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UNIVERSITI KUALA LUMPUR

INSTITUTE OF PRODUCT DESIGN AND MANUFACTURING


MALAYSIA-JAPAN HIGHER EDUCATION PROGRAM

UniKL IPROM MJHEP

MECHANICAL ENGINEERING WORKSHOP 1


機械工学実習 1
DEM 3191

JAD 番号

氏名
目次

はじめに ................................................................................................................................... i
履修における注意事項............................................................................................................. ii
レポートに関する注意点 ........................................................................................................ iv
安全に関する注意点 ............................................................................................................. viii
TOPIC 1 仕上げ・ねじ立て・ねじ切り加工...................................................................... 10
TOPIC 2 旋盤加工.............................................................................................................. 17
TOPIC 3 フライス盤と平面研削盤 .................................................................................... 22
TOPIC 4 アナログ回路 ...................................................................................................... 37
TOPIC 5 インターフェース回路 ........................................................................................ 50
はじめに

皆さんはこれまで工学の基礎である数学,物理,化学を,そして機械工学の基礎である
機械力学,熱力学,流体力学,材料力学などを学んできました.その際には,講義を聞き,
さらに演習問題を解いて理解してきました.これを座学(机にむかって座って学ぶこと)
といいます.
これと同様に重要なものは,機械工学に関連する物理現象を実際に体験し,その物理的・
化学的特性を測定すること.すなわち実習することです.そのために,
「機械工学実習」が
設置されています.ここでは,機械工学を構成する分野を材料力学,流体力学,熱力学,
制御力学,機械力学,切削加工工学の6つに分け,それぞれの分野における重要な基礎的
事項を実習を通じて理解します.実習の内容は,皆さんがこれまで受けてきた.あるいは
これから受けるであろう講義の内容の内,非常に重要である.しかしながら講義だけでは
深い理解の得られにくいような問題,さらに皆さんが実習を通じて初めてその面白さに気
付くようなテーマが準備されています.
工学上未知の問題を解決する手法は2つあり,実験的手法と理論的手法です.実験的手
法を駆使するには,充分な経験と訓練が必要です.
「機械工学実習」で準備された課題は.
すでに良く知られた事実を再現するもので,その結果は判っています.しかしながら,こ
こで実験の進め方や測定装置の取り扱い方を学ぶことは.今後実験的研究を行う上で非常
に良い経験となることでしょう.
また,実験装置はもちろん,測定機器も最新の,そして,高度なものを準備しています.
もちろん,単に実習を行っただけでは不十分で,実習で得られた結果とそれに対する実習
者の考えを,実験を行っていない他の人に伝えるために,レポートを作成しなければなら
ず.質の高いレポートを完成させるには,充分なトレーニングが必要です.これも実験に
際して非常に重要な課題です.
実習にはある意味で危険がつきまといますので,担当者の注意を良く聞いて,注意深く
行って下さい.そして,機械工学の真髄にふれ,その面白さを身をもって味わって下さい.
自分自身の目で見,自分自身の頭で考え,その結果新しい発見ができれば,
「機械工学実習」
は大成功です.

i
機械工学実習 1

履修における注意事項
標記について以下にまとめる.熟読の上,履修に際して留意すること.


1. 本科目の目的
(1) 実験技術,機械工作法,自然科学系文書(以下,レポート)作成法およびプレゼン
テーション技術を習得する.
(2) 機械工学の基礎(法則,原理など)を理解する.
(3) 研究者,技術者としての態度や考え方を習得する.

2. 評価
出席および実験/実習実施状況,レポートの提出および内容,さらにプレゼンテーショ
ン(プレゼン)の実施および内容を総合審査し評価する.無断遅刻,無断欠席,レポート
未提出あるいはプレゼン未実施の場合は,単位取得できない恐れがある.レポート,プレ
ゼンの注意点については別紙参照.

3. 出席
全てのテーマをグループ制で実施するので指定時刻までに指定場所に集合する.ただし,
急な病気や事故などの理由で遅刻,欠席する場合は,事前に担当教員に連絡し,指示を受
ける.場合によっては臨時に他の班に編入,あるいは補講実験/実習を受講できる.班分
け,スケジュールは別紙参照.

4. 実験/実習前
(1) 服装・所持品
作業服(作業着.MJHEP ジャケット)を着用する.サンダル履きは厳禁とする.実験/
実習に不適当な服装/靴の場合,受講できないことがある.
テキスト,ノート,筆記具,グラフ用紙,計算機(関数電卓)等,実験/実習に必要なも
のを持参する.
(2) 予習の励行:
当日初めて指導書を読み始めるだけでは深い理解は得られない.前もって装置の取扱い
方法と実験工程を各自が考えておくことが重要である.これは装置を適切に扱えずに危険

ii
な事態に陥ることを防ぐためでもある.
(3) データシートの作成:
実験データを記録するノートを用意し,データシートを作成しておく.後日,同様の実
験を行う場合にデータを確認しやすい体裁とする.

5. 実験/実習中
実験/実習における最重要事項は安全である.詳細は別紙参照.指導書および教員の指
示に従って実験/実習を行う.データの記録には,事前に作成したノート上のデータシー
トを使用する.なおデータのみでなく,実験/実習中に「気づいたこと/考えたこと」は
全てノートに記録する.

6. 実験/実習後
使用した装置を片付け清掃する.現状復帰が基本である.レポートを作成し指定期日ま
でに提出する.ノートに記録した「気付いたこと/考えたこと」の中で適した内容があれ
ばレポートに記載する.

7. その他
指導書の記載事項や教員による諸注意を十分理解し,その通りに行動する.実験/実習
に関して不明な点があれば躊躇(ちゅうちょ)せずに担当教員に尋ねる.

以上

iii
レポートに関する注意点
標記について以下にまとめる.熟読の上,レポート作成時に注意すること.


1. 提出先/〆切 <重要>
a. 必ず〆切(締切,提出期限)までに提出する.レポートの「差し替え」も提出遅れ
であることを理解する.
b. レポートの提出先/〆切は,特に別途指示がなければ,出題の 1 週間後 17:30,JAD
理工系教員室内のレポート提出棚(各教員別)である.期限を過ぎたレポートは受
け付けない.

2. 文字
a. はっきり」
「大きく」
「正確に」
「丁寧に」書く.
b. 文字色は黒のみ.色文字は使わない.
c. 消す場合には,鉛筆なら消しゴムで,ペン書きなら修正液を使って丁寧に消す.塗
りつぶしは問題外.
d. 曖昧な文字は避ける.「x,χ,)(,n,k」「3,8」「4,7,9,y」など.
e. 漢字,ひらがな,カタカナの使い分けに注意する.
f. 誤字脱字,特に PC 日本語入力の誤変換に注意する.
g. 必ず見直す.

3. 体裁
a. A4 用紙,白無地,片面,縦置き,横書き,和文 を用いる.
b. 手書き,印刷は問わない.
c. 綴じるのは左上一カ所.容易に外れないようにする.
d. 日付の YYYY/MM/DD フォーマットに慣れる.日本では「年号」も使う.

4. 記述方法
a. 書き言葉で書く.
b. 「...」「?」は使わない.
c. 「である」調(常体調)を使う.「です」
「ます」調(敬体調)は使わない.
d. 事実(したこと)と意見/見解/予想(考えたこと)を区別する.
e. 読み手に理解されるのに必要十分な内容とする.すなわち論理的な構成とし,読み

iv
手が誤解を生じないよう書く.
f. 問題にある変数記号を勝手に変えない.問題番号自体も同じ.
g. 定量的に表現する.定性的な表現(少し,ちょっと,近く,など)は避ける.
h. 「誤差」を述べる場合には,その量の検討と発生原因についての考察を行う.安易
に「測定誤差」
「偶然誤差」等で済ませない.

