに読み込む方法について説明します。
解析ソフトウェアでは次の種類のファイルが読み込み可能です。

種 類 内 容
標準画像(*.tif) 画像データファイル
スペクトル(*.spc) スペクトルデータファイル
レポート(*.rpt) レポートファイル
ビットマップ(*.bmp) ビットマップ画像ファイル

2.1.4a 測定ソフトウェアから測定データを転送する
測定ソフトウェアと解析ソフトウェアを同時に使用している場合,測定ソフトウェアから解析ソ
フトウェアに測定データを転送することができます。

● すべての測定データを一度に転送する場合
この方法では,測定ソフトウェアで測定され,ユーザーディレクトリに書き込まれたデータファ
イルを一度に読み込みます。以下の手順で実行します。
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
確認メッセージが表示されます。
測定実行中に使用する場合,測定ソフトウェアでのデータ保存のタイミングによっ
ては,すべての測定結果を読み込めない場合がありますので注意してください。
2. [OK]をクリックし,最新の測定結果を読み込む。
測定ソフトウェアで保存されたデータファイルがすべて読み込まれます。
一度解析ソフトウェアに読み込まれたデータファイルは,もう一度この機能を実行
しても読み込まれません。
この機能を使用するには,解析ソフトウェアが測定ソフトウェアと同じディレクトリ上で実
行されている必要があります。また測定ソフトウェアは,Version 5.20以上を使用して
ください。

● ひとつの測定データを測定ソフトウェアから転送する場合
この方法では,クリップボードを経由して選択されたひとつの測定データを,測定ソフトウェア
から解析ソフトウェアに転送します。以下の手順で実行します。
1. 測定ソフトウェアで転送したい画像を表示ウィンドウに表示する。
2. 測定ソフトウェアのアイコンドックで[ ]をクリックする。
表示されている測定データが,クリップボードにコピーされます。
また,クリップボード内のデータをペーストするかの確認ウィンドウが表示されます。
3. アプリケーションを解析ソフトウェアに切り替える。
タスクバー等からアプリケーションを切り替えてください。

2-6 TM-57553FST4-1
2 解析操作

4. 確認ウィンドウで[はい]をクリックする。
測定ソフトウェアでコピーしたデータが、現在の表示ウィンドウにペーストされます。

2.1.4b ファイルを読み込む
ファイル名(画像データファイル(*.tif),スペクトルデータファイル(*.spc),レポートファイル
(*.rpt),ビットマップファイル(*.bmp)を指定することで読み込みます。
以下の手順で実行します。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。ダイアログは,一番最後にデー
タを読み込んだディレクトリ(ソフトウェア起動直後はユーザーディレクトリ)を参照しま
す。[ファイルの種類(T)]を変更することにより,ファイルダイアログに表示されるデータ
ファイルの種類を限定することができます。
標準では,すべての読み込み可能なデータファイルが表示されるようになっていま
す。

データを開くダイアログ

2. 読み込むファイルを選択し,[開く(O)]ボタンをクリックする。
ファイルが読み込まれ,表示されます。複数のファイルを指定した場合も,すべてが読
み込まれ,表示されます。

2.1.4c ファイルの内容を確認しながら読み込む
この方法では,ファイルに保存されている測定データの内容を確認(プレビュー)しながら,
読み込むファイルを選択することができます。プレビューできるデータは,画像データファイ
ル(*.tif)とスペクトルデータファイル(*.spc)です。以下の手順で実行します。

TM-57553FST4-1 2-7
2 解析操作

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
データ検索ダイアログが表示されると共に,表示ウィンドウに測定データのプレビュー
が表示されます。
データ検索ダイアログは,表示前に参照ディレクトリ内部の対象ファイルの検索を
行います。参照ディレクトリ内部に多くのデータファイルが存在する場合,ダイアロ
グ表示までに時間がかかりますので注意してください。
2. プレビューしたいデータが保存されているディレクトリを選択する。
データ検索ダイアログ上部のディレクトリツリーから,参照するディレクトリを選択してく
ださい。ダイアログは,一番最後にデータを読み込んだディレクトリ(ソフトウェア起動直
後はユーザーディレクトリ)を参照します。現在のパスは,ディレクトリ最上部に表示され
ています。

プレビュー状態の表示ウィンドウとデータ検索ダイアログ

3. サブディレクトリを参照するかどうかを選択する。
[内部ディレクトリも検索]チェックボックスがチェックされていると,参照しているディレク
トリ内にあるサブディレクトリの中のデータファイルもプレビュー対象とします。
対象となるサブディレクトリの階層は1階層下のディレクトリまでです。
4. プレビューしたいデータの種類を選択する。
[検索データ]の[画像]もしくは[スペクトル]ラジオボタンをクリックすることで,検索デ
ータの種類を選択します。
5. 読み込むデータファイルを探す。
[<<]ボタンと[>>]ボタンをクリックすることで,プレビュー表示するデータファイルを移動
することができます。また,[ファイルリスト]からファイルをピックアップすることで,プレビ
ューファイルを移動させることもできます(選択したファイルが,プレビューデータの先頭
に移動します)。

2-8 TM-57553FST4-1
2 解析操作

6. プレビューをダブルクリックして,データファイルを読み込む。
データ検索ダイアログを表示している間は,連続してファイルを読み込むことがで
きます
読み込みたいファイルが見つかったら,表示ウィンドウの16分割された領域の,読み
込みたいデータがプレビューされている領域の上でマウスの左ボタンをダブルクリ
ックし,データファイルを読み込みます。
7. ダイアログの[閉じる]ボタンをクリックして,データファイルの読み込み処理を終
了する。

2.1.5 データの保存
ここでは,読み込んだ測定データを解析ソフトウェアで処理・解析した後に,その結果をファ
イルに保存する方法について説明します。
解析ソフトウェアでは次の種類のファイルが保存可能です。

種 類 内 容
標準画像(*.tif) 画像データファイル (16bit Tiff フォーマット)
8bitデータに圧縮された画像データファイル
圧縮画像(8bit) (*.tif)
標準的なTIFF画像として取り扱うことができます
バイナリ画像(*.bin) 画像データの16bitバイナリダンプデータファイル
アスキー画像(*.asc) 画像データの256階調アスキーダンプデータファイル
FFTバイナリ画像(*.bft) FFT画像データの16bitバイナリダンプデータファイル
FFTアスキー画像(*.aft) FFT画像データの256階調アスキーダンプデータファイル
スペクトル(*.spc) スペクトルデータファイル
スペクトルデータの測定値アスキーダンプデータファイル
XYデータ(*.dat)
表計算ソフトなどで読み込むことができます
シングルプロファイル解析での解析結果のテキストファイル
解析結果(*.spd)
成形することで,表計算ソフトなどで読み込むことができます
マルチプロファイル解析での解析結果のテキストファイル
解析結果(*.mpd)
成形することで,表計算ソフトなどで読み込むことができます
エクストラプロファイル解析での解析結果のテキストファイル
解析結果(*.epd)
成形することで,表計算ソフトなどで読み込むことができます
解析結果(*.rpd) 二次元粗さ解析での解析結果のテキストファイル
解析結果(*.dat) 粒子解析での統計解析結果のテキストファイル
ヘッダ情報(*.hdr) 測定パラメータ等を記録したヘッダ情報のみのファイル
レポートファイル
レポート(*.rpt)
レポートにまとめたデータがパックされています
ビットマップ(*.bmp) ビットマップ画像ファイル
レポートファイル保存時に、同じファイル名でレポートファイルと
レポートとビットマップ
ビットマップファイルを同時に保存します。

以下の手順で行います。

TM-57553FST4-1 2-9
2 解析操作

1. 保存するデータ(画像・スペクトル・各種解析シート・レポート)が表示されている
状態で,アイコンドックの[ ]をクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。
ダイアログの参照場所は,最後にデータを保存したディレクトリ(ソフトウェア起動
直後はユーザーディレクトリ)です。[ファイルの種類(T)]に表示される内容は,保
存するデータの種類によって異なりますが,保存したいファイル形式を選択します。
2. 保存するディレクトリとファイル名を指定し,[保存(S)]ボタンをクリックする。
データが[ファイルの種類(T)]で指定したファイル形式で保存されます。

2.1.6 データの印刷
ここでは,表示されているデータをプリンタなどに出力する方法について説明します。
以下の手順で行います。

1. 出力するデータ(画像・スペクトル・各種解析シート・レポート)が表示されている
状態で,アイコンドックの をクリックする。
印刷ダイアログが表示されます。
2. 印刷条件を設定する。
出力するデータが画像データかスペクトルデータ(表示ウィンドウに表示されるデータ)
の場合,ダイアログに[SPMデータ情報も印刷]チェックボックスが表示されます。これ
をチェックしておくと,印刷時にデータと共に測定パラメータなどが印刷されます。

[SPMデータ情報も印刷]チェックボックス

3. [OK]ボタンをクリックする。
印刷内容のデータが出力されます。

2-10 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.1.7 ユーザーディレクトリの変更
ユーザーディレクトリを変更する場合は,メインメニューの[ファイル]から[データディレクトリ
の変更]を選択するか、「WinSPMのプロパティ」ダイアログ上から、「ユーザーディレクトリ」
項目の「変更」ボタンをクリックします。
WinSPMのプロパティダイアログの表示方法については、「2.2.4 WinSPMのプロパ
ティ」を参照してください。
「ユーザーディレクトリの変更」ダイアログが表示されますので,変更したいディレクトリを指
定してください。また,[新規作成]からフォルダを新規に作成できます。

ユーザーディレクトリの変更ダイアログ

上記フォルダからはマイネットワークも参照できますが,ネットワークの参照は処理速度
がトラフィック状況などに左右されますので,ユーザーディレクトリはローカルディスク上
に設定することをおすすめします。
もしネットワーク上のフォルダをユーザーディレクトリに指定する必要がある場合は,目
的のフォルダをPCのネットワークドライブに登録してから設定してください。

2.1.8 測定データをまとめる
解析の終わったデータをレポートにまとめます。レポート上では簡単な注釈文と図形の編集
を行うことができます。レポートはレポートファイル(*.rpt)やビットマップ(*.bmp)として保存
することができます。データをレポートにまとめることにより,測定データをひとつにパックして,
解析結果を保存することができます。

2.1.8a データや解析結果をレポートにまとめる
■ 画像データとスペクトルデータをレポートにまとめる
1. 表示ウィンドウにデータを表示する。
2. 表示ウィンドウがアクティブな状態で,アイコンドックの[ ]をクリックする。
「レポート制作」ダイアログが表示されます。
3. データの一覧(画像データとスペクトルデータの両方の一覧)が表示されるので,
[選択]ボタンをクリックしてまとめるデータを選択する。

TM-57553FST4-1 2-11
2 解析操作

レポート製作ダイアログ

データは,最大3つまで選択できます。
[ ]をクリックした際に表示ウィンドウに表示されたデータは,自動的に1番目の
データとして選択されています。
4. データの選択が終了したら[制作]ボタンをクリックする。
「レポート」ウィンドウが表示されます。

レポートウィンドウ(表面形状)

■ 三次元表示画像を出力シートにまとめる
1. 表示ウィンドウにデータを表示する。
2. アイコンドックの[ ]をクリックし,三次元表示画像を制作する。
3. 三次元表示ウィンドウがアクティブな状態で,アイコンドックの[ ]をクリックす
る。
二次元表示画像と三次元表示画像がペアとなった出力シートが作成され,レポートウ
ィンドウに表示されます。

2-12 TM-57553FST4-1
2 解析操作

レポートウィンドウ(三次元表示)

■ 断面解析・粗さ解析結果を出力シートにまとめる。
1. 表示ウィンドウにデータを表示する。
2. 各種断面解析や粗さ解析を実行する。
3. 各種解析ウィンドウがアクティブな状態で,アイコンドックの[ ]をクリックする。
各種解析ウィンドウの表示内容がそのまま出力シートとして制作され,「レポート」ウィン
ドウに表示されます。

レポートウィンドウ(断面解析)

TM-57553FST4-1 2-13
2 解析操作

2.1.8b レポート上に注釈文や図形を追加する
レポート上では簡単な注釈文と図形の編集を行うことができます。

■ 注釈文や図形の追加

● 注釈文や図形の追加手順
以下の手順で操作します。

1. 製作したレポート上で,マウスの右ボタンをクリックする。
「基本ポップアップメニュー」が表示されます。

基本ポップアップメニュー

2. ポップアップメニューから追加したい要素を選択する。
レポートに要素が追加されます。
選択するには,ポップアップメニューの項目にポインタを合わせ,マウスの左ボタン
をクリックします。
3. レポートで編集を行う。
編集方法については後述します。

● ラベルの追加
1行文を追加します。フォント・文字色・枠線の有無を選択できます。
ポップアップメニューから[ラベルを追加]を選択すると,「ラベル編集」ダイアログが表示さ
れますので,追加する1行文を入力してください。

● テキストの追加
複数行文を追加します。フォント・文字色・枠線の有無を選択できます。
ポップアップメニューから[テキストを追加]を選択してから,テキストをレポート上の表示枠か
ら選択してください。表示枠を指定すると「テキスト編集」ダイアログが表示されますので,追
加する文を入力します。テキスト表示枠の大きさや位置は,後からでも変更可能です。

2-14 TM-57553FST4-1
2 解析操作

● 線分を追加
線分を追加します。線の太さ・色・端点のマークを選択できます。
ポップアップメニューから[線分を追加]を選び,線分の終点をレポート上で選択してくださ
い。

● 円形を追加
円形を追加します。線の太さ・色・背景色を選択できます。
ポップアップメニューから[円形を追加]を選び,円形の大きさをレポート上で調整してくださ
い。
キーボードのShiftキーを押しながらマウスを動かすと,円の縦横の長さが等しくなりま

● 四角形を追加
四角形を追加します。線の太さ・色・背景色を選択できます。
ポップアップメニューから[四角形を追加]選択してから,四角形の大きさをレポート上で調
整してください。
キーボードのShiftキーを押しながらマウスを動かすと,四角の縦横の長さが等しくなり
ます

■ 注釈文や図形の選択
追加した注釈文や図形上でマウスの左ボタンをクリックすると,注釈文や図形に枠線や赤
いアンカーマークが表示されます。この状態のときが,注釈文や図形が選択された状態にな
ります。注釈文や図形が選択された状態で,マウスの右ボタンをクリックすると,オブジェクト
ポップアップメニューが表示されます。オブジェクトポップアップメニューからは,選択した注
釈文や図形の設定が行えます。

オブジェクトポップアップメニュー

また注釈文や図形が存在しないときに,マウスの左ボタンをクリックしながらドラッグすると,
選択枠線が波線で表示されます。複数の注釈文や図形をこの選択枠線で囲うと,複数の
注釈文や図形を同時に選択状態にできます。

TM-57553FST4-1 2-15
2 解析操作

■ 注釈文や図形の表示位置・大きさの変更
注釈文や図形が選択状態になると,マウスポインタが十字矢印に変更され,注釈文や図
形を囲む選択枠(破線で表示)もしくポインタマーク(赤い四角マーク)が表示されます。
この状態で選択枠もしくはポインタマークをドラッグすれば,注釈文や図形の位置および大
きさを変更できます。
図形の大きさを変更するときに,キーボードのShiftキーを押しながらドラッグすると,図形の
縦横の長さが等しくなります。

■ 注釈文や図形の削除
注釈文や図形が選択された状態で,四角形上でマウスの右ボタンをクリックすると,オブジ
ェクトポップアップメニューが表示されます。
ここで,[オブジェクトを削除]を選択すると,選択した注釈文や図形が削除されます。
また複数の注釈文や図形を選択している状態で[選択されたオブジェクトを削除]を選択
すると,選択したすべての注釈文や図形が削除されます。

■ 注釈文や図形の調整
注釈文や図形は,後から調整を行うこともできます。

● 注釈文の調整
オブジェクトポップアップメニューから[オブジェクトを編集]を選択し,表示される「ラベル編
集」ダイアログもしくは「テキスト編集」ダイアログから,[フォント]・[文字色]・[枠線の有無]
を設定します。
• フォントの選択
[フォント]の[設定]ボタンをクリックすると,「フォント」ダイアログが表示されるので,[フ
ォントの種類]・[スタイル]・[サイズ]・[文字飾り]を設定してください。
• 枠線の設定
[枠線]を[有り]に設定すると,[設定]ボタンがアクティブになります。[設定]ボタンをク
リックすると「図形編集」ダイアログが表示されるので,[枠線の太さ]・[色]および[背
景色]を設定してください。

2-16 TM-57553FST4-1
2 解析操作

ラベル編集ダイアログとテキスト編集ダイアログ

● 図形の調整
オブジェクトポップアップメニューから[オブジェクトを編集]を選択し,表示される「線分編
集」ダイアログもしくは「図形編集」ダイアログから,[線の色]・[太さ],[背景色]などを設定し
ます。

線分編集ダイアログと図形編集ダイアログ

■ 注釈文や図形の上下関係の変更
注釈文や図形は,追加された順に重なっているため,下にある注釈文や図形が見えなくな
ることがあります。このような場合には,注釈文や図形の上下関係を変更してください。
注釈文や図形の上下関係を変更するには,注釈文や図形が選択された状態からポップア
ップメニューを呼び出し,[最前面に移動][前面に移動][背面に移動][最背面に移動]の
いずれかを選択してください。

TM-57553FST4-1 2-17
2 解析操作

■ データ情報の編集
画像データとスペクトルデータからレポートを作成した場合,データの下には測定パラメータ
などのデータ情報がテキスト表示されます。このデータ情報の項目や内容を変更する場合
は,以下の手順で操作します。

1. 作成したレポート上で,マウスの右ボタンをクリックする。
「基本ポップアップメニュー」が表示されます。
2. 編集したいデータ情報によって,[データ1の情報を編集][データ2の情報を編集]
[データ3の情報を編集]を選択する。
「データ情報編集」ダイアログが表示されます。
データ1とは,レポートの一番左に表示されているデータで,データ3が一番右に表
示されるデータです。レポートにまとめたデータの数によって選択できる項目が変
わります。
3. 表示する項目を選択し,必要である表示内容を編集する。
各データ情報の横にあるチェックボックスによって,表示・非表示を選択できます。
また,[編集]ボタンをクリックすると,表示するテキストの内容を変更できます。
グレー表示になっている項目は,データとして記録されていない項目です。これは
データを測定したときの,SPMモードやオプション測定モードなどによって変わりま
す。

データ情報編集ダイアログ

2-18 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.1.9 連続測定データの再生
連続測定機能を使って測定した連続画像を簡易動画表示します。
以下の手順で操作します。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。ダイアログの参照場所は,一番
最後にデータを読み込んだディレクトリ(ソフトウェア起動直後はユーザーディレクトリ)
です。
2. 保存されている連続画像のどれか一つを開き選択する。
再生コントローラダイアログが表示され,表示ウィンドウに連続画像の一枚目の画像が
表示されます。

簡易動画再生状態の表示ウィンドウと再生コントロールダイアログ

3. 再生コントロールダイアログの[ ]をクリックし,動画再生を開始する。
再生を停止するには[ ]を,一時停止するには[ ]をクリックします。
再生のスピードは,[再生速度]スライダでコントロールできます。
選択した連続画像はメモリ内にロードされませんので注意してください。
一連の連続画像は同じディレクトリ内に存在していないと,読み込みのときにエラ
ーとなりますので注意してください。

その他のコントロールは以下の通りです。
• データ番号・測定時刻・経過時間
連続画像の何番目の画像か,またその測定時刻,および1枚目の連続画像の測定時
刻からの経過時間を表示します。
• ボタンと ボタン
動画再生を行っていない時に,手動で連続画像をコマ送りできます。
またボタン上部のスライダバーでも連続画像を選択できます。
• [繰り返す]チェックボックス
チェックされていると,動画再生を停止するまで繰り返します。

TM-57553FST4-1 2-19
2 解析操作

2.2 解析機能の使用例
2.2.1 画像処理機能の使用例
画像処理機能の中でよく使われるものについて説明します。

2.2.1a 画像の明るさとコントラストの調整
画像が見やすくなるように画像の明るさとコントラストを調整します。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
表示ウィンドウに画像が400×400画素で表示され,調整ダイアログにバーチャートが
表示されます。

調整ダイアログ

2. マウスを用いて,明るさ,コントラストを調整する。
画像の明るさとコントラストはリアルタイムで変化しますので,画像を見ながら調整しま
す。
画像左に表示されているLUTバーおよびヒストグラムバーを使用して,画像の調
整に利用してください。
3. 最適な画像になるように明度とコントラストを調整し,[OK]で決定する。
元の画像の大きさに戻り,変更した明るさ,コントラストで表示されます。

2.2.1b ノイズフィルタの適用
画像の中に含まれる不要なノイズを除去します。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
2. [フィルタ演算]ダイアログが表示されるので,[3×3フィルタ]をクリックする。
[3×3フィルタ演算]ウィンドウが表示されます。

2-20 TM-57553FST4-1
2 解析操作

3×3 フィルタ演算ダイアログ

3. [低域パス]を選択し[OK]を押す。
フィルタリングが開始され,表示ウィンドウにフィルタリングされた画像が表示されます。

2.2.1c 高速フーリエ変換解析(FFT)
結晶や再配列構造など,周期的構造を持っている画像にFFT演算を行います。また,指定
成分のみで逆フーリエ変換を行うこともできます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
2. 表示される[FFT設定]ウィンドウにおいて[変換]を選択する。
フーリエ変換が開始され,終了すると表示ウィンドウに回折パターンが表示されます。

FFT設定ダイアログ

3. 回折パターンのスポットが暗くて見えにくい場合は,[2倍コントラスト]を選択しコ
ントラストを強調する。
2倍コントラストは1回の選択で2倍の明るさになりますが,続けて何度でも選択でき
ます。
不要なスポットを除去して逆フーリエ変換を行う場合は,続けて4~6項の操作を
実行してください。
4. [追加]をクリックする。
5. 有効なスポットに対してマスクウィンドウをかける。

TM-57553FST4-1 2-21
2 解析操作

中心

マスクウィンドウの設定は,カーソルをスポットの中心に持っていきクリックします。次
に半径分カーソルを移動させ,クリックするとウィンドウが表示されます。
マスクウィンドウを消去する場合は,[設定]を[ウィンドウ]にして中心点を指定し,
半径分移動してからクリックすると,その半径分の円の部分が消去されます。
マスクウィンドウを続けて定義する場合は[追加]をクリックします。
6. [逆変換]をクリックする。
逆フーリエ変換された画像が表示されます。
7. [終了]をクリックする。
FFT処理が終了します。

2.2.1d 三次元表示
画像を三次元表示することにより,表面構造が直感的に理解できます。このシステムでは,
得られた画像を簡単に三次元表示できます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「三次元表示」ウィンドウと,「三次元表示設定」ダイアログが表示されます。

三次元表示設定ダイアログ

2. [精密描画]チェックボックスのチェックを外す。
精密描画チェックボックスがチェックされていると,三次元表示画像は常に精密表
示されるため,表示までの計算に時間がかかります。そのため,三次元表示を調整
する間はチェックボックスのチェックを外しておきます。

2-22 TM-57553FST4-1
2 解析操作

3. オプション設定タブウィンドウで,[表示モード]から[カラー+光沢]を選択し,[αレ
ベル]を設定する。
[αレベル]の値を0.3程度に設定すると表面が濡れたような生物的な表面描画に,
0.7程度に設定すると光沢のある金属的な表面描画になります。
4. 表示設定タブウィンドウで,三次元表示画像の表示方向・位置を設定する。
[回転]で三次元画像の回転を,[Z軸]で高さ方向の表示倍率を[表示位置]で表示
位置を指定します。
5. 表示設定タブウィンドウで,三次元表示画像の表面特性を設定する。
[表面特性]で三次元画像の表面特性を設定します。
[散乱度]を0.5程度,[反射度]を0.5程度に,[輝度]を6.0程度に設定します。
これらの設定値は表示画像によって最適値が異なります。
6. 表示設定タブウィンドウで,三次元表示画像の光源設定を行う。
a. [表示]をチェックする。
光源の位置と三次元画像に対する照射方向が図示されます。
光度が0に設定されている場合は、光源は表示されません。
b. 光源は2つまで設定できるので,図示されている光源位置と三次元表示画像の
変化を見ながら,[光源1][光源2]で光の照射方向と照射光の強さを設定する。
c. 光源設定が終わったら,[表示]のチェックを外す。
7. [精密描画]チェックボックスをチェックする。
精密な三次元表示画像を得ることができます。

2.2.1e 断面解析
SPMでは,取り込んだ画像の高さ方向の情報を得ることは重要なことです。
断面解析には,以下の4つの方法があります。
シングルプロファイル: 測定画像内で任意断面表示とその測長を行う。
マルチプロファイル: 最大5つの断面表示とその測長を行う。
エクストラプロファイル: 周波数解析等を同時に行う。
複数画像プロファイル: 最大3枚の異なる画像上の同一線上断面解析が行う。
断面プロファイルにはプローブ形状が反映されている場合がありますので,解釈に
は十分注意してください。

● シングルプロファイル
1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「シングルプロファイル」ウィンドウが表示されます。
2. 測定位置をマウスで指定する。
シングルプロファイルウィンドウのプレビュー画像上に,測定位置が矢印で表示されて
います。矢印の始点と終点をマウスでドラッグすることにより,任意断面を指定できます。
断面図はウィンドウ下部に表示されます。
3. 必要に応じて断面図内の測長マーカを移動させ,断面図内の測長を行う。

TM-57553FST4-1 2-23
2 解析操作

● 複数画像プロファイル
1. 表示ウィンドウに,セットで解析したい最初の画像を表示する。
2. アイコンドックの[ ]をクリックする。
「複数画像プロファイル」ウィンドウが表示されます。
3. 測定データ一覧からセットで測定したいデータを選択し,[制作]ボタンをクリック
する。
「複数画像プロファイル」ウィンドウが表示されます。
4. 測定位置をマウスで指定する。
複数画像プロファイルウィンドウのプレビュー画像上に,測定位置が矢印で表示されま
す。矢印の始点と終点をマウスでドラッグすると,任意断面を指定できます。
断面図はウィンドウ下部に表示されます。
5. 必要に応じて断面図内の測長マーカを移動させ,断面図内の測長を行う。

