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土 木 学 会 論 文 集No. 750/III-65, 193. 204, 2003.

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セメント混合処理作 業船を用 いた湊 深 土の有効 利用

宮 崎 良 彦1・ 湯 恰 新2・ 落 合 英 俊3・ 安 福 規 之4・ 大 嶺 聖4・ 土 田 孝5

1正会 員 関門港湾 建設株 式会 社(〒750 -0017山 口県 下 関市細江 新町3-54)


2正 会員 工博 関門港 湾建設 株式会 社 (〒750-00I7山 口県下 関市細 江新町3-54)
3フ ェロー 工博 九州大学 大学 院工学 研究 院建設デ ザイ ン部 門(〒812 -8581福 岡市東 区箱 崎6-10-1)
4正会員 工博 九州 大学大 学院 工学研 究院建設 デザイ ン部 門 (〒812-8581福 岡市東 区箱 崎6-10-1)
5正会員 工博 (独)港湾 空港 技術研 究所 (〒239-0826神 奈川 県横 須賀 市長瀬3-1-1)

埋立 処分場 が不 足 してい る中, 港 湾 工事 で発生す る凌藻 土 の有効利 用 がます ます 求 め られ て くる. この よ う


な社会 的情勢 を背景 として, セ メン ト混合 処理 に よる湊深 土 の有効利 用 が普及 しつつ あ る.
施 工 の確 実性 と品質確 保 を 目標 に, 専用 固化 処理作業船 が開発 され 国内 の各港 湾工事 にお いて実 用 されて きた.
本文 で は, この専用 作業船 の構成 と機能, 及 び施 工実績 を述べ る とともに, 名古屋 港 にお ける実用 事例 を用 いて
施 工上 の技術課 題 と解決 方法 を明 らか に し, 凌洪 土のセ メ ン ト混合処 理工 法に 関す る新 た な展 望 を示す.

Key Words: dredged soils, cement treatment, working ship, projects, long distance transportation

1. は じめ に 2. 湊 諜 土 利 用の 現 状

循環型社会の構 築に向けて, 建設発生土 を如何に有効 港湾整 備や航 路維 持等に伴い大量の凌藻 土砂 が必然 的


に使 うかは重要な課 題 となってい る. 渡諜 土は建設発 生 に発生する. 近年, わが国の港湾 工事におけ る灘 土の
土の1つ と見 な され るが1), その多 くは含水比 が高 く うち, グラブ灘 に よるものは年間1500万m3程 度で推
(100∼200%), コーン指数が200kN/m2以 下の泥土状 移 している ことは, 筆者 らの調べで分かっている. 湊藻
態で発生す る. このままでは地盤 材料 として使 えない と 土の発生 と利用 の現状 を図-1(a)に示す.
い う問題 があ り, 灘 業土を有効利用す るた めには何 らか 渡深土は従来, (1)土捨て埋立処分や(2)海洋投棄 され る
の処理 を行 う必要 がある. 例が多い. しか し, 近年は, 海 洋投棄処分に対する規制
凌蝶土の処理 技術 としては, 脱水 による減容化処理 と が厳 しい うえ, 凌深土を受け入れ るための土砂 処分場 を
セ メン ト等に よる固化処理 に大別 され る. 減容化処理の 新たに建 設す ることも難 しくなった. この よ うな背景か
代表例 としてフィル ター プ レスな どの機 械脱水工法が挙 ら, (3)港
湾 ・空港用地造成や(4)人工干潟 ・浅場 造成等 に
げ られ る. 高圧 で脱水 された凌洪粘土はそのまま地盤 材 積 極的に有効利用 しよ うとする事例 が多 くなってきた.
料 として使 うことが可能 になるが, 脱水 コス トが高いた しか しなが ら, 淡諜 土砂 は恒常的に発 生す る一方, 海
め港湾工事での本格 的な実施例は少ない. 一方, セメン 上空港のよ うな大規模埋 立は短期間に大量施 工を行 う性
ト混合に よる固化処理 工法 は, 海上の作業船において淡 格がある. 従 って, 発 生側 と利 用側 との需 給ギャ ップは
深 土を固化処理 し所定 の位置 に打設す る工法であ り, 港 大き く, プロジェク トが無い時の濾 柴土の利用が難 しい.
湾工事 では現実的な方法 とな りっっある2)3)4)5). このため, 需要 が期 間的に限定 され る(3)や(4)の ほか, 図
-1(a)に 示す(5)土構 造物へ の有 効利 用 を考 え る必要 もあ
施工の確 実性 と品質確保 を最優先に, 湊藻 土をセメン
ト混合処理す るための本格的 な専用作業船が既 に開発 さ る. 例 えば護岸腹付 ・裏 込め, また築堤 その ものにお い
れ実用化 され ている. 本文で は専用作業船の主な構成, て, 自然 の石材 ・砂材 の購入材料 に替わる良質 な地盤 材
施 工能力, 作業 工程お よび特徴 を説明す るとともに, 名 料 として, セ メン ト混 合湊洪 土の新 たな利用方法 が期待
古屋 港ポー トアイラン ドにお ける施工事例を示 す. 最後 され る.
に施 工上の課題 および床掘置換工法 ∼の適用について展 埋立利用方法の比較を図-1(b)に示す. ポ ンプ船 を用 い
望す る. たスラ リー方 式の凌藻 ・埋 立は安価 であるメ リッ トもあ
るが, 最近 では汚濁 防止 の観 点か らグラブによる凌藻 と