5. 数式など
a. 倍数単位の大文字小文字に注意.よく使うのは「k」「M」
b. 単位変換に要注意.実機を製作するとどうなるか考える.
c. 単位系を揃える.
d. 有効数字桁に注意する(ex.3.55×105)

e. 正確に計算する.
f. 括弧の種類に注意する.
(),{},[]など.
g. ベキ乗と係数( cos(2θ) と cos2(θ) など )を区別する.
h. 「×」は,外積以外ではあまり使わない.
i. 変数定義に一貫性を持つ.
j. 分数の線は,必要十分な長さとする.また等号の位置にも注意する.
k. ギリシャ文字は明確に書く.
l. 説明の中で「x 軸」
「y 軸」などを使うならば,まず座標系を定義する.座標系定義
は原点と向きが重要.
m. 考えの流れを示す.数式の羅列はレポートではない.計算過程でも,その思考を文
章で表現する.数式,図のみでは思考が表現されない.
n. 証明終わりの記号は「//」
「Δ」
「■」とする.#などは使わない.

6. 図表
a. 図表には表題(キャプション)と番号を必ずつける.図には下,表には上に書く.
b. グラフの軸には名称と単位を入れる.
c. 図や写真のトリミングは ok だが,縦横が連動しない伸縮は拙く見える.真があれ
ば良いというものではないことに注意する.

7. 図表(特に製図)
a. 第三角法で書く.
b. 尺度は任意には選べない.
c. 太線/細線の違いに注意する.
d. 用紙中央に書く.
e. 枠をつける.

v
f. 寸法を示す数値は実寸が入る.
g. 中心線を忘れない.
h. 寸法の有効桁数に注意.
i. 寸法と中心線の干渉に注意.
j. 文字の大きさに注意.小さすぎると読みにくい.

8. 内容
a. テーマ毎に特に要求されるレポートの内容・形式があれば,各担当教員が都度指示
する.一般に「実験」のレポートには以下の内容を記述する:
<表紙(カバーページ)>
科目名,レポート題名(テーマ名)
,担当教員名,レポート提出日付,レポート作
成者名,同 JAD 番号,実験場所,実験日時,実験の共同実施者名,同 JAD 番号
<本文>
目的,理論(基礎事項),使用した装置・器具,実験方法,結果,考察,参考文献,
演習課題(あれば)
b. 教員名は「氏+先生」とする.氏名のみ,氏のみ,ひらがな書き,アルファベット
書きは NG.
c. 「目的」〜「結果」では,5W1H を明確に表現する.
「目的」
「方法」などは指導
書に示されているが,これをコピーするのではなく,理解した上で自分の言葉で書
くこと.
d. 実験結果は,実験によって何か分かったかを文書で書く.図や表を載せただけでは
不十分である.
e. 実験は班に分けて行うが「考察」は個人で行う.実験結果(事実)を基に考えたこ
とを,理論式・参考文献・JIS 等の数値と比較するなど,論理的に述べる.考える
ためのキーワードは「比較」「仮定」
「理由」「検証」などである.異なるレポート
において同一の考察がなされている場合,減点だけでは済まされない場合も考えら
れる.
f. 「演習課題」では題意を正確に読み,それに対応した解答を記述する.異なるレポ
ートにおいて同一の解答がなされている場合,減点だけでは済まされない場合も考
えられる.
g. レポートの中で参考/引用した部分があれば,文献/誌名,著者,出版/発行者,
巻,号,ページ,発行年などを書く.web であれば URL および検索日を書く.情
報源を特定できることが大切.
「Wiki」とだけ記すのは不十分.
h. レポートの最後尾右端に「以上」と記す.それ以降は全く何も書かない.

vi
9. その他
a. web コンテンツを機械翻訳した文章等をレポートに追加することは,全くの無駄
であるばかりか減点の対象となり得る.十分に注意すること.
b. 他人の文章/レポートのコピーは,減点だけでは済まない場合も考えられる.厳重
に注意すること.
c. MQA の要求により,提出されたレポート(原紙)は全て MJHEP で保管する.必
要に応じて,提出前にコピーを取っておくこと.

以上

vii
安全に関する注意点
標記について以下にまとめる.熟読の上,実験/実習時に留意すること.


1. 服装/靴
袖・裾等が邪魔にならないような作業服(作業着.MJHEP ジャケット)を着用する.実
験室・ワークショップでは,危険なものが落ちていることもあるので,滑らず安全な靴を
使用する.実験・実習中は,足の上に危険なものが落ちることが考えられる.足の怪我を
防ぐためにサンダル履きは厳禁とする.また頭部には作業帽を着用すること.実験/実習
に不適当な服装/靴の場合,受講できないことがある.

2. 実験装置/工作機械の取扱い
実験/実習では普段使用せず慣れていない機器を取扱う.これらの機器を,個人の判断
で勝手に操作してはならない.指導書あるいは付属の取扱い説明書(マニュアル)を熟読
し,その説明に従って適切に操作することが重要である.
使用方法がわからない装置を操作してはならない.間違った操作は怪我や事故の原因と
なる.
装置の動作設定(ex.旋盤送り速度)は,他人に任せず操作直前に自分で行う必要がある.
最適な設定条件は個々に違うことに留意する.
工作機械は特に注意が必要である.工作機械を安全に使用しなければ重大な怪我につな
がることがある.
回転運動を行いながら加工する工作機械では,服や手が巻き込まれると大変危険である.
加工の際には切削時の異常音に注意し,異常音が聞こえたら,すぐに機械を止める必要が
ある.談話したり音楽を聴いたりしながら作業してはならない.
加工の際は切粉(「きりこ」.削られた金属片)や切削油が飛んでくることもある.目を
保護するために安全メガネ(保護メガネ,ゴーグル)を着用する.
加工が終わったら,すぐに機械を止める.切粉はブラシ/ほうきなどで取り除く.切粉
は熱く鋭い.手で取り扱わない.
機器を操作する同じグループのメンバはもちろん,同一室内で別の実験/実習が行って
いる他グループのメンバ等,人と機器との(あるいは人同士の)接触など,事故が起きな
いように特に注意する.
発火や爆発の危険があるので,ライターの実験室,実習室内への持込を禁止する.
溶接実習では,通常の作業状態の服装(第1項参照)に加えて,必要とされる保護具(保
護面,革手袋)を必ず装着する.溶接機器は高電圧大電流を取り扱うので感電には十分注

viii
意する.また機器と共に溶接部材およびスパッタが非常に高温であることに注意する(外
観に惑わされないこと)
.溶接中の光は直視してはならない.溶接中のガス(ヒューム)を
吸い込まないよう注意する.

3. 整理整頓
使用した装置を片付け清掃する.機器(特に工作機械)の電源は必ず切る.切粉は熱い
ので指定場所に捨てる.
装置の動作設定値(ex.旋盤送り速度)が,他の人にとっては危険な設定である場合があ
る.これを含め,整理整頓は現状復帰が基本である.すなわち常に全ての人にとって安全
であるような状態に戻す必要がある.整理整頓を怠ると危険を招く恐れがある.

