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クトゥルフ神話 TRPG

オリジナルシナリオ

「火星より」

●セッション概要(GM 用)
近未来の世界では、人類は火星開発に本格的に乗り出していた。探索者たち
は火星開発基地に送り込まれる研究員やエンジニアたち。火星では、すでに
基地に居るという研究員が出迎えてくれることになっていた。しかし、探索
者たちが到着しても、彼らは一向に出てこない。探索者たちが彼らを探そう
と基地の奥へ行くと、そこには研究員の変わり果てた姿があった。

所要時間:2~4時間程度
難易度:中級者・上級者向け

こんな方向け:
謎解きをしたい。
SF チックな近未来シナリオがやりたい。
クリア難度の高いシナリオがやりたい。
◆プレイヤーに伝えるべき事前情報
20 年くらい先の未来。火星基地の建設業務のため、宇宙船に乗った探索者たち。
探索者たちには、「帰ってきたらしたいこと」を決めてもらう。
探索者たちは普通の技術者・研究者などでもいいし、火星に来る理由があればなんでもいい。
火星基地では数名の人間がすでに働いている。

◆シナリオ全体の真相
 火星にはヴルトゥームを信仰するアイハイ族という巨人型の火星人と、タコ型の火星人が居る。
今回のシナリオで登場するのはアイハイ族の方。
 彼らの信仰するヴルトゥームという神は、長い眠りから目を覚ますと火星の大地の荒廃ぶりに嘆く。
そして、自分の分身を地球へと送ろうと考える。タイミングよく、地球の人類は火星に基地を構えて
いたため、それを利用した作戦を思いつく。その作戦とは、その基地を襲いつつその中の誰かに
なりすますことで、哀れな被害者という体で地球へ帰るというものである。
 ヴルトゥームはその基地のマリーという人間になりすまし、他の基地の人間は殺してしまう。そこへ、
探索者達がやってくる。偶然にも、マリーを守ろうとした基地の人間のおかげで、マリーを助けださ
なければ探索者たちが帰れないような形にロックがかかっており、舞台は完璧に整ったのだった。

基地内で起こったこと
マリーがヴルトゥームによって乗っ取られる
マリーが殺害される
ヴルトゥームがメインコンピューターを使って外部からの侵入を可能にし、工学研究室の出入り口
からエイリアンがやってくる。デイブを殺害。タレスは隠れて生き残る。
エイリアンは地質学研究室でマーガレットを殺害。生物学研究室でアドルフを殺害。マイケルは生
き残る。
マイケルは隠れてロビーへ行き、メッセージを残す。そして、ドックへ行き、一人脱出する。
タレスはその後コンピューター室を厳重に閉ざし、廊下に出て殺害される。

◆解決方法
研究員の死体から、リーダー以外のカードキーを見つけ出す。
合言葉とともにカードキーを使い、マリーを助け出す。
マリーが宇宙人に乗っ取られているのだと強く主張し、マリーを追い詰め、ボロを出させる。
マリーを置いて火星を脱出する。
宇宙に居たマイケルを助け、マリーからの妨害を阻止する。
地球に帰る。

◆メンバー
マイケル(リーダー・生物研究員) ※元特殊部隊員
マーガレット(副リーダー・地質研究員) マイケルの正体を知っている
デイブ(工学研究員・エンジニア) 火星人に興味
タレス(工学研究員・エンジニア) おばあちゃん子、火星人に興味
アドルフ(生物研究員) 火星人の存在に勘付く
マリー(地質研究員) 火星人の存在を匂わす研究結果を相談

