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愛知学院大学文学部 紀 要 第49 号

ホスピタリティとサービスの異同に関する一考察
──コミュニケーションの成立基盤に着目した ホスピタリティ の解釈──

松 岡 昌 幸

Abstract

The present study is undertaken in order to clarify the difference between hospitality and service
and how hospitality should be interpreted in the context of services.The term “hospitality” is used
as a brand-like label in the tourism industry. In particular, it is clearly different from services.
However, the Japanese translation “Motenashi” means having something and taking action. The
flow of that action is the way the service is offered. Under an interpretation that focuses on the
foundation of communication (context), hospitality is interpreted as “a method of communicating”
or supplying a service that feels somewhat special in that particular context. Also, if referred to “as
a service”, a new type of service called “hospitable service” (Motenashi service) is possible.

Keywords: Hospitality, Service, Communication, Context

ックな行為であり,明らかに峻別することが必要
1.はじめに
である。前田(2007)は,サービスとホスピタリ
「ホスピタリティ」という言葉は,現代社会に ティの異同に関して,ホスピタリティの語は 歓
おいて,その規範的価値や行動規範が誤用され, 待精神・行動規範 を意味する場合と,ビジネス
観光産業中心に広がる傾向にある。日本語では 用語としての場合とを明確にする必要があり,
「もてなし」と同義語に理解され,ホスピタリテ 「ホスピタリティ」は,前者の意味においてのみ
ィ産業という宿泊産業,旅行産業,航空産業,飲 用いるべきであり,後者の「ホスピタリティ・ビ
食産業の文脈の中で,使用されているが,本質的 ジネス」は, 一つの業種 を称したもので,特
な意味での規範的価値や行動規範の意味から離 に問題はないものの,そこでの具体的行為はホス
れ,恣意的なホスピタリティ解釈が加えられ,商 ピタリティでなく,
「∼におけるサービス」の表
業の文脈において,ブランド商品的な扱いが看取 現をとることによって,その性格をより明確にす
されるのである。本来,ホスピタリティは人類の るのに役立つものと考えられると指摘した。
社会生活史において不可避的に形成されてきた心 この両者の峻別と,
「∼におけるサービス」と
や人間の発露の文脈において語られるべきである いう表現が適切であるという指摘は,今日のホス
が,特にサービスの文脈において,身勝手に使用 ピタリティ・ビジネスの潮流に対して警鐘を鳴ら
されている傾向がある。サービスは本来,ビジネ すもので,
「∼におけるサービス」のテンプレー
ス活動の一環として行われるもので,利益を目的 トに当てはめて,「サービス」の文脈において整
とする有償的な経済的行為で,ホスピタリティ 理されるべきであることを示唆するものである。
は,心や人間の発露を中心とする無償性のパブリ 福原(2008)は,今日の社会においては,サー

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ビスだけでは,ゲストが満足せず,そのビジネス し,さらに両者の語源を整理した。次にコミュニ
の上に,ホスピタリティが期待されているという ケーションに言及した各研究者のホスピタリティ
潮流があることを指摘し,さらに異質であるもの とサービスとの異同および留意点を整理した。最
の,ホスピタリティとサービスはお互いに関係し 後にコミュニケーションの成立基盤に着目し,新
合うものであることを指摘した。福原(2008)の たにホスピタリティの解釈を試みた。
指摘は,今日のサービス社会においては,ホスピ
2.ホスピタリティとサービスの意味と語源
タリティ的な「心あるサービス」が必要であり,
両者の関係性による共創は,現在の経済社会にお ホスピタリティの一般的な意味は,「おもてな
けるブランド化であり,不可逆的なものであるこ し」「おもてなし心」「歓待,厚遇,しつらえ」等
とを主張するものと考えられる。しかしそのよう とされているが,数々の辞書で調べると,以下の
なビジネス行為であるサービスとパブリック的な Table 1のように整理することができる。
ホスピタリティの関係を,どのように考えるべき その Table 1によると,「親切にもてなす」ある
であろうか。本研究は,今日のサービスとホスピ いは「歓待」の意味が多く見いだされる。また米
タリティの意図的な誤用に伴う不可逆的な潮流を 国 の ウ ェ ブ ス タ ー の 辞 書 に よ る と, 形 容 詞 の
かんがみ,ホスピタリティとサービスが今日の社 「Hospitable」(ホスピタブル)は,
「ゲストに対す
会において,どのように使用されているか,ホス る友好的でかつ気遣い」と説明されている。さら
ピタリティをサービスの文脈において,どのよう に Table 2は,辞書の説明で多く引用されている
に解釈したら良いか,そしてホスピタリティをコ 「歓待」の意味を整理したものである。
ミュニケーションの文脈において,どのように解 Table 2によると,
「歓待」とは,親切に「もてな
釈したらよいかを明らかにすることを目的とする すこと」とあり,ディリーコンサイス辞書(1979)
ものである。 には,「温かい接待(レセプション)」と説明され
これまでのホスピタリティの先行研究として, ている。ホスピタリティと歓待の共通は,
「もて
佐々木・徳江(2009)は,米国は産業研究が主体 なし」(持て成し)であるが,ホスピタリティと
であり,欧州は思想研究が主体となっていること は,客や外来者に対して,何か特別に「持て成
を指摘しているが,日本においては,ホスピタリ す」行為や,
「歓待」をする行為であり,そこに
ティの起源や解釈に関する研究1),観光産業を中 はゲストに対するホスト側の温かい接待行為が含
心とするホスピタリティ・マネジメント(人的資 まれると整理できる。しかし特別な「持て成し」
2) 3)
源)の研究 ,ホスピタリティの思想的な研究 や「接待」をするという行為は,今日の観光産業
に大別することが可能である。しかし日本におい 等で推進されているサービスの行為に置き換える
ては,ホスピタリティに関する研究が十分にされ ことも可能である。つまりサービスの行為にも
ているとは言えず,いまだ議論の渦中にあると考 「奉仕」や「接待」「給仕」の意味が含まれ,極め
えられる。 てホスピタリティの概念と類似するのである。し
さらにホスピタリティをコミュニケーションの かし,一方でサービスという言葉には,
「軍隊」
視点からとらえた研究は少なく,特に異文化コミ 「用役」
「召使」
「奴隷」等の意味も看取され,例え
ュニケーションの領域から接近した先行研究が見 ば Table 3の Webster’s New World Dictionary(1978)
あたらないのが現状である。よって当研究は異文 によると,
「セルバス」
(servus)や,「スレイブ」
化コミュニケーションの領域から,特にコミュニ (slave)のような語源に基づく解釈もされている。
ケーションの成立基盤(文脈)に着目することに よって,サービスとホスピタリティは,語源的に
よって,サービスの文脈におけるホスピタリティ は違う意味を含むということに留意しなければな
を解釈することを目的とする。最初に数々の辞書 らない(Table 3を参照)。
から,ホスピタリティとサービスの意味を確認 服部(2004)によると,ホスピタリティの語源

