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第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:

単一家計タイプのケース


3
.1 は め に

前章では,各家計が都市においてどのように住居選択を行うのかが検討され
た.すべての家計は,市場地代曲線を所与として,他の者のことを考えること
なく最も望ましい立地を求める.当然のこととして問題となる次の点は,すべ
ての家計および土地所有者の決定を考慮した全体的な土地の需給バランスに関
係する.具体的には,各主体の決定の相互間の整合性は保証されるのか,また,
都市の土地市場ではどのような土地利用パターンが生まれるのか, といったこ
とである.
以上の問題は,均衡土地利用および最適土地利用という 2つの概念に結びつ
<.(競争均衡)土地利用という概念は,所与の地代曲線のもとでなされたす
べての個人の決定が相互に整合的である状況,特に,土地の需要と供給があら
ゆる場所で一致している状況のことを言う. しかしながら,都市の土地市場が
均衡しているという事実は,必ずしも現に生じている空間構造が望ましいもの
であることを意味しない. したがって,単一 中心都市の枠組の中で土地の最適
配分を定義し,均衡土地利用と最適土地利用の間の関係を研究することもまた
重要である.
本章では,以上の 2つの概念を検討し始める. ここでは,すべての家計が同
質的であると仮定される単純なケースを扱う . また,以後の分析に有用な境界
地代曲線が導入される.以下では,本章の目的にとって好都合な付け値関数の
代替的表現を導入することから議論を始める.次いで,開放都市であるか閉鎖
都市であるか,また,土地が不在地主により所有されるか都市政府により所有
されるかによって, 4通りの状況のもとでの均衡土地利用が検討される.競争
52 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 5
3

均衡の存在と 一意性の証明の後に,ハーバート=スティーブンスのモデルの枠
組で最適土地利用が検討される.そこではまた,補償均衡の概念が導入される.
我々は,最適配分の数学的条件が補償均衡の市場条件に一致することを示し, ,A
1
最適配分の存在と 一意性を証明する.次に,競争均衡土地利用と最適土地利用
の間の関係を検討し,( a)競争均衡は常に効率的であること(第一厚生定理)お
よび(
b)任意の効率的配分は適当な所得税または補助金を選択することにより競

争市場を通じて達成できること(第二厚生定理)を示す.次に,農業地代,人
ロ,交通費用,家計所得,土地課税, ゾーニング等の外生的パラメーターの変


u
化が均衡土地利用に及ぽす効果を分析する.最後に,住宅市場に関するミュー

s
s(l,u)
スのモデルに戻り,都市における土地利用度もしくは建物の高さの変化につい
図3
.1 付け値 ¢
(I, U) と付け値最大化
て検討する. 敷地規模 s(/
, u)
付け値最大化敷地規模 s
(/,u)が求められる. D 区別する必要がある場合は,
3.
2 予備的考察:付け値関数の代替的表現 "
/J
f(
r,u) と S(r,u) をそれぞれアロンゾの付け値関数,付け値最大化敷地
規模と呼び,¢( I
, u) と s(
I, u) をそれぞれソローの付け値関数,付け値最
(
2 )式は,距離 rおよび効用水準 U の関数として付け値を定義している.
.7 大化敷地規模関数と呼ぶ(表 2
.1を見よ).
所得 Yが固定されている場合, これは便利な表現である. しかしながら,均衡 図形的には,図 3
.1に描かれているように,付け値ゆ (
I, u) は純所得 Iの
土地利用および最適土地利用を検討する場合,各家計の所得は税や補助金のた もとでちょうど無差別曲線 U に接する予算線の傾きによって与えられる. I=
めに変化するかもしれない. したがって,純所得および効用水準の関数として Y-T(r) の場合に図 3
.1の予算線 ABC は図 2
.2の予算線に一致することに
付け値および敷地規模を表すことがより好都合となる.このため,(2
.1)の基 注意されたい. したがって, 2つの図を比較すれば,明らかに
本モデルを思い出し,図 2
.2に戻ろう.この図は,付け値り (
r,u) を基本的 "
/J
f(
r, u)=<J;(Y-T(r), u) (
3.3
)
に決定するものが純所得 Y-T(r) と効用水準 U であることを示唆している. S
(r, u)=s(Y-T(r), u) (
3.4
)
なぜなら,距離 rは純所得の変化を通じて間接的に付け値に影響を与えるだけ が成立している.すなわち,距離 rにおけるアロンゾの付け値は純所得 Y
だからである. このことから,純所得 Iおよび効用水準 U の関数として付け値 -T(r)のもとでのソローの付け値に等しく,距離 rにおけるアロンゾの付け
を定義する関数 ¢(I, U)を導入することが理論的に好都合である.それには, 値最大化敷地規模は純所得 Y-T(r) のもとでのソローの付け値最大化敷地
(
2.)または (
7 2.)の Y-T(r)を Iで置ぎ換えればよく,我々は,
8 規模に等しい.
1-z 次に, Y-T(r)=I と置けば,(2
.19
),(
2.2
5),(
3.3
)および( 3
.4)から以
ゆ(
I ~~x{~I
, u)=max{ U(z,s)=u} (
3.1
)
下の恒等式を得る.
または
s(
I, u)= s(
c
J
;(,u
I )
,I)三: 5(ゆ(/, u
), u) (
3.5
)
1-Z(s, u)

(1, u)
1=max (
3.2
) 同様に, Y-T(r)=I と置けば,(2
.20
),(
2.2
6)および (
3.3
)から以下の恒
s
等式を得る.
を得る.(3
.1)または (
3.2
)を解けば,純所得 Iおよび効用水準 U の関数として
u=V(
ゆ(I
,u,I
) ) (
3.6)
54 第 3章 均衡土地利用 と最適土地利用: 単一家計タイプのケ ース 5
5

l=E(
ゆ(I
, u),u) (
3.7) 地利用にとって不可欠なものは競争的土地市場 である.土地市場が経済学的意
(
3.6
)式 は, ソローの付け値¢が間接効用関数の地代 Rに関する逆関数である 味において競争的である 場合,すべての市場参加者は, 家計も土地所有者も 等
3
ことを意味している. (.7)からゆ はまた支出関数の Rに関する逆関数になる . しく,都市全体にわたる地代に関して完全な情報を有する . さらに,いかなる
性質 2.
1の場合のように,仮定2.
1および2
.3のもとで以下のようなソローの 市場参加者またはそのグループも独占力を行使できない. このことは,だれも
関数の特性が得られる. が都市内の地代を所与として見るということを意味する.以上の理想的な条件
のもとでは,均衡土地利用はあらゆる地点で土地市場がクリアーし,家計も土
性質 3.
1 地所有者もそれまでの決定を取り消そうとしない状況を描写する.都市を取り
(
i) 付け値ゆ (
I,u) は
, Iに関して連続的に増加し, U に関して(¢ 巻く条件は時間を通じて 変化しないものと仮定されるから, この均衡は永続し
が 0になるまで)連続的に減少する . うるものであり, したが って定常的均衡 と考えられる .
(
i
i) 付け値最大化敷地規模 s(
I,u) は
, Iに関して連続的に減少し, 文献上では,伝統的に市場モデルは閉鎖都市モデル (
clo
sed-
cit
ymode
l)と
U に関して (sが無限大 になるまで)連続的に増加する . 開放都市モデル (
ope
n-c
itymodel
)に分けられている .閉鎖都市モデルでは,
都市の人口は外生的に与えられる.開放都市モデルでは,家計が無費用で都市
すなわち,( 3
.2)に包絡線定理を適用して (
2.4
)を使えば, の境界を越えて移動できるものと仮定されるので,居住者の効用は当該都市の
砂 =1
-
OI s
, 五し
>0 = 一上
OU s OU
く0 o
z 外で外生的に決定される効用水準に等しくなる . この場合,都市の人口は内生
的に決定される .本章 では両方のモデルが展開されるが,閉鎖都市モデルのほ
を得 る. したがって,恒等式 (
3.5)を使って
うが理論的見地からは重要であるため, このモデルが強調される .閉鎖都市モ
立= 05 砂 <O
8I OR OI
, 4=~
o
uo R五
u>O
o デルは,先進国の大都市 または平均的都市を分析するための有用な概念装置で
ある .他方,開放都市モデルは,農村地域に余剰労働力を有する発展途上国の
を得る. 2) また,性質 2
.1, 2.
2お よび2
.4ならびにルー ル2.
1は 関 数 叩 (
r, u)
および S(r,u)が cp(Y-T(r),u)および s(Y-T(r),u)に置き換えら 都市の状況をよりよく描写する .後者の場合,農村地域の生活が発展途上国経
済の基礎的な効用水準を確定することが多い.
れても成立することに注意されたい. このため,我々は表記上の修正をして自
いずれのモデルでも,土地所有の形態が特定されなければならない. よくな
由にこれらの結果を利用する.
される 2つの特定化は,土地が不在地主により所有される 不在地主所有モデル
恒等式 (
3.3)および (
3.4)の お か げ で , ア ロ ン ゾ の 関 数 り お よ び Sを使うか,
(
abs
ent
eeo
wne
rsh
ipmodel
) と,土地からの収入が都市住民の問で等しく分
それとも ソロ ー の 関 数 ¢ お よ び S を使うかは便宜上の問題 である. 3.3-3.5
配される 公的所有モデル (
pub
lico
wne
rsh
ipmodel
)である.本節では順次 4
節では,そこでの目的が異なるモデルの比較であるため, ソローの関数のほう
つのケースを検討する .前に述べたように,経済のすべての家計は同質的であ
が好都合となる . しかしなが ら, 3.
6-3.7
節では,表記上の簡潔さからアロン
ると仮定される . L(r)で土地の分布を表す (
すなわち,距離 rと r+dr の
ゾの関数が用いられる.
間で住宅に利用できる土地面積は L(r)dr に等 しい) ことにし,以下のよう
に仮定する.
3.3 均 衡 土 地 利 用

均衡土地利用は,変化の傾向のない都市システムの状態を描写する .均衡土
仮定 3.
1 L(r)はすべての rこ0において連続であり,また各 r>Oにお
いて正である.
56 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケ ース 5
7

R(r)=<
/i(
Y-T(r
), u*) (n(r)>Oのとき) 3.
( 9
)
微積分が使用される場合は常に, L(r) が rに関して連続微分可能であると R(r) ~</i( Y - T(r), u*) (すべての rに対して ) 3.
( 1
0)
仮定される.さらに,家計によって占有されない土地は,一定の地代 RAを生 恒等式 (
3.6)から u*=V(</i(Y-T(r), u
*), Y-T(r)) が成立する.した
む農業に使用されるものとする.フォン ・チューネンのモデルでは, RA は農 がって,条件 (
3.)により,均衡効用水準 u*は R(r)が <
9 /i(Y-T(r),u*)
薬の付け値 を表す. 3) に 等 し い 場 合 に 実 現 さ れ る こ と が 保 証 さ れ る . 性 質2
.4から, R(r)こゆ (Y
-T(r), u*)f
ま V(R(r), Y-T(r))
, さ V(</i(Y-T(r),u
*), Y-T(r))
ケース 1:不在地主所有のもとでの閉鎖都市モデル (
CCAモデル) =u*を意味する.ゆえに,条件 (
3.1
0)は,市場地代曲線 R(r)のもとでは家
N人の同質的な家計が都市に存在する.家計は (
2.1
)の基本モデルに従って 計がどこに立地しても u* より高い効用を得ることができないことを意味して
行動し,また家計の所得 Yは外生的に与えられていると仮定される . さらに, いる . 同様に,農業の均衡は,
仮定 2.1-2.3も成立するものとする.すると,付け値関数 cjJ(Y-T(r),u) R(r)=RA (農業地域で) 3.
( 1
1)
および付け値最大化敷地規模関数 s
(Y-T(r),u) は,前述のよ うに導 出さ R(r) ~ RA (すべ ての rに対して ) 3.
( 1
2)
・れ
, これらは性質 2
.1,2
.2および2
.4にまとめられているような特徴がある . を要求する .条件 (
3.1
1)は, rにおいて農業がゼロの利潤(すなわち正常利
均衡土地利用の条件を記述するため,まず次のことに注意する.すべての家 潤) を得ることを保証している.また,条件 (
3.1
2)は,いかなる地点において
計が同質的で あると仮定されているから,均衡で はす ぺての家計が立地点 に関 も農業の利潤は正にならないことを保証している .均衡においては,地代が正
係なく同 一の最 高効用水準を達成しなければならない.さもなければ,より高 となる地域内に遊休地は存在しない. 5) したが って,すべての土地は住宅ま
い効用を得ている家計の住居選択を模倣することによって効用水準を高めるこ たは農業に利用されねばならないので,(3.9)-(3.12)より各 rにおいて
とのできる家計がいるはずである . したがって,新たな決定を行おうとする イ R(r)=m
ax{
</i
(Y-T(r), u*),RA
} (
3.1
3)
ンセンティプが存在するため,そのような状況は均衡とはなりえない. が成立する.すなわち,各地点におい て市場地代は,均衡付け値と農業地代で
均衡において達成される共通の最大効用を 均衡効用水準と呼び, u* で表す その大 きい方 に一致する .図 3
.2からわかるように,幾何学的にこのことは,
ことにする . また, R(r)を均衡において成立する市場地代曲線としよう .す 市場地代曲線は均衡付け値曲線と農業地代線の 上位 包絡線 (もしくは上包,
R ,
ると,前章で定義された間接効用関数を用いれば, u*および R(r)は以下の
関係式を満たす.
u*.
=maxV(R(r), Y-T(r)) (
3.8
)
T