2.2.2 データ処理機能の使用例
WinSPMシステムでは,30種類以上のデータ処理機能があります。
ここでは一般的なデータ処理について説明します。

2.2.2a 平滑化処理
グラフ中にノイズ成分が多い場合はスムージングを行います。
全体に小さなノイズが多い場合は[平均]が有効です。スパイク状の突発的なノイズがある
場合は[メディアン]が有効です。
平滑化処理をおこなった場合,データは平滑化計算により処理前の値から変化します
ので,実行に際してはその評価に十分注意してください。

1. メインメニューの[計算処理]から[スムージング]を選択する。
「スムージング」ダイアログが表示されます。

スムージングダイアログ

2-24 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2. [手法]を[平均]にして,スムージングするポイント数を指定し,[OK]を選択する。
スムージングが行われデータが表示されます。
ポイント数は5から7が適当です。端の何点かはスムージングされないので注意が
必要です。

2.2.2b 微分演算
I-Vカーブなどは微分を取って処理することが多くあります。微分演算処理では一次微分・
二次微分・規格化した微分スペクトルを計算することができます。

1. メインメニューの[計算処理]から[微分演算]を選択する。
「微分演算」ダイアログが表示されます。

微分演算ダイアログ

2. [一次微分]を選択し,微分値を計算するための点数を選択する。
5点を選択すると,注目する点とその左右2点ずつの計5点で微分係数が計算されま
す。

TM-57553FST4-1 2-25
2 解析操作

2.2.2c 測定値の評価
グラフ上の任意の点での値や,2点間の相対的な値の差を測定することができます。

1. アイコンドックの[ ]をクリックする。
以下のような表示ウィンドウが表示されます。

表示ウィンドウ(測定値の評価)

2. グラフ上の赤と緑のマーカをマウスでドラッグし,測量点を設定する。
グラフ右に,マーカ位置の値と2点間の相対値が表示されます。
3. 処理を終了する際はマウスの右ボタンを押す。
右ボタンをクリックするまでの間(マウスカーソルが手のひら形に変化している間)は,マ
ーカ位置は自由に移動させることができます。

2-26 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.3 ファイルメニュー
2.3.1 データディレクトリの変更
1.4.7項「ユーザーディレクトリの変更」を参照してください。

2.3.2 最新の測定結果を読み込む
1.4.4a項「測定ソフトウェアから測定データを転送する」を参照してください。

2.3.3 データを開く
1.4.4b項「ファイルを読み込む」を参照してください。

2.3.4 データ検索
1.4.4c項「ファイルの内容を確認しながら読み込む」を参照してください。

2.3.5 データを閉じる
現在,「表示ウィンドウ」に表示されているカレントイメージを作業メモリ上から消去します。消
去した後に他のデータがあれば,[選択]リストの次のデータが表示されます。
消去後何もデータがない場合,表示はそのまま残りますがメニューバーの表示がグレー表
示に変わります。

2.3.6 データを保存
1.4.5項「データの保存」を参照してください。

2.3.7 現在のデータ以外を閉じる
現在「表示ウィンドウ」に表示されているカレントイメージは作業メモリ上に残したまま,他の
データをすべて作業メモリ上から消去します。

2.3.8 すべてのデータを閉じる
作業メモリ上にあるデータをすべて消去します。

2.3.9 再生
1.4.9項「連続測定データの再生」を参照してください。

2.3.10 印刷
1.4.6項「データの印刷」を参照してください。

2.3.11 レポート制作
1.4.8項「測定データをまとめる」を参照してください。

2.3.12 設定を保存
設定したパラメータを保存します。「設定を保存」機能を用いて保存したパラメータの設定
は,次回起動時に読み込まれて設定されます。

2.3.13 設定を読み込む
「設定を保存」で保存したパラメータを読み込みます。

TM-57553FST4-1 2-27
2 解析操作

2.3.14 終了
ソフトウェアを終了します。

2.4 編集メニュー
2.4.1 画像/グラフをクリップボードへ
現在アクティブなウィンドウに表示されている画像やグラフなどを,クリップボード経由で他の
アプリケーションに転送することができます。
クリップボードへ転送するデータはビットマップイメージに変換されたデータになりますので,
測定情報などは含まれていません。また画像やグラフに描かれた文字もビットマップイメー
ジに変換され,転送後の文字表示が粗く見えることがありますので注意してください。

2.4.2 データの貼り付け
1.4.4a項「測定ソフトウェアから測定データを転送する」を参照してください。

2.4.3 クリップボードのデータをクリア
クリップボード内に転送した画像やグラフおよびデータを,クリップボード上から削除します。

2.4.4 WinSPMのプロパティ
WinSPMの基本設定を確認・変更する,「WinSPMのプロパティ」ダイアログを開きます。

WinSPMのプロパティダイアログ

2-28 TM-57553FST4-1
2 解析操作

■ ユーザー情報
現在WinSPMにログインしているユーザーの情報を確認・変更します。

• ログインユーザー名
現在WinSPMにログインしているユーザー名が表示されます。
• ユーザーパスワード
現在WinSPMにログインしているユーザーのパスワードが伏せ字で表示されます。
「変更」ボタンをクリックすることで,パスワードを変更することができます。
• ユーザーディレクトリ
現在設定されているユーザーディレクトリ名がフルパスで表示されます。
「変更」ボタンをクリックすることで,ユーザーディレクトリを変更することができます。
• 設定ファイル
現在WinSPMにログインしているユーザーのユーザー設定ファイル名がフルパスで表
示されます。
ユーザー設定ファイルは「編集」ボタンをクリックすることでテキストエディタを使用して
編集可能ですが,編集を誤った場合はWinSPMが正しく動作しなくなる場合がありま
すので,注意してください。

■ 登録ユーザー管理
管理者権限ユーザー(ユーザー名:Admin)専用のユーザー管理機能です。

● パスワードの変更
すでに登録されているユーザーパスワードを,管理者権限で変更します。
1. 「登録ユーザー」リストで,ユーザーパスワードを変更したいユーザーを選択する。
2. [パスワード変更]ボタンをクリックする。
3. 「パスワード変更」ダイアログが表示されるので,「新しいパスワード」と「パスワー
ドの入力確認」に同じパスワードを入力し,[OK]ボタンをクリックする。
4. 入力した2つのパスワードが一致していれば,パスワードが変更されます。
● ユーザーの新規追加
ユーザーを新規に追加します。
1. [新規追加]ボタンをクリックする。
2. 「新規ユーザー登録」ダイアログが表示されるので,新規ユーザー情報を入力し,
[OK]ボタンをクリックする。
3. 入力された「パスワード」と「パスワード確認入力」項目が一致していれば,ユーザ
ーが追加され,「登録ユーザー」リストに表示されます。

● ユーザーのコピー
新規にユーザーを登録した上で,すでに登録されている他のユーザーの情報(測定パラメ
ータ設定・ウィンドウ表示位置・オプション機器設定など)をコピーします。
1. 「登録ユーザー」リストから,複製したいユーザーを選択する。
2. [コピーして追加]ボタンをクリックする。

TM-57553FST4-1 2-29
2 解析操作

3. 「コピーしてユーザー登録」ダイアログが表示されるので,新規ユーザー情報を入
力し,[OK]ボタンをクリックする。
4. 入力された「パスワード」と「パスワード確認入力」項目が一致していれば,ユーザ
ーが追加され,「登録ユーザー」リストに表示されます。

● ユーザーの削除
登録されているユーザーを,管理者権限で削除します。
削除されるユーザーのパスワードを知らなくても削除可能です。
管理者権限ユーザーを削除することはできません。
1. 「登録ユーザー」リストから,削除したいユーザーを選択する。
2. [削除]ボタンをクリックする。
3. 「ユーザー削除」ダイアログが表示されるので,「管理者パスワード」と「パスワード
確認入力」に管理者権限ユーザーのパスワードを入力し,[OK]ボタンをクリックす
る。
4. 入力した2つのパスワードが一致していた場合,確認ダイアログが表示されます。
5. 確認ダイアログの内容を確認の上,[はい(Y)]もしくは[いいえ(N)]をクリックしま
す。
6. [はい(Y)]をクリックした場合はユーザーが削除されます。

■ 壁紙
WinSPMウィンドウ背面に表示する壁紙の設定を行います。

• 壁紙なし
WinSPMウインドウの背面に壁紙を表示しないように設定します。
• JEOLロゴマーク
WinSPMウインドウの背面に,標準壁紙であるJEOLロゴマークを表示します。
• BMP画像ファイル
WinSPMウインドウの背面に,任意のビットマップ画像を表示します。
ビットマップ画像を指定するには,「選択」ボタンをクリックして,表示させたいビットマッ
プ画像ファイルを指定してください。
WinSPMは, “C:\WinSPM\Wallpaper”に存在するビットマップ画像ファイル
のみを壁紙として使用します。「選択」ボタンをクリックしてこのフォルダ以外の場
所にあるビットマップ画像ファイルを壁紙として選択した場合,選択されたビットマ
ップ画像ファイルは“C:\WinSPM\Wallpaper”にコピーされます。
• 表示位置
壁紙画像の表示位置を指定します。指定方法は,Windowsデスクトップにおける背
景画像の表示位置指定と同じです。

2-30 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.5 計算処理メニュー(画像処理機能)
2.5.1 フィルタ演算
フィルタリングとは,画像中に含まれるある周波数成分のノイズを除去するものです。
フィルタ演算には,3×3フィルタ演算と5×5フィルタ演算があります。フィルタ演算(行列式演
算)の3×3フィルタ演算では3行3列の行列式を,5×5フィルタ演算では5行5列の行列式を
用います。3×3フィルタ演算では,適用点(行列の中心)の周囲1pixel範囲でフィルタが適
用されますが,5×5フィルタ演算では,適用点の周囲3pixelの範囲でフィルタが適用されま
す。

1. [計算処理]のプルダウンメニューから[フィルタ演算]を選択し,フィルタ演算の
種類(3×3フィルタ演算か5×5フィルタ演算)を選択する。
対応したフィルタ演算のダイアログが表示されます。
下の図は,3×3フィルタ演算の例です。
2. フィルタの種類をラジオボタンから選択する。
[低域パス]から[垂直スムーズ]の何れかを選択した場合は,フィルタの成分要素が自
動的に[行列要素]に入力されます。
[ユーザー定義1],[ユーザー定義2]を選択した場合は,核となる行列を定義するため
のウィンドウがアクティブになります。
3. [ユーザー定義1],[ユーザー定義2]を選択した場合は,キーボードから成分要素
を-128~+128の整数にて入力する。
各要素の数の合計は128以下にしてください。
TABを押すと数字が入力され,次の行列番号が反転します。
ユーザー定義1,ユーザー定義2で定義した要素は,[ファイルメニュー]の[設定を
保存]を用いてセーブすることができます。
フィルタ演 算 の各 要 素 成 分 についての詳 細 は,2.5.1b項 「各 フィルタの要 素 成
分」の項を参照してください。
4. [OK]をクリックする。
カレントイメージに対してフィルタリングが実行されます。

3×3 フィルタ演算ダイアログ

TM-57553FST4-1 2-31
2 解析操作

2.5.1a フィルタの種類

フィルタの種類 内 容
低域パス 低域フィルタ
中域パス 中域フィルタ
高域パス 高域フィルタ
水平スムーズ 水平方向間のスムージング
垂直スムーズ 垂直方向間のスムージング
ユーザー定義1,2 ユーザーが核となる行列を定義

【例】画像中の1ラインに注目すると,フィルタリング処理の結果は以下になります。

原画像 フィルタリング後

低域パス

高域パス

2.5.1b 各フィルタの要素成分
フィルタ名 3×3フィルタ演算 5×5フィルタ演算

低域パス 1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1
1 1 1 1 1

中域パス 1 2 1 1 2 4 2 1
2 4 2 2 4 8 4 2
1 2 1 4 8 16 8 4
2 4 8 4 2
1 2 4 2 1

高域パス -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1
-1 9 -1 -1 -1 -1 -1 -1
-1 -1 -1 -1 -1 25 -1 -1
-1 -1 -1 -1 -1
-1 -1 -1 -1 -1

2-32 TM-57553FST4-1
2 解析操作

フィルタ名 3×3フィルタ演算 5×5フィルタ演算

水平スムーズ 0 0 0 0 0 0 0 0
1 1 1 0 0 0 0 0
0 0 0 1 1 1 1 1
0 0 0 0 0
0 0 0 0 0

垂直スムーズ 0 1 0 0 0 1 0 0
0 1 0 0 0 1 0 0
0 1 0 0 0 1 0 0
0 0 1 0 0
0 0 1 0 0

2.5.1c フィルタリング演算方法
実際のフィルタリング演算は,各画素について周辺の画素と次のような重み付け平均を行
います。
例えば,画素Eに3×3中域パスのフィルタリングをすると,演算後のE’は次のようになります。
は,各画素について周辺の画素と次のような重み付け平均を行います。

A B C 1 2 1
D E F 2 4 2

G H I 1 2 1
A + 2B + C + 2D + 4E + 2F + G + 2H + I
E’=
≡ 1+2+1+2+4+2+1+2+1
1 2 1 1 1 1
2 4 2 1 1 1

1 2 1 1 1 1

Core Pixel

A B C A’ B’ C’

D E F D’ E’ F’

G H I G’ H’ I’

Original data New data

TM-57553FST4-1 2-33
2 解析操作

2.5.2 エッジ強調
カレントイメージに対して輪郭の強調を行います。
1. [計算処理]のプルダウンメニューから[エッジ強調]を選択する。
「エッジ強調」ダイアログが表示されます。
フィルタリングの方法は3×3フィルタ演算と同じです。
2. [フィルタ種類]のラジオボタンから選択する。
対応するフィルタの要素成分が各「行列要素」に入力されます。
3. [OK]ボタンをクリックする。
カレントイメージに対して輪郭が強調されます。

エッジ強調ダイアログ

● フィルタ輪郭強調の種類
フィルタの種類 内 容 フィルタの種類 内 容
水平方向強調 縦成分の強調 垂直方向強調 横成分の強調
右斜め方向強調 右斜めの成分強調 左斜め方向強調 左斜めの成分強調
輪郭強調 ラプラス変換(輪郭の強調)

2-34 TM-57553FST4-1
2 解析操作

● フィルタの要素成分
各フィルタは3×3の行列で構成されており,要素は次のようになっています。
フィルタ名 要素成分

水平方向強調 -1 2 -1
-1 2 -1
-1 2 -1

垂直方向強調 -1 -1 -1
2 2 2
-1 -1 -1

右斜め方向強調 -1 -1 2
-1 2 -1
2 -1 -1

左斜め方向強調 2 -1 -1
-1 2 -1
-1 -1 2

輪郭強調 -1 -1 -1
-1 8 -1
-1 -1 -1

2.5.3 微分演算
カレントイメージに対してある角度における微分を行います。

1. [計算処理]のプルダウンメニューから[微分演算]を選択する。
「微分演算」ダイアログが表示されます。
2. 角度を入力して,[OK]ボタンをクリックする。
微分演算を実行します。
角度は-90~90度の範囲で入力してください。

0 sinθ 0
0 –sinθ–cosθ 0
0 0 0

TM-57553FST4-1 2-35
2 解析操作

2.5.4 階調の平均
カレントイメージのコントラストの幅を広くします。

[計算処理]のプルダウンメニューから[階調の平均]を選択する。
表示ウィンドウ上に輝度のヒストグラムが表示されます。
階調の平均処理は,元の画像の最も暗い部分が0に,最も明るい部分が255にな
るように画像のコントラストを変化させます。この処理は測定データ自体には影響
しません。
画素数

画素数
0 255 0 255
黒 白(輝度) 黒 白(輝度)

元画像のヒストグラム 処理された画像のヒストグラム

2.5.5 階調の偏差
カレントイメージの平均の濃さと偏差を用いて計算し,コントラストを強調します。

1. [計算処理]のプルダウンメニューから[階調の偏差]を選択する。
表示ウィンドウ上に輝度のヒストグラムが表示されます。
「偏差幅を入力」ウィンドウが表示されます。
2. 偏差の範囲を指定する。
階調の偏差処理が実行されます。

偏差範囲を指定すると,その偏差範囲以内の明るさが0(黒)と白(255)の間に拡張された
像として表示されます。偏差範囲の外側部分は0(黒),または白(255)として表示されます。
この処理は測定データ自体には影響しません。
画素数
画素数
画素数

平均値 平均値

Normalise
S.D

0 255 0 255 0 255


黒 白(輝度) 黒 白(輝度) 黒 白(輝度)

指定する偏差

2-36 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.5.6 スパイク除去
画像中のスパイクノイズなどの雑音を除去します。
計算処理]のプルダウンメニューから[スパイク除去]を選択し,表示されるダイア
ログから[median5]か[median9]のどちらかを選択する。
Medianフィルタが実行されます。

● スパイク除去の原理
スパイク除去処理では,中心の点についてその回りの点を下図のように選択し,これらの5点
または9点の値のうち,中間の値を新しい中心の値として採用します。このようなフィルタ処
理をMedianフィルタと呼びます。

Median5 Median9
● ●●●
●○● ●○●
● ●●●

Medianフィルタは,画像中に電気ノイズ等が原因で混入したスパイクノイズを除去するも
のです。

原画像 フィルタリング像

TM-57553FST4-1 2-37
2 解析操作

2.5.7 傾斜補正
画像の明るさ(バックグラウンド)がある方向に沿って変化している場合,その変化を補正し
ます。

[計算処理]のプルダウンメニューから[傾斜補正]を選択する。
「傾斜補正」ダイアログが表示されます。

Z
元画像

Z
補正画像 Threshold2

Threshold1

傾斜補正ダイアログ

■ 傾斜補正の機能
• 全体
画像全体を1枚の平面として傾きを補正します。
• 指定領域
マウスで指定した矩形を1枚の平面として傾きを補正します。
• DCオフセット
画面全体の明るさのオフセットを計算して補正します。
• 非線形(X)
X方向に湾曲している場合,この湾曲を多次式で近似して補正します。多項式の次数
は,[多項式次数]で指定します。指定できる次数は1~9です。
• 非線形(Y)
Y方向に湾曲している場合,この湾曲を多次式で近似して補正します。多項式の次数
は,[多項式次数]で指定します。指定できる次[OK]をクリックすると補正が行われま
す。
• 線平均
X方向の各ラインの平均値を,画面全体の高さの平均値にフィッティングすることによっ
て,上図右のような画像を補正します。[OK]をクリックすると,しきい値バーチャートが
表示されますので,プレビューを参照しながら平均値計算を行う高さ範囲を指定しま
す。バーチャート内の[OK]をクリックすると,補正が行われます。
ほとんどの場合,しきい値は設定する必要はありません。

2-38 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.5.8 演 算
カレントイメージに対して画素ごとの演算を行います。
[計算処理]のプルダウンメニューから[演 算]を選択する。

● 演算の種類
演算名 演算内容 有効値
反転 画像の反転表示 -
乗算 定数と各画素の積 1.0で原画像と同じ
除算 各画素を定数で割ったもの 1.0で原画像と同じ
AND演算 定数と各画素のANDをとる 0~65535(整数値)
OR演算 定数と各画素のORをとる 0~65535(整数値)
XOR演算 定数と各画素のXORをとる 0~65535(整数値)
加算 各画素と定数の和 0~65535(整数値)
減算 各画素と定数の差 0~65535(整数値)

AND演算,OR演算,XOR演算,加算,減算で入力できる数値は0~65535ですが,演算
後表示は0~255に変換されて表示されます。
計算後の値が負になった場合は0,255を超えた場合は255になります。
次のように画素の1点ずつに対して計算を行います。


Xa = Xa

【例】
反転 乗算
元画像 計算値 元画像 定数 計算値
0(0000 0000) 255(1111 1111) 20 3.0 60
128(1000 0000) 127(0111 1111) 128 3.0 255

TM-57553FST4-1 2-39
2 解析操作

2.5.9 画像間演算
カレントイメージと,任意に選択したメモリ上の画像との間で,画素ごとの演算を行います。
[計算処理]のプルダウンメニューから[画像間演算]を選択する。

演算名 演算内容
加算 2つの画像の和をとる。 (a+b)/2
減算 2つの画像の差をとる。 (a-b+255)/2
差分 2つの画像の差分をとる。 |a|-|b|
乗算 2つの画像の積をとる。 (a*b)/255
除算 カレントイメージを選択した画像で割る。 a/b bが0のときはa
AND演算 2つの画像のビットごとの論理積をとる。 a AND b
OR演算 2つの画像のビットごとの論理和をとる。 a OR b
XOR演算 2つの画像のビットごとの排他的論理和をとる。 a XOR b
比較(小) 2つの画像の小さい方をとる。
比較(大) 2つの画像の大きい方をとる。

aは表示されている画像,bはリストから選択されたメモリ上の画像です。

● 画像間演算のしくみ

x =

現在フレームメモリに リスト中から選択 計算された画像


表示されている画像 した画像

[例]Addを選択した場合は下図のようになります。

20 200 128 10 74 108

+ =

現在フレームメモリに リスト中から選択 計算された画像


表示されている画像 した画像

2-40 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.6 分析処理メニュー(画像処理機能)
2.6.1 断面解析
カレントイメージ画像で,指定した2点間を直線で結び,その直線上の高さ方向の情報をラ
インプロットで表示します。
解析結果は「表示ウィンドウ」とは別の専用ウィンドウに表示します。

2.6.1a シングルプロファイル
解析画像に対してラインプロファイル解析と,ラインプロファイルの測長を行います。

[分析処理]メニューから[断面]-[シングル]を選択する。
「シングルプロファイル」ウィンドウが表示されます。



シングルプロファイルウィンドウ

① プレビュー画像
解析画像のプレビューが高さ情報と共に表示されています。矢印で表示されている線
分を動かすことにより,解析位置を指定します。
以下は,「プレビュー画像」上での設定項目です。
• 解析位置の指定
線分の両端にマウスカーソルを合わせると,カーソルが十字形に変わります。この
状態でカーソルをドラッグすると解析位置を変更できます。
また,線分の中心にマウスカーソルを合わせてもカーソルが十字形に変わります。
この状態でカーソルをドラッグすると線分全体を移動できます。
カーソルが十字形に変わっている間には,ポップアップウィンドウに画像上での座
標が表示されます。
• ブロードラインとシンプルライン
線分の両端にマウスカーソルを合わせると,カーソルが十字形に変わります。この
状態でマウスの右ボタンをクリックすると,サブメニューが表示されます。
[ブロードライン]を選択すると,線分の表示が以下のように変わります。

TM-57553FST4-1 2-41
2 解析操作

このときの四角形で囲まれた領域の断面形状の平均が,断面解析の結果です。こ
の領域は,四角形の幅をマウスカーソルで変更することにより,自由に変更できま
す。通常の断面形状解析(線分上の形状のみを対象とする解析)に戻すには,サ
ブメニューから[シンプルライン]を選択します。
• マーカの追加と削除
線分上に表示されているマーカ(×)にマウスカーソルを合わせ(このとき,特にマウ
スカーソルは変化しません),マウスの右ボタンをクリックするとサブメニューが表示
されます。
[マーカを削除]を選択すると,カーソルを合わせたマーカが削除されます。
[マーカを追加]を選択すると,新たにマーカが追加されます。
ただし,マーカは最大3組までしか追加できません。
マーカ操作用サブメニューは,シンプルライン時でないと表示されない場合があり
ますのでご注意ください。
• プロファイルの表示色変更
線分の両端にマウスカーソルを合わせると,カーソルが十字形に変わります。この
状態でマウスの右ボタンをクリックすると,サブメニューが表示されます。
[色変更]を選択するとプロファイル表示色を変更できます。

② 断面情報
ラインプロットにおける,各種解析の結果が表示されます。解析の種類と手法は以
下の通りです。
• 定義
ラインプロットを以下のように定義します。

Z ラインプロット

中心線

ラインプロットの長さ L

ラインプロット内の任意の長さlでの高さzは,以下のように定義されます。

z = f (l )
中心線の高さZ 0は,以下のように定義されます。

1 L
Z0 = ∫ f (l )dl
L 0

2-42 TM-57553FST4-1
2 解析操作

• 平均粗さ(Ra)
JIS B0601:2001で規定される算術平均粗さRaの計算式を用いています。
「中心線をX軸として,ラインプロットをf(x)と表したとき,次式で表される値」として規
定されます。

Z |f(x)|

Ra
中心線

1 L
L ∫0
Ra = f ( x) dx

• 自乗平均粗さ(Rq)
「中心線からの偏差の自乗平均」として規定されます。

1 L
Rq = ∫ ( f (l ) − Z0 )2 dl
L 0

• 10点平均粗さ(Rzjis)
JIS B0601:1998で規定されていた10点平均粗さRzの計算式を用いています(10点
平均粗さ自体は,JIS B0601:2001では規格から外れています)。
中心線からの偏差で,最も大きい偏差から5番目までの偏差の絶対値の平均値と,最
も小さい偏差から5番目までの偏差の絶対値の平均値の和と規定されます。

Z Zp1
Zp3 Zp4 Zp2
Zp5
平均線
Zv4 Zv5
Zv2 Zv3
Zv1
L

Z p1 + Z p 2 + Z p 3 + Z p 4 + Z p 5 + Z v1 + Z v 2 + Z v 3 + Z v 4 + Z v 5
Rzjis =
10

• 最大高低差(Rz)
「解析画像内で,高さzの最大値Z maxと最小値Z minの差」と規定されます。

Rz = Z max − Z min

この値は,ラインプロットの縦軸にも表示されます。
• 長さ(Length)
ラインプロットの長さLを表示します。この値はラインプロットの横軸にも表示されます。

TM-57553FST4-1 2-43
2 解析操作

③ ラインプロットに対する測長結果
ラインプロットに対する測長解析の結果が表示されます。
測長解析は断面図に表示されている「●」と「■」マーカが一組となり,合計3つの測長
解析を行うことができます。各組は表示色によって識別します。