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ホスピタリティとサービスの異同に関する一考察(松岡)

Table 1 ホスピタリティの意味

意 味 出 典
親切にもてなすこと,歓待,厚遇。 ライトハウス英和辞典(1984),研究社。
親切なもてなし,歓待,厚遇。 ディリーコンサイス英和辞典第4版(1979),
三省堂。
(客などを)親切にもてなすこと。歓待。 岩波英和大辞典(1970),岩波書店。
(客や外来者に対する)手厚いもてなし,歓待。 グローバル英和辞典(1985),三省堂。
( 客に提供される ) 宿舎,食事等。
客を親切にもてなすこと。また,もてなす気持ち。 広辞苑第6版(2008)。
Hospitality: the act. practice, or quality of being hospitable. Webster’s New World Dictionary (1978),
Fawcett Popular Library.
Hospitable: friendly and solicitous toward guests, new arrivals, etc. Webster’s New World Dictionary (1978),
Fawcett Popular Library.

Table 2 歓待の意味

意 味 出 典
喜んで,心をこめてもてなすこと。 新明解国語辞典第3版(1981),三省堂。
手厚く親切にもてなすこと。 常用国語辞典(1983),集英社。
手厚い待遇。親切なもてなし。 広辞苑第2版・第3版・第6版(1969,1983,
2008),岩波書店。
《give》a warm reception; hospitality. ディリーコンサイス和英辞典第4版(1992),
三省堂。
Welcome; give a warm reception. トラベル英和辞典(1981),旺文社。

Table 3 サービスの意味

意 味 出 典
(無料)奉仕,来客が満足するような心のこもった応対をす 新明解国語辞典第3版(1981),三省堂。
ること。値段を安くしたり景品を添えたりして売ること。
(経
済学で)用役。
奉仕,勤務,給仕,接待。 常用国語辞典(1983),集英社。
奉仕,給仕,接待,商売で値引きしたり客の便宜を図ったり 広辞苑第2版・第3版・第6版(1969,1983,
すること。物質的生産過程以外で機能する労働。用役。用務。 2008),岩波書店。
(競技用語)サーブに同じ。
(慈善などの)奉仕。骨折り。(公共への奉仕)交通等の便。 グローバル英和辞典(1985),三省堂。
(郵便,電話,ガス,水道等の)施設,供給。尽力,勤め,
勤務,軍隊,兵役,礼拝,給仕等。(ホテル等の)客扱い。
(商品の)アフターサービス。
(競技)サーブ,サーブ権。軍
用の,軍隊の。
Service: give good (bad) service. ディリーコンサイス和英辞典第4版(1992),
三省堂。
〈Servus, a Slave〉The occupation of a servant. Public employment Webster’s New World Dictionary (1978),
(diplomatic service). Work done for others (repair service). Any Fawcett Popular Library.
religious ceremony. Benefit; advantage. Friendly help; also,
professional aid. The act or manner of serving food. A set of articles
used in serving. A system of providing people with some utility as
water or gas. The act or manner of serving in tennis.
(Serviceable)That can be of service; useful, that will give good Webster’s New World Dictionary (1978),
service; durable. Fawcett Popular Library.

