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ef
e
f

11

入射および反射衝撃波後方の超音速流れにおける衝撃波
管壁面での非平衡凝縮
* ** ***
朱 海
朱 海 東 ,太 田
東*,太 田 匡
匡 則 ,前 野
則**,前 野 一
一 夫
夫***

Experiment of Non-Equilibrium
Non-equilibrium Condensation on Shock Tube Wall in
Supersonic Flow behind both Incident and Reflected Shock Waves
Haidong
Haidong ZHU
ZHU ,, Masanori
Masanori OTA
OTA and
and Kazuo
Kazuo MAENO
MAENO
The purpose
The purpose of of this
this study
study is
is to
to clarify
clarify nonequilibrium
nonequilibrium condensation
condensation of of the
the refrigerant
refrigerant HFC134a
HFC134a vapors
vapors on
on shock
shock
tube
tube wall
wall behind
behind both
both incident
incident and
and reflected
reflected shock
shock waves.
waves. The
The diaphragmless
diaphragmless shockshock tube
tube with
with cooling
cooling by
by liquid
liquid
nitrogen
nitrogen has
has been
been utilized
utilized for
for the
the experiment
experiment at at low
low temperature.
temperature. WeWe set
set initial
initial temperature
temperature of of driven
driven gas
gas 190~220K
190~220K
and set
and set incident
incident shock
shock wave
wave Mach
Mach number
number 2.0~4.0.Thickness
2.0~4.0.Thickness of of condensing
condensing liquid
liquid film
film isis measured
measured by
by optical
optical
interferometric
interferometric method
method based
based on
on multiple
multiple reflections
reflections ofof He-Ne
He-Ne laser
laser beam.
beam. Heat
Heat flux
flux of
of wall
wall is
is also
also measured
measured byby
Platinum thin
Platinum thin film
film thermo-sensor.
thermo-sensor. As As the
the results,
results, shock
shock wave
wave characteristics
characteristics inin test
test fluids
fluids nitrogen
nitrogen and
and HFC134a
HFC134a areare
clarified..
clarified.. It
It is
is also
also found
found that
that growth
growth of of the
the liquid
liquid film
film thickness
thickness of
of HFC134a
HFC134a depends
depends on on the
the nonequilibrium
nonequilibrium degree
degree of
of
pressure.
pressure. For the measurement by Platinum thin film thermo-sensor, the values of heat flux are bigger when liquid film
For the measurement by Platinum thin film thermo-sensor, the values of heat flux are bigger when liquid film
grows
grows faster.
faster. and
and heat
heat flux
flux values
values have
have rapid
rapid increase
increase behind
behind reflected
reflected shock
shock wave.
wave.
Key
Key Words: Nonequilibrium Condensation, Shock Wave, Interferometric Method,
Words: Nonequilibrium Condensation, Shock Wave, Interferometric Method, HeatHeat Flux
Flux

1.緒
1.緒 言

れらの流体機械の問題に関連して蒸気の高速流れと衝撃
れらの流体機械の問題に関連して蒸気の高速流れと衝撃
衝撃波とは気体の流れが超音速から亜音速に減速され
衝撃波とは気体の流れが超音速から亜音速に減速され 波が凝縮・蒸発現象にどのような影響を与えているのかを
波が凝縮・蒸発現象にどのような影響を与えているのかを
る際に発生する速度,圧力,温度などの不連続面のことで 解明することは工学的に重要な問題である 1)
る際に発生する速度,圧力,温度などの不連続面のことで 解明することは工学的に重要な問題である 1).