すなわち,均衡効用水準 u*は,市場地代曲線 R(r)のもとで都市内で達成で


きる最大効用である .次に, n(r) で均衡における 家計の分布(す なわち,距
離 rと r+dr の問に住む家計の数は n(r)dr に等しい)を表そう .4) ある



R(r)=R
rにおいて n(r)>O となれ ば
, このこ とは最適立地点として距離 rを実際に RA A

選択する家計 がいることを意味している .すると,個人の 立地均衡の条件 (


r
0 +— 住宅 一-r , +-
ー 農業 →
ール 2
.1) により ,市場地代曲線 R(
r) と均衡付け値曲線 tf;(Y-T(r),u*) f
図3
.2 均衡土地利用バク ーン
の間に以下の関係が成立することが要求される.
5
8 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 59

u
ppe
ren
vel
ope
) となる, ということを意味する.均衡付け値曲線 <
J;(
Y- p(r) で家計密度(すなわち,単位面積当りの家計の数)を表すことにすると,
T(r), u*)は rに関して減少しているから, (
3.1
6)より
<J;
(Y-T(r), u
*), r
:5:
ri n(r) (1/s(Y-T(r), u*
,) だ巧
R(r)={
RA, rこ r
f
(
3.1
4) p(r)=


L(r) 0, r>rf (
3.1
9)
と表すことができる.ただし, r
1 は都市境界距離である.図 3
.2において, r
1 となる.性質 2
.1より,敷地規模曲線 s(Y-T(r),u*) は rに関して増加し
の左側の土地は住宅に利用され, r
1ーの右側の土地は農業に利用される.換言 ている. したがって,家計密度曲線は都市境界に至るまで rに関して減少して
すれば,均衡においては,各地点は最高の(均衡)付け値を与える活動によっ し
ヽる.
て利用される. さて,均衡解の存在,およびその一意性は,境界地代曲線 (
bou
nda
ryr
ent
各距離 r<r1において,各家計の均衡敷地規模 s(r)は付け値最大化敷地規 c
urv
e) の概念を用いて示すことができる. uの各値のもとで方程式
模 s(Y-T(r),u*)に一致するので, r
:5
:乃に対して b
¥ L(r)
s(r)=s(Y-T(r), u*) (
3.1
5) os(Y-T(r),u)dr=N (
3.2
0)

を bについて解けば,住居地域の外側境界関数 b(u)が求められる. uの値が


が成立する.また,いかなる r<rf においても遊休地が存在しないことから,
与えられるごとに, b(u) は図 3.
3の点 Aのように対応する付け値曲線の上に
n(r)s(Y-T(r), u*)=L(r)
点を印す. uを変化させてやることにより,図 3.
3に描かれたように,境界地
が成立する.この等式は,乃において成立する必要はない(すなわち, r
fVこ
代曲線と呼ばれる曲線 R(r)が得られる. r=b(u)の逆関数を U-=U(r) と
おいては一部の土地が農業に利用されてもよい)が,数学的便宜上この等式が
すれば,境界地代曲線は
r
fにおいても成立するものとする. したがって,均衡家計分布は,
L(r
)/s(Y-T(
r),u
*), r:
5
:rr R(r)=
ゆ (Y-T(r), U(r)) (
3.2
1)
n(r)={ (
3.1
6) により定義される.定義により, R(r)は,均衡において N家計すべてがちょ
0
, r>r1
によって与えられる.都市にはN家計が住むことから,人口制約は うど距離 r以内に居住する場合の当該距離 rにおける仮説的な市場地代を表す.
曲線 R(r)が求められたとすれば,図 3
.3に描かれたように,均衡における住
¥
n L(r) dr=N (
3.1
7)
os(Y-T(r), u*) 宅地域の境界,すなわち都市境界 r
fiま,曲線尺( r
)が農業地代線と交わる点
のように表される. によって与えられる.つまり,都市境界は
要約すれば, R(r), n
(r)
,s(
r), u* お よ び 乃 が CCA モデルの均衡土 R
(r1
)=RA (
3.2
2)
地利用を表すための必要十分条件は,(3.14)-(3.17)が満たされることであ となる乃である. r
fが確定すれば,均衡効用水準 u*は以下の関係式から求

. 6)真に未知数となるのは,均衡効用水準 u* と都市境界距離 r
fである. められる.
これらは,(3
.17
)と (
(3.
14)から得られる)以下の境界条件により決定できる. ゆ(Y-T(rr),u*)=RA (
3.2
3)
cp(Y-T(rr), u*)=RA (
3.1
8) すなわち, u*は,境界地代曲線 R(r) と農業地代線の交点を通過する付け値
均衡付け値曲線ゆ (Y-T(r),u*)は rに関して減少しているので,( 3
.14
) 曲線に対応する効用水準である.議論の構成から, この交点に対応する値の組
より市場地代曲線 R(r) は必ず都市境界に至るまで rに関して減少している. (
rf
, u*)は,条件 (
3.1
7)および (
3.1
8)を同時に満たしている.仮定2
.1-
:-2
.3お
また,性質 2
.2より,交通費用関数 T(r)が rに関して線形または凹であるな よび3
.1のもとでは,境界地代曲線 R(r) は rに関して連続的に減少し, rが
らば,市場地代曲線は都市境界に至るまで厳密に凸となる,と結論できる. ある有限の値に近づくとゼロになり, rがゼロに近づくと無限大になることが
60 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 6
I

のように仮定しよう.ただし, a
, 0および入は定数で, a
, 0>0である(例

^R
R

r



J
えば, 0=2冗 l
, -
,=lならば L(r)=2冗r となって,円形都市を意味する).
(
3.2
5)より,乃= Y/a となるので,(3. 2
4)から
e —u•tP=2 (
,-
l+1
)(,
-
l+2
)aHIN/(0ym)
を得る. したがって,( 2
.13
)および (
2.1
4)から, r
::;
;rr
=Y/
aに対して
(
,
-l+1
)(,
-
l+2)aH1 (Y-ar)
2
R(r)=1
.J
f(
r, u*)= 20 yH2 N
(
3.2
6)
•.• 0 yH2 1
s(r)=S(r, u*)=
、r

(+ 1)
入 (い+ 2)a
A+ly-arN
b

1jJ(Y-T(r),u)

を得る.

r
b(u) rf
ケース 2:不在地主所有のもとでの開放都市モデル COCAモデル)
図3
.3 境界地代曲線 R(r) と均衡土地利用
都 市 に 居 住 す る こ と に な る 各 家 計 は 一 定 の 所 得 Yを 稼 得 し , 基 本 モ デ ル
比較的容易に示される. 7) したがって,図 3
.3に示されているように,以下の
(
2.1)に 従 っ て 行 動 す る も の と 仮 定 し よ う 刃 す る と , 均 衡 は 非 常 に 簡 単 に 求
ように結論できる.
められる.所得 Yが与えられた場合,
ゆ(Y-T(O), u(Y))=RA (
3.2
7)
命題 .1 任意の所得 Y>T(O)および人口 N>Oのもとで, CCAモデ
3
を満たす u(Y)を 上 限 効 用 水 準 と 呼 ぶ 方 程 式 (
3.2
7)が 元 (Y)に関して有限
ルに唯一の均衡が存在する.
の解をもたない場合(すなわち, Y~T(O) の場合)は, g ( Y) = - OO と定

義する .すると,全 国的な効用水準が定数 U によって与えられるならば,都市


ケース 1に関する議論の締めくくりとして当該ケースの具体例を示しておく
境界距離 r
fは以下の関係式から決定される.

, この例からうかがい知れることは,方程式 (
3.1
7)および (
3.1
8)は非常に特
り(
y,
--
-T(Yf)'u)=RA (uく u(Y)のとき) 3
(.2
8)
殊な場合にのみ明示的に解けるということである.我々は,退屈な計算を行う
ri=O (u~u(Y) のとき) 3
(.2
9)
ことなく均衡解の本質的特性を研究するために境界地代曲線を用いる方法を開
乃が求まれば,均衡地代曲線は
発したのである.
p
r(Y-T(
r),u
), r~ r
f
R(r)={ (
3.3
0)
例 3
.1 例 2
.1の対数線形効用関数が与えられた場合,方程式 (
3.1
7)および RA
, rこ r
f
(
3.1
8)は以下のようになる. のように,均衡敷地規模は
s(
r)=s(Y-T(
r),u
), r:
:r
c
:
; 1 (
3.3
1)
『曰 (Y-T(r))alPe ― u•iP L(r)dr=N (
3.2
4)

砂 ば (Y-T
(r1
))1
1Pe —u•Jp=RA (
3.2
5)
のように,そして均衡家計分布は,
L(r
)/s(Y-T(
r),u
), r:
c
::r
; 1
n(r)={ (
3.3
2)
特殊ケースとして, 0
, r>rf
応 =0
, T(r)=ar, a=/3=+, L(r)=0r入 のように求められる.最後に,均衡人口 N*は

62 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用 :単一家計タイプのケー ス 63

L(r)/
s(Y0+TD
R*/N-T(r), u*), r豆
N*=\
n L(r) dr (
3.3
3) n(r)={ (3
.38
)
os(Y-T(r), u) 0
, r>rr
のように求められる . ~:' L(r)Is (Y0+TDR* / N-T(r), u*)dr=N (
3.3
9)
任意の所得 Yが与えられると,(3
.2)式は上限効用水準 i
7 i(y) を一意的に
TDR* は未知だから,均衡の存在およびその 一意性を検討するために境界地
決定し,次いで (
3.2
8)および (
3.2
9)が r
f を一意的に決定する.したがって,
代曲線を用 いた方法を適用することはできな い しかしながら,最適土地利用
以下のように結論できる .
の存在およびその一意性を利用して ,以下の命題が 3.
5節で証明される.

命題 2 任意に与えられた家計所得 Y>O および全国的効用水準 U のも


3.
命題 3 任意に与えられた非土地所得 Y
3. 0>T(O)および人口 N>Oに対
とで, OCAモデルに唯一 の均衡が存在する.均衡における都市の人口
, CCPモデルに唯一 の均衡が存在する .
して
が正になるための必要十分条件は, U<u(Y)である.

ケース 4 :公的所有のもとでの開放都市モデル (
OCPモデル)
ケース 3 :公的所有のもとでの閉鎖都市モデル (CCPモデル)
ケース 3の場合と同じく,各家計は非土地所得 yoプラス地代の分配 TDR/
都市住民は都市政府を形成し,都市政府が農地所有者から農業地代 RAで都
N を受け取る.家計の住居選択行動は,前と同様に (
3.3
5)で表される. しか
市用地を借りるものと仮定される . その上で,都市政府は,当該用地を各地点
しながら , ここでは TDRとNがともに未知である .他方,住民の効用は全国
において競争的に決定される地代 R(r)で都市住民に貸し与えるものとする .
的効用水準 U に固定されている . したがって ,方程式 (
3.36)-(3.3
9)のNおよ
都市の 総差額地代 (
tot
aldi
ffe
ren
tia
lre
nt,TDR)を
び u*にそれぞれ N*, uを代入することによって, OCPモデルの均衡条件を

TDR= (R(r)-RりL(
r)dr (
3.3
4) 以下のように得る .

で定義しよう.同質的な N家計が都市に存在するとすれば,各家計の所得は非 ゆ(Y0+TDR*/


N*-T(r),u
), r幻 r
r
R(
r)={ (
3.4
0)
土地所得 yoに総差額地代の分配 TDR/Nを加えたものになる . したがって, RA
, r~rr
各家計の住居選択行動は以下のように定式化される. s(r)=s(Y0+TDR*/N*-T(
r),u
), r幻 r
e(3.
41)

咆さ U(z,s
), s
.t
..z+R(r)s=Y0+(TDR/N)-T(
r) L(r)/s(Y0+TDR*/N*-T(r), ~), r豆
n(r)={ (
3.4
2)
0
, r>rr
(
3.3
5)
L(r)
TDR の均衡値は未知だから,その均衡値を TDR* で表そう.すると, CCA N*= ~o s(Y0+TDR*/ dr (
3.4
3)
N*-T(r), u)
モデルの均衡条件(
3.14)-(
3.7)の Y-T(r) の 部 分 に Y0+(TDR*/
1 N)
以下の命題が5
.4節で証明される .
-T(r)を代入することによって, CCPモデルの均衡条件は以下のように求
められる .