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(1)土捨て埋 (2)海洋投棄
立処分

(5)
土構造物 (4)入 工干潟 ・ (3)港湾空港用地造成
(護岸 腹付 ・中仕 切堤等) 浅場 造成

(a)湊洪 土 の発生 と利 用(処 分 を含 む)の 現状

渡藻 埋立 跡 地 の処 理 ・
利用

工 事期 間 が長くなる

(b)湊深 土の埋 立利 用 方法 の比 較

図-1 凌 深土 の発生 と利用の現状

圧送船や揚土船 による埋立の事例が多 く見 られ る. 跡地
利用 を考 えると, 従来工法に必要 とされ る地盤改良工事
を省 くことがで きるか ら, 工期短縮 効果のあ るセ メン ト
混合処理 工法 が普及 しつつある.
港湾におけ るセメ ン ト混合処理に よる灘 業土の固化処
理工法には, 専用船を必要 とせず に既存の空気圧送船を
活用する管 中混合方式(4)とプ レミックス工法 を始 めとす
る専用作業船方 式(18)がある.
管 中混合方式は, 一般に混合プ ラン トを必要せず, 大
量施工 ・長 距離運搬 に対応 できるメ リッ トがあ る. ただ 図-2 固化処理作業船 の規模 の検討
し, 空気圧送 を行 うため流動性 を必要 とし, 概 ね液性 限
界の1.3∼1.5倍 程度以上の含 水比 となるよ うに加水が行 3. 専 用 作 業船
われ る. このため, 流動性 が高い ことに起因する問題,
例 えば特定の勾配 を もつ盛 土法面が形成 できない ことや, (1)専 用作業船 の開発
水中打設時の材料分離 と汚濁発生 の課 題があ り, (5)土
構 海上 工事 にお ける施工条件は, 海象条件に左右 されや
造物 としての利用例はまだ少 ない. す く交通手段 が限定 され るな ど, 一
一般に陸上工事 に比 べ
専用作業船方式 としてのプ レミックスエ法 は, セメン 厳 しい. 他方, 灘 土 は比較的均質な場合が多 く発生 土
ト混合 プラン トお よび処理 土を圧送す るための専用装置 量も大 きい とい った特徴があ る. この ような事情 を考慮
を備 えてお り, 湊深 土に加水せず 一連 の作業 を行 う特長 して, 品質の良い地盤材料 を安 く提供す ることを 目標 に,
がある. このため埋立造 成工事 のみ な らず(5)土構造物 と 淡諜 土の揚土か らセ メン ト混合 処理, 圧送, 打設施工 ま
しての利用方法 が数多 く考 え られ, その実施例 も徐 々に での一連 工程 を同一船上で行える混合処理作業船 を開発
増 えてきてい る. た だ, 低含水比 である故 に処理土 の粘 した.
着力 が強 く, 長距離運搬 となる と圧送能力 の問題 は施工 図-2に 作業船 の規模 について検討 した結果を示す. 処
上の検討課題 となる. 理能力 を大 きくす るほ ど, 設備投 資(建 造費)は 増加す

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写真-1 セメン ト固化処 理作業船 の全景:

記 号 説 明:

1. 湊 漢 土
2. 土 運 船
3, 作 業 船
4. バ ッ ク ホ ウ
5. ボ ツパ ー
a振 動 フ ィ-ダ
7. 粘 土 カ ッ ター
8. セ メ ン トサ イ ロ
9. セ メ ン ト計 量
10. 海 水 タ ン ク
11. 海 水 計 量
12. セ メ ン トミ キサ
13. セ メ ン トス ラ リー
14. ア ジテ ー タ
15. ス ラ リー ポ ンプ
16. 混 練 機
17. 油 圧 ポ ンプ
18. 排 砂 管
19. 固 化 処 理 土
20. ス プ レ ッ ダ

図-3 作業船の工程 概要

る。しか し, 1日 あた りの実質施工能力は大幅に増加す 表-1 固化 処理 作 業船 の 主な仕 様


るので, 結果 的に大幅 なコス トダ ウンが図 られる. 図の
ように, 例えば小規模 の作業船(50m3/h)での単価 比率を
100と した場合, 大型作業船(300m3/h)は58と な る, 更
に大型化(1000m3/h)を進 めると,施 工単価 を25に 下げる
ことが可能であ る. ただし, 施 工数量が100万m3を 超
え るような大規模工事でなければ, 大型船 の年間稼 動率
と作業効率が低 く, 投資 リスクが高 くなると考 えられ る.
数10万m3以 下の中小規模の工事への適用性, 稼 働率
と経済 性を総合的に検討 した結果, 300m3/h級 の濠諜 土
固化処理作業船を開発す ることに した. 写真一1は開発 し
た専用作業船の全景であり,その主な仕様 を表-1に 示 す.
専用作業船 によ り凌漢土の揚土, 土塊破砕, 異物 除去か
ら, セ メン ト混合処理, 処理土の圧 送, 打設 までの一連
の作業工程 を効率的に行 えるよ うに した. 図-3に 本作業
船 の概要図 を示すが, 全体 と して(a)前処理, (b)セメン ト
スラ リープ ラン ト, (c)混練機(d)油 圧 ポンプ, (e)スプ レ
ッダ(打 設部)の5つ の基本 部分か ら構成 され ている.

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こ こ で, 凌 洪 土 の 流 れ を 追 い な が ら各 工程 の 作 業 内容 に
っ い て 説 明す る.

(2)灘 土 の 固 化処 理 工 程
a)竣 諜 土 の 前 処 理

まず, 固化 処理 の 対 象 とな る 凌 漢 土 を海 底 よ り土運 船
に凌 漢 す る こ と とな る が, 体積 膨 張 の少 な い よ う, ま た

有 効 利 用 に 際 して含 水 比 に 対す る管理 の必 要 性 か ら, 水
中掘 削 に伴 う水 分 増 加 の少 な い グ ラ ブ船 に よ る没 喋 が 望
ま しい. 凌漢 土 を積 載 した 土 運船 は, 専用 作 業 船 に接 舷 (a)混 練機 の 構造

され る, 専用 作業 船 に よ る 固化 処 理 工程 は こ こ か ら始 ま
る,

図-3に 示 す 前 処 理 工程 で は, 凌 漠 土 は 大 型 バ ック ホ ウ
(容量4.5m3)に て 土 運 船 か らホ ッパ ー に投 入 され る.
ホ ッパ ーの 上 部 に ス ク リー ンが 設 置 して あ り, 250mm以
上 の 土塊 や 異 物(石 塊, コン ク リー トブ ロ ック, ワイ ヤ, (b)2軸 パ ドル の 断 面(A-A)

