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オレオレ詐欺!

日々、新しい手口の電話による「オレオレ詐欺」事件が発生しています。どれだ
け報道されても、次々と被害者が増えているのです。「自分には関係ない」と思っ
ている人に、突然それは発生します。しかし、内容的にはある法則があります。こ
の詐欺の仕組みを知って、被害を未然に防ぎましょう。これまでは、高齢者の方が
多く狙われていましたが、警察庁よると、被害者で最も多いのは50代の女性で、
次いで40代、60代、70代のいずれも女性です。最近では、30代も被害に遭
っています。
オレオレ詐欺は、午前から午後の早い時間帯(10~14時が多い)に、自宅に
かかってくる電話によるものです。これは、銀行の閉店前その日のうちに、ゆっく
り考える余裕を与えずに振り込みをさせるためと考えられます。つまり、午前から
午後早い時間の日中に、自宅に一人でいる人が被害に遭いやすいのです。その内容
は、孫や息子などを装った人物が「交通事故を起こした」などです。示談金、賠償金、
修理代、妊娠中絶費用など様々な理由で、 「至急、お金を振り込むように」というも
のです。
電話一本で、なぜ大金を振り込んでしまうのか?「電話を受ける」とき、人は受
話器に神経を集中させます。相手の言うことを聞き取ろうという態勢になってい
ます。そこに、 「警察官」「弁護士」などと名乗る(『オレオレ』と言いません)人物
からの衝撃的な内容、 「交通事故を起こした」 「金を払わないと大変なことになる」
「事故の相手が夫婦で、奥さんが妊娠八ヶ月で流産しそうだ」 「車が壊れて、ケガを
して、示談金を」などと、普通の人にとっては、一生に一度起きるか起きないかの
事件や事故を言われ、孫や息子の泣き声を聞かされてしまいます。相手の姿を見て
いないのに、相手の言うことを信じてしまうのは、素直に聞く態勢になっていると
ころに突然飛び込んでくる「相手」 「内容」などが衝撃的なものであるため、気が動
転してしまい、冷静に正常な判断ができなくなってしまうからです。心理学的では
false memory といって、偽の記憶にとらわれてしまうことです。衝撃的な内容に固
まってしまって、その後何を言われても、内容がおかしくても、相手の言うことを
信じてしまう…。しかも、時間的に余裕がなく、すぐにも振り込まないと大変なこ
とになる、と言われて慌ててしまい、考える時間がありません。話の内容にショッ
クを受けているので、おかしいことに気がつかないのです。
また以前からある高齢者が被害に遭う場合、特に1人暮らしで孤独な老人の場
合は、電話が来たことだけで、通常の判断力を失う可能性もあると考えられます。
今、本土(*)に身内が住むお年寄りは周りに多くいる。中には長く音信がない場合もあ
るだろう。住んでいる土地の方言に慣れた子や孫がいる場合、電話越しの声だけでは身
内と他人の混同は容易に起きやすい。 「なぜ簡単にだまされるんだ」と言うのは簡単だが、
こういう時代だからこそ家族は守り合うことが大切ではないだろうか。離れて住む子や
孫には、時には帰って郷里の親や祖母に顔を見せ、しっかり語り掛けてほしいと思う。ま
た、普段から電話でよく話すのもよいだろう。
( 「琉球(沖縄)新報」より )
(*) 本土:本州

だましの手口は日々多様化し、人の情につけ込んだあの手この手で電話口の不安をあ
おります。ここで最近の犯罪傾向や、なりすましの手口の一部を紹介します。これだけと
は限りませんから、不審な電話にくれぐれもご注意ください。
本人を装った人物は、泣きじゃくるなどして会話が困難なふりをし、借金の場合は「拉
致される」「払わないと、何をされるかわからない」などと訴え、不安を増長させる。暴力
団員を装った人物が脅迫まがいのことを言う。近親者のみならず、警察・弁護士・保険会
社などを名乗り、複数人数で交通事故を装い、言葉巧みに演じてだます。本人や家族の詳
細な情報を入手している場合もあり、犯人が本人の携帯電話にかけ続けているため、本
人と家族の連絡が断たれている。具体的に家族の実名を名乗ることもある。金融機関の
営業時間内がほとんどで、一度振込んだ後、さらに振込みを要求してくることがある。
「父や母には内緒にしてほしい」と、孫が祖父母を頼っているように装い、高齢者の心理
を利用するなど様ざまです。
一人暮らしの高齢
急増する被害の現状 者、離婚、単身赴任、進
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学による一人暮らしな
ど、家族の形が急速に
変化する世相を反映し
てか、家族の「きずな」
を利用した「オレオレ
詐欺」は増え続けてい
ます。手口は組織的
で、計画的かつ巧妙に
なり、ほとんどの被害
者が「オレオレ詐欺」に
ついて知っていなが
「オレオレ詐欺」の事件形態 (平成16年1月~6月) ら、だまされてしまう
のも事実です。家族や
地域で「オレオレ詐欺」
を話題にし、家族のコ
ミュニケーションを深
めて、被害にあわない
関係を作って下さい。

