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時 輪 タ ント ラ成 立 に闘 す る 基 本 的 課 題

羽 田 野 伯 猷
ント ラ 一萬 二 千碩 を さ い、 これ から 要 抄 い た ラグ タ ント ラ 三
一 (1)
千頚 が 、 現 存 の時 輪 で あ る と傳 承 せら れ て ゐ る。 この時輪 聖
錯 雑 せ る イ ンド 及 び チ ベット の タ ント ラ 佛 敏 を体 系 的 に 一 典 の教 へ、 も いく は時 輪 を 権 誰 と い て展 開 いた 教 へを 、 い ば
貫 い て把握 す る た め に、 種 々な る 角度 か ら す る多 く の操 作 を ら く 便 宜 的 に時輪 教 と名 づ け た い。 この廣 義 に おけ る時輪 教
必 要 と す る こと は、 あ ら た め て論 ず る ま で もな い。 そ い て こ を 構 成 す る契 機 とい て、 聖 典 の ほか に、 最 少 限 度 に お い て、

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の目 的 の た め に、 か や う な タ ント ラ佛教 を構 成 す る、 い か も
次 の 二種 を 指 摘 い て お かば な ら ぬ。 そ の第 一は、 教 學 的註 繹
い ろ いろ の意 味 に お いて そ れ ぞ れ の領域 を代 表 す る特 定 の重
書 群 、 い はゆ る チ ベット語 のBsad-bab で あ る。 そ の基
要 聖典 を と り あ げ、 そ の成 立 展 開 流 傅等 の實 態 を追 求 い、 も
本 的 か つ代 表 的 な も のが 、 ﹁無垢 光 Vla-pra No 845
つ て そ の文 化史 的 意 義 に 及 ぶ と いふ方 法 は、 省 略 す るを えな
1
34﹂7で 、 阿 書 は傅 読 的 な 著者 とそ のす ぐ れ た 内 實 と によ つ
い基 本 的 手績 でな け れ ばな ら ぬ。 か や う な 一聯 の手 綾 の第 一
着 手 と い て、 筆 者 ばま つ表 記 の課 題 を と り あげ 、 これ に次 い て、 聖 典 に準 する 構 威 を え 、 も つ て時輪 教 學 を 代 表 い 猫 占 い
で、 そ の 流傅 の實 情 を 探 究 い て み た いど思 ふ。 てゐ る と い つ ても 過 言 で はな い。 これ に封 い 、 第 二 は 實践 的
時 輪 タ ント ラ、 も い く は 輩 に時 輪 と も いふ は、 ﹁最 勝 本 初 教令 書 群、 いは ゆ るMan-na Gds-nagで あ る。 か か
佛 より 要 抄 せ る吉 祥 時輪 な る タ ント ラ王Paramdho- る教 令 的 論 疏 の多 く は、 と く に成 就 法 を とり あげ て課 題 とす
ddhrta-srikakra-t
naN
moa,
-3t6
a2tra の略 る。 そ れ は成 就 法 が 時 輪 に限 ら す タ ント ラ佛 教 の核 心的 重 要
稻 で あ る。 この場 合 の ﹁最 勝 本 初 佛 ﹂ と は、 いは ゆ る根 本 ク 課 題 を 形 成 い てゐ るが ゆ ゑ に、 け だ レ 當 然 で な け れ ば な ら
ぬ。 こ の教 令 は、 特 定 の立場 態 度 から す る見解 ・教 誠 ・指 示 ル ポ 及 び サ ンゲ ーギャムツォーの 歴 史 書 の記 述 に も と づ き、
・規 定 等 を 含 み そ れ ぞ れ 猫自 の存 在 理由 を 主 張 い てゐ る か に 時 輪 の ﹁シャンバ ラ國 ﹂ を ヤ ク サ ル テ ス河 の 北 方 地域 に 比定
み え る。 か や う な 教 令書 の多 く は、 既 成 的 な も の と の調 和 融 い、 これ を そ の起 源 地 と い、 時 輪 の成 立 年 代 を 西 暦 九 六 五 年
合 を 示 い つ 叉、,
い か も新 ら い い展 開 と 傳統 を形 成 い、 強 い生 に 換算 い 、 そ の ころ イ ンド に輸 入 せ ら れ、 や が て ヵ シミ ー ル
命 力 と浸 透 力を 恵 つ て流 布 い 、時 輪 教 の重 大な 領 域 を 形成 い を 経 て、 西 暦 一〇 二 五年 チ ベット に紹 介 せ ら れ 、 そ の 教義 の
た 。 ゆ ゑ に時 輪 教 の實 践 と 流 傳 の生 態 把 握 にと つて も看 過 い 特 質 を 本 初 佛 体 系 にあ り と 指摘 い、 も つ て學 界 の注 意 を 喚 起
えな い重 要 性 を も つ て ゐ る と い ふ べき で あ る。 い た ので あ る。 そ れ 以 來 、 イ ンド、 チ ベット の タ ント ラ 佛 教
さ て、 こ の時 輪 敏 は、 イ ンド の タ ント ラ佛 教 展 開 の末 期 を に關 読 す る學 者 に い て時 輪 に言 及 い な いも のは ほ とん ど あ り
代 表 す る 総 決算的 所 産 と い て、 イ ンド佛 敢 史 上 之 れ に無 關 心 え な い と い つて も よ い情 況 で あ る。 そ い て、 そ れら も ろも ろ
た るを 許 さ れ な い。 加 之、 回 教 イ ンド 教 と の交 渉 に お い ても の 學 者 の努 力 は、 ノ・ンド學 の進 歩 と相 侯 つ て、 次 第 に時 輪 の
認識 を ふか め た と は い へ、 そ の研究 な、 いま な ほ そ の長 い道
興 味 あ る課 題 を 提 供 い 、 從 つ て、 イ ンド 文 化史 の理解 と いふ
程 の ほん の出 嚢 瓢 に立 つ て ゐ るに 外 な ら ぬ と い つ ても 過 言 で
観 瓢 から し て、 充 分 そ の重 要 性 を み とめ ねば な ら ぬ。 い か い

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はな い。 いま だ 最 も 基 本 的 な 性格 の非常 に重 要 な 多 く の事象
て 、チ ベット にお け る そ の重 要 性 は 、も は や決 定 的 であ る と い
に つ い て、 非 常 な 不 正確 性 と無 秩 序 性 が 支 配 い て ゐ る の みな
つ ても 差 支 へな い。 チ ベット文 化 の 顯 著な 特 性 を 構 成 す る タ
ら ず 、 事 象 認 識 の室 白 的 鉄如 す ら稀 で な い。 か や うな 事 情 に
ント ラ佛 教 の最 高樺威 と い て の評債 を え、 超 宗 派 的 信 奉 を え
鑑 み て 、 時輪 に關 す る基本 的 な課 題 から 出 磯 す る再 槍 討 も、
て 現在 に 及 び 、 加 ふ る に 、 暦 學 、 占 星 兆 相學 書 と い て も、 ラ
マ教 圏 の生 活 文 化 に 深 く 浸 透 い てゐ る ので あ る。 ま た 免 るを え な い必 要 事項 で な け れ ば な ら ぬ。
い か い て、 か く 研 究 を 阻 碍 い た最 大 の 原 因 の 一は、 な ん と
か や う な 重 要 性 を も つに も か 叉わ ら す、 こ の時 輪 教 研 究 の
現 歌 は 、 必 す い も満 足 す べ ぎ 學 的 成 果 を お さ め て ゐ る と は い い つ て恵 研 究 資 料 に存 す る こと を 否 定 い え な い。 お よ そ 時輪
ひが た い。 も つ とも 、 時 輪 が はじ め て學 界 に紹 介 せ ら れ た の 研 究 の基 本 文 献 た る時 輪 タ ントラ、 無 垢 光 等 の ご とき 、 そ の
は、 今 を 去 る百 十 敷 年 以 前 に さ か の ぼり え て、 決 い て新 い い 原 典 の マ ヌ スク リ プ ト が畿 見 せら れ て ゐ る にも 拘 ら す 、 いま.
(2
)
でき ご と で は な く、 チ ベ ッL 學 の 開 拓者 チ ョー マ ・ド ・ケ レ だ そ の出 版 を えす 、 チ ベット 課 に依 存 する の 外 は な い。 さら
スの紹 介 に はじ ま つ て ゐ る の であ る。彼 は チ ベット人 ベ マカ にて この チ ベット課 も 、 これ を 利 用 いう る 可 能 性 は、 き は め
時 輪 タ ンド ラ成 立 に關 す る基 本 的課 題
密 教 文 化
て小 範 園 の人 汝に限 定 せら れ て ゐ る。 そ い て、 い ぼ い ば非 常 (Grub-mthh gsaahi me-lon ) JASB 1882
に有 効 か つ便 利 な 手引 を 鼠ハへ てく れ る チ ベット 人 の著 作 も ま (H) SCHLAGINTWEIT E ,Die Berng der Lehre
Strritschrift zur Berichtigung der
た同 断 で あ つ て、資 料 を撰 揮 い、 そ の記 述 に批 判 を加 へ、 も
Chornologie verfasst im Jahre 1591
つで 學 術 的 虚 置 を加 へう る 飴 地 を ほ と んど 所 有 い えな か つ
tibhadra AbayA xx Bd Abth 1897
た 。 か やヶ な 原 因 に支 配 ぜら れ て、 從 來 の研 究 は、 比 較 的 後
のご とき が、 主 嬰 典 隷.
であ つた。 これ ら は 十 六 ぴ七世 紀 以 降 の著
世 の チ ベット 人 の 手 に な る著 作 の、 い か も断 片 的 記述 に権 誰
作 であ り、し か も時 輪 に關 す る漸 片 納 散 読 を も つに すぎ な い。これ
を 委 ね る のや む な き 歌 態 にあつ た の であ る。 そ い て、 そ れ ら ら が史 實 に必ず しも 忠 實 で な いこと は、 時輪 の年 代 等 に つ いても
の記 述 は、 宗 教 的 感 情 や要 求 に ょ る更 實 の歪 曲 、 或 は傳 読 と 同噺 であ る。 歪 曲混 観 の 一例 とい て、 ナ ーラ ンダ に おけ る大 小 時
,史 實 の混齪 、 傳 承 の作 意 的 創 作 を 多 分 に含 み、 第 一次 的 資 料 足 の法職 に お いて、 本 來 そ の論 敵 は 軍 に大 勢 の學 匠 と せら れ て ゐ
と い て の債 値 を 到底 み とめ え な いも のも 勘 風な い。 ※ る にす ぎ な いが、 (A) は チ ル パ と ナ ー ローパ の 封職 とし 、 或 は
(H) は 大 小時 足 を テ ィリ ッパ 、 ナ ー ロー パ に比 定 し、 (
D )は
※ ︹チ ヲーマ・ド・ケ レスは、(A) チ ペット人 ペ マカ ルポの歴史書 に
大 時 足 の 弟子 を ナ ー ロー、 ア ワ ド ゥー テ 、 小時 足 とな す が ご と
もどづき ﹁時輪及 び本初佛体系 の起源 についての畳書﹂ (JASB
き で あ る。 し か の み なら ず 、 噺 片 的 な 記 述自 体 が如 何 に誤 解 を生

