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94 号 平 成 7 年 10 月 27 日 日本航海学会 第 93 回 講 演会 に て 講演 145
飛行 場 管制 用航 空機 運 航 管 理 シ ス テ ム の 検 討 と試 作
塩 見 格 一
*
Kakuichi SHIOMI
Abstraet
Airport
Traffic
Management System based on Object Oriented
Data Base System is
prototyped .
』
The prototyped system consists four engineering workstations connected by network
of .By using this
system airport tower controllers
can access all information necessary for airport traffic
control and
As the results of the simulation carried out under the virt
囎 l reality environment of the airport
control tower a11 instruction
,
of airport 亡raffic control can be done by only using mouse in this system
.
And each console has been realized
the compatibility of the console that wi11 be used
to access
controller =
pilotdata link.
1. 研 究の 背景
今 日 の 航 空 管 制 業 務 は 航 空 機 運 航 票 を使 用 し て 行 わ れ て い る 。航 空 機 運 航 票 は 、管 制 対 象 で あ る航 空 機
の 運 航 計 画等 運 航 に係 わ る情報 を定 め られ た 書 式 に よ り記 載 し た 紙 片 で あ り、単 に 運 航 票 或 は ス ト リ ッ プ
と も呼 ば れ て い る 。
は、レ ーダ ー に よ り航 空 機 を 監 視 し な が ら行 う、航 空 路 及 び 出 発 進 入 空 域 (タ ー ミ ナ ル
航 空 管制 業 務 に
空域 ) に 対する レ ーダ ー管 制業 務 と 、 管 制 官 が 肉眼 で 直接 に 航 空 機 を 監 視 し な が ら行 う飛 行 場 管制 業 務 と
が あ る が 、何 れ の 管制 業 務 にお い て も、書 式 等 に 差 異 は あ る もの の 、現状 で は 紙 の 運 航票 が使用 さ れ て い
る 事 実 は 同様 で あ る 。
管 制 業 務 の 遂行 に お い て 、管 制 官 は 自 らの 管 制 す る 航 空 機 の 運 航 票 を 管 理 し、航 空 機 の 管 制 状 況 に 対応
して 、 それ に 対応す る 運航票 に 必 要 な 書 き込 み 等 を 行 い 、また 臨 席 の 管 制 官 航 空 機 を移 管 す る 場合
に に は 、
合 わ せ て そ の 運 航 票 を 手 渡 し等 に よ り移 管 す る 。 原則的 に 、管 制 対 象 で あ る 各 航 空 機 に 対 し て 、有 効 な運
航票 は 1枚 しか 存在 しな い よ うに管理 さ れ て お り、意 味論 的 に は 、航 空機 と そ の 運 航 票 は 管 制 官 に と っ て
等価で あ る 。
本研 究 は 、上 記 の よ うに 、今 日 の 航 空 管 制 業 務 を 進 め る 上 で 重 要 な 役割 を 果 し て い る 航 空機運航 票 を 、
正確 に は 運航 票 に 記 載 さ れ る 航 空 機 運 航 情 報 を 、ネ ッ トワ ー ク に よ り接 続 さ れ た コ ン ピ ュ
ータ ・シ ス テ ム
に よ り管理 す る こ と を可 能 とす る航 空 機 運航 管理 シ ス テ ム の 開 発 に係 わ る も の で あ る 。
以 下 、研 究 の 目 的 と して 、今 後 の 航 空 管 制 業 務 の 効 率 化 に ts い て 航 空機 運 航 管 理 シ ス テム に 要望 さ れ る
機 能 を述 べ 、 また 4 章 以 下 で は 、 そ れ ら要 望 さ れ て い る機 能 に 対 し て 、試 作 シ ス テム に よ り実 現 さ れ て い