○発見可能な手がかり
火星人の噂
・火星には、野蛮な巨人型の火星人と、知的で洗脳が得意なタコ型の火星人が居て、遥か地下で
争っている。火星で巨人を見つけたら、ただ逃げろ・ただ殺せ。タコを見つけたら、もう何も信じる
な。(逆だったかもしれない)
・野蛮な方の火星人は血を吸う習性があるという噂がある。→血は吸われていない
・はるか昔に話題になった、謎の像が写り込んだ火星の地上写真。当時のデジタル技術の割に鮮
明であり本物の可能性が疑われていた。しかし、その後の偽写真の乱発やデジタル技術の進歩
により、埋もれてしまう。あの花びらに包まれた人間のような像は、本物だと信じている。
★以上の手がかりにより巨人型の火星人は知的で、洗脳が得意だと分かる。火星基地を襲ってい
るのは巨人型の火星人なので、マリーが洗脳されている可能性が高いと分かる。(実際には洗脳
されているのではなく、なりすましている)

・メインコンピューター室のマリーの死体

◆その他、GM 向け情報
○マリー(ヴルトゥーム)に出来ること
マリーは人間と同じ閉鎖された空間にいれば、それらの人間を催眠状態にできる。そのため、探
索者たちと宇宙船に乗り込めば、勝利条件は満たされる。
マリーは顔を作り変え、他人になりすますことが出来る。女研究員の ID・プロフィールを奪い、なり
すましている。
基地の外にいる火星人にテレパシーを行い、探索者を襲わせたりすることができる。探索者が自
分を連れて地球に帰るよう、自作自演で追い立てることができる。

○マリーのボロ
・専門的な知識は持っているが、俗事には疎い。
・マリーは研究結果から、火星に生命体が居る可能性に感づいているにも関わらず、「火星に生
命体なんて居るはずがないと思っていたから驚いた」などと言う。
・指紋が無いため、マリーは自分の携帯端末のロックを解除することができない。
・合言葉「成果をもって地球に帰ろう」を知らない。
・顔の皮膚を傷つける、服を脱がすなどすると、その下は石のような肌をしており、人間でないこと
が分かる。
・火星人が侵入してきた時マリーはメインコンピューターに居た。そして、外と通じる扉は破壊され
たわけではない。つまり、マリーが開けたことになる。
◆シナリオ本編
人類は月を開発し、次なる目標として火星開発に着手したところだ。火星の開発基地にはロボット
やそのエンジニア、そして研究員が送られ始めていた。開発基地には人間は最小限の数しかおら
ず、仕事の多くはロボットや機械が行っている。今は 6 人だけが基地にいる。
そして、探索者たちも同じように、アメリカのロケット基地から火星へと旅立つこととなった。

マイケル(リーダー・生物研究員)
マーガレット(副リーダー・地質研究員)
デイブ(工学研究員・エンジニア)
タレス(工学研究員・エンジニア)
アドルフ(生物研究員)
マリー(地質研究員)

火星進出は始まってまもなく、危険もかなり多いとされている。火星に向かう人材は、優秀であるこ
とはもちろんだが、命知らずでロマンチストであることも結果的に必須条件となっている。そのため、
そうした無謀な気持ちに対する歯止めとして、火星基地の局員の間でのみ交わされる標語がある。
『成果をもって、地球に帰ろう。』

狭いロケットの中で数日を過ごし、ようやく火星にたどり着いた。
無事に基地に着陸した宇宙船は、ドックに収容され、探索者は降り立つ。
★一番最後に出る人は聞き耳で、ロケットから出るときにロケットのコクピットに外部からの通信が
入ってきていることに気づく。通信は最も単純なメッセージ通信で、「行ってはいけない。すぐ引き
返せ。」というものだった。
「ようこそ、火星へ。ロビーはドックの奥の青い扉の先です。」
と、機械音声が告げる。
これより自由行動。

●宇宙船ドック
宇宙船ドックには、自分たちが乗ってきた宇宙船(ナイアー号)がある。他の宇宙船は格納されて
いるようで見当たらない。
・ナイアー号の燃料はもう無く、補給しなければ発射できない。
・燃料の補給は機械で行うが、その機械はメインコンピューターからロックされている。

