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青木亮人・赤阪辰太郎・秋田美帆・秋保さやか・朝山奈津子・阿部直也・有元伸子

飯倉義之・池上大祐・池田さなえ・イザンベール真美・石田健一・石野一晴・石原由貴・李承俊

板倉孝信・市川紘美・伊藤潤一郎・今井宏昌・岩嵜大悟・岩田久美加・上地聡子・宇都伸之

榎本雅之・大井由紀・大賀哲・大坂遊・大貫俊夫・大山貴稔・岡英里奈・越智徹・学谷亮

笠間はるな 加島正浩

片山奈緒美 遠隔でつくる人文社会学知 加藤諭

加藤巧 ―2020年度前期の授業実践報告― 加藤朋江

加藤由香子 門田裕次

金原大植 大嶋えり子・小泉勇人・茂木謙之介 編 神村朋佳

亀井伸孝 河西秀哉

木内久美子・北田雄一・木場貴俊・桐原健真・クラウタウ、オリオン・黒木秀房

ケイン樹里安・黄偉修・小二田誠二・小林恭子・小林広直・近藤誠司・坂口可奈

坂本麻裕子・清水貴恵・朱炫姝・菅谷孝義・鈴木真太朗・鈴木崇夫・鈴木隆弘・鈴木悠

須藤武司・春原史寛・関沢和泉・瀬島利林・瀬沼文彰・高木信良・田中樹里・田中直

寺田征也・照屋建太・土居浩・時岡新・伴野崇生・伴野文亮・中沢知史・中嶋洋平

中園宏幸・中妻結・長津結一郎・仲矢信介・成田麗奈・西田彰一・西山雄二・野澤聡

野村朋弘・野原佳代子・橋本嘉代・蓮田隆志・長谷川元洋・服部このみ・花家彩子

早川公・樋田有一郎・日髙晋介 平川全機・廣瀬航也・廣󠄁田龍平

前田奎・増地ひとみ・松岡昌和 雷音学術出版 松川雄哉・松木優也・松本知子

松本望希・松山響子・湊邦生 宮内洋・宮平隆央・村上一基

村上舞・モリ、アルベルトゥス=トーマス・森薫・矢田訓子・矢吹康夫・山崎玲美奈

横田祐美子・吉沢晃・綿貫哲郎
遠隔でつくる人文社会学知
―2020年度前期の授業実践報告―

大嶋えり子・小泉勇人・茂木謙之介 編

雷音学術出版
刊行にあたって

本書はコロナ禍に見舞われた 2020 年度前期の高等教育機関における人文社会科学系科目の遠隔授業の


実践報告 148 件を集成した共著書籍である。
2020 年 1 月に新型コロナウイルスの国内感染者がはじめて確認されてから、大学をはじめとする高等教育
機関はその対応を余儀なくされた。なかでもその代名詞となったのはオンラインの「遠隔授業」である。2020 年
6 月 1 日時点で約 90%の高等教育機関が遠隔授業を取り入れるという状況下で、ほとんどの教員たちは遠
隔授業の実践経験を持たないにもかかわらず、長くとも一ヶ月半程度という短期間で事前準備を行い、その後
授業期間内での試行錯誤を求められた。その実態を記録する本書には、大きく二点のねらいがある。
一つ目はコロナ禍において高等教育機関の教員達の集合知を形成することである。2020 年 10 月現在に
おいても教員たちがどのような授業を遠隔で行ったのかは必ずしも充分に共有されていない状況がある。すな
わち、知り合いの話を聞く、オンラインで発信している教員の報告を読むなどにとどまっているのではないだろう
か。その状況への対応として、多くの教員の実践報告を集めることにより、2020 年度後期以降の遠隔授業の
参考としてもらえるような資料体を構築するとともに、将来的にコロナ禍のさなかでどのような授業が高等教育
で実践されたのかという史料としても有意義なものとなることを目指した。
二つ目はコロナ禍のなかで研究者たちにむけてアウトプットの機会を提供することである。前述のように教育
活動に制約が課せられていた状況で、研究者でもある教員たちの研究活動の機会が失われていたことも忘れ
てはならない。2020 年夏季以降オンライン上では徐々に復活しつつあるものの、それまでの約半年間にわた
り研究会や学会などの研究成果発表の場が激減していたことは記憶にとどめるべきである。特に若手研究者の
キャリア形成を考えれば、たとえ短期間であっても損失は大きく、それらを補う機会はあるにしくはない。大胆な
ことをいえば、本書は、コロナ禍という危機に直面するなかで、新たな人文社会学知を構築する試みでもある。

本書に収録している報告はすべて同じテンプレートに沿ってご執筆いただいた。
各報告は機関名、授業名、対象学年および教員名を記したうえで、①シラバス段階での講義の目的と概要、
講義内容、成績評価の方法、②大学から要請された遠隔のルールとそれに基づいて変更し実施した授業内容、
③学生の反応と今後の課題・可能性、の三点を全員A4一枚とコンパクトにまとめていただいた。③の学生の反
応に関しては、個人の特定などに繋がらないよう、コンプライアンス違反への注意喚起を行った。さらに執筆者
の希望により機関名や著者名を伏せた報告も、具体的な機関名・著者名が分かるよりも授業内容とそこでなさ
れた取り組みこそ重要なのだという理由から掲載を認めた。なお、本書に掲載されたいずれの報告も当然なが
ら高度な専門性を有しているものだが、他分野・多分野の読者の眼に触れ得るという本書の特性に鑑み、難解
あるいは専門的な用語については補足を加える、平易な言葉に置き換えるなどといった対応をお願いした。ま
た、今回の遠隔授業が政策決定の結果によるものであり、高等教育がそもそも政治と不可分な存在であること
を踏まえると、収録する報告において一定の政治的表明が含まれることは不可避であった。そのため、政治的
な批判や懸念に言及した記述もそのまま掲載することとした。
このように、異なる領域の科目における実践を報告するうえで、一律に同一のテンプレートを使用することに
は批判もあるだろうが、敢えて全員に同一の枠組みを課すことによって読者が各事例を比較検討できるように
することを目指した。その結果は読者の判断に委ねたいが、一読するだけでも授業それぞれに多様な状況が生
起し、教員一人ひとりの持ち味が発揮されていることは明白であろう。これまでにない状況下で、急遽成立させ
なければならかった遠隔授業において、高い専門性を堅持しつつ、多様な創造性が惹起されていたことには驚
嘆すべきである。コロナ禍によるオンラインへの一斉移行は、授業を画一化し、もともとあった高等教育におけ
る授業の多様性を損なうと懸念されていたが、実際には一人ひとりの教員が自身の能力や志向に合わせて遠
隔授業を実践し、そこにそれぞれの方法で学生が知的な貢献をもたらしたり、学生同士で刺激を与え合ったり
する現実があったのだ。なお学生側にも教員側にも多様な不安や不満があり、2020 年度前期は苦難とともに
あったことはいうまでもない。このような遠隔授業に伴った多様なる可能性と苦しさの一端が本書から伝わるの
ならば、編者としては本望である。

i
ここで、本書の出版形態と出版母体を含めた出版の経緯についても述べておきたい。
本書を出版するにあたっては、無料かつインターネット上で閲覧可能な雑誌あるいは書籍の形態を取ろうと
考えた。同時に国会図書館や大学図書館に納めることで利便性を向上させたいとも考えていたため、書籍なら
ISBN、雑誌なら ISSN を取得する必要があり、既存の出版社あるいは自前の出版元が必要であった。そし
て、2020 年度後期の授業の参考になる刊行物にしたかったため、早急な出版が大事だと考えていた。したが
って、既存の出版社に企画を出し、無料での配信を許してもらうなどは困難であると同時に、時間がかかりすぎ
ると判断し、任意団体の出版元として雷音学術出版を立ち上げる運びとなった。なお、団体名の由来であるが、
「オンライン」の授業から今回の企画を思いついたため、言葉遊びよろしくカタカナ表記で重複した一字(ン)を
除いて入れ替えた「ライオン」を音として採用した。「雷」は天(乾)と地(坤)を結ぶ存在として洋の東西を問わず
扱われており、苦境の続く学術出版の状況に乾坤一擲を狙うわれわれのあり方と合致すると考え、さらに編者
たちはオンライン授業で文字とともに視聴覚メディアなども通じて言葉を届けようとしてきたため、それを象徴す
る「音」という字を選択した。ちなみに、文学研究専用データベース・Literature Online(LION)にオマージュ
を捧げてもいる。
ISBN の取得などをせずに、インターネット上で情報を収集・共有するプラットフォームを構築するという手段
も可能であったが、それでは執筆者の「実績」にならないのではないかという懸念があったことも述べておきた
い。今日アカデミアを取り巻く「実績」重視の思考には議論の余地があるのはいうまでもないが、ISBN を取得
し、一冊のみ印刷製本した紙の書籍として大学図書館に納め、またオンライン資料として国会図書館に登録す
るという作業を経ることによって「実績」として認識されやすくなるのだとすれば、否定的に捉える必要はないと
考えた。
具体的な経緯としては 8 月 4 日に日本近代文化史・表象文化論を専門とする茂木謙之介が本企画を思い
つき、6 日に Twitter や Facebook、口コミで執筆者の募集を始めた。その最初期に応答のあったのが、国際
政治学を専門とする大嶋えり子であったため、当初、茂木・大嶋の二人体制で編者および雷音学術出版の共
同代表を務めた。専攻や担当してきた科目に合わせて、茂木は人文学担当、大嶋は社会科学および語学担当
という予定だったが、執筆者を募っていくにつれ、社会科学科目と語学の科目が増えていき、大嶋の負担が大
きくなることが明らかになったため、英語教育と英文学を専門とする小泉勇人を編者・共同代表として迎えるこ
ととなった。なお茂木は学際的な研究を行うとともに、幅広い分野の科目を担当してきた経験があり、大嶋と小
泉は早稲田大学ライティング・センターでさまざまな学問領域の文章指導を行ってきた。そのため、多様な領域
の教育実践を扱う本書を完成させる過程で、結果的に三人の専門とする学問領野の違いとそれぞれの研究教
育の持つ領域横断性は強みとなった。
SNS や口コミでの執筆者募集の結果、全国の高等教育機関の 100 名を超える教員から執筆の申し出があ
った。そのなかには編者の知己もいるが、まったく面識がない方が非常に多く、編者一同驚いたとともに、心か
ら感謝している。執筆者のみなさんにはテンプレートに沿って書いていただいたが、その過程で個別の電子機
器との相性で書式が崩れるなどといった技術的な不具合などもあり、編者から対応をお願いせざるを得ないケ
ースも多々生じたが、いずれの執筆者も快く応じてくださり、大変に有難かった。
出版形態の関係上、原稿料が出せないという編者として大変心苦しい状況であったが、想像以上に多くの
方にご執筆いただけた。コロナ禍という危機のなかで、多くの制約を受けつつ教育を続けた経験を記録し、公
開して高等教育に資したいという執筆者のみなさんの強い意欲の表れだと言えよう。本書がそうした意欲に少
しでも応えられたのであれば、編者として嬉しい限りである。
また、本企画への関心は教員のみならず、マスコミからも寄せられた。2020 年 10 月 3 日の『中日新聞』(朝
刊 13 面)で思いもよらない大きな記事で企画を紹介していただいた。コロナの時代における高等教育への社
会的関心の高さがうかがえる充実した記事となり、有難く受け止めたとともに、編者にとって企画の意義を再確
認する機会ともなった。

2020 年後期においても遠隔授業は多くの教育機関で継続している。より質の高い遠隔授業デザインを実
現するために本企画が多くの教員の参考になることを願っている。また、コロナ禍という非常事態における高等
教育機関の対応は、将来的に研究・検証されるべき事柄であり、そのためにも記録は極めて重要である。今後
の研究の一助となる資料となれば幸いである。

ii
今回は史/資料体の形成を狙っているため、集まった報告を分析するなどはしなかったが、今後は分析を含
む刊行物やセミナーを企画していくことも射程に入るだろう。また、本書では編者の専攻に従い人文社会科学
系科目のみを扱ったが、自然科学系の科目や高等教育機関以外、さらには外国の教育機関における遠隔授業
の実践にも目を向けていければと考えている。
本書の企画は、誰よりも前期の疲れも回復せぬうちに後期の遠隔授業に備えなければならない状況のなか
で、時間を割き、無償でご協力くださった執筆者のみなさんに支えられたものである。みなさんには改めて深く
感謝したい。また企画の情報を広く共有し、新たな執筆者をご紹介くださった方々、雷音学術出版の事務局を
大嶋の研究室に置くことを許諾してくれた金城学院大学、原稿チェックにご協力いただいた西田桐子氏にも謝
意を表したい。
最後に映画『銀河鉄道の夜』(杉井ギサブロー監督・1985 年)からの引用を以て本企画と雷音学術出版の
船出を宣言したい。

「ここよりはじまる」

2020 年 10 月
遠隔授業の準備をするそれぞれの部屋にて
編者一同

iii
目次
刊行にあたって ..................................................................................................................... i
語学 .......................................................................................................................................... 1
豊橋技術科学大学「フランス語 I」(2 年生対象)授業実践報告 赤阪辰太郎 ...................................... 3
関西学院大学「日本語学習科目読解(レベル 5-8B)1」(交換留学生対象)授業実践報告 秋田美帆
...................................................................................................................................................................... 4
東京外国語大学「地域言語 A (英語 1-4) 英語で学ぶアフリカ」(1年生対象)授業実践報告 イザンベー
ル真美 ........................................................................................................................................................... 5
慶應義塾大学「中国語第Ⅳ」(2 年生対象)授業実践報告 石野一晴 .................................................... 6
東京工業大学「英語第一・第二」(1年生対象)授業実践報告 石原由貴 ............................................ 7
金城学院大学国際情報学部「国際情報演習(1)」(2 年生)授業実践報告 大嶋えり子 ..................... 8
慶應義塾大学(通信教育部夏期スクーリング)「フランス語(初級前期)I-A・I-B」授業実践報告 学
谷亮 .............................................................................................................................................................. 9
日本映画大学「英語Ⅰ」(1, 4 年生対象)授業実践報告 学谷亮.......................................................... 10
東京福祉大学(名古屋キャンパス)「文章表現」(1 年生対象)授業実践報告 加藤由香子 .............. 11
東京福祉大学(名古屋キャンパス)「アメリカの文化と言語 I」(1 年生対象)授業実践報告 加藤由香
子 ................................................................................................................................................................ 12
東京国際工科専門職大学「英語コミュニケーション 1a」(1 年生対象)授業実践報告 門田裕次 ..... 13
東京工業大学・英語第五・第六(リスニング・スピーキング)」(2年生対象)授業実践報告 木内久
美子 ............................................................................................................................................................ 14
東京工業大学「英語第一 クラス 15(LS)」(1 年生対象)授業実践報告 小泉勇人 ............................. 15
明治大学「英語講読 I」(1 年生対象)授業実践報告 小泉勇人 .......................................................... 16
法政大学法学部「外国書講読(中国語)Ⅰ」授業実践報告 黄偉修 ..................................................... 17
桜美林大学「口語表現Ⅰ」(1年生対象)授業実践報告 清水貴恵 ..................................................... 18
目白大学「韓国語基礎会話」(1 年生対象)授業実践報告 朱炫姝 ...................................................... 19
東京国際工科専門職大学「コミュニケーション英語 1a」(1 年生対象)授業実践報告 菅谷孝義 ..... 20
東北学院大学「フランス語 IA」(1 年生対象)授業実践報告 鈴木真太朗 .......................................... 21
仙台白百合女子大学「ビジネス・イングリッシュ」(2 年生対象)授業実践報告 鈴木真太朗 .......... 22
iU 情報経営イノベーション専門職大学 「ビジネス英語実習 I (Practical Business English I)」(1年生
対象)授業実践報告書 Liling Sejima ...................................................................................................... 23
龍谷大学「ドイツ語Ⅰ」(1 年生対象)授業実践報告 田中直.............................................................. 24
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)「日本語スキル 1A 講義の受け方」(学部・大学院全学年留学
生・帰国生対象)授業実践報告 伴野崇生 .............................................................................................. 25
日本女子大学「Presentation English1」(1 年生対象)授業実践報告 中妻結 ..................................... 26
順天堂大学「English for Global Citizenship1」(2年生対象)授業実践報告 中妻結 ......................... 27
武蔵野大学「日本語 2A・2B」(主に学部留学生 2 年生対象)授業実践報告 日髙晋介 ..................... 28
尚絅学院大学「日本語表現法」(2 年生対象)授業実践報告 廣瀬航也 ............................................... 29

iv
南山大学「フランス語Ⅰ<S・全>」・「フランス語Ⅱ<S・全>」(1年生対象)授業実践報告 松川雄
哉 ................................................................................................................................................................ 30
同志社大学「コミュニカティブ・イングリッシュ」(1年生対象)授業実践報告 松本知子 ............. 31
近畿大学「アカデミックリーディング1」b クラス(理工学部電気電子工学科 2 年生以上対象)授業実
践報告 松本望希 ...................................................................................................................................... 32
大阪成蹊大学「英語演習 I」(芸術学部1、4年生対象)授業実践報告 松本望希 ............................. 33
東洋大学「フランス語 III」(2 年生対象)授業実践報告 村上一基 ..................................................... 34
西南学院大学「フランス語初級Ⅰ(2)」(一年生対象)授業実践報告 村上舞 ......................................... 35
A 大学※における「韓国語入門」(1年生対象)授業実践報告 山崎玲美奈 ....................................... 36
日本大学商学部「中国語」(1 年生対象)授業実践報告 綿貫哲郎 ...................................................... 37
X 大学「中国語Ⅰ」(1 年生対象)授業実践報告 .................................................................................... 38

人文学 .................................................................................................................................... 39
愛媛大学教育学部「日本近代文学概説」(2 年生対象)授業実践報告 青木亮人 ................................ 41
愛媛大学教育学部「初等国語」(2~4 年生対象)授業実践報告 青木亮人 ......................................... 42
弘前大学教育学部「音楽史(日本の伝統音楽及び民族音楽を含む)」(1 年生対象)授業実践報告 朝山奈
津子 ............................................................................................................................................................ 43
広島大学「現代文学概説」(2年生対象)授業実践報告 有元伸子 ..................................................... 44
國學院大學文学部日本文学科 「伝承文学概説Ⅰ」(1年生対象必修科目)授業実践報告 飯倉義之
.................................................................................................................................................................... 45
琉球大学「歴史総合」(1~2年生対象)授業実践報告 池上大祐 ..................................................... 46
京都大学「ILAS セミナー:近現代日本における「病」の歴史」(全学年対象)授業実践報告 池田さな
え ................................................................................................................................................................ 47
愛知学院大学「韓国文化事情」(1 年生対象)授業実践報告 李承俊 .................................................. 48
新潟大学「歴史学 V」(全学部・全学年対象)授業実践報告 板倉孝信 .............................................. 49
東京女子大学「日本語表現法」(1・2年生対象)授業実践報告 市川紘美 ........................................ 50
早稲田大学「表象・メディア論系演習(表象文化の政治経済学1)」(2-4 年生対象)授業実践報告 伊
藤潤一郎 ..................................................................................................................................................... 51
九州大学「ヨーロッパ史学講義Ⅲ:「感染」と「衛生」のドイツ近現代史」(2 年生以上対象)授業実践
報告 今井宏昌 .......................................................................................................................................... 52
立教大学「キリスト教学講義 1」(2 年生以上対象)授業実践報告 岩嵜大悟 .................................. 53
共立女子大学「漢文学概論A」(2~4年生対象)授業実践報告 岩田久美加 .................................... 54
共立女子大学大学院「日本文学基礎研究(古代文学)(院1・2年生対象)授業実践報告 岩田久美加 ... 55
日本大学「日本政治思想史Ⅰ」(2~4 年生対象)授業実践報告 上地聡子 ......................................... 56
金城学院大学国際情報学部「WLI A」(1 年生)授業実践報告 大嶋えり子 ........................................ 57
東京都立大学「西洋史学演習Ⅰ」(2~4 年生対象)授業実践報告 大貫俊夫 ..................................... 58
山形県立米沢女子短期大学「国文学演習四」(2 年生対象)授業実践報告 岡英里奈 ......................... 59
宮城学院女子大学「日本語検定対策」(2年生対象)授業実践報告 笠間はるな ............................... 60
愛知淑徳大学「基礎購読」(1年生対象)授業実践報告 加島正浩 ..................................................... 61

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玉川大学「Project Management Workshop」(4 年生対象)授業実践報告 片山奈緒美 ..................... 62
東北大学「博物館実習Ⅵ」(3 年生対象)授業実践報告 加藤諭 .......................................................... 63
名古屋造形大学「美術基礎Ⅱ-A(洋画)」(2年生対象)授業実践報告 加藤巧 ............................... 64
帝塚山学院大学「絵本論」(1-4年生対象)授業実践報告 神村朋佳 ................................................ 65
愛知県立大学「研究各論(アフリカ研究)」(2-3 年生対象)授業実践報告 亀井伸孝 ..................... 66
名古屋大学「日本近・現代史史料学概説」(3 年生対象)授業実践報告 河西秀哉 ............................ 67
大阪産業大学「文章表現演習/表現力基礎演習」(一年生対象)授業実践報告 北田雄一................... 68
甲南大学「日本研究(前)」(全年生対象)授業実践報告 木場貴俊 .................................................. 69
金城学院大学「学校経営と学校図書館」(3年生対象)授業実践報告 桐原健真 ............................... 70
東北大学国際文化研究科「日本宗教史」(大学院)授業実践報告 Orion KLAUTAU ........................ 71
立教大学「他者の現象学」(2~4 年生対象)授業実践報告 黒木秀房 ................................................ 72
日本薬科大学「日本史」(一年生対象)授業実践報告 黄偉修 ............................................................. 73
静岡大学「地域文学文化基礎論Ⅰ」(1年生対象)授業実践報告 小二田誠二 ................................... 74
東洋学園大学「英米文学入門」(1年生以上対象)授業実践報告 小林広直 ....................................... 75
早稲田大学「日本言語文化論 1・2」(1 年生以上対象)授業実践報告 坂本麻裕子 ........................... 76
愛知淑徳大学「違いを共に生きる・ライフデザイン」(初年次生対象)授業実践報告 鈴木崇夫・増地
ひとみ ......................................................................................................................................................... 77
武蔵野美術大学「ミュゼオロジー入門」(1 年生対象)授業実践報告 春原史寛 ................................ 78
東日本国際大学「基礎演習Ⅰ」(1 年生対象)授業実践報告 関沢和泉 ............................................... 79
沖縄キリスト教短期大学「飼育栽培」(1 年次対象)授業実践報告 照屋建太 .................................... 80
ものつくり大学「コンピュータ基礎および実習Ⅰ」(1年生対象)授業実践報告 土居浩................. 81
金城学院大学国際情報学部「WLIA」(1 年生対象)授業実践報告 時岡新 ......................................... 82
東北大学「人文社会序論「現代日本学入門」」(1 年次以上対象)授業実践報告 伴野文亮・茂木謙之介
.................................................................................................................................................................... 83
九州大学「音楽社会学(研究方法編)」(2年生対象)授業実践報告 長津結一郎 ............................ 84
東京国際大学「専門演習」(3・4 年生対象)授業実践報告 仲矢信介 ................................................ 85
フェリス女学院大学「基礎演習」(1 年生対象)授業実践報告 成田麗奈 ........................................... 86
阪南大学 「現代史 a(A)」(1~4 年生対象)授業実践報告 西田彰一 ........................................... 87
東京都立大学「人間・文化・社会」(一年生対象)授業実践報告 西山雄二 ....................................... 88
獨協大学「科学史I」(全学部全学年対象)授業実践報告 野澤聡 ..................................................... 89
京都芸術大学「文献資料講読」(2 年生対象)授業実践報告 野村朋弘 ............................................... 90
立命館アジア太平洋大学「Global History EA」(2 回生以上対象)授業実践報告 蓮田隆志 ............. 91
金城学院大学国際情報学部「WLI C」(2,3 年生)授業実践報告 長谷川元洋..................................... 92
金城学院大学国際情報学部「WLI C」(2,3 年生)「WLI A」(1 年生)合同授業実践報告 長谷川元洋
.................................................................................................................................................................... 93
中部大学「近現代文学講読A」(2年生対象)授業実践報告 服部このみ .......................................... 94
常葉大学健康プロデュース学部こども健康学科「保育内容(言葉)」(2年生対象)授業実践報告 花家
彩子 ............................................................................................................................................................ 95
大阪国際大学「地域コミュニティ論」(2 年生対象)授業実践報告 早川公 ....................................... 96
vi
大東文化大学「社会 1(歴史)」(主に 1~2 年生対象)授業実践報告 松岡昌和 .............................. 97
駒沢女子大学「イギリス文学Ⅰ」(2 年生以上対象)授業実践報告 松山響子 .................................... 98
東北大学文学部「現代日本学各論」(3 年生以上)授業実践報告 茂木謙之介 .................................... 99
関西大学政策創造学部「専門導入ゼミ 1(グローバル・スタディーズ・コース)」(2 年生対象)授業実
践報告 アルベルトゥス=トーマス・モリ ............................................................................................ 100
近畿大学経済学部「現代の社会論(社会学)」(全学年対象)授業実践報告 アルベルトゥス=トーマ
ス・モリ ................................................................................................................................................... 101
学習院大学「現代哲学演習Ⅱ」(2-4 年生対象)授業実践報告 横田祐美子 ................................... 102

社会科学 ............................................................................................................................ 103


福岡大学「文化人類学 A:異文化理解の探求」(1、2年生対象)授業実践報告 秋保さやか ....... 105
東京工業大学「国際開発共創概論」(主に2、3 年生対象)授業実践報告 阿部直也 ....................... 106
「国際 NGO 論 -現場からのアプロ-チ-」(大学院生対象)授業実践報告」 石田健一 ............. 107
北陸大学「日本語リテラシーI」(1 年生対象)授業実践報告 宇都伸之 ........................................... 108
滋賀大学経済学部「スポーツ科学Ⅱ」(夜間主 1-4 年生対象)授業実践報告 榎本雅之 .................. 109
南山大学「社会学研究の基礎(アメリカ)」(外国語学部 1-4 年生対象)授業実践報告 大井由紀 110
南山大学「アメリカの社会」(外国語学部 2-4 年生対象)授業実践報告 大井由紀 .......................... 111
九州大学・国際政治学Ⅰ(3・4 年生対象)授業実践報告 大賀哲 ...................................................... 112
徳山大学「公民科教育法Ⅰ」(3年生対象)授業実践報告 大坂遊 ................................................... 113
金城学院大学国際情報学部「国際情報演習(3)」(3 年生対象)授業実践報告 大嶋えり子 .......... 114
金城学院大学国際情報学部「国際情報概論」(1 年生)授業実践報告 大嶋えり子 .......................... 115
金城学院大学国際情報学部「地域研究総論」(1 年生以上)授業実践報告 大嶋えり子 ................... 116
九州工業大学「国際関係論」(1、2 年生対象)授業実践報告 大山貴稔 ........................................... 117
大阪工業大学「基礎情報処理Ⅰ」(1年生対象)授業実践報告 越智徹 ............................................ 118
福岡女子短期大学「保育実習指導3」(2年生対象)授業実践報告 加藤朋江 ................................. 119
大阪府立大学「経済学・経営学のための数学」(1 年生対象)授業実践報告 金原大植 ................... 120
大阪府立大学「経済政策」(3 年生対象)授業実践報告 金原大植 .................................................... 121
桃山学院大学「マス・コミュニケーション論」(全学年対象)授業実践報告 ケイン樹里安 ........... 122
桃山学院大学「視覚メディア論」(全学年対象)授業実践報告 ケイン樹里安 ................................. 123
桃山学院大学「社会学原論(春集)」(全学年対象)授業実践報告 ケイン樹里安 .......................... 124
法政大学「アジア比較政治論Ⅰ」授業実践報告 黄偉修 ...................................................................... 125
目白大学「音楽表現基礎2(ピアノ)」(2年生対象)授業実践報告 小林恭子 ............................. 126
関西大学「専門演習・卒業研究:災害ジャーナリズム論」(3~4 年次生対象)実践報告 近藤誠司
.................................................................................................................................................................. 127
北海商科大学「特殊講義Ⅰ(ASEAN の政治と経済 A)」(2 年生以上対象)授業実践報告 坂口可奈
.................................................................................................................................................................. 128
北海商科大学「国際関係論(政治学を含む)」(2 年生以上対象)授業実践報告 坂口可奈 ............ 129
高千穂大学「教育方法(中高)」(2 年生対象)授業実践報告 鈴木隆弘 ......................................... 130
群馬県立女子大学「国際法」(学部2年生以上対象)授業実践報告 鈴木悠 ..................................... 131

vii
帝京平成大学大学院「学校カウンセリング特論(教育分野に関する理論と支援の展開)」(修士1年生
対象)授業実践報告 須藤武司 .............................................................................................................. 132
西武文理大学 「レジャー産業論」(3、4年生対象)授業実践報告 瀬沼文彰 ............................. 133
目白大学「音楽表現基礎 2(声楽)」(2 年生対象)授業実践報告 田中樹里................................... 134
立命館大学・国際関係学部「近現代史」(全学年対象)授業実践報告 田中直 ................................. 135
明星大学「社会学への招待 A」(1年生対象)授業実践報告 寺田征也 ............................................ 136
明星大学「社会学原論 A」(2~4年生対象)授業実践報告 寺田征也 ............................................ 137
南山大学「ラテンアメリカ史 A」(学部2年生以上対象)授業実践報告 中沢知史 .......................... 138
同志社大学「グローバル地域文化導入セミナー」(1 年生対象)授業実践報告 中嶋洋平 ............... 139
広島修道大学「経営管理論」(2 年生以上対象)授業実践報告 中園宏幸 ......................................... 140
東京工業大学「社会デザインプロジェクト」(学部2年生対象)授業実践報告 野原佳代子 ........... 141
筑紫女学園大学現代社会学部「現代社会とメディア」(1 年生対象)授業実践報告 橋本嘉代 ........ 142
奈良教育大学「教育社会学」(2 年生他対象)授業実践報告 樋田有一郎 ......................................... 143
北海道大学「社会の認識 データと事例から考える社会学の基礎」(1 年生対象)授業実践報告 平川
全機 .......................................................................................................................................................... 144
東洋大学「異文化と社会事情」(全学年対象)授業実践報告 廣󠄁田 龍平 .......................................... 145
京都先端科学大学「陸上競技」(1 年生対象 選択必修科目)授業実践報告 前田奎 ....................... 146
関西福祉科学大学「体育実技(A・B・C)」(1 年生対象)授業実践報告 松木優也・高木信良 .... 147
高知大学「社会調査論」(1 年生対象)授業実践報告 湊邦生............................................................ 148
群馬県立女子大学「心理学 A」(1 年生対象)授業実践報告 宮内洋 ................................................. 149
沖縄キリスト教短期大学「子ども家庭支援論」(2年生対象)授業実践報告 宮平隆央 .................. 150
埼玉大学「初等音楽科指導法」(2 年生以上対象)授業実践報告 森薫 ............................................. 151
川村学園女子大学「道徳教育の指導法(小)」(2 年生対象)授業実践報告 矢田訓子 ................... 152
立教大学「差別と偏見の社会学」(2 年生以上対象)授業実践報告 矢吹康夫 .................................. 153
関西大学「発展演習政治学」(2年生対象)授業実践報告 吉沢晃 ................................................... 154

著者プロフィール ........................................................................................................... 155

viii
語学
豊橋技術科学大学「フランス語 I」(2 年生対象) 提供した。資料は要点のみを書くのではなく、口
授業実践報告 語体で語りかけるような文体を心がけた。
赤阪辰太郎 Word や PowerPoint 形式のよさは、資料に直接
リンクを貼ることができる点にある。出版社が
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 WEB 上で提供していた映像および音声へのリン
容、成績評価の方法 クを共有し、映像の場合には動画の秒数を指示し
ながら、教科書と紐付けて解説を行った。文法事
目的:基本的なフランス語の文法を理解し、簡単 項は、教科書のページ数を指示し、それに文章で
なフランス語を聞き、話し、読み、書く力を習得す 解説を加えた。
る。フランス語の学習を通じて、フランスの文化・ 課題提供型の場合、発音・会話練習が困難とな
社会に対する理解を深める。 る。本授業では会話練習を採り入れず、発音練習
については YouTube 上にネイティブ・スピーカー
概要:各課ごとに、会話文の発音・書き取り、文法 がアップロードしている学習用動画の URL を共
のまとめ、および演習問題・読解練習をおこない、 有した上で、秒数を指示しながら注目してほしい
様々な構文や表現を学ぶ。映像資料によりフラン 部分を解説し、各自で練習してもらった。
スの生活・文化に親しむ。 フランス文化・社会の紹介にも YouTube 上の動
画や、Google マップのストリートビュー機能、フ
講義内容: ランス国立図書館や美術館等の WEB ページで公
第 1 回‐第 14 回 第 0 課から第 6 課までの解説 開されている画像を提示し、リンクをクリックす
第 15 回 まとめ 第 16 回 定期試験 るだけで現地の映像・画像に直接アクセスできる
よう工夫した。紹介した資料には講師による解説
成績評価の方法: を加えた。
小テスト&出席(10%)+定期試験(90%) 問題演習・読解練習は毎回 Google フォームのア
ンケート機能を用いて行い、次回分の資料提供時
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 に解説を行った。
づいて変更し実施した授業内容 定期試験はオンライン上で不正行為対策を行っ
た上での実施が困難であったため行わず、代替と
開講日が 4 月上旬から、GW 明けに変更され、 してフランス文化にかんするレポート提出を求め
授業回数は〈15 回+試験〉から〈14 回(試験を含 た。これに伴い成績評価の方法も変更し、
む)〉に変更された(不足分は課題等で補填)。 各回の課題提出(70%)+レポート(30%)
授業は対面で実施せず、Google Classroom を介 とした。
したオンデマンド型(課題提供型)で進めること
となった。この方針が固まるまでに「GW 以降は 3.学生の反応と今後の課題・可能性
対面実施」
「語学は同時双方向型」等、二転三転し、
授業内容の変更方法が判断できず、開講直前まで 提供した資料に対する反応は概ね良好だったが、
準備に着手できなかった。 発音や理解度に不安を感じる声が少なからずあっ
①学生の受講環境のバラツキ、②講師の映像収 た。理解度チェックのために課題を多く出すと負
録&編集スキル不足のため、映像での課題提供は 担が増えすぎることも懸念されるため、バランス
行わず、Word および PowerPoint で資料を作成し 調整に工夫が必要である。

3
関西学院大学「日本語学習科目読解(レベル 5- 読書の日は、出席確認及び簡単なディスカッシ
8B)1」(交換留学生対象)授業実践報告 ョンを行い、その後各自カメラをオフにして本を
秋田美帆 読む時間を取った。残り時間で読書ノートに記録
を行った。対面授業であれば、読書中に隣の人に
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 面白い部分を見せるなど、自由にクラスメイトと
容、成績評価の方法 交流することができる。しかし、オンライン授業
本科目は、関西学院大学交換留学生向けプログ ではそのような交流がかなわないため、授業の最
ラムとして開講されている選択科目である。日本 初にディスカッションの時間を取るようにした。
語の短編小説が読めるようになること、小説の内 ディスカッションのテーマは「本を選ぶ時の基準、
容についてクラスメイトと話し合うことができる 読むスピードを速くするための工夫」などである。
ようになることを目的としている。具体的には、 これらのテーマは、後述の読書ノートに話したい
日本語で書かれた小説を自分で選び、授業時間内 トピックの欄を作り書いてもらったものや、学生
に読み、その内容について読書ノートにまとめる。 が本授業を選択した理由として挙げていたことな
また、その記録を元に、クラスメイトに向け本の どから筆者が選んで提示した。
内容を紹介する発表会を行い、意見交換をする。 読書ノートはオンライン化に伴い、紙媒体から
成績は期末レポート期末レポート、発表会への Microsoft Forms への入力に変更した。読書ノート
取り組み、読書ノートへの取り組み、授業内態度 の記載内容は、読んだ本の情報、読んだページ、読
で評価した。 んだ部分の要約、感想、ディスカッションで話し
たいトピックである。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
づいて変更し実施した授業内容 3.学生の反応と今後の課題・可能性
遠隔授業は学生と教員等が質疑応答・意見交換 学生の様子が見られないため、実践者としては
等のやり取りをする機会を設けることが必須要件 何をしているかわからず不安があったが、学生か
となっており、大学からは、「オンデマンド型」 らの感想は肯定的なものが多かった。緊張感のあ
「同時双方向型」いずれかの形式で行うよう要請 るオンライン授業の中、好きな場所で好きな飲み
があった。どちらの場合でも、オンライン授業・教 物を飲みながらゆっくり読書を楽しむ時間が取れ
材の配信の手段及び配信場所の制限はなかったが、 たことは、本を読みたいと思いながらも忙しくて
各教員は Zoom のプロアカウント・Microsoft One できない学生にとっては有意義なものとなったよ
Drive(教材保存用)が使用可能となった。 うである。また、授業の最初にディスカッション
本授業は受講者が 2 名と少なく、また、事前講 の時間を取ったり、発表の時間を取ったりしたこ
義の必要もなかったため、「同時双方向型」で、 とで、話す機会、聞く機会もあったと捉えたよう
Zoom を使った配信を行った。 である。
大学図書館が使用できないため、読む本は電子 本を読むという行為は個人的なものだが、とて
書籍でも可とし、授業初回に図書館の学外アクセ も面白い作品に出会った時、人はその感想を誰か
ス、アスク出版「レベル別日本語多読ライブラリ に話したくなるものである。その話したいという
ーにほんごよむよむ文庫」オンライン版(2020 年 想いが留学生の日本語の使用を促すのではないだ
9 月 30 日まで無料公開)、青空文庫を紹介した。 ろうか。対面では自然発生的に起こっていた「面
しかし、結果として電子書籍を選んだ学生はいな 白さの共有」をオンライン環境でいかに生み出し
かった。 ていくかが今後の課題である。

4
東京外国語大学「地域言語 A (英語 1-4) 英語で学 らず友達とも会っていない異常な状態で心理的な
ぶアフリカ」(1年生対象)授業実践報告 ストレスはあったと思うが、授業の内容や私の指
イザンベール真美 導は好評だったと思う。上記2に書いたように通
常の数倍は授業準備に労力がかかり徹夜すること
1.アフリカから何を学べるかを共通のスタンス も多かったが、学生のプレゼンテーションの質は
に定め、1年生各自に関心あるテーマについて英 スライドの視覚効果やスピーチ内容ともに格段に
語で 15 分間のプレゼンテーションをさせる授業。 向上した。リモートで海外向けに英語でプレゼン
授業前半では政治家やノーベル平和賞授賞者のス ができるようになったと喜んでもらえて嬉しかっ
ピーチ、TED Talks を視聴し優れたパブリックス た。理由は zoom だからこそ互いに都合のよい時
ピーキングのスキルと同時にアフリカとアフリカ に自宅から個別指導を丁寧に長時間、行えたこと
ンアメリカンの多様な魅力を学ぶ。通常は教室で だ。今後は対面授業になっても zoom を活用して
英語の書き起こしと和訳を配布し、動画を教室の 個別指導を行いたいと思っている。また、本学で
モニターで視聴していた。学生のスピーチはプリ は社会人向けに公開講座を行っているが、秋学期
ントしたレジュメまたはパワーポイントを自由に も zoom で行うため遠距離ゆえに受講できなかっ
選ばせていた。必修科目で受講者数は 15 名前後。 た方々が稀少言語講座に登録なさっていると聞き、
成績評価は出席とリアクションペーパー5 割、プ コロナ禍の中でも zoom は大学の可能性を広げた
レゼンテーションとレポートが 5 割。 と思う。

2.少人数制なのですべての授業が zoom で実施 注文があるとすれば、非常勤講師への経済的支


された。タブレット貸与希望者は少なく学生のパ 援だろう。Zoom 授業をする教員にはなるべく最
ソコン所有率は高かった。4 月下旬に開講する前 新のパソコンや器具や光回線が必要で、非常勤講
に大学が教員対象に集中的な訓練を行い、その後 師は専任と違い、乏しい給与の中から自費で賄う
も自主的に支援しあう教員グループが学期末まで しかない。政府から非常勤講師向けの特別手当の
継続した。授業の三日前までに教材の英語書き起 予算が組めないか各大学も呼びかけてほしい。
こしと和訳を受講生全員にメールで一括(学務情
報システム)して送り、当日は zoom でミーティ
ングを行った。教材とする動画を画面共有するだ
けでなく、私のレクチャー部分はあらかじめ録画
して YouTube にアップし学生がいつでも見られ
るようにした。欠席を厳格に採点しない配慮が大
学から求められ、Zoom 授業は必ず録画してアク
セス URL を全学生に送るよう指示があった。Wi-
Fi 環境が不安定になった学生だけでなく、心身に
トラブルがあって休んだ学生にも録画は非常に有
用だったと思う。学生がプレゼンテーションを行
う際には教員同様、zoom を使いこなす必要があっ
たため、全学生に zoom で個別指導を行った。

3.1年生であるため一度もキャンパスに来てお

5
慶應義塾大学「中国語第Ⅳ」(2 年生対象)授業実 中に返信した。
践報告 初回授業では、まずビデオメッセージを
石野一晴 YouTube に限定公開した。その上で、Moodle 上
の小テスト機能を用いて語彙力確認試験を実施し
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 て受講生の水準を確認するとともに、手書きの自
容、成績評価の方法 己紹介を撮影して Moodle にアップロードさせた。
学生に Moodle の機能に慣れてもらい、エラーが
シラバス段階では、平易な日常会話ができるよ 発生しないか確認するためである。
うに、正確な発音を重視し、ペアワークなど様々 2 回目以降は、「予習確認テスト→講義資料
な活動を通して表現能力を向上させることを狙っ (PowerPoint と PDF)を見て授業音声を聞く→
ていた。評価は期末試験と授業内の単語試験・暗 授業内容を定着させるテスト」という流れを作っ
唱試験を加味し、平常点を加える予定であった。 た。アウトプットを重視し、テストは何回でも受
験できるが合格には満点が必要な設定にした。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 その上で合計 4 回の朗読試験を実施した。教科
づいて変更し実施した授業内容 書の一部を朗読してもらい、発音・声調の当否を
確認して採点する。そして個別に詳細なフィード
慶應義塾大学では独自の LMS である「授業支 バックを与えた。自分の名前の発音すら怪しい者
援」および Box を用いたオンデマンド授業と、 には、私が正しい発音を録音して聞かせた。
Webex を用いたライブ配信の 2 種類の選択肢が提 評価は毎回の小テストの初回成績と朗読試験成
示されたが、学生の通信環境を考慮してオンデマ 績、さらに最後に実施した総まとめの小テストで
ンドが推奨された。その上で、専任教員を通じて、 判定した。最後の小テストは Moodle の問題バン
オンライン授業の考え方や具体的な運営方法など クを用いてランダムに出題した。
有益な情報が数多く提供された。しかし、私は外
国語教育研究センターが独自に運用している Keio 3.学生の反応と今後の課題・可能性
Moodle を用いた授業をすでに試み始めており、対
面授業でもこれを有効活用すべく準備していたの おおむね上々であった。質問も多く、教えがい
で、専任教員の許可を得て独自路線を実施した。 があった。匿名のアンケートでは、質問にすぐ回
授業開始前には学生自身に Moodle に登録して 答があったこと、発音を個別に指導したことに関
もらうため、コミュニケーションツールを確立す してはかなり喜んでくれたことが伺えた。
る必要がある。私が選択したのは LINE のオープ 今後の課題は時間との闘いである。とりわけフ
ンチャットであった。ここに簡単な Moodle の登 ィードバックの時間が足りない。朗読試験は、採
録マニュアルを掲載して、質問を受け付けた。 点のばらつきを防ぎ、的確なフィードバックを与
当初は授業内容に関する質問も LINE で受け付 えるためには集中力とまとまった時間が欲しい。
ける予定でいたが、Google フォームで匿名の「目 6 月下旬頃から体力的に厳しくなり採点が遅れる
安箱」も作った。こちらとしては学生の反応がわ と、学生から「まだですか?」と問い合わせが相次
かればよいのであり、
「誰が」質問してきたのかは いだ。それだけ気にしてくれるのは嬉しいが、や
さほど重要ではない。間接視野で学生の反応を確 はりあまりに間が空いては効果が薄れる。迅速な
認するような感じである。質問には授業時間帯で フィードバックができるシステムを構築したい。
あれば即座に LINE で回答、それ以外も極力当日 ルーブリックの活用なども視野に入れている。

6
東京工業大学「英語第一・第二」(1年生対象)授 配布ができないことから、パワーポイントで授業
業実践報告 資料を作成し、課題(宿題や授業時間内に行う作
石原由貴 文等)の回収には、大学の LMS である OCW-i を
用いた。グループ内でのディスカッションには
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 Zoom のブレイクアウトルームを用いた。単語や
容、成績評価の方法 dictation の小テストには Google Forms を利用し
この科目は1年生対象の必修科目で、大学レベル た。
で行う学修、研究活動のために必要な英語運用能 第1クォーターの「英語第一」においては、学生の
力の基礎固めを行い、英語を使ったコミュニケー 受講環境の準備が間に合わないことが懸念された
ションに積極的に参加する姿勢を強化することを ため、予定していた英語スピーチを行わないこと
目的としている。筆者の担当したクラスでは、ア にした。また、オンラインでの期末試験の実施が
メリカ物理学協会の Inside Science のサイトに掲 難しいと判断し、代わりに、授業中に扱ったトピ
載されたビデオ映像を中心とした教科書を用いる ックに関係のある英文の記事をネット上で探し、
こととし、毎週、次の授業で取り上げる章の練習 それを英語で要約して感想を述べるというレポー
問題を解いて来ることを宿題として課すこととし トを課した。一方、それに続く第2クォーターの
た。授業では、ビデオ映像の視聴、内容確認のた 「英語第二」では、英語スピーチを行い、期末試験
めの練習問題、スクリプトの英文解釈、作文、リ もオンラインで実施した。
スニングなどの練習を行うことに加えて、毎回授
業の始めに、数名の学生に、自分の好きなものに 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ついて英語でものを見せながら話してもらい 「英語第一」の初回授業が、学生が本学で初めて
(show and tell)、英語での質疑応答を行うことを 受講する授業でもあったため、緊張感を持って臨
予定していた。成績評価の方法は、授業中の発言 んだが、大きなトラブルもなくスタートすること
および参加度 20%、スピーチ 15%、課題 15%、 ができた。顔を出すかどうかの判断は学生にゆだ
期末試験 50%を予定していた。 ねた。ふだんは顔出しをしないが、スピーチの時
にはほとんどの学生が顔出しをしてくれたため、
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 筆者も学生同士も互いのことが少しわかり、授業
づいて変更し実施した授業内容 がやりやすくなった。また、少人数のブレイクア
大学からは Zoom を用いて授業をライブ配信する ウトルームでは、英語で懸命に意思疎通をはかろ
ことが求められたが、教員が適していると考える うとする学生が多かったので、今後も積極的に使
場合には、オンデマンド型などその他の授業形態 っていきたい。
も認められた。通信環境が整わずうまく受講でき Google Forms を用いた dictation の小テストは、
ない学生への配慮の要請もあった。 スマホ利用のためにうまく答えられない学生がい
Zoom 配信用に Bluetooth のヘッドセットを用意 たため、授業後メールで解答を提出してもらうよ
した。Zoom では DVD 映像を配信することが難 うにした。オンラインで行う試験については、問
しいため DVD の使用を前提とした教科書は使い 題の内容や不正行為を防ぐ実施方法、時間制限の
づらいのだが、この授業で使った教科書は幸い教 あり方、解答の提出方法など、今後さらに考えて
材のビデオ映像を教科書会社のサイトからストリ いく必要があると感じている。
ーミング視聴することができたため、問題なくビ
デオを使うことができた。板書やハンドアウトの

7
金城学院大学国際情報学部「国際情報演習(1)」 なったため、それまでとは異なり英語の動画を理
(2 年生)授業実践報告 解する能力を伸ばす方針に切り替えた。YouTube
大嶋えり子 で観られる時事問題を扱った 10 分から 20 分ほど
の動画を教員が選定し、履修者にその内容を要約
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 する、あるいは内容に関する質問に答えるよう求
容、成績評価の方法 めた。英語字幕が表示できる動画を提示し、要約
国際情報学部国際情報学科グローバルスタディ の課題の際には要約のポイントを明確にすること
ーズコースでは、2 年生向けにフィールドワーク で取り組みやすくした。たとえばトマ・ピケティ
のゼミと英語文献リーディングのゼミを用意して のインタビュー動画の際には「なにが格差の構造
いる。いずれかに必ず入らなければならない。私 を変えたとピケティは考えるのか」、アフリカ系
はリーディングのゼミを担当しており、国際社会 アメリカ人と新型コロナウイルス感染拡大に関す
や海外事情に関する英語文献を読むことにしてい る動画の際には「産業の変容とアフリカ系アメリ
る。新聞記事や雑誌の記事などを用い、国際社会 カ人コミュニティの関係」などと要約のポイント
を取り巻くニュースを正確に理解できるよう、英 を提示し、動画視聴の際に注目すべき点を明らか
語の読解力を鍛えていく。 にした。動画内容に関する質問に解答するタイプ
毎回翌週の文献を教員が提示し、事前に読んで、 の課題では、単なる英語の理解を求めるだけでは
原文に忠実で、読みやすい日本語に訳してくるこ なく、述べられていることの背景の理解を確認す
とを求める。討論も行うため、訳すだけではなく、 る質問も含めた。
内容について分からないことなどについて調べ、 なお、継続的に負担のかかる課題を課したため、
文献を読み込んでくることが必要である。文献は 期末レポートは課さず、学期中の提出のみで成績
そのときどきのニュースに関連した新聞記事が主 を付けた。
で、テーマは履修者とともに決める。2019 年度に
はノートルダム大聖堂の火事や五輪、韓国の有名 3.学生の反応と今後の課題・可能性
人の自殺などの記事を読んだ。 11 人の履修者がいたが、毎回 8 名から 11 名が
授業では、指名された履修者が英文を読み上げ、 課題を提出した。新しい内容の授業で教員として
訳す。その後、キーワードの意味や文法の確認、誤 大いに不安だったが、脱落者が出なかったことに
訳があれば辞書での確認などを教員と他の履修者 少し安心した。また、難易度が少々高い回もあっ
がともに行い、文献を正確に読む訓練をする。 たようだが、履修者はまじめに課題に取り組み、
評価の内訳は授業中の発言 80%、レポート 20% 英語の動画の理解もそれなりにできていた。
である。 昨年度と異なり、私がテーマを一人で決めた。
新型コロナウイルス感染拡大、経済格差、アメリ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 カの人種差別問題、美容の文化、トランスジェン
づいて変更し実施した授業内容 ダーなどとテーマが多岐にわたるように心掛けた
Zoom や Google Meet を使用したリアルタイム が、履修者の意欲を持続させるためにも、履修者
の授業、動画配信、資料と音声ファイルの組み合 の意見も取り入れるべきだった。また、フィード
わせ、あるいは資料のみアップロードが認められ バックを動画やテクストで行ったが、より具体的
た。これらの手法の組み合わせも可能である。 にすれば更なる学習に繋がっただろう。
この授業では、英語の文章を正確に訳し、英語
の文法を再確認するなどしていたが、遠隔授業に

8
慶應義塾大学(通信教育部夏期スクーリング)
「フ まっていたということもあり、シラバスから特に
ランス語(初級前期)I-A・I-B」授業実践報告 大きな変更はなかった。
学谷亮
3.学生の反応と今後の課題・可能性
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 授業では、まず文法事項について教科書に沿っ
容、成績評価の方法 て説明し、その後練習問題を解いて確認するとい
フランス語の初級文法の授業である。教科書の うサイクルを繰り返した。通信教育部の夏期スク
「綴りと発音」(第 0 課)から「目的語人称代名 ーリングであるため、受講した学生のバックグラ
詞の位置」(第 10 課)までを学習の範囲とする。 ウンドは様々であり、また大学での学習歴にもば
毎回教科書の 1 課分を学ぶペースで、まず教師が らつきがあった。そのため、授業中の説明はより
文法解説をし、そのあと練習問題を解くという形 丁寧に、ゆっくりと行うことを心掛けた。
で授業を進める。 学生側の通信環境を考慮し、こちらから発言を
使用教科書:『アトリエ・フランセ―見開きフラ 求めることは原則としてせず、学生側はマイクと
ンス語文法』(朝日出版社、2007 年) カメラをオフにした状態で受講した。ただし、練
習問題の解答はグループチャット欄に書き込んで
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 もらった。これによって、学生の理解度を確認で
づいて変更し実施した授業内容 きると同時に、学生の解答に応じて解説の内容を
この授業は全 12 講からなり、前半の第 1 講から 工夫することができた。また、できるだけ気軽に
6 講までを日吉キャンパスで、後半の第 7 講から 質問できる環境づくりの一環として、授業の最後
12 講までを三田キャンパスで実施する予定であ の 10 分間を質問コーナーとした。ほぼ毎回、何ら
った。前半と後半で担当者が異なり、筆者(学谷) かの質問が寄せられ、授業で生じた疑問点を即座
は前半を担当することが予め決まっていた(なお、 に解決する場として有効であったと思われる。
I-A クラスと I-B クラスの授業内容は同一である)。 課題としては、文法説明を聞き、練習問題を解
6 月上旬の段階で、夏期スクーリングの全面オン き、解説を聞いて確認するという、初修外国語に
ライン化が決定し、授業形態として「オンデマン ありがちな授業構成ゆえ、授業がやや単調なもの
ド配信」か「リアルタイム配信」のどちらかを選択 になってしまったことは否めない。教科書に登場
するよう大学側から求められた。後半の担当者と する例文を題材として、フランス文化に関する話
相談の上、Zoom を使用して「リアルタイム配信」 もできるだけするようにしたが、あくまでも余談
による授業実施を選択した。 の域を出ないものであった。今後は、Zoom 授業の
全面オンライン化に伴い、成績評価方法の変更 強みを生かして映像や音声などの素材も取り入れ、
を余儀なくされた。当初は、第 12 講で筆記試験を フランス語に対する学生の関心をより高めること
行い、その点数に平常点を加味して成績を出す予 のできる授業内容を工夫する必要があると感じた。
定であった。しかし、オンライン授業で筆記試験
を行うことは困難であると判断し、課題レポート
の提出を以て筆記試験の代わりとすることに決定
した。課題レポートの内容については、後半の担
当者と打ち合わせの上、授業で学習した内容の練
習問題を解かせることに決定した。なお、授業内
容と進度については、使用する教科書が事前に決

9
日本映画大学「英語Ⅰ」(1, 4 年生対象)授業実践 あったが、受講学生への教科書販売が授業開始日
報告 に間に合わなかった。そのため、6 月 5 日は第 1 講
学谷亮 のみ実施し、オリエンテーションと Zoom の操作
練習を行った。その後、12 日、19 日は Zoom によ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 る遠隔授業を継続したが、緊急事態宣言解除に伴
容、成績評価の方法 い、26 日から教室での対面授業に切り替えること
この授業では、英文法の基本を理解した上で、 を大学から要請された。その後は対面授業を継続
平易な英語が抵抗なく読め、聞き取れるようにな したが、学内で新型ウイルス感染者が出たことに
ることを目標とする。現代映画を扱ったテキスト より、7 月 17 日のみ Zoom 授業に戻った。
を使用し、英文読解とリスニング演習を毎回行っ Zoom 授業を実施するにあたり、毎回小テスト
ていく。それによって英文法や英語表現の知識を を実施することが困難であると判断したため、課
増強し、高校までに身につけた英語力のさらなる 題の提出に変更した。教科書の練習問題のうち、
強化を目指す。また、TOEIC でのスコアアップに 授業で扱いきれなかったものを解答し、Google
直結する問題演習も一部取り入れる。毎週の小テ Drive にアップロードするかたちにした。最終テス
ストと授業内で行う最終テストで成績を評価する トについては、学期末まで Zoom 授業が継続する
(内訳は小テストが 30%、最終テストが 70%。 場合は実施できない可能性もある旨を、第 1 講で
ただし、出席が10コマに満たない者は最終テス 学生に告知した。しかし、対面授業に切り替わっ
トの受験資格を失う)。 たことにより、予定通り 7 月 24 日に教室で最終テ
使用教科書:『映画英語ワークショップ』(朝日 ストを実施できた。
出版社、2005 年)
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 この授業は、結果的に Zoom と対面を併用する
づいて変更し実施した授業内容 かたちで行われた。Zoom では、グループチャット
本来この授業は 4 月 10 日に開始し、週に 2 コ 機能を使用し、声を出すことなく教員とコミュニ
マずつ進めて 5 月 29 日の第 15 講に最終テストを ケーションをとることができる。送信先を教員に
行う予定であった。しかし、4 月 8 日の緊急事態 限定すれば、他の学生にメッセージが読まれるこ
宣言発出に伴い、前期授業の開講が 6 月 1 日に延 ともない。そのため、些細なことであっても質問
期されることが大学側から発表された。同時に、6 をする学生が多く見られた。対面授業に移行後は、
月以降も対面での開講は難しく、遠隔授業になる 質問はほとんど出なくなった。
可能性がきわめて高いことも通知された。遠隔授 他方で、前述した通り、Zoom 授業では学生のカ
業を行うにあたっては、Zoom を使用したリアル メラとマイクを常時オフにさせることが大学側か
タイム授業とすることが大学側から要請された。 ら要請された。そのため、筆者(学谷)がひたすら
Zoom の使用法と授業運営の注意点については、 英文の説明をするという授業形式になり、単調な
事前に専任教員からきめ細やかなレクチャーを受 ものになったことは否めない。練習問題について
けることができた。その際、学生側の通信料負担 は、グループチャットに解答を投稿させた上で解
をできる限り減らすため、学生のカメラとマイク 説を行った。しかし、教室で学生を指名して解答
は常時オフにさせることを特に強調された。 させた上で解説するのと比べると、どうしても一
その後、6 月 5 日に予定通り Zoom で開講され 方向的になったという印象が強い。
た。同日には、第 1 講と第 2 講を実施する予定で

10
東京福祉大学(名古屋キャンパス)
「文章表現」
(1 2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
年生対象)授業実践報告 づいて変更し実施した授業内容
加藤由香子
遠隔授業の方法は、時間割どおりの同時双方向
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 という指定であったが、学生が通信不良で参加で
容、成績評価の方法 きないケースが起こることを考慮し、毎回、授業
の代替課題もメールで送るように指示された。
「講義の目的と概要」、「成績評価の方法」に関 授業は授業回数が 15 回から 13 回に縮小された
しては、紙面の都合上、2020 年 10 月 10 日現在 修正版シラバスに沿ったものとなった。
web 上で公開されているシラバスの「7. 講義概要」 ただし、最後の授業評価については大学からの
「11. 成績評価の基準と評定の方法」を参照され 質問フォームの連絡が授業終了後に届いため、授
たい。 1
業時間内では実施できていない。
講義内容は、同シラバスの「14. 授業展開及び授 また、このクラスの学生とは授業時間外に課題
業内容」にあたるが、現在公開されているのは4 に関するメールのやりとり、添削指導を頻繁に行
月中旬に修正したものである。修正前の予定は以 ったため、予定よりも早くシラバスの授業内容(課
下のとおりであった。 題レポートの作成と発表)が終わってしまった。
第1回 オリエンテーション そのため、余った時間にシラバスにはなかった特
(シラバス・授業の進め方・宿題・期末課題の確 別演習を実施した。
認) 自己紹介文の作成
第2回 説明文の作成(プリント使用) 3.学生の反応と今後の課題・可能性
第3回 意見文の作成①(文章の型)
第4回 意見文の作成②(問題提起の仕方) このクラスの学生のインターネット環境はいず
第5回 事実か意見か(プリント使用) れも安定しており、また真面目な学生が揃ったた
第6回 テキスト批評①(要約文の作成) めか、全てが滞りなく予定通りに進んだ。課題を
第7回 テキスト批評②(問題提起と議論) 提出し忘れていないか常に気にしている学生もお
第8回 テキスト批評③(発表) り、ある意味、気の毒に感じるほどだった。
第9回 レポートの構成(プリント使用) 教員としては、本来であれば図書館に行って課
第 10 回 引用の仕方(プリント使用) 題レポートの構想を練ってもらうはずだったのが、
第 11 回 課題レポートの作成①(構想、計画、材 実施できなかったのが残念である。大学図書館に、
料収集等) 学生が自由に利用できる電子書籍や電子ジャーナ
第 12 回 課題レポートの作成②(下書き、推敲) ルを備えるよう法的に整備してほしいと思った。
第 13 回 課題レポートの作成③(清書)
第 14 回 課題レポートの発表、ディスカッション
第 15 回 まとめ、授業評価

1
https://www.tokyo- aduate/2020/nagoya_s.pdf pp.210-211.
fukushi.ac.jp/introduction/images/syllabus/undergr
11
東京福祉大学(名古屋キャンパス)
「アメリカの文 持ち込みあり、検索ありを前提とした内容に変更
化と言語 I」(1 年生対象)授業実践報告 した。
加藤由香子
3.学生の反応と今後の課題・可能性
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内
容、成績評価の方法 オンライン授業では、安定したインターネット
環境が必須であり、大前提である。しかし、このク
紙面の都合上、2020 年 10 月 10 日現在 web 上 ラスではその条件を満たしていない学生が多く、
で公開されているシラバスの「7. 講義概要」「11. 月末になると通信制限がかかるのか、トラブルが
成績評価の基準と評定の方法」
「14. 授業展開及び 相次いだ。学生のインターネット環境の整備につ
授業内容」を参照されたい。2 いては、最優先で何らかの施策が取られるべきだ
なお、「14. 授業展開及び授業内容」は全 15 回 ったと思う。
の授業を 13 回に縮小し、行われない2回の授業の 1年生の授業のためか、IT リテララシーの差が
代わりに2回の課題研究(または補講)を設定する 大きかったことも大変だった。自分の声の録音、
という依頼のもと、4月中旬に再提出したもので 音声ファイルの添付、Quizizz の登録、Google
ある。 Forms での回答の送り方などについて、大多数は
問題なくとも、詳細な説明を求める学生が必ずお
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 り、授業後に時間をかけて説明したり、特別にマ
づいて変更し実施した授業内容 ニュアルを作成したりする必要があった。今後の
ことを考えるならば、大学は初心者にも使い勝手
遠隔授業の方法についての指示は、時間割どお のよい LMS を導入することが不可欠であろう。
りの同時双方向であったが、学生が通信不良で参 通信に問題がないときの学生の反応としては、
加できないケースが起こることを考慮し、毎回、 まず、Zoom のブレイクアウトルームを利用した
授業の代替課題をメールで連絡するよう求められ ペアワークの人気が挙げられるだろう。対面で行
た。 うよりも素早く、ランダムにグループ分けできる
代替課題への対応は、初めのうちは出席できな のはオンラインなればこその利点である。
かった学生に個別対応していたが、途中から また、授業中、チャットであれば積極的に参加
Quizizz にあげ、出席者も含め、全員が授業内容を する学生が意外に多かったことも面白い発見だっ
自動的に復習できるようにした。3 た。今後、対面の授業においてもチャット機能は
筆 記 を 要 す る 課 題 研 究 に つ い て は 、 Google 標準装備すべきかもしれない。
Forms を準備し、試験も Google Forms で実施し
た。
授業内容は現在公開されている修正版シラバス
に沿うものとなった。
遠隔授業による制約を一番受けたのは、期末試
験だった。試験もオンライン実施になったため、

2
https://www.tokyo- graduate/2020/nagoya_s.pdf pp.1-2.
fukushi.ac.jp/introduction/images/syllabus/under 3
https://quizizz.com/
12
東京国際工科専門職大学「英語コミュニケーショ を説明しておく。この時、
「〇〇君はもう書けたか
ン 1a」(1 年生対象)授業実践報告 な」など顔出ししていない学生たちに積極的に声
門田裕次 をかけるようにする。学生を指名しながら到達目
標に関連した下線部置換えダイアログ、フレーズ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 穴埋め問題、選択式問題などを行う。授業中は必
容、成績評価の方法 ず一人一回は指名するようにして学生の集中力保
必須授業である「英語コミュニケーション 1a」 持を図る。⑤[Practice] Zoom のブレイクアウトセ
は統一シラバスに基づき、自己紹介など基本的な ッション(1 グループ 4 人 20~30 分)
を利用して、
意思疎通を英語でできるようになるために協同学 ページ指定したテキストの問題や LMS 上の課題
習(ペアワークやグループワーク)を通しコミュ に取り組む。課題はノートテイキングした内容か
ニケーション能力の向上を目指す講義内容として らの出題とし、またグループ内の関係を築きやす
いる。シラバス作成段階では、科目認定条件出席 い題材にする。この協同学習で peer feedback や
率は 80%以上、評価方法は、提出物・プレゼンテ self-evaluation を意識するよう指示する。Zoom に
ーション 70%、授業参加度 30%であった。 は教員が各セッションルームを巡回できる機能も
あるが、学生同士のやりとり (interaction) に焦点
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 を当てることと、4 月の開講以来ずっと自宅から
づいて変更し実施した授業内容 独りでオンライン受講している学生がクラスメイ
遠隔授業に切り替えとなった「英語コミュニケ トと親睦を深める機会を作るため、教員による巡
ーション 1a」
(レベル別 1クラス 34 名)は Zoom 回はなるべく行わないことにした。⑥ブレイクア
と LMS(学習管理システム)を利用した遠隔授業 ウトセッション終了後、テキストの問題と課題の
(90 分)を週2回実施した。遠隔のルールとしては、 シェア・フィードバックを行う。⑦質疑応答の時
授業開始 20 分前に Zoom を立ち上げ毎回授業を 間を設け、
最後に LMS 上に提出する課題
[Produce]
録画すること、学生の「顔出し」は強制しないこと を説明する。
である。遠隔授業ではプレゼンテーションは行わ
ず LMS 上での課題提出のみを評価の 70%に変更 3.学生の反応と今後の課題・可能性
し た 。 著 者 の 遠 隔 授 業 は PPP (presentation, 演習プリントを適時配布できる対面と違い、遠
practice, produce)をベースに展開した。①スライ 隔の場合、事前に LMS 等に資料のアップロードが
ドにパスワードを表示し LMS で出席登録をさせ 必要である。しかし、ダウンロードできない PC 操
る。②学生にミュートを外すよう指示し、スライ 作に不慣れな学生も多いため、教員は自分がデザ
ドに表示した前時の復習問題(5 問程度)を インした授業に合った技術面で無理のない遠隔授
teacher-fronted Q&A のスタイルでテンポよくク 業スタイルを研究しなければならない。
ラス全員で解く。この時、学生の「声音」からその 遠隔授業に対し、学生は概ね好意的な反応を示
日の体調や学習意欲を読み取る。③その日の到達 した。教員は提出物に対しいつも以上にポジティ
目標をスライドに表示する。④[Presentation]スラ ブで丁寧なフィードバックをすることで、画面の
イドの内容をノートテイキングさせながら授業を 向こうにいる表情の見えない学生の自己効力感と
展開する。ノートテイキングの目的は、一方的に 学習に対する内発的価値を高めなければならない。
ただ画面を見るのではなく、遠隔の形態でも自律 また、遠隔授業では、独りで受講している学生間
的学習態度を形成することであり、ノートテイキ のやりとりを促す「コーディネーター」としての
ングした内容は LMS の課題と連携していること 役割も教員が積極的に引き受ける必要がある。

13
東京工業大学・英語第五・第六(リスニング・スピ なくとも二度に一度はライブ授業とした。ブレイ
ーキング)」(2年生対象)授業実践報告 クアウト・ルームを活用し、学生同士が宿題の解
木内久美子 答を話し合ったり、会話やプレゼンテーションを
練習するようにした。各ブレイクアウト・ルーム
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 の確認をこまめに行い、個別に質問に対応した。
容、成績評価の方法 プレゼンテーションは、インターネット接続の
履修者は 25 名程度。学生の英語力は様々である。 悪い学生も参加できるよう、ライブではなく、事
講義の目的は、外国語能力の四技能のうち、特に 前にズーム上で録画、オンライン・ストレージに
リスニングとスピーキングの練習を通して、発信 動画をアップロード、リンクを作成してもらった。
力を向上させることである。当初の授業計画では、 プレゼンテーション当日は、5~6人のグループで
(1)DVD付の教科書を活用したリスニング練 リンクを交換しあい、ビデオを見てから、英語で
習を行う、(2)アカデミック・プレゼンテーショ Q&Aをおこなった。教員は、すべてのグループ
ンの基礎知識を習得する、
(3)対面でプレゼンテ のセッションに同時には参加できないため、プレ
ーションを練習する、という予定だった。また成 ゼンテーションのQ&Aの様子を学生に録画、提
績評価の基準は、毎週の提出課題、プレゼンテー 出してもらい、後日、学生にフィードバックを返
ション、期末テストとしていた。 却した。また実験的にスラックを併用した。

2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 3.学生の反応と今後の課題・可能性
づいて変更し実施した授業内容 学生から好反応だったのは、オンデマンドのコ
コロナ禍での対応として、全学で原則 Zoom に ンテンツである。教科書にはない内容の面白さと、
よるオンライン授業を行うことになった。とはい マイペースで学習できることが評価された。また
え、Zoom で授業をすることは義務ではなく、オン プレゼンテーションを録画することで、自省の時
デマンド授業や、学生の自習と課題の提出(+教 間が生まれ、パフォーマンスの向上につながると
員の添削)による授業も認められていた。 いう意見もあった。さらにスラックのおかげで、
この状況において、まず教材を自作教材に変更 学生の声を拾いやすくなった。ブレイク・アウト
した。事前に実験したところ、Zoom 画面では、指 セッションにたいしても、学生はおおむね好意的
定した教材の DVD の映像をスムーズに共有する だったが、参加学生の英語力や教材への取組み方
のが技術的に困難だった。授業中に問題が生じな の違いがディスカッションの質を左右するため、
いよう、事前にリスクを回避した。 不満の原因になりかねず、配慮が必要だろう。学
また、オンデマンドとライブを組み合わせた授 生の意見としては、宿題が多すぎる、コンテンツ
業編成とした。当初はライブのみで授業をしてい が難しい場合は、ライブ授業にしてほしい、等が
たが、長時間に及ぶと学生の集中力が途切れやす あった。
い。そこで解説中心の授業は、オンデマンド動画 オンライン授業では通常の授業以上に、明確な
とし、ストレスの多い環境で学生が自分のペース 学習目標の提示、学習への動機づけ、適切な指示
で学習できるよう配慮した。また目的意識をもっ 出しが重要であると感じた。それには教員の入念
てビデオを見られるよう、グーグルフォーム上の な授業準備を要する。教員の負担を考慮しつつ、
クイズに解答させた。解答はオンラインで回収し、 この経験をさらなる授業改善に生かしていきたい。
コメントをつけて添削して返却した。
授業での参加者意識を維持してもらうため、少

