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420 鉄 と 鋼 第64年(1978)第3号

論 文
UDC 669. 14-426. 2: 539. 4. 016: 669. 786: 621. 788. 011

高 炭 素鋼 線 の引 張性 質 にお よぼす窒 素 と伸 線条 件 の影 響*

山 田 凱 朗**・ 横 山 忠 正***・ 山 田 哲 夫****

藤 田 達**・ 木 下 修 司*****

Effects of Nitrogen and Drawing Schedule on the Tensile


Properties of High Carbon Steel Wire**

YoshiroYAMADA , TadamasaYOKOYAMA, TetsuoYAMADA,


TatsuFUJITA, and ShushiKINOSHITA

Synopsis:
This paper describes the effects of free nitrogen (nitrogen not bound to nitride forming elements) and
drawing schedule mainly on the tensile properties of patented and cold drawn high carbon steel wires . The
results obtained are as follows.
The deleterious effect of nitrogen upon the reduction of area at tensile fracture , which is apparent in the
as-patented steels, gradually diminishes with the reduction by drawing and becomes negligibly small above
about 60 to 70% reduction. The tensile properties of the heavily cold drawn wires are determined not by the
free nitrogen level but rather by the wire drawing condition. The important role of the drawing condi-
tion on the wire strength properties is discussed in terms of the progress of the strain aging during drawing .
The tensile-fractured steels were examined using a scanning electron microscope and it was found that
in the as patented steels, the fracture pass was mainly along the proeutectoid ferrite or the pearlite boundaries
and that in the heavily cold drawn ones, small voids elongated along the wire axis direction were dominant
in the early stage of fracture. These fracture characteristics are discussed in relation to the tensile ductility .

線 試料 の性 質 は フ リーN量 よ りもむ しろ伸線 条 件 に左右


1. 緒 言
され る ことを 明 らか に した.
パ テ ンテ ィン グ した ま まの 共 析炭 素 鋼 の 延 性(破 断 絞
り)は フ リーN量(安 定 な 窒化 物 となつ て い るNを 除 い 2. 供 試 材 と実 験 方 法

たN量,鉄 窒 化 物 となつ たNは フ リー に入 れ る)の 減 少 供 試材 はC 0.77%, Si0.2%, Mn 0.5%を 基 本組 成 と


お よ び前 オー ス テ ナ イ ト結 晶 粒 の 微細 化 に よつ て改 善 さ し,N含 有 量 の み を変 化 させ る よ うに溶 製 した2チ ャー
れ る こと をす で に 報告 した1). ジで あ り,前 報 に お い て用 い た 鋼 と同一 成分 鋼 で あ る.

本 報 告 は 伸 線 した ほ ぼ共 析 組 成 を有 す る高 炭 素 鋼 の引 そ の 化学 組 成 をTable 1に 示 す. A-Vac試 料 は フ リー
張 性 質,特 に 延 性(破 断 絞 り)に お よぼす フ リーN量 と Nレ ベ ル が低 く,Nの 多いA試 料 中 のNの 大 部 分 は,鋼

伸 線 条 件 の効 果 に つ い て研 究 した 結 果 で あ り,フ リーN 中 のAl, Ti等 の 窒化 物形 成 元 素 が少 な い の で,フ リー


の パ テ ン テ ィン グ した ま まの 鋼 の延 性 劣化 作 用 は 伸線 さ Nと 判 断 され る.

れ た鋼 線 に も引 き継 がれ るが,そ の効 果 は施 され た 伸線 これ ら 溶 製試 料 は9.5mm径 に 熱 間圧 延 したの ち,


加 工度 とと もに 小 さ くな り,総 減 面 率 が60な い し70% パ テ ン テ ィン グ,伸 線 に よつ て線 径5.58mmと した.

を越 え る とほ ぼ 消 滅 す る こ とお よび この よ うな強 加 工伸 さ らに,こ れ らを連 続 炉(オ ース テ ナ イ ト化加 熱 用大 気

* 昭 和48年10月 本 会 講 演 大 会 に て一 部 発 表 昭 和52年4月21日 受 付(Received Apr. 21, 1977)


** (株)神 戸 製 鋼 所 中央 研 究 所 工 博(Central Research Laboratory, Kobe Steel Ltd., 1-chome
Wakinohama-cho Fukiai-ku Kobe 651)
*** (株)神 戸 製 鋼 所 中 央研 究 所 (Central Research Laboratory, Kobe Steel Ltd.)
**** (株)神 戸 製 鋼 所 中 央 研 究 所(現 高 砂 開 発 室)(Central Research Laboratory , Kobe Steel Ltd.)
***** (株)神 戸 製 鋼 所 中 央研 究 所 工 博(現 鋳 鍛 鋼 事 業 部 技 術 部)(Central Research Laboratory , Kobe
Steel Ltd.)

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高 炭 素 鋼 線 の 引張 性 質 にお よぼ す 窒 素 と伸 線 条 件 の 影 響 421

Table 1. Chemical composition of steelsused (wt%).

Table 2. Drawing schedules.