そ の 他 の粗 大 ゴ ミ等)が 分 別 され る. 大 きな 土 塊 は粘 土 図-4 セメ ン ト混合設備の構造


カ ッタ ー に よ って 砕 かれ, ス ク リー ン を通 過 した湊 喋 土
と合 流 して 混 練 機 へ 送 られ る. 一 方, 異 物 は こ のま ま 除 から構成 してお り, 撹搾羽根 はスク リュー とパ ドルの複
去 され る, 合式 を採用 している. セメン トスラ リー は混練機 の上段
b)セ メン トス ラ リ-の 製 造 と供給 から注入 され る. 上段 のスク リュー部 は混練 とともに,
セ メ ン トは 専用 のセ メ ン トサ イ ロ船(600t積 み)に よ 凌洪土 を供給 す る役割 も果 た し, 施 工速度 に応 じて回転
り貯 留 され る。1日 の セ メ ン ト消 費 量 は セ メ ン ト配 合 量 速度 を調節 できる. 下段は常に一定の回転速度(34ram)
と施 工 土 量 に左 右 され るが, お よそ3∼4日 毎 にセ メ ン ト で撹搾 してい る.
を供 給 す る こ と とな る. セ メ ン トス ラ リー を 製 造 す るた 淡諜 土 とセ メン トの混合 が どの程度まで均. に こなせ
め, セ メ ン トは 自動 的 に ス ラ リー プ ラ ン ト側 の サ イ ロに るかは混練機 の性能 か ら決 まる. 実工事における実測に
移 され, セ メ ン ト計 量器 に 供 給 され る. ス ラ リー プ ラ ン よると, 処理土 中のセ メン ト含 有量の変動係数 はP0.15
トにお い て, 設 定 した 水 セ メ ン ト比(W/C)に 応 じ, セ との結果が得 られているの, 10). しかし,間あた
時 りの混
メ ン ト量 と海 水 量 が バ ッチ 毎 に 計 量 され る. そ の 後, セ 合処理 土量をは じめ, 凌漢土の性状やセメ ン ト配合 量な
メ ン トミキ サ に て セ メ ン トス ラ リー が製 造 され, ア ジ デ どの条件 が変 わった とき, 混練精度は ど う変動す るかに
ー タ に溜 め られ る. セ メ ン トス ラ リー は, ス ク イ ズ式 ポ
ついて, 今後実機にお ける実測 と評価を続 けるこ とが必
ンプ に よって こ こか ら混 練機 へ定 量 的 に供 給 され る. 要である.
セ メ ン トス ラ リー の 供給 流 量g(l/in)は, 次 の 関係 よ り d)固 化処理土の圧送 と打設
決 定 され る. (1)処 理士 の圧送
セ メン ト混合処理 した測 榮土は, 油圧 ピス トン式の圧
(1) 送ポンプを用 いて打設位 置まで圧送す る.圧送 ポンプは,
図-5に 示すよ うに, 主に左右2本 の油圧シ リンダとロッ
こ こに, クシーバか ら構成 され ている. 運転 中, -方 のシ リンダ
g: 時 間 あ た りの処 理 土 の 土 量(m3/h) から処理土を送 り出す 間に, もう一方 のシ リンダに処理
C: セ メ ン ト配 合 量(kg/m3) 土 を充填 する. シ リンダのス トロー クがな くなる と, ロ
ρb: セ メ ン トの粒 子 密 度, as=3.16g/cm3(普 通 ックシーバの作動によ り, 吸入 と吐出の切 り替 えを行 う.
ボル トラ ン ド), r305g/cm3(高 炉B種) このよ うに処理 土を連続的 に圧送す るよ うになっている.
ρk: 海 水 の密 度, Av=1. 025g/cm3 圧送ポ ンプの吐出圧力 として, 最大7MPaま で圧送可
W/C: セ メ ン トス ラ リー の 水 セ メ ン ト比 能であるが, 機械 的な条件に よ り図-6の よ うな性能 曲線
c)竣 諜土 とセ メ ン トの 混 合 になる. 時 間当た りの圧送土量は, 送泥圧力 が一定値以
続 い て, 前 処 理 され た 渡諜 土 とセ メ ン トス ラ リー は, 下(約4MPa)の 場 合, 油圧シ リンダ等の機 械動作 に要
混 練 機 に よ り混合 され, 固 化 処 理 土 が製 造 され る. 図-4 する時間(サ イ クル タイム)に よって決 ま り, 本船の設
は混練 設備 の構 造 を示 した もの で あ る。 全 体 は 上 下二 段 計では500m3hと なっている. しか し, 圧 送管の抵抗が

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図-5 油圧 ピス トン式の圧送 ポンプ 図-6 圧送 ポンプの性能 曲線

表-2 凌 藻 土 を 固化 処理 したプ レ ミック ス土 の 施 工実 績 表

*1土 運 船 か ら一 定 の頻度 で 採 取 した 試料 の 平 均値 で あ り, 含 水 比 の変 動 係数 はF0.08∼0 -289).


*2工 事 仕様 書 によ り現 場採 取 した改 良 土の28日 養 生後 の試 験 値. 頻 度 は1回1日 又 は1回2000m3程 度.

大 き くなる と, 圧送システム としての圧送能力 は, 送泥 万m3に 達す る.工事の内容 は,単純 な埋立か ら覆土工事,


圧力の増加 につれ て低下す る. 護岸腹付工事や築堤工事 と多岐にわたる. 専用 作業船 の
(2)処 理土の打設 特長は, 一連の固化 処理工程 を同一船上 で効 率的に行 う
処理土の打設は, 水中打設 と気 中打設 との異 なった施 よ うになった こと, また低 含水比 の渡漢 土に加水せず に
工条件 に分 けられ る. 水中打設 を行 う場合, 処理土が打 混練 と圧 送ができる装置を搭載 した ところにある. この
設 に伴 って材料分離を起 こさない ことが重要で ある. 水 ため, 護岸腹 付や築堤等いわゆる土構造物へ の応用 に適
中打設 については5章 で述べ ることとす る. 一方, 気中 している.
部での施工 においては, 水 中材料分離の恐れはな くな る ここで, 名 古屋港 第3ポ ー トアイ ラン ドにお ける, セ
ものの, 固化処理土を締 固め しないで直接盛土や法面を メ ン ト混合処理 した灘 土を用 いた護岸腹付 け工 と中仕
施工す るときには, せん断強度 に関す る施工管理が重要 切 り堤 の施工実例(表 中N0.7の 事 例)を 取 り上げる. こ
であ る. 一般的に, せん断 強度が大 きい ほど, よ り急な の埋立地は港湾整備事 業か ら発生す る凌漠 土砂 の処分地
法勾配が形成で き, 速や かに施工で きる. 具体的な管理 として計画 され たものである. 濠牒 土の土捨て に伴 う護
方法については次章の施 工事例において説 明す る. 岸 外への濁水 の漏 出を防止す る必要 が生 じた. そ こで,
凌漢土を有効利用 した固化処理土 による腹付 け施 工及び
築堤施工が行われた.
4. 湊諜 土 固 化処 理 の応 用実 例
(1)護 岸腹付けエの施工事例
専用のセ メン ト混合処理作業船に よる施工事例は, 表 図-7に 腹付 け工の概 要図を示す11).法面の下部 は水面
-2に 示す通 り, 工事件数 で26件, 施工総土量で約162 下にあ り, 法肩部は気 中で1:3の 勾配 となっている. セ