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愛知学院大学文学部 紀 要 第49 号

は,ラテン語の「ホスペス」
(hospes)という言 以上,語源からわかることは,ホスピタリティ
葉が最初の派生の源になっているとし,その形成 およびサービスという言葉は,古代から,中世を
過程をみると,2系統の語源系列が存在し,1つの 経て,現代に至るまで,「派生」と「借入」を繰
系統が,「可能な」とか「能力のある」という意 り返しながら,形成された言葉であり,その形成
味を持つラテン語の「ポテス」(potis)で,「力・ 過程においては,明らかに両者の異同が認められ
権力」「可能性」「有力な」「可能な」「所有する」 るということである。
を意味するとしている。また,一方の「ホステ
3.ホスピタリティとサービスの異同と留意点
ス」
(hostis)には,「ローマ領の住民でローマ市
民と同等の権利義務を持つもので,味方としての 川村(2004)は,茶の湯の世界観に言及し,日
余所者」としている。さらに服部(2004)による 常性と非日常性に違いがあることを指摘し,「茶
と,「ホステス」には,後のラテン語によって の世界は,やることは歓待としつらえであり,道
「他人,外国人,敵としての余所者」という意味 具を用意して,庭を掃いて整える。やっているこ
に変化し,以上のような派生語を持つ「ポテス」 とは,実は日常的なことで,それを極めて非日常
と「ホステス」の合成語がラテン語の「ホスぺ 的なことに置き換えて演出しているが,そこでコ
ス」で,この経路によって合成された「ホスぺ ミュニケーションがあり,とても楽しかった等,
ス」の原義は「客人の保護者」を示し,「主催者, たった一椀のお茶を呑むために,お菓子を食べる
来客,外国人,異人」等,主人と客人が同一であ のであるが,まさにその世界こそがホスピタリテ
ることから,「主客同一」を意味すると整理して ィではないか」(p. 11)と論じている。
いる。 さらに内田(2004)は,ホスピタリティは不等
またサービスの語源は,服部(2004)による 価な交換,多様性である構造,
「阿吽の呼吸」等
と,「エトルリア語」(Etruscan)から派生したラ において展開されるものであるが,サービスは主
テン語形容詞「セルバス」(servus)で,
「奴隷の」 に等価交換によって成り立っていると論じた。さ
「地役権のある」の意味が,名詞化して,「セルバ らにコミュニケーション方法にも言及し,場の議
ス」もしくは「セルボス」
(servos=奴隷,戦利 論を持ち込まないとホスピタリティは,本来あり
品として獲得した外国人)へと派生したとしてい えないとし,
「右・左」あるいは,
「正しい・悪
る。また服部(2004)によると,サービスにも2 い」等に峻別する西洋哲学とは違う東洋哲学,い
つの系統があり,1つの系統には,
「セルボス」 わば仏教等の東洋哲学や思想が大切であり,例え
から派生したラテン語の「セルビール」
(servire ば「阿吽の呼吸」のような,言葉に頼らないコミ
=仕える,奴隷になる)への派生がみられ,後に ュニケーション方法が極めて大切であることを論
英語に借入され,
「サーブ」(serve=仕える,尽 じている。
くす)
,「サブサービエント」(subservient=屈従 矢野(2004)は,ホスピタリティは不測の事態
する,卑屈な)
,「サーバント」
(servant=召使, にも対応が可能であるが,サービスはあらかじめ
使用人),「サージェント」
(sergeant=軍曹),「デ 規定した状態に対応すると論じた。さらにコミュ
ィザーブ」(deserve=値する)等に連結している ニケーションにおける文脈を共有しなければ,ホ
とした。さらに別の系統には,「セルビティウム」 スピタリティは存在しなく,お互いが文脈を共有
(servitium=奴隷の身分・状態,奉公,屈従)等 することにより,初めてホスピタリティが成立す
に派生し,さらに古フランス語に借入されて「セ ると指摘した。また矢野(2004)は,人間には言
ルビス」(servise)になり,後期古英語に借入さ 葉以外に,視覚や雰囲気があり,いわゆる五感を
(service=勤め)となり,現在
れて「サービス」 使って,場所の意味,つまり文脈を作りながらコ
の「サービス」(service)に繋がったと整理して ミュニケーションを行うとし,ホスピタリティは
いる。 限定できない状況で,相手の意図をいかに予測す

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ホスピタリティとサービスの異同に関する一考察(松岡)