14
東京工業大学「英語第一 クラス 15(LS)」(1 年生 用してシャドウイングを徹底して訓練してもらっ
対象)授業実践報告 た。それらの訓練の合間、台詞から読み取れる登
小泉勇人 場人物の心理や社会背景の解説を挟むことで、単
調になりがちな音読訓練にリベラルアーツ教育と
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 しての厚みを加えた。
容、成績評価の方法 成績評価の割合は、毎回の小テストと期末課題
本授業では、筆者が著した英語教科書『現代映 で半々とした。小テストは、教科書にある音声書
画のセリフで鍛えるリスニングスキル』(2019)を き取り問題(dictation)を5問、オンライン上で繰
出版後に始めて採用する授業であり、大学英語教 り返し流し、解答は授業コメントと共にGoogle
育を強化するにあたり筆者が提案する三点を踏ま Formsにて集計した。オンライン上でのリスニン
えて英語学習を提供する予定であった。三点とは グ問題実施はリスクも伴うが、厳しい査定ではな
すなわち、(1)英語発話の癖である脱落や連結に く、大半が十分に正解を書けるまで繰り返し流す
慣れる、(2)それを踏まえて映画の台詞をシャド ようにした。授業コメントは集計を行い、受講生
ウイング(聴いた音声を直ぐに繰り返して発話)、 による刺激的な見解や疑問に答える形でのQA集
(3)作品を社会的に読み解く観点からの映画解説 をほぼ毎週に渡って配布した。
である。 学内ポータル経由で提出する期末課題は、教科
到達目標は、日本語字幕なしでも映画の一場面 書掲載の映画から受講生が社会的な問を各自で見
が理解できるほどのリスニング能力の獲得であ 出し(例えば、Unit5.で扱う007映画Skyfall(2012)
る。成績評価は、「授業参加による貢献」が 2 からは“Is technology guarantee of efficiency and
割、「中間試験」が 2 割、「期末試験」が 6 割で benefit?”という問が見いだせる)、ネット上で読
あった。 める英文記事(TIME, The New York Times, The
Guardian etc.)を引用して学術的に論じるという
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 ものであった。学術的文章の技術(パラグラフ、
づいて変更し実施した授業内容 構成、引用等)については授業内で余談として解
オンライン授業として、リアルタイム、オンデ 説を重ね、大学生に相応しい学術的文章を受講生
マンド配信、ポータル経由での課題提示/提出等 が書けるよう配慮した。
のいずれかまたは組み合わせての実施が要請され
た。本授業は主にリアルタイムとYouTube限定動 3.学生の反応と今後の課題・可能性
画によるオンデマンド配信を交互に実施した。両 運営についてはリアルタイムとオンデマンドの
者で授業内容に変化は無いが、この事態を奇貨と 組み合わせが良い気分転換になったという意見が
してオンデマンド授業を展開する好奇心に駆られ あった。内容については、映画の興味深い解説と
た。掲載する動画は手持ちのカメラやZoom機能 ともに脱落や連結に注目した音読学習が新鮮であ
で撮影し、授業時間に合わせてYouTubeの動画 ったという意見もあった。執筆した教科書の効力
URLをポータル経由で配信した。 を確かめるという意義もあり、授業者本人として
当初の予定内容とさほど変わらない形での授業 も大変に充実した授業であったが、自身の癖とし
実施を狙い、折に触れて音読学習を行った。リア ていかんせんエネルギーを注ぎすぎる傾向があり、
ルタイムにせよオンデマンドにせよ、受講生と共 ただでさえ準備に時間がかかるコロナ禍において、
に音読を行い、または時間をとって各自画面OFF 過労に陥らないよう警戒する必要があるだろう。
にした状態で個別に音読、各自DLする音声を使

15
明治大学「英語講読 I」(1 年生対象)授業実践報 第五~十二回はStanley Milgram博士による心理学
告 文 献 Obedience to Authority (1971) と 、 Chuck
小泉勇人 Palahniukによる米現代小説 Fight Club (1996)を
抜粋して読んだ。解説では、受講生による英文読
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 解の精度を確認しつつ、文学的な知識を提供する
容、成績評価の方法 ことで深い読解へと誘った。ナチズム/同調圧力と
本授業では小説、論説、戯曲、詩を取り上げ、解 の対峙、ニーチェ哲学、ミルトン『失楽園』におけ
釈を深めつつ英語を読み込む営みを目的としてい るルシファー/堕天使/悪魔の反逆、
「フランケンシ
た。受講生は課題文章を読み、クラス内討論に臨 ュタイン・コンプレックス」、スタンフォード監獄
み、最終的には任意で選んだ文献についての論述 実験等を話題に挙げた。
を提出する手筈であった。到達目標は、自身の読
解を他者と分かち合える能力の養成であった。成 3.学生の反応と今後の課題・可能性
績評価は、「授業への貢献」が4割、「レポート内 当初の計画と異なり、本授業ではあえて受講生
容」が6割であった。 が読解の手がかりを元にただ一人で英語を読み、
解説を授業で聞いて理解を反芻する手法を採用し
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 た。方法は一つではないが、「英語講読」という観
づいて変更し実施した授業内容 点からも、コロナ禍であるからこそ自分と向き合
ポータルを利用したオンライン授業の実施が要 う読書指導を目指した。受講生の反応としては次
請され、方法として①リアルタイムでの授業配信、 の例を挙げる:不慣れな小説表現が「段々と分か
②授業を収録しての動画配信、③音声入りの教材 るようになった」、英語は得意ではないが理解と
提供、④ポータル経由での課題の提示/提出、等が ともに「面白いな」と感じるようになった、授業を
挙げられた。本授業では①②④を採用した。②に 通じて「『真の』英語力が鍛えられ」て成長した、
際しては、Zoomで解説動画を撮影、YouTube限定 授業をきっかけに「ジョージフロイド事件」につ
動画として掲載し、URLをポータルから配信した。 いて理解を深めようと TIME を読んだ、「夏休み
初回では最初の教材であるBBCの閲覧方法を解説 は内容を知らない英語の本を 1 冊読んでみたい」
し、規定用紙に課題内容を書き数日内にポータル という志を持った、等の反応である。目立った不
に提出するよう指示した。課題内容は多くの回に 満は見受けられなかったが、それは講師の力量に
お い て (1) 文 章 の 要 約 、 (2) 新 出 単 語 の 解 説 よるものではなく、教材に恵まれたことと、幸運
(Longmanなどネット英英辞典を経由しての理解)、 にも次のような見解を持つ受講生に多く恵まれた
(3)興味を覚えた段落の引用・分析・解釈、(4)英文 お陰であるのは言うまでもない:「授業をしっか
解釈上の疑問点および自分なりの仮説、(5)授業の り聞き、余裕をもって課題を提出するという当た
感想、によって構成されている。以降の回は同じ り前のことが当たり前にできて良かった」。
「今ま
流れを組み(4)に対して解説を加えることで授業 では、問に対しての答えが決まっていて、ただ機
を展開した。オンライン授業への切り替わりを契 械的に答えを見つければよかったが、大学の授業
機とし、第一~四回まではネット上で閲覧できる では違うということを実感させられた。(略)大学
無料の資料を採用した。リアルタイムの記事を では自分で主体的に問題を発見して、それに向か
BBC/TIMEで、絵画の解説をThe National Gallery って解決する力が必要だ」。
のサイトで、現代美術の解説をTate Modernのサ
イトで読み、課題作成に落とし込む営みであった。

16
法政大学法学部「外国書講読(中国語)Ⅰ」授業実 「ズーム疲れ」を配慮し、一回の授業を二つの会
践報告 議室と設定し、10 分間の休憩時間を設けた。⑤副
黄偉修 教材について:データ節約のため、映像の副教材
は使用しない。図書館も利用できなかった時期は、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 手元に持っている資料を配布し、ネット資料の閲
容、成績評価の方法 覧を学生に指示した。
【授業の概要と目的】毎回時事的な中国語、具体
的には雑誌及び新聞記事の講読を行う。また、中 3.学生の反応と今後の課題・可能性
国大陸に限らず、台湾と香港などでも中国語が使 ①学生の反応:授業の内容と質にも満足できた。
用されているため、中国語圏の文献を幅広く使用 ②担当教員と履修者のインターネット環境は順調
する。履修者が読解に必要な力を身に付けること にリアルタイムの授業が行えるかどうかの要素で
は本講の主な目的である。また、履修者が文献を あるが、雑音、映像と音声の途切れと乱れは基本
通じて中国語圏全体への理解を深めることも本講 的に避けられない。③副教材の質:古い資料の配
の重要な目的ですので、中国語圏の事情に興味の 布しかできない時期もあったため、図書館が今後
ある学生、これから中国語圏の事情について学び できるかどうかも重要な課題であるが、職員には
たい学生の履修を歓迎する。
【到達目標】①辞書さ 感染拡大の時期に出勤してもらうわけにはいかな
えあれば中国語の新聞や雑誌の内容が理解できる い。④少人数の授業であるため、学生のインター
能力を身に付ける。②中国語の文献を通じて中国 ネット環境の調査ができたが、大人数のクラスな
語圏の政治、経済、社会、文化などに対する理解を ら調査と対応が難しいと考えられる。⑤中国のネ
深める。【成績評価の方法と基準】試験(30%)、 ット検閲をめぐって;中国ではネット検閲によっ
授業内での議論への参加(50%)、平常点評価(20%) て VPN を使わないと Google のツールが利用でき
を評価する。 ない。それをめぐる米中の対立によってズームも
中国向けサービスを中止した。中国籍の留学生が
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 新型コロナウィルスの感染拡大で再び日本に入国
づいて変更し実施した授業内容 できない場合、どのようなツールでオンライン授
①リアルタイムのオンライン授業:本講義は少人 業を行うかは問題になりそうである。また、たま
数でかつ語学関係の授業であり、講師が直接に学 にネイティブの方も本講義を受講し、多くの中国
生の発音と反応など確かめる必要がある。そのた 政治関係の授業やゼミもリアルタイムで行われる
め、リアルタイムで授業を行うという前提で履修 というが、中国籍の学生は国内で中国を批判する
者のインターネット環境調査を行い、問題ないと 記事をオンライン授業で読むために逮捕される恐
わかったため実行した。正式の授業の前に自由参 れがある。ただし、担当教員がそれについて配慮
加のテスト講義も行った。②リアルタイムのため、 すれば、学問の自由に抵触することになる。実際
1.で提示した講義の概要、授業の進め方、および評 に中国に関する話をしないように海外の大学が中
価に変更はない。ただし教材はこれまで教室で配 国の留学生の要請で教員に指示したり、教員が中
布してきたが、事前に学習支援システムで配布す 国の留学生に頼まれたりした事例もあるという。
ることにした。③Google Meet による授業:ズー 中国のネット検閲が学問の自由と形式に与えた悪
ムのセキュリティをめぐる指摘も多く、法政大学 影響は、国、学界全体の問題であると言えよう。
の学生なら専用 Gmail のアカウントも持っている
ので、Google Meet で講義を行うことにした。④

17
桜美林大学「口語表現Ⅰ」(1年生対象)授業実践 る:スピーチ分析・評価、聴き手としての自己分
報告 析・評価(30%)、この3つを材料・観点として評
清水貴恵 価する。なお、各活動を通じたクラスへの参加・貢
献度も含んでいる。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内
容、成績評価の方法 2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
(1)科目の概要 づいて変更し実施した授業内容
「口語表現Ⅰ」は、桜美林大学学士課程におい 本科目の変更・調整点として、発表者への評価
て 30 年間に渡って開講している初年次必修科目 コメントの伝え方、発表後の振り返りの方法など
である。2020 年度は約 1300 名(2学群新入生) がある。例えば、Zoom のチャット機能を活用した
が履修し、約 70 クラスを開講している(9月末日 り、その場で評価を述べたりするなどだ。
現在)。 また、筆者のクラスでは、リアルな協働を補う
本科目の学習目標は、スピーチの実践を通じて ため、本学の博物館的施設(桜美林草の根国際理
論理的に伝える力と批判的に聴く力を伸ばすこと 解教育支援プロジェクト)のハンズ・オンの実物
である。全クラス共通のシラバスにもとづき、各 資料を活用したワークショップを行った。そのひ
教員がクラスの実態に応じ授業を行っている。本 とつを簡単に紹介する。異文化資料を観察した学
稿はその実践の一例として報告するものである。 生が、観察していない仲間に的確に描写説明し、
資料群から見つけ出させるアクティビティである。
•週1コマ(100 分)12 週(通常は 14 週) 話す/聴く力と協働が試される活動だが、学生は
•少人数制(1クラスあたり 20~25 名程度) グループで楽しみながら言葉を交わし、伝えあう
•教員(計 20 名)はスピーチコミュニケーション こと、協働することの面白さを味わっていた。
や言語教育などを専門とする
•オンライン web 会議ツール Zoom で全回実施(大 3.学生の反応と今後の課題・可能性
学で運営システムを整備) 科目全体として、出席率の高さがあげられた。
本科目は人前での口頭発表に対する苦手意識が強
(2) 内容・方法 い学生ほど大変なチャレンジ(負担)であろう。し
本科目の特長は、学生が学習主体として参加する かし、オンライン授業により、学生によっては安
演習形式である。学生は「スピーチをする」、「聴 心できる環境下で受講できたのではないか。
き手として評価する」といった役割を果たすこと また、聴き手としての振る舞いが大きく向上し
でクラスに参加・貢献する。スピーチ発表後には、 たと思われる。音声による表現に制限があるため、
話し手/聴き手としての自己分析・評価を行う。 表情や視線、姿勢、うなずきなど非言語コミュニ
その際、自身の発表の動画記録、聴き手(クラスメ ケーションの重要性を強く意識し、実践する姿が
イト)からの他己評価、また他者評価(クラスメイ 見られた。それが共有され、模倣しあう相互作用
トの発表や聴き方)も分析・評価の材料とし、複眼 の積み重ねにより、よき聴き手としてスピーチを
的かつ批判的に振り返る。 支え、結果としてクラスへの参加・貢献度を上げ
たと思われる。
(3) 成績評価 活動の場を共にできないもどかしさや不便さは
本科目では、①話す:スピーチの準備・発表(40%)、 あったが、学生の学習への参加度、他者を思い聴
②聴く:他者の発表視聴・評価(30%)、③振り返 こうとする意識の向上に手応えが感じられた。

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目白大学「韓国語基礎会話」(1 年生対象)授業実 学習語彙・表現を増やすために「Quizlet」アプ
践報告 リを使用し、事前学習を行った。小テストの後、受
朱炫姝 講生が自己採点し、その結果をスマホで撮影し提
出する。それを教員が確認し Google Classroom 上
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 でフィードバックを行った。
容、成績評価の方法 会話練習では、ネイティブスピーカーの教員と
目白大学韓国語学科では、習熟度別にクラス分 会話練習し、Zoom のブレイクアウトルームの機
けし、会話・文法・聴解・作文の基礎科目を設けて 能を使い、グループワーク活動を実施した。
いる。筆者が担当した当該科目は、初級後半レベ その後、受講生自ら「画面共有」の機能や Google
ルの受講生を対象に、日本語と韓国語の音韻体系 Slide を使用しプレゼンテーションやロールプレ
の相違を発見し、コミュニケーションに対する理 イングを行った。また、気づきと質問の内容につ
解と算出における学習を深めることを目的とする。 いて Google Forms を利用し受講生同士で共有し、
また、日常生活に関わる話題について言い換え表 協働的な学習活動を通じ、学習効果はさらに大き
現等を用いながら、意見や気持ちを伝える力を養 くなったと考える。
い、言語運用能力を高める講義である。 さらに、会話の実践学習として、韓国人日本語学
講義内容は日常の暮らしにおける会話場面を設 習者とオンライン交流学習を行った。韓国語能力
定し、受講生自ら学習する語彙や表現を考え、協 を実践の場で試すことのできる貴重な経験となり、
働学習を通じて学習する。個人・グループで会話 学習意欲が高められたと思う。
練習を行い、学習した語彙・表現を使いこなせる 講義後は、振り返りシートに学んだこと、理解
ことを目指す。 できなかったことを記入し、自分の学習を内省し、
成績評価は、授業態度を含む平常点が 40%、発 学習内容を復習した。
表活動が 30%、課題レポートが 30%である。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 受講生からのアンケートでは、「受講生同士が
づいて変更し実施した授業内容 韓国語で会話する機会が多く、話す力、伝える力
目白大学では、遠隔講義の準備段階で、オンデ が実践的に養われていると感じた」、
「韓国人教員
マンド型、講義録型、課題型とこれらを組み合わ と会話することで、自分の語彙力や会話力を確認
せた複合型講義をすすめており、受講生の通信状 することができ、言語学習の楽しさを覚えた」、
況の配慮を基本方針として定めていた。しかし、 「画像や動画資料を用いた説明が分かりやすかっ
当該講義は言語学習講義であるため、基本的には た」等の意見があった。
同時双方向型講義で運営した。ただ、受講生のネ 対面講義では実施計画であったプロセスドラマ
ット接続環境がよくない場合には講義内容を収録 を通じた学習活動は実現することができず、個人
し、その動画を視聴し、課題活動を遂行した場合 ワークのプレゼンテーションに偏ってしまった点
には出席として見做した。 が今後の課題である。遠隔講義の可能性として、
LMS は Google Classroom を利用し、講義情報 言語能力の向上はもちろん情報活用能力を高める
や資料を配信した。授業では Zoom を使用したが、 ことができ、両者の関連性について検証する価値
講義の冒頭に通信状況を確認し、ネット環境が不 がある点が挙げられる。
安定な受講者を除き、原則全員がカメラをオンに
して講義に参加した。

19
東京国際工科専門職大学「コミュニケーション英 3.学生の反応と今後の課題・可能性
語 1a」(1 年生対象)授業実践報告 講義形式の授業配信と違い、interactive な授業
菅谷孝義 展開が必要とされる語学系科目では、Zoom オン
ライン授業では課題が多い。特に、発話を要する
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 場面での対応が困難。ミュート状態で音読練習を
容、成績評価の方法 行う際には、教室と違い、全員の声を聴くことが
到達目標:「相手への質問」「意見を述べる」など できず、巡回しての個別対応が難しい。また、リス
英語を使って基本的な意思疎通を図れるようにな ニング演習に関してもメモ取りが確認できない。
る。コミュニケーション・ストラテジーが理解で 最大の課題は、ペアワークで、お互いにノートや
きるようになる。 演習の答えを見せ合うことができず、非対面では
授業概要:毎回項目を決めて、文法ルールを理解 打ち解けられないという難しさもある。1 年生の
し文の構造の分析も行う。教員は基本的に英語で 授業ということもあり、他の学生とうまく交われ
授業を行い、学生グループを巡回して、会話に参 ず、終始無言や、授業を欠席しがちな学生も見ら
加し、個別の質疑応答を行う。授業ではペアワー れた。
クを多用して各 Unit のテーマに関連した質問、意 これに対する対応策の 1 つとして、
今後の Zoom
見交換を行う。 授業ではブレイクアウトルームの有効的な使い方
評価方法 :出席 30% Writing 課題 30%・小テス がカギとなると思われる。指導者は、極力すべて
ト 10% 期末スピーチ課題 30% のグループを巡回し、話しかけ、ここの学生の個
性、特徴をオンライン上で掴むこと、オンライン
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 上でしか話の出来ない学生といかに距離感を縮め、
づいて変更し実施した授業内容 親近感を抱かせるかが、語学系クラスではポイン
LMS(Learning Management System)による出 トとなる。また、課題提出の際、評点、添削、フィ
席 PW 入力(授業開始 15 分以内)、LMS 上での課 ードバックによる個々の学生との対話も、オンラ
題提出、評点、Zoom 授業中の音声ミュート、ビデ イン授業においては貴重なコミュニケーションツ
オオフ(顔出し強制なし)等を大学側が統一ルー ールとなりうる。更に、コロナ禍において学習者
ルとして設定。しかし、ビデオオフ受講ルールの は必然的に自律学習を進めていかねばならない中
弊害として、出席入力後、授業をそのまま抜ける で、オンライン課題提出と指導者によるフィード
学生が一部おり、これに対する対応として、講師 バックは、メタ認知学習能力の促進する効果があ
からの質問等への返答がない学生は欠席扱いとし ると考えられる。ライティング課題においては、
た。また、顔出しを出席条件として必須とするこ 指導者による添削は、間違い個所をハイライトす
とに変更後、授業を抜ける学生は減ったものの、 るのみに抑え、訂正を行わなかった。その結果、多
様々な理由から顔出しを拒む学生も多く、何度も くの学生に、
「何故ハイライトされているのか」を
繰り返し顔出しを要求して全員ビデオオンになる 意識する習慣が身に付き、あまり教えすぎないこ
には数回の授業を要した。学生からの授業内容に とで、学習者が自ら「気付く」メタ認知的学習能力
関する質問は、Slack ワークスペースでの Direct を少なからず誘発できたと自負している。こうし
Mail 機能を使って個々の学生とのコンタクトをと た指導者側の課題フィードバック等の工夫による、
り、対応する形をとった。 遠隔学習を通じたメタ認知能力の開発、自己調整
学習者育成の可能性を今後も検証していきたい。

20
東北学院大学「フランス語 IA」(1 年生対象)授業 適時教授した。③文学の利用:文学の有用性が叫
実践報告 ばれて久しい。しかし、危機に瀕した時、人類がそ
鈴木真太朗 れをどう乗り越えてきたのかを知るには、やはり
文学が有用な手段の一つに成り得る。本授業では
1.本授業の目的は、第一にフランス語の基本的 幾つかの文学作品を例に、この点を示した。具体
知識と初歩的技術の修得、第二に仏語圏文化に対 的には、スライドに文学作品(カミュ『ペスト』、
する理解を深めることである。 ヴァレリー『海辺の墓地』、モンテーニュ『エセ
第 1~15 回の講義概要は次の通りである: ①初 ー』、デカルト『方法序説』、パスカル『パンセ』)
級フランス語と仏語圏の文化的多様性の教授、② の章句を映し、学生と共に一語一語を味わいなが
実践演習(文章読解、ディクテーション、仏作文、 ら、その意味を考察した(ただしこの試みは授業
会話練習)。 進行を妨げないよう、予定より早く授業が終わっ
成績は次の 2 項目(①筆記試験 60 点、②授業参 た場合にのみ導入した)。④会話演習:語学という
加姿勢 40 点)の合計で評価予定であった。 特性上、会話演習は不可欠である。本授業では
ZOOM のブレイクアウトルーム機能を利用し、会
2.大学から要請された遠隔の主なルールは、① 話演習を積極的に導入した。
ZOOM(ウェブ会議システム)を用いたオンタイ
ム式あるいはオンデマンド式による授業の実施、 3.学生の反応をみるに、フランス語及び仏語圏
②manaba(学習管理システム)の活用、③通常試 文化への関心は高まったようである。事実学生か
験に代わる手段での成績評価、の 3 点である。 らは、交流への好感や実力向上の実感を示す肯定
このルールに基づいて変更し、実施した授業内 的な声が多数寄せられた。授業に対する学生の満
容は次の通りである。ルール①について:アンケ 足度は総じて高かったと言ってよい。
ート結果に基づき、筆者はオンタイム式で授業を 他方、ややコンテンツ過多の授業だったことは
行なった。授業で使用した各種資料は適宜 manaba 否めない。よってこの点については、授業目的と
上で共有した。ルール②及び③について:個別指 の関連という観点から批判的検討を加えねばなる
導、課題添削、試験の実施に manaba を活用した。 まい。
上記の他、特に配慮、工夫したのは次の諸点で 本授業を振り返ると、遠隔授業だからこそ導入
ある。①学生の士気:この点が特に懸念され、学生 できた手法が少なくない。オンライン勉強会はそ
の士気を上げる方法を筆者なりに探った。次はそ の好例である。オンライン勉強会と通常のオンラ
の一例である。実用フランス語技能検定試験(以 イン授業の相互作用によって、学生の意欲と学力
下仏検と略記する)を学生に紹介し、関心の有無 は確かに向上したからである。対面式/遠隔式、
を調査したところ、多くの学生から関心が寄せら いずれか一方の良さを強調するのではなく、両者
れた。そこで授業後、希望者を対象に仏検対策の の長短を相対的に検証することで、新形式の授業
オンライン勉強会を行うことにした。幸い半数以 運営も可能になるのではないか。交換留学協定校
上の学生が勉強会に参加した。仏検合格という具 との連携を通じ、仏語圏の大学生とのオンライン
体的な目標は、程良い緊張感を生み、学生の学習 会話や討論演習を対面式授業に導入し、
「本物」に
意欲を大いに高めたようである。②多様な文化の 触れながら実践力を高めていくという方向性も不
理解:仏語圏の文化は一種独特な様相を帯びる。 可能ではないと思われるのである。
そこで筆者は、様々な映像・音声資料を活用し、仏
語圏の地理歴史、文化的多様性、今後の可能性を

21
仙台白百合女子大学「ビジネス・イングリッシュ」 のである。唐突で図々しい筆者の依頼にもかかわ
(2 年生対象)授業実践報告 らず、みな即諾してくれた。筆者はその後、戴いた
鈴木真太朗 動画を編集して一つの教材にまとめ、それを学生
に観てもらった。いずれの動画も好評を博したが、
1.本授業の目的は、第一に国際ビジネスの場で 特に C の方の動画が学生の心に響いたようである。
求められる英語の基本的知識と初歩的技術の修得、 本学卒業生でもある彼女は、グローバルな活躍を
第二にビジネス・マナー、プロトコルの理解と修 志す学生にとって、良きロールモデルなのだと思
得である。 われる。②ビジネス文化の多様性の理解:国際ビ
第 1~15 回の講義概要は凡そ次の通りである: ジネスの場は多様であり、求められる英語表現や
①初級ビジネス英語、英語圏のビジネス文化、マ マナーは国によって大きく異なる。この授業では
ナー、プロトコルの教授、②実践演習(電話応対、 英語圏(特にカナダ、オーストラリア、イギリス、
討論、プレゼンテーション、文書作成)。 アメリカ)に対象を絞り、映像資料の視聴や文書
成績は次の 3 項目(①筆記試験 60 点、②課題 20 の読解を通じて多様なビジネス文化とマナーに対
点、③授業内活動 20 点)の合計で評価予定であっ する理解を深めた。③会話演習:語学という特性
た。 上、会話演習は欠かせない。本授業では ZOOM の
ブレイクアウトルーム機能を利用し、会話演習を
2.大学から要請された遠隔のルールは、① 積極的に導入した。
ZOOM(ウェブ会議システム)を用いたオンタイ
ム式授業の実施、②manaba(授業管理システム) 3.学生の反応をみるに、ビジネス英語、英語圏の
の活用、③オンライン試験に代わる手段での成績 ビジネス文化への関心は高まったようである。実
評価、の 3 点である。 際学生からは、達成感や充実感を示す肯定的な声
このルールに基づいて変更し、実施した授業内 が多く寄せられた。授業に対する学生の満足度は
容は次の通りである。ルール①について:授業で 概ね高かったように思われる。
使用した各種資料は随時 manaba 上で共有した。 しかし、解決すべき課題は少なくない。動画教
ルール②及び③について:個別指導、課題添削、試 材が学習成果上どの程度有効だったのかについて
験の実施に manaba を活用した。 は十分な検討を加えていない。学生の士気が上が
上記の他、特に配慮、工夫したのは次の諸点で っても英語力の向上という成果が伴わなければ、
ある。①学生の士気:この点がとりわけ懸念され、 教材の価値は半減する。この観点からの批判的検
学生の士気を上げる方法を筆者なりに探った。次 討が課題の一つである。また、機材や家庭の事情
はその一例である。進路希望に関するアンケート でマイクをオンにできず、演習に参加できない学
を実施したところ、特に航空業界、外資系企業に 生が時折看取された。受講生全員が同じ授業効果
関心を寄せている学生が多いことがわかった。こ を得られるよう策を講ずる必要がある。これも課
れらの業界で働いている方のリアルな話を聴くこ 題の一つである。
とで学生の士気が上がるのではないか、と考えた 今回試みた各手法は対面式にも十分導入可能で
筆者はそこで、3 名の知人(A 客室乗務員、B 外資 ある。かように遠隔式の長所を取り入れることは、
系企業社員、C ドイツ在住の美容サロン経営者) 従来よりも一層質の高い対面式授業の展開に繋が
に協力を仰いだ。学生から事前に吸い上げた質問 るであろう。
に答えつつ、ご自身の仕事内容を紹介する動画を
作成し、筆者まで送っていただけないかと頼んだ

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iU 情報経営イノベーション専門職大学 「ビジネ because they were not used to Zoom or had unstable
wi-fi, lecturers could be flexible. Once students
ス英語実習 I (Practical Business English I)」(1年
joined Zoom, they had to write their student ID on
生対象)授業実践報告書 Zoom’s chat as a form of taking attendance. Also,
Liling Sejima students had to use and display their real names in
English on Zoom. Regarding videos, students had to
1. At the Practical Business English I (PBE) class at turn on their video but if it was difficult because of
iU, the class outline is to be able to correspond in unstable wi-fi, lecturers could be flexible. Moreover,
simple Business English, give sightseeing guidance, if there were any technical problems, students were
and to explain how to operate equipment in English. to contact iU because iU can lend students mobile wi-
In order to be successful in business in this global age, fi and computers. In addition, iU was established in
it is necessary to be able to communicate in English. April 2020 so the first term did not start in April as
However, being able to communicate in English is planned because of the coronavirus pandemic. The
insufficient when doing business overseas because first class began on May 7, 2020 via Zoom.
understanding cultural differences and values are Unfortunately, classes before the coronavirus
crucial. In this class, students will learn how to pandemic and online classes cannot be compared.
correspond by email and telephone in English, UNIPA was used to update students and attendance.
organize meetings and business trips, learn basic Google classroom was used to share the syllabus,
Business English conversation such as greetings, homework, submit assignments and take quizzes. On
small talks, and other related themes that are Zoom, I taught TOEIC using the TOEIC Listening &
fundamental in Business English. The class Reading textbook as originally planned but I
objectives and goals are for students to understand personally felt that my class was more boring online
and be able to express themselves, and to acquire the because I told less jokes and had less interaction with
skills and knowledge necessary for global students than how I would typically teach. It felt
communication. Two lecturers teach PBE: one unnatural to tell jokes when I could not see the
lecturer uses “The Daily Drucker” and TED talk. The students’ reactions well. I also felt my lesson was
other lecturer teaches TOEIC by using “公式 TOEIC more predictable online because I was not as
spontaneous compared to face-to-face classes. I did
Listening & Reading 問題集 6th edition”. 90 minute not spontaneously add extra information because I
classes are held twice a week: once a week for the could not read 23 students’ facial expressions well on
lecturer teaching “The Daily Drucker” and TED talk, Zoom.
and once a week for the TOEIC teacher. In regards to
grades, they are evaluated as the following: 3. Since iU focuses on ICT, students reacted well to
Attendance 50%, Speaking 20%, Grammar 10%, online classes. There were students who were
Effort and attitude 20%. Each lecturer provides the familiar with ICT and were tech savvy. However,
grades based on the criteria mentioned above, which many students wanted go to the university campus to
is counted as 50% of the total grade. The two grades interact with their classmates. They also wanted to
given by the two lecturers are combined and is then enjoy the newly built campus where Tokyo Skytree
calculated as the total grade. can be seen from the classrooms. Future challenges
would be building good relationships with students,
2. Because of the coronavirus pandemic, iU requested and making classes more engaging and enjoyable.
lecturers to teach PBE via Zoom. The number of Future possibilities include hybrid classes where half
classes decreased from 15 weeks to 13 weeks for the the class will attend classes online and half the class
first term. There were no changes in the syllabus but will attend classes physically in the classroom.
teachers were required to inform students that there Lecturers will continue teach via Zoom regardless of
will be less assignments than initially required. where the students are. iU is currently considering
Classes were held at the originally scheduled class other possibilities on how students can attend classes
time but lecturers could finish classes after teaching on campus safely.
80 minutes instead of 90 minutes because students
may be tired having online classes back to back. iU 情 報 経 営 イ ノ ベ ー シ ョ ン 専 門 職 大 学 :
There is only a ten minute break between classes so https://www.i-u.ac.jp/
classes could not be extended. Students were counted Liling Sejima:
as late if they joined Zoom within 20 minutes of the https://www.linkedin.com/in/lilingkurakane/
beginning of the class. However, if students were late

23
龍谷大学「ドイツ語Ⅰ」(1 年生対象)授業実践報 共有しながら講義を進めた。学生はカメラも音声
告 も OFF で、教員とのやりとりはチャット機能のみ
田中直 であったが、点呼への返答や演習問題の回答、質
問など、積極的な授業参加が見られた。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 オンタイムでの講義のあと、Zoom を使ってオ
容、成績評価の方法 ンデマンド用の復習動画を作成(パワーポイント
の教材をそのまま使用・演習時間は割愛)、それを
ここに記載する実践報告は 1 回生向けドイツ語 YouTube に限定公開でアップすることにより、欠
初学者用の「文法中心クラス」の講義についてで 席者等へのフォローとした。
ある。(「会話中心クラス」と週 2 回のペア科目 また、毎回、練習問題を宿題に出し、大学の講義
構成となっている。) サイト(manaba)において提出、採点、そして間
講義概要と到達目標はドイツ語科共通のものと 違いを直したものをもう一度提出してもらうなど、
なっており、概要は「発音練習からはじめ、話し言 双方向のやり取りも充実させた。本来は欠席者用
葉を中心に基本的表現を習得する。この過程を通 のための復習動画であったが、受講者の多くが何
して初歩的な文法事項について学ぶ。」、そして目 度も見返し、復習に使用したようであった。
的は「基本的な言い回しや日常的表現を使って、
ごく簡単なやりとりをすることができる。」と設 3.学生の反応と今後の課題・可能性
定されている。
成績評価に関しては教員個人の裁量に任されて 時間割通りのオンタイムでの開講により、生活
おり、本講義では、日常点(講義への参加、宿題の にメリハリがついたという声や、Zoom でのリア
提出などのやりとり)が 60 点分、学期末確認テス ルタイムの講義は臨機応変に問題解説などが聴け
トが 40 点分という配分で評価を行った。 て良かったという声が寄せられた。
パワーポイントにテキストや問題、そして解答
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 など全部入れて共有し、その画面を色のついたポ
づいて変更し実施した授業内容 インターで指し示しながらの講義は、今どこをや
っているのかが分かりやすく、集中できたようで
大学からは「なんらかの理由で出席できなかっ ある。事実、問題演習などは去年の倍以上のスピ
た学生のために講義の録画、もしくはオンデマン ードではかどり、指定テキストだけでは足りずに、
ド教材を残してほしい」という要望のみであり、 あちこちから練習問題を集めてくるほどであった。
後は自由に教員が講義を行うことが可能であった。 毎回の課題に関しても、例年であればやってこ
私の場合はシラバスの変更はなかったものの、 ない学生も見られたが、今期はそれぞれ、とても
オンタイム授業とオンデマンド復習動画の 2 本立 丁寧に取り組み、提出する姿があった。また、それ
てを採用し、実践した。まず、学生にさまざまな面 を教員も一人一人確実に見てやることができたの
においてオンタイムでの講義に支障の出ないこと は幸いである。オンライン上でのこうしたやり取
を確認した後、時間割通りに Zoom を使用し、遠 りを今後も継続していくことで、より学習効果が
隔講義を行った 得られるのではないかという可能性をみせてくれ
この場合、テキストをあらかじめスキャンして た。
(ただ一点、テストは対面方式で実施したかっ
読み込み、それを各項目、各問題のかたまりごと たというのが本音であるが、オンライン上での適
にパワーポイントに張り付け、教材とし、画面を 切な実施方法も含めて今後の課題である。)

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慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)「日本語ス 話すことができるように、
Discord は授業内外で気
キル 1A 講義の受け方」(学部・大学院全学年留学 軽にコミュニケーションを取り合えるように、と
生・帰国生対象)授業実践報告 いう意図であった。2020 年 4 月入学生、特に留学
伴野崇生 生・帰国生にとって「どう友達をつくり人間関係
を広げていくか」は死活問題になると学期開始前
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 から容易に予想できたため、クラスが仲間とつな
容、成績評価の方法 がる場・コミュニティとして機能することを当初
「日本語スキル 1A 講義の受け方」は講義受講 から目指した。ツール選択はその一環であった。
スキルを学ぶためのクラスで、留学生・帰国生を 大学の要請によるものではないが、遠隔授業を
対象とした言語コミュニケーション科目である。 効果的なものにするために授業内容を一部変更し
シラバスに示されていた概要は以下の通りである。 た。最大の変更は学期後半に予定していた「今受
このクラスでは、講義を受けるために必要なス けている、あるいは今後受ける予定の講義科目の
キルを学びます。具体的には、10 分程度の短い講 内容について相談したり学習を進めたり」する自
義ビデオを見ながら講義の聞き方やノートの取り 律学習と教員によるコンサルテーションであった。
方を学んだり、自分が興味がある授業のシラバス 自律学習はもちろん単なる自習とは異なる。だが、
を読みながら語彙や表現を学んだりします。また、 パソコンの前で孤独に学ぶ毎日となることが予想
短いプレゼンテーションをしたり、レポートの作 されたため、自律学習の時間は取らないこととし
成を行ったりもします。授業の後半では、今受け た。メタ認知能力等、自律学習を通じて学習する
ている、あるいは今後受ける予定の講義科目の内 はずであったものについては、グループワーク、
容について相談したり学習を進めたりします。こ 毎回の授業のふりかえりや期末課題を通じて学べ
の講義を通じて、日本語で開講されている講義科 るよう学期開始時に授業計画を変更し、変更後の
目に自信を持って主体的に参加できるようになる シラバスを初回の授業で提示した。
ことを目指します。
評価基準は、課題提出 20%、小テスト 20%、授 3.学生の反応と今後の課題・可能性
業参加度 20%、中間プレゼンテーション 10%、期 反応は好意的なものが多かった。学期末アンケ
末課題 20%、自己評価 10%であった。 ートでは「最終課題で、今まで勉強したことを再
度確認できて、今後の改善点なども探せました」
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 「自己評価と分析ができ、学習に大きく役立てら
づいて変更し実施した授業内容 れると思う」といった意見が見られた。また、最終
大学から要請された遠隔のルールはとりたてて 課題の記述や学生たちの発言からは、このクラス
厳しいものではなかった。細かい指示はもちろん が学びとつながりのコミュニティとして機能して
あったが、同期・双方向でなければならないとい いたことが窺われた。これからの課題は 2020 年度
ったこともなく、持続可能であり、学生の学びの 秋学期に入学してくる、さらに多様な学生たちを
量と質、安全と安心が確保され、単位を出すに値 対象としたクラスでもそのような場を学生たちと
するものであれば教員の裁量でかなり自由に決め ともに立ち上げていけるかどうかである。
ることができた。
授業は Zoom 及びチャットアプリ(Discord)を使 【参考】SFC2020 春学期オンライン授業レポート
って同期・双方向型で行った。Zoom を使うことに >オンライン授業 Good Practices>言語>日本語
したのはブレークアウトルームで互いに顔を見て

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日本女子大学「Presentation English1」(1 年生対 出することとした。
象)授業実践報告 Zoom で行う双方向型授業の時間中、前半は教
中妻結 員がプレゼンテーションの論理構成や、英文の構
成についての講義をし、後半は前週に課された質
1.Presentation English1 は、1 年生の必修英語授 問への返答やリサーチ結果を各学生が発表した。
業で、英語で自分を表現することを目指している。 各学生の発表は、結果的に毎週 1~2 分の短いプレ
アカデミック・プレゼンテーションの論理構成の ゼンテーションを行うことに繋がり、これを通し
他、プレゼンテーションのための話し方、身体の て英語の発話方法や言葉の使い方、表現方法を学
使い方、視覚補助の使い方を学習することが目的 習することが可能となった。
である。また、いくつかの与えられたトピックに 前期の授業では、以上の 2 点を集中的に学習す
関して自分で調べ、グループで話しあった結果を、 るために、プレゼンテーションの身振りや手ぶり、
英語で発表することも求められる。 視覚教材を使ったプレゼンテーションの方法など
英語で「話すこと」を効果的に行うために、英語 の学習を省くこととした。
の 4 技能を強化も欠かせない。そのため、授業中
の英語のリスニングや英文法・語彙の学習によっ 3.以上の授業内容で、本授業の最重要項目であ
て、英語 4 技能の補強も図る。 るプレゼンテーションの論理構成を学習する目標
成績は、学期内に3回行われる個人あるいはグ を達成することができた。また、毎週課される短
ループでのプレゼンテーションを、1.伝えたい い発表を通して教員が一人一人の学生に向き合う
内容を論理的に伝えることができるか、2.トピ ことで、限られた項目だけではあるが学習成果を
ックを調査し、論理的な構成ができるか、3.口頭 もたらした。
で正確に伝えることができるか、4.強調や感情 学生からの反応も、概ね良好だった。論理構成
を含めて言葉や身体を使うことができるか、とい と発話方法・英語の発音にのみ集中して学習でき
う観点から評価する。 たため、学生からの最終コメントでは論理展開へ
気づきや、練習することでクラスメイトのプレゼ
2.大学から提示された授業の方法は以下の3つ ンテーションが聞きやすくなっていったことへの
である:1.講義資料・課題提示による遠隔授業、 達成感などが多く、授業方法に関わらず 1 年前期
2.オンデマンド型遠隔授業、3.同時双方向型遠 に集中的に取り組むことを絞る試みは効果的だと
隔授業。この中から、本授業ではプレゼンテーシ 考えられる。
ョンを実施するという目標を叶えるために、Zoom ただし、双方向型授業の時間の制限により、組
と Microsoft Teams を使った同時双方向型遠隔授 み込むべき学習項目が省かれたため、シラバス段
業を行うこととした。 階での目標を全て網羅することはできなかった。
この方法で、最も懸念された点は、学生(あるい また、学生同士での交流による刺激の不足や、
は教員)のシステム環境の不具合により、Zoom で 能動的な学習態度を促すことができなかった点が
の授業参加ができないということである。学生の 気掛かりである。グループでの学習をいかに促進
システム環境の負担を軽くするために、18 名の受 し、学生の主体的な学習態度への動機付けをして
講生を 6 名ごとの 3 グループに分けて 1 グループ いくか、今後問われるだろう。
30 分(100 分授業)の双方向型授業を Zoom で行
い、それ以外の授業時間は、リスニング・語彙を強
化する課題を Microsoft Teams を使って配布・提

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順天堂大学「English for Global Citizenship1」(2 Zoom で教員が操作しながら全員で動画や音声を
年生対象)授業実践報告 聞くことは難しかった。そのため、音声資料に関
中妻結 する課題は授業中の一定時間、全員が Zoom を離
れて個別に見聞きしながら課題を行い、Zoom に
1.本授業は、順天堂大学国際教養学部 2 年生対 戻って解答・ディスカッション・発表を行うとい
象の 1 教員につき 1 週間2コマの必修英語授業で う方法を取った。
ある。「インバウンド・ツーリズム」「和食」「ジ
ェンダー」の 3 つの項目に主眼を置いて、英文記 3.本授業で目指す、3 つの学習項目について考
事や英語プレゼンテーション、討論会などを読ん え、理解しながら英語を学ぶ目標は、対面授業と
だり聞いたりしながら内容の理解を深めることを 大きく変わることなく達成できたと考えられる。
目標とし、それに基づくプレゼンテーションやデ 遠隔授業という今までにない体験であったが、今
ィスカッションを英語で行うことで、英語を話す 後対面授業でも生かすことができると思われる点
力をつけることを目指している。また、学部全体 が見つかったことは成果に値する。
で取り組んでいる TOEFL のスコアを上げる学習 まず、語彙テストの代替となる課題では、学生
も同時に行う。 から英作文を作ることが楽しく、語彙の学習にな
成績は、各ユニットにつき 1 回のプレゼンテー ったという反応が多かった。通常の記憶に基づく
ションやディスカッションを、内容の理解度、独 テストより網羅する単語数は圧倒的に少ないもの
自調査の結果、論理的な構成、英語の発音や話し の、単語の使い方と意味の定着という点で、より
方などで評価する。また、TOEFL 学習のための語 効果を期待できる方法だった。
彙テストやリスニング学習の成果も成績に含まれ Zoom でのブレークアウトルーム機能を使った
る。 グループディスカッションは、全員がパソコンを
前に授業を行っていることが功を奏し、学生が積
2.大学からは、遠隔授業の方法として、全ての授 極的に調べながら対話が進んでいったため、最終
業を双方向型授業とし、Zoom を使って行うこと 発表ではほとんどの学生で一定以上の成果が得ら
がルールとして定められた。資料配布や課題提出 れた。同様に、英語の語彙、文法、発音に関しても、
のために使われる Google Classroom も導入され 教員から調べるように託すことができ、それを学
た。全ての授業時間を、Zoom による双方向型授業 生同士で確認し合う環境ができた点で、英語学習
に充てることができたため、システム環境の整備 にも効果的であった。
について懸念はあったが、シラバスに書かれた講 しかし、インターネットでの検索に頼りすぎる
義概要や目標、スケジュールも変更することなく きらいも見受けられた。昨今の情報過多な社会の
行うことができた。 中で、情報を選び取り、批判的に吟味し、思考する
一方、語彙テストやディクテーションテストで ことの難しさに直面する学生がますます増えるだ
のテスト形式は変更された。例えば、語彙テスト ろう。教室での授業のように、教員がグループの
では、それまでは穴埋め問題や英語から日本語へ 何気ない会話から内容を活性化させる補助的な役
の変換など記憶に基づくテストを行っていたが、 割を取りづらい点もあり、調べた情報に頼りすぎ
遠隔授業では、予め決められた単語を使った英文 て自由な発想や論理的な思考を育てにくいと感じ
の翻訳と、同じ単語を使った英文を作成する、と た。柔軟性や独創性は、授業方法に関わらず、学生
いう課題に切り替えられた。 を育てる上で重要だということの認識をさらに強
さらに、音切れや画像の動きの鈍さにより、 くした。

27
武蔵野大学「日本語 2A・2B」(主に学部留学生 2 講義では、
『ピアで学ぶ大学生の日本語表現 第
年生対象)授業実践報告 2 版 -プロセス重視のレポート作成-』に沿っ
日髙晋介 て、レポート作成・口頭発表のためのスキルを学
べるよう授業を行った。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 成績評価の方法は、口頭発表(期末テスト)30%、
容、成績評価の方法 期末レポート 40%、授業への積極的な参加・毎回
武蔵野大学では、四学期制が採用されているた の授業の提出物 30%であった。
め、一学期(4 月 9 日~5 月 28 日;7 回)には「日
本語 2A」、二学期(5 月 29 日~7 月 16 日;7 回) 2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
には「日本語 2B」の授業をそれぞれ行った。それ づいて変更し実施した授業内容
ぞれ、月曜日の 5 限、6 限に合計 200 分(1 コマ 文科省は、「遠隔授業」の要件を満たすには、対
100 分)の授業を行った。 面授業の要件を満たすことが前提となると述べて
なお、一・二学期を通じて、同じ 10 名の学生が おり、大学側も文科省の前提に従っている印象を
履修した。ただし、二学期の「日本語 2B」では、 受けた。
前年に単位を取れなかった学生 1 名が履修したた 私は、当初のシラバス通りに、授業を進めよう
め、クラスの人数は 11 名となった。 とした。ただし、遠隔授業では学生のピア活動が
授業を受ける学生がほぼ固定されており、かつ 積極的にできない状況であり、かつ、zoom のブレ
日本語の運用能力を高めるという同一の目的を持 イクアウトルームを使っても、学生たちの国籍の
った授業であることから、「日本語 2A」「日本語 偏りからか、学生同士が活発に日本語で意見を交
2B」は同一の科目と言っても差し支えない。 わしあう雰囲気はなかった。そのため、クラス全
以下では、まず、「日本語 2A」の講義の目的と 体での発表を多くして、その場で学生から質問を
概要、成績評価の方法について述べる。 募るようにした。
講義の目的は「専門分野のレポート・論文・専門 課題やテストは、Google Forms を用いて作成し、
書などの論理的な文章を読むための基礎的な読解 Google Classroom を通じて、授業内に提示し、授
技術を養成すること」である。 業後に集計、各自に返却という形をとった。対面
講義では、
『改訂版 大学・大学院 留学生の日 形式の授業と大きく方針をかえなかったため、当
本語 ①読解編』の 1~5 課、7 課、9~12 課 14 課 初のシラバス記載の配点は変えなかった
を通じて、読解そのもののみならず、論理的な文
章を読み解くテクニック、文章の構造や文法を学 3.学生の反応と今後の課題・可能性
べるよう授業を行った。 私は、授業中に積極的に学生を指名して、学生
成績評価の方法は、小テスト 30%、期末テスト の様子を窺った。そうすることで、学生たちに「先
40%、授業への積極的な参加・毎回の授業の提出 生はきちんとあなたたちを見ている」というメッ
物 30%であった。 セージが送れたのではないかと考えている。
次に、「日本語 2B」の講義の目的と概要、成績 今後の課題としては、学生同士によるピア活動
評価の方法について述べる。 がオンライン上で活発にできるように、私自身が
講義の目的は「プロセス・ライティングの考え 工夫しながら試行錯誤しなければならないことが
方に基づき、学習者がお互いに書き手・読み手、話 挙げられる。
し手・聞き手となりあうピア・レスポンスの活動
を通して 1 編のレポートを作成すること」である。

28
尚絅学院大学「日本語表現法」(2 年生対象)授業 を使用して学生が質問をする。授業後、学生は1
実践報告 時間以内に Campusmate-J 上のフォームに授業の
廣瀬航也 コメントを書き込み、これを出欠確認の代わりと
する。加えて、3~5 日以内に課題(日本語表現の
1.本授業は、大学生・社会人に必要な日本語によ 実践や文献講読。毎回ではない)の提出を求め、
る文章表現の知識と技術を身につけることを目的 Campusmate-J 上で回収する。
とするものである。 大学から要求された双方向性を担保するために、
本授業の内容は以下の通りである:①日本語表 筆者は主に次の 2 つの策を講じた。1 点目は、授
現の基礎の理解と実践(第 1~5 回)、②社会的文 業内・授業後に寄せられたコメントへの応答であ
章(主に手紙文)の型・表現の理解と実践(第 6~8 る。殊に授業後に寄せられたコメントについては、
回)、③レポートの型の理解とデータ分析の実践 授業後に教員が整理し、主に次の授業の冒頭(多
(第 9~12 回)、④論証型レポートの執筆とブラッ いときは 30 分程度)に全体へフィードバックを行
シュアップ(第 13~15 回)。なお、全てのセクシ った。2 点目は、課題への応答である。基本的に次
ョンにおいて、文献の調査・講読を行う。 回の授業で応答を行ったが、学生側から個別の添
成績評価の方法は、基礎的な事項の確認テスト 削を求める声が多かったため、希望者には Word
(20%)、授業内外の課題(40%)、レポート(40%) のコメント機能を利用して添削を行い、メールで
を予定していた。 返却した。
成績評価は、当初予定していたテストの実施が
2.遠隔授業に際し、大学側からは、テレビ会議シ 困難であったため、課題の割合を 60%とした。
ステム等で映像・音声を共有し適宜意見交換を行
う「オンライン型」と、インターネット経由で教材 3.学生は授業の形式について好意的で、対面式
を提供し課題の提出を求める「オンデマンド型」 とほぼ同様の感触を得た学生もいたようだ。とり
の 2 つの方法を提示され、任意に選択することが わけ、毎回授業の冒頭でコメントへの応答を行い、
できた。また、いずれの場合においても、学生から 質問をしやすい空間を作ることができたことや、
質問・意見を受け付け適宜全体に共有することや、 希望者への添削を行ったことは好評であった。
出欠確認の策を講じることが要求された。 また、レポートも含め課題の提出は計 9 回求め
筆者は、受講者の学習状況や意見を(間接的に たが、他の科目との兼ね合いもあり、量が多いと
ではあるが)リアルタイムで看取できるオンライ 感じた学生が多かった。しかし、その分文章作成
ン型を選択し、Zoom を用いて授業を行なった。 への苦手意識が解消されたり、自身の日本語表現
Zoom のアカウントは、時間制限のない有料のア を見直す契機となったりと、一定の成果もあった
カウント(共有)を大学側が購入していたため、借 ようだ。
用することができた。 とはいえ、毎時間フィードバックを行い、学生
本授業 1 回分の流れは以下の通りである。まず、 に適宜理解度を確認しながら進めたものの、理解
前 日 ま で に Zoom の 招 待 状 及 び 授 業 資 料 を が及んでいない学生も多いのではないかという疑
「Campusmate-J」(学生ポータルサイト)上にア 問も抱いた。この点は、課題の提出率やその内容
ップロードする。授業は当初の時間割通りに Zoom にも顕著であったが、遠隔特有の集中力を要する
で行う。教員はスライド資料を提示し、学生は教 授業形態や学生個々の受講環境も影響していると
科書や事前資料を参照しながら受講する。授業内 思われる。後期も同様の授業を展開するため、こ
で適宜質問の機会を設け、Zoom のチャット機能 の問題の改善は急務である。

29
南山大学「フランス語Ⅰ<S・全>」・「フランス語 ることが目的だが、学生達はこの授業の他にも
Ⅱ<S・全>」(1年生対象)授業実践報告 Zoom 形式の授業があるため、学生の疲労を軽減
松川雄哉 するという観点からも「90 分やらない授業」は妥
当であると考えられる。予習課題には必ず目標(例.
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 夏休みの予定を語る)が提示されており、それに
容、成績評価の方法 必要な語彙や文法、表現を学ぶ。またできるだけ
目的:フランス語の初級程度の運用能力の養成。 多くの音声インプットを確保するため、音声を聞
概要:クラスメイトや教員とフランス語の基礎的 かなければ出来ない問題を出すようにした。教科
な言い回しや簡単な表現でのやり取りを通してフ 書の音声をできるだけ使用するようにしたが、適
ランス語の文法や語順に親しむ。成績評価:定期 切な音声がない場合は、ネイティブスピーカーに
試験、授業における取り組みや提出課題で総合的 音声の吹込みを依頼した。予習課題の最後に、そ
に評価する。「フランス語Ⅱ<S・全>」は「フラン の課題の感想または質問を書くようにお願いした。
ス語Ⅰ<S・全>」の続きである。 これは任意だが、毎回一定数の学生が感想や質問
を書いており、どのようなフィードバックを与え
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 たら良いかを知るのに役立った。また中には、こ
づいて変更し実施した授業内容 れまで学生達が習った英語やドイツ語、韓国語な
大学からは、オンライン授業は原則として Zoom どの外国語とフランス語を比較し、共通点や相違
を使用することが要請された。Zoom によるオン 点などの気づきを記述する学生もおり、とても興
ライン授業の時間は教師の裁量に任されている。 味深かった。学生からのコメントは、名前を伏せ
定期試験は行わず、学生は LMS などを利用して課 た上で次の Zoom による授業で紹介した。
題を提出する。シラバスの内容は、オンライン授
業に合わせて変更し、学生に公開する。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
この教育環境の変化は、学生がフランス語を自 学生達は予めフランス語を学んでいるため、あ
ら進んで学ぶ姿勢を促す良い機会ではないかと捉 る程度余裕を持って Zoom による授業に臨めてい
え、授業外でまず学習者が自分の力でフランス語 るようだった。また、去年よりも音声インプット
を学習することを教育の中心とする予習スタイル が増えたことによって、今年度の学生達は発音が
の授業運営を試すことにした。また教師は、学習 良く、自信を持ってフランス語を発話している印
者が予習で学んだ事項についてフィードバックや 象を受けた。さらに、学生からのコメントを共有
後出しの解説などによって学習者の学習を促すサ し、それに教師が応えることによって、学生はオ
ポート役として位置づけた。授業の流れとしては、 ンライン授業という環境でも教師を身近に感じる
学生は次の Zoom 形式の授業までに教員が LMS ことができ、モチベーションの維持や向上に貢献
上で公開した予習課題を行ない、提出期限までに すると思われる。
提出する。予習課題は成績の一部となる。Zoom 形 今後の課題としては、テーマによっては課題の
式の授業では、予習してきた内容を基に、教員や 量が多すぎることがあり、その内容を Zoom の授
クラスメイトとフランス語で実践的なやり取りを 業で扱いきれないことがあった。今後は、グルー
行う。授業はクラスサイズによるが、クラスをい プあたりの授業時間と予習の量のバランスに気を
くつかのグル―プに分けて授業を行う。2 グルー つけたい。また、これまで予習は一人で行なうこ
プの場合、
1 グループあたり 40 分ずつ授業を行う。 とを前提としてきたが、今後は、クラスメイトと
グループあたりの人数を減らして教育効果を高め 協働で出来るような予習課題を検討している。

30
同志社大学「コミュニカティブ・イングリッシュ」 は、混乱を避けるために DUET からのみ、課題の
(1年生対象)授業実践報告 提出と録画配信は e-class のみ、
学生からの連絡は、
松本知子 考えられる全ての手段から受け取り、24 時間以内
に必ず返事をする。また、最終授業まで、課題の提
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 出期限と教材・録画配信の時間は変更しない。こ
容、成績評価の方法 れはネット配信授業を行う上で必須である。その
以下のリンクに示すとおりであるが、このリン 理由は、学生に不安を抱かせないことと、教員か
クはネット配信授業のために変更したものである。 らの強制ではなく、学生自身が自らの生活の中で、
https://syllabus.doshisha.ac.jp/html/2020/6501/1 英語の授業に関するルーティンを身につけること、
6501014513.html (accessed Sep.3, 2020) 即ち、自己管理を促したためである。
変更点は成績評価のみで、変更前は、平常点 ネット配信授業の実施により、2つのことがわ
(15%)、3回の小テスト(45%)、自分の意見を英語 かった。1つは、資料配信型授業でリスニングの
で書く課題(10%)、期末試験(30%)であった。 授業を行うことには限界があり、シラバスの到達
目標に達することが厳しい。到達目標の達成には、
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 双方向オンライン型授業が必要である。画面共有
づいて変更し実施した授業内容 機能で、DVD を学生に視聴させることが可能とな
大学からの指示は、第4回授業までは代替課題、 り、対面授業と遜色はないと思われる。もう1つ
第5回授業からネット配信授業を実施することで は、学生が画面共有機能を使うことで、対面授業
あった。要請された遠隔のルールは2点である。 では不可能なライティング指導が可能となる。画
1点目は、1単位の学修時間が 45 時間であること 面共有機能により、学生が Word で作成した英文
と、必ず双方向であることを踏まえた授業方法で に、教員がその場でコメントを出し、学生はその
あれば良い。2点目は、期末試験はレポート試験 場で修正できる。この様子をクラス全員が視聴す
のみとし、その内容は担当者の裁量に委ねる。 ることができ、コメントも出せる。これは双方向
ツールは Microsoft Teams、学修支援システム 性オンライン型授業ならではの利点である。
DUET、学習管理システム e-class が提供された。
主な授業内容は、テキストを用いてのリスニン 3.学生の反応と今後の課題・可能性
グの練習と担当教員が作成した教材を用いての英 学生の反応は、quiz のおかげでリスニング力が
文の書式とパラグラフの構成の解説の2つであっ 伸びたことと英語の論理の勉強が初めてできたこ
た。その理解度の確認として、リスニングについ との2点に集約される。双方向オンライン型授業
ては、毎週、次の授業で扱う章の DVD を視聴し の最大の利点は学生が発言をしても、感染リスク
て、内容に関する問題を e-class で解答する quiz を がゼロである。発言の機会が多くなるほど、この
課し、パラグラフの構成については、期末試験の 利点が活きてくる。今後の課題として、授業形態
代替として、授業で扱わなかった章の DVD を視 に関係なく、語学科目の意義は、教員がいかにし
聴して、テーマは学生自身が決める 500 語の英文 て学生自らに考えさせ、意味のある発言をさせる
エッセイを課した。第7回授業までは資料配信型 授業を組み立てられるかで決まる。今後の可能性
授業、学生全員にテキストが届いた後の第8回以 は、双方向オンライン型授業でしかできないこと
降は、双方向オンライン型授業を実施した。 を、対面授業に取り込み、コロナ禍以前とは異な
1年生対象のため、教員は学生と意思疎通を図 る、新しい対面授業が生まれることであろう。そ
ることが何よりも重要であった。教員からの連絡 のカギは、ツールではなく、教員の技量である。

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近畿大学「アカデミックリーディング1」b クラス サーバーダウンが多発していた状況だった。そこ
(理工学部電気電子工学科 2 年生以上対象)授業 で近畿大学では、UNIPA にはリンクを貼らず、必
実践報告 ず GC で告知するように申し入れが行われた。
松本望希 授業がオンラインになったことで、定期試験は
中止となった。さらに評価基準は「小テスト・口頭
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 発表・課題」100%と変更され、その内訳は各教員
容、成績評価の方法 の裁量となった。新任であるため、学生の雰囲気
リーディングを中心に、総合的な英語能力の向 をつかめなかったので、授業開始日には内訳は発
上と定着、さらに高学年で専門的な英語の文章を 表せず、6月ごろに「小テスト 6: 課題 2: 口頭発
読み解くための基本的な力を養うことを目的とし 表 2」と決定し、学生に対して告知した。「小テス
た授業であった。評価方法は「定期試験 5: 小テス ト」は、毎回の授業終了時、Google Form を用い
ト 2: 口頭発表および課題:3 」の割合で行う予定 て行った。問題は、テクストで扱った文法や語に
であった。なお、本科目は共通シラバスを用いて 関する穴埋め式の選択問題、もしくは、教科書の
おり、執筆者が関与したのは、複数冊提示された 各単元末に、Discussion と題されたその単元に関
選択肢の中から教科書を選定するということのみ して学習者の意見を問うものがあり、それを使用
で、シラバス作成は行っていない。 した英作文課題を交互に出題した。また「課題」に
関しては、学生に興味のある新聞記事をインター
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 ネット上で探してもらい、それに対する自分の意
づいて変更し実施した授業内容 見を 100 語以上で書くということにした。提出は
大学からは、5月12日からオンラインで授業 GC 上で行ってもらった。
「口頭発表」
については、
を行うことを要請された。授業の形式は、1. 同時 前述した Discussion で出題された問題から、学生
双方向型、2. オンデマンド型、3. 資料配布型の 3 が任意に 1 つ選び、それの答えを英語でスピーキ
つが提示されたが、他の英語担当教員の多くが、1 ングしてもらった。Zoom のブレークアウトセッ
番、特に Zoom を用いて授業をすることを選択し ションを用い、学生と教員(執筆者)が 1 対 1 に
ていたため、執筆者もこれに倣った。 なる状況で行った。
この授業において、出席状況は評価の対象外で
あるが、大学が学修支援に使用するため、出欠を 3.学生の反応と今後の課題・可能性
確認する必要があった。対面授業であれば、教室 学期末アンケートでは、回答者のすべてがこの
に備え付けられた IC リーダーに学生証をかざす 授業に対して「満足」「ほぼ満足」(10 点満点中
ことで出席とみなされていたが、オンライン授業 7 点以上)と回答していた(回収率は 50%程度で
ではそれは困難であるため、Google Classroom はあるが)。出席状況の確認など、教員側の負担が
(以下 GC)に、
学籍番号と氏名を入力させる Form 増えた部分はあるが、オンラインであるがために
を掲示するという代替措置をとった。教員は Excel 授業中に様々な参考資料を共有して見せやすいと
のシートに、それらとともに授業コードなどを入 いう利点があった。一方で、プライバシーや帯域
力し、Universal Passport(UNIPA)にアップロード 制限などの懸念があり、学生側のカメラを常時オ
することで、出席入力を行うよう要請された。ま フにさせていたので、どれくらい理解できている
た、4月よりオンライン授業を行っていた他大学 のかということを掴めなかったのは、今後の課題
では、URL を UNIPA に貼り付けることで、授業 である。
開始直前に学生からのアクセスが殺到してしまい、

32
大阪成蹊大学「英語演習 I」(芸術学部1、4年生 程度に留めてほしいとの通達があったので、それ
対象)授業実践報告 に従って授業を行った。
松本望希 5 回目以降の授業は、教科書(Ken Wilson, Smart
Choice 1b. Third Edition, Oxford UP, 2015)に従
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 って授業を行った。シラバス上では、Unit を前期
容、成績評価の方法 中に 3 つ進める予定であったが、オンライン授業
英語で他者とコミュニケーションをとるために、 となったため、2つのみにし、また定期試験を共
4 技能を向上させることを目的とする講義だった。 通のライティング課題に変更するよう要請された。
英文から情報を読み取ったり、聞き取ったり、ス またこの授業は、出版社が教科書の副教材として
ピーチや文章作成をしたりする授業が当初計画さ インターネット上に音声やビデオをアップロード
れていた。成績評価は「プレゼンテーション等の しており、それを用いること前提で設計されてい
パフォーマンス課題 5: 授業課題、積極的な授業活 た。しかしそこに上手くアクセスできない学生や、
動への参加 2.5: 定期試験 2.5」という割合であっ コンテンツ英語版でしか提供されていないことに
た。本科目は共通シラバスを使用しており、教科 不安を抱く学生がおり、それに対して逐一メール
書の選定や成績評価、シラバス作成などに執筆者 で対応する必要があった。
は関与していないということを申し添えておく。 授業開始後は、学生に、週に 1 回ペースで 100
語程度の英作文の課題として出していたため、そ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 れに添削やフィードバックを行うのに対してかな
づいて変更し実施した授業内容 り多くの時間が必要であった。学生の多くがデジ
当初は授業開始日を延長して対面授業を実施す タルアートなどを専攻しているため、当初は PC な
ると通達されていたが、5 月 12 日よりオンライン どのスキルに長けていると考えていたが、学生に
授業をするように要請された。授業は 5 月 12 日か よってネットワーク環境や所持している端末、
ら 6 月 28 日まで、週 2 回、主に Google Classroom Office ソフトのスキルに大幅に違いがあり、その
上で課題を配信して行うように英語科専任教員よ 対応などにも時間が必要だった。
り要請された。そのうち 1 回は、本来の授業日に
Google Meet を使用してリアルタイムで授業を配 3.学生の反応と今後の課題・可能性
信してもかまわないと申し入れがあったが、他の 特に 1 年生がかなり大きな割合を占めるため、
教員や学生から「Google meet はあまり音声が安 そもそも大学の授業というものに慣れていないよ
定しない」と聞いたので、課題配信で授業を行う うだった。5 月ごろに、回答自由・匿名で、Google
ことに決めた(大学の一部対面授業再開により Form を用いて授業のアンケートを行ったが、「英
zoom も 6 月中旬頃から併用した)。ここで、学生 語がわからないので不安」といった声が多く寄せ
1 人 1 人のメールアドレスを入力し、 Google られた。また、執筆者が本年度(2020 年)より採
Classroom に招待するという作業を教員が行わな 用になったこともあるが、レベル分けなどをして
ければならなかった。 いないクラスなので、学生の能力にばらつきがあ
授業第 1~4 回までは、専任教員が共通で決めた り、授業のデザインにおいて困難な面もあった。
課題を配信し、それにフィードバックをすること 課題配信型にしたことで、個別のフィードバック
を要請された。1 週間に 2 回のペースで授業を進 はしやすいが、全体的な注意が行き届かなかった
行させるが、学生の負担にもなるので、課題を出 点は今後の課題である(なお執筆時点では、後期
すのは週 1 回程度にし、もう 1 回は、課題の告知 からの対面授業再開が決定されている)。

33
東洋大学「フランス語 III」(2 年生対象)授業実践 せるとともに、ToyoNet-Ace で次週の授業の予告
報告 を行ったため、交互に授業を行う形式でも混乱は
村上一基 まったくなかった。
文法の解説は ToyoNet-Ace に、解説動画(パワー
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ポイントに音声を吹き込んだもの)を載せ、それ
容、成績評価の方法 を視聴させた後に練習問題をノートに解かせ、写
真を撮って提出させた。また教科書の発音の解説
本授業は、フランス語を 1 年間学んだ学生を対 箇所を用いて、発音の復習をさせ、教科書の問題
象に、フランス語の運用能力をさらに高めること を解き、ToyoNet-Ace の小テストに回答してもら
を目的としている。とりわけ一年次に習得した文 った。発音の練習問題は授業時間に提出させ、そ
法やコミュニケーションの基礎力をもとに、フラ の提出を持って出席とした。文法の練習問題は数
ンス語文法の理解や長文読解の力を延ばすことに 日間の期限を設けた。提出された解答はタブレッ
焦点を当てている。 ト(iPad)で丸つけをし、学生に返却した。いずれ
今年度、教科書には『ヴレマン? : 文法を深めなが も指示を授業開始時間に ToyoNet-Ace のコンテ
ら発見するフランス 14 章』(三修社)を用いた。 ンツ欄で公開している。
この教科書では、フランス語圏の社会や文化を紹 長文読解の解説は Webex meetings で行った。
介する文章が使われており、学生にフランス語圏 Webex meetings での授業は、正規の時間から 15
への理解を深め、社会への関心を育んでもらうこ 分遅らせてはじめた。受講生は、この 15 分間で教
とを目的に選択した。 科書の音声を聞き、発音の練習をすることが求め
教科書は長文読解と文法の演習から構成されてお られている。長文読解は、順番に学生を指名し、1
り、下記の通り、教科書の 1 課を 2 回の授業で終 文ずつ発音させ、訳をつけさせるという、対面授
わらせることを目標としている。 業と同様の方法で行った。解説は教科書の文章を
文法演習:受講生は事前に文法の練習問題を解い 打ち出したタブレットの画面を共有し、タブレッ
てくる。授業の冒頭で文法事項の解説を行った後 ト用のペンで書き込みをしながら行った。またテ
に、練習問題の確認をする。 キストの内容に応じて、関連するフランスのニュ
長文読解:受講生は予習を行い、日本語訳を付け ースや写真なども学生に見せた。
てくる。授業ではそれをもとに解説を行う
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 学生からの反応として、「文法の授業は動画で何
づいて変更し実施した授業内容 度も見返せるようになっていて、復習がやりやす
かった」というものが多かった。
遠隔授業にあたり、大学からは、学生の通信環 だが文法の解説はレベルが上がって複雑になると、
境が整わないこともあるので、初回はオンデマン 準備に時間を要し、さらに動画での解説に限界が
ドで行ってほしいという要請があったが、それ以 でてくるだろうことが課題としてある。
外は教員に任されていたと記憶している。 進度についても例年よりも遅めであった。今回、
遠隔授業では、ToyoNet-Ace(Manaba)での課 採用した方法では、文法の授業と長文読解の授業
題配信授業と Webex meetings(大学で契約)での を同日に行うなどの柔軟な対応ができないためで
同時配信の授業を交互に行った。全体のスケジュ ある。非対面授業を前提にした教科書の選定も必
ールは、初回のオリエンテーションで受講生に報 要になってくるだろう。