高さ ● 角度 ■ 高さ

高さの差

距離

高さ ●: ●マーカ位置での高さ
高さ ■: ■マーカ位置での高さ
高さの差: ●マーカ位置と■マーカ位置での高低差の絶対値
距離: ●マーカ位置と■マーカ位置との横軸方向の距離
角度: ●マーカ位置から■マーカ位置を見たときの仰角(俯角)
表示値は解析面内での計算値ですので,ラインプロット上の角度とは異なります。

④ データ情報
解析画像に関する情報(タイトル・測定モード・測定条件)が表示されます。
⑤ ラインプロット
指定された線分上での高さ情報のラインプロットが表示されます。
• グラフの縦軸・横軸
縦軸が線分上の高さ,横軸が線分上の長さです。縦軸にはラインプロットのZ方向
測量値,横軸にはラインプロットの長さが表示されます。
• ラインプロットに対する測長解析
表示されているラインプロットに対する測長解析を行えます。
グラフ中に表示されている3色の線は,ラインプロット中の解析位置を示していま
す。それぞれの線をドラッグすることによって,解析位置を移動できます。解析位
置は,プレビュー画像の線分上にも,×印で表示されています。
解析の結果は「断面情報」下部の領域に表示されています。

● 解析結果の保存
画面上の解析結果が表示されている領域上でマウスの右ボタンをクリックすると,サブ
メニューが表示されます。
[データを保存]を選択すると,「名前を付けて保存」ダイアログが表示され,解析結果
(表示されているすべての解析結果)をテキストでファイルに保存できます。

2-44 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.6.1b マルチプロファイル
解析画像に対して最大5本までのラインプロファイル解析を行います。
[分析処理]メニューから[断面]-[マルチ]を選択する。
「マルチプロファイル」のウィンドウが表示されます。



マルチプロファイルウィンドウ

① プレビュー画像
以下は,「プレビュー画像」上での設定項目です。
• 解析位置設定
基本的な操作は「シングルプロファイル」と同様です。
• ラインプロファイルの追加と削除
「マルチプロファイル」では,解析像に対して最大5本までのラインプロファイル解
析を行えます。プレビュー画像内で右ボタンをクリックすると,サブメニューが表
示されます。[プロファイルを追加]を選択するとラインプロファイルを追加できま
す。また,削除したいラインプロファイルを示す線分の端にマウスカーソルを合わ
せ,マウスの右ボタンをクリックするとサブメニューが表示されるので,[ラインを削
除]を選択するとラインプロファイルが削除されます。
② 画像情報
解析画像における各種解析の結果が表示されます。解析の種類と手法は以下の通り
です。
• 定義
解析平面を以下のように定義します。

Ymax 解析平面

面積 S0

0 Xmax
解析平面内の任意の座標(x,y)での高さzは,以下のように定義されます。

z = f ( x, y )

TM-57553FST4-1 2-45
2 解析操作

解析平面における高さzの平均値Z 0は,以下のように定義されます。

1 xmax ymax
Z0 =
S0
∫0 ∫0 f ( x, y ) dxdy

解析平面を理想的に平坦のときの面積S 0は,以下のように定義されます。

S 0 = xmax × ymax

• 平均粗さ(Ra)
JIS B0601:2001で規定される算術平均粗さRaの計算式を,2次元平面に適合
するよう拡張した計算式を用いています。
[解析平面の平均高さZ 0からの偏差の絶対値の算術平均]として規定されます。

1 xmax ymax
Ra =
S0
∫0 ∫0 f ( x , y ) − Z0 dxdy

• 自乗平均粗さ(Rq)
[解析平面の平均高さZ 0からの偏差の自乗平均]として規定されます。

1
∫ 0 ∫ 0 ( f ( x, y ) − Z0 ) dxdy
x y 2
Rq = max max

S0
• 10点平均粗さ(Rzjis )
JIS B0601:1998で規定されていた10点平均粗さRzの計算式を,2次元表面に
適合するように拡張した計算式を用いています(10点平均粗さ自体は,JIS B06
01:2001では規格から外れています)。解析平面内の平均高さZ 0 からの偏差で,
最も大きい偏差から5番目までの偏差の絶対値の平均値と,最も小さい偏差から
5番目までの偏差の絶対値の平均値の和,と規定されます。

Z p1 + Z p 2 + Z p 3 + Z p 4 + Z p 5 + Z v1 + Z v 2 + Z v 3 + Z v 4 + Z v 5
Rzjis =
10
Zp1 ,Zp2 ,Zp3 ,Zp4 ,Zp5 : 解析平面内の最も大きい偏差から5番目までの偏差
プレビュー画面上に赤文字で位置が表示されています。
Z v1,Z v2,Z v3,Z v4,Z v5: 解析平面内の最も小さい偏差から5番目までの偏差
プレビュー画面上に青文字で位置が表示されています。

• 最大高低差(Rz)
[解析画像内で,高さzの最大値Z maxと最小値Z minの差]と規定されます。

Rz = Z max − Z min

• 表面積(S)
解析平面の正味の表面積を,微少分割面のベクトル積の和として計算します。

2-46 TM-57553FST4-1
2 解析操作

• 表面積率(S ratio)
解析平面を理想的に平坦であるとしたときの表面積S 0 に対する,正味の表面積
Sの比率を計算します。

S
S ratio =
S0

③ ラインプロットに対する各種解析結果
各ラインプロットにおける各種解析の結果が表示されます。
解析の種類と手法については「シングルプロファイル」と同様です。
④ データ情報
「シングルプロファイル」と同様です。
⑤ ラインプロット
追加された線分上での高さ情報がラインプロットとして表示されます。
• ラインプロットの表示
追加されたラインプロットは,すべて同一グラフ上に表示されます。それぞれのプロ
ットは表示色によって識別します。
• グラフの縦軸・横軸
縦軸が線分上の高さ,横軸が線分上の長さです。縦軸には表示されているライン
プロット中で最も大きい高低差を持つプロットのZ方向測量値が,横軸には表示さ
れているラインプロット中で最も長いプロット長さを持つラインププロットの長さが表
示されます。

● 解析結果の保存
画面上の解析結果が表示されている領域上でマウスの右ボタンをクリックすると,サブ
メニューが表示されます。
[データを保存]を選択すると,「名前を付けて保存」ダイアログが表示され,解析結果
(表示されているすべての解析結果)をテキストでファイルに保存できます。

TM-57553FST4-1 2-47
2 解析操作

2.6.1c エクストラプロファイル
解析画像に対して,水平もしくは垂直方向における断面の周波数解析,ヒストグラム・累積
比率を行います。
[分析処理]メニューから[断面]-[エクストラ]を選択する。
「エクストラプロファイル」のウィンドウが表示されます。


④ ③

エクストラプロファイルウィンドウ

① プレビュー画像
以下は,「プレビュー画像」上での設定項目です。
• 解析位置の指定
基本的な操作は「シングルプロファイル」と同様です。
線分の中心をドラッグして,水平方向の位置もしくは垂直方向の位置を設定しま
す。線分の長さは変更できません。
• 垂直ラインと水平ライン
エクストラプロファイルでは,水平方向か垂直方向どちらかの断面を選択します。
線分の中心へマウスカーソルを合わせてマウスの右ボタンをクリックすると,サブ
メニューが表示されます。[垂直ライン]を選択すると線分が垂直方向に表示さ
れ,[水平ライン]を選択すると線分が水平方向に表示されます。
② ヒストグラム・累積比率
線分上の断面形状における,高さ(Z)成分のヒストグラムおよび累積比率(ベアリング
レシオ)が表示されます。
③ FFT解析結果(画面右中央のグラフ)
線分上の断面形状におけるFFT解析結果(パワースペクトル)が表示されます。
④ データ情報
⑤ ラインプロット
「シングルプロファイル」と同様です。

2-48 TM-57553FST4-1
2 解析操作

● 解析結果の保存
画面上の解析結果が表示されている領域上でマウスの右ボタンをクリックすると,サブメニ
ューが表示されます。
[データを保存]を選択すると,「名前を付けて保存」ダイアログが表示され,解析結果(表
示されているすべての解析結果)をテキストファイルに保存することができます。

2.6.1d 複数画像プロファイル
複数の画像データに対して,同一線上の断面解析を行います。この機能は,例えば粘弾性
測定のように,一度の測定で3枚の画像(凹凸像・弾性像・粘性像)を測定するような場合
に,それらの異種同時画像間での断面解析に使用します。

[分析処理]メニューから[断面]-[複数画像]を選択する。
「複数画像プロファイル」ウィンドウが表示されます。
実行の際は,表示ウィンドウに,セットで解析したい最初の画像を表示してから行っ
てください。

② ⑥


⑤ ⑦

複数画像プロファイルダイアログ

① 測定データ
メモリ上にストアされているSPMデータの一覧です。ここからセットで解析するデータを
選択します。一覧からデータを選ぶと,選ばれたデータの内容が「表示ウィンドウ」上に
表示されます。
② 選択ボタン
「測定データ」一覧からデータを選択する時にクリックします。選択されたデータは,ボタ
ン下の[選択データ]に表示されます。
③ 選択データ
「測定データ」一覧から選択されたデータの一覧です。最大3つの測定データを選択で
きます。解析処理開始時に「表示ウィンドウ」に表示されていたデータは,この一覧の先
頭に自動的に選択されます。

TM-57553FST4-1 2-49
2 解析操作

④ 削除ボタン
「選択データ」一覧の中から選ばれた一つのSPMデータを一覧から削除します。
⑤ すべて削除ボタン
現在選択されている「選択データ」の選択をすべて解除します。
⑥ 制作ボタン
「選択データ」一覧で選択されているSPMデータを使って,断面解析を行います。表
示は選択データの数によって変わります。
[制作]ボタンは,2つ以上のデータが選択されていないと機能しません。
⑦ 閉じるボタン
「複数画像プロファイル」ダイアログを閉じ,解析処理を中止します。

● 解析画面の表示と操作
複数画像プロファイルの表示内容は,選択したデータの数のよって異なりますが,以下のよ
うに縦に一つのデータに対する解析結果情報が並んで表示されます。

複数画像プロファイルダイアログ

表示の並びは異なっていますが,機能・操作・表示内容はシングルプロファイル解析と同様
です。断面解析位置はどのSPMデータ上でも変更可能であり,また変更はすべてのSPM
データ上での解析に同様に反映されます。
ただし,断面情報のヒストグラムと累積比率のグラフは表示されません。

2-50 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.6.2 測 量
測定画像における様々な測定量を計算表示します。これらの機能は現在では前述の断面
解析機能に統合されています。

2.6.2a 領 域
指定した領域の画像の高さ(試料表面の凹凸の高さ)の平均と自乗平均を表示します。

1. [測量]のプルダウンメニューから[領域]を選択する。
表示ウィンドウ上に十字カーソルが表示されます。
2. カーソルを移動させ,測定する領域をクリックしながら指定する。

開始点 マウスカーソル
始点と終点が結ばれる

マウス右ボタン

線は自動的に引かれる

XX
YY

Absolute image level


(この位置の高さ)
カーソル

画面には[カーソル位置(XX,YY)]が表示されます。これは表示ウィンドウの左
上のポイントを(0,0)としてカーソルの位置を示しています。
[高さ情報 XX nm]はそのカーソル位置での画像の高さの絶対値を示していま
す。

TM-57553FST4-1 2-51
2 解析操作

3. 指定した領域のどちらかをマウスで選択する。

クリックで選択

指定された領域内の画素数,面積,平均高さ,自乗平均高さの値がウィンドウに表示
されます。

2.6.2b ライン
2点間の断面形状を測定します。測定された表面形状は,スペクトルデータの一種として取
り扱えます。

1. [分析処理]メニューから,[測量]-[ライン]を選択する。
マウスカーソルが十字に変わります。
2. 表示ウィンドウ上から,断面形状測定の開始点をクリックする。
3. 表示ウィンドウ上から,断面形状測定の終了点をクリックする。
「表示ウィンドウ」に指定した2点間の断面形状を示すグラフが表示されます。
4. 「Image Profile」ウィンドウにタイトルを入力して[OK]をクリックする。
断面形状がデータとして保存されます。
[キャンセル]をクリックするとデータは保存されません。

2-52 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.6.2c 点
2点間の距離および2点間の相対的な高さの差を測定します。

1. [分析処理]のプルダウンメニューの[測量]から[点]を選択する。
表示ウィンドウ上に十字カーソルが表示されます。
2. カーソルを移動してクリックする。
クリックした個所に「+」マークが表示されます。
3. 続いて十字カーソルを移動させる。
次の情報がウィンドウ内に表示されます。
• 現在の十字カーソルの位置(座標)
• 現在の十字カーソル位置での画像の高さ(試料表面の凹凸の高さ)の絶対値
• 「+」マーク位置の画像の高さと,現在のカーソル位置での画像の高さの差
• 「+」マーク位置から現在のカーソル位置までの距離
• 「+」マーク位置と現在のカーソル位置までを,直線で結んだ線上での最も高いとこ
ろと最も低いところの高さ
4. 移動した位置でマウスをクリックする。
「+」マークが現在の十字カーソル位置に移動し,新しい測定の原点となります。
5. 手順3-4項を繰り返す。
6. マウス右ボタンを押して処理を終了する。

2.6.2d 表面粗さ
現在表示されている画像の全面の高さ(試料表面の凹凸の高さ)の,粗さ解析の結果を表
示します。
[分析処理]のプルダウンメニューの[測量]から[表面粗さ]を選択する。
表示ウィンドウに,「高さの平均値」,「自乗平均値」,「算術平均粗さ」が表示されます。

2.6.2e 表面積
現在表示されている画像の表面積を表示します。
[分析処理]のプルダウンメニューの[測量]から[表面積]を選択する。
表示ウィンドウに表面積が表示されます。

TM-57553FST4-1 2-53
2 解析操作

2.6.3 画像拡大
カレントイメージ画像上で指定した領域を拡大します。[矩形選択]は任意の長方形の領
域を指定,[正方形選択]は,正方形の領域を指定します。

1. [分析処理]のプルダウンメニューの[拡大]から,[矩形選択]または[正方形選
択]を選択する。
2. 拡大する領域の対角の2点を指定する。
正方形選択では十字カーソルが45°の方向にのみ動きます。

2/2 2/2 2/2

45゜ 45゜

1/2 1/2

正方形選択時の十字カーソルの動き

指定した領域と拡大された画像の画素数の関係は次のようになります。

指定した領域 拡大された画像の画素数
128×128以下 128×128
129×129以上 256×256以下 256×256
257×257以上 512×512

2.6.4 画像の切り出し
カレントイメージ画像上の指定した領域以外を消去します。[矩形選択]は任意の長方形
の領域を指定,[正方形選択]は,正方形の領域を指定します。

1. [分析処理]のプルダウンメニューの[トリミング]から,[矩形選択]または[正方
形選択]を選択する。
表示ウィンドウに十字カーソルが表示されます。
2. トリミングする領域の対角の2点を指定する。
囲まれた領域を残して他は消去され黒(0)で埋められます。
正方形選択では十字カーソルが45゜方向にのみ動きます。

2/2

1/2

2-54 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.6.5 周波数空間分析(FFT)
フーリエ変換は,画像を2次元フーリエ変換して表示するもので,フーリエ変換されたスポッ
トを指定して逆フーリエを行うことにより,周期的構造部分のみを表示させます。

[分析処理]のプルダウンメニューから[周波数空間(FFT)]を選択する。
「FFT」ウィンドウが表示されます。
フーリエ変換の処理手順は下のとおりです。

Start

Forward
フーリエ変換を行う
FFT

No スポット像の
表示されたスポット像の Contrast Enh.
輝度は十分か? コントラスト強調

Yes

No スポット像のマスクを
行い,逆フーリエ変換を
行うか?

Yes

Window
FFT

以前に使用したマスクを Yes
ロードして使うか?

No Open

New, Add
マスクの修正を Yes
行うか?
Delete FFT Data
Add
No

作成したマスクを Yes
保存するか?

No
Save

Apply

Inverse FFT

End

FFT処理手順

TM-57553FST4-1 2-55
2 解析操作

■ FFT設定ダイアログ


① ③





FFT設定ダイアログ

① 変 換
カレントイメージをフーリエ変換し,変換されたスポット(回折像)を表示します。
[変換]を選択するとフーリエ変換が開始され,変換結果のスポット(回折像)が表示さ
れます。
スポットが暗い場合は,「2倍コントラスト」でコントラストを強調させることができます。
② 逆変換
フーリエ変換されたスポット(回折像)を「表示ウィンドウ」に表示し,[逆変換]を選択す
ると,逆フーリエ変換が開始され実像が表示されます。
以前にフーリエ変換し,コンピュータのメモリに記録しておいたスポット(回折像)を
呼び出して逆フーリエ変換する場合は,「表示」を用いてスポット像を表示させてく
ださい。「選択」を用いて表示すると,コンピュータはこれを実像と認識しますので,
逆フーリエ変換はできません。
③ 2倍コントラスト
[変換]にてフーリエ変換されたスポット像の,コントラスト(明るさ)を強調します。
スポット像を表示し[2倍コントラスト]を選択すると,コントラスト(明るさ)が2倍に強調さ
れます。
これは,表示されている像のコントラストを強調するだけで,元のデータには何ら影
響を与えません。
「2倍コントラスト」は何度も続けて実行することができます。そのたびにコントラスト
は2倍単位で強調されていきます。
④ 削 除
[削除]を選択すると,フーリエ変換されたデータをコンピュータメモリ上から消去します。

2-56 TM-57553FST4-1
2 解析操作

⑤ 表 示
フーリエ変換されたデータを表示します。
[表示]を選択すると,スポット像が表示されます。
フーリエ変換されたデータが,コンピュータメモリ上に存在しないときにはエラーと
なります。
⑥ 拡 大
フーリエ変換されたスポットが小さくて,ウィンドウの設定がしにくい場合は,[×2],[×
4]を選んで[追加]を選択すると拡大表示されます。
⑦ 追 加
フーリエ変換されたスポット像に対し,逆フーリエ変換のときに使用するスポットを指定
するためのマスクウィンドウを設定します。
「表示ウィンドウ」と区別するために,「マスクウィンドウ」という言葉を用います。

スポット像を表示し,ウィンドウから[追加]を選択すると,スポット像の上に十字カーソル
が表示され,マスクウィンドウを設定できます。

TM-57553FST4-1 2-57
2 解析操作

• マスクウィンドウの設定方法

【例1】

図のように,4つのマスクウィンドウを指定する場合

[Window/Mask]の指定を[Mask]にする。
中心
指定するマスクウィンドウの中心点をクリックする。

中心

r 半径rだけ十字カーソルを移動させ,クリックする。

半径rのマスクウィンドウが表示される。
以下,同様の操作を繰り返す。

【例2】

図のように,リング状のマスクウィンドウを指定する場合

[Window/Mask]の指定を[Mask]にする。
指定するリングの中心点をクリックする。
中心

2-58 TM-57553FST4-1
2 解析操作

中心 半径r′だけ十字カーソルを移動させ,
クリックする。
r′

半径r′のマスクウィンドウが表示される。

[Window/Mask]の指定を[Window]にする。
再びリングの中心点をクリックする。

半径rだけ十字カーソルを移動させ,
クリックする。

半径rの円が消去され,リング状のマスクウィンドウが
指定される。
以下同様の操作を繰り返す。

⑧ 閉じる
マスクウィンドウを消去します。
この機能を選択しても画面上のマスクウィンドウは消去されませんが,マスクウィン
ドウはすべてメモリ上から削除されます。
マスクウィンドウが表示されていない元のスポット像を表示させるには,「表示」を実
行します。

TM-57553FST4-1 2-59
2 解析操作

⑨ 保 存
設定したマスクウィンドウをディスクに保存します。
保存するマスクウィンドウを表示させて[保存]を選択し,保存するファイル名を入力し
ます。
指定できるファイル名 の長さは8文 字までで,拡張子 を省 略すると自 動的に
[.MSK]となります。
⑩ 開 く
[保存]でディスクメモリに格納したマスクウィンドウをロードします。
スポット像(回折像)を表示させて[開く]を選択し,ロードするファイル名を入力すると,
ファイルがロードされ,マスクウィンドウが表示されます。
表示されているスポット像の画面の大きさが,ロードしたマスクウィンドウの画面の
大きさと違う場合はエラーとなります。
(例):ロードしようとしたマスクウィンドウが512×512で作成されたもので,これを128
×128の大きさのスポット像上にロードしようとした場合。
⑪ 選択方法
詳細を次に説明します。

● 選択方法
• 周波数帯

1. FFT設定ダイアログの左側のテキストボックスに「低域」,右側のテキストボック
スに「高域」の周波数を指定する。
2. [設定]の指定(ウィンドウかマスクを選択)し,[追加]ボタンをクリックする。
50Hz-60Hzでの電気ノイズの場合
FFT設定ダイアログの左側のテキストボックスに,50,右側のテキストボックスに,6
0と入力します。

[ウィンドウ]低域側と高域側の間の周波数帯がウィンドウから除外されます。

Lower frequency

除外される部分

Upper frequency

[マスク]低域側と高域側の間の周波数帯にウィンドウがかけられます。

2-60 TM-57553FST4-1
2 解析操作

Lower frequency

ウィンドウがかけられる部分

Upper frequency

• 空間周波数帯
指定された空間周波数帯域にウィンドウをかけます。
1. FFT設定ダイアログの左側のテキストボックスに「低域」,右側のテキストボック
スに「高域」の周波数を指定する。
2. [設定]の指定(ウィンドウかマスクを選択)し,[追加]ボタンをクリックする。
単位は1/nmです。
[ウィンドウ]:低域側と高域側の周波数帯がウィンドウから除外されます。

Upper Frequency

Lower Frequency

除外される部分

[マスク]:低域側と高域側の周波数帯にウィンドウがかけられます。

Upper Frequency

Lower Frequency

ウィンドウがかけられる部分

• ユーザー指定
任意のマスクウィンドウを定義します。

TM-57553FST4-1 2-61
2 解析操作

2.6.6 粒子解析
粒子解析は,粒子試料等を観察したときに,粒子の数,面積等を計測します。

[分析処理]のプルダウンメニューから[粒子解析]を選択する。
粒子解析を実行すると,「粒子解析」ウィンドウと「粒子解析設定」ウィンドウが開きま
す。

● 処理手順

START

Thresholds 画像の2値化処理

Set 粒子判定条件の設定
Connectivity

N 粒子解析が
できる画像か?

