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「またねって笑って、エウリュディケ」

私は振り返らない。
必ず、エウリュディケを取り戻すのだ。

時間: 8 時間前後
舞台:高校の文化祭
ロスト率:低
推奨人数:2~4人
推奨技能:三大探索技能、交渉系技能など
探索者条件:「刑事」であること

▼備考▼
「継続」の刑事探索者を推奨・ バディやチームがあれば更にオススメ
(新規探索者や初対面同士の即席チームでも通過可能)
こちらは購入を考えている人に向けて

真相と本編の半分までを公開している PDF となります

PL を希望の人は見ないように注意してください
あらすじ

柔らかい日差しが、並木の上で踊るように輝く秋。
とある高校に「文化祭を中止にしないと爆破する!」という予告状が届く。
しかし学校側はそれを生徒の悪戯だと判断し、文化祭を中止にはしなかった。
そんな中で一人の教師だけがそれを深刻に捉え、警察に厳重な警備を頼みに来る。

「何かあってからでは、遅いんです!」

その切実な訴えを受けて、特例として管轄の違う探索者たちが警備に赴く事となった。
爆弾という危険物を探しに、笑顔が溢れる高校の文化祭へと。

果たして、犯人は何の為に「爆破予告」を出したのだろうか?

簡易的なシナリオ内容

爆破予告が届いた文化祭を警備する為、探索者たちはとある高校に潜入する事になった。
盛り上がっている文化祭を楽しみつつ、調査を進めていくとこの学校で起こった 1 年 前の事件を知る。
それは去年、文化祭の直前に一人の女生徒が美術室から自殺をしたというものだった。その為、この学校では
去年文化祭は行われず、その青春を取り戻すかのように校内中が賑わっているのだ。

しかしその裏で、自殺した生徒と仲が良かった子たちの想いを探索者は知っていく事になる。
幼馴染の天才ピア ニスト「織田優希」は彼女の追悼をしようと大勢の観客を呼び込み文化祭でのコンサートを
計画していた。園芸部の「桑木みのり」は 1 年かけて寂れた裏庭を美しい庭園へと作り変えていた。そして自
殺した女生徒の双子の姉「春香花音」は 1 年かけて死に物狂いで大きな絵を描いていた。

それぞれが、それぞれの思惑で「何か」の準備をしていた。その本当の思惑は、誰にも言わないままで。
果たして、今回の文化祭に爆破予告を送ったのは誰なのか?そして、1 年前の生徒は本当に自殺だったのか?
この文化祭で行われようとしている、本当に守らなければならないものとは何なのか?

それを探し出して、警察である探索者達は守れるのか?

というシナリオ内容になります。
探索者条件を「刑事」にしている理由

本作は、大事な人を失ってしまった高校生が自分に出来ることを必死に考えて、それが道徳的にいけない事だ
と葛藤しながら、それでも愛している人を取り戻そうとするシナリオです。大人の、しかも警察である探索者
は、愛する人を失ったとしても彼女たちのように全身全霊で泣いたり足掻いたりする事は出来ないと思いま
す。自らの命をかけながら、何を犠牲にしてでも「大事な人を生き返らせたい!」と叫ぶ、その幼い必死さに
対して「何を伝えようとする」のか、また、同じ痛みを経験している可能性が高い継続警察探索者が(それを
経験していない探索者であっても)『大人』として『刑事』として、どう受け止めるか。そこを問うような内
容となっています。

なので、かなり改変が必要になりますが「探偵」でも通過する事はできるとは思います。
その場合は「警察には動けないと言われた」と荒井先生が依頼しに行く冒頭に変えて頂き、本来は「刑事シナ
リオ」であることを PL さんにお伝え頂ければと思います。

また4人チームの自陣だけど他シナリオのネタバレがある為、4人だけで遊びたいなどの場合は3+KPC な
どに改変して頂いて、一緒に通過してもらっても大丈夫です。
真相

1年前、竪琴高校で『春香奏多〈はるかかなた〉』という女生徒が美術室の窓から落ちて亡くなった。
その死には不審な点が多かったが、学校側は警察に圧力をかけ、ただの「自殺」であると処理させる。
そして自粛の為に、その年の文化祭は中止となった。

春香奏多の双子の姉『春香花音〈はるかかのん〉』と、二人の幼馴染である『織田優希〈おりたゆうき〉』は
事件を切っ掛けに深く傷ついてしまう。優希は奏多の死を受け入れられず、双子である花音を奏多であると錯
覚してしまい、花音は「自分のせい」で妹が自殺してしまったと思い込み、後悔と呵責の念に押し潰された。
花音は魔術師の末裔である織田家から『死者の国へ門を繋げる方法』が書かれた魔導書を盗み、自分の命と引
き換えに春香奏多を取り戻す計画を立てる。

それは「復活させたい者の血で絵を描き、そこへ大勢の人間の精神力を捧げると、絵が入り口となり死者の国
に繋がる」という魔術であった。しかし、死者を連れ戻したとしても魂しか連れてくることが出来ない為、そ
れを入れるための器が必要となる。花音は双子である自分の血を使って大きな絵を描き、奏多を連れ戻した際
には自分の体を差し出す計画を立てた。そうして毎日、命を懸けながら自分の血で絵を描き続ける。

そんな花音に恋をしている少女がいた。彼女の名前は桑木みのり。花を信仰するカルト教団の家に生まれ「愛
する人の血を注げば注ぐだけ綺麗な花が咲き、それが愛の証明になる」という教えを受けて育ってきた。幼少
の頃よりそう教育されてきたみのりは、普通の人がキスやハグで愛情を表現するように、好きな人の血を花に
注ぎたいと夢を見る。そしていつか、大好きな花音の血を花に浴びせたいとも。

1年前。みのりの危うさに気が付いた奏多は、その真意を探る為に彼女を美術室に呼び出した。みのりを待ち
ながら、窓辺で織田優希の演奏を聴いていた奏多を、みのりは「花音」だと勘違いした。「その下は花壇だ」
と思ったら、みのりは奏多を3階の窓から突き落とした。奏多は、2階で演奏をしていた優希の背後を通り過
ぎ、裏庭の寂れた花壇に落下。まだかろうじて息はあったが、不幸なことに優希の演奏する「カノン」によっ
て、誰も奏多が落下した音に気づけなかった。背中から落ち、鉢やレンガに当たって花の上に血を流す奏多
を、みのりは息絶えるまでうっとりと見下ろしていた。

しかしその後、亡くなったのが花音ではなく奏多だと知ったみのりは喜びに打ち震える。花音と奏多を間違え
た事はショックだったが、それよりも花の中で血に染まっていく好きな人をもう一度見れるのだ。そう思った
ら、今度はもっともっと花で溢れた場所で見たいと思った。美しい庭園を造って、そこに今度こそ最愛の花音
を突き落としたい。そうして花音の血に塗れた花々は、最大級の愛情表現になるだろうと思った。