34
西南学院大学「フランス語初級Ⅰ(2)」(一年生対象) ホで写真を撮り Moodle 上にアップロードする形
授業実践報告 式をとった。学生からの質問や感想は、Moodle の
村上舞 アンケート機能(自由記述)を用いて受け付けた。
学生からの質問・感想を、パワーポイントで書き
1.西南学院大学「フランス語初級Ⅰ(2)」の講義 出し、それを iPad アプリ Explain Everything EDU
のシラバス段階での講義の到達目標は、初めてフ を活用し、解説動画コンテンツを作成した。フラ
ランス語を学ぶ人でもコミュニケーションが取れ ンスの文化を紹介するコーナーも同様に作成し、
るよう「リスニング」「スピーキング」「リーディ 質問・感想お答えコーナーの動画と合わせて
ング」「ライティング」の4技能を習得し、日常的 YouTube にアップし毎授業時 Moodle に URL を
シチュエーションにおけるフランス語の運用能力 貼り全体に共有した。Explain Everything EDU を
を身につけることであった。また、文化的背景(地 用いた動画解説については、わたし自身の顔を出
理、歴史、社会、文化)についての知識を深め、関 し、対面授業のように受講してもらえるように工
心を高めることを目指すものとした。採用した教 夫した。
科書は『テ・サンパ~フランス語っていい感じ~』
(武末祐子他著、朝日出版社、2002 年)である。 3.毎週学生から質問や感想が寄せられていたこ
この教科書の各課のディアローグ内容を把握し、 とから、質問・感想お答えコーナーを通して他の
語彙、文法、発音などを学びながら、音源を聞き耳 学生がどのようなことを考え、疑問を抱いている
からフランス語に慣れ、実践で使えるよう場面を かを知る機会となったことは学生にとって良かっ
想定してペアやグループで会話練習を行うという たのではないかと考える。また、オンデマンド授
講義内容を予定していた。成績評価方法について 業ではあったが、学生は授業資料を読み、音声解
は平常点(出席、授業への参加度、宿題、小テスト 説を聞き、手書きの課題に取り組み、YouTube で
等)と定期試験により総合的に評価するとしてい フランス文化紹介動画を見るというように様々な
た。 形でフランス語に触れることで、リズムをもって
学んでもらえたのではないかと期待する。
2.授業については、原則 Moodle や電子メール 今後の課題は、双方向テレビ会議システムが使
を活用した、課題研究等又はオンデマンド型コー えない場合、学んだフランス語を使って学生同士
スへの全面振替と定期試験中止を大学からは要請 でいかに対話をさせるかということである。その
された。そこでわたしの授業では、授業資料と課 解決策として LINE のオープンチャット機能の利
題を Moodle 上に更新するオンデマンド型に変更 用を検討している。グループに分けて LINE でフ
した。授業資料は、教科書の解説をパワーポイン ランス語を使って会話させたりすることが可能で
トで作成し、それに音声解説を吹き込む形である。 あるので、スマートフォンでフランス語を入力す
課題は毎回 A4サイズ 1~2枚の分量で PDF の形 る勉強になるだけではなく、学生同士の交流を促
で出題した。学生にはそれを印刷するよう指示し、 進することにもつながるだろう。また授業連絡な
Moodle にアップされた授業資料ファイル(パワー どにも使えるのも利点である。
ポイント、PDF 資料、音声、動画など)に番号順に 今後も遠隔授業を試行錯誤しながらも同時にこ
取り組み、その中にある指示にしたがって、直接 の経験を、対面授業に戻った時にどのように活か
書き込めるようにした。(印刷ができない学生につ していくことができるかも並行して考えていきた
いては、ノートに可能な範囲で書き写すよう指示)。 い。
課題提出方法は、スキャンするか、もしくはスマ

35
A 大学※における「韓国語入門」(1年生対象)授 として作成した。
業実践報告 ②の LMS による課題提出においては、その回の
山崎玲美奈 授業で何をする予定であるのか、学生が行う必要
のあるアクションは何でありそれはそれぞれいつ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 までであるのか、課題は何でありそれぞれはいつ
容、成績評価の方法 まで提出すべきであるのかが分かるよう明確なリ
文字と発音の習得に力点をおき、尚且簡単な日 スト化を目指した。課題を PDF 化して提出するこ
常会話を通して基礎的な文法事項を学ぶ。指定さ とに慣れていない学生もいるため、具体的な方法
れた教科書を中心に、文字と発音、文法の解説及 や提出されたものの形式を確認する作業を初期に
び練習問題、会話練習を実施する。成績評価は、授 実施した。
業時に随時実施する小テスト及び中間・期末試験 ③のリアルタイム授業では、Zoom を使用した。
により評価する。 カメラとマイクは、授業冒頭時の機能確認、ペア
ワークなどのブレイクアウトセッション、発表の
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 際のみオンにし、それ以外はオフとした。リアル
づいて変更し実施した授業内容 タイム授業時には、Zoom などの画面にコメント
授業の 3 要件として以下の3点が要請された。 やリアクションを匿名で表示することができる
1) 担当教員から学生に教材や課題の提示がある。 Comment Screen(https://commentscreen.com/)
2)学生からの課題提出の機会及び提出課題に対す の機能を使用し、随時学生とやり取りをしながら
る担当教員からのフィードバックがある 双方向性を保てるよう努めた。
3)学生の意見交換や質問の機会が確保されている。
これらの要請を受け、①オンデマンド動画による 3.学生の反応と今後の課題・可能性
解説を視聴し、②LMS に課題を提出した後に③ビ 今学期の授業の流れは、①オンデマンド動画に
デオ会議システムを使用してのリアルタイム授業 よる解説を視聴した後に②教科書の練習問題を事
を行った。 前に解いて提出する。それを踏まえて③Zoom に
①から③の具体的な内容は、次の通り。 よる課題の答え合わせと解説及びペアワークでの
①のオンデマンド動画の録画は、EverLec や Zoom 対話作成と発表や Quizlet Live でのオンライン対
の録画機能を使用。Zoom の画面共有或いは iPad 決等、リアルタイムでしか出来ない項目を中心に
のミラーリング機能を用いて PC の画面上に教科 授業を行った。学生の反応としては、ある程度授
書を PDF 化したものを映した。PDF の画面への 業の流れを定型化することで負担感が減った、
書き込みには有償のアプリの GoodNotes で PDF Comment Screen による匿名性のコメントが出来
を読み込みタッチペンで書き込みやマークアップ たため質問のハードルが下がった、Quizlet Live で
を行った。これらの機能を併用し、録音する際に 他の学生との一体感が感じられた、ブレイクアウ
はヘッドセットを使用して解説部分に書き込みな トセッションで他の学生と交流ができた点などが
がらオンデマンド動画を作成した。動画の長さは あげられた。今後は、対面式授業と並行して遠隔
視聴する学生の負担を考慮し、1項目あたり5分 授業が併存した時間割を多次元的に組むことによ
から 10 分を目安に作成した。オンデマンド動画の って遠方からの通学が可能になり、大学そのもの
冒頭と終了部分や話題の転換や練習問題などに決 の可能性が広がるのではないかとも考えられる。
まったジングルや効果音をスマートフォンのアプ ※「A 大学」は、関東圏内にある4年制の私立大
リを使用して挿入し、ラジオのような形式を目標 学の仮称。

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日本大学商学部「中国語」(1 年生対象)授業実践 も名簿チェックをおこない不測の事態を防いだ。
報告 さらに休憩時間にプリントスクリーン機能で画面
綿貫哲郎 を残した。これら事前にマニュアルで不明な点は、
初回ガイダンスで学生の協力のもと機能を確認し、
目的と概要:現在のグローバルビジネス社会に 2 週間程様子を見てから運用した。
おいて、外国語能力は必須である。特に中国が世 授業内容以外で学生に不安を与えないことを第
界のビジネスに大きな影響力を持っている今日で 一に考えた。授業そのものは、ペンタブレットと
は、中国語の重要性は言うまでもない。そこで本 USB マイクを購入し対面授業と遜色ないよう努力
授業は、日本大学商学部ディプロマポリシーに基 し、個人的には以下にこだわった。①指名の際は、
づき、カリキュラムポリシーの「世界の現状を理 1 度きりだとマイクや電波状態での不安があるた
解し、説明する力」と「コミュニケーション力」の め、3 度呼ぶまでは待つことにした。②学生が答え
修得を目的とする。具体的には、中国語の基礎的 終わったら、必ず 1 人 1 人に「ではマイクをオフ
な文法と基本語彙をマスターし、ビジネスで使え にして下さい」と伝えた。③不可抗力の事態が発
る中国語の基礎力修得を目指す。 生した時に学生を不安にさせなかった。例えば、
到達目標:簡単な中国語を読める。簡単な中国 学生が Zoom で解答中あちら側のイヌが鳴きやま
語を話せる。簡単な中国語を聞き取れる。 ないことがあった。学生は「うるさくて申し訳あ
成績評価の方法:平常点 100%(課題・練習問 りません」と謝るばかりだったが、こちらは「気に
題・授業への取組度等)。 しないで下さい。
(話し声は)聞こえていますしイ
ヌ好きなんで」等と重ねて伝え不安を和らげるの
遠隔授業の要件は、①添削・質疑応答等の双方 を忘れなかった。Wifi 状態がよくない時も「遠慮
向が担保された課題研究型、②同上での Google なく再入室して下さい」と伝えた。④90 分授業な
Classroom を利用したオンデマンド型、③同上で ので、途中で「パソコン・スマホ・タブレット画面
の Zoom などを用いたライブ中継(リアルタイム を見ずに眼を休めてください」と伝え、必ず休憩
遠隔)。中国語は③をとのことだったが、自宅 Wifi 時間を設けた等である。
がないことを伝えたら、大学構内で Wifi が利用で
きるよう手配してもらった。後日、縛りなし Wifi 減点方式を採用したため、当初は「やる気をな
(1 日 2GB)を契約した。 くす」等と言われたが、授業アンケートには「わか
実施した授業内容は、Google Classroom をプラ りやすい説明とペンタブを用いた授業形態がとて
ットフォームとして連絡事項などを載せ、授業そ もよかった」、
「先生は私たち学生のパソコン疲れ
のものは Zoom リアルタイムでおこなった。出欠 を気にかけてくれて、授業の途中に目を休める時
確認が必須な授業であり、1 クラス 30 名前後なの 間を設けてくれた」、「ちょっとした余談、休憩、
で、最初は Google Classroom で直接出欠確認をと 待ち時間などを設けていたのもよい」、
「問題がわ
っていたが不具合が生じたので、次に Google からない学生に対し、諦めて放っておくのではな
Classroom より Google Forms にリンクを貼った。 く多少時間がかかっても分かるまで先生自身も付
しかしこれも学生の Zoom 入室時間が遅くなり、 き合って考えさせる」など、悪い評価が全くなく、
最終的に Zoom 入室後チャットに貼ったリンクか 高評価コメントのうち遠隔関連が過半数をしめた。
ら飛んでもらった(入室後は入室前のリンクやメ
ッセージが読めないため、何度もリンクを貼るこ 縛りなし Wifi:https://shibarinashi-wifi.jp/
とになるが)。加えて入室時に別途教員が手動で

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X 大学「中国語Ⅰ」(1 年生対象)授業実践報告 考えたので、初回ガイダンスを除き、偶数週は単
匿名希望 語・文法解説編、奇数週は学生へのフィードバッ
ク編とした。偶数週に課題を学生番号で指名した
1.達成目標:中国語の基礎的な語彙・文法を身に が、解答差と未提出者対策、また 2 度に 1 度は当
つけることを通じて、簡単な文章を読んだり書い たるように考えたため 1 問 2 名の指名とした。こ
たりすることができようになる。 れで対面とほぼ同じ授業の流れになった。
講義概要:文法中心のクラスです。授業で学ぶ 課題提出方法は、初回に動画で見本を提示し、
中国語は独特な発音記号(ピンインと声調符号) 用紙の上に学生番号・氏名・曜日時限・氏名を書か
と文字(簡体字)で成り立っています。中国は日本 せ、下に頁・問題と解答を毎回書かせた(未記載は
と同じ漢字文化圏なので中国語への親しみやすさ 2 度目以降減点)。これをスマホの写真で撮って
はあるかと思いますが、発音・文字・意味など異な (or コンビニ等で PDF 化)LMS より添付ファイ
る部分もそれなりに存在します。まずは前期前半 ルで提出させた。出欠確認と提出は翌日 23 時 59
で「決まりごと」を覚え、前期後半で基礎的な文法 分まで。フィードバック編は、提出された課題を
と言い回しを身につけましょう。 パワポに 1 問(2 名分)上下に貼り付けて氏名等
成績評価:平常点 100%(授業・課題での積極 個人情報を消した状態で添削し解説を加えた動画
性・取り組み度)。 にした。この週は動画が短時間になるので、語学
理解のため 15 分程の中国文化講座の動画(写真 1
2.大学から要請された遠隔ルールは、①リアルタ 枚だけの学生の眼の負担軽減)を加えた。
イム型(Webex と LMS の組み合わせなど)、② 単語・文法解説編の動画は、予めパワーポイン
オンディマンド型(授業動画ファイルを LMS にア トのスライド画面をホワイトボードに見立て、ペ
ップし、同掲示板機能を使って質問などに答える)、 ンタブで単語・文法説明をしている。
③自己学習型(LMS に毎回学習すべき教材と課題 工夫した点は、LMS に毎回授業の指示を載せ続
を与え、提出された課題やレポートにフィードバ けたこと。一度載せたきりで 2 度目以降は省略し
ックをおこなう)のいずれか。 てしまいがちだが、毎回(課題があるのかないの
中国語に関しては①が推奨だったが、双方向が かなど)繰り返し載せることで、授業外での学生
担保されれば②でもよいとのこと。当時は自宅 のストレスを軽減できたと思っている。
Wifi の用意がなかったため②にした。
手元には 6 年目のノートパソコン(dynabook) 3.毎回質問してくる学生が数名いて、今学期で一
しかなく、まず秋葉原で半日掛けて探したのは、 番よかった授業と言ってくれた学生もいた。授業
ホワイトボード替わりに使うペンタブレットと と同じ雰囲気や間合いを意識したため、動画は一
USB マイクだった(ヘッドセットと web カメラも 切編集しなかった。
購入したが、ほとんど使用してないため割愛)。と
は言え、動画作成経験が全くない自分にとって、 ペンタブレット:
ペンタブが使えるのかは不安でしかなかった。ペ https://store.wacom.jp/wacom-intuos-
ンタブは mini のみ在庫があり(1.1 万円。mini で series/small-basic#page_navi_top
充分)、マイクに関してはすでに企業でのテレワ USB マイク:
ークの浸透から廉価で高性能なマイクは在庫切れ、 https://www.sanwa.co.jp/product/syohin.asp?cod
ようやく 6 千円弱の USB マイクが買えた。 e=MM-MCU10SV
授業の進め方は、対面と同様に「2 週で 1 課」と

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人文学
愛媛大学教育学部「日本近代文学概説」(2 年生対 ・授業中に読了可能な短い韻文を使用し、作品解
象)授業実践報告 釈のありようを探った。例えば、現代短歌(「自転
青木亮人 車の後ろに乗ってこの街の右側だけを知っていた
夏 鈴木晴香」等)やポップスの歌詞(ブルーハー
1.シラバス段階での講義目的等は下記の通り。 ツの「情熱の薔薇」等)の分析を各グループが議論
【講義目的】近現代文学の特徴を知ることで「文 し、その内容を Slack に書きこむことで、各人の感
学」概念を培うとともに、学校教育と異なる「文 想を言語化するように促した。そのスレッドを参
学」の解釈法や味読の仕方を多方面から学ぶ。 照しながら、読者が余白を解釈する際の「主観/
【内容】学校教育の定番の指導法や教材を参照し、 客観」の位相について教員が講義した。
同時に教科書採録外の文学作品を読解する。 ・アニメ映画『雲の向こう、約束の場所』や他のア
【評価】毎回のコメント、小課題、最終テスト。 ニメ、J-POP に描かれた「空」の様子を確認し、
教員から「ストーリーを語る上で一見無意味と思
2.前期は対面禁止となり、Zoom による遠隔同期 われる「空」がなぜ描かれるのか」等を説明し、文
講義を行った。当初の予定を変更し、動画や音楽、 学作品における「描写」の意味を考察した。
グループワークを多用する内容に変更した。その 【その他】
運用のために機材整備が必要となったため、まず ・フリー素材の学校のチャイムや BGM、時に効果
使用機材をまとめ、次に内容をまとめたい。 音の音響効果を入れることで講義が一本調子に陥
【主な機材環境の整備】 るのを避けつつ、臨場感も出るように工夫した。
・ビデオスイッチャーに最大 4 台の PC を接続し、 ・Zoom のアンケート機能等を講義中に折々挟む
内容に応じて各 PC に切り替えて Zoom に映し、 ことで授業展開に変化をもたらすなどした。
PP、PDF、動画や画像、音楽等を瞬時に切り替
える環境を整えた。これによりメインPCの負荷 3.学生の反応と今後の課題等は下記の通り。
を軽減し、フリーズ等のリスクを回避した。 【学生の反応】
・オーディオインターフェイスにコンデンサマイ ・グループワークや Slack のスレッド、教員から
クを接続して音声を改善した。また、ループバッ の発問等を通じて対面授業に近い雰囲気を実感で
ク機能を使用することで喋りながら音楽や効果音 きた。また、講義開始の学校のチャイムや BGM 等
を同時に Zoom で流しうる環境を整えた。 のおかげで臨場感を感じることができた。
・Zoom のブレイクアウトセッションを使用して ・映像や音楽、韻文を多用して分かりやすかった
グループワークを促した。Slack というチャットツ と同時に、鑑賞を通じて不明点が多々あることに
ールも併用し、グループワークの内容等を書きこ 気付いたり、同じ作品を読んで鑑賞が異なる驚き
んでもらい、それを全員で確認しながら展開した。 やその理由を探るなど、新鮮な気付きが多かった。
授業後にはコメントを Slack に書きこんでもらい、 【今後の課題・可能性】
次回授業時に参照するなどして教員・受講生とも ・遠隔同期型は対面より情報量が削減されるため、
に感想や意見を共有しながら情報として蓄積し、 密度や精度をいかに上げるかが課題に感じられた。
随時参照可能なスレッド環境を整えた。 ・学生の反応は概ね好評で、対面授業と遜色ない
【主な内容】 講義と感じた受講生も多かった。ただ、教員側に
・夏目漱石『坊っちゃん』の世界像を実感しても 伝わる反応は一面の可能性があり(ネガティブな
らうために落語を流し、各登場人物の主観のズレ 反応は控える等)、また最初の遠隔講義という目
が笑いを生みだす機微を体感してもらった。 新しさも手伝った結果の反応と推定される。

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愛媛大学教育学部「初等国語」(2~4 年生対象) 【主な内容】
授業実践報告 ・計 5 回の内、前半を国語教材『大造じいさんと
青木亮人 ガン』の読解を行った。教育現場では互いに認め
合ったライバル同士の爽やかな戦いと解する傾向
1.シラバス段階での講義目的等は下記の通り。 にあるが、物語の「語り方」に着目すると、絶対的
【講義目的】小学校教員免許取得関連科目。国語 強者にある大造じいさん側から語られるために
の基礎的な知見や技能を習得するのが目的である。 「爽やかな戦い」と感じられることを読解し、こ
【内容】3 名の教員が担当。私の担当は計 5 回で、 の作品が太平洋戦争直前の昭和 16 年 11 月に発表
文学研究の立場から文学作品の教材をいかに読み された意義等も確認した。その上で、後半は歌謡
解くか、その方法や認識のあり方等を考察する。 曲「木綿のハンカチーフ」における男女の関係の
【評価】毎回の出欠及びコメント、最終テスト。 読解分析に移り、グループワーク等で太田裕美の
原曲版と椎名林檎によるカバー版を比較しながら
2.前期授業が対面禁止となり、Zoom による遠隔 考察してもらった。その後、同じ歌詞でも曲のア
同期講義を行うこととした。その時点で当初の予 レンジや歌い方で登場人物の関係の受け取り方が
定を変更し、音楽の歌詞分析をグループワークで 全く異なることを指摘し、文学作品も「語り方」そ
行う内容を組みこむ展開に変更した。その運用の のものの解釈によって物語の印象のみならず読解
ために機材環境の整備が必要となり、まず使用機 そのものが変容する可能性を実感してもらった。
材をまとめ、次に内容をまとめたい。
【主な機材環境の整備】 3.学生の反応と今後の課題等は下記の通り。
・詳細な説明は同大学教育学部講義の「日本近代 【学生の反応】
文学概説」実践報告にまとめたため、本稿では機 ・教科書教材と歌謡曲を関連付けた授業展開は意
材運用状況を画像で示す。真中下がビデオスイッ 外だったが、物語の語り方や歌い方でいかに印象
チャー、左下がオーディオインターフェイス、他 が変わるかに着目した場合、ともに共通する側面
は各 PC とモニター、照明、カメラ等である。 があるという発見に加え、
「語り方」に注目する視
点そのものが新鮮だった。
・原曲とカバー曲の比較分析をした上で文学教材
を振り返ると、無色透明と思われた「語り」に偏り
があることに気づいた。歌謡曲を参考にしたので
その偏りが明快だった。また、曲を聴きながらと
いうこともあり、遠隔授業を飽きずに受けること
ができたと思う。
【今後の課題・可能性】
・遠隔同期型は、対面と比較すると授業の情報量
そのものが削ぎ落とされるため、内容の密度や精
度をいかに上げるかが大きな課題に感じられた。
・Zoom でのグループワークは、ホストの教員が各
グループを巡回できるが、グループによって議論
に温度差が出る。対面と異なり、遠隔はその温度
差に気付きにくいのが難点だった。

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弘前大学教育学部「音楽史(日本の伝統音楽及び民 受講者に配布した。
族音楽を含む)」(1 年生対象)授業実践報告 復習用ワークシートは例年の授業とほぼ同様の
朝山奈津子 内容に加えて、各自がグレゴリオ聖歌をそれぞれ
練習し、その歌唱の録音提出を求めた。例年は、授
1.(目的)主要な作曲家と作品を知り、西洋音楽 業内で全員で歌ってみるところである。
史の大まかな流れを理解すること、日本の音楽の 試験は、例年は最低限の知識を問う穴埋め型・選
主要な種目と響きの特性を理解すること、民族音 択型問題と、楽曲を聴いて知っていることを述べ
楽学の概要を理解すること。 る記述式問題を併せたペーパーテストを行ってい
(概要)教員免許状取得に必修。科目名は免許法 たが、今年度は知識を問う(暗記型の)試験は実施
に準ずる。 困難となった。そのため、受講生 7 名に対し、授
(講義内容)第 1-10 講でグレゴリオ聖歌から十二 業者と 1 対 1 での口述試問を実施することにした。
音技法までの西洋音楽史、第 11-13 講で日本音楽 試験準備のため、補講も兼ねて授業時間外の「予
史の要点、第 14 講で民族音楽学の例として沖縄の 行演習」を受け付けた。
音楽、第 15 講に口述試問。
(成績評価)復習シート 60%、口述試問 40%。 3.例年の 1 コマ分の内容を基に作成したが、全
資料を精読・視聴した結果、1 回の受講に 8 時間
2.学生の通信環境や学内・地域の通信量等に鑑み、 を要したとの申し立てがあり、重要な部分と関心
授業に関わるデータの圧縮が求められた。 に応じて省略可能な部分を明示することとした。
本講は教材に音楽の録音や映像が多く含まれ、 復習用ワークシートへの取り組みは例年以上に丁
通信量が嵩むことは必至であった。そこで、講義 寧で、図書館利用が制限される中、ウェブサイト
内容をすべて文字で書き起こしてテキストデータ も含めてできる限りの資料を参照して自分の考え
とし、通信量はできる限り音楽資料に充てた。 をまとめる努力が見られた。試験の予行は、熱心
教材は MS-OneNote で作成、MS-Teams の Class な受講生からは 1 人で 6 回もの申込があり、授業
Notebook 機能を通じて配布。ウェブサイト構築の の目標を大きく越えた内容を伝えることができた。
要領で、参考文献や楽譜、録音、動画へのハイパー 聖歌の歌唱課題は、各自が曲をよく記憶してい
リンクを張り、ワンクリックで資料が提示される ることが試験で確認できた。録音が残ること、独
よ う 配 置 し た ( サ ン プ ル を pdf で 示 す りで歌うため教室内のような気恥ずかしさがなか
https://1drv.ms/b/s!AgUGK2hTNT0sgfZmSaQr ったことが真摯な取り組みに繋がったと思う。
n5p3Z-53iw?e=HrcZad)。 こうした高い積極性のために、今後また再開さ
音楽資料は、主として大学で契約している配信 れる面接授業でも、プレイリストや楽譜資料の電
サービス(ナクソス・ミュージック・ライブラリ 子的な配布と、歌唱課題の録音提出を継続したい。
ー)から URL を示した。加えて、授業者が所有す 一方で、乗り遅れた受講者もあった。授業資料
る商用 DVD やテレビ番組の録画から、必要箇所 が、音楽作品を除けばすべて文字であったため、
を画面上で記録、画質を敢えて落とし、著作権に 目で読む・見るよりも耳で聞く方が理解の速い学
関わる注意を添えて、受講者のみが接続できる 生には重荷となったようだ。また、テキストの書
MS-Stream に 掲 載 し た 。 ま た 、 違 法 性 の な い き起こしと動画の切り出しに、膨大な時間と労力
YouTube の動画を参照するよう URL を示した。 を要した。従って、教育効果に鑑みては、画面共有
楽譜資料は、すべてパブリックドメインのもの 機能を活用した講義動画の方が総じて効率的とい
を用い、楽曲分析など必要事項を書き加えながら、 える。

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広島大学「現代文学概説」(2年生対象)授業実践 した。しかし、混乱するのでどちらかに統一した
報告 方がよいという受講者の声があり、アンケートを
有元伸子 実施。ライブ授業の希望者が 7 割程度あったため、
以降はすべてパワーポイントを用い Teams によ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 るライブで行った。
容、成績評価の方法 授業前日の昼までに、PDF 資料(授業の流れを
文学部の日本文学語学の 2 年生向け専門科目だ 示す書き込み式のレジュメと、引用資料の 2 種類)
が、80 名前後の受講生のうち、
日文は 3 割程度で、 を Teams のファイルに入れる。授業は録画でも見
大半は他分野や他学部生。留学生も数名受講。 られるようにし、授業終了後 2 日以内に Forms で
昭和以降の日本文学史に関する専門の初段階の コメントシート(疑問・質問と感想)を提出させ
講義科目で、キャノン的作家・作品を学び実際に る。読書マラソンは Bb9 で提出。
読むことを通じて、①文学に親しむ ②文学と時 2 コマ連続の授業のうち、1 コマ目の冒頭で、前
代との関連を理解することを目標とする。 週 2 コマ分のコメントの感想の紹介と質問への回
数年前から、幅広く文学潮流を知ることと、受 答を行って、復習とした。また、提出された読書マ
講生が実際に一定数以上の作品を読むことを両立 ラソンのいくつかを紹介して、受講生のマラソン
させるため、
「読書マラソン」を取り入れている。 完走へのモチベーションを高めるとともに、授業
文学史の授業のあり方や評価の方法についての悩 中にも授業で扱った作家・作品のものを随時紹介
みを漏らしたところ、杉山欣也氏(金沢大学)がご して関連づけた。同じ作品を複数の受講生が書い
自身の授業実践を教えてくださり、それを元に毎 ている場合には、対比させつつ紹介した。他の受
年少しずつ微修正して今日に至っている。 講生のコメントやマラソンに刺激されて、マラソ
授業の初回に、主要作品が入った文学史年表と ン対象作品を決めた者もかなりいた。
高校国語教科書巻末の文学史年表を配布。授業中
は、文学と時代との関係を整理するとともに、作 3.学生の反応と今後の課題・可能性
家や作家についての読書ガイドを行う。受講者は、 教員も受講生も慣れないオンライン授業であっ
毎回の配布資料とそれら文学史年表から任意の作 たので、コメントシートに授業方法への希望や気
品を7作品読み、梗概と感想を作品ごとに A4 版 1 づきを随時書かせて、なるべく取り入れるように
枚にまとめて提出。減点はなく、
(コピペなどを除 した。学生としても、未曾有の事態のなかで、教員
き)提出すれば得点できる。半期制では 15 作品で とともに授業を作っているような一体感をもつ者
満点だったが、ターム制では7作品+簡易レポー もいたようだ。読書マラソンもよい経験になった
トとコメントシートとで評価した。 ようで、おおむね対面と変わらぬ評価だった。
これまで私は LMS を使った経験がなく、Bb9 の
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 操作に戸惑ったものの、慣れてくると従来の紙で
づいて変更し実施した授業内容 の提出物(読書マラソンは打ち出し原稿、コメン
大学の指示は、Microsoft Teams を用いたライブ トシートは手書き)に比べて、集計や検索がずい
授業、または Stream を用いたオンデマンド授業 ぶん楽で、授業でも紹介しやすかった。授業時間
で、LMS は Blackboard(通称 Bb9)を使用。 内に書かれた手書きのコメントや文字に愛着は感
2コマ連続のライブ授業は教員にも受講生にも じるものの、今後対面授業に戻っても、Bb9 や
負担が大きいと聞いて、当初は、1 コマを Teams Forms での提出は継続して、オンラインの利点を
によるライブ授業、1コマをオンデマンドで実施 活かしたいと思っている。

44
國學院大學文学部日本文学科 「伝承文学概説Ⅰ」 (通常授業のプリントに相当)と、講義動画をア
(1年生対象必修科目)授業実践報告 ップした。講義動画はパワーポインタ(以下、パワ
飯倉義之 ポ)の講義内容(板書の替わり)に、解説の音声を
付けたもので、学生は授業日内に講義動画を視聴
1.「伝承文学概説Ⅰ」とは し、内容をテキストファイルに整理して、翌日中
この科目名の講義が必修なのは、日本中の大学 に提出することで出席の代わりとした。
で本学の日本文学科だけだろう。伝承文学は日本 単なる通常授業の代替ではなく、オンデマンド
民俗学の方法を文学研究に応用する、国文学者・ の利点を活かすことを考えていた。通常では提示
民俗学者の折口信夫の方法を受け継ぐものである。 できない量の資料や板書を提示して解説できるし、
折口の学統を継ぐ本学日本文学科では、一年時 その説明にもアニメーション機能を用いてメリハ
に伝承文学の基礎を講義を通じて学び、学習成果 リを作れる。またプリントでは白黒になったり省
を試験で確認する成績評価が行われていた。 いてしまったりする資料や写真を、カラーで提示
できる利点もある。その説明や画像を、学生が自
2.遠隔授業への対応 身の判断で映像を止めたり巻き戻したりして確認
さて大変なことになったぞ、というのが実感だ できること、授業後に再視聴可能なことも利点だ。
った。日本文学科の他の学び――日本文学・日本 さらに学生の主体的な活動として、通常授業時
語学など――は高校までで触れてくるが、伝承文 より多く復習整理と疑問・質問を書いてもらえる
学は入学後初めて本格的に知る学びの領域である。 時間が取れるのは、この機会ならではであった。
いわば初見である。準備を怠っては初見殺しの講 パワポで文字だけだと無味乾燥なので、博物館
義になりかねない。考慮の結果、講義映像と資料 等のデータベースで公開されている写真の引用、
を組み合わせたオンデマンド視聴の形式を選択し フリー素材のイラストを多用して華やかさを確保
た。伝承文学分野の基礎的な概念や研究方法、研 するように心がけた。結果、いろいろなフリー素
究史等の教授が中心なので、オンデマンド視聴で 材サイトに登録することになったけれども。
も十分な学習効果が期待できるだろう、という判
断である。この点は間違っていなかったと思う。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
もう一点、学生の負担も考慮した。語学系の講 今回一年生は全く登校できない状況で遠隔授業
義や演習は、どうしてもオンライン授業をせざる に取り組むしかないため、学生とつながるため、
を得ない。学生は何時間もの間、画面に対峙しな 前回に提出されたコメントに対して「顔を出して」
くてはならず、心身への負担は軽くない。せめて 応答するパートを作った。これは学生から「ラジ
講義系の科目だけでも時間の縛りから解放して、 オみたいで面白かった」という感想をもらえた。
負担を軽減したいと考えた。 新一年生向けには、大学の歴史や施設、周辺情
正直にもう一点付け加えるとしたら、私はおっ 報、図書館の使い方などもアナウンスしたのが好
ちょこちょいなので、自身のヒューマンエラー軽 評だった。また、家族と見る学生がいたことは面
減策の意味でも、講義科目では事前にすべて準備 白い発見だった。授業の内容に対して両親・祖父
ができるオンデマンド形式を取ることにした。 母の経験を聞く「家庭内フィールドワーク」がで
授業では、数日前に資料PDF(古典文学テキ きた学生がいたのは素晴らしいことだと思う。
スト)をアップして読むように指示した。これは しかし残る課題は「学生同士のつながりの確保」
通常授業の「来週までに第○章を読んでおくよう だ。一年生同士を、さらに先輩たちと結びつける
に」に相当する。そして前日夜に授業資料PDF 仕組みをなんとか作ることができないだろうか。

45
琉球大学「歴史総合」(1~2年生対象)授業実践 多少言い間違えたり、言葉が出てこなかったりし
報告 ても、その臨場感のほうがむしろ学生にとっては、
池上大祐 安心材料になるのでは、と考えた結果である。
特定課題や講義感想文を学生からどう受け取る
1.本講義は、地域・日本・世界を一体としてとら のか、についても苦心した。当初はメール対応だ
える新しい歴史学の在り方を考察することを目的 ったが、60 名の受講生に毎週全員に「受領」の返
とし、太平洋海域を軸とした 15~20 世紀の歴史を 信を出すのは不可能と判断し、WEBクラスによ
通史的に概観する学部共通科目である。教職課程 る「レポート提出」という仕組みを活用し、提出=
認定を受けている科目であることから、学びの協 1点を配点する、ということで、全員に返信メー
働性を担保するためにグループ学習も取り入れる ルを出すことなく、学生も毎週「成績チェック」が
計画であった。成績評価方法は、毎回の講義感想 できるので、かなり時間と労力の節約になった。
文の提出(20 点)、期末レポートの提出(80 点) 特定課題の具体的な内容については、学生に対
の計 100 点満点で算出することを想定していた。 する過度な負担にならないように、20 分程度で完
了できる程度の情報量を意識して、短い論説の要
2.大学からは「WEB クラスを使ったオンデマン 約、図表や史料の読み取り、反実仮想の問い、など
ド授業」を原則とするという方針が 4 月に出され、 を取り入れた。さらに毎週の特定課題を単発で完
緊急の遠隔対応に迫られた。本講義は、上記原則 結させるのではなく、次回以降の講義内容の伏線
に従い、以下の要領でオンデマンド対応教材を作 になるように意識しながら作成した。なお、毎回
成した。①音声録音したパワーポイントスライド の特定課題の提出という新しい作業が加わったこ
を動画ファイルにし、個人アカウントの Google ド とから、期末レポートの配点を 70 点に下げ、捻出
ライブに保存する。②講義内容の目次・参考文献 した 10 点を特定課題の提出に充てた。
一覧・年表・図版を盛り込んだレジュメ(ワード)に、
①の動画ファイルをリンクで埋め込む。③リンク 3.学生の反応については、音声を資料に付けた
を埋め込んだレジュメを、もともとの講義開始時 ことと、特定課題を毎週組み込んだことについて
間に合わせてWEBクラスにアップロードする。 高評価をいだたいた。音声については、毎回冒頭
上記①~③の作業を進めるにあたり、毎回の講 に、前回の特定課題についての学生たちの意見を
義録音時間をできるかぎり 60 分に収め、残り 30 紹介したうえで解説を行うよう心掛けていたこと
分をミニ課題(=本講義では「特定課題」と命名し が、講義全体の理解につながった、という意見が
た)および講義感想文記入に充てられるよう配慮 多かった。
した。予定していたグループ学習の実施が困難で 課題は、学生どうしの学びの協働性を遠隔とい
ある以上、「協働」は難しくとも「主体性」の担保 う環境の下でどう担保するか、という点にあろう。
は工夫の余地があると判断したからである。学生 対面か遠隔かという二者択一の考え方をこえて、
には「聞く(音声)、読む(スライド/レジュメ)、 たとえば、講義の録音収録に学生たちも参加させ
メモする(時間のゆとり)、思考する(特定課題)、 るといった工夫もありえよう。また、今回はオン
整理する(感想文)」の5つの作業を毎回意識して デマンドにこだわった教材となったが、オンライ
ほしいと伝えた。 ンとの連携可能性も模索する必要もあろう。
録音方法については、事前に作成した台本を読 ZOOM や YOUTUBE を活用した学術学会の開催
み上げるということはせずに、ラジオ講座のよう が増えているなかで、その経験を今後の講義方法
な雰囲気を意識して、
「一発録り」にこだわった。 にも生かすことができればと考えている。

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京都大学「ILAS セミナー:近現代日本における「病」 分を史料によるグループ分けから「病」の種類に
の歴史」(全学年対象)授業実践報告 よるグループ分けに組み換えた以外はほとんどシ
池田さなえ ラバスの内容を変更しなかった。
ただ、後半部分についてはシラバスの内容を更
1.「ILAS セミナー」とは、京都大学で全学共通 に膨らませ、
「自分が最もなりたくない病気は?」
科目として開講されている、プレゼンや討論を主 という素朴な問いかけから、挙げられた疾病の種
体とする少人数の参加型授業である。対象は全学 類ごとにグループ分けを行った。そして、過去に
年であるが、主に学部 1 年生が受講する。シラバ 猛威を振るった疾病を「自分ごと」として捉え、な
ス段階では、近現代の日本において、病気になっ るべく客観的データではなく主観的記録が残され
た人がどのように暮らし、どのように死んでいっ ている史料に迫るよう指示した。また、個々の得
たのかを様々な文献史料や研究書・論文などをも 意分野を伸ばすべく、レポートの記述形式は「自
とに明らかにすることを目指した。コロナ禍の大 由」とした。
学において奇しくもタイムリーなテーマとなって 発表準備に際しては、図書館の利用が制限され
しまったが、シラバス執筆時点においては、全学 ていたため、可能な限り在宅で史料や文献収集が
共通科目であることに鑑み、文理融合の観点を意 できるよう、WEB 上のツールやデータベースを紹
識して、医学や技術といった理系学問の進歩と、 介し、授業で使用する基本文献についてはスキャ
政治や制度、文化や信仰といった文系学問の領域 ンして共有するなど工夫した。
とを相互に連関させて思考することに主眼を置い
たものであった。 3.受講した学生は、文献調査が不自由な中にも
授業前半では、議論の前提として最低限押さえ 関わらず、授業で指定したツールを最大限に活用
るべき公的保険制度の歴史を概観するため、いく した才能溢れる多彩なプレゼンを見せてくれた。
つかの概説書を輪読し、授業後半では、公文書・新 文献の輪読を軸に行なった前半は、やや退屈を
聞・文学作品の 3 種類の史料ごとにグループ分け 感じているような印象もあったが、ここでの知識
をし、
「病」に関する歴史的記述をまとめてグルー の共有が後半の自由な発表の基礎になることを繰
プごとに発表してもらうこととした。ここには、 り返し意識付けすることで、何とか授業に臨む意
史料の特性により、
「病」との人びとの向き合い方 欲を繋ぎとめることができたように思われる。同
が異なって見えてくることを体感してもらう狙い 時に、この意識付けという過程の成否がオンライ
があった。成績は、これらのプレゼン・討論及び最 ンでの文献輪読の最大の課題でもあると感じた。
終レポートにより評価することとした。 後半は、
「自分が最もなりたくない病気は?」と
いう素朴な問いかけからスタートしたことで、単
2.新型コロナウイルス感染拡大を受け、4 月以降 なる先行研究の引き写しではない、個々の関心や
大学から連日のように出された通知の概略を述べ 発想が光るオリジナリティの高いプレゼンが揃っ
れば、京都大学では 4 月の授業は全て休講とし、 た。また、レポート形式を「自由」とすることで、
5 月の大型連休明けから授業を開始することとな オーソドックスな論文形式のみならず、小説風の
った。この間にオンライン授業に向けた授業計画 ものや、架空の団体の報告書風に書かれたものな
の変更や授業実施の準備を整えるとともに、学生 ど、発想力に富んだレポートが提出された。オン
向けにガイダンスを行うことが求められた。 ラインゆえに自己の表現方法が限られている中で、
当授業では、Zoom を用いて対面同様の活動を 学生のやる気を引き出すと同時に能力を発揮する
行うこととし、休講に伴う日程調整のため後半部 有効な方法であったと手ごたえを感じた。

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愛知学院大学「韓国文化事情」(1 年生対象)授業 供できた。事前に資料の映像と説明を行う講師の
実践報告 映像を組み合わせて一つの画面に編集し、画像や
李承俊 動画を挿入した。画像や動画の活用にあたり、著
作権侵害にならないように注意し、必要に応じて
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 著作権者に問い合わせを行った。
容、成績評価の方法 Teams でのリアルタイム授業になってからは、
この授業は、異文化理解の方法論を導入し、大 授業内容を変更した。 多様な動画を活用すること
衆文化を中心に「日本の中の韓国文化」
「世界の中 を想定した上での内容であったが、Teams でのリ
の韓国文化」をめぐる現象を紹介することで、国 アルタイム配信や共有は容易ではなかった。無論、
際的な教養を培養することを目的とする。 私の未熟さによるところが大きいだろうが、私が
授業内容は①「文化」「大衆文化」の概念と事例 所有している端末(MacBook)と Teams との相性
の説明②K-POP、映画・ドラマ、アニメの日韓間 に問題があり、また動画を配信しても画質が低下
の伝播と受容の様相の紹介③日本の大衆文化にお してしまい視聴が困難であった。それで、必要に
ける「在日」表象の分析、④「韓国文化」概念の再 応じて編集した動画を事前に提供するか、授業中
構築、という流れで用意していた。 に URL を提示してそれを視聴してもらうように
成績評価は、出席・課題提出 50%、定期試験 50%、 した。無論、著作権侵害にならないように注意し
と設定していた。課題は、①毎回の授業に対する た。基本的な授業の準備に加えてオンライン配信
感想・疑問点などを記述したミニ・ペーパーの提 用の視聴覚資料の準備・編集にさらなる時間がか
出(授業時間内)②「Girl Crush」「在日」などのキ かった。
ーワードに関する自由調査(授業時間外)、などを 課題は、ミニ・ペーパーの提出だけにした。すべ
予定していた。定期試験は、論述試験を予定して ての課題に対しては個人宛にフィードバックを通
いた。 知し、授業のはじめに全体的なフィードバックを
行うことで、学生が大学の授業に参加している実
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 感を失わないように工夫した。
づいて変更し実施した授業内容
2020 年度前期の方針は、6 回目まではオンデマ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ンド配信を行い、7 回目から Microsoft Teams で 授業アンケートでは、全項目において全学平均
リアルタイム授業を行うことに決まった。定期試 を上回る結果が出た。学生にとって親しみのある
験は廃止、遅刻・欠席した学生には、録画の提供な 大衆文化とオンラインというプラットフォームの
どを通じて最大限に配慮することが求められた。 組み合わせの結果なのではないかと思う。授業の
本授業における最大の変更点は、視聴覚資料の 形態によってその内容や構成も変更される時代が
活用を減らし、文字資料・テクスト資料の活用を 到来したのではないだろうか。
増やした部分にある。教室の機材が活用できなく
なることで、映画やドラマの活用を減らした。
『82
年生まれ、キム・ジヨン』など現代文学の読解を行
った。映画「パッチギ」「GO」の紹介は断念し、
代わりに「在日」に関する文献やメディア情報を
活用した。
オンデマンド授業は、概ね予定通りの内容を提

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新潟大学「歴史学 V」(全学部・全学年対象)授業 施するように推奨している。
実践報告 本授業では①と②を併用し、Zoom で同時配信
板倉孝信 を行うと共に、その際の映像を YouTube で録画配
信する方法を採用した。YouTube への動画アップ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ロードに際しては、基本設定を非公開とした上で、
容、成績評価の方法 学務情報システムに紐付いた受講者の Gmail アド
本授業は、新潟大学の G コード科目(全学共通 レスを限定公開リストに登録し、対象者のみが動
教育科目)であり、全学年対象の基礎水準科目に 画を視聴できるようにした。
分類される。担当教員は、現代先進諸国に見られ またリモート化により、教室の収容限界から解
るような民主主義が、近代西洋諸国でどのように 放されたため、定員を 150 名から大幅増員し、最
成立・発展したのか、その過程を追跡することを 終的に 349 名の受講者を受け入れた。一方、当初
主眼とした。解説に際しては、時系列ではなくト 予定していた受講者間でのレポートの相互評価は
ピック別に歴史的事象を整理した上で、象徴的な 困難となったため、学務情報システムのフォーラ
エピソードなどを多く紹介するように心掛けた。 ム(電子掲示板)を用いて、教員の示したテーマに
特に理系の受講者が含まれることに配慮し、彼ら 対して受講者に意見を書き込んでもらい、これを
にとっても身近な現代日本の政治制度と、近代西 特別点加算(上限 10%)の対象とした。
洋のそれを比較する手法を採用した。
シラバス段階では、定員 150 名の教室における 3.学生の反応と今後の課題・可能性
対面授業を想定していたため、担当教員が作成し 以上の工夫により、リアルタイムの臨場感とオ
たレジュメに沿って講義する授業形態をとった。 ンデマンドの利便性を兼ね備えた授業を展開する
また成績評価は、授業コメントシート(15%)、 ことが可能となり、通信環境に恵まれない受講者
復習小テスト(15%)、期末レポート(70%)を にも十分な教育サービスを提供することができた。
合算し、基本点(100%)とした。さらに受講者同 またコメントシートの代替として、学務情報シス
士で期末レポートを交換し、相互にコメントを付 テムで実施した電子アンケートの結果を踏まえ、
して任意提出した場合、特別点(上限 10%)を加 改善を重ねていった結果、授業評価における受講
算する予定であった。詳細は後述するが、遠隔授 者の満足度(満足+やや満足)は 95%に達した。
業の実施に伴い、上記のうち定員と特別点の評価 この数値は、対面授業であった昨年度の同科目よ
方法を大幅に変更することとなった。 り 10%高いものであり、遠隔化のために試みた工
夫は概ね成功したと言える。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 しかし、Zoom や YouTube のような授業配信ツ
づいて変更し実施した授業内容 ールと、学務情報システムのような授業支援ツー
新潟大学はガイドラインにおいて、遠隔授業の ルの効果的な連携には、まだ改善の余地がある。
実施方法として、①「オンライン会議システム 特に対面授業で予定していた小テストを電子的に
(Zoom)を用いたリアルタイム型授業」、②「動 実施した際に、文字数・設問数・回数(100 字以上
画配信(YouTube)型の授業+質疑応答・小レポ ×6 問×3 回)を全く変更しなかったため、受講
ート等」、③「テキスト資料+質疑応答・小レポー 者・担当教員の双方に大きな負担が掛かった。こ
ト等」の 3 つを選択例として掲げている。上記の うした授業後のフォローアップについては、今回
資料配布・質疑応答・小レポート等は、学務情報 断念してしまった受講者同士のピアレビューを用
(授業支援)システムを通じて、全て電子的に実 いた方法を、新たに検討していきたい。

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東京女子大学「日本語表現法」(1・2年生対象) 授業は録画をして履修者限定で公開し、通信状
授業実践報告 況が不安定な場合でも学生が内容を確認できるよ
市川紘美 う留意した。授業連絡や資料の配信、課題提出と
フィードバック等は Google Classroom で行った。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 教材はプリントからテキストおよび補足資料に変
容、成績評価の方法 更し、データ量や印刷を軽減するよう努めた。
本科目は大学で学ぶ上で必要な日本語表現力と 内容は Zoom の各機能を用いることで対面授業
して、論理的な文章表現・口頭表現の力を養うこ とほぼ同様に実施できた。図書館での実践形式で
とを目的とする。また、講評などのグループワー 行っていた情報検索と資料収集は、教員が実際に
クを取り入れることで、総合的なコミュニケーシ オンラインデータベース等を画面共有機能から説
ョン・スキルの習得も目指す。 明することで代替とした。当初懸念されたグルー
科目の共通内容は、①文の構成、②論説文の読 プワークについては口頭発表と講評のみとし、ブ
解と要約、③書きことばと話しことば、④論述文 レイクアウトセッションを利用して実施した。
の作成、⑤口頭発表と講評、⑥自己の文を省みる、 通信環境の安定と学生のプライバシー保護のた
である。報告者はこれに加えて、①アカデミック め、質問で直接発言したい場合を除き、学生の音
ワード、②情報検索と資料収集(図書館での実践 声と画像はオフとし、内容の確認はチャットと反
形式)、③テーマ設定とアウトラインの作成、④引 応マークを用いた。ただし、グループワークでは
用・注釈・出典の示し方、⑤ディスカッションとデ 強制ではなく学生自身の判断としたうえで、音声
ィベート、も取り上げている。 と画像の両方、または音声のみをオンとした。結
成績評価の方法は、
二千字前後の論述文が 50%、 果として履修者全員が音声、画像共にオンで参加
五百字・千字の論述文が 30%、主体的な参加姿勢 し、通信等の問題もなくスムーズに実施できた。
などによる平常点が 20%である。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 同時双方向型でも大方が講義のみであったこと
づいて変更し実施した授業内容 もあり、音声や画像で教員や他の履修者と繋がり
前期は全て遠隔授業となり、授業方法は同時双 を持てたことに対し、特に多くの好意的な反応が
方向型かオンデマンド型、または双方を併用とな あった。また、各課題へのフィードバックに対し
った。具体的な方法や内容は各専攻・科目の方針、 ても、迅速で詳細であったと好評であった。
個々の担当者で工夫となった。遠隔授業のツール 教員、学生の双方が各ツールの扱いに慣れてし
は、従来の Web Class および Google Classroom に まえば、内容面では大きな変更を要しないことが
加え、新たに Zoom が導入された。 分かった。よって今後の課題としては、遠隔授業
本科目については、今年度に限り全て各担当者 でもグループワークなどで学生間の交流の機会を
が独自に判断し、必ずしも日本語の四技能全てや 増やすことが挙げられる。これは本科目の目的の
グループワークを扱う必要はないという方針が出 ひとつである総合的なコミュニケーション・スキ
された。報告者は本科目を大学での学びの基盤と ルの向上にも繋がると期待される。
捉えている。また、履修者の大半が 1 年生である だが、やはり対面で場を共有することでしか培
ため、学生とのコミュニケーションは必須である えない人間性やコミュニケーション・スキルがあ
と考えた。よって、可能な限り内容面の変更はせ る。遠隔授業はあくまでも代替であることを忘れ
ず、Zoom による同時双方向型で行うこととした。 ず、多様なツールを用いた授業展開が求められる。

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早稲田大学「表象・メディア論系演習(表象文化の 対するコメントを毎回課題として課すという形態
政治経済学1)」(2-4 年生対象)授業実践報告 へと変更した。後半の発表回に関しては、まず学
伊藤潤一郎 生各自に作品分析のレポートを提出してもらい、
それを教員がトピックごとにまとめて講評ととも
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 に配布し、他の受講生がどのようなレポートを書
容、成績評価の方法 いているかを知ることができるようにした。また
本演習は、食べることにまつわる現代哲学の理 課題に関しては、たんに成績評価の対象とするだ
論を理解し、その理論を用いて文学作品や映像作 けでなく、個別のフィードバックコメントを全員
品を分析できるようになることを目標とするもの に対して返し(希望者には期末レポートにもフィ
である。当初は、授業の前半 6 回で教員が講義形 ードバックを行った)、疑問点などに答えること
式で理論を解説し、後半 8 回を食べることに関す で双方向性の確保に努めた。
る作品を学生自身が分析し発表する回にあてる予 さらに、特筆すべきこととして、LMS の機能に
定でおり、毎回のコメントペーパーと発表内容、 よって、いわゆる「もぐり」が可能であったことも
期末レポートによって評価を行うこととしていた。 記 し て お き た い 。 早 稲 田 大 学 は LMS と し て
Moodle を使用しているが、Moodle には「エクス
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 ターナルユーザ」という機能があり、教員が学籍
づいて変更し実施した授業内容 番号を入力して登録すれば当該科目の正規の履修
授業のオンライン化にともない、大学からは三 生以外も授業に参加できるようになる。それゆえ、
つの授業形態が提示された。 リアルタイム配信以外の授業形態であれば、同じ
(1)資料・課題提示による授業 曜日・時限の科目であっても授業に参加すること
(2)収録内容のオンデマンド配信による授業 が可能であり、実際に今学期は申し出のあった他
(3)リアルタイム配信による授業 学部の学生が、正規の履修科目と同じ時間の本演
リアルタイム配信については、ネットワーク環 習を Moodle のこの機能を使って受講していた。
境に負荷がかかる可能性が高いため、履修者数の もちろん、他大学の学生にまで開かれているわけ
多い授業ではすべての回をリアルタイム配信にし ではないものの、既存の LMS にも「もぐり」を実
ないよう大学から注意喚起があり、また学生の肖 現する機能があることは教員・学生双方とも知っ
像権やプライバシーの観点から、学生側のカメラ ておいて損はないだろう。
の使用を極力控えるよう要請があった。
結論から言えば、本授業は(1)の資料・課題提 3.学生の反応と今後の課題・可能性
示による授業形態で進めることにした。その理由 資料提示の方が音声よりも復習をしやすいとい
としては、第一に、学生側のネットワーク環境に う声があったほか、フィードバックコメントにつ
配慮する必要があったこと。第二に、カメラとマ いて肯定的な反応が多かった。40 名全員に毎週個
イクの使用による学生・教員双方のプライバシー 別返信をすることは負担が大きく、複数科目で同
の確保に不安が残っていたこと。第三に、私自身 様のことを行うのは時間の制約からも現実的には
が研究室をもたない非常勤講師のうえ、自宅にも 難しいだろう。しかし、資料提示型の演習を今後
個室がなく、配信を行う「自分ひとりの部屋」がな も行うとするならば、双方向性を確保し、学生各
かったこと。主に以上の三点が挙げられる。 自の興味や関心を把握するためにも、個別のコメ
これにより、授業前半の講義回は、説明する内 ントの返信は不可欠ではないかと考えられる。
容をすべて文章で作成して PDF で配布し、資料に

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九州大学「ヨーロッパ史学講義Ⅲ:「感染」と「衛 れ、講義準備も兼ねてその任にあたった。
生」のドイツ近現代史」(2 年生以上対象)授業実 最も大きな変更点としては、講義動画の作成・
践報告 配信が挙げられる。
対面授業でも PowerPoint を利
今井宏昌 用していたため、そこに音声を入力する形で動画
を作成するまでは問題なかったものの、そこから
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 さらに配信に至るまでには、いくつかの問題が生
容、成績評価の方法 じた。まずサーバーへの負担を考慮し Moodle に
本講義の目的は、ドイツ近現代史を軸としなが 動画をアップロードすることは控えて欲しいとの
ら、国家や社会、そして人びとが「感染」という現 要請が出たため、YouTube での動画公開に踏み切
象とどのように向き合い、また対応策としての「衛 った。またその際、公開設定を限定公開としたう
生」をどのように構築していったのかを、具体的 えで、講義動画の URL を Moodle 上で提示した。
な政策のみならず、政治的・文化的なイメージの ただ、拙宅の不安定な Wi-Fi から 1GB 超の動画デ
レヴェルまで含めて検討することに定めた。 ータをアップロードするのは至難の業であり、そ
概要としては、まず人類史がそもそも感染症の の結果公開が遅れる事態も生じた。さらには 6 月
歴史と不可分である点を示したうえで、その「撲 に入り、前期を通じて遠隔授業が原則とされたた
滅」を目指した 19/20 世紀のドイツの歴史を世界 め、成績評価も期末レポート 100%へと切り替え
史と結びつけながら論じ、最終的に「衛生」という た。
営みがもつ歴史的意味について考察することを目
指した。具体的には、日本語文献を中心とした先 3.学生の反応と今後の課題・可能性
行研究にもとづきながら、衛生都市ベルリンの誕 学生とのコミュニケーションは、Moodle 上に設
生、アフリカ眠り病とドイツ植民地主義、ドレス けた質問・感想フォームを通じて担保した。寄せ
デン国際衛生博覧会、性病と第一次世界大戦、
「人 られた質問・感想には、次の回の動画冒頭を使っ
種衛生学」とナチズムといった 5 つの個別テーマ て返答した。その過程で判明したのは、動画を繰
にわけて話を展開し、最終的にそれらの論点を総 り返し視聴することで理解を深めようとする学生
合することにした。 が複数いたことである。また諸々の事情から決め
成績評価に関しては、年度開始時点の全学方針 られた時間に登校・受講することが困難な学生に
において、2020 年 6 月 17 日(火)まで遠隔授業、 とって、オンデマンド型授業は対面授業よりも効
6 月 18 日(木)から対面授業への切り替えが予定 果的な側面をもつこともわかった。これらの点は
されていたため、期末試験 100%とした。 コロナ禍に限らず、今後の大学教育全般を考える
うえでも重要と思われる。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 最後に、講義の本筋からは外れてしまうものの、
づいて変更し実施した授業内容 私が動画作成中の息抜きとして差し挟んだ小ネタ
前述のとおり、年度開始時点では 6 月半ばまで に反応する学生もおり、結果として学生の質問・
遠隔授業をおこなうことが決定し、これを受けて 感想と私の返答がコント的様相を呈することもま
部局単位での教員向け講習会が開催された。その まあった。対人コミュニケーションが極端に制限
際、かねてより Moodle を活用した講義をおこな されるなか、教員も学生もラフなやりとりを求め
い、なおかつコロナ禍で所属部局のオンラインサ ていたことは否定できない。ある意味、オンデマ
ポートチームの一員となった私は、本講義をもと ンド型授業では対面授業以上に「緩急」が重要に
にしたオンデマンド型授業のモデル構築を依頼さ なってくるのかもしれない。

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立教大学「キリスト教学講義 1」(2 年生以上対 ⑷学生側のデータ量消費にも配慮するように、と
象)授業実践報告 の要請があった。
岩嵜大悟 このような要請を受け、この授業では⑴の形式
(オンデマンド)を選択した。具体的には音声つ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 きパワーポイントを作成し、Google ドライブにデ
容、成績評価の方法 ータをアップロードし、そのリンクを LMS にて
講義目的:ヘブライ語(旧約)聖書は、ユダヤ教・ URL で示し、学生が各自アクセスして受講する形
キリスト教の聖典、つまり、聖なる書物として、こ 式を採用した。これはデータダイエットやインタ
れらの宗教思想の基盤となってきたが、同時にヨ ーネット接続、家庭内での PC 利用の面で、リア
ーロッパを中心とする文化と思想に大きな影響を ルタイムよりも負担が少ない点を考慮したためで
与えてきた。この授業では、その中でも、特に多く ある。また、リアクション・ペーパーや授業前課題
の解釈がなされてきた創世記 1-11 章について学 を LMS 上で提出するように変更した。
ぶ。この箇所には、聖書の世界観、人間観、神観な
どが見られる。これらの物語についての基礎的な 3.学生の反応と今後の課題・可能性
学問的知識と聖書解釈の多様性について学修する 授業前課題について、「授業前に自分で内容を
ことがこの授業の目標である。 読む・興味や疑問をリスト化してみるということ
講義内容:この授業では、創世記 1-11 章に記さ は授業を受ける上で自分の興味のある箇所やわか
れる物語について学ぶ。その際に、絵画などの視 らないところが目に見えてわかったのでやってよ
覚資料も活用しながら、1)これまでのユダヤ教・ かった」という好意的な意見もあったが、オンラ
キリスト教での解釈、2)近代聖書学の学問的な イン授業で他の授業でも通常以上に多くの課題が
成果と、3)現代の解釈の多様性について、説明し 出たので大変であったという意見も多数あった。
ていく。 オンラインを問わず、授業冒頭でリアクション・
成績評価の方法:学期末レポート 60% 平常点 ペーパーに対しての授業担当者からの応答をでき
(リアクション・ペーパー、平常リポートとして るだけ行うようにしているが、特にオンラインで
授業前課題)40% (以上シラバスより) 他の学生の様子が分からないため、「オンライン
授業時間外(予習・復習等)の学習:授業前課題と 授業でも孤独を感じなかった」、
「他の受講生のリ
して、事前に指定した聖書箇所を読み、疑問点や アクション・ペーパーが紹介される時間をとても
コメントをまとめて A4 で 1 枚を超えるものを提 楽しみにしていた」、
「他の人が疑問に思った事が
出するように求めた。 共有できる」、
「一緒に授業を受けているという実
感が持てた」等、肯定的な意見を学生から受けた。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 作成したパワーポイントに沿って授業担当者一
づいて変更し実施した授業内容 人で授業を進めるため、関連する話題へ「脱線」
⑴授業開始を 4 月 30 日まで延期、⑵授業回数を (フリートーク)するのが難しく、学生の反応や
2 回削減(削減に伴う授業内容の変更に関してシ 興味などが分からないため例年よりも少なくなっ
ラバスでの変更は不要;授業時に授業担当者が学 たが、そのような「脱線」を期待しているとの意見
生に説明すること)、⑶形式として①一方向の動 も複数見られた。また、最終回のリアクション・ペ
画配信(リアルタイム、オンデマンド、復習用録画 ーパーで、ごく少数の学生から時間短縮のために
を含む)、②オンライン演習形式(双方向)、③オ 倍速で受講したという申告もあった。
ンライン課題等形式、の 3 つの方法から選択し、

53
共立女子大学「漢文学概論A」(2~4年生対象) つけて赤色太線で囲った中に今回の学修内容を記
授業実践報告 した。このような構成をとることで、学修目標→
岩田久美加 学修→まとめが明確化され、復習にも役立ったよ
うだ。また、文字は、縦書き教科書体 12 ポイント
1.この講義は、漢文をよむために、中国の歴史 黒文字を基本としたが、赤・青・緑の色や太字にす
や、漢字・漢文・漢文訓読についての基礎を学ぶ授 ることで重要度を分けたり、黄色い蛍光ペンを文
業である。漢字とそれによる書記の成立、漢文訓 字にかぶせて強調したり、重要な新出タームにつ
読とその歴史を確認した後に、故事成語に関する いては、赤色ポップ体 14 ポイントにして注意を喚
文章から漢土由来の知識が日本文化に与える影響 起した。重要事項のまとめについては、色付き線
を知り、『論語』や『韓非子』などを読みながら諸 で囲い、その中にも波線や四角囲いを用いてキー
子百家について学んだ後に、漢土における史書の ワードを一目でわかるようにし、付随する注的な
意味を『史記』を読解することを通して知るとい 事柄やおまけの知識については、緑色の吹き出し
う内容のシラバスであった。また、前期末試験 で囲い、ポイントも9ポイントで記し、紙面にメ
60%、三回の小テスト 30%、コメントペーパー リハリをつけた。文体は、「~ですね」など話し言
10%の割合で成績を評価する予定であった。 葉で基本的に記し、文末に!や☆、♪などを付し
て SNS で友人とやり取りしているような気軽さを
2.大学からは前期は全 14 回(うち一回は試験)と 感じさせ、「漢文=難しい」という先入観を払拭す
し、遠隔授業を行い、学内 LMS によるオンデマン るようにした。内容的には、史書については(時間
ド型授業を基本とし、一回の授業で、①学修内容 の関係から)扱えず、代わりに故事成語「許由巣父」
の指示と課題の提示→②学生の提出課題よる学修 とそれが画題となり、多くの作品が生まれ、さら
状況の把握(これに基づき出欠管理を教員が行う) に「許由巣父図」のパロディまで江戸時代には作
→③課題に関する学生へのフィードバック(個別 られるようになった流れを、東京国立博物館の名
でも全体に対してでもどちらでも良い)の三点セ 品ギャラリーなどリンクフリーの絵画を見るよう
ットを毎回行うよう求められた。さらに、初回授 に指示しながら説明した。
業時に担当教員の顔写真入り自己紹介の配信を推 講義に関する簡単な質問と講義を受けて疑問に
奨された。また、課題は一回の配信につき1ファ 思ったことや考えたことを記すことを毎回の課題
イル 50MB まで、それ以上の場合は、共有クラウ とし、配信から72時間後に学内 LMS で提出する
ドを使用するよう求められた。 ことを求め、その約 48 時間後に、初回を含む三回
上記のような大学からの要請によって、第 1 回 分は全員に対して個別に、その他十回分は全体に
は、音声付き PPT の配信を行ったが、89 人の受 対しててのコメントとしてフィードバックを配信
講生中3名ほどから音声が聞こえないと連絡をう した。成績評価は、前期末課題の提出60%、ミニ
けたため第 2 回からは PDF ファイルによる文字 レポート(400 字以上)2 回 30%、毎回のコメント
のみの配信にした。 10%とした。
PDF ファイルは、学生の能力と興味を勘案し、
一回の講義で、A4で3~4枚を目安とし、冒頭 3.学生からはは、課題提出時に、課題の量がちょ
のオレンジ色の破線の囲みの中に、前回の簡単な うど良いとのコメントが何回も寄せられた。ただ、
学修内容のまとめと今回の学修により身につける フィードバックに関しては、全員への個別対応を、
べき目標を簡単に示して、ファイルの最後に今回 どれ程の頻度で行えば教員・学生相互が満足でき
のポイントとして赤色の黒板マークのアイコンを るのかを検討する必要があると考える。

54
共立女子大学大学院「日本文学基礎研究(古代文 らA4で3~4枚を目安とし、冒頭のオレンジ色
学)(院1・2年生対象)授業実践報告 の破線の囲みの中に、前回の簡単な学修内容のま
岩田久美加 とめと今回の学修により身につけるべき目標を簡
単に示して、ファイルの最後に今回のポイントと
1.本講義の目的は、『万葉集』におさめられてい して赤色の黒板マークのアイコンをつけて赤色太
る作品をよみ、それを通して、和歌と歌謡の違い、 線で囲った中に今回の学修内容のまとめをした。
古典文学をよむための基礎能力などを身につける このような構成をとることで、学修目標→学修→
ことである。具体的には、『万葉集』の概略、研究 まとめが明確化され、復習にも役立ったようだ。
のための基本図書やインターネットでの資料の集 また、文字は、縦書き教科書体 11 ポイント黒文字
め方、研究方法や研究史を学んだ後に、受講者の を基本としたが、赤・青・緑の色や太字にすること
興味にあわせて自ら問題を設定し、研究史のまと で重要度を分け、黄色い蛍光ペンを文字にかぶせ
めや注釈作業と並行して用例分析を行い、発表を て強調した。重要事項のまとめについては、色付
し、それに基づくレポート作成を行う。発表とレ き線で囲い、その中にも波線や四角囲いを用いて
ポートをそれぞれ 40%ずつ、その他平常点(ディス キーワードを一目でわかるようにし、付随する注
カッション時の発言など)20%で成績評価を出す 的な事柄やおまけの知識については、緑色の吹き
予定である。なお、この講義は通年科目であり、ま 出しで囲い、ポイントも9ポイントで記し、紙面
だ成績評価は出していない。 にメリハリをつけた。文体は、「~ですね」など話
し言葉で基本的に記し、文末に!や☆、♪などを
2.大学からは前期は全 14 回とし、大学院の授業 付して SNS で友人とやり取りしているような気軽
であるので、受講生全員のインターネット環境な さを感じさせ、受講生の不安を取り除こうとした。
どについての状況を教員が確認し、受講生も希望 内容的には、『万葉集』についての概略、場による
すれば、同時双方向型の授業にすることは可能で うたの理解の仕方を具体的に示すまではシラバス
あるが、学内 LMS によるオンデマンド型授業を基 通りだが、注釈書や辞書については、後期に受講
本とし、一回の授業で、①学修内容の指示と課題 生自身が発表をする時のために配架場所と番号を
の提示→②学生の提出課題の採点やチェックによ 調べることを課題とし、フィードバックで各書物
る学修状況の把握(これに基づき出欠管理を教員 の特徴を説明した。また、『校本萬葉集』について
が行う)→③課題に関する学生へのフィードバッ は、実際に教員が演習資料を作り、コピーを資料
ク(個別でも全体に対してでもどちらでも良い)の に貼り付け、文字の異同の見方などを赤丸で囲ん
三点セットを毎回行うよう求められた。さらに、 で一つずつ説明を記していった。さらに、用例の
初回授業、学生に担当教員の顔写真入り自己紹介 検索のため、自宅から「日本文学 Web 図書館」に
の配信を推奨された。また、課題は一回の配信に アクセスできるように申請し、使えるようにする
つき1ファイル 50MB まで、それ以上の場合は、 ことを夏休みの課題の一つとした。なお、課題に
共有クラウドを使用するよう求められた。 対するフィードバックは個別に行った。
上記のような要請を受け、受講生環境を確認し
たところ、周辺機器が整っていなかったため、オ 3.対面で本を示しながら話せば1分で終わるこ
ンデマンド型による PDF ファイル配信の授業を とも、画像を示しながら文字で説明すると非常に
行った。 長くなり、一回の講義で教授できる知識の少なさ
PDF ファイルは、一回の講義で、初めて『万葉 は減ってしまう。また、ディスカッションが紙面
集』について学ぶ学生のキャパシティとの関係か 上であるため議論が深まりにくいのも問題である。