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(a)単 独 打設

(丸数字は施工順序を表す)
図-7 腹付 け工 の概 要

メン ト混合直後の処理 土は非常に軟弱なので, 法面に沿


って必要な法勾配 を確保 して施 工できるか どうか, この
(b)積 み 上げ打設
現場は初めての施工事例であった. ここで, 図-8(a)の よ
うな斜面において処理 土打設時の安定性 につ いて考え る. 図-8 斜面上 にお ける処理 の安定

この斜面に沿 い, すべ り落 ちる力rlsinθ があ る. これ
余水 吐側
に対 し, 斜面で発揮 しうるせ ん断抵抗力Z8が ある. 両
者の釣 り合いか ら式(2)の関係が得 られ る. ・浮 泥: 約10m

SyO2-1kN/mz

(2)

ここに,
図-9 仕切 り堤施工の計画断面
民 は打設時のせん断強度, 1.5kNm2.
κは処理土の単位体積重量, 15kNm3. ンせん断試験(JGS1411, 1995)よ り, 既 に堆積 した浮
θは斜面の傾 斜角度, θm1(13). 泥のせん断強度 は2∼1.OkNm2と のこ とが分 かっ
以上のよ うに, 度 に盛 れる処理土 の厚 さは, 式(2)で た. 既 往 の地盤調 査 にお いて在 来地盤 は, 5h=2.3+2.3z
試算す るとh=30cm程 度が限度である. (kN/m2z=0at-8.5m)と なっている.
この ようなせん断強度 を得 るには, 渡藻土 にセ メン ト 今回の場合, 護岸 外係 留の専用 作業船 と施工位 置 に
混合す るほか, 凌喋土の含水比 に対す る管理 も重要で あ 100∼200mの 距離 があ り,作業船 固有のスプ レッダでは
る. 実工事の経験 では, 含水比が液性限界の1.3倍 以下 打設位置まで届かない. そ こで, 作 業船 の処理土排 出口
の凌喋土な ら,混合処 理後のせ ん断号
鍍 はほぼ1.5kNm2 から220mの 圧送管 をつなぎ, 先端台船に よる撒 き出 し
に達する. 更 に, 施工効率 を向上 ざせ るため, 実施工で 方法を採用 した.
は図-7の よ うに護岸 の法尻 よ り, 一段ずつ積み 上げてい この よ うに, 施 工上, (1)セメン ト混合後の処理土 は安
く方 法で処理土を打設 した. 図-8(b)に示す施 工条件 に基 定 して圧 送作業 が行 えるのか, (2)浮
泥 中に, ど うすれば
づいて, 円弧すべ りによる安定解析を行った.そ の結果, 堤体が築 き上 げられるのか, との技術的課題 があった.
下の層 に約4kNm2の 非排水せん断強度が発現で きれば, 長距離圧 送について, 凌喋土 を加水処理す る方法は取
施 工時の安定が確保で きることが分かった. りやすい解 決手段 であるが, 含水比が高す ぎると処理土
そ こで原位置 において, 4cm, 高さ4cmの ハ ン ドベ の固化醸 に悪影響 を及 ぼす, 更 に処理土が流動状態 と
ーンによるせ ん断強度測定 を実施 し, 55kNlm2を 確認 な った場合 は, 打設先端 にお ける盛土施工はできな くな
してか ら次の層の打設を再開す るよ う, 施工管理を行 っ る恐れ もあるので, 事前検討 において次の ような必 要条
た. これに よ り, 腹 付け工の施工が順調に行われ, 設 計 件を把握 した.
通 りの形状を計画工期内に完成す る ことがで きた. ・長距離圧 送(220m); 2kNm2が 必要.
・盛土法面形成; 51.5kNm2が 望ま しい.
(2)遊 水池仕切 り堤の施工事例 両方の限界を考 え, 液 性限界77%の 凌喋土に対 し含水
当埋立地への湊喋 土砂 処分の進 捗 とともに, 埋 立地 内 比の適切な範囲は80∼100%と 経験的 に判断 した. 工事
において遊水池 を設 け, 汚 濁余水 を沈殿 させ てか ら外部 中, 土運船の配船 による含水比管理 を実施 した結果, 圧
へ排出す ることが必 要 となった12. 本工事は, 埋立護岸 送 運搬作業は正常 に行われた.
にあ る余水吐の周囲に幅60m, 長 さ195mの 遊 水池を築 原位置に既に4mほ どの浮泥が堆積 していたが, 浮泥
造するこ とであった. 中の打設時 には, 打設 管先端 を所定深 さに挿入 し, 圧送
図-9に 仕切 り堤の計画 断面図を示す. 原位 置でのべー 圧力 を利 用 して溺 尼を押 しのけなが ら改良土 を打設す る

198
図-11 塑性体 としての圧 力損失計算

先 端 抵 抗9t(MN/m2)

図-10 コー ン貫入試験 の結果

要領 で施工 した. 処理土による浮泥 の置換 を確実 にす る


た め, 常に以下の管理 を徹 底 した.
・GPSに よる打設管の位置管理
・レッ ド測深 による打設層厚の管理
・打設点ご との打設土量管理
仕切 り堤の盛土施 工が終 了後, コー ン貫入試験(先 端
角60. , 断面積10cm2)に よる地盤調査 を行 った. 図-10
の調査結果 をみ ると, 標高-3m付 近に若千 濁 尼の介在が
認 め られ るものの, ほぼ全面置換 とな ってい ることを確
認 で きる. 浮泥介在 の原因 は, 本施工 と平行 して大量の
波蝶 土砂 が埋 立地 内に投入 されていた ことに よるもので
ある. 図-12 管内圧力 の検討