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Vol.I.1883.p.57.Rnt JB Vol.19
)12
じ たか に つ いて は、 次 第 に明 ら か に せら れ るで あ ら う己
を、 さら に、(B)デ セ ・サ ンゲ ーギ ャムツォー著 ブイドゥτルヤ
カルポ にもZづき ﹁チ ベッド編年表﹂ (
OGR OAFMMTAHR
E か や う な 實情 に 鑑 み、 筆 者 は 當 面 の課 題 を 、 主 と い て次 の
TIBETAN LANGUAGEを登 1表8い
3た4。)そ の外 に や う な 著 作 に依 存 い て究 明 い てゆ ぎた い と思 ふ。
(C
)Schiner Tatha Geschte des Bumus A 、 無 垢 光 、No 845 1347
St
.Peterrg 1896
B 、 プ ト ン作 ﹁時 輪 史 ﹂、本 名Rgyud-sdehi zab-
(
D)Grunwedel aA TATS ESELMINE
hbued rin-chen gces-pahi sde-
PETROGRAD 1914 .
(西 暦 一
二二 九 年 著 作 )
(E
)Sarra Das PAG SAM JON ZG BY
SPA-KPO Catta 1980 (Fife of C 、 グ ー ・ ショ ン ヌ ベ ー 作 ﹁青 丹 .
﹂ 十 五巻 、 と く に そ の第
Sua-khpo and his gy of Tet(Rehu- 十 巻 ﹁時 輪 章 ﹂︾
"Deb-ther snon-po-las Dus
mig
).JASB.189 (G )Cion of Tibet lohi skabs No (西 暦 -四 七 八 年 著 ) 、
A書 は、 時 輪 の編 纂者 第 一代 カ ルキ ・文 殊 の化 身 ヤ シャ王 所 傳 に よ る時 輪 傳 統 史 を傳 へ、 わ れ わ れ の課 題 に新 認 識 を 寄
(Kalki Yasga Rigs-Id)
aにn次 ぐ第 二 代 カ ル キ・ 與 す る と ころ が勘 くな い。 筆 者 は い ば い ば B書 の外 に、 同 人
観 音 の化身 プ ンダ リ、 ー カ王 (PundarikaPadma)と の諸 著作 、 と く に ﹁無 垢 光荘 嚴No 45﹂
8に3も そ の論 述 を負
(3
) ふ た。 同 書 は ﹁無 垢 光 ﹂ の 要 抄 的 解 明書 と い て、 チ ベット に
自 稽 す る 人 物 に よ る (無垢光 ・第 一品第三章等)約 四 七 〇 枚 か ら
な る 大 著 作 で 、 これ が時 輪 教 に お い て しめ る位 置 に つい て は お い て重 要 硯 せら れ 、 い はゆ る新 義 を 出 いた のも 、 同 書 に お
先 述 し た。 こ の書 が イ ン下 の所 産 な る に封 い, B ・C は と も い て 璽 あ つ た。
に チ ベット人 の手 にな るも ので あ る。 C は全 十 五巻 約 五〇 〇 枚 か ら な る 膨 大 な著 作 で、 チ ベット
B の著 者 プ ト ン (AD 1290-
)1は
3、6い
4はゆ る ﹁プ 下 ン 佛 教 史 書 と い て最 も 學 術 性 に富 む 白 眉 書 た る こ と は、 チャー
(7
)
の佛 教 史 ﹂、 ﹁チ ベット 大藏経 目 録 ﹂ の作者 と い て 、 す で に わ ルズ ・ベ ルの指 摘 以 來 、 一般 的 承 認 を え て ゐ る と こ ろ で あ つ
れ わ れ に親 い い。彼 の顯 密 爾 教 に わ た る多 種 か つ多 量 の著 作 て、 さら に多 く の言 を 費 す を 要 いな い。 この第 十 巻 は、 ま さ
は、 そ の該 博 な 知 識 と卓 越 い た 識 見 を 示 し、 チ ベット に お い (
)8
い く、 時 輪 傳 統 史 を 扱 つた も の で あ る。
て名 實 と も に最 高 の躍 匠、 権 威 者 と し て の奪 敬 と評 債 を え た プ ト ンの諸 歴 史典日及 び し ション ヌペ ー の青 丹 の ご と き は、 チ

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一人 で あ る。 時輪 學 匠 と い て の彼 は 、ヂ ョー ナ ン派 のド ェーボ ベット に お い て 比 較 的 高 い 評 債 を え て ゐ る と ころ の 諸 歴 史
パ ・シ ーラ プ ギャンツ ェン (Dol-bo-pa Ses-rab
書 、 た と へ ば ﹁グ ラ イ 五 世ゲ ーラ プ﹂、 ﹁ワイ ドゥー ル ヤ カ ル
()4
AD
) 1299-13 と6
と1も に、 ﹁ブ ・ド ェー 爾 人 ﹂ な る 名構 を ポ ・ヤ ー セー﹂、 ﹁パ ク サ ンヂ ョンサ ン﹂ 等 が、 そ れ を 模 謹 と
も つ て、 チ ベット にお け る 時輪 の二 大椹 威 か つ 功 勢者 と せ ら い、 そ れ に依 存 い て ゐ る事 實 に よ つ て、 われ われ の可 能 範 園
れー(青 丹 一〇ノ 一及 一〇)、時 輪 の 二大 流 派 ト ー、 ラ ワー雨 流 を に おけ る チ ベット 歴 史 書 の最 高 の椹 威 書 と み とめ て 差 支 へな
(5
)
兼 學 い 、 繹 義 にお い て新 義 を出 し 、時 輪 に 一派 を 形 成 した 。 い で あら う 。 いか る に、 こ のA B C 三書 とも に未 だ そ の内 容
著 名 な ツォン カバ、 ケ ートゥプ ・ゲ レ ベ ーザ ンポ の ご と き、 を 紹 介 せら れ た るを き か な い。 ゆ ゑ に、 これ ら の記 述 を紹 介
(6
) い つ 叉、 當 面 の課 題 に論 を す 叉めた い と思 ふ。
ま さ に プ ト ンの 系統 に おけ る時 輪 學 匠 で も あ つた。 か や ケ な
プ ト ンに特 輪 關 係 の著 作 とい て 四 十 部 を 数 へう る が 、B書 は 、 (1)最勝 本初佛云 々の最勝 とは現究寛菩提 の特相たる不愛 の大樂。
いは ば時 輪 入 門 書 とも い ふ べ きも の で、 ト ー、 ラワー爾 流 の これをも つて初中後を離れ、
本來成佛 してゐる のが本初佛 の謂ひ。
時 輪 タ ント ラ成 立 に關 す る基 本 的 課 題
密 教 文 化
こ の所 詮 性 とし て の本 初 佛 を 能 詮 し た のが根 本 タ ント ラ。 換 言 す (8)プ ト ン の傳 記 書﹁
とし て ﹁ク ス マ ンヂ ャリ ーNo 47﹂
96が 存 す
れ ば、 最勝 本 初佛 と は根 本 タ ント ラ 一萬 二千 碩 を さ い、 る。岬これ は彼 の生 存 申 サキ ヤ汲 で製 作 せら れ、 後 に高 弟 タ ッ ェパ
・リ ンチ ェ ンナ ムゲ ーが 補遺 し た も の。 プ ト ンの署 書 は タ ッ ェパ
"uddhrta と はか そ の過 不 足 な き要 抄 の意 昧 と せ られ る (時
輪 史 ・四 三枚 )。 本初 佛 の理解 に注 意 す べき であ る。 のそ れ と共 にプ ト ン全書 と し て本 學 の所藏 す る と ころ。 こ の全書
(2)BENDALL CATALOGUE OF THE BUDDH
TIS は 二八秩 六六 九 部 か ら な 汐、 ダ ラ イ 十 三 世 の糞願 に より 開 版 せ ら
MSS P 69 HARA PRASAS SHASTRI DESC れ た も の。 プ ト ンの傳 記 の詳 細 は別 に嚢 表 の用意 を も つので、 そ
CATALOGUE OF SKT MSS IN THE GOVERMENT れ にゆづ り た い。
COLLECTUIB P 73 161 シ ョン ヌペ ー の濁 立 の傳 紀 書 を み る をえ な いが、 パク サ ンジ ョ ン
(3 )Yasa pundaiika な る サ ン ス ク ット へ の 還 元 は 、 シ サ ンに や 玉詳 しく 、 又青 丹 ・十 五巻 の各 腱 に そ の學 系 を 自叙 し、
ャ ー ス ド リ の目 録 の ポ ス ト コ ロ フ ォ ンを チ ベ ット 課 無 垢 光 の そ れ 時 輪 學匠 と し て の活躍 は、 青 丹 一〇 ノ 二 八枚 以下 に叙 べら れ て ゐ
と 封 比 し て え た 。 從 來 の 學 者 の 還 元 と,
は 必 ず し も 一致 し な い。 特 惹。 こ の部 分 は後 人 の補 遺 で あ る。 こ の爾 人 の時 輪 史 の大 部 分 は
に カ ル キ な る 還 元 は 後 の 論 及 に 重 婁 な 關 係 を も つ。 こ の チ ベ ッ ト チ ベ ット のそれ に五
贋 され、 イ ンド のそ れ に つ いて は、 必 ず し も 吾
語Rigs-ldを
an學者は Kulikと
a還 元 す る。 も と も と、 こ れ 人 の要求 を充 た しえ な いが、 爾 書 の目 的 が 、 本來 チ ベット のそ れ
に存 す る 以 上、 やむ を え な い。

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は 金 剛灌 頂 を う け、 同 一の種 性 と な つた も の 民意 昧 であ る (
無垢
光 一ノ 三章 )
。 し か し、 上 記 のポ スト ロフ ォ ンは カ ル キ とな し、

無 垢 光三 八 七枚 、 時 輪 第 二品 一五 二碩 等 も ヴ ィ シ ュヌ の第 十花 身
カ ルキ を チ ベ ット 課 し てRigs-ldと
aなnす。 よ つて、 ク リカ と
さ て、 時 輪 の 成 立 に つ い て、 學 者 の と り あ げ た 課 題 と そ の
なす を妥 當 でな いと考 へる。
見 解 は 、 チ ョー マ ・ド ・ケ レ ス の 提 唱 の 線 を 殆 ん ど 出 て ゐ な
(4)Obermil
はlヂeョ
rー ナ ン派 の建 設者 と す る(Acta Qri
い の を 通 常 と す る。 も つ と も 、 時 輪 を も つ て 本 初 佛 体 系 の 嗜
vol IX p 10
ル6か)し、 第 四代 の佳 持 と なす を 正 賞 と す る。
(
青 丹 一〇 ノ、
一〇) 矢 と い 、 そ の特 質 的 体 系 と す る 意 見 は、 す で に栂 尾 鮮 雲 氏 、
(5)無 垢光 蕪 嚴 ・六 八枚 、 ワ ッデ ル、 ヱリ オ ット の 諸 氏 に よ つ て 否 定 せ ら れ た が 、 い か
(6)青 丹 ● 一〇 ノ 一九 ・二〇 枚 、 な ほNo 4854 4等
7諸86
聴聞録 い 成 立 年 代 を 九 六 五年 も い く は そ れ にき わ め て近接 せ る 十 世
を み よ。 紀 と な い 、 起 源 地 を ヤク サ ル テ ス の北方 地 域 に 比 定 す る のを
(7)橋 本光 賓 氏 謬 ﹁西藏 の剛 嚇 教 ﹂ 西 藏贅 料 。 も つ て 、 い ま な ほ 學 界 の 通 読 と み な い う る。 ラ ウ フ ェル の こ
と き 、 時 輪 の六 十年 周 期 法 を 根撮 とい、 中央 ア ジ ァ、 干 聞 起 るが 、 そ の大 要 は次 の やう であ る。
源 読 を 誼 明 い よ う と い た。 こ の提 唱 は 一般 的 承 認 を え、 多 く ﹃佛 浬葉 の 二年 前 、 シュリ 聖 カ タ カ ンヤ に お い て、 金 剛 手
の學者 は も と よ り ヱリ オ ット、 ワッデ ル の ご と き も こ の例 外 の化 身 スチャンド ラ王 (Sucandra zl
)a一
が、 シ ータ
で はあ り 乞 な い。 ヱリ オ ット の鞠ご 妻 き中 央 ア ジ ァ を も つ て、 河 の北 方 、 シャンバ ラ 國 を は じ め とす る 九十 六大 國 の人 汝
佛 教 とト ル コ的 理 念 の混 合 地 と し、 本 初 佛 思 想 の 起 源 地 を を 化 度 せ ん が た め、 時 輪 の根 本 タ ント ラ を 請 問 し、 一萬 二
も、 こ 叉に 求 め ん と い て ゐ る。 唯 、栂 尾 氏め み は 例 外 と い 千頚 とな い、 根 本 大 註 繹 と と も に シャンバ ラ 等 に 流布 い
て、時 輪 の中央 ア ジ ア起 源 読 に賛 意 を 表 い てを ら れ な い※。 た 。 スチャ ンド ラ王 に つ い で、 ヤ ー マ ンタ ヵ の 化身 を は じ
め と す る 五人 の王 が 相 次 い で、 そ れ を 相 承 い 六 百 年 を 経
※B Laufer ZUR BUDDHISCHEN LIT
UIGUREN T OUNG PAO 1907 S 403 APLI 過 いた 。 この と き シャンパ ラ 國 に 第 六 代 ヵ ルキ .文殊 の
OF THE TIBETAN CYCLE T OUNG PAO 1913 化身 ヤ シャ王 が出 生 い た 。 彼 は 佛 世尊 の授 記加 持 力 に よ つ
ELIOT HINDUISM AND DUDDHISM Vol I 129 て、諸 仙 を成 熟 す べ き時 に 到 つた こと を知 り、 シ ャンバ ラ
Vol I p 386 も
(Sambha
)l國aカラ ーパ城 市 の南 マラ ヤ遊 園 の中 央 に存 い
栂尾膵雲氏 ﹁理趣経 の研究﹂ 四六七頁以下、 同秘密佛教 史 ・七五

