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日蓮教学研究の課題

庵谷行



はじめに

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﹁脱構築﹂という課題をいただいた。課題が大きすぎて任に耐えない。﹁伝統の破壊﹂は、自身を切り裂くような
重く憂諺な作業である。﹁新しいものの提示﹂は学問内容からしてなじみにくい。
以上の点から、テーマに添って思いつくことを披瀝させていただくことにした。浅薄な意見提示であることをお許
しいただきたい。
一日蓮教学の概念
日蓮教学の概念は、 視点によって相違があるが、おおよそ次のように考えることができよう。
︵二日蓮聖人の教学
日蓮聖人ご自身の思想信仰を体系化したもの。日蓮聖人の教えを聞信することによって受領する教学の体系。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
︵二︶日蓮聖人とその門弟の教学
日蓮聖人のみならず、その門下の人々の思想信仰をも含めて体系化したもの。日蓮聖人以降、日蓮教学を研讃して
きた人師を網羅した教学史の体系。
︵三︶日蓮宗の教学
日蓮宗という教団の教学を体系化したもの。日蓮聖人系諸教団を代表する日蓮宗の歴史的展開をも踏まえた教学の
体系。
︵四︶日蓮聖人系諸教団の教学
日蓮宗をはじめとする日蓮聖人系諸教団の教学を体系化したもの。日蓮聖人系諸教団は時代の推移と共に、教学上

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の解釈の相違により分派や統合を繰り返してきた。それら諸教団の教学の体系。
なお、教学とは﹁教義の体系化されたもの﹂、教義とは﹁伝統的に承認された教え﹂の意味である。
以上のごとく、日蓮教学の概念は種々考えられるが、ここでは主に﹁日蓮聖人の教学﹂の意味で用いる。
二日蓮教学の本質
日蓮教学の本質は、日蓮聖人の宗教世界に自身がいかなる位置づけを持ちうるかを、日蓮聖人の教えに問うことで
ある。それは、日蓮聖人の教えを通して自身を覚知し自己を実現することであり、日蓮聖人の教えに自身を知り、日
蓮聖人の教えに身を浸して生きることでもある。すなわち、日蓮聖人への自身の信仰告白であると言えよう。そのこ
とは、日蓮聖人の教えに生きようとする者の信仰の論理化、日蓮聖人の教えについての信仰的内実の外的表明、内的
信証の外的表明、日蓮聖人の教えに身を浸して生きようとする者の信仰的主体の客観化・普遍化を意味する。
三日蓮教学の根幹
日蓮教学の根幹は、日蓮聖人の教えを通して頂受する法華経の信にある。それは、久遠釈尊が日蓮聖人に命じ賜う
た信、日蓮聖人が久遠釈尊から賜わった信である。
信心の興起︵発心︶は感銘・共感・共鳴・同信・歓喜・法悦などによる。信心の酒養と深化は、信心に立脚した解・
行、すなわち信解・信行である。信解が信行を促し、信行が信解を資ける。また、信行が信解を促し、信解が信行を
資ける。

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信心の本質は、法華経の虚空会における上行付属の信心である。これを本化の信と称する。
信心は相続されなければならない。不断の信心、不退の信心、水のような信心により、生々世々にわたって信心を
相続することが大切である。
信心の相続は、日蓮聖人の誓願を継承することである。不退転の決意のもとに、一切衆生の成仏のために、不惜
身命の生涯をおくられた日蓮聖人の御意を心として生きることである。
四日蓮教学の宗旨
日蓮教学の宗旨は、次のことがらを基本とする。
︵一︶本化の信
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
本化の信は題目信心である。本化に付属された題目を至心に受持する信心である。その題目信心は、題目によって
もたらされる信心である。
︵二︶三大秘法の宗教
三大秘法の宗教は、 本門本尊に帰依し、本門妙戒を持ち、本門題目を唱え、本化の信を成就することである。
︵三︶立正安国の実現
立 正 安 国 の 実 現 は 、 正法に立脚した社会を実現すること、題目信仰の社会を実現することである。
五日蓮教学の論証

