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クトゥルフ神話 TRPG

オリジナルシナリオ

「恨みの館」

●セッション概要(GM 用)
同窓会のために、久しぶりに中学のクラスメイトと再会した探索者たち。
しかし、探索者たちは同窓会のその場で気を失ってしまい、気が付くと見知
らぬ屋敷に閉じ込められていた。

誰もいない屋敷で見つかる不審な日記の数々は、探索者たちが過去に、目立
たないクラスメイト、神崎レイカをいじめていたという事を記したものだっ
た。

屋敷に散りばめられた数々のトラップ。それらは彼女から探索者への復讐な
のだろうか。探索者たちは、生きてこの屋敷から出られるのか。

所要時間:3~5時間程度
難易度:初心者~中級者向け、謎解き必須

こんな方向け:
閉鎖された空間で罠や神話生物に苦しみたい・苦しませたい
謎解き・推理をしたい
ドラマ性のあるシナリオを楽しみたい
●このシナリオで遊ぶ前に
・探索者作成の注意点
探索者の年齢は25歳で固定。推奨技能は戦闘技能や探索技能、知識技能で、交渉技能は不
要。探索者全員で同じ中学に通っていたという設定が必須。
・シナリオプレイ時の注意点
シナリオ中に「(探索者名 A)」というような表記が多々あるが、これらに参加プレイヤーの名前を
当てはめることになる。参加プレイヤーが少ない場合は、同じ探索者名を複数のアルファベットに
対応して当てはめてもよい。

●シナリオ解説
 中学3年生のとき、探索者たちのクラスに神崎レイカという女子生徒が居た。豊かな家に生まれ、
おとなしい性格の彼女だったが、被害妄想が強く、実際にいじめを受けていたことはないのだが、
中学時代の探索者たちからひどいいじめを受けていると錯覚していた。

 それから10年の月日が経ち、神崎レイカは結婚し、双子の子供をみごもっていた。しかし、不
幸にもその双子の子供は死産となってしまう。そもそも精神的に不安定だった神崎レイカはその
ことを受けて完全におかしくなり、霊能力者を頼って自分の不幸を治療してもらおうとする。そこで
ナイアー(ニャルラトテップの化身)と行き会う。
 ナイアーは彼女の中学時代の話を聞いて、いじめを受けていないのに受けたと錯覚している彼
女に興味を持つ。そして、彼女に協力すると言って今回の舞台を用意した。

 探索者たちは同窓会のときに、彼女とナイアーによって、ナイアーの創りだした異空間(神崎レ
イカの家がモデルになっている)に閉じ込められる。そこには中学時代の神崎レイカのバラバラに
なった死体が隠されていた。その死体は神崎レイカのばらばらに引き裂かれた心のメタファーで
あり、神崎レイカはそれを探索者たちに修復させることで、自分の罪を自覚させ、最後にはその
罪を認めさせようとした。つまり、この空間は、「レイカを苦しめたものを罰するための空間」。
 しかし、探索者たちは逆に自分たちの無実を証明してしまうことになる。そして、自分を苦しめて
いた神崎レイカ自身が罰せられることとなってしまう。ナイアーはその瞬間を楽しむために、この
舞台を用意していたのだった。
●シナリオ本編
探索者たちが目を覚ますと、そこは、豪華な屋敷の玄関ホールのようなところだった。
天井からは豪華なシャンデリアが吊り下がっており、大きな柱時計と美しいいくつかの絵など、い
かにも豪邸といった趣きだった。
そして、玄関ホールの中央に不自然にクローゼットが置いてある。
(扉6の前には黒い四角い箱のようなものが置いてあることがわかる。)

★アイデアで今日あったことを思い出す。
今日の日付は2014年6月15日
中学3年生の同窓会があった。酒を飲んだ瞬間、プレイヤー達は意識を失ってしまったようだ。
★携帯電話など、外とつながる機械が破壊されている。