Erode Dilate Isolate Shoot

Compile Write
Histogram
Statistics Statistics

END 他のソフトで解析

粒子解析の処理手順

2-62 TM-57553FST4-1
2 解析操作

■ 粒子解析ウィンドウ
粒子解析を実行すると,「粒子解析」ウィンドウと「粒子解析設定」ウィンドウが開きます。
粒子解析ウィンドウには,解析対象画像,2値化画像,画像データおよび解析結果が表示
されます。

① ②

粒子解析ウィンドウ

① 解析対象画像
粒子解析の対象となる画像と,そのSPM情報が表示されます。
② 2値化画像
解析対象画像を2値化した画像です。画像左にはしきい値レベルが表示されます。
2値化のためのしきい値レベルは,粒子解析設定ウィンドウで設定します。
③ 粒子情報
ここには2値化処理によって抽出された粒子に関する情報が表示されます。
平均面積: 抽出された粒子群の平均面積です。
平均直径: 抽出された粒子群の平均直径です。
総面積: 抽出された粒子群の面積を,すべて足し合わせた値です。
面積率: 画像中の総面積に対する粒子群の面積の割合です。
粒子数: 抽出された粒子の総数です。
④ 統計情報
粒子解析設定ウィンドウでしきい値レベルを設定して解析を実行することにより,抽出
された粒子群に対する統計処理結果が,ヒストグラムとして表示されます。
表示される統計種は,粒子解析設定ウィンドウにて設定します。

TM-57553FST4-1 2-63
2 解析操作

■ 粒子解析設定ウィンドウ

● 設定タブウィンドウ
2値化処理のためのしきい値レベル設定や抽出領域の加工,判定方式の設定などの,各種
設定および解析処理の実行を行うタブウィンドウです。

• しきい値設定
画像を2値化するときのしきい値の値を決めます。
バーチャートを動かすと,2値化処理のためのしきい値が変化し,粒子解析ウィンドウの
2値化画像が変化します。元の画像と見比べながらしきい値を決定します。
画素数

この中に入っている部分が白で,
他は黒の2値で表示される

輝度
0 255
黒 白
Threshold 1

Threshold 2

バーチャートを動かすことにより変更されます。決定は[OK]を選択します。

• 接続判定
1つの粒子として判定するための接続条件を変更します。
ラジオボタンをクリックすると設定が変更されます。

4のとき 8のとき

注目する点に接している画素があれば,同一の粒子として見なします。

• 解析
しきい値レベルの設定と接続判定の設定に基づき,粒子を検出するための検出処理
および解析処理を実行します。
いったん解析を実行した後でしきい値を変更した場合には,解析をやり直す必要があ
りますので再度解析をクリックする必要があります。

2-64 TM-57553FST4-1
2 解析操作

• 周囲を削除
粒子のまわりを1画素分削除します。
この機能は,いったん解析処理を実行した後に有効となります。
【例】

• 周囲へ付加
粒子のまわりを1画素分付加します。
この機能は,いったん解析処理を実行した後に有効となります。
【例】

Dilate

• 小粒子を削除
一定の画素数以下の粒子を消去します。
この機能は,いったん解析処理を実行した後に有効となります。
[小粒子を削除]をクリックすると,[削除する最小粒子の大きさ]が表示されます。
例えば10と入力した場合,1粒子を構成する画素数が10未満の粒子が消去されます。

• 粒子を削除
指定した粒子を消去します。
この機能は,いったん解析処理を実行した後に有効となります。
[粒子を削除]をクリックすると,2値化画像上でマウスカーソルが十字に変化します。
消去する粒子上に十字カーソルを移動させ,クリックすると選択された粒子が消去さ
れます。

• ヒストグラム
粒子解析ウィンドウの統計解析に表示する全粒子の情報についてヒストグラムの種類
を選択します。
面積: 全粒子の面積の統計結果を表示します。
周長: 全粒子の円周長の統計結果を表示します。

真円率: 全粒子の真円率(面積/直径 )の統計結果を表示します。
分割数: 表示するヒストグラムの分割数を設定します(3~128の範囲の整数値)。

TM-57553FST4-1 2-65
2 解析操作

● 統計タブウィンドウ
このタブウィンドウは解析処理が実行された後に有効となります。粒子解析の結果が表示さ
れます。

• 統計結果
統計結果が表示されます。
統計データの種類は,面積,画素数,周長,真円率となっています。

• 並び順
統計結果表示の際の,データの並び順を設定します。
位置: 画像上の粒子の位置(XY座標)で,数値の小さい順に並べます。

真円率: 真円率(面積/直径 )の小さい順に並べます。
面積: 面積の小さい順に並べます。
周長: 円周長の小さい順に並べます。

• 画像から選択
2値化画像上の,ある粒子の数値データを選択します。
選択をクリックすると,いったん粒子解析設定ウィンドウが消えます。粒子解析ウィンド
ウの2値化画像から,数値が知りたい粒子を選びマウスでクリックします。再び粒子解
析設定ウィンドウが表示され,統計結果上の表示が選択した粒子のデータに移動しま
す。

2-66 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.6.7 単位格子解析
カレントイメージの上にメッシュ像を表示します。

1. [分析処理]のプルダウンメニューから[単位構造]を選択する。
表示されている画像の上に十字カーソルが表示されます。
2. 平行四辺形を3点で指定する。
指定方法は,開始点(1/3)と2つのベクトル(1/3→2/3,2/3→3/3)で指定します。

3/3

1/3 2/3

ユニットセル指定方法

この操作はユニットセルの形を決めるものです。
「指定領域の分割数」が表示されます。
3. 手順2で指定したユニットセルの分割数を入力する。
【例】
[1]と指定した場合は,指定した平行四辺形がメッシュ像の単位となります。
[2]と指定した場合は,指定した平行四辺形の各辺の1/2の大きさの平行四辺形
がメッシュ像の単位となります。

作成されるメッシュ

作成されるメッシュ

元の平行四辺形 元の平行四辺形

値が1のとき 値が2のとき

4. 表示されている数値でよい場合には[OK]をクリックする。
メッシュ像が表示されます。

TM-57553FST4-1 2-67
2 解析操作

2.6.8 表面粗さ
表面粗さ解析を行います。
解析結果は「表示ウィンドウ」とは別の専用ウィンドウに表示されます。

[分析処理]のプルダウンメニューから[表面粗さ]を選択する。
「表面粗さ」ウィンドウが表示され,解析画像のプレビューが高さ情報と共に表示され
ます。


③ ④

表面粗さウィンドウ

① プレビュー画像
以下の操作は,プレビュー画像上で行います。
• 解析領域の指定
プレビュー画面上でマウスの右ボタンをクリックすると,サブメニューが表示されま
す。サブメニューから[領域を選択]を選択すると,画面上に緑色の四角い枠が
表示されます。この枠はマウスで大きさ,位置を変更できます。この枠で指定され
た領域内で表面粗さ解析を行います。
• 解析領域を削除
プレビュー画面上でマウスの右ボタンをクリックして,サブメニューを出して[領域
を削除]を選択します。
• Rz On/Off
プレビュー画面上に表示されている1~5までの赤文字と青文字は,10点平均粗
さ(Rzjis)解析における抽出位置です。サブメニューから[Rz off],もしくは[Rz
on]を選択することにより,この抽出位置表示を表示させるかどうかの設定ができ
ます。
② データ情報
解析画像に関する情報(タイトル・SPM測定モード・測定条件)が表示されます。

2-68 TM-57553FST4-1
2 解析操作

③ 選択領域
解析領域を指定した場合,その領域の左上隅の位置座標,横幅,縦幅が表示されま
す。
④ 画像情報・選択領域情報
解析画像全体と選択領域内における表面粗さ解析の結果と,ヒストグラム・表面積率
が表示されます。
粗さ解析の手法については[断面解析]の項を参照してください。

TM-57553FST4-1 2-69
2 解析操作

2.7 画像処理メニュー(画像処理機能)
2.7.1 移 動
現在表示されている画像の移動を行います。

1. [画像処理]のプルダウンメニューから[移動]を選択する。
「設定点 1/2」がウィンドウ表示され,表示ウィンドウ上に十字カーソルが表示されます。
2. 移動の始点を指定する。
「設定点 2/2」がウィンドウに表示されます。
3. 移動の終点を指定する。
1番目に指定した位置から2番目に指定した位置に画像全体が移動します。
画面の表示範囲外の画像部は,移動後は黒(0)で埋められます。

置き換わる

2/2 Translate

1/2

処理後

2-70 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.7.2 回 転
現在表示されている画像を回転させます。
1. [画像処理]のプルダウンメニューから[回転]を選択する。
[90],[180],[270]を選択した場合は回転が実行されます。
2. [任意回転]が選択された場合は,回転の中心と開始点と終了点の3点を指定
する。
回転が終了すると,画面からはみ出した部分は消去され,像のなかった部分は,0(黒)
になります。

回転には次の4種類があります

回転の種類 内 容
90 画像の中心を回転の中心として,時計回りに90°回転する。
180 画像の中心を回転の中心として,時計回りに180°回転する。
270 画像の中心を回転の中心として,時計回りに270°回転する。
任意角度 指定した点を中心として,指定した方向に指定した角度だけ回転する。

3/3

θ
1/3 2/3

Rotate theta 指定方法

消去される

黒で埋められる

θだけ回転
回転後の表示

TM-57553FST4-1 2-71
2 解析操作

2.7.3 鏡 像
カレントイメージのミラーイメージを表示します。
[画像処理]のプルダウンメニューの[鏡像]から,[横方向],[縦方向],または
[回転方向]を選択する。

ミラーイメージには次の3種類があります。

鏡像の種類 内 容
横方向 画面中央に対して左右
縦方向 画面中央に対して上下
回転方向 画面中央に対して左上と右下

Mirror X

Mirror Y

Transpose

2-72 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.7.4 サイズ変更
カレントイメージの画面の大きさを変更します。

「画像処理」のプルダウンメニューの[サイズ変更]から,[128],[256],[512]を
選択する。
変換された像が表示されます。
表示されている画像と同じ画面の大きさを選択するとエラーとなります。

512×512 →256

128×128 →256 256×256

表示されている画像と同じ画面の大きさを選択するとエラーとなります。

TM-57553FST4-1 2-73
2 解析操作

2.7.5 空フレームへ挿入
現在表示されている画像より,大きな画素数の画面の中央に挿入します。

[画像処理]のプルダウンメニューの[別画像へ挿入]から,[256],または[512]
を選択する。
元画像が挿入された画像の中央に配置され,周囲は0(黒)で埋められます。
挿入可能な処理以外を選択するとエラーとなります。

現在の画素数 挿入可能な画素数
256×256 512
512×512 1024

黒色

Pad to 512

2.7.6 ドリフト補正
現在表示されている画像の歪み(ドリフト)を補正します。

1. [画像処理]のプルダウンメニューから[ドリフト補正]を選択する。
十字カーソルが表示ウィンドウ上に表示されます。
2. 画像の歪みを平行四辺形の3点(1/3~3/3)で指定する。
補正された像が表示されます。

3/3

Drift
1/3 2/3 Correct

元の画像 補正された画像

指定するために用いた四辺形が小さいと,補正された画像の大きさも小さくなります。

指定した四辺形 補正された画像の大きさ
128×128以内 128×128画素
256×256以内 256×256画素
256×256以上 512×512画素

2-74 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.7.7 ユニットセルで再構成
ユニットセルを指定し,そのユニットセルで全体の画面を再構成します。

1. [画像処理]のプルダウンメニューから[ユニットセルで再構成]を選択する。
画像上に十字カーソルが表示されます。
2. ユニットセルとして,平行四辺形を3点で指定する。
指定方法は,開始点(1/3)と2つのベクトル(1/3→2/3,2/3→3/3)で指定します。
[指定領域の分割数]がウィンドウに表示されます。

3/3

1/3 2/3

ユニットセル指定方法

3. 指定した平行四辺形の,何分の1でユニットセルを構成するかを指定する。
【例】
[1]を指定した場合は,指定した平行四辺形がユニットセルとして使用されます。
[2]を指定した場合は,各辺の1/2の大きさの平行四辺形がユニットセルとして使
用されます。

2 を指定 3を指定

抽出されたユニットセルが表示されます。画面全体にユニットセルを単位としたメッシュ
が表示され,メッシュの各ユニットを平均したユニットセル像が左上に表示されます。
[ユニットセルの定義を続けますか?]がウィンドウに表示されます。

• [はい]を選択すると2の処理に戻ります。
• [いいえ]を選択すると抽出されたユニットセルで画面を埋めます。
• [キャンセル]を選択すると処理を中断します。

TM-57553FST4-1 2-75
2 解析操作

2.7.8 画像の抜き出し
現在表示されている画像の指定された部分を残して,ほかの部分を0(黒)で埋めます。この
あと,画像の置き換え機能を用いて,0(黒)で埋め尽くされた部分を他の画像で置き換える
ことができます。

1. [画像処理]のプルダウンメニューから[画像の抜き出し]を選択する。
画像上に十字カーソルが表示されます。
2. 画像の残しておく長方形の部分を,その対角(1/2,2/2)で指示する。
長方形で囲まれた部分を残し,他の部分が0(黒)で埋められます。

2/2

表示

Extract Area

1/2

元画像 処理後

2.7.9 画像の置き換え
画像の抜き出し機能で0(黒)で埋め尽くされた部分を,他の画像に置き換えます。

1. [画像の抜き出し]で作成した画像を表示し,[画像処理]のプルダウンメニュー
から[画像の置き換え]を選択する。
現在,コンピュータメモリ上に記録されている画像のリストがウィンドウに表示されます。
2. 置き換える画像を選択する。
0(黒)で埋め尽くされた部分が選択された画像で埋められます。

画像リスト

Extract Area 選択

Replace Area

2-76 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.8 高さ情報メニュー(画像処理機能)
2.8.1 明度・コントラスト
カレントイメージのコントラスト,輝度を変化させます。
1. [高さ情報]のプルダウンメニューから[明度・コントラスト]を選択する。
「明度・コントラスト」用のダイアログが表示されます。
画像は400×400画素で表示されます。
2. バーチャートを操作して[明るさ],[コントラスト],[γ値]を調節し,[OK]をクリック
する。
画像左のLUTバーとヒストグラムを参考にしながら操作します。

明度・コントラスト用ダイアログ

• 明るさ
画像の明るさを調整します。数値は(-128~128)の範囲で設定でき,値を小さくする
ほど画像は暗くなります。標準値は0です。
• コントラスト
画像のコントラストを調整します。数値は(0~256)の範囲で設定でき,値を小さくする
ほどコントラストがなくなります(階調差が見えにくくなる)。値を大きくするとコントラスト
がついて階調差が見やすくなりますが,階調の上下限が制限されますので階調オーバ
ーする領域が大きくなります。標準値は128です。

TM-57553FST4-1 2-77
2 解析操作

• γ値
階調変化曲線の形を調整します。
ここではγ補正と呼ばれる画像補整計算を用いています。
γ補正の一般式は,以下の式で表されます。

O = Iγ × K
O: 出力信号
I : 入力信号
γ : γ値
K: 修正番号

数値は(0.1~10.0)の範囲で設定できます。標準値は1.0です。
明るさ0,コントラスト128としてγ値を0.5,1.0,1.5とした場合の階調変化曲線は次のよ
うになります。γ値1.0のとき階調変化曲線は直線になります。

250

200

γ=1.5
150
Fixed LUT

γ=1.0
γ=0.5

100

50

0
0 50 100 150 200 250

Original LUT

2-78 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.8.2 範囲指定
設定した幅の輝度範囲に入っている点のみを表示し,範囲外の輝度の高い点は255(白),
輝度の低い点は0(黒)に設定します。

1. [高さ情報]のプルダウンメニューから,[範囲指定]を選択する。
画像は400×400画素で表示され,ウィンドウにしきい値1,しきい値2がバーチャートで
表示されます。
2. バーチャートを操作して[しきい値1],[しきい値2]を調節し,[OK]ボタンをクリック
する。
[画像情報も更新しますか?更新すると別の画像データが生成されます]と表示します。
[OK]をクリックすると,範囲外のデータを削除した新しい画像が作られます。
[キャンセル]をクリックした場合,変更は画像のみに行われ,コンピュータのメモリ
には元のデータが記録されたままです。
画素数

表示部分

非表示部分 非表示部分
(黒表示) (白表示)

輝度
0 255
黒 白
Threshold 1

Threshold 2

TM-57553FST4-1 2-79
2 解析操作

2.8.3 ヒストグラム
カレントイメージの,各画素の輝度値のヒストグラム表示,平準化を行います。

2.8.3a 表 示
カレントイメージの,各画素の輝度のヒストグラム表示を行います。

[高さ情報]プルダウンメニューから,[ヒストグラム]の[表示]を選択する。
ヒストグラムが表示されます。
頻度

輝度
0 255
黒 白

2.8.3b 平均化
カレントイメージの,各画素の輝度の平均化を行います。

[高さ情報]プルダウンメニューから,[ヒストグラム]の[平均化]を選択する。
図のように,0(黒)から255(白)までが同じ頻度で現れるように処理されます。
濃淡の平準化は表示されている画像のみに行われ,コンピュータのメモリには元の
データが記録されたままですから,表示画面を固定する場合には「画像データを
更新」処理を行う必要があります。

Equalize

0 255 0 255

2-80 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.8.4 LUTを表示
現在のルックアップテーブル(以下LUT)をグラフで表示します。

「高さ情報」のプルダウンメニューから[LUTを表示]を選択する。
現在のLUTが表示されます。
LUTとは,画像の元のデータを表示するときの変換テーブルです。

LUT

画像データ 変換 表示

たとえば,次のようなLUTであった場合,表示画像はすべて255(白)で表示されます。

255(白)
表(示値
レベル

LUT 白
)

0(黒)
画像データ 表示
Data value 255(白)
(画像データ値)

次のような場合,表示画面は画像データを反転したものが表示されます。

255
レベル

LUT 反転

0 255
データ 画像データ 表示

各画像データはそれぞれLUTを持っており,明度・コントラスト処理や範囲指定処理
等を行うとLUTが変更されます。
通常は,次のようなLUTがデフォルトとなっています。

255
レベル

0 255
データ

TM-57553FST4-1 2-81
2 解析操作

2.8.5 LUTを直線化
変更の加えられたLUTを強制的に直線(デフォルト値)化します。

1. [高さ情報]のプルダウンメニューから[LUTを直線化]を選択する。
LUTが直線化され,メモリ上の画像データがそのまま表示されます。
2. [LUTを表示]で直線化されたかを確認する。
現在表示されている画像のルックアップテーブル(以下LUT)を,直線化(デフォルト
値)します。
この変換により画像の明度・コントラストも変更されます。
レベル

レベル
Linearise Image LUT

0 255 0 255
データ データ

2.8.6 演 算
ルックアップテーブル(以下LUT)に対して加算,減算などの演算を行う。
演算には次の8種類があります。

演算の種類 内 容
反転 LUTのレベルの反転を行う。
逆転 LUTのデータの逆転を行う。
加算 LUTに定数を加算する。
AND演算 ビット毎に定数とのANDをとる。
OR演算 ビット毎に定数とのORをとる。
XOR演算 ビット毎に定数とのXORをとる。
乗算 LUTに定数を積算する。
除算 LUT値を定数で除算する。

例えば,次のようなLUTに対して加算機能を用いて100を加えた場合,下図のように変換
されて新しいLUTになります。
また,計算結果が0以下になった部分は0に,255以上になった部分は255になります。

2-82 TM-57553FST4-1
2 解析操作

● LUT演算の原理

元 LUT 新 LUT
255 LUT 255

レベル

レベル
Add
100

0 データ 255 0 255


データ
LUT Math

2.8.7 高さ情報の統一
複数の画像間で高さ方向のスケールを比較し,それぞれのスケールを統一します。
1. 「LUT」のプルダウンメニューから[高さ情報を更新]を選択する。
「データ選択」ウィンドウが表示されます。

データ選択ウィンドウ

2. 表から目的の画像を選択し,[選択]をクリックする。
選択した画像が登録されます。
選択済みの画像は青色で表示されます。
3. 2の手順を繰り返して,必要な画像をすべて選択する。
比較する画像から除外する場合は,除外する画像を選択し,[選択解除]をクリッ
クしてください。
4. 必要な画像を選択してから,[OK]をクリックする。
最大Z値ダイアログが表示されます。
最大Z値ダイアログの内容は,画像がTOPO画像であるか,それ以外の画像かで
異なります。

TM-57553FST4-1 2-83
2 解析操作

● スケール処理の原理
例えば,断面解析機能で表示される断面が左下図のような場合,高さ(明るさ)のスケール
は0~10nm(明るさ0~255に対して)ですが,これを右下図のように0~20nmに変換しま
す。また,表示される画像の明るさ(コントラスト)も変換されたものに変わります。
この機能は,異なったスケールで取り込まれた複数の画像を,同じ条件で比較するときに使
用されます。

高さ〔nm〕 255 高さ〔nm〕 255


10 白 20 白

Low-High=20nm
へ変更

0 0 0 0
黒 黒

● 高さ画像の違いによる最大Z値ダイアログの表示
• TOPO画像の場合
TOPO画像の最小値は常に0に規定されていますので,選択された画像の内で一番
大きいZ方向スケール(Z高さ)が更新値として表示されます。

最大Z値ダイアログ(TOPO画像)

• TOPO画像以外の場合
選択された画像の内で一番大きいZ方向スケール(Z高さ)が更新最大値として,一
番小さいZ方向スケールが更新最小値として表示されます。

最大Z値ダイアログ(TOPO画像以外)

2-84 TM-57553FST4-1
2 解析操作

更 新 値 は 変 更 す る こ と が で き ま す 。 例 え ば 表 示 さ れ た 更 新 値 が 1 9 8 . 2 3 7 nm の と き ,
200.000nmなど,わかりやすい数値に変更することが可能です。
更新値を決めたら,[OK]ボタンをクリックします。
選択したすべての画像の高さ情報が,設定した更新値で更新されます。
選択したすべての画像の高さ情報が,更新値で統一されます。断面解析や三次元表示の
際に,同じ条件で比較することができます。

TM-57553FST4-1 2-85
2 解析操作

2.9 表示メニュー(画像処理機能)
2.9.1 再表示
作業メモリ上に記録されているデータのうち,カレントデータを表示します。

「表示」のプルダウンメニューから[再表示]を選択する。
作業メモリ上にあるカレントデータが表示されます。
この機能は,[メモリをクリア]などでディスプレイをクリアした後に,データを再度表
示させたいときに使用します。

2.9.2 表示設定
画像を表示するときのパラメータの設定を行います。

[表示]のプルダウンメニューから[表示設定]を選択する。
「表示設定」ダイアログが表示されます。

① ③



表示設定ダイアログ

① 表示サイズフィールド
表示する画像の大きさを設定します。64~512を指定したときには,もとの画面の大き
さに関係なく指定した大きさで表示が行われます。[Auto]を指定したときには,元の
画像の大きさに応じて表示の大きさを変更します。

2-86 TM-57553FST4-1
2 解析操作

② 表示モードフィールド

選択 内 容
通常のモードで,高さがそのまま明るさとして反映されます。明るさへの変
通常表示 換は,ルックアップテーブルによって行われ,通常は高いところが明るく設定
されます。
鳥瞰表示 真上から見たときの陰影表示を行います。
等高線表示を行います。等高線の本数は[等高線分割数]で指定します。
等高線表示 等高線表示を行う場合の等高線の数は,一番低い所と一番高い所を何等
分することで設定します。
等高表示を行った等高線間を2つの等高線間の明るさで埋めたものを表示
等高面表示
します。
通常+等高線 等高線表示を行ったものに,通常表示を重ね合わせて表示します。

③ フォント
走査範囲,ナノマーカ,テキストについて,フォントの種類と大きさ,文字装飾を設定す
ることができます。プルダウンメニューから設定文字種類を選んで[選択]ボタンをクリ
ックすると,「フォント設定」ダイアログが表示されます。
④ 走査範囲を上部に表示
チェックすると,画像上部中央に走査範囲が表示されます。
⑤ 画像とLUTを同時に表示
チェックすると,常にLUTバーを画像の右脇に表示する表示形態になりますが,画像
の表示サイズは常に400×400になります。
⑥ X/Yナノマーカを表示
画像の大きさを知るためのマーカ(ナノマーカ)を表示するかしないかを設定します。
マーカの長さおよび単位は,自動的に計算されます。

TM-57553FST4-1 2-87
2 解析操作

2.9.3 表示切り替え
画像と一緒にLUTバーの「表示/非表示」を切り替えます。

1. [表示]のプルダウンメニューから[表示設定]を選択する。
「表示設定」ダイアログが表示されます。
2. [画像とLUTを同時に表示]チェックボックスをクリックする。
LUTバーの表示が切り替えられます。
表示の切り替えは定常的な物でなく,次に画像が更新される時には元に戻ります。

(左)LUT表示無し (右)LUT表示有り

2-88 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.9.4 三次元表示
SPM画像を三次元表示します。三次元画像は,表示ウィンドウとは別の三次元表示ウィン
ドウに表示されます。
アイコンドックの[ ]をクリックする。
「三次元表示設定」ダイアログが表示されます。

2.9.4a 簡易描画モードと精密描画モード
三次元画像の表示には,粗く三次元画像を表示する簡易描画モードと,より精密な三次元
画像を表示するための精密描画モードがあります。
精密描画モードで画像が表示されるまでには,使用しているコンピュータの性能によって異
なりますが,およそ数秒から数十秒の時間が必要です。
後述する三次元表示の各パラメータの設定は簡易描画モードで行い,パラメータ決定後に
精密描画モードに切り替えると便利です。

2.9.4b 三次元表示表示設定ダイアログ
三次元表示パラメータ(視点や光源の調整)は,三次元表示設定ダイアログより行います。



② ⑤




① ⑥

② ③

三次元表示設定ダイアログ

TM-57553FST4-1 2-89
2 解析操作

● 表示設定タブウィンドウ
視点・光源などの表示設定を行います。
① 回転
XYZ各方向の回転角度を指定します(360°)。

Rotate Z

Rotate X Rotate Y

② 光源1,光源2
光の照射方向の調整を行います。光源は2つまで設定できます。
• 表示
チェックすると,画像中に光の照射方向を図示します。
• 色設定
「光沢」表示,「カラー+光沢」表示のときの表面の描画色を指定します。
• 方位角(Azimuth)
画面に対して水平方向の光の照射角度を指定します(360°)。
• 仰角(Elevetion)
画面に対して垂直方向の光の照射角度を指定します(-90°~90°)。
• 光度(Brightness)
光源からの光の強度を指定します。0に設定した場合は光源が使用されません。

Elevation

Azimuth

③ Z軸
• Z軸拡大
高さ方向の倍率(拡大)を調整します。
SPM画像は,XY方向のスケールに対してZ方向のスケールが極端に小さい事が
多々ありますので,Z方向のスケールは標準で拡大されています。

2-90 TM-57553FST4-1
2 解析操作

• 遠近度(Perspective)
三次元像の視点位置からの距離を指定します(0.0~1.9)。
この値を大きくすると,遠くから三次元像を見た感じとなります。
値を大きくしていくと,観察位置(ディスプレイ表面)から消失点(無限遠)へ画像
が移動します。

Perspective = 0.0 Perspective = 1.9

④ 表示位置
画面内での表示位置,平面移動(PAN)と拡大移動(Zoom)を調整します。

Pan

Zoom

Pan

⑤ 表面特性
「光沢」表示,「カラー+光沢」表示のときの表面描画を調整します。
• 散乱度
表面の光拡散度を指定します。この値を大きくすると,照射光が表面で強く拡散
(散乱)しているような描画になります。
• 反射度
表面の光反射度を指定します。この値を大きくすると,照射光が表面で強く反射し
ているような描画になります。
• 輝度
表面の光り具合を調整します。この値が大きくなると,表面描画の輝度が低くなりま
す。
⑥ 軸描画色
スケール表示などの表示色を設定します。
⑦ 背景色
三次元表示ウィンドウの背景色を設定します。

TM-57553FST4-1 2-91
2 解析操作

⑧ 補完する
三次元画像表示では,ポリゴン描画のために形状変化の補完計算が必要になる場合
があります(急激なZ方向変化(高低差)が画像内に存在していた場合など)。ここでは,
この補完計算を行うかどうかの設定を行います。
チェックしておくと,三次元描画の際に生じる画像粗さが軽減されますが,表示に時間
がかかります。
⑨ 精密描画
簡易描画モードと精密描画モードを切り替えます。

● オプション設定タブウィンドウ
① 表示モード
三次元表示の描画方法を指定します。
• カラー
三次元の立体像をカラー表示します。表面の表示色は元の画像に準じます。
• 光沢
表面に光が照射された状態での三次元表示計算を行い,結果を表示します。
• ワイヤフレーム
三次元の立体像をワイヤフレームで表示します。
• 2画像合成
2枚の画像を合成して三次元表示します。合成する2つの画像のすべての点で高さ
を比較し,高い方の点を使って三次元画像が描画されます。画像の合成は光沢表
示で行われます。
• カラー+光沢
カラー表示画像と光沢表示画像を合成表示します。カラー表示画像の上に半透明
な光沢表示画像を重ねて表示しますが,光沢表示画像の不透明度は,[αレベル]
で設定します。「αレベル」が「0.0」でカラー表示画像と同じ(光沢表示画像が完全
に透明)になり,「1.0」で光沢表示画像と同じ(光沢表示画像が完全に不透明)に
なります。
② 描画設定
XYZスケール,タイトル等の描画を行うかどうかを設定します。
③ フォントサイズ
スケール表示用フォントおよびタイトル表示のフォントのサイズを設定します。
④ ワイヤ表示
ワイヤフレーム表示時のワイヤフレームの間隔を指定します。