●ロビー
ロビーの壁は大きな窓になっており、火星の地上の様子がよく見える。今は夜中で、地球では見ら
れないような美しい星空が広がっている。
ロビー内部は休憩所のようになっており、ソファーと机、ドリンクサーバーなどが置かれている。
・内容は、水・メロンソーダ・コカコーラ・乳酸菌飲料・コーヒー、そして、ドリンクサーバーの脇に前
時代的なペンが置かれている。
★ドリンクサーバーは内容が透けて見えるようになっている。目星に成功すればコーヒーの中に何
かが沈んでいるのがわかる。
・それはマイケルの軍人としての身分証
それにメモ書きがされている。「必ず、誰も連れずに脱出すること」

受付ロボットが居る。
そして、入ってきた青い扉とは別に、緑の扉がある。

・受付ロボットが出来ることは、基地に関することの質問に答えることと、基地の局員が今何をして
いるかを検索すること。
・基地にはドック、ロビー、医務室、生物研究室、工学研究室、地質研究室、コンピューター室があ
る。
・局員の所在
生物研究室に アドルフ
工学研究室に デイブ
コンピューター室 マリー
地質研究室に マーガレット
通路 タレス
所在不明 マイケル

●廊下
緑の扉を通ると、廊下に出る。
廊下の奥は曲がり角になっており、その角のところで、人が寝転んでいるように見えるが、ここから
ではその人物の足しか見えない。

奥に進んで見てみると、その人物には頭がなく、一面が血の海になっている。
そして、バタンと廊下にある黄色の扉が閉まる音がした。
それ以外にも赤と白と黒の扉がある。

その時、曲がり角のところにあるスピーカーホンが鳴る。
「誰かそこにいるの?!」
「ああ、よかった…。あなたたちが今日到着する予定だった新しい局員ね。その、何から説明したら
いいか…。」
「外からよ、外から何者かが侵入してきたの…。私は工学研究室の奥、コンピューター室に居るわ。
タレスがここに居ろって…。あなたたち、ここまでこられる…?タレスが安全のためにロックを掛けて
くれたんだけど、このロック、中と外からの両方の承認がないと開かないみたいなの。」
「『リーダーマイケル1人、もしくはアドルフ、デイブ、マリー、マーガレット、タレスの5人承認が必要
です。』と書いてあるわ。それぞれの人物 ID カードを用意すれば良いはずよ。こっちには私の ID
カードがあるから、そっちで4つの ID カードを探してちょうだい。侵入者に気をつけてね。彼らはそ
いつらに」

「このコンピューターの機能もいくつかロックされてるわ。地球との通信、宇宙船への燃料供給、監
視カメラ…。ドアのロックと連動しているみたいだから、私が出られれば、これらも解除されるは
ず。」
※このロックは、もともと内部での争いごとが起こった時の強行手段として用意されたもの。施錠は
誰にでもできて、解錠のためには、マイケル一人か、その他の 5 人の承認が必要になるというもの
だが、ヴルトゥームであるこのマリーは知らない。

・倒れている人物
男性
片手に銃らしきものを持っている。
・スタンガン(拳銃で使用し、命中するとダメージはなく、1 ターン行動封印)
懐には、ID カードがあり、タレスというエンジニアであることが分かる。
そして、手紙と携帯端末をもっている。