あり,静止気体中では通常音速以上の速さで伝播する.衝
あり,静止気体中では通常音速以上の速さで伝播する.衝 衝撃波後方の壁面凝縮現象については,主として藤川ら
衝撃波後方の壁面凝縮現象については,主として藤川ら
撃波の研究は 19 世紀頃から始まり,
撃波の研究は 19 世紀頃から始まり,マッハよりレーリー,
マッハよりレーリー, が反射衝撃波後方領域の管端壁面上で発達する凝縮液膜
が反射衝撃波後方領域の管端壁面上で発達する凝縮液膜
リーマン,ストークス達の先駆者によってよく研究されて
リーマン,ストークス達の先駆者によってよく研究されて の厚さを光学干渉的手法により測定し,エタノールをはじ
の厚さを光学干渉的手法により測定し,エタノールをはじ
きて,ジェットエンジンが開発され超音速飛行が可能にな
きて,ジェットエンジンが開発され超音速飛行が可能にな めいくつかの気体について,凝縮係数の測定を行っている.
めいくつかの気体について,凝縮係数の測定を行っている.
ると,航空宇宙工学の発展および爆発災害時の爆風伝播な
ると,航空宇宙工学の発展および爆発災害時の爆風伝播な 母本論文では,液体窒素を用い,独自開発した無隔膜衝撃
母本論文では,液体窒素を用い,独自開発した無隔膜衝撃
どの研究により 20 世紀中から急速に発展してきた.
どの研究により 20 世紀中から急速に発展してきた. 波管低圧部を冷却することによって低温試験気体中の相
波管低圧部を冷却することによって低温試験気体中の相
従来の衝撃波研究は,衝撃波形成の容易さや工学的解明
従来の衝撃波研究は,衝撃波形成の容易さや工学的解明 変化を伴う衝撃波の伝播状態の計測を行った.さらに,
変化を伴う衝撃波の伝播状態の計測を行った.さらに,
要求こともあり,主として常温および高温について多く行
要求こともあり,主として常温および高温について多く行 レーザー干渉法による液膜の定量的計測を行い,熱流束計
レーザー干渉法による液膜の定量的計測を行い,熱流束計
われてきた.しかし,近年の工学の発展に伴い,低温域にお
われてきた.しかし,近年の工学の発展に伴い,低温域にお 測と併せて,蒸気中の衝撃波背後の低温壁面上の蒸気凝縮
測と併せて,蒸気中の衝撃波背後の低温壁面上の蒸気凝縮
いても高速気体力学の研究が必要となってきている.
いても高速気体力学の研究が必要となってきている. 過程を含めて実験的に研究している.
過程を含めて実験的に研究している.
低温域での衝撃波背後において,高速凝縮など相変化現
低温域での衝撃波背後において,高速凝縮など相変化現 この研究の結果は液化天然ガス,液化石油ガスの液化気
この研究の結果は液化天然ガス,液化石油ガスの液化気
象はさまざまなところで発生している.例えば低温流体を
象はさまざまなところで発生している.例えば低温流体を 化の問題や空調,冷凍などの冷却媒体の振舞い,あるいは
化の問題や空調,冷凍などの冷却媒体の振舞い,あるいは
作動流体とする冷熱タービンなどの流れ機械内でこれら
作動流体とする冷熱タービンなどの流れ機械内でこれら 超流動現象など常温以下極低温までの高速流体力学と衝
超流動現象など常温以下極低温までの高速流体力学と衝
の相変化干渉が起こり,空気液化エンジンでは酸化剤を空 撃波に関連した研究,例えば
の相変化干渉が起こり,空気液化エンジンでは酸化剤を空 LNG による火力発電プラン
撃波に関連した研究,例えば LNG による火力発電プラン
気中から高速凝縮によって取り出すことにより利用する.
気中から高速凝縮によって取り出すことにより利用する. トで使用されている冷熱タービンなどは,液化した
トで使用されている冷熱タービンなどは,液化した LNG
LNG
特に低温域においては蒸気の音速が低いため流体流速を
特に低温域においては蒸気の音速が低いため流体流速を をタービンで膨張させ気化させている.また超音速での空
をタービンで膨張させ気化させている.また超音速での空
上げると容易に衝撃波が形成される.相変化を伴う翼面上
上げると容易に衝撃波が形成される.相変化を伴う翼面上 気吸い込み液化型ロケットエンジンの液体燃料や,酸化剤
気吸い込み液化型ロケットエンジンの液体燃料や,酸化剤
では相変化現象が激しく繰り返されると,翼表面が侵食さ
では相変化現象が激しく繰り返されると,翼表面が侵食さ 系統や,冷凍機などへの概念設計が期待される.
系統や,冷凍機などへの概念設計が期待される.
れ,振動の発生などの安全問題にも深く関わってくる.こ
れ,振動の発生などの安全問題にも深く関わってくる.こ
2.基礎理論
2.基礎理論
2014 年
原稿受付 2014
原稿受付 年 55 月 30 日
月 30 日