炉 とそれ に接 して置 か れ た 鉛 浴 炉)を 用 い て鉛 パテ ン テ


ィン グした.オ ース テ ナイ ト化加 熱 炉 は900℃ に設 定
した.ま た,鉛 浴 温度 は鉛 パテ ンテ ィン グ後 の 引 張 強 さ
が125kg/mmmm2と な る よ う調 整 した(推 定520∼540°
C).こ れ 以 外 に,前 オ ース テ ナ イ ト結 晶粒 度 を 変 化 さ

せ る目的 で,980℃ お よ び1070℃ で 加 熱 パテ ン テ ィン


グ した試 料 も用 いた.パ テ ン テ ィン グ後,試 料 は酸 洗,
燐 酸塩被 膜 処理 を 施 され,そ の の ち冷 間 伸 線 され た.伸
線は次 の二 条件 を選 ん で行 なつ た.す な わ ち,2.49mm
径 まで(1)ド ローベ ン チで7ダ イ ス,各 ダイ ス1m/min
の速度 で,(2)単 釜伸 線 機 で5ダ イ ス,各 ダ イス20m/min
の速度 で,そ れ ぞ れ 伸 線 した.そ の ダ イス ス ケ ジ ュール
をTable 2に 示 す.
パテ ンテ ィン グの ま ま の試 料 お よび 伸 線 した試 料 は室

温 で引張 試 験 を行 な つ た.引 張 試 験 は 一 条 件 に つ き3本


の試験片 を用 い て行 な つ た.そ の他 に,捻 回 試 験 も 一部
Fig. 1. Effect of drawing speed and reduction
の試験 片 につ き行 な つ た.さ らに,組 織 観 察,走 査電 子
per pass on the tensile properties of
顕微鏡 に よ る破 面 観 察 な どを行 な つ た.そ の 他,900℃ patented and cold drawn specimens.
加 熱 パテ ンテ ィン グ後 伸 線 した試 料 の 一 部 に200℃ ×
10minの 時効 処 理 を 施 した の ち,室 温 で 引 張 試 験 した. りが 支 配 され る ことが わ か る.同 様 に,引 張 強 さ も伸 線
条 件 に大 き く依 存 す る こ とが わ か る.さ らに,単 釜 伸 線
3. 実 験 結 果
機 で1.61mm径 まで(総 減面 率92%)伸 線 した が,伸
900℃ 加 熱 パ テ ンテ ィン グ後 伸 線 した 試 料 の 引 張性 質 線後 の 引 張 強 さ,破 断 絞 り ともA-Vac試 料 とA試 料 間
をFig. 1に 示す,ド ロー ベ ン チ で 各 ダイ ス1m/min で ほ とん ど差 が なか つ た(デ ー タ略).
の速 さで伸 線 した場 合 も,単 釜伸 線機 で各 ダイ ス20m/ とこ ろで,ド ローベ ン チで 伸 線 す る とほぼ 直 線 状 の試
minの 速 さで 伸 線 した場 合 も,施 され た伸 線 加 工 が 約 料 が 得 られ る の に対 して,単 釜 伸 線 機 で 伸線 した試 料 は
60%減 面 率 以下 で は,A-Vac試 料 の破 断 絞 りはA試 料 巻 取 り ドラ ム上 に コ イル 状 に巻 取 られ る関係 上,引 張 試
のそれ よ りす ぐれ て い る.し か し,伸 線 加 工 度 と と もに 験 前 に 矯 正 す る必 要 が あ る.矯 正 に よつ て0.2%耐 力は
両 試料 間の 破断 絞 りの 優 劣 の差 は 次第 に小 さ くな り,約 か な り変 化 す る ので,こ れ を考 慮 してFig. 1に は単 釜
60%以 上 の 伸 線 に よ る減 面 率加 工 を受 け た試 料 で は,パ 伸 線 試 料 の0.2%耐 力 の デ ー タ の掲 載 を 省略 した.
テンテ ィン グ の ま まの 試 料 の破 断 絞 りの 優劣 よ り もむ し Photo. 1は パ テ ンテ ィン グ の ま まのA-Vac, A両 試
ろ伸 線条 件(伸 線 速 度,ダ イ ス 当 りの減 面 率)に 破断 絞 料 の組 織 で あ る.パ ー ライ トノ ジ ュール サ イ ズ1)(パ ー

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422 鉄 と 鋼 第64年(1978)第3号

Table 3. Effect of austenitizing temperature at patenting on the tensile properties of as


lead patented and as drawnwires. Drawing speed: 1m/min at each die.

分 鋼 で は 前 オ ー ス テ ナ イ ト化 加 熱 条 件 の 破 断 絞 りへ の 影

響 は 非 常 に 小 さ く な る.Fig. 1に 示 した900℃ 加熱 の

場 合 も 含 め てTable 3, Table 4に そ れ らの結 果 を示

す.こ こ で,Table 3は 各 ダ イ ス1m/minの 速度 で ド

ロ ー ベ ン チ を 用 い て,ま たTable 4は 同 じ く20m/min

の 速 度 で 単 釜 伸 線 機 を 用 い て,そ れ ぞ れ 伸 線 した 結 果 で

あ る.光 学 顕 微 鏡 写 真 か ら 求 め た ノ ジ ュー ル サ イ ズ よ り

判 断 して,A-Vac 1070℃ 加 熱 で は 前 オ ー ス テ ナ イ ト結

晶 粒 度 はNo. 2.5, A試 料1070℃ 加 熱 で は 同 じ くNo.

5程 度 と 推 測 され る.