★大きなクローゼットの中には傷だらけで首と手足のもがれた中学生くらいの子供の身体が収め
られている。0/1d4
性器は無く、胸もない。華奢であり、性別は断定できない。

手足を切り口にくっつけると、つながる。それが正しい部位でなくてもつながってしまう。その場合
は切断して繋ぎ直すこともできる。
●扉1:おそらく玄関の扉に見える。開けようとしてもびくともしない。

●扉2:豪華な意匠の施された、大きな扉。鍵がかかっているようで、開かない。

●扉3:キッチン
かなり広く、豪華なキッチン。
広い調理台やガスコンロや流し等がある。大きなオーブンと大きな冷蔵庫がある。調理台には引
き出しがある。
★調理台の上に日記のページ1の前半
日記のページ1の前半
「2005年 4月4日(月)
 今日から三年生となる始業式。二年生までは陰口や無視でとどまっていた私に対するいじめが、
とうとうエスカレートしてきた。古典的なものだったが、自分がされるとショックが大きい。(以下は
破れている。)」
★調理台の引き出しの中には様々な調理器具がある。、包丁(1d6)が3つある。

★冷蔵庫の中にムーンビースト。(★開ける際、アイデアに成功すると聞き耳のチャンス。聞き耳
で中から何か人ではない生き物の呼吸音が聞こえる。0/1)
開けると、中から突然、巨大な生き物らしき何かが飛び出してくる。それは人の身体よりも幾分巨
大で、ヒキガエルのような手足がついた生き物に見える。見ようによっては巨大な醜い赤ん坊に
も見えるかもしれない。探索者たちの誰もが見たことのない生き物である。ぱっくりと開いた口に
並ぶ細かい歯と、その周囲から生えた触手は、見たものに恐怖と生理的な嫌悪感をもたらした。
SAN0/d8

巨大な目のないヒキガエルのような怪物
STR13 CON13 SIZ22 INT14 POW8 DEX10
耐久値 18 ダメージボーナス+1d6
火器のダメージは最小の値になる
頭突き 50% 1d4
14 12 7 4

耐久値が 3 以下になると、命乞いをしだす。
「ユルシテ ユルシテ」
「マホウ オシエル ユルシテ」
「ドイツニ オシエル? ノウニ ジカニ ツタエル」
「シンジロ。ワガアルジ ナイアーニ チカッテ ホントウダ」

肉体の保護(呪文を覚える際にアイデアに成功すると、呪文から冒涜的な何かを感じ取り、SAN
チェック 0/1d3)
「顔のない黒い土の精との盟約に従い、月の裏側の住人の力を行使する。我が魔力でもって、こ
の者の血と肉に堅牢なる庇護をもたらす。」
1d4 の正気度と、任意の MP を消費する。消費した MPd6 の装甲を対象に与える。装甲はダメー
ジを肩代わりして摩耗していく。戦闘中に唱える場合、5 ラウンドかかる。
※シナリオ中に戦闘はもう一度、ムーンビーストとの戦闘があるのみなので、必須というわけでは
ない。
★冷蔵庫の奥に、日記のページ1の後半
日記のページ1の後半
「(破れた日記の続き)学校に行き、下駄箱を確認したら上履きが無かったのだ。仕方なく、スリッ
パを借りて教室に向かったが、皆の視線が突き刺さるようだった。私は、あいつが私の足元を見
て笑ったのに気づいた。(探索者名 A)だ。あいつは二年生のころから私のことを無視したり、陰
口を言っていた。上履きを隠したのはきっと(探索者名 A)だ。許せない。」

★ここで探索者はこのようなことをしたか思い出そうとすることができるが、思い出そうとすると頭
痛がして上手く思い出すことが出来ない。プレイヤーが探索者にそのような事実がなかったと設
定していたとしても、探索者自身がその真偽を思い出せないため、探索者としてはいじめの有無
は不明瞭のままであるとする。
難易度を下げるのであれば、事実を思い出すために、アイデアにマイナス補正などして判定する
ことにしてもよい。事実は「そのようないじめはなかった」ということである。
以降に登場する日記にも同様の処理を行う。