命題 3.
4 任意に与えられた非土地所得 y
o>oおよび全国的効用水準 U の
ゆ(Y0+TDR*/
N-T(r),u
*), r<r
f もとで, OCP モデルに唯一の均衡が存在する .均衡における都市の人
R(r)={ (
3.3
6)
RA
, r:
:r
2 1 ロが正になるための必要十分条件は, u<i
i(Y
0)である .
s(r)=s(Y0+TDR*/N-T(r), u
*), r
:s
;;
r1 (
3.3
7)
64 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計 タ
イ プのケー ス 65

CCA(Y,N)
u = u*
OCA(Y,u)
(
i
ii
) TDR*が CCA(Y,N)モデル [
OCA(Y,u)モデ ル
] の解におけ
N = N* る総差額地代ならば, CCA(Y,N) モデル [
OCA(Y,u) モデ ル

y゜=Y- 宇 llY=Y•平 =
y゜Y-宇 llY=Y° 平 の解は CCP(Y-TDR*
デル]の解である.
/N,N)モデル [OCP(Y-TDR*/
N,u)モ

u = u*
CCP(Y',N) - OCP(Y',u) (
i
v) 逆に, TDR*が CCP(Y0,N) モデル [OCP(Y0,u) モデル]の
N = N*
解における総差額地代ならば, CCP(Y0,N) モデル [OCP(Y0,u)
図 3.
4 4つのタイプのモデ ルの間の関係
モデル]の解は, CCA(Y0+TDR*/
N,N) モ デ ル [OCA(Y0+
これまで 4つのクイプの均衡モデルが導入されたが, これらのモデルから導 TDR*/N, u)モデル]の解である .
かれる土地利用パター ンはすべて本質的に同じものであることが比較的容易に
わかる . この 点を正確に述べるために,以下のように各モデルを表記すること 4つのクイプのモデルの間の以上の関係は図 3
.4に要約されている.例えば,
にしよう . CCA(Y,N)から OCA(Y,u) [CCP(Y0,N)から OCP(Y0,u
)] への矢
CCA(Y,N):家計所得 Yおよび人口 Nのもとでの CCAモデル (ただし, 印は,命題 3.
5の(
i)を説明している .図 3
.4の各矢印があるクイプのモデルか
Y>T(O), N>Oとする) ら他のモデル ヘの写像を表 していると考えてみよう.例えば,図 3
.4の中央上
CCP(Y0,N):非土地所得 yoおよび人口 Nのもとでの CCPモデル (た 部の u=u* と印された矢印は, CCA モデルから OCA モデルヘの写像を表
だし, Y0>T(O), N>Oとする ) し,この場合, u* が CCA(Y,N) モデルの均衡効用水準ならば OCA(Y,
OCA(Y, u):家計所得 Yおよび全国的効用水準 U のもとでの OCAモデ u*)モデルが 当該 CCA(Y,N)モデルに対応するわけである.ただし, この
ル (
ただし, , -OOく u<OO とする )
Y>0 写像の定義域は, (
{Y,N)I
Y>T(O),N>O
}であり,値域は {
(Y,u
)IY>
OCP(Y0, u):非土地所得 yoおよび全国的効用水準 U のもとでの OCP T(O), u<ii(Y)}である.命題3.1-3.4により,各写像は適切に定義され,
モデル(ただし, Y0>0
, - 0 0く u<o
o とする) 全単射,すなわちモデル間の 1対 1対応となる . このことは,特に以下の命題
すると,モデルを 2つずつペアーにしてそれらの均衡条件を比較することによ としてまとめられる .
り,容易に以下の結論を得る(図 3.
4を見よ) .
命題 3
.6 パラメークー Y
, Y
0, N および uが Y>T(
0), Y0>T(
0),
命題 3
.5 パ ラメーター Y
, Y
0, N および U が
, Y>T(O), Y0>T(O), N>O
, u<u(Y)および u<u(Y0)を満たす場合,あるタイプのどん
N>O, uく u(Y),および Uく u(Y0)を満たす場合, 9) 以下のように なモデルの解も別の適当なモデルの解として求められる. したがって,
結論できる. 4つのタイプのモデルは,同一 の解集合を有する.
(
i) u*が CCA(Y,N)モデル [CCP(
Y0,N)モデル]の均衡効用水
準ならば, CCA(Y,N) モ デ ル [
CCP(Y0,N) モ デ ル ] の 解 は 4 最適土地利用
3.
OCA(Y, u*)モデル [
OCP(Y0,u*)モデル]の解である .1
0)
`
(i
i) 逆に, N*が OCA(
Y, u)モデル [OCP(Y0,u)モデル]の均衡 最適土地利用の正確な意味は, もちろん目的関数がどのように特定されるの
人口ならば, OCA(Y,u) モデル [OCP(Y0,u) モ デ ル ] の 解 は かに依存する.空間の問題が明示的に考慮されない経済学では,各家計の効用
CCA(Y,N*)モデル [CCP(Y0,N*)モデル]の解である . の総和 (同質的家計の 場合はウェイトのつかない単純和) で定義されるベンサ
66 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケ ース 67

ム流社会的厚生関数を最大化することが普通である. しかし, これには土地利 を満たさなければならないことを意味する. ここで, Z(


s,i
i)は
, ii=U(z,
用の問題には最も都合のよいやり方ではない.なぜなら,ベンサム流社会的厚 s
) の Z に関する解である. したがって,各配分のもとでの総贄用 Cは,以下
生関数の最大化は,同質的な家計に対しても立地点に応じて異なる効用水準を のように計算される.
割り当てることになるからである. この結果はミルリーズの不平等または等し C=交通費用 十合成財費用 +土地の機会費用
き者の等しからざる扱いと呼ばれており,空間の導入がもたらす非凸性により
=
\。:
'[T(r)+Z(
s(r
), ii)+RAs(r)]n(r)dr (
3.4
5)
生じる独特な現象である.い競争市場は等しき者はすべて等しく扱うので,
また,各配分は,以下の土地制約および人口制約も満たさなければならない.
明らかに,ベンサム流社会的厚生関数の最大化は土地市場の効率性を検討する
s(r)n(r):
S
:L(r) (
各 r
:S
::
rrにおいて) 3
(.4
6)
最も相応しい方法ではない.土地利用の理論にとってより好都合な最適化問題
の定式化は,いわゆるハーバート =スティーブンスのモデル (HS モデル)で ~:' n (
r)dr=N (
3.4
7)
ある. このモデルでは,すべての家計タイプについて指定された目標効用水準 ゜
問題は,土地制約および人口制約のもとで総費用 Cを最小にする配分 (
n(r
),
を実現しながら余剰が最大化される.また, このモデルは,その解が常に効率 s
(r)
,rr
) を求めることである. 1
3) これは
的となり, しかもあらゆる効率的な配分が目標効用水準を変化させるだけで求 rf
mln C=\ [T(r)+Z(s(r), i
i)+RAs(r)]n(r)dr
められるように構成されている. r,
,n(r),s(r).JO

本節では, HS モデルが同質的な N家計が存在する閉鎖都市を対象にして考 (


3.4
8)
察される. 2) 前と同様に,各家計の効用関数は
1 U(z,s
) で,交通費用関数は s
.t. (
3.4
6)および (
3.4
7)
T(r) で,また土地の分布は L(r) で与えられるものとする.家計によって のように簡潔に表現される.

利用されない土地は農業に利用され,土地 1単位当り RAの純収入(すなわち 上記の問題は,余剰の概念を用いて表現すれば,以後の分析により好都合と

地代)を生んでいるものとする.関数 U(z,s
), T(r) および L(r) ならび なる.都市の 1人当り所得が yoで与えられるならば,都市の総所得は NY0

に定数 RAV
,ま 3
.3節の均衡モデルのものと同じとする. したがって , ここで である. ここで, yo は住宅に関する土地利用パターンから独立に決定される
は仮定2.1-2.3および3
.1も成立している.効用関数 U(z,s
)は序数的だから, 定数と仮定される. N=~:'n (
r)drであることに注意すれば,配分 (
n(r
),
一般性を失うことなく,その値域は 一00 から 00である,すなわち
s(
r),r
りから得られる余剰 (
sur
plu
s)グは, ゜
i
nf{
U(z
,s)l
z>O, s>O}=-o
o,
(
3.4
4) グ= NY0-C
sup{U(z,s)lz>O, s>O}=oo
と仮定できる.さらに, n(r) で距離 rにおける家計の数,( z
(r)
,s(r))で -。¥:'[Y0-T(r)-Z(s(r), ii)-RAs(r)]n(r)dr (
3.4
9)

距離 rにおける各家計の消費の組, r
fで都市境界距離を表すことにする. により定義される. NY0 は一定と仮定されているから, Cの最小化はグの最
さて,ある目標効用水準 u が選ばれて,すべての家計は,どこに立地し 大化と同等である.そこで,ハーバート=スティーブンスのモデル HS(Y0,
ようとも, この目標効用水準を達成すべきものとする.このことは,各配分 i
i
,N)は,以下のように表現される. 1
4)

(
n(r
),z
(r)
, s(r):Osrsr
r)が
国,芦け)グ=\。:
'[Y
0-T(r)-Z(s(r), ii)-RAs(r)]n(r)dr
U(z(r),s(r))=u (n(r)>Oのとき)
(
3.5
0)
または,同等の条件として
s.
t.(
3.4
6)および (
3.4
7)
z(r)=Z(s(r),i
i) (n(r)>Oのとき)
68 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイ プのケース 69

グが対象としている都市の外部にとっての便益(負の場合は費用)を表すと考 (
i
i) s(Y0-G-T(r), u) は
, r
, G および U に関して (sが無限大
えれば,明らかに,いかなる HS モデルの解も効率的であり,また,等効用 になるまで)連続的に増加する.
制約のもとでの任意の効率的配分は適 当 なパラメーターのもとでの HS モデ
ルの解となる. 1
5) さて, R(r), n
(r)
,s(
r), 乃および G*で目標効用水準 u が実現される
次になすべきは, HS モデルの解の数学的条件を求めることである. このた 補償均衡を表すものとする. 1
6)すると,距離 rに家計が住む (
n(r)>O とな
めと,さらには次節において最適土地利用と均衡土地利用の間の関係を調べる る)場合には当該距離 rにおいて達成可能な最大効用が目標効用水準五にち
ためには, ここで補償均衡と呼ばれる市場均衡の新しい概念を導入すると都合 ょうど等しく, しかも家計の最大効用がいかなる場所においても目標効用水準
よい. 3
.3節(ケース 1) の CCA(Y,N) モデルを思い出そう.そのモデル 五を超えないように所得税 G*が決定されねばならない.すなわち,
では,各家計の所得は定数 Yに固定されており,各家計は効用を最大化するよ 五= V(R(r), Y0-G*-T(r)) (n(r)>Oのとき )

うに立地点および消費の組を選択する.あらゆる地点で土地の需給がバランス u2V(R(r), Y0-G*-T(r)) (すべての rに対して)



, しかもすべての家計が (内生的に決定される)同 一 の最高効用水準を達成 が成立しなければならない. したがって,(3
.9)および (
3.1
0)と同様に,
する場合に均衡に達する. このような均衡は,(普通の)競争均衡と呼ばれる. R(r)=</J(Y0-G*-T(r), i
i) (n(r)>Oのとき)
これに対し,補償均衡では,次のような問題を考える.政府が N家計すべてに R(r)2</J(Y0-G*-T(r), i
i) (すべての rに対して)
ついてある特定された目標効用水準五を競争的土地市場を通じて実現しよう が成立する. もちろん,(3
.11
)および (
3.1
2)の関係も同様に満たされなければ
としていると仮定しよう.すべての家計は同一 の課税前所得 yoを得ているが, ならないまた,付け値ゆ (Y0-G*-T(r), i
i) が rに関して減少すること
政府は自由に(定額)所得税 Gを各家計に課すことができるものとする.所得 も従前の通りである.それゆえ,(3
.14
)と同様な関係
税 Gが与えられた場合,各家計の住居選択行動は <
jJ(
Y0-G*-T(r), i
i), パ r
f
R(r)={ (
3.5
2)
maxU(z, s
), s
.t. z+R(r)s=Y0-G-T(r) (
3.5
1) R
A, r2r1
r
,z,
s
を得る.図 3
.5は,この関係を示している.定義により,均衡敷地規模 s(
r)
のように表される.問題は,いかなる所得税 G (G<O なら所得補助)が均衡
は,土地に対するマーシャルの需要 s(R(r), Y0-G*-T(r))に等しい.
効用水準をちょうど目標効用水準五に等しくさせるか,である.
したがって,( 3
.52
)の関係および恒等式 (
3.5)より,
上記の問題に答えるために, 3
.2節で導入されたソローの付け値関数 ¢
(I,
s(r)=s(Y0-G*-T(r), i
i)
, r
:S:
r1 (
3.5
3)
u)および付け値最大化敷地規模関数 s
(/,u)を使う.距離 rにおける純所得
となる.前と同様,都市境界の内側には農地が残らないため, n(r)s(r)
は所得税がある場合には Y0-G-T(r) となるから,距離 rにおける付け値
および付け値最大化敷地規模は,それぞれ少 (Y0-G-T(r), u
), s(Y0-G
L(r) となり,(3
.53
)と併せて
-T(r),u)のように与えられる.すると,性質 3
.1より直ちに以下のように
L(r)/s(Y0-G*-T(r), u), パ r
f
結論できる. n(r)={ (
3.5
4)・
0
, r>r1
を得る.最後に,以下の人口制約が満たされなければならない.
性質 3
.2
(
i) ゆ(Y0-G-T(r), u) は
, r
, G および U に関して(りがゼロに ¥nL(r) =
-:
-dr=N (
3.5
5)
0s(Y0-G*-T(r), i
i)
なるまで)連続的に減少する.
要約すれば, R(r), n
(r)
,s(
r),r
1 および G* が補償均衡を表すための必
70 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 7
I

R
題(
3.5
0)は以下のように書き改められる.
"(Y0-T(r)-Z
(s(
r), u)
m a
n,S x
(r)グ =\。( ~-RA)L(r)dr
s
.t
.
¥nLs((rr))dr=N
o
(人口制約)

まず,人口制約は無視して考えてみよう.すると,明らかに,各距離 r三 r
f
において s
(r)は [Y0-T(r)-Z(s(r), u)]/s(r)を最大にするように選ば



R(r)=R
A
RA れなくてはならない付け値関数(
3.)に即して 言 えば,このことは s
2 (r) が

最適となるための必要十分条件は
rf r
Y0-T(r)-Z(s(r), u)
図3
.5 補償均衡土地利用パクーン(最適土地利用パターン) =ゆ(Y0-T(
r),u
), r:
:r
0
: 1
s(r)
であることを意味している.また,そのことは,付け値最大化敷地規模関数 s
要十分条件は,条件 (
3.5
2)-(
3.5
5)が満たされることである.真に未知数とな
(
I, u)の観点からは,
るのは G* と nの 2つで, これらは (
3.5
2)から導かれる次の境界条件と条件 s(
r)=s(Y0-T(
r),u
), r:
:r
0
: 1
(
3.5
5)により決定される.
となることを意味している.さらに,都市境界距離 r
fi,

rp(Y0-G*-T(rr), u)=RA (
3.5
6)
cp(Y0-T(
乃, u)=RA

さて,最適配分に関する HS モデル (
3.5
0)に戻ろう.このモデルの最適条
となるように選ばれなければならないここで,たまたま『 L(r)/s(Y0-T
件は,最適制御理論の最大原理を適用して求められる.付論 C.2において示さ
れているように,最適配分のための条件は補償均衡土地利用の条件 (3.52)- (
r), u)dr がN に等しくなっていれば,問題の解は得られたことになる.
(
3.5
5)と全く同じになる.すなわち,配分 (
n(r
),s(r),だ)が HS(Y0, u
, もちろん,このようなことは偶然にしか生じないから,『 L(r)Is(YLT(r),
N) モデルの最適解になるための必要十分条件は,条件 (
3.5
2)-(
3.5
5)が満た
_Nキ 0 としよう.すると,ラグランジュ乗数法によれば, .人韮制約が
u)dr_
:
されるような乗数 R(r) および G* が存在することである. このことを(数 ,
ゞ,
、さ
羹否
破られる場合にはなんらかのペナルティ G*が加えられなければな
.,
.
,
.均な い.か
s
;
学的にあまり形式ばらないで)わかりやすく示しておこう.まず,( 3
.49
)で与
くして, s(r)および nは以下に定義されるラグランジュ関数fを最大にする
えられる余剰グを次のように変形する.