以 上 よ り,前 オ ー ス テ ナ イ ト結 晶 粒 度 を 一 定 に そ ろ え
Photo. 1. Microstructures of as-patented steels
て も,Fig. 1と 同 様,強 加 工 伸 線 試料 の延 性 は伸 線 条件
A-Vac and A. Nital etched.
に 大 き く 依 存 す る も の と考 え ら れ る.

ライ ト粒 径2))か ら推 定 して,前 オ ース テ ナイ ト結 晶 粒 Fig. 1に 示 し たA-Vac, A両 試 料 の前 オース テ ナ イ

度 はA-VacでNo. 5.5程 度,A試 料 で は 同 じ くNo. ト結 晶 粒 度,ノ ジ ュ ー ル サ イ ズ に は や や 相 違 が あ る もの

7程 度 で あ る. の,伸 線 加 工 に よ る 繊 維 組 織 形 成 過 程 に ほ と ん ど両 試 料

この よ うに,前 オ ース テ ナ イ ト結 晶 粒 度 に 相違 が あ る 間 の 差 は み と め られ な い.

の で,伸 線後 の引 張 性 質 に お よぼす 前 オ ース テ ナ イ ト結 Photo. 2はA-Vac試 料 の 伸 線 後 の 組 織 例 で あ る.伸

晶 粒 度 の 影響 を 知 る ため に,オ ー ス テ ナ イ ト化加 熱 条 件 線 加 工 と と も に ノ ジ ュ ー ル は 線 方 向 に 配 列 化 し,約70

を変 え てA-Vac, A両 試 料 を パ ラン テ ィン グ し,さ ら に な い し80%の 減 面 率 で 繊 維 組 織 は ほ ぼ で き 上 る.


Photo. 3は900℃ 加 熱 パ テ ン テ ィ ン グ 後,お よび伸
伸 線 した.A-Vac, A両 試 料 とも,オ ース テナ イ ト化 加
熱 温 度 が 高 くな る ほ どパテ ンテ ィン グ後 の 破 断絞 りは低 線 後 の 引 張 破 断 面 の 走 査 電 子 顕 微 鏡 写 真 で あ る.
パ テ ン テ ィン グ 後 お よ び35%減 面 率程 度 の 比較 的 低
下 した が施 され た 伸 線 加 工 度 が大 き くな る と とも に破 断
絞 りに お よ ぼす 前 オ ース テ ナイ ト化 加 熱 条 件 の効 果 は小 加 工 率 伸 線 後 の 引 張 破 断 面 に は 特 有 の 凹 凸(Photo. 3,

さ くな り,約70%以 上 の 減 面率 加 工 を施 され た 同一 成 矢 印)が 観 察 さ れ る.こ の よ うな凹 凸 を 比較 的 高 倍率 で

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高 炭 素 鋼 線 の 引 張 性 質 に お よぼ す 窒 素 と伸 線 条 件 の 影 響 423

Table 4. Effect of austenitizingtemperature at patenting on the tensileproperties of


drawn wires. Drawing speed=20m/min at each die.

Fig. 2. Tensile properties of specimens A-


Vac and A of diameter 4.5mm.

ラ イ トに特 徴 的 な パ ー ライ ト剪 断 に よ る延 性 破 壊 は ほ と
ん ど観察 され な か つ た.60な い し70%程 度 以上 の減 面

率 加 工 を施 され た 試 料 に は上 記 の 破面 上 の凹 凸 は ほ とん
ど認 め られ ず,か な り平坦 な延 性 破面 を呈 す る(Photo.
3).し か し,A-Vac試 料 とA試 料 間 で の破 面 の 特 徴 の
Photo. 2. Microstructures of cold drawn stecl
A-Vac. 相 違 は ほ とん ど認 め られ な い.
次 に,引 張 破 断 面 直下 の試 料 縦 断 面 を 走査 電 子 顕 微 鏡
で 観 察 した.パ テ ンテ ィン グ した ま ま のA-Vac, A両

試 料 と も ク ラ ック は主 と して初 析 フ ェ ライ トに沿 つ て お
り,そ の 他 に,パ ー ライ トの 界面(前 オ ー ス テ ナイ ト結
観 察 す る と破 面 は 主 と して 細 か い デ ィン プ ル に よ つ て 構 晶粒 界,ノ ジ ュー ル境 界,コ ロニ ー境 界 な どに対 応 す る
成 され る こ と が わ か る(Photo. 4).粗 い 層間隔のパー と考 え られ る)に 沿 う延 性 割 れ が見 られ る(Photo. 5).

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424 鉄 と 鋼 第64年(1978)第3号

Photo. 3. Tensile fracture surfaces of steels A-Vac and A.

