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(博論様式5)

学 位 ( 博 士 ) 論 文 要 旨

学生番号 DS18 - 001 氏 名 李 炅俅

研究指導教授 高橋 善丸 研究領域 デザイン

題 目

アニメ作画のための人体立体構造や動きの教材

※芸術制作研究分野のみ記入

※作品テーマ アニメ作画のための人体立体構造や動きの教材

※論文題目 アニメ作画教育のための人体解剖学の利用と応用

要 旨(1200字以内)

2D アニメーション作画において最も多く描かれるのは人物であり、それを描く職業はアニメーター

である。アニメーターは作品に合わせ画風を変え、様々な角度からキャラクターを動かさなければなら

ないため、高い画力を必要とする。そして、この技術を支える基礎の一つに人体解剖学がある。しかし、

人体解剖学は初心者への入門のハードルが高く、人体の構造が複雑なため、既存の書籍でも人体の立体

構造にだけは優しくないのが現状である。本研究は筆者がアニメーションを学びながら、人体解剖学の

必要性と収得する困難さを感じたことから始まった。従って、本論ではその困難を改善する方法に対し

て論じていく。これを大きく二つに分けると次の通りである。

一つ目は、2Dアニメーションを学ぶ学習者により分かりやすく人体の立体構造を伝える方法論の考

察である。曲線の形が多く、複雑に絡み合った人体の立体構造に直観性を持たせ、より分かりやすく学

習者に伝えるために、各筋肉をキューブブロックの形態に変換し写実的な人体との比較を通して構造の

理解を深める。
二つ目は、2D アニメーションに必要な人体解剖学の形態に対する考察である。2D アニメーショ

ン作画は写実的な人体ではなく、省略と誇張された人体モデルを描く。一般的な人体解剖学は細かな筋

肉まで扱うが、2D アニメーション作画に必要となる人体解剖学の範囲を定め、それに合わせた人体解

剖学の形態を初心者に提示する。 この二つの考えを基に教育目的の書籍と映像を制作する。書籍は 3

冊構成で、2D アニメーション作画での人体解剖学の必要性と人体の基本パーツや骨を説明する「基礎

編」から、キューブブロック人体で構造を説明する「構造編」、最後に人体の可動を説明した「動き編」

の順である。また、映像はキューブブロック人体と写実的な3D 人体モデルを制作し、パソコン上で動

かしたもので、書籍を補完する役割を持つ。本研究の結論として、アニメーション作画に細かな筋肉を

含む全ての解剖学的知識が必要な訳ではなく、解剖学の知識が画力向上に直結するわけでもない。しか

し、写実的な情報を省略誇張を通してアニメーション作画にしていく過程で、人体解剖学はアニメーシ

ョン作画にとって必要な作業道具として定義できる。道具としての人体解剖学が成立するには、概念と

しての理解が必要であり、この理解を通して写実的情報を様々な画風に合わせ変換できる応用力が身に

つくと考える。この概念を視覚化し提示したのが、キューブブロック人体である。これを通して2D ア

ニメーションを学び始めた学習者が迷うことなく、様々な人体解剖学の書籍や資料を活用でき、筆者が

提示したキューブブロック人体のように、応用力を身に付け自分ならではの人体モデルを概念として編

み出せたらと考える。また、アニメーションの分野だけでなく、人体解剖学を必要とする様々な分野の

人々にこの研究が役立てたらと考えている。

(総字数:27,592 字)
アニメ作画教育のための人体解剖学の利用と応用

目次

序章 pp.4 - 5.

第1章 人体解剖学

1.人体解剖学の定義と起源 p.6.

2.人体解剖学の展開 pp.6 - 7.

第2章 美術解剖学

1.美術解剖学の定義 p.8.

2.美術解剖学の歴史

(1)ルネサンスの芸術家たち pp.8 - 9.

(2)中世とルネサンス時代の絵の比較 pp.9 - 10.

3.美術解剖学の今日 pp.11 - 12.

第3章 アニメーションと人体解剖学

1.商業アニメーションとアニメーター pp.13 - 14.

2.アニメーションでの人体解剖学の必要性 pp.14 - 15.

3.漫画・イラスト,フィギュア,アニメーションでの人体解剖学 pp.15 - 20.

(1)漫画・イラストでの人体解剖学 pp.16 - 17.

(2)フィギュアでの人体解剖学 pp.17 - 19.

(3)アニメーションでの人体解剖学 pp.19 - 20.

第4章 人体解剖学の問題

1.人体解剖学の難しさ pp.21 - 22.

2.人体解剖学のとらえ方 pp.22 - 23.

2
第5章 キュビズムと人体解剖学

1.図形化の必要性

(1)概念としての理解 p.25.

(2)適用するための道具 pp.25 - 26.

2.人体の可動部分の図形化 p.26.

第6章 人体解剖学のとらえ方と教育論

1.2D アニメーションの絵に対する考察

(1)シルエット pp.27 - 28.

(2)省略誇張 p.28.

(3)作業工程 pp.29 - 30.

2.人体解剖学の適用とそのとらえ方 pp.30 - 31.

3.教育としての人体解剖学

(1)人体解剖学にまつわる概念論 pp.32 - 35.

(2)人体の立体構造の方法論 pp.35 - 37.

(3)教育の流れ p.37.

第7章 具現化 pp.38 - 40.

第8章 結論 p.41.

参考文献 pp.43 - 44.

映像作品 p.44.

立体製品 p.44.