そして奏多の死から一年が経った、現在。花音は、優希の演奏を聞きに来た観客を犠牲にする為、優希に「文
化祭でピアノ演奏をしてほしい」と頼んだ。優希は自らの傷と向き合い、奏多を心から追悼する為にも文化祭
で「カノン」を弾こうと決心する。
そして、みのりは花音を突き落とす機会を狙い続けていた。奏多は即死ではなかったので、愛しの花音はもっ
と高い所から突き落としてあげたい。そう思い、文化祭で盛り上がる人々の目を盗んで屋上の鍵を壊す。

そんな彼女たちを、ずっと観察している生徒がいた。その生徒の名前は『工藤純也』。彼はリアリティのある
小説を書く為なら何でもする迷惑な変人である。彼は今回の文化祭をもっと面白い展開にしようと企み、学校
に【爆破予告】を送り付けた。そしてそれは、一人の教師を過激に刺激する事となる。

1年前に亡くなった春香奏多の担任『荒井鈴』は、奏多を守れなかった事をずっと悔やみ続けていた。学校か
ら警察へ連絡をとることを禁じられても、彼女だけは「二度と生徒を傷つけたくはない!」と、何度も何度も
警備を頼みに訪れた。学校側からの圧力もあり「生徒の悪戯では?」と片付けられそうになるも、荒井鈴は一
通の爆破予告を握り締め「何かあってからでは遅いんです!」と訴え、何度も頭を下げ続ける。

そうして今回、特例として管轄外の探索者達が竪琴高校へとやって来る事になるのだ。
登場人物

織田 優希〈おりた ゆうき〉

世界的なピアノコンクールに優勝した天才高校生ピアニスト。春香姉妹の幼馴染であり、一年前に亡くなった
奏多に幼少の頃から恋をしていた。けれど、花音と奏多が大切だったからこそ、その想いは一生秘めていよう
と思っていた。憑りつかれた様にピアノを演奏する父が嫌いで、父より上手く弾いてやろうという復讐心から
ピアノを始めたが、奏多が「優希の演奏が大好き!」と褒めてくれた事で気持ちが変わる。優希は憎しみによ
る演奏ではなく、大切な幼馴染への愛情表現としてピアノを弾く事にした。二人に演奏を聞いてもらう事が優
希にとって何よりの幸せであり、だからこそ、奏多の死は彼の心を壊した。自分が演奏をしていたせいで奏多
が落下した音に誰も気づかず、発見が遅れてしまった。もう少し早ければ、助かっていたかもしれないという
事実がトラウマになっている。

春香 花音〈はるか かのん〉

内向的で人付き合いが苦手な女の子。昔から伝えたい気持ちを「絵」にぶつけてきた為、奏多と優希以外の人
とうまく話せない。一見、冷たい印象であり、無愛想でぶっきらぼうだが根は優しい。偶然、イジメられてい
たみのりを見つけ、いびっていた生徒を画板でぶん殴った事がある。物心ついた時から優希の事が好きだった
が、誰よりも彼を見ていたからこそ、優希が奏多に惹かれている事を知っていた。自分とは正反対の奏多にコ
ンプレックスを抱いているが、それでも奏多の事が大好きだったので身を引いていた。うまく人と話せない
分、逃げるように絵を描いていたがその才能は確かなもので数々の絵画コンクールで賞を取っている。奏多の
死後、まともでいられなくなってしまった優希の為に自分を犠牲にして奏多を取りもどす計画を立てる。毎
日、少しずつ自分の血をキャンパスに塗り、文字通り「必死」に死者の国に繋がる絵を描き続けた。

春香 奏多〈はるか かなた〉(故人)

双子の姉が大好きな、明るくて優しい、よく笑う女の子。困っている人が居たら考えるより先に体が動いてし
まうタイプで、昔からよく優希や花音の事を振り回していた。しかし、そんなお人好しで底抜けに優しい奏多
だからこそ、二人も救われており、彼女の事が大好きだった。花音の名前に「花」が入っている為、小さい頃
から「花」が好きで、優希の弾いてくれる「カノン」も好きだった。誰からも愛されるような天真爛漫さがあ
ったが、本人からしたら素敵なピアノが弾ける優希や、素晴らしい絵が描ける花音をすごいと思っていた。
工藤 純也〈くどう じゅんや〉

小説家になりたい男の子。しかし生まれつき共感性能力が著しく欠如しており、自分の体感として「感情の機
微」が分からない。その為、リアリティのある小説を書く為にいつも周りの人間を観察している。人の気持ち
を考えずに振り回す厄介な性格で、明るくてうるさい。そして非常に無神経。しかし感情が邪魔しないからこ
そ、その観察眼は確かなもので、桑木みのりや春香花音の挙動が怪しいことに唯一気が付いていた。人間のリ
アリティを知るためには何でもするし、クモの味も確かめるような変人。愛読書は夏目漱石の「こころ」 。

桑木 みのり 〈くわき みのり〉

花を信仰するカルト教団の一家に生まれた女の子。「愛する人の血を注げば注ぐだけ綺麗な花が咲き、それこ
そが愛の証明になる」という教えを受け、みのり自身も両親にナイフで切られて花に血を与えてきた。両親は
それをみのりへの愛情表現だと言い聞かせてきたので、みのりはその行為が嬉しかった。しかし、みのりが中
学生に上がると母は殺人の罪で逮捕されてしまう。花に血を注ごうとして母が父を殺したからだ。それは父の
合意があっての行為だった。父の体から血を絞り出す母も、母にナイフで切られ続けた父も、とても幸せそう
な顔をしていた。両親は「愛情表現」をしていただけなのだと、みのりも思った。そうして、その狂気的な価
値観を誰にも訂正されないまま、みのりは高校生になる。しかし、両親の事件を理由にイジメにあう毎日。あ
る日、それを助けてくれたのが春香花音だった。みのりは花が咲くように花音への愛を抱いた。そして、いつ
か花音の血を注いで、綺麗な花を咲かせたいと思うようになる。 価値観は歪だが、とても良い子。

荒井鈴 〈あらい すず〉

真面目で優しいが、少し気の弱い先生。担当科目は歴史。生徒思いではあるが、若いこともあり他の先生から
見下されている。それが空気として現れるのか生徒にもなめられてしまう。しかし2年前、学級委員を春香奏
多が務めた時はクラス内の雰囲気が良く、荒井も軽んじられる事はなかった。奏多は率先して、先生の手伝い
をしたり、クラスを明るくまとめてくれた。だからこそ、奏多が自殺をした時は信じられなかったし、警察に
捜査をやめるよう指示した校長に直談判をしに行った。しかし彼女の意見は聞いてもらえず、事件の事を自分
で調べようにも他の生徒の心のケアで手がいっぱいになってしまう。目に見えて織田優希や春香花音の心は壊
れてしまい、何もできない自分への不甲斐なさと責任感から不眠症になってしまった。そして今回、 学校あて
に爆破予告がきた際、学校への保身を優先して見ないふりをする他の先生達には黙って、独断で何度も警察へ
相談しに来る。事件性がないと動けないと主張する警察に「何かあってからじゃ遅いんです!」と強く訴え続
け、その鬼気迫る直談判に特別措置として探索者達が向かうことになった。
織田家について