学生会員 2.1衝撃波基礎理論
2.1衝撃波基礎理論

学生会員 千葉大学大学院工学研究科(〒263-8522
千葉大学大学院工学研究科(〒263-8522 千 千
葉県千葉市稲毛区弥生町 1-33)
葉県千葉市稲毛区弥生町 1-33) 垂直衝撃波による状態量の変化を計算するには,ランキ
**
** 千葉大学大学院工学研究科(〒263-8522
千葉大学大学院工学研究科(〒263-8522 千葉県千葉市
千葉県千葉市 垂直衝撃波による状態量の変化を計算するには,ランキ
稲毛区弥生町 1-33)
稲毛区弥生町 1-33) ン-ユゴニオの式より状態変化を入射衝撃波マッハ数の
ン-ユゴニオの式より状態変化を入射衝撃波マッハ数の
***
*** 正会員 木更津工業高等専門学校(〒292-0041
木更津工業高等専門学校(〒292-0041 千葉県 千葉県 関数として表したほうが便利な場合が多い 2)
正会員 関数として表したほうが便利な場合が多い 2).Fig.1 に衝撃
.Fig.1 に衝撃
木更津市清見台東 2-11-1)
木更津市清見台東 2-11-1)
↑非会員の場合
↑非会員の場合

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2
3.実験装置および計測方法

3.1 無隔膜衝撃波管
本研究は無隔膜駆動部を持つ衝撃波管(Fig.3)を実験に
用いる.本装置は膜交換の作業が不必要なため,大気流入
による結露および凝固などの問題も起こらない 4).

Fig.1. Flow in shock wave tube

波管内の流れを示します.断面一定の管内を伝播する衝撃
波が閉じた管端面に衝突反射するとき,衝撃波のまま反射
される.反射衝撃波前後の関係式を導出できる.
p5 (3 1  1) M i2  ( 1  1) (1)

p2 ( 1  1) M i2  2
p2 2M i2  (  1) (2)

p1  1
1
 2 M 2  ( 1  1)  2
Mr   1 i  (3)
 ( 1  1) M i  2 
2

Fig.3 Diaphragmless and cryogenic shock tube


理想的な衝撃波管の隔膜を破膜すると,前進衝撃波が一
定速度で低圧室内へ伝播し高圧側へは後退膨張波が伝播
する. 衝撃波関係式を用いて衝撃波管高低圧部の初期圧
力と入射衝撃波マッハ数の関係を示す. 高圧部前方に主副 2 つピストンが収容され,駆動気体が
2 4
充填される.後方はダンプタンクに接続された真空排気室
p4 2 1M i2   1  1   4  1 a1  1   4 1
 1    M i   (4) が収容されている.駆動気体は高圧ボンベから高圧室中心
p1 1  1   1  1 a4  M i 
に進入し副ピストンを押し出し,この移動によりチューブ
この節の記号表: を通して後方に駆動気体が流れ込み主ピストンを前方に
a: 音速 Mi: 入射衝撃波マッハ数 移動させる.駆動気体は高圧室全体に充填される. (Fig.4
Mr: 反射衝撃波マッハ数 γ: 比熱比 に駆動気体充填状態を示す)
5: 反射衝撃波背後領域 4: 高圧室領域
2: 入射衝撃波背後領域 1: 低圧管領域
2.2 衝撃波後方での蒸気状態
蒸気がその飽和衝撃波背後の壁面上で蒸気が凝縮する
理由を Fig.2 を用いて説明する.蒸気の初期状態を図中 1
とすると,主流の流域は一般的に 2a のようにランキンユ
ゴニオ条件に進む.しかし,壁面に接している蒸気は,壁
面への熱伝導により 2b のように温度上昇が抑制されなが
ら圧縮され,飽和蒸気圧曲線を越えて過飽和状態となり,
壁面上に非平衡凝縮液膜が形成する.形成された液膜は時
間とともに成長している 3). Fig.4 High pressure part of shock tube