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た スチャン,
ド ラ 王 の製 作 に か 叉る 世 尊 時輪 の マ ンダ デ に 、
頁以下
梵 天 の徒 、 ヵ ーパ ー リ ヵ等 を はじ め どす る各 國 の行 者 を 集
い か い て、 か や う な 見解 が、 先 に い る いた ご とく チ ベット 合 せ い め た。 そ の最 大 の目 的 は、 彼 ヤ シャ王 の 後 、 八 ○ ○
人 の断 片 的 記 述 に依 存 い た に と 吏ま り、 充 分 な 討 究 を へて ゐ 年 に い て メ ッヵに興 起 す べき 回教 の流布 に よ り、 こ 叉 シャ
な い とと は論 を ま た な いo ゆ ゑ に、 わ れ われ の手 績 と い て、 ンパ ラ に お け る婦 女 子 に い 花 る 一切 の も の が、 回教 化 い、
まつ 時 輪 及 び 無垢 光 の記述 に も とづ き 、 時 輪 成 立 の基 盤 的 考 そ の法 を 読 く に いた る。 梵 天 ・ヴ ヨシュヌ隅 シヅ教 徒 の子 孫
察 を 試 み な サ れ ば な ら ぬ。 か や うな 手績 ば 、 冗 長 煩 雑 のそ し と い へど も そ の例 外 で は あ り え なく 、 か やう な 回教 化 を 未
り を 免 れ え な いと い て も、 回避 す るを えな い基 本 的 操 作 でな 然 に防 止 せ ん とす る封 策 と い て 穿あ つた。 こ のた め、 ま つ
け れ ば な ら ぬゆ 灌 頂 を 與 へ、 殺 生 の法 を 禁 止 せ いめ ねば な ら ぬ。 この殺 生
さ て、 無 垢 光 は時 輪 タ ント ラ の記 述 を 註 繹 い 、 時輪 製 作 の の法 を 契 機 とい て回 教 化 が お こな はれ るか ら で あ る。
動 機 及び そ れ に關 聯 い て い はゆ る シャンパ ラ 國 に言 及 い て ゐ、 も とも と、 回 教 に お い て は、 そ の神 く勝神日窪 9。 の眞 言 を
時 輪 タ ント ラ成 立 に關 す る基 本 的 課題
密 教 丈 化
も つ て獣 類 を 殺 い、 神 に供 犠 い、 生 肉 を食 ひ、 死 肉 を食 さ す るも の で あ るが 、 さら に第 一品 一五 九 頚 以 下 で は、 回 教 の
な い。・これ ばヴ ェーダ の法 と 一致 い、 梵 天 ・シヴ ・ヴ ィ羽ユ イ ン下 蒲 捲 を の べ、 そ の撲 滅 を も つ.
て時 輪 最 大 の悲 願 と い、
ヌ教 徒 の模 誰 とす る と ころ で あ る。 ヴ ェーグ に、﹁神 は 供犠 こ の悲 願 の達 成 を ヴ ィシュヌ、 シブ の 協 力 に よ る 聯 合 軍 の結
のた め 生類 を 顯 現 せり ﹂ とも い ひ、﹁神 と 父 組 の た め に殺 生 成 に か け て ゐ る。 さ ら に ウ ック ラ ン トラ に いた れ ば 回 教 勢 力
い、 彼 ら を飽 満 せい め ん が た め 、 そ の肉 を 食 す る に何 の過 に躁賄 せら れ つ 叉あ る イ ンド の 惨 欺 を 如 實 に 描 き 出 い てゐ
失 あ ら ん や﹂ と も い ふ。 こ の回 教 とイ ンド 教徒 に共 通 な る る (No 363 fo)
l。 然1り4と
2すfれ ば、 シャンバ ラ國 と は輩
権 謹﹁
は、 そ のま ﹂刹 帝 利 の法 で も あ る。 か く て 一切 が殺 生 な る假 想 國 に外 な ら ず 、 時 輪 の製 作 も 、 イ ンド が回 教 に躁 躇
の法 を構 誰 と す る こと に よ つ て回 教 化 す る であ ら う 。 これ . せ ら れ つ 叉あ り、 そ の恐 怖 に職 傑 い つ Lあ つた 時 代 に、 そ れ
を 未 然 に 防 止 す る た め、 ま つ殺 生 の法 を 捨 て、 金 剛 灌 頂 を と の封 決 に迫 ら れ て要 請 せら れ た も のな る こと を 有 の援 引 文
う け よ と命 す る。 い か る に梵 天 、 シザ 、 ヴ ィシュヌの徒 は、 か ら 理解 い て差 支 へな いで あ ら う。 實 にイ ンド に氣 い て回 教
目 己 の種 姓 の法 を捨 て る を肯 ん ぜ壷 イ ンド に 退 去 せ ん と す と の封 決 が 要 請 せ ら れ た のは 、 タ ー ラ ナ ー タ、 パ ク サ.
ンヂ ョ
る。 よ つ て ヤ シ々王 は 漁 通 力 を も つて そ の逃 亡 を阻 止 い、

ンサ ン等 も す で に報 じ て ゐ る や う に、 母 タ ント ラ の成 就 者 以
マンダ ラ にょ び か へす ゆ て 叉に 竜 い て、 ヤ シャ王 の 威 力 に

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來 の課 題 で あ つた。 お よそ 時 輪 が イ ンド の タ ント ラ佛 教 の歴
畏 服 い た 梵 教徒 等 が、 五無 間 成 佛 を 読 く時 輪 を 要 抄 い て教 史 的 所 産 な る こ と は、 後 に論 及 す る経 典ハ
畿 達 史 上 の位 置 や そ
示 せ ら れ ん こと を 願 ふ。 よ つ て ヤ シャ王 は根 本 タ ント ラ 哺 の教 理 の構 造 性 格 か ら い ても 疑 ひ の鯨 地 が な い。 い か い て、
萬 二 千頚 を 三 千頚 に 要 抄 い て、 彼 ら に教 示す る。 これ が 現 中 央 ア ジ ア から イ ンド に時 輪 を ば將 來 い た と なす 從 來 の學 者
存 の いはゆ る時 輪 ラグ タ ン・
トラ で あ る。 の読 は、 上 記 の無 垢 光 の記述 の中 か ら軍 に ﹁シ ータ河 の北 方
有 のヤ シャ王 に引 織 ぐ 第 二 代 カ ル キ ・観 一音 の化 身 プ ング シャンバ ラ國﹂ な る 部 分 の みを 援 引 い、 そ れ か ら 時 輪 が將來
リ ー カ王 が 、 佛 の授 記 の加 持 力 に よ つ て、 根 本 タ ント ラ に - せら れ た と紹 介 す る チ ベット入 の著 作 に 眩 惑 せら れ 、 そ れ を
随 順 い て、 ラグ タ ント ラ の註 繹 ヴ ィマラ プ ラ バ ー 即ち 無 垢 典擦 と い て、 假 読 を 打 立 てた も の に外 な ら な い。 竜 と も と こ
光 を 作 る。 この佛 授 記 のプ ンダ リ ーカ 王 こそ私 で あ る﹄ の室 想 國 の位置 も 必す い も 一定 し て考 へら れ て ゐ る わ け で は
と いふ (無垢光 ・第 一品第 三章、 第五晶あ とがき、時輪史二七枚 )
。 な く 異読 が多 い。 た と へば、 時 輪 第 一品 に精 細 な 世界 構 圖 を
紹 介 い て ゐ る が、 こ 叉で は 無 垢 光 の 記 述 と 必す い も 一致 せ

有 は時 輪 第 一品 三、 一○ 、二 六、一四 八- 一五 八頚 等 に相 慮
す 、 カ イ ラ ーサ山 を 中 心 とい そ の南 牛 に シャンバ ラ を 位 置 せ な ら ぬ。 時 輪 の暦 法 の由 來 に つ い て、 無垢 光 の語 る大 要 は次
い め (一五〇碩)、 イ ンド人 の傳 承 も 、 時 輪 を 南 方 か ら 將 來 い の やう で あ る。
た と主 張 す るも のも 存 す る か ら で あ る。 お よ そ、 シャンバ ラ ﹃第 一代 カ ル キ ・ヤ シャ王 の後 八 ○○ 年 に い て、メ ッカ の國
國 の構 想 は、 ヴ ィシゴ ヌ教 の そ れ か ら の 借 用 と推 定 い て よ い バグ ダ ッ下等 の 城 市 に 回教 が隆 盛 とな り 、廣 く 流 布 す る。
で あら う 。 ヴ ィシュヌ の十灌 現 の中 、 第 九 を 佛 陀 、 第 十 を カ シー タ河 の南 方 一切 の國 土 に お い て、 諸 ティー ルタ の 暦 學
ルキ とす る は、 周知 の こ とで あ る が、 こ の第 十 の カ ルキ こそ 書 シッグ ー ンタ が 嚢 滅 し、 從 つ て、 暦 の綱 要書 カラ ナも 不
未 來 の第 四 ユガ 期 に お い て シャンパ ラ ・
グ ラ ー マ (Samb- 明瞭 と な る。 暦 學 の衰 滅 に よ り天 体 の蓮 行宿 曜 を知 悉 い え
gram)
aに出 生 い 、邪 悪 者 を 破 滅 せい め 、 世 界 を 救 濟 す べ き な く な る 結 果、 いは ゆ る 占 星 術 ヂ ャー タ ガも 意 味 を な さ
も の と せら れ る。 こ の佛 、 カ ルキ、 シャンバ ラ の 一聯 の構 想 す 、 敵 を降 伏 す る手 段 も 不 可 能 で あ る。 い か る に回 教 紀 元
が そ のまー ﹁八 二年 に第 十代 ヵ ルキ が、 い はゆ る ラグ 方ラ ナを 制 定 し
ム時輪 に借 用 せ ら れ た に 外 な ら ぬ こ とは 、 時 輪 及 び
無 垢 光 の他 の箇威 等 によ つ ても 充分 保 誰 せら れ る の で あ る。 暦 法 を 明ら か にす る。 これ に よ つ て、 敵 擢 破 ・回 教 撲 滅 法
そ い て、 佛 か ら の傳統 的権 威 を 承 認 せい め え な い ほど 後 世 の の根 擦 が與 へら れ る。 い か し て、 そ の實 現 は遠 い未 來 で は
経.
作 者 が、 そ の 脛 典ハの 傅 統 相 承 を イ ンド 以 外 の 假 想 國 に求 あ る が、 第 廿 六代 ヵ ル キ ・ルド ラ 王 が果 た す﹄ (時輪第 一