55
日本大学「日本政治思想史Ⅰ」(2~4 年生対象) に載せ、コメントと授業の補足を行なった。自由
授業実践報告 記述欄は授業以外のボヤキなども可とし、すべて
上地聡子 スライドに掲載して適宜コメントした。前半3本
の動画で応答をし、残り 2 本で授業を進めた。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 授業内課題の回答の共有と細かく応答すること
容、成績評価の方法 で、教員と学生のコミュニケーション補完と学生
本教科は「西洋の衝撃」の前後の変化、近代国家 間の知的刺激を期待した。また前回の授業に対す
の樹立と国民の創出、日本の東アジアや世界に対 る質問に答え補足する時間を長くとることにより
する認識の変化の3点を念頭に近代国家「日本」 学修効果の底上げを狙った。さらに授業以外の私
が樹立する過程の諸思想を概観する予定であった。 的なつぶやきの共有は、コロナ禍によって深刻な
具体的には 1.華夷秩序と万国公法の世界観の違い、 ストレスを感じているであろう学生の息抜きと、
2.西洋接触がもたらした「日本」の発見と中国観の 情報と共感の交換を意図した。
転換、3.明治初期の啓蒙思想と国民創出、4.自由民
権運動の位置づけの 4 テーマに基づいた講義を予 3.学生の反応と今後の課題・可能性
定していた。 自由記述は任意だったが毎回半数以上の学生が
成績評価はレビューシートで測る授業への参画 コメントや質問を書いて来た。最終回で授業の良
度を 30%、事前に提示した課題についての 1200 かった点と改善点を聞いたところレビューシート
字程度の記述試験を 70%としていた。 の共有が半数以上から好評であった。課題の回答
の共有は多様な意見に接する機会となりよい刺激
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 になったようであった。アルバイトや就職活動へ
づいて変更し実施した授業内容 の不安など日常が垣間見える自由記述には共感と
大学からは(1)学修効果を実感できる授業デザ 同意が寄せられた。ノートの取り方や時間管理の
イン、(2)学生の学修環境への最大限の配慮、(3)学 方法といった質問に対して、次の週に他の学生か
生の不安軽減の三原則が示された。 らアドバイスが寄せられることもあった。
これを受けて変更後の授業は、パワーポイント 期末レポートについても複数のレビューシート
に解説を加えた動画を Zoom で作成して YouTube から、積極的に論文を検索し学術的な内容と格闘
で限定公開し(13 分×5 本)、スライドの PDF を している様子が窺われた。提出物もこうした論文
レジュメとして配布する形にした。毎回 150 字程 を積極的に使用する傾向がみられた。
度の授業内課題を Google Form で提出させ出席確 一方、最終回のアンケートでは授業部分を増や
認とした。試験は期末レポート(2000 字以上)に して欲しいという声が一割弱を占めた。実際、最
切り換え、余裕を持って自主学修ができるよう第 後の自由民権運動は講義できなかった。また 1、2
1 回目で課題と締切日を発表した。レポートでは 例だが私的な話は無用という意見も寄せられた。
教科書以外に CiNii などオンラインで取得できる コロナ前までは雑談はあまりしておらず、今回実
学術論文を 1 本以上引用することを求めた。 験的に取り入れてみたのだが、今後オンラインが
成績評価は臨時措置としてレビューシート提出 常態となった場合はこうした私的な雑談や応答の
による授業への参画度を 60%に引き上げ、期末レ 扱い方を再検討する必要があるかもしれない。
ポートを 40%に下げた。
前期は学生の不安軽減を最優先させた。学生か
らの課題の回答や意見を出来るだけ多くスライド

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金城学院大学国際情報学部「WLI A」(1 年生)授 た。これらの手法の組み合わせも可能である。
業実践報告 この授業は従来、レポートの構想を少人数グル
大嶋えり子 ープでコメントし合う、レポート②に使用する書
籍を図書館で選定する、書籍の内容のプレゼンテ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ーションを行うなどといったアクティブラーニン
容、成績評価の方法 グの手法を多用してきたため、遠隔授業を実施す
12 のクラスで、横並びで行う一年生の必修授業 る上で多くの工夫が必要となった。最初の 3 回分
である。少人数制であり、今年度は 13 人の履修者 授業はコーディネーターの教員がコンテンツを作
が割り振られた。 成し、全クラスで同じ内容のオンデマンド方式の
大学における学修のための基本的スキルを習得 授業となった。すなわち、課題図書を含む資料の
し、学習意欲を向上させることにより、高校での 提示と動画の配信である。これらを基にレポート
学びから大学での学びへの移行の円滑化を目指す ①を執筆してもらった。レポート②に関してはそ
授業である。基本的スキルには(1)
「読む、書く、 れぞれの教員の裁量となり、私は引き続きオンデ
話す」などの日本語運用能力、(2)情報収集・調 マンド方式を採用した。履修者が書籍を選定する
査の技法、(3)発想法・思考法、(4)さまざま 方法から教員による 2 本の論考の選定に切り替え、
なレポート作成能力、
(5)タイピング技能を含む 資料として提示した。併せて、動画を配信し、レポ
コンピュータ活用のための基礎技能、などが含ま ート②の作成に必要な作業および課題の説明を行
れる。またこれらの習得のために、授業のなかで った。対面授業で使用してきたレポート作成用の
はグループワーク、プレゼンテーション、ディス ワークシートへの記入や草稿の提出を求めた。通
カッションなどいわゆるアクティブラーニングの 常では、草稿の段階でグループワークによりコメ
手法を多用する。 ントを出し合ってもらっていたが、今回は 4~5 人
授業の全体を通じて「協調型リーダーシップ」 のグループを作り、LMS 上で相互閲覧できるよう
を身につけることの意味、意義についても考える に設定した草稿にコメントをつけ合うよう指示し
こととしており、「WLI」が Women's Leadership た。他の履修者からのコメントに基づいてレポー
Initiative の頭文字である所以である。 トの最終版を提出してもらった。草稿および最終
評価の内訳はコメントシート(各回 4%×15) 版の提出後に総評をテキストで配信した。
60%、レポート①10%、レポート②30%となってい
る。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
レポート①は全クラス共通の課題図書を読み、 毎週異なる作業があり、一年生の履修者にとっ
レポートを作成するという課題であり、レポート ては大変だったかと思うが、すべての課題を履修
②は各クラスでテーマを決め、履修者が図書館で 者全員が期限内に提出していた。また、わからな
関連する書籍を探し、読み、レポートを作成する いことがあればメールや LMS の掲示板で連絡す
という課題である。 るように指示していたため、複数の学生が適切に
質問をしてきた。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 また、草稿の相互コメントでは、多く履修者が
づいて変更し実施した授業内容 他の履修者の草稿の良い点と改善できる点を、内
Zoom や Google Meet を使用したリアルタイム 容および形式の両観点から指摘しており、レポー
の授業、動画配信、資料と音声ファイルの組み合 ト提出者にとって意味のあるものとなっていた。
わせ、あるいは資料のみアップロードが認められ

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東京都立大学「西洋史学演習Ⅰ」
(2~4 年生対象) 読箇所を指摘し、より正しい内容理解に導いてゆ
授業実践報告 く。参加者が多く想定以上のペースで読み進める
大貫俊夫 ことができたため、区切りのいいところで内容に
ついて議論する回を設けた。対面であればその場
1.本授業科目は、西洋中世史に関する英語文献 で訳文を読み上げてもらい検討するところだが、
の講読を行い、基礎的な知識と研究手法を理解す Scrapbox の利用と事前検討によりそれは意識的に
ることを目的としている。 回避した。これは上記(1)と深く関わるが、整理さ
れていない訳文をオンラインで聴き続けるのは大
2.本学では新学期の授業開始がゴールデンウィ きなストレスだ、と考えたためである。
ーク明けに延期され、新学期の授業運営について、 最後に(3)について。いずれコロナ禍は沈静化し、
私たち教員には 1 ヶ月の猶予が与えられた。この 学生にとってこの異常事態を振り返るときが来る
間に大学は zoom と包括契約を結び、リアルタイ だろう。その際「コロナの時、私たちはゼミでこれ
ムの授業が可能となった。私はオンライン授業に をやっていたのだな」と言って手に取れる、具体
なることがわかると、本授業科目について 3 つの 的な成果物があったほうがいいと考えた。そこで、
方針を立てた。それは以下の通りである。 テキストの版元と交渉して著作権の問題をクリア
(1) 平時ではないため学生に負担をかけない し、その第 1 章の翻訳を学術雑誌に投稿すること
(2) オンラインでコミュニケーションを円滑に行 にした。zoom でのやりとりだけでは、どうしても
うため Slack と Scrapbox を活用する ゼミの共同体性は得にくいだろう。雑誌(ないし
(3) 最終成果を見える形でアウトプットする リポジトリ上の PDF ファイル)に掲載された翻訳
まず(1)についてだが、学生はただでさえ重いスト が確かな「記憶の拠り所」となり、2020 年度の学
レスを抱えており、多くを求めすぎてはいけない。 びがゼミ生の間で共通に想起される。これを実現
学生に多くの課題を出すのは適切ではなく、最低 することが、この緊急事態において私が教育面で
限学びを共にできたら十分である、と考えた。(2) できる最善のことだと考えた。その上で、後期中
については、Slack はすでに普及しておりその有用 世に関して新たな知見を切りひらいた本書の学術
性は共有されていると思う。一方、授業中、あるい 的意義が日本で共有されれば、これこそ一挙両得
はそれ以外の時間に訳文の検討を行うために、参 なのではないだろうか。
加者によるテキストの共同編集が必要となる。そ
のためのツールはいくつもあるが、Scrapbox がそ 3.2020 年度後期はいわゆるハイブリッド型にし、
の柔軟性ゆえに最適と判断した。ここに授業回ご zoom を利用しつつ教室に学生を受け入れる環境
とにページを作成し、情報を集約することにした。 を整えた(参考)。一層活発な議論ができるよう、
授業の流れは次の通りである。テキストとして 柔軟な授業運営を心がけたい。
ブルース・キャンベルの著作 The Great Transition
(『大遷移』)を選んだ。14 世紀ヨーロッパの黒
死病の時代的背景を巨視的に描き出した研究で、
時宜に適ったものである。ゼミの参加者 15 人全員
に毎回 1~2 段落分の英文を割り当て、授業前に
Scrapbox 上に書き込んでもらった。その際、ペア
を組んだ学生と互いの英文をチェックし、訳文を
練り上げてゆく。zoom で実施する授業では私が誤

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山形県立米沢女子短期大学「国文学演習四」(2 年 にした設問に受講者全員が回答し、解説部分を教
生対象)授業実践報告 員が担当する形に授業内容を変更した。2 週でテ
岡英里奈 キスト 1 章分を扱うことにし、1 週目は設問への
回答、2 週目は解説動画の視聴と、それを踏まえた
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 上での議論を行うことにした。
容、成績評価の方法 設問への回答は、Google Forms(のち Microsoft
当該科目は、日本近代文学を専攻する短大 2 年 Forms に変更)を利用し、スマートフォンでも回答
生向けの演習科目であり、シラバス段階での概要 を行えるようにした。手書きしたものを紙媒体や
と目的は、「文学テクストを分析的に読むための 画像で提出という方法もあったが、データの集計
トレーニングを演習形式で行い、レポートや卒業 や共有において、より利便性の高い方法を選択し
論文を書く際に必要な力を磨く」ことであった。 た。解説動画は、PPT に音声を付けた動画を
講義内容は、小平麻衣子『小説は、わかってくれ YouTube で配信した。以上のサイトの URL は、
ばおもしろい』(慶應義塾大学出版会、2019)の LINE オープンチャットで通知した。グループ機能
ブックレポートを予定していた。本書は、文学テ ではなくオープンチャットを利用した理由は、後
クストの分析的な読解方法を、
「ガイド」と呼ばれ 者は個人アカウントを通知しなくても参加でき、
る問題を解くことで学ぶものとなっており、巻末 受講者のプライバシーの保護に配慮したためであ
には対象テクストの全文が収録されている。シラ る。動画視聴後の議論は、上記のチャット上に、授
バス段階では、数名の担当者がその「ガイド」に事 業日ごとに「ノート」を作成し、コメント欄に質問
前に回答し、授業時には別の担当者が小平氏の解 や感想を書き込んでもらう形で行った。
説をまとめて報告、その後全体で対象テクストの
読解について議論する予定であった。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
成績評価の方法については、授業中の報告内容 学生の反応は、課題提出と動画視聴については
および質疑などの発言で 50%、年度末のレポート 特に不満を聞かなかったが、チャットによる議論
課題 50%の割合で評価を行うとしていた。 については、対話が深まりにくいとの声があった。
確かにチャット上の議論では、受講者同士ではな
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 く、教員と各受講者とのやりとりになってしまい、
づいて変更し実施した授業内容 そのやりとりも1往復で終わってしまうことが多
大学では Microsoft Teams の環境が整えられた かった。演習科目において重要な議論という点で
が、当該科目は全学に先立ち授業を開始する必要 は、課題の残るものであった。
があったため、開始時点では学生への利用方法の しかし、授業内容や対象テクストへの考察を、
周知が充分でなかった。また、授業方法の指定は 対面時よりも時間をかけて文章化する中で、受講
なかったが、受講生の通信・受講環境に配慮する 者のコメントの質や表現力が向上していったとい
よう注意があり、事前調査により、受講者全体の う実感もあった。コメントのデータ共有は、対面
うち約半数がパソコン未所有、約3割が個室での 授業再開後も継続を希望する声があり、受講者に
受講が困難ということがわかった。そのためスマ とっても、文章を通した学生同士の交流や刺激の
ートフォンで受講可能な、課題提出とオンデマン 与え合いの手応えがあったといえる。対面に比べ
ド配信を中心とした授業を実施することにした。 「時差」のある形ではあったが、以上の方法は受
実施に際し、
「ガイド」への回答と解説の報告を 講者の思考力や文章表現力という点において、一
受講者が分担して行う形から、
「ガイド」を下敷き 定の教育的効果を果たせたのではないかと考える。

59
宮城学院女子大学「日本語検定対策」(2年生対 2.大学の遠隔授業の方針として、学生が扱いな
象)授業実践報告 れている UNIPA の利用を原則とし、必要に応じ
笠間はるな て Teams を利用すること、リアルタイム型授業は
最小限とし教材配布型もしくはオンデマンド型を
1.「日本語検定対策」は、特定非営利活動法人日 中心とすることが要請された。UNIPA は添付可能
本語検定委員会が主催する「日本語検定」受検に 容量が少ないため、動画資料を提示する本講義で
向け、総合的な日本語の運用スキルを学習し問題 は UNIPA と Teams を併用することとした。学生
演習を重ねることを目的とした授業である。宮城 の出席・課題管理などには UNIPA を、資料の配
学院女子大学では、学生の日本語基礎能力・コミ 信には UNIPA と Teams を併用した。
ュニケーション能力の向上をめざし、「日本語検 UNIPA を中心とする方針は学生のネットワー
定」2級・3級の団体受検を学内で実施している。 ク環境のばらつきを懸念したものであったが、実
本年は受検予定の約90名の日本人学生(45人 際に Teams にアップした動画がダウンロードで
×2クラス)が本講義を受講した。 きない学生やスマートフォンでしか動画が視聴で
授業は、検定で問われる日本語の文法や語彙に きないという学生も一定数いたようであった。
ついての講義と問題解説を主な内容とした。宮城 Teams の利用に慣れない学生のために、講義の動
学院女子大学 UniversalPassport(以下 UNIPA)と 画は Youtube にも公開制限つきで配信し、どちら
MicrosoftTeams を使用し、パワーポイントのスラ からも視聴できるようにした。
イド画面に音声をあてた動画の配信を行うオンデ
マンド型授業を基本とした。講義レジュメと動画 3.総合的な授業評価アンケートなどは実施しな
資料を毎週提示し、動画視聴後に理解度・出席確 かったが、成績評価テストの結果などからは、対
認のための確認問題の解答を UNIPA から送信し 面授業と大きく変わらない理解度に達しているこ
てもらうという形式で1回の授業を構成した。ま とが見て取れた。検定のための自主的な演習が主
た、出席確認用の課題だけでは検定対策として十 体となる授業であるため、自分の得意・不得意に
分な量の問題演習がこなせないため、提出用の課 あわせて学習の時間を配分しやすい遠隔授業に利
題とは別途、自己採点形式の自主学習用のプリン 便性を感じる学生も多かったようである。
トを UNIPA で毎回配信し、不明点があった場合 一方、学生へのフィードバックが対面授業に比
には随時 UNIPA 上で質問を受け付けることとし べて行いづらい点にオンライン授業の困難を感じ
た。 た。例年の対面授業では、質問欄を設けた課題プ
成績評価は、第14回講義においてテストを実 リントを毎回回収・返却していたが、オンライン
施し、毎回の課題提出状況とテストの点数を総合 上で個別に返却作業をすることは負担が大きいと
して行った(課題 30%、テスト 70%)。テストは、 判断し、今回は課題の返却を行わず、レスポンス
問題プリントと解答用紙を UNIPA で配信し、学 は質問があった場合のみとした。その結果、例年
生に解答用紙(Exel 形式)を UNIPA の課題提出 に比べ質問数が明らかに少なく、学生の理解度が
フォームから添付送信させ回収した。なお、教室 不透明なまま講義を進めざるをえなかった。リア
でのテストのように辞書類やスマートフォンの持 ルタイムでのやりとりを想定しない形式のオンラ
ち込みを制限することが叶わないため、学生には イン授業でいかに学生とのこまめな意見交換をは
教科書や講義プリント、辞書などで調べたうえで かるかが大きな課題であると感じた。
解答してよいと指示を出した。

60
愛知淑徳大学「基礎購読」(1年生対象)授業実践 いて全クラス共通のものが用意された
報告 私が行ったのは、上記の教材に基づいた講義動
加島正浩 画を Youtube に限定公開でアップロードすること
と、学生が Forms に提出した課題を確認すること、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 質問があればその都度答えることであった。
容、成績評価の方法 講義動画の撮影においては家庭用のスタッキン
「基礎購読」は愛知淑徳大学創造表現学部創作 グホワイトボードを用い、対面授業時と同様に講
表現専攻の一年次に履修する必修科目である。学 師の顔が見え、板書が行えるよう試みた。問題へ
部教授の永井聖剛先生が授業のコーディネートを の解答と課題への取り組みが三〇分程度かかるこ
務められ、今年度は永井先生を含む三名の担当者 とを踏まえ、講義動画は六〇分程度に収める必要
で、六クラスを開講。加島は四クラスを担当した。 があったため、板書は撮影前に行い、ノートを取
授業は、問題演習形式で「大学生にとって必要 る学生には動画を止めて書き写すよう指示した。
不可欠な『読解力』『思考の方法』を身につけるた 六〇分の動画を一度に視聴するのは、学生に負
めに」評論文の読み解き方を講義する。評論文は、 担であると考え、一本の動画が極力二五分を越え
竹内啓『近代合理主義の光と影』・岡真理「文化が ないように毎回三~四本に分割し、合計で六〇分
違うとは何を意味するのか?」・岩井克人『ヴェニ 程度になるよう試みた。一本目の動画で「キーワ
スの商人の資本論』などの一部を用い、心身二元 ード」(近代合理主義、表象…)の説明、二~三本
論・近代合理主義・文化相対主義・資本主義・グロ 目の動画で、本文読解・解法の説明、最後の動画
ーバリゼーション・表象などの基礎概念を理解さ で、本文を読んだうえで発展的に考えてほしい内
せることを目的とする。 容(マイノリティ差別と資本主義の関係、原発は
成績は、授業後に配布プリントやノートを毎回 本当に必要なのか?など)を講義した。結果板書
回収し、授業への取り組みを評価することを中心 も動画の分割に合わせて、三~四種類示すことが
に、中間・最終回に行う二回のテストの成績を加 でき、小さなホワイドボードでも、対面授業と同
味し、判定している。 程度の板書を行うことができた。

2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 3.学生の反応と今後の課題・可能性
づいて変更し実施した授業内容 最初は講師が動画での授業に不慣れなこともあ
今年度は、コーディネーターが構築した全クラ り、Teams のチャット機能などでの質問のやり取
ス共通のフォーマットを基に遠隔授業を行うこと りもあったが、学生が真面目なこともあり、最終
となった。また環境面では、Microsoft Teams で 的には例年と変わらない反応・成績であった。動
各クラスごとに連絡できる状況が整えられた。そ 画を分割したことには「集中力が持続しやすい」
のうえでプリントやノートを回収する代わりに、 「話題の切り替わりで動画が切り替わるので、気
授業内容を確認する小テスト(授業への感想・質 持ちを切り替えやすい」など肯定的な感想が多か
問も含む)と記述問題の解答を撮影した写真をア った。ただし、家庭用ホワイドボードとはいえ、パ
ップロードできる環境が Microsoft Forms を用い ソコン内蔵のカメラでは全体を映しにくく、低画
て毎授業ごとに用意された。Forms への課題提出 質でもあるため、外付けの Web カメラも購入した。
をもって出席とみなし、提出課題への評価をもっ 三〇〇〇円程度のものだが、映る範囲が広がり、
て授業への取り組みの評価とすることとなった。 画質も向上した。安いカメラでも動画の質は明ら
中間・最終回に行う二回のテストも Forms を用 かに向上するため、導入をお勧めしたい。

61
玉川大学「Project Management Workshop」(4 年 ③作品についてグループ内で議論したこと
生対象)授業実践報告 ④クラスメートへの質問(この作品についてクラ
片山奈緒美 スメートに質問したいこと)
担当グループは上記の内容を掲示板に報告した。
1.本講座は 2 コマ連続で 15 週間、合計 30 コマ ④については講師が Google Form で全履修者から
のグループワーク(以下、GW)を主体にしたワー 回答を回収し、質問ごとに掲示板の各作品のスレ
クショップである。15 週の前半で課題図書を読ん ッドに転載した。また、この Google Form の提出
でグループごとに担当箇所について発表、教室全 で授業に「出席」したとみなした。
体で議論し、それをもとに後半はグループごとに これにより、掲示板を介して担当グループが授
多文化・異文化・多様性をテーマにしたイベント 業テーマを意識しながら作品についての報告、他
を企画・発表した。 の履修者との意見交換が可能となった。報告や質
成績評価は授業における取り組み(GW による 問への回答からは作中に描かれた人種やジェンダ
発表や貢献度など)40%、提出物 20%、期末レポ ー、ステレオタイプ、家族内の問題などについて
ート 40%で評価を行うものとした。 グループ内で議論し、自分なりに考えたようすが
観察された。
2.教員にはオンライン会議アプリのアカウント 学期後半は Zoom を用いた双方向授業と授業時
が配付されると同時に既存の学内オンラインシス 間外に行う GW で構成した。各グループは掲示板
テム(掲示板、メール、資料保管等)の使用が義務 や SNS 等で議論し、毎週の Zoom 授業で GW の
付けられ、開講時には遠隔授業のためのプラット 進捗状況の報告とイベント企画の発表を行った。
フォームが確立されていた。本講座は 2 コマ連続
で授業を行うワークショップという特性から、全 〈15 週の大まかな流れ〉
授業を双方向で行うのは負担が重く、学内オンラ ①オリエンテーション、講義(学内オンラインシ
インシステムの掲示板、Google Form、授業時間外 ステム上で説明および資料配付)
の GW を併用した。 ②~⑦各回、短編小説 2 編についての発表と質疑
授業では 24 名の履修者を 6 グループに分けた。 応答(掲示板、Google Form)
GW による 3 回の発表(課題図書 2 回、イベント ⑧~⑮講義(掲示板)、イベント企画の中間発表、
企画 1 回)は所属グループによる有利不利が生ま 最終発表、まとめ(Zoom)
れにくいよう発表ごとにメンバーの入れ替えを行
った。 3.Google Form での回答提出はアクセスしやす
課題図書のアディーチェ『なにかが首のまわり いと履修者からは好評で、講師としても寄せられ
に』(河出書房)は、アフリカを舞台にした異文化 た回答を Google Spread で一覧できるため、回答
や多様性について考えさせる 12 作品からなる短 内容を把握する際に時間の節約になった。
編集である。まず、2 グループずつ 3 週かけて 6 作 しかし、回答提出が授業出席と記録されるため
品の報告・発表を行い、メンバー入れ替え後に残 に提出が優先され、熟考していないと思われる回
りの 6 作品に取り組んだ。報告・発表内容は以下 答も散見された。遠隔授業で積極的にワークショ
のとおりである。 ップ型授業に参加して自律的に学習を進めてもら
①作品の概要(登場人物、あらすじ) うためには、自律学習を促す仕掛けをさらに工夫
②作品の背景(舞台となった土地や文化の特徴、 する必要があるだろう。
歴史的背景)

62
東北大学「博物館実習Ⅵ」(3 年生対象)授業実践 一方、東北大学で授業管理ツールとして提供して
報告 いる google Classroom は 8/28 に担当教員間で相
加藤諭 談し活用しないこととした。これは本実習が博物
館、史料館、植物園 3 つの施設の連絡が錯綜し、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 学生が混乱するのを避けたためである。
容、成績評価の方法 実習の課題作業の中心は、展示リニューアルの
博物館学芸員資格取得のために必要となる集中 ためのパネル作成と展示資料の選定及びそのキャ
講義授業。博物館の資料・標本類について管理や プションの案出となった。東北大学では 9/7 の本
展示などの作業方法を、東北大学に付設する植物 実習開始時点において、アウトリーチ施設は休館
園、史料館、自然史標本館において実習する。成績 対応中だったが、そもそも史料館本館は天井耐震
評価方法:出席(80%)、受講態度(20%)。 改修工事に伴い、コロナ禍前(前年8月)から休室
中で、2020 年度中の復旧予定であった。そこで本
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 館及び本部棟3魯迅ラウンジの展示ケース毎に担
づいて変更し実施した授業内容 当者を割り振った上で、上記課題を課した。また
東北大学の行動指針(BCP)1下では、感染拡 東北大全構成員は 7 月以降 Office365 を利用出来
大に最大限の配慮をして、対面授業、演習・実習を る環境にあることから、受講生はネット環境が整
制限しつつ、オンライン授業を中心に行うことと えられた本館で PC を持ち込み、Word、Excel で
された(6/19 以降)。本講義では 4/13 文化庁通 作成されたパネル、キャプションのひな型を元に
知「令和2年度における学芸員養成課程に係る博 作業を行った。また基本的に史料館で公開してい
物館実習の実施に当たっての留意事項について」 る資料や写真画像検索はオンライン上で可能とな
を元に「博物館実習Ⅵ(館園実習)の実施方法につ っていた。遠隔、対面両面において、オンライン環
いて」を作成。学生にメールで事前配布した上で、 境を提供し、対面においても、従来実施していた
実習は午前中を遠隔方式(リアルタイム)、午後を 班毎の共同作業を通じたアナログな展示物作成作
東北大学史料館での対面形式と併用で行った。具 業ではなく、個別に課題を割り振り、デジタルデ
体的には以下のような授業進行となった。 ータとしての展示企画案作成を課すなど、実習に
9/7 午前:ガイダンス~アーカイブズと東北大学 おける DX 推進事例となったことが今年度授業の
史料館説明、午後:教員寄贈資料整理作業 特質といえる。
9/8 午前:展示レイアウト計画・魯迅記念展示室紹
介、午後:展示企画案作成(パネル、資料選定) 3.学生の反応と今後の課題・可能性
9/9 午前:東北大学の歴史説明、常設展示変遷紹 遠隔、対面併用した本演習の場合、google Meet
介、午後:展示企画案作成(パネル、資料選定) のチャットやメールなどで質問を寄せる事例はほ
9/10 午前:東北大学キャンパス史説明、午後:展 ぼなく、対面時における個別の質疑応答が主とな
示企画案作成(パネル、資料選定) るなど、学生は教員との対面でのコミュニケーシ
9/11 午前:受講生による展示物プレゼンテーショ ョンを重視する傾向がみられた。また Meet での
ン、午後:展示企画案作成(パネル、資料選定) 学生のプレゼンテーションはネット環境や習熟度
遠隔方式はリアルタイムで google Meet を使用し、 で有意な差異が見られたが、対面での指導で問題
説明資料は全てパワーポイントで作成提示した。 解決可能なことが多かった。遠隔か対面かの二択
また実習で必要な作業データはメールで配布し、 ではなく、併用実施は両面を補完する選択肢の一
提出物もメールに添付してもらうかたちを採った。 つであることが、本事例から明らかとなった。

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名古屋造形大学「美術基礎Ⅱ-A(洋画)」(2年生 ペラの絵具作りを中継し、導入とした。論点とし
対象)授業実践報告 て『古典とデジタル』、『生活と制作』の2つを設
加藤巧 定し、学生は制作テーマと絵画材料との関わりを
意識しながら制作を行った。授業は毎週木曜日1
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 限~4限、計 7 日実施した。授業日の運営例は以
容、成績評価の方法 下である。
授業のテーマ「混合技法による静物画制作によ 1.Zoom 集合・出席管理→2.制作の進捗確認→
り洋画素材の基礎技法を身につける。」 3.制作工程の確認(Zoom レクチャー、実技デモ
授業科目の概要「混合技法において古典絵画の ンストレーション、映像資料・PDF 資料の配布)
歴史と技法など、図版や作例を紹介し、絵画材料 →4.学生は制作のため解散し、筆者は個別の制作
研究を行う。」 に対して適宜 Teams や Zoom を用いて助言を行
授業の達成目標「混合技法による細密制作をと う→5.学生は授業終了時の画像を Teams にアッ
おし、基礎的な下地と絵画材料研究を行う。」 プする。筆者は学生の進捗に応じてコメントや資
成績評価の方法・基準:提出された作品 50%、 料を示す。
実技制作過程での研究態度や方法、造形上の認識 なお、最終日は複数教員で作品のウェブ講評を
度や理解度の度合いを 50%として総合的に評価す 行いまとめとした。
る。
(以上、名古屋造形大学 2020 年度シラバス「美
術基礎Ⅱ-A」より筆者の担当部分「混合技法」に 3.学生の反応と今後の課題・可能性
関連する部分を抜粋) 学生の出席率は十分であり、授業が進むにつれ
て Teams のメッセージ機能を通して教員へ質問
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 する積極性が見られはじめた。また、大学院生も
づいて変更し実施した授業内容 自身の技法の確認や探究を目的として受講し、学
授業の運営管理は Microsoft Teams を使用し、 部生との交流の機会にもなった。ウェブ講評時に
ウェブビデオ会議ツールとして Zoom を使用した。 は、積極的に自作について言語化しようとする学
学生の制作環境が各自の自宅になったことを考慮 生の姿勢も見られた。
し、シラバス内容の「混合技法」から、乾性油を使 実技系の遠隔授業の課題として、材料の可塑性
用しない卵黄のみの「エッグテンペラ技法」に変 に関わる細かい「コツ」が伝達しにくい点が挙げ
更した。家庭内での使用時に危険性と環境負荷の られる。技法の「体験」以上の実践的な内容に踏み
低いものを選定し、以下を送付した。<F6 石膏地 込むには遠隔のみの授業では限界があり、本来自
パネル(制作時に粉塵が発生するため、筆者が事 身の触覚と向き合うことで経験を獲得する性質を
前に制作)、顔料類(黄土、赤土、緑土、ローアン 持つ技法材料の授業が、杓子定規な「レシピの再
バー、ウルトラマリン、アイボリーブラック、チタ 現」に終始してしまうことには注意を払わなけれ
ン白)、筆類(コリンスキー・ラウンド 2、4、6 ばならないだろう。
号)、A4 ハードケース(絵具の練り板として)、 本授業では「レクチャー、デモンストレーショ
プラスチックペインティングナイフ、課題文>な ン、制作」を組み合わせた授業運営を試みた。制作
お、顔料を定着させるための鶏卵は学生が各自準 系の授業における対面の価値を認めつつ、技法の
備した。 背景の認識に必要な情報をウェブツールを通じて
授業初日は技法に関するウェブ講義と、筆者の 補完することは、これまでより多角的な技法理解
手元を映す定点ウェブカメラを用いてエッグテン の一案となるだろう。

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帝塚山学院大学「絵本論」(1-4年生対象)授業 説。動画は YouTube に、音声ファイルはクラウド
実践報告 にアップした。これら副教材やワークシート
神村朋佳 (Google フォーム)へのリンクはすべてテキスト
教材の中に貼り込み、LMS には基本のテキスト教
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 材のリンクのみを掲示することとした。とにかく
容、成績評価の方法 LMS を開きさえすればワンクリック、ワンストッ
本講義の目的は、言語(聴覚)的要素と視覚的要 プで学習できるようにすることで、受講意欲の低
素を駆使した絵本ならではの表現を読み解き、読 下を極力抑え、ミスや不注意による欠席やロスを
み聞かせの対象、場面、方法など、絵本の活用の実 防ぎたいと考えた。
際を知り、児童文化財としての絵本を総合的、多 期間の短縮により内容の削減は免れないが、そ
角的に理解することである。 の一方で教材に関する特例、絵本の二次使用とい
評価は授業中の取り組み 30%、提出物 20%、実 った著作権のトピックを新たに取り入れた。取り
習・実践的活動(GW 含)25%、期末課題(体験 上げる絵本の選択に現下の状況が多分に影響した
記録、レポート)25%としていた。 こともあり、単なる削減ではなく、遠隔ならでは
当初計画では、絵本の読解とともに、多種多様な の今にふさわしい内容に精選されたといえる。
絵本を知り、読んでもらい読んであげる体験を通 毎回ワークシートを課すことで予復習時間の確
して、児童文化財としての絵本、他者と時と場を 保、双方向性の担保とし、授業中の取り組み、実
共にするコミュニケーションツールとしての絵本 習・実践的活動にあてていた評価割合をそのまま
について理解することを重視していた。 ワークシートの評価に振り替えた。

2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 3.学生の反応と今後の課題・可能性
づいて変更し実施した授業内容 語りかけるように執筆したテキスト、ワンクリ
遠隔での実施となり、授業回数は 13 回に短縮さ ック・ワンストップの教材設計、動画や画像をふ
れた。受講者の目の前で絵本を読み聞かせること んだんに取り入れた教材、なによりも絵本そのも
はもちろん、書店や公共図書館の利用も望めず、 のの魅力が功を奏して、まず、他の授業とは違う、
当初掲げていた多種多様な絵本と出会う、読んで とても取り組みやすいとの好感触を得た。チャッ
もらい読んであげる体験、絵本を通じた対話とい トや掲示板の活用、受講状況に即した課題量の柔
った項目はすべて空文化した。 軟な調整も好意的に受け止められた。
非常勤でもあり、諸条件を勘案して、LMS を利 絵本のビデオを視聴→感想提出→感想の紹介→
用するオンデマンド型とした。そのうえで失われ 解説という遠隔ゆえのサイクルが予期せぬ反転授
る体験を埋め合わせ、対面と同等レベルの絵本受 業となった。毎回、生き生きとした言葉で綴られ
容を実現するには何をどう組み合わせるか。IT に た感想が寄せられ、互いの読みをシェアする学び
疎く、機器や設備も整わないなかで何ができるか。 あいが徐々に生まれたことは望外の収穫であった。
ストレスフルな状況下にある学生にも、LMS にも、 周りの目を気にせず学べるメリット、教材やビデ
余計な負荷をかけない方式は。 オをくり返しじっくり学ぶ学生の存在が、個々の
考え抜いたあげく、基本は文字ベースのテキス 絵本との対話を豊かにし、それが対面とはまた別
ト教材(Google ドキュメント)とした。絵本の読 の深い学びを実現したといえる。こうした遠隔な
み聞かせは自ら動画を撮影し、昔話の語りは録音。 らではの仕掛けを対面授業にも組み込めないか。
絵本を撮影して取り込んだ画像を用いて ppt で解 新たな可能性や手応えを感じている。

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愛知県立大学「研究各論(アフリカ研究)」(2-3 という。「自由のないライブ型」と、「自由過ぎる
年生対象)授業実践報告 オンデマンド型」。それらを組み合わせれば、両方
亀井伸孝 の長所が活かせるのではないかと考えた。
通常、私の授業では、冒頭に連絡事項、ニュース
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 解説、質問への回答など、ウォーミングアップの
容、成績評価の方法 時間を取ることが多い。その時間帯をライブ型に
本講義は、アフリカ地域に関する基本的な事項 充て、本題の授業をオンデマンド型に充てた。
を網羅的に学ぶ概論である。多彩な事項を解説し、 本講義で用いたツールは、以下の通りである。
覚えさせるという知識提供型の授業であるため、 ・授業前後の連絡、ライブ型授業:Teams
オンラインへの移行は技術的には難しくなかった ・オンデマンド型の動画教材:PowerPoint スライ
が、継続的に学習させるための工夫を必要とした。 ドを用いた授業を Teams で撮影後、Microsoft
評価方法として、当初は筆記試験を予定してい Stream で限定公開し、Teams でリンクを提示
たが、今期はレポートに切り替えることとした。 ・授業後の提出課題:Microsoft Forms で作成し、
Teams における課題欄から回答させる
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
づいて変更し実施した授業内容 3.学生の反応と今後の課題・可能性
大学としては、前期開講を 5 月上旬に延期し、 毎週のライブ型とオンデマンド型の組み合わせ
すべての科目で遠隔授業を実施する方針となった。 授業は、学生においては好評であった。毎週定刻
Microsoft Teams(以下 Teams)を大学共通のイン に受講する習慣を保つことができ、しかも 90 分連
フラとして提供しつつ、Zoom など他のツールを 続の束縛はなく、自由度をもって学習でき、不明
用いることは各教員の裁量とされた。 点は動画を見直すこともできる。きつ過ぎず、ゆ
本講義は、受講者数の多い講義(履修者数約 130 る過ぎずの受講パターンになったと歓迎された。
人)であることに鑑み、混乱を避けるため、大学で 大人数講義ゆえに、口頭での質疑応答はしにく
多く用いられている Teams を中心に、関連する複 かったが、毎週寄せられる質問に、翌週ライブで
数のソフトを併用する形で実施した。 回答することで、理解不足を補うこともできた。
基本的な授業設計は、「ライブ型とオンデマン ライブ型授業を一部でも毎週取り入れたことは、
ド型の組み合わせ」である。毎週定刻に集合し、前 教える側の気持ちにとってもプラスの効果があっ
半をライブ型で配信する。後半は事前収録した動 た。定刻に学生たちと集合し、同じ時間帯を共有
画教材を各自が視聴し、最後に課題を提出する。 することは、教えている手応えを確認する上でも
課題の〆切は 2~4 日後とゆるめに設定し、授業の 重要であり、教員としても励みになった。
半分は好きな時間帯に取り組めるようにした。 90 分以内でこなせない長い動画教材を作って
なぜ組み合わせ型を選択したのか。背景には、 しまったこと、早口になって理解不足を招いたこ
遠隔授業に対する学生の評価と受講姿勢の問題が とは反省材料として残るが、質の低下を招くこと
あった。学生の授業評価をウェブで見ると、ライ なく、授業目的を達成できたと自己評価している。
ブ型では毎週規則正しく受講できるものの、時間 その他の経験談を、勤務先のウェブ広報媒体の
の拘束がきつく、集中力が続かない。オンデマン 記事として公開した。ぜひご参照いただきたい。
ド型では、自由な時間帯に学べ、何度も再生でき 「オンライン授業を準備し続けている教員の日常」
るが、毎週の授業に取り組むリズムを失い、課題 http://kendaikokusai2012.blog.fc2.com/blog-
をため込んでしまって、見ずに終えることもある entry-457.html(2020 年 7 月 19 日)

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名古屋大学「日本近・現代史史料学概説」(3 年生 ロードしている)。ただし、教員の顔を見ず、また
対象)授業実践報告 学生の反応を確かめずに話される 90 分間の講義
河西秀哉 を聞くのは、学生も大変だろうということが予測
された。そこで、思い切って講義時間を減らし、学
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 生自身が手を動かす形式へと変更した。
容、成績評価の方法 具体的には、デジタルアーカイブを積極的に利
文学部日本史学研究室所属の学生向けの講義で 用することにした。近年、日本史を含む歴史学で
ある。他研究室の学生、他学部の学生も履修は可 は、史料がデジタル化され、Web 上で公開される
能で、中学校社会、高等学校地理歴史の教職科目 ことが多くなった。それゆえ、毎回の講義におい
の単位ともなる。 て、各史料について概説しつつ、そのなかでデジ
日本近現代史における史料について概観し、そ タルアーカイブについてより詳しく論じ、その使
れに基づいてどのように歴史を研究するのかを、 い方を説明した上で、学生にそれを利用してもら
実例を基にしながら考察することを目的とする。 い、自身がデジタルアーカイブでどのような史料
本授業では、受講生が授業終了後に、日本近現代 を見たのか、その利点や問題点などを含めて、毎
史の史料に対する知識を習得し、日本近現代史の 回の講義で課題として提出してもらうこととした。
方法論を説明できることを持つことを目標とする。 パソコンなどで講義を受けるという遠隔講義の
以上のような講義の目的・目標を当初は掲げ、1 特性を活かし、講義の延長線上でデジタルアーカ
回目は史料とは何かについて概説、2 回目以降は イブをすぐに利用してもらう形にしたわけである。
公文書(国)、公文書(地域)、日記・書簡、新聞、 実際に史料館・博物館などで史料を見てもらう
雑誌・書籍、金石文、図像・写真、音声・映像、オ ことも難しくなったため、レポートはこの課題を
ーラルヒストリー、それぞれに関する概説を各 1 発展させて書いてもらった。
回ずつで行い、それを基に史料館・博物館などで
実際に史料を見てレポート、11 回目以降は史料を 3.学生の反応と今後の課題・可能性
使ってどのような歴史研究を行っていくかの実践 学生からは、デジタルアーカイブの内容を詳し
例を示すため、本年度は私が研究テーマの一つと く説明したため、今後、自身の卒論などの研究で
している近代の音楽について史料の分析に基づき も使いたいとの声が数多く寄せられた。
講義し、最後にテストを行って、レポートとテス 毎回の課題に対してコメントを返却したことも
トで評価を行う予定であった。 あり、さらにデジタルアーカイブを活用して意欲
史料に関する概説については、その形態などを 的に調べる学生も多かった。
知ってもらうため、実際に史料を教室へ持ってい 先述したように、歴史学においては近年、デジ
き、それを示しつつ、講義する予定であった。 タル化が大きく進展している。今回紹介したデジ
タルアーカイブのなかには海外のものもあり、家
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 に居ながらにして、海外の史料を閲覧できるとい
づいて変更し実施した授業内容 う状況を体験できたという点では、通常の講義に
大学からは、Wi-Fi 環境のない学生に配慮し、 はない可能性があったと考えられる。
できるだけのデータダイエットをするようにとの 一方で、実際の史料を触ることでの、質感体験
ルールが提示された。そこで推奨されたのは、 が重要な部分もあり、それはデジタルでは補完で
PowerPoint に音声を入れる形式で、本講義もそれ きない点でもある。そのバランスをどうとってい
で行った(それを動画にして YouTube にもアップ くのかが課題と言える。

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大阪産業大学「文章表現演習/表現力基礎演習」
(一 向性(30%)とし、60 点以上を合格とする。
年生対象)授業実践報告
北田雄一 2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
づいて変更し実施した授業内容
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 まず、学生はスマートホンで講義を受ける、4 月
容、成績評価の方法 ~5 月末までは教科書を持っていない前提で講義
・講義の目的と概要 計画を立てるようにという要請があった。
表記や原稿用紙の使い方などの基本事項を理解 スマートホンでも簡単に見れるように教科書の
した上で、各種の問題演習や文章作成などの実践 該当ページを PDF 化して WebClass にアップロー
的トレーニングを行い日本語コミュニケーション ドした。
能力の向上を図る。テキストにそって問題演習、 講義回数は 13 回に縮減され、レポートの執筆機
解説を行う。適宜レポートの提出を求める。 会も第 1 回と第 13 回の講義でしか確保できなか
・講義内容 った。両者共に字数は 600 字以上 800 字以内で後
第 1 回 授業計画説明、レポート作成 者は添削して返却したが、提出のタイミングがバ
第 2 回 漢字入門、原稿用紙の使い方 ラバラだったため、授業準備をしながら添削をす
第 3 回 同音異義語 るという非効率な状態に置かれることもあった。
第 4 回 同訓異義語
第 5 回 音訓と熟語 3.学生の反応と今後の課題・可能性
第 6 回 熟語の構造 基本的に WebClass を用いて遠隔講義を実践し
第 7 回 四字熟語 たが、課題の提出先は個人的に使用している
第 8 回 文のしくみ Gmail アドレスに指定した。ただ、個人的に使用
第 9 回 文章構成 している Gmail アドレスを課題の提出先を指定す
第 10 回 文章の要約 るよりは、大学から Gmail アドレスを新規に配布
第 11 回 ディベート、レポート作成 してもらった方がより管理がしやすかったと考え
第 12 回 レポート・小論文 る。
第 13 回 自己アピール 本講義はおおまかに漢字理解、文章実践、プレ
第 14 回 プレゼンテーション、レポート作成 ゼンテーションの三つに分けられるが、区切りご
第 15 回 アンケート・講評、これまでの授業のま とに音声資料を添付し、講義の概要についてアナ
とめ ウンスをしてもよかったかなと反省している。講
・成績評価の方法 義の輪郭をはっきりさせると同時に学生に安心感
1、漢字、熟語などを理解し、運用することができ を与える効果が見込めるように思えるからだ。音
る。 声資料については「分かりやすかった」という意
2、文のしくみ、慣用表現などを理解し、運用する 見をもらった。
ことができる。 文章添削を効率的に行う方法については、試行
3、様々な形式の文章を理解し、運用することがで 錯誤を重ねていきたい。個人的に添削の教育効果
きる。 は大きいと思っているので、課題を可能な限り早
上記達成目標 1~3 に関する基礎的な知識の習 期に回収し、手早く添削して返却する方法をある
得と理解についての達成度を評価する。知識・理 程度確立しないと次の授業準備に差し障りが出る
解(70%)(提出物・レポート 100%)、態度・志 からである。

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甲南大学「日本研究(前)」(全年生対象)授業実 いるような感覚を出すため、PowerPoint のアニメ
践報告 ーション機能を利用した。また、解説動画の作成
木場貴俊 で心掛けた点は、授業 1 回分の動画を、章ごとで
2~3 本(各 15~20 分)に分けて作ったことであ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 る。これは、学生が長時間視聴するストレスを避
容、成績評価の方法 けるための措置である。
本授業は、江戸時代の文化(江戸文化)につい こうして作成した動画と PDF にしたレジュメ
て、文芸作品などを素材にしながら理解を深める を、SharePoint を使って、大学の教学システムに
ことを目的としている。 アップロードした。学生は、各自ダウンロードし
講義形式をとり、初回は、本授業で扱う「文化」 て授業を受けさせた。
は、人のいとなみ全般を指すものとして、幅広い また、授業終了日の変更はなかったため、開始
テーマを取り上げることを示し、第 2 回以降はジ 日が 2 週間スライドした 2 回分の補講をすること
ェンダーや対外関係、忠臣蔵などを取り扱う予定 が要請された。そこで、1 回目は、図書館などを使
だった。特に、忠臣蔵については、ドラマ映像を用 った情報収集が困難になっている現状を鑑みて、
いることを考えていた。 学術関係のさまざまなデータベースを紹介する回、
毎回の授業の進め方として、当日資料レジュメ 2 回目は毎回学生に課した感想や質問(後述)に答
を配布し、授業中はレジュメに沿いながら、板書 える授業を行った。特に、前者では、Zoom に実際
をしながら解説を行うことを予定していた。 データベースで検索をしている場面を見せること
成績評価は、出席点(30 点)と論述式試験(70 で、羅列的に紹介するのではなく、擬似的に体験
点)で行う予定だった。 させようとした。
なお、映像は、著作権を鑑みて今回は使用しな
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 かった。
づいて変更し実施した授業内容 成績評価は、毎回の感想・質問(100 字以上)と
大学から 3 月 23 日の段階で、授業開始日が 4 月 2 回のレポート(配布したレジュメについて、指定
6 日から 4 月 20 日に変更となり、ネットを活用し した箇所を文章にして説明する、データベースを
た授業を実施する可能性が出た旨の通知が届いた 使ってキーワード検索をする)で行った。
(その後、4 月 7 日にオンライン授業の実施が決
定した)。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
講義形式の授業は、ライブ配信、デジタルコン 今回初めて動画を使った授業を実施したため、
テンツ配信、動画配信などの選択できるもので、3 常に暗中模索だった。その分、毎回感想や質問を
月 31 日以降、複数回にわたって、オンライン授業 課したことで、動画に対する意見については、そ
に関する講習会が実施された。講習会を受ける中 の度ごとに修正を加えていった。1 回の授業を複
で、私は、教材と Zoom を使った解説動画の配信 数の動画に分けて実施したことについては、概ね
を用いることにした。また、配信については、大学 学生に好評だった。
の要請により Office365 の SharePoint を活用する 技術的な問題もあるが、レポートがちゃんと提
こととした。 出できているかという、学生の問い合わせが少な
解説動画は、配布レジュメを元にした からずあり、その確認対応で時間が割かれる場合
PowerPoint を作成し、それを Zoom にアップして、 があった。
そこに音声を吹き込んだ。できるだけ板書をして

69
金城学院大学「学校経営と学校図書館」
(3年生対 先行する諸大学の状況を鑑み、通信の輻輳を避け
象)授業実践報告 るべく 10MB に絞り、Google Drive でこれを補完
桐原健真 することとなった。その後、30MB から 50MB に
まで引き上げられたが、大容量の講義動画・音声
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 は Google Drive で受講者と共有し、そのアドレス
容、成績評価の方法 とテキスト資料を manaba にアップロードすると
本講義は学校図書館の理念・教育的意義の理解 いう基本体制は終始変わらなかった。
を目的とする。基本は一斉授業だが学校での新聞 また本学では、授業案内・資料提供・出席管理等
の活用法を考えるため、本学図書館購読紙(三大 の授業管理については、基本的に manaba 上で行
紙+日経+中日)の一面比較を学生に発表させる。 った。これは manaba という単一ツールを用いる
ことでサポートを簡素化し、またその稼働状況を
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 通して適正な実施を把握するためでもあった。
づいて変更し実施した授業内容 本講義では PowerPoint に音声を付し、mp4 動
本項については、筆者はルールの策定側にも属 画を共有するオンデマンド型で授業を展開した。
していたので、その知見も含めて記しておきたい。 軽量化のために HandBrake を用いフレームレー
本学のリアルタイム双方向性授業は Google トを 5FPS に落としたが、視聴に難はなかった。
Meet を基本とした。Zoom 等の他のサービスも許 予定していた一面比較の学生発表は、大学図書
容されていたが、マルチメディアセンターがサポ 館閉鎖のため実施できなかった。それ故、筆者が
ートするツールは一つに絞るべきと判断したため 講読する読売・中日の同日一面を自宅でスキャン
である。本学では Google と契約し、教員・学生に し、紙面を比較させ、毎回 300 字程度のミニレポ
アカウントを発給済みであったため、スキル面は ートを Respon による出席登録の際に提出させた。
別として、利用自体は比較的円滑であった。 なお例年 4 択式の単位認定試験は、記述式の小
なお通信環境の不備による欠席者への配慮とし テストに代え、manaba を通して課した
て、Meet 講義は教員が録音・録画することとなっ
ていた。しかし学内ネットワークが 1Gbps と Meet 3.学生の反応と今後の課題・可能性
を使用さらに録画するには脆弱であったため、教 本講義は概論的な内容であり、これまでも一斉
員が学内から接続する場合は、5 学部各 8 回線と 授業を基本としてきた。それゆえオンデマンド型
定め、学部遠隔授業調整委員会においてその利用 の授業に適しており、学生にとっても大きな混乱
を調整することとした。
ただし 7 月中旬に 10Gbps なく受講できたようである。
に拡充(コロナ以前より計画)されたことで、こう しかしながら、法令等を参照しつつ解説する際
した調整は不要となった。 に PowerPoint 上にその全文を提示することは視
ち な み に Microsoft と も 契 約 し て い た た め 認性の点からも適切なものではない。そのため学
Teams の利用も可能だったが、アカウント登録等 生には動画と pdf 画面との切り替え、または pdf
の作業が必要なため利用を見送った。ただし MS- の事前印刷を求めることとなったことは、学生に
Office がストレスなく利用できる環境を当初から は負担となったと考えられる。遠隔授業における
提供できたことは、教員・学生双方にとって、大き 資料提供の問題は、今後も続くであろうが、他方
な便益を与えうるものであったと言える。 でこれまでモノクロであったものを、カラーで提
オンデマンド授業に関しては、manaba を用いた。 供できるようになったことは、学生の理解に資す
ただし当初 100MB までアップロードできたが、 るものであったと言えよう。

70
東北大学国際文化研究科「日本宗教史」
(大学院) であると感じ、後者を使用することにした。その
授業実践報告 選択に最も決定的であったのは、映像資料の使い
Orion KLAUTAU 勝手である。Zoom の画面共有オプションで、音声
や動画もラグがほぼない形で相手とシェアできる
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ため、こちらを用いることにした。資料やテキス
容、成績評価の方法 トに加え、Zoom セッションへのリンクを Google
本授業は江戸時代の後期から大正期にいたるま Classroom にアップして、授業を展開した。授業は
での日本仏教史を概観しつつ、大学院の授業であ 比較的スムーズに行えた。資料の配布等、基本的
るため、内容を伝えるのみならず、研究分野の昨 に問題がなく、質問はいつでも、チャット機能を
今の課題と問題についても、受講生とともに考え 通して、受け付けるようにした。ただし、人前で質
るものである。1 回目のガイダンスおよび院生の 問することが苦手な受講生もいることに配慮して、
報告が行われる最終の 2 回を除く 12 回分の授業 教室での対面式の授業の雰囲気を再現すべく、授
は講義形式を用いて、幕末期の護法論や排耶論、 業終了後はすぐに Zoom のセッションを切らず、
神仏分離、廃仏毀釈、大教院の成立、立憲国家の成 受講生の退室を待ち、最後に残った 1、2 名の質問
立と仏教などの主要なテーマを時系列で取り上げ に対応するようにした。特に重要と考えた質問は、
る。パワーポイントを使用しつつ映像やテキスト 次週の講義で取り上げた。この点は、普段の対面
を受講生に提示し、上記のように内容のみならず、 式講義と変わらない。ひとつ、当初の予定と大き
研究分野としての日本仏教史の諸問題を検討して く変更しなければならなかったのは、レポートの
いく。最後の 2 回は、大学院生が講義のなかで取 内容である。4 月から 5 月にかけての段階では、
り上げられた内容と関連する近代(日本)仏教関 大学の付属図書館の使用はいまだ困難な状況であ
係の人物を取り上げ、報告してもらう。その際、学 ったため、レポートは国立国会図書館デジタルコ
生にアドバイスして、その報告原稿を論文形式で レクションで閲覧可能な一次資料を使用するもの
まとめて、レポートとして提出する。出席・報告・ として、再考した。そのため、最初の方の講義で時
レポートの総合点で、評価する予定であった。 間を割き、画面共有しつつ、受講生にデジタルコ
レクションの基本的な使用方法と、さらにその「コ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 ツ」も伝えた。これは評判がよかったようで、これ
づいて変更し実施した授業内容 から対面式の授業でも、伝えたいと考えている。
本授業は 2020 年の前期に行われる予定であっ
たが、オンラインで行うことが求められた。形式 3.学生の反応と今後の課題・可能性
に関しては、三つの選択肢を与えられた。すなわ 少人数の大学院授業で、授業の開始前に受講生
ち、①講義資料による授業、②オンデマンド授業、 のネット環境も確認していたため、映像資料の使
③リアルタイム、である。この授業は、博士の前期 用を含めて、比較的自由にできた。しかし、そうで
課程に進学してすぐの受講生が主な対象であり、 はなかった場合、内容変更も必要だったであろう。
その大事な時期における受講生のニーズを直に感 そして受講生の反応を確認しつつ調整すべくリア
じ、それに応えつつ講義のペースや内容を微調整 ルタイムを選択したものの、教員以外は基本的に
するため、リアルタイム形式で授業を行うことに カメラオフのため、対面式と同じような形でのこ
した。リアルタイムでの講義を決めて、東北大学 とはできないと痛感した。
が提供していた Google Meets を同僚とテストし
たが、個人的な感想として Zoom はそれより便利

71
立教大学「他者の現象学」(2~4 年生対象)授業 聞いてもらった。通信容量に配慮して、パワーポ
実践報告 イント上で音声を録音することはせず、音声とス
黒木秀房 ライドでファイルを分けた。手順に関してはやや
煩雑になるが、簡潔に反復して説明したので大き
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 な混乱はなかった。また、リアクションペーパー
容、成績評価の方法 を毎授業後〆切を設定し、LMS 上で提出してもら
「他者」ついて多角的に考えることを目的とし った。ここに学生からの質問が書き込まれている
た講義形式の授業。フランス現象学の 3 人の哲学 ため、次の授業回に回答と全体的なフィードバッ
者と彼らの代表的な概念を紹介し、その思想史的 クを行った。
意義を確認しつつ、アクチュアルな問題について 評価に関しては、講義開始の段階で図書館を使
も触れた。受講生は 2 年生から 4 年生の約 100 人 用できなかったため、当初主な評価材料としてい
で、成績は毎回講義後に課すリアクション・ペー た最終レポートの代わりに、最終回のリアクショ
パーと最終レポートにより評価する予定だった。 ンペーパーに全体的な内容に関して長めに書いて
もらうことにした。最初は答えやすく具体的かつ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 簡単な質問を用意したが、回を追う毎に抽象度と
づいて変更し実施した授業内容 自由度の高い質問にシフトした。
大学から要請されたのは、授業ごとに、オンラ しかしながら、それだけでは対面授業よりも双
イン講義形式(一方向)、オンライン演習形式(双 方向性に乏しいように感じた。そこで、オンデマ
方向)、オンライン課題等形式のいずれかの形式 ンド型の授業に加え、規定の授業時間に任意参加
に沿って開講することであった。Web 会議システ のミーティング(評価には含まず)を行った。カメ
ムは Google Meet を使用することが推奨された。 ラやマイクをオンにするかオフにするかは学生に
その他に、これまで使用してきた Blackboard と学 任せた。講義の復習になるような内容を話した後、
内 LMS を利用することができた。 学生からの質問を受け付け、意見を聴取した。学
講義開始前に受講生を対象にアンケート調査を 生同士で議論もしてもらった。
行い、オンライン環境について調べたところ、1 割
がスマホで受講せざるを得ない状況で、2割がオ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ンライン上での音声や映像でのやりとりに問題が 授業形式に関しては学生から肯定的な声が多く
あり、3 割が通信容量や通信環境に不安が残り、4 あがった。その主な理由は、比較的自由な時間に
割がプリンタを持っていないことがわかった。ま 受講できる、スライドなどが見やすい、といった
た、オンライン環境によって欠席扱いになってし ことである。したがって、大人数の講義形式の授
まわないか不安に感じている学生や、声や顔を出 業はオンデマンド型であったとしても語学授業や
すことに抵抗がある学生がいた。以上の理由から、 演習形式と比べてメリットが大きいと感じた。そ
オンライン環境にもっとも左右されにくいと考え の一方で、学生の授業への取り組みの態度が二極
られるオンライン課題等形式、いわゆるオンデマ 化している。やはり顔を見られないことが大きな
ンド型で本講義を開講することに決めた。 障壁となり、講義内容にあまり興味を持てない学
具体的には、音声を吹き込み、スライドを PDF 生に対してフォローアップすることが難しかった。
ファイルにして、それぞれ学内 LMS にアップロー 学生・教員のオンライン環境の整備が進み、図書
ドした。規定の授業時間に公開される設定にして 館の利用が限定的な形であれ再開された今後はレ
おき、学生には PDF ファイルを開きながら音声を ポート作成指導についても工夫していきたい。

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日本薬科大学「日本史」(一年生対象)授業実践報 3.学生の反応と今後の課題・可能性
告 ①学生の反応:授業の内容に満足した学生が多い
黄偉修 ようであるが、直接に学生の反応を確かめること
ができないため、実態がわからない。②動画配信
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 なら、映像と音声の途切れと遅れをめぐるインタ
容、成績評価の方法 ーネット環境のトラブルが多いのではないだろう
〔一般目標〕本講義では、受講生が、日本史、とり か。③事務のサポート体制がよくできていたため、
わけ近現代の歴史を政治と経済などの側面を通し 非常勤講師は前述したインターネット環境をめぐ
て理解することを目的とする。 〔授業概要〕「歴 るトラブルと事務関係の対応などせずに授業に専
史」を学ぶことは、今を生きる我々にとってどの 念できた。ただし、オンライン授業で増えた学生
ような意味があるか。歴史とは現代と過去の対話 の対応と事務作業による事務職員の疲弊も心配な
であり、現代がその様相を変えれば、対話の枠組 点である。④時間割の調整で二回分の講義のビデ
みやそこで重要とされるテーマは当然変化する。 オ撮影を一日でしたことがあるが、その際にかな
そのため、「日本史」は単に「日本」を知ることは り体力と集中力を消耗したと感じられた。⑤中国
なく、
「アジアのなかの日本」
「世界のなかの日本」 の言論規制をめぐって:Teams は中国でも使える
という位置を考えることも大事である。本講義は、 ツールであるが、中国のネット検閲によって監視
「日本」という国が「近代」という大きな時代の転 されているのではないか。しかし、近現代の日本
換点を迎える幕末から、戦争と「帝国」の時代を終 史の講義であるため、日中関係は当然話さなくて
え、我々の生きる「現代」へと歩を進めるまでを範 はならないテーマである。日本に入国できない中
囲として、各時代の要点を押さえていきたい。
〔評 国籍の留学生は、オンライン授業で中国を批判す
価方法と基準〕 定期試験:60%、課題提出:40% る内容、日本の歴史における中国にとって不都合
な話を受講したことで、政府のネット検閲によっ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 て逮捕される恐れがある。とはいえ、担当教員が
づいて変更し実施した授業内容 それについて配慮し、授業の内容を調整すれば、
①ビデオ撮影:毎週キャンパスへ出向し、授業の 学問の自由に抵触することになる。また、中国の
ビデオ撮影をする。ビデオの前で授業を行っただ 香港国家安全法の制定により、中国を批判する海
けで、進め方がほぼ変わらない。②日本薬科大学 外の研究者も中国に入国すると逮捕される恐れが
は Microsoft Teams でオンライン授業を行ってい ある。中国の言論規制がオンライン授業に与えた
る。大学の事務が映像のアップロードと出席調査 影響は、個別の教員、大学ではなく、国、学界全体
などの事務作業を対応してくれるため、非常勤講 の問題になると言える。
師として授業に専念することができた。③評価基
準を中間課題提出(50%)、期末課題提出(50%)
へ変更した。④毎回の授業で簡単な感想と質問を
学生に書いてもらっていたが、大学の手続きなど
に慣れていない一年生を配慮し、出席調査の救済
措置として感想がなくても必ず受講の回、氏名、
学籍番号を明記する感想のメールを提出するよう
学生に求めた。

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静岡大学「地域文学文化基礎論Ⅰ」
(1年生対象) を動かしながら解説する、対象地域紹介の動画を
授業実践報告 複数作った。html は他の授業でも多用。リンク集
小二田誠二 的なテキストになっており、必要に応じて実際に
展開する動画と音声解説のどちらかを作成した。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 また、受講者全員では teams での交流が困難だ
容、成績評価の方法 ったため teams「自由化」後、class グループを作
この講義は主に人文社会科学部言語文化学科の 成し、下位 channel を無作為に割り振って学生た
1 年生対象、日本を含むアジア地域の文学文化研 ちの交流・共同作業を促した。最終レポート(パワ
究の入門的な講義。全 14 回を 3 名で分担。私は最 ーポイントが多い)も、個人希望者数人を除き、組
初の 7 回を担当。シラバスでは、文献講読と実地 み替えせず、この小グループで作成した。
調査を含む地域研究を予定し、個人または少人数
でのレポートを課すことにしていた。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
【参考】シラバス(事後変更あり): 動画教材は、慣れていない学生には速度に不満
http://syllabus.shizuoka.ac.jp/ext_syllabus/refere があったようで、5 分程度に切り分けた音声解説
nceDirect.do?nologin=on&subjectID=212400087 の方が評価が高かった。自分で進められる音声付
959&formatCD=1 きパワーポイントの希望もあったが教材の性質と
相性が悪いのでこの授業では使わなかった。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 同様に進めた他の講義も含め、任意参加でも同
づいて変更し実施した授業内容 時双方向の時間の参加率は高かった。とはいえ、
講義科目は基本遠隔。同時双方向は推奨せず、 意見交換が活発になるわけではなく、channel を導
動画を含む種々資料配付・課題提出という形式が 入して、やっと班内の意見交換などが進んだ。
求められた。例示は複数あったが細かい指定は殆 最終課題のためのやりとりの記録も残るし、提
ど無かった。 出もスムーズだったので、今後全面的に対面授業
LMS としては、Office365 の各種アプリケーシ に戻っても Office は使えるように思う。
ョンと従来からある学務情報システム(以下「学 ただ、この授業の受講者はほぼ 1 年生で、何を
情」)とを併用し、概ね次のようなサイクルで授業 しても初めてなので却って混乱が少なかったが、
を進めた(なお、この時点では teams の新規グル 学情に慣れている上級生からは、学情のみで完結
ープ作成は許可制で、一般的なものしか作れなか してほしいという意見もあった。
ったが途中で「自由化」された)。 従来の授業でも言えることだが、学生の反応を
既定の授業日の 2 日前までに学情で資料配付 見ながら資料を組み替え、感想を共有し、質問に
(html・pdf・mp3 及び動画。動画は stream にアッ 対して補足説明をしながら進める事を動画でも行
プし、リンク)、規定の時間には任意参加で同時 ったので、繰り返し使える汎用性のある教材を作
teams 会議を設定。その 3 日後に課題提出。 れず、負担感は配付資料より大きく、今後工夫が
課題は最初レポート的なものを求めたが、すぐ 必要。
に双方の負担を考えて、forms を使用するアンケ 別の授業では保護者が興味を持ってくださった
ート的なものに変更した。 という情報もあり、授業評価という点でも広報的
1 年生だがガイダンス等は実施していたのでア な意味でも、意識的に「事業参観・公開授業」的な
カウントの設定含めほぼ問題なく始められたが、 企画を入れるのもアリかな、と思っている。
土地勘が無い学生が多いため、ストリートビュー

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東洋学園大学「英米文学入門」
(1年生以上対象) 3.学生の反応と今後の課題・可能性
授業実践報告 「学生からの反応」で特筆すべきは、上述の
小林広直 Forms での課題(レスポンス・シート)において、
講義内で印象に残った用語や概念、そして講義全
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 体の感想と質問を書いてもらったのだが、その内
容、成績評価の方法 容が例年に比べて質・量ともに圧倒的に充実して
イギリス(アイルランドや旧英国植民地を含む)、 いたことである。従来は授業終了約 10 分前に、A5
およびアメリカの文学史を、「正典(canon)」と呼 の出席カードの裏面に手書きで書いてもらってい
ばれる古典的作品の紹介を通じて概観し、文学の たが、今回は時間的な制約もなかったために、講
「面白さ」を体験することを目的とする。シェイ 義の要点をまとめ、自分なりに用語や概念を定義
クスピア『ロミオとジュリエット』、ディケンズ づけるだけでなく、文学作品に触発されて、学生
『クリスマス・キャロル』、ジョイス「死者たち」、 が自分自身の経験に照らし合わせて語り出す(?)
ホーソーン『緋文字』、フィッツジェラルド『グレ 場面も多く見られた。これらの「感想」は Excel で
ート・ギャツビー』の 5 作品を講義形式で解説し、 集計し、Word に貼り付けて匿名で共有すると共
学生は講義後、出席カードに感想や質問を書く。 に、校閲機能を使って私自身の簡単なフィードバ
評価については、①平常点(出席点)30%、②授 ック――「鋭い質問!」とか、
「ここ大事!」、
「へ
業内での課題(レスポンスペーパー)20%、③期 え~そうなんだ~」などなど――や、「いいね」的
末レポート 50%とした。 にマーカーで色を付けて、毎週返却した。この方
法を実施して明らかになったのは、学生それぞれ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 が他の学生の優れたコメントに触発されて、週を
づいて変更し実施した授業内容 追うごとに感想のレベルが質・量ともに劇的に上
オンライン授業の形式としては、①自習中心型: がっていったことである。言うまでもなく、それ
課題提示方式、②録画配信(オンデマンド)型: が過度なプレッシャーにならないように講義動画
PPT や映像配信、③同時双方向(ライヴ)型:ラ 内で再三呼びかけたが(「10 分くらいで簡単に書
イヴ方式の 3 つの方法が提示された。また、PC や けばいいからね~」)、最後まで「楽しかったです」
プリンターが自宅になく、スマートフォンのみで の一言で貫く学生も数名はいたものの、講義を自
受講をする学生に対しての配慮も求められた。 分なりにまとめ、それに関する自己の経験や昨今
本校では「TG-Navi」という独自の LMS(学習 の社会情勢に関する自分の考えや疑問を書く習慣
管理システム)に加え、Office 365 の諸機能を使 がついたことは大きな収穫であったと思われる。
用することができたため、上記②の PPT に音声を 何より、日常の読書経験の少ない学生が、文学作
吹き込み、Stream で講義動画を閲覧できるように 品を読み、その感想をシェアすることの楽しさを
した。TG-Navi を通じて、ワードや PDF の資料 体験してもらえたのではなかろうか(実際、他の
を配布し、動画視聴後には出席調査も兼ねて、講 学生の感想を読むのが楽しかった!という声が多
義の感想を書いてもらうための Forms の URL を かった)。
提示した。このため、評価基準を①授業ごとの課 オンライン授業において生じる「今後の課題」
題の提出(Forms)60%、②期末レポート(メールの を書くスペースがなくなってしまったが、どんな
添付ファイル、もしくは Forms での提出)40%に 授業にも欠点や反省点は(多々)あることを鑑み
変更した。 て、今回は、私自身が学生から大いに教えられた、
〈収穫〉の方を強調させていただいた。