る 機能 、 その 機 能 を実現 す る た め に 行 た 検 討 、及 び 実 現 っ す る た め の 手法 等 に っ い て 紹介す る 。
2. 研 究 の 目 的
現 状 の 航 空 管 制 業 務 は 、管 制 官 とパ イ ロ ッ ト との 間 の 無 線 電 話 に よ る 音声通信 に よ り行 わ れ て い る 。管
制官 は、 パ イ ロ ッ トか らの 管 制 要 求 を受 け 、 そ の 航 空 機 の 状 況 を レ ーダ ーや 目視 に よ り確 認 し、 そ の 都 度
正 会 員 運 輸 省 電 子 航 法 研 究所 〒 181 東 京都 三 鷹 市新 川 6 − 38− 1)
(
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一
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146 日 本 航 海 学 会 論 文集 8年 3 月
適 切 な管 制 指 示 を発 出 す る 。
しか し、近 年 の 世 界 的 な 航 空 交 通 量 の 増 大 は 、管 制 官 =パ イ ロ ッ ト間 の 通 信 を 音 声 の み に よっ て は最 早
タ イ ム リ ーな 管 制 が 困難で あ る程 に 増大 さ せ て い る 。また 、発 展途 上 国 に お け る 航 空 交 通 の 発 展 等 に よ り、
航 空需要 の 増大 が 、今 後 は よ り急 速 に 進 む こ とが 予 測 さ れ て お り、 よ り処 理 容量 の 大 き な管 制官 = パ イ ロ
ッ ト間 の 通 信 手 段 の 早 急 な 実現 が 求 め られ て い る 。
現 在 、上 記 要 求 に 対応す るた め に 、管 制 官 =パ イ ロ ッ ト間 デ ータ リン ク の 実 現 に つ い て の 検討 が進 め ら
れて お り、空 地 デ ータ リン ク ATN
( ) の 評 価 試 験 等 が 実 施 さ れ 、 そ の 仕 様 が 纏 め られ よ う と し て い る 。
実 に 、航 空 通 信 の デ ータ リ ン ク 化 は 、将 来 的 な航 空 需 要 の 増 大 に 対応 す る た め に 、歴 史的 に 必然 の こ と
と考 え られ る。 しか し、 デ ータ リン クの 両端 に 存在 す る の は 、 デ ータ リン ク の 導 入 に よ っ て も変 わ る こ と
の な い 人 間で あ る管制 官 とパ イ ロ ッ トで あ り、 デ ータ リ ン ク の 導 入 が 彼 らの 業 務 量 の 増 大 を招 く も の で あ
れ ば 、航 空 需 要 の 増大 に 対応 す る こ とに は な らな い e
テ ム は 、デ ータ リ ン ク 導 入 後 の 管 制 官 側 イ ース ・
本 研 究 に お い て 試 作 した 航 空 機 運 航 管 理 シ ス ン タ フェ
シ ス テ ム に 要 求 され る機能 を シ ミュ レ
ーシ ョ ン に よ り探 ろ う とす る もの で あ る 。
にデ ータ リ ン ク 端末 と し て の 入 力機 能 を持 た せ た も の で あ り、現 状 で は 2 つ の 業務 と して 区別 さ れ る 運航
票 の 管 理 業務 とパ イ ロ ッ ト との 通 信 業 務 (
パ イ ロ ッ トか らの 管制 要求 受信 業務 とパ イ ロ ッ ト へ
の 管 制指示
発 信 業 務 ) を 、一連 ・一体 の 管 制 業 務 と して 行 うた め の 管 制 業 務 機 器 の プ ロ トタ イ プ と して 試 作 した 。
3.
飛 行 場 管制 業 務
現 在 の 大 規 模 な 空港 に お け る 飛 行 場 管 制 業 務 は 、夫 々 に 役 割 分 担 さ れ た 4 人 の 管 制 官 、副管 制 官 (FD :
Flight Data ,管 制 塔 外 部 の 管 制 機 関 CD
と の 調 整 等 を 行 う管 制 官 )、管 制 承 認 伝 達 管 制 官 ( : Clearance
Delivery,パ イ ロ ッ トに 管 制 承 認 の 伝 達 等 を 行 う管 制 官 )、地 上 管 制 官 GC
( ;Ground Control,航 空 機 の 地
LC
上 走 行 及 び 空 港 面 の 車 両 の 移動 を管 制 す る 管 制 官 )、飛 行 場 管 制 官 ( : Local Contro1,航 空 機 の 離 発着
を管 制 す る 管 制 官 ) が 連 係 して 進 め て い る。
航 空 機運 航 票 は 、 こ れ ら 4 人 の 管 制 官 の 間で 相 互 に 受 け渡 しが 行 わ れ て お り、各 管 制 官 は 自分 の 管 理 す