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め 、 も つ て、 そ れ か ら の將來 を読 き、 経 典 を権 威 づ け よう と 品二六、 二七類、無垢光 ・第 一品第九章、無垢光荘嚴十六枚以下)
い た の は、 時輪 に限 つ た こと で は な い。 む い ろ、 わ れ わ れ と授 記 い て ゐ る。
は、 か や う な ヴ ィシュヌ的 外 装 を .
も つ てイ ンド 教徒 に 訴 へ、 も と も と イ ンド に お い て、 か やう な 占星 ・兆 相 的 性 格 の暦
そ の聯 合 軍 を 結 成 い、 もう て回教 撲 滅 を 悲 願 い た 経 作 者 の意 は、 古 く か つ長 い磯 展 の歴 史 を も ち 、 タ ント ラ佛 教 と い へど
圖 か ら い て、 時 輪 の製 作 が タ ント ラ佛 教 の末 期 に存 し 、 や が も そ の例 外 で、
はな い。 わ れ わ れ はす で に か やう な 暦 を 漢 課 に
(1) よ つて え て ゐ る の で あ るが 、 そ れ を 暫 ら く 別 と い て、 時 輪 に
てき た る べきそ の蓮 命 の豫 見 を く み と る こ とが でき る。
直 接 先 行 す る無 上喩 伽 母 タ ント ラ に お い て も、 多 かれ 少 か れ
さ て、 こ の悲 願 の達 成 のた め の重 要 な る契 機 、 從 つ て、 時
か や うな 占星 ・兆 相 學 的 暦 を と いて ゐ る。 シュリ ー切 ヂ ラダ
輪 を構 成 す る特 質 の 幽は、 兆 相 學 占 星 學 的 檬 相 を 多 分 に含 ん
で は ゐ るが、 暦 に 存す る。 こ のゆ ゑ に、 ラウ 7 エル の 所 論 と ー カ ータ ント ラ の ご と きそ の 一例 で、 回教 擢 破 の印 のヤ ント
(
)2
も關 聯 い て、 そ の暦 法 に つ い て新 ら た に 考慮 を 彿 は な け れ ば ラを それ にも とつ い て読 い てゐ る。 か やう な 傾 向 を う け て、
時 輪 タ ント ラ成 立 に關 す る墓 本 的 課題
密 教 文 化
暦 に重 要 な役 割 を與 へ、 そ の教義 体 系 を構 成 せん と い た と こ の年 の前 年 ま で に経 過 い た 年 敷 を いふ 。 從 つ て、 四〇 三年 に
ろ に時輪 の重 要 な特 色 を み 出 す こと が で き る。 も つと も、 時 こ の年敏 を 加 へて、 逆 算 す れ ば、 回 教紀 元 を う る わ け で あ る
輪 の暦 が 本 質 的 に イ ンド 的 で あ るか、 よ り 回 教的 で あ る か に (
時輪第 一品廿六、廿七碩、無垢光 .第 繭品第九章)。 ゆ え に、 経 作
つ い て は、 今後 の究 明に ま た ね ば な ら ぬ 黙 が多 いが、 何 れ に 者 の現在 は、 回 教紀 元 四 〇 三 年 を す ぎ た次 の六 十 年 周 期 の中
せよ 、 回 敏 的 要素 が多 けれ ば多 い ほど 、 中 央 アジ ァ起 源読 を に 設定 せ ら れ る。 い か い て、 こ のプ ラ バ ワが 丁卯 に相 當 す べ
保 誰 す るも ので はな く、 逆 に イ ンド に お け る回 教 と の交 渉 が き こと は、 チ ベ ット の用 例 、 さら に は、ラ ウ フ ェルの論 定 に よ
盛 ん乏 な つた後 の時 代 の製 作 にか か る こと を 意 味 い て ゐ る の つて確 定 せ ら れ てゐ る (T OUNG PAO)。
1ゆ9ゑ
1に3、有
でな け れ ば な ら ぬ 。 時輪 が 六 十 年 法 、 回 教紀 元 を 用 ゐ 、 ヂャ の年 代 を西 暦 に換 算 す れ ば、 時 輪 成 立 の年 代 は、 そ の上 限 を
(4
)
ー タガ 、 さ ら に ウ ッ タ ラタ ン ト ラ に お い て ペ ル シャ 的 占星 學 西 暦 一C 二 七 年 と す る 六 十年 間 と い な け れ ば な ら ぬ。
書 タ ー ジ ヵに 言 及 い て ゐ る 享 賢 と 、 さ き に 記 い た と ころ の時 青 丹 の 著者 ション ヌ ペ ーも、 この 上 限 年 代 以前 に 時輪 が イ
輪 成 立 の契 機 を な し た 冗 ンド の砒 會 事 情 等 を 参 酌 い て、 時 輪 ンド に存 い た と す る 主張 を反 駁 レ、 學 匠 の 一致 せ る 一般 的 見
の成 立年 代 を 、 學者 の承 認 せ る九 六 五年 よ り か な り後 に設 定 解 は、 有 の上 限 年 代 を も つて時 輪 の イ ンド嚢 生 の年代 とす る
い な け れ ばな ら ぬで あら う)
(。3

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に あ る と い ふ (一〇 ノ 一〇)。 か や う な 見 地 か ら す れ ば、 タ ー
然 ら ぱ、 そ の成 立 年 代 を 如 何 に規 定 す べき で あ る か。 これ ラ ナ ー タが 、 時 輪 のイ ンド畿 生 を (將 來 と い ふ 表 現 を 用 ゐ て
に つい ても 、 一慮 、 時輪 及 び 無 垢 光 の記 述 に滲 照 い て 基準 を ゐ るが ) マヒ ーパ ラ 王 の晩 年 と い て ゐ る のも 、彼 の時 代 設
求 め た い。 わ れ わ れ は、 爾 書 が回 教 紀 元 の算 定 法 を のべ て ゐ 定が何﹄
腱 に あ つた か を 別 と い てふ.史 實 に符 合 す る と いは ね ば
る記 述 に よ つ て、 略 々動 か い えな い年 代 を 設 定 い う る と 考 へ な ら ぬ。 チ ベット の諸 記 録 が 時輪 の製 作 も い く は イ ンド への
る。 即 ち 、
﹃回 教紀 元 の決 定 は 、 メ ヵ ーギ ャムッ ォーに ラ プ ヂ ュ 將來 を 九 六 五年 と した 主 た る根 擦 は、 チ ベット への輸 入 を 一
ンを はじ めと す る過 ぎ い 年数 を 加 へた も の﹄ と述 べら れ て ゐ .
〇 二 七 年 に設 定 し そ れ か ら 六 十 年 を さ か のぼ ら い め た に外 な
る のが 、 そ れ で あ る。 こ の チ ベット語 ﹃メ カ ーギャムツォー﹄ ら ぬ。 い か る に チ ベット へ 一〇 二 七年 將 來 い た と いふ読 の根
と は 三 ・○ ・四 で、 四 ○ ○ を す ぐ る 三、 即 ち 四 〇 三 年 の意 味 撮 は 華 だ 不確 實 で 、ダ ワグ ン シ ー (AD 1012-)
1が09
幼0少
であ る。 ﹃ラ プヂ ュンを はじ め と す る 過 ぎ い 年数 ﹄と は、 六 十 か ら 時輪 を 知 つ て ゐた と い つた 言 を 根擦 と い 、 そ の幼 少 時 代
周 年 の第 一年 を ラプ ヂ ュン即 ち プ ラ バ ワと い 、 これ か ら 現在 を 一〇 二 七﹄
件と みな い、 而 い て、 チ ベット 最 初 の 時 輪 紹 介 者
(2 )プ ト ン、 タ ント ラ 概 論 ・廣 ・二 〇 五 枚 以 下 。
が ギ ツォーと せ ら れ るた よ つ て、そ の と きギ ツォーに よ り時 輪
(3 ) 暦 學 書 シ ッ ダ ー ン タ 、 ヂ ャ ー タ カ 、 タ ー ジ カ 等 の 内 容 ・年 代 設
が 輸 入 せら れ て ゐた の でな け れ ば な ら ぬと 主 張 す る に外 な ら
定 等 に つ い て はWinternitz Gesche der indischen-
ぬ。 いか る に、 時 輪 の チ ベット への流 傅 は、 早 く も 一〇 五〇
ratur I S 55を
5f参f照 魑 よ 。 學 者 は 、 こ の黙 を 看 過 し 、 シ ュ
年 ご ろ を さ かめ ぼ り えな い。 そ の詳 細 に つ い て は時 輪 の流 傳 ラ ー ギ ン ・ト ワ イ ト は 甚 い い誤 解 を 犯 し た (Aday AxxBd I)
(5
)
を 述 べる場 合 にゆ づ り た い。 (4) 回 教 紀 元 に 二 年 の 誤 差 を 生 ず る 。 こ れ は 時 輪 紀 年 を 回 教 紀 元 一
八 二 年 に 決 定 す る に あ た り 、 回 教 暦 乏 時 輪 暦 の 一年 の 目 敷 を 機 械
か や う に い て、 時 輪 成 立年 代 を 西 暦 一〇 二 七 年 を 上 限 と す
的 に 換 算 し た の に よ る 。 無 垢 光 。 一八 五 枚 を 参 照 せ よ 。
る六 十 年 間 に定 位 せ い め る こと に よ つて、 はじ め て時 輪 及 び
(5 ) ダ ワ グ ン シ ー は ソ ー マ ナ ー タ に 就 き 、 時 輪 の 六 支 喩 伽 を 學 ん だ
無 垢 光 に記 述 せら れ てゐ る 上引 の時 輪 製 作 の契 機 .目 的、 或 に 外 な ら ぬ 。 六 支 喩 伽 は 秘 密 集 で も と き 、 必 ず し も 時 輪 に限 ら な
は イ ンド の就 會 情 勢 を 、 わ れ わ れ の有 す るイ ンド 史 の構 圖 に い 。 ゆ ゑ に、 か や う な 鮎 に 、 彼 の 不 用 意 な 誤 認 を 起 因 し て ゐ る の
ょ く 一致 せ いめ て理 解 レう る の で あ る。 で は な い か と 考 へら れ る 。 ギ ツ ォ ー は グ ー ・ ク ク パ . ハ チ ェ ー と
と も に渡 印 し た が 、 時 輪 翻 謬 は 露 藏 後 の こ と で あ る 。 早 ぐ も 一〇
い か ら ば、 時 輪 の成 立を 経 典ハ
、 教 理登 達 史 、 流 傳 史 の上 か

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五 〇 年 を さ か の ぼ ら な い。 一〇 四 二 年 來 藏 せ る ア テ ィ シ わ
、を も つ
ら 吟 味 い、 も つ て、 有 の年 代 の安 當 性 を 確 認 い、 で き う べ く
て 、 時 輪 の 主 た る 仲 介 者 、 時 輪 暦 の紹 介 者 と な す 論 が 存 す る が
ん ぱ、 さ ら に年 代 規 定 を 詳細 にい う れ ば 、 そ れ は最 も希 は い
(B Laufer T OUNG PAO 1907 S 402 A Grunwedel
い こ と に相 違 な い。 な ん と な れ ば、 こ の六 十 年間 は、 チ ベッ Mythologie S 58 Eiot Hinduism and
ト後 期 佛 教 の復 興期 に相 當 い、 そ の精 細 な規 定 は、 箪-
に チベ 38)
6、 ア テ ィ シ ャが 時輪 學者 であ つた積 極的 理由 は 全 く み出 され
ット佛 教 の みな らホ イ ンド タ ント ラ佛 教 の認識 に と つ て、 き な い。 時 輪 は 一〇 七 六年 著 名 な丙 辰 の法 輪 を 開 き、 そ の後 ま も な
わ め て、重 要 な こ とで あ ると 考 へら れ るか ら で あ る。 く 逝 去 せ る ツ ェデ レ 王 の時 代 に紹 介 せら れ た と なす 論 (Grub-
mthah-gal-gyi-me-lon Das Contrion
(-)か やうな意味 にお いて ヱリ オソトの準定、時輪 がシブ的よリヴ 1831 p )
2を3正
3し いと せ ねば な ら ぬ。
イ シュヌ的外裟 をも つと いふのは正 い。 グリ ュンウ ェーデ ルが
徹底 的にヴ .シュヌ的 と いひ(Mytholog) i、プ
eーサS ンが
4シ2 三
ブ的となす (ERE Tantrism Aの d項i)bのuはd
正dいh
くaな
い。 いは 樽,
雨者を包囁融合いた聯合軍 を目的とするのである。 さ て 、 い か ち ば 、 時 輪 の 成 立 を 教 理 史 ・経 典ハ
畿達史 的に如
時 輪 タ ント ラ 成 立 に關 す る基 本 的 課題
密 教 丈 化
何 に位 置 づ け う るか 。 これ に つ い て便 利 な 手 引 を 、 プ ト ンの 的 信 奉 を え て ゐ る と い ふ意 味 で1 棲 誰 とい て使 用 いv 父 タ
﹁タ ン ト ラ概論 ﹂ が 示 い て ゐ る。 同書 は タ ン ト ラを 種 汝な る ン ト ラを 代 表 す る阿 閤 部 類 秘密 集 (No 4)
2、2
母 タ ント ラ の
角 度 か ら 分類 し 位置 づ け て ゐ る。 そ い て この プ ト ン の 見解 そ れ 、 ヘル カ部 類 勝 樂 輪 (No 3)6
、8同 繹 タ ン ト ラ ・ア ビ ノ
は 、 これ に關 す る チ ベ・ット 人 の見 解 を代 表 い、 一般 的 な 承 認 ータ ラ (No 3)6
、9さ ら に 金剛 牝 豚 に いた る タ ン ト ラを援 引
(1
)
い て ゐ る こ とを 指 摘 す れ ば充 分 で あら う(
)
を え て信 奉 せら れ て ゐ る。 彼 は時 輪 を了 義 に お け る方 便 般 若 。2
双 入 無 二 の タ ント ラ に い て、 室 悲 無 二を と く の を特 色 と す る 第 二、 教 理 史 が 或 る意 味 に お い て経 典 嚢 達 史 に即 慮 す べ き
と 指 摘 し 、 タ ント ラ に おけ る最 高 位 を 與 へて ゐ る。 も とも と こと は論 を ま た ぬゆ た い か に灌 頂 に お い て十 一灌 頂 を た て つ
不 了 義 に お い て は、 何 れ の タ ン ト ラも 方 便 般 若 不 二を とく の 叉第 十 一灌 頂 た る ﹁第 四 灌 頂 ﹂ のみ を 出 世 間 とい 、 或 は成 就
で あ るが 、ま く に方 便 室 を 強 調 い、 ヴ ィシュヌ的 色 彩 の濃厚 な 法 にお い て父 タ ン ト ラ の特 質 を な す 生 起 次 第、 母 タ ン ト ラ の
も のが ﹁父 タ ント ラ﹂、これ に 樹 い般 若 大樂 を 強 調 い 、 シ ワ的 特 質 を な す 究寛 次 第 の 二次 第 を 、了 義 にお い て無 二 の 一
,体系
色 彩 を多 分 に有 す る のが ﹁母 タ ン ト ラ﹂、こ の大 樂 に執 す る の と い て 組 織 立 てよ う とい 、 或 は 了 義 の室 悲 無 二を 主 張 す る
を破 い、 了 義 に お け る方 便 般 若 双 入 無 二 のタ ン ト ラ、 室 悲 不 等 、 内 容 形 式 とも に 父 母 タ ントら を 融 合 止揚 い、 方 法 論 的 に
二 を と く も のが ﹁時 輪 ﹂ で、 タ ン渉 ラ の窺極 的 最 高 のも ので