るのかを問題にしていると論じた。 が,サービスの文脈においても「サービス・マイ
さらに福原(2008)は,ホスピタリティは渡し ンド」という言葉があり,単に神経系だけにとど
手が「してさし上げる」ことではなく,受け手の まらず,「内臓系」のサービス形態が存在してい
ゲストが「感じる」ことで,ゲストの自己実現に ることに留意する必要がある。
ならなければ成立しないものであり,サービスは システムに着目した矢野(2004)は,ホスピタ
「して上げる」こと,渡し手がゲストにお届けす リティが発揮できる条件として,システムそのも
るべきことであると論じた。この解釈は,ホスピ のが開放的であることの重要性を指摘し,
「系」
タリティが受け手の論理で展開するものであり, が開放的でないと,さまざまな秩序を作る余地が
サービスは送り手の論理で展開し,ゲスト側とホ 消滅することにより,発展がなく,開いた場で行
スト側の文脈が違うことを示すものである。さら うことがホスピタリティの基盤であることを指摘
に福原(2008)は,ホスピタリティは「質で感じ した。矢野(2004)が指摘する「系」は,組織や
られる」ことが多いのに対して,サービスは「量 部門等の分類であるが,コミュニケーションの場
で測れる」ことが多く,今日の社会においては, 所と言い換えることが可能である。
サービスだけではゲストが満足せず,ビジネスの 山上(2011)は,ヒト対ヒトという人的態度に
上にホスピタリティが期待されているという潮流 関するホスピタリティやサービスには,一般に①
があることを指摘した。さらにホスピタリティと 無形成・即時性,②非貯蔵性・不可分性,③異質
サービスは,お互いに関係し合うものであるが, 性,④閑散時の需要創造における時間配分等の4
例えば「塩」と「だし」のように明らかに異質の つの類似的な特性があるとした上で,サービスと
ものであると論じた。福原(2008)の指摘は,今 ホスピタリティの本質的な内容においては,①主
日のサービスだけでは,ゲストは満足が得られな 従関係に基づく従業員から,相互信頼関係に基づ
く,他に何か特別のものを求めていることを意味 くスタッフへの相違点,②マニュアル化の経済合
する。 理性から,先回り・先読みの気づき重視へ等の2
山本(2004)は,ホスピタリティは決められた 点の違いがあることを指摘した。
「マニュアルから外れる世界」であり,サービス また,山上(2011)は,ホスピタリティは対価
は「マニュアル内の世界」で展開されることを指 や見返りを直接に求めなく,さらに単に利益追求
摘している。さらにホスピタリティは「公共的, という目的ではなく,顧客の満足度を高めるため
人間的」な文脈において展開し,サービスは「商 の先読み,先回りの「気配り,心配り,目配り」
品の論理,コスト・パフォーマンス」の文脈で展 の気づきを実行するものであると指摘している。
開することを指摘している。また,哲学的な問題 その的確なる気づきにより,高い感動をゲストへ
設定の中に,「非分離・述語性・場所性」の原理 与えることができることを喜びとするものであ
において,非分離の状態が設定されて,述語的な る。最適なホスピタリティをゲストに提供できれ
関わりが技術化され,しかも場所という文脈を持 ば,必然的に満足度も高まり,その人々は固定客
っているところに,ホスピタリティが生かされ, となり,結果的に利益が増加することになると指
サービスは非分離と述語性と場所性を全部消し 摘した。さらに山上(2011)は,ホスピタリティ
て,「分離」状態と主語性と場所性の欠如によっ に対する日本語訳の「もてなし」の語意は,教
て成り立っていると論じた。さらにホスピタリテ 養・性格等によって培われた「ふるまい」
「饗す
ィは,すべての五感を働かせる「内臓系」の論理 る」「身のこなし方,立居振舞い」であり,人に
で展開,サービスは表面的で過敏の働きである 対する態度・饗応・待遇等を意味し,「おもてな
「神経系」で展開すると論じた。これらの山本 し」とは,ゲストを招待し,食事や贈物を供して
(2004)の指摘は,明らかにホスピタリティとサ コミュニケーションを密にすることを意味すると
ービスの性格が違うことを指摘するものである 論じている。