★オーブンの中は暗くてよく見えない。何らかの方法で明かりを灯せば、小さな鍵を見つけること
が出来る。

★コンロには大きな鉄の鍋があり、中には生の臓物がある。SAN0/1d2
臓物の中をよく探すと書斎の金庫の鍵がある。SAN0/1d2

●扉4:風呂場・トイレ
入ると、広々とした洗面所がある。
★洗面台の下の戸の中に、懐中電灯がある。
★蛇口をひねると血が流れてくる。0/1d2
風呂場とトイレに続く扉が左右にある。

★浴槽の蓋をあけると、血だまりに右腕が浮かんでいる。0/d3

トイレは小奇麗だが、それほど広くない個室。
極普通の水洗トイレ。
★ドアを開けたところの前にスリッパがある。
トイレに入ると、扉が閉まってしまう。扉が開かない。
トイレを流すと、水が溢れ出てくる。何故かトイレの扉も開かない。0/1d2
扉の耐久値は 30
SIZ-10 ラウンド目から窒息が始まる。(探索者は 1 ラウンドが始まるごとに
CON*10、CON*9、CON*8…とロールし、失敗したラウンドから 1 ラウンドごとに 1d6 の窒息ダメージ
を受け続ける。)

●扉5:客間
高級そうな調度品に飾られた部屋。
壁には武器になりそうなものも飾られている。
・写真が飾ってある
写真には少女が写っている。★アイデアで中学の頃のクラスメイトの神崎レイカだと思い出すこと
ができる。良家のお嬢様で、物静かな目立たない生徒だったと思い出す。
・派手な装飾のされた剣がある。持ち上げてみると、意外にも軽い。★目星か、剣に関する技能
で鑑定すると、切れ味は無いに等しい模造刀であると分かる。攻撃力 1d6、耐久度 5
・ライフルが飾ってある。★ライフルの技能で詳細が分かる。SKS カービン 2D6+1 攻撃回数 2 
装弾数 10 耐久力 10 故障ナンバー 97 ただし、弾が入っていない。
テーブルの上に日記のページ4
日記のページ4
「2005年 11月4日(金)
 今日は図書委員としての作業がある日だった。図書委員の生徒たちで、図書室の前に積まれ
ている、本の詰まった重い箱を運ぶということになっていた。なのに、誰も来なかった。私のクラス
のもう一人の図書委員は(探索者名 B)。こいつは私をいじめている一人だ。きっと、図書委員の
他の連中と示し合わせて、私一人に仕事を押し付けて帰ってしまったに違いない。
 私も帰ってしまおうと思ったのだが、もしかしたら、私が帰ったところを見計らって、皆で作業を
始める気かもしれない。そうなれば、私だけがさぼったことになる。そうして私を責める口実をつく
ろうとしているのだ。(探索者名 B)が考えそうな、姑息な手段だ。
 私はしかたがないので、一人で作業をした。暗くなっていく校舎で、一人で作業するのは拷問の
ように辛かった。箱は重くて、作業を終えた私の手は燃えるようにヒリヒリと痛かった。」

★難易度を下げるのであれば、アイデアロールによって、探索者 B はわざとこのようなことをした
覚えはなく、さらに委員会の仕事が勝手に片付いていたことがあったことを思い出す。

●扉6:書斎
入り口には巨大な黒い箱が置かれており、扉が開かない。STR25 との対抗ロールで持ち上げら
れる。
持ち上げると、とたんに箱が熱をもつ。離そうとしても手が箱から離れない。1d4 のダメージ。何ら
かの手袋をしていれば防ぐことが出来る。医学による処置を受けなければ、以降手を使った技能
にマイナス 10。