2-92 TM-57553FST4-1
2 解析操作

⑤ 2画像合成
2画像合成表示のときの合成画像を設定します。
• 重ね描きする画像を選択
クリックすると「データ選択」ウィンドウが開き,現在メモリ内に保存されている画像の
一覧が表示されます。ここで合成したい画像を選択します。
• 描画色を選択
合成表示する画像の表面描画色を指定します。
⑥ 設定読み込み
保存した三次元表示設定をデータファイル(拡張子*.3dp)から読み込みます。
⑦ 設定保存
現在の三次元表示設定をデータファイルとして保存します。

2.9.5 表示色設定
画像表示用カラーテーブルと,テキストの表示色を設定します。

[表示]のプルダウンメニューから[表示色設定]を選択する。
「表示色設定」ダイアログが表示されます。

表示色設定ダイアログ

TM-57553FST4-1 2-93
2 解析操作

● 画像表示色設定
画像を表示する際のLUTに対応するカラーテーブルを設定します。
選択できるカラーテーブルは次のとおりです。

カラーテーブルの種類 内 容
グレースケール グレースケール表示(高いところが白,低いところが黒)
逆グレースケール 反転表示(高いところが黒,低いところが白)
対数グレースケール 非線形(対数)変化するグレースケール表示
標準スケール 低いところが黒,高いところが白,中間がオレンジで表示
青スケール 青単色による表示
黄スケール 黄単色による表示
ユーザーが定義したカラーテーブルで表示
ユーザー設定1・2
設定方法は後述します。

以下のコントロールは,ユーザー設定1もしくは2を選択すると使用できるようになります。
• 新規
ユーザー設定1もしくは2に新規カラーテーブルを設定します。
• 開く
ユーザー設定の内容をLUT定義ファイル(*.col)から読み込みます。
いくつかのLUT定義ファイルが,ソフトウェアと一緒にインストールされています。
• 保存
ユーザー設定の内容をLUT定義ファイル(*.col)に保存します。
• 編集
現在ユーザー設定1もしくは2に設定されているカラーテーブルを編集します。
編集は次の手順で行います。

2-94 TM-57553FST4-1
2 解析操作

1. [ユーザー設定 1]もしくは[ユーザー設定 2]を選択し,[編集]を選択する。


イメージディスプレイに定義用のウィンドウが表示されます。
2. マウスを使用して[R(Red)],[G(Green)],[B(Blue)]のテーブルを定義する。

Intensity
マウスの左ボタンで指定していく

LUT index

黄 マゼンダ

シアン
緑 青

● 表示色設定
以下の項目のの表示色を設定します。色設定を行う項目をプルダウンメニューから選択し,
[定義]ボタンをクリックして表示色を設定する。

部 分 内 容
旧画像境界線 カレントでないイメージの枠の色
現画像境界線 カレントイメージの枠の色
オーバーレイテキスト イメージ中にかかれる文字の色
テキスト イメージのデータの表示色
座標選択 マウスで指定したときの+マークの色
座標軸 グラフの軸の色
往プロット グラフのデータ表示の色
同一座標軸に重ねて表示する2つのグラフのうち,
復プロット
片方のグラフのデータ表示色
グリッド グラフのグリッドの表示色
SPSマッピング境界線 SPSマッピング像の枠の色
プロット 1~8 グループプロット時のグラフの表示色

TM-57553FST4-1 2-95
2 解析操作

2.9.6 表示ウィンドウをクリア
ディスプレイの画像表示を消去します。

ファイルメニューの「データを閉じる」を選択する。
この機能はディスプレイの消去であり,画像データ自体は消去されません。

2.9.7 表示ウィンドウから取得
表示ウィンドウに表示されている画像をデータとして,タイトルをつけてコンピュータメモリ上
に記録します。

1. 記録する画像を表示させ,「表示」のプルダウンメニューから[メモリから取得]を
選択する。
2. プルダウンメニューから記録する領域を選択する。
選択には次の7種類があります。

選択の種類 内 容 選択の種類 内 容
全範囲 画面全部を保存 右下 画面右下の1/4領域を保存
左上 画面左上の1/4領域を保存 中央 画面の中央1/4領域を保存
右上 画面右上の1/4領域を保存 領域指定 任意に領域を選択
左下 画面左下の1/4領域を保存

左上 右上

左下 右下

[領域指定]を選択した場合,領域を対角の2点で指定します。指定はマウスの左
ボタンを押します。
3. 「色情報を保持しますか?」とウィンドウに表示されるので,そのまま残す場合は
[はい]を選択する。
4. 「タイトル入力」がウィンドウに表示されます。
5. タイトル名を入力する。
指定した画像がメモリに記録されます。
ここでのタイトルはSelect機能で表示されるタイトルとなります。ファイルにセーブ
するファイル名とは異なります。

2-96 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.9.8 測定パラメータを変更
測定データのヘッダに記録されている測定パラメータの内容を変更します。
[表示]のプルダウンメニューから[測定パラメータを変更]を選択する。
「測定パラメータ」ウィンドウが表示されます。


③ ⑥
④ ⑦
⑤ ⑧


測定パラメータウィンドウ

① タイトル
測定データのタイトルです。半角文字40字以内で設定できます。
② 情報
測定データの付帯情報です。半角文字39文字×5行以内で設定できます。
測定機種や測定条件などの情報が記録されています。
③ トンネル電流[nA]/リファレンス[V]
測定時のフィードバックリファレンス値です。
④ 処理履歴表示
SPMデータ情報ウィンドウに,画像処理履歴を表示するかどうかを設定します。
⑤ 画像サイズX/Y[nm]
測定時のスキャンサイズです。
変更すると,測長解析結果が変わりますので注意してください。
⑥ バイアス電圧
測定時のバイアス電圧値です
⑦ 入力信号
測定時の入力信号です。
変更すると,Zスケールの物理単位と換算値が変わりますので注意してください。
⑧ データ 0×0000/0xFFFF
画像データのZスケール値(16bitバイナリデータ)に対応する測定値です。
データ0x0000が画像中でZスケールが最も低い位置での測定値,データ0xFFFF
が最も高い位置での測定値です。
⑨ フィードバックモード
測定時のフィードバックモードです。

TM-57553FST4-1 2-97
2 解析操作

⑩ 走査モード
測定時の走査モードです。
⑪ SPSモード
SPSマッピング測定を行った時の,SPS測定モードです。

2.9.9 SPS測定位置を表示
画像上でSPS測定を実行した場合には,それらのSPSデータは画像データと一緒に管理さ
れています。ここでは,SPSデータの測定位置およびスペクトルの参照,SPSデータの抽出な
どを行います。
SPSデータが含まれている画像データが,表示ウィンドウに表示されている際に機能が
有効になります。

1. [表示]プルダウンメニューから,[SPS測定位置を表示]を選択する。
「データ選択」ウィンドウが表示されるとともに,「表示ウィンドウ」に選択しているスペクト
ルの測定位置とスペクトルが表示されます。

データ選択ウィンドウ

表示ウィンドウ

2-98 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2. 表示したいスペクトルを表から選び,[選択]をクリックする。
選択したスペクトルおよびSPS測定位置が表示されます。
3. スペクトルを選択した状態で,[抽出]をクリックする
選択したSPSデータが画像データから抽出され,独立したデータとして扱えるようにな
ります。

TM-57553FST4-1 2-99
2 解析操作

2.10 マッピングメニュー(画像処理機能)
SPSマッピング測定は,測定面内の各点(128×128点)においてSPS測定を行いながら走
査していく測定方法です。測定可能なSPS測定(I-V,S-V,I-S,フォースカーブ,フリクショ
ンフォースカーブ)においてマッピング測定が可能です。
例としてI-V測定でマッピングを行う場合について説明します。それ以外のSPS測定の場合
には,それぞれの測定に即して読み変えてください。
I-V測定でマッピングを行った場合のSPSマッピング測定は,CITS(Current Imaging
Tunneling Spectroscopy)と呼ばれます。次のように各点でI-V特性をとりながら走査
していくもので,表示されている画像のすべての画素でのI-V特性が収集されます。

V I
探針


試料

画面左上の画像は,「SPM測定設定」で指定したパラメータでのTopography像で,次の
像(1つ右からの像)からは,Topography像を取ったときのZの高さを変えずに,バイアス電
圧を変化させたときの電流像が表示されます。
トンネル電流

Topo 像

-2.0V -1.9V -1.8V

矢印で示すバイアス電圧を加えたとき
の各点での電流像を表示

バイアス

Topography像とI-V特性は,同時に測定されたものですので,ドリフトやヒステリシスの影
響がなく,画像の位置関係は完全に一致しています。Topography像を見ながらマウスで
任意の点を選択し,正確にその点のI-V特性を表示できます。

2-100 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.10.1 表示設定
SPSマッピング像の表示の方法を設定します。
SPSマッピング像は,128×128画素で表示されます。



SPSマッピング表示設定ダイアログ

① 表示モード
表示モードの選択
• 標準
電流像を直接表示します。
• 差分
隣の映像との電流値の差を表示します。
• 標準差分
隣の映像との電流値の差を正規化した像を表示します。
• 標準正規化
像を最初のAD値にもどし,隣の映像との電流値の差を正規化した像を表示します。
• 微分
電流値を電圧値で微分(dI/dV)した像を表示します。
② バイアス電圧・距離を表示
電流像を取り込んだときのバイアス電圧の表示/非表示の切り替えを行います。
表示文字のOverlay(文字のまわりを消さない),Opaque(文字のまわりを黒で消す),
Off(表示しない)から選択します。
③ 表示画像数
表示する画像の枚数を設定します(1~16)。

TM-57553FST4-1 2-101
2 解析操作

④ 標準化設定
最小微分値: 表示上,黒になる数値。ただし,表示モードが「微分」のときのみに使用。
最大微分値: 表示上,白になる数値。ただし,表示モードが「微分」のときのみに使用。
⑤ 表示画像
• TOPO像を表示
表面形状像の表示を行うかどうかを設定します。チェックされていたときは画面左上
に表面形状像が表示されます。
• 表示方法
どの表示方法を使うかを選択します。
None: 表示しない
Spaced: 等間隔の電圧値
First: 最初の電圧値からの設定枚数
Last: 最後の電圧値からの設定枚数
設定枚数はNo to displayでの画像枚数
Mixed: 設定した電圧値

2.10.2 特殊表示
SPSマッピング像を特別なモードで表示します。
表示するモードは次のとおりです。

モードの種類 内 容
ページ表示 SPSマッピング像を最初から16枚ずつ表示する。
64枚のSPSマッピング像を64×64の画素で一度に表示する。
像が16枚以下だと128×128の画素で表示される。
64×64表示
モニタ上の十字カーソルを64枚の像の上のどれかに持ってきたとき,
[Data Information]ウィンドウにその像の情報が表示される。
画面左上の128×128の画素でつくる枠内で,全部のSPSマッピング像
連続表示
をバーチャートを動かすことにより,リアルタイムで連続的に表示する。

メモリ

CITS CITS 画面左上に表示


1 枚分の 1 枚分の
データ データ

この 64 枚を
64 枚 表示

バーチャート
で指定
64 枚 マウスボタン

Paged display (64×64 display) Continuous display

2-102 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.10.3 表示画像を選択
カレントなマッピング像の隣に表示するマッピング像を選択するものです。

SPSマッピング画像選択ダイアログ

「カレントなSPSマッピング像」は,コンピュータメモリに記録されているマッピング像の
中で,現在コンピュータプログラムが指定しているマッピング像です。

例えば,次のようにSPSマッピング像が表示されているとします。
バイアス電圧が-1.8Vのトンネル電流像が,Current CITS像になっているとき,各コマン
ドを実行させると次のようになります。
表示: バイアス電圧-1.8Vの(カレントの)CITS像が表示され,この像が色の
ついた枠で表示されます。
前の画像: バイアス電圧-1.9VのCITS像を表示し,この像がカレントイメージにな
ります。
次の画像: バイアス電圧-1.7VのCITS像を表示し,この像がカレントイメージにな
ります。

Topo 像
-2.0V
-1.9V Previous CITS image

-1.8V Current CITS image

-1.7V Next CITS image

1.9V
2.0V

CITS 像

TM-57553FST4-1 2-103
2 解析操作

2.10.4 データセットを編集
SPSマッピングデータ内のマッピング像に,タイトル入力,消去,表示,コピーを行います。

● 編 集
[データセットを編集]のプルダウンメニューから[編集]を選択する。
「SPSマッピング画像選択」ダイアログが表示されます。


① ③
④ ⑥

SPSマッピング画像選択ダイアログ

① 前の画像
現在表示されているマッピング像の,一つ前のマッピング像を表示します。
② 表示
現在表示されているマッピング像を再表示します。
③ 次の画像
現在表示されているマッピング像の,一つ次のマッピング像を表示します。
④ コピー
SPSマッピングデータの中から,任意のマッピッング像を単独の画像として抜き出して,
メモリ上に1枚の画像として記録します。ここで取り出されたマッピング像は,単独の画
像として扱われ,普通の画像と同じように,画像処理等が行えます。
⑤ 削除
SPSマッピングデータの中から,任意のマッピング像を消去します。

1 1
2 3
3 5
4 消去後
消去 5


CITS 像

2-104 TM-57553FST4-1
2 解析操作

⑥ 編集
カレントイメージとして表示されているマッピング像に対してタイトルを入力します。

● 画像の入れ換え
[データセットを編集]の[編集]にある[コピー]で,単独の画像としてメモリ上に記録された
画像をSPSマッピングデータ列のデータと入れ換えます。
[コピー]でメモリ上に作られた画像がないときに,この機能を選択するとエラーとなりま
す。

【例】

Topo 像 -1.75V Topo 像 -1.75V

-2.0V -2.0V そのままメモリ上に残る

-1.9V -1.9V

-1.7V -1.75V
Replace
-1.6V -1.6V
CITS

1.9V 1.9V

2.0V 2.0V
-1.7V と入れ替えられる

Topo 像 -1.8V Topo 像 -1.8V

-2.0V -2.0V

-1.9V -1.9V

-1.8V -1.8V
Replace
-1.7V -1.7V
CITS

1.9V 1.9V

2.0V 2.0V

TM-57553FST4-1 2-105
2 解析操作

● 画像の挿入
[データセットを編集]の[編集]にある[コピー]で,単独の画像としてメモリ上に記録された
画像を,SPSマッピングデータ列の中に挿入します。
[コピー]でメモリ上に作られた画像がないときに,この機能を選択するとエラーとなりま
す。

Topo 像 -1.8 V Topo 像 -1.8 V

-2.0V -2.0V

-1.9V -1.9V

-1.7V Insert -1.8 V

-1.6V -1.7V
CITS
-1.6V

1.9V
2.0V 1.9V

2.0V

● TOPO像上に重ねる
表面形状像の上にマッピング像を重ねて表示します。

● すべての画像を取り出す
SPSマッピングデータ内のマッピング像を,すべて分離して1枚1枚の画像として記録します。
実行すると,[元のSPSマッピングデータを保存しますか?]がウィンドウに表示されます。
ここで,[はい]を選択すると元のSPSマッピングデータが残りますが,[いいえ]を選択すると
元のSPSマッピングデータは消去され,分離されたマッピング像だけが残ります。

2-106 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.10.5 平均処理
何枚かづつのグループでマッピング像が平均されます。

1. [マッピング]のプルダウンメニューから[平均処理]を選択する。
「平均するデータの数(2~64)」がウィンドウに表示されます。
2. 何枚の像で平均するか数値を選択する(選択できる数値は2/4/8/16/32)。
選択するとモニタ上に平均化された像が表示されます。

【例】
2 枚ずつ平均

Topo 像 Topo 像

-2.0V -1.95V

-1.9V -1.75V

-1.8V

-1.7V

Average Image
1.95V

1.9V

2.0V

2.10.6 データセットの複製
SPSマッピングデータ全体をメモリ上に複写します。

1. [マッピング]のプルダウンメニューから,[データセットの複製]を選択する。
2. メモリ上にSPSマッピング像全体を複写する。

TM-57553FST4-1 2-107
2 解析操作

2.10.7 スペクトルの抽出
SPSマッピングデータからSPSデータを取り出し,データ処理してグラフ表示します。

1. [マッピング]のプルダウンメニューから[スペクトルの抽出]を選択する。
「スペクトルの抽出」ダイアログが表示されます。
2. 抽出する方法を下記の仕様から選択して,[OK]ボタンをクリックする。
仕様に従った,スペクトルの抽出が実行されます。

スペクトルの抽出ダイアログ

● 表示方法
表示方法 内 容
通常のスペクトル 通常のSPSデータを表示
一次微分 微分したSPSデータを表示
正規化した一次微分 微分したSPSデータを正規化した結果を表示
二次微分 二次微分したSPSデータを表示
正規化した二次微分 二次微分したSPSデータを正規化した結果を表示

● 抽出位置選択
この機能は粒子解析で2値化した像に対してのみ有効です。
粒子解析処理をおこなった2値像の場合,粒子での指定ができます。[オブジェクト]を選択
すると,指定した粒子での平均が表示されます。

2-108 TM-57553FST4-1
2 解析操作

● 領域指定
抽出する位置をTOPO画像上で指定します。
[領域の指定]

2/2

1/2

Topo 像 領域内のデータの平均が表示される
マウス左ボタンで2点を指定

2.10.8 全スペクトルをファイルに出力
SPSマッピングデータに含まれるすべてのSPSスペクトルデータを,独立したスペクトルデー
タファイルとして出力します。以下の手順で行います。

1. メインメニューの[マッピング]メニューから[全スペクトルをファイルに出力]を選択
する。
注意メッセージが表示されます。

注意メッセージダイアログ

◇注意◇
処理を実行すると,SPSスペクトルデータファイルが128×128=16,384個作成され
ます。ひとつのフォルダに大量のファイルが存在すると,Windowsのファイル操作パ
フォーマンスが著しく低下し,ソフトウェアの動作に大きな影響を与えるので注意して
ください。また,処理の完了までには長時間のファイルアクセスを必要とします。測定
ソフトウェア動作中に処理を実行すると,測定動作に悪影響を及ぼすので,測定動
作中には絶対に処理を実行しないでください。

TM-57553FST4-1 2-109
2 解析操作

2. [OK]ボタンをクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。
OKボタンをクリックする前に,処理が実行できるか確認してください。
3. SPSスペクトルデータの保存先とファイル名を指定して,[OK]をクリックする。
処理が実行されます。
処理実行中はプログレスバーが表示され,経過を確認できます。処理を途中で中止
する場合は,キーボードのESCキーを押してください。
保存されるSPSスペクトルデータのファイル名は,入力したファイル名を元に以下のよう
に設定されます。
ファイル名として「Test」を指定した場合
Test_X000Y000.SPC : 画像座標(0,0)でのスペクトルデータ
Test_X001Y000.SPC : 画像座標(1,0)でのスペクトルデータ
;
Test_X127Y126.SPC : 画像座標(127,126)でのスペクトルデータ
Test_X127Y127.SPC : 画像座標(127,127)でのスペクトルデータ

2-110 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.10.8b 特殊解析
特定のモードで測定されたSPSマッピングデータから,データ解析により別種の画像を生成
する解析処理です。条件に合わないSPSマッピングデータには適用できません。

2.10.8c FCマッピングから粘着力像を抽出
フォースカーブマッピングデータから粘着(吸着)力像を抽出します。
各測定点でのフォースカーブから,カンチレバが試料表面から離れる際の力の大きさを抽出
し,画像を生成することで粘着(吸着)力像を製作します。

フォースカーブからの粘着力の抽出

粘着力は負の値の力として計算されますので,粘着力像は画像の暗いところほど,粘着力
が強いことになります。

表面形状像(左)と抽出された粘着力像(右)

TM-57553FST4-1 2-111
2 解析操作

2.10.8d F-Vマッピングから表面電位像を抽出
F-Vマッピングデータから,表面電位像を抽出します。この解析処理を利用すると,走査ケ
ルビンプローブ測定をF-Vマッピング測定で代用することができます。
各走査点でのF-Vカーブを2次式近似して,数値演算により近似式が最小値を取る時の
バイアス電圧を算出します。算出されたバイアス電圧値が表面電位の値と等価になります
ので,算出値で画像を生成することで表面電位像を製作します。

F-Vカーブから表面電位を抽出

解析結果として,表面形状像・表面電位像・2次近似項像の3つの画像が製作されます。

表面形状像(左)と表面電位像(中央)と2次近似項像(右)

2-112 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.11 計算処理メニュー(データ処理機能)
I-Vデータ等のグラフデータに対する処理を行います。表示されているデータが,画像かグ
ラフデータかによってメニューが自動的に替わります。

2.11.1 スムージング
グラフデータのスムージングを行います。
計算処理]のプルダウンメニューから[スムージング]を選択する。
「スムージング」ダイアログが表示されます。

スムージングダイアログ

• 平 均
データのスムージングを行います。指定したポイントの数だけ隣のデータとの平均をとり,
その平均値を新しい値として再表示します。

5 点のY値の平均をとって
●の値とする

X
5point の場合

グラフの両端のデータは処理が行われません。

TM-57553FST4-1 2-113
2 解析操作

• メディアン
データ中に含まれるスパイク状のノイズを除去します。指定したポイントの数だけ隣の
データと比較し,中間の値を新しい値として再表示します。

Y

4 5 点を値の大きい順に並べかえ
2 3→4→2→1→5
大 小
1 5 中心の値(ここでは2のYの値)
を●の値とする

5point の場合 X

グラフの両端のデータは処理が行われません。

• データ幅
ポイント数を指定します。ここで指定したポイントの数の幅でデータ処理が行われます。

2.11.2 X軸演算/Y軸演算
X軸(X軸演算),Y軸(Y軸演算)に対して,定数との演算を行います。
1. [計算処理]のプルダウンメニューから[X軸演算],または[Y軸演算]を選択する。
プルダウンメニューが表示され,[処理]を選択します。
2. [加算],[乗算],[除算]を選択した場合には,[コントラストを入力]がウィンドウ
表示されるので,定数値を入力する。
演算の種類は次のとおりです。

演算の種類 内 容
加算 定数の加算
乗算 定数の乗算
除算 定数での除算
自然対数 自然対数をとる
反転 反転する
絶対値 絶対値をとる
ソート データを順番に並び替えます

演算結果がオーバーフローした場合,演算結果はグラフ上の最大値,最小値に
固定されます。

2-114 TM-57553FST4-1
2 解析操作

Y Y
10 10
5 5

X X
-5 Add 定数5.0に -5
したとき
-10 -10
元のグラフ 演算後のグラフ

2.11.3 スペクトラム間演算
表示されているグラフのY値と,コンピュータメモリに記録されているほかのグラフのY値とで
演算を行います。

1. 計算処理]のプルダウンメニューから,[スペクトラム間演算]を選択する。
プルダウンメニューが表示されます。
2. 処理を選択する。
コンピュータメモリに記録されているグラフのリストがウィンドウに表示されます。
3. 演算対象となるグラフを選択する。
演算の種類は次のとおりです。

演算の種類 内 容
加算 A+B
減算 A-B
平均 (A+B)/2
差分 |A-B|
乗算 A×B
除算 A/B

A:表示されているグラフ B:リストから選択したグラフ

Y Y Y

X Add X X

表示されているグラフ リストから選択したグラフ 演算後のグラフ

TM-57553FST4-1 2-115
2 解析操作

2.11.4 微分演算
表示されているグラフの微分演算を行います。

1. [計算処理]のプルダウンメニューから,[微分演算]を選択する。
「微分演算」ダイアログが表示されます。
2. 微分演算の方法を下記の仕様から選択して,[OK]ボタンをクリックする。
仕様に従った,微分演算が実行されます。
[キャンセル]ボタンをクリックすると,実行されません。

微分演算ダイアログ

• 演算
それぞれの微分方法は次のとおりです。

微分の種類 内 容
一次微分 サビツキーゴレイ法により,一次微分を行う。
規格化した一次微分 一次微分の結果を規格化した結果を表示
二次微分 サビツキーゴレイ法により,二次微分を行う。
規格化した二次微分 二次微分の結果を規格化した結果を表示

• 演算データ数
サビツキーゴレイ法で使用するデータ数を設定します。

2-116 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.11.5 ベースライン補正
すべてのYの値を平均し,Yの値から平均値を差し引いて表示します。

[計算処理]のプルダウンメニューから,[ベースライン補正]を選択する。
処理結果が表示されます。

Y Y
10 10

5 5

X X

-5 Remove DC Bias -5
Y 値を平均すると
-10 2.5であった場合
-10

結果

TM-57553FST4-1 2-117
2 解析操作

2.12 分析処理メニュー(データ処理機能)
2.12.1 近似曲線
グラフデータをn次の多項式で近似します。

1. [分析処理]のプルダウンメニューから[近似曲線]を選択する。
[近似曲線を入力]がウィンドウに表示されます。
2. 近似する多項式の次数を入力する。
このときの近似式は
n n-1 1
AnX +An-1X +…+A1 X +A0
という式で近似されます。
近似が終了すると元のグラフの上に近似されたグラフが重ねて表示され,グラフ右に
Xn~X0次までの計算結果と標準偏差および相関係数が表示されます。

近似曲線入力用ウィンドウ

再び[近似曲線を入力]がウィンドウに表示されます。数値を変更すれば再度近似曲
線計算が実行できます。
[キャンセル]をクリックすると処理が終了します。

2-118 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.12.2 拡 大
グラフの一部分の拡大を行います。

1. 拡大するグラフを表示させ,[分析処理]のプルダウンメニューから[拡大]を選択
する。
十字カーソルが表示されます。
2. 拡大する領域の対角をクリックで指定する。
拡大されたグラフが表示されます。