4. 緊急時の対応
緊急時には,まず各人が危険行為を避け自己の安全を確保することが重要である.次に,
大声で人を呼び周囲の助けを求める.怪我人がいる場合には軽傷であっても担当教員へ必
ず連絡する.
以上

ix
TOPIC 1 仕上げ・ねじ立て・ねじ切り加工

1. 実習目的
ケガキ作業、弓のこ作業、やすり作業、ボール盤の作業、ねじ立て作業を通して、材
料加工として最も基本的な手仕上げ作業方法を学ぶ。作業を通して一般的な金属材料
(炭素鋼、真鍮、アルミニウム合金)に触れることによって、材料による硬さ、加工
性の違いなどを体験する。また、締結用機械要素として重要なねじについて理解する。

2. 実習手法
(1) 基礎知識
① ねじについて
ねじは、円筒の表面に螺旋状の溝を切った「おねじ」丸い穴の内面に溝を切った「め
ねじ」があり、通常この 2 つを組み合わせて一体として使用する。

図 1 おねじとめねじ
ねじには、右ねじ(構造回転が右回り)と左ねじがあるが、一般に右ねじが多く用い
られている。また、溝が 1 本のものを一条ねじ、2 本、3 本のものを二条、三条ねじと
いう(2 本以上のものを総じて多条ねじという)。ねじの隣り合う山と山(もしくは谷と
谷)の距離を「ピッチ」、ねじを一回点させて軸方向に進む距離を「リード」という。な
お、ねじは溝の形状によって主に以下のように分類される。

a. 三角ねじ
最も多く使われるねじで、主に締め付けように用いる。ピッチの単位によってメート
ルねじ、ユニファイねじがあり、ねじ山の角度は 60°である。また同じ外形でピッチの

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細かい「細目ねじ」があり、薄肉のところや気密を保つ必要なところなどに用いられる。
管用ねじも三角ねじの一種であるが、これは肉厚の薄い管に切るための特殊なねじであ
る。なおねじ山の角度は 55°となっている。

b. 角ねじ
ジャッキ、万力(まんりき)やバイスの締め付けなど、力の伝達用として用いられる。

c. 台形ねじ
旋盤など工作機械の送りようねじやプレスなどに用いられる。

d. 鋸歯ねじ
一方方向から大きな力が働くときに用いる。

e. 丸ねじ
電球や口金など、ごみや砂が入ってしまうようなところに用いる。

f. ボールねじ
摩擦が少ないので、精密さかつ滑らかな運動を必要とする機械類の運動用ねじとして
用いられる。

図 2 各種ねじの歯の形状

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② ボール盤
ねじたてを行うにはまず、穴あけ作業を行わなければならない。穴あけ作業に用いる
機械としては旋盤やボール盤があげられるが、工作物や円筒形以外の場合や軽加工の場
合には一般的にボール盤が使用される。ボール盤には以下に示すような種類があり、用
途に応じて使い分けられている。

a. 直立ボール盤 b.卓上ボール盤 c.ラジアルボール盤


図 3 各種ボール盤の外観写真

a. 直立ボール盤
図 3.a に示すボール盤で、ドリルは主軸内のテーパ穴に直接、またはソケットにより
とりうけて回転させ、自動送りまたは手送りにより穴あけを行う。
b. 卓上ボール盤
図 3.b に示す小型直立ボール盤で、普通机上に取り付けられている。
c. ラジアルボール盤
図 3.c に示すボール盤で、直立ボール盤の回転
部が、コラムから水平に突き出た腕にそって移動
することができるようにしたものである。この腕
はコラムにそって上下働く上、コラムの周囲を旋
回することもできるので、工作物をテーブルに取
り付けたままで、主軸の位置を任意に変えて穴あ
けすることができ、大型の工作物の加工に適して
いる。
本実習の穴あけ作業は、卓上ボール盤を用いて
行う。図 2.1.2-4 は卓上ボール盤の 1 列であり、 図 4 卓上ボール盤の構造図
主要部は、ベース、コラム(柱)
、モータ、主軸、

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テーブルおよび送り装置から構成されている。それぞれ構造部の役割は以下に示すとお
りである。
ベースおよびコラム : ボール盤を支える。
プーリーおよびベルト : モータからの動力を主軸に伝達する。
ベルトを上段のプーリーにかけると、ドリル
の回転数が上昇する。
ドリルチャック : ドリルを送るハンドル。
このハンドルを向かって左周りに回すと、ド
リルは下方向に送られる。

③ ねじ立て・ねじ切り工具
工作機械、または手動でねじを切る場合、おねじを切る切削工具としてダイス、めね
じを作成する切削工具としてタップがある。今回の実習ではダイスおよびタップを用い
て手作業でねじ立て、ねじ切りを行う。

a. めねじの加工
手作業でめねじを立てる場合に用いるハンドタップ、機械でナットのめねじを切る場
合に用いるナットタップ、機械でめねじを切れるようにキリコの逃し方を考えたスパイ
ラルタップ、ガンタップがある。一般にタップと言えばハンドタップのことを指し、3
本 1 組になっていてタップ先端の食いつき部の長いほうから「先タップ」、
「中タップ」、
「上げタップ」と言う。呼び M5 以上になると、作業工程上めねじ径が小さくなるとセ
ンタ穴が設けられなくなるため、タップ先端は尖ったものになっている。

b. おねじの加工
手作業で精度を要しない場合には、通常ねじ切りダイスを用いる。これは、ナット(め
ねじ)に切刃(きりは)につけた形をしており、①単体ダイス、②割りダイス、③スプリ
ング形調整ダイスの 3 種類がある。また、おねじの生産数が多い場合には、ねじ転造が
用いられる。この方法は、ねじを切る素材をあらかじめねじの有効軽にほぼ仕上げてお
き、2 個の転造ダイスで圧縮整形するもので生産効率がよく、仕上げ面もきれいになる。

(2) 実習手順
① ケガキ作業
素材に加工する部分を指示する作業で、ペンなどで書き込むではなく、素材自身に傷
を付けて書く作業という。ケガキ作業は加工の最初の工程であり、ケガキ線に従って工
作が進められるので、正確にかつ加工しやすいように行う必要がある。あらかじめ工作
物のケガキ部分にケガキ塗装を塗り、ハイトゲージによりケガキ線を引く。

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② 弓のこ作業
ケガキ線に従って弓のこで材料を切断する。弓のこは弓に切刃が前向きになるように
強く締め付けて、右手で柄を、左手で止めねじ部を握って、刃を材料に直角に当てなが
ら前方に全身を使って押して切る。手前に引くときは力を抜き軽く戻す。刃全体を使う
ように大きな往復運動によって切断する。

③ やすり作業
工作物は万力口金の中央で削る面が平行になるように固定する。仕上げるケガキ線は、
必要以上に突き出さないようにする。
やすりの使い方は、やすりの柄を右手の手のひらにのせ指で包(つつ)むようにして握
り、左手は穂先を手のひらと指でつかむように保持する。やすりがけは、手先だけでな
く全身を使って行い、押すときに力を入れ、引ときは力を抜いて手前に戻すようにする。

せんこう
④ した穴穿孔
ねじ立てを行うときは、まずねじの谷の径に近い穴あけを行うが、この穴を下穴とい
う。下穴をあける場合にはまず、ケガキ線によって表された下穴の中心点をはっきりさ
せるためにポンチマークをつける。これに使用するポンチは先端が円錐状に尖(とが)っ
ており、この先端中心点に当て、ハンマーで軽く打ってマークをつける。
工作物万力に固定し、ドリルの回転数を適正な値に設定した後、所定のドリル刃をド
リルチャックに取り付け、穴あけ作業を開始する。
(ドリルの回転数の設定方法は実習中
に指導する。)
ケガキ線上にドリルの中心を合わせて正しく穴あけを行うには、まずドリルの先端で
小さい皿を削って、ケガキ線との間の偏心を調べる。もし偏心があればポンチかタガネ
でドリルの中心が正しい位置に来るように調整する。再び同心に穴あけができたか否か
を調べてこの操作を繰り返し、同心になったことが確認できたところドリルに送りを与
え穴あけをする。穴あけ作業終了すれば、ドリルを面取り用に取り替え、下穴の面取り
作業を行う。

⑤ ねじ立て・ねじ切り
a. ねじ立て
(ア) まず「先タップ」をハンドルに取り付ける。
(イ) 加工物をバイスでしっかり固定し、大きな物が動かないようにしてタップ
ハンドルにはめたタップを立てる。
(ウ) 目見当で垂直にしてタップハンドルの中心部を握り、上から押すようにし
てまわす。食いつき部が食いたら、ハンドルを両手で回して 2~3 食いつ
かせる。

