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論文 -

高 岡 短期 大学 紀 要 第4 巻 平成 5 年 3 月
B ull T . ak a ok a N a ti o n al C oll e g e. V ol . 4 . M a r ch 19 93

1)

中 国語 と 日 本語 の 人 称代 名詞 の 使用 状況

- 「 茶 館」 を 中心 に 一

山田 臭 -

( 平 成 4 年11 月 2 日 受 理)

要 旨
言 語研 究に お け る 対 照 研 究 の 目指 す と こ ろは 、 大き く分 けて 二 つ ある 。

つ は 言 語 の 類 型化 で

あり 、 もう 一

つ は 外 国 語 教育 へ
の 応用 で あ る 。 また 、 近年は 語用 論的 ア プ ロ ー

チ に よ る 分 析に 基
づ い た 成果 が 外 国 語 教育に 取り 入 れ られは じめ て釆た。 本 稿 は 中国 語 と 日 本 語 の 人 称代名 詞 を語

用 論的 ア プ ロ チ に よ り分 析す る こ と を試 み た も の で 今後 の 本格的 な 研 究 の 基礎 と な る 考 え方

、 、

問 題点を発見す る こ と に 関心 が払わ れて い る 。 人称代名詞 の 使用 状況 から 、 日本 語 が 中国 語 に 比


べ 「 客観 型」 に 近い こ と 、
「 主 観 型」 ・

「 客 観型」 と い う 二 項対 立 で は 類 型化 が 不 十 分 な こ と を 論

証す る た め の 基 礎 的 な 資料 を 提 供 で き た 。

キ ー

ワ ー

対 照研 究 、 人 称代名詞 、 語用論 、 主観型 、 客観型

会 で 生 活上 あ る い は 仕事 上 の 問題 を解決 す る
1 は じめに
と い う 伝 達能 力 、 さ らに は 、 そ の 言 語を母 語
本稿 は 、 中 国語 と 日本語 の対照の 中か ら 、 と す る話 者 の 行動 パ タ ン に 合 っ た 使 い 方が で

両 言語 に お け る 人称 代名詞使 用 の 語用 論的 制 き ると い う 文化 的能 力を も身 に つ ける こ とに
約 を考 え る た め の 基 礎的作業 の 一

端 を 報告 し あるとする な らば 、 外 国語教 育の 場 で 、 ある
よ う とす るも の で あ る 。 言語要 素 が 、 どう い う話 の 場 で どの よ う な使
コ ミ ニ ケ シ ン の場に お い て 人 称代名 われ方をし どの よ うに表現され るか が 明らか

ュ ョ

2)

詞 が と切 よ う に 使 わ れ る か を 考 え る の に 対 照 に され な けれ ば な らな い

と い う 視点 を用 い るの は 、 次 の よ うな 二 つ の 人称 代名 詞 を考察 の 対象 に選んだ の は 、 人
理 由に よ る 。

つ は 言語 の 類 型化 を考 え る上 称代名 詞 は 発話 場面 の 「 場 面 内指 示 的 座 標」
で 対照 と い う 方法 は 効果 的 で あ る と 考 え た か (d e i c ti c co ・

o rd i n a t e s) に 照 ら し て そ 6 ) 意 味が
らで もう つ ( そ して こ ち らの 方 が急務の 述 べ
られ る 言 語要 素 の 典型 的 な 例 の ひ と

、 つ で
3)

課 題 と 考 え る が) は 、 外 国 語教 育 へ の応用 を あると い え るの で 、 話の 場で の 使 わ れ 方 を検

図り た い と い うね ら い か らで ある 。 外 国語学 討す る の に 適 し た 言語要 素 で あると考えた か

習 の 目標 が 単 に 、
「 読 み」 「 書 き」 「 話 す」 「 聞 らで ある 。

4)
く」 と い っ た 言 語的 能力 の 習得 の み ならず 、
こ れま で の研究で は 、 人称代名 詞 の 統語論
そ の 言語 を使 っ て そ の 言語 が 使 わ れ て い る社 上 の 制約 や 談話 的制 約 に つ い て の 考察 に 重 き

産 業情報 学 科
山田 晃

44

が置 か れて い た た とえば 、 ( 2) 第 三 人称 に は 「 限 定 的」 か 「 不 定」 かあ

(1 ) 人称 代名詞 は主語 ・

賓語 ・

走語 に は なれ る い は 「 近 接」 か 「 遠 隔」 か と い っ た他 の

るが 、 ふ つ う は述語

状語に は なれ な い 。 範喝 と も結 び 付 く 。

(2 ) 副詞 の 修飾 を受 け な い 。
(3 ) 第 一

人称 、
二 人称 の 代名 詞 は ( 童 話 な ど
5 )

( 3) その 前に ふ つ う修飾 語を お か な い 。
で 動 物 を 擬 人 化 す る よ う な 場 合 を 除 き) 必

( こ め 点 は 名 詞 と 異 な る) 然的 に 人 間を示 す が 、 三 人称 は 動物 、 物を

と い う 指摘や 、
も指 し示 す こ と が で き る 。

第 三 人称 の こ う い た特徴は 「 指 示 詞」
( 4) 介 詞 の 後 ろ の 名詞 句 で は ゼ ロ 代名詞 を使 っ 、

えな い と 「 第 三 人 称 代 名 詞」 と の 間 に 区別 の な い 言

l い

( 5) で の 「 兼 語」 と な る名 詞 句 に は ゼ 語がある こ と か ら も知 る こ とがで きる な お
兼 語文 。 、

ロ 代名詞 が 使 え な い 。
人称代名詞 は常 に 「 指 名 語」 (d e sig n a ti v e) で
6)

と い うの は 統 語論 的 な制 約 で あ る 。
あり 、 人 に呼び か け るとき に使われ る 「 呼掛

12 )

ま た 人 称代名 詞使用 の 制 約 と し て 、
「指 し 語」 (v o ca ti v e s) と は峻別され ね ば な らず 、

示 すも の が す で に 周 知 ( u n d ers t o o d) で ある か 小論 で は 呼掛 語 は 考 察 の 対象 に 含 ま れ な い 。

と い う だ け で なく 文 の 現れ る コ ン テ キ ス ト

3 中国語 と 日 本 語 の 人称 代名 詞
が 代名詞 で 指 し示 さ れ る も の を強調 (h i g
h
-

lig h t) す る 必要 が あ る か どう か で ある 。 」 とい 3 1 .