3
序章

一般的にアニメーションと言えば何を思い浮かべるだろうか。世界的に有名なディズニ

ーのアニメーション、または日本のジブリ、商業テレビアニメーションなどを思い出すの

ではないだろうか。アニメーションを定義するなら、絵や人形など、動かない物体を静止

した場面で 1 枚 1 枚を撮影し、連続で流して見せて、まるで絵や物体が生きて動くような

映像を作り出す技法を言う。つまり、アニメーションと定義される範囲は幅広く、上記の

一般的な商業アニメーションだけでなく、作家性を持つアートアニメーションもあれば、

技法による分類では紙以外に、砂で表現するサンドアニメーション、立体人形を動かして

表現するストップモーションアニメーションなど、様々な形が存在する。極端な例でいえ

ば、わずか 1 枚の絵を揺らして見せるだけでもアニメーションは成立する。作家個人の意

思を表現するアートアニメーションの場合、作家個人で長い時間をかけて制作する場合が

多いが、現代の商業アニメーションでは各分野の専門グループが集まり数十から数百人の

メンバーがチームとなって共同制作をする。

本論は商業アニメーションを基準とし、3DCG アニメーションではなく、2D 作画アニ

メーションに人体解剖学の知識を応用して、平面に絵を描く能力を向上させる方法につい

て考察していく。

現代の商業 2D アニメーションは、絵を一枚一枚描いて動きを表現するため、時間や労

力のかかる作業であり、大人数のスタッフが参加して分業の形で一つの作品を作り上げて

いく。従って制作現場は様々なグループに分かれている。中でもアニメーションで最初に

思い浮かぶ仕事はおそらくアニメーターである。アニメーターはアニメーションの核とな

る動く絵を担当する職業で、最も多く描かれるのは人物である。しかも、ただ静止した一

枚の絵を描くのではなく、与えられた状況に合わせ複数の絵を描き連続した動きをキャラ

クターに与え動かさなければならない。これには高度な画力が要求され、これを裏から支

える基礎力の一つが人体解剖学と言える。しかし、人体の立体構造について書かれた書物

は、初心者には難易度が高く理解しにくい。

本研究は、人体解剖学の知識をよりわかりやすく学習者に伝えたいという気持ちから始

まった。筆者は子供の頃から絵を描き始め、自然と漫画やアニメーションに将来の夢を抱

くようになり、大阪芸術大学へと進学することになった。そこでアニメーションを専攻し

年間制作のアニメーション企画・制作の中で絵の実力を上げるには、何が必要なのかどの

4
ような方法が正しいのかと考察し、試行錯誤を積み重ね絵を描いてきた。その過程の中、

人体解剖学と触れる事になり、様々なキャラクターの動きを描かなければならないアニメ

ーションの中で、人体解剖学を理解して作画を練習する事が画力の向上に繋がるのではと

考えた。しかし、人体解剖学の資料や本を探し、勉強を始めたのはいいものの、難関にぶ

つかった。人体の構造は複雑で、その構造を理解するには非常に長い時間と訓練が必要で

ある。そこで、人体の構造が初心者にも分かりやすく伝わるような資料ができないだろう

かと考え、これをきっかけに、本論文の主題となる、アニメ作画のための人体立体構造シ

リーズを研究制作するようになった。本研究では、初心者への人体解剖学理解の容易性と

アニメーションを勉強する人の画力向上という、二つの大前提があり、その目的は大きく

二つに分けられる。

第一の目的は、既存の人体解剖学とは少し異なる観点から、人体解剖学に初めて接する

人でも、人体の構造を容易に理解し応用できる方法論の考察。第二に、その方法論に通じ

た教育論の提案や教材制作である。一つ目は、筆者が人体解剖学を学ぶとき、絵に適用し

ていく過程で痛感した人体解剖学の立体構造を理解する難しさを、新たな提案で解消でき

たらと考えたからである。二つ目は、その提案を一つの方法論としてまとめ上げ、教材制

作を行う事であり、アニメーションを学ぶ初心者が、段階を踏んで人体立体構造を理解

し、迷うことなく、正しく画力向上をしていける事を目的としている。

そして、本研究の最終目標は、2D アニメーションで必要とする人体解剖学とは、また

その形とは何なのかを考察することである。人体解剖学の定義、学問の範囲はとても広く

様々な分野に使われている。そして、人体そのものも、複雑に構成された複合体であり、

知れば知るほど奥深い。その中で、2D アニメーションに必要な人体解剖学の形とは、写

実的なありのままの人体解剖学なのだろうか、それともある概念で簡略化された人体解剖

学なのだろうか。このことに対する自分ならではの答をこの研究を通して導き出したい。

5
第1章 人体解剖学

1.人体解剖学の定義と起源

人体解剖学とは、人体の構造を探究する学問である。人体解剖の起源は正確に知ること

は出来ないと言われているが、古代エジプト( 紀元前 3200 年-332 年 )ではミイラ制作

の過程で、的確に臓器を摘出し分類しているし、中国の 『黄帝内經』( 紀元前 475 年-

221 年 戦国時代 )の腸胃編には腸や胃の長さや大きさ、容量等が細かく説明されてい

る。また、 古代ローマの学者ケルスス( 紀元前 25 年-紀元後 50 年 )の『医学につい

て』という書籍の外科項目には骨格論などを含む解剖学的記述も多いという。1

このような点から、解剖学の起源は人間の身体の構造を知りたいという欲望から始まっ

たのではないかと推測できる。またそうでないとしても、人間の構造を知ることと解剖学

は互いに欠かせない存在といえよう。

2.人体解剖学の展開

解剖学は、大きく二つの道に分かれて発展してきた。一つは医学分野での必要性による

もので、二つ目は生物学的観点からの純粋な好奇心から始まる解剖である。2

現代の解剖学の学問的な基礎を成立させたのは、やはり、医学の進歩のため死体解剖を

行ったことであろう。ここではその発展に影響を及ぼした人物であるガレノス( Claudius

Galenos, 129-216 )、モンディーノ・デ・ルッツィ( Mondino de Luzzi, 1275-1326 )、ア

ンドレアス・ヴェサリウス( Andreas Vesalius, 1514-1564 )を見ていく。先にガレノス

は、古代ローマの解剖学と近代医学の先駆者として仰がれる人物で、古代医学を集大成

し、1000 年以上にわたってヨーロッパの基礎医学に影響を与え続けた医者であった。彼は

猿など人と類似性の高い動物を利用した解剖や、臓器や血管などの生理学的な実験に積極

的に取り組んでいたが、当時はもうすでに人体解剖学が行なわれなくなった時代であり、

そのせいで動物の解剖や過去の医学書などの文献を参考にしながら、人体の構造を推測し

たと考えられる。現代の医学とは異なる点もみられるが、一致する部分も多く、彼のこう

1
『黃帝內經養生大道』(張其成, 韓国版, 2015年) p.262.『人体解剖ルネサンス』(藤田尚男, 1989年) p.30.
2
『人体解剖ルネサンス』p.14.

6
いった功績はのちに中世のモンディーノやヴェサリウスに大きな影響を与える。3 次にモ

ンディーノ・デ・ルッツィは、中世時代に唯一無二の解剖学書籍の著者である。ボロニャ

大学で学んだ彼は、その大学で解剖学教授となり死ぬまで勤めた。彼が残した最大の業績

は、自ら 2 体の遺体を解剖し、1316 年に著書『解剖学』(Anathomia)を出したことであ

る。4

図 1 Mondino de Luzzi , Anatomia 図 2 Andreas Vesalius , De humani corporis fabrica (1543)


Mundini (1536) , p.163. p.170.

アンドレアス・ヴェサリウスは、先代の解剖学の意思を受け継ぎ、現代医学や解剖学に

大きな影響を及ぼした人物である。ガレノスの研究が動物の解剖からきている事を知り、

多くの人体を解剖し芸術家の協力を得て 1543 年、著書『ファブリカ』( De humani

corporis fabrica libri septem )を執筆した。この著書で注目したい所は挿絵の品質にある。

これは(図1)のモンディーノの『解剖学』と(図2)の『ファブリカ』の挿絵を比較し

てみると良く分かる。(図 1)は平面的であり、足だけに立体感をもたらそうとしている

部分や骨盤の大きさが異常だったりするなど、全体のバランスに違和感を感じる部分が多

い。しかし(図 2)の場合は全体の人体のバランスもよく、背景との位置関係を示すこと

で存在感を出しており、陰影のつけ方も繊細である。これらからするに、『解剖学』より

も『ファブリカ』が圧倒的に完成度の高い挿絵を掲載していると考える。これは当時の芸

術家達も人体の構造を知る事でもっと良い絵が描けるという信念があったからである。こ

のことから、医学と芸術の共同作業で現代解剖学の土台ができたとも考える。

3
『人体解剖ルネサンス』pp.32-34.
4
『人体解剖ルネサンス』pp.62-63.

7
第2章 美術解剖学

1.美術解剖学の定義

医学の分野と純粋な学問として発展してきた人体解剖学は、ルネサンス時代に入り, 美

術領域にまで適用され始める。解剖学が人体の骨格や筋肉、そして、各臓器や血管、神経

系など細部まで含んだ人体全般を扱う学問とするならば、美術解剖学は、人体のフォルム

を形成している骨格や筋肉をメインに扱う、限定的な解剖学と言える。また、さらに男女

の違いや身体の比例バランス、年齢、体格差などによる様々な違いも扱っているので本質

的な人体の学問というより外見、つまり見える部分に重きをおき、限定的でありながら

も、美術の分野によって絵から彫刻をはじめ後述する商業芸術に当たる漫画やアニメーシ

ョンなど様々な分野に分かれると考えられる。

2.美術解剖学の歴史

(1)ルネサンスの芸術家たち

図3 Leonardo da Vinci, Studies of 図4 Leonardo da Vinci, Recto: The muscles of the arm, and the veins
central plan buildingsc. (1498. of the arm and trunk. Verso: The muscles of the shoulder, arm and neck
Bibliothèque de l'Institut de France, (1510 - 1511)
Paris)

レオナルド・ダ・ヴィンチ( Leonardo da Vinci, 1452-1519 )を筆頭に、ルネサンス

時代の芸術家達は骨格や筋肉の構造、それらの機能をきちんと理解しなければ、正確な人

物の描写ができないという信念があった。レオナルド・ダ・ヴィンチは300体以上の死体

を解剖し、700点ほどのスケッチを残している。元々建築家であった彼は、建築物を研究

する際に、構造を分析し絵におこしており、これが自然と解剖学のドローイングにも影響

8
したのではないかと推測される。また、ミケランジェロ・ブオナローティ( Michelangelo

di Lodovico Buonarroti Simoni, 1475-1564 )はレオナルド・ダ・ヴィンチと肩を並べる

ルネサンス時代を代表する芸術家の一人である。完璧主義者だった彼は、レオナルド・

ダ・ヴィンチのように自分で研究した解剖学の資料を残してはいないが、解剖学の理解な

しでは表現不可能な彫刻作品を始め、彼の力作とされる壁画の「天地創造」には、人体の

様々な臓器を連想させる隠し絵をたくさん表現していることから 5
、彼に解剖学の知識が

あったことがうかがえる。

このように、ルネサンス時代の芸術家たちによる、人体を解剖し芸術作品に反映する努

力の蓄積が美術解剖学の根幹になったのでないかと考えられる。

(2)中世とルネサンス時代の絵の比較

図5 聖母子 1290–1300 図6 リッタの聖母 1490-1491


ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ レオナルド・ダ・ヴィンチ
New York. The Metropolitan Museum of Art Hermitage Museum

絵画での人物の描き方は中世からルネサンスに渡って大きく変化した。これは中世では

神は人間と異なる存在だという神聖な見解であったが、ルネサンス時代に入り、人間と変

わらないという考えが広まり、それに加え人体解剖を美術に適用させた美術解剖学の発達

5
医学術誌Keimyung Med J Vol. 37, No. 2, December, 2018年『ミケランジェロ美術の中の解剖学』
によれば創造主を始め様々な登場人物の輪郭を脳や肺など人の臓器を象徴的に表している。

9
によるものであろう。ここでは、マリアとイエスをモチーフとした聖母子を使ってその違

いをみていく。

中世時代の絵(図5)とリアリズムが追求されていたルネサンス時代の絵(図6)を比

較すると、大きな違いが確認できる。中世時代の絵は平面的で、立体感や空気感、奥行き

を感じにくく、人体の描写に対しても身体のバランスが整っておらず、何だか不自然な雰

囲気を漂わせている。関節の曲がり方やフォルムからも歪みを容易く見つける事が出来

る。また、人の全身をほとんど布地で覆った状態で描写しており、肉体に対する理解がと

ぼしい分、垂れ布でカバーしようとしているようにみえる。そして、母と子の大きさも違

和感があり、巨人と小人のように見えたりもする。一方、ルネサンス時代の絵は、一瞬の

動作に躍動感があり、大胆に衣服の下の身体を表現すると同時に衣服の上からも人体のラ

インがすけてみえる。そして、全体的にずっしりとした量感や肌や布地の質感の描写が際

立っており立体感がうまれ、現実味のある存在感を出している。

これらを通しても分かるように、絵画で人を描くとき外から見える部分だけでなく、外

から見えない部分である身体の構造や動きの原理を理解することで、さらに写実的で立体

感のある絵が描けると考えられる。従って、人体を描写する際、人体解剖学が重要である

ことの裏付けとなることが分かる。

10
3.美術解剖学の今日

図7『アーティストのための美術解剖 図8『360°どんな角度もカンペキマス
学』(ヴァレリー・L・ウィンスロゥ, ター! マンガキャラデッサン入門』
マ ー ル 社 , 2 0 1 3 年 ) ( Valerie L. ( 藤井英俊, 西東社, 2017年 )
Winslow, Classic Human Anatomy: The
Artist's Guide to Form, Function, and
Movement. Watson-Guptill, 2008)