バ”[Y0-T(r)-Z(s(r),u―)-R (r)j]n(r)dr

ように選ばれなければならない.
バ”(Y°-T(r)s-(Zr()s(r),i)
-RA)L(r)dr
=

( Y°-T(r)-Z(s(r),i)
-R 小(r)n(r)dr
s(r) -G*(\n L(r)dr-N) ,
o s(r)
(
3.5
7)
CBD に近い土地は CBD から遠い土地よりも住宅地として価値があるので, 。
¥
=”(Y°-G*-T(sr()r-)Z(s(r),i)-RA)L(r)dr+G*N
最適配分では都市境界の内側の土地はすべて住宅に利用されなければならない.
したがって,各距離 r<rfにおいて s
(r)が最適になるための必要十分条件は,
したがって,すべての r<rfに対して s
(r)n(r)=L(r)が成立するので,問
s(r)が関数 [Y0-G*-T(r)-Z(s, u)]/s を最大にすることである. この
72 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 7
3

ことは,付け値関数 (
3.2
)の観点からは, s(r) が最適となるための必要十分

R
R(r)
条件は
Y0-G*-T(r)-Z(s(r), i
i)
=ゆ(Y0-G*-T(r), i
i)
, r:
;
:rr
s(r)
(
3.5
8)
であることを意味している.今度は, このことが
s(r)=s(Y0-G*-T(r), i
i), パ r
f (
3.5
9)
を意味している.最適な r
fiま
,j,(Y0-G-T(r)国

¢(Y0-G*-T
(r1
), u)=RA (
3.6
0)


という条件から決定される.また,家計の分布は,
L(r)/s(Y0-G*-T(r), i
i)
, r<rf b(G) rf r
n(r)={ (
3.6
1)
0
, r>rf 図 3.
6境界地代曲線月 (r)と最適土地利用(補償均衡土地利用)
で与えられる.正確なペナルティ(すなわち,所得税) G*は,人口制約 得税として解釈される.
~:1 ~ d r = N (
3.6
2) 次に, 2つの未知数 G* および乃は,境界地代曲線を用いる方法により決
O s(Y0-G*-T(r), u
-)
定できる.まず, Gの各値のも とで,以下の方程式を bについて解くことによ
を満たすように選ばれなければならない. ここで,影の地代 R(r)を
り外側境界関数 b(G)を得る.
り(Y0-G*-T(r), u), パ r
f
R(r)={
RA
, rこ r
f
(
3.6
3) ¥
b L(r) _ dr=N (
3.6
4)
°s(Y°-G-T(r),u)
で定義すれば,条件 (
3.5
9)-
(3.
63)は(
3.5
2)-
(3.
56)と同じになることに注意 Gの各値に対して, b(G)は,図 3
.6の点 Aのように,対応する付け値曲線
されたい.すなわち, HS(Y0, u
,N) モデルの最適条件は, 目標効用水準 u
ゆ(Y0-G-T(r), u) の上に点を印す. Gを変化させることにより,図 3
.6
のもとでの補償均衡の条件に一致する. このことより,以下の命題を得る.
に描かれたように境界地代曲線月 (
r)が得られる. この境界地代曲線は,
J(•Y:?,,G(
R(r)=<
/ r)-T(
r), u) (
3.6
5)
命題 3
.7 (R(r), n
(r)
,s(
r),r
i, G*)が HS(Y0, i
i
,N)モデルの解と :

¥
により定義される.ただし, G(r)は r=b(G)の逆関数である. R(r)が求
なるための必要十分条件は,それが目標効用水準 i のもとでの補償均 められれば,図 3
.6に描がれているように, nは月(乃)=凡という関係から,
衡になることである.
また G*は ¢(Y0-G*-T(
乃)
, i)=凡という関係から決定される.
仮定 2
.1,2
.2および3
.1に加えて,さらに次の仮定が成立するものとしよ
HS(Y0,u
,N)モデルに関して,(3.52)-(3.56) (または (
3.5
9)-
(3.
63)
) .
う 1
7)
は本来最適配貸のための純粋に数学的な条件を表しているにすぎない. しかし
ながら,今やそれらの条件は,政府が所得税を利用しながら競争的土地市場を
仮定 3
.2 zは完全に S を代替できる.すなわち,各無差別曲線 u=U(z,
通じて目標効用水準五を実現する場合の均衡条件を表している,と解釈でき
.
,s)の上で, zが無限に大きくなるにつれて, S はゼロに近づく.
る.影の地代 R(r) は補償均衡における各 rでの地代として,また G* は所
74 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タ イプのケ ース 7
5

すると,前と同様, R(r)は rに関して連続的に減少し, rがある有限値に である. 3


.3節の場合と同様に, Y0-G>T(O) となる C の各値に対して,
近づくと尺( r) はゼロに近づく.また, rがゼロに近づくと尺 (
r) は無限に CCA(Y0-G,N)モデルは唯一の解を有する. 2
0)
大きくなる. 1
8) したがって,図 3
.6に示されているように,以下の通り結論で 次に, 3
.4節で (R(r), n
(r)
,s(
r) , G*)が HS(Y0, i
,r
r i
,N) モデルの
きる. 解となるための必要十分条件は
¢(Y0-G*-T(r), i
i
), r三 r
f
R(r)={ (
3.7
1)
命題 3
.8 任意に与えられた y
o, uおよび N>Oに対して, HS(Y0, u
, RA
, rこ r
f
N) モデルは唯一の解を有する.したがって,各目標効用水準五のも s(r)=s(Y0-G*-T(r), i
i
), r<rf (
3.7
2)
とで補償均衡が一意的に存在する. L(r)/s(Y0-G*-T(r), i
i
), r三 r
f
n(r)={ (
3.7
3)
0
, r>rf
3
.5 均 衡 と 最 適 ¥
n L(r) _i)dr=N
0s(Y0-G*-T(r), i
(
3.7
4)

本節では, 3
.4節の HSモデルの最適解と 3
.3節の閉鎖都市モデル (CCAモ であったことを思い出そう.各 iの値に対して, HS(Y0, i
i
,N)モデルは唯
デルおよび CCP モデル)の均衡解の間の関係を調べる. 1
9) そのためには, ーの解を有する.
CCA(Y,N) モデルを少し一般化した市場モデルを考察すると都合がよい. 以上のことから,容易に次の命題が成立することがわかる.
基本モデル (
2.)の設定条件を維持したうえで,当初の(課税前)所得を yo
1
で表し, 1家計当りの所得税 C を新たなパラメーターとして導入する. C は 命題 3
.9 (R(r), n
(r)
,s(
r) , G*)が HS(Y0, i
,r
1 i
,N)モデルの解と
政府により決定される固定値である.すると,各家計の住居選択行動は, なるための必要十分条件は, R(r), n
( (r)
,s(
r) ,i
,r
1 i
)が CCA(Y0
m
r
a
,
z,
xU
s
(
z,s
) .t
, s . z+R(r)s= Y0-G-T(r) (
3.6
6) -G
*,N)モデルの解となることである.

のように表される.都市に同質的な N 家計がいると仮定し, CCA(Y0-G,


この命題を理解するために,( R(r),n
(r)
,s(
r),r
1
, G*) が HS(X°,
‘,五
N) で所得税 C が課せられる場合の不在地主所有のもとでの閉鎖都市モデル
を示すことにする.すると,均衡条件 (3.14)-(3.17)の Yに `
yo-cを代入す N) モデルの解となるため、
の必要十分条件は,これが目標効用水準五 、
のもと

・ればわかることだが,( R(r),n
(r)
,s(
r),r
r
, u*)が CCA(Y0-G,N) モ での補償均衡となる(すなわち,政府が所得税 G*を課せば競争的市場が均衡

デルの解となるための必要十分条件は において目標効用水準 i を実現する)ことであったことを思い出そう. この

<f;(Y0-G-T(r), u
*), ことは,(3
.66
)で G=G* と置けばすべての家計が競争均衡において効用水準
r<r
f
R(r)={ (
3.6
7) 五を達成することを意味している.したがって, R(r), n
( (r)
,s(
r), ri,
RA, r>rf
s(r)=s(Y0-G-T(r), u
*), ii) は, 、~CA(Y0-G*, N)モデルの解でなければならない.逆に,( R(r),
r三 r
f (
3.6
8)
L(r)/s(Y0-G-T(r), u
*), r<rf n
(r)
,s(
r),'
r,i
1 i
)を CCA(Y0-G*,N)モデルの解とすれば,( R(r), n
n(r)={ (
3.6
9) (
r),s
(r)
,r1
, G*) は目標効用水準 iのもとでの補償均衡となるので, これ
0
, r>r1
はまた HS(Y0, i
i
,N)モデルの解とならなければならない. 2
¥
n L(r)
0s(Y0-G-T(r), u*)
dr=N (
3.7
0)
命題 3
.9は任意の (
G*,i
i
1)
)に対して成立することに注意されたい. したがっ
て,命題3
.9の (
G*,i
i
)を (G,u*)で置き換えれば,以下の系を得る.
76 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイ プのケース 77

rf
+\G*n(r)dr
『゜
系 (R(r), n
(r)
,s(
r),r
e
, u*)が CCA(Y0-G,N) モデルの解となる
ための必要十分条件は,( R(r),n
(r)
,s(
r),r
e
, G)が HS(Y0,u
*,N) =( りL(r)dr+G*\
R(r)-R 。
:'n
(r)dr
モデルの解となることである. ゜
=TDR+NG*
を得る .た だし, TDR は(
3.3
4)で定義される総差額地代である.そこで, 一
命題 3
.9は,任意の HS モデルの解が適当な所得税(または補助金)を選ぶ 般に HS(Y0,u
,N) モデルの解における余剰,総差額地代および(影の)所
ことによって競争的市場を通じて実現されることを意味する . また,その系は, 得税をそれぞれグ (
Y0,u
,N), TDR(Y0, u
,N), G(Y0,u
,N)で表せば,
任意の CCAモデルの競争均衡が適当に選ばれた目標効用水準のもとでの HS グ(
Y0,u
,N)=TDR(Y0, u
,N)+NG(Y0, u
,N) (
3.7
5)
モデルを解くことにより求められることを意味する. したがって, HS モデル が成立する . RA>O とすれば,関数グ (
Y0,u
,N) および G(Y0,u
,N) に
の解は効率的であることから,直ちに以下の命題が導かれる. 以下の性質があることを示すことができる .