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愛知学院大学文学部 紀 要 第49 号

塹江(2003)は,ホスピタリティとサービス概 間的な文脈で発生するものであり,サービスはコ
念の比較において,ホスピタリティは表面上の人 スト・パフォーマンスの文脈で発生する。第9
的要素において,サービスの精神,サービス的態 に,ホスピタリティは「非分離・述語性・場所
度,犠牲的精神,奉仕の精神に関しては何も変わ 性」,サービスは「分離・主語性・場所性の欠如」
らないが,内面的な人的要素には,ホスピタリテ という特徴がある。第 10に,ホスピタリティは
ィが,「容認・理解・信頼・扶助・依存・発展」 システムの開放性が必要であり,サービスはシス
の6つの相互関係を基礎とした平等な協調関係が テムが閉鎖性であるという特徴がある。第11 に,
あるのに対し,サービスは一時的な主従関係,一 ホスピタリティは先回りの「気配り,心配り,目
時的上下関係,一時的服従が存在すると整理して 配り」の気づきの対等な対応であり,サービスは
いる。さらに塹江(2003)は,ホスピタリティの 「相手を取り扱う,あしらう,何となく処理する,
構成要素として,ホスピタリティは,人と人が対 対応して取りさばく」等の一方的な対応という特
面する時に相互間に生じる精神的・心理的な満足 徴がある。第 12に,ホスピタリティは「容認・
感を与える「人的要素」がその基盤となり,それ 理解・信頼・扶助・依存・発展」を基盤とする6
以外には「物的要素」
「創造的要素」
「機能的要 つの協調関係という特徴があり,サービスは一時
素」がホスピタリティを構成する要素であり,近 的な主従関係,一時的上下関係,一時的服従関係
年の激しい競争に生き残りをかける各企業は,経 の特徴があると整理することができる(Table 4
営者と従業員が今まで以上に相互間のコミュニケ 参照)。
ーションを図り,ゲストとの対応では,これまで Table 4内の文脈は,コミュニケーションの場
以上の売り手と買い手の間における一時的な服 を追記したもので,多くの研究者が,コミュニケ
従・上下関係を構築することを基盤とする「サー ーション方法や文脈に言及していることが看取さ
ビス概念」でなく,顧客と相互主義の立場で心か れる。また一方的な行為か,相互共生,共創,共
ら「もてなし」をすることを基盤とする「ホスピ 感等を基盤とする双方向的な行為かに分け,その
タリティ概念」により,ゲストの精神的な満足を 異同を強調している研究者が多いことも確認でき
得ることを目指していると論じている。 る。しかし両者の異同に関しては,以下のことに
以上,ここまでの「ホスピタリティ」と「サー 留意する必要がある。
ビス」の異同を整理すると,第1に,ホスピタリ 第1に,両者の異同は確認できるが,このよう
ティは,非日常性の文脈で演出され,サービスは な二元論となると,ホスピタリティは「心が有
日常性の文脈で演出される。第2に,ホスピタリ り」,サービスは「心が無い」という印象になる
ティは不等価の交換であり,サービスは等価交換 こと,あるいはホスピタリティが「先進」であ
である。第3に,ホスピタリティはコミュニケー り,サービスが「後進」のような印象操作に陥り
ション方法における不測の事態対応であり,サー やすいことに対しての注意が必要である。つまり
ビスは規定状態の対応である。第4に,ホスピタ 単純な二元論では,ビジネスの文脈において,ホ
リティは受け手の論理で展開し,サービスは送り スピタリティ形成の優位性が強調される傾向があ
手の論理で展開する。第5に,ホスピタリティは る。例えば,Table 4の⑦で整理された,ホスピ
「質」で感じるものであり,サービスは「量」で タリティの「内臓系=五感」,サービスの「神経
測るものである。第6に,ホスピタリティはマニ 系=表面的で過敏な働き」は,ホスピタリティは
ュアル外の対応であり,サービスはマニュアル内 「心ある対応」で,サービスは「心ない対応」の
での対応である。第7に,ホスピタリティは五感 印象操作に陥りやすいと考えられ,また Table 4
を基盤とする「内臓系」での応対であり,サービ の⑪,ホスピタリティの「先回りの対応」
,サー
スは表面的で過敏を基盤とする「神経系」的な働 ビスの「一方的な対応」は,ホスピタリティは
きである。第8に,ホスピタリティは公共的・人 「細心な対応」であり,サービスは「ホスト本位

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ホスピタリティとサービスの異同に関する一考察(松岡)

な対応」であるという印象に陥りやすいと考えら 成しているのは,コミュニケーションの関わり方
れる。よってサービスの文脈においても,サービ や,方法論に影響していると考えられるのである。
ス・マインドの言葉があるように「心ある対応」 石井(2001)によると,コミュニケーションは
が既に実行されているという認識が必要である。 真空状態では成立することはなく,コミュニケー
第2に,Table 4の⑧のホスピタリティが,「公 ションが成立し機能するためには,文脈が不可欠
共的・人間的文脈」でなく,商業の文脈での経済 であるとし,コミュニケーションの成立基盤に
行為で利用された場合は,現在の産業内で実践さ は,「対人的コンテキスト」
「物理的コンテキス
れているサービス行為と何ら変わらなく,それは ト」「社会・文化的コンテキスト」の3種類のコ
サービスの文脈における特別な名称が与えられて ンテキストがあると指摘している。また Hall &
いるに過ぎないと考えられる。前田(2007)が指 Hall(1986 勝田訳 1986)によると,コンテキス
摘したように,明確にすべきことは,ビジネス用 トには,メッセージを伝え合おうとする我々が依
語としての「ホスピタリティ」と,公共的・人間 存するもので,時間のように,文化的なものと,
的な文脈で語られる「ホスピタリティ」の峻別で 人間相互関係なものとが交差する数少ない貴重な
ある。よってホスピタリティが商業の文脈におい 点の1つとし,日本人はメッセージを解釈する際
て利用される場合は,もはや公共的・人間的な性 に,コンテキストに頼る度合の高い「高コンテキ
格を有する「ホスピタリティ」の範疇ではなく, スト文化」であると指摘している。つまり良好な
「サービス」の範疇となる。 ホスピタリティやサービスを提供するには,良好
第3の留意点は,Table 4において,ホスピタリ な場の提供,良好なコミュニケーション能力,良
ティおよびサービスともに,
「文脈」
「コミュニケ 好な対人共創力といったコミュニケーション方法
ーション」
「共創,共感をともなう対人関係」等 や,コミュニケーションの成立基盤(コンテキス
のコミュニケーション能力や,その方法を挙げる ト)が重要であることに留意しなければならない
研究者が多いことである。つまり両者の違いを形 (Table 4参照)。

Table 4 ホスピタリティとサービスの異同

ホスピタリティ サービス 文脈(コンテキスト)