書斎にはいくつかの本棚と、大きな金庫がある。立派な机があり、引き出しがある。
机の上に日記のページ5
日記のページ5
「2006年 2月17日(木)
 今日はいままでで一番酷い事があった。給食の時間、並んで給食係の配膳する給食を受け取
るのだが、その日の給食係に(探索者名 C)が居た。そいつはスープの配膳をしていたのだが、
私がスープを受け取るときに床にこぼしてしまった。
 そのときに私は見た。こぼれたスープの中に、裁縫針があったのを。裁縫の授業のために持っ
てきていたものだろう。あいつは私に配膳するスープにそれを仕込んだのだ。(探索者名 C)は
『アーア。失敗シチャッタ…』とつぶやいていた。私がこぼさなければ、あいつの作戦は成功して
いただろう。そして私は針を飲んで…。
 想像するだけで寒気がする。人間の考えることじゃない。次は殺されるかもしれない。」

★引き出しに鍵がかかっている。オーブンにあった小さな鍵で開く。中に右足。
★金庫は鍵開けで解錠できる。中にライフルの弾がある。日記のページ7も見つかる。
日記のページ7
「2014年 5月1日(木)
 ヒナコとタケルが死んだ。私のお腹の中にいるのは、もうただの肉の塊だ。親が選んだ夫はどう
でもいいが、子供だけは愛せる自信があった。私の人生にも、とうとう幸せがやってきたと思った。
それなのに、どうしてこんなことに。
 だれか私を救って。この不幸の原因をなんとしても見つけたい。」

●扉7;寝室
ドアを開けると、中は真っ暗。
★電気をつけると、巨大なぶよぶよした生き物がベッドの上の赤黒い何かを貪っている。その怪
物は、血に汚れたその顔をこちらに向けて、ゆっくりと近づいてくる。それは人の身体よりも幾分
巨大で、ヒキガエルのような手足がついた生き物に見える。見ようによっては巨大な醜い赤ん坊
にも見えるかもしれない。探索者たちの誰もが見たことのない生き物である。ぱっくりと開いた口
に並ぶ細かい歯と、その周囲から生えた触手は、見たものに恐怖と生理的な嫌悪感をもたらした。
SAN0/d8

巨大な目のないヒキガエルのような怪物
STR18 CON11 SIZ27 INT14 POW14 DEX12
耐久値 19 ダメージボーナス+2d6
火器のダメージは最小の値になる
頭突き 65% 1d4

耐久値が 3 以下になると、命乞いをしだす。
「ユルシテ ユルシテ」
「マホウ オシエル ユルシテ」
「ドイツニ オシエル? ノウニ ジカニ ツタエル」
「シンジロ。ワガアルジ ナイアーニ チカッテ ホントウダ」

復活(呪文を覚える際にアイデアに成功すると、呪文から冒涜的な何かを感じ取り、SAN チェック
0/1d3)
「顔のない黒い土の精との盟約に従い、月の裏側の住人の力を行使する。この肉体を生命の源
たる粉へと還さん。(そして、命の理をさかのぼり、この者の新たなる肉体を創造する。)」
1d10 の正気度と、3MP を消費する。対象となった死体を一度青っぽい灰色の粉に分解し、それ
を再構成することで復活させる。その場合、対象は d20 の正気度を失う。また、復活した対象の
マジックポイントと対抗ロールをし、勝利することで対象を崩壊させて粉にしてしまうこともできる。
戦闘中に唱える場合、5 ラウンドかかる。死体が完全なものでない場合、おぞましい肉の塊が出
来上がるだけである。0/1d6

※この呪文は通常のシナリオクリアには必要無いが、最後に神崎レイカが死んで灰になった際に
それをよみがえらせることができる。そうした場合は神埼生還エンドとなり、ベストエンドとなる。

★電気がつくと、ベッドとクローゼットと柱時計がある。

★目星で3時に爆発するように爆弾が仕掛けられていることが分かる。(シナリオ攻略には不要
のため、無いことにしてもよい。このシナリオにタイムリミットを設定したいという場合に採用す
る。)