命題 3.
10 任意の CCA モデルの競争均衡は効率的である(第一厚生定 性質 3.
3
理). また,等効用制約のある任意の効率的配分は,適当な所得税また (
i) グ(
Y0,u
,N) は U に関して連続的に減少し, l
imu→ グ(
-OOyo,u
,
は補助金を選ぶことにより競争的市場を通じて 実現できる(第二厚生定 N)=N(Y0-T(O)), l
im正 グ (Y0,u
OO ,N)=-oo となる .
理).
22) (
i
i) G(Y0, u
,N) は U に関して連続的に減少し, l
i →-
mu o
oG(
Y0, U,,
N)=Y0-T(O), l
i 。 G(Y
mu
→ 0,u
,N)=-oo となる.
命題 3
.6により(パラメーター Y
, Y
0, N および uが
, Y>T(O), Y0>
, u<u(Y) および u<u(Y0) を満たす場合) CCA, CCP,
T(O), N>O 要するに, より 高い目標効用水準の達成にはより多くの財の消費が必要とさ
OCA および OCP の 4タイプのモデルは同一の解集合を有 して おり,また命 れ る の で , 余 剰 グ (Y0,u,N) および徴収可能な所得税 G(Y0,u,N) はと
題3.
10により任意の CCAモデルの解は効率的であることから,以下のように もに U の増加につれて減少するのである. 23)
結論できる . 性質 3
.3により, 2つ の 曲 線 グ (
Y0,u
,N)と TDR(Y0,u
,N)の間の関係
は,図 3
.7のように描かれる. (
3.7
5)より
命題 3.
11 CCA, CCP, OCA および OCP の 4タイプのどの均衡モデ ,N)=グ (
NG(Y0, u Y0,u
,N)-TDR(Y0, u
,N) (
3.7
6)
ルでも,その解は効率的である. . G(Y0,u,N) は
すなわち ,余剰と総差額地代の 差が総所得税額とな る , U

に関して減少しているから, 2つの曲線が点 Aで交わるまではその差である


上の結果は,図式的に要約することができる. R(r), n
( (r)
,s(
r),r
r
, NG(Y0, u
,N) は U に関して減少し,点 Aの右側ではその差(絶対値)は U
G*)を HS(Y0, , N)モデルの解とすれば,(3
五 .71)-(3
.74) より の増加とともに増大する . 4) G
2 =G(Y0, u
,N)の U に関する逆関数を u(
yo,
rf ーダ ,N) とすれば,命題3
G .9により, u(Y0,G
,N) は CCA(Y0-G,N) モデ

グ = [ Y?t-T(r)-Z(s(r), u)-RAs(r)]n(r)dr

=
¥゜

n(Y°-G*-T(r)-Z(s(r),i)-RA)s(
r)n(
r)dr
ルの解における均衡効用水準を表す. ここで,所得税(または補助金) Gを所
与 とすれば, CCA(Y0-G,N) モデルの解における均衡効用水準 u(Y0,G
,
s(r)

、r,
7
8 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タ イプのケース 7
9

s
および s(Y-T(r),u) の代わりにアロソ ゾの関数 1
Jf
(r
,u) および S(r,
TDR
N(Y0-T(O)) u)が用いられる (
恒等式 (
3.3)および (
3.4)を思い出されたい).
TDR(Y0,u,N) 以後の議論では,境界地代曲線が中心的役割を演じる .多 くの重要な結論は,
境界地代曲線が CBDからの距離が増加するとともに減少するという性質から
導出される. この境界地代曲線の性質は,土地が正常財であるという仮定から
従う .

u(Y • ,G,N) u 3.
6.1 農業地代およぴ人口の変化の効果

f
f(Y•,u,N)
農業地代の上昇 農業地代が R
Aaから RA
b~こ上昇して
CCP(Y0,N)
RA
"<RA
b
図3
.7 最適解と均衡解の間の関係 (yoとN は定数
. ) となったとする .ただし,他のすべてのパラメーターは不変とする. RA
"(R
Ab)
のもとでの都市境界距離および均衡効用水準をそれぞれが (d), u.*(uゞ

N) は図 3
.7のように求められる .特に,点 Aでは Gがゼロになっている .し としよう. この農業地代の変化は家計の付け値関数にも付け値最大化敷地規模
たが って,(2
.1)と(
3.6
6)を比較すれば,点 Aが3
.3節 (ケース 1) の CCA 関数にも影響を与えないから,境界地代曲線 R(r) は不変である.したが っ
(
yo,N) モデルの市場均衡に対応することがわかる.性質 3
.3が Aのような点 て図 3
.3のような作図をすれば,均衡土地利用の変化は図 3
.8のように描かれ
が唯一つ存在することを保証していることから,命題3
.1の妥当 性が確認され る.境界地代曲線 R(r)は rに関して減少しているので,
0u
る.次に,点 Bにおいては,グ (Y
, ,N)=O が 成 立 す る か ら TDR/N = ゲ >rfb
- G となる . したがって, (
3.3
5)と(
3.6
6)を比較すれば,点 Bが3
.3節 (ケー 叩(
r,u.
*)<l
f(
J r,Ub*
) (
すべての r<r
raに対して )
ス 3)での CCP(Y0,N)モデルの市場均衡に対応することがわかる.グ (
Yo, を得る.より高い位置にある付け値曲線にはより低い効用水準が対応している
u
,N) は U に関して連続的に減少し,しかも U の小さな値では正に, U の大 ので,
きな値では負になるので, Bのような点は唯一つ存在する.ゆえに,命題3
.3 R

のように結論、
できる.

3
.6 比較静学 \
ぐ'

bAaA
本節では,農業地代,人口, 交通費用,家計所得,土地課税, ゾーニ ング等

RR
の外生パラメーターの変化により均衡士地利用がどのように影響されるのかを


調べる.本節を通じて,各家計の住居選択行動は基本モデル (
2.1)により与え \

"
bf

af
r

r
られると仮定し ,しかも不 在地主所有のもとでの閉鎖都市モデル (
3.3
節の r

CCA(Y,N)モデル)のみを考察する. 25) 仮定2.1-2.3および3


.1は成立する 図 3.
8 農業地代の上昇の効果
ものとする.また,表記上の簡潔さから, ソローの関数ゆ (Y-T(r),u
),
80 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイ プのケ ース 8
I


Ua*>u としよう. この人口の変化は敷地規模関数 S(r,u) に影響を与えない . した
を得る .すると,付け値最大化敷地規模関数 S(r,u) は U の増加関数だから, がって,(3
.20
)から, Nの増加が各 U の値のもとで境界距離 b(u)を増加させ
S(
r,U
a*)>S(
r,U
b*) (すべての rに対して) ることがわかる .各付け値曲線は不変だから,図 3
.3より N の増加とともに境
となる . したがって,市場地代曲線を表す (
3.1
3)に注意すれば,以下のように 界地代曲線 R(r)が外側にシフトすることがわかる .均衡土地利用の変化は,
結論できる. 図3
.9のように描かれる. RAは不変だから,
が <r
fb
命題 3.
12 農業地代 RAが上昇すると, f(
l
J , Ua
r *)<l
f(
J r
, uゞ
) (すべてのた幻やに対 して )
(
i) 都市境界 r
1は内側に移動し, を得る. したが って ,農業地代の上昇の場合と同様に,
(
i
i) 均衡効用水準 u*は低下し, U
a*>U
b*
(
i
i) 地代曲線
i R(r)はあらゆる地点で上昇し, S(r, ua*)>S(r, u
h*) (すべてのた勺やに対 して )
(
i
v) 敷地規模 S(r,u*)はあらゆる地点で小さくなる .し たがって, となり,以下のように結論できる .
新たな都市境界の内側では人口密度があらゆる地点で上昇する .
命題 3
.13 都市の人口が増加すると,
要するに,農業地代の上昇により市場地代曲線があらゆる地点で押し上げら (
i) 都市境界 r
fは外側に移動し,
れ,そのために 1人当りの土地消費が減少するのである. (
i
i) 均衡効用水準 u*は低下し,
() 地代曲線
ii R(r)は新たな都市境界までのあらゆる地点で上昇し,
人口の増加 都市の人口(すなわち,家計の数)がぷから Nbに増加し, (
i
v) 敷地規模 S(r,u*) はあらゆる地点で 小さくなる.したがって,
ぷ <Nb 新たな都市境界の内側では人口密度があらゆる地点で上昇する.
となったとする.ただし,他のすべてのパラメーターは不変とする. Na(N

のもとでの都市境界距離および均衡効用水準をそれぞれ r/(
rib
),U
a*C
ub*) 要するに,人口の増加は宅地需要を増大させるが,宅地需要の増大はあらゆ

R,
Ra(r) ¾(r) る地点で地代を上昇させるとともに,都市境界を外側に移動させる .


3
.6.
2 交通贄用およぴ所得の変化の効果
ここでは 2つのケースを考える . ケース Aでは,交通費用関数が T.(r) か
ら 九(
r)に変化し,
九(
0)= 九 (
0), T
a'(
r)>T
b'(
r) (すべての rに対して)


(
3.77
)
I
RA
\ となる(すなわち,あらゆる地点で限界交通費用が減少する)が,
ース Bでは,家計の所得が Y
所得は不変であるとしよう. ケ・ aか ら % に 増 加
6) 家計の
2


a b
rf rf


図3
.9 人口の増加の効果
兄 <Yb (
3.7
8)
82 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用 :単一家計タイプのケ ース 83


r
^R

︵ ¥
%、




,
となるが,交通費用は不変であるとする . これらの 2つの変化の効果は,付け


R

r
a


値関数および敷地規模関数も変化するため,前の場合よりも複雑である . しか
しながら, これらの 2つの変化はよく似た効果をもつことから, この節では最

\\
初に両ケースに共通な効果が検討され,次いで 2つのケースが別々に検討され





ヽヽ

まず,パラメ ーターの変化を一般的に


B
l

ヽ .ーー ーー
(
T.(r),%)→ (T
ふ),瓦)

ヽヽ
と表す.すると,ケース Aは条件 (
3.7
7)および兄=汎が成立することを意味



し,ケース Bは条件 (
3.7
8) および(すべての rに対して) Ta(r)= 九 (
r)


が成立することを意味する . いずれのケースにおいても,あらゆる正の距離に
b(
u ) b.(u.) r
おいて純所得が増加する.すなわち,すべての r>Oに対して a a b b

l
a(r
)= Y
a-T
a(r
)< 汎 一九 (r)=lb(r) (
3.7
9) 図3
.10 交通費用の減少および所得の増加
となる. このことは,以後の分析にとって非常に重要である.パラメーターの による境界地代曲線のシフト

組 (
Ta(
r),Y
a)のもとでの付け値関数,敷地規模関数,境界地代曲線,都市 Aを通る付け値曲線妬(燃)を妬 (
r,U
a)[処 (
r,U
b)]とする .すると境界地
境界距離および均衡効用水準をそれぞれ妬 (
r,u
),S
a(r
,u)
, Ra(r),が, 代曲線凡(
r)の定義により,点 Aは
U
a*と表し , また,パラメ ー タ ー の組 (n(r), 汎)のもとでのそれらは, ¥
ba(
U
a) L(r) dr=N (
3.8
0)
燃(
r,u),S
b(r
, u), 凡 (
r),r
れ叫と表そう.もちろん定義により, 0 S
a(r
,U a
)
妬(
r,u)=
ゆ(Y
a-T
a(r
),u
), Sa(r,u)=s(Ya-Ta(r), u),処 (
r, u)= となる外側境界距離 b
a(U
a)を与える .曲 線 妬 (
r,U
a)は 曲 線 処 (
r, %)よ
ゆ(
Yb一九 (
r),u)お よ び ふ (
r,u)=s(Yb-Tb(r), u)が成立する. りも勾配が大であるから,

第ー に, 関 数 妬 (
r,u)は 関 数 処 (
r,u)よりも勾配が大であることを示そ 妬(
r,U
a)>処 (
r,U
b) (すべての r<b
a(u
a)に対して)
う. 2つ の 付 け 値 曲 線 妬 (
r,U
a)と I
J
f
b(Y
,Ub
)が距離 Xのところで交わ ,
り となる .すると,すべての r>O に対して l
a(r
)<l
b(r
)であ?たから, 土地
妬(
x,U
a)= 処 (
x, 妬) =尺>〇となったとする .恒等式(2
.19
),土地が正常 が正常財であることにより

財であることおよび (
3.7
9)から S
a(r
,Ua
)=s
(lf
fa(
r,U
a),I
a(r
))< s(

鴫i,
(r
,ub
),I
b(r
))
ふ(
x,U
a)=;( R,I
.(x
)):
:
;
;:s(
R,I
b(x))=ふ (
x,・
ub) =ふ (
r, 妬) (すべての r<b
a(u
a)に対して)
となる. これは, x>Oの場合厳密な不等式に, x=Oかつ Ya=% の 場 合 (ケ (
3.81
)
ース A) 等式になる . したがって, A, Bいずれのケースでも,(2
.27
)から となる . (
3.8
0)および (
3.8
1)から

-8党 (
x,Ua)= 冗 (x) > 冗 () = -0処 (
x x,妬) N =\ba(ua)L(r)dr>¥
ba(
Ua
) L(r) dr
or Sa(X
,Ua) ふ(x
,U b) OY o Sa
(r,Ua) 。 ふ (r,U b
)
となる .す な わ ち , 党 は 処 よ り も 勾 配 が 大 で あ る ( 定 義 2.
2'を見よ) . となるが,これは,図 3
.10に描かれているように,新しい外側境界距離 b
b(U
b)
次に,新しい境界地代曲線凡( r)は 凡 (
r)の外側にあることを示す. まず, が b
a(U
a) よりも大きいことを意味している. この結果は曲線凡 (
r) の各点
図3
.10に描かれた よう に,初期の 境界地代曲線 尺a
(r) の上に点 Aをとる .点 について成立するので,新しい境界地代曲線凡 (
r)は 凡 (
r)の外側にあると
84 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 85

)
r
︵\
凡r¥
R, R (r) 変 (Y.=Yb=Y) とすれば,

¥
a

¥
Y-T
a(0
)= Y-T
b(0
)
である. u.*<uげだから,( 2
.20
)より

ヽヽ
V(妬( 0
,u.
*), Y-T
.(O
))=u.*<ub*


R (0)


=V(町 o

‘、︱ヽ一
a
,ub
*), Y-n(o))


尻(0) となる.間接効用関数 VはRに関して減少しているから,上記の 2つの関係は
処(
0,u.*)>処( 0
,Ub
*),すなわち, Ra(0)>R』0
) (
3.8
4)


を意味する .換言すれば,都心の住民は,そこでの地代が下落する場合 にのみ
RA

[
(3.
83)により求められる ] より高い効用を達成できるのである.それは,都

bf

r
af
心での純所得は限界交通費用が減少しても変化しないからである.