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教学の正当性は教学の客観的論証によって裏付けられる。そのためには客観的真実の究明が必要である。それは、
日蓮聖人の真実を、自身の信解において客観的に観ることである。
ただし、教学の正当性の論証は、単に、教学を客観的に論証するだけでは成立しない。教学の主体的受容がなけれ
ば、教学の本質を失うことになる。主体的信において、教えを受け止めることが必要である。それが、客観的真実の
主体的受容である。それは、自身の信に日蓮聖人の真実を観ることである。
六日蓮教学の普遍化
信仰の論理的表明は、内なるものの外的表明であり、個的信の歴史への普遍化である。普遍的真理の提示は、常に
日蓮教学が問われ続ける課題である。時代を超えた普通的真理、民族を超えた普遍的真理をいかに提示できるかとい
うことである。
七日蓮教学と安心立命
日蓮教学は救いの教えである。それは、いかに法華経の成仏を達成せしむるかということである。日蓮教学ではこ
れを、即身成仏・霊山往詣と称している。即身成仏は現在成仏であり、霊山往詣は未来成仏である。そして、現在成
仏は未来成仏であり、未来成仏は現在成仏である。
三世にわたって安住する永遠の浄土のことを、日蓮聖人は﹁本時の娑婆世界﹂と称されている。﹁本時の娑婆世界﹂
は信仰的感応に成就する不滅の浄土である。
立正安国は、日蓮聖人の生涯にわたる宗教的目標である。正法に立脚した安穏な国士の実現こそ、日蓮教学の究極別
の課題である。
八関連する研究分野
諸分野の研究に立脚した日蓮教学研究の確立が必要である。関連する主な諸分野をあげると次のようになる。
︵二諸宗教
仏教。
仏教学。
思想。歴史。経典。文化。その他。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
諸宗派の教学︵宗学︶。
思想。歴史。経典。文化。その他。
キリスト教。
イスラム教。
ヒンズー教。
その他。
︵二︶諸思想
儒教。

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道教。
その他。
︵三︶諸科学
人文科学。
哲学。吟倫理学。 歴史学。文学。美術。民族学。その他。
社会科学。
社会学。 経済学。政治学。法学。統計学。その他。
自然科学。
地理学。 環境学。地学。生物学。物理学。化学。生命科学。その他。
その他。
各研究分野は多様化、細分化、専門化している。それらの研究成果に立脚した日蓮教学の研究が必要である。
九世界における日蓮教学の位置付け
世界における日蓮教学の位置付けについて考えると、次のようなことがらがあげられよう。
宗教思想上の位置付け

九 八 七 六 石 四 頁 二 一

仏教思想史上の位置付け

法華仏教思想史上の位置付け

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世界思想史上の位置付け

世界歴史上の位置付け

日本歴史上の位置付け

世界文化における位置付け

日本文化における位置付け

その他
これら個別の研究とこれらを総合した研究の両面から、トータルに日蓮教学を見据え、位置付けていくことが必要
である。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
十研究の視点
研究には、個別的研究と総合的研究、主観的研究と客観的研究、あるいは比較研究などがある。今後はさらに新し
い視点に立った研究が望まれる。諸分野の視点からの研究、諸分野との共同研究などである。また、新しい研究方法
の提言や確立も必要であろう。弓︵情報技術︶の活用などはその一例と言えよう。
十一日蓮聖人に立脚した日蓮教学
日蓮教学は、日蓮聖人に立脚したものでなければならないことは言うまでもない。すなわち、日蓮聖人における日