Fig. 2は900℃ 加 熱 パ テ ィン グ後35%減 面 率加 工 さ


約35%減 面 率 加工 を施 され た 試 料 に も 同様 の初 析 フ
ェラ イ トや パ ー ライ トの界 面 に沿 う割 れが 観 察 され た. れ た4.5mm径,ド ローベ ン チ伸 線 試 料 に 関す る結 果 で
A-Vac試 料 に 比 してA試 料 に この よ うな破 面 直 下 の あ る.時 効 に よつ て強 さは 上 昇 し,破 断 絞 りは低下 して

割 れ が 多 く観 察 され,ま た割 れ 自体 は よ り長 く,か つ 幅 い るがA-Vac試 料 の 方がA試 料 よ りも時効 後 の破 断 絞

がせ ま い傾 向 にあ る. りは す ぐれ て い る.一 方,900℃ 加 熱 パ テ ィング後80

60%程 度 以 上 の減 面 率 加 工 を施 され たA-Vac試 料と %減 面 率 加工 した2.49mm径 の ドローベ ン チ伸線 試 料

試 料 の破 断 面 直 下 に 観 察 され る ク ラ ックは主 と して線 軸 で は,時 効 に よつ て 強 さ は同 様 に上 昇 し,破 断 絞 りも減

方 向 に 伸 び た ボイ ドと,比 較 的 球 形 に 近 い ボ イ ドで あ 少 す るが,時 効 後 のA-Vac, A両 試 料 の 破断 絞 りはほ

る.こ れ らの 例 をPhoto. 6に 示 す.線 軸 方 向 に伸 び た とん ど同 じ値 となつ て い る(Fig. 3a).し か し,単釜 伸

ボ イ ドは初 析 フ ェ ライ ト中や パ ー ライ トの界 面 に沿 つ て 線機 で 伸 線 した場 合 に は,引 張 強 さ は時 効 に よつ て あ ま


い る と思 わ れ る. り変 化 せ ず(0.2%耐 力 は上 昇 して い るが,す で に述 べ

次 に,伸 線 した 試 料 の 一部 に時 効 処 理 を施 した あ と, た よ うに矯正 の影 響 が 大 と意 わ れ る),伸 線 後す で に 第

室 温 で引 張 試 験 した.時 効条 件 と して は,時 効 後 にほ ぼ II段階 歪 時効 が かな り進行 して しま つ てい た と考 え られ

最 大 の 引 張 強 さが 得 られ る条 件,す な わ ち第II段 階 歪 時 る.ま た,時 効後 の 破 断 絞 りもA-Vac試 料 とA試 料 間

効3)の 終 了 す る条 件 と して200℃ ×10minを 選 ん だ. で ほ とん ど差 が ない(Fig. 3b).

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高 炭 素 鋼 線 の引 張 性 質 に お よぼ す窒 素 と伸 線 条 件 の 影響 425

Fig. 3. Tensile properties of specimens A-Vac


of diameter 2.49mm.

Photo. 4. A crateritbrm hollow observed on the


tensile fracture surface of 35.0% dr-
awn steel A.

Photo. 5. Microcracks observed near the fracture surface of patented and tensile tested steels.

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426 鉄 と 鋼 第64年(1978)第3号

ト結 晶粒 微 細 化 に よ つ て,延 性 が 向上 す る一 原 因 であ ろ
う.
A, A-Vac両 試料 に つ い て,伸 線 中 の温 度 上昇 とそれ

に伴 う歪 時 効 の 進行 を で き るだ け 防 止す るた め に,各 ダ
イス0.1m/Minの 低 速 で,Table 2の ドローベ ンチ伸
線 と同 じダ イス ス ケ ジ ュール で 総 減面 率59%の 伸線 加
工 を行 な つた.こ れ らの低 速 伸 線 試 料 に100℃.10min
の 時 効 を施 した の ら,室 温 で 引 張 試験 した と ころ,A-
Vac試 料 で は時 効 に よ る0.2%耐 力の 増加 は僅少 であ
つ た が,A試 料 で は そ の増 加 が 明瞭 であ つ た ので,A試

料 中 のNの 少 な く と も一 部 はパ テ ン テ ィン グ後お よび低


速 伸 線(0.1m/min)後 は 固 溶 して いた もの と判断 され
る.
と ころ で固 溶Nは フェ ライ ト中 の転 位 の 交 叉すべ りを

起 こ しに く く し,す べ り線 の先 端 にお け る応 力集 中 を大
き くす る効 果 が あ る と考 え られ6),こ の ため 固 溶Nが 多
くな る とよ り小 さな歪 で微 小 ク ラ ッ クが 発生,成 長 す る
で あ ろ う.Fig. 1のA-Vac試 料 の前 オ ー ス テナ イ ト結

晶 粒 径 や ノ ジ ュー ル径 がA試 料 のそ れ よ り大 であ る と判
断 され るに もか か わ らず,パ テン テ ィン グの まま のA-
Vac試 料 の延 性 がA試 料 よ りも良好 な の は,し たが つ て

固 溶 量Nの 差 に 主 と して よつ て い る もの と考 え られ る.
強 加工 伸 線 した 鋼線 の引 張 破断 部 近 傍 に形 成 され るボ
Photo. 6. Voids just below the tensilefractured イ ドはPhoto. 6に 見 られ るよ うに線 軸 方 向 に長 く,線
surfaceof cold drawn steelsA-Vac. 軸 と垂 直 な 方 向 に は ほ とん ど 成 長 してい な い ものが 多
い.熱 延 鋼 板 のL方 向延 性 に お よ ぼす 板 状MnS介 在物
の 有 害 な作 用 が,Z方 向,C方 向 のそ れ に 比 して非 常 に
小 さい 例7)に み られ る よ うに,こ の よ うな細 長 い ボ イ ド
時 効 した 試 料 の 引張 破 断 面 直 下 の ク ッラ クは伸 線 の ま
はそ の まま で は,延 性劣 化 作 用 が非 常 に小 さ い と思 わ れ
ま の試 料 の 引 張 破断 部 のそ れ と類似 して いた.例 え ば,
4.5mm径 の 試 料 で は,初 析 フ ェ ライ トや パ ー ライ ト界 る.こ れ らの ボ イ ドは線 軸 方 向 に並 んだ 初 析 フ ェ ライ ト
や パ ー ライ トの境 界 に沿 つ て 発生 し,局 部 収縮 部 に働 く
面 に沿 うク ラ ックが 観 察 され た.
三 軸 応 力 下 で まず 線 軸 方向 に成長 した もの と思わ れ る.
4. 考 察 これ らの 細長 い ボイ ドを線 軸 方 向 と直 交 す る方向 に成 長