る運 航 票 に 対 応 す る航 空 機 に 管制 指 示 を行 い 、そ の 内容 に 対 応 し た 書 き 込 み 等 を逐 次 運 航 票 に 行 っ て い る。
自 らの 担 当 す る 管 制業 務 が 完 了 した航 空機 に つ い て は 、 そ の 運 航 票 を 次席 の 管 制 官 に 渡 し 、パ イ ロ ッ トに
対 して は 、 こ れ に 対 応 す る 周波 数 変 更 が 指 示 さ れ る 。
な お 、管 制 官 か イ らパ ロ ッ トに 伝 え ら れ る 管 制 指 示 は 、現 状 で は VHF 帯 を 使 用 し た 音 声 通 信 に よ り行 わ
れて お り、各 管 制 官 は 定 め られ た 周 波 数 の 音 声 通 信 チ ャ ン ネ ル を
以上 有 。 1 つ して い る
図 1 は 現 在 飛 行 場 管 制 に 使 用 さ れ て い る 運 航 票 の 書 式 を 示 し た もの で あ り、 出 発 機 の 管 制 に ts け る 運 航
票 の 流 れ は 図 2 に 示 す と お り で あ り 、到着 機 に つ い て は 図 3 の とお りで あ る 。
便 名 ・機 種 着 地 空 港 飛 行 経路 等 駐 機 位 置
出 発 時 刻
図 1 飛 行 場 管 制 業 務 に 使 用 されて い る運 航 票 の 書 式
一
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正 i 2 、
管制 塔内 部
lIlTlI
ー
CD GC LC
管制 部 4 FD 3 7 8 ー
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情報 官
ー
5 丶 6
丶 ノ
/
電 話 回線 等 に よる 通 信 一一一一一一勤
図 2 出発 機 の 管 制 に お け る運 航 票 の 流 れ
管 制 部 か ら運 航 計 画 を 受 信 し運 航 票 を 発行
移 管
駐 機 位 置 を 確 認 し管 制 要 求
管 制 要求
管 制 発 出
移 管
管制 伝達後移管
地 上 走 行 指 示 後 滑 走 路 手前 で 移 管
離陸 確認 後移管
/ 丶
管制 塔 内部
〕
一
〔 〕
情報官 ・ FD
回 GC 2 LC
ゆ 〔萱
動
丶
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3
丿 .
運航票 の 移管 一
電 話 回 線 等 に よ る 通 信 一
一一一
一一一
一一
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一一
一
図 3 到着 機 の 管 制 に お け る 運航票の流 れ
到 着 機 の 運 航 票 を発行
着 陸 後滑走 路 か ら出 た 段 階で 移管
駐 機 位 置 へ
の 地 上 走 行 を指 示 し た 後 移 管
到 着 を確 認 し て 連 絡
4. 試 作 シ ス テ ム
航 空機運 航 管理 シ ス テ ム と して 、以 下 の よ うに 、飛 行 場 管 制 業 務 を行 う 4 人 の 管 制 官 の 業 務 に 対応 さ せ 、
4台の ワ
ーク ス テー シ ョ ン に よる シ ス テ ム を 試 作 した 。
航 空機運 航 管 理 シ ス テ ム は 、航 空 機 の 運 航 計 画 情 報 を管 理 す る FDP Flight Data Processor)を サ
( ーバ
と し 、各 管 制 官端 末 を ク ラ イ ア ン ト とす る 、サ ーバ =ク ラ イ ア ン ト型 デ ー タ ベ ー ス ・シ ス テ ム と見 る こ と
が で き る シ ス テ ム で あ り、また 、各管 制 官 の 間で の 運 航 情 報 の 受 け 渡 し に よ り管 制 業 務 が 進 め られ て い く
点 に 着 目 す れ ば 、電 子 メ ール ・シ ス テ ム や 広 くは グ ル
ープ ・ウ ェ アの 一種 と し て 捉 え る こ と も可 能 な シ ス
テム で あ る。
た だ し、 あ る 航 空 機 に 関 す る 情 報 は 、 同 時 に は 1 人の管制官に よ っ て の み変更 ・処 理 が 可 能 とな っ て い
る 必要 が あ る 点 、 ま た ど の 管 制 官 に も管 理 さ れ て い な い 航 空 機 が 存在 す る 状 況 は 許 さ れ な い 点 等が 一般的
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148 日 本航 海 学会 論文集 8年 3 月