ここに, Rは 圧送管の半径, tは 管壁面のせん断応力


5. 施 工 上の 技 術課 題 に つ いて である. tは圧送土砂のせん断強度5もと等 しい と見なす.
完全 に乱 され た粘性 土の非排水せ ん断強度 につ いて,
(1)圧 送抵抗の検討 土田 ら13)は以下の関係式を提案 してい る.
4章 の施 工事例の よ うに, 現場 条件 によ り, 作業船間
近 で打設できる場合 と, 作業船 か ら打設位置 まで圧送運 &1)(t/m2) (4)
搬 しなければな らない場合がある.
管 内の圧力増加 をもた らす送泥抵抗 は, 土質性状 と運 ここに, 暁 は粘性土の液性 限界 である.
搬距離 によ り算出でき る. 含水比 が高 くなるに従い渡諜 図-12の 実線 で式(3),(4)に基づいた計算結果を示す. た
土 は固体か ら液体に変化す る. 管 内の土砂 は塑性体か流 だ し, R=0.167m, 220m, 1=77%と し, セ メン ト混
体か によって, 計算方法が変 わって くる. 塑性体 として 合の影響 を無視 した.
圧力損失を算定す る場合, 図-11に 示す ように, 圧送管内 含水比が非常 に高 く, 淡諜 土はス ラリー化 した場合流
において土砂はせ ん断変形せず全体が平行移動す ると, 体 として扱 う必要があ る. 高含水 比の淡諜 土は ビンガム
ここで仮 定す る. 圧送距離l間 で発生する圧送抵抗4pは 流体 と見なせ る場合が多い1の. 図-13に ビンガム流体1の
次の ように求 められる. のモデル を示す 管 内でせん断応力 τ が降伏応力tを 超 え
ない芯の部分 はせ ん断変形 を生 じず, 平行移動 で前進す
△ρπR2=2πRτo△l
る. 一方, 芯 と管壁の間の部分 は, せ ん断応力 τ
が降伏応
力tを 超 えてお り, 式(5)によ りこの間の流速分布 が表 さ
(3) れ, また式(6)によ り管 内を通過す る土砂 の流量が求 めら
れ る.

199
図-13 流体のモデル 図-14 圧入方式に よる水 中打設

(5)

(6)

式中, 陶 は ビンガム流体の粘性係数 である. αは比栓


半径 と呼ばれ, γ=が ち とな る. ryは降伏 しない芯 の
部分の半径 で, tは 管壁面におけ るせ ん断応 力である.
一般に, 式(6)より逆算す ることに よって比栓 半径 αが求

ま る. 比栓半径 αよ り, 圧 送抵 抗47は 次 のよ うに求め ら


れ る. 図-15 水中打設時の水質調査

(7) 中材料分離を起 こしに くいのかを調べ るた めの実験を実


施 している16)17). それによる と, 水 中で処理土の 自由
式(7)によ り試算 した結果を図-12の 破線で示 した. こ 落下を避 け, 打設 管を着底 させ て圧入方式 による打設が
の試算 で9=175m3/hと し, t=0.8, μb=3∼10Pasと 有効である. そ こで実施工では, 図-14に 示すよ うに, 打
仮定 した. この仮定は流体 としては大 きめのパ ラメータ 設管の吐出 口をつねに海底 に着底 させた状態で打設す る
である. この よ うに, 土質条件や, 圧送距離, 圧送流量, よ うに工夫 してい る. つま り, 打設土 は単 に上か ら落下
圧送管の内径, 耐圧の諸条件が明確 になれば, 長距離圧 して堆積 してい くのではな く, マ グマが供給 された火山
送 について検討可能 とな る. の溶岩 ドームが徐々に成長す るよ うに, 打設土全体が膨
区H2に 吐出 口でのせん断強度,含 水比 と圧送 ポンプの れ上がって海 底地盤が形成 してい くので ある. 圧入方式
送泥圧力を併せ て示 した.図-12の 検討 と実測結果 による によ り水中打設 時の材 料分離 が有効 に抑 えられ ると考 え
と, 含水比が100%以 上か5<0.5kN/m2の 場 合, 圧送土 られ る. 確かに この方式では圧送管 内で閉塞 しやす くな
量 の低下 を伴 うよ うな, 大 きな送泥圧力は発生 していな るが, 表-1に 示す通 り本作業船に最大送泥圧7MPaの 油
い.施 工中の送泥圧力は常時2∼4.5MN/m2程 度 であった. 圧式圧送ポ ンプを備 えてお り, この強制的 な送泥圧に よ
り閉塞す るこ となく連続施工が可能である.
(2)処 理土の水 中打設 また, 打設速度が1m/sを 超 えると水中材料分離の可
海上工事での固化 処理凌洪 土の施 工では, 処理土の水 能性 が 大 き くな るが18), 直径0.35mの 打設 管 で
中打設 が求 め られて くる. 水 中打設 の施工管理 は陸上打 300m3/h程 度 の処理土 を打設す る場合, 実質打設速度は
設 よ りも難 しく, 水 中材料分離 のない よ う特 に注意 しな 0.87m/sで ある. この工法では処理土 は打設完了まで海
けれ ばな らない. 水 中で材料分離す る と固化処理 の改良 水 に触れず, 水中材料分離の発生 が有効 に抑制 され ると
効果 が期待 できず, 周辺海域 に汚濁拡散 をもた らす恐れ 考 えられ る.図-15に 腹付け施 工の水 中打設 時に行 った水
が考 え られ る. 材料分離す るか否 かは土質条件 と打設方 質調査の結果 を示す. 渡諜 土は表-2のNo. 7に 示す よ う
法 による. 粘着力 の強 い粘性土 な らば材料分離 の可能性 に, 粘性土であった. 図中の2重 丸 は処理土の水 中打設
はそれ だけ小 さい とい えるが, 粘着力 の弱 い砂質土の場 の影響 を受 けない とされ る位置 での測定値であ る. 両者
合 は分散 防止剤 な どの混和剤 を固化処理土 に配合す る対 を比較 して, 水 中打設に伴 う海水へ の影響 は小 さい とい
策 が必要 となる. 一方, 打設方法 につ いて どうすれば水 えよ う.