2/2

1/2

指定範囲が拡大表示される
Zoomの範囲を指定
対角上の2点を指定

2.12.3 測 量
現在十字カーソルのある点のX,Yの値と,1つ前に指定した点のX,Yの値との差を表示し
ます。

1. [分析処理]のプルダウンメニューから,[測量]を選択する。
以下のような画面が表示されます。

測量表示ウィンドウ

TM-57553FST4-1 2-119
2 解析操作

2. グラフ上の赤色と緑色のマーカをドラッグする。
• グラフ上にマウスカーソルを移動すると,カーソルが手のひら形に変形します。
• マーカ表示位置からドラッグするとマーカを移動できます。
• グラフ左に表示されている,マーカ位置の数値(Xの値,Yの値)および2個のマーカ
の相対値(Xの距離,Yの距離)が変化します。
マーカはグラフに沿って移動します。
3. マウスの右ボタンをクリックする。
処理を終了します。
マウスの右ボタンをクリックするまでの間は,マーカの位置を変更できますが,いっ
たん処理を終了した後ではマーカの位置を変更することはできません。

2.12.4 グループ表示
選択したグラフを同一画面上に重ねて表示します。

1. [分析処理]のプルダウンメニューから,[グループ表示]を選択する。
「グラフ表示画面」と「データ選択」ウィンドウが表示されます。

データ選択ウィンドウ

データ選択ウィンドウには,カレントデータと同じ種類のSPSデータのみが表示され
ます。メモリ上に存在するすべてのデータを表示するには[すべて表示]をチェック
してください。
2. 重ね表示するグラフを選択する。
一覧からグラフを選択して[選択]をクリックすると,グラフが表示されます。
3. 続けて処理を行う。
グラフ選択を繰り返すことにより,複数のグラフが重ねて表示されます。グラフの縦軸と
横軸は自動的に更新されます。
表示から外したいグラフがある場合には,一覧から外したいデータを選択し[選択解
除]をクリックします。

2-120 TM-57553FST4-1
2 解析操作

10 5 10

5 5

-10 -5 5 10 -5 5 -10 -5 5 10
-5 -5

-10 -5 -10

表示されているグラフ 重ね書きするグラフ 重ね書きされたグラフ


軸は元のグラフのスケールを使用

4. 処理を終了する場合は,グラフ選択ウィンドウの[OK]をクリックする。

2.12.5 FFT表示
グラフデータに対してFFT処理を行います。
関係する機能は「ベースライン補正」です。

[分析処理]のプルダウンメニューから[FFT表示]を選択し,ウィンドウを指定す
る。

FFTウィンドウの種類 ウィンドウの式
ウィンドウなし ウィンドウをかけずに,そのままFFTを行う
Cosineウィンドウ W(n)=0.5-0.5*cos(10nπ/N)
Parzenウィンドウ W(n)=1-{n-0.5*(N-1)/(0.5*(N+1)}
Cosine archウィンドウ W(n)=1-{n-0.5*(N-1)/0.5*(N+1)}
Hammingウィンドウ W(n)=0.54-0.46*cos(2πn/N)

FFTが実行され結果が表示されます。
DCのバイアス成分は,FFTを実行する前に自動的に除去されます。

TM-57553FST4-1 2-121
2 解析操作

2.13 表示メニュー(データ処理機能)
メニュー項目のうち,「表示色設定」,「メモリをクリア」,「メモリから取得」,「データ情報を変
更」の機能に関しては画像処理機能と同じです。

2.13.1 再プロット
グラフを再表示します。

[表示]のプルダウンメニューから,[再プロット]を選択する。
最後に表示されていたグラフが再度表示されます。

2.13.2 プロット設定
[表示]のプルダウンメニューから,[プロット設定]を選択する。
「プロット設定」ダイアログが表示されます。

② ③

プロット設定ダイアログ

2-122 TM-57553FST4-1
2 解析操作

① X軸/Y軸
グラフのX軸およびY軸の表示についてのパラメータを設定します。
• 表示幅
横軸の画面上での大きさを指定します。
指定できる大きさは256,512の2種類です。
• プロット
線形軸を用いるか対数軸を用いるかを設定します。
• グリッド表示
グリッド線を引くか引かないかを指定します。
② 軸表示
横軸と縦軸の交差する点(交差点)を指定します。
[十字]を指定すると,交差点がグラフ中心にきます。
[L字]を指定すると交差点がグラフ左下にきます。
③ フォント
タイトル表示文字(Title),XY軸タイトル文字(X,Y Title),軸表示文字(Axes)
について,フォントの種類と大きさ,文字装飾を設定することができます。
プルダウンメニューから設定文字種類を選んで[設定]ボタンをクリックすると,設定ダ
イアログが表示されます。

④ スケール設定
X軸,Y軸のスケールについて設定します。通常は自動設定にして使用します。
• 自動
軸を自動で引くかマニュアルにするかを設定します。
チェック時はデータの値に合わせて表示されます。
• 最小値
表示するスケールの最小値を指定します。
• 最大値
表示するスケールの最大値を指定します。
• 目盛間隔
表示するスケール目盛間の値を指定します。

TM-57553FST4-1 2-123
2 解析操作

2.14 選択メニュー
読み込まれたデータの一覧を表示します。カレントデータの頭には[ ]がついています。

● 前の画像/スペクトル
選択のリストに表示されたカレントデータの,一つ上の画像を表示します。一つ上のデータが
グラフデータの場合はその上の画像データを表示します。

● 次の画像/スペクトル
選択のリストに表示されたカレントデータの,一つ下の画像を表示します。一つ下のデータが
グラフデータの場合はその下の画像データを表示します。

● 前のデータ
選択のリストに表示されたカレントデータの,一つ上のデータを表示します。
通常この機能はマウスを使って指定しなくても,キーボードのPage Upキーを押せば一つ
上のデータが表示されます。この機能では,画像,グラフ等の区別なく表示が行われます。

● 次のデータ
選択のリストに表示されたカレントデータの,一つ下のデータを表示します。
通常この機能はマウスを使って指定しなくても,キーボードのPage Downキーを押せば一
つ下のデータが表示されます。
この機能では,画像,グラフ等の区別なく表示が行われます。

2-124 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.15 ウィンドウメニュー
「表示ウィンドウ」に対する操作を行います。

● 新規ウィンドウを制作
新しい「表示ウィンドウ」を開きます。複数の「表示ウィンドウ」があるときは,「ウィンドウ」のリ
ストの頭に[ ]マークのある「表示ウィンドウ」がアクティブです。

● ウィンドウを閉じる
アクティブになっている「表示ウィンドウ」を閉じます。
ただし,すべての「表示ウィンドウ」を閉じることはできません。必ず一つは「表示ウィンドウ」
がある必要があります。
「表示ウィンドウ」は表示するだけのもので,「表示ウィンドウ」を閉じてもメモリ上のデー
タは消えません。

● ウィンドウをアイコン化
ソフト画面上で,アイコンになっているウィンドウ(ウィンドウはすべて対象となります)を整列さ
せます。

● 並べて表示
ソフト画面上で,開いているウィンドウをカスケードに(少しずつ位置を変えて)整列させます。

TM-57553FST4-1 2-125
2 解析操作

2.16 SPM設定メニュー
2.16.1 カンチレバ設定
ここでは,カンチレバのたわみから原子間力を,またカンチレバのねじれから摩擦力を算出す
るための校正値を設定します。

● 力計算係数
カンチレバのたわみから原子間力を算出するためのカンチレバ校正を行います。
原子間力は,以下の式を用いて計算されます

F = ka(V − V0 )[nN ]

• 適用
このチェックボックスをチェックすると,フォース像,フォースカーブ表示のときに電圧値か
ら計算された原子間力値で表示されます。
• バネ定数 k[N/m]
カンチレバのばね定数を入力します。
• 力感度 a[nm/V]
光てこ方式の感度に関する係数です。
• カンチレバ・PD間距離 d[mm]
カンチレバからフォトダイオードまでの距離を入力します。
この距離は機種によって異なり,以下のようになります。

適応機種 カンチレバ・PD間距離(mm)
JSPM-5200 40.0
JSPM-4500A/JSPM-4610A 44.9

• 基準電圧 V0 [V]
カンチレバに作用する力が0のときのForce信号の値を入力します。
この数値は,装置,カンチレバによって異なります。[適用]のチェックを外してフォースカ
ーブを取り込んでから計算を行います。次のようなフォースカーブが得られた場合,各パ
ラメータは次のように計算します。

2-126 TM-57553FST4-1
2 解析操作

v2
v1
v0
d
d2 d1

d 2 − d1
a=
V2 − V1

● 摩擦力計算係数
カンチレバのねじれから摩擦力を算出するためのカンチレバ校正を行います。
摩擦力は以下の式を用いて計算されます。

ka(V − V0 )
F= × 109 [nN ]
2d × 106
• 適用
このチェックボックスをチェックすると,摩擦像表示したときに電圧値から計算された摩
擦力値で表示されます。
• バネ定数 k[N/rad]
カンチレバのねじれ方向のばね定数を入力します。ねじれ方向のばね定数は以下の
計算式より計算します。

wt 3G
k=
3l (h + t / 2 )

t カンチレバー

h W 基板
l

探針

ここで,w>>tのときGはせん断弾性係数であり,カンチレバの材質がシリコンであ
10
る場合にはG=5×10 [Pa]となります。エラー! ブックマークが定義されていませ
ん。
• 力感度 a[nm/V]
この数値は装置によって異なります。フォトダイオードの位置(X軸)を変化させたときの
AFM AMPのFFMの値によって校正します。

TM-57553FST4-1 2-127
2 解析操作

Y軸+

X軸+

X軸調整つまみ

X軸-

Y軸調整つまみ



Y軸-

本図は JSPM-5200 の場合です。 Xは1回転で0.5mm,Yは0.25mm移動します。

このとき次のような結果が得られた場合,このグラフから校正値を計算します。

V
+10

v1

x2
x1 X

v2

-10 x1 − x 2
a=
V1 − V2

フォトダイオード位置調整つまみ1回転あたりの移動量は,以下のようになります。

適応機種 X軸移動量(mm) Y軸移動量(mm)


JSPM-5200 0.5 0.25
JSPM-4500A/JSPM-4610A 1.0 1.0

2-128 TM-57553FST4-1
2 解析操作

2.17 ヘルプメニュー
このソフトウェアにはオンラインヘルプが用意されています。機能の使用方法や意味がわか
らないときにリファレンスとして使用できます。

● 目次
オンラインヘルプを表示します。

● 検索
オンラインヘルプの内容を項目で探索することができます。キーワードをクリックし,簡単に探
索が行えます。

● ヘルプの使い方
オンラインヘルプの使用法を表示します。実際のヘルプの操作で一部サポートされてない
機能もあります。

● WinSPMのバージョン情報
このソフトウェアのバージョン番号を表示します。

TM-57553FST4-1 2-129
3
付 録
3.1 WinSPMソフトウェアのインストール方法 .............................................3-1
3.1.1 WinSPMソフトウェアの再インストールを行う前に .................3-1
3.1.2 Windowsの再インストールについて .............................................3-2
3.1.3 A/DボードのデバイスドライバをPCへ搭載 ..............................3-2
3.1.4 WinSPMソフトウェアの再インストール .........................................3-7
3.2 WinSPMソフトウェアのセットアップ ........................................................3-8
3.2.1 機器設定の実行.....................................................................................3-8
3.2.2 スキャナ感度設定の保存と読み込み..........................................3-9
3.2.2a スキャナ設定ダイアログの表示............................................3-9
3.2.2b スキャナ感度設定の保存......................................................3-10
3.2.2c スキャナ設定感度の読み込み............................................3-10
3.2.3 モータドライブ位置校正値の保存と読み込み ....................3-11
3.2.3a ステージ移動設定ダイアログの表示..............................3-11
3.2.3b モータドライブ位置校正値の保存....................................3-11
3.2.3c モータドライブ位置校正値の読み込み..........................3-11
3.3 カンチレバ.........................................................................................................3-12
3.4 ファイルフォーマット.......................................................................................3-14
3.4.1 標準的なTIFFファイルの構造.......................................................3-14
3.4.2 WinSPM画像ファイル .......................................................................3-16
3.4.2a WinSPM画像ファイルの全体構造 ...................................3-16
3.4.2b WinSPM画像ファイル[1] (SPM Image)......................3-17
3.4.2c WinSPM画像ファイル[2] (Compressed TIFF) .......3-36
3.4.2d WinSPM画像ファイル[3] (FFT画像ファイル) ..........3-41
3.4.2e WinSPM画像ファイル[4] (CITS画像ファイル).........3-42
3.4.3 Spectrum Dataファイル ...................................................................3-45
3.4.4 Spectrum Data付き画像ファイル...............................................3-46
3.4.5 レポートファイル.....................................................................................3-47
3.5 WinSPMのオプションフラグおよびデバグフラグ.........................3-49
3.5.1 オプションフラグの意味 ...................................................................3-49
3.5.2 デバグフラグの意味 ..........................................................................3-50

TM-57553FST4-1
3 付 録

3.1 WinSPMソフトウェアのインストール方法
ここでは,WinSPMソフトウェアの再インストール方法について説明します。

3.1.1 WinSPMソフトウェアの再インストールを行う前に
■ 障害の再確認
• 再インストールを行う前に再度障害の原因を確認し,可能な限り障害を解消してくださ
い。
• コンピュータのハードディスクの空き容量が極端に減少している場合は,記録されている
測定データをバックアップして空き容量を増加させてください。特にWinSPMシステムが
インストールされているハードディスクの空き容量は,十分に確保してください。
• WinSPMシステムに構成されていないデバイスがコンピュータに装着されている場合は,
それらを全て取り外してください。また,WinSPMソフトウェア以外のソフトウェアをコンピュ
ータにインストールしている場合には,それらを全てアンインストールしてください。

● WinSPMシステム(コンピュータシステム)の構成品
• コンピュータ本体
• ディスプレイ
• キーボード/マウス
• A/Dボード
• WinSPMソフトウェア

■ スキャナ感度とモータドライブ位置の校正値の確認
再インストールを行う前に,スキャナ感度とモータドライブ位置の校正値をWinSPMソフトウ
ェアが記録していることを確認してください。
詳細は,7.2節「WinSPMソフトウェアのセットアップ」を参照してください。

再インストール後には,改めてこれらの値をWinSPMソフトウェアに記憶させる必要がありま
す。

■ 再インストールの際に用意する物
再インストールに際しては以下の物を用意してください。
• コンピュータ付属のWindowsインストールCD-ROMとマニュアル
• コンピュータのマニュアル類とデバイスドライバインストールディスク
• WinSPMソフトウェアのインストールCD-ROM
• A/Dボードに付属しているCD-ROM (Omni CD)

Windowsのインストールディスクではなく,メーカ付属の「Recovery CD」のみが付属
している場合は,そちらをご利用ください。

TM-57553FST4-1 3-1
3 付 録

3.1.2 Windowsの再インストールについて
Windowsを再インストールが必要な場合には,コンピュータ付属のマニュアルに従って作
業を行ってください。その際,PCに標準構成されているデバイス以外(ADボードなど)は全
て取り外した状態で再インストールを行ってください。

再インストール終了後Windowsが起動し,コンピュータが正常に使用できる状態であるこ
とを確認してください。
なお,画面表示は以下のように設定してください。
壁紙: なし
表示色数: High Color (32ビット)
画面領域: 1280×1024
フォントサイズ: 標準

3.1.3 A/DボードのデバイスドライバをPCへ搭載
Windows の 再 イ ン ス ト ー ル を 行 っ た 場 合 に は , 以 下 の 手 順 で A/D ボ ー ド (Data
Translation社製 DT3016 もしくは DT3034) をPCへ搭載してください。

● デバイスドライバのインストール
A/Dボードのデバイスドライバのインストールは,ボードをPCに装着する前に行います。

1. A/Dボード付属の[Omni CD]をCD-ROMドライブに入れる。
自動的にインストーラが起動し,以下のような画面が表示されます。
Omni CDのバージョン情報については,出荷時期により異なる場合があります。

INSTALL PRODUCTS

インストーラ起動画面

2. 画面上から,[INSTALL PRODUCTS](図中の「INSTALL PRODUCTS」)をク


リックする。
ソフトウェアインストール画面へ移ります。

3-2 TM-57553FST4-1
3 付 録

3. ソフトウェアインストール画面上から,[DEVICE DRIVERS](図中の「デバイスドラ
イバ」)を選択しクリックする。
デバイスドライバインストーラが起動します。

デバイスドライバ

インストール画面 (デバイスドライバ)

4. 以下の画面が表示されるので,[Next >]をクリックする。
パッケージのバージョンは出荷時期によって異なります。

ドライババージョン情報画面

TM-57553FST4-1 3-3
3 付 録

5. インストーラの指示に従って作業を進める(設定は全て標準設定を使用してくだ
さい)。
以下のようなインストールするドライバの種類を選択する画面が表示されます。
6. 画面上のリストボックスから,[DT3010 Series Software]を選択し,[Next >]を
クリックする。

コンポーネント選択画面

さらに,インストーラの指示に従って作業を進めると,デバイスドライバのインストールが
実行され,以下のような作業終了画面が表示されます。

インストーラ完了画面

7. [Finish]をクリックする。
デバイスドライバのインストールを終了します。
デバイスドライバのインストールが終了すると,手順3の画面に戻ります。

続いて[DATA ACQUISITION SDK]のインストールを行います。

3-4 TM-57553FST4-1
3 付 録

● DATA ACQUISITION SDKのインストール


1. ソフトウェアインストール画面上から,[DATA ACQUISITION SDK](図中の「DA
TA ACQUISITION SDK」)を選択しクリックする。
SDKファイルインストーラが起動し,WinSPMからA/D・D/Aボードをコントロールする
のに必要なSDKファイルのインストールが開始されます。

DATA ACQUISITION
SDK

インストール画面 (DATA ACQUISITION SDK)

2. デバイスドライバのインストール同様全て標準設定でインストールを実行する。
3. インストールが正常に終了すると,以下のような終了メッセージが表示されるの
で[OK]をクリックする。

終了メッセージダイアログ

4. インストール終了画面が表示されるので,[Finish]をクリックする。
DATA ACQUISITION SDKのインストールが終了します。

TM-57553FST4-1 3-5
3 付 録

インストーラ完了画面

5. ソ フ ト ウ ェ ア イ ン ス ト ー ル 画 面 に 戻 る の で , [ MAIN MENU ] ( 図 中 の 「 MAIN


MENU」)をクリックする。
Omni CDのメイン画面に戻ります。

MAIN MENU

インストール画面 (MAIN MENU)

6. メイン画面上で[EXIT]をクリックし,Omni CDを終了する。
● Windowsの終了とA/Dボードの装着
1. 一旦Windowsを終了させ,PCの電源を切る。
2. 任意のPCIバスへA/Dボードを装着し,PCを再度起動させる。
Windowsが起動後,Plug and Play機能が動作し,A/Dボードの認識とドライバの
設定が自動で行われます。
3. 自動設定完了後,Windowsの指示に従いPCを再起動させる。
A/DボードのPCへの搭載作業は終了です。

3-6 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.1.4 WinSPMソフトウェアの再インストール
以下の手順でWinSPMソフトウェアを再インストールします。

● WinSPMソフトウェア(WinSPMシステム)のインストール
専用インストーラを使用して,WinSPMソフトウェアのインストールを行います。

1. WinSPMソフトウェアCDをPCへ入れる。
自動的にセットアッププログラムが起動し,以下のような画面が表示されます。

言語選択ダイアログ

2. [Japanese]ボタンをクリックする。
インストーラ選択画面が表示されます。

インストーラ選択画面

3. [全てのソフトウェアをインストール]を選択して,[開始]をクリックする。
インストーラが起動しますのでインストーラの指示に従って作業を行ってください。インス
トールの際には,設定項目は基本的に標準設定のままでご利用ください。
4. WinSPMソフトウェアのインストールが終了したら,WinSPMシステム測定モードを
管理者権限で起動する。
エラーなくソフトウェアが起動することを確認してください。
5. 使用するSPM装置に合わせてWinSPMをセットアップする(周辺機器設定,スキ
ャナのキャリブレーションおよびステージ位置の校正値を設定)。
詳細は,7.2節「WinSPMソフトウェアのセットアップ」を参照してください。

TM-57553FST4-1 3-7
3 付 録

3.2 WinSPMソフトウェアのセットアップ
3.2.1 機器設定の実行
WinSPMは,デフォルト状態ではJSPM-5200をコントロールするように設定されています。
JSPM-5200以外の装置を使用する場合には,SPM装置設定を変更する必要があります。
この設定変更を行うには,WinSPMを管理者権限で起動する必要があります。
また,WinSPMから各種オプション機器を操作するには,接続されているオプション機器を
WinSPMに認識させる必要があります。
これらの設定は,「機器設定」ダイアログから行います。

1. WinSPM測定モードを管理者権限で起動する。
ユーザ名「Admin」でログインします。
2. SPM機能選択ダイアログが表示されるので、[機器設定]ボタンをクリックする。
「機器設定」ダイアログが表示されます。

SPM機能選択ダイアログと機器設定ダイアログ

3. [SPM装置]フィールドから使用するSPM装置の機種を選択する。
選択したSPM装置によっては,「付属機器」フィールドの表示内容が変わります。
4. [付属機器]フィールドに表示されている選択可能オプション機器から,実際に使
用する機器をチェックする。
5. 設定が終了したら[OK]をクリックする。
「SPM装置」フィールドで機種を変更していた場合,以下のような確認ダイアログ
が表示されます。機種変更を保存した場合,WinSPMを再起動する(いったん
WinSPMを終了し,再度立ち上げる)必要があります。WinSPMを再起動せずに
使用を継続した場合,思わぬ不具合が発生する場合があります。

3-8 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.2.2 スキャナ感度設定の保存と読み込み
スキャナの感度の校正はWinSPMソフトウェアで行っています。WinSPMソフトウェアを入
れ換えたときのために,このスキャナの感度をフロッピーディスクなどのハードディスク以外の
記録媒体に保存しておく必要があります。

3.2.2a スキャナ設定ダイアログの表示
スキャナの感度値の操作は、スキャナ設定ダイアログから行います。スキャナ設定ダイアログ
は、以下の手順で表示します。
1. 「7.2.1 機器設定の実行」と同じ手順で機器設定ダイアログを表示する。
2. 機器設定ダイアログの[スキャナ設定]ボタンをクリックする。
「スキャナ設定」ダイアログが表示されます。

スキャナ設定ダイアログ

TM-57553FST4-1 3-9
3 付 録

3.2.2b スキャナ感度設定の保存
1. 保存したいスキャナ設定番号を[設定番号]プルダウンメニューから選択し,[設
定保存]ボタンをクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。
2. 設定ファイルを保存する場所とファイル名を指定し,[保存]ボタンをクリックする。
スキャナキャリブレーションファイル(*.clb)が保存されます。

3.2.2c スキャナ設定感度の読み込み
1. 設定を読み込みたいスキャナ設定番号を[設定番号]プルダウンメニューから選
択し,[設定読込み]ボタンをクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。
2. 読み込みたい設定ファイルを選択し,[開く]ボタンをクリックする。
スキャナキャリブレーションファイル(*.clb)が読み込まれ、各項目に設定されます。
3. [表示名]テキストボックスに,スキャナの識別名を入力する。
4. [OK]ボタンをクリックする。
「スキャナ設定」ダイアログが閉じます。
5. SPM機能選択ダイアログの[OK]ボタンをクリックする。
「SPM機能選択」ダイアログが閉じます。
SPM機能選択ダイアログが閉じた際に、設定値が確定します。
[キャンセル]ボタンでSPM機能選択ダイアログを閉じた場合は、設定した値は保
存されませんので注意してください。
管理者権限で設定したスキャナ設定値の変更は,他の登録ユーザ全てにも適用
されます。

3-10 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.2.3 モータドライブ位置校正値の保存と読み込み
モータドライブの位置の校正もWinSPMソフトウェアで行っています。スキャナ設定値同様
に,フロッピーディスクなどに保存しておいてください。

3.2.3a ステージ移動設定ダイアログの表示
モータドライブの位置校正値の操作は、ステージ位置設定ダイアログから行います。スキャ
ナ設定ダイアログは、以下の手順で表示します。
1. 「7.2.1 機器設定の実行」と同じ手順で機器設定ダイアログを表示する。
2. 機器設定ダイアログの[ステージ移動設定]ボタンをクリックする。
「ステージ移動設定」ダイアログが表示されます。

ステージ移動設定ダイアログ

3.2.3b モータドライブ位置校正値の保存
1. [設定保存]ボタンをクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。
2. 保存する場所とファイル名を指定し,[保存]ボタンをクリックする。
ステージ移動設定ファイル(*.stg)が保存されます。

3.2.3c モータドライブ位置校正値の読み込み
1. ステージ移動設定ダイアログ内の[設定読込み]ボタンをクリックする。
Windows標準のファイルダイアログが表示されます。
2. 読み込みたい設定ファイルを選択し,[開く]ボタンをクリックする。
ステージ移動設定ファイル(*.stg)が読み込まれます。
3. [OK]ボタンをクリックする。
「ステージ移動設定」ダイアログが閉じます。
4. SPM機能選択ダイアログの[OK]ボタンをクリックする。
「SPM機能選択」ダイアログが閉じます。
SPM機能選択ダイアログが閉じた際に、設定値が確定します。
「キャンセル」ボタンでSPM機能選択ダイアログを閉じた場合は、設定した値は保
存されませんので注意してください。
管理者権限で設定したモータドライブ位置校正値の変更は,他の登録ユーザ全
てに適用されます

TM-57553FST4-1 3-11
3 付 録

3.3 カンチレバ
カンチレバは消耗品であるとともに,測定モードや目的に合わせて選択する必要があります。
各社で発売されているカンチレバの一例を下記に挙げておきますので参考にしてください。
購入方法については,当社営業担当にご相談ください。

• オリンパス製 (http://www.olympus.co.jp)

長さ 幅 厚さ 探針長 バネ定数 共振周波数 金属膜コート 先端半経


SPM測定モード 製品名称 レバー形状 数量
(μm) (μm) (μm) (μm) (N/m) (kHz) (探針面/反射面) (nm)