ベッドの上に日記のページ2
日記のページ2
「2005年 5月20日(金)
 今日は最悪だった。教室に入って席につくと、なにか尖ったものがスカートを突き破って太もも
に突き刺さった。悲鳴を上げて席を立つと、(探索者名 E)がこっちを見てニヤニヤ笑っていた。信
じられない。あいつが画鋲か何かを私の椅子にしかけておいたのだ。こんなことをするなんて、ひ
どすぎる。
 先生に言いつけようと、椅子に仕掛けられていたはずの画鋲を探したのだが、私が立ちあがっ
た拍子に何処かへいってしまったらしい。何も出来なくて悔しい。」

★医学で、死体が壮年の女性のものであることがわかる。
★クローゼットの中に、日記のページ8
日記のページ8
「2014年 6月1日(日)
 ある霊能力者に会った。その男はナイアーといった。彼は、私の半生を聞くとにっこりと笑いな
がら、不幸の原因は中学時代のあのいじめにあると言った。そしてその苦しみの原因に復讐をす
ることが、私にかけられた呪いを解く方法だと言った。確かにそのとおりだ。あれ以来、私の人生
は狂ってしまった気がする。私の心はバラバラに引き裂かれてしまった。
 ナイアーは本物の霊能力者だ。彼の協力で、復讐の手はずは整った。あいつらには、あいつら
の手で、罪の精算をさせなければ。そのためになら、誰を生贄にしたってかまわない。」

●扉8:大広間
高い天井の広々とした部屋。シャンデリアが吊り下げられており、部屋向こう側の壁に花瓶など
が置かれている。花瓶には花ではない何かが生けられている。部屋の中央に家具はなく、ダンス
ホールのようになっている。
★部屋に入ったところで目星をし、成功すれば、向こう側の花瓶に人間の左腕が差されているこ
とに気づく。0/1d3
★歩き出すところで目星をし、成功すれば、部屋中に細く見えにくいが、長く鋭い針が設置してあ
ることに気づく。失敗して足を踏み入れれば、1d2 のダメージを受ける。
★跳躍で飛び越せる。失敗した場合、全身で針を受け、1d6 のダメージを受ける。
★DEX*5 で足元に気をつけながら、つま先歩きで進む。失敗したら 1d2 のダメージを受ける。気
にせずに進む場合でも、奥に進むまでに合計で 4 回の同じロールを行う必要がある。
画鋲の向こう側に花瓶がある。中に左腕と日記のページ6
日記のページ6
「2005年 9月27日(火)
 いまでも震えが止まらない。こんな屈辱を受けたのは初めてだった。今日、家庭科の授業で
作った料理でお腹を下し、トイレに駆け込んだ。その時、トイレが詰まっており、水が溢れてきたの
だ。汚水がトイレの個室の床を満たし、私はどうすることも出来なかった。べたべたに濡れた上履
きで外にでる。みんな私を避けて行った。
 一緒に料理をしたメンバーに(探索者名 F)が居た。こいつなら、予めトイレをつまらせておいた
上で、私の料理に変なものをいれて、トイレに行かせるくらいのことはしかねない。こんなのって
ひどすぎる。天罰が下ればいいのに。」

●扉9:レイカの部屋
部屋の中は、他の部屋よりは幾分か狭い。ベッドとクローゼット、そして机がある。
机の上に日記のページ3
日記のページ3
「2005年 7月19日(火)
 もうすぐで夏休みになり、地獄のような学校生活から一時的に開放される。しかし、最後に姑息
な嫌がらせを受けた。休み時間、私が席を外している間に机の上に置いてあった筆箱が床にぶ
ちまけられていたのだ。
 戻ってきた私を見て、わざとらしく笑いながら『ゴメン、机ニ、足ガアタッテ』なんて言っている。
(探索者名 D)だ。わざとに決まっているのに、追求すれば私が悪者にされるに決まっている。私
はだまって片付けるしかなかった。『ダイジョウブ?テツダオウカ?』なんてニヤニヤしながら聞い
てくる。本当に嫌なやつだ。」
★クローゼットの中に左足。