中国語 の 人称 代名 詞 の 分類 と 用法
7)

う 指摘 は 、 人称 代名詞 の 談話 的制 約 で あ る 。 趨 元 任 ( 1 9 5 6) は 、 中国 語人称 代名詞 の 最

本稿 で は で き るだけ 、 観察 し う る実 際 の 発 も 一

般的 な形式 を次 の よ う に 表 し て い る。

話場 面 に 近 い 言 語素材 と し て 老舎 の 戯曲
(表 )

8) 1
「 茶 館」 ( 三 幕) を考 察 の 対象 と し 、 中国語

の テ キ ス ト と そ の 日 本語 訳 を対 照 の 根 拠 と し 単 数 複 数

た 。 小論 は 、 中国語 と 日本語 の 人称 代名詞 の


普 通 敬 称 排他 的 包括 的
使 用を 制約す る条 件を考 察 す る た め の 準 備研 一

人称 戟 我 ∫門 哨 イ

究 の 環 と し て 位 置づ け た い

二 人称 休 イホ
ノl ⊥ヽ 休 m
1 3'
2 人称 代名 詞 の 分類 と 定 義 三 人称 他 (% ) 四■■■固
人称代名 詞 は よ り

般的 に は 、 第

人称
( 表1 ) に 対 す る補 足説 明 は 次 の よ う に な る。
( 自称 : 話 し 手が 題 目 と し て 自分 に 言 及 す る
` ` ' '

とき に用 い る) 第 二 人称 (対 称 : 聞き手 に (1) 二 人称単 数 の 敬称 悠 は 、


二 人称複 数

14 )

が 釆源 と の 説 が ある
` ` ' '

言及するとき に 用 い る) 、 第 三 人称 ( 他 称 : 形の 休m 。

' ' " "

女性形 の 弛 ( 他
" " ` `

話 し手 、 聞 き 手 以外 の 人物 ま た は 物 に 言 及す (2) 三 人称 の 他 に は

るとき に用 い る) 、 不定 称 ( ダ レ) に 分 け ら は 男性形 と い うよ り 、 男女 未分 化 の 形 で あ
` ` "

れる さ らに 、 再 帰 代名詞 あ る い は 反照代名 る) と 人 間 以 外 の 生 物 や 無 生 物 を 指 す 官

9) ' '

ずれも あ
"

があるが 音声形 式 は い t5 で
請 ( ジ ブ ン) も人称 代名詞 の

分棋と され る 。 、

三 人称 は 以下 の点 で 第 人称 第 二 人称 る


、 、

と包括 的
" "

と 区別 さ れ な けれ ば な ら な い 。 すなわ ち 、
( 3)

人称複 数 の 排他 的 我m
" ' '

日本語で は ずれ も 「 われ わ
( 1) 第

、 第 二 人称 が 必 然的 に 限定 的 で ある 哨m は 、

彼 彼女 あ る
"

我m 「
"

れ」 に な るが は
の に 対 し 、 第 三 人 称 は 必 ず し も発 話場 面 の 、 、

10 ) "

ロ自作ヨ
"

い は 彼 ら+ わ た し」 の こ と で は
関与者 を示 す と は 限 ら な い 。

中 国 語 と 日 本 語 の 人称 代名 詞 の 使 用 状 況 45

「 あなた と彼 彼女 あ る 彼 ら + わ た し」 こ の用法の 休
" " " "


い は は 悠 に 置 き 換 え られ

を指 す人称 代名 詞 で あ る 。 な い 。

例 : 休m 是 女 人 、 我 m 是 男人 、 嶋m 都 是 や や古 い 資料 に も と づ く が 、 人称 代名詞 と
人 。 ( あ な た た ち は 女性 で 、 僕 た ち は 敬意表 現 と い っ た 社会 語用 論 的 な 制約 に は 、

1 7)

男だ け ど 、 [ わ た し た ち は] みん な人 つ ぎの よ う な もの が考 えられ る 。

間な の で す) 。 ( 1) 一

般 に 自分 よ り 世 代 が 上 の 親 族 を指 し
区別は
" "

こ の 、 北京 、 匿門 、 無錫 、 常州 ( 江 て 言 う場 合 に は 、 他 ( 地) は 使用 し な

辞 省) お よび そ の他の 若干の方言に お い て見 い 。

1 5)
い だ され る に 過 ぎ な い と い う 。 ( 2) 聞 き 手が 上 世代 著 の 場 合 で 、 そ の 当人 に

(表1)
"

は い わ ばそれ ぞれ の 人称 代名詞 の 言 及す る と き 休 惣 だ けで指し


` ` " "

、 早

指 し示 す対 象 の 基本 的 な分 類 で あり 、 人称 代 示すの で は な く 、 話 し手 と の 社 会的 関係 を
18 )

名 詞 の 用 法は こ れ だ け に 限らな い 。 そ の 統語 示 す語 をあ と に つ け る。


`` "

、 談 話的 制約 に は 、 1 で 挙げた もの の ほ か ( 3) 一

人称 我 をで き るだ け 少 なく 使 い 、

16 )

に 、
つ ぎの よ うなもの が考 えられて い る 。 特 に 主 語 の 位置 に お く こ と を避 け る こ と で 、

( 1) 話し こと ばに お い て は 、 も の を指 し示す 謙 虚 な 気持 ち を表す 。 た と えば 、 話 し 手が
''

人称 の 宅 賓語 の 位置 に 来 る
"

三 は 、
こ と 「 あ る 出来事 に 対 し て 、 疑 い の 気持 ち を持
が 多く 、 修 飾語 と な る こ と は少な い 。 主語 っ て い る」 と言 う こ と を表 明す る の に 、 次
の位置に来 る こ と は も と少な 通りの 表現 内 我
` ` ' '

っ い 。 また ど の ふた の が 使役動 詞

の 文 法的 な位 置 に も限らず 亡m 無
" " " "

、 で 使 の 賓 語 と な る( b ) の 方 が 、
より穏や か

生物 を さ す こ と は 少 な い 。 な 表 現 に な る。

例 : 那 些 橘 子都欄 了 、 把 亡手
乃了 。 ( a) 我封這 件事 有点 児懐疑 。

( あの み か ん は みん な腐 っ て しま っ た ( b) 這件 事使我 有点 児懐疑 。

か ら 捨 て て し ま い な さ い) また 、 だ れ か に 人 ( や 物) を 紹介 す る時
(2 ) 宅 ある 他
" " " " " "

い は は 、 ダミ ー

オ ブジ に も 、 戟 が 主 語 の 位置 に 立 つ( c) よりも 、

ク トと して 使われ る 使 役動詞 譲 賓語と


" ' ' ` ` ' '

