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3D CADの基礎知識7

3D CADの周辺技術

もくじ
1. CAM(機械加工) …2
2. CAE( 解析) …4
3. ラピッド・プロトタイピング …6
4. 機械設計と 3D CAD …8

株式会社イプロス
Tech Note 編集部
前回は、3D CAD の図面機能とサーフェス機能を紹介しました。最終回
の今回は、3D CAD の周辺技術を紹介します。3D CAD の周辺技術は、
3D CAD のメリットを際立たせます。特に加工と解析の分野では、
CAD/CAM/CAE と呼ばれて古くから利用されています。近年、ソリッド
CAD との連携によって使いやすくなり、設計者にも身近になりました。
また、ラピッド・プロトタイピング技術は、ソリッド CAD とともに発展
しました。

1. CAM(機械加工)
CAM(Computer Aided Manufacturing)は、機械加工分野において、
NC(Numerical Control、数値制御)加工を行うために、NC プログラ
ムを作成するシステムです。3D CAD の発展は、曲面加工を行う上で大
きな役割を占めています。この分野では CAD/CAM システムと呼ばれる
ほど、CAM は 3D CAD と深い関わりがあります。

NC プログラムは、カッター(刃物)の動きを主体に工作機械の動作を
定義したもので、曲面加工や自動加工を行うために必要です。NC 工作
機械で特に汎用性の高いものがマシニングセンタ(MC、Machining
Center)です。カッターは部品に対して並進 3 自由度(xyz 座標)の動
きをするので 3 軸加工と呼び、曲面加工を行うことができます(図 1 の
左)
。さらに、回転 2 自由度(カッターの向き)の動きを加えたものを
5 軸加工と呼び、3 軸加工ではカッターが届かない部品の加工ができま
す(図 1 の右)
。これには、5 軸加工に対応した加工機と CAM が必要
になります。今回は、基本的な 3 軸加工の CAM について説明します。

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図1:マシニング加工

2.5 次元 CAM は、図 2 のように段の付いた形状や、穴形状の加工に用


います。図 2 の青い線が切削加工用のカッターパス(刃物の動き)です。
他の色の線は切削以外の動き(単なる移動など)を示しています。2
次元平面上の動きで切削加工し、深さを変えて加工していきます。平面
上の輪郭データのみでも、深さを指定することで NC プログラムを出力
できるため、CAM には 2D CAD データを利用できます。3D モデルを
利用した場合、形状を指定すると深さも自動的に認識します。しかし、
曲面ではなく平坦なサーフェスや輪郭形状が対象です。このように、形
状の指定や加工方法が 2 次元と深さであることから、2.5 次元と呼ばれ
ます。

図 2:代 表 的 な 2.5 次
元加工

平面加工 輪郭加工 ポケット加工

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図 3 のように曲面を切削するために用います。カッター
3 次元 CAM は、
パスは曲面形状から計算されるので、3D モデルが不可欠です。CAM
には、切削工具、切削条件、工作機械特有の制御方法(工具交換など)
を登録する機能があり、これらを反映した NC プログラムを作成するこ
とができます。

図3:代表的な3次元
加工

等高線荒加工 等高線加工 走査線加工

2. CAE(解析)
CAE(Computer Aided Engineering)は、形状データを基に力学的な
観点や製造上の観点から設計上の指標を得るシステムです。技術分野
に応じて多種多様な CAE があります。今回は、機械系で特になじみの
深い CAE として、強度剛性解析と機構解析を紹介します。

強度剛性解析は、静解析とも呼ばれます。応力やたわみを計算して部
品形状が設計要件に合致しているかを検討します。応力やたわみは材
料力学で学びますが、複雑形状に適応させるには知識と経験が必要で
す。CAE ではこれをさまざまな部品形状に当てはめるため、有限要素
法(FEM、Finite Element Method)を用います。CAE では 3D モデルを
基に簡単な操作で有限要素法による計算ができます。

強度剛性解析では、パーツモデルを利用し、部品を 1 つの弾性体とし

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て扱います。ソリッドモデルの形状(面・エッジ)に対して、固定など
の境界条件の設定、荷重条件の設定を行います(図 4 の左)
。図 4 の
右に三角の網目状に見えるのが有限要素(メッシュ)で、ソリッドモデ
ルから自動的に生成します。解析計算を実行後、応力やたわみの大き
さを色、変形図、数値などで確認できます。有限要素が多すぎると計
算負荷が大きくなるため、計算に影響の少ない形状(対称形状や応力
が低い場所の穴など)を省いて簡略化した方がよく、そのときは 3D モ
デルを変更します。図 4 の右は、3 枚ある羽根を 1 枚だけに変更した
3D モデルで解析を実行した例です。応力の大きさを色で表しています。