パ テ ン テ ィン グの ま ま の試 料,あ るい は比 較 的 低 加工 させ る には,ボ イ ドに 隣接 す る層 状 パ ー ライ トを破 断 さ


せ ね ば な らな い.と ころ で,パ ー ライ トの セ メン タイ ト
伸 線 試 料 で はPhoto. 5に 明 らか な よ うに破 面 直 下 の ク
ラ ッ クは主 と して 初 析 フ ェラ イ トに 沿 つ て お り,初 析 フ 板 は伸 線 加 工 と ともに 線軸 方 向 に 次第 に配 列 す る8).60

ェ ライ トは前 オ ース テ ナ イ ト結 晶 粒 界 に沿 つ て析 出 す る な い し70%減 面 率 加 工 され た 試料 で は引 張 試験 中 に局

こ とを考 えれ ば,ク ラ ッ クサ イ ズは 前 オ ー ス テ ナイ ト結 部 収縮 に よ り最 大50な い し60%程 度 の 減面 率 に相 当

晶粒 径 に ほぼ 正 比 例 す る と考 え られ る. す る加 工 を さ らに受 け るの で,セ メン タ イ トはほ ぼ 線軸

前 オ ー ス テナ イ ト結 晶粒 微 細 化 は 変態 した鋼 の 結 晶粒 方 向 に配 向 して い る と考 え られ る.セ メ ン タイ トの破 断

微 細 化 を もた らす の で,転 位 のす べ り距 離 を小 さ くす る 強 さや 弾 性 限 は フ ェ ライ トのそ れ よ りは るか に高 い.こ

効 果 に よつ て 転 位 の 結 晶境 界 へ の 集 積 に よ つ て生 じ る引 の た め,引 張 荷重 方 向 に配 列 した セ メン タ イ ト板 は フェ

張応 力集 中 を小 さ くす るで あ ろ う4)5).そ して これ に よ ライ ト地 に 比 して は るか に高 い 引 張 応 力 を受 け持 つ とさ

つ て初 析 フ ェ ラ イ ト(結 晶 粒 界)に お け る クラ ック発生 れ て い る9)10).た とえ ば,fibre-loading modelを 用 いた

ま での 歪 を大 き くす るで あ ろ う.こ れ が前 オ ース テ ナ イ LINDLEYら の計 算9)に よれ ば,ア ス ペ ク ト比l/t (lは

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高 炭 素鋼 線 の 引 張 性質 に お よ ぼす 窒 素 と伸 線 条件 の影 響 427

セ メン タイ ト板 の長 さ,tは 同 じ く厚 さ)を もつ 引 張 応

力方向 にな らん だ セ メン タ イ ト板 に 働 く引 張 応 力 σmax
は σmax=(l/t)τ で 表 わ され る.こ こで τ は フ ェラ イ ト
に働 く剪 断 応 力で あ る.今,か りにl/t=20,セ メン タ
イ トの破壊 応 力 を500kg/mmmm2と す る と τ=25kg/
mmmm2で セ メン タ イ ト板 が破 断 す る こ とにな る.す な わ

ち,パ ー ライ トが 塑 性 変 形 す る と,フ ェ ラ イ トが 伸 び て
τ が増加 し,そ れ と ともに σmaxも 増 大 す る.σmaxが
セ メンタイ トの 破壊 応 力 に達 す る とパ ー ライ トが 破 断 し
は じめ る.強 加 工 伸 線 試料 の引 張 破 断 部 近 傍 の ボ イ ドは
破断面 の ご く近 傍 に 限 定 さ れ て お り,パ ー ライ トが破 断
しは じめ てか ら最 終 破 断 に い た る ま で の歪 は小 さ い.し
たがつて,延 性 は セ メ ン タイ ト板 の破 断 しは じめ る歪 に
よつ てほ ぼ決 め られ るで あ ろ う. Fig. 4. Cooling curves and the corresponding
aging curves in 2.9mm dia. wires.
この よ うな モ デ ルで は,転 位 の パ イ ル ア ップに よる局
部的応 力集 中 に よる セ メン タイ トの 破壊 を考 え に入 れ る
鋼 の 熱 伝 導度 と して λ=40kcal/m・h・℃,比 熱 と して
必要が ない とされ て い る9).事 実,す で に述 べ た よ うに
C=0.13kcal/kg・℃,密 度 と して ρ=7800kg/m3を
本実験 では 転位 の パ イ ル ア ップ に基 づ く と思わ れ る,い
用い て,鋼 線軸 方 向 の 熱 流 は ない もの と して,通 常 の熱
わゆ るパ ー ライ トの勢 断 破 壊11)はパ テ ンテ ィン グ試 料 お
拡 散 方 程 式 を解 い た もの で あ る.
よび伸 線試 料 の いず れ に もほ とん ど観 察 され な か つ た.
NをAlな どで固 定 した り トー タルNを 下げるな ど
また,数10ppm程 度 のNが フ ェ ライ トの変 形 抵 抗6)や
して 固溶Nを 少 な くす れ ば,第I段 階歪 時 効 に よる時
セメン タイ トの破 断 応 力,ア ス ペ グ ト比 にほ とん ど影 響
効 強化 は無 視 し うる程 度 に な る ので,第II段 階 につ い て
を与 えな い とすれ ば,上 記 の モ デ ル に よつ て,強 加 工伸
考 慮 す れ ば よい.第II段 階 の歪 時 効 の等 温 反応 式 は次 の
線 試料 の 延性 がN量 にほ とん ど依 存 しな いの を一 応 説 明
よ うに 表 わせ る3).
でき る.