ェ 。 の して 我 が使 わ

例 : 玩 官 ( 他) 一

個 頑揮 。 ( 一

週 間た っ れて い る( d) の 方 が 控 え 目 な 表 現 に な る 。

ぷ り あ そ ぶ) ( c) 我釆介 紹 -

下 。

( 3) 主語 と 一

致 す る 領属 代名詞 は 対 比 の 場 合 (d) 譲我釆 介紹 -

下 。

をの ぞき う は 省略 さ れ る 本来 我 で表せ ると こ ろを
" ' ' " '

ふ つ 。 ( 4) 我作㍗ を
例 : 使う こ と で 話 し手 の 謙遜 し た 気持 ち を表 す

( a) 他 戴 上 ( メ) 帽 子 走 了 o ( 彼は [彼 こ とが で き る 。 た と えば 、 先 生 が 生徒 に 向
の] 帽子 を か ぶ っ て 出か け た 。 ) か っ て 「 今日 は品詞の 問題 に つ い て 話し ま
( b) 我 碓 了 ( メ) 頭了 . (私 は [私 の] す 。 」 と言 う と き に

頭 をぶ つ け た) 今 天 我m 講 詞類 的問題 。

`` "

(4) 休 非人 称 ( ひ ろ く 「 あ る 人」 う 場 合が そ う で あ る 我
` ` "

に は を と い 。 を使 わ

指 す) の 用法が ある ずに 我m とす る こ と で し手 の
" "

。 、 話 意志
例 : 這 種問 題珂 、 体得 想 好 久 複 想 得 出 桝 が 中和 さ れ る 。

法釆 哨 ( 問題 は ね 「 人 が」 ( 5)
" "


こ の 、 よく 二 人称 の 敬 称 懸 が 、 下位 老 に 対 し て

よく考え な い と 解決 の 方法 が わ か ら な 用 い ら れ 話者 の 謙遜 し た 態度 、 遠慮 し た 気
い よ) 持 ち を表 す こ とが あ る 。 こ れ は 多く 北 京 に
46 山 田 展
-

お い て 、 社 会 的 地 位 が 同等 の人同士 、 しか の 子供 の 場 合 に は 、 自分 の こ とを 「 お と うさ
1 9)

も 肉体 労 働 者 の 間 に 多 く み ら れ る と い う 。 ん」 「 お か あ さん」 と称 し 、 同 じ人 が 学校 と

う場 で は 生徒 に 向か 自分 の と を 「先
" '

て こ
( 6) 人 称 複 数 ( 排 他 的) 代名詞 我作㍗ に い っ

22 )

生」 と言う た 使 わ れ 方 は 上位 者 か
` `

は 、 発 音 の 上 で 男女 差が 認 め られ 、 我肝 。
こ うい っ

を [ m rTl ] の よ う に 発音 す る の は お もに女 ら 下位 老 に は で き る が 、 下位 老 か ら 上位 者 へ

20 )

性である と い う 。
は で き な い 。

二 人称 代名詞 は 、 聞 き 手が 上位 者 で あ る 場
23)

3 2
.
日本 譜 の 人称代 名詞 の 分類 と用 法 合に は使 う こ と は避 け られ 、 そ の代わりに た

渡 辺 正 数 ( 1 9 8 3) の分類に も と づ く と 日本 と え ば 職 業 的 地 位 を 表 す 名 称 ( 「 課 長」 「 先 生」
21)

語 の 人称代名 詞 は 次 の よ う に 示 さ れ る 。
な ど) が使 わ れ 、 社 会 関係 か ら聞 き 手を称 す
る 。 また 、 家 庭 内で は下 位老 は 上 位 者 に 対 し
(表2) て 親族名 を使 う 。

こ の よ うに 日本語 の 一

人称 二 人称 代名
^ わた し ぼく 、
* わた く し

-


詞 の 使用 に は 社会 語用論 的 制約 が強 く 働 く こ
二 人 称 あな た 、
きみ
とになる 。

近称 こ の か た ( こ い つ)
第 二 に 、 日本語 の 三 人称 代名詞 は指示 代名
人 中称 その か た ( そ い つ)
詞の 「 こ 、 そ 、 あ」 系で表され る こ とで ある .

称 遠称 あの か た 、
かれ ( あ い つ) 「 か れ」 「 か の じ ょ」 を話 し 言 葉 で の 三 人称

代名詞 と す る こ と に は 抵抗 が あ る と い う指 摘
24)

人称 は 自称 ( 話 し 手 自身 を指 す) 、
二 人 もあるが 、 小論で は 「 か れ」 「 か の じ ょ」 も

称 は 対称 ( 話 し手か らみて 聞 き 手 を 指 す) 、 三 人称 代名詞 に 含 め て 考 える 。

三 人称 は 他称 ( 話 し 手 か らみ て 、 話 し 手 聞き
4 中国語と 日本語 の 人称代名 詞 の 使用状況
手 以 外 を 指 す) とも い われ る 。 日本 語 の 人称

