You are on page 1of 2

記事利用について

中⼩のデジタル化⽀援
SmartTimes BEENEXT ファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英⽒
2020/12/28付 日経産業新聞

各国で新型コロナウイルスの影響が続く中、重要になっているのが中小企業のデジタル化支援だ。シン
ガポール政府は5月にコロナ対策第4弾となる経済政策として、企業のデジタル変革に5億シンガポール
ドル(約379億円)の予算を組み、中小企業のデジタルツール導入の支援政策を打ち出した。

「デジタル・レジリエンスボーナス」として、飲食店や小売店に対し会計、人
事、注文管理業務をデジタル化すれば2500シンガポールドル、データ分
析すれば5000シンガポールドルとテクノロジーの導入内容に応じて支援
金を出す。さらに12月には、オンラインでのBtoB(企業間)プラットフォー
ム「BSB」を立ち上げた。中小企業が人工知能(AI)を活用し、世界各国・
地域の企業と取引価格の確認やサプライチェーンの構築などができるシ
ステムだ。資金調達などでも利用できるプラットフォームになっている。

政府だけではない。カナダのショッピファイや、日本のBASEに代表される
ような中小企業のデジタル化を支援するスタートアップの成長が続いてお
1997年慶応大総合政策学部卒、ソフト
り、中小企業のデジタル活用の好事例となっている。また、インドでは2年
バンク入社。2000年ネットプライス(現BE
前に中小店舗向けのQRコード決済サービスを始めたバラペ社が急成長 ENOS)社長、同社を上場に導く。15年シ
ンガポールを拠点に起業家支援のBEEN
している。 EXT設立

コロナ下で紙幣を直接やりとりしないで済むキャッシュレス決済の需要が急増。直近の中小店舗の新規
登録は月間15万店を超える。決済金額は年初と比べて3倍以上、年間70億ドル規模へと膨らんだ。来年
には兆円単位の決済ボリュームになることが見込まれている。この膨大なデータを軸に中小企業向けの
新しい金融サービスを展開していくことを構想している。

インドのお隣、バングラディシュも中小企業の数が多い。実に1160万もの小規模ビジネスがあると言わ
れている。その中で急成長している中小店舗向けアプリがタリカタだ。同国でモバイル決済を展開するシ
ュアキャッシュ社が今年6月に正式にサービスを開始した。
この顧客管理や、つけ払い等の決済管理ができる中小企業向けの無料アプリも、コロナ禍で驚異的な
伸びを見せており、すでに導入店舗数は125万を超えた。今まで中小店舗は店の売り上げなど管理業務
を台帳に手書きしていた。だが、スマートフォンの普及とともにアプリをダウンロードすることで運営管理
をデジタル化。こちらも膨大なデータを元に近く店舗向けの小口融資サービスを始める見込みだ。

モバイルインターネットの普及により、デジタル化が可能な領域もより裾野が広くなってきた。また、そこ
から生まれる金融サービスは小売業界の経済圏を押し広げている。中小企業のデジタル化はアジア全
域でこれからますます注目の的になるだろう。各分野での起業家の創意工夫に期待したい。

[日経産業新聞2020年12月28日付]

日経産業新聞の記事一覧へ

本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記
事・写真等の無断複製・転載を禁じます。

Nikkei Inc. No reproduction without permission.

You might also like