作動時には電磁バルブを開放することにより副ピスト
ン後方の駆動気体が真空排気室に流出し,副ピストンが後
方に高速移動し,主副ピストン間の駆動気体がチューブを
通じて真空排気室に流出する.この減圧により主ピストン
が高速移動して,駆動気体が低圧室内に流出し衝撃波が形
成する.
Fig.2. Change of thermodynamic states of vapor
本研究では低温での凝縮現象を取り扱うために,容易に

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凝縮させられる気体が必要である.そのなかで,HFC-134a この節の記号表:
は試験気体として用いる.なお,窒素は駆動気体として用 c1-3: 定数 I: エネルギー反射率
いる.低圧部は熱伝導率の低いステンレス製内径 19.4mm K: 電圧出力 Q: 相対エネルギー反射率
厚さ 3.9mm の引き抜き円筒管を使用している.観測部には r: 屈折率 t: サンプリング時間
真空断熱用ヒートシールドチャンバが付けている.観測部 δ: 液膜厚さ θ: レーザー入射角
上部には液体窒素溜りがあり,低温実験の際にはこの部分 λ: レーザー波長 ψ: 位相遅れ
に液体窒素を注入して冷却を行う.衝撃波速度および初期 l: 液膜 s: ガラス v: 蒸気
温度の測定は 2 個のピエゾ圧力センサーと K 型熱電対によ 3.3 伝熱量の測定(白金薄膜温度計)
り測定される. 伝熱量測定には白金薄膜温度計に含むブリッジ回路お
3.2 液膜厚さの光学測定 よび差動増幅回路(Fig.7)を使用する.
液膜厚さは干渉システム(Fig.5)を用いて測定される.
レーザー光を傾けて内部ガラスに入射させ,ガラス内面に
付着した液膜により起こる干渉信号を受光器に取り込む
ことによって,液膜厚さを計算する.

Fig.5 Optical interference system

Fig.7 Bridge circuit used to measure the heat flux

白金薄膜温度計は直径 8mm パイレックスガラス円柱端


面に白金を帯状に蒸着したものである.白金は温度と抵抗
値の関係が直線性と再現性に優れた金属として知られて
おり,低温壁面の温度変化の詳細な測定を目的としこの測
温素子を可変抵抗として用いる.
実験前に予めブリッジ回路内の起電力がゼロとなるよ
Fig.6 Interferometric measurement method
うにポテンショメータを調節する.実験によって観測部で
温度変化が起きると,温度計素子の抵抗値が変化しブリッ
ジ回路のバランスが崩れ,回路から出力電圧が生じる.こ
Fig.6 に示されるような,入射光 A がガラス‐液膜界面 の抵抗値の変化をブリッジ回路の電圧出力として取り出
を透過し,液膜‐蒸気界面で反射して,入射光 A′の反射 すことで,壁面表面熱流束を求めることができる.
光と干渉し合う場合,行路差によって反射光の強度が変わ 熱流束の計算をするとき,以下の条件を仮定する.
ってくる.このような干渉はレーザービーム径の範囲で無 ➀ 薄膜上での熱の流れは垂直方向に一次元である.
数に起こっており,これらの光の反射強度をフォトダイオ ➁ ガラスの厚さは熱の流れ方向に半無限である.
ードで取り込み,液膜厚さを計測する.反射光のエネルギ ➂ ガラスの厚さは充分に厚く半無限均一体と考える.
ー反射率と位相差から,以下のような衝撃波通過後の正味 ➃ 薄膜表面温度はガラスの表面温度と一致する.
液膜厚さ増加分に関する式を導いた 5)
. 以上により半無限のガラスに乗っている有限な物質で
  c I  I  Qt   c2  0 の一次元熱伝導問題として考える.仮定により熱流束は以
 l t    cos 1  1 min   l
4nl cos  l  c3 1  I min  I  Qt   下の公式から計算できる.
(5)
r  r  2rls rvl cos l 2   n v(ti )  v(ti 1 ) 
2 2