代 名詞 の 用 法 で 特 徴的 だ と考 え ら れ て い るも 1 で 述 べ た よう に 、 小論 が 検討 の 材料 と す

範囲 に お け るもの に は るの は 老舎の 戯曲 「 茶 館」 の 対 話部分 に 現


の の 内 、 小論 の考察の 、

次 の 二 つ が挙 げ られ る 。 れ る 人称代 名詞 と 、 そ の 日 本譜訳 の 人 称代名


に 、

人称 代名 詞 、
二 人称 代名詞 が た 詞で ある 。
な お 、 3 で 見 た よ う に 日 本語 の 人

く さんあると い う こ とで 、
(表 2 ) に 挙げ た 称 代名詞

特に 二 人称 代名 詞 -

の 使用 に は 社

も の 以外 に も

人称 代名詞 に は 、
「 お れ 、 お 会 語用論 的制 約が 強 く 働 き 、 人称代 名詞 の 代

い ら わし あた い うち 小生 自分 」 わ り に 身分 名 や 親族 名称 で 表 現 さ れ る こ とが
-

、 、 、 、
、 、

二 人称代 名詞 に は 「 お ま え 、 あん た 、 きさ ま 、 多 い と予 想 さ れ る が 、 こ う い っ た も の も 人称

お た く な どがある どの 人 称 代 名 詞 を に準ずるもの と考え 表中で は 「 準 人 称」 と



-


、 。

使 う か は 、 話 し 手 と 聞 き手 と の 上 下 関係 (上 表 した 。

位 者 か 下 位老 か あ る い は 同 位 着 か) や話 の場

が改ま っ た もの で あるか どう か 、 ある い は 話 4 1 .
対照 の 結果

し 手 が ど の 程 度 の 丁 寧 さ を選 ぶ か と い っ た こ 調査の結果 、 中国語 と 日 本語 の 人称 代名 詞

とによ っ て 規制 さ れ る 。
た と えば 、 日 本語 で の 「 現 れ」 (o c c u 汀e n C e S ) の状況 は 以下 の よ

人称 代名詞 が 使 わ れ る こ とが 少 な い の は 、 う に ま と め ら れ る。

聞 き 手 の 視点 に 立 っ た 名称 で 自分 の こ とを表

現す る か ら だ と い われて い る 。 聞 き 手が 自分
中国語と 日本語 の 人称代名詞の 使用 状況 47

(表3) (表3) と ( 表 4) か ら 、 中 国語 と 日本語 の


人称代名 詞 の 体 系 上 の 対 照結果 は 次 の よ う に
日 本 語
中国語 要約で き る
人 称 準人称

(1 ) 中 国 語 の 人 称 代 名 詞 の 出現 数 は 日本 語
我 5 4 9 4 7 6

ワ タ シ 2
の 人称 代名詞 の 「 現 れ」 の 二倍以上 で ある


3 5 0
/ ア ナ タ / 1 8 2 3 8 ( 2) 人称 代名詞 の 出現数 の 多 い 順に並 べ ると 、

イホ
ハ ⊥ヽ 1 6 2
中国語 も 日本語 も ー

人 称> 二 人称 > 三 人称
他 8 2
/ / と い う順に な る 。

地 力 レ 9 4 6 3
( 3) 人称単数 の使用比率は 日本語 と 中国

/ / 、

亡 3
`

語で ほ とん ど差 は な い が 、 複数の使用比率
# m 4 6 は 日本 語 の 方 が 中国語 よ り も大 き い 。

/ ワレワレ / 6 3 2
哨m 5 7 ( 4) そ れ ぞ れ の 言語 に お け る単数 と 複 数 を含

件イ門 アナタタチ 2 5 1 3 1 め た 一

人称 の 使 用 率 に は 有 意差 は な い が 、

他m 一

人称 と 二 人称 の 使 用比率 の 差 は 、 中国語
/
弛イ門 カ レ ラ 4 0 3 0 1 が8 7 % で ある の に 対 し て
.

、 日 本 語 は 19 . 8
/
% で ある こ れ は 有 意差 と い える
己m

。 。

中国語 の 人 称代名 詞 の 総 出現 数 は 1 3 2 3 で 、
4 2.
対 照上 問題と な る 用例

そ れ に 対 す る 日 本 語 の 訳文 中の 人称 代名 詞 の 3 か ら明らか なよ うに 、 統計 の う えか ら は 、

総 出現数 は5 81 ( 準 人称を含 め る と6 3 2 ) で あ る 。 中国語 か ら 日 本語 に 訳され るとき 、 半分 以上

中国 語 と 日 本語 の そ れぞれ の 人称 代名 詞が の 人称 代名詞 が 減 っ た こ と に な る。 も ちろん 、

総 出現数 中 に 占 め る 比率 は 以下 の と お りで あ 日本 語 に と っ て は そ れ らの 人称代名 詞 は 省 略

る 。
され た の で は な く 、 不 必 要 で あ る か ら人 称代

(表4) 名詞 が 使 わ れ な い の で ある 。 こ こ に 挙 げる 用
例は 、 そ う し た例 とは違 っ た 、 中国語 と 日本
日 本 語
中国 語 語 の 対 照上 問 題 と な る も の で ある .

人 称 準 人称
我 ワ タ シ 41 . 5 % 42 . 5% 40 0 %
.

4 2 1
. .

追加 の例

/ ア ナ タ 38 7 %
. 31 3 % . 34 8 %
. 中国語 で は 人称 代名 詞が 使 わ れ て い な い に
イオミ ヽ
J L1

もか かわ らず 、 日本語 訳 で は 人 称 代名詞 が 使
他.
.

われて い る もの
/ 。

地 力 レ 7 1 %
.
7 .
9% 7 8 %
.

(1) 中 : 那不 是 因薦郷 下種 地 的都 没法 子混 了
/ 2 5)
宅 哨 ?

我∫門 日 : そ れ は 、 お ら た ち の 在 の 百 姓仕 事 じ
/ ワレワ レ 7 8 %
. 10 . 8% 10 3 %
.

噌m や もう どう に もあがき が つ か ね えか

休m アナタタチ 1 9 %
. 2 . 2% 2 . 2% らじ ゃ ありま せん か ?

他m (2 ) 中 : 英 法聯軍 燥 了囲 明園 , 尊 家喫着 官銅 .

/
弛m 2% 4 9 % 可 没見 悠去衝 鋒打 伎 !
カ レ ラ 3 0 %
.
5 . .

/ 日 : 英仏 連合 軍 が 円 明園 を焼 き 払 っ た が
宅作ヨ
貴殿 は お か み の禄 をはん で お られ る
48 山田 虞 -

の に そ い つ らと 一

戦ま じえる の を つ 4 2 3. .

数 転換 の例

い ぞ 見 か け ません で した な。 中国語 の 人称 代名 詞が 複 数 で あ る の に 日本

( 3) 中 : 二 爺 , 府上都好 ? 語訳で は 単 数 で 表 さ れ て い る。

日 : 旦 那さま 、 お 邸で は みな さま お達者 (1 ) 中 : 我 把 宅イ門交 給 休 , 没事 的時候 . 休可

で 。 以限 咽 茶的 人m 嘗個笑 話談談 .
・ ・ ・ ・ ・ ・

ま えに 渡して お くか ら

( 4) 中 : 剛裸 体要 瞭眼暗 , 弥 富 我 伯 休 口馬 ? 日 :
主吐を お 、 手

日 : さ っ き お ま え さん は わ た し を呪 み つ がす い て い るとき 、 茶 飲 み客 相手 に

けよ うと した け れ ど 、 わ た しがあん 笑 い 話 に 話 して や れ ば い い 、

` ` ' '

た を こ わ が る と思 っ た の か ね ? (荏 : こ こ で の 宅イ門 は 万 年筆と 二 三 個

( 5) 中 可是 眼看着 老朋 友m 個個 的 不 是 の 機械 の 小 さ な 部 品 を 指 し て い る)

: ,

餓死 就是 叫 人 家 殺 了 -

,
,

日 : だが 、 わ た し は 苦 か らの 友 人が 一

人 4 2 4. .
文 成 分転 換 の 例

また 一

人飢 死 に す る か 、 で な け れば 中国語 で も日本語 で も 人称代 名詞 が 使 わ れ

あい つ ら に 殺 さ れ る の を 目 の 当た り て い るが 、
そ れ ら が担 う文 の 成 分 が 異 な る 。

に み た。 ( 1) 中 : 宋恩 子 等等!
こ う い っ た例 は (表 3 ) お よび (表 4 ) 中 老陳 窓 歴【屯 ?
に は 現れ な い 。 呉祥 子 ( 也 立 起) 件 説 窓 磨鳴き?
日 : 末息 子 待て !