・手紙
「おばあちゃんへ
 俺は今、火星にいます。とりあえず、火星でもおばあちゃんのペンが使えてよかった。紙とペンな
んて使うのはこの基地でも俺ぐらいだからね。家族への手紙も、日記も、みんな自分の携帯端末
で書いてるよ。でも、おばあちゃんはそれじゃ読まないだろうからね。
 火星での仕事のことなんて書いても、おばあちゃんにはわからないだろうから、最近局員の間で
流行っていることを書きます。それは、火星人について調べること。
 もちろん、火星人なんて居るはずがないって、火星に来るまでに何度も言って聞かされたけどね。
でも、それだけに、ネットで地球の住民が火星人の存在について議論しているのを見るのがとって
も面白いんだ。『火星に宇宙人なんていないのに』っていって、そいつらを笑うなんてことは、俺た
ちにしかできない遊びだからね。
 でも、アドルフはそういう俺たちにはあまり混ざろうとしないんだ。真面目なんだよな、あいつ。そ
のくせセキュリティ意識が甘々なんだよ。今時4桁のパスコードロックなんて使ってるんだぜ?普通
指紋認証だろ。しかもその数字が…いや、おばあちゃんには関係ないか。
 マイケルもあまり食いついてこなかったなあ。興味ないのかなこういうの。マイケルはリーダーって
立場もあるけど、なんか俺たちと違う雰囲気がある。何かを隠しているような…。まあ人当たりもい
いし、リーダーとして文句ないんだけど。
 続きはまた書くよ。といっても、帰ってから全部一度に渡すことになるんだよね。不便だなあ紙の
手紙っていうのは。」

・携帯端末は電源が入っており、4つの音声記録が再生可能な状態になっている。
「今、俺は工学研究室の機関室でこのボイスメモを残している。緊急事態だ。基地の外側からハッ
チが開けられたらしい。そして、あろうことか外から何かが侵入してきたみたいだ。すごい音がして、
争い合ってるのが分かった。今は、音が止んでしばらく経つ。とりあえず研究室の方に出てみるこ
とにする。記録中断。」
「研究室ではデイブが死んでいた。首から上がない状態だった。敵の姿はもうなかった。コン
ピューター室でマリーが放心していた。マイケルも居たはずなんだが、居なくなっている。俺はどう
するべきか。ここにいてもきっと殺されるだろう。なんとか宇宙船ドックへ行くことができれば…。」
「一か八か、宇宙船ドックへ向かうことにする。マリーの安全のため、コンピューター室に緊急用の
ロックをかけて出て行く事にする。このロックの解除には、リーダー 1 人か、リーダーを除く 5 人の
承認が必要となる。それぞれのカードキーを用意し、例の合言葉を使えば開けられる。」
「おばあちゃんのペンを最後まで持っていたかったけど、机から消えていた。こんなときに失くすな
んて、最悪だ。」

黄色の扉(生物研究室)
赤い扉(地質研究室)
白い扉(医務室)
黒い扉(工学研究室)
●生物研究室
中に入ると、部屋は争いあったように散らかっており、一人の男の死体があった。
首がなく、辺りは血に染まっている。
壁にはケージや水槽が並んでおり、その中には生きた昆虫や小動物が居る。そして、ガラスの
ケースに入れられた斧がある。
そして、その近くにビデオカメラらしき機械が転がっている。どうやら動物を撮影していたものらしい
が、倒れており、男の死体の方を向いている。

・男の死体
ID カードと携帯端末を持っている。
ID カードにはアドルフと書かれている。(生年月日は 2013 年 7 月 3 日)
・携帯端末
パスコードは 0703。日記を見ることが出来る。
「マリーから気になる報告を受けた。この火星に生命体が存在するかもしれないという報告だ。俺
は火星人なんて与太話信じていなかったが、確かに検証して見る価値はある。マリーは火星人の
存在について心配しているようだ。早く検証して、結果を伝えなければ。」

・ビデオカメラ
 動物を撮影していたものだったが、扉が開く音がして、アドルフのものらしい叫び声がする。
ガシャンと何かがぶつかる音がして、カメラが倒れると、その先にはアドルフの足元と、対峙する怪
物の足元が映る。足元を見るに、怪物は二足歩行で人間に近い足の形状をしているが、人間の
足の二倍ほどの大きさがあり、赤黒い皮膚をしている。衣服は身に着けていないようだ。
 アドルフの足が持ち上がり、しばらく抵抗している様子だったが、グギッという嫌な音と共に、ぶら
りと動かなくなった。そして、乱暴に落とされ、床に倒れ伏すアドルフには首がついていなかった。
 怪物はそのまま、廊下側へ出て行った。