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(エ) 加工物の平面を基準として、スコヤで垂直を見る。タップが傾いている場
合には、タップをまわしながら傾いている方向と反対の方向へ力を加える。
(オ) タップはキリコの逃しにくい工具であり、作業中にキリコを詰まらせてし
まい、タップがまわらなくなったり折れたりすることも多くある。そこで
鋼材のようにキリコが続いて出るような材質に対しては、タップを半回転
進めては戻すと言う作業を繰り返しながら進める。
(カ) タップ立て終了したら、シャンク部分を左手の指で挟んで支えながら右手
でハンドルを軽く引きかけて逆転し、タップを工作物から抜く。
(キ) 止まり穴に残ったキリコは、エアで突き飛ばして取り除く。

b. ねじ切り
めねじ立ての場合と同様、加工物をしっかりバイスでしっかりくわえ、ダイスハンド
ルにはめたダイスを立てる。但し、ダイスはタップに比べて位置を安定させにくいので、
通常水平が保たれているか注意すること。
(ダイスがずれると、できたねじ山がすべて潰
(つぶ)れる場合がある。

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穴あけ、ねじ切りの手順

3. 実習課題
レポートについて
(1) 目的
(2) 使った工具…ポンチ、ケガキ針、ハンマー、ボール盤、やすり……
(3) 手順
(4) 結果(写真、成功かどうか)
(5) 感想

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TOPIC 2 旋盤加工

1. 実習目的
旋盤の構造の概要を理解し、その操作法を習得し、旋盤作業の基本である外径削り、端
面削り、穴あけ等を通じて、旋盤の汎用性を体験することと更に、加工条件と仕上げ寸法
精度・仕上げ面の粗さとの関係を描く時の寸法や公差の入れ方等を理解することにある。

2. 実習手法
(1) 基礎知識
① 歴史
我国に初めて旋盤を輸入したのは、130 年位前に佐賀藩の鍋島直正がオランダに注文
したものといわれている。当時は旋転校盤とよばれていたが現在では旋盤となっている。

② 汎用性
旋盤は工作機械(machine tool)のうちで最も多く用いられており、その種類も多様
である。単に旋盤とは普通旋盤(engine lathe)のことをいい、図 2.2.2-1 に示す如く作
業領域の広い汎用機である。

図 5 旋盤の作業領域

従って、機械部品を設計する場合には、できるだけ旋盤で加工できる様に心掛けた方
が、精度・工数の点からも有利である。

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③ 旋盤の基本作業
図で分かる通り次の 3 つである。
a. 工作物(work)を一定位置で適当な回転数で回転させる装置↺( )
b. バイト(bit)を軸方向に移動させる送り装置➪( )
c. バイトに切り込みを与える装置(→)
(2) 旋盤の構造
① 主要部の名称
a. 主軸台(Head stock)
工作物に回転を与える主軸(spindle)と主軸の回転数を変換する装置を内蔵する。
b. 心押し台
工作物の回転軸を規正するセンターあるいは穴あけ用ドリルなどを固定する。
c. 往復台
バイトに縦送り(軸方向)を与える装置と、
刃物を固定する刃物台に縦送り横送りを与え
る装置を有している。
② 旋盤の大きさ
d1=ベッド上の振り(swing)
d2=往復台上の振り
l1=両センター間の最大距離
l2=ベッドの長さ

(3) 実習手順
① 工作物の支持方法
a. 両センター支持

b. 一端チャック他端センター支持 図 6 旋盤の構造
c. チャック支持
② バイトの固定
刃先と工作物の回転軸を同じ高さにすること。
③ 切削諸元
切削測定 v [m/min] ν=πdn/1000
工作物の d [mm]
主軸回転 n [rpm]
バイトにハイスを用いる場合の適切切削速度は、工作物が鉄鋼(軟鋼、中硬鋼)の場
合には 40mm/min 程度である、
超硬チップ(コーティング含む)を用いる場合は、他の諸元により変わるが、100~
400m/min と広範囲で選択することが出来きる。

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(4) 注意事項
① 作業の前の点検、準備
a. 各運動部分が滑らかに動くかどうか点検する。
b. 始動スイッチを入れ主軸の回転、自動送り装置の異常の有無を点検する。
c. ブレーキ操作を点検する。
d. 必要な工具類、測定器具などは、工具机上に揃えて置く。

② 作業時の安全
a. チャックへの工作物の取付け、刃物台へのバイトの取付けは確実にする。
b. 共同作業者の安全を確かめて合図してから始動スイッチを入れる。
c. 切削中は機械から離れない。止むを得ず離れる時は必ず機械を停める。
d. 寸法測定・バイト交換・切紛清除等の場合は電源を切る、又は、ギヤーを
ニュートラル状態にして作業する。
e. 切紛には素手で触れない。
f. 異音などの異常が発生したら、すぐ機械を停止し、バイトを逃がす。
g. 機械操作時は手袋の使用を厳禁とする。

③ 作業終了時の手入れ
a. 電源のスイッチを切る。
b. 旋盤上にある切紛を丁寧に切紛受にはらい落とし、所定の場所に集める。
c. 使用した工具類・測定器具などは丁寧にふいて点検し、所定の場所に格納する。
d. ベッドのすべり面を重点にマシン油をうすく塗り、心押し台を右端に固定する。
e. 旋盤の周囲の床を清掃する。

19
3. 実習課題
(1) 主軸の回転数 1000r. p.m. ,被削材の外径  80 で,外径切削を行う場合,このとき
の切削速度はいくらか。

(2)  60 の 軟 鋼 を , 切 削 速 度 200m / min 程 度 で 切 削 し た い 。 こ の と き の 旋 盤 主


軸の回転数を求めよ。

(3) バイトジャックの選定

WH 2 Pl 3
P l   max 
6 (1) 3EI (2)

上式(1)と(2)から を求めよ。ただし,

  100[kg / mm2 ], W  10[mm], H  10[mm], E  20000[kg / mm2 ]


WH 3
l  10[mm], I  。
12

(4) 通常は先のたわみ量  は 0.02[mm] 以下であるから、 l の長さはいくらにすれば良


いか。

20
21
TOPIC 3 フライス盤と平面研削盤

1. 実習目的
主要な工作機械であるフライス盤(Milling Machine)と平面研削盤に関して加工原理を学
び,実際に加工を行う.実習目的の詳細は以下の通りである.
 実際に切削・研削を行うことにより切削・研削理論を理解する.
 各種加工法を経験することで切削に関する知識・経験を体得する.

2. 実習手法
(1) 基礎知識
① 切削加工とは...
金属を刃物を用いて切り屑を出しながら所定の形状に加工する方法を「切削加工」と
言う.切削加工は刃物の種類や加工方法によって数多くに分かれる.

図 7 切削加工の例

22
② フライス盤とは...
円筒の外周や端面に多数の切れ刃をもつ切削工具をフライスといい,このフライスを
用いて平面や溝などを切削する工作機械をフライス盤という.その形状,目的により次
のように分類される.

図 8 フライス盤の種類概要図

③ フライス盤の種類

 ひざ形フライス盤
ひざ形フライス盤は,フライス盤のうちで最も一般的なもので,コラムに沿って上下
するニー(ひざ)を持ち,テーブルはニーの上にサドルを介して乗り,前後左右に運動す
る構造を持つ.横フライス,立フライス,万能フライス盤の3種類がある.

図 9 横フライス盤と立てフライス盤

 万能フライス盤
万能フライス盤は主軸頭(ヘッド)を取り替えることにより横フライス盤の機能と立フ
ライス盤の機能を併せ持ったものである.JAD でも1台所有しているので違いを見比べ
ること.

23
※ひざ形フライスの大きさの表し方はテーブルの大きさ,テーブルの移動距離,および
主軸中心線からテーブル面までの最大距離などで表す.一般的には呼び番号で表すこと
が多い.
表 1 ひざ形フライス盤の呼び番号と移動距離
呼び テーブルの移動距離の標準 [mm]
種別
番号 左 右 前 後 上 下

0番 万能 450~550 150 300
立て
横 200 400
1番 万能 550~700 175 400
立て 200 300
横 250 400
2番 万能 700~850 225 400
立て 250 300
横 300 450
3番 万能 850~1050 275 450
立て 300 350
横 325 450
4番 万能 1050 以上 300 450
立て 350 400

 ベッド形フライス盤
剛性を大きくするためにテーブルを直接ベッドに載せ,切込み運動をコラム又は主軸
頭で行う構造のフライス盤.生産フライス盤に多い.
※ 生産フライス盤:生産性を高めるため単純化され自動化されたもの.