な デ ータ ベ ー ス ・シ ス テ ム とは 異 な っ て お り、実 時 間 の 管 制業 務 に 対 応 す る だ け の 応 答性 等 が 要 求 さ れ る
点 が 電子メ ール ・シ ス テ ム 等 とは 異 なっ て い る。
て は 、 その 機 能 評 価 を 管 制 官 参 加 の シ ミ
ーシ ン に よ る評価実験 に よ り
ま た 、試 作 シ ス テ ム に お い ュ レ ョ
ーシ ・シ
行 う こ と が 必 要 で あ り、 そ の 実 施 を 可 能 とす る シ ミ ュ レ ョ ン ナ リオ の 処 理 機能 を実 現 して い る 。
なお 、シ ミ ュ レ ーシ ョ ン ・シ ナ リオ の 処 理 機 能 とは 、運 航 計 画 に 従 っ て 航 空 機 を 発 生 さ せ た り、管 制 指 示
に 従 っ て 個 々 の 航 空機 を 地 上 走 行 等 さ せ る機 能 で あ る。
この シ ミュ レ
ーシ ョ ン ・シ ナ リ オ の 処 理 機 能 は 、現 時 点 で は 、 シ ミ ュ レ ーシ ョ ン の 実施 に 多数 の パ イ ロ
とが 困 難 で あ っ た た め 、シ ーシ 実施時 にパ イ
ッ ト役 の 要員 を要 す る シ ス テ ム 構 成 を実 現 す る こ ミ ュ レ ョ ン
ロ ッ ト側 に 要求 さ れ る航空 機 の 運 航 に 係わ る 判 断 を内部 プ ロ セ ス の 処 理 と し て 実 現 し た もの で あ る 。
4.1 シ ス テ ム 構成
、オ ブ ジ ェ ク ト指 向 型 デ ータ ース ・シ
ス テ ム を べ 一 ス に 、各 管 制 官 用 の ク ラ イ ア ン
本 試 作 シ ス テ ム は ベ
シ ミュ レ ーシ ョ ン 機 能の 実現 の た め に 、デ ータ ベ ース ・サ ーバ を ロ ーカ ル ・サ ーバ と して シ ナ リオ 処 理
ュ ン
ータ ーに 組 み 込 ん だ。
ータ ー は 、管 制 塔 け る 管 制 業 務 環 境 を模 擬 す る た め の 視 聴 覚 的 な仮 想現 実 感 を
飛 行 場管制 シ ミュ レ に お
実 現 した 装 置 で あ り、 シ ミュ レ ーシ ョ ン に 参 加す る 管 制 官 は 、恰 も管 制 塔 に い る か の よ うに飛 行 場 の 景観
を 見 な が ら 、管 制 業 務 の 模 擬 を行 う こ とが で き る よ うに なっ て い る 。
本試 作 シ ス テ ム は 、管 制官 =パ イ ロ ッ ト間 デ ータ リン ク の 実 用化 を 想 定 した シ ス テ ムで あるが 、 羽 田空
港の III期 運 用 に 関 して 6.
お わ 「
りに 」 に 後述す る理 由 に よ り 、現 状 の 音 声 通 信 に よ り進 め られ る 業 務形
態 に も対 応 す る よ う に 、パ イ ッ ロ ト との 音 声 通 信 を模 擬 す る た めの 音声処理機 能 を付加 して い る 。尤 も 、
も、デ ータ
ト問 デ ータ ー
音 声 処 理 機 能 は 、管 制 官 ; パ イロ ッ リン ク が 実 現 さ れた 後 リン ク との イ ン タ フ ェ
ス に 有 効 な 機 能で あ り、 その 開 発 は 、シ ミ ュ レ ーシ ョ ン に お い ての み の 意 義 し か 持 た な い もの で は な い 。
航 空管 制業 務 に お い て 音 声 認 識 装 置 は 、次 世 代 の 入 力デ バ イ ス と し て 重 要 な もの の 1 つ で ある 。
4.2GUI デザイ ン
飛 行 場 管 制業 務 は、特 に GC 席 及 び LC 席 に お い て は 、管 制 官 が 自 らの 肉 眼 に よ り直 接 に 航 空機 を 監 視 し な
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ータ ー 飛 行場 管 制 シ ミ レ ュ
ール 音声認 識 装 置
操縦 シ ミュ レ 管 制承 認伝 達席 コ ン ソ
(
視聴覚環撞生成部)
{C ユgaraac 肆 Deよ工very ,
音 声合 成 装 置
ーシ ・サ ーバ ー
ーダー模 擬 装 置 シ ミ ュ レ ョ ン
… 運 航 情 報 管理 シ ス テ厶
航空路 レ
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シ ナ リオ処 理 装 置 ) ロ バ
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地上 管 制 席