200
6. 今 後の 展 望 表-3 現状 の長距離圧送の限界

(1)低 含水比の長距離圧送 について


a)低 含水比処理の必要性
淡諜 土(固 化処理 した ものを含 め)を 長距離運搬す る
需要 は必ず ある. 大量に加 水を行 い, 灘 業土 をスラ リー
化 した上 で, パイプ排送で 埋立地 内へ投入す る方法 は従
来 の安易 な施工法で ある. スラ リー化 した場合 は, 次 の
よ うな4つ の問題が存在す る.
(1)濁 り水の発 生 これ は, 灘 土 にセ メン トを混合す る と数分間 とい う短
スラ リー状 の土砂 を投入する と, 埋 立地 内に大量 の余 時間でせん断強度 が増 え始 め20), 表の ように圧送管内の
水 が発生す る. この よ うな濁 り水 が外部 に流 出す る と環 せ ん断強度 は淡諜 土 に比べ2倍 ぐ らい大 きいか らであ る.
境 問題 に発展 しかねない ことか ら, 実 際様 々な汚濁 防止 c)長 距離圧送の改善方法
対策 を講 じる必要が出て くる. これ らの対策 には大 きな わが国の海 上埋 立の実情 を考 えると,圧送距離が500m
費用 を要 し, また万全には至っていない. これ に対 し, 程度 に到達すれ ば大抵 の圧送需要 には対応で きよ う. 表
灘 業土を無加水で, 自然含水比に近 い状態 で埋 立てた場 一3の現状 をみ ると, 瀕諜 土について ほぼ達成できたもの

合, 埋立時の余水 はそ もそ も発生 しない. の, 処理土 について は必要圧送距離 の半分程度 にとどま


(2)渡諜 土の体積 増加 っている. そ こで, 圧送条件 の改善策 として, 次の よ う
建設発生土等 の減量化 ・減容化 を図るために, 脱水処 な方法が考え られ る.
理 による土質改 良が行われている. 灘 業土の加水処理 は (1)加水処理に よる方 法
現在 の社会的要請 に背 くものである. われ われ は廃 棄物 汎用的な手段であるが最善の方法 とはいえず, 6. (1)a)
処分場 の不足 に直面 してお り, 灘 業土の体積 を膨 らませ で述べ た諸般 の理 由か ら, 積極的 に採用すべ きもので は
るよ うなことが避 けたい. ない.
(3)跡地利用の難 しさ (2)ブースターによる中継
埋 立跡地 の利用 を考 える上で, スラ リー 土砂 を基 に出 圧送 ポンプ2台 による リレー を行 うものであ り, 確実
来上がった埋立地盤 は, 土地 として使 えるには圧密等 に に運搬距離 を伸 ばせ る方法 である. ただ し, 圧送 にかか
よる地盤改 良が必要で あ り, 施工面 ・工程面 での難 しさ る費用はほぼ2倍 と高 くなるな ど, 施工上の必 要に応 じ
がある. これ に対 し, 淡諜 土を 自然含水比 のままで埋 立 た検討 を しなけれ ばな らない.
に用いた場合, 図-1(b)に示 したよ うに跡地の地盤改良条 (3)圧送後のセメン ト混合
件 は明らかに改善 され る. 表-3に 示す よ うに, セメン トを混合す ると粘着力が大
(4)固化弓
鍍 の低 下等 き く増加 し, 圧送条件 は明 らかに不利 になる. そ こで,
近年 国内で, セ メン ト混合処理 して灘 土を埋 立材料 先に無処理 の灘 業土 を先端 まで圧送 し, 打設直前 に混合
として用 いる傾 向が強ま っている. 改良土の強度 は, そ を行 う方法が考え られ る. この場合,
の含水比の2乗 に反比例す ることが, 筆者 ら20)の
研 究に ・湊藻土 とセ メン トスラ リー を別系統 で先端 に送 り, 先
よって明 らかに されてお り, 含 水比が高す ぎる と圧縮強 端で混合, 打設 を行 う
度 が大幅 に低 下す ることにな る. また, 処理 土を用 いて ・濁 集土 とセ メン トスラ リー を一定 の比率 の下で, 同 じ

直接腹付 けや仕切 り堤 を施工す るケース も多 く, この場 圧送管で先端 に送 り, 先端で混合, 打設 を行 う


合 含水比 を如何 に低 く管理す るかは施 工管理上重要 な鍵 方法がある. この うち, 前者 の方法 に関 して, 湊深土 と
となってい る. セメン トス ラリーが別 々に500m以 上送れ るこ とが既 に
b)現 有圧送設備の限界 実証済み で, 先端 の混練設備 も開発 され てい る. したが
図-6に 示 す よ うに, 圧 送 ポ ンプの送 泥圧 力 は最大 って, この方法 は直 ちに実用 できる段階 にある. 一方,
7MPaに 達 するが, 正常運転時には4MPa以 下 となる. 後者 の方法 につ いて, いかに一定 の比率で淡諜 土 とセ メ
また, 湾 曲部等 の変形 を吸収す るための ゴム管 の耐圧 は ン トスラ リー を定量供給す るか, 圧送抵抗 の低減効果 は
3.5MPa程 度に とどまっているので, 正常運 転時 の管 内 十分 に得 られ るかは, 今後 の検討課題 となる.
圧力 は3∼4MPa以 下が妥当である. (4)圧送管の ライニング
表-3に 通常の施工条件お よび実経験の範囲を概略 に示 圧送管 内壁 の材質 を変 え, 摩擦や付着性が小 さく耐磨
した. 明 らか に処理土の圧送条件が悪 く, 実経験 におい 耗 に優れ た材料 を採用す るこ とによって, 圧送抵抗 を減
て250∼300m程 度 が限界であるこ とが分かっている. らす方法であ る.