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早稲田大学「日本言語文化論 1・2」(1 年生以上 生は各自で解説を読み、授業後《リアクション・ペ
対象)授業実践報告 ーパー》を提出した。掲示板は、対面での議論や全
坂本麻裕子 体共有を置き換えたもので、気づいた点や多様な
読みを互いに見られるようにした。掲示板に残す
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ことで何度でも読め、ポートフォリオにもなる。
容、成績評価の方法 皆が同時刻に投稿することでゲーム性を高めた。
本講義の科目区分は「人文・社会科学科目」(複 講義ノートは対面時の資料に手を加え、自習でき
合領域、20 人)で、明治期のイソップ寓話、グリ るよう細かに注釈を付けた。音読教材には音声デ
ム童話、日本昔話等を教材(文献)として取り上 ータを作成した。教材は前週の内容と関連が強い
げ、毎回キーワードを軸に文献を分析し、言葉と 文献に差し替え、授業全体で明確なストーリーに
文化のつながりを考察するという内容である。講 なるよう組み替えた。リアクション・ペーパーへ
義の目的は次の二つである。1「一つの日本語の は、教員が個別フィードバックを行った。
語句や表現を手掛かりに文献を読み解き、言葉と
文化のつながりを学ぶ。」、2「学問として文献 3.学生の反応と今後の課題・可能性
(一次資料や二次資料)を読むとはどういうこと 学生は掲示板で活発に学んでいた。リアクショ
かを学ぶ。」
(早稲田大学グローバルエデュケーシ ン・ペーパーの声を引用する。次の A さんの記述
ョンセンター2020 年度シラバス)。 からは、級友から刺激を受けて学んでいる様子が
授業活動は各グループで気づいた点を議論し、 わかる。「終わった後に他の人の分析メモを見る
全体共有する方式であった。授業活動は対話型鑑 と、全く気がつかなかった点があったり、分析メ
賞の考え方と共通点が多い(鈴木有紀 2019『教え モから既にわかるその人の知識量の多さに驚いた
ない授業』英治出版)。成績評価は、授業活動、リ りと、顔を合わせていなくともどんな人か想像で
アクション・ペーパー、レポートを評価した。 きるのが少し面白いですね。(A さん、3 年生、5
週目)」「…略…みなさんのメモを読んで、一人で
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 納得したり反対したり賛成したりと盛り上がって
づいて変更し実施した授業内容 いました。(A さん、12 週目)」また、次の B さ
大学からは、次の三つの授業形態から選び、対 んの記述からは他者の投稿や解説を読み、更に自
面と同内容を実施するようにという要請であった。 身を振り返って学んでいる様子がみてとれる。
「他
①「講義資料・課題提示による授業」、②「収録内 の人のメモや講義ノートを読むまで、七五調にな
容オンデマンド配信による授業」、③「リアルタイ っていることに気づかなかった。文字や表現、ス
ム配信による授業」(早稲田大学 2020「2020 年 トーリーにばかり注目していて、文献を俯瞰した
度の春学期からのオンラインでの授業の受講準備 り音声データを聞くときにリズムに気を配らなか
につ いて」 http://www.waseda.jp/navi/wsdmoodle/doc/wm- ったりしたからだと考える。(B さん、1 年生、8
1ststep-st_j.pdf )。 週目)」他にも、授業後半で講義ノートを配布した
本講義は①を選択し、Waseda Moodle 上で次の 点が、主体性に繋がったという感想もあった。
工夫を行った。授業開始時刻に《本日の文献》を配 今後の課題は次の二点。1)配布資料の改善。明
布した。学生は文献を読み、指定された問いに対 治期文献をスキャナで読み込むと読みづらい場合
する回答や気づいた点を《分析メモ》として掲示 があった。2)オンライン授業の課題の調節。読む
板に投稿した。投稿締切は 45 分後とした。締切と 時間や書く時間が、対面授業時より多くかかった
同時に、教員の解説《講義ノート》を配布した。学 学生がいた。課題指示などを調節する必要がある。

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愛知淑徳大学「違いを共に生きる・ライフデザイ 講義のオンライン配信に係るゲスト講師との交渉
ン」(初年次生対象)授業実践報告 が難航した。著作権等の問題がある一方で、本学
鈴木崇夫・増地ひとみ には動画データを保管する学内サーバーが無いた
めである。しかし Stream の利用が可能となったこ
1.授業概要(シラバス段階) とで、講師陣と相談の上、講義の撮影と配信が実
愛知淑徳大学に入学した初年次生全員(毎年約 現した。Stream は学外サーバーではあるが、学内
2 千人)が履修する必修科目である。大学理念「違 に限定して公開可能、ダウンロード困難など、一
いを共に生きる」への理解を深めるため、外部か 定のセキュリティが確保できるためである。講義
ら招いた専門家(ゲスト講師)の話を聞き、次の週 の撮影は、来学して教室で撮影する形式と、各講
にその講義内容を踏まえて個人ワークとグループ 師が任意の場所で撮影したデータを送付してもら
ワークを行う。これを 6 回繰り返す。つまり、6 人 う形式との 2 パターンとなった。対面授業時とほ
のゲスト講師が来学する。成績(合否)は、毎回の ぼ同じ 60 分の講義を撮影したが、学生の集中力持
授業の提出物の有無で決定する。 続の問題や繰り返し視聴の便宜を考慮し、トピッ
クごとに 3~4 分割する編集を施した。動画編集に
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 際しては、Web と親和性の高い MP4 形式にし、
づいて変更し実施した授業内容 スマホ等で見る学生の受信環境を考慮して、解像
大学からは、前期の授業を原則オンデマンド授 度とデータ容量のバランスを考えた変換を行った。
業で開講する旨と、
遠隔授業実施用に Microsoft の 2-2.講義資料と提出物(課題)の作成、配信
Stream、Teams 等を全学生・教職員が利用可能に 開講時点で、学生の受講環境が全く不明であっ
なる旨とが通達された。学生からの質問等に対応 た。スマホで受講する学生が一定数存在すること
するため双方向性を担保することが要請された。 を想定し、小さい画面でも見やすい資料作成を意
2020 年度の本授業担当者は、筆者らを含む計 3 図した。具体的には、PowerPoint を使用し、文字
名の教員であった。オンデマンドでの開講にあた の大きさは 32pt~72pt とした。スライドは 1 回あ
り特に問題になったのは、①外部ゲスト講師の講 たり 5 枚程度に抑え、動画の視聴方法、課題の内
義をどのように提供するか、②グループワークの 容、質問の方法等、必要最小限の情報のみ記載し
実施方法、の 2 点である。①については、各ゲス た。学生の受講環境に左右されにくい PDF に変換
ト講師に講義を録画させてもらい、動画を配信す し、毎週火曜日に講義資料と動画視聴のための
ることにした。②については実施を断念し、学生 URL(ゲスト講師の講義の回)を全クラス一斉配
が一人で取り組む課題の分量を増やした。ゲスト 信した。出席確認は、課題の提出をもって行った。
講師との折衝を含む動画の準備を鈴木が、講義資
料作成を増地ともう 1 名の担当者が行った。講義 3.効果や課題、学生からの反応など
資料等の配信、課題の回収、学生との連絡には、鈴 動画配信により専門家による講義は例年とほぼ
木は Teams を、増地は既存の学内システム(キャ 同じ内容を提供でき、学生も学びを得ていたこと
ンパススクエア)を利用した。 が提出物からは読み取れた。しかし、本授業の肝
2-1.ゲスト講師による動画作成と配信 である学生同士の意見交換が一切行えなかった。
ゲスト講師は、NPO 等で活動する実務家あるい 2 千人の学生を相手に、オンラインでグループワ
は大学教員である。NPO 等に所属する講師の場合、 ークを実施することは非現実的である。グループ
本学の講義で話す内容が外部で行うセミナー等で ワークと同様の効果が期待できるオンライン授業
話す内容と重なっている場合も多い。そのため、 実施方法を検討するのが、今後の課題である。

77
武蔵野美術大学「ミュゼオロジー入門」(1 年生対 業であり、また通信量削減のため、全員のカメラ
象)授業実践報告 を原則オフとしたので、例年以上に双方向性を重
春原史寛 視した。zoom のチャット機能で「関心のある博物
館は?」といった質問を投げかけて、全員から回
1.武蔵野美術大学では、全学共通と芸術文化学 答を得て、その結果からの考察を行った。加えて、
科でそれぞれ別系統の博物館学芸員課程を有して 学生は登録せずに利用できる掲示板サービス
おり、稿者は後者の課程を担当している。芸術文 「Padlet」(教員が有料版を導入)を活用し、授業
化学科では運営や学際性など博物館の社会的機能 内容への質問やコメントをリアルタイムで受け付
についての実践的・現代的な教育研究を重視し、 け、授業内で数回言及するようにした。
「博物館学」ではなく「ミュゼオロジー」を科目名 さらに、そもそも近年進行するミュージアムの
に採用している。今回取り上げる「ミュゼオロジ デジタル化の動向にも注目する授業であったため、
ー入門」は、通常は「博物館概論」と呼ばれる科目 その側面をさらに強調し、コロナ禍の社会状況下
である。履修者は約 80 名であった。 でリアルタイムに進行する、バーチャル・ミュー
授業の目的・概要は、ミュージアムの定義・目 ジアムや教育普及動画の配信など、オンラインに
的・歴史・機能・組織、運営の実際について理解す おけるミュージアム活動について、さらにミュー
ることと、ミュゼオロジーという学問の意義や目 ジアムの休館や展覧会の延期の状況などを、毎回
的、歴史的変遷などについての概論的知識を習得 の授業冒頭で取り上げて、今後の新たなミュージ
し、専門性の基礎となる能力を養うことができる アム活動の可能性や限界を考察する機会とした。
ようにすることであった。講義内容は、学芸員資 期末のレポート課題は、演習性を重視して予定
格取得のための科目として必要な項目を網羅した を変更し、文章・図版による任意のミュージアム
オーソドックスなもので、加えてミュージアムの の紹介ガイドの作成とした。
デジタル化に注目するものである。成績評価は期
末レポート試験で行うこととしている。 3.オンライン授業であることが、ものとの対面
を重視するミュージアムの存在意義を、例年の授
2.大学からは、オンデマンド形式もしくは zoom 業以上に学生に再考させる結果となった。
によるリアルタイム形式の授業実施が要請され また、伝達すべき内容が規定されている資格取
(一部授業は後期に対面を追加)、学習管理シス 得のための講義科目でありつつ、授業に参加して
テムとして Teams が採用された。それを受けて、 いる実感を学生各自がどのように得られるかを考
学科ではすべての授業を zoom によるリアルタイ 慮したが、特に「Padlet」上でのテキストでのリア
ム形式で実施することを決定した。学科では新入 ルタイムの、教員・学生間、学生同士でのやりとり
生のオリエンテーションをオンラインで実施し、 が好評であった。学生から教員への質問が書き込
その段階で全員が zoom と Teams を使用できるよ まれると、それに対して別の学生が考察を書き加
うにした。また、全学生の情報機器所有状況とネ え、学生同士での意見交換や議論が、授業内容進
ットワーク環境をアンケート調査し、全学が行っ 行と同時に行われた。また、写真データやリンク
た希望者へのモバイル・ルーターおよびタブレッ も貼り付けられるので、授業内容に関連する情報
ト端末貸与の措置とあわせて、初回授業開始時に、 が学生自身によって提示されることもあった。
学科の全学生がオンライン授業を支障なく履修で このようなプロセスによって、テキストベース
きる態勢を整えた。 であっても、対面授業以上のコミュニケーション
大学に慣れていない新入生が初めて受講する授 が行われていたことは今回得られた成果であった。

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東日本国際大学「基礎演習Ⅰ」(1 年生対象)授業 本授業は後者のカテゴリーに入るため(A)旧来、
実践報告 教員が教室で説明をしていた部分(たとえば学習
関沢和泉 ポートフォリオを記入する意義や具体的な記入方
法)は、作成した動画を YouTube に限定公開でア
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ップロード、それへのリンクを Moodle に張るか
容、成績評価の方法 たちでオンデマンドとした。(B)補足説明や質疑
この科目は初年次教育の一環で実施されるいわ 応答の一部はウェブ会議システム(大学として G
ゆる初年次ゼミであり、大学での学修のあり方を Suite を契約していたため学生の認証が出来る
伝え、高校から大学への移行を助けることを目的 Meet を使用)により、原則、対面(面接)授業で
として開講され、複数教員が担当し、新入生全員 予定されていた時刻に実施した。
が履修する。文章の要約、レポートの書き方やプ 課題は、大学に入学しているという実感ととも
レゼンテーションの基本などのアカデミック・ス にラーニングコミュニティの形成へとつながる学
キルの修得をしつつ、学習ポートフォリオの書き 生同士のインタラクションをどのように確保する
方など補完する活動を実施している。 かである。例えば、自己紹介については Moodle 上
例年であれば、グループワークを基本とし、例 に文字だけでなく写真や動画、音声を利用してア
えば AI の導入が今後の職業にどのような影響を ップロードするという形式で実施し、他の学生の
与えるのかという主題について、資料を読み要約、 意見を聞ける場として、フォーラム以外に非同期
準備した意見についてディスカッションをし、提 型で他の学生の意見を一覧出来るように Moodle
出してもらった成果物やプレゼンテーションを評 のアンケート機能を利用、G Suite の Chat を利用
価の対象としてきた。 した(ビジネス)チャットも用意した。
なお、オンデマンド動画の配信基盤として
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 YouTube を利用したのは、(1)Google の配信イ
づいて変更し実施した授業内容 ンフラを活用できる、
(2)学生側の回線状況で解
近隣地区でクラスターが発生したことにより、 像度を変更できる、
(3)自動で生成される字幕が
最終的に 8 月までの学期は原則オンラインでの実 留学生(未入国の学生も多かった)や視覚情報が
施となった(後日一部で対面再開)。授業開始を遅 必要な学生たちに有益であるからである。
らせたため、その間に学生の通信環境確認のため
のアンケートを実施、結果約 1/4~1/3 の学生はイ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ンターネットへの接続環境や利用可能な PC が限 ラーニングコミュニティ形成のための仕掛けは
定されていたこと、先行して四月からオンライン したつもりであったが、上述の自己紹介で画像や
授業へと移行した大学の状況から、同時双方向型 動画を共有する学生も、ウェブ会議システムを利
を全科目で実施した場合、大学側ネットワーク環 用した際にオンにされるカメラも少なかった。教
境にもトラブル発生の可能性があることなどから、 室で参加者全員の相互信頼関係を構築するプロセ
特に講義科目では全学で導入済のオンプレミスの スを欠いた状況でそれらを共有することへの抵抗
Moodle を利用したオンデマンド型とし、ウェブ会 感は正しい用心であるだけにどうすべきだったか。
議システムによる同時双方向型については、大学 アバターを介したコミュニケーションの可能な仮
としても一定の環境は提供するものの、少なくと 想空間の提供が一つの回答だろうと考えてはいた
も当初は、演習・実習系科目を中心とした限定的 が、今回は無償で参加することが出来るような環
利用とすることが基本方針となった。 境を準備できなかったことが心残りである。

79
沖縄キリスト教短期大学「飼育栽培」
(1 年次対象) そ の 他 の 遠 隔 授 業 は , Google Classroom と
授業実践報告 Zoom を併用して行った。学生は Zoom の約束と
照屋建太 して,出席確認は Zoom のチャット機能を利用し,
学籍番号と名前を入力した。Zoom の録画機能は,
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ミーティング終了後にチャットも保存される。よ
容、成績評価の方法 って出席確認は,チャットを利用することで確実
本演習は,保育科 1 年次前期と後期に配当され に行うことができ,授業時間を短縮できた。
ている。飼育や栽培活動を通し,生き物の「命」の 授業の内容は,対面講義で行っていた内容を踏
大切さを学生自身が体験する。保育活動で日常化 まえ,Microsoft PowerPoint,Microsoft Word,PDF
されている飼育や栽培の基本を身につける。飼育 等を画面共有し説明した。その際に,画面の文字
や栽培が乳幼児へ与える影響について考える。 サイズを変更した。スマートフォンで遠隔授業を
対面授業では,数回基礎学習として講義も行う。 受けている学生には,画面の文字が小さく見える。
また,生き物の世話を行うため,飼育と栽培のグ そのため,文字を 200%程度拡大し説明を行った。
ループを学生が相談して決定し,生き物の育て方 さらに,学生の通信料を考慮し,Zoom の授業も
等を調べる。教員はグループの進捗状況等を把握 40 分程度とした。授業後には,Google Classroom
し,必要な部分について助言等を行う。この演習 を利用し,学生からの振り返りコメントを求め,
は,生き物に責任を持つことがキーになると考え 授業内容の理解度を確認した。学生のレポート作
ている。休暇期間も含め,グループのメンバーを 成は,Google Classroom を利用し,グループで共
交代し,飼育や栽培活動を行う。演習の最終日は, 有し作成した。今回,パワーポイントによる結果
各グループのレポートと Microsoft PowerPoint を 発表が難しいため,成績評価は次のように変更し
使用し,結果発表を行う。飼育と栽培の活動は,後 た。レポート(40%),飼育や栽培に対する責任
期の演習開始まで継続される。 (20%),受講態度(30%),小テスト(10%)
成績評価はレポート(20%),プレゼンテーシ とした。
ョン(20%),飼育や栽培に対する責任(20%),
受講態度(30%),小テスト(10%)で行う。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
Google Classroom を利用した振り返りのコメン
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 トを読むと,授業内容のコメントにもよいものと
づいて変更し実施した授業内容 な っ て い た 。 Zoom の 共 有 機 能 を 利 用 し た
本学の遠隔授業は,90 分に相当であれば Zoom, PowerPoint では,実際に対面で講義を行っている
Google Classroom,Microsoft Teams,iLas(大学 と思える内容だったと記述があった。また,振り
独自のシステム),メール,オンデマンド方式,課 返りのコメントを通して,講義内で質問できない
題研究が認められている。 内容を質問できるように工夫した点も学生から高
本演習は,生き物の世話を主に行うため,遠隔 評価を受けた。
に不向きな演習である。大学の方針で遠隔授業と 今後は,チャット機能を利用した出席確認は,
決定されとき,飼育や栽培の世話に対する責任の 学籍番号を半角,名前はカタカナと統一すると,
あり方は,大きな課題となった。しかし,前期に数 チャット機能の内容をソートすることができ,出
回対面授業が実施されたため,その際にグループ 席確認がさらに楽になると考える。
分けを行った。飼育や栽培の活動は,各グループ 1 今後は,評価に振り返りのコメントを成績評価
名のみ来校が許可された。 に加点し,学生からのコメントを必須としたい。

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ものつくり大学「コンピュータ基礎および実習Ⅰ」 生が最初に受講するこの科目では、相互の顔すら
(1年生対象)授業実践報告 知らない中での授業(講義・実習)となった。その
土居浩 ため授業でクラス内にチームを設定し、チャット
(Google Chat)で連絡網をつくるよう指示し、個
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 別だけでなくチームで相談し解答する課題を設け
容、成績評価の方法 た。連絡網として当初は LINE も想定したが、あ
シラバスでは「Information から Intelligence へ まりにプライベートと直結していることもあり、
の情報操作基礎を目指し、学生生活に限らず、今 あくまで授業に関連するやりとりは、まず大学と
後の社会生活に必須となるコンピュータ利用に対 して契約している Google アカウント経由が妥当
応する基本スキルを習得する。今期は主にネット だろう、との判断である。
上での情報蒐集と発信について習得する」を概要 基本的な授業構成は、1)Classroom に定時にな
として、「要求された水準に沿った課題を制作す ったら当日の課題を解説した Google ドキュメン
るために自己点検できるようになる」を到達目標 トをリンクする(ドキュメントには、クイズへの
として示した。クォータ制のため全 8 回・ただし 回答や、個人またはチームでの課題作成が指示さ
1 回は 2 コマ。指定教科書で講義し、PC 教室に設 れてある)。2)クイズへの回答や、課題の提出は、
置の Windows 機で、受講生各自が応用問題を解く Classroom での提出を極力回避し、基本的には
構成。各回で提出を求める課題点の累積で評価。 Form 経由で提出させる。3)質問は指定時間帯内
コンピュータリテラシーと、日本語作文とのハイ に Meet 経由で、基本的に音声で受け付ける。一人
ブリット科目である。 で担当したので、チャット機能まで追うことが無
理だったからである。4)課題は文書であれば
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 Google ドキュメントで作成、動画であれば You
づいて変更し実施した授業内容 Tube にアップさせ、共有範囲を指定し、その共有
要請されたのは、概要と到達目標は変更せず、 URL を Form 経由で提出させる。5)提出状況は
時間割通りの実施、全 8 回予定から全 6 回への変 Google スプレッドシートで共有し、受講生が各自
更、そして携帯デバイスのみでも受講可能とする あるいはチームメイト相互でチェックできるよう
ことであった。また学生に対し、メールや SNS な にした。
ど様々な連絡手段があるのは混乱を招くとの判断
から、大学で契約している G Suite for Education 3.学生の反応と今後の課題・可能性
の Classroom で授業科目ごとに「クラス」を開設 前掲のとおり、チームでの連絡網作成を指示し、
し、そこで授業連絡を集約するよう要請された。 具体的にチームでも課題に取り組ませた結果、チ
要請に従うと、例年の前提が覆された。つまり ーム内での交流ができた。このチーム設定、本学
Windows 機どころか PC 操作を前提とせず、つま では、木造や足場実習などの実技系科目と同じで
り MS-Office を使えることを前提とせず、課題を ある。これらは緊急事態宣言解除後に開講したが、
再構成する必要があった。前掲のとおり大学では 直接的には初対面でもチーム内の交流が円滑だっ
G Suite for Education に契約していたので、すべ たと、学生や担当教員から伝え聞いている。たま
てを Google 関連アプリのみで対応可能な課題へ たま担当者が、初年次教育の科目全般を担当して
と組み替えた。 いたので、可能となった配慮である。将来的には、
本学ではこの春、入学式も開催できず、ガイダ 学科また学部として入学ガイダンス時から配慮す
ンスもきわめて短時間での開催だったため、新入 べきことであろう。

81
金城学院大学国際情報学部「WLIA」
(1 年生対象) したため、受講者は初めて見知ったメンバーと「質
授業実践報告 問会議」に臨んだことも例年との大きな違いであ
時岡新 った(クラスは[学籍番号 1・11・21・31 が時岡
クラス、2・12・22・32 が大嶋クラス]のように
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 編成されているが、「質問会議」のメンバーは[1・
容、成績評価の方法 2・3・4]のように編成した)。
目的、内容等は前掲・大嶋えり子報告のとおり 例年、複数クラスを合同して机・椅子が可動の
だが、おもな学修内容であるレポート作成が終わ 中規模の講義室で実施するばあい、6 から 9 グル
ったあとの 2 回分(全 15 回中の 13・14 回)を使 ープが並行して、にぎやかに「質問会議」を進め
って上級生クラス「WLIC」との連携授業を実施し た。そこには各クラスの担当教員が同席・巡回し、
たので以下報告する。連携授業は上級生クラス(受 状況に応じて最低限の介入をすることもあった。
講者は 2・3 年生)が今年度前期にトレーニングを 今回は他のグループのようすを知ることもなく、
重ねてきた「質問会議」を、上級生が司会(AL コ 教員が介入することもない。クラス分けを無効に
ーチと呼ぶ)を務め、WLIA 受講者が一般参加者 した時点で Google Meet でのミーティングを教
(メンバー)となって行う。「質問会議」の詳細は 員がモニタ、介入するやり方を取らないと決めた。
後掲・長谷川元洋報告を参照されたい。
例年(すなわちシラバス段階の計画)は机・椅子 3.学生の反応と今後の課題・可能性
を向き合わせて対面で座談する形式をとるが、今 個人情報保護の観点から、学生のコメントを改
年度はそれをオンラインで実施したのが大きな変 変しつつ紹介する。まず、対面授業をまったく経
更点である。なお、この 2 回分の成績評価は、他 験していない1年生としては「顔を見て会話する
の回に同じくコメントシートの提出(「質問会議」 ことの大切さ、メールなどでは感じられないもの
のふり返りと考察)をもって加点する。 を発見」「リアルタイムで意見交換することで集
中力も高まり、課題に取り組む意欲がオンデマン
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 ドの授業よりもかなり上がった」との声も聞かれ
づいて変更し実施した授業内容 たが、見方を替えれば、例年はその大切さを学生
連携授業「質問会議」の実施にあたっては各ク に意識化させていなかったとも言える。
ラスをさらに少人数に再編成するが、その際のグ オンライン授業への感想としては「今までのオ
ループ分けは当該年度の受講者数(=入学者数)、 ンラインの授業では、どのタイミングで発言すれ
開講クラス数(10 から 13、年度によって異なる)、 ばいいのか、どうやって発言すればいいのか、そ
および各演習室の定員(18 人から 24 人程度)・ の場に合った発言の内容は何かなどと色々考えて
設備の制約を受ける。すなわちすべてのクラスが しまい発言できなかったが、リアルタイムでの会
同人数でなく、演習室の広さ、机・椅子の事情(大 議で質問を考え自分の言葉で質問の意図を伝える
きさや可動性)もあって「質問会議」に適切なグル ことができ、オンライン授業でどう発言すればい
ープ分けができない場合も少なくなかった。これ いのか学ぶことができた」「リアルタイムで顔を
らにたいして今年度は Google Meet を使ったオ 出して会議を行うことによって反応がすぐわかる。
ンラインミーティングにて実施したため、クラス 瞬時に会話ができるので文字を打つという作業が
ごとの人数の違いや机・椅子などの諸条件にしば なくなりスムーズ」などがあったが、これらは対
られず、全グループを理想的な人数で構成できた。 面授業とも共通する課題であり、手法(遠隔)の問
また、クラス分けを無効にして学籍番号順に編成 題に矮小化するべきではないだろう。

82
東北大学「人文社会序論「現代日本学入門」」(1 採用して毎回の授業を Google Meet で実施し、学
年次以上対象)授業実践報告 生には毎授業終了後に感想や意見などを Google
伴野文亮・茂木謙之介 Classroom を介して提出してもらった。
大学からの要請と社会的状況に鑑み、授業内容
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 も大きく変更した。具体的には当初計画していた
容、成績評価の方法 学内外でのフィールドワークを全て取りやめ、第
シラバス段階における講義の目的は、文学部 1 3~7 回にかけて実施予定だった東北大学現代日
年次の学生を中心に現代日本学の前提的な知識を 本学研究室所属の教員 5 名が日本学の「方法」と
提示することによって日本学という学問領域への 「実践」をそれぞれ 2 週ずつ講義した。加えて学
導入を図ることである。学修の到達目標も受講生 生には東北大学附属図書館が提供する図書館の使
がこの授業を通して日本学の基礎を理解し、日本 い方とレポートの書き方についてのオンライン教
学に対してさらに深い興味をもつことと設定した。 材(①「学術情報の探し方」(24 分)と②「参考
上記目的を達成するための具体的な方法として、 文献の書き方と引用の仕方」(22 分))を視聴さ
日本学の研究対象や方法が極めて多様であること せ、研究活動に必要なスキルの獲得を促した。
を前提に、文学・歴史学・哲学・社会学それぞれの 以上のように授業内容を変更したことに伴い、
視点に基づく学際的かつ多様な方法論を提示した。 成績評価も毎時の授業後に提出するレスポンスシ
さらに、東北大学という機関の学的資源を活かし ートと図書館から提供された動画を視聴した上で
た日本学の可能性を考える見地から、仙台市立博 のミニレポート(合わせて 50%)、および教員が
物館や東北大学史料館、災害科学国際研究所を訪 提示した 5 つの実践の要約もしくは課題文献の考
問先と措定した学内外のフィールドワークを計画 察による最終レポートの提出(50%)によって判
した。(具体的な授業計画については、 定することとした。
https://www.sal.tohoku.ac.jp/media/files/2020% 授業に際しては講義音声の録音を行い Google
E5%AD%A6%E9%83%A81%E5%B9%B4%E7% Classroom にアップロードし、欠席した学生はそ
94%9F%E3%82%B7%E3%83%A9%E3%83%90 れを聴いてレスポンスを行えるようにした。
%E3%82%B9.pdf を参照していただきたい。)な
お成績評価は、各授業への出席状況や課題レポー 3.学生の反応と今後の課題・可能性
トをもとにして総合的に行うことにしていた。 授業後に質問を受け付ける際に学生からは積極
的な反応があり、それへの応答を通じて授業内容
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 の理解が図られていた。また毎回のレスポンスに
づいて変更し実施した授業内容 ついても充実しており、ある程度当初の目的は達
COVID-19 の流行を受けて、4 月 2 日には大学 することができたと考えられるが、一方でフィー
から前期開講予定の全ての授業をオンラインで実 ルドワークが一切実施できなかったため、そこで
施する旨の通達が出された。その上で授業形態と 期待された学びをいかに遠隔で達成するかは今後
しては、以前から大学が保持していたオンライン の課題である。
教育用プラットフォームである東北大学インター オンラインという非対面の環境下で、教員が一
ネットスクール(ISTU)による動画視聴型か、大 方的に授業内容を「プレゼン」することに終始し
学が契約した G-Suite 内の Google Classroom およ ない学生主体の授業を創るためには、どうすれば
び Google Meet によるライブ型かどちらかでの実 良いか―。試行錯誤を重ねながら、絶えず最善の
施が求められた。本授業では、後者のライブ型を 授業実践を模索していく必要がある。

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九州大学「音楽社会学(研究方法編)」(2年生対 かの表現に昇華させたいということを考える学生
象)授業実践報告 も複数いるように思われた。
長津結一郎 そのため、質的調査研究法の考え方を用いなが
らこうしたニーズに応えるべく、概ね以下のよう
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 な変更を行った。
容、成績評価の方法 まず授業冒頭に、演劇公演の記録映像を用いた
本講義は、九州大学芸術工学部で開設されてい オンライン・フィールドノーツの実習を行った。
る、音響設計学科 2 年生の必修科目である。科目 具体的には 3 分程度の演劇のシーンを事細かに記
の中では「理論編」と「研究方法編」に分かれてお 述してもらった。
り、筆者は「研究方法編」を担当している。研究方 その上で、自分自身の経験を内省的にとらえる
法編では、音楽を社会学的に研究する際の方法論、 研究手法「オート(自己)エスノグラフィー」を採
特に質的な調査法について多角的に体験すること 用し、課題として「新型コロナウイルス感染症に
で、「人は音楽を通じて何をしているのか?」を、 ともなう緊急事態宣言後の日本における、音風景
実践的に、自分の言葉にしていくことを目指して もしくは音楽活動」をテーマとしたオートエスノ
いる。 グラフィーを個々に執筆させた。加えて、事前に
従来の講義では、フィールドノーツの執筆やイ note を用いたブロ グ(「音とわ たしのこと」
ンタビューの手法、データ分析の手法など、質的 https://note.com/ototowatashi2020)を開設し、学
調査研究法の基礎を一通り学んできた。最終課題 内外を問わず執筆者を募集し、学生がレポートを
では、「人は音楽を通じて何をしているのか?」を 執筆する際に参照できるようにした。学生により
テーマとしたグループ・ディスカッションを行い、 執筆されたレポートのうち承諾を得たものも随時
プレゼンテーション形式で発表を行ってきた。成 このブログに掲載した。提出されたオートエスノ
績評価はフィールドノーツ、インタビューについ グラフィーは授業内のグループワークで交換し理
てそれぞれレポート提出を行い、グループ発表の 解を深めた。
内容を加味した成績判定を行なってきた。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 オートエスノグラフィーの課題にあたっては、
づいて変更し実施した授業内容 文章、詩や作曲、Twitter を模したツイート、短歌、
九州大学においては、「遠隔授業による科目の 絵などさまざまな手法を用いたレポートが集まっ
みの開講とし、対面授業によるものは開講しませ た。このことから、芸術が自己表現と客観的観点
ん」という通達のもと、春学期においてはすべて を結びつける一つの手段で、芸術の価値を感じる、
の授業を遠隔で実施することとなった。教員の側 などといった感想が学生から寄せられた。
も原則として在宅での授業実施を余儀なくされた。 今回の授業設計は、従来の授業と比較しても、
このような状況下で、従来の授業で実施してい 個人的経験に立脚した質的研究の可能性を提示す
た内容でできなくなったのは①フィールドノーツ るとともに、文章だけではない研究のアウトプッ
の執筆課題として授業内で実施していた、集団で トの多様性を垣間見る機会を創出したと言える。
の即興音楽ワークショップ、②模造紙や付箋など このような視座は、緊急事態における代替措置と
を用いたグループ・ディスカッションなどである。 してではなく、今後も継続的に検討・改良を加え
その一方、芸術工学部という学部の特性も相ま うるものとして授業を捉え返すものだと言えるだ
って、学生同士の間では、この期間の感情を何ら ろう。

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東京国際大学「専門演習」(3・4 年生対象)授業 これに引き続いて、日本映画『ハチ公物語』*3
実践報告 (1987)とアメリカ映画 HACHI*4(2009)の比
仲矢信介 較をおこなった。ここでは、時代、家族、ジェンダ
ー、伏線と回収、舞台装置、照明、アングル等の視
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 点から視聴と考察をおこなわせ、上述と同様に課
容、成績評価の方法 題→視聴→BS での討議→MS→コメントの順で進
国際関係学の一環として、アダプテーション作 めた。なお、両作品の全体の視聴と比較は学生個々
品を通じ、言語文化の越境がもたらす現象を観察、 にゆだね、各自の考察を最終レポートとして提出
記述できるようにする。成績評価は課題と学期末 させ評価した。
レポートの評価による。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 学生の反応は、思いのほかまずまずであった。
づいて変更し実施した授業内容 やりとりを通じて、以下の感触を得た。
3 月 13 日に、春学期開講を 2 週間遅らせるこ ZOOM の BS はその都度、別の学生たちとのグ
と、授業は全面的に ZOOM によるオンラインと ループを組むことができるため、対面では特定の
することが通知され、手続や準備が進められた。 メンバーで固まりがちなであることに比較して、
筆者はゼミの学生の協力で ZOOM を試用し、 刺激が多く新鮮な体験となった。また、画面共有
開始に備えた。その過程で、ZOOM はブルーレイ が対面よりスムーズに可能であり、これが議論の
ディスクの放映には不適であり、映画等を放映す 活発化につながった。
る場合は DVD あるいは Netflix 等の動画配信サー また、このような授業で懸念された著作権問題
ビスによる必要があって、データ圧縮のために映 もコロナ禍という状況でクリアされた。
像と音声の劣化は免れないこと、家庭では小画面 今後の課題は、オンライン授業で得た知見を対
で視聴しなければならないことを確認した。 面にも活かすことであり、BS→MS という進行、
そのため、素材を一部入れ換え、まずは短編小 スムーズな画面共有等の有用性を、対面授業でも
説とそれを白黒で映画化した作品(1940 年代)を 可能なよう工夫することだと考える。一方、全学
取り上げた。ひとつは、高精細な映像と技巧を凝 生が自宅でも一定以上の装置で映画の視聴可能な
らした音響に支えられた近年の作品は、圧縮され 環境に身を置き、大画面のデスクトップ PC を所
た小画面では理解に困難をきたすためであり、も 持していることが望まれるが、これは理想という
うひとつは、短い小説と映画から始めることで、 べきだろう。
早期にコロナ肺炎流行が収束し、対面授業が再開 「大佐の奥方」『モーム短編選(下)』行方昭夫
*1

された場合に、本格的な長尺の映画に移行できる 訳、2008、岩波書店
よう備えたのである。 *2
映画は『四重奏』、原題 Quartet、1948、モー
授業は、モームの短編「大佐の奥方」 *1
を行方 ム原作 4 短編を4監督が映像化した作品、本作の
昭夫訳によって読ませ、同作の映画化作品*2 との 同題名作品 “The Colonel's Lady” ケン・アナー
比較を試みることから始め、大略以下のように進 キン監督を含む、DVD、ジュネス企画、2020
めた。個々に課題を与え、考えたことをブレイク *3
『ハチ公物語』1987、神山征二郎監督、DVD、
アウトセッション(以下 BS)で話し合わせた上で 松竹、2013
メインセッション(以下 MS)で報告、討議、コメ *4
HACHI、2009、ラッセ・ハルストレム監督、
ント。 DVD、松竹、2010

85
フェリス女学院大学「基礎演習」(1 年生対象)授 学習時間の目安を提示したこと、授業時間中に各
業実践報告 自のペースで学習ができたことなどに起因すると
成田麗奈 考えられる。授業時間外学習が長大化してしまう
学生に対しては、学習時間の目安の更なる明確化、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 模範的な学修方法の動画配信をさらに徹底するほ
容、成績評価の方法 か、適切な学習支援の方法を検討したい。
大学での学び方、プレゼンテーションの仕方、 授業資料は原則として文書で提示したが、一部
期末レポートの書き方など基礎的なアカデミッ の課題では、音声・動画での説明や、課題提出の模
ク・スキルズを習得することを目的とする演習授 擬動画などを作成したところ、課題の提出率や理
業である。成績評価は平常点(課題への取り組み、 解度も高いことが観察された。音声・動画資料の
プレゼンテーション)50%、期末レポート 50%で、 活用は対面授業でも有効だと考えられるため、今
目標到達度に応じて評価を行うものである。 後も積極的に活用したい。
課題へのフィードバックに関しては、公開時期
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 の目安や、個別指導か全般的な講評かを事前に周
づいて変更し実施した授業内容 知したが、全般的な講評に関しては、自分自身に
①Web 会議システムを利用したリアルタイム授 当てはまることとして自覚しにくい、あるいは、
業、②オンデマンド授業、③課題学修授業の 3 つ 自分自身には当てはまらないにもかかわらず、
「で
が提示された。学生の学習環境に考慮した結果、 きていない」と思い込み何度も確認してしまうな
②③を主軸として、定期的に①の Zoom ミーティ どの懸念もある。学生がセルフチェックを行いや
ングを実施し、質問に答えたり、学生同士で意見 すい資料の作成などによって改善を図りたい。
交換をしたり、プレゼンテーションを行ったりし 総じて、対面授業と比べて各自のペースで学習
た。LMS は、
全学的に利用している Ferris Passport、 ができるためか、提出物に関して例年以上に高い
Google Classroom ではなく、学科が利用している 提出率と高い水準であったことは特筆に値する。
Moodle を採用した。 今後対面授業が再開する場合にも、遠隔授業で効
授業内容の大きな変更としては、入構禁止によ 果のあった方法を活用し、より学修効果を高めら
り図書館が利用できないため、図書館内で実施す れる方法を構築したい。いっぽうで、対面授業で
る演習は行えなかった。また、授業期間が 15 週か は他の学生の進捗状況を知る機会や、学生同士で
ら 13 週に短縮されたため、これに合わせて学習計 相談しあう機会があったが、遠隔授業ではそれら
画を立て直し、授業時に周知した。プレゼンテー が困難であったために限界を感じる側面もあった。
ションに関しては、学生の学習環境にも配慮して 学習環境の個人差に配慮して強制参加にはしなか
リアルタイムでの発表以外に事前収録も可とし、 ったため、Zoom ミーティングでの意見交換は一
クラスフォーラムに発表資料を投稿することで、 部学生のみにとどまった。クラスフォーラムの活
学生同士の意見交換が可能になった。また、学習 用や、授業時間外の Zoom ミーティングで学生同
環境の個人差に配慮し、課題提出期限については、 士の交流機会を設けるなど、可能な限りの対応は
平時よりも猶予期間を設けた。 したが、より学生同士が意見交換をしやすい環境
を構築する必要がある。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
遠隔授業により、例年よりも効率的且つ質の高
い学習ができているように見受けられた。これは、

86
阪南大学 「現代史 a(A)」(1~4 年生対象)授 を用いた。そして、上記の教材の内容を理解した
業実践報告 ことを前提とした小テストを課し、その点数と提
西田彰一 出状況によって普段の成績をつけた。
小テストは、学内の教育システムを毎回利用し
1.シラバス段階での授業の目的と概要、授業内 た(10 分で 10 問)。予習期間を設けるため、本
容、成績評価の方法 来の授業日の一週間前を目途に教材と課題を提示
授業の目的は次の三点である。①現代日本社会 し、授業日の一週間後までに提出を求めた。
の歴史に関する知識と思考法を身につける。②開 定期試験を実施することができなかったので、
国から太平洋戦争の敗戦に至るまでの日本社会を 最後の授業で授業のまとめとなるテストをオンラ
中心とする歴史の概要を正確に理解し、その知識 イン上で実施した。そのテストでは、50 分で 100
を用いて他人に説明できるようにする。③過去の 問の選択及び記述問題を課し、通常の小テストよ
出来事を通して、
「なぜこうなってしまったのか」 りも配点を高くする代わりに、難易度を高くした。
を考える習慣を身につける。 また授業に際しては、教材と課題アップロード
本授業では近現代日本の歴史、特に明治から昭 時と本来の授業日に、教材の視聴と課題の提出を
和戦前の時代を中心に扱った。そして、学生が自 促す通知を行い、毎週確認するように指示した。
らの力で日本の近現代の歴史について思考し、判 小テストの提出で出席点とみなしたので、理由な
断できる力を養うために、写真や映像資料を交え き課題提出の遅延及び未処理が続く場合は、マイ
てわかりやすく解説することを心掛けた。 ナス評価及び単位不可の対象とした。
授業内容はシラバス段階では、最初の第 1 回で
内容・評価方法を説明し、第 2~7 回に明治時代の 3.学生の反応と今後の課題・可能性
歴史を解説するとした。次に第 8~10 回に大正時 前期終了時のアンケートによれば、受講生 95 人
代の歴史について述べ、第 11~14 回までの間に昭 中 59 人から回答があった(回答率 62.1%)。学生
和戦前の歴史を授業で説明するとした。第 15 回で の反応はおおむね上々で、「この授業を受講して
まとめとし、定期試験週間に期末試験の予定であ 良かったですか」という問いに対して、
「非常に良
った。(実際には全 14 回となり、第 1 回の説明と かった」(19%)「おおむね適切だった」(56%)
第 2 回の明治時代の授業を統合した)。 と合わせて 75%であり、自由記述欄には、対面授
成績評価の方法は当初は小テスト 30%、期末テ 業と遜色なかったという意見もあった。
スト 70%とした。また、届け出なく授業を 6 回以 ただし、コミュニケーションには課題が残った。
上休んだ場合は、単位を与えないとした。 学生に学内メールを公開し、メールや学内のメッ
センジャーで質問があったときは、翌日までの返
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 信を心がけたが、「遠隔授業で教員とコミュニケ
づいて変更し実施した授業内容 ーションは十分に取れましたか」という問いに対
大学からは、阪南大学のオンライン教育システ して、「十分取れた」(14%)、「ある程度取れ
ム(HInT)を利用して、教材と課題を配信し、学 た」(14%)と 28%にとどまった。今後は授業動
生に課題の提出を課すようにとの通達があった。 画内で質問を呼びかけ、積極的に応答するという
そこで、ネット学習(LMS)と動画配信(録画・ ことを通して、学生と積極的にコミュニケーショ
Stream) によるオンデマンド型授業を実施した。 ンを図り、改善を試みたい。
遠隔授業では、①パワーポイント、②レジュメ
③パワーポイントを解説する音声動画などの教材

87
東京都立大学「人間・文化・社会」(一年生対象) 危機からみえてくる日本社会の特質について、授
授業実践報告 業で考える機会を設けたことは有益だった。
西山雄二 最終回では、討論会「前期のオンライン授業、後
期の大学」を実施し、教員 4 名、教務係長、人文
本稿では上記の授業科目だけでなく、一年生と共 社会学部一年生 7 名が登壇。議論は授業後も続き、
に実施した一連の教育活動にも言及する。 計 3 時間に及んだ。これまで学生アンケートによ
って彼らの意見を聞いたつもりになっていたが、
1.人文社会学部の 15 の専門分野の教員が司会役 生の声を聞くことの重要性を再確認できた。
(西山が担当)とともに提供するオムニバス講義。 夏休み中(9 月 1 日)に自主的勉強会を対面と
これまで、「愛」「悪」「生と死」「動物」「子供 配信のハイブリッド形式にて半日実施した。Zoom
と大人」
「ジェンダー」といったテーマを取り上げ を利用した配信画面を教室のプロジェクタで投影
てきた。2020 年度は「古典から学ぶ」。各学問分 し、マイクスピーカーを用いることで、会場とオ
野の「古典」からいま何を学ぶことができるのか ンライン参加者が自由に交流できる状態にできた。
を問う。成績評価は出席と学期末レポート。 参加は対面で 30 名、配信で 30 名(そのうち教員
は 10 名)。学生 6 名が前期授業で学んだことから
2.4 月初旬、東京都立大学は GW 明けから原則 テーマを決めて発表し、教員も含めて質疑応答を
的にすべての授業をオンラインでリアルタイム配 おこなった。教員から対面で助言や批判を受ける
信で実施する決定をした。人文社会学部の新入生 のは初めての経験で、大学での勉強の厳しさを痛
のうち(220 名)有志らは、教員に事前に読むべき 感したようだ。学生らは初めての対面授業、昼休
基本文献のアンケートをおこなった。私は彼らの みと放課後を体験して、心底喜んでいた。
意欲に感銘を受けて、自主的勉強会をオンライン
にて組織した。全 6 回の勉強会では私を含めて 4 3.本学では一年生の学習意欲が高く、4 月と 9 月
名の教員が発表し、学生は他学部も含めてのべ 60 に自主的な勉強会を開催することができた。彼ら
名ほど参加した。これは本学部一年生の 1/4 ほど は自発的に LINE グループを形成しており、困難
の数で、授業開始前に実りある交流の機会をもつ な状況でも情報共有し交流するたくましさをもっ
ことができた。 ている。彼らの自主性や創造性に後押しされるよ
教養科目「人間・文化・社会」は、教員の発表、 うにして、こうした授業や活動を成功させること
司会役の私との対談、質疑応答と立体的に構成さ ができた。
れる。課題や資料は事前に学内ポータルサイトに 対面と同時配信のハイブリッド形式の授業をど
て公開される。チャット機能を活用して、学生ら こまで効果的に実施できるのか。授業以外のキャ
が多数の質問を書き込み、それを司会の私が拾っ ンパスライフをいかにして保証するか。首都圏と
て担当教員に投げかけるという形式はラジオのト 地方(東京を忌避する感覚は根強い)の分断状況
ーク番組のようだった。授業後、アフタートーク をいかに緩和していくのか。課題は山積している
として、教員らが雑談を 10 分ほど配信した点も効 が、オンライン授業が長期化しているからこそ、
果的だった。視聴する学生らも休み時間の雰囲気 学生らとともに新たな教育活動を柔軟に開拓して
を味わうことができたからだ。 いきたい。
一回分は社会学の宮台真司先生とともに、「コ 〈動画作品〉
ロナ禍と日本社会」と題して司会と対談をおこな 「人間・文化・社会」ダイジェスト動画
った。目の前にある感染症の危機について、この 夏休み自主勉強会の動画

88
獨協大学「科学史I」(全学部全学年対象)授業実 いた講義へのフィードバックを manaba に提出さ
践報告 せることにした。授業内で学生に口頭発表を求め
野澤聡 ることは難しいと判断したため実施しなかった。
従来口頭でおこなっていた授業前後の質疑応答に
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 は、Zoom のチャット機能を用いた。
容、成績評価の方法
科学史Iは、歴史の中で科学と技術を捉えるこ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
とによって、科学と技術が産み出してきた様々な 授業に対する学生の反応について、三つの側面
可能性や課題を学ぶとともに、文章を正確に読み から述べたい。まず、講義へのフィードバックに
解き、それに基づいて自分の考えを論理的な文章 ついてである。提出期限を授業の数日後に設定し
で表現するという仕方で、批判的思考(critical たためか、記述の質・量ともに向上したものが目
thinking)を磨くことを目的として開講している。 立った。次に、manaba 上でアンケートを実施した
春学期科目である科学史Iは、古代から 19 世紀初 ことである。授業内容や期末レポートの書き方に
頭までの科学・技術の歴史における重要なトピッ ついて、自由記述を含むアンケートを実施したこ
クを取り上げて解説しており、19 世紀以降の事柄 とにより、授業の進め方などを調整するうえで大
については、秋学期科目である科学史 II で扱うこ いに役立った。最後に、期末レポートについてで
とにしている。 ある。オンライン授業では対面授業よりも成績の
成績評価は、期末レポートをおもな評価対象と 差が生じやすいことはすでに指摘されている。科
している。期末レポートは、科学史に関する基本 学史Iでも、優れた期末レポートが例年に比べて
的な文献数冊から教員が抜粋した文章の要約と、 増えた一方で、不可にせざるを得なかったものも
要約に関連する事柄について各自がテーマを設定 増えた。
して文献調査を行った結果を文章でまとめたもの 授業用ポータルサイト manaba を活用できたこ
から構成される。また、毎回の講義終了時に提出 とは、オンライン授業の可能性を感じさせた。と
するフィードバックの内容と、出題した要約を授 くに、学生自身がフィードバックを手元に保存で
業内で解説する際に学生が自発的におこなった口 きることは、講義による学修の積み重ねに大きく
頭発表の内容を、加点評価の対象にしている。 寄与することが期待できると考える。他方、現状
では課題も少なくない。とくに、インターネット
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 の接続環境が良好とはいえない学生が存在するこ
づいて変更し実施した授業内容 とは早急に解決されるべき重大な問題である。ま
獨協大学では春学期のすべての授業を、
Zoom 等 た、少人数の授業では、オンライン授業でのディ
の Web 会議サービスや授業用ポータルサイト等 スカッションやプレゼンなどをおこなうことは比
を利用してオンラインで実施することになった。 較的容易だが、講義のように多人数が出席する授
科学史Iでは、Zoom と授業用ポータルサイト 業では、発言を適切にコントロールすることが現
manaba を併用してリアルタイムオンライン授業 状のサービスでは難しいように思われる。画面を
を実施した。学期の後半では、授業時の録画を 長時間見続けることによる身体への負担を考える
YouTube にアップロードして履修者限定で公開 と、適切な休憩を挟むなど、これまでとは異なる
するようにした。 工夫や配慮も求められよう。オンライン授業の可
講義のやり方自体に大きな変更はなかったが、 能性を生かすためにも、課題解決に向けた継続的
これまで用紙に記入させて講義終了時に回収して な取り組みが必要であると痛感する。

89
京都芸術大学「文献資料講読」(2 年生対象)授業 科はデッサンや制作など、実技系科目が多い。そ
実践報告 のため、まずは学科内でどのような遠隔化が可能
野村朋弘 かを検討し、それを基に教務委員会でとりまとめ、
遠隔のルールを定めた。遠隔のルールとしては、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 原則として zoom を用い、オンデマンド、オンラ
容、成績評価の方法 インのいずれか、若しくは一科目でオンデマンド
絵画資料、古典文芸、歴史資料などの歴史的な とオンラインを併用するという程度である。そも
文献資料について、その読み解く能力を身につけ そも、実技系科目が多いため、どのように科目設
る初学者向けの科目である。芸術史をはじめとし 計をなすかは、学科・コースの研究室と担当教員
て、さまざまな歴史的な考察を行う際に必要とな に一任された状況であった。その中で、本科目は
るのは、こうした文献資料に記された漢文や古文、 芸術学科の共通科目として開講されていること、
そしてくずし字を読み解く能力となる。文献資料 また古文や漢文の初学者向けに設計されているこ
を読み解けるようになると、豊かな情報を得られ とを鑑み、オンデマンドとオンラインとの併用と
るようになる。しかし、現代人の我々にとって古 した。オンデマンドは 5 講時分、オンラインは 2.5
文や漢文は近くて遠い存在かも知れない。本科目 講時分と配分した。オンデマンドは 2 週間の視聴
では、日本の文献資料を読み解くため、調べるた を可能とし、講義内容は「文献資料の種類/純粋
めの初歩的な能力を養うことを目的としている。 漢文・変体漢文について/漢文の読み方/漢文の
各時代の文法からスタートし、具体的な史料を事 読み方・古文の読み方/変体仮名・崩し字の読み
例としながら、文献の読み方の第一歩を始めたい。 方、近代の文語を読む」とした。動画は講義時間を
古文・漢文の読み方、逐語訳を行うための基礎的 総計し、1 本 30 分程度を目安として分割し、視聴
な能力および文献資料の調べ方について身につけ の利便性を図った。また、オンデマンド講義の視
ることを目的とする。なお本科目は通信教育課程 聴の後、動画内で説明した課題(3 題)に取り組ん
の集中講義 1 単位に相当する科目である。開講講 でもらった。その後のオンライン講義では、オン
時は 7.5 講時で、成績評価は授業時内の取り組み デマンドで示した課題 3 題を中心にしながら、振
及び、事後テストで行う。講義内容は「文献資料の り返りとまとめ、質疑応対を行った。
種類/純粋漢文・変体漢文について/漢文の読み なお振り返り学修のためオンデマンド講義は、
方-訓読法を学び、実際に読んでみよう-/漢文 受講後も在学中は視聴できるように設定した。
の読み方・古文の読み方/変体仮名・崩し字を読
む/近代の文語を読む/文献資料の探し方/まと 3.学生の反応と今後の課題・可能性
め」となっている。 コロナ禍の影響でインターネットのみの開講と
なり、理解度が深まるか教員としても若干の不安
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 を持っていたが、アンケートなどで学生の反応を
づいて変更し実施した授業内容 みると感触は良かった。オンデマンドの視聴期間
通信教育課程には遠隔型のテキスト科目と、対 を設けたことによって、漢文の読み方のルールな
面集中型のスクーリング科目がある。コロナ禍に どを繰り返し視聴することが可能となり、疑問点
よって、対面集中講義のスクーリング科目も遠隔 をオンラインでの講義で解決することができたよ
化されることになった。芸術学科・デザイン科・美 うだ。通信教育課程は遠隔学修が主であり対面の
術科のスクーリング科目が対象である。しかし、 講義は少ない。コロナ禍で対面の講義も遠隔とな
芸術学科は講義を主とした科目が多いが、他の学 ったが、逆に可能性を見出した感があった。

90
立命館アジア太平洋大学「Global History EA」(2 だが、自宅からアクセスしていた学生が豪雨で避
回生以上対象)授業実践報告 難を余儀なくされたときにも図らずも活用される
蓮田隆志 ことになった。
配布資料(ppt スライド。授業内で質問する部分
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 をカットするなど、ZOOM の画面共有で使用する
容、成績評価の方法 ものとは多少変えてある)は LMS に前夜までにア
2 回生以上を対象とした英語開講講義。第 2 ク ップロードして、約 1 週間で削除する旨を通知し
ォーターの科目で週 2 回開講、7 週全 14 回(各回 た。これは対面授業と同じだが、通信環境から補
95 分)で構成される。歴史学の一領域としてのグ 足説明を聞き取れなかった場合(そして筆者の英
ローバル・ヒストリーについての概説で、従来の 語力)を考慮して、例年よりも文章を詳しく、補足
歴史学との違いや主要な話題や方法論について基 説明を前提としたフレーズを主語述語完備した文
礎的な知識を涵養することを講義目標に設定して にするようにした。
いる。受講生は例年 150~200 名前後である。 第 1 クォーターの経験から、大講義でブレイク
当初は、毎回の授業後に LMS(manaba)で行う アウトセッションによるディスカッションは行わ
After class quiz(30%)、中間試験(30%)、期末 なかった。代わりに、問いかけへの回答をチャッ
試験(40%)で評価するとしていた(試験はいず トで募った。
れも記述式)。また、シラバスにはグループ・ディ
スカッションの実施を示唆する文言も記述してお 3.学生の反応と今後の課題・可能性
いた。なお、教科書は指定していない。 IT に親和的な学生が多いことや既に第 1 クォー
ターで遠隔講義を体験していることもあって、遠
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 隔講義自体への適応はそれほど問題無かった。
づいて変更し実施した授業内容 多くの大学で共通する事象だろうが、チャット
大学の決定は ZOOM を使用した同時配信のオ で意見を募ったときの反応は対面授業よりもかな
ンライン授業である。録画は原則禁止でオンデマ り良い。但し、全体ではなく教員へのプライベー
ンド配信も行わない。 トメッセージで届く割合が高かった。国内生と国
一斉試験が困難なことから、Participation:28 点 際生でそれほど違いも無く、単なる操作ミスなの
(2×14 回、ZOOM の投票機能を用いて実施。授 か判断は難しい。大講義では投稿者の偏りが直感
業の前提知識を問うもので、正誤関係なく点を与 的に掴みづらい点も課題だが、TA を上手く活用す
えたので出席点に近い。投票結果を元に指名して るなどで対応できるのではないだろうか。
それら(例:Columbian Exchange)の内容を説明 投票は開始から 15 分くらいまでのどこかで実
させるなどした)、In-class test:42 点(3×14 回、 施したが、
「もう投票は済んだか?」という問い合
授業内に 10 分程度。LMS にアクセスして選択式 わせチャットが毎回五月雨式に届くため、こちら
のテストに回答する。分量を少なくして回答後に の集中力がその度に削がれることがあった。
若干の休憩時間を兼ねることも想定)、Weekend 教室のスクリーンで見るよりも配布資料が見や
assignment:42 点(6×7 週、金曜の授業後に LMS すいという感想はかなり多かった。これまで、紙
にアクセスして回答。50~200 語程度で回答させ 媒体での配布も行ってきたのだが、ノート PC や
る記述式)とすることを初回授業で通知した。100 タブレット持参が標準化するならば、印刷の労力
点を超える余分は電波状況が悪いなどの事情で遅 が不要となるだろう。但しその場合、教室でのコ
刻・欠席した受講生への救済措置を想定したもの ンセント増設と光熱費増加が課題になるだろう。

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金城学院大学国際情報学部「WLI C」(2,3 年生) 「Google スプレッドシートを使った第6回から
授業実践報告 第 10 回までの授業の冒頭で一週間の自身のリー
長谷川元洋 ダーシップに関する振り返りの共有」「学外者を
招いての質問会議のセッション(2 回)」「前期の
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 授業を振り返り(第 15 回)」であった。オンデマ
容、成績評価の方法 ンドでの遠隔授業を3回、リアルタイム型遠隔授
WLI C では、「質問会議」のトレーニングを 業10回、対面授業2回を実施した。
通じて、「権限が無いときも発揮できるリーダー 学外者を招いての質問会議は対面授業では、不可
シップ」(日向野 2015)の修得と個人とチーム双 能なことがオンライン授業になったことで可能に
方の問題解決力の育成を目指している。 なったケースである。6 月 25 日の授業には 20 名、
シラバス段階での講義内容は、アクションラー 7 月 4 日の授業には 14 名の全国から授業参加があ
ニングコーチとしてのスキル、能力を身につける った。参加者は、学生、院生、高校教員、大学教員、
ため、質問会議を授業内でのトレーニングを5回、 会社員とバラエティに富んだ方の参加があった。
他学部生を対象に2回、下級生を対象に 2 回、授 また、7 月 11 日と 7 月 18 日は対面での質問会議
業外で2回の合計 11 回行うことにしていた。また、 を大教室に間隔を開けて座らせる形で実施したこ
第2回の授業で 1 年生が受講しているWLI A とで、対面では話しやすい一方で、相手の話を遮
のクラスにWLI Cの受講学生が出かけ、PCの ってしまったり、質問会議のルールを守らず、意
基本的な使い方を学ぶ授業のサポートを行うこと 見を言ってしまったりするという反省も見られ、
にしていた。第3回の授業では、そのサポート活 オンラインと対面のそれぞれのメリット、デメリ
動の中でリーダーシップが発揮できたかどうかを ットを確認することができた。
振り返る予定であった。 また、毎回の授業後に感想を「ポイント、理由、
成績評価の対象物の割合は「授業内セッション 例、ポイント+抱負」の形(PREP+A 法)で書か
レポート 20%、授業外セッションレポート(2 回) せ、LMS に提出させた。授業の冒頭で数名の感想
40%、ブックレポート(2 回) 20% 、全体リフ を取り上げ、学生の学びを共有するようにした。
レクションレポート 10%、キーコンピテンシー
に関する自己評価(2 回) 5%、キーコンピテン 3.学生の反応と今後の課題・可能性
シーに関する他者評価(2 回) 5%」とした。 「WLI C を受講して良かったと思うか?」と
いう質問に対し、約8割が「とても良かった」、役
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 2 割が「良かった」と回答した。また、「WLI C
づいて変更し実施した授業内容 の授業を受けて自分のリーダーシップは向上した
遠隔授業のルールは、非同期型(オンデマンド と思いますか?」に対しては、約 9 割が「はい」、
型)授業では、動画配信、資料等の提供に加え、学 約1割が「どちらでもない」と回答した。遠隔授業
生相互に意見交換できる状況、教員に質問ができ であっても、授業の目標は達成できたと言える。
る状況が確保されていることが示された。これは (引用文献)日向野幹也(2015),第 9 章 新しいリ
文科省が示している遠隔授業の条件に基づいたも ーダーシップ教育とディープ・アクティブラーニ
のである。 ング,ディープアクティブラーニング (松下佳代
変更して実施した授業内容は「日常生活の中での 編著),p249,勁草書房
自身のリーダーシップの振り返りの結果の文章化
(マインドマップの活用、PREP+A法の活用)」

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金城学院大学国際情報学部「WLI C」(2,3 年生) 〇Power Point のスライド 上級生が 1 年生に対
「WLI A」(1 年生)合同授業実践報告 して、権限が無いときも発揮できるリーダーシッ
長谷川元洋 プや質問会議に関して説明するためのスライド
(筆者が作成し、学生はそれを使って説明。一部
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 の学生はアレンジして使用。)
容、成績評価の方法 〇モニター用コンピュータ7台 1台で4グルー
目的、内容等は前掲・長谷川報告のとおりであ プのミーティングルームを表示させ、合計26の
る。第 13 回、第 14 回の 2 回は、1 年次開講科目 ミーティングルームを一斉にモニターした。困っ
「WLI A」との合同授業を行ったため、この 2 回 ているグループには、チャット等で適宜介入した。
について WLI C の授業の側面から報告する また、進行に関する指示もチャットで行った。
(WLI A の授業の側面からの報告は時岡の報告
を参照)。成績評価に関しては、授業後にLMSに 3.学生の反応と今後の課題・可能性
提出する感想を授業内セッションレポート(20%) WLI C を履修している学生にとって、有意義
の一部として加点している。 な機会になった。学生の感想の 1 つを紹介する。
「この授業を通じて質問力について考え向上させ、
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 引っ張るだけではないリーダーシップを発見し実
づいて変更し実施した授業内容 行に移せた。この授業では質問力を重点において
遠隔授業のルールは、前掲・長谷川報告のとお きたが、1 年生の頃の思考力や視点が大きく変わ
り、文科省が示している遠隔授業の条件に基づい ったことでそれが何なのかを自分自身が体感し、
たものである。 引っ張るだけでなく、意見や考えを引き出すこと
授業内容は変更しなかったが、Google Meet を もリーダーとして重要なスキルの一つであること
使ったリアルタイム型遠隔授業として実施したこ を確認した。1 年生との質問会議において課題の
とで、授業方法は変更となった。WLI C の受講 提出についての問題提示が非常に多かった。ほと
学生 50 名は、第 12 回の授業までに質問会議のト んどの人が『早く出して終わらせてしまった方が
レーニングを重ねており、155 名の 1 年生に対し いい』という意見が多くあった中で『なぜ課題を
て、テレビ会議にて、質問会議を行った。 早く出さなければならないのか?』と問うた所、
授業で使用したシステム等は以下の通りである。 課題を早く出すことよりも課題の質を上げた方が
〇テレビ会議システム:Google Meet いいという意見になり、それについて話し合った。
〇WLI C 用全体用ミーティングルーム 1 自分自身を成長させるためにも、相手の確信をつ
〇質問会議用ミーティングルーム 25 くためにも質問が非常に重要だということがわか
〇LMS WLI A 全体用コース(通常授業用のクラ った。これは何かして伸びるわけではないので、
ス別のコ)ースとは別に WLI A を履修している全 自分自身が質問をたくさんすることで磨かれると
学生と WLI A を担当している教員全員を登録した 思うのでもっと伸ばしていきたい。」
コース)、WLI C 用コース 来年度以降、通常の授業形態に戻ったとしても、
Google スプレッドシート(学生名簿に質問会議用 1 年生とのオンラインでの質問会議は継続したい
のミーティングルームの URL を掲載し、学生が自 と考えている。教室の確保が不要であり、感染症
分が使用するミーティングルームに入室するため 流行等の影響を受けないからである。
の入り口として用意。また、1 年生には自分が抱え
る問題を記入させ、スムーズに)

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中部大学「近現代文学講読A」(2年生対象)授業 そのため、LMS を主なツールとして使用するこ
実践報告 とは諦め、Google アカウントを大学用に個人で取
服部このみ 得し、使用することにした。授業動画や資料は
Google ドライブにアップロードし、すべての課題
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 は Google フォームを用いて作成した。
容、成績評価の方法 動画や課題の URL を掲載したメールを毎週授
「近現代文学講読 A」は、太宰治「走れメロス」 業時に学生に送信し、後ほど確認しやすいように
「十二月八日」の精読を通して、作品の読解方法 LMS にも掲載した。
の基本を習得するとともに、文体やテーマなどに 課題はメール送信から 3 日間を期限とし、提出
ついて理解を深めることを目的とした授業である。 してもらうようにした。
成績は、毎授業後に提出するコメントおよび課 ちなみに、Google ドライブにアップロードした
題と、1 作品を読み終えた後に課すミニレポート ファイルは、閲覧のみ可能(印刷・ダウンロード・
の結果を総合し、評価した。 コピー不可)にすることができ、セキュリティの
面でも安心できる。今回の授業では、動画は閲覧
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 のみ可とし次の授業日まで公開、PDF 資料は授業
づいて変更し実施した授業内容 終了まで公開、ダウンロード可とした。
要請された主なルールは次の 4 点であった。
・課題提出の期間にゆとりを持たせること、分散 3.学生の反応と今後の課題・可能性
して課題を課すこと 正直、対面の時より出席率がよかった。
・学生からの質問などへの回答、フィードバック さらに、時間的・物理的な制約が緩くなったこ
を必ず行うこと とで、対面時より授業へのコメント量が増えた。
・著作権に留意すること 授業の区切りとなるところで 5~8 本に分けた
・ファイルサイズを可能な限り小さくすること 計 90 分ほどの動画を毎回あげていたが、区切られ
この授業では映像を数本見せる予定であったが、 ているために見やすいと評判が良かった。
著作権に留意し、映像が書籍化された資料や、見 編集・撮り直しなどもしやすくなるため、動画
せる予定だった映像の原作にあたる作品を読んで を区切ることはぜひお勧めしたい。
もらう課題へと変更した。 フィードバックと講義を合わせると毎回 90 分
授業の方法はオンデマンド式を採用し、パワー 近い動画になってしまったが、区切っていたこと
ポイントや PDF 資料(レジュメなど)の画面を共 もあってか、長さへの不満の声は殆どなかった。
有しながら講義をしたものを録画した。Zoom の 長さによってはこちらで必ず見るべき箇所を指
個人ミーティングを使用することで比較的容易に 定し、一部割愛してもよいとすることもあった。
軽いサイズの動画を作成することができた。 また、Google ドライブに動画をアップロードす
(動画サイズは、毎回計 70~100MB に収まった) ると、再生速度の選択が可能となる。学生によっ
遠隔授業における使用ツールは、学内で主に使 ては 1.5 倍速で見ているとのことだった。
用される LMS(Course Power)か電子メールが推 集中力が途切れた際に動画をいったん止めたり、
奨されていた。 聞き逃した箇所を見返したりできることを良いポ
しかし、LMS に関しては遠隔授業実施に伴い、 イントとして挙げる学生もいた。
セッション継続時間やアップロードできるファイ このような内容の取捨選択や速度の選択はオン
ルの上限変更、学生へのアクセス制限が生じた。 デマンド式授業だからこそできることだろう。

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常葉大学健康プロデュース学部こども健康学科 たが、ここでは遠隔でできる言葉を介した創作的
「保育内容(言葉)」(2年生対象)授業実践報告 な活動を行う方向に変更した。本学では前期の後
花家彩子 半に部分的に対面授業が再開され、学生は定期的
に顔を合わせることが可能な状況にあり、学生の
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 生活の中に限定的ではあるにせよ身体の共在があ
容、成績評価の方法 る状況で制限付きの演劇的活動を行なっても、学
この授業は保育者の養成課程の一部で、必修科 生の身体感覚や言語感覚の変化と学習は望めない
目である。開講年度は 2 年次で、1 年次の学習内 と考えたためである。
容をを発展させてより実践的な保育の内容や指導 そこで、演習としてグループでリレー形式の物
の方法を学ぶことを目的とし、シラバス上では講 語作りと、作った物語を映像化することを試みた。
義と演習を組み合わせて学習する予定だった。シ グループでの物語作りはコメント機能を用いて実
ラバスは、①乳幼児の言葉の発達と環境について 践した。次に、創作した物語の一部を個人で映像
理解する②領域「言葉」のねらいと内容を深く読 化(1 分程度の映像をスマートフォンで撮影)し
み取り正しく理解する③言葉の発達を促す管理・ た。映像化する際、家の中にあるものしか使って
支援・援助を具体的に考えることが出来るように はいけない、何か購入したり、制作したりしては
なる、ことを目標とし、これらを踏まえて以上の ならないという条件が付された。これは物体を何
3つにより保育を構想する方法を身につけること か別のものに見立てることや、見立てたものをそ
を目的としていた。 れらしく見せる言葉遣いや工夫を学習するためで
ある。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 最終課題として、創作した物語と映像の違いと、
づいて変更し実施した授業内容 映像化する際に行なった見立てを成立させるため
当該科目はこれまで演劇的な活動を取り入れた の工夫をレポートとしてまとめた。
ワークショップ(演習)とその振り返りを含めた
講義によって学習されていたが、今年度は全 15 回 3.学生の反応と今後の課題・可能性
を遠隔にて実施した。 最終レポートでは、演劇的な活動を対面で行っ
使用可能なツールは、教務システムを活用した ていた際には何となく流れていたような表現のデ
資料やレポートのやり取り、Google クラスルーム ィテールや、
「やりたかったができなかったこと」
を使用することができる他、学生との合意が確認 に言及する学生が多く、このような反省の精密さ
できれば制限はなかったが、学生の通信状況や使 は遠隔授業によって得られた成果である。物語の
用デバイスに対する配慮は求められていた。本学 創作や映像化の課題についても、対面して作って
科では、ほとんどの学生が無制限かそれに近い通 いないために本人たちも意図しない壮大な物語が
信状況だったが、スマートフォンのみで学習にあ 綴られていくことに面白味を感じたり、映像化す
たる学生が無視できない割合で存在した。 る際に結果として SNS に共有するような動画とは
演劇を教育方法として用いようとする議論にお 異なるスマートフォン撮影になったことが発見さ
いて、発声や身体接触を避けながらいかに演劇的 れたりした。デジタル化の推進される保育業界に
な活動を実践するか、現在も様々な試みと評価が 出ていく学生にとっては、保育の内容に結びつけ
なされている(参照: http://ekk.moo.jp/?p=460)。 て慣れたツールの新たな使い方を発見する機会に
もちろん、当該科目でもオンラインミーティング なったのかもしれない。
等で演劇的な活動をすることは不可能ではなかっ