●最後の戦い
4つの手足をつなげると、扉2が開く。
扉に入ると、そこは椅子も机もない学校の教室のような部屋になっていた。窓の外には星が輝き、
宇宙のようにも見える。
★アイデアで、教室の中の雰囲気が、中学3年生のときの学級そのものだと気づく。
教壇にはスーツを着た初老の男が立っている。
男はニコニコと笑いながら、話しだした。
「おめでとうございます。よくあの屋敷の謎を解き、ここまでやって来ましたね。
 もうお気づきかもしれませんが、この屋敷は神崎レイカの家です。
 神崎レイカが中学時代の辛い思い出の詰まった、復讐のための屋敷。」
「私はそのために力を貸した、ナイアーと申します。」

質問をしても、
「私にあなた方のつまらない質問に応える義理はありません。本題に入りましょう。」
と一蹴。
★幸運に成功したプレイヤーは、この男には逆らってはいけないと本能的に感じ取る。

「この屋敷で神崎レイカの心の闇に触れたあなた方に、最後の試練を課します。
 この試練こそが、この屋敷の存在理由であり、その試練が終われば、元の世界に戻ることが出
来るでしょう。」

「その試練とは、神崎レイカの辛い中学時代の原因となった者に、罰を与えることです。」
「それでは最後の問いです。一人の人間の名を挙げてください。もっとも罰を受けるべきは、誰で
しょう?」

★プレイヤーを選ぶ
「そうですね。彼女を最も苦しめたのはその人物…。彼女も満足することでしょう。」
「それでは、その者に罰を与えてください。当然、その罰は死です。」

そう言うと、閉じた扉が開き、大広間の死体が歩いてくる。
そこに名前を上げた者の首が生えてくる。0/1d3 ※本人は 0/1d6

気が付くと、ナイアーは居なくなっている。
その動く死体は動きまわるだけで抵抗はしない。戦闘技能で HP 分のダメージを与えると死亡す
る。それまで探索者はその部屋を出られない。
→●エンディングへ
★ナイアーを選ぶ
「私は彼女に力を貸しているだけ。そもそも、彼女が一番苦しんだあの中学時代に、私は彼女と
会ってすらいなかったのですよ?あのとき、彼女を苦しめたのは誰かと聞いているのです。」

★神崎レイカを選ぶ
「なるほど、それは一体なぜですか?あの日記には彼女がひどいいじめを受けてきたということ
が克明にに記されています。彼女は被害者なのではないのですか?」

→ここで、日記一つ一つに対し、それが神崎レイカの勝手な思い込みであったことを説明する。
日記の内容は基本的にレイカの主観だが、ナイアーは部分的に客観的な事実を述べる。それに
ついてプレイヤーは「レイカの思い込みだ」という弁明はできない。逆に言えば、ナイアーが述べ
る事実にだけ注意すれば、あとの部分はレイカの思い込みだと言って論破できる。

①「まず第一に、(探索者名 A)さん。あなたは彼女の上履きを下駄箱から隠したそうですね。お
かげで彼女は始業式早々恥をかいたそうですよ。あなたはその罪を償うべきなのでは?」
★(強制ではない)アイデアによって、探索者たちの通っていた学校では、始業式の日は上履きを
持参することになっていたということを思い出すことが出来る。

ナイアーの断定する部分は
・始業式の朝、レイカが履くつもりだった上履きは、下駄箱に無かった。

A.始業式には普通、上履きを家から持って行くことになる。そのため、登校時に上履きが下駄箱
にないのは当然である。(「始業式の日は上履きを家から持っていくもの」という前情報は無いた
め、単純に証拠がない、彼女が自分で無くしただけ、というのでも OK。)

「なるほど、そのとおりかもしれません。それでは、この事件に関してはあなたが罪を償う必要は
無くなったとしましょう。」※ナイアーはかなりあっさりと弁解を聞き入れる。