4 2 2
. .
人 称転 換 の 例 陳 どうして や ?

(1 ) 中 : (不語 , 直 奔 過 劉 麻 子 去) 劉 麻 子 , 呉祥 子 ( こ っ ち も 立 ち あ が り)

休還認 識我 咽 ? ( 要打 . 但 是伸 不 出 どう して か お まえ に聞き た

手去 ,

物 地 顔 料) 休 , 帆 休個 -

い ね !
-

(要 罵 , 也 感 到 困 難) 人称 代名詞 が 中国語 で は主語の位置だが 、

日 : (無言 、 あば た の 劉めが け て とび か 日本語訳 で は 「 二 格」 で 表されて い る 。

か る) あばた 、 わた しが分 か る か ね ?

が 主 語 に なれ る 例
' '

う とす るが で き ず 4 2 5 宅
` `

(ひ っ ぱた こ 、 わ . .

己 主語
` ` "

な わ な と 身 を ふ る わ せ) 中国語 の 三 人称 代名 詞 の う ち

こ 、
こ 、
こ は

( 悪態 を つ こ うとするが そ の位置に来 る こ とが ほ とん どな い と い われ る
91
・ - ・ ・

" "

れも えな い) が 官 が 主語 に な る例 が 「 茶 館」 に は

(2) 中 : 休 , 体看 看我 是誰 ? 例見 つ か っ た。

日 : わた しが 、 わた しが誰だ か よく見て 中 : 這枝 筆刻 着我的 名字 呪 ,


皇知道 , 我用
ご らん よ 。
宅 答過 多少張支 票 , 寓過 多少計 劃書 。

( 3) 中 : 小 劉麻 子 ! 来 , 叫 爺爺看 看 ! ( 看前 日 : こ の 万 年 筆 に わ し の 名前 を彫 っ て あ る

着 後) 休 小 子 行 洋服穿 的象 那磨 だ ろう こ い つ が知 て い るよ わし

, 、 っ 、

回事 ,
- -

は こ い つ で どれ だ け の 小 切手 を切 り 、

目 : 劉公 ! お い で 、 お じ い ち ゃ まに見 せ どれ だ け の 計 画書 を書 い た こ と か。

て ご らん ! ( し げし げと 眺 め ま わ し) こ の 万 年筆 は 、 話 し手 で あ る秦仲 義愛用 の

三土二2 、
い け るぞ 、 背広 の着 こ な し もので 、 い つ も 自分 と 共 に あ り 自 分 の 生 き ざ

な ん かき ま っ て い る。 ま を見 て き た 万 年筆 だ と秦 仲義 は 思 っ て い る。
`` ' '

己 は 擬 人化 さ れ た 用 法 と い え る 。

こ こ で の
中 国 語 と 日 本 語 の 人 称 代 名 詞 の 使用 状 況 4∈
)

"

4 2 6 他 の 訳例 話 し 手が 娘 聞き 手 が そ の母親と
"

. .
こ れは 、 で

日 本 語 の 三 人称代 名詞 に 「 か れ」 「 か の じ う場 面 で あ る
` ` "

い 。 姐姐 は 「 幼 い 娘」 と い

ょ」 を認 め る こ と に 抵抗 を感 じ る と い う指 摘 う意味 の 方 言 で あ る 。 日本 語 で は 家庭 内 の 上
があ るこ と は すで に み た が 、 小 論 の 調査 で は 位者が下位老に 対 し て 、 人称 代名 詞 で は な く
" "

他 を 「 か れ」 と訳して い る例が 二 つ 検出 下位着 か ら 見 た 親 族名 称 で 自分 の こ とを称す

され た 。 る こ とは ご く 普通 で 、 た とえば 、 父親が 子供
( 1) 中 : 他説 賓業 救 国 , 他 救 了誰 ? に 向か っ て 「 お 父さ ん は い ま忙 し い か ら あ と

日 : あ の 人 は 実業 救 国 を 唱 え て い るが 、 で遊 ん で あ げる ね 」 。 とは 言え る が 、 子供 が
彼が救 っ た の は 誰だ 。 父親 に 「 娘 は 今遊ん で ほ し い の 。 」 とは言 え
" ''

こ こ で の 他 は 秦仲義 を指 し て い る 。
こ な い 。

こ で 「 彼」 が 使 わ れ た の は 、 そ の直前に 「 あ 上位 者 が 下位 老 へ
自分 の こ と を言 う と き に

の 人」 と い う 訳 語 が あ り そ れ と の 重 複 を嫌 っ 下 位 老カ? ら 見 た 名 称 を 使 う こ とで 、 共 感同

た こ と と も関係 が あろうが 、
「 彼が 救 っ た の 化の働き が生まれ ると い われ るが こ う い う

' '

誰 だ」 と う 表現 は 反 語文 で あ り 他 使 わ れ 方 は 中国 語 に も あ る
"

は い 、 。

を 「 彼」 と訳すこ と で 、 話し手の 、 秦 仲義 に ( 2) 中 : 王 小花 他 要是 回 束 打 恋呪 ?
対す る非難 の 気 持 ち が 表 明 さ れ る こ と に な る。 王 利発 我 ? 爺爺 合説好 話呼 。

( 2) 中 : 小劉 麻 子叫 我来的 , 他説 這 兎的老 掌 日 : 王小花 帰 っ て き て お じ い ち ゃ んを

憤託 他請 個女 招待 。 ぶ っ た ら ?

日 : あば た の 劉 公 に言われ て来た の 、 彼 王利発 わ しか ? お じ い ちゃ ん は

こ こ の お じ い さ ん に 女給 さん 頼 ま れ 詫び上 手だ か らな 。

た っ て 言 っ て た よ。 (荏 : 王 小 花 は 王 利 発 の 孫 娘)

こ の 発話 は 、 話 し手 は十七歳の 女給 小 丁宝 ( 3) 中 : 干 厚蘭 小花 ! 老 師作
ヨ也 不 願 意 耽 誤
で 聞き手は茶館の 若 い 店主 と い う 場面 で な さ 了休 m 的 功 課 。

れて い る 。
「 彼」 は 女 街 の 小劉 を さ し て い る 。 日 : 干厚斎 小花 ! 先生た ちもきみ た ち

こ こ で は 、
「 彼」 を使 う こ とで 、 小丁 宝 と小 の勉強を おく らせ た く は な

劉 の 関係 を暗示 す る と い う効 果が あ る と い え い んだ よ 。

る 。 (荏 : 干 厚 斎 は 小 花 の 先 生)
以上 か らわ か る こ と は 、 日本 語 の 三 人 称代 ( 4) 中 : 康順 子 娼 嫡 把 休 養 大 了的 . 休既 婚
名詞 の 「 か れ」 「 か の じ ょ」 は 話し とば 嫡
こ 便心 封不封?