Fig. 1に 見 られ るよ うに,60な い し70%以 上の伸線 (1)

加 工を施 され た 試 料 で は,伸 線 後 の 引 張 性 質 は フ リーN こ こで,K:3.6×1011/s


量 よ りもむ しろ伸 線 条件 に依 存 す る.ま た,Fig. 3か ら n:規 格 化 した 未 反 応 量

明 らか な よ うに単 釜 伸 線機 で伸 線 した 場 合 に は伸 線 中 に t:時 間

す でに歪 時 効 がか な り進行 して い た もの と考 え られ る. T:温 度(K)

伸線速 度 の向上,1パ ス 当 りの減 面 率 増 大 お よび変 形 抵 E:28kcal/mol

抗増大 は いず れ も,ダ イ ス 通過 後 の鋼 線 温 度 を上 昇 させ 連 続 冷 却 曲 線(Fig. 6)を 微 小 時 間 Δtに 分 割 し,Δt


る2)ので,単 釜 伸 線 機 で の 伸 線 で は ドローベ ンチ の場 合
内 にお い て温 度 は一 定 と 近 似 す れ ば,Δt内 に 起 こる反
よ りも温度 上昇 の程 度 が 大 で,ダ イ ス通 過 後 鋼 線が 冷 却
応 量 Δnは(2)式 の よ うに近 似 で き る.
され る過程 で歪 時 効 が 進 行 した もの と考 え られ る.な お
(2)
第II段 階歪 時効 がか な り進 め ば,Nの 影 響 は 無視 し うる
程度 にな る3). したが つ て,こ の よ うな計 算 を冷 却 開始 点 か ら繰 返 し行
今,ダ イ スを通 過 した 直 後 の 鋼 線 の断 面 温 度 分 布 が一 な えば,連 続 冷 却 中 の第II段 階進 行 状 態 が計 算 で き る.
様 であ り,冷 却 中 の熱 伝 達 率 αは 一定 で あ る と して,種 Fig. 4の 下 部 は これ らの結 果 で あ り,ダ イ ス直 後 の 鋼
々の温 度 か らの2.9mm径 鋼 線 の冷 却 曲 線 を求 め た.通 線 温度 が175℃ で は時 効 は ほ とん ど進 行 しな いが,200
常 の伸 線機 の巻 取 釜 上 で の 鋼 線冷 却 速度 か ら求 め た α と ℃ 以 上 にな る と,温 度 と とも にそ の 進 行量 は増 大 す る

して,STURGEONら13)は α=10な い し20kcal/mm2・h・ こ とを示 唆 して い る.ま た,ダ イ ス直 後 の 鋼 線温 度 が,


℃ を,ま た,松 下 ら14)はα=50kcal/mm2・h・℃ を得 300℃ を越 え る と,鋼 線 温 度 が ほ とん ど低 下 して い な

てい る.こ こで は 後 者 を採 用 した.計 算結 果 をFig. 4 くて も第II段 階 時 効 が ほ ぼ終 了 して しま う ことを グ ラ フ


の上部 に示 す.な お,こ れ らは環 境 温 度 と して25℃, は示 して お り,こ の場 合 に は,冷 却 中 に 過時 効(第III段

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428 鉄 と 鋼 第64年(1978)第3号

階)が 進 行す る もの と思 わ れ る. で紳 線 した2.93mm鋼 線 で は ダイ ス通 過 後 鋼 線 が冷却

次 に,ダ イ ス 出 口 にお け る鋼 線 温度 を推 定 す る.ダ イ され る間 に 歪 時 効 が か な り 進 行 した と 考 え られ るが,


ス中 で の 変 形 熱 と摩 擦 熱 に よ る ダイ ス 直後 の鋼 線 の 平 均 Fig. 2に 明 らか な よ うに,4.5mm径 時 効 試 料 の延 性 に