②「しかし、事件は他にもありました。(探索者名 E)さん、あなたは彼女のイスに画鋲を仕掛けた
そうですね。ひどい話じゃあありませんか。こんなことをしておいて、あなたは罪を償う必要は無
いというのですか?」

ナイアーの断定する部分は
・彼女は椅子に座った時に座った尻に痛みを感じた。
・探索者はそんな彼女の様子を見た。

A.画鋲がなくなっていたということから、証拠がない。椅子にささくれがあった、彼女のスカートに
異常があった、などの理由も考えられる。悲鳴を上げて席を立ったらだれでもそっちを向くため、
様子を笑ってみていたというだけで、それが犯人だと特定することはできない。

「そうですね、認めましょう。確かにこの事件は少し説得力にかける部分もありました。」

③「まだまだありますねえ。(探索者名 D)さん、あなたは神崎レイカの筆箱をぶちまけるなんてい
う嫌がらせをしていたそうですねえ。彼女は(探索者名 D)さんがわざとやったと言い張っています
よ。そうなんじゃないですか?わざとらしく笑いながら、ニヤニヤと彼女をなじる様子からは、偶然
だとは思えませんねえ。」

ナイアーの断定する部分は
・レイカの筆箱の中身がぶちまけられていた。
・探索者 D は確かにそのようなことを言った。

A.日記に書かれている様子は単なる彼女の主観であり、愛想笑いを彼女がそうとらえただけであ
る。わざとやったということを立証することも出来ない。

「そのとおりですね。まあこんな小さなことはどうでもいいのです。まだまだ興味深い事件が残さ
れていますから。」

④「しかし、これはひどすぎるんじゃないですか?(探索者名 F)さん…。あなたは家庭科の時間
に神崎レイカに妙なものを食べさせ、トイレの個室で罠に嵌めたそうじゃないですか?確かにこん
なことを起こすことが出来たのは、一緒に料理をしていた(探索者名 F)さんしかいませんね!ど
んないいのがれができるというのですか?」

ナイアーの断定する部分は
・レイカは家庭科で探索者 F と共に作った料理を食べた。
・腹を下し、トイレに行った。
・トイレがつまり、レイカの上履きが汚れた。

A.神崎レイカがどの個室を使うかなんて予測できないのに、そんな罠仕掛け用がない。腹を下し
た原因も断定できないし、単なる偶然の重なりというだけ。一緒に料理をしたというだけでは証拠
にならない。

「フフフ、そのとおりですね。彼女の記述が興味深かったので、聞いてみただけです。普通ならそ
ういう発想に行き着きますよねえ。でも次の事件は本当に彼女が悪いんでしょうか?」

⑤「(探索者名 B)さん、あなたは図書委員だったそうですね。でも、彼女に仕事を全て押し付けた
…。彼女が可哀想だとは思いませんか?あんな酷いことをして、報いを受ける必要はないという
のですか?」

ナイアー断定する部分は
・レイカはたった一人で本の移動を済ませ、結果的に他の図書委員は楽をした。

A.他の図書委員もいなかったことから、神崎レイカが日にち・時間を間違え、予定よりも早く片付
けてしまったという可能性がある。

「よくそのことに気が付きましたね。つまり彼女が馬鹿だったという話です。この事件の非はあな
たには無いということを認めましょう。」

⑥「それでは最後にして最悪の事件です。(探索者名 C)さん、あなたは彼女にスープを配膳する
際に、あろうことか針を仕込んだそうですね。これはれっきとした犯罪…嫌がらせの域を超えてい
ますね。ここまでしておいて、あなたは罰を受ける必要がないというのですか?」
ナイアーの断定する部分は
・レイカは床にこぼれたスープの中に針を見つけた。

A.スープを床にこぼして、その中に針を見つけたのなら、針がスープに混入していたのではなく、
床に元々針が落ちていたのかもしれない。その日裁縫の授業があったというのなら不自然では
ない。それに、『失敗しちゃった』という発言も、意味の取り方次第ではごく自然な発言である。