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大阪国際大学「地域コミュニティ論」
(2 年生対象) 題提出から判断することである。なお本学は、6
授業実践報告 月初旬から対面授業が一部再開され、7 月上旬か
早川公 ら再度遠隔授業へと切り替わった。以上の方針と
経緯から、第 1~2 回の授業は資料配信型、第 3~
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 5 回は YouTube によるオンデマンド型、第 6 回は
容、成績評価の方法 教室での対面型、第 7~10 回は対面授業を Zoom
本授業では、経済学科の中で「地域」や「コミュ で収録して配信するハイブリッド型、第 11~15 回
ニティ」を学習する意義や意味について理解する はオンデマンド型と変遷した。
ことを第一の目的とし、「a. 授業内容に関心や疑 コンテンツ作成のイメージは、「パワーポイン
問を持ち、それを言語化できる」「b. 地域コミュ ト付きのラジオ」である。動画は原則「一発撮り」
ニティに関する基礎的知識を理解している」「c. とし、10~20 分のものを「アジェンダ(取組項目)」
地域コミュニティに関わる実践的事例を調べて説 「前回のフィードバック」「講義」の 3~5 つに分
明できる」の 3 点を授業目標とした。 けて YouTube から配信した。動画は、切り分けた
上記の達成に向けて、まずは「コミュニティ」に コンテンツごとにワークを設定し、それを Google
関する社会学・文化人類学等の基本的蓄積を説明 フォームに回答するようにした。
した。その上で、コミュニティが SDGs といった 工夫した点は 3 点挙げられる。第 1 に「一発撮
現代的文脈の中で重要性が高まっていることを説 り」で教員の生身の雰囲気をコンテンツに載せる
明し、コミュニティ・ビジネスやコミュニティ金 ようにしたこと、第 2 にフィードバックを「ラジ
融といった「経済」と関連づけて講義した。 オのお便り風」に紹介し学生とのコミュニケーシ
一方で、学生の提出物を確認したところ、序盤 ョンの機会を確保したことである。これらの工夫
に文書作成能力や資料検索能力に不足を感じたた は、Facebook の「大学教員グループ」で紹介され
め、各回において講義時間 90 分のうち 20~30 分 た「オンライン上で学生と繋がる、5つの方法」と
をフィードバックに当てた。 重なることを後に確認できた。3 つ目は、最終レポ
当初の成績評価は、平常点、中間テスト、最終レ ートと各回のワークを連動させ、ワークに取り組
ポートを想定していたが、遠隔授業に伴い、課題 めば最終レポートが仕上がるように設計したこと
提出状況により 30%、課題の質と量で 30%、最終 である。こちらは、成瀬尚志編『学生を思考にいざ
レポート 40%へと変更した。最終レポートは、あ なうレポート課題』(ひつじ書房、2016 年)が設
らかじめ 3 つの節に分割して学生に提示した。お 計の手助けとなった。
およその内容は、「コミュニティとは何か」「コミ
ュニティとコモンズの関係」
「コミュニティ・ビジ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ネスの実践例紹介」であり、文字数は 1200~2000 コメントから受け取る学生の反応は、概して好
字と設定した。 評であった。とりわけ、授業を通じて知識だけで
なくレポート作成能力も向上したという声が印象
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 的であった。またハイブリッド型の授業は、回を
づいて変更し実施した授業内容 追うごとに教室での受講者が減りオンデマンドを
5 月初旬に大学本部からは以下の 3 点の方針が 選択したのも興味深かった。一方で、受講者 43 名
示された。第 1 に、オンデマンド型かリアルタイ 中 13 名がいわゆる「ドロップアウト」した。この
ム型かを学生に示すこと、第 2 に、LMS の UNIPA 課題に対処しながら、学生自身の自発的な学修を
を通じて授業の連絡をすること、第 3 に出席は課 促すことが今後の課題であり可能性である。

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大東文化大学「社会 1(歴史)」(主に 1~2 年生 加え、遠隔授業の実施、講義の回数の減少、筆記試
対象)授業実践報告 験を別の手段で代替するなど大きな変更を余儀な
松岡昌和 くされた。大学からは、オンデマンドで授業を行
う際に、学生の通信環境への配慮を求められてお
1.本来のシラバスでは、講義の目的を①歴史を り、動画の軽量化についても案内があった。
学ぶことで長期的で広い視野を身につける、②日 授業はオンデマンドによる動画配信を基本とし、
本の成り立ちの多様性に対する理解を深めていく、 MS Powerpoint のスライドに音声をつけて 45~70
③歴史上の資料や記録を読み解いていくことで、 分程度のものを 1 回分とした。収録は OBS を用い
情報に対するリテラシーを身につける、④さまざ た。映像・音声の細かい調整を行える上、スライド
まな歴史観・世界観を知ることで批判的な思考を 切替時に音声が途切れるのを防ぐためである。編
できるようにする、とした。講義の概要で示した 集時の機器への負担やミスの際の損害を最小限に
内容は以下の通りである。 するために、1 編の動画は 15~25 分とし、3 編を
現在は過去の積み重ねの上にあり、歴史を知 1 回分とした。動画は、Handbreak を利用して軽
ることは現代の世界のなりたちを知る上で極 量化し、講義内容を記したレジュメや課題資料(い
めて重要である。一方で、歴史を見る際に現 ずれも PDF)とともに大学アカウントの Google
代の主権国家を過去に投影してしまう危険も Drive にアップロードし、PDF 資料はダウンロー
ある。本科目では、国民、国境、一元化された ド可、動画はダウンロード不可とした。課題資料
政府といった現代国家のかたちを前提とせず、 は、関連する新書や一般書の一章分を予習用とし
広く海域アジアやグローバル世界のなかに日 て毎回用意したもので、講義内容の復習とともに、
本列島を位置づけてその歴史について考えて 課題として配信している。課題の回答は Google
いきたい。それにより、「日本」の成り立ちの Form を使用して、自動採点機能による負担軽減を
多様性を知り、歴史という営みを通じて批判 図った。これら基本的に Google 社のサービスを全
的な思考を身につけることを目標とする。 面的に採用したので、大学契約の G Suite で利用
シラバスでの講義内容は、各回以下の通りであ 可能な Google Classroom に学生を誘導し、資料の
る。①「日本」とは何か、②東アジア世界とは何か、 配信からテスト形式とした課題の成績のインポー
③律令国家と東アジア、④国交なき通商の拡大、 トまでを一元的に行った。
⑤国風文化は「国風」か、⑥モンゴル帝国と日本、 ミニレポートについては、Google Classroom を
⑦倭寇の時代、⑧琉球はどこまで「日本」か、⑨ 使用して、予め作成した Google Document のテン
「鎖国」という外交、⑩近世的世界の成熟、⑪明治 プレートのコピーが全員に自動的に配信される仕
維新とは何だったのか、⑫日本の近代化とアジア、 組みを利用した。自動的に編集が記録される点、
⑬「日本人」の境界、⑭日本は「単一民族国家」か、 常に教員と学生個人とでファイルが共有されるた
⑮改めて「日本」
とは何か。
成績は、筆記試験 60%、 め、提出し忘れが発生しないなどの利点がある。
ミニレポート 40%(3 回程度)で評価することと
していた。 3.大学の LMS を初回の案内を除いて使用しなか
ったため、学生によっては Google Classroom とい
2.本科目は小学校教員免許取得のための授業で う別システムの使用を煩雑に感じる向きもあった
あるため、シラバスの記載事項を変更することは が、一方で、直感的な操作が可能な同システムを
できないが、2019 年度前期より担当するなかで、 便利だと指摘した学生も少なくなかった。
これまでも運用面で微調整を行ってきた。それに

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駒沢女子大学「イギリス文学Ⅰ」
(2 年生以上対象) 業内容を同時に実施、授業関連映画の鑑賞を取り
授業実践報告 やめたことにより授業回数を 15 回から 12 回に短
松山響子 縮した。短縮授業分に相当する内容としてミニレ
ポート(2000 字程度)を課題とした。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 授業形態は「同時双方向型授業」
「オンデマンド
容、成績評価の方法 型授業」の複合型とした。
「前回授業の質問回答」
講義目的 を同時双方向型で行い、
「今週の講義」はオンデマ
7 世紀から 18 世紀までイギリス文学史の概要を ンド型授業として配信した。オンデマンド型授業
理解することを目的とした。 は学生の通信環境への配慮、そして自分専用のパ
講義内容 ソコンを持いない学生を考慮した結果であった。
イギリス文学史上における主要な作家、作品を リアクションペーパーとして各回授業後に「授
取り上げ、作家の伝記情報と作品のあらすじやテ 業内容要旨(400 字程度)」
「感想(200 字以内)」
「質
ーマと合わせて各作家あるいは作品の文学史上の 問」を授業終了後に提出期限を設け提出させた。
位置づけや現代への影響を講義した。作家によっ
ては英語そのものへの影響も説明していった。ま 3.学生の反応と今後の課題・可能性
た文学の様々なジャンルの発展についても講義し 学生の反応
た。 リアクションペーパーの「質問」の数を見る限
講義はオリエンテーション、関連映画の説明と り、学生は非常に意欲的であった。毎週授業冒頭
講評を含めて全 15 回である。各回の授業ごとにテ で「質問に対する回答」を行っていたが、学生によ
ーマを決め、スライドや映像情報、授業プリント っては「自分が思ってもみなかったことが質問を
を用いて授業を実施する予定であった。 されていて楽しかった」あるいは「ほかの人がし
成績評価の方法 た質問が大変興味深かった」とのコメントがあっ
定期試験、授業内で行う課題、授業参加態度で た。他者の質問を聞くことで学生自身が行う質問
評価をする。配点は定期試験 50 点、授業内課題 30 の質や数が向上していったと考えている。
点、授業参加 20 点とした。定期試験は持ち込み可 講義のオンデマンド配信は「複数回聞き直すこ
の論述試験を実施する予定であった。 とができた」あるいは「自分のペースで講義を聞
くことができた」と通信環境以外の理由で学生に
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 好評であった
づいて変更し実施した授業内容 今後の課題・可能性
大学から要請された遠隔のルール オンデマンド資料は引き続きパワーポイント動
全ての授業を 3 つの遠隔授業形態「課題研究型 画形式とする。パワーポイントに書かれている以
授業」「同時双方向型授業」「オンデマンド型授 上の情報を動画内で説明していきたい。
業」、あるいは複数形態を組み合わせ実施。 授業を聞くことによって「質問をする」ことが
全ての授業を 15 週から 12 週に圧縮して実施。3 良いこと、情報を精査する上で重要なことを繰り
週分の授業に相当する内容を課題等で補い、学習 返し伝える。引き続き、質問しやすい環境にする。
目標が達成できるよう構成すること。授業期間中 積極的に「質問する」ことができるようになる学
にテストを実施、追試験や再試験は実施しない。 生は情報を精査する力を身に付けるはずである。
大学からの要請に基づいて変更をした内容
初回の授業オリエンテーションと第 2 回目の授

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東北大学文学部「現代日本学各論」(3 年生以上) 生からの映像と音声の配信を切るように求め、学
授業実践報告 生の通信容量に配慮した。授業中では毎回 2~3 度
茂木謙之介 学生からの質問を受け付ける時間を設け、そこで
はチャットもしくは音声機能を使用して質疑応答
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 を行った。
容、成績評価の方法 毎回の授業後には学生に毎回短文で課題を求め、
本授業は近現代皇室の表象の検討を通して日本 評価対象とした。欠席した学生への対応として授
学研究の可能性を考えることを目的に、令和改元 業音声を録音の上 Google Classroom へのアップ
前後の天皇と皇室をめぐる様々なイメージを検討 ロードを行い、それを聞いて課題が提出された場
し、それらが現代日本社会においていかに位置づ 合、ライブ授業に参加したものと同様に評価した。
けられるのかを考察するものを想定していた。 授業内容については、当初予定していた授業内
講義形式をとり、第 1 回から第 3 回にかけて導 容の一部が学期内での調査を前提としたものであ
入、天皇・皇室と表象の関係、検閲制度など前提の ったため、講義の順番を一部入れ替えた。また授
共有を行い、第 4 回から第 14 回にかけて各論的に 業内で参照を予定していた一部の映像資料につい
関係する事象を分析することを目指し、第 15 回に ては、Web で著作権的に問題ないものに限定して
まとめる計画であった。毎回の授業の進め方とし Meet の画面共有機能を利用して提示し、通信容量
ては当日レジュメを配布し、授業中にはパワーポ の不安な学生に対応するため、事前に Google
イントでの資料提示を予定していた。特に現代皇 Classroom で URL を送付して参照を要請した。
室の表象を扱う関係上、映像資料なども検討対象 なお、遠隔が決まる前の段階から授業に対する
として提示することを企図していた。 アウトプットや課題は既存の大学 LMS を経て回
参加者には毎回アウトプットを求め、ブックレ 収する予定であったが、前述のように大学 LMS が
ビューを中心とした小レポートの提出と、学期末 全学教育に優先的に使用されることとなったため、
のレポートを評価対象とする予定であった。 Google Classroom で回収し、適宜レスポンスを行
った。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
づいて変更し実施した授業内容 3.学生の反応と今後の課題・可能性
大学からは 4 月 2 日の段階で全面オンライン授 今回の授業では学生からの反応がリアルタイム
業とする決定がなされ、講義形式の授業はライブ で可視化されなかったため、反応を見つつ授業内
配信か教材配布が推奨された。脆弱性が指摘され 容の調整を行うなど対面授業では行えていた対応
ていた Zoom を避けるとともに、既存の学内 LMS が困難であったことは課題として挙げられる。
は全学教育での使用に限定して通信負荷を回避す その一方、三年生以上を対象とした授業であっ
る戦略が採られ、学部授業は Google の Classroom たためか、レジュメを配布の上、その内容につい
と Meet を中心的に使用することが要請された。 て講義を行うという形式に違和感を覚える学生は
本講義では大学からの要請に基づき、基本的にレ あまりいなかったように思われる。また学生の通
ジュメの配布と Google meet の音声通話機能によ 信容量への負荷も大きくなかった模様である。な
るライブ授業を行った。授業の前日までにレジュ お、欠席対応として資料や音声のアップロードは
メを pdf 形式で作成、Google Classroom にアップ 対面授業再開後も有効と考えられる。
ロードし、学生にはダウンロードの上、手許にお
いて受講することを求めた。受講に際しては、学

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関西大学政策創造学部「専門導入ゼミ 1(グローバ 朝までレジュメをグループ内にアップロードして
ル・スタディーズ・コース)」(2 年生対象)授業 もらった。他方、図書館などの利用が難しいため、
実践報告 学生に自主的に資料を調べて発表させるという 2
アルベルトゥス=トーマス・モリ 周目発表の予定を筆者が追加した文献の輪読にし
た。これで同じ物理的空間内にいない点を除けば、
1.本科目は関西大学政策創造学部の基礎演習科 基本は通常とほぼ同じような授業を行なっていた。
目である。2020 年度は合計 18 のクラスが開講さ なお、国立民族学博物館の見学は無理になった代
れ、そのうち「グローバル・スタディーズ・コー わりに、その 2 回分を授業全体の進度調整及び映
ス」のクラスは 8 つある。現代の国際社会で生じ 像資料の視聴に充てた。
ている様々な問題を理解するための中級レベルの
知識を身につけることを目標と設定している。筆 3.受講生は全員 2 年生のためか、特に不安や混
者のクラスでは、今年の履修登録者は 16 名である。 乱を示さなかった。初回授業では、互いに知り合
国民国家の成立と現状を紹介する文献の輪読及び ってもらうための 20 分間トークイベント、及び発
議論を行ってから、受講生に各自の関心に基づい 表順番の相談をやってもらったら、順調に完了し
て国民国家に関連する課題を選定し、調査・分析 た。授業中、発言する人以外は全員マイクをオフ
を経て授業において発表を行ない、最終回でレポ にしているが、指名するとほぼ遅延なく応答して
ートを提出してもらうと設計している。そのほか、 くれた。ただし、ほぼ全員がコメントや議論をす
2 回連続補講の形で国立民族学博物館の見学を行 る際、音声ではなく、チャット入力の形で行うこ
う予定もあった。成績評価の内訳は、報告(40%)、 とが多かったが、携帯からアクセスする人は毎回
議論への参加(30%)、最終レポート(30%)で 10 名以上だった。筆者は通常板書すべきところを
構成している。 除いて基本は直接に喋っていたが、喋る途中から
複数人が入力を始めているとシステムから表示さ
2.2020 年度春学期最初の 2 週間が休講となり、 れたにもかかわらず、発言が表示されるのは大抵
4 月 20 日からの開講はすべて遠隔となり、緊急事 数分後であった。ただし、自ら積極的に発言して
態宣言の期間中で休講した分は自主学習による課 くれる受講生はおよそ 5~6 人にとどまったため、
題提出などの形で補ってもいいとの通達があった。 全体的に比較的にスムーズに進行できた。7 月に
また 5 月に入ってから全学期で対面授業を実施し 入ると、大学の図書館は再開されたため、期末レ
ないことが決定されたうえ、オンラインにおける ポートは予定通り自主調査の上で執筆させた。
授業進行は関大 LMS の活用を推奨された。ほかに 総じていえば、従来のキャンパスライフに対す
ツールの利用巡る細かい連絡もあったが、主にオ る認識と経験を持っているという前提を踏まえた
ンデマンド方式で講義を行うことを想定したよう うえで、授業のオンライン化(同時進行)は対面コ
な内容が多く、語学ではない演習科目については ミュニケーションの延長に収斂されているように
特に言及されなかった。 言える。他方、実習や作業など直接的な情報伝達
それで筆者は受講生による発表を主とする演習 以外の教学実施が、オンライン化で制限されたこ
科目の特性に合わせて、Discord で授業用のグルー とによる損失もまた無視できない問題である。
プを作り、開講する 1 週間前から受講生全員に登
録してもらい、毎回の授業を同時進行させた。グ
ループ議論も複数のボイスチャットで対応できた。
1 週間前からテキストを配布し、報告者に当日の

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近畿大学経済学部「現代の社会論(社会学)」(全 れたため、3 回目から完全オンデマンド式に移行
学年対象)授業実践報告 した。また、2020 年度前期の授業期間が 5 月 11
アルベルトゥス=トーマス・モリ 日から 8 月 8 日までの 13 週間になったため、2 回
分の補講をオンデマンド式にすると最初から決め
1.本科目は近畿大学経済学部の共通教養科目で た。
ある。基本は 1 年生を主な対象として、体系的な 6 月に入って、緊急事態宣言が解除され、大学の
学問を用いて様々な社会現象を指摘・分析しなが 図書館も限定的に再開するようになったため、当
ら、自主的に問題を調べて考える慣習を身に付け 時の受講状態に合わせて進行方法と成績評価の一
させることが目的である。2020 年度は社会学と文 部を修正した。出席と授業コメントの記入を 30%
化人類学の基礎知識をもとに、具体的な事例を中 とし、レポートはまとめて 70%としてかつ期末の
心に毎回違うトピックを取り上げる形で設計した。 一括提出にした。
履修登録者数は合計約 140 名だが、二つのクラス
に分けて開講することになった。受講生に自主的 3.学生の受講状況は Google Classroom において
に読書させるために、2~3 回の読書レポートを課 毎回「課題提出」とりわけ授業へのコメントと質
す予定であった。それで成績評価は、出席と授業 疑の記入を通して確認しているが、内容から見れ
コメントの記入(15%)、読書レポート(45%)、 ば通常の対面授業で回収するものとは特に変わり
期末レポート(40%)で構成している。 はないようだ。ただし、オンデマンド式のために
自身の都合に合わせて受講できることをポジティ
2.近畿大学は不明瞭な事態の中でいち早く授業 ブに語るコメントは多数あった一方、授業動画を
のオンライン化及び開講の延期を決めて、かつ積 アップロードした当日か翌日で視聴してコメント
極的にサポート体制の構築に取り組んだ点は大い を提出してくれた受講生は合計 20~30 名しかい
に評価すべきと思われる。特に従来使われた授業 ないようだ。それで学生のコメントを次回の授業
管 理 シ ス テ ム の UNIPA を や め て Google に反映させることが難しくなったため、毎回質問
Classroom に移行し、配信ツールとして流行りの や間違った認識に個別に返答したが、授業自体を
Zoom ではなく Google Meet とセットしたことは はるかに上回る時間がかかってしまった。
大変的確かつ効率的な判断と言わざるを得ない。 他方、映像民族誌など授業中で用いる予定の映
ここで特筆したいのは、本来 UNIPA の設計思想 像資料を 2~3 回分の授業にまとめて集中的に放
はあくまで対面授業をより円滑に運営させるため 映するため、本来授業が行われるはずの時限に受
に便利な小道具を提供するだけであること、およ 講生を集合させたら、二つのクラスはともに 30 数
び 4 月の時点で流行っている Zoom の安全性問題 人ずつしか来なかった。結局全員に映像を見せる
はパスワードの漏洩などではなく、ユーザーの情 ために夕方や週末などほかの時間帯も利用せざる
報を特定の第三方に引き渡しかねないという運営 を得ず、合計 8 回も行った。
方針を巡る疑惑であること。極めて残念ながら、 後にレポートから見れば、大半の受講生は授業
日本社会ではこの 2 点をはっきりと認識できる人 の主旨および個々のトピックの要点を的確に捉え
は限られたようだ。 てきたが、自主管理がうまくできなかった学生へ
5 月の時点では、とりあえず Google Meet を使 のサポート問題、および学生の都合に合わせるた
ってリアルタイムで授業を行いながら様子を見て めに生じた教員の超過勤務問題が間違いなく今後
から決めようとした。だが初回授業から二つのク の最重要な課題になる。
ラスよりそれぞれ数名が回線トラブルを訴えてく

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学習院大学「現代哲学演習Ⅱ」(2-4 年生対象) 以上の理由から、本演習は当初の予定とは異な
授業実践報告 る次の要領で実施された。まず、受講生(31 名)
横田祐美子 には毎週テクストの指定された範囲(日本語で 25
頁ほど)を読んでもらい、そのなかから最も肝要
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 な部分を引用したうえで、その理由を説明しても
容、成績評価の方法 らうという課題を出した。これについては担当者
本演習は、現代哲学における「女性的なもの」の を決めずに、毎回全員に取り組んでもらう方針に
思考を、主として脱構築派のテクストから読み取 変更した。そして、翌週の授業で教員が範囲全体
り、男性中心主義的な哲学の歴史のなかでこの問 の解説を PDF(5~8 頁ほど)で提示し、そのなか
題を捉え直す視座を獲得することを目的とする。 で受講生の意見や質問を取り上げた。また、三週
当初は、毎週指定された文献に関するレジュメ担 に一度の頻度で個別指導機能を用いて受講生と講
当者を決め、作成されたレジュメにもとづく講読 読内容について議論し、授業テーマに沿った時事
と議論を行い、授業への貢献度と期末レポート、 問題などについても話し合った。なお、本演習で
ミニ発表によって成績評価を行う予定であった。 利用した LMS は manaba である。進捗にかんして
は、少し遅れはしたものの、ほぼシラバスどおり
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 にテクストの講読を進めることができた。
づいて変更し実施した授業内容
大学からは、オンデマンド授業と Zoom 等を用 3.学生の反応と今後の課題・可能性
いた同時配信授業の二つが選択肢として提示され、 本演習は通年科目であるため、第一学期の終了
学生の通信環境に配慮するために前者の授業形態 間際に、第二学期の授業形態を決めるためのアン
が推奨された。同時配信授業を行う場合はその全 ケートを受講生に対して行った。その結果、第一
面化を防ぎ、オンデマンド授業との併用が要請さ 学期と同じ形態が選ばれた。理由としては、通信
れた。オンデマンド授業では教材の提示方法とし 環境に負荷がかからないこと、自分の好きな時間
て(1)PDF のみ、(2)PDF と音声ファイルの併 に取り組めること、解説がすべて文字で書かれて
用、(3)PDF と動画ファイルの併用という三つが いるため復習がしやすいこと、教員から個別のフ
挙げられ、(1)か(2)が推奨された。 ィードバックがあって嬉しかったことなどが挙げ
本演習は大学から推奨された方法を採用し、オ られていた。これらの反応からは、幸いなことに、
ンデマンド授業かつ PDF 配布のみという実施形 主体的に講読に取り組むことのできる受講生が多
態となったが、これについては筆者の考えや個人 かったことが読み取れる。PDF 配布のみの授業で
的事情によるところも大きい。第一に、学生・教員 は受講した実感がもてないという意見を多数耳に
双方のプライバシー保護のため、同時配信システ するものの、フィードバックの機会をつくること
ムの利用に不安が残った点が挙げられる。音声や でその問題を解消することができるのではないか
動画には思いがけず多くの情報が入り込む余地が と考えられる。ただし、教員の負担は大きい。
ある。第二に、個人研究室がない点が挙げられる。 今後の課題は、受講生同士の交流の機会を増や
筆者の場合は家族も同様に大学の非専任教員であ すことである。掲示板で意見交換を可能にしたも
り、同じ家から遠隔授業を行う必要があったが、 のの、利用する学生は少なかった。この反省を踏
個室がないために双方の授業時間が重なる場合は まえ、第二学期は当初のシラバスどおりミニ発表
お互いにとって迷惑がかかるなど、同時配信授業 会を manaba を通じて行う予定であり、その際に
を選択することが難しい環境にあった。 は受講生同士の交流が活発になると考えている。

102
社会科学
福岡大学「文化人類学 A:異文化理解の探求」
(1、 された。
2年生対象)授業実践報告 そこで本講義では、インターネット環境が十分
秋保さやか 整っていない学生も受講できるように Moodle の
システムを利用したオンデマンド形式の授業形態
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 を採ることにした。
講義実施日に PowerPoint に講
容、成績評価の方法 義音声を録音した動画と授業資料、小テストをア
本講義は、共通教育科目の社会科学分野に位置 ップロードし、学生は、翌週の講義日までに受講
付けられる。講義の目的は、「異文化・他者をどの するといった授業の流れである。また、大学にて
ように理解することができるか」といった問いに 実施する定期試験の中止に伴い、成績評価基準も、
対し、文化人類学の理論を学ぶことによって、現 小テスト 40%、小レポート 15%、Moodle の小テ
代世界における異文化を捉えるための視点を習得 スト機能を用いた期末テスト 45%に変更した。
することである。 授業全体で特に工夫した点としては、映像資料
多様な社会や文化のあり様を学び、自分の常識 なども積極的に活用するとともに、関連する文献
の外に出てみると、
「当たり前」のようにとらえて 資料も紹介することで、学生がそれぞれの関心に
いた世界を別の角度から見ることができるように もとづいて学習を深めることができるようにした。
なる。全 15 回の授業をとおし、現代社会を多角的 また、各回のリアクションペーパーで記載されて
に捉える視点を獲得することが目標である。講義 いたコメントや質問をまとめ、翌週の講義の中で
の中では、エスニシティやジェンダー、宗教、家 紹介し、各コメントに応答するという方法を採る
族、開発、観光、経済といったテーマをとりあげ、 ことによって、学生との双方向的コミュニケーシ
具体的な事例をもとに文化人類学の概念や理論と ョンの機会を確保した。
関連付けながら論じていった。
シラバスの段階では、定期試験 85%、リアクシ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ョンペーパー15%という割合で成績評価を行うこ 新型コロナの影響によって急な授業形態の変更
とを想定していた。定期試験は、文化人類学の基 を余儀なくされたが、学生からの授業内容、授業
本的な概念や理論について理解度を評価するため 形態に関する質問、コメント、相談を受け付け随
のもので、単に概念や理論を覚えるだけでなく、 時対応したことによって、大きな問題なく授業を
その意味や背景を問い、講義内容を理解できてい 実施することができた。
るかを測ることを予定していた。 学生からは、オンデマンド型の授業形態であっ
たため、自分の好きな時間、都合の良い場所で受
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 講することができた点が良かったとの声やリアク
づいて変更し実施した授業内容 ションペーパーへの応答が行われることで、オン
本学のガイドラインにおいては、対面型授業と デマンド形式であっても他の学生と一緒に学び、
同等の学習時間を確保すること、教員と学生、お 触発されながら学習を進めることができたとの声
よび学生間の双方向性を確保すること、そして学 が寄せられた。
生のインターネット環境を考慮し柔軟に対応する 今後は、オンデマンド形式の良さも活かしつつ、
ことが満たすべき要件として提示された。そして、 リアルタイム型の授業形態など複数のスタイルを
すべての授業を、①リアルタイム配信型、②オン 組み合わせてより効果的な授業を実施していきた
デマンド型 、③教材配信型などを1つもしくは複 いと考えている。
数の方法を組み合わせる形で実施することが推奨

105
東京工業大学「国際開発共創概論」(主に2、3 年 生同士相互理解やチームワーク力が高まることが
生対象)授業実践報告 期待されていたが、今年度はすべてオンラインに
阿部直也 よりグループワークも実施された。(遠隔決定後
のシラバスはこちら)
1.本科目は、国際機関、開発援助機関、開発コン
サルタント企業、NGO、研究機関、そして民間企 3.本科目は、対面式の講義とグループワークを
業より実務の第一線で活躍する講師を招聘し、具 前提として設計されていたため、学生は、特にグ
体的な業務内容や課題をリアルに語ってもらい、 ループワークにおいて苦労したようである。一方
国際開発や市民社会が直面する課題に対する理解 で、同じ場所に集まることなく、打ち合わせがで
を深め、さらに具体的な事例とグループ討論・発 きるというメリットもあり、旧知の関係にあるメ
表を通じて課題発見能力やチークワーク力を実践 ンバー同士であれば、遠隔形式によるグループワ
的に修得することを目的としていた(窓口教員で ークは、一定の機能を果たしたという感触を得て
ある阿部も講義を一部担当)。招聘講師による講 いたと思われる(初対面同士では困難)。また、今
義と課題に対するグループ発表が原則1週間の間 回、遠隔形式をとったことにより、通常ではキャ
隔を開けて提供された。講義は、第一クォーター ンパスに来訪してもらうことが困難な国際機関の
(5 月連休明けから 6 月中旬)、週2回(月曜日と 職員や海外のフィールドで活躍する NGO のスタ
木曜日, 10:45-12:25)に英語により開講した。主な ッフの具体的な話を聞くことが制度的により容易
受講生は、英語により実施されている学士課程プ となった。また、スクリーン上ではあるが、遠隔地
ログラムの学生であり、大学間協定に基づく東京 より直接経験を聞くことができることによって、
外国語大学の学生も1名履修していた。 時差の認識など、講義にある種のリアリティーが
成績評価は、招聘講師の講義に対する個人レポ 醸し出され、履修した学生たちもその点を感じて
ートの評価点、講師による課題に対するグループ いたように思われる。
発表に対する評価点、そして各自のグループ発表
に対する自己貢献アピール点により行われた。

2.講義は、通常の予定から約1ヶ月遅れて開始
された。すべて遠隔方式で実施することが全学的
に決定・通知され、本科目においても、すべてのセ
ッションが zoom により実施され、対面式の機会
を設けることはできなかった。また、キャンパス
への来訪は原則禁止となり、Wi-Fi 環境の整わな
い学生には大学より Wi-Fi 端末を貸与された。本
科目では、昨年度まで外部講師をキャンパスに招
聘し講義を担当頂き、当然のように学生も同じ教
室で講義を受講していたが、今回は講師も学生も
zoom の画面を通じて、講義が進んだ。また、招聘
講師によって課される課題に対して、昨年度まで
は対面式のグループワークが行われており、まさ
にその対面という機会を通じて議論が深まり、学

106
「国際 NGO 論 -現場からのアプロ-チ-」(大 インメントでは授業で学んだ各種手法を実際に自
学院生対象)授業実践報告」 分(履修生)の環境で自分の問題で使ってみてレ
石田健一 ポートを提出させ、そこに通常以上の分厚いコメ
ントをすることで彼らの自主性と主体的な理解を
1.本授業では緊急人道支援と開発援助という国 強化する試みとした。アサインメントとそのフォ
際 NGO の主要分野で豊富な現場経験を有する 3 ローはもはや授業の一部である。
人の講師が理論と現場の視点から授業を行う。授
業構成:緊急人道支援(6回、A 講師)、参加型開
発と NGO(4 回、筆者担当)、開発援助の理論と
潮流における NGO(3 回、B 講師)、学生による
事例研究発表とレポート(2 回、3 人で)。成績評
価は、発表とレポート(50%)、講義参加度(50%)
(講師 3 人で合同評価)

2.大学からの要請は、授業形態はリアルタイム
型、オンディマンド型、自己学習型の 3 種類とし 3.気付きと今後の課題。
(1)ラポールから議論
Course Power(大学の e-learning)と Webex を用 まで学生の十分な参加度を確保しつつ行い得るが、
いること。履修者は 5 名:大学院生(修士課程 1 更に効率化を模索するべきかも、
(2)授業中音声
年、全員留学生、4 名)、4 年生(1 名)。授業は 不可となったことがあった。これは経験して対処
オンライン型で行い、その進め方は平常時に同じ していくしかない、(3)Webex meeting はセキ
(事前資料配布、予習、授業、復習、履修者への連 ュリティは強固だが視覚化、可視化を多用し履修
絡は Course Power を活用)。以下、筆者担当箇所 者との対話をメインとする授業(それ自体が参加
について主に記述する。筆者の授業では途上国の 型開発)には向いてない。meeting と Webex teams
住民が生活や人生に主体的にコミットしていくた を駆使して乗り切った。付置情報メディアセンタ
めの住民と支援者(例、国際 NGO)の課題、主体 ーに相談を重ねセンターにも勉強をしてもらった。
的な参加を促す参加型開発の多様な手法を学ぶ。 遠隔授業が今後も続くなら慣れ親しんだ地球を離
講師からの一方的な講義ではなくファシリテーシ れて宇宙ステーションで作業するのだと頭を切り
ョンが鍵なのであるが、遠隔下ではこの授業タイ 替える必要がある、
(4)履修者間のグループダイ
プは不利である。授業内容は変更しなかったが教 ナミクス醸成は遠隔授業の課題として残った。こ
材を含み授業計画を再設計した。例を一つ。正解 の解決はどうもツール依存ではなさそうである、
探しになる危険性を孕むため演習事例を用いない (5)Webex のグループスペースでアサインメン
のだが、それをあえて今回は作成した(途上国の トに取り組む履修者の議論が、ほぼ一日中開いて
水問題)。かつ、演習事例に描かれる数々の問題を いる筆者のノートブックにリアルタイムで飛び込
構造化する作業の助けとなるよう構造化図の中心 んでくるため、タイミングよくコメントができた。
部は筆者がある程度作成しておいた(図)。学生は 考えてみたい経験である、(6)3 人の講師が交代
そこに付加し問題構造図を完成させ解決手段に優 前に次の講師を学生に紹介する、講師間でメール
先順位をつけ適切な解決策を構築していくという で進捗と課題の情報交換を続ける、そういった地
按排だ。議論をスムーズに進め時間内で結果を出 道な作業がチームによるスムーズな授業運営に効
すための苦肉の策である。続いて、授業後のアサ 果的。

107
北陸大学「日本語リテラシーI」(1 年生対象)授 本科目は全 15 回が遠隔授業となった。
業実践報告 授業は全クラスが同一のスライドを用いた。各
宇都伸之 教員は Microsoft PowerPoint の「スライドショー
の記録」機能を用いて授業動画を作成した。授業
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 動画は YouTube で履修者のみに限定公開した。
容、成績評価の方法 学生は Word で文章作成を行い、完成したファ
日本語リテラシーⅠは北陸大学経済経営学部 1 イルは Microsoft Forms で提出する。ファイルを
年生向けの日本語表現科目である。文章作成と自 提出するだけではなく、授業内容に基づいて文章
己修正という訓練を通して○1 書き言葉として正 作成と修正ができたか自己チェックさせるフォー
しい日本語の使い方を身につけること、○2 論理 ムを組み込んだ。
的思考力を身につけることが本科目の主要な目的 連絡や質問対応などは Microsoft Teams を活用
である。本科目は 8 名の教員による 8 クラス同時 した。Teams のプライベートチャット機能は連絡
開講科目で、全クラス同一のシラバス・教材に基 が取りやすいことから、質問が殺到することが予
づき授業を進行する。 想された。このため、授業に関する質問や相談は、
本科目では、○1 文と語句の扱い方、○2 全体構 原則として質問専用スレッドを使うことを徹底さ
成、○3 段落構成、○4 内容の示し方の 4 項目を取 せ、個人情報を含む質問や相談を除きプライベー
り扱うこととした。なお、後期科目として開講さ トチャット機能は原則使用禁止とした。
れる日本語リテラシーII では、引用の方法、参考 以上のような取り組みによって、当初予定して
文献の示し方、図表の扱い方などを取り扱う。前 いたピアレビューを除き、おおむね対面授業と同
期と後期を通して、最低限の日本語の運用力と論 等の授業内容を維持することができた。
理的思考力を身につけることを狙いとしている。
授業については以下のサイクルを予定していた。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
まず、学生は予習課題として 800~1000 字程度の 遠隔授業による実施は初めての試みであったが、
文章作成を行い、指定された方法で提出する。授 学生が作成した文章の質は飛躍的に向上しており、
業では文章作成の技能を講義する。学生は授業内 遠隔授業の教育効果が極めて高いといえる。その
容に基づき、予習課題として作成した文章を自身 理由として、授業内容を動画として配信したこと
で修正する。加えて、他の学生が作成した文章に で、学生は各自のペースで授業動画を見直しなが
ついて議論するピアレビューも適宜取り入れる予 ら課題に取り組むことができたことが考えられる。
定であった。 これは、授業動画の再生数が履修者数の数倍にな
成績評価は○1 提出した文章の完成度、○2 授業 ることから推測される。
内容に基づいた修正の適切性、○3 ピアレビュー 多くの学生は授業動画を見ながら時間をかけて
の内容を評価対象とする予定であった。 課題に取り組むことができた点に遠隔授業の利点
を挙げている。また遠隔授業の方が効果的である
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 という感想を多くの学生から得ており、本科目の
づいて変更し実施した授業内容 遠隔授業による運営はおおむね成功したものと考
感染拡大を受けて、授業開始は約 3 週間程度延 えている。ただし、当初予定していたピアレビュ
期した。当初の予定では、その後 1 か月程度を遠 ーの実施には至らなかった。後期に実施される科
隔授業期間とし、その後は対面での授業に移行す 目でピアレビューの実施を予定している。
る予定であった。しかし、感染拡大の影響により、

108
滋賀大学経済学部「スポーツ科学Ⅱ」(夜間主 1- て行われている議論とその背景、③グループワー
4 年生対象)授業実践報告 クの課題を提示した。具体例として、①自身の部
榎本雅之 活動の経験と部活動に対する印象について述べな
さい、②ブラック部活問題、外部指導者制度など
1.講義の目的は、運動・スポーツの実践を通し 部活動に関する情報、学生が学びを深めるために
て、その意義や価値を理解し、生涯にわたって運 参考になる Web サイトや文献の紹介、③スポーツ
動・スポーツの楽しさを享受する能力や豊かなラ 文化を豊かにするために中高生の部活動をどのよ
イフスタイルを形成できる能力を養うことである。 うに改善すべきか検討しなさい、を資料として配
履修対象は夜間主の 1-4 年生の選択科目だが、例 布した。また、提出用シートには、①の回答、③の
年、受講生のほとんどが 1 年生であることから、 自分の考えを講義時間までに予め記述しておくよ
初年次学生の仲間づくりの機会を作ることも意図 う指示した。
している。また夜間主の学生は年齢が様々である 講義は Zoom を用い、学生から提出された前回
ことから、ニュースポーツやバレーボールなどの 講義の解答等のフィードバック、事前配布資料の
既存のスポーツのルールを変更し、年齢、性別、技 解説を行った後、ブレイクアウトルーム機能を用
術、体力レベルが異なる履修者全員が参加できる いてグループワークを実施した。グループワーク
方法を学生とともに考え、実践することを目標と は 3-4 人で、司会者とタイムキーパー、発表者を
している。実技の他に、生涯スポーツの観点から 決めること、カメラは必ずオンにすることをルー
講義を行い、在学中また卒業後のスポーツとの関 ル化した。また、グループワークの始めには必ず
わり方について紹介している。成績評価は、レポ アイスブレイクを入れた。グループワークの時間
ート及び授業に取り組む意欲や態度で行っている。 は当初 15 分だったが、慣れてきてからは 20 分設
定するようになった。グループワーク後、各グル
2.学部が示す遠隔のガイドラインとして、ライ ープによる発表を行い、講義は終了、その後、グル
ブ授業などの双方向性授業の実施、もしくはオン ープで話し合った内容(グループのメンバーの名
ラインで講義資料の提供、速やかに質疑応答を受 前も記入)と他のグループの発表を聞いて考えた
け付けられる手段と学生同士が討議できる手段の ことを提出用シートに記入し、翌日夕方までに
確保が示された。 LMS に提出することとした。成績評価は提出用シ
「スポーツ科学Ⅱ」は実技と講義を組み合わせ ートで行った。
た授業であったが、対面授業が出来ないため、
「語
る」スポーツという観点で、講義目標の「生涯にわ 3.最初の数回は、機器に不慣れなことや気恥ず
たって運動・スポーツの楽しさを享受する能力や かしさから議論がすすまなかった。しかし、グル
豊かなライフスタイルを形成できる能力を養う」 ープ内での役割の設定やアイスブレイクを毎回実
ことを目指した。また、今年度は履修者全員が初 施したことで、グループワークが活発になった。
年次学生ということもあり、グループワークを基 履修者が 15 人であり、管理がしやすいことや、社
本として、お互いのことを知る機会を多く作るこ 会人が 3 人いたことで、議論が深まったことも一
とを意図した。 因であろう。学生の感想には、仲間作りの場とな
講義の方法は、LMS を利用し、1 週間前に PDF ったことや普段は閲覧しない様々な公式ホームペ
の資料、設問と解答欄を書いた提出用シート ージなどが興味深かったこと、他地域とのスポー
(Word)をアップロードした。資料は、①トピッ ツ環境を比較できて新鮮だったことなどが記され
クに関する問いかけ、②現在そのトピックについ ていた。

109
南山大学「社会学研究の基礎(アメリカ)」(外国 した。これは、ファイルが重すぎるという受講者
語学部 1-4 年生対象)授業実践報告 からの指摘を受けての改善です。対面式授業の時
大井由紀 にはパワーポイントは配布しておらず、資料など
は人数分印刷して配布していたため、ダウンロー
1.本講義の目的は、アメリカ社会の諸問題をと ド・プリントアウトするさいの受講者の負担につ
りあげ、社会学の概念・理論を用いてどのように いての配慮は、オンライン授業独特のものだと思
分析できるのか紹介すること、また、学史や理論 いました。
の学習だけでなく、実社会や自分が抱える問題に 成績評価については、レポート提出に変更しま
取り組む上で学んだことをどういかせるのか、批 した。アクティブラーニングで他の受講者と共に
判的かつ建設的に考えることです。方法としてデ 学んだことを活用できる場を設けたほうが、オン
ィスカッションやワークショップなど、アクティ ライン授業ではより適切だと思ったからです。
ブラーニングをほぼ毎回実施予定とし、また、成
績については、定期試験で評価としていました。 3.授業評価アンケートの結果は、対面式授業実
施時とほぼ変わりのない結果でした。教員の声が
2.本講義は第 2 クォーターに実施され、大学の 聞き取りづらい時があったり、受講者側のネット
サーバーも強化されていたことから、オンライン ワークが切断されるなど、双方の技術的な問題は
授業のプラットフォーム(zoom)使用に際して制 残りましたが、オンライン授業だから大きなデメ
約はとくに設けられませんでした。また、授業回 リットを感じるということはなかったようです。
数が前学期にはほぼ半分にまで限定されていたの 教員からすると、対面式の時以上に工夫が求めら
に対し、15 回実施することができました。第 1 ク れたため、授業はより充実したものになったと感
ォーターで実施できなかったディスカッションや じました。
ワークショップも実施することができました。
制約がほぼなくなったこと、また私自身が zoom
使用に慣れたこともあり、心がけたことやその優
先順位は、制約が多かった前学期とはだいぶ異な
っていました。重要な順に第一に、2 コマ連続して
行う講義であったことから、対面式授業以上に、
受講者が途中で飽きてしまったり、挫折しないよ
う工夫しました。講義を一方的に行う時間は 40 分
程度に抑え、グループでのディスカッションやワ
ーク、動画の視聴、資料を読む時間を挟みました。
第二に、オンラインで初めて出会う受講者同士で
も議論が円滑に進むよう、ディスカッションの進
め方についてアドバイスをしました。第三に、ア
クティブラーニングを積極的に取り入れることで、
受講者同士のコンタクトを増やし、リモートとい
う状況から生じがちな孤立感を減らせるようにし
ました。第四に、オンラインで事前に配布するパ
ワーポイントや資料の容量に配慮し、簡素化しま

110
南山大学「アメリカの社会」(外国語学部 2-4 年 実施に当たり心がけたことは、おもに 3 点あり
生対象)授業実践報告 ます。重要な順から第一に、オンライン受講が初
大井由紀 めてとなる受講者の不安や不明点・混乱が減るよ
う、対面式授業以上に授業に関する連絡・情報共有
1.本講義の目的は、多様な背景をもつ越境者・越 をしました。例えば、オンライン授業の実施方法
境移動という視点から、従来の国家・社会・文化・自 に関する大学からの通達が、朝令暮改的に変更さ
分自身のあり方(規範)をアメリカを事例として再 れていったため、授業に影響がでることに関して
考することです。方法としてディスカッションや は明文化して情報を共有し、方針を都度確認しま
ワークショップなど、アクティブラーニングをほ した。第二に、講義が教員から受講者への一方的
ぼ毎回実施予定でした。成績については、定期試 な伝達にならないよう心掛けました。例えば、提
験で評価としていました。 出された自習課題での考察に講義中たびたび言
及・フィードバックし、他の受講者がどのようなこ
2.しかし、オンライン授業移行に伴って多くの とを考えているのか、クラス全体で共有できるよ
制約が生じたため、内容・方法・成績評価で変更を うにしました。また、実施予定だったディスカッ
余儀なくされました。本講義が実施されたのは、 ションのトピックを紹介し前年度までに出た意見
大学側のシステム・ポリシー上の準備が形成途上 も多数紹介することで、受講者が自分の意見を他
だった第 1 クォーターであったため、もっとも大 人の意見と比較したり、視野を広げられるように
きな制約を受けました。最大の変更点は、授業回 しました。第三に、受講者が途中で挫折しないよ
数が 15 回(定期試験除く)から 12 回に変更された う工夫しました。本講義は 2 コマ連続する授業だ
ことです。しかも、サーバーへの負荷を軽減する ったこともあり、途中で受講者が飽きたり疲れた
ため、オンライン授業は 8 回まで実施可、他の 4 りしないよう、一方的に長時間話し続けるという
回はオフライン(自習)と制限されました。さらに、 ことは避けました。さまざまな配布資料を用いて、
オンライン授業実施に当たっても、フルで 90 分で 講義をきくだけでなく、受講者自身が読んだり・回
はなく 60 分までと制限されました(学期途中から 答するなどアクティブに参加する時間を作ってリ
90 分可能と変更)。くわえて、ビデオ機能の利用や フレッシュできるようにしたり、自習の時間と講
動画を流すことも禁止されていました(やはり学 義を組み合わせたりしました。
期途中から両方とも使用可に変更)。
教員として一番困ったのは、講義可能な時間が 3.学生の反応と今後の課題・可能性
7 コマ分減ったことでした。対応としては第一に、 第 1 クォーターでは授業評価アンケートが実施
授業内容を大幅に圧縮しました。凝縮できた部分 されなかったため、受講者からの総体的な反応は
もあれば、完全に省略した部分もありました。ま 不明です。教員の課題としては、アクティブラー
た、アクティブラーニングも省略しました。これ ニングをオンライン仕様に変更して授業に組み入
は、時間数の問題だけでなく、オンライン授業仕 れ、対面式授業と遜色のない学習効果をあげるこ
様への変更に当方の準備が間に合わなかったこと とが最重要課題として残りました。しかし、対面
もあります。第二に、本来はグループで行うはず 式授業以上に受講者がチャットで積極的に発言・
だったアクティブラーニングを、自習課題として 質問できたこと、就職活動などで忙しい学生さん
定め、個々人で実施してもらい、考察したことを でも受講しやすくなったことなど、可能性も感じ
提出してもらいました。以上の変更に伴い、成績 られ、持続可能かつユニバーサルな学びについて
評価もレポートに変更しました。 考える大変よい機会となりました。

111
九州大学・国際政治学Ⅰ(3・4 年生対象)授業実 30 分グループワークとプレゼンテーション、最後
践報告 の 30 分はフィードバックと総括を行った。グルー
大賀哲 プワークの課題は予習教材のなかで提示した。ウ
ェブ会議システムは当初 Remo を使っていたが、
1.講義の目的・概要・成績評価 Remo にアクセスできない学生が少なくなかった
①目的 ため(受講者 70 名中 10 名前後)、途中から Remo
この講義の目的は、国際政治学の分析の基礎と と Zoom 併用で授業を行い、グループワークはブ
なる理論と方法を習得することである。とくに研 レイクアウト・ルームを用いた(Remo は小グルー
究設計(どのような理論的前提に基づいて問い・ プの部屋にユーザーが自由に出入りできる設定と
仮説を構築し、どのような方法論でその妥当性を なっており、その点便利であった)。
検証するのか)を学ぶことが重視される。 ③とくに工夫した点
②概要 アクセス集中により Moodle にログインできな
講義は理論と方法の二部構成である。第Ⅰ部で い事態に備えて、連絡用に Line オープンチャット
は国際政治学の理論、第Ⅱ部では国際政治学の方 を開設した。普段メールを見ない学生が多く、Line
法論を取り上げ、理論的な命題の妥当性を検証す による連絡は学生からの反応も早く有用であった。
る。 質問やコメントはオープンチャットや Remo/
③成績評価 Zoom のチャットで受け付け、さらに Handsup で
以下の(a)~(e)を合算して成績評価を行った(当 匿名でも質問できるようにした。Google フォーム
初は(b)~(e)を評価対象としていたが、遠隔授業 のアンケート機能を利用し、予習教材に関連して、
の開始に伴って(a)を加えた)。平常点として、(a) クイズや賛否を問う質問をして、その解答や解答
予習内容についての確認テスト(15%)、(b)グル 分布についてコメントするなど、双方向型の授業
ープワークの議事録の提出(15%)、(c)グループ になるように努めた。また Remo にはホワイトボ
ワーク課題の解答を個人で提出(A4 で 1 枚程度。 ード機能がついていたが、Zoom にはそれがなか
30%)。期末レポートとして、(d)授業の参考文献 ったため、学生には Google ドキュメントを共同編
についての文献レビュー(20%)、(e)授業で取り 集して、授業の最後にグループワークの議事録と
上げた事例について研究計画を作成するという課 して提出するよう指示した。
題を課した(20%)。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.遠隔授業の実施 グループワークでの発言やチャットでの質問、
①大学からの指示と授業方針の決定 質問フォームなど、コミュニケーション面での学
大学からは文科省のガイドライン通り、オンデ 生の反応は非常にアクティブであった。3・4 年生
マンドかリアルタイム配信いずれかの方法で授業 中心の授業であったこと、(毎年それなりに加除
をするように指示があった。データ・ダイエット 修正はしているものの)筆者自身にとっては今ま
の指示はとくになかった。グループワークを含ん で 10 年以上教えてきた慣れ親しんだ科目であっ
だ授業であったためリアルタイム配信形式で授業 たため、とくに対面授業と比べて困難を感じた点
を行った。 はなかった。しかし、初めての遠隔授業の試みと
②講義の進め方 いうことで、コンテンツや課題を盛り込み過ぎて
講義資料と 30 分程度の動画解説など予習教材 しまったことが反省点である。
を Moodle に置き予習を促した。授業は 30 分講義、

112
徳山大学「公民科教育法Ⅰ」(3年生対象)授業実 また音読する本人が内容理解に集中できなくなる
践報告 おそれがあるため、教員がテキストを音読するこ
大坂遊 とにした。
最初はその場で音読していたが(30~40 分読み
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 続けることになる)、そうすると予想以上に疲弊
容、成績評価の方法 してその後のディスカッションに支障が出ること
高等学校公民科の教員免許を取得するための必 がわかった。そのため、事前に音読したデータを
須科目であり、後期の「公民科教育法Ⅱ」を含めて 学内サーバーにアップロードしておき、当日はそ
計 30 回で、高校公民科の教師に求められる知見や れを再生する形にした。任意のタイミングでスト
力量を形成していく。前期の「Ⅰ」では、テキスト ップして、学生に不明な点について疑問や質問を
を読み込みながら、理論的な側面に焦点をあてて、 出してもらい、それに教員が回答する形で授業を
「公民科をなぜ・どのように教えるのか」
「公民科 進めた。どうしても授業中に読み切れなかった箇
教師は何を意識して授業づくりや実践を行わなけ 所があった場合は、残りの音読データを各自で再
ればならないか」といったテーマについて考えて 生して聞いておくように指示した。
いく。原理的な問いに向き合いながら、自身の公 授業後は、毎回担当者を決めて、読んだ感想を
民科教師としての信念の形成を目指す。 Teams 内の掲示板に投稿してもらった。さらに、
テキストは社会認識教育学会編(2020)『中学 他の学生に対して章の内容に関連する質問も投げ
校社会科教育・高等学校公民科教育』を使用した。 てもらい、他の学生にはその質問に回答すること
全部で 13 章あり、初回と最終回を除いても、1 章 を求めた。次回の授業の冒頭では、前回の章の振
ずつ順番に読み進めていけば読破できる算段だっ り返りとしてその掲示板の投稿内容を確認し、授
た。受講者が少ないため、研究室で和気あいあい 業内容の接続をはかった。
と進める予定だった。 3 週分の補講については、1 週を補講日での通常
授業にあて、残り 2 週を授業の中盤と終盤の補講
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 課題にあてた。終盤の補講課題は、最終レポート
づいて変更し実施した授業内容 として「任意の章を選んで著者に質問や意見を送
緊急事態宣言を受けて休講が続き、学事歴上は るメールの文面を作ってみよう」とした。提出さ
12 週しか確保できなくなった。3 週分は補講を実 れたレポートは、学生本人の許可を得て、実際に
施するか、課題とそのフィードバックを行うこと 著者にメールで送った。
で代替しなければならなくなった。学生とは一切
の接触が禁じられ、授業は全面オンラインとなり、 3.学生の反応と今後の課題・可能性
大学が契約する Microsoft Teams を活用したオン 少人数の授業であり、学生とは昨年までの授業
ライン授業を行うことが推奨された。 を通してすでに人間関係が形成されていたので、
この状況を受けて、方針に従ってオンライン上 オンライン上の授業でも不都合を感じる場面はな
で読書会型の授業を進めていくことにした。SNS かった。事前事後の課題が少なく、教員が解説を
上では「オンライン授業によって課題が普段より 加えながら読み進めるスタイルは、学生たちには
多く出されるようになり、学生の負担が増大して おおむね好評で、掲示板にも全員が毎週コメント
いる」という声をよく見かけた。そのため、事前に を残してくれた。オンライン化によって、学習時
読み込むことは必須とせず、その場でテキストを 間や学習場所の制約から自由になることのメリッ
読み進める形にした。学生は音読に慣れておらず、 トを感じられた実践となった。

113
金城学院大学国際情報学部「国際情報演習(3)」 献を PDF で、配布可能な範囲で LMS を通じて共
(3 年生対象)授業実践報告 有した。
大嶋えり子
3.学生の反応と今後の課題・可能性
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ペアで発表してもらうと決めたとき、遠隔でス
容、成績評価の方法 ムーズにレジュメの作成などができるのかどうか
本授業は 3 年生のゼミであり、4 年次も同じメ 心配していたが、結果的に履修者はうまく連絡を
ンバーでゼミを行う。4 年次には卒業論文を書い 取り合って発表の準備をしていた。
てもらうため、3 年次ではさまざまな社会科学の また、文献中に言及されている画像などを簡単
トピックを取り上げた文献を読み、正確に、かつ に Google Meet で共有できたのは便利だった。対
批判的に読む訓練を行うようにしている。毎週一 面の授業で使用している演習室では、PC とモニタ
人あるいは二人組に教員が指定した論文あるいは ーの接続が煩わしいため、気軽に画像などを見せ
本の特定の章を担当してもらい、レジュメを作成 ることができなかったため、この点は遠隔の方が
してもらい、発表してもらう。発表後は文献の内 楽だったといえる。
容についての確認を全員で行い、解説が必要であ ただしリアルタイム双方向型の授業では、4 年
れば教員が補足的な解説を行う。最後に、発表者 生のゼミで生じた案件を含めると、発表中の学生
が提示した論点について全員でディスカッション の携帯電話の着信音が鳴り続ける、教員の自宅の
を行う。 インターフォンが鳴る、大学生のきょうだいが隣
でリアルタイム授業を受けているためゼミ生が発
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 言しづらいなどといった事案が発生した。深刻な
づいて変更し実施した授業内容 トラブルとはいえないが、こうした事案は場合に
大学からは Google Meet などを使用したリアル よっては履修者や教員のプライベートの暴露につ
タイムのオンライン授業が認められたので、ゼミ ながり、単なる微笑ましいエピソードとして片づ
はこの形態をとった。7 人しか履修者がいないこ けることはできないように感じた。
ともあり、出席の管理などは容易だった。アクセ また、技術的な問題として、大学が Google と契
スができない、などのトラブルも当初はあったが、 約しており、各学生が自分のアカウント名として
事前に Google Meet の使い方を説明している動画 デフォルトで学籍番号を登録するようになってい
を YouTube で見てもらったり、Chrome をインス るため、履修者の名前ではなく学籍番号が Google
トールするよう指示を出したりしていたため、最 Meet の画面に表示されず、名簿を参照しないとだ
小限にとどめることができたと考える。また、通 れがゼミに出席しているのかわからないという点
信の負担を軽減するために発言するとき以外はマ が挙げられる。表示される名前を変更することが
イクとカメラをオフにするよう求めた。 できない仕様のため、この点は不便だったといわ
通常では前もって新書などを提案して、履修者 ざるを得ない。人数が少ないため、大きな問題で
と相談のうえ、取り上げる文献を決め、本を購入 はなかったが、少々ストレスを生じた。
してもらうが、感染が拡大するなか、学生に書店 以上のような遠隔授業ならではの可能性や問題
に足を運ばせることはできなかった。インターネ が見つかったものの、基本的には従来の対面授業
ット通販や電子書籍に慣れていない履修者がいた と大きな差はなかった。
ため、ゼミ生にいくつかテーマを提示し、選んで
もらったテーマのなかに沿った私が持っている文

114
金城学院大学国際情報学部「国際情報概論」(1 年 初回は導入のコンテンツをコーディネーターの教
生)授業実践報告 員が配信した。講義に関しては、私はパワーポイ
大嶋えり子 ントに音声を録音した動画を配信した。4 つのク
ラスで同じ講義を行うため、2 回分の動画を作成
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 したあとは、課題の〆切などの説明の部分のみを
容、成績評価の方法 修正し配信した。負担が軽減された分、第 1 回の
国際情報学部の教員 4 名が「現代社会と女性」 私の講義の際に提出されたコメントシートへのフ
という共通テーマに沿ってそれぞれの専門分野に ィードバック動画をそれぞれのクラスに応じて作
関わるトピックを取り上げるオムニバス形式の一 成した。なお、当初予定していなかった「コロナ禍
年生向け必修授業である。4 つのクラスに各 40 名 と DV」というテーマにも若干触れた。
ほどの履修者がおり、4 名の教員が 2 回ずつ各ク すべての教員は各回でコメントシートの提出を
ラスで講義を行い、その他に講演会なども予定し 求め、一人の教員による 2 回の講義の後には小レ
ていた。私が担当する講義は「#MeToo 運動から ポートの提出も課した。これらに加えて、大学に
考える性暴力」「#Kutoo から考える性差別」と題 おける学習を習慣づけるために用いる学習活動記
した。なお、オムニバス形式のため講義の順等は 録シートを毎週記入し、学期の終わりに提出する
クラスによって異なる。 ように指示した。通常ならば、このシートをペア
授業の中では、受講者各自の学習活動記録にも あるいはグループで振り返るという作業を学期の
とづくディスカッション、講演会のためのグルー 途中に行うが、授業の回数が減ったため、実現し
プワークなど、いわゆるアクティブラーニングの なかった。また、講義に加えて、動画収録による講
手法を多く用いる。 演会をすべてのクラスで配信し、所定のシートへ
評価の内訳は小レポート 40%、
コメントシート・ の記入・提出を求めた。最終回は、すべての授業を
学習記録シート 45%、講演会についてのエッセイ 振り返り、コメントを書くという回になった。
10%、まとめとふりかえり 5%である。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 私の講義に関しては、履修者にとって身近に感
づいて変更し実施した授業内容 じられるテーマだったようで、提出物の内容は充
Zoom や Google Meet を使用したリアルタイム 実していた。また、フィードバックは好評だった
の授業、動画配信、資料と音声ファイルの組み合 ようだ。学習記録シートには授業の課題等の学習
わせ、あるいは資料のみアップロードが認められ と自ら取り組んだ学習を記入してもらうが、前者
た。これらの手法の組み合わせも可能である。 に関しては遠隔授業になったため課題が多く記さ
4 月に、どのように授業を進めるかを教員 4 名 れていた。
がオンライン会議により集まり、決定した。6 月か 全体として、もともと提出物が多く、提出が遅
ら対面授業が再開される可能性があると当初は思 れるなど、小さなトラブルがあったが、遠隔授業
われていたため、途中から対面授業にできるか検 になり細かいトラブルがさらに加わった。とりわ
討したが、協議の結果、対面授業再開の確証がな け LMS を通じたファイルへのアクセスや、課題提
かったためすべての回を遠隔のオンデマンド方式 出におけるトラブルが何度か発生し、今後の遠隔
で行うことを前提とした。結果的に、6 月からの対 授業における課題となった。
面授業の再開はごく一部の授業に限られたため、
この判断でよかったといえる。

115
金城学院大学国際情報学部「地域研究総論」(1 年 ーを迎えて講義を行ってもらう回を設けた。事前
生以上)授業実践報告 にゲストスピーカーと Google Meet を使用した打
大嶋えり子 ち合わせを行っていたため、技術的なトラブルな
どはなかった。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 なお、コロナ禍をめぐる情勢を理解するために
容、成績評価の方法 も当初簡単に触れることしか予定していなかった
フランスを中心としたヨーロッパの近代史から 中世におけるペスト流行についても時間を割いて
現代史までを学び、現代ヨーロッパ社会について 説明した。さらに、現代社会における格差と感染
の理解を深めることを目的とする。 症の関連についても言及した。
毎回 LMS 上に授業日のうちに提出してもらう
コメントシートを出席としてカウントし、成績評 3.学生の反応と今後の課題・可能性
価の方法はコメントシート 20%、試験 80%とする。 大学から非同期型授業の場合は授業コンテンツ
コメントシートでは授業の最後に授業内容に関す を授業日の前日までに LMS にアップロードする
る質問に答えてもらうとともに、授業の感想や質 ように指示があった。履修者はコメントシートを
問を受け付ける。コメントシートへのフィードバ 書くための時間を通常の対面授業よりも多く確保
ックは翌週の授業内に行う。試験は〇×問題と論 できたため、前年度よりも提出されたコメントシ
述 2 問で A4 一枚を持ち込み可とする予定。 ートは充実していた。動画を二回見たという学生
もいた。そのため、授業の冒頭では前回のコメン
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 トシートへのフィードバックに時間を割いた。学
づいて変更し実施した授業内容 生間のコミュニケーションが制限されるなか、他
授業形態としては、Zoom や Google Meet を使 の履修者がどのようなことを書いたのかが分かる
用したリアルタイムの授業、動画配信、資料と音 という点が好評だった。
声ファイルの組み合わせ、あるいは資料のみアッ また、通常の対面授業であれば時間や距離、予
プロードが認められたが、資料のみという形態は 算などの理由により呼べなかったゲストスピーカ
なるべく避けるよう指示があった。 ーを迎えることができ、今後の遠隔授業の新たな
以上の指示に基づき、パワーポイントを用いて 可能性を見いだせた。
動画を作成した。技術的に、PC 内臓マイクではき ただし、変則的な学事暦となったため、履修の
れいに音声を録音できなかったため、USB ポート 修正期間が六月の頭に設定されたことには悩まさ
に繋げる安価なコンデンサーマイクを購入した。 れた。公平性を担保しつつ第五回の授業から出席
また、特定の PC では録音時にハウリングが発生 する学生が不利にならない成績評価を模索した。
したため、他の PC を使用するなどの工夫が必要 なお、初回はスライドと音声を別々のファイル
となった。 として配信していたが、動画にしてほしいという
技術面以外の大きな変更としては、期末試験に 要望があったり、動画の音声が聞き取りづらいと
代わって短いレポートを二つ課した点が挙げられ いう声があがったりしたため、学生のリクエスト
る。一つ目のレポートは筆記試験の論述問題にな に応える工夫をして最終的な形態に落ち着いた。
るような授業内容の一部をまとめるもので、二つ 非常時に学生とともに授業を作る、という経験に
目は学生に問題を設定してもらうものである。 なった授業である。
また、当初予定していなかったが、Google Meet
を使用して、遠方に在住しているゲストスピーカ

116
九州工業大学「国際関係論」(1、2 年生対象)授 では、
パワーポイントで作成した動画を Moodle で
業実践報告 公開する手法を採り、内容理解を促す小テスト
大山貴稔 (30%)を導入した。これに伴い、成績評価時の小レ
ポート(30%)と期末試験(40%)の比重を下げた。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 講義内の工夫としては、以下の 5 つがあげられ
容、成績評価の方法 る。第 1 に、動画の構成である。約 10 分×3 本に
本講義は、教養教育科目・人文社会系のグロー 動画を分割し、各動画の最初と最後で理解すべき
バル教養科目のひとつである。国際関係のあり方 要点を明記して達成目標までの道標を示した。第
に関心を持ち、そこで展開される営みについて理 2 に、小テストの難易度である。選択式の問題をや
解を深めるための科目群の一端を担っている。 や難しく設定することで、授業資料と向き合いな
本講義では、グローバルな関係を形づくってき がら理解を深めるきっかけとした。第 3 に、小レ
た重要課題の理解に資する基礎的な枠組みを身に ポートへの評価である。課題提示時に評価基準と
つけてもらうとともに、世界を複眼的に捉える姿 配点を伝え、減点時には減点箇所をコメント欄で
勢を養うことを目的とした。クォーターを構成す 伝えるようにした。第 4 に、履修者とのコミュニ
る全 8 回の講義で取り上げるのは、①グローバル ケーションである。小テストの最後に自由記述欄
化の歴史、②安全保障、③自由貿易、④不平等・格 (無回答可)を設けて質問や要望を受けつけた。
差、⑤開発援助、⑥平和構築、⑦枠組みの整理、⑧ 第 5 に、質問への対応である。質問者名を伏せて、
まとめと試験、というテーマである。各テーマ内 質問と回答を Moodle で全履修者に共有した。
ないしテーマ間で見られるジレンマに光を当て、
ある枠組みに基づく解法がその死角で意図せぬ影 3.学生の反応と今後の課題・可能性
響を及ぼしうることを視野に入れる構成とした。 上記の自由記述欄で記された意見は、遠隔講義
当初、成績評価では小レポート(50%)と期末試 に肯定的であった。自分のペースで受講できるこ
験(50%)を活用する予定であった。小レポートで と、動画で復習できること、が理由とされていた。
取り組んでもらうのは、講義内で十分に言及でき 授業の番外編として、少人数(3~5 名)の読書
なかった事例の調査学習である。次週の講義まで 会も生まれた。履修者とのやり取りをきっかけに
に Moodle 上で提出してもらい、各講義の最初に 呼びかけたもので、新書やインターネット上で読
履修者間のコメント交換の機会を設けるつもりで める論説を題材に参加者が相互に議論し合う形式
いた。第 1 回目の講義のなかで利用可能なデータ で進められ、授業終了後も継続している。
ベースなども紹介することで、情報収集と文章表 また、動画の視聴タイミングには履修者の関心
現の基礎を実践することも評価基準に含めた。 の強弱が現れていたようにも見えた。教材公開か
ら課題提出まで 2 週間の期間を設けていたが、履
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 修者が動画を視聴するタイミングは概ね固定化し
づいて変更し実施した授業内容 ていた。とりわけ、課題の締め切り直前に視聴し
遠隔講義の方針は、部局ごとに策定されたガイ た履修者は評点が低くなる傾向が目立っていた。
ドラインが基礎となった。筆者が所属する教養教 授業評価アンケートの学生評価(説明や資料、
育院では、①教員-学生間の双方向のやり取りが 内容理解について)は前年度よりも高かった。資
可能で、②通信環境が整わない学生も各々のタイ 料の分割を通して学生の意識や時間に区切りを設
ミングで受講可能、という観点から Moodle を用 けうるとともに、各テーマの構成や連関を可視化
いた非同期型の講義が推奨された。そこで本講義 しやすいという非同期型講義の利点が感じられた。

117
大阪工業大学「基礎情報処理Ⅰ」(1年生対象)授 画配信型(リアルタイム方式)により全授業を実
業実践報告 施した。配信システムは、本学が G Suite を契約
越智徹 しているため、Google Meet を使用した。授業内
でどのような内容を扱い、どのような作業を実施
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 するか、また授業で使用する Google Meet や出席
容、成績評価の方法 兼アンケートの MS Forms の URL を記載した「指
筆者が担当した「基礎情報処理 I」は、いわゆる 示書」である PDF ファイルを作成し、その PDF
初年次情報リテラシーの授業であり、PC を利用し ファイルを学内サーバに置く。このファイルの連
て情報を活用する基礎的な能力を養うことを目的 絡は、学内ポータルサイト経由で行った。
(図1、
としている。大阪工業大学(以下、本学)では、 図2参照)
2018 年度入学生より自分でノート PC を購入して
持ち込む、BYOD(Bring Your Own Device)を導
入しているため、この授業では、ノート PC の基
本的な使用方法から、ネットワークの基礎や情報
図 1 授業前連絡の概要
倫理、レポート作成が最低限できるようになるた
めの Office ソフトウェアの使用方法を学ぶ。本授
業での成績評価は、課題の提出状況、情報機器に
関するオンラインテスト、最終回に実施するまと
めとしてのレポートで総合的に評価する。
オンライン授業化によって、シラバスや評価方
法の変更も検討されたが、最終的に変更せず、対 図 2 授業実施のシステム

面からオンラインへと授業の場を移しただけで予
定通りの内容を実施し、成績評価を行った。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
第 1 回目の授業には、本当にこの方式で学生が

2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 接続して出席できるか大変不安であったが、ほぼ

づいて変更し実施した授業内容 すべての学生が無事に出席し、欠席した学生には

本学では、当初は 2020 年 4 月 7 日から授業開 メールでフォローした。受講者はほぼ 1 年生だが、

始予定であったが、4 月 1 日に緊急事態措置の報 リアルタイム配信では「授業を実際に受けている

道があったため、急遽 1 ヶ月延期となり、5 月 7 日 感じがする」「オンデマンド方式だとさぼってし

から開始し、当初2週間はオンライン授業を実施 まうからこの方式がよい」という感想が寄せられ

する、という方針となった。しかし結果として、前 た。また、最終成績評価では昨年度とほぼ変わら

期期間終了までオンライン授業が継続された。 ない結果となった。

次に、本学におけるオンライン授業について述 しかし、授業の大半が PC による作業のため、

べる。前節で述べたように、学生はほぼノート PC Google Meet の共有画面を見ながら作業を進める

を所持している、という前提でオンライン授業が のが難しい、また PC に不慣れなため自分のトラ

実施された。本学教務課からは、教材・課題提示 ブルを言語化してチャット等で伝えるのが難しい、

型、動画配信型(リアルタイム方式)、動画配信型 という意見もあった。特に後者についてはオンラ

(オンデマンド方式)、の 3 種類から任意の方式 イン授業では解決困難な点であり、個人の能力に

で実施せよ、とのアナウンスがあった。筆者は動 依存するため、大きな課題点である。

118
福岡女子短期大学「保育実習指導3」(2年生対 5 月より FWJConLine に授業の課題をアップし
象)授業実践報告 たが、内容は①保育所実習1の振り返りを長文ア
加藤朋江 ンケートのフォームで提出させる、②教科書を利
用して小テスト形式の課題を実施する、③教科書
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 を参考に各自指導案を手書きで作成しその内容を
容、成績評価の方法 撮影し画像ファイルで提出させる、であった。
6 月と 7 月は教室の人数制限を行い、クラスを
講義の目的と概要:保育所実習を円滑にすすめ 分けて授業時間をずらすなどの対策を取り、本科
ていくための知識・技術を習得し、学習内容、課題 目は対面授業を開始した。その際に提出された課
を明確にするとともに、実習のための事前・事後 題の①~③についてのフィードバックを行った。
指導を学ぶことを目的とする。 実習には「大学(教員)」と「学生」のみならず、
講義内容:8 月に実施の保育所実習2(10 日間) 実習先という「外部」が関係する。授業を遠隔のみ
に備えて知識や技術を学び、設定保育における指 で実施する期間は短いものであったが、在宅勤務
導案の準備をする。従来は、前年度の保育所実習 期間中にこの三者の連絡・調整作業を自宅でする
1を振り返り、実習日誌の記入方法等について確 必要があり、メールと電話と fax(現場では今も活
認、8 月実習における保育教材の検討等を実施し 用される)を駆使してのハードな業務であった。
てきた。その際、本学の豊かな自然環境を活用し
た遊びの検討など、実習に向けての実践的な内容 3.学生の反応と今後の課題・可能性
をなるべく多く取り入れるよう心がけてきた。
成績評価:レポート 30%、授業内課題 20%、実 本学 2 年生は、1 年次において情報処理の科目
技 20%、受講態度 20%である。 を履修していたため FWJConLine には全員アクセ
スが可能であり、特に混乱は無かった。
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 資格取得のために、実習という学外の施設で他
づいて変更し実施した授業内容 者と直接ふれ合う時間が求められる限り、指導の
全てを遠隔で実施することは難しい。今回本学で
本学では 4 月 1 日に授業の開講延期が決定し、 は学生が既に1つ実習を終えており、実習なるも
4 月末に 5 月 8 日から遠隔授業が実施されること のイメージをつかんでいたこと、遠隔授業のみの
が伝えられた。事前に学生の自宅の PC とネット 期間が短かったことに救われた。
環境を調査したところ、スマートフォンは全員持 幸いにも、8 月実習は全員が行先を確保し、中断
っていることがわかったが、自宅にネット接続可 なく無事に実施できた。担当教員としては、保育
能な PC がある学生は学科によるが 65~70%だっ 教材の検討と指導案の作成について事前に十分に
た。そこで、スマートフォンしか持たない学生も 指導の時間が取れなかったという思いがある。た
参加できるよう工夫することが求められた。 だ、遠隔授業によって「書くこと」へのハードルは
結果的に、大学から要請されたルールは Moodle 明らかに下がっており、それは実習にもプラスに
を用いたオンライン(FWJConLine)のコースを使 働いたのではと考えている。実習の計画や日誌を
用、
「オンデマンド型(ファイル容量の制限あり)」 記入する際の観察の観点等について、各自でより
で少なくとも講義資料を掲載し課題を与えること、 深い考察の時間を確保できたこと。資格取得のた
「動画を配信する場合は YouTube などを利用」等 め 2 年間を全力で疾走する短大生にとって、そう
となった。 した時間も貴重だったのではないだろうか。

119
大阪府立大学「経済学・経営学のための数学」(1 者の履修後の能力と考え,そこから逆算して基礎
年生対象)授業実践報告 学力を推定した上で,難易度の高いε-δ論法を終
金原大植 えた時点で Zoom による質問コーナーを開催し,
講義の理解度を測ることとした.
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 期末試験では対面試験が困難なため,試験時間
容、成績評価の方法 直前に Moodle 上に試験問題を公開し,各自が答
本講義は半期 2 単位のマネジメント学類の 1 年 案を撮影したファイルをアップロードする形式を
生向け専門科目で,微分・最適化を応用の観点か 採用した.またアップロードに関する問題の発生
ら扱う講義であり,私は今年度が初担当であった. が予想されたため,事前に予行演習した上で,試
講義は板書形式で進め,演習問題による理解度 験時間終了後に 30 分の提出時間を設定した.
確認を通じて難易度調整を行う予定であり,記述
式の期末試験での最終成績評価を予定していた. 3.学生の反応と今後の課題・可能性
遠隔講義動画に対する学生の改善要望としては,
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 板書が判別しにくい・音声が聞きにくい,編集を
づいて変更し実施した授業内容 行った動画に関しては容量が大きいなどが存在し,
大学からの要請で Moodle 使用のオンデマンド Moodle の問題5も発生した.
形式による動画と課題を組み合わせた遠隔形式と これらへの対処として,マイク付きストリーミ
なり学期期間が 3 週間短縮される事となった. ング用ウェブカメラ6を購入して収録を行い,動画
実施上の問題は以下の 3 点が存在した.1 つ目 1 本当たりの時間を 30 分程度に短縮し,編集では
は板書が一般的な数学はスライドを用いた講義動 なく適宜撮り直すこととした.またアップロード
画との相性が良くなく,またペン入力に対応した 先としては Dropbox を利用する事とした.
タブレット端末も保有していないため,PC 上で板 質問コーナーに関しては,質問者は 1 名のみで
書を行う事も困難であることである.2 つ目は講 あり,後日数名が電子メールで質問してきたため,
義回数の減少により,必要な内容を網羅する事が チャット 7 を利用した質問手段の方が望ましいと
困難となったことである.3 つ目は受講者の基礎 考えられる.
学力や理解度の把握が困難であることである. 期末試験は,ほぼ想定通りの出来であったが,
これらの問題を解決するため以下の対策を講じ 提出時にトラブル8が発生し,答案の共有などの不
た.1 つ目は研究室設置の小型の白板を用いた立 正行為を疑わせる答案も数枚見られた.またファ
ち講義をスマートフォンの Zoom アプリ4で収録し イル名と形式を指定しなかったため,答案の漏れ
た動画を配信する事とした.2 つ目は補講動画を や取り違えが無いか確認する事に想定以上の時間
作成し,視聴を課題として受講者のアクセスをチ が必要であった.以上から遠隔で記述式試験を適
ェックする形式とした.
3 つ目は同時開講した 3 年 切に行うには,不正行為の防止及び答案の管理に
生向け講義で数学の課題を課し,その出来を受講 関する工夫が必要だと考えられる.