、 ,

として は 、 確か に 自由 に は 使 えそ う に な い と 乗!
い う こ と である 。 日 : 康順 子 かあさんが大き く し て や っ

た か ら 、 ぼうや は 、 か あさ
4 2 7
. .
品 詞転換 の例 んと ひ と つ こ こ ろだ 、
そ う

中国語 で は

般名 詞 で あ る も の が 、 日 本語 だ ね 、 ぼ うや !

訳で は 人称 代名 詞 が使 わ れ て い る例 。 (荏 : 聞 き 手 は 康 順子 の 養 子 の 康 大 力)

( 1) 中 : 郷婦 走 口巴 , 乗! ど こ まで 一

般化 で きる か は 、 今 後の 調 査 に
小姓 不 責姐 姐f 髄 ? 姻 ! 待た ね ば な ら な い が 、 ( 1) は 下 位 老 か らの 上位

日 百 姓女 行 こ うね 、
お り こ うさん ! 者 へ の共感同 一

化の 例と い えよう 。

小姓 あた い を もう うらな い の ね 、

お っ か あ!
山田 鼻
-

50

用パ ラ メ ー タ に よ っ て も 、 英 語 は 客観型 に 、

5 語用 パ ラメ ー

タに よる解釈
中国語 は 主観 型 に な る と い う結 果が 導 か れ て

3 で の 対 照結 果を 解釈 す る の に 、 こ こ で は 、
い る 。

L e vi n s o n ( 1 9 8 3) の語用 パ ラ メ

タ を使 っ 限 られ た 言語 資料 の 中 で の わずか な 調査 の
25)

て 解 釈 してみ る 。
み に もとづ い て 、 結論 を 出す こ と は 差 し控 え

人称 指示 ( p e r s o n d e i x i s) に られ なければ な らな い が 超論 文 と本 稿の 考

L ev in s o n は 、

もとづ き 、 話 し手を S (Sp e a k er ) 、 聞き 手 を 察 か ら得 た 結果 か ら 、 人称 代名 詞 の 使 用 か ら

H (H e a re r ) 、
そ の 場 に い る話 し 手 お よ び 聞 き み た 「 主 観 度」 は強 い 順 に 、 中国語 > 日 本語

手 以外 の 人 を B ( B y st a n d er ) に分 けて い る 。 > 英語と な る だ ろ う と い う予 測が 可 能 で あ る 。

こ れ に よ ると第 一

人称 は ( + S ) 、 第 二 人称 また 、 日本語 も含 め た 対 照で は 、 主観 、 客観
は ( + H ) 、 第 三 人称 は ( -

S ,
-

H ) と表 と い う 二 項対 立 の 類 型化 だ け で は 不十 分 で あ

すこ とが で き る。 そ して こ れ らの パ ラ メ ー

タ ると い う こ とが こ れ ま で の 検 討 か ら導 き 出 さ

を使うと 、 人 称 代 名 詞 の 使 用 を 「 主 観 型」 と れ る 。

26)

「 客 観 型」 に 分け る こ とが で き る 。

パ ラ メ 6 ま と め
( ±S) と ( ±H) を語用 ー

タ と し 、

ト S < -

H] ( S で もなく か つ H で もな い) 劉 徳有 氏 は 、 日本語 の 人称 代名 詞 の 中国語

すなわ ち 、 第 三 人 称 の 使 用比 率 が 高 い も の を へ の 翻訳 の 難 し さ を夏 目 瀬 石 の 小説 「 我輩は

客観型 と し [ 、
十 S V 十 H ] ( S で なけれ ば H ) 猫 で あ る」 の 題名 の 中 国語訳 を め ぐ っ て 指摘
27)

す な わ ち第

人称 と第 二 人 称 の 使 用比 率 が 高 したが 、 そ れ は 中国語 か ら 日本語 へ の 翻訳 に

い も の を主観 型 と す る 。 4 で得た 結果 を こ の 際 して も い える こ とで 、
4 で見た よう に 中国

枠組 み に 照 ら し 合 わ せ る と4 . 1 ( 2) に よ り 、 中 語 で 人 称代 名詞 が 使 わ れ て い な い に も か か わ

国 語 も 日 本 語 も主 観 型 に な る。 らず 、 日本 語訳 で は 人称代 名詞 が 必 要 な 場 合

また 、 第

人称 の 単 数複 数 を 語用 パ ラ メ
-

が ある 。 今後 は 、 こ う し た 中 国語 と 日 本語 の

タ とすると 、 第

人称 単数 の 使 用 比 率 が 低く 対訳 に お け る人 称代名 詞 の 追加 現象 な どに つ

複数 の 使 用比率 が 高 い も の は 客 観型 と な り 、
い て も引続 き観 察を 行 い 、 人称 代名 詞使 用 の

第 一

人称 単数 の 使用 比率 が 高 く 複数 の使用比 制 約 と語 用 パ ラ メ ー

タ に つ い て の 考 察を 続 け

率が低 い も の は 主観 型 と な る 。
4 1( 3 ) に よ り
.
、 て い きた い 。

日 本語 は 客観型 で 中国語 は 主 観型 に な る 。

地 世 開 ( 1 9 9 1) は 英 語 と 中国語 の 人称代名 [ 付 記] 印刷 上 の 制約 か ら 、 中国語 の 字体

詞 の対照を行 っ た もの で あ るが 、 どち ら の 語 に 簡体字 が 使 えず繁 体字 で表記した 。


中国語と 日本語 の 人称 代名詞の 使用 状況 51

引用文献 ・

脚注
1) 本 稿 は 中国社 全 科 学 院語 言 研究所 研 究員の 趨世 開 氏 の 研 究 (「 漢英人称代名詞 対 比 研 究 - 初

歩 的 語 用 分 析」 1 9 9 1 , 未 公 刊) に 啓発され た もの で あるが 、 本 稿 の 責任 は 筆 者 に ある 。

2) 言 語 的 能力 、 伝達的 能 力 、 文化 的 能力 の 定 義 は 、 窪田 富男東 京外 国 語大学 教授 が1 9 9 1 年1 0 月 2 4 日


に 北京 日本 学研究 セ ン タ

で の 公 開 講 座 「 日 本 人 の 対 人 意識 と 言 語 行 動」 で 述 べ られ た こ と を参考

に し た 。

3) J ・

ラ イ オ ン ズ著 圃 虞 哲爾 訳 : 理 論言 語 学 大 修館 書店 1 97 3 303
、 、 、 , p . .