温度Tは,例 え ば,(3)式 で 表 わ され る15). 関 して は,2.93∼2.49mm径 試 料 の 場 合 と ち が つて,


伸 線 後 と同様A-Vac試 料 がA試 料 よ りも優 れ て い る.
破 断 部直 下 の ク ラ ックは伸 線 後 時 効せ ず 引 張 つ た試料 と
同 様 で あ るの で,時 効後 もNの 悪 影響 が 存 続 した もの と
考 え られ る.N 0.012%含 有 鋼 の 内部 摩 擦 を測 定 した と
(3) ころ,伸 線 の まま で はNス ネー ク ピー クが 明瞭 に 認め ら
こ こで,T0:ダ イ ス 入側 の鋼 線 温 度
れ た の に対 し200℃ で時 効 す る と,ス ネー ク ピ ークは
σY:平 均 変 形 抵抗
ほ ぼ完 全 に 消 滅 した3).こ れ か ら,正 常 の格 子 間位 置 に
φ:減 面 率 あ るNは ほ ぼ 消 滅 してい る こ とが 判 るが,お そ ら く,前
α:ダ イ ス角 度
オ ース テ ナイ ト結 晶 粒 界 な どの粒 界 に 偏 析 したNが クラ
A:熱 の仕 事 当量
ックの 出 現 を 容易 に して い る もの と思 われ る.し か し,
ρ:鋼 線 の密 度
詳 細 な機 構 は 明 らかで は な い.
C:鋼 線 の 比熱
以 上,主 と して引 張 性 質 に着 目 してN量,伸 線 条件 の
m:摩 擦 熱 分配 係 数
影 響 を述 べ た.伸 線 した高 炭 素 鋼 線 はそ れ 自体,非 常 に
μ:摩 擦 係 数 大 きな 異 方性 を示 す.引 張 試 験 で は 線軸 方 向 の引 張応 力
(3)式 に お い てmは 摩 擦 熱 の うち鋼 線 内 部 に 配分 され 下 で の 性 質 のみ が 測 定 され る.こ れ 以 外 に,慣 習 的 に,
る 割 合 で,伸 線 速 度,ダ イ ス冷 却 状 態 な どの 影 響 を受 け 捻 回 試 験,繰 り 返 し曲 げ 試 験 な どが 鋼 線 の 性 質 評価法
る が 伸 線 速 度20m/minの 場 合 に はm=0.8程 度 と考 と して よ く行 な わ れ るので,こ れ らの結 果 につ き付 言す
え ら れ る.そ こ で 単 釜 伸 線 機 で 線 径3.42mmか ら2.93 る.
mmま で20m/minの 速 度 で 伸 線 す る 場 合 に,m=0.8, Fig. 1に 示 した900℃ オ ー ス テ ナ イ ト化加 熱 パ テン
σYは 伸 線 前 後 の 引 張 強 さ の 平 均 値 の8割,α=6°,μ= テ ィン グ,単 釜伸 線機 伸 線 試 料 につ いて 繰 り返 し曲げ試
0.03,T0=25℃ と して(3)式 に よ りTを 求 め る と, 験 と捻 回試 験 を 行 な つた.繰 り返 し曲 げ 試 験で は いずれ
A-Vac試 料 で は247℃,A試 料 で は240℃ と な り, の 線 径 で もA-Vac, A両 試料 間 で ほ とん ど差 は認 め ら

Fig. 4よ り,い ず れ の 試 料 に お い て も 第II段 階 歪 時 効 は


Table 5. Torsion values of drawn wires.
70%程 度 進 行 し て し ま う こ と に な る.こ れ とほ ぼ 同等 の

条 件 下 で 実 測 し た ダ イ ス 直 後 の 鋼 線 温 度 は230℃ 程度

で あ り16),計 算値 と 比 較 的 よ く一 致 す る.

次 に,ド ロ ー ベ ン チ で 線 径3.18mmか ら2.79mmま

で1m/minの 速 度 で 伸 線 した と き の ダ イ ス 出 口 で の 鋼

線 温 度 を 推 定 す る.LUEGら12)の 実 験 に よ れ ば,ダ イス

中 で の 鋼 線 表 面 温 度 は 伸 線 速 度 の1/3乗 に 比 例 す る.今

摩 擦 熱(の 一 部)だ け が ダ イ ス を 通 して 鋼 線 外 に 逃 げ る

とす れ ば,mが 伸 線 速 度 の1/3乗 に 比 例 す る と考 え て

よ い.上 の20m/minの 速 度 でm=0.8と し た の で,

こ こで はm=0.8/201/3=0.295と お け る.

20m/minの 場 合 と 同 様 に し て(3)式 を 用 い てTを

求 め る と,A-Vac試 料 で は169℃,A試 料 で は166℃

で あ り,第II段 階 歪 時 効 は ほ とん ど 進 行 し な い と思 わ れ

る.実 際 に は,鋼 線 の 内 部 発 熱(変 形 熱)の 一 部 も,速

度 が 遅 く な る と ダ イ ス を 通 して 外 部 に 逃 げ る の で,さ ら

に これ よ り も 線 温 度 は 低 い 可 能 が あ る.

以 上 に 述 べ た よ う に,単 釜 伸 線 機 で20m/minの 速度

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高 炭 素鋼 線 の 引 張 性 質 に お よ ぼ す窒 素 と伸 線 条件 の影 響 429

れなか つた.捻 回 試験 で も,線 径4.73mmか ら2.93mm む し ろ セ メ ン タ イ ト板 の 破 断 し は じめ る 歪 に 支 配 さ れ

まで はA-Vac, A両 試 料 間 で 捻 回 値 に有 意差 は 認め ら る と 思 わ れ る.

