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橋爪 凜
長崎大学 医学部 医学科
bb20122076@ms.nagasaki-u.ac.jp
1. 社会的背景と動機 2. 月経と月経中・月経前に生じうる症状
女性にとって月経中や月経前の時期を 月経とは「約一か月の間隔で起こり、限
いかに快適に過ごすことができるかは、自 られた日数で自然に止まる子宮内膜から
身の QOL にも大きく関わることである。し の周期的出血」であると定義されている。
かし、どうすれば月経中のつらい症状を和 月経中に起こる病的症状は月経困難症と
らげることができるのか、どうすれば適切な 呼ばれ、具体的には下腹部痛・腰痛・腹部
ケアが受けられるのか、理解している人は 膨満感・悪心・頭痛・疲労感・虚脱感・脱力
少ないのが現状だ。そこで、私はこの課題 感・食欲不振・イライラ・下痢・憂鬱が挙げ
を通して適切な月経との向き合い方につい られる。また、月経前に現れる精神的あるい
て考えてみることにした。 は身体的症状は月経前症候群(PMS)と呼
ばれ、症状はイライラ・のぼせ・下腹部膨満
感・下腹痛・腰痛・頭重感・怒りっぽくなる・
片頭痛・落ち着きがない・憂鬱が挙げられ
る。このうち軽度の症状は女性の約40%
にみられる。
月経前 月経中
3-10 日間 3- 7日間
精神的症状 精神的症状
イライラ・憂鬱 疲労感・虚脱感
のぼせ 等 イライラ・憂鬱 等
身体的症状 身体的症状
下腹部痛・頭重感 下腹部痛・腰痛
頭痛・腰痛 等 頭痛・下痢 等
図1:月経前・月経中の主な症状
上の図からもわかるように、女性は一か月のうち最大1
7日間という長期間何らかの症状を抱えながら生活を
している。
3. 現状
(株)明治が行った調査によると、女性の
85%が月経の悩みを抱えており、月経に
よって仕事のパフォーマンスは2割低下す
ることがわかっている。しかし、月経前・月経
中の悩みに対して約3割は何の対策も行っ
ておらず、その理由は我慢できる・あきらめ
ている・効果的対策がわからないなどが挙
げられたことも明らかになっている。
15
25
60
月経に悩みがない 月経に悩みがある
症状へ対策をしない 対策を行っている
グラフ1:月経の悩みの有無と対策の有無
4. 考察と今後の課題
この現状を変えるために重要なのは、よ
り気軽に婦人科を受診しやすい環境を整え
ること、痛み止めの適切な服用法を周知す
ること、低用量ピルの服用(低用量ピルに
はプロゲステロンの分泌を抑えて子宮の過
剰な収縮を抑制する効果がある)という選
択肢を広めることなのではないだろうか。し
かし、現状として月経に悩みを抱える人の
三割は何の対策も行えていないため、今後
は上に述べたような対策を通してすべての
女性が月経と適切に向き合えるように促し
ていくことが必要となるだろう。
5. 参考文献
・綾部琢哉・板倉敦夫,”標準産婦人科学第5版”,p57・
pp76-77, 医学書院,2021
理の悩み実態調査“,2022