(8)
I (t )  ls 2 vl 2 q (t )  i1 
1  rls rvl  2rvl rls cos l (6)  R0a R   tn  ti  tn  ti 1 
K (t )  K min
Q(t )  (7) この節の記号表:
K max  K min

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a: 抵抗温度係数 c: 比熱比 c.c: 凝縮係数 L: 潜熱
k:熱拡散率 q: 熱流束 ΔS:蒸発エントロピー T: 温度
R: 抵抗 t: サンプリング時間 m: 質量流速 Vl: 液体のモル体積
g
v: 回路電圧出力 β: 感度 ρ :密度 V : 気体のモル体積 x: 壁面からの壁内への距離
3.4 液膜温度の計算と凝縮係数の見積 t: 経過時間 α: 熱伝導率
飽和した蒸気が液化し壁面に付着する過程において,蒸 κ: 熱拡散率 q: 分子の内部自由度に関する分配関数
気は凝縮潜熱を放出する.その際,高温側から低温側に熱
4.実験結果と考察
の移動がある.Fig.8 に本研究で用いるモデルを示す.次
に,壁面温度の上昇を計算する. 4.1 衝撃波管特性
本研究で用いている無隔膜低温型衝撃波管の特性実験
結果について述べる.Fig.9 に入射衝撃波マッハ数と初期
圧力の実験結果と理論値を載せた.実験値は理論値と同様
の結果となったが,理論値に対して約75%~85%と低い値
となった.これは本研究で用いるような無隔膜衝撃波管で
は,破膜に当たるものがピストンの移動となっているため,
開口時間が長く,単純理論の場合は破膜にかかる時間は瞬
間的なものであるという仮定があるためこのような結果
になったと考えられる.同一初期圧力比において30%程度
の差がある,これは衝撃波管内を真空排気した後注入した
Fig.8 Heat conduction model near the cold wall surface
際に,管端にて凝縮と蒸発が繰り返され管内の温度が平衡
状態となるが,これが不十分であると管内初期温度にむら

Tw は壁温度,xは壁表面からの壁内への距離.Tw は距 があるまま実験を行うこととなる.

離 x と衝撃波が通過してからの経過時間 t の関数である.
このモデルに対する基礎方程式は 4
Tw ( x, t )  2 Tw ( x, t )