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(Ground Conし 011
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模 擬装 置 デ ィ プ イ摸擬 装 置 ; ス レ
音声合 成装 置
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ネ ッ トワ ーク 管理 装置 飛行 場管 制席 コ ン ソ ル ー 音声認識 装 置
(Looal Cou し rQ ユ1
音 声合 成 装 置
施設外 シ ス テム
図 4 飛 行 場 管 制 用 航 空 機 運 航 管 理 シ ス テ ム 構成 図
一
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94 号 飛 行場 管 制 用航 空機 運航 管理 シ ス テム の 検討 と試作
149
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一
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150 日 本航 海学会論文集 8年 3月
が ら行 う こ とが 必 要 な業 務 で あ り、 そ の 端 末 装 置 に は 、で き る だ け 手 も とを 見 な くて も 良 い よ うな 配 慮 が
求 め られ て い る。
こ れ ら の 要求 に対応 して 、本 シ ス テ ム で は 飛 行 場 管 制業 務 の 遂 行 に 必 要 な 全 て の 処 理 を マ ウス の み に よ
っ て 実現 で き る よ うに 、GUI デ ザ イ ン を 工 夫 した 。各 管 制席 へ の 設 置 を想 定 し た デ ィ ス プ レ イ の基本的な構
成 は図 5に示 す とお りで あ る 。
各 機 能 領 域 の 配 置 等 は 、管 制 官 諸 氏 他 の 意 見 を聞 き な が ら試 行 錯 誤 に よ り決 定 し現 状 に 至 て い る 。 っ
配 色 ・配 置 と疲 労 度 の 関係 等 に つ い て は 、未 だ 定 量 的 な評 価 を行 て い な い が 個 人 的 な 差 異 や 熟 練 度 っ 、
に よ る 影 響 の 少 な い よ うに 、以 下 の よ うな 点 に 配 慮 し た 。
(1> デ ィ ス プ イ 上 で の 視 点 の 移 動 を 少 な くす る た め 、メ
レ ー ・ボ タ ン 等 は 関 連 す る 情 報 の 近 くに 配 し ニ
ュ
た。
航 空 機 の 状 況 を 階 層 的 に 分 類 し、配 色 を カ テ ゴ リー に 対 応 さ せ た 。
(3) 過 剰 な 情 報 の 表 示 を 抑 え 、各 席 で の 業 務 に 基 本 的 な 画 面 構 成 を共 通 化 し た 。
タ イ リ ン グ ・ウ ィ ン ドウ形 式 を採 用 し、ポ ッ プ ア ッ プ ・ウ ィ ン ドウ等 に よ る 情 報 の マ ス キ ン グ が 起 こ
らな い よ に した 。
う.
あ る 処 理 を 行 う場 合 に 複 数 の 方法 が 可 能で あ る 場合 に は 、全 て の 方 法 を 実現 した 。
隣 卓 の 業 務 状 況 が 判 断 で き る 機 能 等 を 実現 し 、更 に 、航 空機 の 運 航 情報 の 受 け渡 し に お け る 確認手続 き を
明確化 す るた め に 、運 航 情 報 の 移 管 をア ニ メ ーシ ョ ン に よ り表 現 し た 。
4.3 機 能
本試作 シ ス テム は 、その シ ミ ュ V 一シ ョ ン 機能に よ り 、 現状 の 羽 田 空港 に お け る 飛 行 場 管制 業 務 を ほ ぼ
完全 に 再 現 で き る もの と な っ て い る。
現 役 の 羽 田 空港 の 飛 行場 管 制官 に 協 力 を仰 い だ シ ミュ レ ーシ ョ ン 評価実験 にお い て も、飛 行 場 管 制 業 務
に 必 要 な 機 能 は 全 て 、 実 現 の 方法 や そ の 完 成 度 は と もか く と し て 、実 現 さ れ て い る こ とが 確認 さ れ た 。
例 え ば 、主 要 な 機 能 と して 以 下 の 機 能 が 実 現 さ れ て い る 。
1)
( 自席 で 管 理 す る 各 航 空 機 の 運 航 情報 を編 集 し た り 、並 べ 換 え た りす る 機 能 。
移 管 す る 航 空機 に 対 す る 運 航 情 報 を 適 切 な管 制 席 に 速 や か に 移 管 す る 機 能。