今日の美術解剖学は、様々な分野へと枝分かれし、発展してきた。純粋な芸術だけのた

め、もしくは、人体の造形をみて写実的に描写をするだけのためだけでなく、商業的芸術

の領域にまで拡張している。そして、それに関する書籍やその下位にカテゴライズされる

多くの書籍が出版されている。 現代の美術解剖学の書籍を大きく二種類に分けて考える。

一つ目は、(図7)のような専門的で、アーティストのための、もしくはアートのため

のなどの修飾語が付いている美術専門家のための本格的な人体解剖学書籍である。二つ目

は、(図8)のように入門者用の書籍で、キャラクターの描き方、男性の描き方、女性の

描き方など、人体解剖学だけを扱っているのではなく、デフォルメされた絵に部分的な人

体解剖学を繋ぎ合わせ、入門者に手軽に人体解剖学を見せる書籍が多い。

これがさらに枝分かれしていくと、商業芸術の分野ごとに必要とされる技術が違うの

で、漫画、アニメ、イラスト、フィギュア造形用など細かく分類されていく。これには共

通の解剖学的知識も含み、著者や分野によって様々な分析やテクニックなどが入ってい

る。 また、インターネットの発達により、書籍や専門教育機関だけでなく、解剖学に容易

く接する事ができる時代になっている。

11
書籍の電子化はもちろ

ん、全世界を繋ぐウェブの

多彩な検索機能や、様々な

情報共有ができる SNS 媒体

の発達、それによる、ピン

タレスト6、ピクシブ 7 など

美術系のサイトやアプリの

登場により、数え切れない

図9 検索エンジン Google 図10 画像アプリ ピンタレスト ほどの人体解剖学情報やノ

ウハウが、インターネット

上に漂流している。これらの情報は断片的に広範囲で散らばっている。書籍が一つのテー

マの下で、綺麗にまとめられた物だとするならば、インターネットは様々な情報があちこ

ちに散らばり、検索ワードにより羅列されている物だと思えばよい。

今日、美術解剖学は純粋に芸術を追求していた過去とは違う様相をいくつか見せてい

る。それに最も大きな影響を与えたのは、一つ目が商業芸術の発達であり、二つ目がイン

ターネットの発達だと考える。この二つにより、誰しも手軽に芸術に触れ、自分の作品を

生み出す事ができ、全世界の人々と共有し発表する事ができる時代となった。それに伴

い、解剖学の分野も自然と商業的分野に進出したのではないかと 考えられる。

6
インターネット上に画像を載せたり収集して共有し合うサービス
7
インターネット上に絵を載せて展示できるサイト

12
第3章 アニメーションと人体解剖学

アニメーションとは、 動かない物体や絵を映像制作の一つの手法として連続して撮影

することで、動いているように見せる映像のことを言う。ラテン語アニマ(anima)から由

来する言葉で、アニマは 霊魂、生命の意味を持ち、アニメーションは動かない物に動き

を与え生命を吹き込むという意味を持つ。

1.商業アニメーションとアニメーター

商業アニメーションとは、アニメーションの下位カテゴリーに該当する分野で、芸術ア

ニメーションとは違い、主な目的がお金を稼ぐためであり、エンターテイメントとして消

費者に楽しみを与えるアニメーションである。我々が普段テレビで見るアニメーションの

大多数がこれに該当する物であり、映画館にかかる劇場用アニメーションも該当する。日

本ではこの商業アニメーションが特に発達しており、子供向けから大人向けまで様々なジ

ャンルのアニメーションが制作されている。アニメーションの制作技法は大きく二つに分

けられる。紙またはパソコン上で一枚一枚絵を描いて動かす2D アニメーションと、立体

物やパソコンの 3DCG を基盤に立体空間で制作する立体アニメーション、または 3D アニ

メーションである。後者の場合、立体物という特徴のせいで写実的に物を観察する解剖学

等の基礎が必要不可欠であるが、前者にはそれがなくても成立してしまう。従って、2D

アニメーションでの初心者は基礎をないがしろにしがちである。アニメ監督の宮崎駿は子

供をアニメーションに表現するには実際の子供をきちんと観察するべきであるが、「日本

のアニメーションではね 観察によって基づいてない」と語っている。8 だからこそ、本

論文では人が手で直接描く2D アニメーションを主に論じていく。

8
『ポニョはこうして生まれた。 〜宮崎駿の思考過程〜』ドキュメンタリー(ウォルト・ディズニー・ジャ
パン株式会社, 2009年 )

13
( 図 11)にあるように、商業アニ

メーションは個人で作品を制作する

のではなく、数十人から数百のスタ

ッフが集まり制作を行う。その中に

は全体を総轄指揮する監督や物語を

作り構成するシナリオライター、音

響を担当する音響監督など様々な分

野における作業が存在している。そ

の中、絵を担当するアニメーターと

いう職業は、2D アニメーションの

中で最も表に出る絵の部分を担当す

るので重要な位置を示している。

(図 11)を見ても分かるように、作

品の基盤となる企画から絵コンテま
図 11 アニメーターの仕事がわかる本(西位輝実 , 餅井アン
でのプリプロダクション作業が終わ
ナ, 玄光社, 2020年 )

れば、次にプロダクションの本作業

パートに入る。ここで「レイアウト」「原画」「動画」本作業のキーとなる部分をアニメ

ーターが担当しているのである。アニメーターが描く絵の種類には、主要登場人物である

人間や動物、自然現象、物体、その他のエフェクトから背景となる風景の動きまでも担当

する場合もある。中でも最も多く描いていくのは人物である 。

アニメーターはこれらを常に動かすということを意識し絵を描かなければならない。よ

って、アニメーターがアニメーション作画において最終的に目指すべき方向性は、動きを

念頭に置いたデフォルメされた絵である。

2.アニメーションでの人体解剖学の必要性

アニメーションで人体解剖学が必要な理由は大きく分けて二つある。第一には、アニメ

ーションで最も多く描かれるのが人物、つまり人間であるからである。アニメーションは

静止画を描くのではなく、幾つもの枚数の絵が繋がることで一連の動作となって完成形に

なる。従って、キャラクターに人間の動作を状況に合わせデフォルメして描かなければな

らない。しかし、何の基礎知識もない状態でキャラクターに動きを与え動かすのは決して

14
容易いことではない。例え動画資料があったとしても、的確なデフォルメができるとは限

らない。アニメーターの西井輝美がアニメーションを描く際に「単純な動きであっても、

人体の仕組みや物理的な法則を理解しないと難しい」 9 と言っているように、アニメーシ

ョンの絵を手掛けるには人体の構造や可動原理をある程度把握しておく必要がある。 第二

には、アニメーターに必要な能力向上のためである。上記から述べ続けたよう、団体作業

で行う商業アニメーションでは、一つの作品を一人のアニメーターが全て描くのではな

く、数人のアニメーターが描いていく。つまり、同じキャラクターを複数人のアニメータ

ーが動かしているということだ。アニメーターは自分の個性、画風通りに絵を描いていく

のではなく、注文されたキャラクターの規格に合わせ、その画風を模倣し動きを入れてい

く。また、一つの作品に限らず、多くの作品に参加し、様々なキャラクターを描いていか

なければならない。つまり、アニメーターは老若男女、体格、画風など、違う個性を持つ

キャラクターを各作品に合わせて描き、動かさなければならないのである。これを実現さ

せるためには非常に高い画力が必要とされ、この力を背後から支えてくれる大事な基礎の

一つが人体解剖学である。

以上のことから、アニメーションにおいて人体解剖学の知識はかなり重要な位置を示し

ていることになる。また、人体解剖学はアニメーションだけでなく、現代の商業エンター

テイメントである漫画やイラスト、フィギュア等の分野でも重要な基礎として位置付けさ

れている。しかし、各分野ごとにキャラクターの表現方法は似ているようで異なる。従っ

て、人体解剖学の使いどころもまた少しずつ変わって来るはずだ。だとするならば、アニ

メーションで必要とされる人体解剖学と漫画やイラスト、フィギュアの分野で必要とされ

る人体解剖学にはどのような違いがあるのだろうか。

3.漫画・イラスト、フィギュア、アニメーションでの人体解剖学

上記ではアニメーターにとって、アニメーションに人体解剖学が何故必要なのかを論じ

た。 そして、アニメーターと類似する職業群を持つ漫画やイラスト、フィギュアの分野

でも人物、つまりキャラクターにたずさわることが多く、 漫画家である里中満智子氏は

授業で着物を着ているキャラクターをきちんと描くには本物の着物を観察し触って着てみ

ることが大切で、それによる理解がきちんとした描写へと繋がると主張しており、これを

9
『アニメーターの仕事がわかる本』(西位輝実, 餅井アンナ, 玄光社, 2020年 )p.18.