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も 哲 學 的 立場 に於 ても 了 義 に おけ る双 入 無 二 の タ ント ラ とい
あ る と い ふ。 これを 現代 的 理 解 に お い て換 言 す れ ば、 教 理 ・ て、自 己 の存 在 を 主 張 い て ゐ る。 い か い 、 こ よで は、 か や う
経 典 襲 達 史 的 にも 父 母 爾 タ ント ラを 綜 合 止揚 した 究 極 的 存 在 な 時輪 の教義 体 系 の個 汝の課 題 を い ば ら く お い て、 そ の教 義
を 時輪 とみ た と い ひう る。 こ の見 解 の要 當 性 は、 タ ント ラ佛 体 系 を 展 開 せい め た 基 本 的 な特 色 的契 機 に つ い て 一鷹 指摘 す
教 展 開 の主 潮 流 に つ い て い へば 、 充 分 承 認 せら れ ね ば な ら ぬ る にと 吏め た い。
であらう。 これ を 一言 にし て い へば、 時輪 の 基 本 的 か つ 究 極 的 命 題
第 一、 経 典 畿 達 史 的 に は、 時 輪 に援 引 す る経典ハの名 稽 ・所 が 、 いは ゆ る了義 の双 入 無 二 に あ る こと は論 をま た ぬ が、 こ
読 に よ つて 實誰 せ ら れ る。 即 ち 、 古 く毘 婆 沙 等 に さ か のぼ り の双 入 無 二 性 の實 誰 的 原 理 も し く は基 盤 的形 式 を﹁時 間 存 在 ﹂
う るが 、 そ れ は いば ら く剥 と し て、 無 上 喩 伽 タ ント ラ部 のみ の哲 學 的 考察 に求 め 、 そ れ を 基準 妻 い て いは ゆ る ﹁外内 他 ﹂
に つい て い へば、 父 タ ント ラ ・毘 盧 遮 那部 類 の マー ヤ ーヂャ の,
三範 疇 を た て、 三範 疇 の相 即 的 阿 州性 に依 擦 し て、 い はゆ
ー ラ (No 4)
66と く に ナ ー マ サ ンギ ー テ を- そ れ が 一般 る成 就 法 の体 系 を 組 織 規 定 い 、 も つ て出 世間 の果 た る佛 と衆
生 の双 入 無 二 性 の畳 誼 に到 達 せ ん と いた のが 時 輪 で あ る と い ゐ る。 こ の、
いは ゆ る ﹁外 ﹂な る 範曝 に樹 い て ハ いは ゆ る ﹁内 ﹂
()3 な る 第 二範 疇 は、 具 体 的 に は 外 界 に野 す る實 践 的 個 体 とい て
つて差 支 へな から う 。
も ど も と、 時 輪 に おけ る佛 と 衆 生 と の關 係 は 、 佛 を 離 れ て の人間 存在 で あ るが 、 個 女 の外 的 宇 宙 現 象 に相 封 い で は、身
衆 生 な く、 衆 生 を 離 れ て佛 は あ り え な い。 佛 と い ふも 、 そ れ 体 内 部 の 現象 と い て、 著 る し く イ ンド 教 的 であ るが 、輪 ・大
脈 管 ・五風 等 を 取 上 げ て ゐ る。 世 界 と個 人 は大 小 宇 宙 とい て
自 体 は衆 生 の無 垢 の心v 佛 も魔 も 心 の顯 現 に 外 な らす 、 衆 生
本來成佛であ る (
無垢光第 一品第 三章 一三五枚) と い ふ。 これ が 把握 せ ら れ、 そ の個 汝 の事象 は そ れ ぞ れ 相 即 い 同 一覗 せら れ
ま さい く 本 初 佛 の本 質 的 意義 を な す こと は 勿論 で あ るが 、 こ る。 これ らめ 事 象 の各 汝が、 眞 言 文 字 ・表 徴 によ り 代 表 せ ら
の佛 と衆 生 と の關 係 を 双 入無 二 と 表 現す る。 そ の當 然 の錦 結 れ 、 も い く はそ れ自 体 で あ る と せら れ る のは 勿論 の こと、 個
汝の佛 教 理 念 ・思 想 を 代 表 い そ れ に相 即 す る。 こ の佛教 本 來
とい て、 菩提 心並 に菩 提 を とも に塞 悲 不 二 と い て把 握 す る の
の立 場 から す る領 域 を 、 い はゆ る ﹁他 ﹂ と い て三範 疇 を 立 て
を 特 質 とい て ゐ る。 こ 叉で は、 いは 吏自 己 が本 來 の無 限 の自
己 を畳 誰 す る こ とが 、 一切 の 一切 で あ つ て、 佛 教 の傳 統 的 本 る。 この 三範疇 の相 即 性 に依擦 し て、 一定 の規 定 ・法 則 に組
)
(4 織 立 てら れ た観 法修 法 を お こな へば 、 第 一、 佛 と衆 生 の双 入
質 的 課 題 に回 答 を與 へよ う と い てゐ る ので あ る。 こ のた め の
無 二性 の畳 誰 、 能 所 を 断 じ た ・
智身 と し て の室 悲 不 二 の金剛 持

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手段 と い て、汐 ン トラ的 方 法 が 要 請 せら れ て ゐ る に外 な ら ぬ。
た る成 佛 を う る。 こ の出 世間 的 果 に鍬 い、 世聞 的 に は、 宇宙
この タ ント ラ的 方 法 の中核 を 形成 す るも のが、 い は ゆ る成 就
的 な 存在 や人 生 に 支 配 力 を え、 回 教 撲 滅 等.
も 可 能 と せら れ
法 で、 これ が 、 時 聞 存 在 の哲 學 的 考察 を 基盤 と い て組 織 立 て
ら れ て ゐ る。 時 間 (カ ー ラ) は 一切 の現 存 在 (チャク ラ) を る。 時輪 タ ぞト ラ の構 成 が 、﹁外 ﹂ と い ての 世 界品 、﹁内 ﹂ と
い て の内 界 品 、 ﹁他 ﹂ と い て の灌 頂 、 成 就 法 品 、 果 と い て の
可 能 なら い め て ゐ る根 擦 で あ る が 、 同時 に そ れ は 現 存在 を 離
れ て は あり 克 な い。 不 了義 に お け る この 二 元 は、 了 義 に お い 慧 智 品 の次 第 か ら な るも のも 、 か や う な 主 旨 と 理由 にも とつ
て は相 互 浸 透 的 な 全 一、 双 入 無 二 性 と い て佛 と 衆 生 の關 係 に く の で あ る。
等 い い。 時 輪 (ヵ ーラ チャク ラ ) な る名 稻 の本 質 的 意 義 も こ か や う にい て、 時 輪 は、 了 義 の 双 入 無 二 を 本 質 的 立 場 と
叉 に あ る。 か やう な 存 在 とい て 、 第 一に 外 的 宇 宙 現象 と い て い、 時 間 存在 の哲 學 的 考 察 を 基 盤 とす る 三範 疇 の相 即性 によ
の 世界 を とり あ げ る。 そ い てそ の端 的 な姿 と し て、・日 月 星 辰 つ て、 そ の体 系 を 組 織 立 て る こと によ り 、 父 母 雨 タ ント ラを
等 とそ の蓮 行 が と り あ げ ら れ、 暦 學 が重 性 な 要素 を構 成 い て 綜 合 止揚 い 、いは ゆ る 母 タ ント ラ の シャク テ ィ的 構 想 に よ る倶
時 輪 タ ント ラ成 立 に 關 す る基 本 的課 題
密 教 文 化
生 の哲 學 を 超 え、 不了 義 に お け る大 樂 を も超 え よ う と い た こ ふ ぺき堕 落 形 式 と なす從 來 の學者 の見 解 は 再 批 判 せ ら れ ねば なら
(5
) ぬ。 時 輪 を簡 明 に要 述 せる ウ ッ タラ タ ント ラ も (No 363 )364
とを 知 りう る の で あ る。
わ れわ れ の見 解 を 保 謹 す る 。
以 上 に よ つ て 、 わ れ わ れ は 、 時 輪 の経 典 磯 達 史 、 教 理 史 に
い め る 位 置 を 略 汝規 定 い 、 も つ て 、 そ の 成 立 の内 面 的 考 察 を

簡 箪 に論 及 した 。 そ い て、 そ の結 論 も ま た、 吾 汝の成 立場 所
と年 代 を保 誼 す る ヒと に な つた ので あ る。 さ て 、 時 輪 成 立 に關 す る 今 一つ の 課 題 は 、 時 輪 及 び 無 垢 光
(1)プ ト ソ の ﹁タ ント ラ概 論 ﹂ は廣 ・申 ・抄 の 三部No 4740 の史 的 著 者 を 求 め ね ば な ら ぬ こ とで あ る﹃ わ れ わ れ は そ の著
4739が存 し 、廣 の ご とぎ 四 百 枚 を 越 え る 大部 作 で、 プ ト ンの目 者 を ヤ シャ、 プ ンダ リ ー カ王 と い ふが ご と き 創 作 的 傳 読 に委
録 の前 奏 曲 を 構 成 す る の みな ら ず 、 ツ ォ ンカバ のガ ー リ ポ (No ね放 置 す る こと は で き な い。 そ こで 、 ま つ イ ンド に おけ る蒔
436
)3ケ ート ウ プ の タ ント ラ概 論 (No 50
)7等6に封 し ても 先 駆 輪 の創 唱 的 人 物 の探 究 か ら 問 題 を はじ め ね ぜ な ら ぬ。 いか る
的 主導 的役 割 を果 た し 、 注意 せら る べき 著 作 で あ る。 に 、 これ に つ い ても諸 記 録 は 必 ホ いも 一致 せす 異 読 を 冤 れ え
(
2 )タ ント ラ概 論 ・廣 ・ 一七 四枚 等 、 時 輪 史 ・三 〇枚 、 青 丹 一〇、
な い。 か や う な 異 読 に 充分 な 槍 討 を 與 へ學 的 認 識 を う るた め