 平削り形フライス盤、特殊フライス盤
平削り形フライス盤は平削り盤の刃物台の代わりにフライスを取り付ける主軸を備え
たものでプラノミラーと呼ばれる.
特殊フライス盤にはネジ専用のねじフライス盤や,ならい装置を備えたならいフライ
ス盤がある.

24
図 10 プラノミラ

④ フライス盤の刃物と加工の種類
フライス盤による加工には次のような種類がある.

図 11 フライス盤の刃物と加工

25
 上向き削りと下向き削り
平フライスのような外周で切削する加工では,図 12 に示すようにフライスの回転と送
り方向が逆の場合と同一の場合が存在する.前者を上向き削り(アップカット)
,後者を
下向き削り(ダウンカット)と言う.

図 12 上向き削りと下向き削り

 上向き削りと下向き削りの特徴
上向き削りの長所は.
..
・ 切り屑が切れ刃の邪魔をしない.
・ フライスの回転方向と送りの方向が反対であるので,テーブル駆動系のバックラッ
シュが自然に除かれる.
・ 工作物がフライスに食い込まない.

上向き削りの短所は.
..
・ 切れ刃が工作物を上方に持ち上げるように作用するので,工作物を強固に固定しな
ければならない.
・ 切れ刃が工作物に接触してから,しばらくの間工作物の表面をすべり,接触圧力の
増大につれて初めて切り込むので,フライスの磨耗を早める
・ 切り込みの初めに生じるすべり作用のため,フライス盤のアーバがたわみ,びびり
が生じやすい.

下向き削りの長所は.
..
・ 切れ刃が工作物を下へ押さえるように作用するので,工作物の取付けが簡易でも良
くなる.
・ 切り込みの位置がいつも一様ですべりが無い.従ってフライスの磨耗も少なく,動
力の消費も少ない.

26
下向き削りの短所は.
..
・ テーブル送りねじの間にバックラッシュがあると,工作物がその文余計に送られる
ため,フライスや工作物を損傷することがある.そのため,バックラッシュ除去装
置を必要とする.

⑤ 切削条件
加工を行う際,どのように加工を行うか決める必要がある.これを切削条件と呼ぶ.
フライス盤の切削条件は次のようなものがある.

・切削速度(m/min)
・送り速度(mm/min)
・送り量(mm/刃)
・切込み深さ(mm)
・切込み幅(mm)
・食い付き角と離脱角
・上向き削りと下向き削り
・切削剤

切削条件は切削工具の材種、被削材の材質、切削工具と被削材の取り付け方法、機械
の能力、作業者の習熟度等によって決まる。上記のうち切削速度,送り速度,切り込み
は,能率的な(効率の高い)加工をするために,可能な限り大きくする.

1) 切削速度
表 2 に一般的な切削速度を示す.これは刃先先端の速度であり,フライスの回転数は
次式で求められる.
1000V
N 
D (1)

V :切削速度[m/min]
D :フライスの直径[mm]
N :フライスの回転数[rpm]

27
表 2 フライスの一般的な切削速度
工作物材料 高速度鋼 超硬合金 超硬合金 工作物材料 高速度鋼 超硬合金 超硬合金

(荒) (仕上げ) (荒) (仕上げ)

鋳鉄(軟) 32 50~60 120~150 黄銅(軟) 60 240 180

鋳鉄(硬) 24 30~60 75~100 黄銅(硬) 50 150 300

可鍛鋳鉄 24 30~75 50~100 青銅 50 75~150 150~240

鋼(軟) 27 50~75 150 銅 50 150~240 240~300

鋼(硬) 15 25 30 エボナイト 60 240 450


アルミニウム 150 95~300 300~ ファイバ 40 140 200

1200

2) 送り速度
テーブルの送り速度は 1 刃あたりの送り Sz を基準に次式から求める.

Vf  Sz  Z  N (2)

Vf:テーブルの送り速度[mm/min]
Sz:1刃あたりの送り[mm]
Z:フライスの刃数

表 3 に1刃当たりの送りの標準値を示す.これは荒切削に用いる値であり,仕上げ切
削の時は更に送りを小さくする.しかし,0.03mm 以下の送りはフライスの磨耗を早める
だけであまり効果はない.

28
表 3 フライス 1 刃あたりの送りの標準値(一部)
(単位 mm)
正面 溝/側 総形
平フライス エンドミル メタルソー
被削材 フライス フライス フライス

H C H C H C H C H C H C

抗張力
炭 0.30 0.40 0.25 0.32 0.18 0.23 0.15 0.20 0.10 0.13 0.08 0.10
50kgf/mm 以下

50~70 0.25 0.35 0.20 0.28 0.15 0.20 0.13 0.18 0.08 0.10 0.08 0.10

70~100 0.20 0.30 0.15 0.24 0.12 0.17 0.10 0.16 0.04 0.07 0.06 0.08

合 80 以下 0.20 0.35 0.18 0.28 0.13 0.20 0.10 0.18 0.08 0.10 0.05 0.10

80 以上 0.15 0.30 0.13 0.25 0.10 0.18 0.08 0.15 0.05 0.10 0.05 0.08

ステンレス鋼 0.15 0.25 0.13 0.20 0.10 0.15 0.08 0.13 0.05 0.08 0.05 0.08

鋳鉄,可鍛鋳鉄 0.30 0.35 0.25 0.28 0.18 0.20 0.15 0.18 0.10 0.13 0.18 0.10

HB200 まで 0.40 0.50 0.32 0.40 0.23 0.30 0.20 0.25 0.13 0.15 0.10 0.13

HB250 まで 0.32 0.40 0.25 0.32 0.18 0.25 0.18 0.20 0.10 0.13 0.08 0.10

Hb250 以上 0.28 0.30 0.20 0.25 0.15 0.18 0.15 0.15 0.08 0.10 0.08 0.08

H:高速度鋼 C:超硬合金

3) 切り込み
切り込み(深さ)は,機械の動力,工作物の材質,送り速度及び刃物の形状などによっ
て制約される.表 4 にフライスの種類と切り込みの目安を示す.

表 4 フライスの種類と切り込みの目安 (単位 mm)


正面 エンドミル
平フライス 側フライス エンドミル メタルソー 仕上げ
フライス (小径)

0.05D 3~5 0.2D 5~10 1D 0.05D 0.3~0.5

D:フライスの直径

29
(2) 実習手順

第一週:加工条件の計算
本実習では,6mm エンドミル,12mm エンドミル,25mm エンドミル,50mm 正面フ
ライスの 4 種類の工具を用いる.表 1 と表 2 を使って,下記の条件を計算すること.

表 5 実習で使用する工具の加工条件
工具種類 直径[mm] 材質 刃数 回転数[rpm] 送り速度
6 高速度鋼 4
エンドミル 12 高速度鋼 4
25 高速度鋼 4
正面フライス 50 超硬合金 4
素材:FC50(推定)
※表 2 では「鋳鉄(軟)
」,表 3 では「HB200 まで」の値を使うこと

 6 面出し
本実習ではまず直角6面体の切削を行う.通常,買ってきたばかりの材料は,大体 6
面体になっている(粗方6面体と言う)が,各面の平行,直角は保障できない.これを削
って正確な6面体にすることを「6面出し」と言う.
(面を削って求める形状にすることを「面を出す」と言う)
120mm×100mm×50mm を1個,100mm×50mm×35mm を1個作ること.

注意:これより先の作業は必ずジャケット及びゴーグルを着用すること.

30
31
第一週:加工条件の計算

第1週目で削ったブロックを付属資料を元に
削る.
使用刃物は以下の通りとする.

φ80mm 4枚刃 正面フライス


φ25mm 4枚刃 エンドミル
φ12mm 4枚刃 エンドミル
φ6mm 2枚刃 エンドミル

切削時の注意
前回と違い,寸法を測定する必要がある.測定の時には必ずスイッチをきること.
細い工具を用いる場合は切り込みを小さくすること.