OMCL-AC160TS-C2 矩形 160 50 4.6 11 42 300 なし/Al <10 24


AC/NCモード
OMCL-AC240TS-C2 矩形 240 30 2.7 14 2.7 70 なし/Al <10 24

100 0.08 34
OMCL-TR400PSA-1 三角形 ― 0.4 2.9 なし/Au <20 34
200 0.02 11

100 0.57 73
OMCL-TR800PSA-1 三角形 ― 0.8 2.9 なし/Au <20 34
200 0.15 24
コンタクトモード
100 20 0.39 69
200 20 0.76 71
OMCL-RC800PSA-1 矩形 0.8 2.9 なし/Au <20 34
100 40 0.05 18
200 40 0.10 19

電気特性測定 OMCL-AC240TM-B2 矩形 240 30 2.7 14 2 70 Pt/Al <25 18

上記仕様は標準値であり,変更する場合があります。バネ定数,共振周波数はシミュレーション値です。

• μ-mash製 (http://www.spmtips.com)

長さ 幅 厚さ 探針長 共振周波数 バネ定数 先端半経 金属膜コート


SPM測定モード 製品名称 レバー形状
(μm) (μm) (μm) (μm) (kHz) (N/m) (nm) (背面はAlコート)

200 40 60 3.0
NSC11 三角形 2.0
90 60 330 48
なし,Si3N4,Ti-Pt,Cr-Au
290 25 1.0
NSC21 三角形 40 2.0
110 210 17.5

110 210 7.5


AC/NCモード 15~20 <10
NSC35 矩形 90 35 2.0 315 14.0
130 150 4.5
なし,Si3N4,Co-Cr,Cr-Au,Ti-Pt
110 105 0.95
NSC36 矩形 90 35 1.0 155 1.75
130 75 0.60

200 40 28 0.35
CSC11 三角形 2.0
90 60 155 0.2
なし,Si3N4,Ti-Pt,Cr-Au
290 12 0.12
CSC21 三角形 40 2.0
110 105 2.0

300 28 0.35
コンタクトモード 15~20 <10
CSC37 矩形 350 35 2.0 21 0.30
250 41 0.65
なし,Si3N4,Co-Cr,Cr-Au,Ti-Pt
300 14 0.05
CSC38 矩形 350 35 1.0 10 0.03
250 20 0.08

数値は全て標準値です。

3-12 TM-57553FST4-1
3 付 録

• NANOSENSORS 製 (http://www.nanosensors.com)
TM

厚み 幅 長さ バネ定数 共振周波数 先端半経


SPM測定モード パーツ名
(μm) (μm) (μm) (N/m) (kHz) (nm)

コンタクトモード PPP-CONT 2 50 450 0.2 13 <10

PPP-NCH 4 30 125 42 330 <10

PPP-NCL 7 38 225 48 190 <10

*1
SSS-NCH 4 30 125 42 330 <5

AC/NCモード SSS-NCL
*1
7 38 225 48 190 <5

*2
AR5-NCH 4 30 125 42 330 <15

*2
AR5-NCL 7 38 225 48 190 <15

*3
AR10-NCH 4 30 125 42 330 <15

*1 先端半径の小さいカンチレバ
*2 高アスペクト比(5:1)のカンチレバ
*3 高アスペクト比(10:1)のカンチレバ

厚み 幅 長さ バネ定数 共振周波数
特殊カンチレバ パーツ名 コーティング
(μm) (μm) (μm) (N/m) (kHz)

MFMカンチレバ PPP-MFMR 3 28 225 2.8 75 Co

PPP-NCHPt 4 30 125 42 330 Cr-PtIr5

EFMカンチレバ PPP-NCLPt 7 38 225 48 190 Cr-PtIr5

PPP-CONTPt 2 50 450 0.2 13 Cr-PtIr5

DT-NCHR 4 30 125 42 330 Diamond

DT-NCLR 7 38 225 48 190 Diamond

ダイアモンドコート CDT-NCHR 4 30 125 42 330 Conductive Diamond

カンチレバ
CDT-NCLR 7 38 225 48 190 Conductive Diamond

DT-CONTR 2 50 450 0.2 13 Diamond

CDT-CONTR 2 50 450 0.2 13 Conductive Diamond

TM-57553FST4-1 3-13
3 付 録

3.4 ファイルフォーマット
WinSPMにおいては,画像データをTIFF(Tag Image File Format)形式で取り扱っ
ています。取扱うTIFF形式ファイルには,SPM測定に関する情報(測定パラメータ,作業
履歴等)も画像データと共に記録されているため,WinSPMでのTIFF形式ファイルは,標
準的なTIFF形式ファイルと一部異なったデータ構造をしています。そのため,WinSPM以
外のTIFF形式画像に対応した画像表示ソフト・画像処理ソフトを用いても,SPM測定画
像が正常に開くことができないことがあります。

3.4.1 標準的なTIFFファイルの構造
標準的なTIFF形式ファイルは以下に示すような,1つのHeaderと幾つかのDirectoryから
なるデータ構造を持ちます。Headerからは先頭のDirectoryを示すPointerが渡され,先
頭Directoryからは次のDirectoryを示すPointerが渡され…という順番で,Directoryを
順 次 示 す形 式 になってい ます。最 後 のDirectoryでは次 のディレ クトリがないためNull
Pointerが渡され,その後に実際の画像データが格納されています。
WinSPMにおいて使用されるDirectoryは1st. Directoryのみです。

Header

Pointer
1st Directory

Pointer
2nd Directory

Pointer
Last Directory

Null Pointer

Image Data

3-14 TM-57553FST4-1
3 付 録

■ Headerのデータ構造
標準的なTIFF形式ファイルでは,Headerのデータ構造は以下のようになっています。

Address Note
0x0000 Byte order
0x0002 TIFF format version number
0x0004
Pointer to 1st Directory
0x0006

Byte orderの値 “II”(0x4949) Intel Format (LSB→MSB)

■ Directoryのデータ構造

● Directoryの構成
TIFF形式ファイルのDirectoryは,以下に示すようにTAGと呼ばれる幾つかの構造体に
よって構成されています。

Number of TAGs
TAG [1]
TAG [2]

TAG [N]
Pointer to next directory

次のDirectoryがない場合には,Pointer to next directory の値はNULLです。

● TAGの構造
TAGにはTIFF画像の各種パラメータを記録できるようになっています。

TAGの構造

TAGの種類。
TAG type
TIFF形式仕様によって0x00FF~0x012Dの番号で規定される
TAG情報のデータ形式
0x0001 : byte ( 8bit ), 0x0002 : ASCII ( 8bit )
Data type
0x0003 : short ( 16bit ) , 0x0004 : long ( 32bit )
0x0005 : rational ( long×2 )
TAGデータの長さ(単位数で指定)
Length of data Data type がlong ( 32bit )でLength of dataで示される単位数が1である
場合,TAGデータの長さは32bit ( 4byte )になる
TAGデータもしくはポインタ
Data or pointer TAGデータ長さが4byte以下の場合はここにデータが格納される
4byteを超える場合はデータへのポインタが格納される

TM-57553FST4-1 3-15
3 付 録

3.4.2 WinSPM画像ファイル
WinSPMでの画像ファイルはTIFF形式に準拠しながらも一部標準的なTIFF形式とは異
なる部分があります。ここではWinSPMの画像ファイルの形式について述べます。

3.4.2a WinSPM画像ファイルの全体構造
WinSPM画像ファイルの全体構造を以下に示します。

0x0000 Header
TIFF形式のHeader
0x000A
Image Header
SPM測定のデータ

Directory Pointer
DIRECTORY
TIFF TAG

Directory Pointer + Directory Size

SPM Data
画像データ
FFT Data
CITS Data
Montage Data

EOF

画像データの種類によってファイルサイズやデータアドレスの位置が変化しますが,基
本的なファイル構造はこの構造に従います。

■ Image Header
WinSPMにおいてはHeaderとDirectoryの間にImage Headerというデータ構造が記録
されています。ここにはSPM測 定 における測 定 条 件 などのデータが記 録 されています。
Image Headerの詳しいデータ構造については,3.4.2b項において具体的な例をあげて説
明します。

3-16 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.4.2b WinSPM画像ファイル[1] (SPM Image)


ここでは基本形として,標準画像ファイル(TOPO像等の通常画像データ)のデータ構造を
示します。

0x0000
Header
TIFF形式のHeader

0x000A
Image Header
SPM測定のデータ

0x17D4
DIRECTORY
TIFF TAG

0x1BD4

TIFF Image Data


測定画像データ

EOF

■ Headerのデータ構造
WinSPMで生成されるTIFFファイルのHeader構造は,以下のように標準的なTIFF形式
のHeader構造に2byte分のデータを追加した構造になっています。

Address Data Data Type Note


0x0000 49 49 short “II” (0x4949)
0x0002 2A 00 short TIFF Version 4.2
0x0004 D4 17
long Directory先頭のアドレス(0x000017D4)
0x0006 00 00
0x0008 unsigned
00 04 Directoryのサイズ(1024byte)
short
0x000A
Image Header
::

TM-57553FST4-1 3-17
3 付 録

■ Image Headerのデータ構造

● データ構造
Image Header部のデータ構造は以下のようになります。

Address Data Type Data Size Note


0x000A short 2byte WinSPMのVersion
0x000C
char [80] 80byte Ver4.00以前の画像の内部ファイル名
:
0x005C short 2byte 画像の横幅 (128,256,512)
0x005E short 2byte 画像の縦幅 (128,256,512)
0x0060 float 4byte スキャンサイズX [nm]
0x0064 float 4byte スキャンサイズY [nm]
0x0068 float 4byte pixel 0の値 [nm or nA]
0x006C float 4byte pixel 255の値 [nm or nA]
0x0070 short 2byte 走査中のA/Dコンバータの最小値
0x0072 short 2byte 走査中のA/Dコンバータの最大値
0x0074 float 4byte 最初にスキャンした時のスケール値
0x0078
char [40] 40Byte 画像の内部ファイル名
:
0x00A0
char [40] [5] 200byte 画像のインフォメーション(行端CR)
:
0x00168
unsigned char [50] 50byte 画像に対する処理履歴
:
current/voltage情報があれば 1
0x019A short 2byte
current/voltage情報が無ければ 0
0x019C float 4byte バイアス電圧 [V]
0x01A0 float 4byte リファレンス値 [nA or V]
0x01A4 char 1byte dummy data (0x00)
0x01A5 char 1byte dummy data (0x00)
0x01A6 struct dosdate_t 5byte 画像測定年月日
0x01AB struct dosdate_t 5byte 画像ファイル保存年月日
0x01B0 struct dostime_t 4byte 画像測定時刻
0x01B4 struct dostime_t 4byte 画像保存時刻
0x01B8
unsigned char [256] 256byte Look up table (0x00~0xFF)
:

struct FFT Head FFTのデータ構造体へのポインタ


0x02B8 4byte
Type* (データ構造体がなければNULL)
0x02BC short 2byte Transform off
0x02BE union Extra Type 8byte 画像から選択された領域

3-18 TM-57553FST4-1
3 付 録

Address Data Type Data Size Note


0x02C6 char 1byte 画像圧縮の有無(圧縮時TRUE)
0x02C7 char 1byte 1pixelあたりのbit数(0ならば8bit)

struct CITSのデータ構造体へのポインタ
0x02C8 4byte
CITSHeaderType* (データ構造体がなければNULL)
back scan時のTip電圧
0x02CC float 4byte
未設定時にはfloat型の最大値
0x02D0 short 2byte 画像中のSTS測定点X (or -1,-1)
0x02D2 short 2byte 画像中のSTS測定点Y (or -1,-1)
0x02D4 unsigned char [10] 10byte (^010)
0x02DE unsigned char [10] 10byte (^010)
0x02E8 float 4byte 画像測定中のTip速度X [nm/s]
0x02EC float 4byte 画像測定中のTip速度Y [nm/s]
0x02F0
CalibType 42byte ピエゾ感度設定値
:
0x031A
SPMParamType 60byte さらに詳しいSPMパラメータ
:
Montageデータ構造体へのポインタ
0x0356 MontageHeaderType* 4byte
(データ構造体がなければNULL)
0x035A
char [260] 260byte 画像ファイルの保存場所(フルパス指定)
:
0x045E
SPMParamType1 118byte その他のSPMパラメータ
:
0x04D4 RBG Look Up Table
: unsigned char [3] [0] [ ] : RED
768byte
: [256] [1] [ ] : GREEN
: [2] [ ] : BLUE
0x07D4 long 4byte Sub Revision No.
0x07D8 enum ImageType1 4byte 画像の種類(表1参照)
0x07DC DataSourceType 4byte データソースの種類(表2参照)
0x07E0 DisplayModeType 4byte 表示の種類(表3参照)
0x07E4 FILETIMEU union 8byte 測定開始時間
0x07EC FILETIMEU union 8byte 測定終了時間
0x07F4 ProfileDefType 254byte プロファイル・表面粗さ解析設定
0x08F2 _3DSettingType 446byte 三次元表示設定
0x0AB0 float 4byte LUT Brightness
0x0AB4 float 4byte LUT Contrast
0x0AB8 short 2byte 測定を行ったソフトウェアのバージョン

TM-57553FST4-1 3-19
3 付 録

Address Data Type Data Size Note


0x0ABA long 4byte 測定を行ったソフトウェアのサブバージョン
0x0ABE ExtractType 20byte 画像から抜き出された領域
0x0AD2 float 4byte LUT Gamma
0x0AD6 short 2byte 一緒に保存されているSPSデータの数
0x0AD8 ImageHeaderType* 4byte SPSデータへのポインタ
0x0ADC short 2byte ライントレース測定の終了点 X
0x0ADE short 2byte ライントレース測定の終了点 Y
0x0AE0 short 2byte フォワード・バックワードスキャン識別子
0x0AE2 short 2byte リフト信号識別子
0x0AE4 struct LIAParamType 136byte ロックインアンプの設定
struct
32byte 温度コントローラ設定パラメータ
0x0B6C TempContParamType
struct
26byte AFM信号換算値構造体
0x0b8C AFMFixedRefType
struct
LMCantileverImage 62byte 特殊測定パラメータ
0x0BA6
Param
0x0BE4 struct
128byte カンチレバ加振設定
DDSParamType

0x0C64 char [2928] 2928byte Buffer


:
0x17D4
Directory
:

表 1 画像の種類
1 Image 4 Histogram
2 Spectrum 5 VCO
3 Profile 6 Invalid

表 2 データソースの種類
1 Z 11 Phase
2 Log I 12 MFM
3 Lin I 13 Elasticity
4 AUX1 14 Viscosity
5 AUX2 15 FFM_Friction
6 AUX3 16 Surface_V
7 EXT (Voltage) 17 Prescan
8 Force 18 RMS
9 AFM 19 FMD
10 Friction 20 Capacitance Force

3-20 TM-57553FST4-1
3 付 録

表 3 表示の種類
1 Default 2 BMP 4 3D

● 内部のデータ構造体
Image Header内で用いられている,各種構造体のデータ構造について述べます。
• 年月日を記録する構造体dosdate_t

Data Type Data Size Note


unsigned char 1byte 日(1~31)
unsigned char 1byte 月(1~12)
unsigned short 2byte 年(1980~2099)
unsigned char 1byte 曜日(0~6 : 0→日曜日)

• 時刻を記録する構造体dostime_t

Type Size Note


unsigned char 1byte 時(0~23)
unsigned char 1byte 分(0~59)
unsigned char 1byte 秒(0~59)
unsigned char 1byte 1/100秒(0~99)

• 画像の選択領域を記録する共用体union ExtraType

Type Size Note


struct ImageExtraType 8byte 画像の選択範囲
struct CITSImageExtra
7byte CITS測定パラメータ
Type

• 画像の選択範囲を記録する構造体Image ExtraType

Type Size Note


short 2byte X1
short 2byte X2
short 2byte Y1
short 2byte Y2

• CITS測定パラメータを記録する構造体CITSImageExtraType

Type Size Note


unsigned char 1byte ADC source
short 2byte ADC offset [mV]
unsigned short 2byte ADC gain
unsigned short 2byte Head amp gain

TM-57553FST4-1 3-21
3 付 録

• ピエゾ感度設定値を記録する構造体CalibType

Type Size Note


float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
float 4byte 近似係数 Z項
float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
float 4byte Reference Voltage [V]
short 2byte Stage

• さらに詳しいSPMパラメータを記録する構造体SPMParamType

Type Size Note


float 4byte Clock [ms]
float 4byte 測定回転角 [°]
float 4byte Feedback filter [Hz]
float 4byte Current filter [kHz]
float 4byte Head amp gain [V/nA]
short 2byte Loop gain (1~4)
float 4byte Offset X [nm]
float 4byte Offset Y [nm]
float 4byte Z gain
float 4byte Z offset [V]
float 4byte O gain
float 4byte O offset [V]
float 4byte Back scan bias [V]
enum modetype 4byte 測定モード(表4参照)
short 2byte Dummy data

3-22 TM-57553FST4-1
3 付 録

表 4 測定モード
1 Line1024 21 VCO
2 Topo Mirror 22 Topo Image
3 Topo512 23 Topo3_ve_afm
4 Topo256 24 Topo4_mfm
5 Topo128 25 Topo3_lm_ffm
6 Line512 26 Topo2_kfm
7 Line256 27 Topo2_ffm
8 Line128 28 TOPO1024
9 Topo×2 29 TOPO2x512
10 Topo×4 30 Topo2_scfm
11 CITS 31 Topo2_mfm_l
12 I-V 32 Topo64
13 S-V 40 Phaseshift
14 I-S 41 Manipulation
15 F-C 50 CS3DScan
16 FFC 60 F-V
17 Montage128 70 SoftwareGen
18 Montage256
19 LSTS
20 Topo SPS

TM-57553FST4-1 3-23
3 付 録

• その他のSPMパラメータを記録する構造体SPMParamType1

Type Size Note


enum wint_SourceType 4byte Dummy data
enum wint_SourceType 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Scan filter
enum wint_AFMModeType 4byte AFM mode (表5参照)
long 4byte Dummy data
short 2byte Xへの加算信号
short 2byte Yへの加算信号
short 2byte Zへの加算信号
short 2byte Biasへの加算信号
enum wint_activeDialogType 4byte Active Dialog (表6参照)
enum wint_SPMScanModeType 4byte SPM Scan Mode (表7参照)
enum wint_SourceType 4byte 測定信号 (表8参照)
short 2byte Dummy data
enum modeType 4byte SPS測定モード
double 8byte Dummy data
double 8byte Dummy data
float 4byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Dummy data
short 2byte Dummy data
long 4byte Dummy data
long 4byte Dummy data
long 4byte Dummy data
enum
4byte Dummy data
wint_VCOFMDynamicRangeType
float 4byte Dummy data
float 4byte Dummy data
char [10] 10byte バッファ領域

3-24 TM-57553FST4-1
3 付 録

表 5 AFM mode
1 Contact Mode
2 Slope
4 FM
8 FMS
16 Phase

表 6 Active Dialog
1 Advanced 128 VE AFM
2 STM 256 LM-FFM
4 AC AFM 1024 Maintenance 1
8 Contact AFM 2048 Maintenance 2
16 Option 4096 NC AFM
32 SKPM 8192 Z Stage
64 MFM

表 7 SPM Scan Mode


1 “Normal”
2 “VE-AFM”
4 “LM-AFM”
8 "KFM"
16 "MFM"
32 “MFM Line”
64 “P_Lift”
128 “L_Lift”
256 “SCFM”

表 8 測定信号
0x000000 Off 0x000800 AUX2
0x000001 Topography 0x001000 AFM Contact
0x000002 Bias 0x002000 Motor X/20
0x000004 Linear Current 0x004000 Motor Y/20
0x000008 Log Current 0x008000 Motor Z/20
0x000010 Force 0x010000 A-B/A+B
0x000020 Friction Force 0x020000 AFM
0x000040 A+B (SUM) 0x040000 Pre Scan
0x000080 RMS 0x080000 Lateral Force
0x000100 FMD 0x100000 C-D/C+D
0x000200 Phase 0x200000 (None)
0x000400 AUX 1

TM-57553FST4-1 3-25
3 付 録

• プロファイル・表面粗さ解析設定情報を記録する構造体ProfileDefType

Type Size Note


POINTs [5] [2] 40byte ラインの座標
float [3] [2] 24byte マーカーの位置
short 2byte Dummy data
short [5] 10byte ラインの表示設定
short [3] 6byte マーカーの表示設定
short [5] 10byte 有効になっているライン
POINTs [2] 8byte 保存するSingle Profileの座標
POINTs [2] 8byte 保存するMulti Profileの座標
COLORREF [5] 20byte ラインごとの色
short [3] 6byte 保存するマーカーの表示設定
bool 1byte Rzマーカーの表示/非表示
bool [5] 5byte Broad Lineの適用設定
short [5] 10byte Broad Lineの幅
CRect 16byte 粗さ解析選択領域
short 2byte 粗さ解析選択領域の適用設定
short 2byte カーソルキーでの移動量(X)
short 2byte カーソルキーでの移動量(Y)
POINTs [2] 8byte 保存するExtra Profileの座標
bool 1byte Broad Line適用設定(Single Profile)
bool 1byte Broad Line適用設定(Extra Profile)
bool [5] 5byte Broad Line適用設定(Multi Profile)
short 2byte Broad Lineの幅(Single Profile)
short 2byte Broad Lineの幅(Extra Profile)
short [5] 10byte Broad Lineの幅(Multi Profile)
short 2byte Extra Profileの方向(TRUE : Vertical)
enum “Rz On/Off”コントロールの表示設定
4byte
wint_DialogControlSttsType (表9参照)

char [47] 47byte バッファ領域

表 9 コントロールの表示設定
1 Enable 2 Disable 3 Invisible

• ラインの座標を記録する構造体POINTS

Type Size Note


short 2byte X座標
short 2byte Y座標

3-26 TM-57553FST4-1
3 付 録

• 3次元表示の設定を記録する構造体 _3DsettingsType

Type Size Note


_3D_Mode 4byte 3次元表示のモード(表10参照)
float [3] 12byte XYZ 回転角度
float 4byte Z Scale
float 4byte Z Offset
float 4byte XYZ Scale
float 4byte X shift
float 4byte Y shift
float 4byte Perspective
float 4byte Mesh size X
float 4byte Mesh size Y
float 4byte 散乱度 (Specular Level)
float 4byte 反射度 (Diffuse Level)
float 4byte 輝度 (Shinniness)
short [2] [3] 12byte Surface表示色(2枚)
float [2] 8byte Light Azimuth
float [2] 8byte Light Elevation
float [2] 8byte Light Brightness
short [3] 6byte XYZ スケールの表示
short 2byte 側面の表示設定
short 2byte ベースの表示設定
short 2byte 光源の表示設定
LOGFONT 60byte スケール表示のフォント
COLORREF 4byte スケール表示の色
short 2byte 3次元表示を行う時はTRUE
float 4byte XY アスペクト比
COLORREF 4byte 背景色
float 4byte スケール表示のフォントサイズ
float 4byte タイトル表示のフォントサイズ
float 4byte α値
short [3] 6byte タイトル・スキャンサイズ・パスの表示設定
char [246] 246byte バッファ領域

表10 3次元表示のモード
00 Invalid 08 Merge
01 Illuminate 10 Shade/Illuminated
02 Shade 20 Alpha
04 Grid

TM-57553FST4-1 3-27
3 付 録

• ロックインアンプの設定を記録する構造体 LIAParamType
Type Size Note
short 2byte ロックインアンプの型式 (5110/7265)
struct wint_LockInAmpType 134byte ロックインアンプ設定パラメータ

• ロックインアンプ設定パラメータを記録する構造体 wint_LockInAmpType
Type Size Note
short 2byte ロックインアンプ接続のON/OFF
enum wint_DialogControlSttsType 4byte コントロールの表示設定(表9参照)
double 8byte 入力感度値
double 8byte 時定数値
double 8byte リファレンス位相値
double 8byte 変調信号周波数
double 8byte 変調信号振幅
enum 出力信号の種類
4byte
wint_LockInAmpOutputType 1:Acos・Asin 2:振幅・位相
フィルタの種類
enum wint_LockInAmpFilterType 4byte
1:Flat 2:Low Pass 3:Band Pass
double 8byte フィルタ周波数
enum Line Rejectの種類
4byte
wint_LockInAmpLineRejectType 1:OFF 2:F 3:2F 4:F+2F
short 2byte TrackのON/OFF
enum Ref Internalの種類
4byte
wint_LockInAmpRefInternalType 1:INT 2:TTL 3:EXT
Model7265の場合
リファレンス周波数の選択(1F~3F)
short 2byte
Model5110の場合
リファレンス周波数2FのON/OFF
short 2byte Slope/12dBのON/OFF
short 2byte ExpandのON/OFF
Dynamic Resolutionの設定
enum 1:Normal
4byte
wint_LockInAmpDynamicResType 2:High Resolution
3:High Stability
short 2byte OffsetのON/OFF
double 8byte Ch1のオフセット値 [%]
double 8byte Ch2のオフセット値 [%]
double 8byte 変調信号掃引開始周波数
double 8byte 変調信号掃引終了周波数
double 8byte 変調信号掃引で検出したピーク周波数
short 2byte 変調信号掃引時間
int 4byte 変調信号掃引結果適用のON/OFF

3-28 TM-57553FST4-1
3 付 録

Type Size Note


変調信号掃引結果の絶対値判定の
int 4byte
ON/OFF

• 温度コントローラ設定パラメータを記録する構造体 TempContParamType

Type Size Note


short 2byte 温度コントローラ接続のON/OFF
試料ホルダの種類
short 2byte
0 : 加熱ホルダ 1 : 冷却ホルダ
温度表示設定
short 2byte
0 : 摂氏表示 1 : 華氏表示
short 2byte 温度制御のON/OFF
float 4byte 温度制御(PID制御)のPゲイン
int 4byte 温度制御(PID制御)のIゲイン
int 4byte 温度制御(PID制御)のDゲイン
float 4byte 温度オフセット量
float 4byte 現在温度
float 4byte 設定温度

• AC/NC-AFM信号換算値を記録する構造体 AFMFixedRefType

Type Size Note


short 2byte 換算適用のON/OFF
double 8byte リファレンスの換算値 [nm] / [Hz]
double 8byte カンチレバ振動幅 [nm]
double 8byte NC-AFM時の基準信号値