( 警察庁ホームページより)

< 被害例その1 > 交通事故の示談金
40才代女性宅への電話 登場人物は警察官役、夫役
警察官 :ご主人が人身事故を起こしました。相手の車の助手席
には妊婦が乗っており、病院に運ばれています。ご主人
に代わります。
夫 :ごめんな、ごめんな(男性の泣き声)
警察官 :示談金400万円を指定の銀行口座に入金して下さ
い。
~ 夫の声であると信用してしまった女性は示談金を振込んでしまう。
その後また電話がある。
警察官 :母体と赤ちゃんに後遺症が残ようです。たいへんなことになりました。
~ 再度、現金を振込む。計700万円をだまし取られた。
< 被害例その2 > 交通事故の示談金
60才代女性宅への電話 登場人物は息子役、保険会社役、車の所有車役
息子: 怖い人の車にぶつけちゃったよ。保険会社の人と代わるよ。
保険会社 :相手の車を今日中に買い替える必要があります。先方は示談でいいと言
ってくれているので、すぐに500万円を支払ってください。今、相手
の車の方に代わりますから
車の所有者 :大変なことをしてくれたな! ○○銀行○○支店○○口座に、大至急振
込んでくれよ!
~ 驚いた女性は、言われるがまま500万円を振込んでしまった。
< 被害例その3 > 借金の返済
会社員宅への電話 妻が対応、登場人物は弁護士役
弁護士 :ご主人には数百万円の借金があります。午後2時までに払わないと大変なこ
とになりますよ
~ 妻が夫の勤務先に電話をするが、その頃、夫には探偵会社を名乗る人物から
作り話の電話が相次いでおり、本人への確認を妨害されていた。妻が指定され
た金額を振込むと、夫への電話もなくなった。しかし、連絡が取れたときには、
現金は引出された後だった。
< 被害例その4 > 妊娠中絶
70才代女性宅への電話 登場人物は孫
孫: おばあちゃん、おれだよ、おれ。彼女を妊娠させちゃったんだ。中絶費用45万円
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が今すぐ必要なんだよ。お願い、助けてよ。振込先は○○○だよ。
~ 孫だと信じた女性は指定された金額を振込むが、
数時間後に孫を名乗る男から再度連絡
孫: 振込みが確認できないよ、もう一度お願い
~ そして女性が再度45万円を振込んだ3日後には、
「彼女が病気になった」と再三にわたり金を無心。結局、
女性は3回、計135万円をだまし取られた。

息子や孫を装って電話をかけ、口座に現金を振り込ませてだまし取る「オレオレ詐
欺」の被害が、一向になくならない。 最近では、高齢者を狙う単純なものばかりでな
い。例えば、事故が起きたとして警察官を名乗る男が、 「加害者側」の家族に電話を
かけてくるケースだ。家族は、主人が事故に遭ったという作り話に動転し、電話の主
を警察官と信じ込む。次に被害者を名乗る男が電話で示談金を要求し、払い込み先を
指定する。家族は相手の言いなりに現金を振り込む。
類似犯罪がなくならないのは、家族心理につけ込んだ犯罪だからだろう。子どもや
孫のことを思わない人はいない。いくつになっても、かわいい。多少の無理でも聞い
てやりたい。
「オレオレ」と親しく言われれば、多くの親は心を許す。犯人には、そんな
強かな計算が働いているに違いない。
しかし一方で、家族の形態は著しく変化している。1人暮らしや単身赴任など家族
が一つでいる機会が少なくなり、結びつきも弱くなっている。離婚も少なくない。そ
れも、つけ込まれる隙と言えないだろうか。犯罪は時代を映す鏡かもしれない。だと
すれば、一連の事件が映すのは、さまざまに変化した現代の家族の姿ということにな
る。家族が犯罪者の標的になる時代の意味をあらためて考え直す必要があるだろう。
( 2004年5月「神戸新聞」より )

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