4
音声収録には骨伝導 Bluetooth ヘッドセット Z8 だしオートフォーカスを切ることを推奨する.
を利用した.ノート PC のウェブカメラは画面端 7
Discord が考えられるが,これは受講者がグル
の歪みが大きいため推奨出来ない. ープで同時に講義を視聴し,疑問点を解消し合う
5
アクセス出来ない,音声のみが再生される等. 用途にも利用可能である.
6
Logicool C922N PRO STREAM WEBCAM,た 8
ファイル容量の超過が主な原因であった.
120
大阪府立大学「経済政策」(3 年生対象)授業実践 動画収録10を行い,宿題解説は研究室設置の小型の
報告 白板を用いた立ち講義形式で行った.2 つ目はマ
金原大植 クロ経済政策に関してはマクロ経済学に関する科
目と内容的に重複するため省略し,扱う範囲を公
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 共経済学・公共選択論といったミクロ経済学的な
容、成績評価の方法 経済政策に絞ることにした.
本講義は半期 2 単位でマネジメント学類の 3 年 期末試験に関しては対面試験が困難なため,試
生向け専門科目として,公共経済学を中心に公共 験時間直前に Moodle 上に試験問題を公開し,各
選択論やマクロ経済政策を扱うことを目的とした 自が答案を撮影したファイルをアップロードする
講義であり,私は今年度が初担当であった. 形式を採用した.またアップロードに関する問題
講義は概念や重要事項を解説したスライドと, の発生が予想されたため,事前に複数回の宿題提
図表や数式の板書を併用する形式で進め,複数回 出で練習した上で,本番では試験時間終了後に 30
理解度確認を兼ねた宿題提出とその解説を板書形 分の提出時間を設定した.
式で行う予定であり,成績に関しては数学的な記
述式の期末試験に宿題の提出状況を加味した評価 3.学生の反応と今後の課題・可能性
を予定していた. 学生からの反応としては, Moodle に関するも
の11と容量が想定より重いという指摘があった.ま
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 た講義中にスライドとデジタルペーパーをスムー
づいて変更し実施した授業内容 ズに切り替えにくいという問題を感じた.
大学からの要請で Moodle 使用のオンデマンド 前者に対して,情報基盤センターへ問題の発生
形式による動画と課題を組み合わせた遠隔形式と を報告するとともに,ウェブカメラを切り,スラ
なり学期期間が 3 週間短縮される事となった. イドショーをウインドウ表示し,解像度を下げる
実施上の問題は以下の 2 点が存在した.1 つ目 対策を取り容量の削減を図った.後者の解決には,
は当初想定していたスライドと板書を単一の動画 ライブ配信用の画像切り替え機材12の導入が必要
で併用する事が困難な事である.2 つ目は講義回 であり後期以降の課題として残されている.
数の減少により,必要な内容を網羅する事が困難 期末試験は,ほぼ想定通りの出来であったが,
となったことである. 提出時にトラブル13が発生した.またファイル名と
これらの問題を解決するため以下の対策を講じ 形式を指定しなかったため答案の漏れや取り違え
た.1 つ目は講義と宿題解説を異なる形式で収録 が無いか確認する事に想定以上の時間が必要であ
した.講義に関しては板書を事前にデジタルペー った.以上のことから遠隔で記述式試験を適切に
パー に手書きし,スライドと併用して Zoom にて
9
行うには更なる改善が必要だと考えられる.

9
SONY DPT-RP1 を利用した.初回に書画カメ トマイクよりも距離の離れたウェブカメラのマイ
ラを利用してリアルタイムで板書を行おうとした クや単一指向性コンデンサマイクが雑音も少なく
が,手が邪魔になりやすい,高解像度でないと数 適している.
式の添字など細かい文字の可読性が低い等の問題 11
無関係の講義動画が紛れ込んでいるという事象
が生じたため利用を断念した. が発生した.
10
音声収録には Logicool HD Webcam C615 のマ 12
ATEM Mini の導入を検討している.
イクを利用した.講義に利用する際はヘッドセッ 13
ファイル容量の超過が主な原因であった.
121
桃山学院大学「マス・コミュニケーション論」(全 に変更した。
学年対象)授業実践報告 映像作品の上映と板書による授業形態を想定し
ケイン樹里安 ていたが、プラットフォームを介して学生のデバ
イス上で「上映」することは著作権上問題である
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ので断念した。動画配信サービスの利用も考えた
容、成績評価の方法 が、会員登録や課金の手間やコストを事前周知し
本講義は、マス・コミュニケーションの歴史的 ていたわけではないので、そちらも断念し、パワ
変遷、戦後から現代における日本の様々なマス・ ーポイント・ZOOM・YouTube を活用したオンデ
メディア状況の理解、デジタル化・グローバル化 マンド型の動画配信に変更した。
に即したマス・コミュニケーションの様相の批判 全学生に通信環境を尋ね、リアルタイム型講義
的考察を行い、歴史的・社会的・文化的背景に目を は不可能な状況(家族との PC 共有・スマートフ
配りながらメディアを取り巻く状況への理解を目 ォンのみ所持・脆弱な通信環境・エッセンシャル
指すもので、213 名の学生を対象とした。コメント ワーカーとしてバイトに明け暮れる学生が一定数
紙を介してフィードバックを行うこと、論述試験 を占めた)であった。自室の照明器具の増設やマ
での成績評価が 100%だとしていた。 イクや三脚の用意をしつつ、LMS の容量制限が問
題だったので、ZOOM で撮影後に学生も手慣れて
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 いる YouTube への投稿を始めた。課題配布ばかり
づいて変更し実施した授業内容 だと学生は苦痛かと思われたので「顔出し」動画
3 月 6 日以降、オンライン講義に向けた以下の をベースにしつつ「教室でみんなで受講している
ようなルールが伝達された。①教材と学習方法の 感覚」に少しでも近づけるようフィードバック(ミ
提示・指示、②LMS 上での提出を前提とした課題 ニレポート上の論点・コメント・疑問への「お返
の指示、③課題へのフィードバックの実施を推奨 事」)に時間をかけ、できるだけ多くの学生のコメ
するが必須ではない、④初回の資料掲示は 4 月 10 ントを紹介するように心がけた。1・2 年生の学生
日、⑤Web 会議システムを通じたリアルタイム講 から、ノートの取り方・レポートの書き方に関す
義や動画配信によるオンデマンド講義など「より る質問が相次いだので、積極的にフィードバック
進んだ取り組み」の実践は妨げない、⑤その場合 動画のなかでアドバイスや書籍紹介を実施した
でも①~④が必ず行われること、⑥科目到達目標
を変更せず受講者がそれを達成できる教材・課題 3.学生の反応と今後の課題・可能性
を必ずアップする、⑩成績評価方法に変更が生じ 「顔出し」をしながらフィードバックに注力す
れば教務課に連絡し学生に提示する等々。 る試みは好評で安堵した。授業実践との因果関係
一方で、文科省の遠隔講義に関するガイドライ に確証はないし、適切な表現ではないかもしれな
ンでは「設問解答、添削指導、質疑応答等による十 いが、あたかもラジオの「ハガキ職人」同士のよう
分な指導」と「学生の意見の交換の機会」が必要と に学生たちがミニレポートの内容を切磋琢磨し、
記 載 さ れ て い た ( https://www.mext.go.jp/content/20200421- 授業が後半にすすむにつれ、ハイレベルなものに
mxt_kouhou01-000004520_7.pdf)。大学からは「必須ではな なったように思う。最終レポートも非常によく書
い」と指示されているが、単位認定に関わるリス けているものがあり、オンライン講義であっても
クヘッジを考え、積極的なフィードバック実施を 「質」を担保することは可能ではないだろうか。
決断した。対面での試験が不可能なので成績評価
を「毎回のミニレポート 30%+最終レポ―ト 70%」

122
桃山学院大学「視覚メディア論」(全学年対象)授 映像作品の上映と板書による授業形態を想定し
業実践報告 ていたが、何らかのプラットフォームを介して学
ケイン樹里安 生のデバイス上で「上映」することは著作権上問
題であるので断念した。動画配信サービスの利用
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 も考えたが、会員登録や課金の手間やコストを事
容、成績評価の方法 前周知していたわけではないので、そちらも断念
本講義は、
a 視覚文化論に関する基礎的概念や理 し、パワーポイントを軸にした講義へ変更した。
論の習得、b 視覚メディアにかかわる技術や要素 全学生に通信環境を尋ねたところ、動画配信に
の理解、c 視覚メディアを批判的に読み解く能力の よるオンデマンド型講義か課題配布型講義にすべ
涵養という到達目標を掲げ、19 世紀から現代まで き状況(家族との PC 共有・スマートフォンのみ
の視覚メディア(写真、SNS 等)を題材として 89 所持・脆弱な通信環境・エッセンシャルワーカー
名の学生が対象である。講義でコメント紙を配布 としてバイトに明け暮れる学生が一定数を占めた)
し、次の講義でフィードバックを行うこと、論述 であった。自室の照明器具の増設やマイクや三脚
試験での成績評価が 100%だとしていた。 の用意をしつつ、LMS の容量制限が問題だったの
で 、 ZOOM で 撮 影 後 に 学 生 も 手 慣 れ て い る
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 YouTube への投稿を始めた。配慮が必要な学生が
づいて変更し実施した授業内容 受講していたので動画に字幕を付けたが、個人の
3 月 6 日以降、遠隔講義に向けた以下のような キャパシティを早々に越えてしまい、教務課に相
ルールが伝達された。①教材と学習方法の提示・ 談し、支援課とボランティアの学生が字幕の作成
指示、②LMS 上での提出を前提とした課題の指示、 を引き受けてくださった。なるべく数日前に支援
③課題へのフィードバックの実施を推奨するが必 課に動画の URL と資料を送付することになった。
須ではない、④初回の資料掲示は 4 月 10 日、⑤ はじめは講師が「顔出し」をした講義動画をベー
Web 会議システムを通じたリアルタイム講義や動 スにすすめていたが、動画の事前作成に遅れが生
画配信によるオンデマンド講義など「より進んだ じ始めたので、徐々に課題配布・講義動画・学生へ
取り組み」の実践は妨げない、⑤その場合でも① のフィードバック動画を織り交ぜる授業形態へと
~④が必ず行われること、⑥科目到達目標を変更 切り替えた。「顔の見えない講師から課題が送ら
せず受講者がそれを達成できる教材・課題を必ず れ続ける」講義形式だと学生は苦痛かと思われた
アップする、⑩成績評価方法に変更が生じれば教 ので「顔出し」動画をベースにしつつ、「教室でみ
務課に連絡し学生に提示する等々。 んなで受講している感覚」に少しでも近づけるこ
一方で、文科省の遠隔講義に関するガイドライ とと、視覚メディア論という講義の特性を生かす
ンでは「設問解答、添削指導、質疑応答等による十 べく、学生の「画面越しの日常」の紹介を含めて
分な指導」と「学生の意見の交換の機会」が必要と 「お返事」に時間をかけた。
記 載 さ れ て い た ( https://www.mext.go.jp/content/20200421-
mxt_kouhou01-000004520_7.pdf)。大学からは「必須ではな 3.学生の反応と今後の課題・可能性
い」と指示されているが、単位認定に関わるリス 講義の評価は好評で安堵した。教科書指定や動
クヘッジを考え、積極的なフィードバック実施を 画配信サービスの活用を事前周知すれば遠隔講義
決断した。対面での試験が不可能なので成績評価 の発展/持続可能性はあると思うが、各大学の
を「毎回のミニレポート 30%+最終レポ―ト 70%」 LMS の習熟など技術的なコストはネックだ。
に変更した。

123
桃山学院大学「社会学原論(春集)」
(全学年対象) mxt_kouhou01-000004520_7.pdf)。大学からは「必須ではな

授業実践報告 い」と指示されているが、単位認定に関わるリス
ケイン樹里安 クヘッジを考え、積極的なフィードバック実施を
決断した。対面での試験が不可能なので成績評価
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 を「毎回のミニレポート 30%+最終レポ―ト 70%」
容、成績評価の方法 に変更した。
本講義は集中講義であり全 30 コマである。水 遠隔講義対策として、①全学生に通信環境を尋
曜・金曜の 3 限に 69 名の学生を前に行われる予定 ねオンデマンド型講義実施を決断した。家族との
だった。講義概要は「身の回りの些細なことから PC 共有・スマートフォンのみ所持・脆弱な通信環
人々の関心が集中する大きな出来事を題材に社会 境・エッセンシャルワーカーとしてバイトに明け
学の視点や方法、概念を学ぶ」ことであり、「社会 暮れる学生と、そうではない学生との格差拡大を
学の技法」を身につけることが目標である。講義 憂慮したからである。加えて、②自室の照明器具
中にコメント紙を配布し、次の講義でフィードバ の増設、③イヤフォンマイク・スタンドマイク・ス
ックを行うこと、論述試験での評価が 100%だと マホ用三脚の購入、④腰痛対策用の椅子の導入(知
していた。 人から譲渡)、⑤教室での映像作品上映が不可能
となったので教材作成用に複数の書籍購入、⑥
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 LMS の容量制限およびサーバーダウンに備えて
づいて変更し実施した授業内容 YouTube への動画アップロード方法の習熟(編集
3 月 6 日に授業が 1 週間後ろ倒しにされること 方法の習熟も努めたが撮影時間を含めると授業準
が、続けて 3 月 26 日に 5 月 1 日まで M-Port(学 備コストが実質 3 倍となったので GW 明けには諦
内 LMS)を通じて遠隔講義に切り替える方針が伝 めた)を行った。また、⑦「顔の見えない講師から
達され、さらに後日、春学期はすべて遠隔講義と 課題が送られ続ける」講義形式ばかりだと学生は
なる旨が伝達された。その際、以下に示すような 苦痛かと思われたので、ZOOM で「顔出し」をし
ルールが伝達された。①教材および学習方法の提 ながらパワーポイントのスライドを画面共有する
示・指示、②LMS 上での提出を前提とした課題の 方法の習熟、⑧スマホ画面に対応すべくスライド
指示、③課題へのフィードバック(講評・コメン の文字の減少や大きさの調整、⑨講義動画と共に
ト・採点等)の実施を推奨するが必須ではない、④ 学生のコメントを読み上げて返事をする「お返事
初回の資料掲示は 4 月 10 日、⑤Web 会議システ 動画」を作成しフィードバックとした。
ムを通じたリアルタイム講義や動画配信によるオ
ンデマンド講義など「より進んだ取り組み」の実 3.学生の反応と今後の課題・可能性
践は妨げない、⑤しかしその場合でも①~④が必 学生にも身近な YouTube を介した「顔出し」講
ず行われること、⑥科目到達目標を更せず受講者 義動画・お返事動画はいずれも好評だったので安
がそれを達成できる教材・課題を必ずアップする、 堵した。また、テキスト指定をしており、時折ミニ
⑩成績評価方法に変更が生じた場合は教務課に連 レポート用の課題教材としたところ、紙の教科書
絡し学生に提示する等々。 は「送付された PDF ファイルを印刷しにコンビニ
一方で、文科省の遠隔講義に関するガイドライ に行く必要もなく何よりも目に優しい」と意外と
ンでは「設問解答、添削指導、質疑応答等による十 好評であったことが発見であった。
分な指導」と「学生の意見の交換の機会」が必要と
記 載 さ れ て い た ( https://www.mext.go.jp/content/20200421-

124
法政大学「アジア比較政治論Ⅰ」授業実践報告 3.学生の反応と今後の課題・可能性
黄偉修 ①学生の反応:授業の内容と質にも満足できたよ
うである。ただし、学生の反応が直接に確認でき
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ないため、学生がどこまで授業の内容を理解した
容、成績評価の方法 かについて心配している。②教員の体力:学生の
【授業の概要と目的】本授業では、まず比較政治 インターネット環境の整備が確認できない以上、
学に関する基礎知識を共有し、東アジアにおける 音声付き PPT と教材の配布はオンラインで講義
多様な近代化や政治発展のあり方を体系的に理解 型の授業を行うための最もよい方法かもしれない。
する。そのうえで、アジア国際政治の歴史とも絡 しかし、一回の音声付き PPT(50 分間)の録音は
めながら、東アジア各国の政治体制の特徴につい 約 5~6 時間かかるため、教員の体力を消耗させる
ての専門知識を深める。さらに、各国の政治体制 作業である。③音声付き PPT の準備は時間がかか
に関する知識を現実の国際情勢と照らし合わせ、 る。大学が早めにオンライン授業への切り替えを
東アジア各国や地域において生じている現代の諸 決めれば、講師も円滑に準備を開始することがで
問題について対話(ダイアローグ)を行う。【到達 きる。④中国の言論規制をめぐって:日本に入国
目標】比較政治学の分析概念や枠組みを用いて、 できない中国籍の留学生は、オンライン授業で中
東アジア各国の近代化や政治発展の特徴を分析で 国の外交と独裁体制など批判した内容、台湾の民
きるようになる。また、各国の政治体制の特徴を 主化のような中国にとって不都合な話を受講した
理解した上で、各国の国内や諸国家間の関係にお ことで、政府のネット検閲によって逮捕される恐
いて生じている諸問題について、構造的な説明を れがある。とはいえ、担当教員がそれについて配
することができるようになる。【成績評価の方法 慮すれば、学問の自由に抵触することになる。ま
と基準】授業において出題する課題の達成度(50%) た、中国の香港国家安全法の制定により、海外で
と期末試験の結果(50%)によって評価する。な 中国を批判する授業を受講する中国の留学生だけ
お、授業において出題する課題について、遅れて ではなく、その授業を行う海外の大学の教員も中
の提出は認めない。 国に入国すると逮捕される可能性が出てきた。実
際に海外では、中国に関する話をしないように大
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 学が中国の留学生の要請で教員に指示したり、教
づいて変更し実施した授業内容 員が中国の留学生に頼まれたりした事例、および
①音声付き PPT と配布資料による授業:大人数の 大学が中国政治の授業を受ける学生の身元情報を
授業だと、履修者全員からインターネット環境の 知られないよう、提出する課題に個人名ではなく
調査の回答が得られない、およびインターネット コードの使用を決めた事例もある。香港へのフィ
環境が整備されていない学生が必ずいるという判 ールドワークを中止した研究者もいれば、
「反中」
断で、大学から要請された際にすぐ学習支援シス として中国に入国禁止とされた研究者もいる。中
テムを通じて毎回 40~60 分の音声付き PPT と資 国の言論規制がオンライン授業だけではなく、学
料の配布による非同期型のオンデマンド方式で授 問の自由に悪い影響を与えたと考えている。
業を行うことを決めた。②授業の回数も時期の短
縮によって、内容の調整を行った。③評価基準を
毎回の感想(60%)、期末のレポート(40%)へ変
更した。

125
目白大学「音楽表現基礎2(ピアノ)」(2年生対 まず、すでにオンラインレッスンをしている音楽
象)授業実践報告 講師らから、その実際をヒアリングした。さらに
小林恭子 ZOOM や LINE 等を用いたピアノレッスンを実
験的に行った。また、学生側の楽器環境が必須な
1.シラバス段階での授業の目的と概要、授業内 ため、「自宅に 61 鍵以上の鍵盤楽器を用意するこ
容、成績評価の方法 と」を履修条件にした。履修者減少を心配したが、
本授業は、保育士・幼稚園教諭を目指す学生が、 結果的には抽選を行うほどになった。さらに、自
音楽の基礎的な能力を高めることを目的にした実 宅練習用に課題曲の範奏を全曲・全レベル録画し
技科目である。選択授業だが、対象学科の学生の 3 Google Classroom に公開した。
分の 2 程度は履修する。教員は 2 名で、ピアノと 実際の遠隔授業では、第 2 回から第 13 回まで毎
声楽を分担している。ピアノは、個人レッスンの 回 ZOOM による個人レッスンを行った。2 名の
ため、2 名の TA をつけている。本稿は主にピアノ TA にも ZOOM のホストになってもらった。レッ
実技について述べていく。声楽実技については、 スン時間は、ひとり 6 分程度であった。ZOOM は
別稿(田中)を参照されたい。 時差が生じるため、同時に弾いたり歌ったりでき
シラバス段階でのピアノ実技のねらいは、童謡 ず、楽譜の一部を指し示すことも難しいため、簡
の伴奏法を身に付けることであった。具体的には、 潔でわかりやすい説明を心がけた。毎レッスン終
コードネームの読み方と伴奏づけの方法を学び、 了後に、Google Forms で全学生にフィードバック
レパートリーを増やすことを目指す。 を行った。最終回は、習得したレパートリーから 1
ピアノ実技のスケジュールは、第 9 回まで毎回 曲選んで暗譜演奏した動画を提出させ、編集して
個人レッスンを行い、指定の曲数以上合格するこ 発表会として1本の動画にまとめ、視聴および振
とを課し、第 10 回に学内のホールを利用して、発 り返りをさせた。
表会を行う予定であった。学生のレベルは、初心
者から今も習っている者まで幅広いため、伴奏パ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ターンを 4 つのレベルに分け、自分の能力にあっ 学生の反応は、毎回のフィードバックで前向き
た伴奏法で上達を目指す。 なコメントが多く見られた。筆者が指導していた
ピアノに関する成績は、課題の進度と最終発表 学生らは、毎週新曲を複数譜読みしており、レベ
で評価する。課題の進度は、各自のレベルに沿っ ルを問わず熱心にピアノに向かっていた。遠隔授
た伴奏パターンで合格した曲数を点数化する。 業という閉鎖的な状況の中で、毎週1対1でコミ
ュニケーションをとりながらレッスンを行うこと
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 は、短時間でも大きな効果があったと思われる。
づいて変更し実施した授業内容 学生は、おおむね例年以上の曲数習得できた。遠
大学から要請された遠隔のルールは、主に同時 隔授業だったため、練習時間が増えたためと推測
双方向型とオンデマンド型を、授業内容に沿って している。音楽実技の遠隔授業は絶望的だと想定
組み合わせて行うことであった。資料の配布や周 していたが、大きな可能性が見えた。
知は、Google Classroom を活用する。同時双方向 今後の課題は、音の質やピアノのタッチへの言
型は、ZOOM か Google Meet を用いる。 及、一緒に歌ったりできない点の担保である。そ
ピアノ実技の授業は、指導者が目で見て耳で聴 して、オンライン上であっても、学生同士で発表
いて、実践的に教授するものである。そのため、遠 しあって切磋琢磨できる機会を設け、さらなる意
隔授業開始までに、綿密な準備が必要であった。 欲につなげていきたい。

126
関西大学「専門演習・卒業研究:災害ジャーナリズ ZOOM で町民等にインタビューをおこない、それ
ム論」(3~4 年次生対象)実践報告 を録画して、自宅のパソコンで編集してデータ送
近藤誠司 信する方式に切り替えた。

1.シラバス段階での演習内容 3.学生の反応と今後の課題・可能性
日本で唯一の「災害ジャーナリズム論」は、3~ 4 月 9 日に ZOOM オンラインゼミを実施した
4 年次生対象の演習科目で、災害情報とメディア のち、ゼミ生に感想を尋ねた際のとりまとめ資料
特性の基礎的な知識を、フィールドワークをまじ が手元に残されている。ネット接続に関していえ
えながら学習し、2 万字以上の卒業論文の執筆な ば、下宿先の回線状況が悪い学生が複数人いるこ
らびに卒業発表することが求められている。 とが判明し、さらに自宅でも家族とリモートワー
成績評価は、定時のゼミナールに出席すること クする空間が競合した学生がいることなどが課題
(15 回中、遅刻・早退・欠席は 3 回まで)の他、 としてあげられていた。
個別のプロジェクトにおける参加具合、理解の到 また、学生の声のなかで印象的だったのが、
「オ
達度、卒業論文の完成度によっておこなわれる。 ンラインでつながれる!という喜びを感じた後で、
しばらくやりとりをしているうちに、やっぱり現
2.大学から要請されたこと 実には離れているのだと痛感し、孤独の念が増し
大学からは、本年度の春学期は、2 週間の準備期 てしまった」というものであった。
間(この 2 限分は補講で調整するようにとの周知 4 年次生は、これまでの経験の蓄積をベースに、
あり)を経たのち、原則、オンライン授業をおこな フィールド先の人々ともオンラインでやり取りを
うようにとの要請があった。リアルタイムで実施 深めようと果敢にチャレンジしているが、3 年次
するか、オンデマンドで配信するか、それを併用 生(新ゼミ生)は、そもそもゼミ内の縦・横のつな
するかは、教員に任されることになった。 がりさえも希薄に(バーチャルに)感じているも
当該科目ではプレゼミを実施する都合から 3 月 ようであり、フィールド先とネット交流するプロ
のうちに体制を整えはじめ、定時のゼミはすべて ジェクトの進め方に対して、当初は少なからず戸
ZOOM(大学が有償契約)でリアルタイムに実施 惑っているようであった。
することとし、プロジェクトの打ち合わせは、 こうした諸課題をふまえて、ゼミでは現在、
「動
SLACK(研究室で有償契約)を併用することにし 画教材制作プロジェクト」に取り組んでいる。自
た。また、学生同士の連絡は LINE グループ、教 宅学習を迫られている全国の子供たちを支援する
員からのワンウェイの業務連絡はメーリングリス ため、児童向けの動画教材を ZOOM 収録方式で
ト、さらに、教員からのエール(励ましの思いを込 制作して、Youtube で限定公開するというもので
めた緩い言葉)はゼミの公式 Twitter(近藤ゼミ 2.0) ある。ゼミ生は、3~4年次生の混成チームで台本
から発信することにした。 を作成し、収録・編集作業、そのすべてを自宅でお
フィールドワークは、訪問・交流するスタイル こなっている。2020 年 8 月 14 日現在で、96 本の
をすべて中断し、ZOOM を使ったネット交流に切 コンテンツをサイトにアップ、今も週に数本ずつ
り替えた。一例をあげると、たとえば、京都府京丹 制作している。
「物理的に離れていても、こころは
波町のケーブルテレビ局と協働して防災番組を制 ひとつ」。このスローガンのもと、日々尽力を続け
作しているプロジェクト(since 2015)では、これ ている。
までは学生が町を訪問して撮影・出演・編集など ■ 近藤ゼミ「動画教材制作プロジェクト」
の作業をおこなっていたが、この春からは学生が http://kondoseiji.main.jp/movie/

127
北海商科大学「特殊講義Ⅰ(ASEAN の政治と経済 おいて、レジュメの他に写真や地図などを画面上
A)」(2 年生以上対象)授業実践報告 で共有して理解促進をはかった。授業中の質疑応
坂口可奈 答に関しては、毎授業ごとに質問時間を設けてチ
ャットで対応を行った。また、適宜 Zoom の「反
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 応」ボタンを使用するよう求めた。その結果、通常
容、成績評価の方法 授業よりも活発なコミュニケーションが行われた。
本講義は、受講生が ASEAN 諸国についての基 ③ 授 業 後 : 毎 週 ミ ニ 課 題 を 提 示 し 、 Google
礎知識および日本と ASEAN 諸国の関わりについ Classroom で提出するように指示した。
学生の ICT
ての基礎知識を身に付けることを目的とする。は 環境に配慮して、スマートフォンのスクリーンシ
じめの数週で東南アジア諸国の料理などの身近な ョット、手書き文字の撮影画像、ワードファイル、
文化や国同士の歴史的な「つながり」を説明する Google ドキュメントのいずれの形式の提出でも
ことで履修生の興味関心を喚起し、その後に東南 受け付けた。PC を所持していない学生からは、提
アジア各国の社会と政治についての講義を行う。 出形式の柔軟さは好評だった。④次週授業のはじ
通常授業では、毎週のミニ課題及びノート提出 めに:ミニ課題のフィードバック及び学生の理解
による 30 点分の平常点と 70 点満点の期末試験で 度に応じた再説明や補足説明を行った。ミニ課題
評価をつける予定であった。 と Zoom 授業に出られなかった場合の課題に対す
るフィードバックは文書形式で Google Classroom
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 にアップロードし、Zoom 授業に参加できなかっ
づいて変更し実施した授業内容 た学生が参照できるように配慮した。
大学からは、学生の通信環境と教育の公平性に
配慮することが求められた。授業形態についての 3.学生の反応と今後の課題・可能性
明確な要請やルールの提示は特になかったため、 当初、使い慣れないツールを使用することに対
教育効果と学生側の利便性を考慮して Zoom と して学生たちの戸惑いが見られた。しかし、2~3
Google Classroom を使用したリアルタイム型の遠 回でほぼ全員が遠隔授業の方法に慣れたようだっ
隔授業を行った。また、リアルタイム授業に参加 た。多くの学生たちは新鮮さを感じたようで楽し
できない学生には別途課題を提示した。学生への みながらリアルタイム型授業を受けていたが、回
初回連絡では、LMS やメール、SNS などの複数の を経るにつれてモチベーションの低下もみられる
方法を駆使して周知徹底を図った。 ようになった。ビデオオフ状態での学生のモチベ
通常授業では手書きノートのみ持ち込み可の期 ーションを維持する工夫が今後の課題である。
末試験を行っていたが、遠隔授業ではレポートへ とはいえ、オンライン授業だからこその可能性
と変更した。 も明らかになった。たとえば①遠隔地の教育機関
遠隔授業の内容は以下の通りである。①授業前: との合同授業②遠隔地のゲスト講師招聘があげら
学生には、事前に Google Classroom にアップロー れる。設備と制度を整えたならば、時間的・物理
ドしておいたレジュメをノートに書き写すよう指 的・金銭的な制約を超えて、他大学との交流授業
示した。これは、家にプリンタがない場合でもス や交流ゼミなどをオンラインで行うことも可能だ
ムーズにリアルタイム型遠隔授業を受けられるよ と考えられる。
うにするための配慮の一つであった。ノート点を
平常点の一部として計上することを学生に伝えた。
②授業時間中:Zoom によるリアルタイム授業に

128
北海商科大学「国際関係論(政治学を含む)」(2 の SNS でグループを作り、グループ内の連絡や相
年生以上対象)授業実践報告 談を行うよう要請した。そして、グループごとに
坂口可奈 資 料 を 調 べ て ま と め 、 前 日 ま で に Google
Classroom に発表資料をアップロードするように
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 指示した。この際、図書館を利用できない可能性
容、成績評価の方法 も考慮して、インターネットで論文や資料をダウ
本講義の目的は、履修生が国際関係論の基礎を ンロードできるウェブサイト(CiNii など)を紹介
理解し、より広い視野のもとで国際社会を分析す した。②授業時間中:発表担当グループの作成し
ることができるようになることである。担当教員 た資料を画面共有しつつ、Zoom でオンライン・プ
による国際関係論の基礎講義と学生によるテーマ レゼンテーションを行った。プレゼンテーション
ごとのプレゼンテーション&ディスカッションを 後、全員にコメントを求めたのち、教員からのフ
通して、以上の目的を達成する。 ィードバックを与えた。その後、各回のテーマに
通常授業では、毎週のミニ課題及びノート提出 沿ったディスカッションを行った。③授業後:リ
による 30 点分の平常点と 70 点満点の期末試験で アクション・ペーパーを Google Classroom で提出
評価をつける予定であった。 することを義務付けた。この際、リアクション・ペ
ーパーに可能な限り一言コメントを返すことで、
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 直接会ったことのない教員から Zoom で授業を受
づいて変更し実施した授業内容 ける学生の不安感を解消するよう試みた。数回で
大学からは学生の通信環境と教育の公平性に配 学生の不安感は解消されたとみられる。
慮することが求められた。授業形態についての明
確な要請やルールの提示は特になかったため、教 3.学生の反応と今後の課題・可能性
育効果と学生の利便性を考慮して Zoom と Google 当初、オンライン・プレゼンテーション&ディ
Classroom を使用したリアルタイム型の遠隔授業 スカッションを行うことに対して、学生たちから
を行った。また、講義回に Zoom 授業に出られな は戸惑いの声も聞かれた。しかしながら、準備を
い学生には別途課題を提示した。プレゼンテーシ 行う段階になると、担当グループ内で連絡を取り
ョン&ディスカッション回に参加できない学生に 合い、自主的に役割分担を行って準備を進めてい
は、発表担当の場合は音声を吹込んだパワーポイ た。ビデオオフの状態(聞き手の反応がわからな
ントや読み上げ原稿を他の担当者に託すように指 い状態)でのプレゼンテーションのむずかしさを
示し、担当でない場合には Google Classroom に発 感じた学生もいたようだ。
表に対するコメントを残すよう指示した。学生へ 人間と話す機会が減少する時期に授業内外で学
の初回連絡では、LMS やメール、SNS などの複数 生同士が(オンラインで)話す機会を作ることは、
の方法を駆使して周知徹底を図った。 学生のモチベーション維持の面でも有効であった
通常授業では手書きノートのみ持ち込み可の期 と考えられる。本授業での試みは、少人数クラス
末試験を行っていたが、遠隔授業ではレポートへ におけるオンライン環境下での教員‐学生間の一
と変更した。 言コメントを通したコミュニケーションの可能性
オンライン・プレゼンテーション&ディスカッ とオンライン授業でのチーム・ビルディングの可
ション回の内容は以下の通りである。①授業前: 能性を示唆している。
履修者の興味関心に合わせて数人の発表グループ
を作った。それぞれの発表グループに、LINE など

129
高千穂大学「教育方法(中高)」(2 年生対象)授 成績評価は例年実施の模擬授業・発表を通じた
業実践報告 学生相互レビューを、所有する情報機器の格差か
鈴木隆弘 ら断念。テストは Google クラスルームを利用した
オンラインテストに切り替えた。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内
容、成績評価の方法 2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基
本講義科目は、教職課程に位置づけられた科目 づいて変更し実施した授業内容
であるため、他の講義科目と異なる性格を持つ。 遠隔授業では、通信量過多の講義は推奨されな
昨年 2019 年度から、教職科目は「教職コアカリ かったが、それ以外は教員裁量であった。このた
キュラム」(以下、コアカリ)へ対応が求められて め情報機器対応を目的とする本講義の目的に従い、
いる。2 年生配当以上の教職科目は、実質本年から 当初 Google ミートを利用した同期型の講義の実
の対応となっており、シラバス変更自体が困難を 施を模索したが、学生からの強い反発の声で断念
極めた。この理由は、教職課程の再課程申請にあ せざるを得なかった。教員には情報機器活用能力
る。同再課程申請時、各講義科目は、授業計画とコ が必須であるにもかかわらず、学生がそれを意識
アカリとの対応関係について厳しくチェックを受 することが少ない。これは今後の課題である。
けていた。また、再課程申請後一定期間は、シラバ 断念した結果、講義はオンデマンド型とし、情
ス通りの展開が義務づけられている。このため、4 報機器の格差が生じないよう、パワーポイントで
月には、新たな講義内容の準備のみならず、講義 動画を作成し、音声を切り出し、Google クラスル
回数を減らしつつも、コアカリの内容を全て教え ーム・YouTube 等で視聴・聴講させた上で、課題
られるようにする調整が求められた。 に取り組ませた。これに加え、数回に一度、オンラ
本講義科目は、法令上では「教育の方法及び技 イン講義と対面講義の違いを意識、検討させる小
術(情報機器及び教材の活用含む。)」と呼ばれる。 レポート課題にも取り組ませた。これにより教育
講義全体を通じて、教育の方法・技術、情報機器及 方法の多様性とその特質について学習を深めさせ
び機材の活用を教えることが求められる。加えて、 ることも追加できた。結果として、予定通りの講
学習評価、板書などの指導技術、そして情報機器 義が展開できた。
を活用した授業実施能力を育成する必要がある。
そこで、本講義科目「教育方法(中高)」では、 3.学生の反応と今後の課題・可能性
上記コアカリの指示に従い、目標を「教育方法の オンライン化は、遠方から通学する学生には学
基礎的な理論について学び、現在教師に求められ 習時間の増加という福音をもたらした。また、机
る授業力について考察すること」を中心に、教育 上に出せるのはノートと教科書のみという対面講
方法の基礎理論、学習指導案の書き方、ICT を活 義での縛りが消え、スマホ片手に検索しながら学
用した授業方法を身に付けることを目的としてい 習を深めたりもできたようである。対面講義は、
たが、目標は上述した「縛り」によって変更できな 受講者個々人のニーズに合わせにくい。しかし、
い。このため、講義回数を減らした分、学生側の学 コアカリ通りに教師としての資質能力を身に付け
修時間を増やすことでの対応が必要となる。一方、 なければならないとすれば、学生個々人の学習ス
学修時間を増やせば、課題は増加する。そもそも タイルなどに合わせ、完全習得を目指す必要があ
資格科目は、教授内容の縮減は困難であるがゆえ る。その際、学習者ペースにあわせた展開が可能
に、講義回数の減少は学修負荷の増大を意味する なオンラインは、力強い武器になると信じる。
が、これはどこかで検討されたのだろうか。

130
群馬県立女子大学「国際法」(学部2年生以上対 った点、分かりにくかった点、もっと知りたいと
象)授業実践報告 思った点、授業に関連してリサーチしたこと、探
鈴木悠 索した文献の書誌情報・ウェブサイト名と URL 等
である。)として提出してもらい、クイズと合わせ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 て、国際法に関する基本的な知識の理解の度合い
容、成績評価の方法 を確認した。この講読ノートは受講生の興味関心
本授業の目標は、国際法の基礎的な知識を習得 を把握するうえでも有用であった。
し、国際社会における様々な問題に対して国際法 ミニレポートでは、実際の国際問題に対して国
がどのように機能しているのか、理解することで 際法がどのように用いられているのか、教科書・
ある。 資料をもとに発展して考えを深める機会と位置づ
到達すべき目標としては、国際法の基本的な知 けた。
識を用いて、主要な国際裁判所や国際機関の概要 教科書の講読ノートとミニレポートに関しては、
と役割について説明する能力と、国際社会の現状 質問への回答、コメントを含めて個別及び全体に
について、国際法の観点から検討する能力とを養 フィードバックを毎回行った。国際法に関する資
成することを掲げている。 料の収集方法を身につけられるよう、受講生自身
成績評価は、日本が批准している条約に関する でインターネットを用いて国際法に関する情報を
期末レポート(70%)、単元ごとに実施するミニレ 探索する作業を課題に含めた。
ポート(30%)、毎回の授業で実施するクイズ(すべ 期末レポートに関しては、提出する前に評価基
てのクイズを受験し、その平均点が 7 割を超えた 準を示し、リサーチ方法や資料の内容確認等に関
場合に限り、ミニレポートの点数を 1.2 倍とする)、 して相談する機会を設けた。提出後にはフィード
教科書の該当ページについてまとめた講読ノート バックを実施した。
(指定の回数以上提出した場合は 10 点を加算)に
基づいて行う。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
最初に教科書、参考文献、条文、判例などを読み
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 こみ、実際の国際問題に適用して理解するという
づいて変更し実施した授業内容 授業の流れを通して、国際法に関する基本的な知
遠隔授業では、受講生の通信環境に配慮し、デ 識とともに文章の読解や事実に対する条文の適用、
ータダイエットのためにテキストベースで実施し 解釈という法学の基本も習得できた。
た。 国際法は、扱う分野が多岐にわたり、授業で用
授業の各回で扱う教科書の範囲と配布資料の提 いる資料も多い。この点に関して、LMS を使うこ
示をスタートとして、受講生が取り組んだ一連の とで、動画も含めた資料の配布・共有が容易にな
課題に対してフィードバックを繰り返すことで、 った。
受講生の学びを支援するよう心がけた。 一方で、文字情報が多いため、PC やスマートフ
実際には、まず、各回で扱う範囲の教科書の該 ォン等の画面を長時間見つめることになる点を危
当ページと教員が作成した資料、受講生自身で探 惧し、提示する情報を一層厳選する必要があった。
索した情報等、各自でまとめたものを、講読ノー また、受講生が資料に目を通すペースについても
ト(教員が用意した講読ノートのフォーマットの 配慮を要した。この点に関して、優先順位をつけ
項目は、教科書・資料の中で重要だと思ったキー るなど、より効果的な提示の仕方を考案していく
ワードとその説明、興味深いと思った点、気にな ことが課題である。

131
帝京平成大学大学院「学校カウンセリング特論(教 を置 いたり、同 時双方向 の TV 会議システ ム
育分野に関する理論と支援の展開)」
(修士1年生 (Microsoft Teams: 以下、Teams)を補助的に活
対象)授業実践報告 用したりすること。
須藤武司 〈変更に伴い実施した授業内容〉変更前のシラ
バスとほぼ同等の授業が提供できることを目指し、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 テキストの分担発表とそれに関連した講義という
容、成績評価の方法 基本構成は崩さないよう心掛けた。受講生は 11 名
〈講義の目的と概要〉学校における臨床心理学 である。まず、総論的な電子教材(音声付 keynote)
的問題は多彩であり、カウンセラーには学際的な をオンデマンドで2回分上げ、その間、manaba の
知識と柔軟な対応が求められる。児童生徒の心理 掲示板を活用して発表者の分担(1回の授業につ
的問題には環境因や心因が大きく作用しているも き1人が発表)を行った。分担決定後、Teams を
のもあれば医学的診断を要するものもある。また、 使用した発表と質疑応答を 60 分間実施し、その後、
不適応の背景には虐待をはじめとする家庭の問題 教員が用意した電子教材をオンデマンドで学修の
や個人の発達に関する問題が疑われるものもある。 うえ、レポートの提出を課した。発表者が作成し
進路や対人関係上の悩みの相談、教員へのコンサ たレジュメは事前に manaba 経由で共有した。
ルテーション、地域への啓発活動等、その時々の
ニーズに応ずるよう求められることもある。した 3.学生の反応と今後の課題・可能性
がって、個人面接を基本に集団力動、地域や行政 受講生からは次のような感想を得た。
との連携、守秘をはじめとする倫理の問題等、修 〇たくさんの情報をわかりやすくまとめられて
得しなければならない事柄も多岐に亘る。そこで いて、大変勉強になりました。まとまらない発言
本講では、学校臨床に関する基礎的事項を学び、 に対しても、皆さんが真摯に対応してくださり、
理解を深めたうえで、学校カウンセリング実践の 嬉しかったです。ありがとうございました。
準備が整うことを到達目標とする。 〇学校現場での心理臨床活動のイメージが具体
〈講義内容〉学校臨床心理学に関する概説を学 化されたように感じています。
び、各論を深めながらケース対応の実際を学ぶ。 遠隔授業開始にあたり、1回の授業を「テーマ
講義とともに受講者間で分担したトピックの報告 に関する思索」「Teams による発表・討議」「オ
と、全体でのディスカッションを適宜行う。 ンデマンド教材による学修」と構造化し、オンラ
〈成績評価の方法〉ディスカッション等への参 イン上で展開される反転授業の実践を試みた。実
加態度・課題への取り組み(30%)、定期試験(70%) 践にあたり、Teams では教員がファシリテーター
について、総合的に評価する。 となり、担当者の発表および受講生間でのディス
カッションが安全に実施できるよう配慮した。各
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 回のレポートの内容、定期試験の成績等を鑑みる
づいて変更し実施した授業内容 に、対面式授業と同等の内容の提供および一定の
〈大学から要請された遠隔のルール〉前期は原 学修効果をあげることが出来たと考えられる。一
則オンライン授業を実施する。オンライン授業を 方で、データダイエットの一環としてカメラをオ
展 開 す る た め の 基 本 ツ ー ル と し て 、 Learning フにした Teams での討論は、ライブ感は体験出来
Management System である manaba course2(以 ても非言語的な情緒的交流に制限が生じたことは
下、manaba)を使用する。また、クラウド上の記 確かであり、心理臨床家養成の観点からみて課題
憶装置(Microsoft OneDrive)に大容量の電子教材 が認められた。

132
西武文理大学 「レジャー産業論」(3、4年生対 どを述べ履修者たちと共有し一体感を作った。
象)授業実践報告 (3)LMS のアンケート機能や Google フォーム
瀬沼文彰 にて授業での議題や教員からの質問に対して履修
者の生の意見を回収し、学生の許可をとった上で、
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 学籍番号及び、名前、文章から個人が特定できる
容、成績評価の方法 ものを省いたコメントを Google スプレッドシー
この講義では、学生にとって身近なレジャー産 トに貼り、それらを履修者が閲覧できるようにし
業に着目する。講義は、基本的に、パワーポイント て、学生間でも学びが生まれることを心掛けた。
で進めていくが、できる限り、双方向の講義を行
いたいため、質問や意見を求められることがある。 3.学生の反応と今後の課題・可能性
成績評価はテスト及び、レポート、授業への積極 大学が行う授業評価アンケートの結果及び、筆
的な発言や参加にて総合的に評価する。 者が独自に行った履修者の授業の感想を頼りして
みると、(1)アンケート機能は、匿名で参加し、
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 すぐに結果を見ることができるため評判が非常に
づいて変更し実施した授業内容 良かった。(2)講師(ホスト)へのプライベート
大学からは、LMS の活用及び、オンデマンド授 チャットは、自分の意見が読まれた際に嬉しいと
業、あるいは、ZOOM でのリアルタイム形式の授 いう意見や共感できる意見、全く違う角度からの
業を行うよう要請があった。本授業では、1 回から 意見などが聞けたことを楽しいと解釈する履修者
4 回まではパワーポイントに音声を入れた動画を が複数いた。
(3)全員のコメントの共有に関して
YouTube にて限定公開、5 回から 15 回(うち 2 回 も、同世代の意見のため興味深かった、学びに繋
は代替課題)については、ZOOM にてリアルタイ がったなどの肯定的なコメントが目立った。
ム形式で授業を行った。履修者は 114 名であった。 上記のように、対面授業に戻っても使いたい
対面授業では双方向性にこだわっていたため、 LMS、及び、ZOOM の機能はあるものの、学生の
ZOOM の授業でもその点に力を入れた。具体的な 授業への参加度や集中力、理解度や興味の持ち方
工夫については以下 3 点である。 などが教員に伝わってこないため、話し方はもち
(1)ZOOM のアンケート機能を用い、授業中、 ろん、どこに熱を入れればいいのかなどに困惑す
いくつかの質問を履修者に問いかけ、その場で回 ることがしばしばあった。
答を共有した。学生が関心を持てるように、堅い 最後に、筆者自身は、大学で研究者になる前に
社会調査というよりも毎回できる限りテレビ的な お笑い芸人を 3 年間やっていた経歴がある。対面
キャッチーなアンケートを行った。 の授業でも、笑いを取ることは難しいが少なくと
(2)ZOOM のチャット機能では「○○について も何らかの反応はあった。その反応は履修者が話
の意見を短めにチャット欄に書いてください」な を聞いているのかどうかのバロメーターでもあっ
どと履修者に投げかけることで、対面授業では集 た。だが、遠隔では、何を言ってみても反応はビデ
めることが不可能なほどのたくさんのコメントを オオフ・ミュートのため完全に無音であることに
短時間で収集することができた。その際、チャッ 違和感があった。ZOOM などに見られる反応ボタ
トを教員であるホストのみのプライベートで送る ン以外にも、笑いという反応はともかく、何らか
ように指示した。関係のないものをのぞいた履修 の「聴き手の反応」があった方が、教員は話を圧倒
者たちの声をラジオや YouTube Live のように早 的にしやすいはずだ。今後、話しやすさという面
口で読み上げ、教員の意見やさらなる問いかけな や一体感に関する機能の発展に期待したい。

133
目白大学「音楽表現基礎 2(声楽)」
(2 年生対象) び歌唱について学習することで、現場に対応する
授業実践報告 音楽的能力を総合的に高めていく。
田中樹里 声楽は、ピアノ課題で扱う子どもの歌を用いて、
保育現場に適した発声・表現を身に付けることが
1. 2020 年 4 月時点でのシラバス内容 ねらいである。
<授業のねらい> 本授業は、保育現場における <学生の学習目標> 歌唱について、子どもの実
表現活動の中心である歌唱に焦点をあて、ピアノ 態に応じた歌い方・表現力を修得する。
伴奏法・弾き歌い法および歌唱表現技能を身に付 <授業内容>毎回のオンデマンド学習(簡単な音
けることがねらいである。また、劇活動を通して、 声学・呼吸・姿勢・発声についての動画、課題曲 26
保育現場に対応する音楽的能力を総合的に高めて 曲の模範唱と歌い方についての動画)
いく。(なお本授業は、ピアノ・声楽・楽典の 3 本 3 週間に 1 回のオンライングループ声楽レッス
柱で構成されており、ここでは筆者が担当した声 ン(Web 会議サービス zoom を使用し、1 回 25 分
楽と楽典のうち、声楽について述べる) 3~4 名で実施。前週に動画配信した課題曲を 1 人
声楽の具体的なねらいは、以下の通りである。 ずつ歌唱する)
声楽は、音楽劇を題材に重唱と合唱の演習を行う。 <評価の方法> 声楽の課題曲から指定の 2 曲を、
登場人物と場面に即した表現を追求し、物語を通 伴奏音声に合わせて歌った動画の提出。グループ
してイメージを膨らませ、台詞を含めた声の表現 内で公開し、各自コメントをする。
力を高めていく。話し方や歌い方を含めた保育現
場に適した発声・表現を身に付けることがねらい 3.学生の反応と今後の課題・可能性
である。 学生の反応は概ね良好だったようだが、オンラ
<学生の目標> ※シラバスの順番に準拠 ②子 インでの声楽実技指導は、正直なところ限界があ
どもの歌のレパートリーを増やす(歌唱およびピ ると感じた。
アノ伴奏・弾き歌い)④保育現場に適した話し方 理由は以下の通りである。①zoom は Web 会議
や歌い方等表現力の基礎を身に付ける⑤重唱・合 用であり、双方向同時に音を出すと誤差が生じる
唱を通して、他社の声を意識しながら歌うことが ため、「教員がピアノ伴奏し学生が歌う」または
出来る 「斉唱」「重唱」「合唱」は不可能であること②音
<授業内容> 発声とオペラ《ヘンゼルとグレー 質が一定でないため、教員側が個々の声を判別し
テル》の台詞と歌唱演習、発表 にくく、きめ細かい指導が難しい
<評価の方法> 課題進度 20%•••主に学習目標 一方で、今回は事前に配信された模範動画を観
②について評価 音楽劇の取り組み 20%•••主に て、予習をしなければならず、例年以上に学生た
学習目標④について評価 声楽への取り組み 20% ちは声楽に対して積極的に取り組んだ。また伴奏
•••主に学習目標⑤について評価 と同時に歌うことが難しい分、歌い出しの音を正
確に歌うことを身に付けることが出来た。そして
2.2020 年 5 月変更後 1 人で歌うことにも抵抗がなくなり自信を持って
<授業のねらい> 本授業は、保育現場における 歌うことが出来るようになったと言える。
表現活動の中心である歌唱に焦点をあて、ピアノ
伴奏法・歌唱表現技能を身に付けることがねらい
である。音楽知識の基本である読譜や音楽用語(楽
典)を学びながら、子どもの歌のピアノ奏法およ

134
立命館大学・国際関係学部「近現代史」(全学年対 ない学生もいたために、オンデマンド方式を採用
象)授業実践報告 し、Zoom で撮影した動画を YouTube に限定公開
田中直 するという方法をとった。パワーポイントにレジ
ュメや資料を全部組み込み、それを色付きのポイ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ンターを用いて説明するという形の動画を作成し、
容、成績評価の方法 同時に使用した講義レジュメや資料なども大学サ
ーバー上(manaba)で配布した。
この講義は国際関係学部の全学年に開かれてい なるべく大学の講義室で受講しているような雰
るものの、
「今まで、世界史を学ぶ機会の無かった 囲気をつくるために、普段通りの講義進行を心が
人、近現代史に関する知識が足りないという自覚 けた。雑談やたまの空白時間などもそのままに、
を持つ人」を主な受講者対象に据えた、例年1回 動画は編集をせず、約 90 分の講義をアップした。
生が約8割を占める大講義の一般教養科目(受講 また、毎回、コメントカードへ質問や意見を書い
生 187 名)である。 てもらったが、これは、テーマごとに分類し整理、
講義目的としては「近現代の世界の歴史の変遷 質問には全て答えて、次週、資料として提示した。
をたどり、国際関係学を学ぶために必要な歴史的
知識を獲得すること」であり、到達目標には「国際 3.学生の反応と今後の課題・可能性
関係学の基礎である、近現代の歴史を概観できる
ようになる」や「現在の世界の諸問題の原因につ 当初、90 分間、普段通りの講義を行うことに対
いて、長期的な視野の下で理解できるようになる して、なにか「つらい」などの意見がでるかと思っ
こと」を設定。成績は日常点が 60 点分(毎回のコ たが、意外にも好評であった。これは、無理に原稿
メントカード 40 点分/講義内小レポート 20 点分) を書いて読み上げなかったことによって、雑談を
と、定期試験における論述問題4題、40 点分の合 含んだ、いわゆる「リアルな講義」を体感できたこ
計 100 点での評価としていた。 とで、飽きが来なかったという意見がよせられた。
そして、いつも使い慣れた YouTube という媒体ひ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 とつで講義を受けられる手軽さと、使いやすさ、
づいて変更し実施した授業内容 見やすさはレジュメを印刷できない環境にいる学
生やスマホしか持っていない学生にも受け入れら
本来であれば、4 月からオンラインで 15 回の講 れたようである。
義の予定であったが、サーバーシステムの運用上、 特にオンラインでのコメントカードの記入は、
5 月からの開講となり、その影響でシラバスを 13 普段の対面時とは異なり(講義の終わりのいわゆ
回に書き換えることとなった。また、大学から全 る「そわそわ感」が無いために)、その内容は非常
学一斉による対面式での期末試験実施の取りやめ に濃いものであり、質問も鋭いものが多くみられ
のため、評価方法を見直して欲しいとの要請があ た。また、これらを全てまとめて共有したことは、
った。そこで急遽、試験からレポート課題へと切 他の人の問題関心や自分では思いつかなかったよ
り替え、日常点を 40 点分とし、講義期間中に 3 回 うな意見、質問、そしてそれへの答えが得られ、有
に分けて実施するレポート(1 回につき論述を 2 益であったようである。
題、合計 6 題)をテスト代わりに 60 点分として評 授業が対面式に戻った際も、何らかの形で、こ
価を出すこととした。 の〝オンラインでのコメントや質問の提出効果″
講義は、受講人数も多く、日本に入国できてい を継続できないかと思案しているところである。

135
明星大学「社会学への招待 A」(1年生対象)授業 ロードするオンデマンド型で行い、出欠確認も兼
実践報告 ねてコメントをオンラインで提出してもらうよう
寺田征也 にした。
また、授業用の動画とは別に、近隣の地域で活
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 動しているコミュニティラジオ局「ラジオフチュ
容、成績評価の方法 ーズ」(東京都府中市)に筆者が訪問し、局長や職
学科1年生向けの科目であり、学科で学んでい 員を対象に簡単なインタビューを実施する5分程
く「社会学」の導入として、学科教員が毎回オムニ 度の動画を作成した。筆者が所属する明星大学人
バス形式で実施する。社会学という学問の基本的 文学部は「フィールドに出る人文学部」をキャッ
性質や社会学的な考え方を理解し、身に付けるこ チコピーとしており、学科に入学する学生の多く
とを目的とする。各講義は専任教員に任されてい もまた、フィールドワークを行うことを期待して
る。成績評価は出席と期末のレポート課題によっ いる。しかしながら、コロナ禍の影響を受け、授業
て行う。 として学生をフィールドワークに連れていくこと
が難しくなってしまった。そこで、「バーチャル・
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 フィールドワーク」と称して、教員がフィールド
づいて変更し実施した授業内容 ワークの様子を撮影することを試みた。この取り
オンライン授業の実施に際して、大学からは① 組みを通じて、フィールドワークの雰囲気、自分
これまでに運用してきている授業支援システム の身近な地域で行われている取り組みについて知
「明星 LMS」を中心に実施すること、②ZOOM な るきっかけを与えようとした。
どのオンライン会議システムは、受講生の通信環
境が統一されていないことを考慮し、当面は積極 3.学生の反応と今後の課題・可能性
的には用いないこと(5月の連休明けには大学が 学生からの反応は概ねよく、フィールドワーク
ZOOM と法人契約を結び、少しずつ授業で用いる の雰囲気を感じられたなどの感想が得られた。
ことができるようになった)、との方針が当初示 今回は、筆者がスマートフォンやポケット Wi-
された。 Fi などを所有していないため、録画した動画を配
本講義は1年生向けの授業であること、また、 信する形での「バーチャル・フィールドワーク」を
1年生の基礎ゼミにて例年行っていた学内施設の 行ったが、インターネット環境が整っていれば、
散策が実施できなくなったことから、学内を紹介 現地から ZOOM などで教員が配信する形式でも
する動画を作成し、配信した。 実施できるのではないかと思う。また、
「バーチャ
本講義はオムニバス形式であることから、筆者 ル・フィールドワーク」の実施に際しては、マスク
が担当した回に関してのみ紹介する(ちなみに、 や消毒の徹底など感染症対策を十分に行い、対象
各回の実施方法については統一していないため、 者に不安を与えないように実施することが望まし
①ZOOM を用いたオンライン型授業、②動画を配 いと思われる。
信するオンデマンド型授業、③資料の配布と課題
によって構成する課題型授業、という非対面式授
業に一般的に見られる三つの形が見られた)。
筆者が担当した回は、国内外のコミュニティラ
ジオに関して紹介する内容であった。スライド資
料にナレーションをつけたものを LMS にアップ

136
明星大学「社会学原論 A」(2~4年生対象)授業 たが、オンデマンド授業ではスライド資料に映像
実践報告 資料を取り込むことが難しかった。そこで、
寺田征也 YouTube などで公開されている類似の映像作品
や映画の予告編などを LMS に動画埋め込み方式
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 で共有することとした。上記の通り、本講義では
容、成績評価の方法 複数に分割した動画をアップロードしていたこと
本講義は、社会学に特有の社会認識の方法を、 から、それらの映像資料を筆者が作成した動画と
特に五感と結びつけつつ考えることを目的とする。 動画の間に挟むことで、対面式の講義で提示して
科学は一般的に「知ること=見ること」の等式を いるものと同じ順番で受講生に効果的に映像資料
少なからず前提するが、人間社会の諸現象を考察・ を示すことができた。
分析する社会学においては、視覚以外の感覚もま 毎回複数動画を作成することが大きな負担とな
た、社会認識には欠くことができない。そこで、聴 っていたため、一本の長い動画で講義を完結させ、
覚や触覚などから知られる「社会」について、理論 OneDrive 経由で受講生に共有しようとしたが、
及び事例の紹介を通じて学び、社会学的な考え方 OneDrive にアクセスできない学生への対応に多
を身に付けることを目指す。 くの時間を割くこととなったため、最終的には当
初の通り、短い動画を複数作成する方式に落ち着
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 いた。
づいて変更し実施した授業内容
オンライン授業の実施に際して、大学からは① 3.学生の反応と今後の課題・可能性
授業支援システム「明星 LMS」を中心に実施する オンデマンド方式を採用したことで、受講生か
こと、②通信環境が整わない学生のことを考慮し、 らは、自分のペースで繰り返し受講できるのがよ
オンライン会議システムは当面の間は積極的に用 い、との好意的意見が寄せられた。
いないこと、との方針が当初示された。 本学ではすでに 2020 年9月 14 日より後期授業
本講義は理論系の科目であること、「データダ が開始されているが、前期の取り組みを踏まえて、
イエット」の要請が出されたことなどを踏まえ、 後期の講義科目では学生を SA として雇用し、一
スライド資料にナレーションをつけて動画化した 緒にやり取りしながら進めていくラジオ形式をと
ものを配信するオンデマンド授業を行った。また、 り入れている。ZOOM を通じて、スライド資料を
出欠確認は、動画資料へのアクセス履歴と毎回の 画面共有しながら話したものを録画し、その映像
小課題の提出とによって行った。 を YouTube にアップロードしたものを受講生に
動画の配信は「明星 LMS」にアップロードして 視聴してもらっている。また、毎回のコメントへ
受講生に公開した。しかし、2020 年4月後半にデ の返信も自撮り動画にて行い、動画配信にて共有
ータのアップロード上限が 10MB へと大幅削減さ している。
れたことを受け(後に5月に 30MB、6月に 50MB この取り組みにより、講師がただスライド資料
に順次引き上げられた)、資料を複数に分割し、ア を説明するだけでなく、SA を経由してより受講生
ップロード上限に合わせたものを複数作成し、共 に寄り添う形の授業を行うことができている。特
有した。動画を作成するごとに容量を確認し、上 に後期の講義科目は1年生が全受講生の8割近く
限を超えているものに関しては再度収録し直すな を占めており、いまだ通学が適わない1年生たち
どの対応を迫られた。 に教員と年長の学生とを身近に感じてもらえるよ
また、例年講義時間中に映像資料を上映してい うな工夫として、取り組んでいる。

137
南山大学「ラテンアメリカ史 A」(学部2年生以上 間に天然痘などが大流行し、絶滅近くまで追いや
対象)授業実践報告 られた民族が多数あったこと、また高度な文明を
中沢知史 誇っていたアステカやインカは武力により滅ぼさ
れたのではなく、感染症による人口激減により崩
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 壊した可能性が高いことを紹介した。
「発見」によ
容、成績評価の方法 って旧大陸にアメリカ大陸産のモノがもたらされ
本講義は、1492 年のコロンブスによる「新大陸 富が蓄積されたのに対し、アメリカ大陸にはウイ
発見」を近代の出発点と捉える「500 年史」の視点 ルスが持ち込まれて文明が崩壊し、既存の文化・
から、ラテンアメリカ及びカリブの歴史を通時的 社会のあり方が大きく転換する。およそ 5 世紀前、
に理解することを目的とする。先コロンブス期か 近代化とグローバル化の入口の時期に生じたパン
ら 21 世紀までを扱うが、征服以降の歴史に重点を デミックによってもたらされたこの大事件(「コ
置き、植民地社会の形成、独立運動と国民国家の ロンブスの不平等交換」(山本紀夫))は、地球規
形成、メキシコ革命とキューバ革命、軍部独裁と 模での人とモノの接触と交換の結果コロナ禍に見
民主主義への移行、新自由主義と左派政権の登場、 舞われている我々が今こそ学ぶべき出来事である
そして最新の情勢を内容とする。受講生は講義へ と紹介した。
の参加度(出席)30%と期末試験 70%で評価され (※)当初はカラフルなものにしていたが、学
る。 生の眼への負担や色覚多様性に配慮して途中から
黒地に白抜きというシンプルなものに変更。学生
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 からは見やすくなったと好評。また、PDF 化した
づいて変更し実施した授業内容 講義資料は 1 枚あたり 6 スライド、色は白黒にし
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全学 写真なども削除してアップすることで、印刷する
的に Zoom を使用したオンライン授業に移行。対 学生の金銭的負担を減らすよう配慮した。
面での定期試験が実施できなくなったため、講義
期間内に指定する 3 度の記述式課題の総合評価に 3.学生の反応と今後の課題・可能性
変更。図書館が休館になったため、趣旨をよく説 本講義は前期第一クオーターの初日に始まり、
明したうえで「紙の資料ではなくインターネット 完全遠隔・オンライン授業の一番手となった。そ
上で入手できる資料のみを利用して課題を作成す のため、慣れない環境に適応するのに多少の時間
る」という新たな試みを行った。また、当初指定し を要した。学生が Zoom ミーティングルームに入
ていた教科書が入手困難になったため、大学が用 れない、音声や映像が途切れる、課題提出の方法
意した講義資料サーバーに PDF 化した文献をア が分からないなど、主に技術面でのトラブルでと
ップし学生がダウンロードできるようにした。同 まどう場面もあった。しかし、回を重ねるごとに
様に、講義資料も、パワーポイント資料を PDF 化 トラブルは減り、学生は新しい授業形態に適応し
してアップするかたちで配布した(※)。 ていった。チャット機能により発言に対する心理
パンデミック下のいま現在においてラテンアメ 的障壁が下がり、講義内容にビビッドに反応する
リカ史に学ぶ意味を学生に考えてもらうために、 書き込みが多くなった。投票機能でアンケートと
内容を一部変更し「500 年前のパンデミック」と題 結果の共有、フィードバックが格段に容易になっ
して 2 回導入講義を行った。15 世紀末、ヨーロッ た点も大きい。時宜にかなった内容で楽しかった、
パ人の到来ととともにカリブ海、アメリカ大陸に 卒論のヒントになりそうな事柄が詰まっていて良
未知の感染症が持ち込まれ、免疫がない先住民の い、など嬉しいコメントが寄せられた。