201
(a)床 掘 ・固化 による置換工 法の概要 図

(1)水中掘削(グラブ凌
洪)
(2)水中掘削完了(断
面検収)

(3)固化処理土の
打設 (4)置換完 了

(b)各施 工工程 の状況

図-16 床掘 固化置換 による地盤改 良工法 の提案

この場 合の課 題 として, 高性能材料 を選び, 土砂の性 砂の調達が困難 にな っている現状 と相侯 って, 砂置換工
状 及び圧力 を変 えなが ら摩擦(又 は粘着力)に よる抵抗 法は極 めて制約 された状況に置 かれ ている. そ こで, 発
を実験 的に把握す ること と, 該 当材料 を どうライ ニング 生灘 土砂 を現地で固化処理 し利用す るこ とによ り, こ
加 工す るかは検討課題 である. の二つの問題 を解決 しようとす る考 え方が あ り得 る. こ
こで提案す る地盤改良工法は, 砂置換 と深層混合処理の
(2)床 掘置換工法への適用 両工法の原理 を兼ねてお り,図一16を用いてその実施工程
建 設発生土 の排 出抑制 を図 る うえで, 工事で残土 を発 を説明す る.
生 させ ないこ と, 発生 した場合 は場 内にお いて転用す る 設定 した置換範囲において, 原地盤 の軟弱土 をグラブ
こ とが最 も有効 であるとされてい る. この よ うな考 え方 灘 にて掘削 を行 う. 淡蝶 土は土運船 に一時的に貯留 し
に基づ き, 筆者 らはここで床掘 ・固化処理 ・置換 による てお く. 土運船は, 専用固化処理船 の作業 能力 を考 えて
地盤改良工法を提案 したい. 3000m3積 み程度のものが適当である.淡諜 土 を積載 した
海上 ・陸上 を問わず, 砂置換 による地盤改 良工法は最 土運船を固化処理船に接舷 し, 凌洪土 は固化処理船に よ
も古 くか ら用い られて きた地盤改良技術で ある. 即 ち, って揚土 ・選別 ・固化 処理 ・水 中打設 され る. 選別工程
軟弱 な地盤 層を掘削 し取 り除いた後, 良質 な砂質土 を使 において土以外 の異物は排除 され る. これ らの過程にお
って埋 め戻 し地盤の支持力 を向上 させ る方法で ある. こ いて固化 処理凌 深土が海 中に落下 ・飛散 しない よ う注意
の場合, 置換対象 とな る軟弱土は, 淡蝶 後 に場外へ搬 出 し, 水 中打設 に伴 う汚濁 発生 を防 ぎ固化処理土の品質確
し適切な方法で処分す る必要があ る. 同時 に, 置換用の 保 が行 われ る. なお, セメン トス ラリーの添 加によって,
砂 を新た に調達 し現場に搬 入して, 適切な方法で埋め戻 元の地山に比べ1割 程度 の体積膨張があ るので注意を要
さなければな らない. また, 地震時の液状化 防止 のため, する.
置換砂の締固め状態について慎重に管理す る必要がある. 表-4に 床掘 固化置換工法 と, 一般 に用い られている各
しか し, 発生淡諜 土砂の処分問題 に加 え, 良質な置換 地盤改 良工法の比較 を示 した. ここで提案す る新 しい地

202
表-4 海底軟弱地盤の地盤改良工法の比較

盤 改良工法には次 の特長が挙げ られ よ う. として, セ メン ト混合処理か ら打設施工 までの工程が


(1)灘 土はほぼ完全に現地で利用 され る. 効率的 に行 える専用作業船 を開発 した. 本報告では,
(2)新たな良質な砂の調達が不要 となる. 淡蝶 土の混合処理の作業工程 を述べ, そ の特徴 を説明
(3)止水性構造 とな り得 る. した.
近年, 廃棄物護岸が数多 く建設 され るが, そ の場合, (3)セ メン ト混合処理 した淡諜 土 を用 いた護岸 腹付け工
護 岸構造物 の止水性が特に要求 され る. 床掘 固化置換工 と仕切 り堤の施工事例 を示 した. 法面形成 を必要 とす
法では構造物全体に止水性 を持 たせ るこ とが比較的容易 る施工では,現場 で含水比 を液性 限界 の1.3倍 以下に,
であ り, 廃棄物護岸への適用が期待 され る. また, 建設 またはせん断強度を1.5kN/m2に 管理す ることが必要
コス トについて, 筆者 らの試算 では, 深層混合処理工法 で ある. 圧送については塑性体 と流体 と しての検討方
に比べて経済的に有利になる結果 を得ている. 法 を明 らか に し, 水中 ・浮泥中の打設 については圧入
なお, 本工法の設計手法がまだ確立 されてい ない. 原 による置換 え打設が有効であ ることを示 した.
理 的には深層混合処理 工法 と同 じく固化 による改良であ (4)灘 土 を自然含水比 のままで埋立できれ ば,余水処理
るが, 実施 に当たって床 掘 りを行 うこ とが前提 とな って な どの必要がな くな り, 総合的に利点が多い. セメ ン
いる. したが って, 現段 階において従来 の砂置換工法に ト混合処理 による有効利用の場合で も, な るべ く加 水
準 じて淡諜 断面 を設定 し, 改良地盤 の強度 については従 処理は避 けたい. しか し, 処理土 の圧送抵抗が大き く
来 の置換砂地盤 と同等またはそれ以上 に設定すれば差 し 長距離 圧送 が難 しいので, 施工上の問題 となってい る.
支 えないであろ う. 今後実用化 に向けて, 設計面, 施工 現状では圧送可能な距離は300m以 下に とどま り, 実
面, 経済面, 環境 面な どにおいて検討課題が多 く残 され 際 よくある500m程 度までの圧 送需要 に応 えられない.
ているが, 将来性のあ る工法 と考 える. 今後, 長 距離圧送 に関す る技術開発 が必要であ る.
床掘固化置換工法は旧運 輸省港湾技術研 究所, 現(独) (5)澱 業土の現 地利用 を図 る地盤改良工法 として,床 掘固
港湾空港技術研究所 と関門港湾建設(株)が 平成12年 に 化置換工法 を提案 した. これは, 軟弱海 底地盤を掘削
共 同出願 した特許工法であるが, まだ施工事例 はない. し, 直 ちにセメ ン ト混合に よる土質改良 を行い海底 に
埋め戻す工法であ る. この工法は, 不用な灘 土の発
生が回避 でき, 良質な置換 砂を必要 としない特長 があ
7. ま と め る.