そのとき、廊下側の扉が開く。
そこには、身長 3 メートルはあろうかという大きな、二足歩行の怪物の姿があった。身をかがめてド
アをくぐって入ってくる。ゆっくりとした足取りで探索者の方へ近づいてくる。

巨人型火星人
STR19 CON22 SIZ24 INT16 POW12 DEX12
耐久力 23
組み付き 60%
組み付きに成功した場合、1d6 のダメージを毎ターン与えて首を絞めていく。探索者の耐久率が
尽きると、首がもがれて死ぬ。
●地質研究室
中に入ると、女性の死体がある。そして、その死体には首がない。
ID カードと携帯端末を持っている。
ID カードにはマーガレットとの記載がある。
携帯端末に緊急メモは残されていない。
指紋認証でロックを解除すれば、日記を読むことが出来る。
「タレスやデイブがまた火星人の話題で盛り上がっている。趣味が悪いけど、たしかに少し面白い。
火星人には野蛮な方と知的な方の二つの種族がおり、野蛮な方には吸血の習慣があり、知的な
方は唯一神に仕える信徒らしい。宗教家は野蛮でないとでもいいたいのかしら?いかにも地球人
の空想する宇宙人と言った感じだ。
 男どもの中でも、アドルフはあまりそれを面白がっていないようだ。もちろんマイケルはいつもの
様に静観。無理もないわね、マイケルは私達研究者とは違うもの。」

机の上には火星の土壌のサンプルと、それを使った実験や分析をする機械がある。
モニター上には報告書が表示されている。
「土壌研究結果に基づく推測と検証依頼
 生物研究部へ
 土壌における成分を研究した結果、生命体による分解が行われた後の状態に酷似した成分と
なっていた。生命体自体は確認できていないが、その痕跡なのではないか。この結果を元に、生
物研究部に検証を依頼したい。
地質研究部より」

●医務室
中に入ると、そこには誰もいない。
ベッド、治療器具、ロッカーがある。

治療器具を使えば、傷一つに対し 1d3 の回復が可能。


応急手当に成功すれば、2d3 になる。
医学に成功すれば回復量は 6 になる。

★薬学によって、攻撃につかうことができる酸を用意できる。

ロッカーには誰かの着替えが入っている。
★目星で、その中にスタンガンをみつけることができる。
●工学研究室
中は争った形跡があり、散らかっている。そして、首のない男性の死体がある。
外へと通じるという、頑丈そうな扉と、機関室の扉、そしてコンピューター室への扉がある。

・男の死体
ID カードと携帯端末を持っている。
ID カードにはデイブと書かれている。
指紋認証でロックを解除すれば、メモを読むことが出来る。
「火星人に関する情報収集メモ
 火星人には巨人型の者とタコ型の者が存在するらしい。巨人の方は戦争が好きで野蛮。一方、
タコ型の方はや洗脳やスパイ活動によって異種族を支配するのだそうだ。巨人型とタコ型が逆に
語られてるソースもあるけど…。
 そんなことから、オカルトマニアの間では『火星で巨人を見かけたら、ただ逃げろ。タコを見かけ
たら何も信用するな。』とかいう格言があるらしい。火星に行ったこともないくせによく言うよな。

 あと、ずいぶん昔に、火星の地上を撮影した写真に人工物のような彫像らしきものが写り込んだ
ことがあったらしい。その手の写真は山ほどあるんだが、そのうちの1つが、撮影された頃の画像加
工技術では不可能なレベルで鮮明なもので、本物なのではと話題になっていた。その彫像という
のは、薔薇のような花びらの中央に人間の女性のような姿が立っているというもので、偶然できたと
は思えない精巧な像だった。
 しかし、その場所というのは今まさに俺たちが基地を作っている場所だ。当然、そんな彫像のよう
なものはなかった。やっぱりオカルトはオカルトに過ぎないらしい。」