4) 中国 語 学 で は 一

般 に 「 人 称 代 詞」 と い う用語が 使わ れ るが 、 本稿 で は 、 日本 語 と の 対照 と い う 点
を 考 慮 し 「 人 称 代名 詞」 と い う用語で統 する

5) 輿水優 : 中国語 の語法 の 話 一

中国語 文法 概論 -

、 光生 館 、 1 98 5 , p . 218 .

な お 、
「 賓 語」 「 定 語」 「 状 語」 は 中国語 学 で 習慣的 に 使われて い る 用語で 、 より

般的 に は 「 目的

語」 「 連 体 修飾 語」 「 連 用 修 飾 語」 と 称 さ れ る も の と 大差 な い 。

6) よ り 詳 細 な議論 は 、 Ch a r les N . Li a n d S a n d ra A Th. o m ps o n : M a n d a r in C hin ese , U n iv e rs it y

of C a lif o r ni a P res s ,1 981 p 6 75 , . .

7) Ch a rle s N Li . a n d S a n d ra A Th .
o m ps o n (1 9 8 1 . pp . 654 -

6 7 4)

8) テ キ ス トは 、
「 老 舎 劇 作 全 集 第 二 巻」 ( 中 国 戯 劇 出版 社 1 9 8 2) 所収 の も の を用 い た 日本 語 訳 の
、 。

テ キ ス トは 、
「 老舎珠 玉」 ( 襲波 訳 、 大 修館書店 、 1 9 8 2) を用 い た .

9) カ タ カ ナ で 「 ダ レ」 「 ジブ ン」 と 表す こ と で 、 日本 語 の 「 誰」 「 自分」 だ け を指 す の で は な い こ と

を示 す 。 本稿 で の 考察 の 範囲 に は 不 定 称 と 再 帰 代 名 詞 ( あ る い は 反 照 代 名 詞) は 、 含め な い 。 以下 、

三 人 称に つ い て の 記述は J . ラ イ オ ン ズ ( 1 9 7 3) に よる と こ ろが 大 き い 。

1 0) もちろん こ の こ と は 、 受信者 が必 ず物理 的 に 発話場 所 に 存在 し て い な け れ ばな らな い と い う こ と

で は な い こ と は 手 紙や 電話 な ど の 場 合 を考 えて み れ ば 明 らか で あ る こ の 点を ジ ジ ア M

、 。 ョ .

グリー ン は 、

「必要 な の は 、 発話 受信 時に 誰 か 適 当 な 受信 者が 存 在 す る と い う 話 者 の 意図 や 見込 み が あ る と い う

だ け で あ る 。」 (「 プ ラ グ マ テ ィ ッ ク ス と は 何 か」 深田 淳訳 、 産業 図書 、
1 99 0 . p .
2 2) と 述 べ て い

る 。

l l) ∫ . ラ イ オ ン ズ ( 1 97 3 , pp . 3 0 6 - 3 07 ) に よ ると 、 ト ル コ
語 、 古典 ラ テ ン 語 、 ギ リ ア 語 が そ う で

ある し 、
ロ マ ン ス 諸語 の 第 三 人 称代 名詞 は指 示 代名詞 か ら発達 し た も の で あり 、 同様 の こ とは 英語
や ドイ ツ 語 の 第 三 人 称代名詞 に つ い て も い え ると い う。 共 時 的 に は 中国 語 、 日本語に つ い て も 同様

の こと が い え る 。

1 2) Y R Ch ( 趨 元 任) C hi n of A dd 21 7 1 4 1 ( 1 9 5 6 )
` ` "

te L g ua g e 32 1
u e n e n a o : es e r m s r ess .

, a n .
: , .

の ちに As L )e e l s o f C hi n ese S oc i o li n g u i s ti c s , S ta nf o r d U ni v e rs i t y P re s s , S t a nf o r d , C a lif o mi a ,

1976 . に 収め ら れ た。 邦訳 に 「 中国語 に お け る 呼 称 語」 ( 十 河 悌 次 、 1959 ) が ある。 「 指 名 語」 「呼

掛 語」 と い う訳 語 は 邦 訳 に よ っ た 。

陳 松 琴 ( 「 礼 貌 語 言 初 探」
`` " " "

1 3) , 商 務 印 書館 、 1 9 8 9) に よ る と 、 他 の 敬称 想 は 、 現 在で は 年令 の

高い北京の人の 間で使われ るだ けで 、 指 し示 さ れ る人が 、 聞 き手 の 尊敬す る 人 あ る い は 上 位 者で あ

ると話 し手 が判断 した時に 使 わ れ る と い う。 最 も典 型 的 な例 は 、 子 供た ち が 父母 に 祖 父母 の こ と を


" "

話すと きに 懲 が 用い られ る場合だ と い う。 ま た 、 超 元 任 (1 9 5 6) は 、 召 使 同 士 が 自分 た ち の 主
`` "

人に つ い て 話 して い る場 合 く ら い に し か 、 人が 悠 と 言 う の を実際 に 聞 い た こ と が な い と い う。

1 4) た と え ば Ch ( 1 95 6 ) 別 説 も あり 江 藍生 ら は
" "


Y u e n R e n a o 。 しか し 、 の 、 呂叔 湘 、 、 懲 は 、
52 山田 真

悠老 短 縮形 と 考 え て ( 「 近 代 漢 語 指 代 詞」 学 林出 版社 1985 p p 36 3 8) また 陳松琴
` ` "

い る
-

の 。 、 ,

。 、

は 「 礼 貌 語 言 初 探」 ( 商 務 印 書館 、 1989 p , .
5 4) で 、 方 言 を傍証に 呂叔 湘 、 江 藍生 の 説 を 支持 し て い

る。

1 5) Y u e n 穴e n Ch a o (1 9 5 6 ) 0
「 漢 語 方 言 詞 匪」 ( 北 京 大 学 中 国 語言 文学 系 譜 言 学 教 研 室 編 、 1964 , p ・