r
r
最後に, 恒 等 式 (
2.2
5)から, S
a(0
,Ua*
)=S(l
f
l
a(0
,Ua*
),U
a*),および
図 3.
11 交通費用の減少および所得の増加の効果 ふ(
0,uげ)= 5(処 (
0,U
b*)
,Ub
*)が成立する.補償需要関数 s(R, u)はR
に関して減少し, Uに関して増加するので,(3
.83
)および (
3.8
4)から
結論できる. s
.(o
, u.*)<Sb(O, U
b*) (
3.8
5)
以上のことから,パラメークーの (
Ta(
r),Y
a)から (
Tb(
r), 汎)への変化 と結論できる.敷地規模関数 S(r,u) は rに関して連続だから,(3
.85
)は交
の効果は,図 3
.11のように描かれる. RAは不変だから,図から明らかに 通費用の減少により敷地規模が都心近くで大きくなることを意味する.
ゲ<d (
3.8
2) 以上の議論を要約すれば,以下の命題となる.
となる. このことは,直観的に次のように説明できる.パラメーターの変化に
よりあらゆる地点で純所得が増加するため,あらゆる地点で土地需要が増大し, 命題 3.
14 交通費用の定額部分は不変のままで,限界交通費用があらゆる
都市境界が外側に押しやられる.また,パラメーターの変化によりあらゆる地 距離で減少すれば,
点で純所得が増加するため,均衡効用水準が上昇する.すなわち (
i) 都市境界乃は外側に移動し,
Ua*<U
b* (
3.8
3) (
i
i) 均衡効用水準 u*は上昇し,
となることは,直観的に明らかである. 27) (
i
i
i) 地代 R(r)は CBDの近傍で低下するが,郊外では上昇し,
これまでの議論で,交通費用の減少の効果と所得の増加の効果は質的に同じ (
i
v) 敷地規模 S(r,u*)は CBDの近傍で大きくなり, したが~? てそこ
であることがわかる.事実,唯一の違いは都心における地代の変化の方向に関 での人口密度 p(
r)=1
/S(
r, u*)は低下する.
係する.図 3
.11では,パラメーターの変化により都心の地代が下落している
(すなわち, Ra(0)>凡 (
0)である).以下で示されるように, このことは交通 換言すれば,交通費用の減少により都心近くの土地に対する効外の土地の不
費用の減少の場合には常に成立するが,所得の増加の場合には必ずしも成立し i便の度合が小さくなり,都心から郊外に移動する家計が出てくる.そのため,

し‘・ \都市境界は外側に広がって都心の地代は下落するが,郊外の地代は上昇する.
したがって,地代曲線および人口密度曲線の傾きがともに小さくなる.
交通費用の減少 (
3.7
7)で示されるように交通費用が減少するが,所得は不
86 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用: 単一家計タイプの ケース 87

所得の増加 所得の増加が都心の地代に及ぽす効果は, 交通費用関数および ならケース (


i)となり, L(r) が一定ならケース (
i
i)になり, L(r) が rの減少関
土地の 分布の状況に依存する. このことは,以下の例からもわかる . 数ならケ ース(
i
i)となる.ケース (
i)の場合には,所得の増加の効果は図 3.
11の
ように描かれる.付け値関数妬は燃よりも勾配が大であったから,ケース
例 3
.2 例3
.1の条件設定に加えて,さらに入 =1すなわち L(r)=0r (
扇 (
i
i)および(
i
i
i)では,すべての r>Oに対して凡( r)=妬 (
r,U
a*)< 処 (
r,U
b*)
形または円形)と仮定すれば,(3
.26)から =凡 (
r) となる.たいていの都市では都心からの距離が増大するにつれて土

R(O)=3が N
0 y
地面積は増加し,限界交通費用も減少する. したがって,実際にはほとんどの
場合がケース (
i)となる .
となる . したがって,都市が扇形または円形ならば,所得の増加により都心の
最後に,土地に対するマーシャルの需要 s(R,I
) はRに関して減少し, I
地代は下落する.また, l
,=Oすなわち L(r)=0 (
線形都市) を仮定すれば,
に関して増加することを思い出そう.( i
)と(
i
i)のどちらのケースでも,仮定によ
R(O)=旦 -
N り 妬(
0,U
a*)こ 処 (
0,U
b*)および Ya-Y(O)<Yb-T(O)が成立するので,

となる.
最後に, ,
l=-0
.

したがって,線形都市の場合,都心の地代は所得水準から独立である.
5すなわち L(r)=0
/[アを仮定すれば,
S
a(0
,U )= S
a* (妬( 0
,U
< s(処 (
0
a
*
,U
b
)
*
, Ya
)
-T(O))
, Yb-T(O))=Sb(O, U
b*)
となる . Sa
(r,Ua
*)お よ び ふ (
r,U
b*) は rに関して連続であることから,
R(O)= 0
.5X1.5冨 汀 N
20 均衡敷地規模 S
b(, u?)は CBDの近傍において Sa(
r r,U
a*)よりも大きく
となる . したがって,都心から離れるにつれて土地の面積が減少すれば,都心 なる .以上 のことは,次のようにまとめられる.
の地代は所得の増加により上昇する.ただし,この例では T(r)=ar (
限界
交通費用 一定) が仮定されていることに注意されたい. 命題 3.
15 家計の所得が増加することにより,以下の効果が生じる .
(
i) 都市境界 r
1は外側に移動する .
例 3.
2の結果は基本モデル (
2.1)の条件のもとで一般化でき,以下のように述 i) 均衡効用水準
( u*は上昇する .
べることができる. 2
8) (
i
i
i) (
a
)あらゆる rにおいて L(r)/T'(r) が 増 加 し て い る 場 合,地代
R(r)は CBDの近傍で低下 し
, 郊外で上昇する; (
b)あらゆる地点で
性質 3.
4 L(r)/T'(r)が一定の場合, R(r)はすべての r>Oにおいて上昇す
(
i) L(r)/T'(r) があらゆる rにおいて増加していれば, R(O) は所 C)あらゆる rにおいて L
る; ( (r)/T'(r) が減少している場合, R
得の増加により低下する. (r) はすべての r ~ O において上昇する.

(
i
i) L(r)/T'(r) があらゆる地点で一定ならば, R(O) は Yから独立 i
(
v)(
i
i
i)の(
a)および(
b , u*)は CBDの近傍で
)のケースで,敷地規模 S(r
である. 大きくなる.
(
i
i
i) L(
r)/T'(r) があらゆる rにおいて減少していれば, R(O) は所
得の増加により上昇する . 要するに,家計の所得の増加により ,あ らゆる地点において土地需要が増大
するが,同時に交通費用の重要度が相対的に低下して,効外の土地の不便の度
例えば,限界交通費用 T'(r) が一定としてみよう . L(
r) が rの増加関数 合も小さくなる. したがって,十分な土地が効外に存在する場合(ケース (
i)),
多くの家計が中心部から郊外に移動する. このことが,今度は中心部の地代お
88 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケ ース 89

よび人口密度を低下させるが,郊外ではそれらを上昇させる.結果的に,地代 土地課税から独立に一定である. R(r) を距離 rにある土地に対して借地人


曲線および人口密度曲線の傾きがともに小さくなる.他方,効外に十分な土地 家計または農民)が土地所有者に支払う土地 1単位当りの市場地代とする.

が存在しない場合(ケース (
i
i)および(
i
i
i)),土地需要の増加は,都市内すべてに すると,都市境界乃の内側(外側)にある土地は住宅(農業)に利用される
おいて地代を高騰させる. ので,前と同様に,均衡において
R(
r)=I
f(
J r
, u*
), r<r
1 (
3.8
6)
3.
6.3 土地課税およびゾーニングの効果 R(r)=R
A, r>乃 (
3.8
7)
ここでは,土地課税およびゾーニ ングの効果を調べる .実際的適用の見地か が成立 しなけれ ばならないただし, u* は均衡効用水準である. 比例税の 場
らは,ここでの分析はあまり有用ではない というのは,後で明らかになるこ 合,底( f
a) は住宅地(農地)からあがる地代 1単位当りの税である.都市境
とだが, (定額) 所得税とは異なる効果をもつ土地課税またはゾーニング政策 界 乃 に お い て ,土地所有者は土地を家計に貸すこと と農民に貸す ことに 関し
は必然的に競争的土地市場の効率性を損なうからである.それは, ここでの分 て無差別になるはずだから,
析には市場の不完全性の要因が存在していないことによる. 2
9) にもかかわら (1-rn)l
fJ
(r
r, u*)=(l-rA)RA (
3.8
8a)
ず, ここでの分析はいくつかの理由で重要である.第ー は,理論的興味からの が成立しなければならない.均一税の場合, TR(T
りは住宅地(農地)面積 l
理由である.第二の理由は, ここでの結果と各種の外部性が導入された同種の 単位当りの税である .すると,比例税の場合と同様に して
分析とを比較する上での有益性にある.最後に,政治的理由により所得税に限 叩(
re
,u*)-TR=RA-TA (
3.8
8b)
界があるとすれば,土地課税またはゾーニングは厚生再分配のための有用な手 を得る .
段になりうる. さて,住宅地と農地に対して同じ税率(すなわち,和= a または TR=T

土地への課税は,通常比例税または均一税の形をとる.比例税の場合,住宅 が適用されれば,(3
.88
a)および (
3.8
8b)はどちらも
地(農地) からの地代収入 1単位当りの税を tR(な)とする.均一税の場合, l
J
l'
(r
i
, u*)=RA
農地)面積 1単位当りの税を TR(T
住宅地 ( りとする.多くのゾーニング政策 となる. したがって,前と同じ均衡条件の組[すなわち,(3.
14)-(3.18
)]を
があるが, ここでは,ある活動をあるゾーン内に制限する土地利用ゾーニング 得る .このことより,同じ税率の場合には,明らかに [土地利用 パタ ーソおよ
だけが考察される. 0) 特に,住宅地が都心からある距離の範囲内に制限され
3 び地代曲線を含めて]均衡土地利用は土地課税から独立となる.均衡土地利用
る都市境界ゾーニングが考察 される.適当に用いられるならば,比例税,均一 は,あたかも土地課税がなかったかのように変化 し な い こ の こ と は , すべて
税および都市境界ゾーニングの 3つの政策は,均衡土地利用に対して全く同じ の土地課税が土地所有者により 負担されることを意味 している.
効果をもつことが示される 次に,税率が異なる場合,
AR= l
J
l'
(r
1
, u*)-RA (
3.8
9)
土地課税 便宜上,税は土地所有者によって支払われるものと仮定する. 3
1) と置く.△ R は,都市境界における地代の差を表している.すると,(3.
88a)
また,(税であろうと地代であろうと)土地からあがる金は,当該都市に還流 および (
3.8
8b)から,それぞれ
しないと仮定する .そ うすると,土地課税は都市住民の所得または効用関数に 和 一 てA
• R = ~ RA (
3.9
0a)
影響しないから,各家計の付け値関数 1
Jf(
r, u) および敷地規模関数 S(r,
1-r
R
△R =T
R-TA (
3.90
b)
u)は不変である. したがって,境界地代曲線 R(r) も不変となる.農民が利
を得る .住宅地の方が税率が高い(すなわち,和> r
Aまたは TR>T心 の が 普
潤ゼロの条件のもとで支払うことのできる土地 1単位当りの最高地代 RAも

90 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース 9I

R
R(r)

都市境界ゾーニング ゾーニングに関する法令により,距離 r
r 以内の(以
上の )範囲にある土地が住宅(農業)に利用されなければならないとしよう .
ここでは, n は任意に選ばれる CBD からの距離である. r
f がたまたま図
3.
12の 乃 に一致したとすれば,境界地代曲線 f
?(r
)の定義から,明らかにゾ
ーニングに関する法令のもとでの均衡土地利用の状況は図 3
.12のものと 一致
する .均衡付け値曲線 l
fJ(
r,u*)は,前と同様に,境界地代曲線 R(r) と r
r
における垂直線の交点を通る付け値曲線となる . 乃の外側では,地代は農業
RA
地代に等しいさらに,どのような都市境界ゾーニングであろうと,それに対
応する地代の差 △R は図 3.
12のように一意的に決定される . また ,そのよう

of
r

r
f r
に決定されたどんな △R に対しても,(3
.90
a)または (
3.9
0b) により適当な土
図 3.
12 土地課税および都市境界ゾーニングの効果 地課税(比例税または均一税)を見 出すことができる.したがって,以下のよ
うに結論できる.
通だが,この場合には△ R は正となり,均衡土地利用の状況は図 3
.12のよう
° が土地課税のない場合の都市境界を表している .
に描かれる.この図では, r
f 命題 3.
17 いかなる都市境界ゾーニングに対しても ,均衡土地利用に同じ
農地の方が税率が高い場合には △R は負となり,都市境界はパの右側にくる . 効果を与えるような適当な土地課税 (
比例税または均一税)を見出すこ
均衡効用水準 u* は 付 け 値 曲 線 伊 (
r, u*)が高い位置にあるほど低くなるの とができる .
, u*は △R が大きくなるほど低くなる.△ R が等しい限り均衡土地利用は