古くから魔術師を生業としている家だった為、書庫には大量の魔導書やアーティファクトが保管されていた。
しかし東京大空襲によってそのほとんどは焼け消えてしまい、それ以降、魔術師業も廃業となる。優希の父親
はピアニストとして働きだすが、優希が生まれてすぐに「生ける音≪トルネンブラ≫」に気に入られてしま
い、憑りつかれた様に演奏する事しか考えられなくなる。そしてその狂気的な音楽は世界的に評価され『悪魔
に魂でも売らないとあんな音は奏でられない!』と絶賛されるが、あながち間違いではない。家に全く帰らな
い父の書庫には焼け消えなかった魔導書の残りが仕舞われており、花音が見つけた『死者の国へ門を繋げる方
法』はそこから盗まれている。

『死者の国へ門を繋げる方法』について

正確には『時空門』を創造する方法が書かれており、死者が生きている時空に通じる門が作れる。しかし織田
家の魔術師がいくつか間違えて伝承している為、正確には『血で絵を描く』必要などない。任意の場所に精神
力≪POW≫さえ捧げれば門は作れる。だが、時を超える事になるので門をくぐった瞬間に「時の番犬≪ティ
ンダロス≫」に見つかって殺されてしまう。そして術者が血に塗れてしまう事を「血が必要だ」と誤って伝わ
ってしまった。その為、もしも探索者が止めなければ春香花音は門をくぐった瞬間に死んでしまう。

桑木家について
「ヴルトゥーム」を信仰するカルト教団に入信しており、みのりは生まれた時からそこの教えを常識として植
え付けられた。教団では麻薬性の強い花を育てており、甘い香りのする催眠性の薬物を生成している。これを
嗅いでしまうと恍惚感と高揚感に満ち溢れた幻覚を見たり、トリップしてしまう。教団の目的は、人間の血を
花や種に注ぐ事で、より美しく、ヴルトゥームが気に入る花を咲かせようというものである。しかしそれをみ
のりの両親は「愛情表現」だと教え、みのりの腕を切りながら「貴方を愛しているから血を注ぐんだよ」と言
い聞かせてきた。だからこそみのりにとってその行為は、好きな人に愛をこめて花束を贈るような感覚にな
る。

竪琴高校について
由緒正しき名門高校。成績においても、部活においても非常に優秀な生徒が多く、政治家の出身校としてよく
名が挙がる。そのため政界ともずぶずぶであり、何か問題が起こるともみ消したり、隠蔽されてしまう。
本編

窓から淡い秋の日差しが差し込む、午後。
最近、ちょうど大きな事件を解決した探索者たちは、その報告書を書いている所だった。

このシナリオに来る前に解決した事件があればその話をしたり、上手に報告書が書けるか≪DEX×5≫で判定
してもいい。いつもの日常を軽く RP してもらう為のシーンです。

RP のよきところで上司がやってくる

部屋にノックの音が響く。扉を開けると、そこには探索者たちの上司がいた。
「お疲れ様。今、大丈夫だろうか?」
探索者たちの反応を受けたあと、上司は真面目な顔で話し始める。

「仕事の話だ。急で申し訳ないが、明日、とある高校の警備にあたって欲しい。」
「本来であれば君達の管轄ではないのだが、どうしても空いている人員がいなくてな。」
「竪琴高校という学校に脅迫文が届いたんだ。これは、見てもらった方が早いだろう。」

そういうと、上司は一枚の紙を取り出して探索者達に見せる。(以下、情報公開)

新聞の文字を切り抜いて張られた脅迫文。
そこには『文化祭を中止にしろ。さもなければ、当日、校舎を爆破する。』と書かれている。

この脅迫文を見た探索者は≪知識≫がふれる
こういった爆破予告は【脅迫罪】【強要罪】【威力業務妨害罪】にあたるケースが多い。だが、必ず警察が動
くは限らず、内容の緊急性や重大性による所がある。

以下、質問に対する回答例

文化祭を中止にすればいいのでは?

「それが学校側としては、これを気にしていないんだ。どうせ生徒の悪戯だろうと。こんなもので文化祭は中
止にしないというのが校長の見解らしい。脅迫文が届いた事も、生徒達には知らせていないようだ。」

どうして警備が必要なの?

「この竪琴高校の教師が一人、どうしても厳重な警備をしてくれと毎日お願いしに来るんだ。何かあってから
では遅いと。生徒が傷ついたらどうするんだ、とな。すごい先生だよ。」
なぜ自分たちが警備を?

「すまないが、どこも人手不足でな。明日、この高校に行けるのがお前達だけなんだ。それに、優秀なお前た
ちなら何かあったとしても対処できるだろう?信頼してるからこそ、頼みたいんだよ。」

ある程度、質疑応答が終わったら

「それと、不必要な混乱を避ける為に明日は制服ではなく私服で警備に当たってくれ。文化祭は生徒達の晴れ
舞台だからな。いかつい警察官がウロウロしていては、子供たちに不安を与えてしまう。警察ではなく、あく
まで誰かの父兄というフリで見回りをしてくれ。」
「……何もない、とは思うが。くれぐれも頼んだ。」

そういうと上司は部屋から去っていく。

≪コンピューター≫または≪図書館≫で【竪琴高校】について調べることが出来る

私立「竪琴高校」は都内における名門校の一つだ。非常に偏差値が高く、文武両道で様々な部活において優秀
な生徒が多いらしい。スポーツ選手や国会議員など、有名人の出身校としても名が挙がる。

追加で更に≪コンピューター≫または≪図書館≫がふれる

ネットの検索で「竪琴高校」と調べるとサジェストに【織田優希】という名前が出てくる。どうやら有名な在
校生のようだ。検索エンジンの上に「織田優希のインタビュー記事」というサイトが表示されている。

そのページを読むのであれば以下を〈情報開示〉

天才高校生ピアニスト「織田優希」に直撃インタビュー!と書かれている記事。
以下、内容を抜粋

「織田さん、国際ピアノコンクールで金賞をとった時はどんな気持ちでしたか?」
「とても光栄でした。このまま驕らずに精進していきたいと思います。」
「やはりピアノはお父様の影響で始めたんですか?」
「きっかけはそうでしたが、今は超えるべき壁の一つだと思っていますよ。」
「すごい方ですよね!海外では「悪魔に魂を売らないとあんな音は奏でられない!」と言われています。」
「その文言を聞く度に、ちょっと大げさだなぁと笑っちゃいますよ。」
「いえいえ!それぐらい凄い演奏家ですから!でも、織田さんはお父様と違って音楽学校には入学されません
でしたよね?それはどうしてですか?」
「確かに専門の学校ではありませんが、竪琴高校は個人の活動に理解がある学校です。それに。」
「それに?」
「友人が竪琴学校に行くと聞いて。その、一緒に行きたかったんです。」

そう照れくさそうに笑う織田優希さんは、等身大の高校生に見えました!
そんな織田さんのこれからの活躍に注目したいですね!