①非日常性の文脈での演出 日常性の文脈での演出 社会・文化・心理的
②不等価の交換 等価交換 対人的
③不足の事態対応(コミュニケー
規定状態の対応 対人的
ションにおける文脈の共有)
④受け手の論理で展開 送り手の論理で展開 対人的
⑤質で感じるもの 量で測れるもの 社会・文化・心理的
⑥マニュアル外 マニュアル内 対人的
⑦内臓系=五感 神経系=表面的で過敏な働き 対人的
⑧公共的・人間的文脈 コスト・パフォーマンスの文脈 社会・文化的
⑨非分離・述語性・場所性 分離・主語性・場所性の欠如 文化・社会・心理的
⑩システムの開放性 システムの閉鎖性 文化・社会的
⑪先回りの対等な対応(気配り, 一方的な対応(相手を取扱う,あしらう,
対人的
心配り,目配り等の気づき) 何となく処理する,対応して取りさばく)
⑫ 容 認・ 理 解・ 信 頼・ 扶 助・ 依
一時的な主従関係,一時的上下関係,一時
存・発展の6つの相互関係を基礎
的服従関係 対人的
とした協調関係
注)文脈はコミュニケーションの成立基盤

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求 め ら れ る と 論 じ た。 前 田(2003) の 指 摘 は,
4.ホスピタリティの解釈
「サービス・マインド」は個人的な部分でのマイ
「 も て な し( 持 て 成 し )」 と い う 語 は, 服 部 ンドとともに,組織的な標準化された部分におい
(2007)によると,接頭語である「もて(持て)
」 ても,取り組むべきであることを意味し,さらに
と,「なし(成し)」が合成された名詞であり, サービスの文脈においても人間の心の部分の醸成
「もて(持て)」は,接頭語と位置づけられ,動詞 が必要であることを強調するものである。よって
の上について微妙なニュアンスを与え,意味を強 上述した商業文脈におけるホスピタリティの潮流
調する働きがあると指摘している。また,一方の は,「サービス・マインド」の文脈において考察
「なし(成し)」,または「なす(成す)」は,①そ されるべきである。つまり,「サービス・マイン
こに存在しなかったものを新たに創りあげるこ ド」という言葉が存在する以上,その領域内に
と,②産むこと,③ある行為をする,または行う 「ホスピタリティ・マインド」が含まれると考え
こと,④成し遂げる,仕上げること,⑤高貴な人 ることが常軌であり,問題は「サービス・マイン
が,ある事を行うこと,⑥別のものとする,また ド」がいつの間にか,今日の産業内において,
は別の状態にすること,⑦あるものを他に当て用 「ホスピタリティ・マインド」にすり替わり,ビ
いることとし,接頭語としてその語自体を強調す ジネスの領域で有効利用されていることである。
る意味を持っているとしている(p. 31)。さらに さらに前田(1995)は,「制度的個別化」の概
服 部(2007) は,「 も て な し( 持 て 成 し )」 は, 念図式において,その関係性から明確に「もてな
「成(なし,なす)
」の包含する革新性,完遂性, し型のサービス」を論じている。その概念図式に
高貴性な主人側の行為の成就性,変革性,応用性 よると,先ずゲストとしてサービス利用者が求め
等の意味を,接頭語の「もて(持て)」が微妙な るもの,およびホストとしてサービス提供者側の
ニュアンスを与え,意味を強めた語であると整理 対応課題は,個別化した「個としての応対」が重
している(p. 32)。服部(2007)の解釈を整理す 要であり,その応対は『組織的サービスの「標準
るならば,ホスピタリティの意味は「歓待」であ 化された部分」+個人的サービスの「標準化され
り,「もてなし」であるが,「もてなし」とは何か ない部分」』に分かれると整理した(p. 38)。そし
「モノ」を持って,「コト」を成すことによって, て前田(1995)は,「標準化されない部分」は,
何かを成し遂げることを含有する。よって『「∼」 個人的な偏りが伴い,現代においても,いわゆる
(モノを持って),「∼」(コトを成す)』を意味す 人的応対を不可欠な要素とする「ホスピタリテ
るテンプレートが可能である。そしてその行為の ィ・ビジネス」は,個人の「やり方」が全体評価
流れは,サービスが提供される方法であり,その に影響する度合が大きいとし,その最大の特徴と
行為はゲストが何か特別なものを感じるようにホ して,人が人に対して直接対応しうるという点に
ストが提供する方法論であると考えられる。 あり,状況をふまえ,利用者側の反応をとらえな
前田(2003)は,自ら構築した「制度的個別 がら,「コミュニケーションの過程」として効果
化」に基づくサービス理論で,利用者が求めるも 的な対応ができることにあるとした(Figure 1を
のとして,組織的サービスの「標準化された部 参照)。
分」と,個人的サービスの「標準化されない部 さらに前田(1995)は,一部の旅館やレストラ
分」に大別し,制度的個別化においては,
「標準 ンにみられる「相手の好みを考慮した,その人に
化された部分」を中心とし,カバーしえない面に 適ったやり方」を主とする「もてなし型のサービ
ついて,「個人的なサービス」を積極的に活用す ス」には,個人的なサービスが多用されており,
る必要があることを指摘した。さらに「サービ 人間ならではの個別的対応を表現しようとしてい
ス・マインド」を,個々人のレベルの問題として るとし,結論として,
「制度的個別化」において
ではなく,組織として確立するための取り組みが は,「標準化された部分」を中心とするものの,

─ 64 ─
ホスピタリティとサービスの異同に関する一考察(松岡)

サービス利用者 サービス提供側
の求めるもの の対応課題
個としての応対
(個別化すること)