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蓮聖人教学、日蓮聖人を視点とした日蓮宗教学、日蓮聖人を視点とした日蓮聖人系諸教団の教学である。どのような
研究領域から日蓮教学を論じても、必ず、日蓮聖人の教えに立脚することが大切である。
十二時代と日蓮教学
教えは時代と共にある。時代に応え、時代を導き、時代を救うことに日蓮教学の使命がある。したがって、いつの
時代の要請にも対応しうる日蓮教学、時代を超えて存続しうる日蓮教学、いつの時代をも救いうる日蓮教学の構築が
必要である。
十三現代社会と日蓮教学
現代社会は、資本主義社会、経済原理優先の社会、利益追求の社会であり、合理主義に立脚した価値観が充満し、
物質的価値、貨幣価値に偏向している。現代社会の内実は、少子化、高齢化、人口減少、規模の縮小、統廃合、情報、
スピード、競争、リストラなどの諸問題に満ちている。
そのような社会にあって、日蓮教学の果たすべき役割は何か。日蓮教学は、社会の人々に、充実感、達成感、自己
実現、満足、生きがい、喜び、安らぎ、法悦を付与する。日蓮教学は救い、成仏を実現する。このように、日蓮教学
は、時代に応え、時代を救う精神的価値を構築するものでなければならない。
そこで、現代社会の価値観と日蓮教学の価値観とをどのように位置付けるかが問題となる。
一般的には、相対、対時、包括、開会、一体、和融、会通などの視点が考えられる。理念と現実を見ると次のよう

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に考えられる。
理念としては、俗諦開会︵真俗不二︶・世出不二︵世法即仏法︶などが考えられよう。俗諦開会︵真俗不二︶は真
諦による俗諦の開会である。世出不二︵世法即仏法︶は仏法による世法の開会である。現実は、人々の認識、人々の
価値観から考えると、経済原理優先の社会である。
それでは、現代社会においては、どのように日蓮教学を実践していけばよいのか。いくつかの課題をあげておきた
IO
IV
社会福祉。教育。更生保護。医療現場。ボランティア。ビハーラ活動。介護。看護。国際支援。地域支援。その
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これらは、身体的・精神的、あるいは経済的に困窮し苦悩する人々と共に歩む活動であり、実際に、宗門や各寺院
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
において、伝統的に営まれていることも多い。
現代は、教団の危機・寺院の危機が叫ばれている。信仰意識の希薄化は精神性の軽視となって現れている。宗教教
団の社会問題化、カルト教団に対する不安と恐れが、宗教全体に対する懐疑を生んでいる。核家族化、家族の崩壊、
家の伝統の消滅は檀家意識の希薄化を助長している。急激な少子化・高齢化と人口の一局集中は、村落の崩壊、共同
体社会の解体、地域における伝統の消滅を招き、寺院においては檀家の急激な減少となって現れている。伝統の形式
化、儀礼の簡略化、儀礼における宗教性の軽視は、法要儀礼の軽視に繋がっている。自然葬、樹木葬などは、葬儀や
遺骨に対する意識の変化を生み、葬儀における宗教意識の希薄化を招き、やがて葬儀無用論、墓地不用論に繁がって
いノく、o

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このような状況下にあって、必要なことは、社会と共に歩む姿勢を樹立することである。社会のニーズに対応し、
人々の心に語りかけ、人々と共に歩む教団となることである。寺院を開放し、人々の心のより所、心のふるさととす
るなど、地域に根付いた活動を確立していかなければならない。
教師は、地域の人々のよるずの相談を受け、苦悩に寄り添うことで、日蓮教学を体現していくのである。そのため
にも、日蓮教学に立脚したカウンセリングの実践者の育成が緊急に望まれる。
十四﹁日蓮聖人の真実﹂の究明
日蓮聖人を知るためには﹁日蓮聖人の真実﹂の究明が必要となる。日蓮聖人の実像を明らかにするためには、次の
ことがらが考えられる。
︵二日蓮聖人の生涯
伝承の検証。資料の検証。
︵二︶日蓮聖人の信仰
日蓮聖人の教えの信解。日蓮聖人の御意の信受。
︵三︶日蓮聖人を知る基本資料
日蓮聖人遺文。
日蓮聖人のお言葉で日蓮聖人を知る。日蓮聖人の御意で日蓮聖人を知る。
︵四︶日蓮聖人の環境