ページの最後を見ると、どうやら2年前に書かれた記事のようだ。

以降は、次の日になると展開が進む。
RP を楽しんでもいいし、どのような私服で向かうかなど話してもいい。
また、私服警察であっても「警察手帳」「警棒」「手錠」は持っていく事になる。
文化祭当日

次の日。探索者達は、文化祭の警備に当たるため竪琴高校へと向かっていた。
予定通り学校付近の駐車場に着くと、そこに車を停めて学校へと歩いていく。
秋風が、さあっと、道に落ちる木の葉を掃いて行った。
そしてその先に、探索者達を待っていた人物がいる。

「あの、刑事さんですか?」
「わたし、新井鈴と申します。この度は警備を引き受けて頂き、本当にありがとうございます。」

荒井鈴との会話

「他の先生達は「生徒の悪戯だから無視しておけ」と。「へたに騒ぎを起こすな」と言っておりまして。」
「でも、私はどうしても心配で。何かが起こってしまってからでは遅いじゃないですか。」
「もし生徒が傷ついたり、怪我なんてしたら……!」
「何もないなら、それが一番いいんです。でも万が一という事があります。どうか、不審な人物や物がないか
校内を見回ってください。お願いします。」
「……それと、貴方達が刑事である事は隠してください。こんな日に、生徒を不安にさせたくないんです。」
「それでは、お願いします。」

荒井鈴に対して≪心理学≫がふれる

「今回の爆破予告について、過剰なほど心配しているように感じる。顔色も悪く、目の下にはクマがある。」

校門をくぐって学校の敷地に入る
校門には大きく『竪琴高校☆文化祭』というアーチが飾られている。その下をくぐれば、校舎までの坂道に出
店がズラリと並んでいた。たこ焼きにクレープ、タピオカジュースなどが売られている。

『探索箇所』

・お客さん
・出店
お客さん

周りを見ると、他校の制服や一般客の大人が多く、校門から流れるように人が入ってくる。一般的な高校の文
化祭に比べて、随分と賑わっているように感じた。しかし、見た限りでは不審な人物や物はないようだ。

出店

「たこ焼き」「クレープ」「チョコバナナ」「タピオカジュース」など、カラフルな文字がそこかしかに飾ら
れている。他の店に負けたくないのか、生徒達はみな気合に満ちており、積極的に客寄せをしている。

【イベント】
探索者に向かって、元気のいい生徒が「じゃがバターいかがですか!?」と声をかけてくる。

「出来立てあつあつのじゃがバターです!めちゃくちゃ美味いっスよ!どうですか?!」
「一つ、600円です!でも、二つ買ってくれるなら1000円にしますよ!」

買って食べるのであれば美味しいし、隣の出店から「お客さん~!ラムネはいかがですか?!あつあつのじゃ
がバターには、やっぱりキンキンに冷えたラムネですよ!」とドリンクを売っている生徒から声をかけられ
る。

※ここは探索者たちが元気な高校生に絡まれるのを楽しむシーンです

校舎へ入るなら≪聞き耳≫がふれる

どこからか視線を感じる。それは明確に自分たちを捉え、ジィッと観察するような視線だった。

※探索者達を観察している工藤純也の視線です。
1階

校内に入ると、活気のある声や楽しそうな笑い声で溢れていた。廊下はどこもかしこも賑わっており、コスプ
レをした生徒が出し物の宣伝をしている。また、壁に張られた文化祭の案内図を見ると校内は3階建てとなっ
ており、1 階は出し物やコンセプト喫茶が多いようだ。

『探索箇所』

・メイド喫茶
・巨大迷路
・ミニステージ

メイド喫茶

教室内はファンシーでふりふりの装飾が施されており、とても可愛らしい空間になっている。

メイド喫茶に入った探索者は≪幸運≫をふる

※KP 情報※

幸運に成功したら「猫耳をつけた可愛い女の子」が接客してくれる。
失敗したら「ムキムキマッチョの男子生徒が全ての料理にプロテインをトッピングして」接客してくる。
これは成功/失敗、逆でもいいですし、内容を全く違うものに変えてもいいです。
ここは茶番シーンなので、とにかく楽しんでもらいましょう。
一応メニューなど書いておきますが、こちらも KP さんの好きに変えて頂いてもらって大丈夫です。

メニュー
・にゃんにゃん♡パスタ 1200 円
・にゃんにゃん♡カレー 1600 円
・にゃんにゃん♡オムライス 1800 円 ←オススメです☆
巨大迷路

教室を二つも使った巨大な迷路だ。かなり難易度は高いらしく、途中の出口から脱落した人が出てきている。
「さぁさぁ!超☆巨大迷路です!ぜひ、挑戦していきませんか?!」と受付の生徒が話しかけてくる。

参加する場合は以下のルールは PL さんに提示してください

超☆巨大迷路からの脱出!

一人ずつ挑戦することが出来るぞ!
≪DEX×3≫か≪ナビゲート≫の成功で脱出可能だ!
しかし、失敗した場合は巨大迷路の中で迷ってしまうぞ!
でも大丈夫!失敗した場合、その後に成功した探索者が更に≪追跡≫に成功すれば一緒に脱出できるよ!
成功できなかった場合は残念だけど迷路の中で迷い続けるぞ!

成功した探索者
出口で待機していた生徒が小さい花吹雪をかけながら祝ってくれる
「わぁ~!すごいっ!脱出成功おめでとうございます!こちら景品の割引き券になります!」
「割引き券は隣のメイド喫茶で使えますよ!お得な 500 円引きです~!」

失敗した探索者
迷路の途中にある脱落扉が開かれて、失敗した人を回収する役目の生徒が迎えに来てくれる。
「残念!脱出失敗です~!いやあ、気合が入っちゃって、ついつい複雑に作り過ぎちゃったんですよねぇ!」

ミニステージ

暗幕の張られた教室だ。奥は簡易的なステージとなっており、クラスごとに自主製作の映画や合唱を披露する
らしい。今は白い民族衣装を着た生徒達がステージの上に立っている所だった。随分と凝った衣装に見える。

「皆さん、こんにちは~!3年 A 組の出し物は『10分で分かる神話』シリーズです!」
「今回は『ギリシャ神話』を上演します!どうぞ、最後まで見ていってくださいね~!」

月桂樹の冠を被った生徒がそう言うと、教室内の明かりが消える。
どうやら演劇でギリシャ神話のストーリーを演じるという出し物のようだ。
以下、描写を PL さんに提示

「愛しい妻を生き返らせる為に、冥界へ降りた男の話」

ある所に、竪琴の名手であるオルフェウスがいた。彼の音楽は誰をも魅了する素晴らしい物だった。

オルフェウスはエウリュディケと恋に落ち、結婚をする。しかし、エウリュディケは蛇に噛まれて死んでしま
った。愛する人を失った哀しみはとても深く、彼は絶望しながら嘆く。

「もう二度と竪琴はひくまい!僕の音楽は、全ては、エウリュディケの為なのだから!」

そして、とうとう深い悲しみに耐えきれなくなったオルフェウスは彼女を取り戻そうと考えた。

「エウリュディケがいなくては、僕は生きていけない。そうだ!死者の国に行って彼女を返してもらおう!」

そう決心するとオルフェウスは竪琴をとって『死者の国』に向かった。しかし、冥界のハデスは生きながら死
者の国へと訪れたオルフェウスに激怒する。オルフェウスは黙ったまま竪琴をとると、その場で美しい音色を
奏でた。そのあまりに綺麗な音色は、神であるハデスの怒りをおさえるほどに素晴らしいものだった。