15
言い換えれば着物を着ているキャラクターそのものにも適用される原理だと推測できる。

従って、人体解剖学がキャラクター描写の基礎として一定部分作用していることは間違い

ないであろう。ただし、キャラクター産業として漫画やイラスト、フィギュア、アニメー

ションは共通の類似点を持つが、各分野ごとにそれぞれ違う性質を持っている。従って、

基礎として人体解剖学が必要だとはいえ、その活用の方向性には違いがあるはずだ。アニ

メーションにおいての人体解剖学とそれ以外の漫画、イラスト、フィギュアにとっての解

剖学はどのような違いがあるのかを考察してみたい。

(1)漫画・イラストでの人体解剖学

漫画やイラストは、2D アニメーションと同じく平面にキャラクターを表現するという

共通点があるが、最後にアウトプットされる完成形に大きな違いがある。漫画やイラスト

は静止した状態の媒体であり、アニメーションは動きのある映像媒体である。

図 12『カードキャプターさくら(1)』 図 13『TV アニメ「カードキャプターさくら」設定資料集』


(KC デラックス 講談社・CLAMP) (株式会社スタイル・マットハウス)

従って、平均的にアニメーションのキャラクターは漫画やイラストのキャラクターより

も単純化されることが多い。これは、 同じキャラクターであっても漫画やイラスト(図

12)は静止した媒体であるため一枚の絵に服装の模様や小道具、髪の毛などの細かな描写

が可能であるが、アニメーションの場合(図 13)は動かすために、複数の絵を描かなけれ

ばならないため絵の簡略化を行う。また、漫画やイラストはキャラクターを描くとき団体

16
作業でなく、 作家個人の個性を重視して作品を作り上げていく。静止した状態のキャラ

クターを描写しているので、アニメーションのように動きを念頭に置いて絵の連続性を計

り、キャラクターの等身や立体感を重視するよりも描かれる状況に合わせ、誇張や省略を

効果的に使う。これにより、キャラクターの正面から見た顔と横顔の形状が立体として成

立しない場合が出てくる。漫画、イラストを原作にアニメーション化する際、原案を基に

アニメーターによるキャラクターデザインが行なわれる理由の一つがここにある。 つま

り、漫画やイラストは同じシーンでもアニメーションよりキャラクターの描写が細かく作

家の画風や個性である感性が前面に出ているため、実用性として必要な人体解剖学は一歩

下がったポジションに立つ。

以上のことから、漫画やイラストにとって、人体解剖学は作家の個性をより効果的に表

現するための要素になると思われる。人体解剖学が基盤となりキャラクターが完成される

のではなく、作家が描きたいスタイルが先にあり、それを表現するために人体解剖学がサ

ポートする形でキャラクターが完成されていくのである。

(2)フィギュアでの人体解剖学

フィギュアが持つ漫画やイラスト、アニメーションとの一番の大きな違いは立体として

実在することである。一般的に漫画やイラストでは、同じキャラクターを正面の姿と横の

姿を描いた際にその比率が少々変わっていても大きな違和感はない。しかし、アニメーシ

ョンの場合は連続した動きを表現するため、漫画やイラストより立体として考えなければ

ならない。しかし絵が連続して動き、映像になった時にも動きに違和感がなければ、もし

くは、演出のための効果的誇張や省略であるのなら問題ない。これは、実際に存在する物

ではなく、2D の平面状に3次元の世界をデフォルメして表現するからであり、漫画、イ

ラストや2D アニメーションの強みでもある。しかし、フィギュアの場合は違う。リアル

な人とは確かに違うが、キャラクターの造形物が現実に存在している。これは人物を3

DCG で製作するアニメーションと同じように考えることができる。このため平面で表現

するための人体解剖学の知識よりも遥かに多い情報量が必要となってくる。しかし、人体

の動きについてはアニメーションの方がフィギュアよりも人体解剖学についての深い理解

を必要とする。

17
図 14 UDF ウルトラディテールフィギュア No.552 ク 図15 『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモ
レヨンしんちゃん シリーズ 2 しんちゃん ーレツ!オトナ帝国の逆襲』
(フィギュアメディコム・トイ, 2020 年 ) (東宝・シンエイ動画, 2001年 )

フィギュアの場合、漫画やイラストのように一つの作品として静止した状態にみえる

が、実際に存在するものであるため、フォルムとしてのポーズが正確でないと成り立たな

い。また、腕や脚が可動するフィギュアの場合は、フォルムに変化はなく、固定物である

人体のパーツが各関節で可動する。つまり、2次元ではないため、フォルムにごまかしが

きかないということになる。 これは同じシーンである、フィギュアと平面上の絵を比較

してみると良く分かる。(図 14)のフィギュアの顔の口は正面を向いているが、(図 15)

のアニメーション上の顔の口は左によっている。これは本来ありえないが平面上であるア

ニメーションでは成り立っていたデフォルメされた顔を 3 次元で立体物として表現するた

めに造形を原作の形とは少し違う風に変えているケースである。

これはある意味、フィギュアは漫画、イラスト、アニメーションより自由度が低いとい

うことになる。 3次元上ではどうしても限界があるからである。商業のフィギュアは既

存の版権のあるキャラクターを基盤として造形師が制作する場合が圧倒的に多い。これは

注文されたものを制作するという点でアニメーションと似ている。従って、造形師はフィ

ギュアのプロポーションや造形美から自分のオリジナリティーを出している。

18
フィギュアにおいての人体解剖学は、漫画やイラストとは違い、解剖学そのものが最初

の土台となっていると考えられる。そして、フィギュアは3次元に存在するため、他のど

の分野よりも人体の構造に対して精密で高度に、尚且つ正確な知識が必要となる。

(3)アニメーションでの人体解剖学

ここまでは漫画やイラスト、フィギュアにおいての解剖学の必要性について考察した。

2D の商業アニメーションに適用される人体解剖学の特徴は、漫画やイラスト、フィギュ

アが同じキャラクター産業であることから似ている部分もあるが、明確な違いがある。

第一にアニメーション制作は団体作業であることだ。キャラクター作画に対して基本的

に個人での作業が中心になる漫画やイラスト、フィギュアとは違って、大多数で共同作業

を行う。また、第二に、アニメーションとしての動きが関わってくる。アニメーションは

基本的にキャラクターを動かすことで成立している。これは、上記の職業群と比較した

際、最も大きく異なる点といえる。 漫画やイラストは作家の個性を重視しており、商業フ

ィギュアは版権のキャラクターを注文通りに造形はするが、造形師によってプロポーショ

ンや描写の違いがはっきりと出てくる。しかし、アニメーションの場合は違う。複数の人

が同じキャラクターを描き一つの映像として完成させるため、キャラクターの描写はアニ

メーター個人の個性を出さず、統一させる必要性がある。よって、アニメーション制作現

場では幾人かのアニメーターが描いた絵を修正して統一させる作画監督という役職も存在

している。従って、アニメーターはキャラクターの画風から自分の個性を出すのではな

く、動きやタイミングから個性を出すことになる。また、アニメーターは一つの作品だけ

に参加するのではなく、様々な画風を持つ作品に参加し、各作品ごとに画風を合わせなけ

ればならない。これらを不自由なくこなせるためには人体解剖学の構造や可動原理を理解

し、その応用が出来なければならない。つまり、漫画やイラストが作家の個性を基盤とし

ているとするならば、アニメーションの絵はフィギュアと同様、人体解剖学が重要な基盤

となることが分かるだろう。これを言い換えれば、人体解剖学はアニメーター達の団体作

業において必要な共通言語と言える。アニメーターはその共通言語を基盤に、注文に合う

絵を描かなければならない。

次に、2D アニメーションが持つフィギュアとの決定的な違いは、動きである。両方と

も人体解剖学を基盤としているが、アニメーションが持つフィギュアとの違いは、見えな

い部分まできちんと扱う人体解剖学ではなく、外側のフォルムであるシルエットを重視し

19
た人体解剖学が必要とされている。これは2次元で描かれる世界であるため、3次元の縛

りからフォルムにかなりの自由が与えられているのであり、絵のシルエットを基盤として

見せているからでもある。従って、フィギュアの方が人体解剖学の構造に対し、アニメー

ションよりも深く理解する必要性がある。しかし、動きの部分でこれが違ってくる。フィ

ギュアは基本的にポーズが固定されており、可動するフィギュアであっても、フォルム自

体が変わることはない。その反面、アニメーションでは動きを表現するため、キャラクタ

ーの動作に連続性があり、一連の動作にあわせて人体のフォルムの変化を描かなければな

らない。だからこそ、アニメーションはフィギュアよりも人体の可動に対してはより深い

理解を要する。アニメーターが最終的に描かなければならない絵は、動きを念頭においた

デフォルメされた絵である。従って、フィギュアは実物としての造形のために、写実的な

人体の骨や筋肉の形をきちんと把握する必要があるとするならば、アニメーションでは人

体の基本的な骨格やフォルムを形成している筋肉の構造をメインにし、それらの動きの原

理やフォルム変化を概念として理解し応用する必要がある。

アニメーションにおいての人体解剖学は作業においての共通言語であり、動きを表現す

る上での大切な基礎としての役割を担っている。

20
第4章 人体解剖学の問題

1. 人体解剖学の難しさ

人体は実に神秘的であり、その構造は誰かが精密に設計したのではないかと思わせるほ

ど、繊細で複雑に構成されている。各骨組みは体を支える芯となっており、可動関節や各

臓器を保護する役割も持つ。また、各筋肉一本一本が繊維でなっており、骨を支えたり体

を動かし、力を出す役割を果たしている。それ以外にも多くの構成要素があり、神経、血

管、脂肪、肌、水分など様々な物で一つの人体が成り立ち、複合的に可動して生命活動を

している。

本論では、医学や純粋な解剖学としてではなく、美術分野のための解剖学を扱っている

ので、主に骨と筋肉を重点的に、中でもフォルムを作っている外部の筋肉を中心として論

じていく。

図 16 『アーティストのための美術解剖学』筋 図 17 腕の筋肉展開図
系(前面図)p.62.