〈サービス水準の設定〉
〈顧客ターゲットの明確化〉
「誘導」

標準化された部分 「制度的個別化」
(組織的サービス)

標準化されない部分 多様な応対が可能
(個人的サービス) (バラツキが生じる)

Figure 1 「 制度的個別化 」 の概念図式

注)「誘導」とは,人間の欲求を充足させる対象・目標そのもの,および充足させるため
の方法・手段を変換させるために外部から働きかけることを意味し,状況設定や刺激
を準備することによって,自発的に変換させることをいう。出典:前田(1995)『サ
ービス新時代』,p. 38 より著者作成

カバーしえない面について,
「個人的サービス」 サービスが「伝わる方法」であるとし,日常の住
を積極的に活用することを基本に,サービス・マ 居から離れた個人の旅行と活動の助成という言葉
インドを個々人の問題としてではなく,組織とし を強調することによって,一般的観光製品に関す
て確立するための取り組みが求められているとし る代替モデルを提示している。その代替モデル
ている。 は,5つの要因が集められる製品と提供過程の要
前田(1995)が提示した概念図式において重要 因から成り,観光におけるサービス提供を適切に
な点は,サービスの「やり方」に着目した点であ 整理し,中心から「物理的プラント」「サービス」
り,「標準化されない部分」は,個人の「やり方」 「ホスピタリティ」「選択の自由」「関与」である
が全体評価に影響し,
「サービス・マインド」を とし,この5つの要因は,単純な組合せではな
個々人のレベルとしての問題としてとらえるので く,すべての要因の相乗的相互作用の結果である
はなく,できるだけ偏りが生じないように,組織 と指摘している。Lumsdon(1977 奥本訳 2004)
としての「サービス・マインド」を確立すること は,観光のマーケティングに関係するサービス製
が重要であるという指摘である。つまり「もてな 品の考察で,Smith(1994)が指摘した5つの一
し型のサービス」は,相手の好みを考慮した「や 般的観光製品モデルに言及し,その中の「ホスピ
り方」を重視する個人的なサービスであり,ここ タリティ」は,「サービスが提供される方法,す
でも服部(2007)と同様に,「もてなし型のサー なわち,観光客が良いと感じる特別なものに関連
ビス」は,その「やり方」を重視した「サービス している。それは,サービス供給の技術的な能力
の提供方法」ということを意味すると考えられ (p. 141)と整理している(Figure
とは別である」
る。 2を参照)。
さらに,Smith(1994)は,ホスピタリティは Smith(1994)のホスピタリティの解釈は,ホ

─ 65 ─
愛知学院大学文学部 紀 要 第 49 号

FC

PP

Figure 2 一般的観光製品モデル
注)PP: 物理的プラント,S : サービス,H : ホスピタリティ,FC : 選択の自由,I : 関与
出典:Lumsdon, L.(1997),奥本勝彦訳(2004)『観光のマーケティング』,p. 141; Smith
(1994),p. 587を参考に著者作成。また Smith が提示した「一般的観光製品モデル」は,
Elsevier Ltd. より使用許可済み(Dec. 21, 2019)

スピタリティは,サービス概念のように並列され いて,ホスト及びゲストが双方向的に何か特別な
るものではなく,あくまでも「伝達・供給される ものと感じる サービス が伝達・提供されるコ
方法」を強調するものであり,ゲストに何か特別 ミュニケーション方法」と解釈することが可能で
なものを感じる「やり方」を重視する「伝達方法 ある。そのサービスが伝達・提供される方法と
論」である。この伝達される方法という視点は, は,サービスの文脈における技術的なものとは異
先述の服部(2007)の方法論としての「持て成 なり,ゲスト及びホストが双方向的に抱く特別な
す」,前田(1995)の方法論としての「やり方」 感情を含む「共創,共感等のサービスが提供され
に整合するものと考えられる。 る方法論」を意味する。そしてその方法論は,コ
これまでのサービスとホスピタリティの異同に ミュニケーションの成立基盤(文脈)において,
関する考察に基づくと,ここでは以下のような解 サービスが提供される方法論を強調する解釈であ
釈が可能となる。ホスピタリティは,サービスと る。
二元論的に並列するのでなく,両者の異同は認め
5.まとめと課題
られるものの,先述のキーワードである「文脈」
「コミュニケーション」「共創,共感をともなう対 「ホスピタリティ」の一般的な意味は,「おもて
人関係」に言及するコミュニケーション方法に着 なし」「おもてなしの心」「歓待,厚遇,しつら
目した解釈が望ましいと考える。つまり,サービ え」であるが,サービスとは明らかに違う概念で
スが伝達される成立基盤において,「サービスが ある。また両者の語源からわかることは,古代か
伝達・供給される方法」に着目した解釈が望まし ら中世を経て,現代に至るまで,「派生」と「借
い。よってサービスの文脈において,ホスピタリ 入」を繰り返しながら,形成された言葉であり,
ティとは,「コミュニケーションの成立基盤にお その過程においても,サービスとの違いが確認で

─ 66 ─
ホスピタリティとサービスの異同に関する一考察(松岡)