●コンピューター室
コンピューター室の扉にはロックがかかっている。
4枚の ID カードを用意し、向こう側からマリーの ID カードを使ってもらい、その上でパスコードの
文章を入力する必要がある。「成果をもって、地球に帰ろう。」

中に入ると、部屋の中央には巨大なメインコンピュータがある。
「よかった、ほんとうに助かったわ。あなた達が来てくれたおかげで、地球に帰れるわ。早速、宇宙
船に燃料供給をするわね。」
マリーはコンピュータに向って操作をしている。
「よし、これで燃料供給のロックが解除されたわ。宇宙船も発進可能よ。」

・コンピューター室には大きなサーバーがいくつも設置されている。
★目星で、サーバーの間に大きな袋があるのが見つけられる。
その中にはマリーの死体。

★マリーを疑った場合
「何言ってるの?そんなことあるわけないじゃない。私が火星人に見えるの?」
「とにかく、火星人が新たにやってくるかもしれないわ。早く宇宙船に乗り込みましょう。」
マリーは火星人にテレパシー送って(聞き耳でマリーがぼそぼそと意味不明の言語を言うのを聞こ
えるかもしれない)外へと通じる扉から火星人をやってこさせることができる。ドアを叩かせるなどす
る。こうすることで、探索者たちを宇宙船へと急かすことが目的。
※しかし、この行動は「最初に入り込んだ火星人が居たのに、今度は入ってこられていない」という
ことから、自作自演であるということのヒントにもなる。
◆バッドエンドルート
マリーに促されて、一緒に宇宙船に乗り込む。
「もう諦めかけていたけど、助かって本当に良かったわ。」

宇宙船に乗って、しばらくすると探索者たちは急激な眠気に襲われる。
「いろいろあって疲れたのね。ゆっくり休みましょう。」
探索者たちが眠り、そして目を覚ますと、地球に到着している。探索者たちはそれから、各々の念
願を叶えることができる。

POW が最も高い探索者はその途中で目をさますことが出来る。しかし、身体は動かない。
「あら?目が覚めちゃったみたいね。幸せな夢を見ていればよかったのに…。」
「私は火星人よ、老いて枯れてしまった火星に愛想をつかして、地球に移り住むことにしたの。薄
汚い人間であふれた土地だけど、火星よりは資源もあるみたいだしね。あなた達のおかげで、ごく
自然に地球に潜入できそうよ。助けてくれてありがとう。」

◆グッドエンドルート
★マリーに証拠を突きつけて、強く場合
「どうして信じてくれないの?!私の顔を見たら分かるでしょ?私は火星人なんかじゃない!マ
リーよ!」
「早く地球に帰りましょうよ!こんな何も無いところもうまっぴらだわ、どうしてグズグズしてるの?早
く宇宙船を運転して、私を地球まで返してよ!!」
そんな風に喚いているマリーの顔は明らかに普通ではない。
そして、マリーの顎が、ぼたりと落ちた。
マリーはそれにも気づかずに、奇声を上げて喚いているが、探索者の様子から、自分の状態に気
づく。
「ああ、人間の表情筋って意外と可動域狭いのね…。はあ、やっと地球に行けると思ったのに。」
「あなた達も残念ね。私を宇宙船まで連れて行ってくれれば、素敵な夢を見せてあげたのに。もう
こうなったら殺すしかないじゃない。」
そう言うと、何人もの巨人型の火星人が外から入ってくる。数えきれない数の火星人が、探索者た
ちを捕まえようとしてくる。1d3/1d20

火星人たちの動きは遅く、宇宙船までたどり着くことが出来る。確かに燃料は十分にあり、飛び立
つことができそうだ。
探索者たちは宇宙船で飛び立ち、火星を後にした。

宇宙へ出てしばらく経つと、通信が入ってくる。発信者は「マイケル」とある。
「君たち、基地の様子はどうだった。私はなんとかあの火星人たちの目を逃れて、火星を離れるこ
とに成功したんだが…。」
「そこにあの基地から連れてきた人間は乗っていないだろうね?」
「ならばよかった。状況から見ても、あのメンバーの中に裏切り者、もしくはコントロールされていた
者が居たと考えるのが自然だ。生き残りが居たとしても、それを地球に連れ帰れば相手の思うつぼ
だろう。」

