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引用と要約:悪い要約例

日本語表現法IB
(直接引用と間接引用)
[原典] 世界には,色を表す単語が数えるほどしかない言語もあれ
ば,無数にある—それこそ色の名称や表現が多彩な—言語もある。
なぜ,こうした違いがあるのだろうか。それは,色彩豊かな環境
引用と要約 に住んでいれば,色を細かく区別する必要があるし,砂漠や荒地
の環境とか氷や雪の世界で生活していれば,そんな必要性はない
からである。 (鈴木光太郎著「オオカミは少女はいなかった」
新曜社 2008年)

確認用
•[要約] 鈴木(2008)は,世界には色を表す単語が数えるほどしかな
い言語もあれば,無数にある言語もあると指摘する。さらに,こ
うした違いは,色彩豊かな環境に住んでいれば,色を細かく区別
する必要があるし,砂漠や荒地の環境とか氷や雪の世界で生活し
ていれば,そのような必要性はないからだと説明している。

引用と要約 引用と要約:良い要約例
(直接引用と間接引用) (直接引用と間接引用)
[原典] 世界には,色を表す単語が数えるほどしかない言語もあれば, [原典] 世界には,色を表す単語が数えるほどしかない言語もあれ
無数にある—それこそ色の名称や表現が多彩な—言語もある。なぜ, ば,無数にある—それこそ色の名称や表現が多彩な—言語もある。
こうした違いがあるのだろうか。それは,色彩豊かな環境に住んで なぜ,こうした違いがあるのだろうか。それは,色彩豊かな環境
いれば,色を細かく区別する必要があるし,砂漠や荒地の環境とか に住んでいれば,色を細かく区別する必要があるし,砂漠や荒地
氷や雪の世界で生活していれば,そんな必要性はないからである。 の環境とか氷や雪の世界で生活していれば,そんな必要性はない
(鈴木光太郎著「オオカミは少女はいなかった」新曜社 2008年) からである。 (鈴木光太郎著「オオカミは少女はいなかった」
新曜社 2008年)

•[要約] 鈴木(2008)は,世界には色を表す単語が数えるほどしかない
言語もあれば,無数にある言語もあると指摘する。さらに,こうし •[要約] 鈴木(2008)によると,色の名前がいくつあるかは言語に
た違いは,色彩豊かな環境に住んでいれば,色を細かく区別する必 よって大きく異なるという。その理由として,その言語の話者が
要があるし,砂漠や荒地の環境とか氷や雪の世界で生活していれば, 暮らしている環境が色彩豊かであれば,色の名前は多く,そうで
そのような必要性はないからだと説明している。 ない場合は色の名前も少なくなることを挙げている。
引用と要約 引用と要約
(直接引用と間接引用) 要約 (直接引用と間接引用)
要約
• 会田(1972)は, ヨーロッパの歴史は革命に
よって急激な変化を起こすのに対し, 「日本 • 会田(1972)は, 日本の歴史をヨーロッパの視
では社会構造は『しだいに変貌して行く』 点から捉えることに警鐘を鳴らしている。つま
(p.117)」のだとしている。 引用 り,「日本では社会構造は『しだいに変貌して行
要約 く』(p.117)」という点で, 革命が歴史を変えた
• ヨーロッパの歴史は革命によって急激な変 ヨーロッパとは本質的に異なるという考え方で
化が生まれてきた(会田1972)。それに反して, ある。
「日本では社会構造は『しだいに変貌して行 引用
く』(p.117)」ことが多い。
引用

長い引用 長い引用
• 2行以上にわたるとき(1行半以上) • 2行以上にわたるとき(1行半以上)

イー(1982)は, 日本人と西洋人の空間意識の違いを次のように述べる。 日本人と西洋人の空間意識の違いについて, 次のような指摘がある。

ギリシアの広場文化を生んだ欧米人は広い空間で安定を求めようとし, ギリシアの広場文化を生んだ欧米人は広い空間で安定を求めようとし,
四畳半の茶室の畳で伝統の血脈を継いできた日本人は, 狭い空間で安静 四畳半の茶室の畳で伝統の血脈を継いできた日本人は, 狭い空間で
を味わうことができる(略)。 (p. 160) 安静を味わうことができる(略)。 (イー 1982, p. 160)

上記のような違いが, 日常生活の具体的な違いとなって, さまざまなところ 上記のような違いは, 日常生活の具体的な違いとなって, さまざまなとこ


に現れていることをさらに指摘している。 ろに現れていることがさらに報告されている。
引用・要約の際の表現 孫引き: なるべく避ける
• 例
– 野田・迫田・渋谷・小林 (2001)によると、〜。 • 孫引き
– 小笠原(2002)やラーセン-フリーマン・ロング(1995)で – 文献から、第三者が言ったことを引用して
は、〜という結果が得られている。 くること
– 野田他(2001)は、〜と主張するが、澤崎(2003)は、〜と
結論づけている。
– それに対して黒田(1997; 2001; 2003)は、〜という見解 • これについては、Yamashita (1997)の実
を示している。
験結果が澤崎(2003)で報告されている。
– 〜という報告がある一方(澤崎 2003)、〜とする意見も
あり(澤崎 2003; 山下 2001; 2002)、一致した見解が得 • これについては、Yamashitaの実験が澤
られているとは言い難い。
崎(2003)で紹介されている。
– 〜に関しては〜などの理由が挙げられる(澤崎 2001a;
2001b)。

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