t x 2 (9)
基礎方程式を以下の境界条件と初期条件を用いて解く. 3
Measured
Tw ( x,0)  T w 0 x0 (10)
Mi

○:T1=190K~200K
非定常熱伝導の問題は,グリーン関数を用いて一般に解く △: T1=201K~210K
ことができるが,その取り扱いは複雑である.本研究のモ 2 ●: T1=211K~220K
デルはグリーン関数を使う場合の特別な形である, Calculated
Duhamel の定理を用いて解を導くことができる. T1=205K
その結果,凝縮開始点から温度上昇を求めるには,上で 1
求めたように微小区間の温度上昇をすべて足し合わせる. 0 50 100 150 200
2   B   p 41
T Bt    q b bt  (b  1)t  Driver gas: N2, Driven gas:HFC-134a
   b 1  (11)
Fig.9 Relationship between Mi and p41
本実験の液膜厚さは大変薄いので,壁表面の温度を近似
的に液膜の温度と考えることができる.計算された液膜温
度を利用して,凝縮係数の見積もることができる. 4.2 レーザー干渉系による液膜成長の測定
 レーザー干渉計による受光装置から取得される代表的
m 2R
c.c  なデータを示す.ここでFig.10(a)は2つ圧力素子の出力波形,
pl p 2 ( 5)
 (b)は受光装置による干渉光の出力である.ここで上方圧力
Tl T2(5) (12) 素子(圧力素子はそれぞれ観測窓中心から上方150mmお
理論的に基づくと,凝縮係数は蒸気分子がどの程度の確 よび下方95mmに設置される)の立ち上がり量によって入
率で液面に付着することである.理論的に計算すると,凝 射衝撃波背後の圧力p2が求められる.両圧力素子の立ち上
6)
縮係数と呼ばれる)を求める . がりの差から入射衝撃波マッハ数Mi が求められる.反射衝
 S 撃波マッハ数Mr は入射衝撃波マッハ数と同様の方法で求
q l
V L  RT 3
g
c.cTheory  r
g
 l ( ) e R
める.受光装置で受光した干渉光強度はかなり大きいノイ
qr V 2 RT (13)
ズが混じってしまっている.そこでフーリエ変換によって
この節の記号表:

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5
ノイズ除去を行った.これより入射衝撃波が観測部を通過 態となる.入射衝撃波では衝撃波面の前方が静止状態,後
すると同時に干渉光の光量が周期的な変化が観測できた. 方が流れありの状態だったのに,反射衝撃波に関しては衝
干渉光強度から求めた正味液膜厚さを (c)に示す.反射衝 撃波面前方の領域で波面に対して逆向きの流れが生じて
撃波通過するとき,液膜成長傾向は急劇的に変化する.こ いる.
の原因は入射と反射衝撃波波面前後の流れ状態が異なる 液膜はある厚さに達すると(900nm付近)その成長を表
と考えられる.入射衝撃波が管上方から入射してきて管端 す干渉信号が散乱することが明らかになった.その原因は
面で反射した場合,反射波背後では気体流れは静止状 反射衝撃波背後の高温で起こる気液界面の不安定性や,形
成された液膜の蒸発や,膜状凝縮から滴状凝縮への遷移な
どが考えられる.
Behind incident shock wave
4.3 伝熱量の測定結果
Behind reflected shock wave
白金薄膜温度計の出力より算出された伝熱量を液膜厚
200
さ増加量から直接的に求める伝熱量と比較し,その結果は
150 upper transducer Fig.11 に示す.
2つの手法から得られた伝熱量は同じでないが,大きい
Pressure(kPa)

lower transducer
100 変化は同様の傾向を示しており,初期階段の伝熱量どちら
の計測方法も大きな値をとり,その後急激的に減少し,反
50
射衝撃波通過するとき(1.5ms付近)再び増加する.全体
0 的に見ると白金薄膜温度計から算出された伝熱量のほう
が大きな値をとっているのがわかる.本研究では,伝熱量
-50
をモデル化したときに液膜内の伝熱量を考慮していない
0 1 2 3 4
Time(ms) が,実際に存在する.一方,液膜を表す干渉光強度はフー
(a)Pressure waveform リエ変換によってノイズ除去を行うため,液膜成長から算
2 出された熱流束値が多少のばらつきがある.従って,以上
の近似による伝熱量の差異となっていると考えられる.
1.5 4.4 液膜温度の上昇と凝縮係数の見積
Voltage(v)

Fig.12(a)に時間的に変化する液膜温度,(b)はその温度
1 と飽和蒸気圧から求められた凝縮係数の時間的変化を示
す.
0.5 液膜温度は液膜成長をもとに計算したものである.干渉
信号散乱するまで液膜表面の温度差は約3K程度である.さ
0 らに傾向を見てみると,液膜生成初期の階段での変化が大
0 1 2 3 4 きく,ある時間経過すると変化が緩やかになっていること
Time(ms)
(b) Output voltage waveform がわかる.つまり,凝縮開始直後では,凝縮潜熱の放出に
1000 より液膜の温度が上昇しつつ,側壁の内部への熱伝導が起
こり,ある程度時間が経過した液膜温度はほぼ一定となり,
800 側壁への熱伝導に多くの凝縮潜熱が使われると考えるこ
Thickness(nm)