3) 運 航 情 報 や 管 制 承 認 内 容 に 変 更 が あ っ た 場 合 に
〔 、それ らを表示 す る 機能。
4 ) 臨席
( の 業務状 況 を参照 す る 機 能。
風 向 ・風 速等 の 気 象情報 や 通 信 周波 数 情報 等 を表 示 す る 機能 。
上 記 機 能 の 実現 方法 や 表 示 形 態 に つ い て は 、 多種 ・多 数 の 意 見 を得 た が 、特 に の 運 航 情 報 を移 管 す る
機能につ い て は 、 そ の 応答性 や ア ニ
メ ーシ ョ ン に よ る表示 形 態が 好評で あ っ た 。
ま た 、本 試 作 シ ス テ ム は 、将 来 の 管 制 業 務 の 省 力 化 を 目的 とす る もの で あ り、以 下 の よ うな 、管 制 官 の
業務判 断 を支 援 す る 機能の プ ロ トタ イ プ を 実 現 し た。
6) 航 空 機 が プ
( ッ シ ュ バ ッ ク す る 場 合 の 機 首 方 向の 適切 な 選 定 を 指 示 す る機 能 。
7> 航 空 機 が 地 上 走 行 す
( る場合 の 最短 経 路 の 設定 に 関 す る機能 。
8 } 航 空 機 の 出 発順 位 に つ
( い て 、 こ れ を最 適 化 す る機 能。
9> 航 空 機 の 離 発 着 間 隔
( に つ い て 、こ れ を適 正 化 す る ため の機能 。
て は 、実 用 化 に は 知 識
ース 内容 が 未 だ 不 十 分 で あ る が 、今 後 増 大 す
業 務 判 断 を支 援 す る 機能 に つ い ベ の
る航 空 交 通 量 に 対 応 す る た め に は 有 効 な 機 能 で あ る との 意 見 を 得 た 。
音声認識装置 に よ る入 力は 慣熟度 に 応 じ て 好評で あ り、 シ ス テ ム が 話 者 の 発 話 内 容 を 予 測 す る機 能 に よ
り、 シ ミ ュ レ ーシ ョ ン ・シ ナ リ オ の 範 囲 で は あ る が CD GC 、
、 LC の各席 に お い て十分 実用 に な る認識率が
達 成 さ れ た 。 な お 、FD 席 で は 、 そ の 業 務 に お い て 音 声 認 識 装置 を使 用 し て い ない 。
音 声 認 識 率 の 定 量 的 な評 価 に つ い て は 、今 後 シ ミ ュ V 一シ ョ ン ・シ ナ リオ の ヴ ァ リエ
ーシ ョ ン を 増や し
て改め て行 い た い と考 え て い る 。
一
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94 号 飛 行場 管 制 用 航 空機 運 航 管 理 シ ス テ ム の 検 討 と試 作 151
5 . 今後の 計画 と見 通 し
役 割分 担 は 経 験 的 に決 め られ 現 状 に 至 っ て い る に 過 ぎ な い もの で あ る 。 従っ て 、現 状 の 役割分担が 将来的
に も不 変 で あ る とは 断 言 で き ず、 ま た 業 務 に 当 た る 管制官 の 数 に つ い て も増減 す る 可 能性 は 大 い に 残さ れ
て い る と考 え られ る 。
特 に 、現 状 の よ う な 業 務 分 担 で は 、管 制 官 の 人 数 を 増 や す こ とに よ り空 港 の 処 理 容 量 を 増 す こ とは 困 難
であ り、 「要 員 数 に 比 例 し た 処 理 容 量 」 は 実 現 し得 な い 。将 来 的 に は 、 よ り 「要 員 数 に 比 例 し た 処 理 容 量 」
の 実現 可 能 な方 向 へ
業務形 態 が 変 化 し て い く こ とは 十 分 に 考 え ら れ る 。
本試 作 シ ス テ ム の ソ フ トウ ェ ア は 、現 時 点 に お い て 可 能 な 限 リオ ブ ジ ェ ク ト指 向 の 考 え 方 に 添 っ て 実現
し た も の で あ り、管 制 業 務 に お け る 役 割 分 担 の 変更 や 、管 制 官 の数 の増減 に は 柔軟 に 対応で き る 構 造 とな
っ て い る 。現 時 点 で は 、サ ーバ を 設 置 す る こ と に よ り、複 数 の 卓 に 跨 が る 調 整 等 を 行 っ て い るが 、今 後 、
ーバ
サ 機 能 の 評 価 を 進 め 、分 散 管 理 す べ き 情 報 と集 中管 理 す べ き 情 報 の 分 類 を 高 度 化 し 、 よ り 柔 軟 で 高機
能なシ ス テ ム と して 再構築 す る予 定で あ る 。
ま た GUI 機 能 に つ い て は 、