段取り
図面を見て,どの工具で,どこを,どの順番に,削るかを考える.これを「段取り」と
言う.フライス盤の加工ではこの「段取り」で始まるといわれるほど,準備が大切であ
る.段取りが良い加工を行えば早く,精度の高いものができる.逆に段取りが悪いと時
間がかかり精度の悪いものしかできない.

段取りを良くするコツはたくさんあるが,
・ 加工しない時間を短くする
・ 工具の交換を少なくする
・ ゼロ点設定の回数を少なくする
ことが大切である.

寸法公差
図面の中で, という寸法がある.これは「この部分が 20mm より 0.2mm までは大きく
ても許される,20mm より小さいことは許されない」という意味である.同じように, の
場合は「この部分が 20mm より大きいことは許されないが,0.2mm までは小さくても許
される」と言うことになる.このような許容される最大値と最小値の差を寸法公差と呼
ぶ.

32
面取り
面取りとは,部品の角部を削り角面や丸面な
どの形状に加工することである.図の中に
「C1」と言う部分があるが右のような意味で
ある.直角以外の角度で平面を削る方法はい
くつかある.
一つは回転式バイスを使う方法.回転式バイ
スとは,テーブルに対してバイスの角度を変
更できるようになっているバイスのことで,
任意の角度で固定できる.
もう一つが V ブロックを使う方法で,今回は
これを用いて,コーナーの切削を行う.
※通常の切削に比べて,固定をしっかり確
認すること!!

手順
0 サイズ計測
1 Part1 罫書き
2 Part1 穴あけ
3 Part1 下側エンドミル加工
4 Part2 エンドミル加工
5 Part1 上側エンドミル加工
6 Part1 上側正面フライス加工
7 Part1 ねじ切り

3. 実習課題
(1) レポート
レポートは分かったこと,経験したことを報告するものです.そのため,以下の内容が
分かるようなレポートを書いてください.
使った機械・工具
使った材料
行った作業
結果・考察
本実習の考察のポイントは
「どうすればよい段取りになるか」
「作ったものの精度はどうであったか」 です.

33
(2) 参考資料
① Part 1

34
② Part 2

35
③ Part 3

36
TOPIC 4 アナログ回路

1. 実習目的
(1) 抵抗
実験室における電子機器の基本的な要素,装置の操作方法を知り,理解する.

(2) ダイオード
① 整流特性(シリコンダイオード)
PN 接合半導体素子の順方向,逆方向の電圧電流特性を調べる.
② ツェナー効果(ツェナーダイオード)
PN 接合素子の逆方向の電圧を増加させたとき,ある電圧になると電流が急増するツェ
ナー現象を確認する.

(3) オペアンプの特性実験
オペアンプを用いて回路を製作することを通して,オペアンプの基本的な特性を理解
する.

2. 実習手法
(1) 抵抗実習手法
① 使用機器
 抵抗:330, 680, 3K, 5.1K, 10K, 15K, 30K, 100K
 マルチテスター

② 緒言
実験室を使用する際,ある独自の要素,装置を知る必要がある.

③ 抵抗に関する基礎知識
抵抗は,さまざまな実験に使用され,種類や形,大きさも多様である.また一般的に
サイズが大きくなると,ワット数の割合が大きくなる.そのため,抵抗を使用する前に,
カラーコードにより抵抗の値を正確に知ることが重要である.

37
A:抵抗のカラーコード

図 13 抵抗のカラーコード

表 6 抵抗のカラーコード
色 第1帯 第2帯 乗数 許容誤差
0
黒 0 ×10
茶 1 1 ×101
赤 2 2 ×102
橙 3 3 ×103
黄 4 4 ×104
緑 5 5 ×105
青 6 6 ×106
青紫 7 7 ×107
灰 8 8 ×108
白 9 9 ×109
金 ×10-1 5%
-2
銀 ×10 10%
無 20%

アナログマルチメータ
どの実験室にも異なる計測機器を備えている.しかしながら,基本的な計測機器は共
通であるが,製造元が異なることで仕様も異なる.
アナログマルチメータは,電圧,直流電流,抵抗を計測することが可能である.

38
B:アナログマルチメータ/マルチテスター

表 7 マルチメーターの機能
使用していない時は,マルチメーターの電池の消耗を防ぐ
ために回転式のスイッチを必ず OFF にする.スイッチを替
Function/Range Switch
えることで希望の機能(電流,電圧,抵抗を測定する機能)
を選択可能.
Ohms Adjust 抵抗を測定するため,オフセット調節(0[Ω]に針を合わす).
COM コモン,負の入力.
正の入力,電圧,抵抗,電流[mA]を測定する際,このプラ
VΩA
グを使う.
抵抗を測定する際,非線形のスケールを使用する.通常 DC
Scales
電圧には,線形のスケールを使用する.

Part A
抵抗のカラーコード
表 1 を用いて,配られた 7 本の抵抗の値,許容誤差を表 2 に書く.

・ 抵抗のカラーコードが「赤,黄,橙,金」の順番である場合,
第 1 数字=2(赤) 第 2 数字=4(黄色)
乗数= ×103(橙) 許容誤差=5%(金)

つまり,抵抗の値は 24×103[Ω]=24000[Ω]=24[kΩ]±5%

表 8 結果
抵抗
1 2 3 4 5 6 7 8
第1帯
第2帯
第3帯
第4帯
理論値 Ω
許容誤差 %

39
④ 課題 1
表 9 の空欄を埋めなさい.

表 9 課題 1
抵抗値 第1帯 第2帯 第3帯 第4帯
緑 青 茶 金
1K, 5%
橙 橙 黄 金
1M, 5%

Part B
アナログマルチメータ/マルチテスターを用いた抵抗の測定
1. 抵抗のレンジにするため,Range Switch を替える.
2. 表 2.4.2-1 を用いてカラーコードから読み取った抵抗値を参考にして,メータの適
当なスケールを選択する.次に試験導線と一緒に端子をショートさせることでメー
ターを 0 にし,針が 0 で合うように調節する.そして,抵抗の値を測定し,表 2.4.3-5
に書く.
3. 他の抵抗でも 2 と同じ作業を繰り返す.なお,メータのレンジを替えるに度に,
メータを 0 に設定する必要がある

・ 次の式を用いて、表 10 の抵抗の誤差[%]を計算しなさい。

カラーコードから読み取った抵抗値  計算値
誤差   100%
カラーコードから読み取った抵抗値

表 10 抵抗のカラーコード
抵抗
1 2 3 4 5 6 7
第1帯
第2帯
第3帯
第4帯
理論値 Ω
許容誤差 %
計測値 Ω
誤差 %

40
⑤ 考察 1
抵抗のカラーコードから読みとった抵抗値と計測値になぜ誤差が生じるか考察せよ.

(2) ダイオード実習手法
① ダイオードとダイオードブリッジに関する基礎知識

ダイオード
せいりゅう
1. ダイオード(英:Diode)は整 流 作用(電流を一定方向にしか流さない作用)を持つ電
子素子である.
2. ダイオードの電子回路図上表記

図 14 ダイオードの電子回路記号(上)とダイオードの種類(下)

3. ダイオードは,アノード(陽極(ようきょく))およびカソード(陰極(いんきょ
く))の 2 つの端子(たんし)を持ち(この用語は真空管から来ている),電流
を一方向にしか流さない.すなわち,アノードからカソードへは電流を流
すが,カソードからアノードへはほとんど流さない.このような作用を整
流作用(Rectifier)という.

4. 半導体ダイオードの動作について,基本的な PN 接合ダイオードを例に取
って簡単にその特性を述べる.
-PN 接合(せつごう)ダイオードは,n 型(がた)半導体と p 型半導体が滑ら
かに繋(つな)がった(接合された)構造(こうぞう)をしている.PN 接合部で

41
はお互いの電子と正孔(せいこう)が打ち消し合い,これら多数キャリアの
不足した空乏層(くうぼうそう)が形成される.この空乏層内は,n 型側は
正に帯電(たいでん)し,p 型側は負に帯電している.このため内部に電界
が発生し,空乏層の両端では,電位差(拡散電位)を生じる.ただし,それ
と釣り合うように内部でキャリアが再結合しようとするので,この状態で
は両端の電圧は 0 である.