とができる.時間的に変化する凝縮係数が,熱流束の変化
600
とほとんど等しいことから,凝縮質量に強い依存している
400 ことがわかる.
HFC-134a の凝縮係数は,凝縮開始直後約 0.03 でその後
200 減少し,以後は約 0.01 程度の値を持つことがわかる.
一方,Eq.(13)による理論的に計算すると,凝縮係数は
0
約 0.05 の値を得た.本実験は壁表面の温度を近似的に液膜
0 1 2 3 4
Time(ms) の温度と考え,この近似による 実験値との差異になって
(c)Time dependent liquid film thickness いると考えられる.
Drive gas: N2, Driven gas: HFC-134a 4.5 初期温度一定での液膜成長と熱流束の測定
p4=401kPa,p1=3.7kPa,p2=43.7kPa,p5=203.9kPa, Fig.13~14 に管内初期温度を一定に設定して実験を行っ
た際の結果を示す.入射衝撃波背後圧力 p2 が高い値ほど,
Mi=2.86,Mr=1.97,T1=191K
入射初期の凝縮液膜成長速度も大きいことがわかる.液膜
Fig.10. Typical experiment of HFC-134a condensation
成長の速度が大きくなれば熱流束値も大きくなる

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Behind incident shock wave ことがわかる.これより凝縮現象を論じる際には入射衝撃
Behind reflected shock wave
波背後圧力 p2 は重要なパラメータだと言える.初期温度が
400 一定を設定し,過飽和度が大きいと液膜凝縮速度も大きい
という結果を得られた.反射衝撃波背後の液膜成長の速度
が大きい差異がないことがわかった.
200
Heat flux(kW/m)
2

0
1.5

Voltage(v)
---- Measured from liquid film growth
- -- - Measured from platinum thermo-sensor
1
-200
0 1 2 3
Time(ms) 0.5
Drive gas: N2, Driven gas: HFC-134a

p4=401kPa,p1=3.7kPa,p2=43.7kPa,p5=203.9kPa, 0
0 1 2 3 4
Mi=2.86,Mr=1.97,T1=191K Time(ms)
Output voltage waveform
Fig.11. Compare of heat flux by using two methods
1200
Behind incident shock wave
Behind reflected shock wave 1000
Thickness(nm)

800
194
600

193 400
Temperate (K)

200
192
0
0 1 2 3 4
191 Time(ms)
Time dependent liquid film thickness
190
800
0 1 2 Time(ms) 3
600
(a)Liquid film temperature
Heat flux(kW/m)
2

400
0.04
Condensation coefficient

200

0
0.02
-200
0 1 2 3 4
Time(ms)
Heat flux by using platinum thermo-sensor
0 Drive gas: N2, Driven gas: HFC-134a
0 1 2 3 Dotted lines: p4=401kPa,p1=3.7kPa,Mi=2.86,p2=43.7kPa ,
(b)Condensation coefficient Time(ms)
p5=203.9kPa,Mr=1.97, p2-psat=40.8
Drive gas: N2, Driven gas: HFC-134a
Solid lines: p4=504kPa,p1=4.7kPa,Mi=2.94, p2=49.5kPa,
p4=401kPa,p1=3.7kPa,p2=43.7kPa,p5=203.9kPa,
p5=273.1kPa,Mr=1.99,,p2-psat=47.2
Mi=2.86,Mr=1.97,T1=191K
Fig. 13. Liquid film growth and heat flux (191K)
Fig.12. Liquid film temperature growth and c.c