(1)わ が国の港湾工事 にお ける凌洪 土の発 生 と有効利 用 参考文 献

の現状について述べた. I) (財)土 木 研 究 セ ン タ ー: 建 設 発 生 土 利 用 技 術 マ ニ ュ ア ル

(2)品 質の良い地盤材 料 をよ り安 く提 供す る ことを 目的 (第2版), P.5, 1997.

203
2) (社)日 本港湾 協会: 港湾 の施設 の技術 上の 基準 ・同解説, 粘性 土の非排 水強 度 と正 規化含 水比 の関係, 第34回 地盤

pp.360-361, 1999. 工学研 究発表 会, pp.543-544,1999.


3) 善 見政和, 笹 田 彰, 土 田 孝, 湯 恰新, 宮崎 良彦: セ 14) 鶴屋 広一: 回転 粘度 計に よる底泥 の流 動特性 の検 討, 港

メン ト固化処 理 に よる淡諜 土 の新 しい有 効利 用 法, 第55 研資料, No. 566, I986.

回 土木学会 年次発 表会, VI, pp.467.468, 2000. 15) 富 田幸 雄: 「


水力 学」 流れ現 象の基礎 と構 造, 第10章 非
4) 善 功企: 液 状化 対策 と しての事 前混 合処理 工 法の 開発, ニ ュー
一トン流体 の流れ, 実教 出版(株), pp.261-283,l982.

土 と基礎, 土質工学会, Vb1. 38, No. 6, pp. 27-32, 1990. 16) 宮崎 良彦, 湯 恰新, 落合 英俊, 安福 規之, 大嶺 聖:
5) (財)沿 岸 開発技術 研 究セ ンター: 事前 混合 処理 工法 に よ セ メ ン ト混 合 処理 土 の水 中打 設 強度 と水 中施 工 に伴 う海

る処 理地盤 の設 計 につ い て, pp.12-21,1989. 域へ の影響, 九州大 学工学集 報, 第74巻 第2号, pp.99-IO6,


6) (財)沿 岸 開発技術 研 究セ ンター: 管 中混合 固化 処理工 法 2001.

技術 マニ ュアル, p.127,2001. 17) 湯 恰 新, 宮 崎良彦, 落合英俊, 安福 規之, 大嶺 聖: セ


7) 運輸 省港湾 局技術 課: 凌深 土の リサイ クル技 術 に係 る民 間 メ ン ト混 合処 理土 の水 中打設 にお け る海 水環 境へ の影 響,

技術 評価証, 湊深 軟泥 土 のプ レ ミックス工法,1998. 土木 学会論 文集, No. 708几H-59,pp.211-220,20o2.


8) 宮崎 良彦, 湯 恰新, 酒井能 具, 中園嘉治: 海 上 埋立 にお 18) 土 田 孝, 松下 弘志, 吉原 正博, 輪湖 建雄: 水 中打設 時

けるセ メン ト混合 淡諜 土 の有効利 用事例, 土 木学会 海洋 開 にお け る気 泡混合 処理 土の材料 分離 抵抗性 の評価, 土木 学

発論 文集, 第18巻, pp.71-76,2002. 会論文 集, Nα644/VI46, pp.1-12,2000.


9) 湯 恰新, 宮崎 良彦: セ メン ト混 合渡深 土 の固化 強度 と均 19) 今井 五郎, 早矢 仕雅 弘, 佐藤 幸孝: 高止水性 を 目的 と し

一性 評価, 土 と基礎, 地 盤工学 会, VbL49, No. 5,pp.4-6,2001. た土質 材料 の流動 特性 と水 中不 分離性, 第35回 地盤 工学
10) 湯 恰新, 宮崎 良彦, 落 合英 俊, 安 福規 之, 大嶺 聖: 研究発 表会, pp. 1187-1I88, 2000.
固化 処理 した凌深 土 の固化 強度 に関す る品質評 価, 九州 大 20) 宮崎 良彦, 湯 恰新, 落合 英俊, 安福 規之, 大嶺 聖:

学 工学集報, 第75巻 第1号gpp. 1-8,2002. 固化 処 理 した 渡蝶 土 の一 軸圧 縮 強度 とセ メン ト含 有 量 及


11) 巻渕 正治, 土 田 孝, 橋 本文 男, 湯 恰 新, 浜福 健二: び含水 比 の相 関 関係, 九州大学 工学集 報, 第74巻 第1号,
セ メ ン ト固化処理 した湊深 土に よる護岸 法面 の腹付 け, 第 pp.1-8,2001.
34回 地 盤工 学研 究発表 会, pp.831.832, 1999. 21) 巻渕正 治, 土 田 孝, 山根信 幸, 湯 恰新, 浜福 健二:
12) 善 見政和, 笹 田 彰: 名 古屋 港第 三ポー トアイ ラン ドの セ メン ト固化 処理 した 湊深 土の初 期強 度発 現特性, 第34

遊水 池仕切 り築堤 の施 工, 土木 技術, 第55巻7号, pp.75-80, 回地 盤工学研 究発表 会, pp.829-830,l999.


2000.
13) 土 田 孝, 洪 振舜, 渡 部要 一, 小 川富 美子: 練 り返 し (2002.8. 12受 付)

UTILIZATION OF CEMENT TREATED DREDGED SOIL WITH WORKING SHIP

Yoshihiko MIYAZAKI, Yi Xin TANG, Hidetoshi OCHIAI, Noriyuki YASUFUKU,


Kiyoshi OMINE and Takashi TSUCHIDA

Special working ships, on which cement soil mixing plant and conveying device are pre-installed, have been
deveoped and found practical applications in coastal engineering.Two examples of widening a dyke and building an
embankment inside the reclamation by use of soft dredged soil are presented. Long distance transportation of the
cement treated soil is an urgent problem to be solved. Though the working ships are able to convey cement treated
dredging of natural water content by 250300 m, many projects require a transportation as long as 500 m. Some
improving ideas are discussed. Finally, a ground improvement method by use of the introduced cement treatment
technique is suggested, so as to eliminatethe disposal of dredging.

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