「オルフェウス。お前は美しい音楽ですっかり私を喜ばせた。褒美にエウリュディケを返してやろう。」
「おぉ、ハデスよ!本当ですか!」
「しかし本来であれば、死人を生き返せることは出来ない。そこで一つ、条件をつける。お前が冥界まで降り
て行けば、エウリュディケはお前の後についてゆくだろう。だが、エウリュディケが地上に着くまで、お前は
決して振り返ってはならない。」
「振り返ってはならない?」
「そうだ。もし、振りかえったなら、あの女は、たちまち死の国に引き戻されるだろう。」

そう言われたオルフェウスは地上に出るまで決してエウリュディケを振り返らないと誓った。愛するエウリュ
ディケを生き返らせる為なら、どんな事だってする。オルフェウスは堅い意志を胸に、冥界へと続く階段を降
りて行ったのだ。

ステージ上で実際に竪琴を弾きながら、そのストーリーは進んでいく。そして物語がクライマックスに差し掛
かると、オルフェウスはエウリュディケを振り返ってしまった。その瞬間、舞台上に大量の白い手が現れ、あ
っという間にエウリュディケを冥界へと連れ去ってしまう。オルフェウスは後悔と嘆きの叫びをあげて、舞台
は終幕となった。

この演目を見た探索者は≪知識≫と≪アイディア≫がふれる

≪知識≫黄泉の国から死者を取り戻す為に相手を「見てはいけない」という話は日本神話にもある。古事記の
イザナギとイザナミという神様だ。しかし、オルフェウスもイザナギも最終的には死んだ相手を見てしまう。
そうして愛する人を取り返す機会は永遠に失われる、というお話だ。
≪アイディア≫衣装や竪琴の演奏など、細部においてクオリティが高いと感じる。高校の文化祭、それもクラ
ス発表にしては随分と気合が入っている気がした。

教室に明かりがつくと、拍手が生まれる。一列に並んだ役者たちは達成感からか嬉しそうな表情をしていた。

「ありがとうございました~!この後は被服部のファッションショーなんですけど、僕たちの衣装を作ってく
れたのも被服部なんで、良かったら見ていってください!ありがとう、被服部~!」

探索者たちのすぐ側で、照れくさそうに「こっちこそ、ありがとう~!」と女の子たちが応える。

被服部の子達に≪聞き耳≫がふれる

「あの衣装ほんと大変だったけど、作り甲斐あったねぇ!」「本当に~!なんだかんだ楽しかった!それに、
無事に上演できてよかったよ!」「マジでそれ~!」「分かる!今年はみんな気合入ってるよねぇ!」

という声が聞こえた。女の子たちはそのままファッションショーの準備をしに、急いでステージに向かう。

※去年は春香奏多の自殺騒動があったので文化祭が中止になっている。その為、2 年ぶりの文化祭にみんな気
合が入っているのだ。しかし、この事を生徒達に尋ねても気まずそうにするばかりで教えてはくれない。学校
側から圧力がかかっているのと、生徒達もあまり思い出したくないからである。

【工藤純也との接触イベント】

ミニステージから出たら探索者全員に≪幸運≫をふってもらう

失敗した探索者(複数人居たら一番出目が悪い人)に、ドンッ!と誰かがぶつかる。
不意打ちであったこともあり、探索者はぶつかってきた人物と一緒に転倒してしまう。
工藤「いたたっ!あぁ、すみません~!大丈夫ですか?」
その人物は倒れた探索者を起こすのを手伝ってくれる。
工藤「ちょっと急いでて、前を見ていませんでした!怪我とかないですか?」
探索者がそれに答えると、後ろから「部長!見つけましたよ!逃げないでください!」という声が聞こえる。
工藤「うげっ!しつこいなぁ!それじゃあ、失礼!」
部長と呼ばれた男の子は、そのまま慌しく廊下を駆け抜けていった。

※転倒した際、工藤は探索者から【警察手帳】を盗んでいます。これは後で工藤から教えられますが、もしも
探索者が自分から警察手帳を確認したり、出そうとしたら「なくなっている」と描写してください。
2階

2階にあがると、賑やかな声が少し遠くなる。お客さんはいるが、どうやら 1 階よりも人が少ないようだ。文
化祭の案内図を見ると、2階は「展示系の出し物」が中心らしい。

『探索箇所』

・天文学部の展示
・文芸部の展示
・音楽室

移動する前に≪アイディア≫がふれる
文化祭の定番である「お化け屋敷」がない事に気が付く。ここまで気合の入った文化祭であれば、王道である
お化け屋敷がない事に少しの違和感を覚えるかもしれない。

※もし生徒に「お化け屋敷」の確認をとるのであれば、気まずい顔をして逃げられる。交渉技能に成功するの
であれば「……だって、お化け屋敷は不謹慎だから禁止だって。」と一言くらいは教えてもらえる。

天文学部

教室の広さを活かし、部屋中に大きく張られた手作りのプラネタリウムが展示されている。中に入ると真っ青
なライトの中でポツポツと白い光が瞬いている。綺麗な青い空間を進んでいくと、中央には机が置かれてい
た。

机を見る
机の上に手書きの可愛らしい紙が張ってある。

我々が見ている星は何億光年も先にある光です。星の瞬きに比べて、人間の一生はなんとあっという間に過ぎ
てゆくものでしょうか。私たち、天文部は宇宙を知れば知るほど「今」を大切に生きていきたいと感じます。
だからこそ大切な人へ、今、手紙を書きませんか?いつか伝えようと思っている言葉は、今じゃないと伝えら
れないかもしれません。良かったら、一言でもいいので貴方の想いを書き綴っていってください。

何枚もの便せんや封筒、そしてキラキラ光る星マークのシールが置いてある。また可愛らしいポップで「天文
部では毎年この展示をしています!是非、便せんだけでも持って行ってくださいね!」と書かれている。

※春香奏多の遺書は、一昨年の文化祭で手に入れた便せんです。
文芸部

部屋の中に入ると、壁一面にカラフルなメモ用紙が張られている。
展示内容の説明を見てみると「貴方の一番好きな小説の文章を教えてください」と書かれていた。
どうやら、ここは来場者が自分の好きな文章をメモに書いて、壁に張るという展示らしい。

「こんにちはぁ。良かったら、好きな小説のタイトルだけでも書いてってください~。」

やる気のなさそうな生徒が探索者たちにカラフルなメモを渡してくれる。

壁に≪目星≫がふれる
ふっと、一枚のメモが目に留まる。それはとても達筆な文字で書かれていた。〈以下、情報開示〉

「しかし君、恋は罪悪ですよ。解かっていますか。」

そのメモを張った生徒の名前は『工藤純也』と書かれていた。

このメモの文章に≪知識≫がふれる
これが有名な小説の一説であることを知っている。〈以下、情報開示〉

夏目漱石「こころ」≪以下、とても端的な概要≫

「先生」は学生時代、下宿先のお嬢さんに恋をしていた。しかし、先生の親友であり同居人の K もお嬢さんに
恋をしていた。先生は裏でお嬢さんとの結婚を許諾させるが、気まずさを覚え、K にそのことを言えないでい
た。しかし、人づてに先生とお嬢さんの結婚を知らされた K は自殺をする。K を裏切り、失望させ、自殺へ導
いたという自責の念は、最終的に先生を死へと誘った。