図4:強度剛性解析 最小
最大

最大

固定
分布荷重

最小
応力

3D モデル 解析モデルと結果表示

機構解析は、各部品を剛体として部品間の自由度を定義し、各部品の
運動(変位・速度・加速度)や力の伝達を計算します。ばねやダンパ
などの力学的な機械要素を使うことができます。自由度の考え方が 3D
CAD のアセンブリ機能に近く、アセンブリモデルと相性が良いという特
徴があります。なお、動作範囲の検証であれば、3D CAD のアセンブリ
機能だけで行うことができます。図 5 はリンク機構の動作をアセンブリ
機能で検証した例です。機構解析を使えば、重力、慣性モーメントなど
を含めて、モータの必要トルクを計算できます。

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図5:機構解析

モータの回転

3D CAD と CAE によって、驚くほど簡単に解析結果が得られます。結果


を正しく評価するには該当分野の工学知識と解析方法の理解が欠かせ
ません。CAE の計算値がどこまで現実に近いかを検討するには、高度
な知識と経験が必要です。しかし、設計者が解析方法に詳しいとは限り
ません。その場合、2 つの設計案を CAE で比較して傾向を把握する方
法であれば、解析の専門家でなくても実用的に使うことができます。

3. ラピッド・プロトタイピング
ラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping、高速試作)は、造形
装置を利用して 3D データから直接、実体形状を作り出す技術です。装
置の原理上、ソリッドモデルの存在が前提となるため、ソリッド CAD の
普及とともに発展しました。従来の試作では、試作用の図面を作成して
切削などの製造手段で製作するため、時間もコストもかかりました。ラ
ピッド・プロトタイピングでは、図面は不要で製作も造形装置が自動で
行うため、圧倒的な早さで試作部品を得られます。また、2012 年前後
には 3D プリンタという名称でも一般に話題となりました。今では、試
作にとどまらず、製造方法の一つになっています。

造形方法は各種あります。それらの基礎となる原理は積層造形法です。

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球体形状を造形する場合、3D モデルを造形用ソフトウエア(CAM の一
種)に読み込み、一定間隔で断面を作成(スライス)し、造形装置は
断面形状を一層ずつ積み重ねて造形すると、部品形状が完成します
(図 6)

図6:積層造形の工程 断面作成 造形層

造形物

3D モデル スライス 積層造形 造形品完成

具体的な積層方法として、熱溶解積層法を例に説明します(図 7)
。溶
解ヘッドは、熱で溶かした樹脂を細い糸状に押し出します。これを造形
台上で断面形状を描くように(塗り絵を描くように)移動させると、1 層
分の断面形状が作られます。次に溶解ヘッドを1層分上の高さに移動し、
この層の断面形状を造形します。これを繰り返して部品を完成させます。
なお、造形層の下に造形物がない場所では空中に樹脂が押し出されて
造形できないので、支えとなる造形物(サポート)を断面形状と共に
造形しておきます。サポートはスライスの段階(図 6)で自動的に形状
が付加され、造形物が完成した後に取り除きます。

図7:熱溶解積層の造
形法と装置の外観

積層方法としては、他に紫外線硬化樹脂を使うもの、粉体を熱や接着

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剤で固めるものなどがあります。どの方法にも、造形原理から避けられ
ない制約があります。熱溶解積層法では、材料が装置に対応した溶解
特性(温度・収縮など)の樹脂に限られます。また、樹脂を繊維状に
押し出すために造形物には材料の異方性(壊れやすい向き)が生じ、
サポート除去などの後処理も必要です。万能な積層方法はありません
が、利用目的が合えば、それまでの常識を覆すほどのメリットをもたら
します。常に新しい造形方法、新しい材料の開発が進められており、今
後も目が離せない分野です。

4. 機械設計と3D CAD
機械設計分野への3D CADの普及は、
十分に進んでいるとはいえません。
2D 図面での設計に問題を感じていなければ、3D CAD を利用する動機
は弱くなります。また、
機械部品の多くは 2D 図面で製作されることから、
後工程に対するメリットを少なく感じるかもしれません。

しかし、3D CAD を利用する必要に迫られていなくても、3D CAD のメリッ


トが大きい可能性はあります。空間的な設計検討のしやすさ、設計変
更時の作業の迅速さ、作図ミスの低減などのメリットは、製品形状を問
わずに得られます。さらに、2D 図面で表現に困らない製品形状は、
3D モデリングが容易である場合が多いものです。

3D CAD と周辺技術は日々進歩しており、3D CAD のメリットは工夫次第


で大きくできる性質を持っています。今は 3D CAD は時期尚早と考えて
いても、継続して 3D CAD のメリットを模索し、周辺技術にも注目し続
けるとよいでしょう。

いかがでしたか? 今回は 3D CAD の周辺技術について紹介しました。


これで、全 7 回にわたる 3D CAD の基礎知識は終了です。最後までお
読みいただき、ありがとうございました。

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3D CAD の基礎知識 7:
3D CAD の周辺技術
初版 2019 年 3 月 28 日

著者: D2FORM 代表 榎本 実

発行元: 株式会社イプロス Tech Note編集部


E-mail:media@ipros.jp
URL:https://technote.ipros.jp/

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