40 5) に は 他 に 潮州 福州に も 人 称 代名 詞 の 複 数 に 排 他 形 式 と 包 括 形 式 が あ る こ と が報告 さ れ


て い る。

C H IN E S E U iv it y f
1 6) お もに Y u e n R e n Ch a o ( 趨元 任) , A G RA M M A R O F S P O K E N , n e rs o

c a lif 。 r n ia P ress ,
1 9 68 . お よびそ の 中国語訳 「 漢 語 口 語 語 法」 ( 呂 叔 湘 訳 、 商務 印書館 、 1 9 7 9) に

よ る。

1 7) お もに Y u e n R e n Ch a o (1 9 5 6) に よ る 。

1 8) よ っ て 自分 の 叔母 へ
の 発話 で 「 わ た し は 、 叔母様 (父 の 姉 妹) と 出か け た い と 思 い ま す 。」 は 、

次の うち の い ずれ か を使 っ て 表現 され る。 ( Y u e n R e n Ch ao ,1 95 6 )

( a) 我 要限 姑姑 走 。

( b) 我 要眼 休 走 , 姑姑 。

( c) 我 要限 恋走 , 姑姑 。

1 9) 陳 松 琴 (1 9 8 9 , p . 5 9) 。
な お 、 同 書 は そ の 原 因 を 旧 社会 で は 肉 体 労 働 者 が 蔑 視 さ れ て い て 、 日常生
`` "

活 の 多 く の 場 面で 、 控 え目 で 礼儀正 しく 、 謙遜 した態度 、 言葉が 求め ら れ た こ と か ら 、 額 繁に 恋

を使 う 習慣が で き 、 そ れ が現在 の 言 語生活 の 中に も 残 っ て い るもの と考えて い る。

2 0) Y u e n R e n C h a o ( 1 9 5 6) に よ る 。

21 ) 渡辺 正数 : 教師 の た め の 口 語 文法 , 右 文 書院 、 1983 p p 91 - 93 , . . 但し 、 不定 称 ( ど な た 、 どい つ)

は 省略 した。

2 2) 鈴木 孝 夫 は 「閉 ざされ た言語 ・

日 本 語 の 世 界」 ( 新 潮 社 、 1 9 75) の 中で こ の よ う な 自己 把 握 を

「 相対 的 自 己 表 現」 と呼び 自 己 を言 語 的 に 表現 す る の に 用 語と して 人 称 代名 詞 の み が 用 い ら


れ る 「 絶 対 的 自 己 表 現」 と 区別 し 、 そ こ に 自我 構 造 の 違 い を 見 て い る 。

23) もし 、 下 位暑が 上 位者に 対 し 二 人 称代名 詞 を使 え ば 、 上 位者と 下 位老 の 関係を壊 し た い 、 ある い

は 逆 転 し た い と い う 意志 表 示 に な る 。 但し 、 妻が 夫 に 対 し て 用 い る 「 あ な た」 に は そ う い っ た 働き

は な い 。

2 4) 渡辺 正数 ( 1 9 8 3) 。 さ らに 、
「 日 本 語 教 育 事 典」 ( 日 本語 教 育学 全編 、 大 修 館 書 店1 9 8 2 , p ・ 1 1 3) に

ょ れば 、
「 か れ」 「 か の じ ょ」 は 自由 に 用 い ら れ る も の で は な く 、 話 の 場 へ
の 初出 の 際に 親族 名称 、

身分 名 な ど で 表 現 し た 人 物 に 対 し て 「 か れ」 「 か の じ ょ」 と は言 わ な い と い う。 な お 、 同事典 (p ・

1 1 4) で の 説 明 の よ う に 指 示 代 名 詞 と 三 人 称 代 名 詞 を 「 指 示 語」 と し 人 称と は 切 り放 し て 考 え る こ

と は 日本 語 を考 察 の 対 象 と し た 場 合理 論 的整合 性 が あ る が 、 小 論 は 人 称代名詞 に 対照 と い う 視点 か

ら検討 を 加 え る も の で 、 ひ と ま ず 三 人 称 代 名詞 と い う 用 語 を使 う こ と に す る 。

2 5) S te p h e n C L . e v in s o n ・ : P ra g m a ti c s , C a m b rid g e U n i v e rs it y P r ess , 1983 p p 68 ・ ・


-

79 ・

2 6) 脚注 1) で述 べ た よ う に 、
こ の 考え は趨世開氏 の研究 に も とづ く 。

2 7 ) 1 99 1 年 6 月 に 北 京で 行 わ れ た 「 中 日 日本 学 青 年 シ ン ポ ジウ ム」 の 記 念 講演 の 中で 、 劉 徳有氏 は

と す る こ と を提唱 し て い
" ` ` ''

中 国 語 訳 を 従来 婚 家 是猫
``

「 我 輩は 猫で あ る」 の の 我是猫 で は な く 、

る。
中国語 と 日 本語の 人称代名詞 の 使用状 況 53

A C o n tr a s ti v e A n al y si s o f P r o n o m i n al U sa g e D iff e re n c e

b et w e e n C hi n es e an d J a p a n es e , w it h Sp e c i al R ef e r e n c e
" ''
to T h e T e a H o u s e

S hi n i c h i Y A M A D A

(R e c ei v e d N o v e m b e r 2 1 9 9 2)
,

A B S T R A C T

Th e c o n tr a s ti v e s t u dy of la n g u a g e h as t w o ge n era l ai m s : t o c o n t ri b u t e t o th e t y p o l o g l C a l st u dy f
()

la n g u a g e ・ a n d to a p p ly th e r e s ult s t o fo re lg n la n g u a g e t e a c hi n g ・ Als o h e l pf u l t o l a n g u a g e t e a c hin g

is p ra g m a ti c a n al y si s o f la n g u ag e . w h i c h is c u r r e n tl y a tt r a c ti n g w id e r a tt e n ti o n .

T h is pa pe r a n aly z e s th e u sa g e of C hi n es e a n d J a p a n es e p r o n o m i n al s a c c o rd i n g to th e p rag m a tic

p p r oa ch c o n cl u di n g t h at
" "

a , Ja p a n e se is m o r e of a n o b j e c ti v e ty p e la n g u a g e th a n C hi n e s e .
S o m e

ru di m e nt a r y d at a are al s o p r es e nt e d to d e m o n st r a te th a t th e r e a re v a rio u s ty p e s or la n g u ag e w hi c h
" " " "

f a ll b e t w e e n o b j e c ti v e a n d s u b j e c ti v e .

K E Y W O R D S

C o n tr a s ti v e st u dy , P ro n o m i n al s , P ra g m a ti c s , s u b j e c ti v e T yp e , o b j e c ti v e T yp e

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