• カンチレバ加振設定を記録する構造体

Type Size Note


float 4byte カンチレバ共振周波数 [kHz]
float 4byte カンチレバQ値
short 2byte FAMP2情報 ON/OFF
short 2byte 加振信号 ON/OFF
short 2byte 外部加振信号 ON/OFF
short 2byte 周波数スキャン時の位相表示 ON/OFF
short 2byte RMS-DCゲイン
short 2byte RMSフィルタ Normal/High
double 8byte 加振周波数設定値 [kHz]
double 8byte 加振電圧設定値 [V]
double 8byte 位相シフタ設定値
short 2byte 位相シフタ極性反転 ON/OFF

TM-57553FST4-1 3-29
3 付 録

Type Size Note


short 2byte PLL Excitation ON/OFF
short 2byte Beat Noise ON/OFF
short 2byte LPF設定値 [kHz]
short 2byte HPF設定値 [kHz]
short 2byte PLLループゲイン設定値
short 2byte PLLダイナミックレンジ設定
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
int 4byte 不使用
short 2byte 不使用
float 4byte 不使用
double 8byte 不使用
short 2byte 不使用
short 2byte 不使用
char[28] 28byte buffer

3-30 TM-57553FST4-1
3 付 録

■ Directoryのデータ構造

● TAG構造体
WinSPMのDirectoryは1st directoryであり,そのデータ量はHeader内で300byteで
す。またDirectoryで用いられているTAG構造体は,全部で16個で,TAG構造体一つの
データ量は12byteです。

• TAG構造体 TIFF_TAG
Type Size Note
short 2byte TAG type
short 2byte Data type
long 4byte Length of data
long 4byte data or pointer

● データ構造
Address Data Type Size Data Note
0x17D4 short 2byte 11 00 TAGの総数 (0x0011 = 17)
0x17D6 00 01 TAG 256 “Image Width”
: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
: イメージの横幅
: 128 or 256 or 512
0x17E2 01 01 TAG 257 “Image Height”
: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
: イメージの縦幅
: 128 or 256 or 512
0x17EE 02 01 TAG 258 “Bit Per Sample”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 1sampleあたりのbit数
10 00
: “SPM Image”では16bit

TM-57553FST4-1 3-31
3 付 録

Address Data Type Size Data Note


0x17FA 03 01 TAG 259 “Compression”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 01 00
データ圧縮の有無(非圧縮 = 1)
: 00 00
0x1806 TAG 262
06 01
: “Photometric interpretation”
: 03 00 short型データ
struct
: 12byte 01 00 データ単位数1
TIFF_TAG
: 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 01 00 pixel毎の階調表示
00 00 (1 : 00→黒 FF→白)
0x1812 0E 01 TAG 270 “Image Description”
: 02 00 ASCII型データ
: struct
12byte 内部ファイル名の文字数が入る
: TIFF_TAG
: 20 08
内部ファイル名データへのポインタ
: 00 00
0x181E 0F 01 TAG 271 “Make”
: 02 00 ASCII型データ
: struct 0B 00 データ単位数11
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 11byte)
:
Makeデータへのポインタ
:

0x182A 10 01 TAG 272 “Model”


: 02 00 ASCII型データ
: struct 12byte 0A 00 データ単位数10
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 10byte)
: Modelデータへのポインタ
: (default data = “JEOL SPM “)
0x1836 11 01 TAG 273 “Strip Offset”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
:
Strip Offsetデータ
:

3-32 TM-57553FST4-1
3 付 録

Address Data Type Size Data Note


0x1842 15 01 TAG 277 “Sample per Pixels”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 01 00
1pixelあたりのsample数
: 00 00
0x184E 16 01 TAG 278 “Rows per Strip”
: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
:
Rows per Stripデータ
:

0x185A 17 01 TAG 279 “Strip Byte Count”


: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
:
Strip Byte Countデータ
:

0x1866 1A 01 TAG 282 “X Resolution”


: 05 00 Rational型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 8byte)
: X Resolutionデータへのポインタ
: X方向解像度
0x1872 1B 01 TAG 283 “Y Resolution”
: 05 00 Rational型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 8byte)
: Y Resolutionデータへのポインタ
: Y方向解像度

TM-57553FST4-1 3-33
3 付 録

Address Data Type Size Data Note


0x187E 28 01 TAG 296 “Resolution Unit”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
:
解像度単位
:

0x188A 3C 01 TAG 316 “Host Computer”


: 02 00 ASCII型データ
: struct 19 00 データ単位数12
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 12byte)
: Host Computerデータへのポインタ
: (“IBM Compatible(Windows) “)

0x1896 00 00
: 00 00
: struct 00 00
12byte SPM Imageの時にはタグデータなし
: TIFF_TAG 00 00
: 00 00
: 00 00
0x18A2 00 00 End of Directories
long 4byte
00 00 (NULL Pointer)
0x18A6
: バッファ領域
: char [814] 814byte データ長さが4byteを超えるTAGデ
: ータは,ここに書き込まれる

:
0x1BD4 TIFF Image Data
: :

3-34 TM-57553FST4-1
3 付 録

■ TIFF Image Dataのデータ構造


Directory以後のファイル領域 (TIFF Image Data部)には,実際の画像データが記録
されています。1画 素 (1pixel)あたりのデータ量 は16bit (2byte)です。 例 えば512×
512pixelの画像が1pixelあたり16bitで記録されているとすると,Image Dataのファイル
領域の大きさは
Image Data = 512pixel×512pixel×2byte = 524288byte
となります。

■ 全体のファイルサイズ
また,同様な場合のTopographic image画像ファイル全体のファイルサイズは,
Header (10byte) + Image Header (6090byte) + Directory (1024byte)
+ Image Data (524288byte) = 531412 byte
となります。

TM-57553FST4-1 3-35
3 付 録

3.4.2c WinSPM画像ファイル[2] (Compressed TIFF)


ここでは,”Compressed TIFF”形式でSPM画像を保存した際のフォーマットについて説
明します。“Compressed TIFF”形式は,一般に標準的に用いられている8bit TIFFフォ
ーマットにSPM測定データが付加されたファイル形式であり,WinSPM以外のアプリケーシ
ョンに対応するためのファイル形式です。
ファイルの全体構造は,”SPM Image”形式と同様で以下のようになっています。ただし,
TIFF Image Data部は,1画素あたり8bitのデータとして記録されています。また,TIFF
Image Data部の後ろに,LUTの色指定を記録しているColor Map部を持ちます。

0x00000 Header
TIFF形式のHeader

0x0000A Image Header


SPM測定のデータ

0x017D4
DIRECTORY
TIFF TAG

0x01BD4

TIFF Image Data


測定画像データ

0x41BD4

Color Map
LUTの色指定データ

EOF

■ Header部のデータ構造
“SPM Image”形式と同様です。

■ Image Header部のデータ構造
“SPM Image”形式と同様です。

3-36 TM-57553FST4-1
3 付 録

■ Directory部のデータ構造
Tag320 “Color Map”が追加されている以外は”SPM Image”形式と同様です。

Address Data Type Size Data Note


0x17D4 short 2byte 11 00 TAGの総数 (0x0011 = 17)
0x17D6 00 01 TAG 256 “Image Width”
: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
: イメージの横幅
: 128 or 256 or 512
0x17E2 01 01 TAG 257 “Image Height”
: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
: イメージの縦幅
: 128 or 256 or 512
0x17EE 02 01 TAG 258 “Bit Per Sample”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 08 00 1sampleあたりのbit数
: 00 00 “Compressed TIFF”では8bit

0x17FA 03 01 TAG 258 “Compression”


: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 01 00
データ圧縮の有無(非圧縮 = 1)
: 00 00

TM-57553FST4-1 3-37
3 付 録

Address Data Type Size Data Note


0x1806 TAG 262
06 01
: “Photometric interpretation ”
: 03 00 short型データ
struct
: 12byte 01 00 データ単位数1
TIFF_TAG
: 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 01 00 pixel毎の階調表示
00 00 (1 : 00→黒 FF→白)
0x1812 0E 01 TAG 270 “Image Description”
: 02 00 ASCII型データ
: struct
12byte 内部ファイル名の文字数が入る
: TIFF_TAG
: 20 08
内部ファイル名データへのポインタ
: 00 00
0x181E 0F 01 TAG 271 “Make”
: 02 00 ASCII型データ
: 0B 00 データ単位数11
struct
: 12byte 00 00 (TAG Data length = 11byte)
TIFF_TAG
: Makeデータへのポインタ
: ( default data = “WinSPM407(22)
R.B. Leane “)

0x182A 10 01 TAG 272 “Model”


: 02 00 ASCII型データ
: struct 0A 00 データ単位数10
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 10byte)
: Modelデータへのポインタ
: (default data = “JEOL SPM “)
0x1836 11 01 TAG 273 “Strip Offset”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
:
Strip Offsetデータ
:

0x1842 15 01 TAG 277 “Sample per Pixels”


: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
: 01 00
1pixelあたりのsample数
: 00 00

3-38 TM-57553FST4-1
3 付 録

Address Data Type Size Data Note


0x184E 16 01 TAG 278 “Rows per Strip”
: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
:
Rows per Stripデータ
:

0x185A 17 01 TAG 279 “Strip Byte Count”


: 04 00 long型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 4byte)
:
Strip Byte Countデータ
:

0x1866 1A 01 TAG 282 “X Resolution”


: 05 00 Rational型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 8byte)
: X Resolutionデータへのポインタ
: X方向解像度
0x1872 1B 01 TAG 283 “Y Resolution”
: 05 00 Rational型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 8byte)
: Y Resolutionデータへのポインタ
: Y方向解像度
0x187E 28 01 TAG 296 “Resolution Unit”
: 03 00 short型データ
: struct 01 00 データ単位数1
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 2byte)
:
解像度単位
:

0x188A 3C 01 TAG 316 “Host Computer”


: 02 00 ASCII型データ
: struct 19 00 データ単位数12
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (TAG Data length = 12byte)
: Host Computerデータへのポインタ
: “IBM Compatible(Windows) “

TM-57553FST4-1 3-39
3 付 録

Address Data Type Size Data Note


0x1896 40 01 TAG 320 “Color Map”
: 03 00 Short型データ
: struct 00 03 データ単位数768
12byte
: TIFF_TAG 00 00 (Data length = 1536byte)
: D4 1B Color Mapデータへのポインタ
: (default data = “0x41BD4 “)
04 00

0x18A2 00 00 End of Directories


long 4byte
00 00 (NULL Pointer)
0x18A6
: バッファ領域
: char [814] 814byte データ長さが4byteを超えるTAGデ
: ータは,ここに書き込まれる

:
0x1BD4 TIFF Image Data
: :

■ TIFF Image Data部のデータ構造


TIFF Image Data部には,実際の画像データが記録されています。1画素(1pixel)あた
りのデータ量は8bit (1byte)です。 例えば512×512pixelの画像が記録されているとする
と,TIFF Image Data部のファイル領域の大きさは
Image Data = 512pixel×512pixel×1byte= 262144byte
となります。

■ Color Map部のデータ構造
Color Map部にはLUTのカラーデータが記録されています。RGBごとに256諧調データと
して記録されており,1階調あたりのデータ量は16bit (2byte)ですので,
Color Map = 256諧調 × 2byte × 3色 = 1536byte
となります。

■ 全体のファイルサイズ
また,同様な場合のTopographic image画像ファイル全体のファイルサイズは,
Header ( 10byte ) + Image Header ( 6090byte ) + Directory ( 1024byte)
+ Image Data ( 262144byte) + Color Map (1536byte) = 270804 byte
となります。

3-40 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.4.2d WinSPM画像ファイル[3] (FFT画像ファイル)


ここではFFT画像のデータ構造について説明します。

FFT画像ファイルには,SPM Image形式のデータ構造(Normal Image Data部)の後ろ


にFFT演算結果(FFTデータ)が付加されています。TIFF画像として収められているのは
FFTスペクトル画像です。

0x0000

Normal Image Data

Normal Image Data Size


FFT Data
EOF

■ FFT Data部のデータ構造
FFT Data記録部分までのデータ構造は,SPM Image形式ファイルのデータ構造と同一
です。FFT Dataには,Normal Image Dataに対応する形で各点のFFTデータが記録さ
れています。FFTデータは,複素数の実部・虚部がそれぞれfloat型で記録された構造体
になっています。

• FFTデータを記録する構造体complex8

Type Size Note


float 4byte 実部
float 4byte 虚部

仮にFFT画像の画像サイズが512×512pixelですと,FFTデータ部のデータサイズは
{ 実部(4byte)+ 虚部 (4byte) }×512pixel×512pixel = 2097152byte
となります。

■ 全体のファイルサイズ
また,同様な場合のFFT画像ファイル全体のファイルサイズは
Normal Image Data Size(531412 byte)+ FFT Data Size(2097152byte)
= 2628564 byte
となります。

TM-57553FST4-1 3-41
3 付 録

3.4.2e WinSPM画像ファイル[4] (CITS画像ファイル)


ここではCITS画像のデータ構造について説明します。

■ CITS画像の構造
CITS 画 像 フ ァ イ ル の デ ー タ 構 造 は 以 下 の よ う に な っ て い ま す 。 TOPO 画 像 (128 ×
128pixel)は,TIFF画像データとしてNormal Image Data部に収められており,そのデ
ータ構造はSPM Image形式ファイルと同一です。

0x0000

Normal Image Data

Normal Image Data Size(0x9BD4)


CITS Header

Normal Image Data Size+CITS Header Size


CITS Image Header (1)


CITS Image Header (128)

Normal Image Data Size+CITS Header Size


+CITS Image Header Size×128
CITS Image Data (1)


CITS Image Data (128)

EOF

3-42 TM-57553FST4-1
3 付 録

■ CITS Header部のデータ構造
CITS Headerのデータ構造を示します。ここにはCITS画像全般の情報が記録されていま
す。

Address Type Size Note


0x9BD4 short 2byte WinSPMのRevision number
0x9BD6 short 2byte CITS画像の数
0x9BD8 short 2byte 各CITS画像の横幅 (128pixel)
0x9BDA short 2byte 各CITS画像の縦幅 (128pixel)
0x9BDC short 2byte 電流像の数
0x9BDE CITS
250byte 表示オプション
DispOptType
0x9CD8 char [128] 128byte Buffer
0x9D58 short 2byte 固有の参照番号
0x9D5A
CITS Image Header (1)
:

• CITS画像の表示オプション記録する構造体CITS DispOptType

Type Size Note


short 2byte チェックフラグ(表11参照)
short 2byte 表示するCITS画像数
unsigned char 1byte 表示モード(表12参照)
double 8byte 階調0でのコンダクタンス
double 8byte 階調255でのコンダクタンス
unsigned char 1byte 表示選択(表13参照)
short[64] 128byte 表示する画像番号
char[100] 100byte Buffer

表11 チェックフラグ
Bit 0 1 2 …
TOPOを表示する ON (1)/OFF (0) ○
電圧値を画像上に表示する ON (1)/OFF (0) ○
Overlay (1)/Opaque (0) ○

表12 表示モード 表13 表示モード


0 normal 0 none
1 difference 1 spaced
2 normalize difference 2 first
3 normalize d ADC 3 last
4 conductance 4 mix up

TM-57553FST4-1 3-43
3 付 録

■ CITS Image Header部のデータ構造


CITS Image Header Type構造体のデータ構造を示します。ここには,各CITS画像の
画像情報が測定画像数分記録されており,CITS画像の枚数分だけ連続して記録されて
います。仮にCITS画像の枚数が128枚ですと,CITS Image Headerのファイル領域の大
きさは
CITS Image Header Type (165byte) × 128枚 = 21120byte
となります。

Type Size Note


short 2byte ADC値の最小値
short 2byte ADC値の最大値
unsigned char 1byte ADC Source(不使用)
short 2byte ADC Offset [mV]
unsigned short 2byte ADC Gain
int 4byte Head Amp Gain (1, 10, 100)
float 4byte Image Voltage
float 4byte Image Data=0での電流値
float 4byte Image Data=64での電流値
char[40] 40byte CITS画像のタイトル
wint_SorceType 4byte 測定信号(表8参照)
char[96] 96byte Buffer

■ CITS Image Data部のデータ構造


CITS Image Header以後のファイル領域には,各CITS像(各電圧値での電流像)の画
像データが記録されています。記録されている順番はCITS Image Header構造体の順
番に対応しています。仮にCITS画像の数が128枚ですと,CITS Image Dataのファイル
領域の大きさは
128pixel×128pixel×2byte×128枚 = 4194304byte
となります。
■ 全体のファイルサイズ
この場合のCITS画像ファイル全体のファイルサイズは,
Normal Image Data ( 39892byte) + CITS Header (390byte) +
CITS Image Header (21120byte) + CITS Image Data (4194304byte)
= 4255706 byte
となります。

3-44 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.4.3 Spectrum Dataファイル


ここでは,WinSPMにおいてI-V特性やForce Curve等のスペクトルを記録するファイルの
形式について説明します。

■ Spectrum Dataファイルの全体構造
Spectrum Dataファイルの全体構造以下に示します。

0x0000
Spec Header
SPS測定のデータ

0x17CA
X Axis Data
Spectrum
Data
Y Axis Data
EOF

Spec Header部分は,WinSPM画像ファイルのImage Header部とまったく同じデータ構


造です。実際のスペクトルデータは,Spec Header部に引き続いて全てのX軸データ,全て
のY軸データの順で記録されており,その全データサイズはSpectrum測定の種類・測定
点の数によって変化します。

■ Spec Header部のデータ構造
SPM画像ファイルのImage Headerと同様です。

■ Spec Data部のデータ構造
Spec Header以降のファイル領域 (0x17CA~) には,実際のスペクトルデータが記録さ
れています。スペクトルデータの測定点1点のデータ型はfloat型 (4byte)です。

■ Spectrum Dataファイルの大きさ
スペクトルデータは,X軸データとY軸データに分けられるので,スペクトルデータ全体のデ
ータ量を計算すると,
Spectrum Data = 測定点数×4byte×2axis
となります。
仮に測定点が2048点ですと,
Spectrum Data = 2048points×4byte×2axis = 16384byte
となります。
また,Spec Headerのデータ量は6090byteですので,Spectrum Dataファイル全体での
ファイルサイズは,
Spec Header (6090byte) + Spec Data (16384byte) = 22474byte
となります。

TM-57553FST4-1 3-45
3 付 録

3.4.4 Spectrum Data付き画像ファイル


SPS測定データを画像データと一緒に保存することが可能です。ここではSpectrum Data
付き画像ファイルの形式について説明します。

■ Spectrum Data付き画像ファイルの全体構造
Spectrum Data付き画像ファイルの全体構造を以下に示します。

0x0000

SPM Image Data

Image Data Size

SPS Spectrum Data (1)

Image Data Size + Spectrum Data Size :


:

Image Data Size + Spectrum Data Size × (N-1)


SPS Spectrum Data (N)
EOF

構造は非常に単純で,通常の画像ファイルの末尾に複数のSpectrum Dataファイルがそ
のまま付加されているだけです。画像ファイルのフォーマットおよびSpectrum Dataファイル
のフォーマットは,これまでに説明してきたものとまったく同じです。
付加されているSpectrum Dataの数は,画像ファイルのImage Header内に記録されて
います(0x0AD6番地のshort型変数)。

■ Spectrum Data付き画像ファイルの大きさ
ファイル全体の大きさは以下のようになります。
File Size = SPM Image Data Size + N×SPS Spectrum Data Size
例 えば,SPM Image Dataが512×512pixelの通 常 測 定 画 像 であり,2048点 測 定 の
SPS Spectrum Dataが2個付加されていると,Spectrum Data付き画像ファイル全体の
ファイルサイズは,
SPM Image Data (531,412byte) + 2×SPS Spectrum Data (22,474byte)
= 576,360 byte
となります。

3-46 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.4.5 レポートファイル
出力シートをファイルに保存したものをレポートファイルと呼びます。ここではレポートファイル
の構造について説明します。

■ レポートファイルの全体構造
レポートファイルの全体構造を示します。出力シートには最大3つのSPM/SPSデータが含ま
れ,さらに下にはレポートデータが記録されています。
3つのデータが存在している場合のファイル構造は以下のようになります。

0x0000
Report Header

Report Header Size

SPM/SPS Data (1)

Report Header Size + SPM/SPS Data Size

SPM/SPS Data (2)

Report Header Size + SPM/SPS Data Size × 2

SPM/SPS Data (3)

Report Header Size + SPM/SPS Data Size × 3


Report Data
EOF

ファイルの先頭にReport Headerと呼ばれるファイルヘッダ部があり,ここには出力シート内
のデータの数と種類などが記録されています。Report Header部以後は,出力シート内に
存在する画像データもしくはスペクトルデータが,それぞれのファイルフォーマットに即した形
で記録されています。Report Data部には表示設定・注釈文や図形オブジェクト・三次元
画像データが記録されています。Report Data部のデータ量は、レポートの種類や内容に
よって異なります。

TM-57553FST4-1 3-47
3 付 録

■ Report Header部のデータ構造
レポートファイルのヘッダ部であるReport Headerの構造を示します。

Type Size Note


int 4byte データバージョン(測定ソフトウェアのバージョン)
int 4byte 出力シート内のデータの数
short [n] 2byte × n 各データのレポート形式(表14参照)
bool [n] 4byte × n 各データが画像データであるかのフラグ
DWORD [n] 4byte × n 各データの長さ
nは出力シート内のデータの数

表14 レポート形式
0 通常の出力シート 4 マルチプロファイルの出力シート
1 複数画像プロファイルの出力シート 5 エクストラプロファイルの出力シート
2 三次元画像の出力シート 6 表面粗さ解析の出力シート
3 シングルプロファイルの出力シート

■ レポートファイルの大きさ
レポートファイルのファイルサイズは,出力シートにあるデータの種類とその数、および追加し
た注釈文や図形の数などによって異なります。

3-48 TM-57553FST4-1
3 付 録

3.5 WinSPMのオプションフラグおよびデバグフラグ
ここでは「WinSPMのプロパティ」ダイアログの「管理」タブウインドウ上で設定可能な、オプ
ションフラグおよびデバグフラグの意味について説明します。

3.5.1 オプションフラグの意味
◇注意◇
動作不良の原因となりますので、保守サービスの指示無くオプションフラグを変更しない
で下さい。特に「~が必要」という注釈が付いているフラグを無闇にONすると、SPM装置
本体に致命的な障害が発生する可能性があります。

● /NOCCC (NOCCC : NO Capacitive Coupling Correction)


静電容量補正計算のキャンセルフラグです。
プローブと試料の間にバイアス電圧を印加し両者間に流れる電流を測定しようとすると、プ
ローブ・試料間の静電容量の影響で、バイアス電圧=0Vの際に電流≠0nAとなる場合があ
ります。I-V測定の際にはこの静電容量分のオフセットを自動的に除去する演算が行われま
すが、このオプションフラグをONすると除去演算が行われなくなります。

● /LMC (LMC : Lateral Modulation Cantilever)


カンチレ バ を横 振 動 させ て、局 所 領 域 の力 学 特 性 を測 定 す る横 振 動 カ ンチレ バ測 定
(LMC測定)を行うためのフラグです。
LMC測定を行うには、カンチレバ先端を横振動させる専用ホルダが必要となります。

● /LMCFC (LMCFC : LMC Force Curve)


LMC測定でのフォースカーブ測定アルゴリズムだけを使用できるようにするフラグです。

● /DPAT
DPAT測定を行うためのフラグです。
DPAT測定を行うには、SPMコントローラに対して改造を施す必要があります。

● /33220A
極短パルス電圧打ち込み加工を行うためのフラグです。
極 短 パ ル ス 電 圧 打 ち 込 み 加 工 を 行 う に は 、 Agilent Technologies 社 製
AG33220AをPCにUSB接続する必要があります。

● /EXTCONT
SPMフィードバックコントロールを、外部コントローラへ切り替え可能とするフラグです。
切り替え可能とするには、SPMコントローラに対して改造を施す必要があります。

● /FAMP2
JSPM-5400で使用しているAFMアンプユニット(FAMP2)がコントロール可能になります
が、通常のAFMアンプユニットを正しくコントロールできなくなります。
FAMP2を使用するには、SPMコントローラに対して改造を施す必要があります。

TM-57553FST4-1 3-49
3 付 録

3.5.2 デバグフラグの意味
◇注意◇
デバグフラグは、SPMコントローラ・AFMアンプユニット・付属機器等のハードウェア、およ
びWinSPM自体の動作確認を行うために用意されており、保守サービスの指示無くこれ
らを使用しないで下さい。

● /INTSPM
WinSPMをオフラインモードで使用するフラグです。
オフラインモードでは、SPM装置本体への一切のアクセスが行われず、WinSPM内部でエ
ミュレートされますので、A/Dボード等が搭載できないノートPC上等でもWinSPMを動作さ
せることができます。

● /INTCLK
測定を行う際のトリガクロックを、SPMコントローラからのクロックではなくWinSPM内部で発
生させるようにするフラグです。

● /INTCS
試料ステージ位置情報を、SPMコントローラからの信号ではなくWinSPM内部での疑似信
号でエミュレートするようにするフラグです。

● /INTLIA
ロックインアンプとのCOMポート通信をエミュレートするようにするフラグです。

● /INTTEMP
試料温度コントローラとのCOMポート通信をエミュレートするようにするフラグです。

● /INTSKPM
AFMアンプユニット内のSKPMアンプ部分をエミュレートするようにするフラグです。

● /DBG
イベントモニタウインドウを表示し、ソフトウェア動作ログを表示するようにするフラグです。

● /MORE
イベントモニタウインドウにより詳しいソフトウェア動作ログを表示するようにするフラグです。

● /DBGLIA
イベントモニタウインドウにロックインアンプ制御ログを表示するようにするフラグです。

● /FAMPDBG
AFMアンプユニットコントロールI/Oの確認ダイアログを表示するようにするフラグです。

● /TESTSTUFF
SPMコントローラおよびAFMアンプコントロールI/Oを、直接操作可能にするダイアログを
表示するようにするフラグです。

3-50 TM-57553FST4-1

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