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3D CADの周辺技術
もくじ
1. CAM(機械加工) …2
2. CAE( 解析) …4
3. ラピッド・プロトタイピング …6
4. 機械設計と 3D CAD …8
株式会社イプロス
Tech Note 編集部
前回は、3D CAD の図面機能とサーフェス機能を紹介しました。最終回
の今回は、3D CAD の周辺技術を紹介します。3D CAD の周辺技術は、
3D CAD のメリットを際立たせます。特に加工と解析の分野では、
CAD/CAM/CAE と呼ばれて古くから利用されています。近年、ソリッド
CAD との連携によって使いやすくなり、設計者にも身近になりました。
また、ラピッド・プロトタイピング技術は、ソリッド CAD とともに発展
しました。
1. CAM(機械加工)
CAM(Computer Aided Manufacturing)は、機械加工分野において、
NC(Numerical Control、数値制御)加工を行うために、NC プログラ
ムを作成するシステムです。3D CAD の発展は、曲面加工を行う上で大
きな役割を占めています。この分野では CAD/CAM システムと呼ばれる
ほど、CAM は 3D CAD と深い関わりがあります。
NC プログラムは、カッター(刃物)の動きを主体に工作機械の動作を
定義したもので、曲面加工や自動加工を行うために必要です。NC 工作
機械で特に汎用性の高いものがマシニングセンタ(MC、Machining
Center)です。カッターは部品に対して並進 3 自由度(xyz 座標)の動
きをするので 3 軸加工と呼び、曲面加工を行うことができます(図 1 の
左)
。さらに、回転 2 自由度(カッターの向き)の動きを加えたものを
5 軸加工と呼び、3 軸加工ではカッターが届かない部品の加工ができま
す(図 1 の右)
。これには、5 軸加工に対応した加工機と CAM が必要
になります。今回は、基本的な 3 軸加工の CAM について説明します。
図 2:代 表 的 な 2.5 次
元加工
図3:代表的な3次元
加工
2. CAE(解析)
CAE(Computer Aided Engineering)は、形状データを基に力学的な
観点や製造上の観点から設計上の指標を得るシステムです。技術分野
に応じて多種多様な CAE があります。今回は、機械系で特になじみの
深い CAE として、強度剛性解析と機構解析を紹介します。
強度剛性解析は、静解析とも呼ばれます。応力やたわみを計算して部
品形状が設計要件に合致しているかを検討します。応力やたわみは材
料力学で学びますが、複雑形状に適応させるには知識と経験が必要で
す。CAE ではこれをさまざまな部品形状に当てはめるため、有限要素
法(FEM、Finite Element Method)を用います。CAE では 3D モデルを
基に簡単な操作で有限要素法による計算ができます。
強度剛性解析では、パーツモデルを利用し、部品を 1 つの弾性体とし
図4:強度剛性解析 最小
最大
最大
固定
分布荷重
最小
応力
3D モデル 解析モデルと結果表示
機構解析は、各部品を剛体として部品間の自由度を定義し、各部品の
運動(変位・速度・加速度)や力の伝達を計算します。ばねやダンパ
などの力学的な機械要素を使うことができます。自由度の考え方が 3D
CAD のアセンブリ機能に近く、アセンブリモデルと相性が良いという特
徴があります。なお、動作範囲の検証であれば、3D CAD のアセンブリ
機能だけで行うことができます。図 5 はリンク機構の動作をアセンブリ
機能で検証した例です。機構解析を使えば、重力、慣性モーメントなど
を含めて、モータの必要トルクを計算できます。
モータの回転
3. ラピッド・プロトタイピング
ラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping、高速試作)は、造形
装置を利用して 3D データから直接、実体形状を作り出す技術です。装
置の原理上、ソリッドモデルの存在が前提となるため、ソリッド CAD の
普及とともに発展しました。従来の試作では、試作用の図面を作成して
切削などの製造手段で製作するため、時間もコストもかかりました。ラ
ピッド・プロトタイピングでは、図面は不要で製作も造形装置が自動で
行うため、圧倒的な早さで試作部品を得られます。また、2012 年前後
には 3D プリンタという名称でも一般に話題となりました。今では、試
作にとどまらず、製造方法の一つになっています。
造形方法は各種あります。それらの基礎となる原理は積層造形法です。
造形物
具体的な積層方法として、熱溶解積層法を例に説明します(図 7)
。溶
解ヘッドは、熱で溶かした樹脂を細い糸状に押し出します。これを造形
台上で断面形状を描くように(塗り絵を描くように)移動させると、1 層
分の断面形状が作られます。次に溶解ヘッドを1層分上の高さに移動し、
この層の断面形状を造形します。これを繰り返して部品を完成させます。
なお、造形層の下に造形物がない場所では空中に樹脂が押し出されて
造形できないので、支えとなる造形物(サポート)を断面形状と共に
造形しておきます。サポートはスライスの段階(図 6)で自動的に形状
が付加され、造形物が完成した後に取り除きます。
図7:熱溶解積層の造
形法と装置の外観
積層方法としては、他に紫外線硬化樹脂を使うもの、粉体を熱や接着
4. 機械設計と3D CAD
機械設計分野への3D CADの普及は、
十分に進んでいるとはいえません。
2D 図面での設計に問題を感じていなければ、3D CAD を利用する動機
は弱くなります。また、
機械部品の多くは 2D 図面で製作されることから、
後工程に対するメリットを少なく感じるかもしれません。
著者: D2FORM 代表 榎本 実