同じであるから,比例税と均一税のいずれによっても同じ均衡土地利用を達成 最後に,図 3
.12に描かれた均衡土地利用は効率的でないことに注意しよう .
することができる. 32) すべての家計が均衡効用水準 u* を達成する場合の効率的土地利用は HS(Y,
以上のことから,次の命題を得る . u
*, N)モデルの解で与えられ,それがまた目標効用水準 u* のもとでの補償
均衡に一致することを思い出そう .図 3.
12に描かれた均衡土地利用と図 3
.5に
命題 3.
16 比例税または均一税の形で土地に課税されるとする . 描かれた補償均衡土地利用を比較すれば,明らかに図 3
.12のパターンは効率
(
i) 住宅地と農地に同じ税率が適用されるなら,土地課税は均衡土地利 的ではない.
用にも市場地代にも影響を与えない この節の締めくくりとして,本節の結果がアメリカ合衆国で観察された住宅
(
i
i) 異なる税率が適用される場合,[(3
.90
a)または (
3.9
0b)により定義 地の土地利用パターンの時間的変化の傾向を説明するのに用いられてきたこと
される]都市境界における地代の差 △R が大きくなるほど,( a)都市 に注意しよう .多くの実証研究により,アメリカ合衆国の大都市では,過去数
境界 r
バま内側に移動し,(b)均衡効用水準 u*は低下し,( C)地代 R(r) 十年にわた って人口密度曲線の傾きが小さくなってきていることが立証されて
は新たな都市境界の内側のあらゆる地点で上昇し,(d)敷地規模 S(r, いる .
33) この傾向を説明するため,それらの都市における他の現象,すなわ

u*) はあらゆる地点で小さくなり,そのため人口密度は新たな都市 ち,鉄道および幹線道路の建設による交通費用(特に通勤費用)の減少,経済


境界の内側のあらゆる地点で上昇する. 成長による家計所得の増加, ならびに都市化による人口増加を思い出そう .命
92
第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイ プのケ ース 93

応 (r)F(L,K)-K
1
J
f(r;応( r
))=max (
3.9
1)
L , K L

で定義する . これは,各住宅サービス生産者が利潤ゼロの条件のもとで距離 r
にある土地 1単位当りに支払うことのできる最高地代を表 している.利潤をゼ
p (r)
2 ロに特定することは,住宅産業が生産における規模に関する収穫不変の条件の
もとで競争的であるという仮定から,均衡では各企業の利潤がゼロとなること
- -p(r)
による.
均衡土地利用のための条件を求めるためには,( 3
.91
)を 1家計当 りの投入お

p (r) よび産出を使って書き改めると好都合である . まず (
2.7
2)および (
2.7
3)を使っ
1

r
て,各 rにおける住宅産業の行動 (
2.7
1)が
図3
.13 人口密度曲線の変化 x品( r)F(s,k
ma )-R(r)s-k (
3.9
2)
S,k

題 3.
14(
i
v)および3
.15
(iv
)は,交通費用の減少および所得の増加がともに都市の人 のように書き改められる .すると,住宅産業の付け値関数は,
口密度曲線の傾きを小さ くすると予想する.図 3.
13において , この効果は人 応 (r)F(s,k)-k
り(
r:RH(r))=max (
3.9
3)
口密度曲線の P
1(r
) から p(r) への移動として描かれている.他 方,命題 s,
k S

3
.13
(
iv
)によれば,人口増加により都市のあらゆる地点で人口密度が上昇する. のように表される . もちろん,定義 (
3.9
1)お よび(3
.93
)は, Fが規模に関して
したが って ,全体的効果 は,人口密度曲線の P
1(r
)か ら 凸 (
r)への移動とな 収穫不変であることから同等である.
る.その結果,時間の経過とともに,人口密度曲線は傾 きが小さくなるととも 次に,均衡では R
tt(
r)=W
tt(
r, u)となる. したがって,(2
.76
)を(3.
93)に
に都市のほとんどいたるところで上昇する. 代入し,新たに 1
J
f(r;応( r))=叩 (
r,u) と表せば,
Y-T(r)-Z(F(s, k
), u)-k
I
J
f(r
, u)=max (
3.94
)
S,k S
3.7 ミュースのモデル再論:土地の資本集約度
を得る .
35) これは,家計の均衡効用水準が uと期待される場合に各企業が支

払うことのできる最高地代 を表している.( 3
.94
)の最大化問題を解けば,(付
実際の都市では,都心に近づくにつれて人口密度だけでなく 1平方マイル当
け値最大化)敷地規模関数 s
(r,u) および (
付け値最大化)資本投入関数 k
りの資本集約度もしくは建物の高さが上昇することが観察される .2
.5.
3節で
導入されたミュ ースの住宅産業モデルでは,住宅サービスの生産のために土地
(
r,u)が求められる .
さて, R(r), R
H(r
),n
(r)
, s(r),k
(r)
, u* および乃が均衡土地利用
および資本が投入されると考えられていたので,当該モデルがこのような現象
を説明するのに有用である. を表すものとする. ここで, k(r) は各距離 rにおける 1家計当りの資本投入
量 であり,その他の記号は従前通りである.すると,均衡条件は,以下のよう
すでに問題の多くの要素が定義されている . その中には,各家計の住居選択
行動 (
2.7
0), 住 宅 賃 料 付 け 値 関 数 妬 (
r, u) (
2.76
)および住 宅 産 業 の 行 動 にまとめられる .
応 (
r)= 妬 (
r,u
*), rsrr (
3.9
5)
(
2.7
1)がある. ここで,生産関数 Fが典型的な新古典派的条件を満たすものと
仮定し, 4) 住宅産業の付け値関数 を
3 1Jf
( r
,u*
), rsrr
R(r)={ (
3.9
6)
RA~ r~rr
94 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用 :単-家計 タ
イ プのケ ース 95

s(r)=s(r, u*
), k(r)=k(r, u
*), r
:c
;;
rr (
3.97
) を調べる .そのため,
L(r)/s(
r,u *
), r<rf q
(r, u)=F(s
(r,u
),k
(r, u)) (
3.1
01)
n(r)={ (
3.9
8)
0
, r>rr で定義される(付 け 値 最 大 化)住 宅 サ ー ビ ス 関 数 を導入する .ただし, s(
r,

¥
。s ( ~ d r = N
Tt (
3.99
)
u)および k
(r,u) は 3.
, ( 9
4)の解である. s
(r,u
),k
(r, u)および q
(r,
u)の間の関係は, 図 3
.14のように描かれる . 図 2
.2の場合のように等費用線
前 と 同 様 真 に 未 知 数 と な る の は u* お よ び 乃 の み で あ り , そ れ ら は (
3.9
6) k=(Y-T(r)-Z(q(r
,u)
,u)
)-I
Jf(
r, u)s
から導かれる以下の条件と (
3.9
9)により決定される.
が最適な投入量の組 (
s(r
,u)
,k(
r, u))に おいて等量曲線 F(s,k)=q
(r,
I
JF
(r
r,u*)=R
A (
3.1
00)
u) に接することが容易にわかる . また,地代 Rおよび産出水準 qが任意に与
したがって,均衡の存在およびその一意性は,前と同様に境界地代曲線を用い
えられたとして ,以下の費用最小化問題を考える .
る方法により証明される.
minRs+k, s
.t. F(s
, k)=q (
3.1
02)
s
.k
次に,資本 ・土地比率 k(r)/s(r)が距離とともにどのように変化するのか
k こ の 問 題 の 解 は 投 入 物 に 対 す る 条 件 付 き 需 要 の組 Cs(R,q
), k(R,q
))

Y-T(r)
で表される . 図形的 には,図 3
.15に描かれた よう に, (s(R,q
), k(R,q
))
-Z(q(r,u),u)
はRの傾きをもつ等費用線が等量 曲線 q=F(s,k
)に接する点で決定される.
Fは規模に関して収穫不変であるから, 比 i
i(R,q)/
s(R, q) は産出水準 q
k(r,u) から独立であり,地代 Rによ ってのみ決定される. したが って,投入量の 比は
Rの関数として
k(R, q)=

1
.1(R) (
3.1
03)
s(R, q)
s(r,u)
のように表される .
図 3.
14 付け値と付け値最大化敷地規模

資本投入量)の間の関係 ところで, R =I
Jf
(r
,u)
, q=q(
r, u) と置けば,図 3
.15は図 3.
14と同じ
にな ることに注意されたい. このことは,以下の恒等式が成立す ることを意味
k

する.
s
(r, u)=s(IJf(r, u
),q
(r,u
)),
(
3.1
04)
k
(r, u)=k
(IJ
f(r
,u)
,q(
r, u))
3
それで, (.9
6),(
3.9
7),(
3.1
03)および (
3.1
04)から,

l
<(R
,q) k(r)
=1
.1
(I
Jf
(r
, u*)) (
3.1
05)
s(r)
を得る .図 3
.15から は, 1
.1(
R)が Rの増加関数,すなわち
d
1.1
(R)
>0
s


図 3.
15 土地および資本に対
する条件付き需要
dR
であることが容易にわかる . さらに,包絡線定理を (
3.9
4)に適用すれば,
96 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用 :単一家計タイプのケース 97

k
︳s
り(
r,u)=A11
aaat
aP(
a/3
)(b
/3)
bta(Y-T(r))lt
aPe―U
la
B
k(r,u)=b/3(Y-T(r))
(
3.1
07)
s
(r, u)=a/3(Y-T(r))/IJ
f(r
, u)
= A-
1/a
a-a/
aP(
b{3
)-b
la(Y-T(r
))ー
(1-
aP
)/
aPe
u/a
P

となる. したがって,均衡では,
k(r) b b
=一 I
J
f(r
,u*
)=-
!f;-R
(r)
s(r) a a
となる .すなわ ち,資本 ・土地比率は,各距離における地代に比例する. 交通
0 r 費用 T(r)が rに関して線形または厳密に凹ならば,(3
.10
7)から付け値曲線
図3
.16 資本 ・土地比率曲線 I
Jf(
r,u*)は厳密に凸となる.したがって,図 3
.16に描かれたように,資
本 ・土地比率曲線も rに関して厳密に凸となる .
a
l.J
f(r
, u*) T'(r)
=- <o (
3.1
06)
ar s(
r, u*)
が得られ, したが って 3
.8 結 論
d(k(r)/
s(r
)) dv
(I.
Jf(r
, u*)) a
l.J
f(r
, u*)
dr = dR Or <O
本章では,均衡土地利用パクーソを検討し,それを最適土地利用パタ ーンと
となる. 比較して,競争均衡は社会的に効率的であると結論した.また,人口,交通費
以上のことは,次の命題としてまとめられる. 用,所得等の種々の外生パラメータ ーの変化 が均衡土地利用に及ぽす効果も分
析した.最後に,土地の資本集約度もしくは住宅用建物の高さが,都心からの
命題 3
.18 ミュースのモデルの均衡では,住宅サービスの生産における資 距離によ ってどのように変化するのかを調べた.
本・土地比率 k(r)/
s(r
)が, CBD からの距離の増加とともに低下す 本章の結果は,一般的に,現実の都市に関する日常的観察と矛盾 しない.そ

. れにもかかわらず, ここでの分析は非常に単純なモデルに基づいており,した
がって多くの拡張が必要とされている.複数の家計クイプを導入することが自
この結果は,図 3
.16に描かれている.実際,資本・土地比率は,建物の高 然な展開であり, これが次章の課題である.
さの代理変数と考えることができる. したが って,命題 3
.18は,住宅用建物の
高さが CBDからの距離の増加とともに減少することを示唆している. 文献ノート
3
.3節に示された均衡土地利用の理論は,本質的に, Alonso(
l96
4),Muth
例 3.
3 ミュースのモデルにおいて, (
196
9),C
ase
tti
(l9
71)
,Mi
lls
(l9
72a , Solow0973)等 によ って展開され
,b)
U(z, q)=alogz+(3Iogq, a>O, (
3>0
, a+/3=1 た新古典派的な都市モデルの簡略版である.閉鎮都市および開放都市の定義は,
F
(s , a>O
, k)=Asaが , b>O, a+b=l, A>O Wheaton(
1974
a)によって導入された.公的所有モデルは S
olo
w(l
973)によ
を仮定すれば, Z(F(s,k ), u)=A―P
i
aS―a
P/
ak―b
P/a
eu/
a となる. (
3.9
4)の最大 って導入され,Kanemoto
(l9
80,C
h.1
)により 一層研究された.境界地代曲線
化問題を解けば, に似た概念は, Kanemoto(l980,Ch.6
)により人種の混合した都市の安定性の
9
8 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケ ース 9
9

分析のために導入された. F
uji
ta(
198
5,1
986
a) は,それを可変的敷地規模の ペ ージ数の関係から,いくつかの重要なトピックが割愛された.我々は交通
場 合 に一 般化し,均衡土地利用および最適土地利用の存在と一意性を研究する 費 用 は CBDからあらゆる方向で同じであることを仮定したが,より現実 的 で
ために用いた. ある一様 で な い交 通網 の 場 合 は M
uth
(l9
69,Ch.4
) および AnasandMoses
ベソサム流の最適都市は,最初に Mirrl
ees
C19
72) に よ っ て 分 析 さ れ た .彼 (
197
9) に よって 考 察 された.次に,我 々は雇用 お よ び 買 い 物 が 1点 (す なわ
は, ベンサム流の最適解において,同質的な家計に対しても距離に応じて異な ち CBD) に集中していると仮定したが,複数の 事 前 に 指 定 さ れ た 雇 用 ま た は
る効用水準が割り当てられることを発見した. この結果はミルリーズの不平等 買い物の中核地を導入した研究も多い.例えば, Muth(l969)
,Papageorgiou
と呼ばれ,注 1
1)に挙げられた人々によ りさらに分析された.資源制約のもと andC
ase
tti
(l9
71)
,HartwickandHartwick0974), O
dla
nd(
l97
6),White
で 共 通 の 効 用 水 準 が 最 大 化 さ れ る と い う も う 1つ の 最 適 都 市 の 定 式 化 は , (
197
6), Romanos(l977)お よび S
ull
iva
n(l
986)を見られたい. Solow(
l97
3)
D
ixi
t(1
973)お よび O
ron
,Pi
nesandS
hes
hin
ski(
197
3)に よって導入された. はサービス労働者の空間的分布を考察した.最後に, 都 市 人 口密度の実証分析
3
.4節で説明されたハーバート=スティ ー ブ ン ス の 問 題 は , こ の 等 効 用 制 約 付 では負の指数関数がよく用いられてきたことに注意しよう.負の指数関数形で
き問題の双対問題である . もともとは, H
erb
ertandS
tev
ens(
196
0)は離 散 空 表さ れる人口密度 曲線の理論的導出については, Muth(l969,Ch.4
),N
ied
er-
問において問題を定式化し,それを線形計画法の双対定理を利用して分析した. c
orn
(l9
71)
,Mi
lls(
l97
2b) および Brueckner(
198
2) を見られたい.
HS問題と均衡土地利用問題の同値性は,最初 B
rit
tonH
arr
isによ って 彼 の 未
公表の論文の中で研究され, 正式には Wheaton(1974
b) お よび F
uji
ta and 注
Kashiwadani(
197
6) によって証明された. 本章での HS 問題の連続版は, ) 前 と同様,( 3
l .2)の最大化問題に解が存在しない場合は,¢
,(, u)=O
I , s(
I, u)=

Ando(1981)によって導入された
. 00 と定義する .