れず,破 断 状態 も良 好 で あ つ た.し か し,線 径2.49mm 5) 粗 い パ ー ラ イ トに 特 徴 的 な パ ー ラ イ トの 剪 断 破 壊 は

で はA-Vac試 料 は正 常 な捻 回破 面 を呈 した に もか かわ 本 研 究 に お い て は ほ と ん ど 観 察 さ れ な か つ た.

らずA試 料 は いず れ の 試 験片 も捻 回試 験 中 に縦 割 れ を 発 本 研 究 の 実 験 に 御 協 力 さ れ た(株)神 戸 製 鋼 所,鉄 鋼 生

生 し,最 終 破断 部 は した が つ て,正 常破 面 を呈 しな か つ 産 本 部 条 鋼 開 発 部 の 方 々,特 に 中 村 芳 美,金 田 次 雄,初

た.線 径2.93mmと2.49mmの デ ー タをTable 5に 岡 延 泰,嶋 津 真 一 の 各 氏 お よ び 走 査 電 子 顕 微 鏡 観 察 に 御

示す.筆 者 らに よ る実 験 で は前 オ ー ス テ ナ イ ト結 晶 粒 度 尽 力 さ れ た 同 中 央 研 究 所,近 藤 亘 生 氏 に 深 甚 な る 謝 意 を

の捻回特 性へ の影 響 は強 加 工伸 線 した 試 料 で は ほ とん ど 表 し ま す.

無視 で きる17)ので,2.49mm径A試 料 の 捻 回 中 の縦 割
文 献
れ にはNの 悪 影響 が 作 用 した 可能 性 が あ る.
1) 山 田 凱 朗:鉄 と 鋼,61 (1975) 9, p.2238
2) E. GREULICH: Arch. Eisenhuttenw., 32 (1961)
5. 結 言 p.709
3) 山 田 凱 朗:鉄 と 鋼,60 (1974) 12, p.1624
4) C. ZENER: Fracturing in Metals, ASM, Cleveland
1) フ リーNに よ るパ テ ン テ ィン グ した ま ま の鋼 線 の 延
(1948), p.48
性(破 断絞 り)劣 化 作 用 は,約60%減 面率以下の伸 5) A.N. STROH: Proc. Roy. Soc., London, A 223

(1954), p.404, A 232 (1955), p.548


線を施 され た 鋼 線 に は存 続 す る.し か し この場 合 で も
6) Y. NAKADA and A.S. KEH: Acta Met., 16 (1968)
施 され た 伸線 加 工 度 が大 き くな る と と もにNの 延 性 劣 p.903

化作用 は小 さ くな る. 7) 例 え ば,高 田 寿,金 子 晃 司,井 上 毅,木 下 修

司:鉄 と 鋼,62 (1976) 7, p.866


2) 施 され た伸 線 加 工 が60な い し70%減 面 率以 上 で
8) 例 え ば,V.K. CHANDHOK, A. KASAK, and J.
は,鋼 線 の引 張 性 質 は 鋼 中N量 に ほ とん ど依 存せ ず, P. HIRTH: Trans. ASM, 59 (1966), p.288
9) T.C. LINDLEY, C. OATS, and C.E. RICHARDS:
む しろ伸 線 条件(速 度,1パ ス の減 面 率)に 支 配 され
Acta Met., 18 (1970), p.1127
る.こ れ は,Cに よ る第II段 階 歪 時 効3)の 進 行 程度 が 10) K. TANAKA and S. MATSUOKA: Acta Met., 22

伸線 条件 によつ て変 るた め と考 え られ る. (1974), p.153


11) 例 え ば,井 上 毅,木 下 修 司:鉄 と 鋼,62
3) パテ ン テ ィン グの ま ま の 鋼 お よ び約60%減 面率以
(1976) 7, p.875
下 の比較 的 軽度 の伸 線 を施 され た 鋼 線 の破 壊 は主 と し 12) 例 え ば,W. LUEG and K.H. TREPTOW: Stahl
u. Eisen, 77 (1957), p.859
て初 析 フ ェ ライ トや パ ー ライ トの粒 界(前 オー ス テ ナ
13) G.M. STURGEON and V.H. GUY: JISI, 201
イ ト結 晶粒 界,ノ ジ ュー ル 境 界 な ど と推 察 され る)に (1963), p.437

沿つ てい る.Nが 多 い試 料 で は,引 張 破断 面 直 下 に み 14) 松 下 富 春,野 口 昌 孝:私 信


15) 中 村 芳 美,川 上 平 次 郎,松 下 富 春,野 口 昌 孝:
られ る この よ うな ク ラ ックが 長 く鋭 い 傾 向 に あ る.
昭 和52年 度 塑 性 加 工 春 季 講 演 会 講 演 論 文 集
4) 約60%減 面率 以 上 の伸 線 を施 され た 試料 で は,引 p.185
16) 藤 田 達,山 田 凱 朗,川 上 平 次 郎:神 鋼 技 報,
張破断 部近 傍 に 線 軸 方 向 に伸 びた 細 長 い ボ イ ドが 多 く
23 (1973) No. 3, p.44
観察 され る.こ の よ うな細 長 い ボ イ ドは 延 性 に は ほ と 17) 横 山 忠 正,山 田 凱 朗,木 下 修 司:鉄 と 鋼,62

ん ど悪影 響 を与 えな い と思 われ る.こ の 場 合 の延 性 は (1976) No. 11, S 787

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