-30-
三 〇枚 、 無 垢 光 ・第 一品第 四章 等 、 無 垢 光薙 嚴 ・五〇 枚、 デ ル ゲ
に は 、 な ほ多 く の操 作 を 今後 に ま た ね ば な ら ぬ こと は論 を ま
目録 (No 4)
58一3
四 三枚 等。
た ぬ が ﹀ さ い あ た つ て、 多 少 の瞼 討 を 加 へ、 一懸 の見 解 を う
(3)時 輪 史 ・三 八枚 、 タ ント ラ概 論 は、 時 輪 の特質 を各 方 面 か ら論
る を も つて満足 せ ね ば なら ぬ 。
じ てゐ る。サキ ャ汲 と ケ ート ゥプ の時 輪 観 は プ ト ンと多 少 異 な る。
お よ そ これ に關 す る典 型 的 チ ベット 所 傳 と い て、 四 種 の異
(4)時 輪 が本 質 的 に佛 教 本 來 の深 い哲 學 的 思 索 尺も とつ いて ゐ る こ
読 を指 摘 し う る で あ ら う。 よ つて 、 わ れ わ れ は、 チ ベット へ
とを 改 め て み な ほ す 必翼 があ る。 いはゆ る 本 初佛 体 系 を 有 騨論 ・
汎 神 論 ・多 蟹 教 的 堕 落 形 式 と みるPoussin(ERE P 96 の 流傳 や 現 存 の諸 時輪 文 献 著 作 者 ら を考 慮 に いれ つ 叉、 これ
Grunwed(
eNlythologie
)ES
li4
o3t(op cit vo を橡 討 い た い 妻 思 ふ。
p 33
)7 Wadde(
lLamaism P 1)
5の見
1解3は
1、 外 形 的 一 第,
一読 、 ト ー流 所傳 と い て、 二 種 の記述 、 即ち 、 プ ト ンの,
面観 にす ぎ な い。 それ 及 び十 二 世紀 後 牛 の人 と推 定 せ ら れ る ラ ンワ ンソ ー ワ ・
(5) シ でクテ ィ的 大樂 を超 越 し やう と し て、 時 間 存在 を取 上 げ た黙 チ ュー キ ワ ンツ ク のそ れ が あ る。 雨者 の記 述 は大 綱 に お い て
から し ても、 時 輪 をも つ て、 タ ント ラ佛教 の毒 も誇 張 せら れ た厭 、 一致 し細 部 に お い て異 る が、 プ ト ンの それ は、 次 に第 二読 と
し て紹 介 す る ラワ ー流 の所 傳 を 多 分 に 考慮 い て ゐ る か に み え 丁度 、 この こ ろ ヵ シミ ー ルに お い て ソ ー マ ナー タ は、 大 時
る。 そ れ ゆ ゑ .ラ ンワ ンソ ー ワの 記述 に つい て、 そ の大 要 を 足 の弟 子 ヴ 丁 ナ ヤ ー カ ラ マ テ ィに よ つ て ﹁灌 頂 略 示No 361
述 べ てみ た いー を 贈 呈 せ ら れ 、 信 を お こ し 、 マガ グ に 到 り 、 大 小 時 足 と く に
イ ンド の マガグ 國 の 王族 、 大 時足(Dus-shaps) 後 者 に つ い て 、 時 輪 を 請 問 い 、 灌 頂 、 タ ン ト ラ、 註 繹 、 教 令
はA い は ゆ る第 二代 カ ルキ ,ブ ンダ リ ー カ王 か ら- そ の他 す べ てを う けハ か シミー ルに 踊來 いた が、 蕾 師 と 意 見 を 異 に
の異読 も 存 す るが1 酔 秘 的 な 方 法 に よ つて時 輪 の灌 頂 並 に い た 。 よ つ て來 藏 い 、 時 輪 を 流 布 い た 。彼 に協 力 い 時 輪 文 献
諸 法 を う け 、 マガ ダ に 在 佳 い 、 弟 子 に 五 學 匠 を 出 い た 。 即 ち 翻 謬 に主 役 を 果 た した のが 、 ト ー ・シー ラプ タ クで 、 そ の系
) ビ ン ド ー ア ー チ ャー リ ヤ 、 (2
(1 ) ヴ ィナ ヤ ー カ ラ マ テ ィ、 )
(3ム ク 統 を ト ー流 と よ ぶー と い ふ の で あ る。
タ ー カ ラグ プ タ 、)
(4シ ン ハ,
ド ワ ヂ ャ、 (
)5ア ナ ン タ ヴ ィヂ ャ ヤ で 、 ソ ー マナ ータ は、 著名 な ア ティシャの死後 に 、ダ ワ ・グ ン シ
そ の 上 足 を (1) ビ ンド ー パ と す る 。 こ の 人 は ワ ーギ ー シ ュワ ラ - (AD 1012-)
10の3
晩0年 に來 藏 し、 五十歳 か ら 八十 歳 ま
キ ー ル テ ィ等 十 二 人 の 學 匠 に 園 続 せ ら れ る 大 學 匠 と な つ た 。 で 三 十 年間 在 藏 し、 そ の聞 、 師 に贈 物 を な い 金 剛 座 を 供 養 す
そ の後 、 大 時 足 は ナ ー ロ4 パ のた め に自 ら と く にプ ラ ハリ に るた め イ ンド に赴 き、 大時 足 の弟 子 ヴ ィナ ヤ ー カラ マテ シ

-31-
到 り 法 を 傳 へた が 、 こ の と き い は ゆ る 小 時 足 も 共 に 聴 聞 い 、 ン ハト ワヂ ャ爾 人 に つき 疑 義 を 断 じ て 編 藏 した と い はれ てゐ
大 時 足 の 正統 的 相 承 者 とな つ た。 小 時 足 は ピ ンド ー パ の令 息 る (青丹ニノ六、 一〇ノ四、時輪史、 三二枚)。 ゆ ゑ に、 これ ら
で、 優 婆 塞 ボ ーデ ィと も い ふ。 大 小 時 足 而 入 が マガダ に お い の記 述 によ る限 り 、 ソ ー マ才 ータ の來 藏 は、 早ど も 西 暦 一。
て 、﹁吉 群 時 輪 を 知 ら ざ れ ば 、 ナ ー マ サ ンギ ー テ ィ (妙 吉 鮮 眞 六 〇 年 を ほと ん ど さ か の ぼ り え な いコ 加 之 、 有 の年 代 並 に小
實 名 経 ) を 知 ら ホ 、 これ を 知 ら ざ れ ば 眞 言 乗 を 知 ら ・
す、 眞 言 時 足 の諸 弟 子 の生 存 年 代 から い て、 大 小 時 足 の時輪 活 動 も 、
乗 を知 ら ざ るも の は、 す べ て輪 廻 い 、 世奪 金 剛 持 の道 を 離 る 略 汝、
一〇 四 〇ー 五〇 年 ご ろ か ら開 始 せら れ 、 小 時 足 は 一〇 七
﹂ と い ふ 著 名 な 宣 言 を 襲 い て ゐ た 。 そ こ で 、・これ を 承 認 し な 〇 年 ご ろま で生 存 い て ゐ た こと を推 定 い う る の で あ る。
い多 く の 學 匠 が 、 ヴ ィク ラ マ シ ー ラ (叉 は ナ ー ラ ン ダ ) 寺 に 元來 、 チ ベット への時輪 輸 入 は、ギ ツ ォーに 次ぎ ト ー流 が最
座 を設 け て論 諄 し たが 、 す べ て小 時 足 のた め に敗 れ た 。 よ つ も 古 く 、 ラ ンワ ンソ ー ヲの所 読 は、 プ ト ン ・青 丹 いつ れ よ り
て小 時 足 を頂 禮 い時 輪 を請 問 い 、彼 を 時 輪 者 (Dus-sha) 古 く 、 學 者 の依 用 す る タ ー ラ ナ ータ 、 ワイ ド ー ルヤ カ ルポ に
と よ ん だ。 これ を 契 機 と い て時 輪 は ひ ろ く 流布 した 。 比 す れ ば 四 ・五 世紀 を さ か の ぼ ぴ う るも の で、 資 料 と い て の
時 輪 タ ント ラ威 立 に關 す る 基本 的 課 題
密 教 文 化
信 頼性 は 高 く 評 債 せ ら れ て然 る べき で あ る。 た 葉い 、 ナ ー 廿 ンバ ラ に存 す るを 璽 知 い 、 南 方 に渡 海 す る こど 六 ヶ 月 に い て
ーパ に關 す る記 述 は、 後 述 す るご と く 牽 強 附 會 の感 を 強 く 反 文 殊 の 化身 か ら ﹁菩 薩 の 三 部門 ﹂ 即 ち ヘー 7,
ヂ ラ、 チャク サ
映 い て ゐ ゐo おそ ら く 灌 頂 略 示註 が 彼 に露 せら れ た のも 彼 の ンバ ラ、 時 輪 の 三部 門 の灌 頂 ・タ ン トラ ・同註 ・教 令 一切 を
法 流 が 盛 に お こな わ れ た こ と によ る附 會 と み て差 支 へな か ら う け 、 臆 持 し て東 印 に露 つた。 御 名 を チ ルパ と稻 す 。
う 。 プ ト ンが ナ ー ロー 。
かと 大 時 足 の關 係 及 び 後 者 を マガ ダ 出 そ の後 、 彼 は ヵ タ カ 王 の許 に お も む き 、 在 佳 い 、弟 子 三人
身 とす る こと に つ い て述 べ て ゐな い の は、 彼 の用 心 深 い注 意 を 出し た 。 そ の 一人 が ピ ンダ 、 も い く は ピ ンヂ づ・ア ー チャー
を 示い て ゐ る と い へよ う 。 リ ヤで、 彼 も 菩 薩 の部 門 を 完 全 に臆 持 い た。
第 二読 、 ト ー流 と とも に チ ベット の時 輪 の 二大 學 派 を 形 成 チ ルパ は弟 子 の請 に よ り﹁菩 薩 の 三部 門 ﹂を書 巻 と い た が 、
す る ラ ワー流 の所 傅 とい て、 プ ト ンの記 述 す る 時 輪 相 承 系 譜 た ま た ま 他 國 軍 の侵 入 が あ つた の で、 そ れ を 坑に 秘 い て避 難
は、 第 一読 と異 な り 、 大 時 足 か ら さら に 二代 チ ルパ にさ か の い 、 兵 剣 の 鎭 静 後 露 來 い て み る に、 三部 門 の中 の 二 部 を残
ぼ る系 譜 を 立 て、 ピ ンド ーパ の時 輪 系譜 に お い て占 め る位 置 い 、 他 の 一部 即 ち 時 輪 部 門 の紛 失 を嚢 見 し た。 い か い て、弟
も 、 大 時 足 を 中 心 とい て、 第 一読 と 逆韓 い て ゐ る。 即 ち 子 の願 にも か 叉わ ら す ㍉ 再 度 これ を 書 巻 にす る を 許 さす 、 チ

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第 一読 、 大 時 足 ー ピ ンド ー等 五.
人 及 び小 時 足 な る に封 い ルパ は 東 印 に 露 つた 。 そ こで ビ ンド ーパが 臆 持 す る と ころ に
第 二読 ふ チ ルパー ピ ンド- 1 大 時 足- 小時足 といふ よ り ワ レー ンド ラ 出 身 の大 時 足 に述 べた 。
系 譜 を 主 張 す る。 プ ト ンに よれ ぱ 大 時 足 も ま た臆 持 に よ り 東 印 にお い て 時 輪 を 教 授 い、 ヴ ィ
金 剛 座 を 中 心 と い て、東 方 に ガ ヂャパ テ ィ・デ ー ハパ ー ラ王 、 ナ ヤ ー ヵ ラ マテ ィ、 シン ハド ワヂ ャ、 ア ナ ン タ、小 時 足 の四 人
南 方 に ナ ラパ テ ィ・ヂ ャウガ ンガ パ 王 、 西 方 に ア シュワパ ティ・ の弟 子 を 出い た。 小時 足 は東 印 マ ンヂ ュハ 出 身 で、 ナ ーラ ン
ヵ ナ ウヂ 王 の 三王 が ゐた ころ 、 東 印 五國 の中 の オ ー ラヴ ィパ ダ パ 、 ボ ーデ ィパ と も 稻 せら れ る。 彼 は セング ワ の 徒 が オ ー
に 生 れ た藏 持 の 大 阿 閣 梨 耶 チ ルパ .パ ンデ ィク は 、 ナ ー ラ ン タ ンタ プ リ寺 を 受持 七 てゐ た ころ 、 ナ テ ンダ に 到 り 、 第 一
グ 、 ヴ ィク ラ マ シー ラ、 ラ ト ナギ リ に お い て 一切 藏 経 を み て 読 に述 べ た ご と き 著 名 な 宣 言 を磯 い、 五 百 人 の 學 匠 と論 静
ゐた。 そ のと き 、 唯 ラ ト ナギ リ を 例 外 と い て、 回 教 の加 害多 い 、 これ を屈 服 せ い め 弟 子 と な い た。 そ の 中 、 マ ンヂ ュキ ー
き を み て、 即身 成 佛 の教 た る眞 言乗 の必 要性 、 と く に そ れ を ル・ティ、 アビ ユク タ、 ダ ー 輩且薩、 ア バ ヤ ー カ ラグ プ タ、 マ ハ
﹁菩 薩 の 註 繹﹂ を も つて 解 明 す べ き 必 要 を痛 感 し、 そ の シャ ー プ ン 昌ヤ、 ソ ー マナ ー タ、 チャミ等 多 く の學 匠 が 出 で 、時 輪
は廣 く 流 布 い た- と い ふ ので あ る。 103
)。-
然4り とす れ ば、 か や う な彼 に秘 密 集 及 び時 輪 に共 通 的
この小 時 足 の弟 子 五學 匠 と く に マ ンヂ ュキ ー ル ティに 學 ん な課 題 た る成 就 法 の究寛 次 第 を 示 す 六 支鍮 伽 に關 す る教 令 的
だ のが 、 ネ パ ー ル のイ ェーラ ンの人 サ マンタ シュリ ーで 、これ 論 書 が 存 い、 そ れ が時 輪 に 先 行 い た時 代 の、 か つ時 輪 に所 屡
に ラワー ・チュrラ ブ が 五 年 五ヶ 月 學 ん だ。 こ の系統 が ラ ワー せし め ら れ る が ご と き性 格 のも ので あ つた と し ても 、 必 す い
流 で あ る。 チ ューラ プ のネ パ ー ル留 學 は、そ の叔 父 ラ ワー翻 課 も 不 合 理 で は あ り え な い。 か や う な 見 地 か らす れ ば 、 ラ ワー
官 ド ル ゼ ヨ タ ク の.
死 後 で、 おそ く 、
一 一四 〇 年 走 健 か の ぼ 流 の系 譜 も タ ント ラ の核 心 的 課 題 た る成 就 法 を基 準 と い て過
り え な い時 代 で あ る (
青丹七 ノ一 、 ラワー翻課官傳記No 6 去 に さか の ぼ つた も の と い て 一慮 の會通 を航
ないう る わけ であ
fol )
1。5ゆ
0ゑ に ト ー流た 比 い、 そ の所 傳 は 約 一世紀 に近 い る。.ピ ンド ーパ に つ い て は多 く の問 題 を藏 い てゐ るが 、 彼 が
時 差 を も ち、 そ の間 に 傅 承 の襲 展 の存 い た こと を 想像 せ い め 青 丹 の ご と く 時 輪 成 就 法 の 著作 者 婆 羅 門 ス 二ヨムパ に相 當 す
る 。 有 の系譜 は ラ ワー流 内 に お い ても 必す い も 絶 封的 承 認 を る とす れ ば 、 有 の 會通 は釜 々保 誼 せら れ る わけ であ る。
え た わ け で は な く 、 同 流派 内 に お いて も 第 一読 と同 じ ぎ 系譜 何 れ にも せ よ、 チ ルパ と土ハに ピ ンド ーパ の時 輪 系 譜 に おけ
を 主 張 い た も のも 存 い た こと を、刷
プト-
ンが記 い て ゐ る。 た レ る位 置 は、 著 るい く 動 揺を 菟 れ す 定 読 を え な い。 次 に述 べる