均 衡土 地 利 用 の 比 較 静学 は, 最 初 Wheaton(
1974
a) に より単 一 家 計 ク イ プ 2
) a
:s;
aRは常に負であり,また 0訂 o
Rは仮定2.3により負であることに注意され

し‘・
の ケ ー ス に つ い て 研 究 さ れ , 複 数 家 計 タ イ プ の ケ ー ス に つ い て は Wheaton
3) 本書の都市的士地利用の理論において農業活動は重要な役割を浪じないため,農業
(
197
6), Hartwick,S
chw
eiz
erandV
ara
iya
(19
76)および A
rno
tt,MacKin-
の付け値は立地点から独立に一定であると仮定される.
nonandWheaton(
197
8) に よって研究された.彼等 の ア プ ローチは,微積分
4
) 定義により, n
(r)は rにおける単位距離 当 りの家計の数を表す. 1.2節でも触れ
に基づいた標準的な方法に依拠している.本書の境界地代曲線を用いる方法は, られたように,家計の数は非常に大きいので,都市空間上の家計の分布は密度の形で
より直観に訴えるものがある.土地課 税 お よ び ゾ ー ニ ン グ の 効 果 は , 最 初 扱っても 差 し支えないものと仮定される. したがって,本書ではすべての均衡条件お
A
lon
so(
196
4,C
h.6
)お よび Henderson(
198
5)によ って研究された. W
ild
asi
n よび最適条件が,各立地点(距離)における家計および土地消 費の密度によ って表さ
(
198
5) は, 時 間 配 分 を 含 ん だ所 得 税 の 比 較 静 学 を 行 っている.最適 土 地利用 れる .この密度 アプローチ の数学的擁護については, A
sam
i,F
uji
taa
ndS
mit
h
の比較静学 は, W
itc
har
d(1
984
) によ って研究された. これらの研究はすべて (
197)および P
8 apa
geo
rgi
oua
ndP
ine
s(l
987)を見 .

不 在 地主 所 有 の も と で の 都 市 の 比 較 静 学 に 焦 点 を 当 てているが, P
ine
sand 5) 土地の転用費用はゼロと仮定されているから,土地を遊休させる土地所有者は地代

Sadka(1986)
,Ar
not
t,P
ine
sandSadka(1986)お よび S
asa
ki(
198
7)は公的 を得る機会を失うことを意味する .こ れは土地所有者の合理性に反する.
) 読者はすでにお気づきのことと思うが,土地所有者は士地利用の静学理論において
6
所有のケースを検討した.賃金所得を(生産における規模に関する収穫が可変
)で説明された理由に より,土地所有者の唯一の合理的
積極的な役割を演じない. 注5
, K
的であることから)内 生化 し た 均 衡土地 利 用 の 比 較 静学 は oid
e(1
985
)によ
な選択は土地を市場価格で貸すこと である.
って研究された .人口 密 度 曲 線 の 傾 き が 小 さ く な る と い う 議 論 ( 図 3
.13
)に
7
) これらの点は,次章で正式に証明される (
性質 4.
10を見よ.

関して, 筆 者 は S
chw
eiz
erC
l98
5)から恩恵を受 けている.
IOO 第 3章 均衡土地利用と最適土地利用:単一家計タイプのケース IOI

8
) yが都市人口の関数であるケースは, 5
.7および5
.8節で検討される. 2
0) 本節では,仮定 2
.1-2.3ならびに仮定 3
.1および3
.2が仮定される. また N>O も仮
9
) u戸 (Y)(u2u(Y0))の場合, OCA(Y, u)モデル (OCP(Y0,u)モデル)の 定される.
均 衡 人 口 は 0である.また, N=O の場合, CCA(Y,N) モ デ ル お よ び CCP(Y0, 2
1) 数学的に命題 3
.9は明白である.一連の条件 (
3.67)-(3.7
0)を (
3.71)-(
3.7
4)と比
N) モデルは定義されないもちろん, Y~ T(O) または Y゜~ T(O) の場合は,都 較すれば,明らかに,( R(r),n
(r)
,s(
r),r
,
, G*) が (
3.71)-(
3.7
4)のすべての条
市は存在しない. したがって, これらは興味あるケースとはならない. 件を満たすための必要十分条件は,それらが (
3.67)-(
3.7
0) (ただし u* および C
1
0) より正確に述べるために, CCA モデルの駒衡解を CR(r),n
(r)
,s(
r),r
,
,u*
) はそれぞれ u
,G* と置き換える)のすべてを満たすことである.
で表し, OCA モデルの均衡解を (R(r),n
(r)
,s(
r),r
,
,N*)で表そう.すると, 2
2) 伝統的な厚生経済学からすれば, この結論は驚くに値しない.それにもかかわらず,
命 題3
.5の(
i
)の括弧外の部分は,( R(r),n
(r)
,s(
r),r
,
, u*)が CCA(Y,N) モ 連続空間モデルの枠組の中で再確認しておく価値はある . また, もともと同質的な家
デルの解ならば,( R(r),n
(r)
,s(
r),r
,
,N) は OCA(Y,u*) モデルの解になる 計をある有限個のグループに分割して異なる目標効用水準を割り当てれば, 4
.4節 で
ことを意味する.同様の注意が命題 3
.5の他の部分にも当てはまる. 考察される複数家計クイプの問題が得られる .
1
1) この現象は, M
irr
lee
s09
72) によって発見された. このトピックについての説明 2
3) 性質 3
.3の証明については,付論 C.3を見よ. RA>O という仮定は, l
im 炉 グ(
OOYo,
と一層の議論については, R
ile
y(l
973
,19
74)
,Ar
not
t and R
ile
y(l
973
),L
evh
ari
, u
,N)=-COお よび l
imu-
o
oG(Y0,u
,N)=-coを示すためにのみ必要である.
OranandP
ine
s09
78) )および W
, Kanemoto0980,App.1 ild
asi
n(1
986
a) を見よ. 2
4) 図3
.7では曲線 TDR(Y0,u
,N) が U に関して常に増加するかのように描かれて
1
2) 人口が可変的な場合の HS問題については, 5
.4節を見よ. いるが,必ずしもそうとは限らない. しかし, この点は以下の議論では重要でない.
1
3) C
n(r
),s
(r)
,r,
) は,( n
(r)
,s(r),乃:各 rE[O, 乃]において, n(r)20 かつ 2
5) 他のケースも同様にして調べられる.特に,開放都市モデルのケースはずっと簡単
s(r)>O) の省略形である. である最適土地利用の比較静学もこのようにしてなされる.
1
4) 各 HS モデルは 1人当り所得 y
o, 目標効用水準 i
iおよび人口 Nによって特徴づ 2
6) 交通費用の定額部分 T(O) の変化は粗所得の変化とみなせるから, T(O) は不変
けられるので,それを HS(Y0, i
i
,N) と表す. と仮定される.
1
5) 次の 2条件が満たされるとき,しかもそのときにのみ,実行可能な配分は 効率的 2
7) (
3.8
3)の関係の正式な証明については,付論 C.
4を見よ .
(またはパレート最適)であるという.( 1
)いかなる実行可能な再配分も,あるグルー 2
8) 性質 3
.4の証明については,付論 C.5を見よ.
プの家計の効用をその他のグループの家計の効用水準を低下させるか,または余剰を 2
9) この点は後に詳しく説明されるが,任意の効率的配分が適当な所得税を課すことに
減少させることなくして高めることはできない.( 2)いかなる実行可能な再配分しあ より達成できることを述べた命題 3
.10からも明らかである.
るグループの家計の効用を低下させることなくして余剰を増加させることはできない. 3
0) もう 1つのよくなされるゾーニングの形態は,最小敷地,最大敷地,建築物の高さ
任意の HSモデルの解がこの意味で効率的であることは容易にわかる. 等に関わる密度ゾーニングである前にも触れたように,本書の枠組ではゾーニング
1
6) 前 と 同 様 R(r),n
(r)
,s(r) および乃は,それぞれ市場地代曲線,人口分布, の検討はあまり重要でないため,土地利用ゾーニングのみが検討される[最小敷地ゾ
敷地規模関数,都市境界距離を表す. G*は均衡における所得税である. ーニングについては,原書の 7.
2節を参照されたい (訳者注)].
1
7) uは固定されているから,仮定2
.3は HS(Y0, 五
, N) モデルの解の存在およびそ 3
1) これは便宜上の問題にすぎない.税が土地所有者と賃借人のどちらによって支払わ
の 一 意 性 に と っ て 必 要 で は な い ま た , 仮 定2
.2において T(O)<Y を仮定する必要 れるとしても, この小節の主要な結論に差は生じないことが容易にわかる.
3
2) ここで比例的土地課税の場合, RA>O が暗に仮定されている. RA=Oの場合には,
もないことに注意されたい.士地の総面積『 L(r)drが無限大であると仮定すれば,
△R は常に 0となり,比例的士地課税は均衡土地利用になんら影響を与えない.
仮定 3
.2も不要となる.しかし,『 L(r)dr<oo ならば,仮定 3
.2は Gの各値のもと 3
3) 例えば, Muth(l969) および M
ill
sandHamilton(l984)を見よ.
で方程式 (
3.6
4)に bの解が存在することを保証するために必要である. 3
4) すなわち, Fは規模に関して収穫不変であり,厳密な準凹関数である.また, Fは
1
8) これらの点の証明については,性質 4
.10および命題 4
.3の直前の議論を見よ. 2回連続微分可能であり,次の性質を持つ. oF/oL>O, oF/oK>O, o2F/oL
又0,
1
9) 開放都市モデル COCAおよび OCP) の同様な比較は, 5.
4節でなされる. がF/oK反 0
,li
mL-oOF/oL=co,l
imKooF/oK=co.

I02

3
5) (
3.9
4)式は次のようにして得られる . m
axs
..(RH(r)F(s, k)-k)/s=maxs,k
{RH(r)F(l, k
/s)-k/s}=maxs,k,q{[(Y-T(r)-Z
(q, u))/q]F(l, k/s)-k/s}
=maxs.k,q{[(Y-T(r)-Z(q, u))/q]F(l, k/s)-k/sl
q=F(s, k
)}(Fの規模に
関する収穫不変の性質により自由度があるため)= maxs,.{[(Y-T(r)-Z(F(s, 第 4章均衡土地利用と最適土地利用:
k
), u))/F(s, k)]F(s,k)/s-k/s}=maxs,k{[Y-T(r)-Z(F(s, k
), u)]/s-k
/
複数家計タイプのケース
s
}.これより (
3.9
4)が得られる.また,( 2
.75
)の縮約形モデルでは,この付け値関
数は直接導出される.

4
.1 は じ め に

本章では複数家計タイプのケースを考えるが,内容的には前章のものに平行
して議論される.第一に,付け値曲線アプローチの厳密な数学的基礎を確立す
るために,適切な性質をもつ付け値関数および敷地規模関数の概念を導入する.
次いで 4
.3節において,不在地主所有のもとでの閉鎖都市モデルという設定条
件で均衡土地利用を定義し,その存在および一意性を示す. 4
.4節では,最適
土地利用を定義し,その存在および一意性を示す.第 3章での議論と同様,我
我は境界地代曲線を用いて,均衡土地利用および最適土地利用の存在お、よび一
意性を証明するのに図形的なアプローチをする. このことは,均衡土地利用お
よび最適土地利用の計算のための単純なアルゴリズムにも結びつく. 4
.5節で
は,均衡土地利用と最適土地利用を比較し,競争均衡は社会的に効率的である
との結論を引き出す. 4
.6節では,均衡土地利用の比較静学分析を行う.再び,
境界地代曲線を用いた方法により,人口および所得の変化が均衡土地利用に及
ぽす効果を調べる.
存在および一意性の問題に対して境界地代曲線を用いる我々の方法は数学的
に単純であり, しかも直観に訴えるが,それは非常に強い条件,すなわち,問
題に関係する 一連の付け値関数は勾配の大きさによって順序づけられる, とい
うことを必要とする. したがって, この方法はある限定された範囲の問題だけ
にうまくいく.そこで,付け値関数の順序づけに関する仮定がなくても均衡土
地利用および最適土地利用の存在と一意性もしくはそのいずれかを証明できる
のかは,当然に発せられる疑問である.結論的には, この仮定は一意性にとっ
ては不可欠であるが,存在には必要ではない. しかしながら, この仮定抜きの

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