「フフフ…その通り。つまり、彼女の勘違いだったということですね。」

★全ての謎を解けなかった場合
「そのいじめについて有効な弁解が得られない以上、(探索者 X)が彼女を苦しめたという事実を
認めるということですね?であればするべきことはわかっているはずです。」
→「誰が罰を受けるか」にて「★プレイヤーを選ぶ」を選択したのと同じルートに入る。

★全ての謎を解いた場合
「フフフ、気付かれていたようですね、彼女の愚かさに。それでは、彼女を苦しめた者に罰を与え
てください。それがあなた達に課された最後の試練です。」
そう言うと、閉じた扉が開き、大広間の死体が歩いてくる。
そこに神崎レイカの首が生えてくる。
「どうして!?何言ってるのよ!!!なんで私が悪いことになるの!?全部あんたたちが悪いん
じゃない!!
 あんたたちがこの屋敷の中で、自分たちの罪に気づいて、お互いに卑しく罪のなすりつけ合い
をして、罰しあうために私は…
 ナイアーとかいうあんた!一体どういうこと!?!!あんたが私の復讐を手伝ってくれるはず
だったんじゃないの!?
 あああああああああ!!!!!」

「さあ、皆さん愚かな彼女を罰するのです。それが彼女の望み、そしてここから脱出する唯一の方
法ですから。」
「彼女を苦しめたものを罰さない限り、あなた方はここから出られません。それが彼女の願いなの
ですからね。そして、あなた方が今述べたとおり、彼女を苦しめたのは、彼女自身なのです!」

★ここで何を言ってもナイアーは神崎レイカを殺させようとし、探索者がそれをしなければ、ナイ
アーはつまらないと言って手を一振りし、神崎レイカをバラバラに引き裂いて殺す。1d3/1d10

●エンディング
処刑を終えると、窓の外の様子がごく普通の学校の廊下や、校庭が見下ろせる景色に変わって
いる。まさしく自分たちの通っていた中学校の教室だった。

★戻ろうとすると、処刑された探索者の肉体が歪んでいき、ちょうど処刑されたときと同じような状
態で死ぬ。

★神崎レイカを処刑していた場合、神崎レイカの死体が青い灰のような粉になってその場に残り、
何事も無く学校の外に出られる。復活の呪文を用いて生きかえらせることもできるが、その場合
でも発狂して逃げていってしまう。
このシナリオのキーパリングのコツのようなもの

 屋敷の部屋を 1 つずつ探索して、手がかりを集めていくという、ごく単純なシナリオです。手足を
クローゼットの遺体につないでいくという部分はノーヒントですが、なんとなく察してもらえると思い
ます。様々な罠と戦闘を、セッションがグダグダにならない程度に展開していきましょう。探索者が
多いと、戦闘も罠も結構ヌルいので、すこし難易度を上げてもいいかもしれません。

 NPC がいないので、不測の事態には陥りづらいですが、最後の推理パートは行き詰まる可能
性があります。そもそも、この謎と答え自体にこじつけ感があるので、この説明文にある回答以外
でも幅を持って正解とするようにしましょう。ポイントは、この黒幕であるニャルラトテップは神崎レ
イカを陥れたくて、探索者に問いかけているという点です。ニャルラトテップの心情的に、彼の
ジャッジは探索者に対して甘すぎるくらいでちょうどいいのです。

 日記に登場させる探索者の名前ですが、資料として配布する場合はセッション前に、探索者名
を聞いて、準備しておきましょう。GM から配布された資料に自分の探索者名がある、というのは
意外性と緊張感が出ます。

 このシナリオはクリアしてもなかなかスッとしない、ハッピーエンドのないシナリオです。神崎レイ
カは、どのようなルートをたどっても根本的に救われないということでいいと思います。探索者が
ヒーロー根性を出してナイアーを倒そうとかし始めたら、遠慮なく殺しましょう。それがクトゥルフ神
話 TRPG です。少なくとも、そうはならないように、神崎レイカに愛着がわかない程度のうざい
ロールプレイをしましょう。

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