現状 の ハ ー ドウ ェ アやオペ レ ーテ ィ ング ・シ ス テ ム の 有 す る 機 能 的 な 制 限 か ら、
必 ず し も オ ブ ジ ェ ク ト指 向 とは 言 え な い 点 を 幾 っ か 残 し て い るが 、こ れ らの 点 に つ い て も、今 後 改 善 を 進
め よ り ポ ータ ビ リ テ ィ ーの 高 い シ ス テ ム と し て 完 成 度 を 向上 さ せ て い きた い 。
6 . おわ りに
管 制 官 に 対 す る 航 空 機 運 航 情 報 の 電 子 表 示 シ ス テ ム は 、世 界 的 に 開 発 が 進 め られ て い る シ ス テ ム で あ る
が 、飛 行 場 管 制 業 務 に お い て 、紙 の 運 航 票 に 代 わ る シ ス テ ム は 未 だ 実現 さ れ て い な い 。
本 試作 シ ス テ ム に 係 わ る 研 究 も 、我 が 国 の 羽 田 空港 m 期 運 用 に お け る 両 面 管 制 に お い て 要 す る 、「航 空 機
運 航 情 報 を 電 子 表 示 に よ り飛 行 場 管 制 官 に 提 供 し 、 ま た デ ータ リ ン ク に よ り管 制 官 の 間 で の 受 け 渡 し を 可
能 とす る シ ス テ ム の 検 討 か ら開 始 し た もの で あ る 。即 ち、 直接 に は 、羽 田 空 港 の 両 面 管 制 に お い て は運
」
航 票 を十 数 メ ー ト 離 れ た 管 制 塔 の 反 対 側 に い る管制 官 に渡 す 必 要が あ り、こ の 要 求 に 応 え る シ ス テ ム の
ル
開 発 を 目 的 と し た 研 究 が 、 そ の 後 、管 制 官 ;パ イ ロ ッ ト間 デ ータ リ ン ク の 構 想等 に よ り、紆 余 曲 折 し て 今
日 に至 っ た もの で あ る。
今後 の 世 界 情勢 に よ っ て は どの 様 な形 に ま と め 上 げ る こ とが 要求 され る の か 皆 目見 当 もつ か ない が 、今
回 紹 介 した 試 作 シ ス テ ム は 、平 成 3 年 に 研 究 を 開 始 した 航 空 機 運 航 管 理 シ ス テ ム か ら数 え て 3世代 目で あ
り、既 に 2 度 の 大幅 な改修 を経 験 して お り、今 後 発 生 す る要 求 に も十 分 応 え得 る だ け の 柔 軟 性 は 実 現 して
い る と考 え て い る。 尤 も、航 空 管 制 業 務 は 人 命 を預 か る 業 務 で あ り、不 注 意 に よ る 事 故 の 発 生 等 は 許 さ れ
る こ とで は な い 。 見 通 しの 甘 さ に よ る 設 計 ミ ス 等 に は 細 心 の 注 意 を払 っ て も不 十 分 で あ る こ とが 多い の は 、
歴 史の教 え る 処で あ る が 、常 に 最 善 を尽 く して い る と言 え る 様 努 力 して い くつ も りで あ る 。
シ ス テ ム の利 用者 の 側 に ts い て は、 ゴ ン ピ ュ
ータ 等 の デ ィス プ V イ に 向か っ て の 作業 は 、 往々 に して 機
械 的 に 行 わ れ る 状 況 に 陥 りや す く、 常に 幾分 か以上の 緊張感 を維持す る こ とは 非 常 に 困難で あ る。 不 注 意 「
に ク リ ッ ク した ボ タ ン に よ り どの 様 な状 況 が 発 生 す る か が 全 く未 知 で あ る 様 な シ ス テ ム 」 にな らな い 様 に、
フ ェ
ール ・セ ー フ 、 フ ール ・セ ー フ の 考 え 方 を取 り入 れ る 事 等 に よ り、今 後 は り一層 の 安
よ. 全性 向上 を 目
的 と し な け れ ば な ら な い で あ ろ う。
一般 的
に 、 多数 の 人 間 と 多数 の 機 械 が 関 係 し 合
今 後 研 究 を進 め る に 当た っ て は、 よ り うシ ス テ ム に お い
て 、人 間 の 側 の 快 適 さ を 実現 ・向上 す る 、 シ ス テ ム に お け る 人 間 性 の 確 保 と保 証 に 係 わ る 、 よ り合 理 的な
マ ン = マ シ ン ・イ ン タ フ ース 実 用化 を 目的 と した い 。
ェ
質 疑 応 答
山 下 晃司 東 京商 船 大 学 ):GUI の 仕様 や ポ イ
( ン テ ィ ン グ ・ツ ール の 決 定 に 際 し て 、 ど ん な項 目 を どの よ う
に 検 討 し た か ? また 、 ど の よ うな 評 価 方法 に よ っ て 決定 した か ?