-33-
か に ラワー流 の傅 承 は、 時 輪 及 び 無 垢 光 の兵 剣 に よ る紛 失 と 第 三読 は 、 チ ルパ、 ピ ンド ー パを 大 時 足 に比 定 い て ゐるゆ
臆 持 に よ る相 承 を伏 線 とい て、 そ の 系譜 を チ ルパ にさ か のぼ 第 三読 A 、 大 時 足 と は、 一喩 伽 母 の子 供 で チ ルパ 、ρチ ンブ
ら い め、 も つて そ の系 譜 の 正當 性 を主 張 い よう とい て ゐる か パ と も い ふ。 紳 秘 的 な仕 方 で 観 普 の化 身 に シャンパラ 國 に お
に み え る。 然 り とす れ ば 、 こ の系 譜 が 何 を 基 準 とい て チ ルパ い て時 輪 を う け た。 以 下 ラワー流 の チルパ、傳に準す る 読 明 が
巳に さ か の ぼら い め ら れ た か 、 を瞼 討 い な け れ ば な ら ぬ。 お よ 加 え ら れ てゐ る。 但 い、 同 読 の窯前 か ら い て、 チ ルパが 兵 剣
そ この無 上 喩 伽 タ ント ラ ヘル ヵ部 類 の學 匠 とい て紹 介 せ ら れ 鎭 静後 東 印 に錦 り、 優 婆 塞 ボ ーデ ィ即 ち小 時 足 に時 輪 を 傳 へ
た チ ルパ に は時輪 所 屡 の著 作 と い て ﹁六 支 鍮伽 優 婆 提 舎No た と い ふ。 同 読 はネ ン翻 繹官 系 統 に おけ る読 で あ る が、 い か
137
﹂4の 一部 が 存 す る の み で あ る。 彼 の他 の 著 作 (No 1) い こ の系 統 に お い ても、 特 に チ ルパ を読 かす 第 一読 ト ー流 と
及 び タ ー ラ ナ ー タ の記 述 か ら す れ ば、 彼 は 無 上 喩伽 父 タ ント 等 い い読 も 奉 ぜ ら れ て ゐ た。 そい て、 爾読 とも にネ ン翻 課 官
ラ秘 密 集 、 就 中、 そ の ヂ ニャー ナパ ーダ 流 の學 匠 で あ つた ら の師 を マ ンヂ ュキ ー ルテ ィ、 ア パ ヤ ー カ ラと な す が 、前 読 で は
い い。 (デ ンギ ュール目録 ・三七二枚、EDELSTEINMI S こ の爾 師 を箪 に小 時 足 の弟 子 と な す に封 い、 後 読 で は小 時 足
時 輪 タ ント ラ成 立 に關 す る基 本 的 課 題
密 教 丈 化
及 び ナ ー ローパ の弟 子 と い て ゐ るゆ 何 れ にい ても 、 來 由 を 一 稻 呼 と い て、 必 ず い も特 定 の 一人 物 を さ す と は 限 ら な いが 、
にい てい か も か 叉 る異 読 を 存 い 、 或 は 、 ネ ン系 統 の時輪 教學 と に か く 、 ピ ンド ーパ な る 名 稻 の人 物 は 、 こ 叉に 時輪 系 譜 に
が 早 く か ら 中 絶 い た こと を 考 慮す れ ば 、 こ のA 読 の傳 承 保 持 お け る 地 位 を 三韓 い た わ け で あー
る。 こ のタ ーラ ナ ー タ所 引 の
の純 粋 性 、 從 つ て、 そ の確 實 性 に も 疑 問 な き を え な い。後 時 典 擦 を 明 ら か に す る を え な い。 と は い へ、 彼 び 年代 、 所 引 系
に 氣 い てト ー流 に ラ ワー流 の所 読 を 折 衷 せい めた と 推 定 す べ 譜 が特 異 的 要素 を多 分 に 有 す る こと等 を 考 慮 す れ ば 、 必 申 い
き 公算 を多 分 に 有 い てゐ る と い ふ べき で あ る。 も つと も ネ ン も信 擦 性 に とむ 所読 と は い ひ が た く、 ピ ンド ーパ、 ナ ー ロー
翻 謁官 自 体 を ツ ェデ ー の法 輪 (西 暦 咽〇 七 六 ) に参 加 い 、 十
亀.アウ ドゥーテ ィ を時 輪 者 と い て 強 調 す る 七聯 の構 想 は 、 第
二年 間 在 印 い た 人 物 と す れ ば、 年 代 的 には ラワー流 に先 立 つ 四読 を 豫 想 い てゐ る か に 考 へら れ る。
ので あ る 。 い か い 時 輪 者 と い て の チ ルパ の著 作 を 紹 介 い た の 何 れ に せ よ 、 第 三読 A B は 、道 稽 大時 足 と い ふ實体 の不 明
は、 ラワー ・チュー ラプ であ つた 。 のみ な らす 、折 衷 附 會 によ 瞭 な 人 物 の把 握 に關 す る 一見解 を 禾 い てゐ る に 外 な ら な い。
る傳 承 の畿 展 は、 沙 し て稀 な 現 象 で はな い から で あ る。 十 五 そ の妥當 性 に つ い て、 異論 を は さ み う ると い ても 、 い ば ら く
そ れ を 別 と い て、 類 型 的 に大 時 足 - 小 時 足 を み と め てゐ る
世紀 のヴ ァイ ド ー ル ヤ カ ルポ 、 十 六 世紀 の ス レー シャマティの
と いふ 鮎 で 、 第 一読 ト ー流 に 囲致 す る。

-34-
所 読 は 、 こ の第 三 読A の亜 流 と いひ う る。 ス レ ー シャマテ ィ
のご と き は 、 大 時 足 を チ ルパ 、 チ トゥヂ ュワ ラ のみ な ら す ティ 第 四読 、 以 上 の諸 読 に 比 い 箸 る い く 異 な つた 系譜 を スナ ム
ウ ッツ ェルが 記述 い てゐ る。
リ ッパ に 、 小 時 足 を ナ ー ロー パ に比 定 い て ゐ・る (AbayA
614 6)。
5折8衷 附 會 に よ る傳 承 畿 展 の適 例 で あ る。 比 丘 ス 昌ヨム ・ ツ ェン ポ (マ ハ ー ・ピ ン ド ー パ )- ダ 導リ
カ パ ー - 時 足 (大 ) ー
右 に封 い 、 第 三読 B は、 ビ ト ーパ を 時輪 の イ ンド 將 來 者 と
(A ) ボ ーヂ ィパ ド ラ
す る ク ー ラナ ー タ の所 読 で 、ビ ト ーの弟 子を ボ ー ヂィシュリ ー
- 大時輪者 (
H小時足 )
(小 時 足 )、 ナ ー ロ ーパ 、 ア ワド ゥー ティパ (マイ トリ パ 、 ア (B ) サ ー ド ゥプ ト ラ
ド ワ ヤ ワヂ ラ)の三 人 と い てゐ る (EDELSEINMINE と い ふ 系 譜 を た て 、 さ ら に (A ) の 弟 子 を ア ピ ユク タ 、 ア バ
この ピ ト ーパ とば 、 ピ ンド ー パ の韓 託 音 で、 チ ベット に お い ヤ - ヵ ラ 、 チ 予ミ 、 (B ) の弟 子 を パ ー ス カ ラ と い 、 こ れ ら に
てはBsod-snoms-p
とa翻 課 せ ら れ てゐ る のを通 例 と す セ翻 課 官 シ ョヌ ツ ル テ %ム が 時 輪 を 學 び 、 次 第 に 系 統 い て 、 ヵ
る。 こ の行 乞 者 を 意 味 す る 謬 語 か ら す れ ば、 そ れ は範 曜 的 な - ギ ュット派 の ウ ル ゲ ン パ (Urgyan-p
AaD 1230-13)
09
を へ て 、 ス ナ ム ウ ッツ ェル に 到 つ た (
青 丹 八 ノ 一三℃ 、 一〇 ノ 五) 推 定 す べき 公 算,
を 多 分 に有 い て ゐ る。
第 四 読 の系譜 を構 成 す る人 物 、グ ーリ 功 パ、 ア ビ ユク タ、
− と い ふ の で あ る。
ア バ ヤ ー ヵラ等 は 、 時輪 所 爵 の論 奢 を も つ ナ ー ロー パ、 マイ
この第 四 読 はそ の認 録 年 代 の古 い のにも 拘 ら す 、 著 る い い
ト リ パ (ア ワド ゥー ティパ)、 ラリ タ ワヂ ラ、 ワヂ ラ パ ー 二等
混 飢 を 内 包 い て ゐ る と 考 へら れ る。 (A ) ボ ーヂ ィパ ド ラに
つー
い て は、 ギ ツ-
オー、 プ ト ンも 小 時 足 の弟 子 と みと め 、 承 認 と師 弟 、 法 兄弟 等 と い てす べ て 一聯 の關 係 を もち A 母 タ ント
す るを え るが 、ナ ビ ユク タ等 三人 を (A ) の弟 子 と は な いが ラ の成 就,
者 と い て 著名 な 人 汝で 、これ ら の人 に ヵ ーギ ュット派
た い。 な ん とな れ ば、 スナ ム ウッツ土ル の記 弛 を例 外 とい 、他 が 極 め て密 接 な直 接 的 依 存 關 係 を も つ こと は論 を ま た な い。
の読 はも とよ り、 同 じ き セ翻 謁 官 の系 統 に お い ても 、 す べ て さ ら に小 時 足 の別 名 を ナ ー ラ ング パ と す れ ば、 彼 は大 印 關 係
小 時 足 の弟 子 とい て ゐ るか ら で あ る。 叉 、(B )サ ードゥプ ト に お いで は マイ ト リ パ の弟 子 で すら あ つた (青丹、 = ノ七)。
ラ ・ペ ージ ンガ ー ワ の時 輪 系 譜 に おけ る位 置 に つ いて は 、 十 ウ ッタ ラ ク ント ラ に ク リ ス ナ チャーリ ンを 授 記 す る のも ゆ ゑ
三 世紀 初 頭 に來 藏 せる シャー ク ヤ シュリ ー、十 五 世紀 末 來 藏 せ な い と い 鶴 い ので あ つ,
て、 も と も と時 輪 の成 立流 傳 は、 か や
るヴ ナ ラ ト ナ及 び タ ー ラ ナ ー タす べ て、 ア ヌパ マラク シタ の う な タ ント ラ佛 教 末 期 の人 汝に 依 存 し て ゐた ので あ る。 ゆ