人体は一つの個体であるが、分解すると大きく骨と筋肉で分かれ、骨は約 206 個、筋肉

の数は約 640 個だと言われている。骨や筋肉はそれぞれの役割に従って異なる形をしてお

り、複雑に絡み合って腕や脚、顔など各部位となって人体を構成している。 このように、

21
人体の構造はとても複雑に構成されており、最初に人体解剖学に接する人にとって、その

ハードルは非常に高く感じるであろう。これは、筆者もまた同じで、美術用の人体解剖学

の書籍を読みながら、その立体構造を理解することは、とても難儀であった。これには幾

つかの理由がある。各筋肉と骨の数が多いことだ。すでに何度も述べたように、人体の構

造はとても複雑で構成要素が数多く存在するので、筋肉と骨を片端から暗記していくこと

は誰にとっても難しい。ましてや、医学の専門分野ではなく美術分野に適用するためなの

で、これら全てを暗記する必要はない。肝心なのはその構造を理解した上、応用力を持つ

ことにある。次に、各筋肉や骨の形が多種多様である。これは上記の理由と同じで、様々

な種類の筋肉や骨が存在するということは、その形もまたそれぞれに違うことになる。背

中をほとんど覆っている幅広くて大きい筋肉もあれば手の指など繊細な動きを担当する筋

肉は筋の形で細長いのである。これは、各筋肉や骨には異なる役割があり、それに見合う

形をしているからである。最後に、筋肉と骨は複雑に絡み合っている。人体を支え可動さ

せるため、筋肉と骨は各自の役割を持ち異なる動きをする。軸となる一つまたは複数の骨

の周りに、幾つかの筋肉が重なり層を作っている。特に、腕の下の部分である前腕、肩下

の脇、太もも、手などの部位には筋肉が複雑に絡み合っている。

結論として、人体解剖学が難しい理由は人体の構成要素が数多く、筋肉と骨の位置関係

が複雑だからということになる。本論での人体解剖学は専門的な学問や医学の分野ではな

い、美術解剖学の下位カテゴリーとして、商業2D アニメーション作画のための人体解剖

学を論じている。では、2D アニメーション作画を前提に考えたとき、人体の骨や筋肉を

その名称や細部の形まで全て覚える必要があるのだろうか。

2.人体解剖学のとらえ方

ルネサンス時代の人体解剖学は、写実的な人体を美術で正確

に表現することを目的としていた。当時のレオナルド・ダ・ヴ

ィンチが残した人体のスケッチ(図 18)を見ても分かるよう

に、筋肉の筋一本や骨のディテールなど最大限研究して絵に適

用させたことがわかる。これは、まさしく人間や自然のあるが

ままを表現するために写実的な物を追求していたルネサンス当
図 18 Leonardo da Vinci,
時の美術の特徴であるリアリズムの一面であろう。
Anatomical studies of the
shoulder (1510)

22
しかし、筆者が論じたい人体解剖学のとらえ方はリアリズムとは違う方にある。リアリ

ズムが写実的な人体の描写を目的として、リアルに最も近い形の骨や筋肉の理解が必要で

あるとすれならば、この研究での人体解剖学は省略と誇張された絵のためであり、人体の

動きの流れを表現するためでもある。これは、動きを念頭においたデフォルメされた絵だ

と定義できる。 だとするならば、このための人体解剖学はどのような形なのだろうか。

(1)概念としての理解と応用力

アニメーションのための人体解剖学の第一の方向性は「概念としての理解」にある。人

体の構造や動きを理解するということは、その対象を一から十まで全てまるごと記憶して

おくことではなく、その対象を最も効果的に活用できる力を持つということである。つま

り、人体の骨や筋肉の正確な構造や動きを一々完璧に覚えて暗記することを目的とするの

ではなく、人体の骨や筋肉の構造や動きを大きく「概念」としてとらえ、直観的に理解で

きるようにすることである。

構造や動きを概念として理解するようになれば、そこから様々な資料を効果的に活用で

きるようになる。アニメーション作画を制作することにおいて、大事なポイントは動きに

あって、その動きを表現する大事な基礎の部分は現実の動きである。これは、アニメーシ

ョンの絵が人体解剖学を基盤にして省略や誇張で様々な画風に変えるように、動きもま

た、写実的な動きを基盤として応用し表現する。立体構造や人体の可動原理の理解は、ア

ニメーション作画に人体解剖学を応用する基礎となる。人体の写真、解剖図、映像資料な

ど様々な資料の中から、自分が必要とする部分の人体の情報をキャッチしてデフォルメで

きるようにしてくれるのである。

2D アニメーション作画のための人体解剖学のとらえ方は、筋肉の形や構造、また動き

の単なる暗記ではなく、概念としての理解にあると考える。しかし、写実的な形の筋肉や

骨では、直観的な理解が難しく、入門者にとってハードルが高いと感じる原因となる。だ

とするなら、どうすれば人体解剖学の構造や動きを容易に理解できるようになるのだろう

か。

23
第5章 キュビズムと人体解剖学

キュビズムは 1900 年代、自然のあらゆる物体を円錐、円柱、球でとらえていた10ポー

ル・セザンヌ( Paul Cézanne, 1839-1906 )の影響を受けた パブロ・ ピカソ( Pablo

Picasso, 1881-1973 )と ジョルジュ・ ブラック( Georges Braque, 1882-1963 )が

定着させた現代美術の技法である。11 キュビズムを適用し描いたブラックの絵画(図

19)は家のディテールを省

略し完全に図形としてとらえ

ている。また、ピカソの人物

画(図 20)も人体のパーツ

を本来の滑らかな人体の形で

はなく、図形として分けてま

るでロボットのように見せて
図 19 Georges Braque, 1908, Houses 図20 Pablo Picasso, Bather, winter いる。これで分かるようにキ
at L'Estaque, oil on canvas, 73 x 59.5 1908–09, oil on canvas; 51 x 38
cm, Museum of Fine Arts Bern inches. The Alfred H. Barr, Jr. ュビズムは被写体の形を簡略
Galleries
化して図形的に誇張して表現

している。キュビズムのこのような特徴から、現代日本でのデフォルメの意味合いとも類

似性を感じることができる。

自然や人などをあるがまま表現しようとしたリアリズムから、複雑なディテールをそぎ

落とし、物体のフォルムだけに焦点を置き誇張したキュビズムのように、アニメーション

作画のための人体解剖学のとらえ方もこれと似た方法をとれるのであれば、もっと直観的

で効果的な理解が可能になるだろう。すなわち、人体の構造や動きを単純化した図形を通

して理解するのである。アニメーション作画のための人体解剖学は一般的な人体解剖学と

は異なり、様々なデフォルメによる応用力が要求される。それを可能にしてくれるのが図

形化による理解である。一般には、人体の全体フォルムを図形化する場合が多いが、人体

10
『絵画の発見13 ピカソ/レジェ』 (学習研究社, 1992年 )p.32.

11
『セザンヌ (岩波 世界の美術) 』(岩波書店, 2005年 )pp.326-328.

24
の骨や筋肉自体を図形化することによって、初心者が人体の構造や動きを容易に理解で

き、応用してさらに描く力の土台にもなると考える。

1.図形化の必要性

(1) 概念としての理解

人体の筋肉は曲線系の形態で絡み合っているため、その構造の理解が難しい。従って、

アニメーション作画に必要なフォルム中心の筋肉群を図形化させ組み立てることで、複雑

だった筋肉構造の理解が容易になる。人体筋肉の図形化は複雑な構造を概念化することに

より、人体解剖学を学ぶ際に効果的に接近できるように手助けしてくれる。

(2)適用するための道具

図 21 リアルな筋肉資料だけを見ては適切なデフォルメは 図22 複雑な筋肉を図形化という道具を通して理解する


難しい例

図形化による人体解剖学の構造の理解は、応用力を持つための基盤であり絵の上達のた

めの道具となる。ここでの応用力とは、料理に例えるならば、一つの材料で様々な種類の

料理を作れる力を言う。(図 21)のようにただリアルな人体の資料からは、適切な形のデ

フォルメに戸惑いを感じやすいが、(図 22)のように、複雑な筋肉構造を図形化し理解を

容易にすることで写実な情報をアニメーション作画に適した形に変換しやすくなる。つま

り図形化はアニメーション作画の際に資料を解釈、または変換する道具として利用される

25
のである。これを言い換えれば、人体解剖学を単に知識ではなく、構造や可動の原理の概

念として理解し様々な画風や動きを描ける土台になると言える。

2.人体の可動部分の図形化

(1)人体可動の概念的理解

人体の構造を図形化して、概念としての理解が必要なように人体の可動もまた同じ原理

を適用して理解する必要がある。複雑な人体は可動すると筋肉の捻りや伸縮によりさらに

フォルムが変形するため、その複雑さが増す。しかし、図形化を通して同じ動きをするが

細かく分かれた筋肉を統合し簡略化した人体を動かせば典型的な動きが人目に入りやすく

なり、リアルな人体の可動よりも筋肉可動の理解度を上げることができると考える。様々

な筋肉についてのこの可動の概念としての理解は、アニメーション作画の様々な省略誇張

の基礎として大事な役割をはたす。

アニメーションのための人体解剖学とは、アニメーション作画のために必要な部分をし

ぼりこんでおり、その終着点は動きにある。アニメーション作画が持つ特徴はシルエット

にあり、筋肉の可動によるフォルム変化を意識してシルエットを適切にデフォルメできる

か否かがポイントになる。従って、先に人体の構造や可動の原理を概念化し理解する必要

性があり、そのための解剖学資料が必要であると考える。そして、その資料の一つが人体

解剖学の図形化であり、アニメーション作画のための人体解剖学は、この図形化を通して

初めて成立するのではないだろうか。これは、人体解剖学の理解の容易性や応用の土台と

しても条件を満たしていると考える。

26
第6章 人体解剖学のとらえ方と教育論

図形化は人体解剖学を概念として理解するカギであると考察してきた。では、人体解剖

学を具体的に2D アニメーションの作画に適用する際、どのようにとらえるべきなのだろ

うか。また、人体解剖学をどの範囲でまとめ、効果的に伝えるための方法はどう考えるべ

きか。まず最初に、解剖学を適用する対象である、2D アニメーションの絵に関して考察

する。

1.2D アニメーションの絵に対する考察

上記でアニメーターは多くのジャンルのアニメーション作品に参加し、様々な画風の絵

を動かさなければならないため、人体解剖学がアニメーション作業の基盤になると論じ

た。では、アニメーターの作業の主体となる、 動きを念頭に置いて省略や誇張された

絵、つまり2D アニメーションの絵が持つ特徴や作業工程はどうなっているのか。それを

ここで論じていきたい。

(1) シルエット

図 25 シルエットでキャラクターの特徴が分かる 図26 実際の人間とキャラクターの出会いをシルエット


(カウボーイビバップ・サンライズ) で演出(ファンタジアFantazia ・Disney)