図 15 PN 接合ダイオードの構造

ダイオード・ブリッジ(Full Wave Rectification)


1. 交流電圧を直流電圧にするために整流用ダイオードを使用しようしたものである.
2. 1 つのダイオードでは半波(はんぱ)整流(せいりゅう)(プラスとマイナスの交互に変
化する電圧のプラス側,またはマイナス側のどちらかだけを使う)しかできないが,
ダイオードを 4 個組み合わせると全波(ぜんぱ)整流(せいりゅう)を行うことができ
る.

42
図 16 4 個を組み合わせてあるものがダイオード・ブリッジ

図 17 Diode Bridge

② 整流特性(シリコンダイオード)
a. 使用機器
半導体素子実験装置(KSC-3N)

b. 実験手順
(1) 図 18 のように電源接続ターミナルに DC 安定化電源出力を結線し,電圧計,電流
計を記号にしたがって接続する.
(2) DC 安定化電源の出力を変化した時の順方向電圧/電流特性を測定する.
(3) 電圧計,電流計およびシリコンダイオードを図 2.4.2-7 のように逆接続し,同様に
逆方向電圧/電流特性を測定する(電圧計は 10[V],電流計は 100[μA]を使用).

図 18 シリコンダイオード電圧電流特性(左:順方向,右:逆方向電圧)

43
c. 結果の整理
(1) 表 11,表 12 のような電圧と電流の関係を表にし,グラフを描く(グラフを描いた
際,縦軸,横軸が何を表しているか,また単位を表記すること).

表 11 シリコンダイオード(順方向電圧)

電圧[V] 0 0.05 0.10 0.15 0.20 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.78

電流[mA]

表 12 シリコンダイオード(逆方向電圧)

電圧[V] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0

電流[mA]

d. 考察 2-1
シリコンダイオードの整流作用(電流を一方向にしか流さない作用)とはどういうもの
か.実験結果に基づいて説明せよ.

③ ツェナー効果(ツェナーダイオード)
a. 使用機器
半導体素子実験装置(KSC-3N)

b. 実験手順
(1) 図 19 のように電源接続ターミナルに DC 安定化電源出力を結線し,電圧計,電流
計を記号にしたがって接続する.
(2) DC 安定化電源の出力を変化したときの逆方向/電流特性を側定する.

図 19 ツェナーダイオード電圧電流特性

44
c. 結果の整理
(1) 表 2.4.2-8 のような電圧と電流の関係を表にし,グラフを描く(グラフを描いた際,
縦軸,横軸が何を表しているか,また単位を表記すること)
(2) 実験 1 のシリコンダイオードとツェナーダイオードの電圧電流特性の違いがわか
るようなグラフを描く.

d. 考察 2-2
・ ツェナーダイオードのツェナー現象とはどういうものか実験結果に基づいて説明
せよ.
・ シリコンダイオードとツェナーダイオードの特性の違いを考察せよ.

(3) オペアンプ特性実験実習手法
OP アンプとは
(1) OP アンプは本来「アナログ・コンピュータ」の基本素子として考案されたもので,
アナログ信号の演算ができる増幅器という意味から”Operational Amplifier”と名
付けられた。
(2) OP アンプは,通常 2 つの入力端子,1 つの出力端子,および正負両電源端子をも
った差動増幅回路で,下図のように図示される.

図 20 OP アンプ

はんてんにゅうりょく た ん し
(3) マイナス記号が付いた端子は反 転 入 力 端子(Inverting input)と呼ばれ,入力され

た信号と出力される信号の極性が正反対(位相差-180 度)であることを意味する.
ひにゅうりょく た ん し
(4) プラス記号が付いた端子は 非 入 力 端子(Non-inverting input)と呼ばれ,入力され

た信号と出力される信号の極性が等しい(位相差 0 度)ことを意味する.また,回路
図に書くときは電源端子を省略するのが一般的である.

45
OP アンプの特性は以下の通りである.
a. 入力インピーダンスが無限大
b. 出力インピーダンスがゼロ
c. 電圧利得が無限大

反転増幅回路 Inverting Amplifier

図 21 反転増幅回路

(1) 反転増幅回路は上図に示されるように,反転入力端子(-)に抵抗 Rs を接続して入力


を加え,非反転入力端子(+)をアースする.そして「フィードバック抵抗 Rf」によ
ふ きかん
って出力より反転入力端子(-)に負帰還をかける.

(2) 増幅については,OP アンプ自体の入力インピーダンスが非常に大きいことから


OP アンプに電流はほとんど流れ込まない.このことから電流 Is は「フィードバッ
ク抵抗 Rf」に流れるため,

I f  Is

したがって
Vi  Vn Vn  V0
Is  
Rs Rf
が成り立つ.
また、OP アンプは作動増幅器なので、

V0  A0 /(V p  Vn )

V0:Output,A0:Gain,Vp:Voltage between non-inverting terminal and ground,


Vn:Voltage between inverting and ground
V0
Vn  V p 
A0

46
OP アンプの開ループ電圧利得 A0 は無限大に近いので

Vn  V p

この状態をイマジナルショートという。この場合 Vp=0 から Vn=0 などでヴァーチャル


か そうせ っち
グランド(仮想接地)ともいう。Vn=0 を代入して
Rf
V0    Vi
Rs
反転増幅回路の電圧利得は
Rf
Av  
Rs
となる.負の符号は位相(極性)が反転することを示している。
Rf
要点 : V0    Vi
Rs
上記の式をしっかり理解し、実験せよ。

① 使用機器
・ 演算増幅回路実習装置(OPA-20)
・ テスター

② 実験手順
(1) テスターを用いて入力電圧 Vi を 2.0[V]に設定する.
(2) 図 1 に基づいて,演算増幅回路実習装置の配線を接続する.
(3) 可変抵抗の値を設定する(最初は,2.0[kΩ]に設定).
(4) 出力電圧を測定できるようにテスターを接続する.
(5) 演算増幅回路実習装置の電源をオンにする.
(6) 出力電圧を測定し,演算増幅回路実習装置の電源をオフにする.
(7) 可変抵抗 20[kΩ]を測定し終わるまで(3)~(6)の順序を繰り返し行う.
(8) 図 22 のような反転増幅回路の理論式(式 1)を計算し,実験値との比較を行う.

47
図 22 反転増幅回路

③ 結果の整理
表 13 のような可変抵抗の値を変化させた際の出力電圧と理論値の関係を表にし,グラ
フを描く(グラフを描く際,縦軸,横軸が何を表しているか,また単位を表記すること).
表 13 反転増幅回路特性
可変抵抗 Rs kΩ 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0 17.0 18.0 19.0 20.0

出力電圧 Vo V

理論値 V

④ 考察 3
 実験結果に基づいて,オペアンプの反転増幅特性について考察せよ.
 実験値と理論値で異なる理由を考察せよ.

図 23 配線図例

48
図 24 入力電圧測定時

3. 実習課題
※ 本実験はダイオード実験(2 種類),OP アンプ実験に分かれているため,実験手法内に
併せて記載.

49
TOPIC 5 インターフェース回路

1. 実習目的
PIC と 7 セグ LED からなる表示回路にロータリーエンコーダ及び PSD を用いた距離セン
サからの入力を接続し,信号処理する回路を作る.実習目的の詳細は以下の通りである.
・ 電子回路を製作する技術を身につける.
・ PSD の仕組み、A/D 変換について理解する.
・ ロータリーエンコーダの仕組みを理解する.
・ (EXTRA) PIC プログラミングを経験する.