-35-
弟 子 と す る 。 い か も ア ヌ犬 マ ラ ク シ タ は ー そ の弟 子 ニ マペ ゑ に 、 上 述 せ る や う な 諸 黙 を 参 照 す れ ば第 四 読 の ス ニョみ ・
ーイ ー シ ー の 指摘 に よ れ ばー ア ワ ド ゥー テ ィ即 ち マイ ト リ ツ ェンポー ダ ーリ カ の系 譜 を 要請 いた 意 味 を 把握 す る に必
パ の瀞 秘 的啓 示 にも と づ き 六支喩 伽 の 教 令 を 創 唱 い た と い す い も 難 く な い。 ス ニ ョム ・ツ ェンポ と は 、 青 丹 七 巻 に よ れ
は れ る。 ゆ ゑ に、 か や う な 人 物 の弟 子 サ ード ゥプ ト ラ を 直 ち ば 、 東 印・
ベ ン ガ ル 出 身 者 で 、 は じ め 秘 密 集 め ヂ ニャー ナ パ ー
ダ 流 の鍮 伽 者 で あ つ た が 、 後 に 母 タ ン ト ラ ・サ ン バ ラ の 成 就
に 小時 足 の 弟 子 と なす に は 多 く の考 慮 を 必 要 といな け れ ば
な ら ぬ。 も と も と セ翻 課 官 の時 輪 系統 に い て、と の ヵ ーギ 手 者 と く に イ ン ド ラ ブ ー テ ィの 娘 ラ ク シ ュミ ー に 由 來 す る ワ ヂ
ッ ト派 に お こな は れ たも の は、 ギ ツォー、 ト ーふ ラワー、 シャ ラ ワラ ー ヒ ーの事 實 上 の派 組 的 大 家 と な る。 そ い て別 名 を 大
ノ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ
ークー
ヤ シュリ ー のそ れ を も 兼 學 い た 。 か つ先 述 せる ご と く 、 ア ワド ゥーテ ィパ と いふ 、 と紹 介 い 、さ ら に 彼 の弟 子 系統 に つ
セ翻謁 官 系統 に異 説を も 存 す 為。 從 つて、 小 時 足 以 下 の系 譜 い て詳 論 い てゐ る。 秘密 集 の喩 伽者 と い て は、 彼 に ヂ ニャー
は も と よ り、 大 時 足 以 前 の 系譜 に つ いても 、 諸 流 の所 読 に カ ナパ ーダ 流 の成 就 法 及 び 曼 茶 羅 儀 軌 (No 1881
) を1存
8す82
ーギ ュット派 的 立場 を 調 和 融 合 せ い め て 第 四読 を形 成 い た と る 。 い か い て ス ニョム ・ツ ェンポ な る名稻 に よ る 母 タ ント ラ ・
時 輪 タ ント ラ 成 立 に關 す る墓 本 的課 題
密 教 丈 化
サ ンパ ラ關 係 の著 作 は み あた ら な いが 、 青 丹 に記 す る そ の別 通 構 せら れ る 入物 を時 輪 の創唱 的人 物 、 小 時 足 を時 輪 活 動 の
名 ・性 格 ・活動 か ら 推 い て、 か や う な 人 物 は 、 いは ゆ る シ 々 代 表 的 中 心 人 物 と み と め る のを も つて、 最 も要 當 とす べき 結
バ リ ー シュワ ラ 以 外 に は 求 め え な い 。 ジ ャバ リ パ は 大 ア ワ ド ゥ 論 に達 い た。 こ の結 論 を再 確 認 す るた め に、 ヅ ナ ラ ト ナ の記
ー ティパ と い てア ワ ドゥー テ ィパ (マイ ト リ パ、 ア ド ワ ヤ ワヂ 述 を紹 介 い て おく のも 無 駄 で はあ るま い。 彼 は東 印 に生 れ 、
ラ、 小 シャパ リ パ ) と土ハに ア ワ ドゥー ティ父 子 と も稻 せ ら れ 、 同 地 に お い て具 足戒 を う け 、 さ ら に セイ ロ ン・ヵリ ンガ ・マガ
母 タ ント ラ ・サ ンバ テ關 係 の開 組 的 大 家 で あ る。 そ い て十 三 ダ 等 に 遊 學 い、 専 ら 六支 喩 伽 の 成 就 を な い、 十 五 世紀 來 藏
世紀 初 頭 に來 藏 せ るヴ ィブ ー ティチ ヤ ンド ラ は、す で に こ の シ い 、 時 輪 の諸 系 統 の教 令 を 傳 へた が、 時 輪 の完 全 な る相 承、
ャバ リ パ を時 輪 關 係 に持 込 み、自 己 の著 作 を シャパ リ パ に假 托 す な は ち、 灌 頂 ・タ ント ラ ・無 垢 光 ・教 令 等 噌切 の相 承 と い て
い て ゐ る。 ダ ーリ ヵ パ の ご と きも シヤ バ リ パ系 統 の大 立物 で は、 大 時 足 - 小 時 足 の系 譜 に かぎ る と い他 読 を み と めす 、
あ る。 ゆ ゑ に彼 此 綜 合 い て、 第 四読 は、 上 述 せ る ご と き母 タ 大 時 足 を時 輪 の創 唱 者 と みな い て ゐ る。 か やう な 後 代 の イ ン
ント ラ の諸 成 就 者 學 匠 と時 輪 と の關 係 を 重 覗 い A 彼 ら の派 阻 ド に お い て、 有 の読 を 傳 へ承 認 い て ゐた 事 實 は、 われ わ れ の
的 人 物 に時 輪 の梅 威 を 委 ね よう と し た に外 な ら ぬ と い つ て差 結 論 を 保 誰 す る有 力 な 根擦 の 一で な け れ ば な ら ぬ。

-36-
支 へあ るま い。 イ シ ド 人 チ ベット 人 の観 念 か ら すれ ば 、 そ れ き て、 如 上 の結論 か ら類 推 い て、時 輪 タ ント ラ の著 者 を 大
は決 い て稀 ら い い こ と でも 、矛 盾 い た こと で も あ り え な い の 時 足 、 無垢 光 のそ れ を 小時 足 とな す を安 當 と す る か に み え
で あ つ て、 他 の場 合 にお い ても 、 か や う な 仕方 は い ば い ば わ る。 も と も と そ の製 作 の浩 息 は、 傳 読 的 な覆 に よ つて明 瞭 で
れ わ れ の遭 遇 す ると ころ で あ る。 そ い て、 第 四 の系譜 が カ ー な いが、 傅 読 の ヤ シャ王 、 プ ンダ リ ー ヵ王 を 大 小 時 足 に 比 定
ギ ュット派 に と つて願 は い いも のな る こ と は言 を 要 b な い。タ い、 先 述 の法 戦 を 無 垢 光 の製 作 に關 す る劇 的 表 現 と考 へても
ー ラ ナ ー タ の系譜 も ピ ト ー の弟 子 を ナ ー ロ ー、 小 時 足 、 ア ワ 大 い た誤 り を 犯 いた こと にな ら ぬ であ ら う 。 か の著 名 な 宣 言
ド ワーテ ィの三人 と い て ゐ る黙 か ら み て、お そ ら く第 四 のそ れ こそ無 垢 光 の記 述 に も とつ い て ゐ る も ので あ る か ら で あ る
と同 じ き意 圖 に も と つ くも の と考 へら れ る。 (カンヂ ュール目録 .一三七枚)。 い か い な が ら 、 こ の大小 時 足
以 上、 わ れ わ れ は、 時 輪 系譜 に關 す る典ハ
擦 自 体 の信 擦 性 及 な る入 物 の 實 体 を 把 握 い 、 そ の活 動 の 全 領 域 を 知 る た め に
び そ の異 な つた 系譜 の性 格 内 容 に つ い て、 多 少 の考 察 吟 味 を は 、 わ れ わ れ の資 料 は あ ま り に も貧 弱 で、 時 輪 關 係以 外 の活
果 た い え た と 考 へる6 そ い て、・そ の結 果 、 いわ ゆ る大 時 足 と 動 つ い ては 二 三 の散 論 的 記述 を も つにす ぎ な い。
以 上 に よ り わ れ わ れ は、 時 輪 の成 立年 代 、 場 所 、 製 作者 に ト リ パ と ア ド ワ ヤ ワ ヂ ラ と の關 係 は 不 明 と せ ら れ て ゐ た (GPS
つ い て A 新 ら い い典 撮 を 紹 介 い つ 叉從 來 の 學 読 ・典 擦 に 再 吟 No LXI xci )。い か い 、 そ れ は 同 一人 の 異 名 で 、
味 を 加 へ、 併 せ て 経 典ハ
螢 達 史 に おけ る時 輪 の位 置 、 教 理 的 特 彼 は 七 十 八 歳 ま で 、 お そ ら く 一〇 六 〇 年 ご ろ ま で 生 存 し た と 考 へ
性 並 に 製 作 事 情 の 一班 を 知 り え た 。 よ つ て 、 次 に 、 そ の 流 傅 られる (青 丹 一 一 ノ 二 、 マ ル パ 傳 No 6771ラ ワー ・ ド ル ゼ ー タ
ク 傳 No 6772
デ ル ゲ ・テ ンヂ ュル 目 録 三 六 七 枚 参 照 )。彼 は ナ ー
史 に論 及 す べ き で あ る が 、 紙 白 の關 係 上 、 別 の 機 會 に ゆ づ ら
ロー の弟 子 たる と共 に シ ャバリ パ系 統 の人 で も あ り、 顯 教 密教 に
ね ば な ら ぬ 。 が 、 そ れ に關 聯 い て 一言 く り か へ い 附 加 し て お
わ た り 廣 く 条 修 い 、彌 勒 の 五 法 、 マ ハ ー ム ド ラ ー 、ア マ ナ シ カ ー ラ
き た い こ と は 、 マガ ダ を 中 心 と す る 大 小 時 足 の時 輪 活 動 は 、
等 イ ンド 及 び チ ベ ッ ト の タ ント ラ 佛 教 史 上 注 意 す べ き 重 要 入 物 た
早 く も 西 暦 一〇 四 〇 年 を さ か の ぼ り え す 、 時 輪 教 の 一般 的 流
る の み な ら ず 、 時 輪 と の關 係 に お い て も 注 意 せ ら る べ き で あ る 。
布 は 、 一○ ○ ○ 年 代 の中 葉 が ら 一 一〇 〇 年 代 の は じ め に か け
こ の 人 物 に つ い て は 、 別 に獲 表 を 期 し て ゐ る 。 (二 四 ・五 ・二 〇 記 )
て果 た さ れ た と いふ こと で あ る ※。
※ 文 中 に省 略 し た註 と し て、 一二附 加 い た い。 ナ ー ロー パ の傳 記 及
び そ れ と 密 接 な 關 係 に た つ 弟 子 、 就 中 マイ ト リ パ、 パ ムテ ィ ン

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パ、 ア テ シ ャ、 マル パ等 の傳 記 並 にそ の教 學 實 践 か ら し て、 ナ
ーーロー パが 時 輪 學者 であ つた と す る根 擦 を み いだ し え な い。 ト ー
流 等 で ナ ー ロ・
ー の弟 子 と ・
いは れ た ア バ ヤ ーカ ラ の ご と き ラ ー マパ
ー ラ王 の宋 年 一 一二〇 三〇 年 ご ろ ま で生 存 し た。 ナー ローパ が
アテ シ ャ來 藏 (一〇 四 二) 以前 に死 去 し て ゐた と す る なら ば、
年 齢 的 に い つて、 ナ ー ロー の弟 子 た り え な い。 事 實 ア バヤは ナ ー
ロー パ傳 にそ の弟 子 とし て名 を記 さ れ て ゐな い。 實 は、
マイ トリ パ
の 又弟 子 で あ る。 又、 ナ ー ロー パ に麟 せら れ る灌 頂 略 示 註 も ア ヌ
パ マラ ク シダ の引 用 を 存 し、 眞 僑 の程 疑 ば し い。 よ つて ナ ー ロ ー
が 時輪 學者 であ つた と いふ のは 甚 だ 疑問 で、 そ の傳 承 亀 後 に な る
ほ ど爽 展 し て ゐる ので あ る。 た ぐ時 輪 灌 頂 品 は 別行 し て ゐた ら し
い こと は 注意 す べき で あ る。 次 に、 ア ワ ド ゥ ティ ーパ ま た は マイ
時 輪 タ ント ラ成 立 に關 す る基 本 的 課題

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