上記で2D アニメーションでの人体解剖学は 3 次元であるフィギュアより筋肉構造に対

する深い理解を必要としないと論じた。その理由がこのシルエットにある。2D アニメー

ションは平面に 3 次元を表現する媒体であるが、あくまでも、現実的な描写というわけで

はなく省略と誇張を通して表現している。これを効果的に表現するためには、連続した平

面の絵一枚一枚のポーズの輪郭を際立たせる必要がある。つまり、言い換えれば2D アニ

メーション作画はシルエットの連続であると考えられる。これは、写実的なポーズからさ

27
らに誇張や省略を加えることで、印象的にキャラクターの特徴や仕草を伝えることを可能

にする。キャラクターを単色で塗りつぶし、シルエットだけを見た際にキャラクターの動

作や特徴が分かれば、アニメーションでは良い絵になるということである。これは複数の

絵が繋がって映像になった時、シルエットがしっかりすることで 平面上に 3 次元を表現

した際のリスクを少なくしてくれ、もっと直感性の高い映像になるからである。このよう

な誇張の技法は、舞台上のバレエやミュージカル、または紙芝居等でも見れる特徴であ

る。

(2)省略誇張

2D アニメーションは白紙の紙に描くことにより生み出される世界であるため、実際の

人体の比例とは異なる省略や誇張の演出が許される。一連の動作を描くときに前後の絵の

中で腕の長さが異なったり、手を大きくしたり、(図 27)のように異常に足だけを強調し

たり、一般的な人体の比例やパースには合わない省略、誇張された表現を使うことが可能

である。これは、最初に作られたモデリングの比例から離れのない (図 28)のような3D

アニメーションとは違った2D アニメーションが持つ強みであり、大きな特徴と言える。

もちろん、3D アニメーションでもこの技法を使えるが、これはあくまでも、2D アニメ

ーションの技法を3D で表現していることである。2D アニメーションは一枚一枚が絵で

あるが、3D はモデリングされているので、この表現のためには、人体を崩した分だけの

お人形をまた作らなければならない。これはものすごく非効率である。逆に、2D アニメ

ーションでも3D のような精密な絵で描写する場合もある。

この特徴から、省略や誇張による表現の自由が大きい2D アニメーションの絵は人体解

剖学や人体の可動原理をありのまま全て絵に適用されているのではないことが分かる。

図 27 2D アニメーションの自由な省略誇 図 28 3Dアニメーションは一つのモデリングされたキャ
張 (トップをねらえ 2!・GAINAX) ラクターを動かす (アナと雪の女王2 Frozen II・Disney)

28
(3)作業工程

図 29 Sleeping Beauty・Disney 図 30 The Making of Sleeping Beauty・Disney

次にアニメーションの作業工程について考えていきたい。アニメーターは何もない白紙

から想像だけで(図 29)のような場面を描くのではなく、(図 30)でも分かるようにアニ

メーター自身、もしくは役者に依頼し、その場面の演技を細かく決めて撮影を行ったり、

場面の動きの演技に必要な画像や動画等の資料を探す。これが資料の制作、収集である。

これを土台とし省略や誇張の過程を得て、担当する場面が完成される。この工程が、写実

的な情報を持つ資料を分析しアニメーションの絵として省略誇張を行う過程であり、省略

誇張する力が応用力である。これはアニメーションだけでなく、絵を描く職業の工程では

どこでも見られるもので、(図 31)(図 32)の画家アルフォンス・ミュシャの作品制作工

程でもよく出ている。

図 31 『ハースト・インターナシ 図 32 『ハースト・インターナショナ
ョナル』誌・表紙のための写真習 ル』誌・表紙(アフフォンス・ミュシ
作(アフフォンス・ミュシャ, 1922 ャ, 1922 年 )
年 )