2. 実習手法
(1) 使用機材
オシロスコープ,マルチメータ,半田ごてなど

(2) 実習手順
① 距離センサに出力の計測
(1) 距離センサの Vcc 端子に 5V,Gnd 端子をグランドに接続する.
(2) Vo 端子をオシロスコープに接続する.
(3) 出力電圧と対象物までの距離との関係を大まかに測定する.

② ロータリエンコーダの出力計測
(1) 電源の 5V 端子に抵抗 10kΩを介してロータリーエンコーダを接続する.
(2) オシロスコープをグランドとロータリーエンコーダの間に接続する.
(3) ロータリーエンコーダを手で回し,A 相,B 相の出力波形を確認する.軸の回転方
向と各相の前後関係,各相の出力電圧を測定する.

※ どちらのセンサもどの端子をどこにつなぐかは添付したスペックシート
(Datasheet)および回路図(p.4)を見て自分で決めること.

③ 回路作成
配布された部品の種類と数を確認する.
次に回路図(p.4)に従って各部品と配線のレイアウトを考えて決定する.
レイアウト図に従って製作する.
ユニバーサル基板なので配線作業に時間がかかることに注意する.

50
④ 完成したロータリエンコーダ回路の作動確認
ロータリーエンコーダ用 PIC を IC ソケットに差し込む
回路の電源スイッチを入れる
ロータリースイッチを回すと LED の数値が変わることを確認する。

⑤ 完成した距離センサ回路の動作確認
A/D 変換用 PIC を IC ソケットに差し込む
回路の電源スイッチを入れる.7 セグ LED に ‘8’が表示された後,数字が表示
されるセンサの前にモノを置き,動かすと数値が変わることを確認する.

⑥ 基準電圧の修正
A/D 変換の際に基準となる電圧は AN3 端子に入力されている.これを可変抵抗を
使うことで基準電圧を調整し,表示電圧が適正になるようにせよ.

⑦ (EXTRA)追加課題
現在,A/D 変換用 PIC には電圧を表示するプログラムが入っている.これを距離
を表示するプログラムに直せ.
(データシート及びソースコードを参考にせよ)

3. 実習課題
(1) レポート課題

① このシステムにおける基準電圧は右下のような接続である.
基準電圧が変化する原理を説明せよ.

② この A/D 変換システムにおける理想的な(便利な)
基準電圧は何 V か?
ヒント:表示プログラムでは A/D 変換の

結果(10Bit)を 4 倍してから 1000 分の 1 にしている 図 25 基準電圧(AN3)接続

③ チャタリングとは何か,またどのような対策があるか調べて簡潔に述べよ.

51
(2) 参考資料
① PIC について
PIC とは Peripheral Interface Circuit の略である.元々メインの CPU の機能を分散し
て周辺機器の制御を行うために開発された IC であり,一つのチップのなかに演算部分,
メモリ,入出力など基本的機能が詰め込まれている.今回の実験では,Microchip 社の
PIC16F819 というデバイスを用いる.(詳しくは仕様書を参照のこと)

② 7 セグ素子について
数字を表示するための LED 素子の一種.8 の数字を 7 つに分けそれぞれの点滅をコン
トロールすることで 0 ~ 9 までを表示する.このため「7 セグ(segment)」と呼ばれる.
LED の向きによってアノードコモンとカソードコモンの 2 種類に分けられる.
PIC と一緒に用いる場合,各セグメントが PIC の各 I/O ポートに対応する.2 桁以上
の表示をするためには I/O ポートが足りなくなるため,
「ダイナミック点灯」という技術
が用いられる.これは各桁を数十 ms ずつ表示することで人間の残像(ざんぞう)を利
用して表示を行うものである.

③ PSD センサの仕組みについて
PSD とは Position Sensing Device の略である.光量に応じた電圧を発生する材料を一
様に塗布した一定の面積をもったセンサに光のスポットがあたると,光量に応じた電圧
が発生する.スポットの位置から離れた点の電位は膜材質の抵抗により,それぞれ低下
するので,センサの両端に発生する電圧の比から,光スポットのセンサ位置を求めるこ
とができる.(http://ja.wikipedia.org/wiki/光位置センサより抜粋) GP2D12 ではこれを角度
検出に用いている.

52
図 26 PSD センサの動作状況
注意点
1. 配線のレイアウトを熟考してから製作に着手すること
2. レポートの基本的注意については,実験実習「ガイダンス資料」を参照すること
3. レイアウト図(写でもよい)を必ず提出すること
4. 「感想」として製作を通じて難しかった/楽しかったポイントを述べること
5. 目的,理論,使用装置等は短くまとめる.結果と考察を重点的に書くこと.本紙や
web など他者の文章の写しは不可.

53
Vcc
10K

10K
R.Encode
RE1
RE2
10K

1 18
GND
2 17
1K 3 16
4 15
5 VSS VDD 14 *セラロック
6 13 (無極性)
7 12 X
8 11

10K
9 10
18 PIN SOCKET Vcc
GND
Vo
0.1 GP2D12
10K 10K

2SA1015 2SC1815

470
470
470 ※作成の注意点
470
FG A B FAB *Front view 部品の表裏,端子を確認する.
7805 *Note-pin
assignments 端子配置は添付資料で確認する.スイ

*Front ED C . ED G C . ッチ,可変抵抗,電池スナップ等の端
GND
OUT
IN

View
子は実物で確認する.PIC とセラロッ
470
1
2
3

Vcc 470 ク(X),X と GND との間の配線は短く


9V + + 470 する.
470
センサコード(3 線)は弱い,取扱い
470 0.1 0.1 100
に注意する.

電源投入前に教員の確認を受ける.不

要に長い配線は誤動作の元になりやす
図 27 製作する回路図
い.

54
表 14 回路部品一覧
18Pin Socket 1 470Ω( ) 8
GP2D12 1 10kΩ( ) 6
EC11B 1 VR1k 1
2SA1015(A1015) 1 0.1μF 3
2SC1815(C1815) 1 100μF 1
7805 1 470μF 1
Cera lock (20.00MHz) 1 Toggle switch 1
7Seg LED (2 Panel) 1 006P(9V) Battery Snap 1

A/D 変換ソースコード(抜粋)
//Main Function
Void main (void)
{
Unsigned int conversion = 0;

//Initialize
Initfunc();

//Initial Test
Inittest();

//Configure Interruption by A/D


PEIE = 1; //Peripheral interruptions Enable

while(1){
if(lcdflag){
SegmentUpdate();
lcdflag=0;
}

If(adflag0){
GO=1;
Adflag0=0;

}else if(adflag1){
Conversion = ((ADRESH<<8 | ADRESL) << 2;
// (a<<2) = a x 4 : 4.096V / 1024(10Bit)
SegmentSet(0, conversion/1000);
SegmentSet(1, (conversion/100)%10);
Adflag1 = 0;
}
}
}

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ロータリーエンコーダ ソースコード(抜粋)
void main (void)
{
//Initialize
initfunc();

while(1){
rotdecode(); //ロータリーエンコーダの読み取り

if(lcdflag){ //50msec 毎にフラグが立つ


SegmentUpdate(); //7SegLED 更新
lcdflag=0; //フラグのクリア
}
}
}

/* ロータリーエンコーダ */
Void rotdecode() {
/* RE1/RE2 信号を積分 */
if ( RE1 ) { //RE1(A 相)
if ( ++counta >= SMOOTH ) {
counta = SMOOTH;
phasea = 1;
}
} else {
if ( counta ) { --counta; }
if ( counta == 0 ) { phasea = 0; }
}
if ( RE2 ) {
if ( ++countb >= SMOOTH ) {
countb = SMOOTH;
phaseb = 1;
}
} else {
if ( countb ) { --countb; }
if ( countb == 0 ) { phaseb = 0; }
}

/* RE1 の立ち下がりを検出 */
if ( rotsave && phasea == 0 ) {
downwards = phaseb;
if( phaseb ){
if(++count>99){
count=0;
}
}else{
if(count){
if(--count == 0){
count=99;
}
}
}
SegmentSet(0,count/10);
SegmentSet(1,count%10);
}
rotsave = phasea;
}

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