※この学校では「K(奏多)が自殺している」という工藤純也から探索者への遠回しなヒントです

受付にいる文芸部の生徒たちに対して≪聞き耳≫がふれる

「なんで俺が部長の分まで受付しなきゃいけないんだよ。」「しょうがないじゃん、あの人ってこういうの協
力してくれないし。」「部長なのに責任感とかないわけ?」「あの人にそんなものないでしょう。でも、文才
はあるんだよねぇ。大きい賞とかとってるし。」「人格に問題があっても才能はある。いいよなぁ、天才と変
人は紙一重って感じ。」「はは、今のうちにサインもらっとく?」「いやあ、売れても欲しくはないなぁ。」

という、気だるそうな会話が聞こえた。
音楽室

探索者たちが音楽室の扉へ近づいた時、何かを見るよりもまず、鳥肌が立った。力強いピアノの音が聞こえ
る。
それは、五感の全てが惹きつけられるような、恐ろしいほど魅力的な演奏。音楽の知識がなくても分かる。こ
れは「本物の音楽」である、と。

この演奏を聞いた探索者は≪POW×5≫をふる
≪成功したら≫
この演奏にひどく惹きつけられる。自分の奥にある深い部分。そこにある「何か」が、この演奏に震えるほど
共鳴した。恐ろしいほど寂しくて、誰かに縋りたくなるような悲しみが胸に込み上げる。急に、世界のはしっ
こに一人で置き去りにされたような気持ちになり、たまらず叫んでしまいそうだった。貴方の頬を一筋の涙が
伝う。気が付くと、何故か、涙が溢れていた。

※これは≪成功≫した事により、演奏を通じて織田の「愛する人が死んでしまった喪失感」と深く共鳴してし
まったという描写です。もしも全員が失敗した場合は、出目が一番良い探索者にこの描写をしてください。

軽い RP のあと、音楽室の扉を織田が開ける

突然、音楽室の扉が開かれて一人の少年が探索者たちの前に現れる。
「……あの、先ほどから扉の前で何かお話しされてますけど、俺に御用ですか?」

織田優希の顔を見たら〈アイディア〉がふれる

彼が世間から「天才高校生ピアニスト」と言われている「織田優希」だと分かる。インタビューなどの写真で
は屈託のない高校生らしい表情をしていたが、目の前にいる彼はとても静かでどこか陰りのある顔に見えた。

「すみませんが、ここに出し物はないですよ。俺がピアノの練習してるだけですから。」
織田優希との会話

織田優希さんですか?

「え。あぁ、そうです。俺のこと知ってるんですね。ありがとうございます。」

文化祭なのにピアノの練習を?

「今日、夕方の野外ステージで演奏させてもらうんです。だから、練習していて。あ、もし良かったら、コン
サート聞きに来てください。うまく弾けるか、分かりませんが。」
「実はここ 1 年、ろくにピアノに触れてないんです。だから、よけい練習しておきたくて。」

ピアノにふれてない?

「……スランプ、みたいなものですよ。自分が「何の為」にピアノを演奏するのか分からなくなってしまっ
て。でも今回、友人が「文化祭で演奏してほしい」って言ってくれたんです。それで俺も、いい機会だと思っ
て。」
「………本当は、文化祭にも、もっと参加した方がいいんでしょうけど。どうしても、落ち着かなくて。」
「すみません。初対面の方にこんな話を……。皆さんは、誰かのご家族ですか?」

ある程度、会話をしたら
「すみません。やっぱり、演奏してないと落ち着かないので、俺、練習に戻ってもいいですか?」
「ありがとうございます。それと……。」

織田優希は先ほど、涙を流した探索者の顔を見つめる。

「……音楽は、時に言葉では説明できないほど、弾き手の感情を相手に伝えます。」
「そしてそれは、同じような感情をもっている人ほど響いたり、共鳴したりする。もしも、俺の演奏に心が揺
さぶられるのだとしたら、それはその人の心にも「未練」や「後悔」があるのかもしれません。」
「心にぽっかりと空いた、大切な人を失った喪失感。」
「どれだけ乗り越えたつもりでも、それが消えることはないんでしょうね。」

織田優希は寂し気に微笑むと、一礼をして音楽室の中へと戻っていった。

3階に移動する前に≪聞き耳≫がふれる
どこからか、自分たちを観察しているような視線を感じる。そして、カメラのシャッター音も聞こえた。

※探索者達を観察している工藤純也の視線です。出所を探しても見つからない。
3階

3階に上がると賑やかな声は遠くなり、廊下は静まり返っていた。この階では特に出し物はないようで、図書
室などもあるが鍵がかかっていて開かない。一番奥は美術室のようだ。

〈探索箇所〉

・美術室

美術室

廊下の奥、その突き当りに美術室はある。
鍵は開いていたが、明かりのついていない美術室にはだれもおらず、開けられた窓からは爽やかな風が吹いて
いた。また、部屋の壁の一部にブルーシートがかけられている。

〈探索箇所〉

・開けられている窓
・ブルーシート

※分かれて捜査する場合は「窓ら描写してください

窓からは柔らかな日差しが差し込み、涼やかな秋風が入ってきている。三階の窓という事もあり、下を覗き込
むとかなり高く感じた。美術室の真下にはとても綺麗な花壇があり、それはもはや庭園といえるほど様々な花
が咲き誇る美しい裏庭となっている。

〈アイディア〉または〈聞き耳〉がふれる
2階から織田優希のピアノ演奏が聞こえる。ちょうど美術室の真下が音楽室のようだ。裏庭で何人かの生徒が
話をしているようだが、その会話はピアノの演奏で全く聞こえない。すると突然、ひとりの生徒が突き飛ばさ
れるのが見えた。喧嘩か虐めだろうか。声は聞こえないが、何か揉めているようだ。

〈探索箇所〉に「裏庭の庭園」が追加される
ブルーシート

部屋の奥の壁に一部分ブルーシートがかけられている。窓から吹く風によって上の方がとれかかっているよう
だ。少しはがせば、中を確認できるだろう。

「めくる」という宣言後

ブルーシートを剥がすと、それは呆気なく下へと落ちる。途端、むせ返るほど絵の具の香りがした。現れたそ
れは壁ではなく、壁ほど大きい絵画であった。天井に届くほど大きなキャンバスには美しい女性の絵が描かれ
ている。貴方はその絵を見た途端、震えあがるような鳥肌を覚えた。

美しい。

恐ろしいほど美しい。
赤を基調としたその絵はぞっとするほど綺麗で、見ているだけで絵の中に引き込まれそうになる。
絵の中の女性は眠っている筈なのに、今にもその目が開くのではないかと感じた。
それほどまでに、その絵は生きているように見える。