29
この過程を整理してみたら、

(図 33)の通りである。2D アニメー

ションの絵は平面で表現され、シル

エットを重視し、省略と誇張という

デフォルメされたものであるが、そ

の元は写実的情報や解剖学の知識に

ある。従って、写実的な情報である

資料を適切に活用するためには、そ

の構造や可動する原理である人体解

剖学は基礎として確かに必要である

ということだ。ただし、この人体解

剖学単独ではアニメーションの絵が

成立できず、解剖学自体が全てを解

決してくれる万能キーではないこと

図 33 アニメーション絵の作業工程の流れ も分かる。

人体解剖学の概念はいわば「道

具」であり、資料は「材料」に例えられる。この両方が合わさることできちんとした絵の

基礎や良い絵の土台となる。もし、片方が抜けると成り立ちにくい。そして、これを利用

し学習や練習を重ね土台がしっかりしてくると、基礎の上に様々な応用ができるようにな

り、動きやそのタイミングの違いだけでアニメーター個人の独創性を出すことができると

考えられる。

2.人体解剖学の適用とそのとらえ方

人体解剖学は基礎であり、資料を円滑に活用するための道具でもあると上記では論じ

た。では、2D アニメーションの絵に具体的にどのように解剖学を適用するべきかを述べ

ていきたい。

30
(1)2D アニメーションへの人体解剖学の適用

人体解剖学を知り尽くすだけでは、アニメーションの絵を自由に描けない。人体解剖学

だけでは、2D アニメーションの絵は成り立たない。その理由は、2D アニメーションの

絵がシルエットを際立たせ、省略や誇張をした物であるからだ。つまり、材料を生のまま

扱うのではなく、必要な部分を残し、用途に合うよう部分的に誇張していく過程が必要で

ある。つまり全ての人体解剖学の知識を必要としている訳ではなく、皮膚の上からでも確

認できるシルエットやフォルムを形成している筋肉を重点的に選別し、その範囲の中から

2D アニメーションの作画のために活用する必要がある。もし、その部分の範囲以上に人

体解剖学の知識が過剰に絵に入ってしまうと、2D アニメーションの絵の長所であるシル

エットでの表現や省略誇張による躍動感を失いがちになり、極端に言えばただの人体解剖

学を表現した絵になってしまう。 解剖学知識がアニメーションの絵にどう利用されるか

は、2D アニメーションの絵の特徴からして、人体解剖学は基本骨格や筋肉の主な外部の

フォルムを中心に構造や動きが利用され、精密なおかつ正確な解剖学知識は適用されな

い。つまり、写実的な人体描写を追求するのではなく、最終的にシルエットを作るポイン

トとなる筋肉や構造、動きの概念が必要であるということだ。写実的な情報を元に省略や

誇張を通して表現する2D アニメーションにとって、過度に現実的な人体解剖学の知識は

アニメーターの作業に対して逆に邪魔になる可能性が高い。

これまで論じたことをまとめると大きく二つに分かれる。一つは複雑な人体解剖学構造

の理解には、キュービック化による概念の視覚化が必要である。二つ目は2D アニメーシ

ョンの絵に使われる人体解剖学は、シルエットを形成するフォルムを中心にしたものであ

ることだ。

従って、2D アニメーション作画へ人体解剖学を適用するには、全ての正確な人体構造

ではなく、シルエットに影響する概念を視覚化した人体模型が必要である。そして、これ

は人体のつくり全体を理解し、様々なポーズの写真や動く動画資料などをアニメーション

の絵に変換できるツールとしての役割を持つと考える。

これまで、アニメーションの絵に人体を適用させるために必要とする形やそのとらえ方

について考えてみた。引き続き、これを伝えるための教育論に対して考察してみたい。

31
3.教育としての人体解剖学

2D アニメーションにおいて、人体解剖学のキュービック化による概念の視覚化が役に

たつと論じてきた。では、今までの話を初心者に伝えるにはどういった方法があるだろう

か。これについて大きく二つに分けて考える。一つ目は人体解剖学の必要性とその適用の

流れについての概念。二つ目は人体解剖学の構造や可動の理解に必要な具体的な方法論で

ある。

(1)人体解剖学にまつわる概念論

概念論の一番の目的はアニメーション作画における人体解剖学の必要性や形の理解であ

る。アニメーションの作画において、人体解剖学の必要性を主張しつつも、人体解剖学だ

けに偏ったり、または、その逆にならないようにきちんと適用、運用の範囲を踏まえてお

く必要性がある。

① アニメーションの絵の概念や理解

まず最初にこの論文の大前提になるアニメーション作画の定義やそれが持つ特徴を説明

する。アニメーション作画において人体解剖学がなぜ必要なのかを理解するために、アニ

メーションの絵やそれを描く職業のアニメーターの特徴や必要とする能力等を述べてい

く。これらの用語を説明すると以下の通りである。

2D アニメーションの絵とは動かす事を念頭に置き、シルエットを中心にフォルム変化

を意識し人体の全体の流れを基に動きを表現する絵である。アニメーターに必要な能力と

しては、アニメーターは自分の個性を表すために描くのではなく、グループ制作の中で決

められているルールに従い注文された絵や場面を構成し動かす職業であり、老若男女、体

型、画風に関わらず様々な人物を描ける高い画力が要求される。アニメーションの構成要

素や方向性については、アニメーションの絵の構成要素は大きく三つに分けると絵の基

礎、絵柄、人物の可動である。中でもこの論では「基礎」の部分である、人体解剖学を中

心に物事を考えていく。

32
② 人体解剖学の必要性と理解

以上の流れから、アニメーションの絵に対する基礎概念の提示が終われば、次はアニメ

ーションの絵に人体解剖学が必要であることを認識してもらう段階へ進む。絵を描くプロ

セスや人体を理解していると描ける画風の幅が広がる話から、アニメーションの絵に人体

解剖学が必要であることが分かる。そして、人体解剖学の難しさから初心者が失敗しやす

い点、それの代案として、立体構造の概念化を提案し、絵を描く際にどう使えるかを説明

する。最後にアニメーションの絵に必要な人体の可動について述べる。

(ⅰ)絵のプロセスとバランス

骨格をくみたて、肉付けをし、キャラクターを描写することで絵は完成する。これは、

建築の過程とも類似しており、骨格がしっかりしてないと外から見える建物のフォルム全

体が崩れてしまうように、外からは見えない骨格の重要性を表す。また、それとは逆に、

骨格だけを重視しすぎても本来の目的である、動きを念頭においたデフォルメされた2D

アニメーションの絵とは違い、骨格や内部だけが誇張された解剖学図のような物になりが

ちである。従って、内部と外部のバランスが重要なポイントである。

図 34 絵の描き順と建築は似ている

33
(ⅱ)情報量

リアルな絵とデフォルメされた絵を比較した際、リアルな絵は情報量が多く、複雑に描

写されているが、デフォルメされた絵は部分的に省略と誇張がなされて絵自体が持つ情報

量が少ない。従って、アニメーターが必要とする能力から考えると、リアルな絵や情報を

習得することで、様々なバリエーションで絵の省略と誇張が可能となる。つまり、リアル

な絵が描ければデフォルメが可能であるが、一種類のデフォルメされた絵しか描写できな

い場合、様々な画風のアニメーションの絵に対応できない。

図 35 リアルからデフォルメへの流れを説明した図

(ⅲ)人体解剖学の難しさとキュービック化

人体解剖学はアニメーションの絵の基礎として必要ではあるが、ありのままの人体を見

ることは初心者には向いてない。理解が難しい形や構造をしているため、シルエットを形

成する筋肉の固まりを選別し、その立体構造をキュービック化することで理解しやすくな

ると考える。

34
(ⅳ)人体の立体構造理解の利点

写実的な情報を簡略化するのがアニメーションの絵であり、その変換に役立つ概念が立

体構造の理解である。従って人体の立体構造を理解しているということは、写実的情報で

ある写真や動画等の資料から的確な情報だけを抜き取り、意図した絵に変換ができるよう

になるということである。また、作業時の迷いも減り、作業工程の効率が上がることも期

待できる。

(ⅴ)人体の可動とパーツを分けて理解する

人体の可動も構造と同様、様々な動きがあり複雑である。ただし、アニメーション作画

においての動きはシルエットを誇張して表現するため、写実的な筋肉の細かな動きを全て

追求するのではなく、シルエットに影響する筋肉を選別し、それだけを基準に概念化する

ことで、代表的な人体の動きを身に付けるようになると考える。また、人体を描く際、人

体の全体のバランスを意識しつつも、人体の構造や可動の概念をすべて一気に取り入れる

のではなく、自分が描きながら必要とする部分から少しずつ部分的に取り入れるのが効果

的である。焦りにより一気に全部取り入れようとすると全体のバランスも悪くなり中途半

端な絵に成り下がってしまいがちだからである。

これまでの内容をまとめると、人体の構造や動きを概念の視覚化であるキュービック化

によって理解し、様々な資料を見分け使いこなせる力をもつことで、アニメーションで求

められる様々な画風や動きの表現が可能になると考えられる。 次は、この概念を活かす

具体案として、どういった方法で理解に役立てられるかを論じていきたい。

(2)人体の立体構造の方法論

ここからは概念の視覚化である、キュービック化を通して人体解剖学を理解していく上

でどのような方法があるのかを論じていく。概念論では解剖学の必要性と適用方向性等の

精神論について論じたとするならば、方法論では具体的な方法を提示する。いくつかの方

法を通して、さらに人体の構造や可動に対する理解を深めることが可能になると考えられ

る。

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①筋肉の色分け

最も基本的で多く使われる方法の一つが筋肉の部位を色分けすることである。人体は全

体で一つの固まりであるが、解剖してみると各筋肉がその役割ごとに異なった形をしてい

る。実際には、筋肉はすべて同じ色で見分けがつかないが、これを分かりやすく区別する

ために、色を指定する 。基本的に各筋肉を特別なルールなしで異なる色を配置して分け

ているが、写実からキュービックにフォルムをかえ単純な形で表す際に、一つの固まりに

なる前腕等の部分は類似色を選択している。例えば、実際の部位で紫色系統の筋の集合体

は一つの紫色キュービックで表すことである。

図 36 筋肉を色分けした人体パーツ 図 37 キュービック化による筋肉のグループ化
と色の統合

②図形からリアルまで段階に分けて比較する

キュービック化した人体のパーツを写実的な人体のパーツと比較をすることで理解度を

上げる。基本的にパーツによって 2 段階または、3 段階に分けて比較する方法を取る。色

が分けられた人体のパーツを「写実的―中間―キュービック化」順に曲線が多い写実的表

現から、写実性を少しデフォルメして直線の形で表した中間段階、そして完全に省略して

形をシンプルに図形にして概念化したキュービックまで、三つの段階を用意し、横に並べ

比較する方法である。これを通して、写実描写だけでは分かりづらかった構造や動きの理

解が容易になると考える。

図 38 顔パーツの 3 段階比較図

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③筋肉の英語名称を用いる

現代の人体解剖学は西洋圏で、“anatomy”という名で幅広く展開されている。基本的に

ほとんどの人体解剖学の書籍には筋肉の名称に英語表記が入っている。色分けした筋肉の

英語名称を表記しインデックスを作成することにより、他の書籍やインターネット検索を

通し、関連部位をさらに幅広く調べる事が可能になる。

④人体のパーツごとに分けて学習する

上記でも述べているが、一度で人体全体を把握して理解するには無理があるので、筋肉

を色分けして分別したように、人体のパーツごとに分けて部分的に取り入れていく。例え

ば、人体の中でも前腕の構造や可動の理解が足りないと感じるのであれば 、まずはその

パーツを重点的にきちんと理解していき、少しずつパーツの範囲を広げていくことで、最

終的には人体全体を網羅できると考える。このようにじっくりと時間をかけてコツコツ積

み重ねることで、きちんとした基礎が出来上がる。

(3)教育の流れ

ここでは以上の二つの教育方法を基本とし、教育の大きな流れを作り論じていく。

第一に、本題の前にまえおきとして上記の概念論を学習者に伝える。これにより、本題

である、人体解剖学を学習する流れの中で学習者がアニメーション作画に必要な人体解剖

学という目的を見失わずに学習していけると考える。

第二に、人体解剖学の学習順番を決める。アニメーション作画に必要な人体解剖学とは

いえ、最初からいきなり動きに入る訳にはいけない。初心者にとっては順を追って学習し

ていく必要があるのだ。従って、初心者である学習者が無理なく、人体の可動に対する概

念を学習できるような流れを設定する。まず最初に、人体の基本的なパーツを一番簡単な

図形で認識してもらい、人体の基盤となる骨を学習する。次に、これらの基本的な骨格や

人体のパーツが認識できたら筋肉の立体構造へと移る。そして、最後にアニメーションに

おいて本来の目的である、動きを学習する。この流れに基づいて学習していけるのであれ

ば、学習者が無理なく動きまでたどりつける。また、初心者でない場合は、自分に合う段

階を見分け、途中からでも学習できる。では、次にはこれらの方法を基とした書籍を作れ

ばどうなるかを考えたい。

37
第7章 具現化