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日蓮聖人をとりまく生活環境を明らかにする。
︵五︶日蓮聖人の時代
日蓮聖人をめぐる歴史社会を明らかにする。
︵六︶日蓮聖人の宗教の思想的背景
日蓮聖人をめぐる諸思想を明らかにする。
︵七︶日蓮聖人の仏教受容
日蓮聖人の仏教研讃とその受容を明らかにする。
︵八︶日蓮聖人の法華経受容
日蓮聖人の法華仏教の系譜とその思想的特色を明らかにする。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
それには、内相承・外相承という問題がある。
本門法華仏教の内実を明らかにする。
︵九︶日蓮聖人の天台教学受容
日蓮聖人の天台教学受容とその超克を明らかにする。
それには、中国天台・日本天台の検討が必要となる。
︵十︶その他
十五日蓮聖人遺文の検討

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日蓮聖人遺文は日蓮聖人の真実を知るテキストである。日蓮聖人遺文については、次のような検討が必要である。
︵二真偽の検討
真蹟現存遺文の再検討。
完存遺文。断簡現存遺文。
真蹟曾存遺文の再検討。
写本遺文の再検討。
直弟写本。古
古写写圭
本。 集成写本。個別写本。
刊本遺文集の再検討。
遺文集作成の意図・方針。
遺文集の底本。
遺文集成立の背景。
︵二︶系年の検討
︵三︶対告者の検討
︵四︶遺文解釈の検討
︵五︶諸
諸研研究分野からの検討
︵六︶日
日蓮蓮聖人遺文の総合的研究
︵七︶その他

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遺文の検討については、﹁昭和定本日蓮聖人遺文﹄に従来の研究成果の集約が見られるが、その後の研究において、
さらに種々の意見が提示されている。
十六日蓮聖人遺文集の公刊
日蓮聖人の真実を知るためには、より正確な日蓮聖人遺文集の公刊が求められる。
︵二真蹟遺文集の公刊
写真製版。活
活字本。 解説本。
︵二︶写本遺文集の公刊
写真製版。活字本。解説本。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
︵三︶日蓮聖人書写本の公刊
写真製版。活字本。解説本。
より正確な日蓮聖人遺文集の公刊によって、日蓮聖人の実像が明らかとなる。
十七日蓮聖人をめぐる人々の究明
︵二弟子
︵二︶檀越
︵三︶敵対者

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︵四︶その他日蓮聖人にかかわった人々
︵五︶その時代に生きた歴史上の人々
十八日蓮教学の体系化
日蓮教学の体系化を試みた過去の主な業績として、一妙院日導の﹁祖書綱要﹂、田中智学の﹁本化妙宗式目﹄など
がある。その後の研究成果に立脚した、現代における日蓮教学の体系化が必要である。
十九日蓮教学研究の一層の充実
日蓮教学研究の一層の充実のためには、確実な資料と正当な理解が必要である。そのためにはさらなる資料の発掘
と公開が望まれる。
︵二資料調査
宗宝調査。 研究所調査。研究者調査。
︵二︶資料の整理
︵三︶資
資料料の
の公公開