きる。ホスピタリティの原義は,ラテン語の「ホ ル」を構築することが喫緊の課題である。
スペス」(客人の保護者)であり,サービスの原
義は,「セルバス」(奴隷の,地役権のある)であ 補注
る。 1)例えば,ホスピタリティの解釈に関する研究は,
ホスピタリティとサービスの異同に関する考察 大島愼子(2012)「ホスピタリティ研究の課題」筑
波学院大学紀要第7集を参照。また起源に関して
に基づくと,ホスピタリティは,サービスと二元
は,中川伸子(2011)「ホスピタリティの起源」神
論的に並列するのではなく,両者の異同は認めら
戸女子短期大学論攷 56巻を参照。さらに解釈・起
れるものの,ホスピタリティの解釈は,
「文脈」 源に関しては,佐々木茂・徳江順一郎(2009)「ホ
「コミュニケーション」「共創,共感をともなう対 スピタリティ研究の潮流と今後の課題」高崎経済大
人関係」に言及するコミュニケーション方法に着 学付属研究所紀要第 44巻第2号等を参照。
目した解釈が有効である。 2)例えば,ホスピタリティのマネジメントに関する
研究は,服部勝人(2006)『ホスピタリティ・マネ
今日の観光産業において,
「ホスピタリティ」
ジメント学原論』丸善,山上徹(2005)『ホスピタ
という言葉は,ブランド的な扱いで使用されてい
リ テ ィ・ マ ネ ジ メ ン ト 論 』 白 桃 書 房, 吉 原 敬 典
る。サービスとは明らかに異同が認められるが, (2005)『ホスピタリティ・リーダシップ』白桃書
日本語訳である「持て成し」は,「何か(モノ) 房,星野晴彦(2012)「社会福祉サービスにホスピ
を持って,
(コト)を成す」ことで,その行為の タリティ・マネジメントを導入する可能性に関する
流れは,サービスが提供される方法であり,コミ 検討」文教大学人間科学部第 34号等を参照。また
産業研究に関しては,山上徹(2011)『ホスピタリ
ュニケーションの成立基盤(文脈=コンテキス
ティ精神の深化』法律文化社,竹内一良(2007)
ト)に着目して解釈すると,ホスピタリティは
「観光業界におけるホスピタリティの理論的考察」
「コミュニケーションの成立基盤において,何か 日本観光ホスピタリティ教育学会第2号,福永昭・
特別なものと感じる サービス が伝達・供給さ 鈴木豊編(1996)『中央経済社』,佐々木茂・徳江順
れるコミュニケーション方法」という解釈が成り 一郎(2009)「ホスピタリティ研究の潮流と今後の
立つ。 課題」高崎経済大学付属研究所紀要第 44 巻第2号
等を参照。さらに人的資源に関しては,永田美江子
今後の課題としては,前田(1995)が指摘す
(2012)「ホスピタリティと人的資源に関する考察」
る,サービスは,働きのサービスを優位とする Core Ethic Vol. 8等を参照。
「機能的サービス」と,やり方のサービスを優位 3)例えば,ホスピタリティの思想研究に関しては,
とする「情緒的サービス」の2つの異なる性格の 滝本往人(2017)「異人歓待(ホスピタリティ)論
サービスの組み合わせによって構成されていると における他者像の再検証」大正大学研究所紀要第
102号輯,星野晴彦(2013)「福祉サービスにおけ
いうサービス理論を基に,さらに前田(2007)が
るホスピタリティのアポリアの検討──デリダの言
指摘する「∼としてのサービス」に当てはめて,
説を踏まえて」文教大学人間科学部第 35号等を参
「ホスピタブル・サービス」(もてなし型サービ 照。
ス)を措定し,その対抗概念の「機能的サービ
ス」(機能性優位サービス)との対比から,両サ 引用・参考文献
ービスを規定する諸条件を明らかにし,その類型 福原義春(2008)ホスピタリティとは何か, 『アゴラ』,
化から,どのようなコミュニケーション方法が各 JAL ブランドコミュニケーション,p. 51
観光産業に有効であるか,そして Hall(1976)が Hall, E. T. (1976). Beyond Culture, New York: Anchor
Books/Doubleday, pp. 105‒116
指摘した「高コンテキスト」および「低コンテキ
Hall, E. T. & Hall, M. R. (1987). The Hidden Differences.
スト」にも着目することによって,「もてなし型
New York: Anchor Press/Doubleday
サービス」の双方向的な「コミュニケーション・ 服部勝人(2004)『ホスピタリティ・マネジメント入
モデル」の相貌を,具体的に浮上させ,利用者か 門』,丸善,pp. 17‒23
らの反応・評価を加えた「日本型サービスモデ 服部勝人(2007)日本のもてなし文化──ホスピタリ

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愛知学院大学文学部 紀 要 第49 号

ティともてなしの類似と相違,河北秀也(編)『季 p. 156
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pp. 31‒55 社,pp. 29‒30
塹江隆(2003)『ホスピタリティと観光産業』,文理 佐々木茂・徳江順一郎(2009)「ホスピタリティ研究
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前田勇(1995)『サービス新時代』,日本能率協会マネ 矢野雅文(2004)ホスピタリティ・ビジネスの始まり
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前田勇(2003)『観光とサービスの心理学』
,学文社, エールアートセンター,p. 16,p. 27

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