今まで論じてきたことを基に、教育のための書籍を作ることを考える。ただし、世間に

はすでに多くの種類の人体解剖学の書籍が存在している。従って、まずはどの範囲を扱う

書籍なのかの設定を行う。人体解剖学をどこまで深く扱うかについては、例えば、絵に対

する初心者向けに制作された書籍には、人体解剖学を部分的に扱い、絵を描く際に初心者

が抵抗感なく描きができるような配慮がされた物が多い。このような書籍をレベル 1 と設

定し、専門的で複雑な人体の細かなところまでも扱っている美術解剖学書をレベル 10 に

設定するとするならば、筆者が考える書籍はその真ん中のレベル 5 に該当すると考える。

なぜならば、一通りの人体解剖学を扱ってはいるが、専門家向けのような体の奥深くに位

置する部位の筋肉は省略している。絵を描きたい初心者ではなく、絵は描けるが人体解剖

学を扱いたい初心者向けという前提であるからである。そして、その人体解剖学を扱う中

で、アニメーション作画に必要な立体構造や動きだけを限定的に扱う。従って、他の書籍

では扱っている男女の違いや、人体の比率などは省略する。

書籍という形で具現化する主な目的は、アニメーション作画においての人体解剖学の必

要性を伝えながら、人体解剖学を絵に適用するための形を提案することであり、難しい人

体解剖学の構造や動きを直観的に初心者に分からせることにある。そのためには、大きく

二種類の媒体に分けて伝える必要性がある。一つ目は、アニメ作画に必要な人体解剖学を

分かりやすく伝えるための書籍の制作であり、次にこの書籍の内容を補助するためのパソ

コン上の3D 人体模型を動画にすることである。書籍は三冊構成となっており、「基礎

編」「構造編」「動き編」の順にシリーズ物として繋がっている。「基礎編」はシリーズ

の基本概念であり、芯となるアニメーション作画での人体解剖学の必要性等の解説が入っ

ている。大まかな構成としては、教育論に該当する概念の説明があり、本論に入ると骨の

構成や人体パーツの基本形の図や説明が入っている。先に土台となる概念や学習法を提案

することにより、迷う事無く本題に入れるようにした。この流れに乗って次のシリーズに

も自然と繋がっていく。

次は「構造編」である。ここでは、以前の「基礎編」で基本となる骨やパーツを簡単に

学習したことを前提として、筋肉の立体構造だけを掘り下げている。キューブブロックに

簡略化された人体を始め、中間段階の人体と写実的な人体を 3 段階に分けて比較して見せ

ることで難しい構造に対する理解を深めることを目的としている。

38
最後は「動き編」である。ここでは、「構造編」の色分けを継承するが、前編より省略

された筋肉の種類を使用する。なぜならば、アニメーション作画に必要なフォルムに影響

する筋肉に重点を置いているからである。従って、パーツ別 2 段階による筋肉比較を通し

て、動きの理解を深める事を目的とする。

基本的に人体パーツや筋肉の色分けは三冊全般に渡り統一されているが、中でも「構造

編」と「動き編」が完全な形で繋がっている。なぜならば「基礎編」では、骨を中心とし

ており、人体のパーツは筋肉よりも最も簡略化された独立した形で扱っている。従って、

「構造編」のような筋肉別の色分けとは少し性質が違っており、本格的に筋肉の構造や動

きを扱う「構造編」と「動き編」が自然と色分けを継承しているのである。

図 39 「基礎編」「構造編」「動き編」での腕の挿絵

このシリーズは上記でも述べたよう、人体解剖学の中でも限定的な範囲で扱っており、

全ての人体解剖学の資料や書籍を代弁しているのではない。3 冊をベースに大まかな人体

の構造や動きの概念を学習しながら、他の資料とのリンクを目論に、筋肉名称による検索

や比較を通してもっと理解を深めていくことを目的としている。

3D 人体模型を作成したのは、絵だけでは全てを伝えられなかった部分を補完すると同

時に、アニメ―ションのための人体解剖学に対する答えを一つの形として具現化させるた

めである。この模型は 2 体に分けており、写実的な人体とは少し距離を置いている。あく

までも、動きを念頭に置いたデフォルメされた絵である、アニメーション作画に適用する

ために作成されているからである。一つ目の3D 模型は直線で、直観で分かるキューブブ

ロック型の模型である。この模型は、人体の動きを代表する筋肉だけに絞ってキュービッ

クの形にしたものである。つまり、頭の中の概念上の物を一つの形として表したものであ

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る。次に、二つ目は曲線で、現実の人体に近い形をした曲線型模型である。これは、一つ

目のキュービック形の模型より表現された筋肉の数は多いが、これも同じく、フォルム重

視の筋肉で構成されている。この二つの模型を3D 空間の中で可動させ、映像化すること

により書籍と同時に比較する事でさらに深い理解に役立つと考える。この3D 模型は「動

き編」で絵としても描かれており、3D 上の模型も書面に登場している。3D 模型の筋肉

パーツも、書籍と同じ色で分けており、比較や活用の容易性を考慮した。3D モデルの映

像は CD となって「動き編」に同封される。

図 40 2 体の3D 人体モデルと動き

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結論

人体解剖学の細部の構造を良く理解出来れば、画力向上への道が開くのではないだろう

か、難しい人体解剖学を初心者に分かりやすく伝えるにはどうするべきなのだろうか、と

いう疑問から本研究は始まった。人体解剖学に接してから 10 年たち、そこから導き出し

た結論は、アニメーションの作画において解剖学は確かに必要ではあるが、それが絶対的

な物差しではないということであった。人体解剖学を知り尽くすことが自然と良いアニメ

ーション作画に繋がるわけではなく、あくまで良いアニメーションの絵を表現する一つの

サポーターとしてのポジションであること。そして、人体解剖学をアニメーションの作画

に適した形として活用できる具体的な提案が必要だと考えた。だからこそ、筆者は「人体

解剖学のとらえ方の一つとして、キュービック状の人体」を答として出して、 アニメー

ションの絵に必要な解剖学のポイントとなる筋肉や可動をデフォルメし教育目的の書籍や

3D モデル映像を作成した。この人体解剖学のとらえ方を初心者に提案、教育をすること

で、初心者に一つの基礎的な教育の方向性を示せるのではないだろうかと考えた。

このとらえ方を通して、2D アニメーションを学ぶ学生の人体解剖学に対する負担を減

らすことや、人体解剖学に偏りすぎる誤りも同時に防げるのではないかと考える。

また、キャラクター産業である、漫画、イラスト、フィギュアなど、アニメーション以外

の分野の初心者や、プロの方々にも参考になる一つの方法となれればと考える。人体の正

確な情報伝達に重点を置くのではなく、概念的にも直観的にも理解しやすいことを追求し

た本研究は、初心者を始め専門家に至るまで、人体解剖学を必要とする多く人々の力にな

れたらと考える。これからも、本研究を極めていき、そこから導き出したノウハウを分か

りやすく伝えられたらとも考える。

もちろん、表現の幅が無限に広いアニメーションの絵に答えがないよう、筆者が出した

結論としての人体模型もまた、完璧な答えや正解だとは言えない。もっと改良することも

あるだろうし、完全に新たな観点から見直す方法もあるはずである。しかし、これは筆者

の経験から思った疑問に対しての一つの終着点であり、また新たに続けて行くための出発

点でもある。これには長い時間をかけ筆者が悩んで様々な経験をするなかで得た物で、筆

者と同じように、人体解剖学に対する同じ疑問や悩みを持つ人に役立てたらと考える。

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本論文の一部は、JASIAS 日本映像学会(2018 年 12 月 15 日、京都工芸繊維大学)にお

いて発表したものを加筆、修正している。

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参考文献

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(Valerie L. Winslow, Classic Human Anatomy: The Artist's Guide to Form, Function, and

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(2)奥田誠治『アニメの仕事は面白すぎる 絵コンテの鬼・奥田誠治と日本アニメ界のリアル』(星出

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(7)西位輝実, 餅井アンナ 『アニメーターの仕事がわかる本』(玄光社, 2020 年)

(8)ハインリヒ ヴェルフリン『ルネサンスの美術』韓国語版(ヒューマニスト, 2002 年)

(9)藤井英俊 (監修)『360°どんな角度もカンペキマスター! マンガキャラデッサン入門 』(西東

社, 2017 年)

(10)藤田尚男 『人体解剖ルネサンス』(平凡社, 1989 年)

(11)フレデリック・ハート, MICHELANGELO (美術出版社, 1989 年)

(12)ポール・リシェ『リシェの美術解剖学』(ライフサイエンス出版, 2020 年)

(Paul Marie Louis Pierre Richer, Anatomie Artistique: Description Des Formes Extérieures Du

Corps Humain Au Repos Et Dons Les Principaux Mouvements. Wentworth Press, 2018)

(13)前橋重二『レオナルド・ダ・ヴィンチ―人体解剖図を読み解く』(新潮社, 2013 年)

(14)舛本和也『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』(星海社, 2014 年)

(15)松永伸太朗『アニメーターの社会学―職業規範と労働問題』(三重大学出版会, 2017 年)

(16)みんなのミュシャ展『TIMELESS MUCHA みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ 線の魔術

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(17)室井康雄『アニメ私塾流最速でなんでも描けるようになるキャラ作画の技術』(エクスナレッジ,

2017 年)

(18)メアリー・トンプキンズルイス 『セザンヌ (岩波 世界の美術)』(岩波書店, 2005 年)

(19)リクノ『アニメーターが教える線画デザインの教科書』(フィルムアート社, 2015 年)

43
(20)リクノ『アニメーターが教える線画デザインの教科書 2 キャラクター創造編』(フィルムアート

社, 2016 年)

(21)ロベルト・マンフリン, アルベルト・マルティニ, サビネ・バリチ『絵画の発見 13 ピカソ/レ

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(22)CLAMP『カードキャプターさくら(1) 』 (講談社, 1996 年)

(23)Eun Jin Park『知識の地平 17 号 ヴェサリウス-解剖学で新たな時代を開く』(韓国学術協議会,

2014)

(24)Gwang U Kim『レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ-ルネサンスの天才たち』(美術

文化, 2016)

(25)Jean-Claude Frere , Leonardo(Terrail Editions, Pierre, 2012)

(26)Jung Gwon Jin『陳重權の西洋美術史-古典芸術編』(ヒューマニスト, 2008)

(27)Won Jin Park, Soo Jung Jung, Yu Ran Heo, Jae Ho Lee, M.D. 『ミケランジェロ美術の中の解剖

学』( 啓明医大学術誌 Keimyung Med J Vol. 37, No. 2, December, 2018)

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(2)『映画クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(東宝・シンエイ動画, 2001

年)

(3)『カウボーイビバップ』アニメーション(サンライズ, 1998 年)

(4)『トップをねらえ 2!』アニメーション(GAINAX, 2004 年)

(5) 映画『ファンタジア』(Fantasia, Disney 1940 年)

(6)『ポニョはこうして生まれた。〜宮崎駿の思考過程〜』ドキュメンタリー(ウォルト・ディズニ
ー・ジャパン株式会社, 2009年)

(7) Sleeping Beauty , アニメーション(Disney, 1959)

(8) The Making of Sleeping Beauty , ドキュメンタリー(Disney, 1996)

立体製品

(1)UDF ウルトラディテールフィギュア No.552 クレヨンしんちゃん シリーズ 2 しんちゃん(フィ


ギュアメディコム・トイ, 2020 年)

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