資料の写真製版。資料の活宇化。資料の公刊。資料の展示。
︵四︶資料の検討
︵五︶資料の修復・保存

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︵六︶資料についての正当な理解
資料についての正当な理解は、客観的事実に基づいた信仰的領解、総合的会通が必要である。
日蓮聖人理解の基本的姿勢は、いかに日蓮聖人の真実に基づいて日蓮聖人に直参するかにある。
二十日蓮教学の流布
布教は、信仰の感動・感銘・共感・歓喜・法悦の表明であり、釈尊の慈悲行の実践である。日蓮教学においては、
法華菩薩行の実践である。日蓮教学は、人々と共に歩み、人々の心をとらえ、人々の救いを実現する教えである。
教えに感動し法悦する信仰者の出現は、信心の相続である。そこから教えが敷術し、信仰が浸透していく。法門の
提示は、その時代の人々に理解されるものでなければならない。日蓮教学の流布は、その時代に日蓮聖人を蘇らせる
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
ことでもある。
二十一日蓮教学と教師の育成
日蓮聖人の教えは、主に教師によって布教されることが多い。教師の資質は布教の成果を左右する。
日蓮教学は教師育成の理念である。本化の教師は、本化の信心に生きる人、真の教えを弘める人、法華菩薩道の実
践者、宗教的自覚者でなければならない。
日蓮教学は、教育組織、教育機関、教育方針、教育内容、教育カリキュラム、教育制度、教師育成のありかたなど
を考える場合の基本理念となるものである。日蓮教学に通達した教師の輩出は、教団を活性化ざせ社会を導く力とな

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る。
二十二日蓮教学と法要儀礼
日蓮教学に立脚した法要儀礼が必要である。儀礼は教えの表明であり、布教の実践である。
二十三日蓮教学研究の興隆
日蓮教学研究の興隆のためには、人材、組織、機関、学術発表、学会組織、研究誌、研究費などの充実が必要であ
フ︵句○
二十四日蓮教学研究者の育成
日蓮教学研究者育成のためには、研究生・研究員の拡充、宗費研究生・宗費研究員の拡充、研究専門職者の配置な
どが必要である
二十五日蓮教学研究組織の充実
日蓮教学研究組織の充実のためには、国際的研究組織の設置、国内の研究組織の充実が必要である。とくに国内の
研究組織の充実のためには、地域における研究組織の設置が望まれる。

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二十六日蓮教学研究機関の充実
日蓮教学研究機関の充実のためには、宗門による研究所の設置、教区や管区における研究所の設置、寺院による研
究所の設置、有志による研究所の設置などが考えられる。
二十七日蓮教学研究と日蓮教学研究者育成における宗門と大学の役割
︵二宗門の役割
宗門の教育研究の目的。
宗門の理念に基づいた教育研究。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶
︵二︶大学の役割
大学の教育研究の目的。
大学創立の理念に基づいた教育研究。
両者が力を合わせて、より効果的な研究と研究者育成に努める必要がある。
二十八日蓮教学研究成果の活用
研究誌を活用したり研修会を開催して、研究成果の理解と周知を徹底し、研究成果をタイムリーに布教現場で活用
することが望ましい。研究成果が布教の現場で活用されてこそ、研究が生きたものとなる。研究と布教現場との相互

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交流が必要である。
二十九日蓮教学と教団
日蓮教学は、教団の存立の基本理念である。教団は常に設立の理念である日蓮教学に照らし合わせて運営されるべ
きである。教団は、時代に対応した組織運営、未来を展望した組織運営を心がけるべきである。
三十日蓮教学と諸宗教
日蓮教学における諸宗教の位置付けを明確にすることが必要である。それに立脚して、日蓮教学と諸宗教との関係
を考えるべきであろう。諸宗教間においては、確固たる信仰の理念に基づかないかきり、真の対話は成り立たないと
思われる。
三十一日蓮教学と世界平和
日蓮教学は、世界の平和、宇宙の平和を志向した教えである。世界平和の理念、世界平和のための行動は、日蓮教
学においては立正安国の教えとして提示されている。
むすび
問題点が広範にわたっているため、重複している事項もある。各項目は順不同である。思いつくままに、問題点を

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あげたにすぎない。
日蓮教学の探求は、多くの先師によって営々となされてきた。それら諸先師の業績を一々に振り返り踏まえること
は容易ではない。さらに、時代に対応した教学の提示とその実践は困難な道程である。しかしながら、時代は待つこ
とはない。人々の声を聞き、人々の心に寄り添い、人々と共に歩む日蓮教学が必要とされているのである。
日蓮教学研究の課題︵庵谷︶

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