138
同志社大学「グローバル地域文化導入セミナー」 の書き方などについて、パワーポイントを使って
(1 年生対象)授業実践報告 解説した。また、学生に e-class 上のチャットにコ
中嶋洋平 メントを書き込んでもらい、双方向性を実現した。
さらに、授業外での学生同士の交流が不可能で
1.本授業は新入生対象の少人数制ゼミであり、 あるため、私は Teams のチャネル機能を使用して
大学生活の基本的な心構えと技術の習得を目的と グループワークを実施した。とくに、最終レポー
する。とくに、Word 等の使い方や文献検索方法、 トのテーマ「差異を乗り越えることは可能か」が
レポート作成方法などを学ぶことになる。また、 極めて抽象的であるので、ヨーロッパ・アジア太
シラバスには記載されていないが、新入生に人と 平洋・アメリカという学部内の 3 コースごとに議
出会う場を提供し、さまざまな意見交換を可能に 論させ、学生それぞれの最終レポートの作成に役
することも重要である。 立ててもらった。
評価の 60%は 2000 字の最終レポートで決定さ
れる。レポートのテーマはここ数年「差異を乗り 3.ライブ授業に好意的な反応が強かった。一方
越えることは可能か」となっており、学生たちは 的に出された課題を解くだけの授業が多かったた
このような抽象的なテーマをめぐって、根拠を示 めか、教員の顔が見え、声が聴こえるライブ授業
しながら議論を展開するという作業に挑戦する。 は歓迎されたようである。また、きちんとフィー
なお、レポート提出の機会は 2 度設定されており、 ドバックしたことも歓迎された。最初の自己紹介
1 度目に対する教員からのコメントを踏まえて、2 レポート、チャットページへのコメント、グルー
度目(最終版)を作成する。 プ発表、そして最終レポートなど、私はどの教員
よりもフィードバックしたつもりであったため、
2.遠隔授業開始が 5 そうした点への好意的評価は有り難かった
月 12 日(火)となった
ため、木曜 3 限の本授
業は 14 日(木)に開始
されることになった。
一方、グループワークへの評価は分かれた。学
そこで、4 月中の授業
生同士の交流の実現という意図を理解してくれた
については自己紹介
学生がいるものの、それを負担と感じた学生もい
レポート作成と研究論文の要約作成という 2 つの
た。もともと人間関係の構築自体を苦痛と感じる
課題で補った。このうち、自己紹介レポートにつ
学生がいるため、リアルであろうとインターネッ
いては、私から赤字でコメントを入れたものを e-
ト上であろうと同様の反応があったに違いない。
class という授業ページにアップロードし、学生同
どのような反応があったにせよ、学生の最終レ
士で互いの自己紹介を閲覧できるようにした。
ポートを見る限り、グループの議論が反映されて
5 月以降の授業実施方法については教員の裁量
いるものばかりで、レポート=小論文をほとんど
に委ねられたが、やはりゼミは教員と学生が対面
書いたことがない学生にとって、他者と議論して
して実施されるべきであるため、どの教員におい
考えるという機会はどうしても必要だったのでは
ても Microsoft Teams あるいは Zoom によるライ
ないだろうか。また、春学期終了後、友情を育んで
ブ授業が選択され、私は Teams を利用した。
いるグループもあるようで、教員としては嬉しい
ライブ授業では、まずインターネットでの発言
限りである。
や個人情報のあり方といったネチケット、メール

139
広島修道大学「経営管理論」(2 年生以上対象)授 Classroom をプラットフォームに、Zoom を用いて
業実践報告 講義を行うことにした。通常、対面講義を行う場
中園宏幸 合には「教室」に出向くことが求められる。それと
同様に、遠隔講義では、Google Classroom を「教
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 室」と捉える。講義に関係する資料・情報を分散さ
容、成績評価の方法 せないためである。Zoom のミーティング ID やパ
本講義は、経営管理について 2 部構成で講義を スワードも毎回 Google Classroom に掲示するこ
行う。第一に、経営管理が必要とされるようにな とで一定のセキュリティを担保することができる。
った背景を歴史的視点から概観するものである。 Google Classroom と Zoom を併用することでシス
現在当たり前のように行われている経営管理施策 テムダウン等のリスクを回避することも可能とな
がなぜ生まれたのか、その背景を理解することに る。
よって、経営管理施策の現代的意味を考えてもら Zoom を活用するうえでは、教員側では画面共
うことを意図している。第二に、経営管理論の成 有は一切行わずに、カメラを用いることもなく通
立過程を整理し、その後の理論展開を解説する。 信量の節約を図った。講義資料を事前に配布して
経営学の理論と呼ばれるものが、どのような現実 印刷を求めることによって、画面共有をせずとも
課題と理論課題を解決しようと発展してきたのか 資料を閲覧可能となる。ただし、印刷コストのみ
その端緒を理解してもらうことを意図している。 は学生に負担させることになった。これは通信可
成績評価は、通常講義課題(40%)、中間試験 能端末がスマートフォンしかない学生に対応する
(30%)、期末試験(30%)である。 ためにも重要であった。画面共有を前提とすると、
パソコン環境がない学生に不利益となる可能性が
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 あったからである。カメラを用いないことは、学
づいて変更し実施した授業内容 生のプライバシー確保にも寄与した。
広島修道大学における遠隔講義のルールは、文 成績評価について、通常講義課題 は Google
部科学省の要請に準じて柔軟な運用を想定してい Classroom の質問機能と課題機能を活用して提
た。同時双方向型やオンデマンド型のいずれかに 示・回収を行った。中間試験と期末試験は、Google
限定されることはなく、教員に可能な範囲での選 Document を用いて実施した。Google Document
択が許されていた。 は編集履歴を確認することができるので、不正行
本講義では、遠隔講義となる以前のシラバス段 為の発見に限定的ではあるが機能する。
階から複数回の講義課題による評価を想定してい
た。それに追加する形で課題を付与することのな 3.学生の反応と今後の課題・可能性
いように、経営管理論では同時双方向型を採用す 学生の反応は概ね好評であった。今後の課題と
ることにした。 して、直近ではオンデマンド型との比較が求めら
同時双方向型については、大学から 4 点の注意 れる。いつでも繰り返し学習できるオンデマンド
があった。第一に、講義日時の周知を徹底するこ 型を求める学生の声は一定数確認できた。中期的
と。第二に、システムダウン等を想定した代替措 な課題としては、遠隔講義の経験を対面講義にて
置を検討すること。第三に、学生の受講環境に配 どのように活用することができるかである。
慮すること。第四に、学生のプライバシーとセキ なお、本報告の詳細は、中園宏幸(2021)「遠
ュリティを守ることである。 隔講義についての一考察」『修道商学』第 61 巻第
以 上 の 要 請 を 踏 ま え て 本 講 義 で は 、 Google 2 号にて述べられる予定である。

140
東京工業大学「社会デザインプロジェクト」
(学部 3.受講生約 45 名のうち留学生が 23 名、ほぼ半
2年生対象)授業実践報告 数と多い。英語力にばらつきがあり苦手とする日
野原佳代子 本人学生も多い。対面であれば、表情や雑談から
理解度を読み取り日本語で言い直す、緩急をつけ
1.新たな社会デザインを生み出す多様なプロジ る、英語を板書するなど細かい支援ができるが、
ェクトとその多面的構造の学習を目的とする。い オンラインではこちらに感触が伝わらず十分なサ
わゆる理工系の学部学生に、工学的技術に他の知 ポートができない(英語開講科目であり日本語通
をバランスよく組み合わせて課題解決をはかる必 訳ソフトの利用は適切でない)。本学で力を入れ
要性を意識させることが狙いである。第二クォー ている「英語を介した専門教育」の現場における、
ター(6 月末~8 月頭)毎週木曜3・4限2コマ/ 非言語要素の重みが実感される結果となった。
週 (1 コマ 100 分)、必修科目、1 単位、英語開講 対応としては学生 TA2 名に言語サポーター(バ
科目。オムニバス形式の講義(今年度はサイエン イリンガル)1 名を加え、チャット機能を使って適
スコミュニケ―ション、エンジニアコンサルティ 宜日本語訳(重要ポイント、キーフレーズ)を書き
ング、技術・文化とサステナビリティ、工学と倫 出して行くサポートを提供した。授業終了後に学
理、建築と都市、開発と認知心理学の順で提供)を 生の声を聞くと、
「日本語サポートで助かった」と
通して具体的な社会デザインプロジェクトと課題 する学生が一定数いる一方、何度も事前に説明し
解決プロセスを学び異分野融合の実際を考える。 たにもかかわらず、言語サポートを見ておらず「英
例年は出席、講義での発言、チームタスク(議論と 語が難しく理解できなかった、何らかの配慮が欲
社会デザイン考案)における貢献、アイデアの創 しい」のように述べる学生も複数いた。スマート
造性と実現可能性、最終プレゼン、最後に個人で フォンやタブレット使用のためチャット機能が事
作成するデザインブリーフを評価対象とする。 実上機能していないことも原因であろう。
https://www.tse.ens.titech.ac.jp/~nohara/ja/socia 融合理工系の履修生たちは Zoom を難なく使い
l-design/ こなしているように見えながら、規格外の使い方
をするとついてこない面もある。しかも技術的な
2.遠隔のみ、対面での履修はなし、Zoom 使用、 面で「要ヘルプ」の意思表示をなかなかしないと
録画オンデマンド使用可、学生には必要がない限 いう理工系学生に特徴的(と見られる)面も指摘
り画像表示を求めない、適宜休憩を挟む、などが された。英語による理工系/文理融合的な専門教
大学から指定された。前年までは、設定したお題 育を、外部アプリとの併用も視野に入れながらオ
(障がいとコミュニティなど)から課題を見つけ ンラインでどう効果を出していくかを練る必要が
それを解決する社会デザインをチーム(6~8 名) ある。教員側が工夫をしても、学生はこの状況下、
ごとに考案させ、最終週にプレゼンと議論を課し、 内容的にも技術的にも情報過多に置かれており逆
最後に個人レポートとしてデザインブリーフを提 にそれを活用する余裕を失い動きが固まっている
出させていた。今年度はオンライン開講となり、 面がある。異なる言語で教えれば同じ情報も異な
チームごとの社会デザイン考案に対する指導が十 る解釈につながるのは自明だが、今回はそこまで
分にできないと判断しこれを省略した。代わりに、 行き着かずに終わった感がある。有効なはずの工
毎週トピックに合わせたタスクを用意しチームご 夫も、伝わらず利用されなければ意味がない。日
とあるいは個人で取り組ませるとともに、関連タ 本人学生のみでなく英語サポートの要らない留学
スクを宿題に出し Google Forms にて提出させ評 生両方の目線に立って、専門教育で機能する言語
価対象とした。 サポートの試行錯誤を続けたい。

141
筑紫女学園大学現代社会学部「現代社会とメディ ート」機能で、100 字以内の短い課題を複数出す
ア」(1 年生対象)授業実践報告 形にした。後日、無記名に加工した課題一覧に
橋本嘉代 コメントをつけた動画でフィードバック。
・特別講義は Teams 会議で実施(2 クラス合同)。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 数週間前にゲストスピーカーが学生への「お題」
容、成績評価の方法 を出す事前学習用動画を配信し、学生がメディ
現代社会に関する基礎知識を身につけるための アに関して考える機会を作り、後日、リアルタ
1年次の必修科目である。メディアを学ぶために イムの講義を実施する流れにした。講義当日は
不可欠な「コミュニケーション」についての知識 学生の意見を盛り込んだ PPT 資料を投影し、チ
を獲得し、社会におけるメディアの機能や役割へ ャットで質問を集めて回答するなど、双方向性
の理解を深めることを目的としている。 を持たせた。詳細は大学 HP に掲載した。
授業外課題および小テスト(50%)、レポート ・対面式授業では、グループワークでコミュニケ
(30%)、リアクションペーパーやグループワー ーションとしての「雑談」を実践してきた。今年
クなどの取り組み(20%)で成績評価を行うこと 度は Teams の「チャネル」で実施しようとした
とし、メディアの現場で働く外部講師による特別 が、一部の学生には技術的・心理的な障壁が高
講義(1回)を授業計画に組み込んでいた。 かったようだ。そこで、課題の内容を「昔の流行
に関して 40 代、50 代の人にヒアリング」「あ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 なたの家でのテレビ視聴ルールは?」など、家
づいて変更し実施した授業内容 族とのコミュニケーションを生むものにした。
開講前に示された主なルールは、①全学部の全
授業を遠隔で実施。「オンデマンド型」「リアルタ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
イム型」で構成(併用可)②双方向性の担保(学生 特別講義では、練習用の会議室を作ったが、当
の課題へのフィードバック、質問への回答など) 日、会議室を間違えたり同時に複数の会議室に入
③LMS の活用 などである。遠隔授業用に急遽、 る受講者がいてハウリングが起こった。教員が司
Microsoft Teams が導入され、活用が推奨された 会をしながら原因究明や解決をすることはできな
(Zoom 等も利用可)。 かった。無事に受講できた学生からは好評だった。
開講後、大学から授業方法について計 11 回の要 報告者の所属学部は、グループワークを多用し
請があり、教員からの質問への回答が約 100 件紹 た能動的な学びを重視している。しかし、PC のス
介された。一例を挙げると「大容量のファイルを キルや通信環境が不明な状態で面識がない学生同
LMS に置かない」「スマートフォンでも提出可能 士に遠隔でグループワークをさせることは困難だ
な方法・内容で課題を出す」「令和 2 年 7 月豪雨 った。「友達ができた」「楽しかった」と喜ぶ学生
で通信状況の悪化や被災で受講ができなかった学 もいる反面、「会ったことがない人とやり取りし
生の課題や出席に配慮を」などである。 たくない」と参加を避ける学生もいた。
これらをふまえ、以下のような授業を行った。 オンラインのみで意見交換する技術やスキルは
・授業用資料を動画にし、YouTube や Microsoft 今後の社会で必須だ。勇気を出して話しかけた自
Stream で配信。「〇月〇日までに受講し、課題 分の感情や他者との心理的な距離の変化を観察す
を提出」を出席の条件とした。 ることは「バーチャル空間での親密性」や「自己と
・学生がスマートフォンでも書き込みやすく、回 他者」「儀礼」など、学んだ知識を深める格好の機
答を一覧表示形式で出力できる LMS の「アンケ 会となる。今後は積極的な交流を期待したい。

142
奈良教育大学「教育社会学」(2 年生他対象)授業 用に LINE オープンチャットを用いたグループを
実践報告 作成した。まず、動画を配信して視聴してもらい、
樋田有一郎 その後、全学ポーフォリオで課題の提出をして貰
った。その上で、LINE オープンチャットで学生と
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 の交流を行った。
容 また、私は、非常勤で他大学の通信教育課程の
現代の学校教育および社会教育に関する社会的 授業の経験があるため、遠隔での教育用教材(学
事項について、基礎的な知識を身に付けるととも 修指導書等 https://doi.org/10.20636/00013363)
に、それらに関連する課題を理解する。また、学校 を作る機会を貰っていた。そちらを、今回の通学
と地域との連携に関する理解及び学校安全への対 の授業の非対面授業化で活用することが出来た。
応に関する基礎的知識を身に付け自身で具体的な 通信教育は歴史のある教育方法であり今回の新型
社会の現象を考察できるようになる。 コロナの流行の中ではもっと注目されてもよいと
① 社会状況の変化が学校教育や社会教育にもた 感じた。
らす影響とそこから生じる課題、ならびにそれに
対応するための教育政策の動向を理解できるよう 3.学生の反応と今後の課題・可能性
になる。 授業実施の技術面では次のような状況と課題が
② 学校と地域の連携の意義や地域との協働の あった。学生が普段から慣れ親しんでいるプラッ
仕方について、取り組み事例をふまえて理解でき トフォームを選択したため、当初の混乱が少なく
るようになる。 また気楽な授業参加が可能となった。特に、
③ 学校管理下の事件や事故、災害の実情を踏ま YouTube は評判が良かった。早送り機能や字幕機
えて、危機管理を含む学校安全の目的と具体的な 能など YouTube の機能を利用して受講していた。
取り組みを理解できるようになる。 動画の評価機能が利用されて内心緊張した。
さらに、オンライン化が、特によかった点もあ
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 った。参考資料となる動画の視聴や論文の講読の
づいて変更し実施した授業内容 指示は容易であったし、レポートとして、動画で
当初大学からの授業実施方法について、複数の のフィールドワークの時間をたっぷりとって行え
提案と支援はあったが要請はなかったため担当者 たことは新しい取り組みとなった。資料となる動
が自由に実施方法を設計できた。大学独自の LMS 画を YouTube に気兼ねなくアップロードして、学
である全学ポートフォリオと最近導入された 生に視聴して貰い擬似的なフィールドワークを多
Microsoft Teams と Moodle が用意されていた。 く行うことが出来た。これは、対面授業が全面的
また、教科書や参考資料に関しては、大学や講 に再開された後も続けようと考えた。
座として印刷・郵送する仕組みが作られたため大 問題点はシステムを使いこなすことをはじめと
量の印刷物を学生の負担無く提供することが出来 して多々あったが、学生の成績のブレが増えたよ
たことは幸いであった。 うに感じた。慣れている学生はオンライン環境を
私は、全学ポートフォリオが学生が一番慣れ親 うまく利用して水準の高いレポートを作成できる
しんでていると言うことで選択したが機能面では 一方で、慣れていない学生にとっては苦労したよ
不十分であったため、次のような組み合わせで授 うだ。このあたりはよりよい支援をしていきたい。
業を行った。まず、非同期での動画の配信は 厳しい情勢が続いたが、学生がいなくなり人よ
YouTube を用いて、学生とのコミュニケーション りも鹿が多いキャンパスで興味深い経験ができた。

143
北海道大学「社会の認識 データと事例から考え 化した PDF と IC レコーダーで録音した授業音声
る社会学の基礎」(1 年生対象)授業実践報告 である。音声は一週 1 時間程度とし 2 本から 3 本
平川全機 程度に分けて録音した。短時間に分割することで
集中して聞くことができるようにするためと、問
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 いかけで録音を区切り各自で考える時間を取らせ
容、成績評価の方法 ることを狙いとした。これらを時間割上の授業開
本授業は 1 年生向けの全学教育科目として開講 始曜日時間に合わせて公開した(これは学習習慣
され、理系学生が受講対象であった。講義の目的 の定着を理由として大学から要請された方式であ
は「社会学的なものの見方の基礎」を学ぶことと る)。また対面で予定していた小課題を Moodle 上
しており、データや事例を紹介しながら身近な事 で提出させ、同時に質問や感想も受け付けた。提
柄から次第に視野を広げて社会現象を理解し説明 出された小課題の回答は代表的なものをピックア
することを目標に設定していた。 ップして翌週の授業で紹介した。質問は翌週まで
対面での授業の構成としては、教員から講義だ に Moodle 上に回答を掲載した。
けではなく、新聞記事などを通して講義内容に関
連する具体的な社会現象を解釈するような小課題 3.学生の反応と今後の課題・可能性
とグループディスカッションを行う予定であった。 毎週の小課題への回答から考えると授業への理
評価は講義時の小課題が 50%と期末レポート 解度や考えさせたいことは対面と同等それ以上の
50%である。 反応を引き出せた。このことはこれまで授業内の
限られた時間で回答していたがオンデマンドとな
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 り時間をかけて回答していたからとも考えられる。
づいて変更し実施した授業内容 小課題の量について不満はなかったが、どの程度
北海道大学の全学教育科目では遠隔のルールが の回答の質を求めているのか教員と学生の認識の
明確に示されたわけではなく、個々の授業の実施 ズレが大きくならないような配慮が必要である。
方法は教員の裁量に委ねられていた。大学からは グループディスカッションを断念したことにつ
「北海道大学におけるオンライン授業導入ガイド いては学生からも「残念」であったとの感想があ
(https://sites.google.com/huoec.jp/onlinelecture った。学生の受講環境が確保されるのであれば、
)」でオンライン授業に対する考え方や実施方法 オンラインで同時双方向のグループディスカッシ
や具体例、関連する学内システムの使い方が情報 ョンも実施しうるだろう。
提供された。同時配信からオンデマンドまで網羅 音声と PDF での資料配布という形式に関して
的に解説されており授業を実施する際の準拠点と は、十分に理解できた、データのダウンロードが
して大変役に立つものであった。 容易でよかったという感想も多くみられた一方で、
遠隔の方法を選択するにあたって、どのような 音声付きパワーポイントなど動画も配信して欲し
状況でも確実に授業を届けることができること、 かったという意見もあった。
条件や環境が整わない学生の負担を軽減すること 受講者からの感想を見るとおおむね好意的に評
を第一に考慮しオンデマンドを採用した。 価されたと考える。翌週に小課題の回答が紹介さ
遠隔化するにあたって教員から講義として伝え れるなど聞きっ放しやりっぱなしではなく適切な
る内容は予定からほぼ変更はしていない。一方で フィードバックがあることが大事であったと考え
グループディスカッションの実施は断念した。 られる。これはオンラインに限らず授業全般に指
毎回作成したものはパワーポイントをスライド 摘できることでもある。

144
東洋大学「異文化と社会事情」(全学年対象)授業 換して YouTube に限定公開した。YouTube は、
実践報告 ⑴ 大半の学生が使い慣れている、⑵ 帯域調整が
廣󠄁田 龍平 でき、学生側で通信量の節約が可能である―と
いう点で望ましいと思われた。
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 PP のスライドは、一行ごとにアニメをつけ、授
容、成績評価の方法 業時にはタッチペンを使ってマーキングや落書き
シラバス段階での目的と概要は「単にさまざま をするなどして、スクリーンがつねに動的に見え
な異文化を紹介するだけではなく、「異文化を理 るように工夫した。噛んだりどもったりしても気
解すること」がどういうことなのか、その意義や にせず、授業を進めた。初回はノートパソコン埋
役割を、文化人類学と民俗学という学問をとおし 込のマイクを使ったが、評判が悪かったため、コ
て考えてみたい」というものである。文化人類学 ンデンサマイクを購入して使用した。スライドは
的な視点から、現代の「異文化理解」を原理的に解 前日までに LMS にアップロードした。
説する、理系学部向けの教養授業であった。評価 また、技術的な工夫ではないが、授業後には
方法は出席 40%、期末レポート 60%。 LMS で 200 字程度のコメントを書かせ、それを翌
週の授業冒頭で取り上げた。オンデマンドを併用
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 する以上、出欠確認ツールが使えないため、コメ
づいて変更し実施した授業内容 ント提出を出席と見なした。その他の点では、前
方式としては資料配布やリアルタイム配信(大 年度と評価方法は変えなかった。
学側の推奨ツールは Cisco Webex Meetings)、オ
ンデマンド配信などの選択肢があった。筆者は、 3.学生の反応と今後の課題・可能性
リアルタイム(時間割どおり)で授業したものを いざリアルタイムで授業を始めると、195 人の
録画し、それをオンデマンド配信する2方式を選 履修者のうち、およそ 130 人前後が毎回参加して
んだ。理由としては、⑴ 学生の通信環境に対応す いることが確認できた。一方で YouTube チャンネ
るには複数方式で実施するのが望ましい、⑵ オン ルのアナリティクスによると、動画の平均的なユ
デマンドや資料配布ばかりで時間の感覚が薄れる ニーク視聴者数は 6~70 人程度であった。この人
危険性を避け、時間割どおりに行なって学生の生 数はリアルタイム授業を受けなかった学生数に近
活リズムを整えることができる、⑶「一発撮り」で いが、それ以外の学生も少数ながら見ていたこと
楽をするためには、リアルタイムが最適—とい が分かる。また、難解な内容の回は再生回数の平
ったことが挙げられる。 均が 1.5~2 回ほどになっていた。
授業の進め方については、PowerPoint を主要ツ 学生からの意見としては、「会うことのない他
ールとした。前年度も PP で授業を進めていたの の学生のコメントを紹介してくれたのはよかった」
で、スライドを一から準備する必要はなかった。 「資料配布だけの授業が多かったが、リアルタイ
ただし回数が 15 回から 12 回に減ったので、前年 ム授業は受けている実感があった」など肯定的な
度にはあった「映画鑑賞」の回とそれを解説する ものが多かった。BLM の回は好評だった。
回の 3 回分を削った。また 1 回分を Black Lives PowerPoint の録画機能は、前のスライドに戻り
Matter に急遽変更した(もとはアフリカ文化を紹 づらい、スライド移動時に一瞬録音が途切れるな
介する回であった)。 どの特性がある。この点を認識していれば不自然
オンデマンドに関しては、PP の「スライドショ な動画になることはない。結局のところ、ツール
ーの記録」機能を用い、それを動画ファイルに変 を熟知していることが不可欠である。

145
京都先端科学大学「陸上競技」(1 年生対象 選択 案の作成についても講義を行った。第 14 回および
必修科目)授業実践報告 第 15 回は、自分の意見とグループでの意見をまと
前田奎 めて、レポート課題として提出させた。さらに、高
校 1 年生対象のハードル走の指導案を最終レポー
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ト課題とした。
容、成績評価の方法
本授業では、陸上競技を実践することで、生涯 3.学生の反応と今後の課題・可能性
に渡っての健康生活実践と体育教育に必要な「歩 5 月 6 日までの期間は、本授業以外でも多くの
く・走る・跳ぶ・投げる」の基本動作とその指導方 レポート課題が出されたこともあり、本来実技で
法を修得させることが目的であった。 ある「陸上競技」でのレポート課題に対してはネ
成績評価に関して、「歩・走・跳・投運動の基礎 ガティブな意見が散見された。5 月 6 日以降のオ
的技術の習得」、「健康ウォーキング・ジョギング ンデマンド型授業については、「ポイントやコツ
の実際と運動処方の基本の理解」、
「指導上の安全 などの説明がわかりやすかった」、
「資料だけの提
管理の実践的理解」、
「対象別指導計画および指導 示より映像があると楽しく取り組めた」という意
案の作成」という 4 つの到達目標があり、それぞ 見が多かった。一方、一人暮らしの学生も多く、
れについて 3 段階の基準が設けられていた。成績 「提出する実技課題の動画や写真をうまく撮影で
評価の方法は、実技評価 30%、レポート 50%、受 きない」という意見も散見された。砲丸投のよう
講時の平常点 20%であった。 に、用具が必要な種目は新聞紙等で代用したが、
このことについては「楽しく実施できた」という
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 意見もあれば、
「とても難しかった」という意見も
づいて変更し実施した授業内容 見受けられた。実技課題は三密を避けて、感染症
4 月 1 日時点で、4 月 6 日から 5 月 6 日の期間 対策をして実施するように指示したが、「在宅時
が学生の登校が禁止され、遠隔授業となったため、 間が増えた中で、運動するいい機会になった」と
その間(第 1 回~第 4 回)はレポート課題での自 いう意見が多かった。Web 会議ツールを用いた授
宅学習が中心であった。課題の内容は、
「セルフプ 業については、「教員や他の受講生と顔を合わせ
レゼンテーション」、
「日常生活における姿勢につ て意見を交換できてよかった」という意見がたい
いて」、「歩行速度と心拍数の関係について」であ へん多く、同時双方向型授業の重要性がうかがえ
った。その後も新型コロナウイルス感染症の第2 た。このように、比較的前向きにオンラインでの
波や学生・教員の健康を考慮し、前期全てオンラ 授業に取り組めている受講生が多かったが、専門
インで対応することが決定した。そのため、5 月 6 的な技術指導ができなかったため、「自分の動き
日以降(第 5 回~第 13 回)は、シラバスに沿った が正しいかわからず、対面授業で直接指導を受け
各種目の基礎・基本や課題の説明動画 を撮影し、 たかった」という意見も多く得られた。
配信するオンデマンド型授業を実施した。第 5 回 講義形式のものに関しては、Web 会議ツールを
~第 13 回は、実技課題を提示し、課題実施時の写 用いることで大きな問題なく実施できると考えら
真、所感等をレポート課題として提出させた。ま れるが、実技に関しては対面での授業が必要にな
た、第 14 回はリレー、第 15 回はパラ陸上競技に るだろう。今後、感染症対策を実施した上で、人数
ついて、Web 会議ツールを用いて遠隔講義(同時 制限をしながら、15 回のうち半分あるいは 1/3 程
双方向型授業)を実施し、テーマを設定してグル 度は対面で実施できる方法を検討したい。
ープディスカッションを行った。第 15 回は、指導

146
関西福祉科学大学「体育実技(A・B・C)」(1 年 面接実技授業を実施した.残る 45 分の課題として
生対象)授業実践報告 “振り返りレポート”を事後提出させた.面接授業
松木優也・高木信良 ではルール学習,ラリー練習,ゲームを中心に展
開した.なお,感染症対策として,マスク着用(練
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 習時以外),ラケットの共有禁止(授業後消毒),
容、成績評価の方法 検温,換気を実施した.
本科目の目的は「運動・スポーツの実践を通じ, 3)第 14~15 回目(オンライン授業)
将来のライフスタイルを見通すと共に健康増進に 感染者数増加により,14,15 回目授業で再びオ
向けた意識を高め,他者と協力し合い諸問題の解 ンライン授業を実施した.課題は総括レポート,
決を図り,人間力を培うための幅広い教養を身に オンライン授業(レポート課題/動画課題(課題付
つける」である.定員は A,B,C それぞれ 40 名 与)/動画課題(課題自己設定))と面接授業(実
であり,1,2 回目にガイダンス,種目選択を行う. 技)の 4 種の形式の授業に関するフィードバック
学生は 3~8 回目にはテニスかショートテニスを, アンケート(Google フォーム)を実施した.
9~14 回目には卓球かバドミントンを選択する.
今年度ではショートテニスおよび卓球を第 1 著者 3.学生の反応と今後の課題・可能性
が,テニスおよびバドミントンを第 2 著者が担当 フィードバックアンケートの結果,最も授業達
した.成績評価は,授業への積極的参加度・貢献度 成度が高かったのは面接授業(実技)であった.筆
が 40%,種目内での目標達成度(スキルテスト, 者は,面接授業初回前,オンライン授業疲れによ
ゲーム等による技能点)が 60%であった. る重い空気感が漂うと考えていたが,活発なコミ
ュニケーション,アクティブなプレーが見られ,
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 活気あふれる様子であった.“振り返りレポート”
づいて変更し実施した授業内容 では,
「次回は回転サーブを打てるよう,インター
1)第 1~9 回目(オンライン授業) ネットで予習して望みたい」といった,次回授業
この間の授業は,全て学内ポータルサイト への意欲溢れる内容が多く,総括レポートにも,
(manaba)活用の課題発信型授業を実施した. 「実技授業が中断されて残念だった」「仲間とス
□レポート課題:自らの小学校から高校までの運 ポーツができることのありがたみを感じた」とい
動歴を振り返らせ,Word で提出させた. う内容が多かった.すなわち,オンライン授業の
□動画課題(課題付与)(写真):教員自作の課題 実施を通して,実技授業の教育価値の高さを実感
動画を視聴させ,自宅で運動課題に取り組ませた. させられた.また,3 種のオンライン授業の授業達
その後,自らの運動動画および所感をメールで提 成度を比較すると,動画課題(課題付与)が最も低
出させた.内容の一例を挙げれば,新聞紙で丸め い値となった.今振り返ると,学生に充実した授
たボールを手,ペットボトル,傘を使い,サーブの 業をという思いが,いつしかハイクオリティな動
フォームで的に向かって打たせる課題を与えた. 画を作成するエネルギーに変換されていたのかも
□動画課題(課題自己設定):インターネットで, しれない.動画課題(課題自己設定型)の授業達成
「ラケットスポーツの体力トレーニング」を検索 度が,動画課題(課題付与)よりも高かったことも
させ,メニューの内容,実際に取り組んだ動画,所 反省点といえよう.今後,同時双方向形式授業を
感をまとめ提出させた. 導入検討し,オンラインによる実技授業の可能性
2)第 10~13 回目(面接授業) を探りたい.
感染症状況緩和により,45 分間のみの制限付き

147
高知大学「社会調査論」(1 年生対象)授業実践報 の講義で話す内容を逐一記した。その際、文字が
告 多くなることから、PowerPoint の読み上げ機能や
湊邦生 読み上げソフトによる音声化方法を紹介した。学
生にはこの資料の熟読と、授業内容に関するリア
1.ここでは、高知大学地域協働学部 1 年生(定 クションの提出を求め、これにより受講を認定し
員 60 名)必修の専門講義科目「社会調査論」(以 た。また、リアクションで記された質問や要望に
下「本講」)での授業実践について報告する。 対しては、別資料を作成して回答を示した。
本講の目的は「社会調査の意義とさまざまな類 一方で、授業形態の変更は学習事項や到達目標
型に関する基本的事項を理解し、調査実施やデー を左右しないとの判断から、授業内容には大幅な
タ分析と言った実践につなげること」である 。高 14
変更は加えなかった。ただし、外出自粛による書
知大学地域協働学部では学生が高知県内各地をフ 籍の入手困難から、当初使用予定のテキストが無
ィールドとして、地域の多様な主体との協働によ くとも学習可能なよう配慮した。また、調査実践・
る実習授業に取り組んでいる。この中で、学生は 統計資料等に関する情報もアップデートした。
何らかの形で社会調査に携わる。そのため、本講 評価方法も改定した。期末試験は教室での実施
の内容は、社会調査の意義や倫理、国内外の主要 が不可能なため行わず、授業期間中に 5 回の小テ
調査、調査方法論等、調査者が学ぶべき様々な基 スト、授業最終回にて確認テストを実施、これら
礎的事項に及ぶ。加えて、高知県内の調査・統計資 と先述のリアクションとを評価対象とした。
料等、地域理解のための情報も提供している。
なお例年の場合、成績評価は期末試験および、 3.講義最終回に授業評価調査を行い、受講生 76
各回の授業内容に関して学生に提出を求めるリア 名中 63 名の回答を得た。その結果、授業開講方法
クションカードの内容を合わせて行っている。 が適切だったかについて、「はい」37 件(59%)「ど
ちらかといえばはい」18 件(29%)であった。また、
2.高知大学では 2020 年度第 1 学期、ほぼ全ての 授業が満足いくものであったかとの問いには「は
授業を同期型・非同期型のオンライン授業、また い」41 件(65%)「どちらかといえばはい」14 件
は課題・レポートを課す形での遠隔授業で開講し (22%)であった。同設問の昨年度の集計結果は「は
た。その際、同期型授業では高負荷の動画配信や い」25 件(49%)「どちらかといえばはい」18 件
大容量の資料配布の回避、非同期型授業では授業 (35%)であり、満足度が上がった形である。
資料の公開日時や課題内容・〆切といった授業受 肯定的回答の理由ではノートでの詳細な説明、
講に関わる情報の明示が、それぞれ求められた。 小テストの実施、受講生の質問への回答の提示が
これに伴い、今年度は本講を非同期型のオンラ 挙げられた。他方、対面・同期型授業や、教員自身
イン授業にて開講した 。主な理由は、データ送受
15
の音声が無かったことに物足りなさを訴える意見
信量の抑制と、学生の状況に合わせた学修機会の もあった。これらへの対応と学生の負担軽減とを
提供である。ただし動画は配信せず、授業資料と どう両立するかが、2 学期以降の課題である。
して PowerPoint ファイルを作成、
ノート欄で各回

14
以下、2020 年度高知大学シラバスでの解説を 15
ただし初回授業のみ前半をオンタイムで実施、
参照(http://www-kulas.jimu.kochi- 受講生どうしの顔合わせ、授業進行や成績評価の
u.ac.jp/Portal/Public/Syllabus/Syllabus/DetailMa 説明を行った。
in.aspx?lct_year=2020&lct_cd=60013)。
148
群馬県立女子大学「心理学 A」(1 年生対象)授業 に制限があったので、教養科目にもかかわらず、
実践報告 例年よりもはるかに少ない受講者数に、私個人の
宮内洋 責任で減らさなければならず、苦労した。
結果的には、Zoom によって例年通りの授業内
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 容を実施することができた。何よりも、入学した
容、成績評価の方法 ばかりの学生の不安を解消するように内容を工夫
「心理学 A」は、1 年生対象の全学部全学科対象 し、その工夫についても後半部で心理学的に解説
の教養科目である。シラバスには「基本的な心理 をおこなった。大学院生の頃に放送局で働き、番
学の知見を学ぶことによって、日常生活でその知 組制作にかかわっていた私は、このオンライン授
見を活用できるようになる。特に、『客観的』に事 業がまるで生放送の番組のように感じた。パーソ
象を見ることができるようになる。そのことによ ナリティから裏方までのあらゆるすべてを担当講
り、鋭い洞察力を身に付け、柔軟な発想力、応用力 師が一人でおこなっている、あり得ない事態だ。
及び問題解決能力を持つことを目指す」等と目的 それでも、フリー素材で見付けた蝉の声や波の音
を記していた。成績については主に「全講義終了 等を講義途中に流してクールダウンの時間をとる
後に実施される定期試験と、講義期間中に課せら などの形式的な工夫もまた試みた。
れる課題」によって評価されるとしていた。
3.学生の反応と今後の課題・可能性
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 これまでは、講義の終わりに感想を提出しても
づいて変更し実施した授業内容 らい、翌週には必ず質問に回答し、その感想への
新型コロナウィルス感染症対策が必要となり、 リプライをおこなってきた。そのためか、本講義
勤務校は熟慮に熟慮を重ねた末に、本来の前期開 を担当してからの授業満足度の平均は94.6%
始日よりも結果的にほぼ一ヶ月遅れの開始となっ である。このやり方を遠隔授業でも継続したとこ
た。そのために前期が終わるのは 8 月末となった。 ろ、手応えは例年とほぼ変わらなかった。それど
指示は突然だった。すべての科目を遠隔授業で ころか、講義の感想を Google Classroom に直接入
実施するように指示された。ちなみに、同じく一 力できるようにしたためか、感想の内容が濃密だ
ヶ月遅れての開始となった非常勤先では突然のオ ったように感じる。さらに、周囲に他学生がいな
ンデマンド方式、しかも前日には大学独自のシス い状態で入力できるために、生々しく切実なエピ
テムにアップするように指示された。勤務校では、 ソードが例年よりも数多く書かれていた。
学生のみならず教員も大学への入構禁止となり、 講義中に音声が途切れた時には、受講生からの
授業については各教員にすべてが委ねられた。 チャットでの指摘によって気づくことができ、す
私は右も左もわからない状況に放り投げられ、 ぐに再度説明し直した。画面上の拍手ボタン等に
途方に暮れた。ただただ考えていたのは、例年と 励まされ、無事に終えることができたように思え
同じ授業内容をどうにかして実施する、その一点 る。授業満足度も例年並みではないだろうか。
のみだった。そこで、勤務校ではリアルタイムで 勤務校では前期に引き続き、後期も遠隔授業と
の遠隔授業、さらには双方向性を確保する方式を なった。非常勤先の大学は前期に引き続きオンデ
探った。いろいろと試した結果、Zoom が例年通り マンド授業、もう一つの非常勤先は対面授業で実
の授業をもっともスムースにできそうだったので、 施するようにとのこと。近隣の三つの大学ですべ
アカウントを個人で取得した。今もなお自費で支 て方式が異なる。各教員は、大学側には文句も言
払い続けている。私の個人アカウントは参加人数 えないままに粛々と独自の工夫で授業をおこなう。

149
沖縄キリスト教短期大学「子ども家庭支援論」
(2 ①に関しては、当初は電子メールを利用し、学
年生対象)授業実践報告 生・教員双方が遠隔講義に慣れ始めた頃から、
宮平隆央 Google Classroom による資料配信、YouTube によ
る講義動画のオンデマンド配信に切り替えた。②
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 に関しては、講義当初の課題提出は、手書き原稿
容、成績評価の方法 の写真送付など、簡素な方法を許可し、操作方法
本講義は、子育て中の家庭について、その機能 を指導しつつ提出方法を統一していった。③に関
と家庭を取り巻く社会状況、子育て家庭の支援ニ しては、クイズ的な課題よりも、事例検討など「調
ーズや支援方法・支援体制等について理解するこ べて、考える」課題を中心とした。また、動画は最
とを目的としている。シラバスでは、具体的な事 大 45 分程度とし、通常のグループワーク等の代替
例を取り上げ、グループディスカッションなどを として、講義動画に関連した課題(1 時間程度でで
通じて理解を深める方法をとる、としていた。 きる内容)を課し、90 分相当となるよう配慮した。
講義内容は、「家庭支援の意義」「子育て家庭を ④の関しては、関連ニュースの記事・動画などへ
取り巻く社会環境」
「保育士の専門性と家庭支援、 のリンクを添付し、視聴した上で解く課題を設け
その方法、資源」等について学ぶ内容である。 た。⑤については、保護者への聞き取りにより、学
成績評価の方法については、①試験:30%、② 生自身がいかに「育てられたか」という視点から
レポート 40%、③その他 30%としていた。 家庭を顧みる課題を実施した。
本来のシラバスの一部内容は関連講義で取り上
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 げることとし、ディスカッションについては、コ
づいて変更し実施した授業内容 メントペーパーでの学生間の意見の相違等を動画
大学から要請された遠隔講義のルールについて 内での紹介・共有することで代替した。
は、基本的な部分は他大学とほぼ共通と考える。 成績評価は、①Google Forms を用いた選択式試
本学で重視していたと考えられるのは、①不慣 験、②レポート、③毎回の課題提出状況等をベー
れな環境での学習となるため、不安を抱える学生 スに、概ね本来のシラバスの配点に依った。
と密な連絡をとること、②学内調査で、遠隔講義
を受講する環境が整っていない学生(スマートフ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ォンのみ所有など)が一定割合いることが把握で 学生からは、「対面講義に近い」など、概ね良好
きたため、提出物の期限(≒出欠確認)への配慮や な反応であった。時事や家族を講義に取り込むこ
支援情報の提供徹底などの点である。 とにより、意欲や関心を惹起できたかと考える。
それらを受け、講義方法・内容に関し、考慮した また、毎回の課題提出により、文章力が大きく向
のは以下の点である。①「頑健な通信方法を利用 上した学生もみられた。一方で、家庭状況(通信環
する」、②「最も PC スキルが低く、通信環境が悪 境、学習場所、家族関係、家庭へのコロナの影響
い学生を想定する」、③「自宅で、ひとりで学習す 等)等によって、学生間に学習の差が出た面や、課
るため、学ぶ意欲や関心の維持を当面重視する」、 題の丁寧なフィードバックは課題である。
④新型コロナウィルスの流行に関連した子育てや 課題提出等を通じ個々の学生の学習状況がより
保育の課題など、現在進行形のニュースと学習内 詳しく感じられるようになったこと、動画作成の
容を関連づけ、理解を深める、⑤科目の特性(家 ため講義内容の精査につながったことをはじめ、
庭・家族がテーマ)を活かし、家庭内に学びのソー 今回、「学ぶ」意義や方法を、学生と教員が共に問
スを求める、等の点である。 い直す契機となったことは間違いない。

150
埼玉大学「初等音楽科指導法」(2 年生以上対象) 向的に授業展開するために、ZOOM のチャット機
授業実践報告 能を用いたアイデア出し、アンケート機能の活用
森薫 をした。また、個人を指名し、意見を述べさせた。
チャット機能は、授業中に補足事項を話すとき等
1.授業概要 に、板書としても活用した。また、匿名での意見投
(1) 目標:小学校学習指導要領音楽編を理解する。 稿 と そ の リア ル タイ ム 表 示 が可 能な
音楽科の授業構成論を学び、模擬授業の実施と振 mentimeter(https://www.mentimeter.com/) も 適
り返りを通じて授業実践力を獲得する。音楽科の 宜用いた。毎回のコメントシートは Google forms
今日的課題を学び、自身の考えをもつ。 で提出させた。これは教員側での管理が非常にし
(2) 内容:小学校音楽科における表現(歌唱・器 やすく利便性が高いものと考える。
楽・音楽づくり)と鑑賞の授業づくり、学習指導案 ③ 機材の工夫:範唱・範奏を聴かせるため、コン
の作成方法、評価の方法等について学ぶ。 デンサマイク(audio-technica AT2050)をオーディ
(3) 成績評価:毎回のコメントシートの記載内容 オインターフェイス(CLASSIC PRO CAI16U)で
35%、筆記試験 15%、期末課題 40%、授業参加度 PC に繋ぎ、音質を高めた。音と筆者の身体の動き
10%(コロナ対応後の点数配分である)。 をズレ無く伝えるため、音源はスピーカーから大
(4) 備考:履修者の約 9 割が非・音楽専攻の学生。 音量で出し、それを上記マイクで拾う方式にした。
同名科目 2 コマ担当、履修者は各 80 名程度。 音声・楽器の音ともにある程度の質は保てたと考
えている。講義は PC 内蔵カメラに向かって行っ
2.大学からの要請とそれに基づく対応 たが、演奏を見せる際は Web カメラ(Sross CM-
(1) 示された遠隔授業のルール:授業形態として 02)を PC に繋ぎ電子ピアノ鍵盤を上から撮影する
資料配布、資料+音声、録画配信、ライブ配信が認 いわば“2 カメ”として使用、演奏者視点の映像とな
められた。ライブ配信の場合は ZOOM が推奨さ るようにした。
れ、時間無制限のアカウントが常勤・非常勤の全
教員に付与された。ライブ配信の場合でも録画し 3.学生の反応と今後の課題・可能性
てビデオを LMS にアップし、リアルタイム受講で (1) 履修者の反応:概ね良好であったと考えてい
きなかった履修者が学習に取り組めるようにする る。2(3)③の工夫により、対面よりも却って分かり
ことを大学から求められた。 やすくなることもあったようである。また、カメ
(2) 対応:全ての回を遠隔、ZOOM ライブ配信 ラをオフにしており他者の目が無いことから、思
型とした。履修者はカメラ・マイクのオフを基本 い切り歌ったり、間違いを恐れずにリコーダーを
の状態とし、発言してもらう際にはマイクをオン 吹いたりすることができた学生もいたようである。
にさせた。授業資料を事前に PDF で共有した。 さらに、遠隔授業は多くの場合自室で 1 人きりで
(3) 実施した授業の工夫 受講するため、周りに履修者がおらず、歌唱時・演
① 指導方法の工夫:当初予定していた対面での 奏時に教員の範唱・範奏だけが手がかりとなる。
模擬授業が不可能となったため、筆者が教師役と そのため、音程が取れているかが分かりやすかっ
なって音楽ワークをデモンストレーションする回 たと考えられる。これらは遠隔授業をしてみた後
数を増やし、カメラをオフにしたままワークに参 に分かった、思わぬ副産物であった。
加するよう求めた。期末課題として、録音した音 (2) 今後の課題:履修者の音楽的技能を授業中に
声・演奏音源を提出させた。 随時確認するということができなかった。これは
②Web 上のサービスを用いた技術的な工夫:双方 大きな課題である。

151
川村学園女子大学「道徳教育の指導法(小)」(2 には学期中に写真やファイルの形で提出してもら
年生対象)授業実践報告 い、コメントを加えて返却した。昨年度までの対
矢田訓子 面授業では、これらの課題内容を講義で扱ってき
たが、学生の提出した課題を見て、今後は「反転学
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 習」の事前学修に回せることがわかった。
容、成績評価の方法 5 月 11 日から前期が始まったが、勤務校ではオ
本講義は教職課程「コア・カリキュラム」に該当 ンライン(同時双方向型)は禁止、資料提示の講義
する講義である。講義目的・概要は、公教育におけ 形式が推奨された。この講義は、複数の資料を横
る道徳教育の意義を理解し、小学校での道徳教育 断して説明する必要があるため、資料提示型での
の指導法を学び、実践力を培うことにある。道徳 授業は難しいと判断し、パワーポイントに音声を
教育の変遷、学習指導要領の把握、指導法の理論 入れたオンデマンド型講義を選択した。また指導
と展開を学び、模擬授業を行う。 法の講義は「コア・カリキュラム」で学生に模擬授
業を課すことが決められている。しかし、模擬授
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 業は後期の別の指導法に任せ、代わりにこの講義
づいて変更し実施した授業内容 では、文部科学省のサイト「道徳アーカイブ:実践
まず、勤務校では、3 月末に前期授業を遠隔授業 事例について」にある授業映像の閲覧し、授業の
で行うこと、学期開始を 5 月 11 日とし講義回数を 書き取り作業を課題とした。
12 回とすること、チームスを使って対応すること 勤務校では、オンデマンド型講義についての細
が決定した。その後、4 月の学生対応としていくつ かい指示はなかったが、15 分程度の動画とワーク
かの講義で学生に宿題を課すことになった。教職 の組み合わせを 2 回から 3 回繰り返し、加えて、
課程の講義は 15 回分を確保する必要があったの 事後及び事前学修にあたる内容を課題として提示
で、この講義も 3 回分の課題を作り学生にプリン した。昨年度までの学生アンケートで、学生の多
トを郵送した。 くが事前・事後学修の時間を十分にとっていない
4 月の宿題は、できるだけネット上で視聴でき ことがわかっていたので、課題への意識を共有す
る教材(素材)を用いて課題を作成したいと考え る必要があった。そこで、別に担当していた「教育
た。しかし、当時はまだ学生のネット環境がわか 課程論」の第 2 回講義で ICT を活用した「反転学
らなかったので、どのような環境にも対応できる 習」を取り上げた。そのため、この授業でも学生た
ように参考文献の該当箇所をプリントし送付した ちは前向きに課題に取り組むことができたように
他、ネット視聴、テレビ視聴など多数の方法から 思う。
各自にあった方法を選べるようにした。こうした
制約はあったが、内容も現在の道徳教育のテーマ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
である「考え・議論する道徳」で揃えることができ 勤務校では後期は全て対面で行うことになった。
た。具体的には、1.学習指導要領、答申などの空 再会した学生たちは一様に、前期は大変な緊張感
欄穴埋め問題、2.高校講座「論理のちから」に関 だった、と心情を吐露していた。一方で、講義内容
する課題、3.NHK for School の番組「Q」を教材 に集中できるとオンデマンド授業の良さも感じた
とした課題を作成した。これらは、「考え・議論す ようである。こうした学生の感想を受け止めて、
る道徳」の観点からの学生自身の道徳教育の振り 今後に活かしていきたい。
返り(2)、学習指導要領の確認(1)、新しい道徳
の教材の確認(3)を狙いとしたものである。学生

152
立教大学「差別と偏見の社会学」
(2 年生以上対象) ことで、聴覚に頼らなくても理解できるようにし
授業実践報告 た。そして、最後の理由は、これまで当たり前に受
矢吹康夫 講できていた対面授業が、いかに非障害学生を基
準に設計されていたかを自覚してもらうことであ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 る。
容、成績評価の方法 特定の時間に特定の場所に集まり、墨字のレジ
差別を身近な現象としてとらえ直すことを目的 ュメが配布され、教員が音声言語で話し、スライ
に、事例を交えて理論を解説した。コメント提出 ドや映像が映写されるのを 100 分間黙って座って
60%と期末レポート 40%という評価方法は変更 見て、聞くというのが対面での講義科目である。
してない。 だがこれは、移動が制限されていたり、スケジュ
ール管理が苦手だったり、閉鎖された空間や人混
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 みの中で不安を感じたり、視覚/聴覚に頼った情
づいて変更し実施した授業内容 報取得が困難だったりする障害学生にとっては、
大学からは、一方向のリアルタイム配信、双方 非常にバリアフルな環境である。それが、オンデ
向のリアルタイムミーティング、LMS を利用した マンド配信の遠隔授業でスライドと解説テキスト
オンデマンド配信のいずれかを選択し、できるだ を提供すれば、上記のバリアの多くは解消される。
け通信量を減らす努力をするよう指示された。 以上のように、遠隔授業になったことでアクセ
私はまず、オンデマンド配信にすることに決め シビリティが向上した学生がいる一方、自宅のイ
て準備を進め、初回授業では LMS にスライドの ンターネット回線などの理由から、対面授業に比
PDF だけをアップロードし、期日までに受講して べて受講環境が悪化した学生もいる。環境の変化
LMS からコメントを提出するよう指示した。アッ によって不利益を被る実例をあげながら、障害は
プロードしたスライドにはナレーションは入れず、 社会的に構築されるという「障害の社会モデル」
授業内容の解説(対面授業であれば口頭で話す内 の視点を学ぶために、遠隔授業への変更を「教材」
容)をすべてテキストに起こしたページのリンク として利用した。そして、初回授業の最後にこの
を貼っておいた。次に、その解説テキストを受講 面倒くさい授業形式の意図を説明した。
生各自の端末に読み上げさせるよう指示し、各 OS
の音声読み上げ機能のマニュアルのリンクを貼っ 3.学生の反応と今後の課題・可能性
ておいた。 初回授業のコメントでは、「なんでこんな面倒
このやり方は、受講生にとっては余計な手間が くさいことをしなきゃいけないんだ」「抑揚のな
かかる。ほとんどの学生は音声読み上げ機能を使 い合成音声が気持ち悪い」など、最初は不満を感
ったことがなく、まずは使い方をマスターしなけ じていたが、最後に授業形式の意図を説明されて
ればならないし、音声で次のスライドに進むよう 納得したという反応が大半だった。当たり前に享
指示されたら、自分で PDF のページをめくらなく 受できていた権利が保障されない環境になったこ
てはならない。 とで、それまでの自分が恵まれていたこと、しか
なぜこんな面倒くさいやり方を採用したかとい もそれに無自覚だったことを自省し、当たり前の
うと、まず 1 つは、PDF とテキストだけだから、 権利が保障されていない人びとがいる現実へと想
通信量を抑えられるという利点がある。また、障 像力を働かせるきっかけになったようである。
害学生へのアクセシビリティを保障する意図もあ
り、口頭で話す内容をすべてテキストで提供する

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関西大学「発展演習政治学」(2年生対象)授業実 生の関心が特に高いと思われるテーマを Zoom 授
践報告 業の回に当てた。具体的には、新型コロナウイル
吉沢晃 スとグローバリゼーション、日本の商業捕鯨再開、
ソーシャルメディアの発達と政治コミュニケーシ
1.シラバス段階での講義の目的と概要、講義内 ョンなどのテーマを取り上げた。評価方法は予定
容、成績評価の方法 通り 4 項目に基づいて評価した。ただし、授業形
態の変更にともない、課題提出の回数を増やし成
本科目は関西大学法学部が提供している「英語 績評価に占める割合も高くした。
で発信する政治学」プログラムの一部であり、日 Zoom 授業は概ね下記のような時間配分で行っ
本政治や国際政治について英語で議論できる学生 た。なお、班分けには Zoom の「ブレイクアウト
を育成することが目的である。主な教材は新聞記 ルーム」機能を用いた。
事で、授業は英語で行っている。なお、2020 年度
春学期は 10 名が履修した。演習形式の科目である ① 教員による導入、クイズなど(10 分)
ため、学生の発表と討論を中心とした授業を実施 ② 2 名の学生の発表(20 分)
する予定であった。成績評価は、課題提出1回、発 ③ 論点 1 に関するペアでの話し合い(5 分)
表1回、討論への積極的な参加、期末レポートの 4 ④ 全体討論(15 分)
つに基づいて行うこととしていた。 ⑤ 論点 2 に関するペアでの話し合い(5 分)
⑥ 全体討論(15 分)
2.大学から要請された遠隔のルールとそれに基 ⑦ 教員による解説、まとめ(10 分)
づいて変更し実施した授業内容
各回の授業の実施にあたり工夫したことは 3 つ
関西大学は、2020 年 4 月初旬に、2020 年度春 ある。まず、課題の答案と期末レポートに対して
学期の全科目を原則としてオンラインで行うこと 個別にコメントを書いた。次に、学生の参加意識
を決定した。具体的には、①課題や小テストを課 を高めるため、Zoom 授業ではできる限り全ての
す教材提示型、②録画講義などを配信するオンデ 学生を指名し発言させた。最後に、Zoom 授業は精
マンド型、③テレビ会議システムを用いた遠隔授 神的にも肉体的にも疲労がたまりやすいので、飲
業型のうちのいずれか、もしくはこれらを組み合 み物の持ち込みを許可した。これは活発な議論を
わせた形で授業を実施することとなった。個々の 行うための雰囲気作りもねらった措置である。
科目の実施方法の選択は各担当教員に委ねられた。
なお、③の実施のため、大学が費用を負担して全 3.学生の反応と今後の課題・可能性
教員に Zoom のアカウントを付与した。
上記の決定を受け、本科目の実施形態・授業計 討論の論点を事前に伝えていた甲斐があり、ほ
画・評価方法をそれぞれ変更した。実施形態は、教 とんどの学生が Zoom 授業に積極的に参加した。
材提示型の授業 9 回と Zoom を用いて発表・討論 ただし、学生は慣れない遠隔授業で(教員と同様)
を行う授業 6 回を組み合わせて行う形にした。こ 緊張しており、またオンラインで恥をかきたくな
のような折衷案を選んだ理由は、一方で本科目に いという心理も働くためか、発言の際に事前に用
は討論が欠かせず、他方で急なオンライン化に教 意してきた原稿を読み上げる者が多かった。学生
員・学生が十分に対応できるかが不透明だったか の予習を引き続き促しつつ、より実践的な討論を
らである。授業計画に関しては、順序を変更し、学 いかに実現するかが今後の課題である。

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著者プロフィール(50 音順)

青木亮人(あおきまこと) 愛媛大学教育学部 准教授


赤阪辰太郎(あかさかしんたろう) 大阪大学人間科学研究科 助教
秋田美帆(あきたみほ) 関西学院大学日本語教育センター 日本語常勤講師
秋保さやか(あきほさやか) 福岡大学人文学部 非常勤講師
朝山奈津子(あさやまなつこ) 弘前大学教育学部 講師
阿部直也(あべなおや) 東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系 准教授
有元伸子(ありもとのぶこ) 広島大学文学部/人間社会科学研究科人文学プログラム 教授
飯倉義之(いいくらよしゆき) 國學院大學文学部 准教授
池上大祐(いけがみだいすけ) 琉球大学国際地域創造学部 准教授
池田さなえ(いけださなえ) 京都大学人文科学研究所 助教
イザンベール真美(いざんべーるまみ) 東京外国語大学世界教養プログラム 非常勤講師
石田健一(いしだけんいち) 青山学院大学国際政治経済学研究科 非常勤講師
石野一晴(いしのかずはる) 慶應義塾大学法学部 非常勤講師
石原由貴(いしはらゆき) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 教授
李承俊(いすんじゅん) 愛知学院大学教養部 非常勤講師
板倉孝信(いたくらたかのぶ) 新潟大学経営戦略本部 特任助教
市川紘美(いちかわひろみ) 東京女子大学現代教養学部 非常勤講師
伊藤潤一郎(いとうじゅんいちろう) 立命館大学衣笠総合研究機構/日本学術振興会特別研究員 PD
今井宏昌(いまいひろまさ) 九州大学大学院人文科学研究院 講師
岩嵜大悟(いわさきだいご) 立教大学文学部 兼任講師
岩田久美加(いわたくみか) 共立女子大学文芸学部 非常勤講師
上地聡子(うえちさとこ) 日本大学法学部 非常勤講師
宇都伸之(うとのぶゆき) 北陸大学経済経営学部 助教
榎本雅之(えのもとまさゆき) 滋賀大学経済学部 准教授
大井由紀(おおいゆき) 南山大学外国語学部英米学科 准教授
大賀哲(おおがとおる) 九州大学大学院法学研究院 准教授
大坂遊(おおさかゆう) 徳山大学経済学部 准教授
大貫俊夫(おおぬきとしお) 東京都立大学人文社会学部 准教授
大山貴稔(おおやまたかとし) 九州工業大学教養教育院 講師
岡英里奈(おかえりな) 山形県立米沢女子短期大学国語国文学科 講師
越智徹(おちとおる) 大阪工業大学情報センター 講師
学谷亮(がくたにりょう) 日本学術振興会 特別研究員(PD)
笠間はるな(かさまはるな) 東北大学大学院文学研究科 助教
加島正浩(かしままさひろ) 愛知淑徳大学創造表現学部創作表現専攻 非常勤講師
片山奈緒美(かたやまなおみ) 筑波大学大学院人文社会科学研究科 博士後期課程院生
加藤諭(かとうさとし) 東北大学学術資源研究公開センター史料館 准教授
加藤巧(かとうたくみ) 名古屋造形大学造形学部美術表現領域 非常勤講師
加藤朋江(かとうともえ) 福岡女子短期大学子ども学科 准教授
加藤由香子(かとうゆかこ) 名古屋芸術大学国際交流センター コーディネーター/東京福祉大学名古屋キャ
ンパス教育学部 非常勤講師
門田裕次(かどたゆうじ) 東京国際工科専門職大学工学部デジタルエンタテインメント学科 講師
金原大植(かねはらだいしょく) 日本学術振興会特別研究員(PD)/大阪府立大学現代システム科学域マネジメ
ント学類 非常勤講師
神村朋佳(かみむらともか) 大阪樟蔭女子大学児童教育学部児童教育学科 専任講師
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亀井伸孝(かめいのぶたか) 愛知県立大学外国語学部国際関係学科 教授
河西秀哉(かわにしひでや) 名古屋大学大学院人文学研究科 准教授
木内久美子(きうちくみこ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 准教授
北田雄一(きただゆういち) 大阪産業大学全学教育機構 非常勤講師
木場貴俊(きばたかとし) 国際日本文化研究センター研究部 プロジェクト研究員
桐原健真(きりはらけんしん) 金城学院大学文学部 教授
クラウタウ、オリオン(くらうたう、おりおん) 東北大学大学院国際文化研究科 准教授
黒木秀房(くろきひでふさ) 立教大学文学部・現代心理学部 兼任講師
ケイン樹里安(けいんじゅりあん) 大阪市立大学都市文化研究センター 研究員
黄偉修(こういしゅう) 東京大学東洋文化研究所 助教
小二田誠二(こにたせいじ) 静岡大学人文社会科学部 教授
小林恭子(こばやしきょうこ) 目白大学人間学部児童教育学科 准教授
小林広直(こばやしひろなお) 東洋学園大学グローバル・コミュニケーション学部 専任講師
近藤誠司(こんどうせいじ) 関西大学社会安全学部 准教授
坂口可奈(さかぐちかな) 北海商科大学商学部 講師
坂本麻裕子(さかもとまゆこ) 早稲田大学グローバルエデュケーションセンター 准教授
清水貴恵(しみずたかえ) 桜美林大学リベラルアーツ学群 非常勤講師
朱炫姝(じゅひょんじゅ) 目白大学外国語学部韓国語学科 専任講師
菅谷孝義(すがやたかよし) 国際工科専門職大学情報工学科 専任講師
鈴木真太朗(すずきしんたろう) 東北学院大学文学部/仙台白百合女子大学人間学部 非常勤講師
鈴木崇夫(すずきたかお) 愛知淑徳大学初年次教育部門 助教
鈴木隆弘(すずきたかひろ) 高千穂大学人間科学部 教授
鈴木悠(すずきゆう) 群馬県立女子大学国際コミュニケーション学部 講師
須藤武司(すどうたけし) 帝京平成大学専門職大学院臨床心理学研究科 講師
春原史寛(すのはらふみひろ) 武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科 准教授
関沢和泉(せきざわいずみ) 東日本国際大学高等教育研究開発センター 教授
瀬島利林(せじまりりん) iU 情報経営イノベーション専門職大学 Global Communication Department
English Lecturer
瀬沼文彰(せぬまふみあき) 西武文理大学サービス経営学部 専任講師
高木信良(たかぎのぶよし) 関西女子短期大学 名誉教授
田中樹里(たなかじゅり) 目白大学人間学部子ども学科 客員研究員/非常勤講師
田中直(たなかなお) 立命館大学国際関係学部 授業担当講師/龍谷大学 非常勤講師
寺田征也(てらだまさや) 明星大学人文学部人間社会学科 准教授
照屋建太(てるやけんた) 沖縄キリスト教短期大学保育科 教授
土居浩(どいひろし) ものつくり大学技能工芸学部・建設学科 教授
時岡新(ときおかあらた) 金城学院大学国際情報学部 教授
伴野崇生(とものたかお) 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任講師
伴野文亮(とものふみあき) 東北大学大学院文学研究科 助教
中沢知史(なかざわともふみ) 南山大学外国語学部スペイン・ラテンアメリカ学科 特任講師
中嶋洋平(なかしまようへい) 同志社大学グローバル地域文化学部 助教
中園宏幸(なかぞのひろゆき) 広島修道大学商学部 准教授
中妻結(なかつまゆい) 順天堂大学国際教養学部 教育講師
長津結一郎(ながつゆういちろう) 九州大学大学院芸術工学研究院 助教
仲矢信介(なかやしんすけ) 東京国際大学国際関係学部国際メディア学科 准教授
成田麗奈(なるたれいな) フェリス女学院大学音楽学部音楽芸術学科 非常勤講師
西田彰一(にしだしょういち) 京都産業大学法学部/日本学術振興会特別研究員(PD)
西山雄二(にしやまゆうじ) 東京都立大学人文科学研究科 教授
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野澤聡(のざわさとし) 獨協大学国際教養学部 准教授
野村朋弘(のむらともひろ) 京都芸術大学芸術学部通信教育課程 准教授
野原佳代子(のはらかよこ) 東京工業大学環境・社会理工学院 教授
橋本嘉代(はしもとかよ) 筑紫女学園大学現代社会学部 准教授
蓮田隆志(はすだたかし) 立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部 准教授
長谷川元洋(はせがわもとひろ) 金城学院大学国際情報学部 教授
服部このみ(はっとりこのみ) 金城学院大学/中部大学/愛知東邦大学 非常勤講師
花家彩子(はなけあやこ) 常葉大学健康プロデュース学部こども健康学科 助教
早川公(はやかわこう) 大阪国際大学経営経済学部 准教授
樋田有一郎(ひだゆういちろう) 奈良教育大学学校教育講座 特任准教授
日髙晋介(ひだかしんすけ) 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 共同研究員
平川全機(ひらかわぜんき) 北海道大学大学院文学研究院 助教
廣瀬航也(ひろせこうや) 尚絅学院大学全学類教養教育 非常勤講師
廣󠄁田龍平(ひろたりゅうへい)東洋大学生命科学部 非常勤講師
前田奎(まえだけい) 京都先端科学大学教育開発センター 講師
増地ひとみ(ますじひとみ) 愛知淑徳大学初年次教育部門 助教
松岡昌和(まつおかまさかず) 大東文化大学文学部 非常勤講師
松川雄哉(まつかわゆうや) 南山大学外国語学部フランス学科 講師
松木優也(まつきゆうや) 京都先端科学大学教育開発センター 嘱託講師
松本知子(まつもとのりこ) 神戸大学大学院人文学研究科 研究員
松本望希(まつもとみき) 大阪成蹊大学芸術学部/近畿大学理工学部 非常勤講師
松山響子(まつやまきょうこ) 駒沢女子大学人間総合学群人間文化学類 准教授
湊邦生(みなとくにお) 高知大学地域協働学部 教授
宮内洋(みやうちひろし) 群馬県立女子大学文学部 教授
宮平隆央(みやひらたかお) 沖縄キリスト教短期大学保育科 講師
村上一基(むらかみかずき) 東洋大学社会学部 准教授
村上舞(むらかみまい) 西南学院大学外国語学部 非常勤講師
モリ、アルベルトゥス=トーマス(もり、あるべるとぅす=とーます) 立命館大学大学院先端総合学術研究科
初任研究員
森薫(もりかおる) 埼玉大学教育学部 准教授
矢田訓子(やださとこ) 川村学園女子大学教育学部児童教育学科 准教授
矢吹康夫(やぶきやすお) 立教大学社会学部 助教
山崎玲美奈(やまざきれみな) 早稲田大学、フェリス女学院大学、上智大学グローバルエデュケーションセン
ター他 非常勤講師
横田祐美子(よこたゆみこ) 立命館大学衣笠総合研究機構 助教
吉沢晃(よしざわひかる) 関西大学法学部 准教授
綿貫哲郎(わたぬきてつろう) 日本大学商学部 非常勤講師

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編著者プロフィール(50 音順)

大嶋えり子(おおしまえりこ) 1984 年東京都生まれ


金城学院大学国際情報学部 講師
専攻はフランス政治、国際関係論、移民研究
主著に『ピエ・ノワール列伝』(パブリブ)、「フランスにおける『共同体主義』とはなにか—共和国モデルの聖性と背教—」
(『多文化共生研究年報 』第 17 号)など

小泉勇人(こいずみゆうと) 1983 年大阪府生まれ


東京工業大学リベラルアーツ研究教育院/外国語セクション・リーダーシップ教育院 准教授
専攻は英国初期近代劇およびその映像化作品、アカデミック・ライティング教育、映画を活用する英語教育
主著に『現代映画の台詞で鍛えるリスニングスキル』(音羽書房鶴見書店)、共著に『シェイクスピアの広がる世界』(彩流
社)、『文章チュータリングの理念と実践』(ひつじ書房)など

茂木謙之介(もてぎけんのすけ) 1985 年埼玉県生まれ


東北大学大学院文学研究科 准教授
専攻は日本近代文化史、表象文化論、日本近代文学
著書に『表象天皇制論講義』(白澤社)、『表象としての皇族』(吉川弘文館)、編著に『怪異とは誰か』(青弓社)など

遠隔でつくる人文社会学知―2020 年前期の授業実践報告―
ISBN 978-4-600-00519-1
2020 年 10 月 31 日 初版 発行

大嶋えり子
編 小泉勇人
茂木謙之介

発行者 大嶋えり子
——————————————————
〒463-8521
愛知県名古屋市守山区大森 2-1723
金城学院大学 大嶋えり子研究室

発行所 雷音学術出版
電話:052(798)0180(代表)
Email:lionpress.jp@gmail.com
装幀 茂木謙之介
印刷・製本 東誠社
雷音学術出版

ISBN978-4-600-00519-1
定価 0 円
雷音学術出版

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