「ところで本題だ。この私の乗っている宇宙船は地球に辿りつけない。燃料がほとんど入っていな
かったんだ。火星を離れるので精一杯だったよ。まもなく私の宇宙船は電源が切れて外との通信
が不可能になり、それから永遠に宇宙を漂うことになるだろう。」
「勝手な頼みだが、私を助けてくれないか。」
そう言って、通信は途絶えた。探索者たちの乗っている宇宙船の近くに、別の宇宙船が確かに浮
遊している。
★1 人の幸運で、ちょうど探索者たちが火星の基地に入った瞬間にも連絡が入ってきていたという
履歴を見つける。

助けず通り過ぎることも出来る。助けた場合は、宇宙船にマイケルが加わり、礼を言われる。

それから、地球へ向って前進を続けていると、火星の基地から連絡が入る。
そこからはマリーの声がしている。
「ハロー?火星から逃れたみなさん。みなさんに残念なお知らせがあります。あなた方が苦労して
解除したあのロック、なんとあなた方の宇宙船にもかける事ができるみたいなの。つまり、あなた方
の宇宙船の酸素管理をロックして、全員死に至らしめることが出来るって言うわけ。」
「火星を出てハッピーな気分になってたかもしれないけど、ごめんなさいね。別に私達の得にはな
らないけど、単にムカつくから死んで頂戴!」

そして、宇宙船がアナウンスをする。
「火星基地のメインコンピュータの要請により、酸素合成装置への緊急ロック作動。酸素の合成を
中断します。」

★この時、マイケルがいなかった場合、何もできないで窒息して死ぬ。
★マイケルがいた場合、マイケルのリーダーとしての権限により、ロックを解除できる。
探索者たちとマイケルは、無事地球に帰り着くことができる。
このシナリオのキーパリングのコツのようなもの

 このシナリオは、難易度が高めの謎解きシナリオです。しかし、その難易度は GM の裁量に大き
く左右されるでしょう。GM が、少しの追求で「フフフ、バレては仕方ないわ。死になさい!」と、マ
リーの正体を明かさせればプレイヤーはマリーを置いて逃げるという選択肢を簡単に取ることがで
きます。逆に、火星人たちにドアを叩くように命令して、「火星人が来たわ、早く逃げないと!」と、
思考の邪魔をして急き立てることもできます。
 また、プレイヤーのプレイスタイルもこのシナリオの難易度に影響します。シナリオのプレイヤー
はまず、メタ的にマリーが怪しいと疑うはずですが、キャラクターとして疑うだけの証拠が手に入ら
ない可能性があります。このとき、マリーに対して強く出られるかどうかは、メタ的な行動を取るタイ
プのプレイヤーか、キャラクターロールに徹するプレイヤーかどうかにかかっています。
 この二点を覚えておき、プレイヤーたちに提供したい難易度に応じて調整するようにしましょう。
 また、難易度を下げる方法として、マリーを置いて脱出した時点でクリアとしてしまうことも可能で
す。

 このシナリオでは、GM はマリー(ヴルトゥーム)として、探索者を思い通りに行動させることになり
ます。熟練したプレイヤーは「GM がシナリオの進行上プレイヤーを急かしているのだ」と思ってそ
の通りに行動してしまったりする可能性があるので、そういったことにも気をつけましょう。そして、
GM の権力や強制力は強いので、マリーが狡猾に地球に行きたがっているということは考慮しつ
つも、プレイヤーの抗える余地は残すべきかもしれません。そうしないと、このシナリオは簡単に
バッドエンドを迎えてしまいます。

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