絵を詳しく見るのであれば〈聞き耳〉がふれる
赤を基調とした美しい女性。何故、こんなにもこの絵から生を感じるのだろうか?絵に顔を寄せれば、ふっ
と、覚えのある臭いがした。気のせいだろうか。この絵からほんのりと血の匂いがしたような気がした。
SAN 値チェック〈0/1d2〉

つづいて〈目星〉がふれる
絵画の横に小さなプレートを見つける。

作者 「春香花音〈はるかかのん〉」
タイトル「君へと続く階段」

探索や RP のよきところで春香花音がやって来る

ガタンっと音がした。振り向くと、美術室の入り口に顔面蒼白になった女生徒が立っていた。

「何してるの?!」

彼女は探索者達を睨みながら、叫ぶように言葉を続ける。
「信じられない!勝手にブルーシートをはがしたんですか?!」
「今すぐそこから離れてください!その絵に変な事しないでっ!」

彼女に対して〈アイディア〉がふれる
絵に描かれた女性と顔が同じであると分かる。

探索者が絵から離れる/交渉技能に成功するのであれば、花音も少しだけ落ち着く

「……私の絵に、何か悪戯しようとしたんですか?」
「三階は展示物もないし、文化祭とは関係ありません。」
「とにかく、ここには何もないの!部外者は早く出て行ってください。」

〈探索者が質問をするのであれば〉
「……貴方達、何ですか?誰かの父兄ですよね?」
「なんか、刑事の聞き込み?みたい。なに?私、なにかしました?」

※KP 情報※
ここではあまり花音と話せません。
花音は1年かけて死に物狂いで描いた絵を守ることに必死です。
初対面の探索者をとにかく美術室から追い出そうと RP してください。
裏庭の庭園

裏庭の花壇はとても綺麗に咲いている。それはもう花壇というよりもちょっとした庭園だ。そこにはパンジー
やコスモス、薔薇やチューリップなどのさまざまな花が咲いている。

庭園に対して〈博物学〉と〈目星〉がふれる
〈博物学〉とても丁寧に世話されている事から、この庭園の花は愛を込めて育てられている事が分かる。

〈目星〉庭園の花壇に「園芸部:桑木みのり」と書かれた小さいネームプレートを見つける。また、土の上を
よく見ると針金や金属の破片が落ちていた。誰かがここに捨てたのだろうか?
※これは屋上へ行く階段の南京錠を桑木みのりがピッキングであけた名残です。今日、屋上から花音を突き落
とす予定なので、そのまま花壇に捨てました。鋭利なものが突き刺されば、その分、血も出るので。

〈聞き耳〉がふれる/もめている生徒を探すなどの宣言
庭園の奥で何人かの声が聞こえてくる。

「アンタ、こんな場所で育てた花を売るなんて、なに考えてんの?」
「私はただ、園芸部で育てたブーケを配りたくて……。」
「いや、普通に考えて頭おかしいでしょ?アンタが育てた花なんて誰も欲しくないわよ!」
「そんな!綺麗な花をプレゼントしたいって思うのが、そんなにいけないことですか?」
「ちげぇよ!場所が問題だって言ってんの!あぁ、もう帰れよ!お前は文化祭に参加すんな!」

声がする方を見に行くのであれば、一人の女生徒が数人に囲まれて虐められているようだった。

「助ける」という宣言後

探索者たちが助けに入ってくれるなら、みのりを囲んでいた生徒たちは逃げていく。

「あ、あの!助けて頂いてありがとうございます!私、園芸部の桑木みのりといいます!」
「これ!園芸部が育てた花のブーケです!良かったらどうぞ!」
「園芸部っていっても、去年、私が一人で設立した部活なんですけど。」
桑木みのりとの会話

園芸部について

「せっかく花壇があるのに去年までは、すごくお花が少なかったんです。だから頑張って育てました!」
「この裏庭、ただでさえ人が来ないから。お客さんが来てくれて嬉しいです!えへへ!」

この場所には何かあるの?

「……その、それは。えっと。その話はしちゃダメって言われてるんです。」

桑木みのりに対して≪交渉系技能≫がふれる 以下、成功したら
桑木みのりは非常に言いにくそうに口を閉ざしていたが、探索者の言葉に少しずつ話してくれる。

「一年前、美術室の窓から一人の女の子が落ちて亡くなったんです。」
「ちょうど文化祭の前でした。だから、去年は文化祭中止だったんですよ。その事もあってか、今年はすごく
盛り上がってますね。2年ぶりのお祭りですから。」
「……亡くなった子の名前は「春香奏多」ちゃん。ちょうど、その辺りで亡くなりました。」

みのりが指さした所を見ると、そこは一番きれいに花が咲いている場所だった。

「ここに花を植えたのは私です。人が亡くなった場所ですから、さっきみたいに言われたりもします。」
「ここは元々、気休めに花が咲いているだけの花壇でした。そのうえ、あの事件以降、誰も来なくなっちゃっ
て。だけど私、それはあまりにも寂しいなって思ったんです。」
「だから、たくさん花を植えました。ここを、誰も来ない寂しい場所のままにするんじゃなくて、お花でいっ
ぱいにしたら、少しは明るくなる気がして。それに私が卒業しても、花はずっと残るでしょう?そうしたら、
ここの花はいつだって彼女に供えられる事になる。ここが華やかになれば人も来るようになる。」
「そうしたら寂しくないかなって。私の自己満足、なんですけどね。」

春香奏多について

「奏多ちゃんは明るくて、笑顔が素敵な女の子でした。あ、でも双子の花音ちゃんもすごく優しいんですよ!
一年生の頃、私がイジメられてるのを見て、画板でバーンって!助けてくれたんです。」
「でも、奏多ちゃんが亡くなってから、すごく苦しそうで……。」
「あ、そうだ!私、文化祭一緒にまわろうと思って花音ちゃんのこと探してたんです!黒髪でポニーテールの
女の子なんですけど。どこかで見ませんでしたか?」
「美術室?なんだ、この上にいたんですね。文化祭でも絵を描いてるなんて、ほんと花音ちゃんらしいな。」
ある程度、会話をしたら

「それじゃあ、私はこの辺で失礼します。文化祭、楽しんでいってくださいね!」
と言って桑木みのりは去っていく。

探索者がどこかへ移動しようとしたら≪聞き耳≫または≪目星≫がふれる
自分たちを観察するような視線を感じる。そして、すぐにカシャリ!というシャッター音が響いた。それは意
外と近くから聞こえる。音のする方を見れば、誰かが庭園の茂みに隠れており、頭が少しだけ見えていた。

工藤純也を捕まえる

探索者がその人物を捕まえる/話しかけるのであれば、その生徒は「しまった!」という顔をしたあと、すぐ
に嬉々とした表情に切り替わる。そして開き直った態度で、探索者たちの写真を撮り始めた。

「見つかってしまったなら仕方がない!どうも!僕は工藤純也っていいます!文芸部の部長をやってます~!
お兄さんたち警察でしょう!?ね!ね!ね!何の捜査をしているんですか?!今日、この学校で何か起こるん
ですか!?教えてくださいよ~!」

なんで警察だって知ってるの?