- 35 -
154

01231456789abc8def 9def

7
2
He-Ne レーザー光による多重反射干渉の原理を用いて液膜
厚さを計測した.入射衝撃波背後圧力 p2 から過飽和度を定
1.5
義して液膜成長を比較したところ,初期温度が一定を設定
Voltage(V)

し,過飽和度が大きいと液膜凝縮速度も大きいという結果
1
を得られた.反射衝撃波背後の液膜はある厚さに達すると
その成長を表す干渉信号が散乱することも観測した.
0.5 本実験における凝縮液膜生成時の熱流束は薄膜白金温
度計を用いて直接に測定でき,その結果,凝縮液膜計測か
0 ら得られた熱流束より大きいということがわかった.
0 1 2 3 一方,HFC‐134a の凝縮係数の理論値を遷移状態理論に
Time(ms)
基づき統計力学的に求めた.HFC-134a 凝縮係数の実験値
Output voltage waveform は凝縮質量に強く依存し,約 0.01 程度の値を持つことが判
1200
明した.以上の結論によって衝撃波後方の高速流れが凝縮
1000 に影響因子を解明された.
Thickness(nm)

800
参 考 文 献:
600
1)Zhu, H., Ogata, G., Okuno, H., Ota, M. and Maeno, K. : Solid
Wall Condensation of Ethanol Vapor Flow behind Incident and
400
Reflected Shock Waves, 2011 Annual Conference on Experimental
200 Mechanics, No.11(2011), 341.
2)Maeno, K., Shizukuda, Y. and Hanaoka, Y. :Experiments on Shock
0 Wave Propagation in Low Temperature Gases and Vapor Bubble
Collapse in Liquid R-12,Muroran Institute of Technology(Science
0 1 2 3
Time(ms) and Engineering),36-11. 1986, 243
3)Kamiya, T., Kuroiwa, T., Sakai, N., Nozawa, H., Maeno, K. and
Time dependent liquid film thickness Honma, H.: Nonequilibrium Condensation of Alternative Freon on
1200 Cold Wall behind Incident Shock Wave,
JSME(B),65-623,(1999),205-206.
1000 4)Maeno, K., Kamiya, T., Nozawa, H., Maeno, K. and Honma, H.:
Heat flux(kW/m)

Condensation on Cold surface behind the shock wave in low


2

800
temperature fluorocarbon, 21st ISSW ,(1997),2851.
600 5)Fujikawa, S., Matsumoto, M., , Kotani, M. and Sato, H.: Molecular
Study of Evaporation and Condensation of an Associating Liquid,
400 JSME(B),61-581(1995),216.
200 6)Fujikawa,S.: Theory of Film Condensation on Shock Tube Endwall
behind Reflected Shock Wave, JSME(B),61-581(1995),277-281.
0 7)Fujikawa, S., Kotani, M. and Takasugi, N. : Theory of Film
Condensation on Shock Tube Endwall behind Reflected Shock
-200 Wave ( 2nd Report, Theoretical Basis for Determination of
0 1 2 3 Condensation Coefficient),JSME(B),62-596(1996),
Time(ms) 220-221.
Heat flux by using platinum thermo-sensor
Drive gas: N2, Driven gas: HFC-134a
Dotted lines:p4=490kPa,p1=4.7kPa,Mi=2.97,p2=40.4kPa
p5=307.1kPa,Mr=2.05,p2-psat=34.1
Solid lines: p4=572kPa,p1=4.6kPa,Mi=3.06, p2=45.3kPa ,
p5=319.1kPa,Mr=2.02,p2-psat=39.0

Fig. 14. Liquid film growth and heat flux (200K)

5.結 論

本研究では,代替フロンの HFC‐134a を用いて実験を


行い,入射衝撃波マッハ数と初期圧力比の関係を整理した
結果,再現性に欠ける.これについては衝撃波管ではなく,
実験方法にいくつか問題があると考えられる.例えば管内
の温度が平衡状態になる前に実験を行ってしまっている.

- 36 -

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