塩見 格一 : GOI の 仕 様 は 、
GUI を構築す る プ ラ ッ トフ ォ
ーム (
UNIX 、
Xl1R5 、
Motif 、
etc )に よ り作 成 可
一
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Japan
Japan Institute
エnstitute
of
of Navigation
Navigation
152 日本 航 海学会 論 文 集 8年 3 月
能 な もの に 限 定 した 上 で 、数 種 類 の レ イ ア ウ ト 案 を 作 成 し 、管 制 官 等 の 意 見 を 聞 い て 決 定 し ま し た 。意
見 が 別 れ た もの につ い て は 、 その 意見 の 根 拠 を優 劣 の 判 断 が つ く まで 遡 り調 査 し て 決 定 し ま した 。
配色等 につ い て も同様で す。
な お 、 レ イ ア ウ ト案 や 配 色 案 、 また フ ォ ン トの 大 き さ 等 に つ い て は 、 当所 で 検 討 ・作 成 した もの に 加
えて 、 家 電製 品 の デ ザ イ ン や その パ ン フ V ッ ト等 を研 究 して い る シ ン ク タ ン ク に調査 ・作 成 の 協 力 を お
願い し ま し た。
ポ イン ティ ング ・ツ ール GUI に 要 求 さ れ る ア ク シ ョ ン に
の 決定 は、 よ り決 定 し ま した 。タ ッ チパ ネル で
は 、ドラ ッ グ & ド ロ ッ プ 等 の 操 作 は 困 難 で あ b 、ボ タ ン の 形 状 に よ っ て は 分 解 能 が 不 足 して し ま い ま す 。
トラ ッ ク ボ ール は ドラ ッ グ& ド ロ ッ プ に 両 手 を要 す る こ と等 に 問題 が あ り、 ま た キ ーボ ー ドを 使 用 す る
場合で も矢 印キ ーだ け で は 全 て の 操 作 を行 うこ とは で き ま せ ん 。
特 に 、飛 行 場 管 制 業 務 が 管 制 官 に 管 制 塔 か ら外 を 見 て い る こ と を要 求 す る 業 務 で あ る こ とか ら、手 も
とを 見 ず に 作業 が 行 え る こ と が 重 要 で あ り、 多 数 の ポ イ ン テ ィ ン グ ・ツ ール を併 用 す る こ とに も、 ポ イ
ン テ ィ ン グ ・ツ ール が 手 で 操 作 す る もの で あ る 限 り問 題 が あ り ます 。結 果 的 に 、現 状 で は 一般 的 に マ ウ
ス が 最 適 で あ り、デ ィ ス プ レ イの 明 る さ が 十分取 れ る 場合 に は 、タ ッ チ ペ ン が 適 当 で あ る と結 論 致 し ま
した 。 特 に 、立 っ て 業務 を行 う管 制 官 の 場 合 は 、 デ ィ ス プ レ イ の 設 置 角 度 に も依 り ます が 、 タ ッ チペ ン
が最 も使 い 易 い よ うで す。
GUI の 仕様やポ イ ン ティ ン グ ・ツ ール を決 定 す る 場合 、む や み に アン ケ
ー ト調 査 等 を 実 施 す る こ とは 有
効 で は な く、夫 々 の GUI 案 や ポ イン テ ィ ン グ ・ツ ール を好 ま し い と考 え る 代 表 者 を選 ん で 、彼 らに お 互 い
を 説 得 す る よ う な 話 し合 い を して も らう こ とで 、本 質 的 な 要 求 が 明 らか に な る と考 i られ ます 。
第 1 回 目の 話 し 合 い に 依 て は 結 論 が 得 っ られ な い 場 合 、 プ ロ トタ イ プ を製 作 し て 評 価 試 験 を 行 い 、第
2 回 目の 話 し合 い の 場 を 設 け る こ とが 必 要 と な り ま す。
疲 労度 等 を評 価基 準 と す る た め に は 、極 め て 長 い 調 査 期 間 が 必 要 で あ り、短 期 的 な 評 価 で は 慣 熟 度 に
依 る 差異 に 優 劣 が 隠 れ て し ま い ます 。眩 し くて 見 に くい とか 、物 理 的 に 重 い 事等 に 依 る疲 労が 明 らか で
な 限 り、疲 労 度 る評 価で は 、 テ
ーの 配列 、 ウ のボ タ る優 劣を決 め る事 は
い に 依 ン キ マ ス ン 位置等 に 係わ
困 難で す 。
一
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