「え?なんで警察だって知ってるかって?それは、ほら!」

工藤純也は手元から警察手帳を取り出す。それは≪盗まれた探索者≫の警察手帳だった。

「廊下で拾ったんです!警察手帳って紛失すると懲戒処分になるんでしょう?危ないところでしたねぇ!」
「でも、プライベートなら警察手帳いりませんよね?ということは、皆さんはお仕事で来られてるわけだ!
となったら、もう気になって気になって!ずっと観察させてもらいました!」

ずっと観察してた?

「はい!だって、捜査してる警察の表情なんてそうそう見れないですから!今後、刑事小説を書く時の参考に
したくて!皆さんのことを細かに記録してたんです!(シャッターをカシャカシャさせる)」
「僕、小説家になりたいので「リアリティ」を追求したいんですよ!」
「でも盗撮をしていたのはすみません!お詫びに、僕が知ってる情報を教えますよ!」
「僕、色々と詳しいんです。なんでも気になってること、お伝え出来ますよ?」

工藤純也に質問する

春香奏多について

「春香奏多?あぁ、去年あそこの窓から飛び降りた生徒ですね。自殺って言われてるけど、俺は殺されたんじ
ゃないかな?って思ってます。」
「だって靴は履いたままだったし、遺書もないんですよ?自殺にしてはおかしくないですか?」
「当時は、色んな噂が流れましたねぇ。本当は双子の春香花音が殺したんじゃないか~?とか、そもそも本当
に死んだのは奏多じゃなくて花音なんじゃないか~?とか。」
「性格は正反対でしたけど、見た目はソックリでしたから。本気で入れ替わられたら分からないです。」

春香花音について

「春香花音ね!もともと陰キャで目つきもキツイ女だったんですけど、双子の奏多が死んでからは更に陰りが
増しましたね。陰鬱オーラましましで「闇の煮込みうどん」って感じ!ずっと美術室にこもってますし。」
「昔から色んなコンクールで賞をとってたらしいですよ。実際、絵の才能はあるんでしょうねぇ。」

織田優希について

「あぁ、織田優希?俺に聞かなくても名前くらいは知ってるでしょ。超有名な天才ピアニスト。校内でも有
名人ですし、親もめちゃくちゃ有名ですよね。しかも、なんか由緒正しい家らしいっすよ?家に文化的価値の
ある宝がわんさかあるとか、ないとか。あくまで噂ですけど。」
「そういえば、春香奏多・春香花音・織田優希の三人は幼馴染なんです。これは知らなかったでしょう?」

桑木みのりについて

「桑木みのり。アイツも変わり者ですよ。まぁ、こんな場所で花を育てるくらいですしね。」
「入学当初からイジメられてたんですけど、春香花音が助けたんだとか。陰キャ同士、惹かれるものがあった
んですかね?春香奏多が死んでからダメになった花音に、よく甲斐甲斐しく話しかけてるのをみます。」

荒井鈴子について

「鈴ちゃん?生徒になめられる典型的な気弱先生ですねぇ!よく言えば友達みたいな先生、わるく言えば先生
らしさはない先生。まぁ、それは本人も自覚してるらしいから頑張ってるぽいけど。」
「鈴ちゃん、歴史の先生だから専用の準備室を持ってるんですけど、けっこう珍しい本がいっぱいあるんです
よ。古事記とか神話系の本とか!興味深いから、たまにこっそり拝借してます!」

夏目漱石の「こころ」について

「僕、夏目漱石の「こころ」が一番好きなんですよねぇ!人間の後悔とか葛藤とか罪悪感とか、そういう生々
しい心の内側をあんなにリアルに書けるなんて、本当にすごいと思います!」
※この言葉に嘘はない。が、あそこに夏目漱石の「こころ」を張ったのは「この学校では K が死んでいる」と
いう工藤純也から探索者たちへのちょっとしたヒントになっている。
質問が特になければ
「それでは、調査がんばってください~!陰ながら応援してます!」
「おっと!そういえば鈴ちゃんが皆さんの事を探してましたよ!今なら、準備室にいるんじゃないかな?
場所は隣の棟の2階なんで行ってあげてください~!」

そういうと、探索者が止める間もなく、工藤純也は走り去っていった。

その後ろ姿に≪目星≫または≪聞き耳≫がふれる
駆け出した際に彼のポケットから何かが「落ちたのが見えた」/「落ちた音が聞こえた」

それを確認するのであれば≪工藤純也≫の生徒手帳だと分かる。
中を確認するのであれば以下の事が分かる。

手帳の間に複数の新聞紙の切れ端が挟んである。それは虫食いのようにいくつかの文字が切り抜かれていた。

探索者が切り抜きと爆破予告を照らし合わせれば、その文字が完全に一致すると分かる
荒井鈴の歴史準備室

歴史準備室は別棟にあり、ここでは催し物はないようだ。遠くから、賑やかな声が聞こえてくる。探索者たち
が部屋の中に入るとそこには様々な歴史書や文学書が山のように積まれていた。しかし、今は誰もいない。

〈探索箇所〉

・本棚
・机

本棚

本棚の中には数多くの歴史書や文学書があり、相当な量の本が所せましと並んでいる。

本棚に対して≪目星≫または≪アイディア≫または≪図書館≫がふれる

並べられた本の中には「民俗学」に関するものや「神話」に関する本も多いようだ。中でもギリシャ神話集と
書かれた本が目に入り、連想的にミニステージで上演されていた「オルフェウス」と「エウリュディケ」の姿
を思い出すかもしれない。

荒井鈴先生の机なのだろう。机の上はきちんと整理整頓されている。他には引き出しがついている。
引き出しを開けるのであれば【皮の手帳】が入っている

中を見るのであれば、以下のことが書かれている。以下、PL に開示

K.H を心から愛している。K.H の事を思うと全身が震えて熱くなる。あぁ、優しく微笑む彼女にナイフを突き


立てたい。高い所が突き落として血まみれにしたい。その美しい柔肌が真っ赤に染まっていく所をみたい。あ
ぁ、K.H。愛している。愛している。愛している。愛している。愛している。愛している。愛している。愛し
ている。愛している。心から愛している。いつか必ず、血だらけになって、愛し合おう。

この文面から、誰かの尋常ではない執着や異常な精神性を感じ取ってしまった探索者は
SAN 値チェック 1/1d3
また【皮の手帳】に触れた探索者は≪知識≫または≪生物学≫がふれる
この手帳が『蛇』の皮で出来ている事が分かる。

探索者が『本棚』と『机』を調べ終わると、廊下からコツコツとヒールの音が聞こえてくる。
誰かが、この部屋に近づいてきているのだ。探索者は【皮の手帳】はどうしますか?

※この皮の手帳は桑木みのりが落としたものです。ここでは荒井先生が犯人では?とドキドキしてもらうだけ
の選択なので、手帳をどのようにしても問題はありません。

準備室の扉がガチャリと開いて、荒井鈴が入ってくる。彼女は今にも倒れそうなほど顔色を悪くしており、探
索者たちに気づくと驚いたように肩を揺らした。

「あ、あぁ!お疲れ様です。こんな所にいらしたんですね?どうですか、不審人物などはいましたか。」

本編につづく

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